文化審議会第11期文化政策部会(第3回)議事録

平成25年9月24日

【内田調整官】  それでは,定刻でございますので,初めに,配布資料の確認からさせていただきたいと思います。
 お手元に資料がございますけれども,資料1-1と1-2が文化庁の資料でございます。2が総務省資料でございます。3が外務省資料,4が経産省資料,5が観光庁資料でございます。資料6が,「文化芸術により子供たちの能力を引き出すための取組について」の資料,7-1,7-2が仲道委員御発表資料,8が上野学園大学船山学長代理からの御提出資料でございます。以上となっております。
 このほか,参考資料として,委員の名簿,第3次基本方針,関係のデータ集を配布しております。なお,このデータ集は最新データに更新したものとなっております。
 机上の左側でございますけれども,上野学園大学の船山先生から,「日本におけるファシリテーターの未来像」という,昨年夏に上野学園大学で開催されましたフォーラムのレポート,更に,宮田部会長から,10月より開催されます個展の御案内の資料を置かせていただいております。
 過不足があれば,事務局までお知らせいただければと思います。
 座席表の右下に本日の欠席委員を記させていただいております。これらの欠席委員に加えまして,今朝ほど,熊倉委員から御連絡がありまして,御欠席ということでございます。
 以上でございます。
 それでは,宮田部会長,よろしくお願いします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 ただいま内田さんからのお話のとおり,配布資料等々はよろしゅうございますね。
 それでは,ただいまから,文化審議会の第11期文化政策部会の第3回でございますが,開催いたします。秋に入りました。先生方,大変お忙しい中,お集まりいただいたこと,深く感謝申し上げます。ありがとうございました。今回も,是非,忌たんのない御意見を頂きたいと思いますが,先生方におかれましては,お忙しい中,この2時間という時間を割いていただきましたので,もし流れが,話が佳境になって12:00を過ぎた場合には,どうぞ,御中座なさって結構でございます。12:00を1つの区切りといたしたいと思いますが,その後,続いたとしてもその辺のところは御容赦いただきたいと,かように思っておりますので,事前にちょっとそのことを申し上げさせてください。ありがとうございました。裏を返せば,多くの先生方から御意見を頂戴したいという気持ちでございますので,よろしくお願いします。
 7月より文化庁長官の御異動がございました。青柳正規先生が長官になられました。
 新長官,是非,冒頭に御挨拶をお願い申し上げたいと思います。

【青柳長官】  青柳でございます。よろしくお願いいたします。後は座ってお話し申し上げたいと思います。
 文化庁長官を拝命しました。よろしくお願いいたします。 私,文化審議会の委員として座っていたとき,あるいは大学で教べんをとっていたとき,あるいは国立西洋美術館の管理・運営に携わっていたときなどの経験から,あるいはイタリアでずっと28歳ぐらいから発掘を続けてきましたけれども,そういう中で,やっぱり文化というものを常に意識せざるを得なかった。
 やはり,文化というのは,本来は穏やかなもので,そして,いろいろいじらない方が良いものではないかと考えております。しかし,時代が速く移り変わっていく中で,どうしても,これまでのものと,それからこれからの文化というもののせめぎ合いや,あるいは調和や,あるいは摩擦というようなものが生まれてくることが最近かなり多くなっている。
 それから,もう一方で,国際的に,20世紀の最後の頃にハーバード大学のハンチントン教授が書いた『文明の衝突』という大変衝撃的な本が出たときから,世界全体で文明や文化というものを意識化せざるを得ない状況になってきたと思います。
 そして,特に,1999年のミレニアム,実際はミレニアムの1年前になるんでしょうか,あるいは最後になるそのときに,国連の中で専門家会議があり,またそれを受けて,同じ年にユネスコで文化の多様性というようなことが話題になりました。その両方に参加したのですが,その当時の世界全体が文明や文化にかなり注目を持つようになったという,移り変わりの現場を見てまいりました。
 そのときにつくづく感じたのは,その1999年の前半にトロントでWTOの会議があって,トロントでの会議,非常に重要なことを打ち出そうとしていたのですけれども,結局,カナダとフランスが手を組んで,文化的な経済活動というか,まあ,映画とか何かですか,日本で言えるのはアニメも含まれますが,そういうものは貿易自由化から外すという大変大きな運動をして,結局,トロント会議を潰すぐらいの勢いで,文化の多様性を主張したんですね。あれを見たときから,やっぱり,グローバル化の中でそれぞれの国が持つ文化というものの大切さを彼らは非常に重要視しているということを目の当たりにしました。
 そのときに感じたのは,日本は,文化というのは大変寡黙で,それでおしとやかなと言うか,内向きの文化であって事足りるような状況があったということを,つくづく思いました。それは,やはり,当時の人口ではよくわかりませんが,今現在,日本の人口は世界でも10番目です。たしかロシアの次ぐらいで,ロシアが1億4,000万ぐらいで,日本が1億2,700万ぐらいですが,10番目です。それから,国土はそれほど,六十何番目ですけれども,経済海域とか排他的海域を含めると6番目ぐらいの海の広さを持っていると。ですから,かなり実は大きな国なので,国の中での需要と供給というもので文化的にもいろいろ事足りてしまう。これが恐らく,ガラパゴスであると言われる1つのゆえんではないかと思います。
 しかし,今,そのような,ちょうど2000年を契機としてグローバル化というのが本当に明らかになってきた現在,それぞれの国の存在とかあるいは国の主張というものを,イデオロギーとして強く覇権を訴えるのではなくて,文化のような,それぞれの文化の普及力であるとか,あるいは存在感であるとか,あるいは浸透力というようなもの,それが国際社会の中で大変重要なものとして意識的に扱われるようになってきていると。
 そういう中で,やはり,我々も,今までのようなガラパゴス的な,そしてかなり大きな国の中だけで文化を考えるのではなくて,誇張する必要もないし,覇権というような主義,ヘゲモニーをどうこうというのでは全くなくて,やはり,国際社会の中でも日本文化の,あるがままの姿をきちっと理解してもらうということが非常に重要なのではないかと。
 そうすると,国の中でも,我々一人一人が,日本文化というものは一体どういうものなのか,決して特殊論に陥らず,そして相対化した,つまり,世界の様々な文化と見比べながら,我々の特質やあるいは共通性や,あるいは長所や短所というものをしっかり,等身大で捉えること,そして,等身大での日本文化というものを,この地域に住んでいる一人一人がなるべくきちっと意識してもらうということが,大変重要なことではないかなと感じております。
 そういう意味で,この文化審議会,それから特にこの文化政策部会というものが,これからの私たちにとって非常に重要な審議を行っていただく場であるという風に考えますので,どうか委員の先生方にはよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。大変すばらしいお言葉を頂戴いたしました。
 そうですね。国内で事足りているという錯覚があるんですね。海外へ出ると,海外の人が本当に日本のすばらしさを,自分がどっきりするぐらい伝えてくれる場面がよくあります。
 長官,ありがとうございました。その指針の下に私どもも前進していきたいと思います。
 それでは次に移らせていただきます。ありがとうございました。
 青柳先生が長官になられましたので,ポストが空きました。そこで,新しい委員を御紹介したいと思います。
 国立美術館の理事長をなさっており,国立西洋美術館の館長でもございますが,馬渕明子先生に一言お願い申し上げます。

