文化審議会第11期文化政策部会(第2回)議事録

平成25年6月26日

【内田企画調整官】  お待たせいたしまして申し訳ございませんでした。お時間が過ぎております。これから始めさせていただきたいと思います。
 まず開会に先立ちまして,配付資料を確認させていただきたいと思います。お手元の資料を御確認いただければと思います。
 まず,資料1が湯浅委員御発表資料でございます。
 資料2が日本芸術文化振興会御発表資料です。
 資料3が東アジア文化都市関係資料でございます。
 資料4が林委員御発表資料でございます。
 資料5が最近の内閣の重要方針についての資料でございます。
 このほか参考資料として,委員名簿をつけております。
 また机上には,幾つかございますけれども,まず,日本芸術文化振興会さんから,うちわと振興会の概要の資料,あとは加藤委員から,「企業メセナ協会からのメッセージ」という資料。それと,文化庁の主催で7月16日に行う予定の「アートで子供たちの才能を引き出す」というチラシを置かせていただいております。これらのほか,第3次基本方針,予算の概要,データ集といった資料を置かせていただいております。
 本日の御欠席委員でございますけれども,座席表に記載してございますけれども,青柳委員,佐藤委員,相馬委員,仲道委員,野村委員,山村委員,以上の合計6名が御欠席となっております。
 それでは宮田部会長,よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  お足元の悪いところ,お忙しいところ,御出席いただきましてまことにありがとうございました。それでは第11期文化政策部会第2回を進めさせていただきたいと思います。御協力のほど,よろしくお願い申し上げます。
 開会に当たりまして,先般御欠席でいらっしゃった先生方に,今日はおいでいただいておりますので,一言御挨拶いただけたら幸いでございます。加藤委員,熊倉委員,湯浅委員でございますが,この順番でお話しいただけますでしょうか。では加藤先生,お願いいたします。

【加藤委員】  企業メセナ協議会の加藤でございます。どうぞよろしくお願いします。今日は余り時間がないということなので,自己紹介を兼ねて,先般いわゆる事業仕分に参加させていただいたので,そこのコメントをごく手短に申し上げたいと思います。
 そのテーマは,いわゆるアーティスト・イン・レジデンスに対する助成金を今後どうしていくかということの仕分で,結論的には,「見直せ」という御意見が3,「現状のまま」という方が3,半分に分かれたんですけれども,文化庁の御担当の御説明は非常に的確な,良い御説明だったと思うんですけれども,考え方として,アーティスト・イン・レジデンスをせっかく民間が今までやってきた,あるいは地方自治体が中心になってやってきたのを,国が助成していく制度ができてちょうど3年目に当たるので,それがわずか1.8億ぐらいの予算,それを今後どうするか,これがテーマでございました。私の考えでは,レジデンス事業だけを単体でやることはやや効果が薄い面もあるだろうとは思いました。しかし,せっかくこういう制度を国が応援しようというわけなので,これから2つお考えを頂くべきだと思いました。
 それは全体の文化政策の中にこれをどう位置づけるのかということと関係してくるんですが,1つ目は,ほかのいろいろな制度との連携をどこまで図っていくのか。特に人材の育成等の事業とどう連携を図っていくか。これを是非お考えいただきたい。
 もう一つは,当初5年計画だったわけですが,あくまでも今回のものはパイロット事業と位置づけて,3年が終わった段階で,今後どうするかを再検討していただいて,是非さらなる飛躍という面で,双方向性,つまり外から来るのと中から出すのと,両方をやろうという目標は明確にあるわけなので,そういうことをより実を上げるためにどういう制度に変えていくと良いかという点は是非御検討いただくといいかなと思いました。以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。御挨拶と同時に,今までの御経験をお話しいただきました。ありがとうございました。
 それでは熊倉先生,お願いいたします。

【熊倉委員】  熊倉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。先般は所用のため欠席して申し訳ございませんでした。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 それでは湯浅委員,お願いします。

【湯浅委員】  ブリティッシュ・カウンシルの湯浅と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  湯浅委員には後で御発表がございます。ありがとうございました。
 今日は,3つの大きな発表をお願いしております。是非,それに関しまして先生方の忌たんのない御発言を頂戴できれば,この会が1つの大きな発展になるかと思っております。
 議題1として,教育と芸術との関係について,議題2として,日本版アーツカウンシルの試行の状況につきまして,そして議題3として,東アジア文化都市の動きについて,それぞれの御報告,そして皆様の意見交換を行うということでやりたいと思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは議題1に入らせていただきます。湯浅先生から,パワーポイントを使いまして 御報告をお願い申し上げます。大体15分をめどによろしくお願いいたします。
移動をお願いします。

【湯浅委員】  改めまして,ブリティッシュ・カウンシルの湯浅と申します。よろしくお願いいたします。
 ちょうどお手元の資料に,文化庁さんが7月16日に予定されています,「アートで子どもたちの才能を引き出すシンポジウム」にもあるように,今日本の中でもアートと芸術についてのいろんな関心と,いろんな取組が行われているところだと思いますが,本日は英国における現在の国の考え方ですとか,アーツカウンシルの取組を含めて,幾つか御紹介したいと思います。
 最初に,映像を今日は幾つか,具体的な事例も御紹介したいと思いまして持ってきております。15分なので駆け足になるかと思いますが,レジュメと参考の資料で,これはニッセイ基礎研究所の吉本さんが「地域創造」のレポートでお書きになったもの,立派な資料がありますので,そちらの方もごらんください。

(映像上映)

