文化審議会第11期文化政策部会(第1回)議事録

平成25年5月27日

【内田企画調整官】  皆様,こんにちは。まだいらっしゃっていない委員がおられますけれども,定刻でございますので開会させていただきたいと思います。
 それでは,開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料でございますけれども,まず左側の束のクリップを外していただきまして,資料1が委員の名簿でございます。資料2が文化審議会についての資料でございます。資料3が,この部会の主な審議事項の資料です。資料4と5が紺野委員の御発表資料でございます。資料6が文化芸術立国実現のための懇話会関係資料でございます。資料7が第3次基本方針の概要でございます。資料8が平成25年度関係予算の概要でございます。資料9が劇場,音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針関係資料でございます。
 このほか,机上には文化審議会関係法令等に関する資料,そのほか第3次基本方針,平成23年1月の文化審議会答申,関係のデータ集,最近の情勢と今後の文化政策ということで,24年9月にこの部会から御提言いただいた資料。そのほか,東日本大震災2周年に当たっての長官メッセージの資料がございます。
 このほか,机上には赤坂委員から本日発表いただきます,御発表に関連するメモが1枚ございます。また,横浜市長の林委員からは,横浜音祭りの資料,文化芸術創造都市施策のパンフレットの合計2種類の資料を置かせていただいております。
 過不足ございましたら,事務局へお知らせいただければと思います。資料の方,よろしゅうございますでしょうか。
 そうしましたら,ただいまから文化審議会第11期文化政策部会第1回を開催したいと思います。
 本日は,御多忙のところ多数御出席いただきまして,誠にありがとうございます。私は文化庁政策課企画調整官の内田と申します。本日は1回目の部会でございますので,後ほど部会長を選出いただく必要がございますけれども,それまでの間,私の方で議事を進めさせていただきたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。
 まず初めに,委員の皆様を資料1の名簿に沿って御紹介させていただきたいと思います。最初に,赤坂憲雄委員でございます。

【赤坂委員】  よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  次の青柳正規委員は欠席でございます。
 次に,太下義之委員でございます。

【太下委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  片山泰輔委員でございます。

【片山委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  次の加藤種男委員は欠席でございます。
 河島伸子委員でございます。

【河島委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  次の熊倉純子委員は欠席でございます。
 紺野美沙子委員でございます。

【紺野委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  佐々木雅幸委員でございます。

【佐々木委員】  佐々木でございます。よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  次の佐藤信委員は欠席でございます。
 鈴木規夫委員でございます。

【鈴木委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  相馬千秋委員でございます。

【相馬委員】  よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  仲道郁代委員でございます。

【仲道委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  野村萬斎委員でございます。

【野村委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  林文子委員でございます。

【林委員】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  平田大一委員でございます。

【平田委員】  よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  宮田亮平委員でございます。

【宮田委員】  宮田でございます。よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  三好勝則委員でございます。

【三好委員】  三好です。よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  山村浩二委員でございます。

【山村委員】  よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  次の湯浅真奈美委員は本日欠席でございます。
 以上でございます。
 続きまして,文化庁関係者を御紹介させていただきます。近藤文化庁長官でございます。

【近藤長官】  近藤でございます。

【内田企画調整官】  河村文化庁次長でございます。

【河村次長】  どうぞよろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  作花長官官房審議官でございます。

【作花長官官房審議官】  作花でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  川端文化部長でございます。

【川端文化部長】  川端でございます。よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  大和文化財鑑査官でございます。

【大和文化財鑑査官】  大和でございます。よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  清水政策課長でございます。

【清水政策課長】  清水でございます。よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  田口著作権課長でございます。

【田口著作権課長】  田口です。よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  佐藤国際課長でございます。

【佐藤国際課長】  佐藤です。よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  舟橋芸術文化課長でございます。

【舟橋芸術文化課長】  舟橋でございます。よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  岩佐国語課長でございます。

【岩佐国語課長】  よろしくお願いします。

【内田企画調整官】  村田参事官でございます。

【村田参事官】  よろしくお願いいたします。

【内田企画調整官】  以上でございます。
 それでは,議事に入りまして,第11期文化政策部会の部会長及び部会長代理を御選出いただきたいと思います。

(傍聴者退出)

※ 部会長に宮田委員,部会長代理に青柳委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

【内田企画調整官】  そうしましたら,手続的な中身も多いのですけれども,極力簡単に御説明申し上げたいと思います。既に,事前にお送りできる資料に関しましては,各委員に情報提供させていただいておりますけれども,改めて説明させていただきたいと思います。
 資料中の資料2でございます。文化審議会の構成図がございまして,この文化政策部会でございますけれども,文化審議会の下に置かれる幾つかの部会,分科会のうちの1つという位置づけになっております。その任務といたしましては,文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項を審議することとなっております。今期の審議事項の詳細に関しましては,後ほどの議題で詳しく取り上げたいと思います。
 また,参考資料といたしまして,文化審議会関係法令等に関する資料を置かせていただき,先ほど紹介させていただきましたけれども,その1ページ目に文化審議会の設置根拠であります文科省設置法第30条というのがございまして,文化審議会は,大臣又は長官の諮問に応じまして,文化の振興,国際文化交流の振興,そういった重要事項の調査審議を行うこと等々が規定されております。
 この部会に関しましては,同じ資料の2ページ目に文化審議会令という政令がございまして,4ページ目の第6条第1項として,この部会の根拠規定がございます。
 同じ資料の6ページ目には運営規則がございまして,文化審議会の運営上のルールが規定されております。例えば8ページ目の第5条におきましては会議を公開する旨の規定がございます。詳細に関しましては,また後ほど御覧いただければと思います。
 以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。よろしゅうございますね。
 それでは,ここで,近藤文化庁長官においでいただいておりますので一言御挨拶をお願い申し上げます。

【近藤長官】  改めまして,文化庁長官の近藤誠一でございます。
 このたびは第11期となります文化政策部会の委員を前期に引き続き,あるいは今回初めてお引き受けいただきまして,公私ともにお忙しい中,誠にありがとうございます。今回は全部で20名の委員の先生方のうち,9名の新しい委員の方をお迎えすることができました。分野におきましても,伝統芸能の狂言から現代のアニメまで,また日本のものからピアノのような西洋から入ってきたもの,あるいは舞台芸術,そういった各分野から,そしてまた横浜市,沖縄県といった地方をベースとしていらっしゃる方々,そしてまた女性の比率も,多分ほかの部会よりもこの部会における比率は秀でていると自負しております。また,年齢の幅もかなり広くなっております。そういうことで多種多様な有識者の方々にお受けいただきまして,これからの議論に大変期待をしております。
 私も文化庁長官になってこの夏で3年になりますけれども,この間,3・11もございましたが,何とかして文化芸術が持っている本来の力が国民一人一人に染み渡り,一人一人が元気になり,自信を持ち,誇りを持ち,それが社会の活性化,国の再生につながっていくにはどうしたらいいか,どういう仕組みを導入したら良いのか。政府は何をしたら良いのか。自治体や,あるいはアーティストの方々,芸術団体,それぞれどういう役割を果たし,どう連携していったら良いのかといったことを考えながら,また,この政策部会にもいろいろ御提言をお願いしてきた次第でございます。
 今年のこの部会では,もちろん東北の復興にいかに文化芸術を生かしていくかということ,これが大事なテーマでございますが,もう一つは,宮田会長の下での第3次基本方針というものがございます。非常に良い内容が入っております。それを単なる紙にとどめずに,どうやって1つ1つ実行していくかといったことをじっくりと議論をしていただければと思います。
 それから,特に最近,私が強い関心を持っておりますのが,芸術教育といいましょうか,芸術家を育てる教育ではなくて,芸術が持っている力を使って子供たちの才能を引き出し,潜在能力を引き出し,一人一人が,たとえ算数ができなくても,生きがいのある,自信を持ってクラスに出ていけるような,そういう学校にし,社会にしていきたい,そうするにはどうしたらいいかということで,特に最近,私が知っただけで大分前から始まっているようですが,ファシリテーターという方々が芸術の力と子供たち,一般の方々を結ぶ,そういう役割の重要性が高まっております。そういったこともできるところからやっていくということで,7月中旬には文化庁主催で第1回のファシリテーターサミットのようなものを今考えております。
 先ほど宮田部会長から御紹介のありました,下村大臣の下で始まりました文化芸術立国を実現するための懇話会が始まりましたが,そこで大変盛りだくさんのメニューが入っております。非常に壮大なものから今すぐできるものまでございますので,このファシリテーターサミットというのも今すぐできるということで7月から始めます。
 それ以外に来年度の要求をする,あるいは2020年の東京オリンピックが実現すれば,それを目指して文化の祭典,文化オリンピックといったこともやっていく。そういう長期的なことも考えておりますので,是非先生方から建設的な御意見を賜りたいと思います。また,公的助成の仕組み,アーツカウンシルにつきましても,とりあえず試行的な出発をいたしましたけれども,既に沖縄県,東京都,あるいは大阪,地方でも始まっております。文化庁としても後れをとらないように,しっかりとしたアーツカウンシルの導入をしていきたいと思います。
 そういった点につきまして,文化政策の全体の仕組みを大きく見直し,より効果的な政策を自治体や芸術団体とも協力してとっていくと。そういう流れに現在来ていると思います。日本の文化の流れ,文化政策の流れの中でも大変大事な時期に来ていると思いますので,是非先生方から建設的な御知見をいただければと思います。
 ちょっと長くなりましたけれども,冒頭の御挨拶とさせていただきます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。ファシリテーターの話,それから芸術の持つ力の話,長官から大変力強いお話を頂きました。
 さて,それでは,本日の部会の使命とするところを確認をいたしました。具体的な議論に入っていきたいと思いますので,審議事項に関して事務局からお話しください。