【馬渕委員】  青柳先生の後に国立西洋美術館の館長として就任いたしました馬渕明子と申します。同時に,独立行政法人国立美術館理事長の職を拝しました。大学におりましたので,7月31日に大学を辞めてこちらに参りました。行政等々に関してはまだ素人でございますが,くれぐれもよろしく御指導をお願いいたします。

【宮田部会長】  はい。よろしくお願い申し上げます。上野の山では初の女性の館長になるんですよね。子ども図書館にいらっしゃいましたかね。

【馬渕委員】  そうです,図書館。

【宮田部会長】  どうも失礼をいたしました。
 さて,それでは,部会長代理の席が空席になりましたので,選任したいと思います。私としては,文化政策全般に幅広く精通されておりまして,この部会でも多角的な見地から毎回御意見を頂戴しております,静岡文化芸術大学の教授でございます片山泰輔先生にお願いしたいと思うんですが,いかがでしょうか。
 片山先生,恐縮でございますが御指名をさせてください。じゃあ,部会長代理の席の方に,よろしくお願いします。
 それでは,部会長代理,一言お願いいたしたいと思います。

【片山部会長代理】  御指名いただきました静岡文化芸術大学の片山と申します。諸先輩方がいらっしゃる中で,私のような若輩者が大変恐縮ですが,一生懸命頑張りたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 さあ,それでは本日の議題に入りたいと思います。
 まず,各関係省庁における概算要求の状況,それから教育と芸術についての関係,それをテーマにしたいと思います。本日は関係各省からおいでいただいております。ありがとうございます。総務省さん,外務省さん,経済産業省さん,そして観光庁さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
 議題に入ります。文化関係に対しての概算要求について御説明いただき,そして意見交換したいと,そういうふうに思っております。この部会には現場の文化活動をされている方もおられますが,文化庁以外の省庁の事業についても関心があろうと思います。まず文化庁からお願いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

