文化審議会第10期文化政策部会(第6回)議事録

平成25年2月20日

【内田調整官】  それではお時間ですので,開会させていただきたいと思います。開会に先立ちまして,配付資料の確認をまずさせていただきたいと思います。
 お手元の資料,クリップを外していただきまして,資料1-1でございますけれども,横の表でございます。第3次基本方針の25年度予算案への反映状況です。資料1-2といたしまして,去る9月にこの部会で出していただきました提言の25年度予算案への反映状況。資料2が外務省の資料。資料3が観光庁からの資料。資料4が経済産業省と総務省からの資料でございます。資料5が劇場,音楽堂等の活性化のための指針の概要でございます。資料6がマイケル・スペンサー氏からのヒアリング概要。資料7が国立近現代建築資料館の概要。資料8が東アジア文化都市の概要。資料9が国民文化祭についての資料。最後にやまなし国文祭のカラーの資料がございます。このほか,湯浅委員からはブリティッシュ・カウンシルのロゴが入っております2種類の資料,また平田委員から沖縄県の関係資料を机上配付させていただいております。
 そのほか,委員名簿ですとか,9月の提言。第3次基本方針,あとはそれにつながる答申,25年度予算案の概要,文化芸術関連データ集といったものを机上に置かせていただいております。もし過不足がございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 本日の欠席委員でございますけれども,座席表の右下にございますが,青柳委員,奥山委員,渡辺委員,あと先ほど御連絡がございまして宮川委員も急きょ欠席されるということでございます。以上でございます。
 それでは宮田部会長,よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  資料の方はよろしゅうございますね。ありがとうございました。
 それでは,第10期の文化政策部会第6回を進めさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 議題として,政府予算案の状況。劇場法に基づく指針の検討。イギリスの実践紹介ということをテーマにして行いたいと思います。そして,特徴のあることは関係省庁からもおいでいただいております。外務省,観光庁,経産省,総務省の皆さんからもお越し頂いておりますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,この部会が第3次基本方針の進捗状況管理という任務があります。1月29日,政府予算案が閣議決定されております。本日,文化庁のほかに,この関係省庁からも御説明を頂きますので,いい情報交換ができますればと思っております。よろしくお願いします。
 まず文化庁から御説明をお願いしましょう。よろしくお願いします。

【内田調整官】  それでは文化庁関係につきまして説明させていただきたいと思います。資料1-1でございます。この資料は第3次基本方針の項目に沿って予算案を整理したものでございます。
 まず1ページ目ですけれども,重点戦略1といたしまして,文化芸術活動に対する効果的な支援です。上から2つ目。この部会でもヒアリングをしてきましたが,諸外国のアーツカウンシルに相当する仕組みの導入ということで,文化芸術活動への支援を効果的にするために,専門家を活用して財政支援の審査,評価等の取組に関し,引き続き支援を行うものですけれども,新たに日本芸術文化振興会が行う基金事業も試行の対象にするというものであります。
 上から3つ目といたしまして,劇場・音楽堂等が行う実演芸術の創造発信といたしまして,約30億円を計上しております。劇場などが行います創造発信,人材育成,普及啓発への支援を充実しております。先般,劇場法が制定されたことも踏まえ,劇場などを地域の文化拠点として位置付けようとするものであります。この1つ下の欄にもございますが,現在,指針を策定しているところでありまして,その進捗状況は今日のこの部会の次の議題にも出てまいります。
 次,2ページ目に参りまして,重点戦略2,人材の育成・充実という観点です。若手を始め,芸術家の育成支援ということで,新進芸術家育成事業,メディア芸術祭における顕彰制度を引き続き行います。また,文化芸術活動・施設を支える専門人材の育成といたしまして,下から2つ目の丸ですけれども,美術館や博物館を地域の文化拠点として活性化するために,地域の様々な団体,学校との連携で行うイベントへの支援といたしまして,約10億円。また一番下の丸ですけれども,大学を活用した文化芸術推進事業といたしまして,芸術系大学などへの支援といたしましてアートマネジメント人材の育成などのカリキュラム開発ですとか,大学からの発信のために4億5,000万円が計上されております。この予算を活用して大学が授業を行うために新たなロゴをデザインいたしまして。すみません,あちらを見ていただければと思いますが,「大学から文化力」というロゴを新たにデザインいたしまして,いろいろなポスターやチラシに使っていただいて,積極的にこの事業を進めていきたいと思っております。
 次の3ページ目にいきまして,無形遺産,文化財を支える技術・技能等の伝承者への支援といたしまして,芸術鑑賞,伝統文化などに親しむ機会の充実などといたしまして,次代を担う子供の文化芸術体験授業などの支援を継続しております。この事業では義務教育期間の子供に対して,2分野,現代舞台芸術と伝統芸能,各1回ずつを体験する機会を提供しようというものであります。
 次,4ページ目ですけれども,重点戦略4。次世代への確実な継承といたしまして,計画的な修復,防災対策等による文化財の適切な保存・継承といたしまして,文化財の保存修理など,ここにあるような各事業を引き続き支援することとしております。
 次のページ,5ページ目ですけれども,積極的な公開・活用による国民が文化財に親しむ機会の充実といたしまして,中段あたりにございますが,新規といたしまして,これは既存の事業を整理,拡充いたしたものですけれども,文化財建造物等を活用した地域活性化のための事業に17億円。地域の特性を生かした史跡等総合活用支援推進事業に32億円を計上しております。
 次,6ページ目にいきまして,アーカイブ構築に向けた情報などの収集・活用ということで,メディア芸術情報拠点推進事業といたしまして,メディア芸術を扱う様々な機関が連携して,人材育成,調査研究を行っていくといった拠点形成のための事業として,1億8,000万,そのほか調査研究,文化遺産情報のポータルサイトの事業があります。
 重点戦略5といたしまして,文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用といたしまして,下から4つ目の丸ですけれども,地域発・文化芸術創造発信イニシアチブとして,地域の文化の再生,コミュニティーの再構築などを図る文化芸術関係を支援する事業に29億円を計上しております。そのほかの事業は再掲です。
 最後のページ,7ページ目ですけれども,重点戦略の6といたしまして,文化発信・国際文化交流の充実といたしまして,海外公演・出展,国際共同制作等への支援に関する事業です。例えば4つ目の丸といたしまして,日本で開催されます国際芸術フェスティバルへの支援,メディア芸術祭等への支援,美術館や博物館,相互の交流事業といったもの,そして,下から3つ目の丸ですけれども,文化財分野の国際協力,人的協力,専門家の招へいなどに係るような支援を行ってまいります。
 下から2つ目の丸といたしまして,東アジア地域における国際文化交流といたしまして,東アジア諸国の文化人,芸術家などが一堂に会しまして,ネットワークの強化も図っていこうといたします「東アジア共生会議」などへの支援ですとか,文化芸術の海外発信拠点形成事業といたしまして,日本各地に日本での活動を希望する外国人芸術家の受入れを進めるアーティスト・イン・レジデンスの取組を支援する海外発信拠点形成事業といった事業がございます。
 この資料,今説明しました1-1とは別に,本日は1-2もお配りしておりますが,これはまたお時間があるときに御覧いただければと思います。9月の提言を踏まえまして,この項目ごとに予算がどうなっているかについて整理したものでございまして,ただいまの説明と大分重複する部分がございますので,省かせていただきたいと思います。文化庁関係の予算案などの説明は以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。資料1-1について,もう1つ,資料1-2はそれに連携されているということで御説明がございました。
 冒頭に私,申しましたが,各省庁からおいでいただいております。関連事業がございますので,大変恐縮ですが,限られた時間の中でございますけれども,御説明をお願いしたいと思います。
 それでは,まず岸守首席事務官より,外務省さんの方の関連事業のお話をいただければ。七,八分で。