【湯浅委員】  今御紹介したビデオは,2002年に英国政府が始めましたクリエーティブ・パートナーシップというプログラムについて紹介したビデオです。2008年に日本のNPOの方ですとか,アートと教育に関わる方,美術家の方などをお連れして英国に視察に行った際に,先方がわざわざ字幕を入れてくれたものの抜粋です。クリエーティブ・パートナーシップにつきましては,資料1-2で吉本さんが分かりやすくまとめてくださっていますので,こちらを御覧いただきたいと思いますが,ここで1つ申し上げたいのが,クリエーティビティーを使った創造的な学習というものが,女の子がThinking outside the boxと言っていましたが,箱の外を考える,既成概念を打ち砕くような思考力をつけるということ,最後に発言された方は市の方だと思いますが,特にアーティストとかクリエーティブ産業に従事する人だけではなくて,例えばそれが銀行であり,メーカーであり,これからの経済を推進していく人材を育成するにはこういったリスクを冒せる,又はグループの中でリーダーシップをとれる,イノバティブな人材が必要だということで,だからこそクリエーティビティーを使った教育が大事だという議論だと思います。
 これをつくったときは2008年だと思いますが,英国の中でもこれからの経済を伸ばしていくとき,日本も同じだと思いますが,21世紀の中で必要な人材の育成に対してクリエーティビティーが大事だという議論だと思います。
 ちょっと背景なんですが,2010年,御存じのとおり政権交代がございまして,英国は非常に大規模な赤字があるものですから,大きな歳出削減政策を政府がとりました。その結果,2011年,細かい数字はよろしいかと思いますが,赤字になっている各省庁の予算が大幅にカットになっています。それを受けまして,同じように,文化・メディア・スポーツ省も大きく削減される中,アーツカウンシル・イングランドの予算も,2011年から4年間で30%の削減ですとか,非常に大きな分担が文化セクターにも来てまいりました。その中でいろいろな政策が,広く少なくなっていく公的な予算の中で,更に文化セクターを力強く,そしてこれからの人材を育成するためにということで,いろんな取組がなされています。ですので,背景としてはイギリスはいっぱいお金があるということでもなく,厳しい中でいろいろな政策があるということです。
 政権交代が2010年だったと思いますが,予算が確定したのが2011年の10月だったと思いますけれども,前後してアーツカウンシル・イングランドが今後10年間の戦略的枠組みを発表しています。これは,政権交代の2010年から約1年かけて,大規模なコンサルテーションですとか,いろんなものを経て,10年間のビジョンを出しています。これはAchieving Great Art for Everyoneというタイトルがついておりまして,現在もアーツカウンシルの全体的な政策の基礎になっております。また助成の枠組みの基礎にもなっています。
 その中で,5つゴールを出してあります。本当は英語で見ていただくのが一番良いかと思いますが,例えば人材のこと,またアートの質を向上させていくこと,そして最後が今日の議題に関係があります子供たち。ここのビジョンとしては,全ての子供たちや若者が芸術の豊かさを体験する機会を持つ。特に2つ,戦略事項としまして,子供たちが文化芸術に触れていく機会を向上させていく。これが子供を対象にだけではなくて,子供と一緒に作っていく,又は子供が作り出すという,主体が子供に移行しているという点があると思いますが,そうした活動の質の向上,多様性ということがこれから10年間のビジョンの中に入っています。
 これを受けていろんな政策が起きておりまして,1つはすぐに,2011年,予算が少なくなる中で,アーツカウンシル・イングランドの助成の仕組みが大きく変わりました。そこで今までの団体助成からNational Portfolio Fundingという枠組みが導入されまして,これは先ほどの5つのゴールに向かって,戦略的に助成金,公的な予算を分配していくということです。そこの中で,新たに696の新しく助成を受ける団体ができたんですが,その中から特に10団体,これは9つの地域の中で,各地域1団体を任命という形をとりまして,先ほど御紹介したクリエーティブ・パートナーシップが2011年,この予算削減のあおりを受けていると思いますが,終了しています。今まで積み上げてきたクリエーティブ・パートナーシップの上に乗る形で,クリエーティブ・パートナーシップではなく,文化機関が,地域の学校といったところと連携する,ブリッジになる役割を果たすということで,ブリッジ・オーガニゼーションと任命しました。
 ここは予算を1年間で1,000万ポンド入れているんですけれども,前のクリエーティブ・パートナーシップの時に比べて3分の1になっています。ただ,予算を削減するかわりに,パートナーシップを組んでより高い質のものを提供していこうということだと思います。
 併せて,これは2000年から既にやっているものですが,英国の教育機関,初等教育から大学機関,又は教育に関する機関全体を対象にしまして,非常に多様性のある,質の高い,多くの方が参加するプログラムをしている学校にアーツマークという認定を出しています。戦略が変わるに伴ってその内容も少しレビューが入っておりますが,2012年の段階には,約1,580の教育機関に対してアーツマークを認定していまして,これがあることにより学校の活動を認知する,又はそういった活動の向上に寄与していく,そしてその参加している学校のネットワークをオンラインで構築するようなことをしております。
 併せて,これが非常に大きいと思うんですが,2011年2月に,これまでの学校内外における音楽を使った教育の在り方についての大きなレビューペーパーが出ました。これは,文化・メディア・スポーツ省と教育省が共同でコミッションをしているところも面白いかと思いますが,2つの省庁が共同で,ダレン・ヘンリーというインディペンデントのリサーチャーにレビューペーパーを出しています。
 そこの中でいろんな提言がされまして,1つは,子供たちに対する音楽教育の在り方が,地域ですとか収入ですとか,いろんなことで差がある。それをもう少しコーディネートする必要があるというのが大きくありました。
 それを受けまして,その年の11月に文化・メディア・スポーツ省と教育省が共同でナショナル・プランを出しています。これが英国で初めての音楽教育に対するナショナル・プランです。そこで例えば学校のカリキュラムの中での音楽教育の在り方ですとか,学校外での在り方,いろんなことが書かれています。
 これの中で1つ大きな変化は,ミュージック・ハブというものが作られました。これまで教育省のお金を使って,英国では,学校の中の音楽の授業以外に,ミュージック・サービスという組織がありまして,そこが学校内外での,特に楽器を使った教育を進めていました。そのほかに,例えば音楽機関,オーケストラとか,ホールといった音楽教育があったり,それがとてもコーディネートされていなくて,予算も,アーツカウンシルから来るものもあれば教育省のものもあるというところで,一旦それをスクエアにして,音楽団体と自治体,学校,演奏家,大学機関を含めてネットワークを組むような,ミュージック・ハブという形で助成金を分配するシステムに変えました。
 この結果,今123のミュージック・ハブが全イングランドで誕生しています。ビジョンとしては,イングラント全体の5歳から18歳,全ての子供たちに,音楽を演奏する,特に合奏,楽器を使う,又は学校オーケストラとかアンサンブルとか,そういったところで演奏する機会を必ず提供するというのが大きなビジョンです。
 先ほどの予算があります,これも大きく見えますけれども,実は今まで教育省から出ていた予算がほぼ半減になっていきます。そうやって予算も少なくなる中で,パートナーシップを組むことの意義というのが高くうたわれています。
 例えばロンドンのトライバル・ミュージック・ハブというものですが,3つの行政区に,パートナーシップを組みますので,ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージック,そしてロイヤル・アルバート・ホールといった音楽の場所,劇場,音楽機関,そして大学が連携しています。
 もう一つが南ロンドンのルイシャム・ミュージック・ハブ。こちらはハブ・パートナー,デリバリー・パートナーとして30以上の団体が入っておりまして,青でハイライトをして,皆さんも名前がよくわかって,御存じのところだと思いますが,こういったところと非常に大きな連携をしています。
 これがグレーター・マンチェスター・ミュージック・ハブ,ハブ123の中で最大のハブになります。これが9つの行政区と,その下にハブのパートナーとして大学機関,オーケストラ,ミュージック・サービス,その他いろんな機関が連携して,マンチェスター地域全体の子供たちへの音楽の教授の在り方をコーディネートしていこうという枠組みです。
 少し音楽から離れますが,政権交代で予算が変わる中で,今まで美術の方では,ミュージアム・ライブラリー・アーカイブ,MLAという機関がずっと長いことイギリスにはありましたが,そちらの機関がなくなりました。その結果,ミュージアム,ライブラリーに関する機能をアーツカウンシルに移行しています。そこでアーツカウンシルが,2011年から5年間のミュージアムとライブラリーに関するストラテジーペーパーを出しております。この中でも,先ほどの5つのゴールに併せて,特に子供たちに向ける美術館,図書館の在り方についてもコメントが入っています。
 これが非常に大きいかと思いますが,ミュージック・エデュケーションのレビューをした後に,1年後になりますけれども,より広いカルチャー・エデュケーション全体のレビューがなされました。これを受けていろんな取組がまた行われていますが,この中で,24の政策的な提言があります。特に4つだけピックアップしましたが,1つ大きくありますのが,省庁間の連携,これはもともと教育省と文化・メディア・スポーツ省がコミッションしたものですが,それだけではなくて,例えば保健省,ビジネス技能省とか,総務省とか,子供に関するもの,又は教育に関する省庁を,全体がよりコーディネーションをとって連携することが非常に大事だということがありました。
 もう一つ,カルチャー・エデュケーションについてはナショナル・プランが今はないので,これもつくる必要があるのではないかという提案があります。
 もう一つアームス・レングス機関というのが,例えばアーツカウンシル,フィルム・カウンシル,いろいろありますが,そういった機関が連携していって,ダブりがなく,経験ですとか知識をコーディネートしていくことがより戦略的に進めていけるだろうという提案です。
 そして,クリエーティブ・パートナーシップがありました学校機関と芸術機関の連携の強化。
 あとは,これからの人材の育成として,特に芸術系の大学機関の役割,そこに対して今後の人材を育成する機関ということで,ある程度のきちんとした予算をつけておくべきだというレコメンデーションは入っています。これについては,文化・メディア・スポーツ省と教育省だけではなくて,ビジネスイ・ノベーション・職業技能省が連携するべきだという提言がありました。こうすることにより,より子供たちに質の高いプログラムを提供できるということです。
 この提言を受けまして,具体的に今起きているのが,先ほどあったアームス・レングス機関の連携したグループ。そして,美術館については10地域,特に美術に対する,触れ合う機会の少ない地域をターゲットとして,美術館が地域の学校その他の機関と連携して,子供たちに美術に触れる機会を提供する枠組みを作っています。
 今まで,駆け足で学校と教育と芸術についてお話しいたしましたが,3つ具体的なアート機関による,子供を対象とした学校外でのプログラムを御紹介したいと思います。これは,テートが2012年のロンドンオリンピックに向けてやったプログラムで,非常に大規模なものです。

(映像上映)

【湯浅委員】  これは,イングランド中の3万4,000人の子供たちが参加しておりまして,「ウォレスとグルミット」でアカデミー賞をとっていると思いますが,アードマン・アニメーションズと,プロのアニメーターも入りまして,3万4,000人の子供たちが,オンラインや又はフィジカルなワークショップを通して映像作品をみんなで作ったものです。これは最終的にBBC,テート,そしてこのトラファルガー・スクエアで大きな上映会もしています。世界で一番たくさんの人たちがつくり出した映像作品ということで,ギネスにも登録されたようです。
 もう一つ御紹介したいのが,これはサウスバンク・センター,ロンドンのプログラムで,年に1回,子供のためのフェスティバル,イマジンというものをやっています。サウスバンク・センターなんですが,ロイヤル・フェスティバル・ホールですとか,ヘイワード・ギャラリー,演劇機関,非常に総合的なアートフォームを扱っているイギリスの大きなアートセンターです。今年のフェスティバルでは特に,Kids Taking Overとキャッチフレーズをつけていまして,「子供たちによる,子供たちのための,子供たちのフェスティバル」ということで,実際に運営にも子供たちが関わっていたり,先ほどあったアニメーションの絵についても,例えばキーのアートワークとかポスターといったものも子供たちが描いたりしています。
 こちらは,今の英国の文化機関のこういった教育プログラムに対する考え方なんですが,特にこのサウスバンク・センターの芸術監督とお話をしたときに,エデュケーションというのが全ての,例えば違ったアートフォームのチームをまとめる1つのかなめであって,つい最近,ヘッド・オブ・エデュケーション,エデュケーション担当の部署,役割を1つ上に上げたそうです。なので,組織の中で非常に高い地位にあります。このプログラムも,いわゆるプログラミングとか,アーティスティック・ディレクションと,教育と,どこで線を引いて良いか分からない。なので,オーケストラと話していても,美術館と話していても,教育は教育,プログラミングはプログラミングということではなくて,かなりインテグレーションがされているというのが今英国のアーツ機関の特徴ではないかと思います。特にこのサウスバンク・センターはその意識がとても高いと思います。劇場の中だけではなくて,こういったパブリックスペースでも,とにかくいつも人がいっぱいいて,市民が楽しむことをミッションにしています。
 最後に,こちらはサドラーズ・ウェルズ,ダンスの殿堂と言われていますけれども,そこの大きなプロジェクトです。ここもコネクトという,ラーニングのデパートメントも非常に定評があります。このプログラム,2011年にやったものなんですが,プロの作家,作曲家,アニメーター,そしてそこのレジデントのコリオグラファー6名が入って,9歳から90歳までの一般の方が一緒に作っていった舞台のプロジェクトです。
 ちょっともしかしたら入っていないかもしれない……。これは,見ていただきますと,うまく出るか分かりませんが,ここに参加している振付家が,このプロジェクトというのは,私たちアーティストにとっても非常に意義の高いもので,インスピレーションを受ける。そして参加する人たちもインスピレーションを受ける。とてもウィンウィンの関係のある,アーティストとしてもとても大事なプロジェクトであると言われています。
 これが日本にもツアーをしたホフェッシュ・シェクターという振付家です。
 これは,最終的にいろんなワークショップですとか,トレーニングを受けて,最後サドラーズ・ウェルズの大きな舞台で発表会をやりました。そのワークショップなり,こういった活動をした最後に大きな舞台の上で一般の人が見る,そしてプロのアーティストと一緒にやるということが非常に子供たちにとっては大きな経験だったということです。
 彼女は,自分の人生を大きく変える,トランスフォーメーショナルな活動,この舞台に立つことが経験になったということを言っていました。
 こういった子供に対するプログラムの一番の意義は最後の子供たちの笑顔だと思います。非常にインスパイアーされて,大きな人生の体験を受けたということです。以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。大変貴重な映像と発表をありがとうございました。いかがでしょうか,皆様。子供たちのインスパイアーされた笑顔というのはなかなか良いものですね。そんな感じがいたします。どうでしょうか,よろしいですか。また次の先生の御発表があった後にでも,前のものに戻っても結構でございますので,進めましょうか。よろしゅうございますか。それでは,日本版アーツカウンシルの試行の状況につきまして,演劇,伝統芸能及び大衆芸能について,芸文振の関理事から御報告をお願い申し上げます。