【清水課長】  文化庁の政策課長の清水でございます。配布資料の中では資料1-1という縦長と,資料1-2という各事業のポンチ絵と言われるものをとじた横長の資料,この2つが文化庁の概算要求の関係資料でございます。
 概算要求の説明に先立ちまして,今月の7日,ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で,2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決定をされたところでございますので,文部科学省,文化庁では,この2020年を単に五輪開催の年とするのではなく,新しい,日本の創造の年としたいと考えております。文化政策におきましても,前回の6月の部会で説明をいたしましたが,文化芸術立国中期プランの検討を進めているところでございます。2020年東京オリンピック・パラリンピックに合わせまして,東京をはじめ日本全国で,地域の文化芸術活動の特性を生かした参加体験型の文化プログラムを提供することを目標に考えているところでございます。
 今回の概算要求は,もちろん第3次基本方針に基づくとともに,この中期プランの方向性も踏まえながら考えたものでございます。総額といたしましては,資料1-1の一番上でございますが,全体で前年度に比べて183億円の増,1,216億円の要求をしております。今年と比べまして17.7%増の要求でございます。
 それらの内容について御説明いたします。まず,資料1-1の1ページ目でございますが,「豊かな文化芸術の創造と人材育成」の(1),「文化芸術による『創造力・想像力』――2つの『そうぞうりょく』――豊かな子供の育成」といたしまして,文化芸術による子供の育成事業に約63億円,その下の,伝統文化親子教室事業に16億円の要求をしております。さらに,1ページの下から2ページ目にかけてでございますが,子供を対象とした支援プログラムの創設としまして,劇場・音楽堂等活性化事業,地域発・文化芸術創造発信イニシアチブなどの既存の事業の中に,子供向けの体験プログラムに対する支援事業,合計18億円を要求しているところでございます。
 資料1-2の1ページ目に,子供の事業について様々なものを充実していこうとしているものが出ているところでございます。
 続きまして2項目目,資料1-1の2ページ目でございますが,「文化芸術創造活動への効果的な支援」といたしまして,トップレベルの芸術団体への支援や,国の芸術文化振興上推進することが必要な事業について支援を行います。舞台芸術創造力向上・発信プランに43億円,劇場法の推進のために地域の劇場・音楽堂の活性化と実演芸術の水準向上を図る,劇場・音楽堂等活性化事業に37億円を要求しております。
 また,下の(3)でありますが,「芸術家等の人材育成」として,次代の文化を創造する新進芸術家育成事業,そしてアートマネジメント人材の養成を推進する,大学を活用した文化芸術推進事業などを要求しているところでございます。
 続きまして,資料1-1の3ページ目でございますが,「かけがえのない文化財の保存,活用及び継承」でございます。「文化財修理の抜本的強化・防災対策等の充実」のうち,[1]が,建造物の保存修理等でございます。資料1-2ですと,13ページに載っております。木造の文化財,建造物等の価値を損なうことなく次世代へと継承していく,次代へと継承していくためには,根本修理の周期を,つまり建造物を解体して行う根本修理でございますが,こちらを適切な周期に短縮することを目指しております。現在では平均して240年周期ということでございますが,これを適切な周期と言われております平均150年周期を目指して,予算の充実を図るものなどでございます。
 このほか,「文化財の復元整備・活用・継承等の推進」におきましては,史跡等の保存・活用を図るための事業,また地方公共団体が史跡等を公有化する事業に対する補助などを要求しているところでございます。
 それでは,資料1-1に戻っていただきまして,4ページ目の一番上が,アイヌ関連施策の推進でございます。アイヌ文化の振興等に関する事業,またアイヌ政策推進会議作業部会報告に基づきまして検討を行っておりました,民族共生の象徴となる空間における博物館の基本構想が先日取りまとめられたところでございますので,文化庁として,平成26年度,来年度末を目途に,博物館の基本計画を策定するための予算として3億円の要求をしているところでございます。
 続きまして,4ページ目の,「我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進」でございます。こちらでは,新規事業等,多く盛り込んでいるところでございまして,資料1-2の17ページ目をお開きいただきたいと思います。「日本文化の発信・交流の推進~クールジャパンアクションプラン関連~」として,多くの事業を盛り込んでおりまして,それを一覧にしたものでございます。個々の事業につきましては,18ページ以降にもう少し詳しく述べているところでございます。ここでは,文化芸術各分野における国際交流を推進することで,国内の文化芸術水準の向上を図るとともに,クールジャパンの推進,日本文化の発信力の強化を目指しているものでございます。
 我が国のすぐれた芸術文化の発信を支援する,「芸術文化の世界への発信と新たな展開」では,これまでの支援分野に加えまして,現代アートやJ-POPなどの新たな文化について支援を行うこととしております。
 このほか,文化財の情報を広く海外に向けて発信する文化遺産オンライン構想の推進等についても要求をしているところでございます。
 それでは,最後の項目となります。資料1-1の5ページ目の下の方でございますが,「文化発信を支える基盤の整備・充実」として,国立文化施設の機能強化,具体的には,国の顔となります文化関係の3つの独立行政法人,独立行政法人国立美術館,独立行政法人国立文化財機構――こちら,国立博物館と文化財の研究所を設置する独立行政法人でございます――そして3つ目が,日本芸術文化振興会――国立劇場などを設置する法人でございます――その3法人につきまして,運営費,施設費,それぞれの充実を要求するものでございます。具体的な内容は,文化財防災・救出センターの整備や,国立フィルムセンターの整備,独立などについても要求しているところでございます。
 ちょっと長くなりましたが,文化庁の概算要求の説明としては以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。17.3%ですか。

【清水課長】  これまでの,ここ数年の例からすると,かなり大きく増額をして要求しているところでございますが,これからが予算の折衝でございますので,これからが勝負というところでございます。