【岸守首席事務官】  外務省広報文化外交戦略課首席事務官の岸守と申します。よろしくお願いします。全体で八分ということなので,最初に結論だけ3点申し上げた上で説明をしたいと思います。
 今日申し上げたいことの1つ目は,昨年8月1日に外務省も機構改革をしまして,パブリック・ディプロマシーに非常に力を入れているということが1点目。2点目はその中でも外務省ならではのアプローチをいろいろ考えており,クールジャパン・プラスというのを今日御紹介させていただきますけれども,それが2点目でございます。3点目は外務省だけではなく,国際交流基金というパートナーと一緒にいろいろやっているらしいと。委員の皆様におかれては,この3点だけお持ち帰りいただければ十分でございます。そう申し上げた上で,駆け足になるかと思いますが,この資料2を使って簡単に御説明させていただきます。
 まずページをめくっていただいて,広報文化外交の概念でございます。外務省のパブリック・ディプロマシー,広報文化外交というのは比較的歴史が浅くて,ここにいらっしゃいます近藤長官が初代の広報文化交流部長になった2004年から歴史が始まっていると我々は認識しております。そのときにいろいろ礎をつくっていただきました。今日はこの場でお礼を申し上げることができてうれしく思います。
 何をやろうとしているかというと,一言で申し上げると資料の一番下のところで,日本の好感度と理解度を上げて,国際社会における日本のプレゼンスを高めていこう。これが我々の究極の目標でございます。
 では,なぜそういうことをしているかというと,やっぱりパブリック・ディプロマシーというのは競争になっておりまして,特に今日は中国,韓国などの新興国との関係で相対的に日本のプレゼンスが若干落ち目になっているのは,感覚的な話ではなくて,ここにありますように,予算とか,語学講座の数ですとか,世論調査の結果,あるいは外国メディアの特派員がどこに置かれているかといった統計で表されております。外国メディアの特派員がどこにいるかがなぜ重要なのかと言われると,例えば昨秋以来の尖閣でいろいろと中国と広報戦が広がっておりますけれども,北京の特派員の数が多いとどうしても北京発で彼らに有利な情報が出たりもいたします。こうした厳しい環境にいかに対応するかと言うことで,機構改革を行った次第です。
 まず体制の問題ですが,近藤長官が当時始めていただいた機構改革の延長における最終形を今回達成できたと思っております。と申しますのも,2004年の段階では広報と文化を一緒に行うことはできていたんですけれども,唯一残されていた報道対策,そこを今回一緒にしまして,この3つの分野が統一的な司令塔のもとで戦略的な,あるいは有機的な連携をもって実施できるようになりました。私が今おります広報文化外交戦略課というのは右翼課としての調整課でありまして,実は霞が関で3番目の戦略課であります。1番目は当然防衛省に1つあるんですけれども,2番目はどこだと思いますか。ある意味で意外なところだったんですけれども,国交省の航空戦略課が2番目でございます。2番目があると大体3番目は割と簡単に作らせていただけるということで,法制局にお願いをして,いろいろな民間の方のリソースも戦略的に活用するということで,昨年の夏に広報文化外交戦略課を作らせていただきました。
 具体的にどういうことをやっているかというのが次のページ,5ページであります。3つの同心円という形で説明をさせていただきますが,まず赤い丸。外務省の中でもやはり広報文化というのは政治とか安全保障,経済,経済協力に比べるとちょっと毛色が違うのかなという時代が続いておりました。今,ここの距離を縮めて「主要外交課題を促進するための広報文化」の位置付けをはっきりさせております。
 次のオレンジのところでありますが,ここはオールジャパンということで,関係省庁さんそれぞれがいろいろなイニシアチブで広報文化をやっておられる,今日も観光庁,経産省,総務省さんが来られていますけれども,こういったところとの連携を強化するというのが2番目の同心円であります。
 3番目,その外にあって一番リソースを持って,力を持っておられる民間企業,市民社会。ここがやはり広報文化での主役だろうということで,こちらと連携を強化するという3つの同心円をいかに強めていくかということを日本,それから在外で行おうとしているのが実施体制であります。
 6ページは予算ですが,文化庁さんの予算が1,000億だとすると,我々は200億弱しかありません。これも年々減り続けて,10年で4割減になっております。なお深刻な問題としては,外務省本体の事業予算が実は30億少ししかなくて,それ以外は国際交流基金への交付金とか,ユネスコや国連大学への分担金・拠出金で取られてしまっております。したがって見かけ200億円なんですが,外務省が実施できる事業は32億円しかないというのが現状でございます。
 本日強調したい2点め,今日一番説明したかった点ですが,ではその少ない予算で何をどう付加価値をつけるかということを一言だけ御説明させていただきます。クールジャパンというのは今更説明をする必要はないと思うんですけれども,どうしても日本企業が日本のコンテンツを海外でどう売り込んで,どう稼いでいくかという経済的な利益が目的になっております。それはそれで正しいことなんですけれども,外務省がどうプラスの面で貢献できるかというと,2つございまして,1つはまず日本から海外に売り込むということをプッシュ・ファクターだとするとプル・ファクターを創出するということであります。それは海外において,例えばインドネシアで角川映画さんを売るというときに,現地で既に日本語を学んでいる人,あるいは日本の文化にあこがれている人がいれば,そうでないときに比べて,やはり売りやすい,あるいは売上げも伸びやすいということであります。いろいろな事業を国際展開するときに,事業実施の前後で外務省の方で,あるいは在外公館の方で環境を整えて,フォローアップをしっかりやっていくという意味での付加価値を1つつけたいと思っております。
 もう1つの付加価値は,やはり経済的な利益だけではなくて,その背後にある日本的な価値観ですとか,精神性とかそういった文化的な価値そのものを理解して,そして好きになっていただくという点です。その結果,日本とどこかが争っているときに,どっちが言っていることも良く分からないけれども,あの日本が言うんだったら間違いないのかなと言っていただけるぐらい好きになっていただくような,そういった文化的な価値に基づいた外交を今進めようとしているところでございます。
 3点目の国際交流基金については,8ページ以降,3枚ほど資料をつけましたので,ここでは詳細な説明は省きますけれども,基金の方でも特に力を入れているのが日本語の普及であります。それと並んで文化芸術交流,日本研究・知的交流というのを文化庁さんと二人三脚でやらせていただいておりますが,特に日本語については10ページに資料を書きましたけれども,確かに伸びてはいるんです。伸びてはいるんですが,やはり孔子学院が今世界中で900の拠点を持って,異常なスピードで中国語を普及させていたりすることに比べますと,どうしてもなかなかそういう意味で伸び切れない。今,直営講座だけではなくて,1つ工夫をして,例えば海外の日本語学校で,そこは現地の方が運営している日本語学校で全然構わないんですけれども,日本語の教師を採用していただけるときに補助金をつけていく。
 そうすることで日本語の教師が海外で職を得やすくなり,それで現地の教員を今度は育成して,その育った方たちがまた別の方を連鎖反応的に日本語を教えていく。そういうシステムをこの度,2億円ですけれども新しく予算をとりまして,今後ちょっと力を入れていこうと考えているところでございます。
 すみません。駆け足ではありましたが,機構改革をしたこと,クールジャパン・プラスで若干付加価値をつけようとしていること,それから基金と一緒にいろいろ頑張っているというその3点,手短に申し上げました。どうもありがとうございました。

【宮田部会長】  どうもありがとうございました。事前に近藤長官が下地を作られたというお話も頂戴いたしました。御苦労さまでございました。
 さて,それでは次に移らせてもらいます。観光庁さんの関連予算等々につきまして,亀山課長さん,お願い申し上げます。