【関日本芸術文化振興会理事】  日本芸術文化振興会,助成事業を担当しております理事の関でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは時間もありませんので,早速説明をさせていただきたいと思います。冒頭,私から総論的なことを少し御説明させていただいて,その後演劇分野,それから伝統芸能・大衆芸能分野につきまして,それぞれの分野のプログラムディレクター,プログラムオフィサーが,出席しておりますので,説明をさせていただきたいと思います。
 私どもの資料としては,配付資料2でございますので,これを御覧いただきたいと思います。
 それ以外に,私ども日本芸術文化振興会の事業の簡単な概要,それから本日のこの説明とは全然関係いたしませんけれども,国立劇場の事業として作成しております「うちわ」をお配りしております。是非御活用いただきたいと思っております。
 続きまして本日の説明でございますが,実はこの文化政策部会でヒアリングをしていただきますのが3回目でございます。その意味で,今回は演劇と伝統芸能,大衆芸能を中心にさせていただきたいと思っておりますけれども,新たにお入りになった先生方もいらっしゃいますので,全体像について私から簡単に説明をさせていただきたいと思っております。
 それでは資料2を御覧いただきたいと思います。この日本版アーツカウンシルの試行的な導入につきましてでございますけれども,平成23年度から実施しておりまして,本年度が3年目に当たるわけでございます。その上で,4ページを最初に御覧いただきたいと思います。これも全く念のためでございますけれども,「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」の中に位置づけられていて,重点戦略として記述されているということでございます。
 4ページの中ほどを見ていただきますと,アンダーラインの部分でございますけれども,文化芸術活動への支援にかかる計画,実行,検証,改善のPDCAサイクルを確立するということ。それからその下の枠の中でございますけれども,私ども独立行政法人日本芸術文化振興会における専門家による審査,事後評価,調査研究等の機能を大幅に強化し,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みを導入することが一昨年の閣議で決定されています。
 これを踏まえまして,5ページでございますけれども,23年度から文化庁から予算を頂きまして,実施してきているものでございます。
 続きまして6ページを御覧いただきたいと思います。それではこの事業の実施主体となっている私どもはどういう組織なんだろうかということでございますけれども,私どもはもともと昭和41年に国立劇場として設立された組織でございます。しかしながら,その後業務が追加されまして,平成2年からはこういった芸術の創造,普及活動に対する助成事業ということも私どもの所掌として付加されております。そのときに組織の名称も日本芸術文化振興会になっております。
 6ページの下に書かせていただきましたのは,私どもの業務の遂行に当たっての業務方法書,これは私どもが作りまして文部科学大臣の認可を頂いたものでございますけれども,この中に業務の進め方についての指針が示されております。御覧いただきますと,助成金の交付を適正に行うために運営委員会を置くことになっております。
 続きまして4条2項でございますけれども,その運営委員会は何をやるのかと言いますと,助成金を交付する場合には必ず,どういった事業を採択するのか,それについて運営委員会の議を経る,運営委員会に理事長が諮問しまして,その答申を得て助成しています。
 それから4条3項でございますけれども,それ以外にも運営方針その他,重要な事項についてはこの運営委員会で御審議いただいているというスキームによりまして,従来実施してきたということでございます。
 それから続きまして7ページは,これも多少分かりにくくて恐縮でございますけれども,私どもが扱っておりますお金は2種類あるんだということを申し上げたいわけでございます。2つ合わせますと,平成25年度におきましては大体50億円弱の助成を行う予定になっております。お金の種類として二通りあると申しましたのが,1つが芸術文化振興基金による助成金,これは政府の出資と民間から頂いたお金,653億円の基金がございまして,それの運用益によって助成をしています。
 それからもう一つは,文化庁からお金を一旦私どもが頂戴いたしまして,そのお金を文化庁に代わって交付している,いわゆる間接補助というものでございますけれども,トップレベルの舞台芸術創造事業,それから映画の創造活動支援事業,こういったものを取り扱っています。この両方を合わせますと大体50億円弱というお金になるわけでございます。
 こういうものが私どもの組織でございます。その上で,8ページでございますけれども,この新たな日本版アーツカウンシルとしてどういうことをしたのかということでございますけれども,この表に見ていただきますように,運営委員会に対して諮問・答申をするというスキームで従来やっております。それを担当するセクションとしては,理事長のもとに担当理事としての私がおりまして,事務的には基金部というセクションがございます。先ほど御覧いただきましたように,当振興会の専門性を強化するのが第3次基本方針の趣旨であろうかと思いますので,私どもの組織の中に専門家としてのPD・PO,プログラムディレクターとプログラムオフィサーを配置する。こういう形で進めているところでございます。
 それからその次,9ページでございますけれども,これも前に1度お示しした図でございますけれども,第3次基本方針にも書かれておりますように,PDCAサイクルをきちんと回すんだということでございます。しかしながら一遍にそこまで行き着きませんので,段階的に進めさせていただいているということを表しております。
 それから下の方につきましては,その新たな日本版アーツカウンシル,試行的な導入の対象とする分野につきましても,逐次拡大してきておるということを申し上げたいわけでございます。
 その上で3年目,平成25年度に何をやっているのかといいますと,本年度はあえて言えばPDCAのCのところでございまして,チェックということになろうかと思います。そこの部分だけ,具体的に何をやっているのかを若干補足させていただきますと,前の方に戻っていただきまして,2ページの下を御覧いただきたいと思います。事後評価をきちんとやるということでございます。
 具体的に申しますと,助成対象といたしました公演調査,パフォーマンスがどうであったのかにつきましては,既に実施してきているわけでございます。本年度25年度につきましては,公演調査に加えまして,実際に助成を受けた団体,助成対象団体からも自己評価書を出してもらいまして,それと私どもで実施しております公演調査を突き合わせまして評価していくことを試行的に導入しておるところでございます。
 それにつきまして,現在この運営委員会の中で,具体的には専門委員会,それから9月に予定しております運営委員会で審議しまして更に詰めていきたい。その上で,今年度助成対象となっております活動,25年度に行われている活動につきましては,トップレベルの舞台芸術創造事業全ての活動をそういった事後評価の対象といたしまして,その結果を踏まえて次の採択等につなげていくということで,サイクルを回していきたいと考えておるところでございます。
 以上でございます。
 続きまして,それぞれの2つの分野のPDの方から御説明させていただきたいと思います。

【酒井日本芸術文化振興会プログラムディレクター】  演劇のプログラムディレクターをしております酒井と申します。よろしくお願いします。
 平成24年度の演劇分野のトップレベルの舞台芸術創造事業は,助成件数が126件で助成金交付額が7億5,000万円でありました。
 昨年4月にPD・POが就任しまして1年間を通して行ったことについて,先ほど関理事が説明したとおりでありますが,演劇分野の審査基準の作成,採択団体の調査,それから25年度の審査に対する助言,そして,ここにも書いてございますけれども22団体との意見交換会を行いました。
 その中で特に特徴として挙げられますのは,最初に書いてあります演劇分野の特徴として,創作初演が多いということです。全体の60%が創作初演です。創作初演が多いということは,それに関わる問題点等も今後いろいろと出てくると思いますけれども,創作初演が圧倒的に多いということです。
 それから,中核的団体,劇団等のヒアリングを行ったことで,ここにも書いてございますけれども,我々が団体に対してアドバイスをすることが可能になり,その効果が現れたという状況があります。これからますますそういうことが増えてくるものと思われます。
 そして今後の問題として,実は助成対象経費というのがありますけれども,脚本料,演出料,出演料,特に稽古手当がまだ,演劇業界は各団体によっての差が余りにも激しいものですから,これらを中核的団体と相談しながら,ある一定の基準を作らないといけないのかなという状況です。主な点は以上のとおりでございます。

【星野日本芸術文化振興会プログラムディレクター】  伝統芸能・大衆芸能分野のプログラムディレクターの星野と申します。それでは簡単に報告させていただきます。
 そこに書いてありますように,伝統芸能・大衆芸能分野は,24年度のトップレベルの舞台芸術創造事業としまして,助成件数が51件で助成金交付額が1億2,700万円で,伝統芸能が33件,大衆芸能が18件という内訳になっております。その次の点でございますけれども,この分野はほかの3分野と比べて,伝統的な芸能の分野でございますので,上演される演目はどちらかというと再演ものが多いということであります。中には大衆芸能では,時代の流行を取り入れたものを演ずることもありますけれども,大まかに言って伝統的なものを演ずるということでございます。そういうことで,審査基準とか公演評価基準には多少ほかの分野と違って再演ものが多いということも考慮した形となっております。
 それから,この51件につきまして70%ほどの公演調査を行ったわけでございます。また,演劇の方でもございましたように,事業を行う公演団体の実情を伺ったりする意見交換を実施しておりますが,昨年度,ちょうどこの季節ですが,9団体と行い,その後も数団体と行っておりますが,そういう中で団体側からも,現状とか現在直面している問題についてどうでしょうかというアドバイスを求められるような話もございまして,できるだけそういうことを解決する方向に沿うように努めているところでございます。
 重立ったところだけを御報告いたします。以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。関理事と酒井先生,星野先生,ありがとうございました。皆様いかがでしょうか。先ほどのブリティッシュ・カウンシルについてでも結構でございます。今の日本版アーツカウンシルについても結構でございますが。アーツカウンシルに関してはスタートしたばかりなので大変御苦労が多かったと思いますが,いかがでしょうか。どうぞ。