【宮田部会長】  それでは次に進ませてもらいます。 総務省の山中課長補佐,よろしくお願い申し上げます。

【山中課長補佐】  おはようございます。総務省のコンテンツ振興課で課長補佐をしております山中と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは,簡単に,総務省の概算要求について御説明したいと思います。資料2を御覧ください。1ページおめくりいただきまして,まず,概算要求の御説明に先立ちまして,簡単に検討会について御説明したいと思います。
 総務省におきましては,昨年の11月に,放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会というものを開催しました。そして,本年の6月に取りまとめを行いまして,資料の1ページにいろいろ書いてございますけれども,端的に申し上げますと,上から2番目の四角囲いを御覧いただきたいと思います。その中の2つ目の大きな丸を御覧ください。ポイントは,まず,この最初の記述は,閣議決定された再興戦略にも記載がございますが,5年後までに放送コンテンツの海外事業売上高を現在の3倍近く――経済効果は4,000億円という,産業連関表を回した結果の試算も出ておりますが――に増加させることを目標に,大きく2つです,権利処理の効率化・迅速化と海外市場の拡大の促進を両輪で進めるという方針の下に概算要求をさせていただいております。
 まず1点目,その下の1でございますけれども,海外市場の拡大の促進につきましては,大きく3つですね,最初に,オールジャパン体制の整備。2番目と3番目はセットで御覧いただければと思いますけれども,なかなかコンテンツ単体では十分な収益を上げることが難しい事情がございますので,同時に展開される製品・サービス全体の周辺産業と合わせた形での海外展開を目指すビジネスモデルの確立をしていこうと。それに合わせて,海外展開予算の充実も図っていこうというものでございます。
 2点目の,権利処理の効率化・迅速化につきましては,こういう場では釈迦に説法かと思いますけれども,実演家ですとか,あるいはレコード原盤に係る著作権のみならず著作隣接権に絡む権利処理の円滑化というのが,特に放送コンテンツの海外展開に当たって非常に重要なポイントになってございますので,その取組を進めていこうということでございます。
 この2点にそれぞれに対応しまして,総務省では予算要求をしてございます。
 ページを1ページおめくりいただきまして,2ページ目でございます。「放送コンテンツ海外展開強化促進モデル事業」ということで,これは新規の予算要求なんですけれども,施策の内容につきましては,その下の赤い枠囲いを御覧いただければと思いますが,端的に申し上げると,今言及させていただきましたとおり,特にコンテンツの展開先として有望な,文化的親和性が高いアジアを中心に,なかなか,単価も安くてコンテンツ単体では十分な収益を上げられないという状況がございます。
 そこで,こういう場ではちょっと語弊があるかもしれませんが,映像コンテンツというもののインパクトを考えまして,映像コンテンツをプロモーションツールと捉えまして,例えば音楽でしたら,当然ライブとかはあると思いますけれども,そのアーティストの映像を流すとか,あるいは,ファッションであっても,ファッションショーとかあると思いますけれども,その有名モデルを使ったファッション番組とかを映像コンテンツに流すとか。あるいは,これはもうすぐに想像できると思いますけれども,地域の活性化。自治体の観光資源とかそういうものをうまく映像化して,正にその周辺産業と一体となった形での海外を支援していこうと。その中で,特に,正にプロモーションツールとなる放送コンテンツを製作・発信するモデル事業について支援すべく,予算要求をしていきたいと考えております。
 額としましては,13億円を要求しております。
 1ページおめくりいただきまして,次が,また長い名称ですけれども,「クラウド時代に対応したコンテンツ流通環境整備推進事業」というものを要求しております。これは,今年度,25年度の継続要求ですけれども4.5億円で,これは最初に申し上げた権利処理の方の予算要求になります。権利処理の関係に併せて,不正流通対策の関係の予算も含んでございます。大きくこの2つの柱で,総務省としては予算要求をしているという状況でございます。
 最後に,予算要求とは関係ございませんが,今年の2月に同じような機会を与えていただいた際に御説明した補正予算の関係で,御説明したいと思います。
 24年度補正予算におきましては,4ページ目を御覧いただければと思います。特に総務省の単独予算としましては,下の四角囲いの[3]国際共同製作支援という,放送コンテンツを海外の放送局と日本の放送局がコラボレーションして番組を作るというものを支援するという予算がございました。これは,現在,放送局同士が鋭意番組を作っているという状況でございますが,その次のページを御覧いただきまして,5ページですけれども,大きく,アジア,グローバル,グローバルメディア,地域の活性化という枠で各案件を募集しまして,合計72件を採択して,今,皆様に作っていただいているという状況でございます。
 特に,最新の状況としましては,タイのPBSというところと静岡朝日放送が富士山の番組を作ったんですけれども,この連休,正に3連休の21日,22日の土日に2夜連続で30分番組で流されたという状況がございます。今後,今年度の年末に向けまして72件,随時放送されていく予定ですので,この状況もしっかり見守っていきたいと思っております。
 以上でございます。

【宮田部会長】   では,ざっと省庁からの御説明を頂いてから御質問等を頂くというような感じでいきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。
 はい。それでは次に,外務省さんから岸守首席事務官,お願い申し上げます。