【内田企画調整官】  今期の部会の審議事項について,御説明させていただきたいと思います。お手元に資料7という一枚物の資料がございます。「文化芸術の振興に関する基本的な方針」という閣議決定がございまして,これが5年置きにリバイスするという手続になっておりまして,これが平成23年度から5か年計画で始まっておりまして,この閣議決定をフォローアップしていくということが,最初の重要な使命となっております。
 文化芸術振興の意義といたしまして,人々が心豊かな生活を実現する上で不可欠等々の記載がございます。また,文化芸術振興に当たっての基本的な視点といたしましては,成熟社会における成長の源泉,文化芸術振興の波及力,社会を挙げての文化芸術振興と,若干抽象的ではございますけれども,そういう理念に基づきまして6つの戦略が定められております。
 まず1点目が,文化芸術活動に対する効果的な支援。2点目が,文化芸術を創造して支える人材の充実。戦略の3つ目が,先ほども話題になりましたような,子供,若者を対象とした文化芸術振興策の充実。4つ目といたしましては,文化芸術の次世代への確実な継承。5つ目といたしましては,文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用。最後の6つ目といたしましては,文化発信・国際文化交流の充実。そういった大きな6つの戦略がございまして,そういった大枠の考え方に基づきまして,資料3がございまして,そこに今期の部会,より詳細にどういうことを検討していくかというような中身について案を示させていただいております。
 先ほどの近藤長官の挨拶とも重なる部分がございますけれども,紹介させていただきます。特に2の「主な審議事項」のところでございまして,最初の1つ目といたしまして,今申し上げた6つの重点戦略に掲げられました施策につきまして,これまでの検証ですとか,今年度以降,どういうことをやっていったら良いかというようなことで,法律事項ですとか,予算関係の施策,もろもろのことを含めまして幅広く御議論いただきたいと思います。
 (2)といたしましては,文化芸術活動と教育の関係ということで,国内外で行われております,様々な文化芸術活動に関しまして,教育上の効果がどういったものかということに関しまして,様々な実践家の方々のヒアリングなどを通じて検討していただければと思います。
 また,(3)といたしまして,現在,独立行政法人の日本芸術文化振興会が日本版アーツカウンシル事業を実施しておりますけれども,この事業というのは,海外で文化の助成金を国ではなくて法人が審査して助成するような事例というのがございますけれども,そういった取組を日本国内でも試行的に研究しているものでございますけれども,その動きについても取り上げる予定でございます。
 そのほかにも,もしこの部会の中で御意見,御提案がございましたら,臨機応変に様々なことを御審議いただければと思っております。
 以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 資料7にございますように,重点ということで戦略が6つございます。同時に,今,資料3の中で文化芸術活動と教育の関係等々についての御説明がございました。さあ,これについて,先生方,いかがでしょうか。この方針で1年間,ぐっと前へ進んでいきたいという気もしております。
 資料7に関しては,今後,もうちょっと整理して,分かりやすくしても良いかなという気がしております。この間の懇談会のときも秋元康氏が,施策の箇条書というのが逆にインパクトという面でどうかという話もちょっとありました。資料の書き方,もう少し整理しても良いかなと考えます。
よろしゅうございますか。
 それでは,先へ進めさせてください。よろしゅうございますね。
 では,東日本大震災からの復興のための取組ですね。[1]でございます。今期から委員に御就任いただきました赤坂先生と紺野先生に今までの活動の御紹介を頂戴したいと思いますので,10分から15分ぐらいの間で御説明をいただけたら幸いでございますが,赤坂先生からお願いいたします。

【赤坂委員】  こんにちは。赤坂です。10分から15分ほどということですので,簡単に紹介させていただきます。
 僕自身は福島県立博物館の館長を10年ほどやっておりまして,そこで芸術とか文化に関わる,様々な取組をやってきておりました。ですから,3・11の東日本大震災が起こって以来,そうしたアーティストたちとの共同作業というのがたくさんあったんですけれども,その中で幾つか紹介させていただきたいと思います。
 1つは,福島県博が中心になって,会津で3年間続けてきました「会津・漆の芸術祭」という小さなイベントがあります。会津というのは漆の産地であるわけですけれども,実は三島町というところに3,000年くらい前の荒屋敷遺跡という小さな遺跡があって,そこで漆の道具がたくさん出てます。つまり,会津の漆というのは,3,000年くらい遡り,そして,中世から近世にかけては会津の原生林に分け入るようにして,木地師と呼ばれた人たちが漆の器を作る,そういう仕事をしていた。そして,現代にまでつながっている。つまり,漆というのは,会津にとっては大変大切な文化的アイデンティティーの核になっているものなんですね。
 その漆をテーマにして芸術祭をやろうということで始めたのが震災の前の年でした。そこで我々が何をやろうとしたのかと言いますと,地場産業としての漆を応援したい。その意味では漆の持っている魅力とか,可能性というのを掘り起こさなくてはいけない。そのとき,我々はちょっと強引なことをやりました。現代アートの人たちをどんどん呼び込む形で,漆の職人さんとか,かき子さんも含めて,職人さんとか,蒔絵師,工芸作家の方たちがどんどん出会う,共同作業ができるような場を造りました。そして,3年間,ささやかな芸術祭をやってきたんですけれども,震災が起こってから,その芸術祭の意味が改めて問われました。この未曽有の災害の中で自分たちは何ができるのか。
 その中で昨年の3年目は,とりわけ印象的なイベントになりました。それは公募もしているんですけれども,その前の年,前の前の年の3倍くらいの応募者がありました。どういうことかといいますと,アーティストたちが,今,厳しい状況に置かれている福島でものを作るとか,表現をするということに対して非常に強い関心を示されている。ここで自分たちが何ができるかということを,ある意味では試したい,アートの力って何なんだろうということも,そのフィールドで確かめてみたいと,恐らくそういう思いがあったんだと思いますけれども,非常にレベルの高い参加がございました。
 その中で,我々が提案してやった1つのプロジェクトについて,御紹介いたしますけれども,「食い初め椀プロジェクト」というのをやりました。会津では昔から1歳になる子供に小さなおわんをプレゼントする,贈物にして,そこで初めて食べるという儀礼をやるんですね。小さな,ものすごくかわいらしいんです。美しい蒔絵が施されている。ですから,それを今,厳しい福島で,お母さんと子供に対する最大限のエールを送ることができないかということで食い初め椀に注目しました。
 そして,その小さな食い初め椀,最初は1,000客ぐらい狙ったんですけれども,予算がなくて25客になりましたけれども,一気に下がりましたが,でも,すごく評判が良かったんです。食い初め椀を木地師の方に作ってもらって,それを25人ではないんですけれども,20人くらいの会津の作家さんたちに依頼して蒔絵を施してもらいました。そして,現代アートの作家さんが会場をデザインして25客を並べて,訪れたお母さんと子供が見て,これが欲しいという,そういうリクエストをもらったのを後に抽せんをして,25組のお母さんと子供に贈りました。とても喜ばれました。とても面白かったのは,食い初め椀というのは,言わば会津の伝統文化なんですね。それを現代の工芸作家たち,更に現代アートの人が関わりながら1つの作品として提示していく。それが大変評判になって,たくさんの人にメッセージが届いた,そういう体験をいたしました。
 3回目の「会津・漆の芸術祭」では,そうした試みがいろいろなところで行われて,10万人くらいの方たちに来ていただいて,文化庁の支援を頂いて,ずっと続けてまいりました。今年以降も少し形を変えながら,それを続けたいと思っております。
 あるいは,国際交流基金の支援を頂きまして,3人の北欧の女性の作家さんたちが喜多方に数か月滞在して作品を制作してという試みも「漆の芸術祭」の延長上で行いました。その中で,北欧の作家さんたちは被災地を随分歩いていました。そして,被災地で得たインスピレーション,あるいは東北という文化や歴史の風土に対して大変関心を示されて,実は北欧の文化的風土とどこかでつながっている。そのプロジェクトのテーマが「精神の<北>へ」というテーマでした。精神の我々の中の北,あるいは北欧の人たちの北というのがどこかで呼応し合うような,そういう瞬間も確かにありました。
 具体的に申し上げませんけれども,狩猟文化のようなものが北欧にも大変濃密にありますけれども,東北にもあります。その狩猟文化をテーマにした展示を見たときに,あっ,つながっているということを感じました。これは国際交流基金の支援でしたけれども,実は東北では,我々がそうした試みを始めていたとき,至るところで同じような試みが行われていました。もう皆さん,よく御存じだと思います。
 そして,それは現代アートに限らず,僕自身が民俗学者なものですから,被災地を数週間後から歩き始めましたが,5月の段階で民俗芸能が復興している姿を見て衝撃を受けました。食うや食わずの避難をされている方たちが,なぜ民俗芸能なんだろう。そのときに,僕は民俗学者ですから,すぐ考えたんですね。東北の,とりわけ夏の民俗芸能は死者の鎮魂供養ということがテーマなんですね。ですから,未曽有の災害の中で2万人の犠牲者たちを弔うという大切な仕事にとって,民俗芸能が圧倒的な力を持つということに多くの人たちがすぐに気がついて向かった。僕自身は,この2年間,東北を歩きながら,こういう場だから言うのではなく,文化とか芸術の持っている力というのは,本当に大きなものがあると感じてきました。
 現実の暮らしの中では,対立や分断が網の目のように張りめぐらされているんですけれども,でも,民俗芸能であったり,祭りであったり,芸術,アートであったり,音楽であったり,そうしたものは,そうした分断とか対立をやすやすと超えて人々をつないでくれる,もう一度結んでくれる,そういう力を持つんだということを,本当に教えてもらったような気がいたします。
 そこで,皆さんのお手元に紙が1枚わたっているかと思います。<みちのくアート回廊2013>プロジェクトについてということで,これは最初の年からずっと感じてきました。今,東日本大震災によって,東北は,日本は,そして世界はどのように変わろうとしているのか,いかなる未来が我々の先には転がっているのか,そうした問いを抱えながら,たくさんの人たちが活動を始めている。
 その中で,僕の中でアートによる巡礼といったことが次第にイメージを結んでいきました。例えば被災地を中心とした東北一円の村や町を舞台として,もう過ぎてしまってますが,例えば1年間,様々なアートイベントを展開する,そうして東北全域を大きな祭りの場として演出する,そんなことはできないだろうか。そのとき,東北の外から東北を支援したいと願っている方たちが旅の形で,観光の形で,そうしたアートイベントをたどる,巡礼をするようにたどり歩く,そういう旅をしてくれないだろうか,そんなことを漠然と考え始めていました。
 文化や芸術の力をもって東北の復興と再生のために働きたいと願う,この試みがもし動き出せば,恐らく僕の知っているだけでも,本当にたくさんのアーティストたちが無償で参加してくれるだろうと思います。そういう場になる。そして,日本に限らず世界からも,福島で,東北の被災地で,その周辺で表現活動をしたい,ものをつくりたいという人たちが,恐らくはせ参じていただけるだろうと考えてきました。
 ずっと提案をしてきたんですけれども,なかなか形になりません。余りにも膨大な大きなイベントになるということで,誰がどのように声を上げればいいのかといったことでしゅん巡があるということも確実なんですけれども,せっかくですから,こういう場を頂きましたので,こういう提案をさせていただきたいなと思っています。
 たくさんの人たちが,このイベントに参加してくれる。そして,小さなアートの場を訪ね歩くことによって,被災地が今どのように復興に向けて動き出しているのか,あるいは厳しい現実がどのように転がっているのか,そうしたことを目撃してもらう。そして,寄り添い,一緒に働いてもらう,そういう場が何とかできないだろうかと考えています。
 岡本太郎さんが大阪万博のときに日本館のプロデューサーを引き受けたわけですが,太郎さんは常に祭りということを言ってました。日本中を巻き込んだ祭りにしたいんだ。アートというのは無償である,何かを求めているわけじゃない。でも,その無償のアートこそが日本の人々の気持ちを,心をつないでいく,文化を育てていく,そういう場になるんだ。無意味さと高揚の中に,ほほえましく,また残酷に演じられなければいけない,そんな言葉を太郎さんは残していました。
 僕自身も,そんな言葉を思い出しながら,何とか東北の,あるいは日本中のアーティストたちの支援を受けながら,「みちのくアート回廊プロジェクト」といったものが形にならないかなと考えています。そんな紹介にさせていただきます。
 ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。先生,語りかけの口調も素晴らしいですね。染み込む感じがして大変結構でございます。その中の1つ,お食い初めの器。まさしく人間が初めて道具をつくるときに,両手で水をすくうよりも器をつくった方がいい,それから道具というものが発達したという原点。それから,民俗芸能とは死者への鎮魂,祭りとはいかにしてという,大阪万博などを起点にしてお話しいただいております。大変有り難いと思います。
 さあ,ここで先生方の御意見なども,今の赤坂先生のお話に対して,御質問や,あるいはプラスアルファなどございましたら。先生,どうぞ。