【佐々木委員】  先ほど湯浅委員から大変貴重な御説明を頂いたんですけれども,クリエーティブ・パートナーシップという事業は私も非常に関心を持っていて,イギリスの専門家とも意見交換をしたことがあるんですが,そのときに教育省,移行するというか,打ち切られてその後,今日お話があったように新しい事業になりましたね。アーツカウンシルが主体でやっている段階と,教育省と共同でやっていく段階で,事業の趣旨とか,あるいは実際に何か問題あるかどうか。
 私が意見交換をした専門家に言わせると,教育の原理というか,それと芸術の原理ですね。そこでその方はやや,ぶつかるとは言いませんが,ちょっと趣旨が変わってくるのかなということを言っておられたんです。これは翻って言えば,かつて梅棹先生が,文化と教育というのは違うんだという話をしていたんですけれども,そういう形で,クリエーティブ・パートナーシップ事業そのものは創造性を教育の中に持ち込むわけだけれども,教育省のプログラムとの関係性ですね。ここはイギリスでは議論はあるのかどうか,もし分かれば。

【湯浅委員】  多分キーはパートナーシップだと思います。あとは,クリエーティブ・パートナーシップにおいても,例えば美術の先生がやっている授業,音楽の先生がやっている授業にとって代わるということではなく,学校で先生たちがやっているものを,別なアートの専門性をもって補完していくという考え方でということはすごく言われていますので,多分現場で,例えばミュージック・ハブも始まったばかりで,皆さんが手探りの状態なんですけれども,その中でも恐らくクリエーティブ・パートナーシップは,2002年から2012年まで約10年あった中で,そのスキームがなくなっても,アートの機関と教育機関の対話とパートナーシップの在り方は,かなりこの中で根づいているという印象を私は持っています。

【宮田部会長】  ありがとうございました。それでは,時間の関係もございますので,1歩進めさせていただきたいと思います。また御質問等は後でお伺いするということでございますが,次に,東アジア文化都市の動きについてでございますが,この動きは日中韓の3か国が文化芸術の力で連携協力をして,共に関係を強化する,発展しようとする取組でございます。その動きを文化庁から,また2014年に東アジア都市の候補都市である横浜市長である林先生においでいただいておりますので,御報告を頂きたいと思います。よろしくお願いします。それでは初めに,先生からスタート,口火切りをしていただきたいと思います。

【林委員】 横浜市長の林文子でございます。5月20日に横浜市を2014年の東アジア文化都市の国内候補都市に選定していただきました。横浜市がこれまで取り組んできた,文化芸術の力を活かしたまちづくりの実績を評価していただいたことを大変感謝しています。
 本日は,横浜市が東アジア文化都市を開催していくに当たりまして,どのような考えで企画提案を行ったのか,また国内候補都市としての決定を頂いて,これからどのようにこの東アジア文化都市の事業を展開していくのかについてお話しさせていただきます。
 はじめに,私どもは横浜市の目指すべき都市像として,今画面に映しておりますが,4つを掲げています。その筆頭が,「文化・芸術,にぎわいと創造性に満ち,活力あふれる都市」です。本物の文化芸術に触れ,感性を育むことは厳しい時代を生き抜いていく心の糧になります。魂が揺さぶられるような感動を紡ぎ出して,その感動を共有し合う空間と時間に恵まれた都市に人々はおのずと吸い寄せられるのだと思います。そのために世界の多くの都市でも,文化芸術がもつ力を生かした都市戦略に取り組んでおり,正に経済成長戦略にもなっているわけです。横浜の多くの文化的資産を活かして,都市の新しい価値や魅力を生み出す創造都市の取組をいち早く進めてまいりました。
 昨年末には,「横浜市文化芸術創造都市の基本的な考え方」を策定し,文化芸術都市として選ばれる都市を目指しているところです。このような都市づくりに取り組んでいる横浜で,今回の東アジア文化都市を開催させていただきたいと考えております。
 それでは次に,横浜市の創造都市政策の歩みについてお話しさせていただきます。
 横浜市では,旧市街地の活力低下が懸念される中で,文化芸術の力を活かして,都心部の活性化を図る創造都市政策を,2004年に全国に先駆けて打ち出してました。歴史的建造物や倉庫,空きオフィスなど,地域資源を転用し,アーティスト,クリエーターが創造的活動を展開する拠点を整備して,その運営の多くをNPO法人が担って,まちづくりにインパクトを与える活動が展開されています。
 また創造都市のリーディングプロジェクトである横浜トリエンナーレは,日本を代表する現代アートの国際展として定着しており,次回展で第5回を迎えます。更に,多くの拠点施設においてアーティスト・イン・レジデンスなど,多様な事業を実施しています。
 2008年にこれらの施策を評価していただき,文化芸術創造都市部門の文化庁長官表彰を初代受賞させていただきました。また今年の1月13日に設立されました「創造都市ネットワーク日本」においても,幹事団体の代表に選出していただきました。
 それでは改めて,東アジア文化都市開催に向けた横浜の強みをお話しさせていただきます。
 まず第1は,港と,にぎわいが調和した美しい街並みです。長い期間を経て造り上げられたこの街並みを本当に横浜市民は誇りに思っております。
 2点目は,開港当時の面影を残す歴史的な資産を,現代の都市に魅力を与える資産として保全活用しているところです。例えば,横浜のシンボル的な建築物であります横浜ランドマークタワーのドックヤードガーデンは,旧三菱重工の横浜造船所の跡地をイベント広場に生まれ変わらせたものです。「一本刀土俵入り」などの作品を残した,大衆流行作家である長谷川伸さんが少年時代にこちらに勤めていたということです。
 また桜木町駅と新港地区を結ぶ「汽車道」は,鉄道の廃線の跡地を遊歩道として整備し直したもので,多くの市民や観光客が景観を楽しみながら往来できる場所になっています。このような横浜ならではの魅力的な空間を生かした事業展開を目指しています。
 そして世界的な国際会議を開催できる力です。先日,TICADⅤ,第5回アフリカ開発会議が終了しました。多くのお客様に海外からお越しいただき,横浜のホスピタリティーについて大変評価していただきました。これは施設があるというだけではなく,おもてなしというホスピタリティーあふれる心が,市民ボランティアに至るまで行き渡っているという強みです。東アジア文化都市の横浜開催に当たっても,こうしたホスピタリティーを生かして国内外からのお客様をおもてなししていくつもりです。
 さらに,美術や音楽から伝統文化に至るまで多様な専門文化施設も存在しています。2011年に続き,2014年に横浜トリエンナーレの主会場となる『横浜美術館』,年間を通して数多くのコンサートが開かれ,「海の見えるコンサートホール」として親しまれている『みなとみらいホール』,古典芸能に対する高い企画力・制作力が評価されている『横浜能楽堂』,落語・漫才など大衆芸能の専門施設である『横浜にぎわい座』などはその好例です。指定管理者制度を横浜市も導入しておりますが,こういった専門的な文化芸術施設については指定管理の期間を10年に延ばすといった工夫もしているところです。
 さらに,創造的な活動を展開する人々の意欲を刺激して,創作,発表,滞在,居住を促すような環境を横浜市はつくっております。こちらの写真にあるような,芸術家の方が住みたくなるような環境を目指しています。
 また,こうした活動をサポートするアーツコミッションが存在しております。これはアーツカウンシルと同様,ここを通して子供たちに一流のアートに触れる機会を提供し,参加してもらうということもやっているわけです。さらに,様々な助成制度,担い手同士のネットワークがあることも大きな強みです。
 今回の東アジア文化都市開催に当たり,横浜市が提案したポリシーは,今御紹介しました強みを活かしながら,創造産業の創出による経済の活性化,文化芸術の振興,国際発信力の強化と相互交流,そして観光振興,こうしたことを主軸として,創造的なまちづくりを実現すること。そして今まで培ってきたノウハウを生かして「まち全体での東アジア文化都市」を開催することとしております。
 そして2つの「コア事業」を御提案しました。
 ひとつは「ヨコハマトリエンナーレ2014」です。アーティスティック・ディレクターに森村泰昌さんをお迎えし,「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」というテーマで実施させていただきます。東アジアをはじめとする各国・地域からの作家に出展していただく予定です。
 またもうひとつのコア事業として,アーティスト・イン・レジデンス事業の実施がございます。横浜市では,現在ヨコハマ創造都市センターのほか,黄金町やBankARTなど,複数の拠点でアーティスト・イン・レジデンスを実施しています。2014年には,東アジアの作家を中心とした制作作品の展覧会や,参加作家によるシンポジウムを開催し,アーティスト・イン・レジデンスの素晴らしさを世界に向けて発信してまいります。 これらコア事業のほか,様々な既存事業と連携しながら,東アジア文化都市を盛り上げていく御提案をさせていただいたところです。
 そして現在,具体的な事業計画の策定に取り組んでいます。まず東アジア文化都市横浜開催のコアコンセプトですが,画面に御覧いただきますように,「競争から共創へ」,「From “Competition” to “Collaboration”」といった考え方を検討しております。横浜をはじめとして,東アジア域内の各都市は都市間競争という厳しい現実に直面しています。そのために,今までは他都市を競争相手として捉えてしまう傾向がございました。お互いを高めていくという意味では競争関係を続けていくものと思いますが,文化芸術には言葉を超えて,人と人,国と国とをつなげる力があります。この東アジア文化都市の開催を契機に,相互交流を通じて相手のことをより深く理解し,共同して新しい文化活動や,産業を創り出していくことで共に発展していく関係が構築できれば,本当に素晴らしいと考えております。このような思いを込めまして,「競争から共創へ」といった考え方をコンセプトに盛り込んでいければと考えているわけです。
 事業イメージでございますが,取組の柱として,国家的文化プロジェクトである東アジア文化都市の初めての開催ですので,祝祭感を持った事業として,国全体での盛り上がりが図れるようにすること,また横浜を窓口としながら,国内他都市と連携した事業を考えること,そして日本から東アジア,世界へ発信していく事業としていくこと,この3点を現在考えています。
 事業の詳細につきましては,今後とも文化庁と御相談しながらしっかりと詰めてまいりたいと考えていますが,一例を挙げますと,東京芸術大学の御協力を得まして,日中韓の学生やクリエーターによるアニメーションなどの共同制作と発表を行い,映像クリエーターの人材育成につながる事業を展開する,また日中韓を代表するアーティストが横浜でコンサートを開催するなど,東アジア文化都市を盛り上げる事業を展開していきたいと考えております。そして創造都市ネットワーク日本をはじめとした国内他都市にも呼びかけ,それぞれの都市の文化的特徴を活かしたイベントを開催することで,日本の伝統文化,生活文化を発信する事業を展開していきます。今後,こうした事業をより具体的に提案していきたいと考えております。
 そして,事業スケジュールでございますが,既に2014年の事業開始に向けて,文化庁の御協力を得ながら実施に向けた様々な調整を行っております。また,事業実施前から期待感・高揚感が湧いてくるようなプロモーションを実施するとともに,その後も適切な時期と手法を選びながら効果的なプロモーションを展開していきます。そして2014年の2月末から3月の初めに,オープニングセレモニー及びイベントを開催してまいります。オープニングイベントについては,東アジア文化都市開幕を広くPRできる取組としていきます。その後,10月上旬から11月上旬をコア期間としながら,12月のクロージングまで東アジア文化都市の趣旨に合致する様々な文化芸術事業を展開してまいります。
 そして,東アジア文化都市の取組及びそこから生まれる東アジア各国との文化交流につきましては,2014年だけで終わらせることなく,その後も継続的に取り組んでいくことが必要だと思っています。横浜は次の東アジア文化都市が日本で開催される2017年までの3年間は,日本における東アジア文化都市として,文化芸術活動に加えてクリエイティブ産業や観光の振興に取り組んでまいります。国におかれましても,2014年にとどまらず,東アジア文化都市の継続的な実施についても御支援をいただけるように是非ともお願いしたいと思います。
 前回の会議で,下村文部科学大臣の御発案で「文化芸術立国中期プラン」を立案されており,2020年のオリンピック開催と同時に,日本全国で様々な文化芸術事業を展開していきたいというお話がございました。また,被災地の復興に向けて,全国の自治体も協力して様々な芸術活動を,みんなで集まってやったらどうかという素晴らしい御提案もありました。そうしたお話も含めて東アジア文化都市として何ができるのか,今,横浜市としても考えているところでございます。
 御説明の時間を頂戴いたしましてありがとうございました。以上でございます。