【岸守首席事務官】  外務省の岸守です。よろしくお願いいたします。
 外務省の広報文化外交に関する概算要求ですが,外務省本体の予算というのは約30億円,そのうち,国際文化交流に関しては9億円を要求しております。
 以上です。と言いたいところですけれども,これだと余りにも短いので,広報文化外交戦略とそれから重点分野,それから予算の構造の3点について,残り時間を使ってちょっと敷延をしたいと思います。
 お手元にパワーポイントの資料をお配りしましたので,ぱらぱらとめくりながら見ていただければと思いますけれども。広報文化外交の概念というのは,ここ20年ぐらい,我々も力を入れております。外務省の関わり方というのは,一言で言うと,日本を好きになってもらって日本を理解してもらう,そのことで日本のプレゼンスを上げていくというものであります。
 ページをめくっていただくと,日本は,いろんなデータが示すように,世界では好かれた国,好きになってもらっている国だと思います。それはBBCワールド・サービスとかいろんなサーベイのデータで端的に表されています。
 他方で,好きになってもらっているということとプレゼンスの大きさというのは必ずしも比例しておりません。特に,パブリック・ディプロマシーについては,ある意味,競争的環境になっておりますので,例えば,東京に置く特派員と北京に置く場合と比較をして,後者を選ぶメディアというのも増えております。語学1つとっても,孔子学院が非常に大きな勢いで中国語の普及をしているのに対して,やはり日本は追い付いていないという状況であります。
 特に,中国と韓国の比較については,パワーポイントの資料の方でまとめてみましたので御覧いただければと思います。感覚的に,韓流(はんりゅう)がすごくはやっていたり,中国が積極的な広報文化外交を展開していたりするというのは,皆さんお感じになっておられると思いますけれども,こうしていろんなデータを取っていくと,日本がいかに相対的に後れを取りつつあるかということがお分かりになると思います。
 それを踏まえて何をしているかというのを2点目にお話をしますが,我々の組織の大きな2本柱というのは,1つは戦略的な発信,政策広報をしっかりやっていくということ,それから2本目が,今日皆様と共有をいたします,ソフトパワーの強化ということであります。ここでは後者に限ってお話をいたしますが。
 ソフトパワーの強化といってもいろいろありますけれども,我々は,文化交流と,知的・人的交流の促進,それから日本語の普及というのを3つの優先項目として挙げております。これらをなるべく主要外交課題の促進に密接にリンクした形で推進をしております。単なる文化紹介では,外務省がやる意義というのもありませんし,この後経産省さんとかのプレゼンがあると思いますけれども,いわゆるクールジャパンで大きく稼ぐという意味では,我々のプッシュ・ファクター(押し出す力)というのはそれほど大きくありません。ありませんが,その中で外務省の立ち位置をしっかり確保して,我々に適切な役割を十分果たしていこうと思っております。
 これを最後に一言述べたいと思いますが,その前に予算構造をちょっと御説明いたしたいと思います。年々広報文化予算が減ってきているということは,事実ではありますが,より深刻なことに,何より我々の予算構造というのが,大体去年で200億円近い予算を要求していながら,実は外務省本体で使える予算というのがその15%ぐらいしかないというのが,構造的な制約要因になっております。
 ではほかの部分は何かというと,大体3分の2の予算というのは国際交流基金の交付金に使われています。その他,ユネスコとか国連大学の分担金,拠出金,こうしたところにも大半を割いているので,先ほど冒頭申し上げたとおり,大体本体で使えるお金,それはすなわち,在外公館を通して事業として実現できる予算ということになりますけれども,これは30億円程度という非常に小さいものになっております。そのうち,国際文化交流という項目では,更にその3割,9億円程度というとても小さい額になっております。額は小さいんですけれども,工夫の仕方で最大限効果的に使おうと思っておりまして,それを最後に申し上げたいと思います。
 パワーポイントの資料にちょっと複雑な図が書いてありますけれども,クールジャパン1つとっても,外務省独特の立ち位置を勘案して,他省庁を補完する形で,我々にしかできない役割を持ちたいと思っております。一言で言うと,それは何かというと,プル・ファクター(引き込む力)ということであります。
 日本からいろんなコンテンツを海外に展開する予算的,行政的なサポートというのは,非常に頼もしいくらい増えてきておりますけれども,実際に例えば海外で企業なり芸術家なりが自分のコンテンツや作品なりを展開されるときに,現地でプレスにつないだり,あるいはネットワークを駆使して,届けるべき相手に届けていったり,そのことをまた外交に活用したりという部分で,外務省がお力になれないかと思っております。
 例えば,クールジャパンですと,物を売って稼ぐという意味においては,外国人というのはどうしても消費者あるいはそのサービスの受け手というふうに受け取られがちですけれども,我々はそういった外国人の方を発信側,企画側に取り込んで,彼らをして2次発信,3次発信をするような仕組みというのを作っております。
 2つだけ例を最後に,メキシコの日本酒事業とタンザニアの交通安全と並べましたけれども,タンザニアの交通安全がなぜ国際文化交流なのかというと,文化とビジネスの融合という意味において,以下のような仕組みを先週実施したからであります。
 一言で言うと,歌を青年海外協力隊の方がスワヒリ語で作りました。それは安全運転という歌です。それがタンザニアの有名な歌手の方に気に入っていただいて,コラボをして,意外なヒットとなりました。タンザニアの警察がそれに目を付けて,交通安全キャンペーンのテーマソングに採用してくれました。これがバックグラウンドであります。そこに,大使館を中心にJICAとかそれから企業の方――企業名を出していいのか分かりませんけれども,トヨタとか,トヨタ通商というのは現地で頑張っておられて,彼らと一緒にサポートする現地の体制を作りまして,今,キャンペーンを行っております。当課としては鈴木勉さんという,プロモーションビデオを作った方をタンザニアに送って,タンザニア警察のキャンペーンに協力をさせていただきました。
 何てことない派遣事業の1つではあるし,金額的にも大した金額は掛かっていないんですけれども,そのことによって安全運転の歌によって日本の安全に対する信頼・神話をタンザニアの人に思い出していただく。そこから日本がいかに誠実で勤勉で正確で,口に出すとやや口はばったいようなことをタンザニアの方に日本の精神性・文化として伝えていく。で,その先にあるのが,ビジネスにつなげるということですけれども,安全運転をする,そうすると,やっぱり信頼性の高い日本車の方がほかの国の車よりもいいのかなとタンザニアの人たちに思っていただく。それを,日本が押し付ける形じゃなくて,タンザニアの警察の交通キャンペーンという場をかりながら,小さな形で,目に見えない形ですけれども,文化とビジネスを融合する形でタンザニアの方が自分で選ぶという仕組みを浸透させております。
 こうした,手の掛かる,しかし,金額的にはコストは非常に少なく済む,したがって予算は余り掛からないような事業というのは,外務省でもしっかり今後力を入れてやっていきたいと思っております。その際には,今日ここに来られている皆様方と是非協力をして,お知恵を貸していただいて,日本の市民社会のポテンシャルを文化あるいはビジネスの形で発現するお手伝いをさせていただきたいと思っております。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,経産省さんからお願いしたいと思います。須賀総括補佐でございます。
 よろしく,どうぞ。