【亀山課長】  観光庁国際交流推進課長をしております亀山と申します。観光庁と文化という観点で申しますと,2つ大きな役割があると思っておりまして,1つが国内の観光振興のために文化あるいは伝統といったものを活用していくということがあろうかと思います。私は国際交流が担当で,本日の資料には,申し訳ございませんが,御用意がございませんが,日本の観光地域づくりという観点では,3億4千万円ほどの予算を来年度予算として要求をしておるところでございます。私が直接担当しております,いわゆる国際交流推進,訪日客の拡大については,それ自体が文化の振興ということではありませんが,皆さん御承知のとおり,日本文化が外国で広く受入れられることにより,そのことが訪日のきっかけになるということがございます。皆さん,文科省,文化庁以外のところも含めて,日本文化の発信というところを捉えまして,それを更に日本に行きたいと思っていただくということが私どもの役割かと思っております。
 予算については資料をお配りしているのをまた後ほど御覧いただければよろしいかと思いますが,実際に文化情報の発信について申し上げますと,例えば一般的な日本文化そのものの発信や紹介はウエブサイト等を通じて観光庁としても行っておりますし,海外において大使館,あるいはその他の組織が日本文化を紹介する場合に,観光庁も一緒に連携させていただいて,日本文化に関心を持っていらっしゃる方々に「是非日本にお越しください」という形での訪日プロモーションを行っております。
 それから日本で行われます国際的な文化イベントについては,例えば瀬戸内国際芸術祭などは海外からも非常に注目を集めておりますので,そうしたイベントそのもののPRを我々も行っておりますし,そのようなイベント開催が訪日のきっかけとなるよう,海外における紹介も積極的に行っております。
 それから文科省,文化庁のみにとどまらず,今,岸守さんから御紹介がありました国際交流基金でありますとか,あるいは日本語を習っている方々に対しても,単に日本語を習う,あるいは現地で日本文化に触れるというだけではなくて,「本物を是非日本で体験しましょう」という観点から訪日につながるようなプロモーションを行っているところでございます。
 全体で昨年837万人ほどの外国人の方が日本に来られましたが,今年は1,000万人を目標に掲げておりまして,外交問題などにより,一時的にその国からの訪日客が激減するという状況もございますが,今年は特に資料の3ページにもございますとおり,東南アジア,ASEAN諸国に対する訪日プロモーションを本格的に展開していきたいと思っております。今年が日本とASEANの友好協力40周年ということもございまして,外務省を始め,政府全体としてASEANにおける日本の文化を含めた紹介が大規模に行われる予定でございますし,東南アジア,今,特にタイ,インドネシアは訪日意欲が非常に高まっておりますので,これを機にこれら市場からの訪日旅行者の大幅拡大を目指したいと考えております。ASEAN諸国を大きな訪日外客市場へと育成していくことは,外交問題により生じるリスクを減らしていくという観点からも重要であり,今年は東南アジアに特に注力していきたいと考えております。
 簡単ではございますが,説明は以上にさせていただきます。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。外国人の1,000万人の日本への招致を目指すということでした。それを文化芸術の力でも支援する,ということでした。ありがとうございました。
 続きまして,経産省さんから須賀総括補佐においでいただております。よろしくお願いいたします。

【須賀補佐】  本日はお時間を頂きまして,どうもありがとうございます。経済産業省のメディア・コンテンツ課の補佐をしております須賀と申します。今日は資料を総務省さんと連名でお持ちしておりまして,このこと自体結構画期的だと思っていただける方もいらっしゃるかと思うんですが,完全にタッグを組んで一緒に同じ目的を共有してやっていくというふうに考えておりますので,今まで御説明のあったお話も含めて,政府全体で取り組むということで,その1パーツを御説明させていただければと思います。
 1枚めくっていただいて,クールジャパン戦略というのは何度も聞いていただいているかと思うんですけれども,要するに何を言いたいのかといいますと,日本の魅力が海外で受けているのに,それがなかなか日本の国力に還元されていない。それは非常に狭い意味では産業が儲(もう)けられていないということですし,ほかにもいろいろな意味で十分に恩恵を受けられていないということで,何とかしてその状況を少し国益に資するような形で,大きなムーブメントにしていけないかということで,さかのぼれば5年ほど前からそういう動きを遅ればせながら日本もし始めたということだと思っています。
 具体的に海外展開というときに,3段階という御説明を我々していまして,まず初めに,韓流のブームをよく思い起こしていただくと非常に分かりやすいと思うんですけれども,まずは日本ブームを世界各地で起こしたいと思っていまして,日本のコンテンツを最近よく見るなとか,日本のファッションってすてきだなと思う人が世界で増えるとか,そういった日本へのあこがれをまずは高めるというフェーズがあり,そこにはどうやって日本の良さを発信していくかという戦略が必要だと思っています。
 その次に初めて稼ぐというフェーズが出てくるんですけれども,この商品が欲しいとか,この人と同じものを着てみたいと思ってくれた現地の人たちが現地で近くのお店に行けば,それが実際に買えるという状況を同時に作っていく。そこでまず現地でお金がちゃんと落ちて,それが日本に還流してくるような環境を作っておかなければならない。
 それから最後にやはり日本にあこがれてくれた人というのは,一度は本場に行って本物を味わってみたいと思ってくれるはずなので,ここが先ほど亀山さんから御説明のあったビジット・ジャパンの戦略に正に当たるところで,そこまでを全部一続きの戦略として一緒にやらなきゃいけないんじゃないかというのが我々の問題意識です。
 今回御説明をしたいのは,その中で幾つか政策ツールをやっと整備でき始めてきたという状況でして,まず日本のブームを起こすというところに関しては,今まで我々はコンテンツ産業に対して,とにかく稼いでください,皆さんは次世代の成長産業なんですというメッセージをちょっとゆがんだ形で発信し過ぎたんじゃないかなと反省をしていまして,実は初めにブームを起こすという部分では,例えばテレビ番組とか映画なんかを高く売りつけても誰もアジアでは買えないんですね。いろいろと皆さん番組販売の難しさとかを話してくださるんですが,結局単価が高いというところで引っかかって,それだったら韓流のコンテンツを買うからいいよと言われてしまっている。結果としてある地域においては,いまだに「おしん」のイメージが日本のイメージであって,それ以外ずっと記憶が更新されないので,何となく日本は古くさいと思われてしまったりしている。非常にもったいないことです。日本のコンテンツ自体にはニーズがあるので,そうだとすれば番組を輸出する際に,日本のコンテンツというのは基本的には日本語でできていますので,海外の市場に向けてつくられていないものが過去のライブラリーは多いものですから,海外向けにアレンジをする,字幕をつけるとか,あるいは適切でないシーンを削除するとか,そういうことで追加的にかかるコストの半額をひたすら補助金で我々応援させていただきますという,ローカライズ補助金というのを作りました。その御説明が1つ目です。
 それからもう1つ,今日は資料ではお持ちしていないんですけれども,現地で稼ぐという2番目のフェーズに関しても,現在500億円の産投出資を元にクール・ジャパンファンドを準備しておりまして,今国会で法案を提出する予定なんですけれども,そちらで,海外で実際稼ぐ事業をやられる方にリスクマネーを供給して,政府も一緒にリスクをとりますから大きく事業をやってくださいというようなビークルを用意したいなと思っています。
 2ページ目はそれの参考資料ですので,御覧いただければと思いますが,1,2,3それぞれのフェーズについて,ブームを演出するために例えばファッション番組とかバラエティー番組が海外で流れるということに意味があると思っていますし,現地で稼ぐということに関して言うと,現地にジャパンモールとか,ジャパンストリートというようなもの,実際作りたいと言ってくださる国がたくさんありまして,そういうものができると日本の中小企業なんかも自分で単独でリスクを取るよりも,そこへ出店した方がよっぽど低コストで良いものをどんどん海外へ持っていけるということで,そういう拠点の整備もしたいなと。3番目がビジット・ジャパンですというようなことを言っています。
 やっと本題ですけれども,3ページ目に補正の予算の説明を書いておりまして,今回総額170億円と言っていますけれども,そのうち155億円分が基金となっていまして,大きく2つの柱があって,1つが先ほど申し上げた番組のローカライズに係る費用の半額を補助していくという補助金,これを総務省さんと経産省で共同要求をしております。
 それから2つ目の柱としてプロモーション支援ということで,こちらも基金になっているんですけれども,ここは経産省が単独で要求していまして,何かといいますと,番組を単に現地で流すだけではなくて,必ず日本のテレビ局さんも新しい番組が始まる前は番組の宣伝って必ずやられるんですね,国内でも。それをなぜか現地では全くやれていなくて,そうすると番組が流れたらしいけれども,みんな気が付かないまま終わってしまって,視聴率が大して上がらないということで,もったいないことが続いていますので,今度こういう番組が流れるから見てね,日本の良さが分かるよというようなPRのイベントを現地でやられるときに,その費用の半額を見るというような予算も御用意しておりまして,これは例えば外務省さんも在外公館でプロモーションのイベントを芸術文化の分野ではよくやられると思うんですけれども,その時のレセプションの費用の半額なんかも支援することができると思っていますので,是非連携して活用していただければと思います。
 3本目の柱について,では,総務省さんから・・・。