【宮田部会長】  林先生,ありがとうございました。大変すばらしい発表でございました。東アジア文化都市の大きな戦略,3年間における,これからの成果等も含めて,期待できるものかと思っております。
 先ほどお話の中で文化庁長官表彰を初年度でとられたという,余談でございますが,あのトロフィーは私がつくったんです。

【林委員】  イルカの……。

【宮田部会長】  そうです。

【林委員】  イルカはやさしい心の象徴ですので,ありがとうございます。

【宮田部会長】  ありがとうございます。これは速記しなくて結構でございます。 それから,ドックヤードガーデンだとか,汽車道とか,恐縮ですが我が大学も横浜市に新しい拠点を置かせていただいて,アニメーション等を含めて映像研究科が新しい展開をしていくときに,やはり大学だけの力ではとても及ばないところを大変横浜市の力を頂戴しております。同時に,文化庁からもいろんな意味での御支援を頂いているということでございます。「競争から共創へ」というのは大変よろしいですね。From Competition to Collaborationということで,こういうキャッチフレーズもとても大切なことかなという感じがしております。
 さて,今日は3つのお話を頂きました。この件に関しまして……。

【内田企画調整官】  部会長,すみません。その前に,文化庁の国際課から,東アジア文化都市の施策全般について御説明させていただきたいと思います。どうもすみません。

【宮田部会長】  失礼いたしました。加藤先生,その後でよろしいですか。

【中野国際文化交流室長】  文化庁国際課の中野でございます。よろしくお願いいたします。
 今,林市長から非常に良い御説明,プレゼンテーションがございまして,その関係の話で,そもそも東アジア文化都市というものはどういうものであるか,文化庁として何を目指しているのかということについて簡単に御説明させていただきたいと思います。お手元の資料3,パワーポイント資料に基づきまして簡単に御説明させていただきます。
 この東アジア文化都市というのは,2段目の「経緯」のところに書いてございますとおり,2011年1月の第3回日中韓文化大臣会合,これは奈良で開催したものでございますけれども,ここで日本から,東アジア文化都市事業を日中韓の枠組みでやろうと提案いたしまして,その次の回の,昨年5月の第4回日中韓文化大臣会合,上海で行われたものでございますけれども,来年1月,2014年から開始しようということで合意しまして,どういう形でやっていくかについての簡単な段取りについて,上海行動プログラムという文書に記載されたということでございます。
 この名前が東アジア文化都市ということで,これから日中韓3か国の枠組みでやろうとしているんですけれども,名前が東アジアとついているのは,将来的に東アジア,日中韓だけではなくて,ASEAN諸国とも連携しながら,もう少し広い東アジア地域で文化都市事業をやっていこうということを考えた上でのネーミングでございます。
 ヨーロッパでは1985年から欧州文化首都というものがございまして,そこでいろいろな文化芸術の力を生かして,都市づくり,まちおこしをやろうという試みがなされていまして,アジアにおいても同じようなことができないかということで始めた事業でございます。
 その東アジア文化都市とは何かということが概要に書かれているとおりでございまして,文化芸術の力を生かして発展を目指す都市を東アジア文化都市として決めて,1年間を通じていろいろな文化事業を行っていくということでございます。分野は,2つ目の黒丸にあるとおり現代の芸術文化から伝統文化,生活文化に関連する様々な文化芸術事業を実施していくということで,3つ目の黒丸にその目的が書いてございますけれども,東アジア域内の相互理解・連帯感の形成を促進すること,東アジアの多様な文化の国際発信力の強化を図ること,そしてその文化都市がその文化都市的特長を生かして文化芸術・クリエーティブ産業・観光の振興を図り,継続的に発展するということを目的とした事業でございます。
 2014年から開始するわけですけれども,2014年につきましては,日本・中国・韓国,それぞれ1都市ずつを選びまして,最初は3か国同時にその文化都市事業を開催するということでございます。日本は今年5月に横浜市さんに候補都市になっていただきまして,今どういう事業を行うかについて,横浜市さんとの間でいろいろと協議させていただいているところでございます。
 韓国もほぼ同じタイミングで,光州広域市を2014年の文化都市の候補として決めるということで,公表したところです。中国が少し後れておりますけれども,現在中国の文化都市をどこにするかについて,中で選定作業を進めているということでございます。
 2015年以降は,日中韓3か国の中から毎年1都市ずつということで,日中韓のそれぞれの了解事項として,2015年は中国,2016年は韓国,2017年は日本,その後おおむねその順番でローテーションを組んで,2020年は日本で文化都市を開催できるのではないかと期待しているところでございます。
 ここで横浜市さん,光州広域市さんは,2014年の国内候補都市という名前がついているんですけれども,これは今年,日中韓文化大臣会合が行われる予定でして,時期はまだ日中韓の中で調整中でございますけれども,できれば秋ぐらいに文化大臣会合を開催いたしまして,正式に3か国の大臣の決定事項として決定いたしまして,発表したいと考えておるところでございます。
 裏面に,この東アジア文化都市の事業計画ということで,先ほど市長から,横浜市さんのアイデアについて御説明させていただいたところでございますけれども,今まさに横浜市さんとの間でどういう事業を行うかについて協議をさせていただいているところでございまして,非常にすばらしいアイデアを頂いておりますので,引き続き協議をさせていただきたいと考えております。
 大きく分けまして,先ほどの横浜市さんのプレゼンテーションの紙にもございましたとおり,開会イベントと閉会イベントが最初と最後にあり,おおむね2月,あるいは3月ぐらいに開会イベントを開催する。これは日中韓それぞれ各国で開催イベントを行い,最後には次の開催都市につなぐ閉会イベントを実施する。その間に,1年を通じていろいろな文化事業をやるんですけれども,特に,秋に集中月間のような形で集中的に文化事業を開催する形にしたいと考えております。できればその間に,日中韓の文化都市,文化大臣会合も秋に開催したいと考えて準備を進めていきたいと考えております。
 中核期間中の事業例については,今ここに書いてあるとおりでございまして,こういった事例,あくまでも案でございますので,先ほどのプレゼンテーションと重なっている部分も多々あると思いますけれども,具体的な中身をこれから協議させていただきまして,つくり上げていきたいと考えております。以上でございます。

【宮田部会長】  中野さん,ありがとうございました。文化庁から御説明がございました。それでは加藤先生が手を挙げられたので,どうぞ。

【加藤委員】  東アジア文化都市の候補都市に横浜が選ばれたことについて,本当に心からお喜びを申し上げたいと思います。と申しますのも,林市長は全く御存じないと思いますが,私は2002年から横浜市の文化政策に関与させていただいて,創造都市政策が2004年に全国に先駆けてできたという,その前段の段階から関わらせていただき,2004年から横浜市の芸術文化振興財団にも籍を置かせていただきました。今まで,それからこれからを眺めますと非常に感慨深いものがあって,よくぞここまで発展継続していただいたなという点に深く敬意を表したいと思います。
 しかしながら,今拝見していると,揚げられた事例のほとんどに自分が関係してきたことを改めて確認しました。新たな施策がやや少ないのではないか。その上で,残念ながら,私は林市長の覚えがめでたくなかったので,横浜市から離れてほかのところへ異動してしまいましたので,私のことを言いたいわけではなくて,1つだけ是非お願いしたいなと思うのは,横浜市の職員,また民間の方々,NPO等で,現場で井戸を掘った方がいるんだということを是非忘れないでいただきたいなということでございます。いろいろその後の話を聞いていると,本当に現場で井戸を掘り,汗を流された方々が,今余りこの創造都市の中で活躍できていないんじゃないかという点を残念に思っている点がございます。そのあたりを是非御配慮いただいて,今度のトリエンナーレのテーマが「忘却」なのでやむを得ないかなとは思いつつも,改めて御配慮を頂きたいなということを一言お願いしたい。何も水を差したいわけではないので,このことを是非お願いし,今後とも創造都市を継続して取り組んでいただけることを期待します。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。とてもいいお話かと思います。熊倉先生。