【林委員】  今のお話,とてもすばらしいと思います。御紹介いただいた事例は,現代アートの祭典ということなのでしょうか。

【赤坂委員】  僕はもう少し広く考えてます。漆のような地場産業とかを巻き込むような,あるいは民俗芸能とか,それぞれの地域が求めているものが,みんなで集まって,にぎやかな祭りを行うという,とても漠然としたイメージで,現代アートだけではありません。

【林委員】  よく分かりました。ありがとうございます。全国の市町村から復興支援のために職員が現地に派遣されましたが,横浜市ものべ約3,500名の職員を現地に派遣させていただきました。現在も24名の職員が被災地で復興支援に従事しております。
 また,様々な分野の方たちが,支援のために,例えばコンサートをこちらでなさったり,現地で開催されたり,募金活動などもされたと思います。
 横浜でも,芸術アクション事業として,昨年開催したダンスの祭典「Dance Dance Dance @YOKOHAMA」で,「復興支援のために」と国内外で活躍するダンサーが集まり,日本で初めて所属を超えたチャリティーによるバレエガラコンサート「オールニッポンバレエガラ」が実現しました。また,釜石市の大平中学校の生徒さんをお招きして,釜石と横浜の中学生500人がEXILEのメンバーと一緒に,復興支援ソング「Rising Sun」を踊るなど,様々な企画を行いました。
 赤坂委員の企画は,大変素晴らしいと思います。各自治体の中には,その土地ならではの伝統芸能や文化,民俗があり,志の高い方が多くいらっしゃるのですから,ばらばらに被災地に行くのではなく,子供からシニアの方まで,そういうことをやりたい方たちが参加できるよう,自治体や企業の皆様にスポンサーになっていただき,実行委員会を立ち上げて取り組んでいければということを御提案申し上げたいと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。最後の日本の文化行政の担当などがバラバラである。これは痛感いたします。物事を進めるときに,束になるという発想は大事なことです。ありがとうございます。是非ちょっと考えたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。例えば器と聞いたときに,世阿弥が銀わんに雪を盛ると言ってましたのを思い出しました。つまり,器をつくる中で銀のものが伝導率が一番高いから,そこに雪を盛ったものを持つ。私も金属の仕事をしているから分かるのですが,冷たくてとても持てないんです。でも,人生はそのぐらい厳しいものなんだということを銀わんに雪を盛るという言葉で言ってました。
 そして,器という言葉をもっと掘り下げると,文字の中に命という字は,その器を捧げ持つ人間の姿なんですね。そういう文字が,まさしく起源は殷・周の時代にでき上がっているということもございますので,たった25個しかできなかったと言うかもしれませんが,25個が起源であり,それで林先生がおっしゃったように束になることによって,より深い世界ができるのかなという気がします。ありがとうございました。
 また後で思いついたらということでも結構でございますので,赤坂先生のお話に関しては一応ここで線を引かせてください。
 では,次に,紺野先生,ひとつまたよろしくお願い申し上げます。