【山中補佐】  総務省のコンテンツ振興課の課長補佐をしております山中と申します。よろしくお願いいたします。
 今,話のありました3番目の国際共同製作支援について御説明させていただきたいと思います。資料で言うと,1ページめくっていただいて5ページを御覧いただきたいんですけれども,最初の丸に書いてありますとおり,日本のコンテンツ産業は世界第2位の規模,約11兆円と言われております,その中で海外輸出比率は4,500億円程度で,4%程度です。他方アメリカは20%弱ということで非常に差を開けられています。更に特に総務省の関係で申し上げますと,放送コンテンツに関しては63億円程度しか海外輸出ができていなくて,※2にありますけれども,映像コンテンツの中では放送番組というのはかなりの割合を占めているんですが,海外の展開は十分にできていないという問題意識があります。
 その中で総務省としては,2点支援を考えておりまして,1点目は今,経済産業省さんの方から御説明のあったとおり,ローカライズという部分について支援させていただこうと考えております。2番目なんですけれども,これは総務省の単独の事業ですが,簡単に言うと,海外の放送局と日本の放送局あるいは制作会社がタッグを組んで現地で放送番組を流していくということを支援していこうというものです。問題意識としましては,先ほども話がありましたけれども,やはり日本のものをそのまま持っていっても,日本人の意識としては自信満々の番組であっても,いざ海外で展開するとそのようには見られないというケースもあったりして,そこはやはり現地のニーズをしっかり踏まえないといけないんじゃないかという問題意識があります。そこで海外の放送局と一緒に放送番組を作っていこうという趣旨でございます。
 具体的に言うと,対象地域ですね。例えばアジアとか,よりグローバルな全世界的なものとか,あるいは放送局の中でも既にいろいろ海外との制作の経験があるところとか,ないところがありますので,そういうのを勘案して幾つか事業類型,プロジェクトを設けまして,そのプロジェクトごとに請負主体を公募して,その請負主体を通じて支援していくという形を考えております。
 ただ,当然何でも支援できるわけではなくて,最初に申し上げたとおり,1つはちゃんと現地における,一番分かりやすく言うと視聴率ですとかですけれども,ちゃんと現地で見られるようなコンテンツを作ることですとか,あるいは金の切れ目が縁の切れ目ではないですけれども,支援が終わったらもう放映されなくなってしまうということでは困りますので,そこはちゃんと最終的には自走できる事業モデルを提案してくれたところを選んでいこうと考えております。簡単に申し上げると以上でございます。

【宮田部会長】  はい。4人の皆様,大変ありがとうございました。最後に総務省さんと経産省さんが連携して進めておられるというのは大変有り難いことですね。同時に文部科学省と文化庁も一層,連携を深めていただきたいと思います。頭脳の互いの共有ということがすばらしいことであるという気がいたしております。
 それでは,ここで少し意見交換をしたいと思います。その中には当然今日お話しいただいた4人の皆様からの御発言も結構でございますし,当然文化庁さんからの,事務方のお話も結構でございます。ただ,これは情報を単なる交換するわけではなくて,前向きな新しい試みでございますので,前向きな意見交換があり,そしてそれが次のステップになるという情報交換になってもらえたら幸いかと私は思っております。
 いかがでしょうか。今までの御発言の中から,御検討をいただければと思います。このお話は例えば,ああ,そうか。外務省さんってこれだけのお金でこういうお仕事をなさってくださっているんだ。それは国際交流との関係なんだなとか,その辺で,文化庁や委員の皆さんの中で,いろいろな御質問等もあったら頂戴したいと思います。いかがでしょうか。
 私,経産省の産業構造審議委員会の委員をしておりますが,その中で気付くところをお伺いします。

【須賀補佐】  はい,どうぞ。

【宮田部会長】  例えば,物を売ろうとするならば,その売る美しさがあるから,他のものとは違う日本の物をという印象が僕はあると思う。その辺のところに対する考え方をどのようにお考えになっているのでしょうか。というような話からでも結構ですので、皆さん。はい、どうぞ。

【太下委員】  太下です。今の経産省さんと総務省さんの御説明に関して,是非こういったことはもっと積極的に進めていただければと思いまして,特に両省共管でという形での御提案には非常に頼もしいものを感じました。
 実は一方で,私もこういう分野を研究しているんですけれども,今,打っていらっしゃる施策というのはコンテンツの権利を持っている所有者が自ら利用するというケースには非常にぴったりいってすばらしいと思うんですけれども,あるコンテンツがあってこれはすばらしいと。それについて自分はビジネスをしたい。又は非営利で何かアートプロジェクトをやりたいというケースが多々あります。こういうとき,実は著作権の権利を持っている方を探さなくてはいけないんですけれども,実は権利者を探すのは非常に手間,時間,コストがかかる。俗にサーチコストと呼ばれて非常に障壁になっている問題です。これは御案内のとおり,著作権というのは自然権で,登録せずに権利が発生するということに由来するわけなんですけれども,その結果,権利者がどんどん死んでしまって,行方も何もわからない状況になっている作品というのは世の中に実は膨大にありまして,これが俗に孤児作品,オーファン・ワークスと言われて,実は経産省さんも御案内のとおりだと思うんですけれども,今EUでも,イギリスでも,アメリカでも法的措置をしてそういうのを活用できないかという議論を行っており,恐らく文化庁さんでも著作権分科会でその議論を始められていると思うんですが。できればそういう世界的な状況の中で,日本が孤児作品というものの救出とか活用の先進国になったらすばらしいかなと私は実は前から思っていまして,ジャストアイデアなんですけれども,オーファン・ワークス・ミュージアムみたいなものがあったらいいんじゃないかと思うんですね。要はミュージアム,美術館という機構にこれはきっとオーファン・ワークスだと思われるものをどんどん展示していって,公知,パブリックに知らしめる。それでも誰も手を挙げなければこれはきっとオーファン・ワークスだろうと認定して,それはビジネスでも又はいろいろなアートプロジェクトでも活用できるようにする。そういう新しい仕組みを何かつくると,こういうオーファン・ワークスの活用って非常に進むんじゃないかと思っているんですね。これは海外展開だけではなくて,国内での利用にも大いに寄与するんじゃないかと思います。もちろん活用した後,実は私がという手が挙がってきたら,仮にもしそれが収益になるものに使われていたら,その収益分はちゃんとプールをしておいて,権利者に還元するような仕組みを作れば良いと思いますし,これはいずれにしても世界的な著作権の問題なんかで大きな課題になっていますので,そういうタイミングですから是非こういう海外展開とか国内でのコンテンツ振興の政策とあわせて,世界に先駆けるような何かオーファン・ワークスの施策を,様々な省庁共管で御検討いただければと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。例えば,文化庁の発信だけではなかなかできないときに,手助けを外務省さんや経産省さんや総務省さんやらにいただけると,お互いの連携ができたときの,日本の文化芸術の発信力が強まるのではないかと考えます。

【相馬委員】  フェスティバル/トーキョーという舞台芸術のフェスティバルをディレクションしております相馬と申します。今,外務省さん,総務省さん,経産省さんの話を聞きまして,やはり経済の観点,産業の観点と文化を絡めて日本の魅力を更に発信していこうということは,文化の分野でも全く志が同じであるということを改めて思いました。それは自分がフェスティバル/トーキョーを通じて日本の魅力を世界に伝えようとしていることとも地続きであるということで,非常に心強くも思いました。ちょっと現場サイドからの考えを述べさせていただきますと,やはりただ日本の魅力を漠然と発信していても駄目だということで,関係省庁が様々な重点的な戦略を持たれているというところだと思いますが,来年度の文化庁の予算を見ますと,国際フェスティバルへの支援が去年よりもかなり減っておりまして,それは次の項目のメディア芸術祭等に比べるとかなり低いということになります。やはり海外から日本にわざわざ来ていただくためには,先ほどおっしゃっていたように,例えば瀬戸内芸術祭のように何か特別の発信力のある,そこに行かなければ見られないというような価値づけをより強くしていく必要があると思います。そういう意味でフェスティバルのような特別な枠組みというのは有効に活用した方がいいのではないかと。
 またその際に,やはり現場で実感として思うのは,アジアの人に向けて,どれだけ英語で発信してもなかなか難しいというところがありまして,やはり私どものフェスティバルでも日々苦労しているんですけれども,どんなにお金と労力が掛かっても日本語,英語はもちろんですが,中国語,韓国語での発信をしていく必要があるだろうと。特に若い世代の人たちはもちろん英語も使えるんですけれども,より日本文化を身近に感じてもらうためには,ポップカルチャーであるとかサブカルチャーを自国語で消費できるという感覚が非常に重要だと思いますので,例えばそういう部分に対する支援ですとか,助成があると良いのではないでしょうか。
 それからもう少し舞台芸術に特化していいますと,やはりフェスティバルのような集中的な機会も当然重要ですけれども,一方で国立の劇場であるとか,公立の劇場といったところで,ここに行けば見れば今の日本の面白い舞台が見られるぞというものが年間を通じて常に行われているようなイメージを持ってもらえるようになると良いのではと思います。美術などは割と長い期間やっているのでいつ行っても良いと思っていただけるかも知れませんが,舞台芸術をそういう状態にするためには,これを是非見たいと思ってもらえるようなコンテンツが常に上演されるようなうまい仕組み作りが必要かと。こうした魅力ある舞台作品の発信を,劇場や文化施設と各省庁が連携をして行うということが実現していきますと,更に発信力が高まるのではないかと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。内田さん,関係省庁の皆様の御参加は,この議題のみですか。