【熊倉委員】  今の東アジア文化都市に関しては私も加藤委員と同じで,最初の創造都市政策の立ち上げのときに少し関わらせていただいて,拠点の1つや2つではなくて,加藤さんが,「かいわいをつくらなければ駄目なんだ」と言い放ったのを今まさに懐かしく思い出して,ここまで発展してくださったことを本当に心よりお祝い申し上げる気持ちは同じです。
 1つ,是非お考えいただきたいのは,先ほどのイギリスのクリエーティブ・パートナーシップ,先ほどのDVDは私の学科で,全1年生の必修の授業で,必ず毎年見せているものなんですけれども,正にそういう人材を育てようと東京芸術大学でも頑張っているんですが,10年間の事業で,パートナーシップという大きな新たな仕組みといいますか,人々の考え方といいますか,そういうものが生まれた。それが次の新しい制度の中でも生かされてきて,恐らく最初は,先ほど佐々木委員から御指摘があったように,梅棹先生がおっしゃったような,「教育はチャージ,文化はディスチャージ」というところで,日本でもたくさんこういう教育現場にアーティストを派遣する試みは行われていますが,まだ全面的に展開しているとは,残念ながらこの20年間で言えない状況で,その1つに,確かに御指摘のような,教育者の考える価値観と芸術家がそこに持ち込む価値観との間にコンフリクトが生じる。しかしそのコンフリクトに意味があるということだと思うんです。そのコンフリクトをクリエーティブなものだと認め合って,パートナーシップが,10年かけてそういうことが良いねというものが根づいていく。それがクリエーティブ・パートナーシップのレガシーだったと思うんですが,この東アジア文化都市,先ほど御説明にもありました欧州文化首都でも,開催をした後でのこういったパートナーシップのレガシー,あるいは市民の意識が大きく変わるレガシー,新しい文化政策のレガシーというものが多くの町で残っているからこそ,みんなこぞって手を挙げるとなっていると思うので,今回のこの横浜は,一体開催後にどのようなレガシーを目指していらっしゃるのか,是非考えていただきたいなと思いますし,決して,いわゆる代理店さん型のイベントで終わってしまうことがないようになると良いなと願っております。

【宮田部会長】  ありがとうございました。

【太下委員】  本日,日本版アーツカウンシルの試行の状況について御報告いただきましたので一言,あと,最初の芸術と教育についても一言お話ししたいと思います。
 日本版アーツカウンシルの試行につきましては,タイトルのとおり,試みの行いなので,是非現状の体制が良いのかどうかというところも含めて御検討いただきたいと思います。その際に現状の助成件数や金額,そして現状の体制がおありになるかと思いますけれども,一方で御案内かと思いますが,下村文科大臣が文化予算を倍にしていくと勇ましくおっしゃっていただいていますから,現状のこの事業が,仮に2倍,3倍になるかもしれないという想定で,現状の事業の見直しも根本から考えていただきたいと思います。
 具体的にどういうことかと言いますと,PD・POの皆さんのお立場は現在は非常勤職員であると認識していますけれども,予算が倍増するかもしれないという前提の時に,果たして永遠に非常勤のままの体制でアーツ・カウンシル業務をずっと続けられるのかとかどうかという疑問があると思います。ここで言う体制とは契約形態のほか,人数もしかりです。さらに,特に今日御報告いただいた演劇分野と伝統芸能・大衆芸能分野に関して,仮に助成件数が倍になったとしたら演劇の分野は250件ほどになりますけれども,これを東京で一元的に見ていくことが果たして適切かどうかという点が論点となると思います。伝統芸能も同様ですね。こういった点も含めて,是非今後の体制を今回のこの試行の中で検討していただきたいと思っております。これがアーツカウンシルについての意見です。
 あと,湯浅さんから非常に貴重な御報告を頂いた,教育と芸術の関係についてですけれども,やはり次の時代を担う子供への支援やサポートは,正に未来への投資ということですので,これは予備校のコマーシャルじゃないですけれども,「いつやるの」と言ったら「今でしょ」と,正に今,力を入れてやるべき分野だと思うのですね。
 一方で,日本もこの分野に関しては非常に力を入れて実はやっていると思う部分がありまして,例えば「次代を担う子供の文化芸術体験事業(巡回事業)」があげられます。この事業においては,プロのオーケストラとか劇団とか,パフォーミング・アーツの団体を全国の小中学校に送るということを行っています。この事業では,子供たちがふだん使っている体育館が劇場になるという劇的な体験のほか,本公演の事前にワークショップをやり,本番の体験が続くという,非常に丁寧な事業でして,経費は相応にかかっているわけですけれども大変効果の大きい事業ですから,この事業をもっと拡充していってほしいと私は思っています。今回イギリスの事例を我々は学びましたけれども,私が御紹介したような子供の文化体験事業を大規模に行っている先進国は,私が知る限りほかにないですから,世界に堂々と発信していただきたいと思います。
 イギリスの事業について言いますと,是非イギリスのようにクリエーティブなスキームを日本も取り入れていっていただきたいと思います。私も英国のクリエーティブ・パートナーシップを取材しているのですけれども,イギリスでは映像に関するチャレンジが非常に進んでいる部分があります。例えば,フィルム・インスティテュートとNPOのファースト・ライトが組んで,子供たちに映像体験をさせている事例があります。これはどういう意味があるかというと,今インターネットの普及で,特にYouTubeでは1分間に100時間分の映像の登録があり,映像があふれにあふれているわけです。今回の東日本大震災においても特徴的でしたけれども,いろんなメディアを使って個人もニュース映像を発信できる時代になったわけです。こういう時代になってくると,我々の子供たちの世代は,テレビ放送とか,出版の大メディアでないところからもいろいろな映像や情報を受け取ることになります。その際に,それらが果たしてどういう意図で作られた映像なのか,判断がつかないわけです。更にいうと,それらが正しいのか間違っているのかも,にわかには判断がつかないという状況があるわけです。こういった映像に限らず,インターネット経由の情報を受け取ることについてのリテラシー教育が非常に大事になるのすけれども,これに対しては必ずしも良い決め手はないのです。
 ただ,1つ有効な方法があって,それは子供たち自身に1度映像のつくり手になってもらうということです。例えばですけれども,中東で紛争があったときの映像をアメリカのCNNが撮るのと,中東のアルジャジーラが撮るのとでは,映像や内容は絶対に違ってきますよね。そういった意味で言うと,1度子供たちをつくり手の側にさせると,つくった映像には必ず意図があることが子供たちにも理解できるようになるわけです。そういった意味で映像の分野についても,子供たちの体験事業を是非力を入れてやっていく必要があると思っています。以上です。

【宮田部会長】  大変貴重な御意見ありがとうございました。平田先生。

【平田委員】  せっかく沖縄から来たので是非一言だけ。すみません。2つだけお話ししたいと思いますが,1つは湯浅さんのレポートはすごく良いと思います。イギリスのアーツカウンシルというのはある意味トップランナーであり,フロントランナーでもあると思うんですね。そしてそこが今教育と強烈に結び合いながら,新しい展開をしていくというのは,実は私も前から試行しているところの,子供たちが主体的になる授業は非常に重要だと思うんですね。太下さんがおっしゃったみたいな授業もあると思うんですが,大事なことは,チルドレンフェスティバルの中で,子供たちの,子供たちによる,子供たちのためのフェスティバルをつくるというように,Next Generation Changes the Next,要するに次の世代が次を変えるんだということを,子供たちから次の時代を担っているということをどう感じさせていくかというところだと思うんです。
 これは実際に沖縄では是非やっていこうことで,これまで私が12年間やってきた活動を踏まえて,昨日公益財団法人の沖縄県文化振興会の理事長になりましたので,是非これを強烈に進めていきたい。改めてそういったふうに意を強くしたものでございます。
 もう一つは,アーツカウンシルに関しましては,沖縄でも今沖縄版アーツカウンシルを24年度,去年からやっていますけれども,非常に試行錯誤しながら我々もやっております。そういった面では,今日の事例も本当にためになりましたが,やっぱり我々,課題としては事後評価の方法,どうやって評価をするのか,分析が一番難しい。このあたりに関しましては,申告制もあると思いますけれども,そのラインをどうつくっていくかということによって,今後この予算をこれから財政課にとりにいくときに,是非このあたりをしっかりさせていかないと,県の方でも予算化は今後も難しいのではないかと思っていますので,そういったところを意見交換しながら,是非学ばせてもらいたいなと思っております。
 沖縄としては,この文化団体の法人化ということで基盤整備をまず図ることで,しっかりとした税金を納められるような,文化団体がどのぐらいできるかというものも1つの評価としながらやっていきたいと思っていますので,よろしくお願いします。以上です。

【宮田部会長】  大変良いお話をどんどん頂いておりますので,時間が過ぎましたけど,いいですか。次の予定のある方もいますけれども。片山先生,お願いします。

【片山委員】  片山です。できるだけ短く話します。日本版アーツカウンシルの試行に関して質問と要望なのですけれども,PD・POの導入と同時に,トップレベルの舞台芸術創造事業については,従来の赤字補塡型の補助金システムから,そうではない形にかわったわけですけれども,その影響はどうでしょうか。内部留保ができているのか,それがどういう形で今度の投資に向けられているのかといった状況について,もしお気づきの点があれば教えていただきたいというのが質問です。
 それから先ほどのお話の中で,助成対象団体に対していろいろアドバイスをされているとのことでした。そこで是非お願いしたいのが,事業をやってゼロ清算をして終わるということではなくて,赤字補塡型ではなくなったという趣旨は,やはりそこに内部留保をつくって,それが次の創造的活動にきちんと投資されていくことが意図されていると思いますので,その辺がうまくいくようなアドバイスをPD・POの仕組みの中でやれるようにしていただけると効果があるのではないかというのが要望です。