【須賀総括補佐】  今年の2月も大変お世話になりまして,引き続きコンテンツ政策をやっております須賀と申します。
 資料4で,非常に欲張って,うちのやっている政策を全部知っていただきたいということで一式持ってきてしまったので,この中から幾つか抜粋して今日はお話しできればと思うんですけれども。
 1枚めくっていただいて1ページ目,これ,前回も御説明したので,2度になってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが,我々,クールジャパン戦略は,先ほど岸守さんがおっしゃったように,文化面と経済面と外交面と3つの側面があると思っていまして,そのうち,経済面については,文化を担う人たち,それを足掛かりにしてほかの産業の人たちまで海外でしっかりと稼いでいく,日本人の食いぶちを将来にわたって確保していく,その布石となるような動きができればと思っております。
 クールジャパンに関与する全ての人がもちろん金銭的に見合うような対価を受け取るということは大前提なわけなんですけれども,よく言われますのが,一番苦しいのはクリエーターの人たちだと。で,その人たちがサステイナブルに,外国人が熱狂してくれるようなものを生み出し続ける環境がなければ,クールジャパン戦略というのはそもそも成り立たないじゃないかという御批判を大変よく頂きます。この文化面については,文化庁さんのやっていらっしゃる政策を,我々,勝手に御紹介させていただいたりしながら,一緒にやっていくんですよ,もちろんそこが一番大事なんですということをずっと申し上げているんですけれども,役割分担とともに,やっぱり,一緒にやっていくという姿勢を外に向けてもっと発信できたらと思っております。
 それから,併せて,岸守さんがやってくださっている外交面についても,必ずしもお金にならなくても,親日派が増える,知日派が増える,特にそれが若い人たち,ポップカルチャーを愛してくれるような若い人たちに広がっていくということが,日本の国益を考えましたら欠かせないことだと思っていまして,そういう意味で,クールジャパン戦略というのは一石三鳥ぐらいのものを狙った動きじゃないかなと思っております。
 経済面については3段階でずっと御説明していまして,1つ目が,まず日本についての情報,データですね,一番動きやすいものを海外へ流していくことによって,日本の魅力をよく知ってもらって,日本のブームを草の根で起こしていくという段階です。これについては,せっかく日本に良いコンテンツがいっぱいあるのに,国内向けに主に作られているために,海外に流すのが非常に面倒くさくて,コストが掛かって,事業者さん単体で見ますと採算が合わないことも多いので,日本の国内にとどまってしまいがちだというところに着目しまして,総務省さんと一緒にJ-LOPという,補正予算で155億円の補助金を作りまして,日本のコンテンツを外国語に翻訳したりとか,外国から見て不適切なシーンを削除するとか,そういったところの予算というのを既に執行しております。
 これは19ページに資料を付けていますし,それからホームページで「J-LOP」というふうに検索をしていただきますと,一番上に出てきまして,ここに非常に分かりやすい資料をたくさん載せていますので,もし御関心がある方は,今どうなっているのかなというふうに思っていただいたら,そのページを御参照いただければなと思います。
 それから,第2段階に関しては,日本の情報が流れ,ブームが起きたところで,そのファンをしっかり取り込んで顧客にして現地で稼ぐという段階を強力に応援したいと考えています。ここは基本的にはもうかるんですけれども,もうかるまでに結構リードタイムが長いというところに着目しまして,この秋にクールジャパンファンド,正式には海外需要開拓支援機構という組織を立ち上げるべく,今,最終調整をしているところでございます。
 経営陣が,会長さんと社長さんの名前も決まって公表もされまして,オールジャパンで取り組んでいく枠組みがやっとできてきたかなと思っていますので,11月の頭ぐらいに法人としては設立されることになると思うんですけれども,ファンドができましたら,是非皆様にも応援団になっていただいて,そのファンドを是非使っていただきたいと思います。周りの方にも,海外で事業をお考えで,ポテンシャルはあるんだけれども,もうかるまでにちょっと時間が掛かっちゃうというような事業をお持ちの方がいらっしゃいましたら,是非おつなぎいただいて,そういうものをしっかり応援していくようなワンストップサービスができればなと思っております。
 第3段階は,後で観光庁さんから御説明があると思いますので割愛させていただきますが,やはり,情報が動き,モノが動いて現地で稼いだ後に,最後やはりヒトが本場で本物を味わいたい,知りたいということで日本に来てくれる,ここまでがクールジャパン戦略だと思っていますので,ビジット・ジャパンともしっかりと連携をして,最後ここにつなげられる取組を我々としてもしていくということだと思っています。
 ここから先,予算の御説明になりますけれども,3ページに我々の予算の柱を2本書いていまして,似た名前なんですが,1本目がコンテンツ産業強化対策支援事業といいます。5ページを見ていただきますと,予算額自体は今年7億円を要求しています。相当圧縮して合理化に合理化を重ねてここまで来ているんですけれども,その中でやっていることの裾野は広がっていると思っています。