【内田調整官】  原則は,この議題1のところでお願いしております。

【宮田部会長】  了解しました。ほかにも,御意見はあろうかと思います。しかし,この後の議題もまだ幾つかあるので,進めたいと思います。委員が関係省庁の担当官に御質問等があるときに,連絡を取れるような仕組みがあると有り難いのですが,いかがでしょうか。

【内田調整官】  はい。検討させていただきたいと思います。

【宮田部会長】  分かりました。まだあると思いますが,議事進行上,ここで切らざるを得ませんので,次にさせていただきたいと思います。
 今,最後に言いました内田さんの検討事項はひとつよろしくお願い申し上げます。ということで,先生方よろしゅうございますか。
 では次に行きます。次の議題に入りますが,劇場法に基づく指針に関してでございます。文化庁で策定を進めております。その進捗状況について,御報告をいただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【舟橋課長】  お手元の資料5でございます。劇場、音楽堂等の事業の活性化に関する取組に関する指針(案)の概要でございます。この劇場,音楽堂の活性化の指針につきましては,資料5の最初の囲みにございますように,昨年6月に法律が成立をいたしました。その法律の中で,劇場,音楽堂の事業を進める際の方向性,あるいは取り組むべき事項を明らかにする指針を文部科学大臣において定めるという規定がございまして,昨年その準備を文化庁でしてまいったところでございます。昨年の8月のこの政策部会におきましても御報告をさせていただいておりますけれども,昨年8月に関係の劇場,音楽堂や地方公共団体などからのヒアリングなども行いまして,文化庁において案を作成して,昨年11月にパブリックコメントにかけたところでございます。お手元の資料は昨年パブリックコメントにかけた際の指針(案)の概要と本体をお配りさせていただいております。
 概要のところを御覧いただきますと,まず劇場,音楽堂の設置者又は運営者が取り組むべき事項ということで,10項目掲げてございます。1といたしましては,運営方針を明確化するということで,各劇場,音楽堂において運営方針を明確化した上で,その運営方針に基づいて適切に事業を行っていただくということ。また質の高い事業の実施に努めていただくということ。そのほか,専門的人材の養成ですとか,普及啓発に努めるということ。また,関係機関ということで,ほかの劇場,音楽堂ですとか,実演芸術団体あるいは大学などの教育機関との連携を積極的に進めていただくというようなことについて,その方向性を示しているものでございます。
 また,2ポツでございますけれども,国,地方公共団体が果たすべき役割でございますとか,それから実演芸術団体あるいは教育機関が積極的に劇場,音楽堂の事業に協力をしていただきたいということについても定めているところでございます。
 本体は1枚おめくりいただきますと,指針の案が付いておりますけれども,基本的にこの指針を策定する際の基本的な考え方といたしましては,これは何らかの規制を行うということではなくて,劇場,音楽堂の設置者又は運営者が取り組む方向性を示すと。そのための指針であるということでございます。それから全国に約2,000以上と言われております劇場,音楽堂。非常に多様なものがございますので,そういったすべての劇場,音楽堂に対しまして,一律に目指していただきたい方向性を共通的な方向性として示す部分と,それから各劇場,音楽堂の特性に応じて,それぞれの実態に応じて取組をしていただく部分と,それを指針において書き分けをしているというのが1つ特色になってございます。
 例えば具体的な例で御覧いただきますと,この指針の本体の2ページ,3ページをちょっとお開きいただければと思いますが,2ページの一番下のところに3ということで専門的人材の養成・確保についての記述がございます。ここの(1)ということで,専門的人材を養成すべきであるという,養成について述べている部分がございますけれども,ここの2ページから3ページにかけましての最初のパラグラフにつきましては,これは全ての劇場,音楽堂が共通に目指していただく方向性ということで書かせていただいておりまして,その設置者,運営者はその運営を適切に行うために,それぞれの劇場,音楽堂の目的や運営方針を踏まえながら,必要な専門的な人材。専門的な人材としては,ここでは4種類ほど求められる能力を例示しておりますけれども,こういった専門的な人材の養成を行うように努めるものとすると。また,そのためにほかの劇場,音楽堂,あるいは実演芸術団体や大学などと連携を協力しながら必要な研修とか人材交流を行うように努めるものとするということで,全ての劇場,音楽堂に共通して目指していただきたい方向性についてはこのように努めるものとするという書き方で書いておるところでございます。
 その下に劇場,音楽堂の実態に応じて取り組んでいただきたいことにつきましては,丸1,丸2というような形で留意事項という形で書かせていただいておりまして,例えばこの丸の1をごらんいただきますと,既に必要な専門的人材が配置されている施設にありましては,例えば指導者の派遣とか,研究会の開催をするということで,自らの専門的な知見を広くほかの劇場,音楽堂,あるいは実演芸術団体に提供していただきたいということを書いております。また丸の2ではそれ以外の劇場,音楽堂ということで,まだ十分な人材が配置されていない劇場,音楽堂につきましては,丸1で必要な人材が配置されている劇場等との継続的な連携・協力関係を構築して,助言が得られるような体制を確保してほしいということで,劇場,音楽堂の多様性を踏まえながらそれぞれに目指していただきたい事柄について,留意事項ということで書かせていただいているということになっております。全体的にこういった構成で書かせていただいているところでございます。
 昨年の11月末から12月にかけまして,1か月間パブリックコメントを行いまして,この資料5の一番後のページを御覧いただければと思いますけれども,9ページになります。ここの右肩にございますように,全部で175通,236件という大変たくさんの御意見を頂きました。その主な意見をここに掲げさせていただいておりますが,総論的には設置者。劇場,音楽堂を設置する,公立であれば地方自治体ということになりますが,その設置者の意識改革あるいは財政措置が不可欠であるということで,法律や指針についてこれをしっかりと実行していただくように文化庁から働きかけを行うべきであるといった御意見を頂いております。
 また質の高い事業の実施という観点からは,劇場,音楽堂が多様であるということで,自主制作公演だけではなくて,例えばほかの事業者が行う公演に施設を貸す貸し館公演なども地域の劇場にとっては重要な事業であるという場合もあるので,そういう多様性があるということを踏まえた,それを明らかにするような指針とすべきであるという御意見を頂きました。あるいは障害者への補助手段つきの公演ということで,例えば字幕を付けるとか,そういったことが考えられるかと思いますが,そういった補助手段つきの公演の実施について記述をすべきであるという御意見を頂きました。
 人材の確保につきましては,ほかの劇場,音楽堂との連携が重要であるという御意見を頂いております。
 また普及啓発につきましては,地方においての鑑賞機会を設けるということですとか,幼いころからの地域や学校教育で実演芸術に触れる機会を充実すべきであるといった御意見を頂いております。
 また安全管理につきましては,この指針案では各劇場,音楽堂でそれぞれ必要な規定を設けるとしておりますけれども,ばらばらに定めるのではなくて,全国的な基準等に沿って定めるべきであるということで,いろいろな団体が自主的につくられておるガイドラインみたいなものがあるわけですけれども,そういったものも参考にすべきでないかという御意見を頂きました。
 それから最後に指定管理制度につきまして,これは非常に数的にはたくさんの御意見を頂きまして,やはり劇場,音楽堂の特性を踏まえて,事業の継続性などに配慮しながら,施設本来のそういう創造性が求められるという施設本来の特性とか目的を妨げないような事業の適正な運営をすべきであって,指針についてもそういうことをきちんと書き込むべきであるという御意見を頂いたところでございます。
 こういったたくさんの御意見を頂きましたけれども,これらにつきまして,これを踏まえて先ほど御説明いたしました,昨年末に出した指針の案を見直しをすべき部分もあると思いますし,あるいはこの法律とか指針を文化庁から周知するときに,趣旨として徹底をするという部分もあろうかと思います。また事業を実施する中でそれを留意していくという部分もあろうかと思いますので,現在,文化庁においてこの御意見をよく精査をいたしまして,必要な指針案の見直しを行っているところでございます。今後,文化庁において案の見直しを行いました後,法律は超党派で案を作成していただいたこともございますので,関係の議員の先生方の御確認等も頂いた上で,年度内には官報に告示をしたいと思っております。併せて関係機関等への通知などで周知を図りまして,この指針に沿って,各全国の劇場,音楽堂の運営がなされるように,周知の徹底を図ってまいりたいと考えております。御説明は以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。劇場,音楽堂に関しての御説明を頂きました。指針で1ページ目にある10項目等々,それから最後は関係者の意見なども含めていただいた冊子がございます。
 資料5につきまして,先生方いかがでしょうか。何かございましたら,御提言でも結構でございます。はい,佐藤先生,どうぞ。