【宮田部会長】  ありがとうございます。河島先生。

【河島委員】  アーツカウンシルのことで,私も質問なんですけれども,資料を頂いた1ページ目のPDの配置というところ,音楽,舞踊,舞踊というのが2つあるんですけれども,これは演劇の間違いなのでしょうか。まずそれが1点と,あと,このPD・POの導入に当たっての仕組みづくりをする文化庁の研究調査会だったかと思うんですけれども,私はそれにも関わりまして,かなりいろいろなことを議論した上での制度だと考えているんですが,そのとき,特に演劇に関しては,東京だけではカバーし切れなくて,全国にPD・PO以外で,ある種協力員のような人を配置して,その人たちが日常的にいろいろ見ていくということをして,情報を収集していく必要があるのではないかということが結構言われていたんですね。地域間格差をどう埋めていくかという点で。その点についての現状と今後のお考えを伺えたらと思います。

【宮田部会長】  わかりました。何点か質問事項がございますよね。今それをお話しした方がよろしいでしょうか。それとも,メール交換をしていくという方法もこれからございますが。

【近藤長官】  まとめて,関連のものをお答えいただく方法で良いと思います。

【宮田部会長】  そうですね。じゃあ,あとの先生方も,どなたかお話をして,そしてまとめてお答えいただくことにしましょうか。よろしゅうございますでしょうか。じゃあお話を。よろしいですか。赤坂先生,どうぞ。

【赤坂委員】  今の一連の議論をお聞きしながら,僕なんかは福島県立博物館という地方からそういう動きを眺めているんですね。そうすると,例えば創造都市といったとてもチャーミングな試みが,地方におりてくると一体どういう状況になるのかをさんざん見てきていますので,地方からこうした動きを支える。例えばイギリスの例ですと,既に地方に随分たくさんのネットワークができている。そうしたネットワークをきちんとつくっていくことを最初から想定して動かないと駄目だろうなと思います。
 その中で,ちょっと唐突なんですけれども,僕がずっと現場で感じてきたことですけれども,日本では美術館と博物館が分かれているんですね。でもミュージアムじゃないですか。その分かれているということが地域の現場にいるととても制約になるんです。僕らは博物館で漆の芸術祭をやったり,あるときには通常の展示室の中に現代アートの人たちを数十人呼び込んで,そこで作品制作をしてもらうようなことをやったりしました。現場は大騒ぎです。つまり,何で博物館がアーティストを呼び込むのか,何で縄文土器の横に作品を並べるのかとか,大騒ぎになるんですね。僕は大変自信がありますけれども,美術館が漆の芸術祭をやるのと,博物館が漆の芸術祭をやるのは全く違います。つまり,漆のすぐれた作品を展示するのではなくて,漆って何なんだろうという問いから始まって,木地師から描師から,塗師から蒔絵師から,全てを巻き込んで,しかもそこに現代アートの人たちが入り込むとか,そういうことが起こったときに初めて地域の芸術とか文化が活性化されていく。その仕組みのあたりにも文化庁としては刺激を与えて,博物館と美術館の垣根を低くするみたいな動きに対して支援をしていただけると,我々は何かやるごとに大騒ぎになって,「そんなことは博物館の仕事じゃない」とそっぽを向かれたりしているんですけれども,僕は間違いなく,芸術と教育というテーマも,我々のような博物館が舞台になってやることにものすごく意味があると感じていますので,是非,ちょっとずれているんですけれども,提案させていただきます。

【宮田部会長】  紺野先生,よろしくどうぞ。

【紺野委員】  助成に関する質問なんですが,後で個別に御協議いただいても構いませんが,良質な演劇を全国で上演したいと思い,今ちょうど来年度の事業計画をしている最中なんですが,助成の決定がなされるのはその後ですよね。ですから,助成があるかないかわからない状態の中では前に進めないんですね。できれば,1年先,2年先に事業が円滑に進むような助成の在り方を検討していただけると非常に制作者の立場としては助かりますので,そのあたりの要望といいますか,ちょっと分からない部分は教えていただければと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。

【湯浅委員】  先ほど大分話させていただいて,短くなんですが,アートと教育,先ほど太下先生からも,既に文化庁さんの方であるプログラムの中で日本各地でいろいろな事業が行われていて,学校の方にアーティスト派遣事業があるとか,又は自治体レベルでも,教育委員会の要請によって,オーケストラが全市の5年生に向けた鑑賞授業をやっていることは私もよく伺っていまして,是非日本のそういった,既にあるインフラの中でどういった新しい取組ができるかを考えていくこともとても良いのかなと思います。
 1つ,先ほどのプレゼンの中でもお話しさせていただいたのは,プログラムの在り方が,主体が子供たちに移っていく,鑑賞するよりも子供がつくっていくという,主体がとても動いていっています。なので,オーケストラの活動も,鑑賞型よりも一緒につくっていくというものも,両方ありますが,より重きが置かれている中で,日本の中のアーティスト,担い手の人たちのスキルや,トレーニングという形の在り方も考えていく必要があるかと思いました。
 あとは,私どものオフィス,アジア各国に事務所があるんですが,アジアのいろんな国の中でもこういった議論の中で,教育に対する意識,文化と芸術というのは非常に高く聞いています。例えばフィリピンですとか,韓国も含めて,新しくこれから発展する中で,とても新しい在り方,これからの在り方に意識が向いているという情報も入っていますので,東アジア文化都市がこれからASEFにまで広がっていく中で,いろいろな政策の面でもアジアの連携をしつつ,先ほど太下さんもおっしゃったように日本の実践をアジア,又はイギリス,世界に向けてシェアしていくと言いますか,日本が先頭を切っていける部分も多いと思いますので,国際交流の中で日本の実践を,NPOの方ですとか,アーティストの方が発信していくことも一緒に考えていければ良いかと思いました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。それでは,芸文振からどなたか。

【関日本芸術文化振興会理事】  それでは私から簡単にお答えさせていただきます。最初に,今後この試行的な取組をどうするのかというお話がございましたけれども,これにつきましては,文化庁の御指導のもとに進めていきたいということに尽きるのではないかと思っております。今試行的な導入という形で予算を頂戴してやっているものでございますので,その辺,文化庁の御判断に従いたいと思っております。
 それから次に,このもとになっておりますというか,新しいスキームの対象になっておりますトップレベルの補助金でございますけれども,御案内のように,補助の対象経費についての考え方を変えました。今までのような赤字補填ではなくて,創作活動に対して支援をする。これも文化庁の御判断としてそのようにスキームが変わったわけでございます。
 その際に,助成を受ける団体の側では,当初はいろいろ戸惑われるところもあったと聞いておりますけれども,現時点では,そういった制度改正の趣旨が定着いたしまして,団体にも御理解を頂いて,円滑に進んでいると承知しております。この辺につきましては,必要があれば具体に対応しておりますPD・POからフォローさせていただきたいと思います。
 それからまた,同じく助成のスキームということで申し上げれば,もう一つのポイントが,公演単位ではなくて,年間活動をトータルで支援するというスキームができたわけでございます。もちろん,そうは言いましても,制度上はなかなか年度がまたげないこともありますけれども,そういった年間を通じて支援ができるような団体につきましては,なるべく,年度をまたぐところもできる限り視野に入れていくという取組で進めさせていただきたいと思っておるところでございます。
 それから地域的な問題についてもお尋ねがございました。それに対して,私どもが今やっている限りで御説明させていただきますと,私どもの資料の1ページを御覧いただきたいと思います。
 その上でやっていることを御紹介させていただきますと,演劇分野にはPOが6名おります。演劇分野は大変だということで,ほかの分野に比べて数が多いわけでございますけれども,1つには,POの採用,誰に来ていただくのかということについても,そういった点に配慮しているわけでございます。具体的に申し上げれば,本日柴田POが出席しておりますけれども,御案内のように滋賀県の芸術監督を務めておられるということでございまして,これは私どもの職務が非常勤だからこそ可能になる形態だとは思いますけれども,こういったことで柴田POには近畿圏にも目配りをしていただいているということがあるわけでございます。
 それからまた資料の1ページ目の下の方,(3)でございますけれども,PD・POだけではフォローし切れない場合もございますので,公演調査をやるための文化芸術活動調査員を配置いたしまして,その際にも地方にお住まいの方,東京とか大阪とかではないところにお住まいの方をも調査員として発令することをやってきているところでございます。取り急ぎ,私から以上でございます。

【酒井日本芸術文化振興会プログラムディレクター】  先ほど関理事が申し上げました,トップレベルによって採択された団体で,黒字になった例の団体が数件ございました。なおかつ25年度においては,団体名は出せませんけれども,「え,この団体が」,と思われるような大きな団体からの応募もございました。そういう意味では,トップレベルの考えが少しは周知されたんじゃないかと思っております。事例として申し上げます。
 あと,今地方の問題ですけれども,今調査員が演劇においては大阪と,岩手に配置しておりますけれども,年々地方の申請団体が増えてきています。ここ3年間で少しずつ増えてきているという状況であります。岩手に配置しているのは,青森と北海道の申請団体が多いものですから,岩手の方から見てもらおうと。
 またもう一つは,先ほど地域の中でしょっちゅう見ていただく方がいれば良いとおっしゃったんですけれども,これは1つの事例なんですが,地域によっては,東京から見に来てほしいという要請のある地域もありました。ですから,これから例えば今配置されていない愛知県とかいう地域をどうしようかと,今後検討していきたいと思っております。