【紺野委員】  皆さん,こんにちは。紺野美沙子です。
 このような場所で発言の機会を頂くことは生まれて初めてでして,今,舞台の初日前よりも緊張しております。私の前に御意見を聞かせてくださった赤坂先生のお声が大変すばらしく,ぜひ私の主宰する朗読座に御登場いただきたいなと思いましたし,林先生の御意見,私は大いに共感しております。
 私,本業は女優をしておりますが,15年前から国連開発計画という国連機関で親善大使を務めております。その親善大使としての役割は,世界中の貧困撲滅について日本国内の多くの人々に関心を持っていただくための広報活動なんですが,15年務める中で国際協力,国際支援も,それから被災地支援というのも全く同じであると思い至りました。
 といいますのも,見知らぬ第三者に関心を持つ,自分以外の誰かに関心を持つ,思いやりの気持ちを持つ,見えないものを見る力,心の目でものを見るということが何よりも必要であると思ったからです。それは,平たく言うと,「優しさ」とか,「思いやり」という言葉に置きかえられると思います。
 私は,3年前に今住んでおります横浜市青葉区で,音楽の生演奏と映像,そして私の朗読を組み合わせた朗読座という,吹けば飛ぶような小さなグループを旗揚げいたしました。心に染みるような美しい物語や,きれいな日本語の作品を紹介することによって,とりわけ,これからの日本を支える若い人たちに思いやりの気持ち,優しさ,見えないものを見る力,想像力を培ってほしい。それによって平和を願う気持ちや思いやりの気持ちが,ささやかながらですけれども,私の活動によって育っていってくれたら良いなという思いで始めました。
 今日は,短い時間ではありますが,おととし,2012年の2月の末と3月,朗読座東北応援公演を行ったときに感じたことについて,お話し差し上げたいと思います。
 そもそも,朗読座の公演で東北に行こうと思い立ちましたのは,2011年3月,大震災の後に,いざというときに私のような職業は役に立たないんだと無力感に襲われていたときに,『さがりばな』という1冊の絵本に出会ったことがきっかけです。今,この写真に出ておりますけれども,さがりばなというのは,日本の南西諸島に真夏に一夜だけ咲く花でして――うなずいていただいて,ありがとうございます――夜が明ける前に散ってしまう。そういったさがりばなが命の循環を,花は散っても命はどんどんつながっていくんだよということを伝える作品であったということと,さがりばなは「幸せが訪れる」という花言葉があるそうで,この作品を朗読作品にして東北に持っていきたいなと思いました。
 ちょうどそのころに,新聞記事で近藤長官の「文化は復興に非常に役立つ」という記事を読みまして,その記事の後に文化庁のホームページを見ましたら近藤長官のページがあって,実演家が非常に励まされるようなメッセージがたくさんありまして,私も自分なりに何かお役に立つことをしたいということで東北応援公演,真冬の東北にぬくもりを届けるということで,宮城県の名取市,岩手県の陸前高田市,福島県の会津若松市の3か所で公演をいたしました。
 なぜこの会場に行ったかといいますと,個人的な御縁があった,そのことだけでございます。ちなみに,宮城県名取市は閖上地域の方たちが避難されている,この写真なんですが,愛島東部団地というところがございまして,私の隣にいらっしゃるおじさんが閖上地区の町内会長さんなんですが,個人的なつながりがあって,この町内会長さんの現地の仕切りで仮設住宅の集会所で公演させていただきました。
 その後に,これなんですけれども,陸前高田の避難所にもなっていた高田中学校というところに参りました。陸前高田は私の祖母の実家がございまして,おじが在住しておりますので,おじがボランティアでコーディネーター役になってくれて,地域の方たちをまとめて宣伝もしてくださって,この中学校で現地のコーラス隊も参加をして開催することができました。そして,最後は,会津若松の大学の後輩を頼って,そちらで公演いたしました。
 今回の公演で私が大切にしたことは,観客が参加型であるということ。寒い時期でしたので,お客様が朗読を聞くだけではなくて一緒に体を動かしたり,私が会場に分け入って,お客様にインタビューをして曲のリクエストを受けたり,みんなで最後に合唱するというようなプログラムを盛り込みました。そして,その公演の前後に現地のスタッフの方との懇親会,いわゆる飲み会なんですが,そこで交流を深めました。
 そういった中で見えてきたものの問題点としては,まず,私が一番後悔しているのは資金の問題で,被災者の皆さんに会場の準備,設営,運営,その他もろもろ,ボランティア,手弁当での参加をお願いしてしまったということです。
 それから,製作費の問題なんですが,やはり出演者,スタッフが被災地に行くということになりますと,交通費,宿泊費,公演の際の機材,食費,その他もろもろ経費がかかります。その経費を,今回は幾つかスポンサードしてくださった企業もあったんですが,かなり厳しかったということで,何らかの助成があると有り難いなと思いました。
 そして,これはこの朗読座公演以外でも被災地を訪ねて感じたことなんですが,被災地の皆さん,特に仮設住宅や,牡鹿半島の非常に世帯数の少ない,交通の不便な場所の人たち,そういった方たちが一番求めているのは,やはり人と人とのコミュニケーションだと思うんですね。ですから,大きな会場での公演ももちろん必要だと思いますが,仮設住宅の集会所や交通不便な方で,そういった文化芸術の力を必要としているけれども,そういったものに触れることができない人たちに対しての対策というのも必要だと思います。私は,そんなに大規模な公演でなくても,集会所なり小さな会場での公演というのも,これから検討していきたいなと思います。
 そして,最後になりますが,文化芸術を提供する,じかに触れていただくということも大切だと思いますが,それと同じくらい,やはり懇親会や住民参加のパフォーマンスの機会を作って,人と人とのコミュニケーション,触れ合いの機会を設けるということがとても重要だと思います。
 と言いますのは,最初に参りました愛島東部団地なんですが,とても寒くて雪が降っているときだったんですが,閖上地区の皆様が朗読座一同のために,お昼御飯を作ってくれたんです。雪の中,テントを出して,さんまのつみれ汁を作ってくれました。それがとてもおいしかったんですが,本当は東京から行った私たちがたき出しをしなくてはいけないのに,あべこべになってしまってごめんなさいと言ったら,閖上地区の皆さんは,いや,暇にしていると変なこと,嫌なことばっかり考えちゃうから,忙しくしていた方が良いのよ,来てくれてありがとうと言ってくれました。
 それから,閖上地区では前日に,仮設住宅の皆さんと一緒に簡単な飲み会なんですけれども,そういった懇親会をしまして,そのときに参加者の皆さん20人ぐらいが,3月11日当日のことについて,いろいろ話をしてくれました。屋根の上に一晩ぷかぷか浮かびながら,ずっと救助を待っていた。夜が明けて遠くに自衛隊のボートが見えたんだけど,そのボートをこいでいる若い自衛隊員の方がボートをこぐのが下手で,なかなか近づかなくて,本当に歯がゆい思いをしたとか,そういったことを,笑いを交えながら話してくださいました。そのときに閖上の参加者の皆さんが,震災後初めて笑いながら当日のことを話すことができた,みんな集まって,そうやって笑いながら……,笑いながらというか,笑いも交えて,そういうふうに話したのは初めてだとおっしゃっていただいて,それもとても印象に残っております。
 今年2月に行った岩手県大槌町でも,たくさんのおば様方が,来てくれてありがとう,私はまだお母さんが見つかってないのとか,いろんなことを私に話してくださって,みんな話を聞いてほしいんだな,そうやってみんなで集う場所が欲しいんだなということを痛感いたしました。
 これからも3年,4年,10年たつにつれて,ますます孤立を深められる方もいらっしゃると思います。1回,2回で終わるのではなくて,継続的な文化芸術面での支援が必要だと思いました。
 以上です。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。現地に赴いて,いろいろな体験と同時に聞くということもとても大切なことであるということ。ありがとうございました。
 いかがでしょうか。先生方,この件につきまして,お二人のお話,大変身につまされるというか,感じ入るものが多くありましたけれども。仲道先生,どうぞ。

【仲道委員】  少し付け加えさせていただきます。私も東北の小学校や,子供たちのところに伺ったりしていますが,学校の先生のお話で,震災直後は不登校だった児童も学校に来るようになっていたと。それが1年以上たってから子供たちの間に様々な問題が出てきていると言われていたのが非常に印象に残りました。最初のうちは子供たちは耐えていたんですね。それがだんだんと綻んできている。そういった状況の中で,これからより,一層文化的な支援が必要になると感じます。

【宮田部会長】  佐々木先生,どうぞ。

【佐々木委員】  今のお二方の発表は大変感動的なんですけど,私どもは阪神大震災の経験がありますね。それで,やはり初期は,どうしても物理的復旧にウエートがかかります。実は創造的復興というのが東北で出てきたテーマなんですが,これは阪神大震災のプロセスの中で「創造的復興」という言葉にいたしました。どういう意味かというと,やはり人間の精神的な力が参っているわけですから,芸術文化の力で物理的復旧とともに人間的な復興が必要だということから創造的復興ということになってきたんですね。
 そういった意味で,どうしても,いわゆる公共土木事業のウエートが大き過ぎないようにバランスよく支援をしていかなくちゃいけないという,そういったことがあって,実は神戸市の場合は,復興計画10年を境にして私が応援してます文化芸術創造都市という方向に新しいプランを持っていったんですが,そういったプロセスの中でどういうふうに東北地域一帯のビジョンをつなげていくかという問題が1つ。
 それから,もう一つは,例えば大都市からアーティストの方が支援に回る,これはとても大事なんですけれども,実は被災されているアーティストは現地でたくさんいるわけですね。神戸の場合もそうだったんです。そうすると,現地で被災されているアーティストの活動を支えるための,少額だけれども,資金のファンドレイジングをやるわけですね。それで,神戸の場合はギャラリーをやっておられます島田さんという方が「アート・エイド・神戸」というのを立ち上げられたんですね。それは現在も続いています。そして,東北の震災が起きたときに,すぐさま島田さんが仙台に飛びまして,「アーツエイド東北」という東北一円の被災したアーティストを支援するという形のものができていて,私の友人の志賀野さんという方が中心になってやっておられますが,様々な重層的な取組が必要になってくるんじゃないかなということを今のお話を伺いながら思った次第です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 ほかございますか。相馬先生,お願いします。

【相馬委員】  お二人のお話,とても感銘を受けました。特に赤坂先生は,実は震災から数か月後に私が初めてお会いしたときから88カ所の巡礼のプロジェクトのお話をなさっていて,そのときから何か一緒にアート界でできればいいねという話を頂いていたので,私も是非お力になりたいと思っていました。具体的にはやっと動き出したにすぎないというところだと思いますけれども,やはりこういう企画が日本の中で,更に文化芸術の世界の中でも発信されていくというのは非常に重要だと思います。
 私は国際フェスティバルを企画運営している立場なんですが,やはり震災直後は海外からの注目というのも非常に大きくて,日本のアーティストが震災にどのように応答しているかということを皆さん見てくださっていたと思いますが,やはり2年もたちますと,世界も日本の震災のことを大分忘れてきたなというのが実感としてあります。例えばフェスティバル/トーキョーで制作した震災や福島を語る作品を世界に持っていっても,海外ではその事実自体が忘れられているというような状況がある訳です。しかし,日本ではまだ何も解決していない。これから日本が世界に向けて文化芸術を発信していくに当たっては,震災という事態に対して日本のアーティストがどう応答したのかというところをしっかり示していくことが重要なのかなと改めて思います。
 と言うのも,これは今日の恐らく後半の議論に関わってくると思うのですけれども,日本が芸術文化立国として世界に強く発信していきたいと,そのプレゼンスを高めていきたいというときに世界は日本に何を求めているかというと,恐らく今,祝祭感とか,根拠のない盛り上がりということではなくて,やはり日本が成熟した,サブカルチャーも含めた非常に多様な文化を持っている国として,何かほかの国にはない魅力であるとか,思想の深さみたいなものを,これからは世界の人が求めてくるのではないかと思います。
 そうしたときに,東北のように非常に重大なことが起こった場所で,日本のアーティストがほかにはない深い思想的な問いや,単なる祝祭ではない,むしろ鎮魂であるとか,紺野先生のお話にもあったような人と人とのつながりですね。そういう日本が誇るべき精神的な部分を先端的な芸術とつなげて発信していけるような視点があると,震災復興と日本の文化力の発信ということがつながってくるのではないかと思いました。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。 三好先生。