 その下の6ページ目ですけれども,これが我々のやっているコンテンツ政策の全体像で,このうち黄色く色をつけたものが予算事業,それ以外は,予算を使わずに,あるいは投資ファンドを活用しながらやっている事業です。予算事業ということで言いますと,まず,プロデューサー人材育成があります。コンテンツを作るときに,ハリウッドのプロデューサーというのは,お金の調達ですとか,それから弁護士,会計士を合わせたような仕事まで全部担うようなスーバー人材がたくさんいらっしゃいまして,そういう方々を目指す日本の若者を応援して,留学を支援して,その人たちが帰ってきて国内で活躍できるように環境を整えるということをやっています。
 今年から,このプロデューサー人材については,外国のフィルムスクールが,日本からどういう人を合格させたら良いか是非経産省が選んでくれというふうに言ってくれまして,我々は,この人をじゃあ入学させてくださいというふうに提案できるような仕組みまでできまして,是非ここは業界を挙げて応援したい人材をどんどん送り込めればと思っております。
 それから,[5]と書いてあるアンバサダーですが,これ,予算額自体は微々たるものなんですけれども,是非この機会を借りて宣伝させていただきたいと思ったんですが。留学生を170人以上束ねまして――日本のファンですね,日本のコンテンツが好きで好きで日本に来てしまったという外国人の学生ですけれども――その人たちが今,グループを作って,フェイスブックとかSNS,あるいはリアルなイベントにどんどん大挙して押し掛けたりして,精力的に活動しております。彼ら,非常に熱心で,クールジャパンについて自分たちが貢献できることがあれば何でもやりますと言って待ち構えてくれていますし,それから,ほとんどの国について学生さんが用意できるぐらい,いろんな国の学生を抱えております。我々も,これって外人が見るとどう思うんだろうとか,外国の若い人だとどういうふうに反応するんだろうというのは,アンバサダーのグループにぽんと投げて,彼らの反応が1日で帰ってくるというようなことをずっとやっております。
 そういうテストベッドがもし政策上必要な場合には,お声掛けをしていだだきましたら,アンバサダーの事務局におつなぎできますので,是非使っていただければと思います。非常に前向きで,良い子たちです。
 それから[7]のコ・フェスタですけれども,これは東京国際映画祭を核に,ちょうど秋からコンテンツ関係のイベントが国内でたくさんありますので,それを束ねて「コ・フェスタ」と呼んで,国際発信力を高めていくということを例年どおりやっております。
 それから,その下が,国際的な枠組みということですが,実は,ASEANのコンテンツ関係の省庁というのが,やはり日本と同じで文化庁だったり総務省だったり経産省だったりいろんな役所が絡んでいるものですから,そういう人たちをみんな,現場の担当課長さんレベルをお招きして,ACBSという会議を開催しております。会議はどんどん大きくなって,いろんな国が次はうちがホストをしたいと言い出してくれていて,この枠組みも,是非,関係省庁の方,御関心がありましたら御出席いただければなと思っております。
 あとは,大体,それぞれの資料について番号を振っておりますので,御関心を持っていただけるところを後で参照いただいて,質問がありましたら個別にアクセスしていただければと思います。
 最後に,26ページだけ説明をさせてください。最後から2枚目なんですけれども,今年,新規要求はこれだけでして,今まで我々,電子書籍とかゲームとか,それから映画の特区とか,それからテレビ番組の海外輸出とか,いろいろ手掛けてきまして,最後に残った大きな分野がマンガ・アニメだなと思っております。マンガとアニメというのは,実は1つのIP,1つのキャラクターとか世界観を基に,ライセンシングを通じてグローバルにビジネスを広げていくという意味で言いますと,ゲームに次いで海外から,本当であれば収益を上げる可能性が非常に高い産業だと思っています。
 ただ,現実には,マンガ業界とアニメ業界が別々に動いていたり,マスターライセンスを出した先,海外でそれぞれそのキャラクターがどういうふうにサブライセンスされているか,誰も把握していなかったりと,いろんな問題がございますので,この際,みんなで集まって,海外で一番効率的に稼いでいくにはどうしたらいいのか,どこを連携し,どこは国でやり,どこは業界でやり,どこは個社でやらなきゃいけないのかということを議論しましょうということで,CODAという海賊版対策の団体の中に事務局を作りまして,マンガ・アニメ海賊版対策協議会というのを開催しております。
 ここには,マンガとアニメの主立った企業のトップに集まっていただいていまして,座長は例のマシリトで有名な,集英社の鳥島専務にやっていただいてるんですけれども。この協議会の中で,マンガ・アニメの業界を盛り上げていくためのあらゆる方策を話し合っていくということにしておりまして,この間も文化庁さんから海賊版対策を説明いただいたりしているんですが,場所として使っていただくのも大変有り難いです。
 これまで,せっかく海外に日本のコンテンツを流してくれているチャネルを,海賊版だと言ってどんどんたたいて潰すということだけをやってきたんですけれども,それだとどうしてもイタチごっこで,海外のファンからすると,自分たちに対して供給してくれていたサイトがある日突然消えてしまうということで,誰もハッピーではないんですね。したがって,海賊版のサイトを正規版を流すサイトに少しずつ塗り替えながら,海外のファンは維持して,あるいは拡大しながら,日本のコンテンツホルダーの側もサステイナブルに事業をやっていける環境をどうやって作ったら良いかということを,実証事業などを通して考えていこうとしております。このために,3億円を予算要求しております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。中身の濃いお話を頂戴いたしました。
 それでは,観光庁さんから飯嶋参事官,お願い申し上げます。