【柴田日本芸術文化振興会プログラムオフィサー】  柴田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 御質問にございました地域間格差のデータですが,ちょっと御報告をさせていただきたいと思っております。本年度,トップレベルにつきましては,120件中25件が地域の団体でございまして,全体の20.8%を占めております。前年比ですと5.1%増加している現状でございます。
 それから基金につきましては,150件中75件が東京以外の地域ということで,50%で,前年度比8.2%増加しているということで,順調にこの助成金の範囲が地域にも拡大していることが言えるかと思います。以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。

【近藤長官】  これまで議論いただいた3つのテーマは非常に共通性がありまして,一言で申し上げれば文化芸術が持っている力をいかにしてフルに引き出して,社会の隅々まで浸透させるかということだろうと思います。戦後の日本は文化芸術の力が極めてアンダーユースだと思います。いろんな形でそれを奨励してきたんだと思いますが,特に最近,教育と芸術の関係についてはロンドンのLSOとか,パリのルーブル等の例も聞いて,なるほどと,もっと踏み込まないといけないという,それもあってここにあります16日のセミナーをやることになったわけです。特に,教育の中の1科目としての芸術ではなくて,芸術の力を通じて子供たちのクリエーティビティーや潜在能力を引き出すことによって,それが算数の点にもつながる,あるいは学科ができないけれども,落ちこぼれそうな子供が助かる,そういう意味があるということで,単なる教育の1科目ではない芸術の意味に着目をする。もう既にイギリスも,欧米がしているということを知って,我々もちょっと遅れているかなと思っております。したがって,もちろん派遣してそういう事業もやっておりますけれども,もう一歩踏み込んで,いわゆるファシリテーションと言うんでしょうか,芸術を使って子供たちの潜在能力を引き出すことをやっていくことを進めたい。実は冒頭申し上げましたように,芸術にはそんな力があるんだということを教育ママが分かったり,学校で芸術をやるのは無駄だ,受験に役に立たないという発想だったりがまだまだ多いと思いますが,そうではないということを知ってほしいと思う。算数をやるにしても,東大に行こうと思っても,芸大に行こうと思っても,芸術家になろうと思っても,何であっても芸術をやっていくことは大事なんだということを分かってもらうには,いろいろ助成をして,良い音楽や展示会をやってもらって,そこに子供たちを連れて行くのも良いですが,もっとその前にやるべきこととして,子供たちが,学校でも良いし,家庭でも,社会でも,地域でも良いんですが,ファシリテーターと触れあう形で芸術の力で子供たちを目覚めさせ,生きる力や喜びを与えることが大事だということを強く感じました。こうした背景があって,今日最初に議論をしていただいたわけでございます。
 先ほどの佐々木先生の御質問で,私もLSOの人に聞いてみたところ,やはり最初LSOの楽団員が10人ぐらいで学校に行って子供たちにいろいろ音を聞かせて,作曲させたりしておりますが,そういうことについて先生の方から抵抗があったようです。音楽の授業は私がやるんだよ,何で楽団員が来るのというのがあったようですが,見て聞いているうちに,次第にそういう力が芸術にあるんだということに気づくのだという話を聞いたことがあります。熊倉先生がおっしゃったような教育者と文化人の最初のコンフリクトはしばらくしていくとだんだん解消していって,むしろお互いにプラスになっていくということも聞きます。ミリタリーコンフリクトはもちろん致命的になり,憎悪の連鎖を生みますが,文化と教育のコンフリクトはむしろプラスだという実例だろうと思います。
 アーツカウンシルにつきましては,試行ということで始めてもう3年目になるわけですが,そろそろ試行が終わってどうするか,本格的導入とはどういうことか考え始めないと,試行が終わって,こうだったね,じゃあどうしようかと言っていると,また2年,3年かかってしまいますから,終わった後,26,27年度からどのようにするのかをそろそろ考えていくべきだと思います。その際には当然ながら,今芸文振で扱っている予算以外に,文化庁が直接やっている,全部合わせれば300億以上のお金があります。それも対象にするのかどうか検討を要すると思います。
 それから先ほどあった地方の在り方について,今の形で良いのか,イギリスのように地方に支部を作るのか,そういったことも当然正面から検討していかなければいけないと思います。イギリスの制度をそのまま導入すれば良いというものではありませんが,イギリスの制度のプラスマイナスを見極めて,そこまで踏み込んだ議論を,当然そろそろ始めるべき時期ではないかと思います。常勤・非常勤のお話もそれと同じで,非常勤だけで済まない状況になるかもしれません。そのときには常勤と非常勤を組み合わせるコンビネーションも,将来,本格的に導入する場合には当然あってしかるべきだろうと思います。
 もう時間もないので,最後にもう一つですが,今月16日にファシリテーターの役割についてのセミナーをやりますのは,これは実は国内でも,音楽関係者,美術関係者,伝統芸能関係者の中で,そういう芸術の力をもっと使いたいという方々が随分増えているように聞いていることが背景にあるからです。しかし,これはまだ点だけで,つながっていない,面になっていない。その理由の1つは,例えば美術館の館長さんや楽団の団長さんが,必ずしもそういう教育に理解がない。オーケストラは良い音楽をやって,お客さんに来てもらうのがメーンだと,美術館は良い展覧会をやってすばらしいお客さんに来てもらうのがメーンであって,教育に使うのはボランティアがやれば良いんだという方々がまだまだ多い。実際には,重要性から言えば両方が同じぐらいなので,そういった館長さん,団長さん,楽団長さんにも,文化庁として広い意味での教育面を重視しているということをメッセージとして発し,そういった中堅で頑張っている方々を後押ししたいという気持ちがあって,16日にこれを開くわけでございます。ちょっと補足的な情報ですが,以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。まとめていただきました。すみません,今日は30分もオーバーしてしまいまして。佐々木先生,途中で手を挙げておらましたけれども,よろしゅうございますか。

【佐々木委員】  また改めて,お時間頂いて。

【宮田部会長】  そうですか。言い残したことはいっぱいあるとは思いますが,また次のときにさせていただいて,最後に,最近の内閣の重要方針における文化政策に関する記述でございますが,清水さん,お願いします。

【清水政策課長】  ではお時間も過ぎておりますので,簡潔に,資料5でございますが,「最近の内閣の重要方針について(文化政策関係)」という資料がお手元にあるかと思います。5月から6月にかけまして,今後の内閣の重要方針,戦略が幾つか決定されたところでございますが,その中で重要なものについて,文化政策と関わる部分を抜粋したものを御説明いたします。
 まず一番上,経済財政運営の改革の基本方針,いわゆる骨太の方針と言われているものでございます。平成26年度,来年度の予算編成に向けての方針にもなるという点で重要なものでございますが,文化の関係は,教育を中心とする大項目のもとに,「教育再生の推進と文化・スポーツの振興」という項目が立って,「文化芸術・スポーツの振興」ということで,記載されているところでございます。3行ではございますけれども,文化関係,文化政策の重要な施策を列記していただき,またこういう項目をしっかり立てていただいたというのが大きいところでございまして,政府として文化芸術を重視しているということを示しているものと考えられます。
 そして2つ目が日本再興戦略,これは成長戦略と言われているものでございますが,骨太の方針と同じ日に閣議決定をされておりまして,骨太の方針と2本柱になっていくものでございますが,こちらは経済が切り口でございますので,文化の関係は「観光」という観点から伝統文化や地域文化等の文化芸術,これを通じて日本ブランドを確立し,数多くの日本人を引きつけ,引き寄せるといったこと,国宝,重要文化財などの地域の文化財について保存・整備を図るとともに,観光資源として発信・活用していくといったことが含まれておりますとともに,もう1点は「クールジャパン」という観点から日本の魅力を効果的に発信していくため,文化芸術の力を利用していくことが含まれているところでございます。
 それから,次のページでございますが,3つ目が知的財産政策に関する基本方針でございます。知的財産とは,特許権でありますとか,文化庁でありますと著作権などでございますが,この知的財産に関しての基本法施行から10年がたったことから,更に今後10年を見据えた長期的な基本方針をつくるということで,知的財産の政策の基本方針を閣議決定し,更に政策のビジョンを今回取りまとめたところでございます。
 文化庁関係としては,大きくはデジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備して,著作権の関係,私的録音録画補償金制度についての見直しでございますとか,出版社への権利付与などについて盛り込まれています。
 2つ目はコンテンツを中心としたソフトパワーの強化として,東アジアの文化都市などを含めた発信の部分や,文化芸術創造都市の部分などが入っているところでございます。
 そして最後がクールジャパン発信力強化のためのアクションプランでございますが,こちらはクールジャパン戦略の担当大臣,稲田大臣を議長とする推進会議においてまとめられたものでございまして,基本的考え方とアクションプランをつくっているところでございます。
 下の記述がアクションプランでございますが,メディア芸術の関係など,日本発の芸術作品の発信,外国人にとって魅力的な日本語の発掘を進めることでクールジャパンの発信に更に寄与するということが盛り込まれております。
 また,国宝・重要文化財の呼称,例えば英語での表現などでの検討,世界文化遺産を目指すものについて日本遺産として位置づけるといった文化財の保存・整備や活用・発信,伝統芸能・工芸を含む文化芸術の創造・発信など文化芸術にかかる施策が盛り込まれているところでございます。
 以上のとおり,経済,知財,クールジャパンなど,政府の重要方針に文化芸術が重要だということでたくさん盛り込まれているところでございまして,政府としても重要だということでございますが,ただ,これからこれらを踏まえて予算の概算要求,年末の予算編成といったところに続いていくところでございますので,まだまだ頑張っていかなければいけないと思っておりまして,先生方からも引き続き御指導・御助言をいただければと思っているところでございます。以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございます。 それでは,内田さん,次回の日程等についてお願いします。

【内田企画調整官】  次回の日程に関しましては,また調整させていただきまして御連絡させていただきたいと思います。次回は今回のような時間の配分が,オーバーすることがないように次第を組みたいと思っておりますので,本日はどうもすみませんでした。

【宮田部会長】  それでは本当に長時間ありがとうございました。御苦労さまでございました。

―― 了 ――

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