【三好委員】  ありがとうございます。
 災害というのは,非常に残酷なもので,一番弱いところが災害によって一番被害を受けるという,そういうことが実際に起こるんですね。社会の一番弱いところ,阪神・淡路大震災のときですと,いわゆるインナーシティでしたし,今回の東日本大震災で言うと,いわゆる地方。地方で今,何が一番問題かというと,正に過疎の問題,いわゆる空洞化という問題があります。
 空洞化というのは3つあって,人が減るという意味での過疎というのが1つ。2つ目には,人のつながり。人が減っていくことによって,つながりがなくなっていく。いわゆるコミュニティーが崩壊していくという意味での空洞化が2つ目。3つ目に,一番怖いのが地域に対する誇りを失ってしまうという,いわば心の空洞化,これが実は過疎の中でも一番の大問題。これはどこの地方でも抱えているんですが,東日本大震災ということで,そこにスポットが当たってしまったというのが2年前から今日に至る過程ではないかと思います。
 お二方のやっておられることというのが,震災で被害を受けたということをきっかけにして,そこの問題をどう解決していくのかということが,被災地だけではなくて,日本全国の同じような地方において問題を抱えているところ,そういう地域がこれからどうしていくのかということにもつながる。そういう意味では,是非全国の過疎を抱えている地域を励ましていただけるような,そういう活動が東日本から起こってもらえるというのは期待したいなと思ってます。
 その中で特に私が関心を持ったのは,赤坂先生がおっしゃっていた地域の誇りというものを取り戻す。それは何かというと,伝統工芸であったり,伝統芸能であったり,それぞれの地域が持っている長く伝えられてきたものというのは,これからその地域の人たちが心をつないでいく大きな柱になっていくんだろうと思っています。
 国際的なフェスティバルという話でも,国際的に多分一番通用するのは,日本の伝統です。一見新しいもののように見える――ちょうどアニメの御専門の方もいらっしゃいますけれども,新しいもののように見えるけれども,そこに盛り込まれているものは,実は日本でずっと長く伝えられてきた伝統的なものがその中に生きている,そこに外国の人が興味を持つ。そういう意味でも,地域での伝統,誇りというものを海外にまで発信できる,そのことによって地域が復興していくという,そういう活動になっていけばいいし,そういうことを支援していければと私も思っております。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございます。ある意味でのリバウンドですね。
 お願いいたします。

【太下委員】  赤坂先生,紺野さん,大変感動的なプレゼンテーションをどうもありがとうございました。
 紺野さんの御説明については,多分,文化庁の方も従来型の文化政策の文脈の中で御理解いただけたのではないかと思うのですけれども,赤坂先生の御提言は非常に深い分,従来型の文化政策でなかなか御理解いただけない部分もあったのではないかと思いまして,せん越ながら,文化政策を研究している立場から,私なりにその接続のための補足説明をさせていただきたいと思います。今日御説明いただいた資料7の文化庁の重点施策の中でいいますと,戦略5の「衣食住に係る文化をはじめ『くらしの文化』の振興」というものに直接関わってくる内容かと思います。ここで言う「暮らしの文化」の復権とは,伝統芸能や工芸のほか,方言も含む言葉,俳句,和歌のような古くからの文芸,そして食文化,さらには自然への祈りとか,そういったことも含めて,もう一度,暮らしの中に,日本の基層となる文化を取り入れていくということが非常に重要ではないかと思います。
 これは実は別に新しい社会運動ではなくて,例えばイギリスですと,19世紀のウィリアム・モリスによるアーツ・アンド・クラフツ運動ですとか,日本でも20世紀になって柳宗悦らが展開した民藝運動なども同様の運動であったと思います。これをもう一段深く,本当に暮らしの中に実装していくということが,3・11を踏まえて日本に必要になったのではないかと思います。
 最近,私がよく使う例えなのですけれども,今,最先端のネットの文化と言われている初音ミクがありますが,これは世界にも発信力がありますけど,この初音ミクで使われている二次利用という文化的作法は決してネットというグローバルな世界の中で生まれたものではなくて,実はあれはもともと日本の文化伝統の中にある本歌取の技法そのものなのです。このように考えると,実は我々の暮らしの中にあった文化の技法が,たまたま最先端の技術と結びついて初音ミクという表現になったと理解すれば良いことで,同様のことはきっとほかにもいっぱい見つけられると思います。それが本当のクールジャパンではないかと私は思うのですね。
 そういった意味で言うと,赤坂先生が提案された「みちのくアート回廊」についても,本質的なクール・ジャパンを体現するプロジェクトとして,是非実現していただきたいと感じた次第です。

【宮田部会長】  非常に論理的にも,またバックアップしていただきまして,ありがとうございました。
 ほか,ございますか。
 赤坂先生,さっきの話で命の話をしましたけど,これですね。器を人が支え持っている,この字が起源でございまして,これがこれになっている。 それでは,また後で,お二人のお話に対して,御提言を頂いて結構でございますので,また一歩進めさせていただきたいと思います。
 先ほどもちょっと私からも,また長官からもお話がございましたが,文化芸術立国実現のための懇話会というのが立ち上がりました。この件について事務局よりお話を頂いて,その次には25年度の予算にある劇場法の指針等々についてもお話を頂き,そして皆様からのお話を頂戴するという段取りでいきたいと思います。よろしくお願いします。