【佐藤委員】  今回の法律によって,地方公共団体が設置する劇場,音楽堂施設については,非常に大きな変化が起こるだろうと思います。既にその兆しはあると思います。それに沿って,また今回指針にまとめたこれが適正に運用されることを望むんですが,1つまだ根本的な問題が残っておりまして,それはハード設置上は地方公共団体が設置した劇場,音楽堂というのは存在しないんですね。これは地方自治法にある公の施設というカテゴリーに入って,主に地域の方々が利用する,つまりここで言われている貸し館に利用する施設という規定しかないので,ハード設置の場合はこれに基づいてやっているわけです。そうすると,今回の法律で劇場,音楽堂としたときに,3点ほど問題点がありまして,1つは事業使用を目的として施設を占有する根拠が少なくとも地方公共団体の中には新たに条例等を設置しないとないのですね。つまり事業をやると,一般の方が借りられない日ができるわけですね。事業を積極的にやれば,せっかく大きな施設を造ったのに私たちが使えないじゃないかと。これをどうやって整合していくかという問題です。
 それからもう1つは貸し館利用の場合の専門性と,劇場,音楽堂を創造的な場所としてやる場合の専門家の配置が全然違うということですね。例えば技術スタッフにしても,一般の方たちに安全に借りていただいて施設の性能を発揮するという役割と,それから創造的な活動で技術的なことをやっていくのと,全くこれは違うことなので,この問題が1つ。
 それからもう1つは事業費の問題です。事業費をどう出動するのかという問題。今までも公の施設は自主事業と銘打って,自主事業をかなりやっていらっしゃいますけれども,今度の法律に基づいたことをやろうとすると,かなり事業費を出動しないと実際には実行できないわけです。今まで私が関わったところを含めて,活発な劇場と思われている地方公共団体が設置したホールというのは,実はその辺で非常に個別な工夫を重ねているわけです。その辺りについて,今後やはり少し明快な指針を出していただいて,もう少し具体的な劇場,音楽堂などを根拠づける条例についての試案であるとか,またその方向へ持っていくべきだという指針であるとかということは併せてやられる必要があると思います。
 付言しますが,現行でも様々な形で活発な活動をやっている地方の公共施設さんはたくさんあります。地域と結びついていろいろな工夫で少ない予算で,しかも少ないスタッフでやられているところもたくさんありますので,そういうところは併せて伸ばしていくようなこともまた必要だと思うんですね。ここに書かれているのは非常に,ある意味では突出した劇場のことが書かれているわけですが,現行,地道な活動をやっているところを,特に地域の活性化ということと絡めて拾い上げていく工夫も今後必要になってくるかと思います。以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。大変貴重な御意見を頂きました。この前,今,大木さんにその話を伺おうと考えていたところです。この間,オリンピックセンターで大変明快な御説明をなさっているのを私,お聞きしましたので,是非お話しください。

【大木部長】  先だって公文協の研修会がございまして,予定の時間を大分超えて御迷惑をかけてしましましたが,その辺の基本的な考え方を明確にお話をしてまいりました。
 是非御丁寧に点検を先生方におかれてもいただきたいと思いますが,これは突出した施設について書いていると思われるのが非常に私ども不本意でございましたので,かなり丁寧に,いわゆるおっしゃるように地道に社会包摂的な活動を行っておる人口5万人,あるいは数千人の町村の施設でも読めるように書いてございます。
 それから前段3つ挙げられまして言われたことに関しましては,指定管理の制度をどう考えるのか。自治体が経費を負担して,自治体が所有する施設として整備したものをどう住民との兼ね合いで使わせるのか,使ってもらうのかという,私はこの前の期の文化政策部会でも一度,先生方からそういうお話があるものですから聞いたんですけれども,私は今,気持ちとしてはやはり運用の問題であろうと。制度がいけないので,制度で禁止されているという問題ではなくて,やはり運用の問題に負うところが多いだろうと。それで,更にその上に網をかけるような形で,劇場法の体系制度をつくったときに,やはりいろいろな取組をなさっているところが,これがあるから事業ができなくなってしまった,こういう規制を指針とか法律でかけられると,事業ができなくなってしまったと言われるのは,これはまた大変な問題でございますので,したがいまして国会の先生方もお考えになった上で,奨励的な制度にするんだと。向上基準を設けながらやるんだという作りになってございます。
 ですから,そういったことを考えましたときに,私どもの役割といたしましては,やはりうまくなさっておられる公立の劇場,音楽堂。これは東京の場合が標準だと思うと行政の運用を誤ると思いますので,そうではなくて日本全国にたくさん2,000からある公立施設のどこがやはり平均的なところで,どのあたりをターゲットに首長さん,あるいはその周辺のスタッフがきちっとその劇場,音楽堂等のありようを理解した上でやろうとなさっているところ。やる気になってくださっているところに私どもがどういうお手伝いができるのかが,一番の眼目だろうと思っております。
 2,000を全部一律に持っていこうというのはちょっと行政的な手法としては無理が多いかなと,私は個人的には思っておりますけれども,やはりお気持ちがあって,今はできないんだけれども,何とかしたいというところにもっと良い方向に行くように国の経費の配分も含めていろいろ意味でもって持っていけるかどうかというのが1つのポイントだろうと思っております。そういうお話をこの間の公文協の研修会でもって明確にいたしてまいりました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。その後に何人かの方からお話をお聞きしたときに,非常に明快で良く分かったと。それなりに発信をしていこうというようなお話を頂戴しました。ありがとうございました。
 あとほかにございますでしょうか。はい。平田さんお願いします。

【平田委員】  沖縄県の平田でございます。もともと私もホールの館長を32歳のころからやらせてもらって,今,2年間県の行政の中にいるわけですけれども,非常に今の議論を含めて感じるのは,国とか県が定めたいろいろな条例だったり法令を,なかなか市町村レベルでいくと人の問題であるとか,いろいろ難しいということで,行き渡らないということがあるというのは常に感じておりました。逆に行政の中に入って感じたのは,やはりそれを伝えていく作業は非常に重要にしていかなければいけないというので,文化政策サーキットみたいな形で組んで,次年度からそれを更に市町村にあるホールを持っているところと,どう連携をしていくかを課題にしてやっていこうと感じておりまます。
 先ほど,劇場法に関しましても,まさに公文協の皆さんが抱えていらっしゃるような悩みはどちらかといいますと,私が館長時代ですけれども,公文協に集まってくる担当って大体課長さんが館長をやっているところとか,そうすると,当時平成のちょうど20年の前ですけれども,指定管理が言われているころには結構もう大反対だったんですね。指定管理も。私は指定管理は逆にやるべきだっていう案でしたし,それから自主財源を生み出すようなホールにならなければなかなかこれからのホールは難しいんじゃないかという提言もしているものですから,その両方の立場,両方の思いが分かるだけに,つなぐ。そういうジョイント役がいないとやはり地域の公共団体の施設の皆さんというのは非常に不安がっていると。ですから県は県で音頭をとりながら市町村をまとめていくような旗振り役をやりながら,これからそういうふうにどんどん市町村におりていって,市町村のいわゆるコンサル的な立場,役割を担っていく。もし行政が難しければ,行政と連携をとってやっている,例えば公益財団法人の財団であるとか,そういういわゆる文化の司令塔みたいなところと行政が組んで,そしてそれを必ず沖縄県なら沖縄県でしっかりと伝えていく作業ということをやっていくべきだと感じていましたので,やはり1つのテーマ,課題は今ここにある劇場法をどれだけ市町村レベルまでおりていって,それを分かりやすく伝えてあげて,その課題をクリアするために県ができること,市町村ができること,国にやってもらいたいことを整理してやっていくことが大事かなと思っております。
 つけ加えて,僕の渡した沖縄県用の資料が1枚ありますが,それを見ていただくと,A3のこの大きな資料ですけれども,次年度から新たに事業でアーツマネジャー育成事業というのを組んでいこうと思っています。これは劇場法にうたわれているように,文化の専門人材というものを県としてまずしっかり取り組んでいくと。市町村でこれは今,なかなか難しいんですね。ですから,県でそれを取り組んで,県で養成した文化専門人材を各劇場にしっかりと配置していけるような。年間1,000万の人件費を充てて,専門家を1人入れるだけで億単位の仕事ができますよということをしっかりと分かるような形でできればやっていきたいと思っていまして,このアーツマネジャー育成事業というのは劇場法とある意味では連携させながらやっていこうと思っている事業でございます。
 いずれにしましても劇場法にうたわれていることをきっちりとやっていけば,本当にうまくもっと発展的にいくんじゃないかと思っていますので,それを今度どうやって市町村につなげていくかというジョイント役を県としてやっていきたいと思っています。