【清水政策課長】  文化庁の政策課長の清水でございます。まず,私から文化芸術立国の実現のための懇話会につきまして,御説明をいたします。
 既に宮田部会長,また近藤長官の挨拶の中でも紹介していただいたところでございますが,資料6-1が,この懇話会の開催についての要項と名簿です。この懇話会は下村文部科学大臣の私的な懇談会として設置され,5月18日の(土)と,おととい5月25日の(土)の2回にわたって,既に開催されました。
 趣旨につきましては,文化芸術立国の実現のために,我が国の国力である文化,世界に誇るべき有形・無形の文化財や芸術文化を振興し,発信していく方策を検討いただくということで,大臣が懇話会の委員から様々な御提言を頂くためにスタートしたものでございます。懇話会の委員は,資料の次項のとおりでございますが,本文化政策部会の委員からは宮田部会長,また青柳委員にもお入りになっていただいております。
 この懇話会では,資料6-2の文化芸術立国中期プランを下村大臣から示しまして,2回にわたって意見交換がなされたところでございます。
 それでは,この中期プランの内容につきまして,ごく簡単ではございますが,御説明を致します。
 まず,文化芸術立国を目指した「中期」,すなわち,2020年ぐらいを1つのターゲットにしたプランとして,「世界トップクラスの文化大国に向けたロードマップ」という副題をつけております。
 1枚めくっていただきますと,このページは基本的構想,理念を書いたものでございますが,文化芸術の力は,豊かな人間形成や活力ある社会構築,そして日本人であることへの自信と誇りを抱くために不可欠である。そして,我が国はこうした文化芸術の潜在力にあふれている,文化芸術立国,これは文化芸術の持つ力を現実の生活において広く浸透し,活用できる仕組みを作るということで,新「国風文化」を日本再生の柱にするということを理念として掲げているところでございます。そして,そのための考え方として,文化芸術の振興は日本再生のために有効な投資であるという認識に立って資源を投入していく必要があるということでございます。
 そして,3ページ目は,2020年の目標が達成されたときのイメージとして,できるだけ数値目標を掲げているところでございますが,日本が世界に尊敬され愛される文化大国,文化芸術の交流のハブになっているということを目指そうということで,具体的には外国人観光客,特に文化体験を目的とした外国人観光客を増やそう,また,首都にある上野の杜の美術館,博物館,音楽ホールなど,文化関係の施設,機関への来訪者を倍増していこうといったことをイメージとして掲げているところでございます。
 そして,もう1枚おめくりいただきますと,4ページ目も2020年の日本文化の姿として主要な項目を掲げているところでございまして,5ページ目が2020年までの流れ,イメージを掲げた図であります。2020年ということですから,約7年かけて文化力を計画的に強化をしていこうということで,その分野といたしましては,大きく4つあげております。第一に,人をつくるということ。文化芸術で「創造力・想像力」豊かな子供を育てる。芸術家,ファシリテーター,アートマネジメントなど,文化をつなぐ人を増やしていく。そして,伝統芸能の後継者・伝承者を養成していくこと。第二に,文化財の保存修理や創造都市ネットワーク,また地域の文化資源を生かしたまちづくりなど,地域を元気にするという項目。第三に,世界の文化交流のハブとなるということで海外発信等。第四に,それを支えるものとして,施設・組織,制度の整備をしていく。これを目標にしていこうということでございます。
 そして,一番右の青いところに黄色い文字で掲げているものでございますが,ちょうど2020年,東京オリンピック・パラリンピックの招致の活動がなされているところでありますので,このオリンピック・パラリンピック競技大会に合わせて,日本中が魅力的な文化イベントを開催するということを目標として掲げているところであります。
 既にロンドンのオリンピック・パラリンピックにおきましても,こういった文化プログラムが開催されたというところでございますが,東京でもそれを上回るものを目指していきます。そのためには,その都市だけではなく,これから計画的に文化力を強化していく必要があるという考え方に立っているものでございます。
 そして,そのページ以降は,I,II,III,IVと振ったものにつきまして,それぞれの事業,施策をまとめたものでございます。簡単に紹介させていただきますと,6ページ,7ページが「人をつくる」施策でございます。子供を対象とする多彩ですぐれた芸術の鑑賞・体験,伝統芸能,文化財に親しむ機会を大幅に拡充していこう。ここでは音楽,芸能,舞踊などのほか,茶道,華道などの日本古来の衣食住に関わる文化,生活文化,暮らしの文化といったものも子供たちに伝えていく必要があろうということで,こういったものも対象にしていく必要があるということでございます。
 そして,2つ目が専門人材の育成。特に,長官もファシリテーターについて冒頭の御挨拶で申し上げましたが,芸術家だけでなく,芸術を一般の市民,国民につないでいくアートマネジメント,学芸員,ファシリテーター,また舞台技術者といった専門人材を育成していく必要がある。そして,高度な芸術家,また伝統芸能等の後継者・伝承者等の養成も大事だということでございます。また,こういった際に大学との連携も必要だという部分も織り込んでいるところでございます。
 続きまして,8ページ,9ページが「地域を元気にする」という施策でございますが,一番上が,国宝,重要文化財などをはじめとする文化財の保存修理について,また防災対策について抜本的強化をしていくということでございます。こういった文化財は,定期的な適正で周期で修理をしていくことで未来に向かって継承できるわけでございますけれども,今,なかなか適正な周期での修理がなされていないところでございますので,例えば建造物であれば,適正周期である150年に向けて,そのための財源,予算を確保していく必要があるということでございます。
 また,文化財につきましては,その文化資源を生かして,まちづくりをしていこうということも大事なことでございます。歴史文化基本構想の策定でございますとか,そのほか,様々な形でのまちづくりの取組が各地でなされているところでございますので,それらに対する支援を推進していこうということでございます。
 また,文化芸術創造都市。これも各地域の様々な創意工夫で始まっているところでございますが,各地域の取組をネットワークにしていき,また,海外とも更にネットワークを広げていくといった取組がこれから求められております。また,昨年成立いたしました劇場,音楽堂に関する法律など地域の劇場,音楽堂への支援も,盛り込んでおります。
 そして,10ページから12ページまで3ページにわたって,「世界の文化交流のハブとなる」に文化の発信に関わる施策を並べております。伝統芸能・工芸,そして日本の伝統的な生活文化も含めまして,海外への発信を強化していこう。その際に,先ほど伝統工芸と現代美術とのタイアップということもございましたけれども,ポップカルチャー等と融合した形で日本の伝統文化を海外に発信していくことも必要だろうということも指摘をされているところでございます。
 また,世界の中で日本が非常に高く評価されておりますメディア芸術の分野につきまして,メディア芸術祭等の取組をしてきているところでございますが,更に強化をいたします。
 そして,少し新しい提案として,「ジャパン・フェスタ」として,伝統文化から現代アート,ポップカルチャーまで,幅広く総合的に日本文化を紹介する,そういう取組などを通じて文化交流を促進していこうという施策も含めております。
 発信につきましては,1枚めくった12ページ,日本語による文化発信,日本文学の海外への発信強化,また外国人観光客のための展示・公開環境の整備など,様々盛り込んでいるところでございます。
 そして,最後の13ページは,これらの施策を効果的に実施するためのハードの施策などでありますけれども,国立の美術館,博物館など,国立の文化施設の機能強化。そのほか,日本の強みを生かす拠点づくりなどにつきましても提案されているところでございます。
 これにつきましては,2回の御意見を頂きまして,長官も挨拶の中で申しておりましたけれども,この中で早く実行できるもの,もちろん既存の中で実行できるものはどんどん実行していきますとともに,予算が必要なものにつきましては,来年度の予算の概算要求に向けて検討していくこと。そして,もちろんそれと並行して将来の在り方などにつきまして,また様々御意見を頂きながら考えていくこととしております。
 ちょっと説明が長くなりましたが,懇話会についての御説明は以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。ちょっと時間の都合で早めにお話を頂きましたが,じっくりと,あとでよく見ていただきたいと思います。
 これもそうですが,次も非常に大事なことなんですが,第3次基本方針についても,ちょっと御説明いただけますか。

【内田企画調整官】  そうしましたら,第3次基本方針と25年度の予算について,私から御説明させていただきます。その後,劇場法の指針に関しましては,舟橋芸術文化課長から御説明申し上げます。
 まず,第3次基本方針に関しましては,先ほど資料7の概要で御説明いたしましたとおりなんですけれども,先ほど1つ1つ見ました6つの重点戦略に基づきまして,27年度までの5年間で施策を実施していこうというものでございます。お手元に冊子も置かせていただきましたので,こちらの方はお時間あるときに御覧いただければと思っております。
 先ほど部会長からも,概要の中身について内容に少し重複があるのではないかなどの御指摘がございましたけれども,今後,第4次基本方針に向けて議論していくに当たりまして,この部会というのは,正にそういった中身を議論する部会でございますので,その中でまた委員の皆様から御意見を賜れればと思っております。
 資料8に文化庁予算の概要をお配りしております。時間の都合もございますので簡単に,骨子のような形になってしまうかもしれませんけれども,御紹介程度に御説明申し上げたいと思います。
 文化庁予算は,「文化力による地域と日本の再生」ということを柱としております。平成25年度の文化庁予算におきましては,資料8の最初のページにございますけれども,1,033億円という額となっております。これは過去最高の額でございますけれども,前年度比で申しますと,大体1億4,000万円増という額を確保したところでございます。
 1枚おめくりいただきますと,全体の柱がございまして,柱が大きく3つございまして,最初の大きな柱が「豊かな文化芸術の創造と人材育成」という柱でございます。最初の事項といたしまして,昨年,劇場法の施行がございましたので,それを踏まえました実演芸術の創造発信を行う劇場・音楽堂等活性化事業といったものなど,様々な文化芸術創造活動への効果的な支援,そういったことを行ってまいります。それが30億円程度でございます。
 次に,2の「芸術家等の人材育成」といたしまして,先ほど来,子供の話も出ておりますけれども,そういった正に子供の文化芸術体験,新進芸術家の育成といった人材育成を支援する,そういったことに関する事業が66億円ぐらいでございます。
 大きな柱の2つ目といたしまして,かけがえのない文化財の保存,活用,継承といたしまして,第1に,我が国の宝でございます文化財の保存修理・防災対策,そういったことに120億円。また,文化財の復元整備・活用・継承,そういったことに320億円でございます。こういったものの中には,各地域に所在する建造物ですとか,史跡,地域の美術館等の機能を生かしたり,あとは文化遺産といったもの,様々な地域の宝を生かしたりした形での地域活性化に関する事業も含まれております。右側の3ページ目の上半分にも,様々な施策が並んでおりますとおり,文化財の整備,活用など,こちらに記載しているような事業がございます。
 3つ目の大きな柱といたしましては,「我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進」といたしまして,まず第1に,すぐれた舞台芸術・メディア芸術の戦略的発信への支援でございまして,これは世界に誇る我が国の芸術を国家戦略として発信するような施策でございます。文化芸術の海外発信力の強化策といたしましては,東アジア文化都市の取組を2014年から開始することとしております。日中韓3か国をはじめといたしまして,東アジア地域の文化芸術イベントなどを実施する取組です。
 また,下の方の4には,文化発信を支える基盤の整備・充実といたしまして,文化発信を支える国立の美術館,博物館などの国立文化施設の整備充実を図る,そういった事業でございます。
 この2ページにわたりまして,本当に簡単に概要を紹介した程度でございますけれども,1つ1つの詳しい施策に関しましては,同じ資料の7ページ以降に詳細が記載されておりますので,また御覧いただければと思います。
 簡単でございますけど,以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 ほんの少々ですが,プラスであると。これも文化庁の皆さんの地道なお力かと思いますが,少なくとも五,六年ぐらいまでには掛ける2ぐらいの感じで,是非是非いってもらえたら有り難いなという気がいたしますが,さあ,いかがでしょうか。先生方,前の方に戻っても結構ですし,今の下村大臣の懇話会のお話,そして予算のお話でも結構ですが,今日まだお話になってらっしゃらない先生が何人かいらっしゃいますので,是非……。

【内田企画調整官】  宮田部会長,申し訳ありません,もう1点ございまして,劇場,音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針につきまして,よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  失礼いたしました。大変御無礼しました。どうぞお願いいたします。

【舟橋芸術文化課長】  お手元の資料の9,劇場,音楽堂等の活性化につきましては,昨年の6月に超党派の議員立法で,劇場,音楽堂等の活性化に関する法律が成立しております。これに基づきまして,具体的な取組方針ですとか,取り組むべき事項を文部科学大臣が明らかにするため,本年の3月末に大臣告示を制定いたしております。
 この指針の性格といたしましては,規制のための基準ではなく,各劇場,音楽堂等の積極的な取組を促進するための方向性を提示したものであるということ。また,劇場,音楽堂等は全国に2,000を超える数がございまして,その設置目的や事業の特性なども様々であるということを踏まえまして,この指針においては全国の全ての劇場,音楽堂等に共通する方向性を示すということと,それぞれの多様な実態に応じて選択的・段階的に取り組むことが適切な留意事項という形で2段階に分けて定めたものでございます。
 指針の本体につきましては,別途,白い表紙の冊子をお配りいたしておりますので,またお時間がありますときに,御覧いただければと思いますが,指針の概要といたしましては,資料9の中ほどにございますように,まず,劇場,音楽堂等の設置者,それから設置者から運営を委託されている運営者が取り組むべき事項といたしまして1から10の項目を定めております。
 1におきましては,運営方針を明確にした上で,それに基づいて運営を行うということでございます。そのほか,事業の質の向上に努めることでございますとか,劇場,音楽堂等の運営に必要な専門的人材の養成・確保に努めるということ。また,普及啓発ということで,本日もいろいろお話が出ておりますけれども,児童生徒ですとか,一般住民に対する普及啓発活動を適切に進めるというようなこと,様々な項目について定めをしているところでございます。
 また,大きな2といたしましては,国,地方公共団体の役割,それから,実演芸術団体や大学等の教育機関に対して積極的に協力を求めるということを定めているものでございます。
 資料の2ページと3ページは,昨年の11月から1か月間,この指針の案に対して国民の皆様から頂いた主な御意見を取りまとめたものでございますが,全体で175通という大変多くの御意見を頂きました。2ページのところですと,真ん中のあたりで,障害のある方への配慮でございますとか,あるいはほかの劇場,音楽堂等と連携した人材の配置について御意見があり,これらの御意見を踏まえ,文化庁において指針案を修正いたしました。
 また,3ページのところを御覧いただきますと,関係機関との連携ということで,劇場,音楽堂等と芸術団体が連携をいたしまして本拠地提携などを行っている例がございますが,そういった施設の効果的な活用についての御意見があり,指針に記述を追加いたしております。
 また,一番下のところで,公立の劇場,音楽堂等につきましては指定管理団体を指定するということがございますけれども,これについては劇場,音楽堂等の特性を踏まえた形で運営をしてほしいということで大変たくさんの御意見を頂きましたので,それを踏まえて修正を図っております。
 この指針につきましては,文化庁で施行通知を出しまして,全国の自治体,あるいは劇場,音楽堂等関係者に周知をいたしましたほか,4月には説明会を開催いたしましたけれども,今後も様々な機会を捉えて,この指針の趣旨を御説明いたしまして,全国の劇場,音楽堂等の事業の活性化の推進に努めてまいりたいと考えております。
 この資料の最後のところで,関連する事業についてポンチ絵をつけさせていただいておりますけれども,劇場・音楽堂等活性化事業ということで,25年度予算で30億計上しております。これは24年度まで劇場,音楽堂等を支援する事業が14億円ほどございましたが,その倍以上の額を今回予算に計上させていただいております。内容的にも,1の特別支援事業というのは我が国のトップレベルの劇場,音楽堂等を支援するものでございますが,これも10施設から15施設に対象を拡大しております。
 また,3の活動別支援事業というものは,これは各地域において,それぞれの各都道府県などで中核となる劇場,音楽堂等を支援するものでございますが,こちらも対象規模を大幅に拡充しておりますのと,事業単位で御支援ができるようにメニューを多様化しております。
 4番目にネットワーク構築支援事業という項目がございますが,これは地域での優れた公演等についての鑑賞機会の充実を図る観点から,巡回公演についての旅費等について支援をするというもので,指針の中でも,地域における鑑賞機会の充実ですとか,あるいは劇場,音楽堂等の連携を図るということがうたわれたことを踏まえまして,新しいメニューとして追加をしておるところでございます。
 今後とも,こういった事業を通じて,劇場,音楽堂等の事業の活性化に文化庁としても努力していきたいと考えております。
 以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。冒頭,ちょっと失礼をいたしました。
 この劇場,音楽堂等における事業の活性化でございます。これも新しい取組として大変期待の持てるものと思いますが,舟橋さん,頑張って多くの人に御理解いただくようにしてください。
  では,少なくとも全員に是非お答えを頂きたいと思いますが,片山先生,どうぞ。

【片山委員】  片山です。できるだけ短く済ませたいと思いますが,今回の中期プランにしても予算にしても,人材というところにかなり焦点が当てられているかと思います。このプランの中でも文化芸術が日本の再生にとっての投資だということになっています。そして,文化予算が今回増えたわけですけれども,増えたお金全てがきちんと投資に回るように持っていく必要があると思います。予算が増えても,買ってきて消費するだけで終わっては何も残らなくなってしまいますので,いろいろな事業をやったら,それがきちんと何かストックとして残ることが必要です。特に,人材育成になるとか,ネットワークができるとか,作品が新しいものができるとか,ストックがつくられて初めて投資になるので,そのような運用をしていく必要があると思います。
 劇場,音楽堂等の活性化に関する法律は,これまで施設としてしか見られてなかった劇場,ホールが人的組織を備えたもので,かつそれが専門的人材であるということになり,そして劇場,音楽堂の役割として人材育成をするということまでも盛り込まれたわけです。ですから,公演をやって終わりではなくて,そこまでが事業なのです。つまり,公演をやった結果,人材がこれだけ育てられた,こういうネットワークができたという,そのストックをきちんと残して,その後,発展する基盤をつくって初めて事業の成功となるわけです。したがって,劇場関係の補助金については,評価についても,公演がうまくいったかどうか,あるいはフェスティバルがうまくいったかどうかではなくて,その後,どういうストックが作られたかを,きちんとフォローする必要があると思います。
 今,現場はどういうことになっているかというと,労働法規の変更もあって雇用が極めて不安定になっています。非常勤化し,任期つきになって,それがかつ短期化する傾向があるので,それにきちんと対応していくような国の政策的誘導が必要だと思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,平田先生,お願いいたします。

【平田委員】  沖縄の平田です。よろしくお願いします。
 去る3月までは県庁にあります県の文化観光スポーツ部の部長をやっておりましたけれども,この4月からは公益財団法人の文化振興会というところの今は文化振興アドバイザーをやっております。
 今,資料を見ながら2つだけ感じたところといいますか,まず,資料6-2の文化芸術立国中期プランですね。それで,2020年までの流れのイメージがありまして,これは5ページだと思いますけれども,3つの柱のうちの最初に「人をつくる」というのが来ております。これはすごく正しいと私は思います。私,実は県の部長をやる前は地域にある舞台づくり。それも子供たちが主体の舞台づくり,「肝高の阿麻和利」をはじめとして地域の伝承ですね,偉人伝というのをつくるという演出家をやっておりました。
 そういったことがありまして,そこですごく心がけたことがありまして,それは文化芸術のための人づくりではなくて,人づくりのために文化芸術があるんだという考え方,これを徹底してやっていきました。舞台をつくるんじゃなくて人をつくるんだということをやってきたこともありまして,今,14年目を迎えておりますが,私も現場から離れてますけれども,今でもその舞台は,自主財源をしっかりつくり出しながら,独り立ち歩きをしながら,年に4回ですから,4シーズンですので20回公演を今実現をしております。
 そういう面で言うならば,本当にこの舞台は地域の中学生,高校生が中心でやっている舞台ですけれども,いわゆる組踊の現代版をつくっていく。大事なことは,ステップ方式と僕は言っているんですけれども,子供たちがいきなり古典に行くのは難しいので,行く前の1個前のステップを,入り口まで連れていくというのが現代版組踊の役目ですよと。そして,そこで関心を持った子供たちの中で琉球舞踊,三線,それから地域にある伝統的な行事,そして組踊そのものにも関心を持って,実際にその中から芸大に進んだり,それから,今,文化専門人材として歩んだりしている子たちもおります。
 大事なことは,だからといって,必ずしも文化専門の人材になれということではなくて,文化スイッチを持つ子供がここで生まれてくれば,先ほど近藤長官もおっしゃってましたけれども,決して文化芸術のための人づくりということではなくて,そういう文化スイッチを感動体験を通して子供のころにしっかり持てば,あらゆる分野,あらゆるジャンルできっと一級の人材として役立っていくというようなことを自分の体験から非常に感じておりますので,文化振興会を含めて,これから人づくりということに関して,アーツマネージャーも育成していきますが,大事なことは子供のころにどれだけの感動体験をさせてあげられるかということだと感じましたので,この部分を是非,鑑賞だけではなくて,しっかりと子供たちが体験できるような,そういうプログラムをどう作っていくか。そういう正にファシリテーター的なつなぎ目,ジョイント役をどう作っていくかは大事だと感じました。
 最後,もう1個だけ。もう1個は,劇場法に関する資料9の部分にかかりますけれども,「関係機関との連携・協力」というところで,これも非常に重要だと思います。というのは,県庁にあります文化行政が予算をつくります。予算をつくった,その予算の玉を,どこがそれをしっかりと運営するか。実はこれは外郭団体であったりとか,それか本来は出先機関なんですね。ところが,そこが行財政改革のあおりの中で,意外にマンパワーもエンパワーも少なくなっていると。ですから,そこの中で努力すべきことは,外郭団体や出先機関というところが,どれだけ自分たちでまた努力しながら,しっかり自立していけるか。そしてあわせて,県からの委託事業というのをどれだけしっかりとしたマンパワーで受け取られるかということ。
 あわせて,できれば,これはどの外郭団体も考えていることだと思いますけれども,行政と企画の段階から一緒になって予算が必要だと,こういう予算がこういうたてつけで必要なんだということをできるパイプがないと,いきなり本庁がつくった予算がポンと投げられて,それで外郭団体は非常に困っているという状況が私が部長時代も多々ありました。その状況を見る中で,是非とも外郭団体自体も自分たちから積極的に,いわゆるビジョンを語りに来る,そういう場づくりが必要なんじゃないかということで,部長をちょうど2年終わりましたので,今度は文化振興会という,正にそのヘッドクオーター的な役割を担うところに志願兵で今行かせてもらいまして,その中で今度は,いわゆるその側から行政と両輪となって,しっかりと文化団体につなげられるような生きた予算を執行できるような体制づくりをしていきたいと考えております。
 以上でございます。