【宮田部会長】  どうもありがとうございました。最後にお話しいただこうかと思ったんですが,流れとしては非常にきれいな流れになっております。よろしくお願いします。ありがとうございました。
 何事もスタートするときというのは,非常に不消化なままスタートしなければならないことはございますが,今,平田委員からお話があったように,それぞれの中からでもこの劇場法を大いに生かした生かし方としていただけたら思っております。ありがとうございました。まだあるかもしれませんが,次に進めさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 議題3でございますが,第4回,前々回の部会において,近藤長官からイギリスの文化活動の中で見られるファシリテーターというのがございます。これについて,芸術家がワークショップを行った際に,参加者をファシリテートする活動ですが,こういった活動を通じて子供たちの成長に芸術がどう役立つのかを考えているわけでございます。先日,山村委員と事務局とで,イギリスのマイケル・スペンサー氏からヒアリングをしたということです。山村委員,そのヒアリング結果についての御紹介をよろしくお願い申し上げます。よろしくどうぞ。

【山村委員】  今,宮田座長からも紹介いただきましたけれども,第4回の部会において近藤長官よりファシリテーターという存在,ワークショップをオーガナイズをする人。若干オーガナイザーとはまた違った存在で,なかなかまだファシリテーターという概念や存在自体が知られていないかと思いますので,その第一人者でありますマイケル・スペンサー氏がちょうど来日されておりましたので,事務局とともに2時間ほどのヒアリングを上野学園大学でしてまいりました。資料6に沿ってまずスペンサー氏の活動の簡単な紹介と,ファシリテーターとは何だろうということをお話ししていきたいと思います。今回,本当に簡単な2時間程度のヒアリングでしたし,紹介程度になるかと思いますけれども,説明させていただきます。
 スペンサー氏と日本との関わりですと,彼はロンドン交響楽団に在籍されておりまして,バイオリニストとして一流のプレーヤーでもあるんですけれども,楽団員の教育活動に従事されております。1998年の札幌市のパシフィック・ミュージック・フェスティバルという音楽イベントをきっかけにロンドン交響楽団が招待されたときに,その来日をきっかけとして日本でのワークショップ活動,ファシリテーターとしての活動を続けられております。2001年には日本オーケストラ連盟からの招へいによって,やはりロンドン交響楽団の教育活動の紹介,その後毎年連盟からの招へいを受けて,現在も活動を続けられておりまして,2009年からは上野学園大学音楽文化研究センターも同氏を招へいされまして,現在は上野学園大学を拠点として日本での活動をされて,年に数回来日されているようです。
 幾つか僕も資料とともにヒアリングの中でスペンサー氏のワークショップの模様を拝見したんですが,僕も芸術を教える身として非常に刺激的なワークショップを発案・企画されておりまして,例えばワークショップの例で,新聞を使ったという紹介がここにありますけれども,これはさいころを振って,例えばさいころが6の目が出ると,新聞の6行目を見て,その言葉から誘発された音を子供たちに発想されて音を鳴らして,それを組み合わせて音楽を作っていくと。そういうワークショップを通じると。これは実はジョン・ケージのミュージックサーカスという偶然性の音楽を利用した,非常に現代音楽の難しい概念を子供たちが実践することで体感して分かっていくというような。つまりワークショップってそういう体を実際子供たちが自発的に何かを創作していくことでいろいろな芸術の理解を深めていくという,それをある種子供たちに自発性を促すようないろいろなワークショップのアイデアということを実践されております。
 ほかの例ですと,ロンドンの日本フェスティバルで歌舞伎を紹介するときに,ロンドンの子供たちになじみのあるシェークスピアの劇を歌舞伎風に演じさせたりとか,いろいろな芸術分野を横断しながらのワークショップ活動をされております。
 ほかにも南アフリカで子供たちの関心のある教育問題や家庭内暴力などについてのシナリオを子供たちに書かせて,それを最終的に音楽劇,オペラのような形作り上げるワークショップなどをされております。
 本当に音楽理論とかをいわゆる教えるのではなくて,実践をすることで子供たちがよりよく理解していくという活動。それをある種促進していくのがファシリテーターという存在だそうです。日本でもワークショップをオーガナイズしたり,ファシリテーターとして活動されている方がいるかと思いますが,実数ははっきり分からないですけれども,マイケルさんが日本でのファシリテーターの養成講座を昨年されたときは282名の参加者があったということで,その中で言われた意見では参加者の多くからファシリテーターの養成の必要性を指摘されていたということです。
 そもそもファシリテーターの語源はフランス語のfacile(容易である)というところから来ているそうで,英語で言うと促進するとか促すというような意味合いと思いますが,実際ある種,受講者,生徒たちと距離をとりながら,彼らに自発的に何かを促していくというのがファシリテーターの存在でして,オーガナイザー,それを組織立てるという部分の役割もありますがオーガナイザーとは若干やっぱり違うのかなというところです。英国におきましては,もうファシリテーターの養成が大学院の修士レベルにおいてコースが設けられているという現状もあるそうです。英国におけますファシリテーターの正確な数の統計がないので不明なんですが,楽団の音楽等そういった音楽活動が特にファシリテーターという存在が広く浸透していて,極めて数が多いと。スペンサー氏の言葉によりますと,良いファシリテーターもいるし,それほどでもないファシリテーターもいると。それはやはりもともとファシリテーター自身がある程度芸術的な素養とか理解が深くないと,それを実践していくのは難しいのかなというのはお話を聞きながら感じました。
 あと英国ではアーツカウンシルから芸術活動の助成金を得るときに,今いろいろ厳しくなってきて社会貢献活動を担わなければいけないという義務が課されているそうで,そういった助成事業の一部でもファシリテーターが関わって,芸術文化の力によって教育活動を行うことが一般的だそうです。
 ファシリテーターの活動成果についてちょっと最後にまとめてお話しします。スペンサー氏が言うところによりますと,教育学者が構築してきた知見に基づきながら,まず1つ目は参加者の選択を催すこと。choice。2番目,好奇心,curiousを持たせること。3番目に人や対象とのかかわり,関係性,relationshipを催すことだそうです。また更に実践をし,評価し,それにより反省し,失敗等を改善する方法の仮説を立て,再考し,再実践を行うというあるサイクルで科学的に実践しているということでした。
 実際,こういった芸術のワークショップを行うことによって,ふだん授業では余り発言をしないような子供たちも人前で考えを表現できるようになったりとか,日本の芸術教育の問題点として主に鑑賞能力とか演奏技術。そういった鑑賞や技能ばかり優先されますけれども,そういう自発的な創造という部分ではこういったファシリテーターの存在は非常に重要ではないかなと感じていますので,芸術がある種の教育改革に担う力というのがファシリテーターという存在の可能性が秘めているかと感じました。先ほどの劇場法なんかにおいてもファシリテーターの存在というのは非常に有効なものにはなってくるのではないかと思います。
 その他は資料を御覧いただければと思います。すみません。ちょっと長くなりました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。非常にいい切り口ができるんじゃないかという期待感が大変持てます。山村先生,ありがとうございました。
 さて,最後の議題となりますが,国立近現代建築資料館について御紹介をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【山﨑課長】  資料7でございます。このたび,文化庁では国立近現代建築資料館を設置いたしました。その報告でございます。
 背景といたしまして,我が国における著名な近現代建築科による図面,あるいは建築模型等については既に海外に流出している事例もございまして,今後更に海外からの譲渡要請等により流出や散逸の危機に瀕するものが出てくる可能性もあるところでございます。こうした状況を踏まえまして,文化庁では我が国の貴重な建築関係資料の劣化や散逸,あるいは海外流出を防ぐために,著名な近現代建築科の図面や模型等の建築関係資料につきまして,その所在状況の調査,関係機関との連携,そして緊急に保護が必要な資料の収集・保存,そして展示等を行う施設として国立近現代建築資料館を設置し,建築資料のいわゆるアーカイブを行っていくことといたしました。
 この国立近現代建築資料館の場所でございますが,東京の湯島に国の重要文化財に指定されております旧岩崎邸,旧岩崎家住宅でございますが,それに隣接しまして,湯島地方合同庁舎というのがございまして,その一部を改修いたしまして資料館の収蔵庫や展示室等を整備して資料館としたところでございます。資料館の運営は文化庁が直轄で行うこととし,館長は文化庁の政策課長をもって充てることとしております。対外的な館の顔となります名誉館長には,建築家の安藤忠雄先生に御就任いただいておるところでございます。
 資料の収集方針といたしまして,資料7の下のところにも書いてございますが,我が国の近現代建築に関し,国内外で高い評価を得ている,又は顕著に時代を画した建築・建築家に係る建築関係資料のうち,芸術的・技術的に高い価値の構成によるもの及びそれに直接付随するもので,散逸等のおそれが高く,国において緊急に保全する必要のあるものを収集することとしております。
 具体的には明治初期からデジタル化の進む1990年代ころまでに作成された近現代建築に係る図面や模型等で,日本で言えば文化勲章あるいは文化功労者,海外ではイギリス王立英国建築家協会などで高い評価を得ているような資料,あるいは顕著に時代を画した建築や建築家に係るものを対象とすることと考えております。
 こうした資料の収集方針や業務運営につきましては,この文化政策部会の委員でもあります青柳委員など有識者で構成される運営委員会を設置して,その委員会の御意見を聞きながら業務を行っているところでございます。現在まだ収集した資料はございませんので,一般公開は行っておりませんが,この春には開館記念特別展示を行うこととしておりまして,現在本年の5月上旬からの開催に向けて準備を進めているところでございます。以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。期待をしたいと思います。最後でございますが,ちょっと湯浅委員がペーパーを出していただいているので,御説明いただけますか。