【宮田部会長】  期待しております。まさしく上から降りてくるものというのは,なかなか地に生えないですから期待しております。ありがとうございました。
 ほかに。仲道先生,どうぞ。

【仲道委員】  劇場法に基づきまして,大学と劇場との連携に関する支援ということで助成システムができ,大変有り難いことだと思っておりますが,もし認識に間違いがありましたら,申し訳ございません。
 3月に申請フォームが出て5月末までの申請ということで短期間に申請準備をしなくてはならないということ。それから,3年の長い年度にわたっての,大きなプロジェクトに対して助成するということ,なおかつ,今年度は助成できるかもしれないけど,来年度には助成があるかわからないとなっておりますが,そうしますと,大学として,どうしたらいいだろうと申請に戸惑ってしまうようなことが現実にございますので,何らかの形でもう少し大学が活用しやすい助成方法を模索していただけますと,有り難いなと存じます。
 また,文化庁だけではもちろんおさまらない問題なのですが,国際交流で海外のアーティストが日本に来て公演するときの公演ビザの申請が非常に煩雑であると。同じアーティストが1年に何回来ても同じ手続を大使館や省庁など,手続を一からしないといけないということがございます。公演ビザのありようが,文化庁の文化芸術立国中期プラン,その国際的展開をと考えましたときに,文化庁が何らかのかじを取っていただくようなことができないものかなと思うのが1つございます。
 それから,財団法人地域創造,これは総務省の外郭団体なのですが,地域創造は,地方の公共施設の活性化を目指している団体で,内容として関わっていることは文化なのです。相互協力といいますか,情報共有などができないものかとも思います。
 もう一件,2014年にFACPという,舞台芸術のアジアの国際会議というものを日本で行います。テーマはアジアの文化の力,9月11日からと決まっておりまして,これはクラシックだけではなくて,伝統芸能,全ての舞台芸術のアジアの会議です。去年,インドネシアで行われたときは,国をあげて,インドネシアの芸術文化のアピールがあったと聞いております。これら,国際的に積極的な展開が日本でも見られると良いと思います。
 近藤長官がファシリテーションということ,ファシリテーターについて強く意識を持ってくださっていることは大変有り難いことです。文化庁が推進することが,日本の私たちの生活の文化の中に入っていくためには,ほかの省庁との連携ということも含め,それがシステム上はどう働くことができるのかは分かりませんけど,正に文化庁が文化力を高めるファシリテーター(ものごとをFacile,容易に,しやすくする人)になっていただきたいと思います。 
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございます。この間の(土)の「文化芸術立国実現のための懇話会」のときにも,私は,物事を進めるには,また,勝負で勝つには,一つ技では無理だと,重ね技でやらなければ絶対勝たないという話をさせてもらいました。そういう意味では,最初の重ねるための大技をかけるには違った部分。引くには,その前に押せと,押したければ,前へ出たければ,そのまま引けという感じがある。そうすれば,3本の矢も,より遠くへ行くでしょうね,そんなことを感じました。ありがとうございました。

【山村委員】  ちょうど今のお話とつながるところでして,人材教育,特に子供を育てるというところの部分では非常に重要だと思いますし,共感します。本当は義務教育なりでの美術教育,音楽教育というのを,より強化していくというのは,すごく大事だと思うんですが,今,教育全体の中では芸術の教育って余り顧みられていないというか,どうしても成果主義になりがちで,私,芸大の方でアニメーション専攻というのがありましてアニメーションを教えているんですけど,アニメーションは総合芸術なんですね。絵だけ描ければ良いというわけではなくて,やっぱり音や音楽や文学,いろいろなものに通じていないと,なかなか良い作家は育ってこないんですが,それで学生と接していて感じるのは,基礎的な芸術的な知識とか,触れる機会というものが日本の中でとても少ないなということです。
 義務教育の中で,美術,音楽なりをしっかりやれれば良いんです。例えばたしかチェコだったと思うんですけど,音楽は学校の中の教育でやってなくて,課外教育で国の予算で音楽を習いたい子は学校が終わったら音楽を勉強しに行く,絵を勉強しに行くと。ですから,国の予算で学校以外のところでも何か芸術に無償で触れられる。それも全部無償なんです。ピアノを習わせるために高い月謝を払うとか,そういうことではなくて,習いたい子が自由に行けるという。
 そんな環境はすごく良いなと思いまして,具体的にそれでちょっと思い立ったのは,本年度いっぱいで,子供の城という青山にあります施設がなくなるんですね。これ,厚生省さんの管轄で,児童館というのが全国にありましてその中心になっているのが「こどもの城」です。うちの子なんかもこの施設や近所の児童館でいろいろな創作活動に触れる機会があるんですけど,先ほどの省をまたぐという話でいくと,児童館の設備の中にいろいろな文化的なイベントだとか,実際の美術か触れる機会というものに予算を割いていただけると,より具体的に学校外でいろいろな芸術に触れる機会があるんじゃないかなというのを,今日,中期プランを見ていて感じたところであります。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 今の子供の話なんかすると,野村先生,いろいろなところでいろいろな出会いをしてますが,子供に限らず,ひとつどうぞ。

【野村委員】  今日,本当にいろいろ勉強させていただきましたけれども,そうですね,子供たちに対してのいろいろな意味での先行投資ということで,いろいろな文化に触れてもらいたいなとは思っておりますし,そういう意味で言うと,アーティストをうまくメディアに出してあげるということは,とても重要なんではないかと思ってます。私も,不肖ながら「にほんごであそぼ」という番組でやっておりますけれども,そういうところから,とにかく触れさせるということ。
 そして,例えば,そういうメディアに出るときに,出る人間をまた考えないといけないわけですね。アーティストというのは,一見,自己表現していて,いろいろなことを考えているかというと,実はそんなことはなくて自分のことしか考えてないやつが結構多いんですね。非常にパブリック性というか,公共性に欠けているやつが多いものですから,実は,ファシリテーターも重要ですけど,アーティスト自身の意識改革をせねば,これはどうしようもないというようなことがあります。
 ですから,例えば子供と向き合うということを本当に真剣にアーティスト一人一人が考え,そして,やはり世界発信するんだったら,じゃ,おまえ,日本をどれだけ背負うつもりがあるのだというようなことも含めた,いろいろなそういう意識改革というものをまずしていただかないと,なかなかそういう人の力が結集してこない。誰かがやるだろうと思っていて,結局,同じばかりになるのではないかということを私は恐れながらちょっと思っておりますし,何かそういう意味でのいろいろなアーティストの意識改革をお願いできれば良いなと。そういうために,何かいろいろな部会であるとか,集いを作っていただくのも大いに意義があるのではないかと思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございました。赤坂先生の言葉の語りと,また野村先生の語りがそれぞれ違いがあって,芸術の面白さというのは,互いに何かそこに似て非なりの違いがとてもすてきですね。
 河島先生。

【河島委員】  この10年,15年の間に文化庁の予算も増えて,文化遺産の保存・修復以外のところ,現代的な活動であるとか,それから海外への発信だとかいうことで広がってきています。政策の目的などもきちんと書かれていて非常によいと思うんですけれども,1個ずつの予算を見ると結構少なくて,えっ,これでできるんでしょうかと思うのが非常に残念なところではあります。後,本当に更に予算獲得に向けて頑張っていただきたいんですが,私は,ほかの省庁がそれなりの考えでやっていくというのも,それはそれでよいのではないかと思うんですね。
 余りに現場でそごが起きるだとか,それから,ぶつかり合いがあったり,何か手続上面倒なだけだったりするということは避けていただきたいとは思うんですけれども,文化庁だけが文化に関心ある省庁ではなくて,外務省であるとか,総務省であるとか,あとは最近ですと国交省あたりも結構,観光との関係で文化観光ということに力を入れてきているかと思いますので,それぞれに何か理由をつけて文化にお金を出してくれるという省庁が増えるのであれば,それはそれで良いのではないかなと考えています。
 それから,今日,お二人,赤坂先生と紺野さんのお話を伺って思ったんですけれども,昔よりもっとアーティストと鑑賞者という間の垣根というのがやはり崩れつつあって,表現したいという人がものすごく増えています。それで,紺野さんがなさっていたプロジェクトが成功だったのも,ものすごく参加型を目指された。多分,昔,20年ぐらい前だったら語り部と聞き手という,そういう感じだったんじゃないかと思うんですけど,今は交流したい,自分も表現したい。被災地の方々に,人の役に立ちたいとか,人に関わりたいという気持ちは昔より表現しやすくなっている世の中だと思うんですね。もともと人間にはそういうところはあったんだと思うんですけれども,それを表現する場や技術が生まれてきているので,そういうものを助けていくような,具体的なプロジェクトという意味ではなくて,全てのところにそういう視点というのが入っていくと良いだろうと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 すいません,半を過ぎてしまいました。この辺で終了したいと思います。

【宮田部会長】 事務局から,ひとつ最後お願いします。

【内田企画調整官】  今後の日程について,御連絡させていただきますけれども,次回,6月26日の15:00から17:00までを予定しております。場所は文科省内の会議室を予定しておりますけれども,詳しい議事などにつきましては,また追って御連絡させていただきたいと思います。
 ありがとうございます。

【宮田部会長】  では,本日はお忙しいところ,まことにありがとうございました。これにて閉会といたします。

―― 了 ――

ページの先頭に移動