【湯浅委員】  すみません。時間がないところでお時間を頂きます。恐らく今日の議題全てに関わってくるかと思いますけれども,劇場法ですとか先ほどのマイケル・スペンサーの例とも関係がありますが,1つは今年1月末から日本のオーケストラとホールの方を英国にお連れする視察をしまして,英国のBBC交響楽団,ロンドン交響楽団,その他音楽団体との連携で,特に劇場,オーケストラの地域との連携,教育プログラムについての1週間いろいろな実践を見ながら意見を交換するという交流事業をしてきました。非常に今回実践団体とホールが一緒に行く,そして地域をまたがった人たちが一緒に行くという,かなり良いネットワークができていまして,そこの中で1つ御紹介をしたいのが,今ちょうどイギリスの音楽教育の枠組みが大きく変わっていまして,英国の教育省と文化・メディア・スポーツ省が共同でミュージックハブという枠組みを導入していまして,昨年から英国全土の子供たちへの音楽教育の在り方を地域,学校,音楽団体,大学機関が連携して行うという大きな枠組みを教育省のお金がかなり入って今進んでいます。そういった実践も皆さん見てこられていまして,恐らく劇場法の中でも劇場と地域との連携とか,実演団体との連携とかがありますので,このミュージックハブというアーツカウンシルが実際に行っているものについても,皆さん,教育システムが違うので日本のオーケストラの方が学校鑑賞会などをやられるときのいろいろな課題を感じている中で,いろいろ思っていらっしゃることがあったようでした。
 3月5日に,行かれた方,今すごく熱い熱を持って書いていらっしゃっていまして,早速ネットワークが必要じゃないかといろいろな声が出ていますので,その生の声を聞ける報告会と,ちょうどロンドン交響楽団が来日をしまして,そこですごく先進的なワークショップをしている方々に日本のオーケストラの団員向けのトレーニングですとか,学校でのワークショップをやる予定がありますので,是非御興味がある方,そして劇場法の関係でもとても参考になると思いますので,お越しいただければと思います。
 もう1つアーツカウンシルの議論がとても大きいと思いますが,アーツカウンシル・イングランドから戦略部門の代表を呼んできておりまして,3月2日に東京都と国際交流基金と一緒にフォーラムをやるんですが,その一般公開フォーラムの前日の3月1日に特に非公開で政策策定に関わっている方を対象にして,例えば助成の評価とか,助成の審査の仕組みとか,今,日本でとても議論になっていることについての勉強会を開催したいと思っています。これは全くの非公開にいたしますので,是非ここの委員の方々ですとか,アーツカウンシルの関わることに御関心のある方に御参加を頂きたいと思いますので,ちょっとお時間を頂いて御説明をさせていただきました。

【宮田部会長】  長官,一言お願いします。

【近藤長官】  第10期文化政策部会,最後の会合ということで,一言御挨拶を申し上げます。この1年間,委員の皆様方におかれましては,大変貴重な御意見を賜りまして,ありがとうございました。
 おかげさまで大変良い成果が,目に見える成果と,まだ目には見えないけれども水面下で動く,前進している成果と両方あると思いますが,そうした成果を頂けたのではないかと考えます。目に見える成果はもちろん一昨年の第3次基本方針に基づいて,いろいろなものの形ができたと思います。美術品補償法,劇場法,そしてアーツカウンシルの試行の開始,PD,POが何人か任命されました。それから寄附税制についても完ぺきとは言えませんが大きな前進をしたと思います。この部会から直接提言したわけではありませんが,古典の日の法制化というのもこの部会の基本的な理念に合っているものだと思います。そしてこの震災から学ぶ文化の力についての御提言も頂きました。本当に短期間で公私ともにお忙しい中,委員の方々の御貢献のおかげでこれだけ目に見える成果があったこと,本当にうれしく,かつ誇らしく思っております。
 それから目に見えない成果としましても,今,予算の形でも反映させていただいておりますけれども,公的助成の在り方を根本的に見直すというアーツカウンシルの議論のこれからの進展ということもしっかりと見ていかなければいけないと思いますし,それから文化芸術を振興する上で,それを提供する側のレベルを維持しながら継承していくということと,鑑賞者の開拓と言うんでしょうか,鑑賞能力を高め,関心を高めていく,その需要側も増やしていかなければ。これは芸能であれ,伝統工芸であれそうだと思いますが,一般の経済的に言えば消費者と言うんでしょうか,鑑賞者の層を厚くし,レベルを上げることも必要だろうと思います。またそれをつなぐ場としての劇場とか美術館等,これは劇場法ができましたので,1つのきっかけがあると思いますが,この3つをどういうふうにそれぞれのレベルを上げると同時に,そのリンクを深めていくかが大事だと思います。そういう意味では先ほどの平田さんのアーツマネジャー養成というのは大変大事だと思いますし,ファシリテーターとか,アートマネジャーはこれから日本がある意味で弱いところで,せっかく持っているすばらしい才能や技術や芸術性と,高い鑑賞力を潜在的に持っている国民とをつなぐものとして,このアートマネジャーとファシリテーターは非常に必要だと思います。そういったことをこれからできるだけ目に見える形で実現していく方向で文化庁も努力しますし,是非文化政策部会の先生方も引き続き御支援をお願いいたします。
 今後次の期にもまたお願いをする先生方におかれましては,是非これまで以上に御支援のほどお願いしたいと思いますし,また今期限りの先生方もいろいろな別の立場で,この文化審議会政策部会,文化庁のフレンズとして引き続きアドバイスを頂きたいと思います。
 改めまして,本当にこの1年間ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。それでは内田さん,事務的なことを少し。

【内田調整官】  今後の流れについて御説明させていただきたいと思います。本日この部会の終了後,15:15から文化審議会の総会がこの同じ部屋でございます。そこで各部会,分科会からのこの1年間の報告がございます。文化政策部会からは宮田部会長から総会でこの部会の1年間の審議状況について御報告を頂く予定でございます。
 本当に今期,お世話になりました。どうもありがとうございました。

【宮田部会長】  本当に先生方,ありがとうございました。今期の部会の成果について,総会において,報告はきちっとさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

── 了 ──

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