【飯嶋参事官】  観光庁参事官の飯嶋と申します。文化庁及び文化政策部会委員の皆様には,日頃より観光行政に対しまして御協力を頂いておりますことに,この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。
 観光庁からは,来年度のビジット・ジャパン予算につきまして,2枚物をちょっとお配りさせていただいております。せっかくの機会ですので,予算の前に2点だけ,皆様にお願いしたいことがございます。
 1つ目は,ビジット・ジャパンの訪日外国人客数1,000万人に向けた御協力でございます。我が国では2003年に観光立国を宣言いたしまして,ビジット・ジャパンを始めました。今年は10周年目に当たる年になります。これまでも850万人程度は4度ほど経験をしております。2003年にビジット・ジャパンを始めたとき,500万人程度の訪日外国人数だったわけでございますが,これを早期に1,000万人にしようということで取り組んだわけでございますけれども,毎年年度途中あるいは後半にいろんな外的要因が起きまして,残念ながら1,000万人に到達しておりません。
 しかしながら,今年につきましては,御案内のとおり,7月に1か月間で初めて100万人を超えるといったような好調な状況で推移しておりまして,この8月までの合計で700万人ほど,686万人の外国人が日本を訪れております。このままですと,ぎりぎり1,000万人に到達するかしないかという状況でございますけれども,是非皆様に,海外にいらっしゃる御友人とか,年明けにやられるような海外の方々との国際会議,打合せ会とかを12月末までに日本でやっていただくと,ちょっとこそくかもしれませんが,1人でも多くの方に日本に年内に来ていただいて,今年こそ悲願の1,000万人を達成したいと,観光庁全力を挙げて取り組んでおりますので,皆様にも御協力を頂きたいということでございます。
 それから,2つ目のお願いが,昨年度予算で,訪日プロモーションビデオを観光庁で作成いたしました。外国人の視点から外国人委員の方に作っていただいたものでございますが,タイトルが「DISCOVER the SPIRIT of JAPAN」と申しまして,国土交通省のホームページあるいは観光庁のホームページあるいは日本政府観光局(JNTO)のホームページからも入れますし,ちょっとすみません,資料を配布させていただいておけば良かったんですが,アドレスは,「www.visitjapan」と英語で打っていただいて,「.jp」で入れるようになっております。
 ここには181本の訪日プロモーションビデオが収納されておりまして,それぞれ二,三分ほどのものでございますが,そのままエントリーさえしていただければ,海外,いろんなイベントで使っていただけるようなものになっておりますので,是非御覧いただきまして,何か海外でイベント,国内でも構いませんし,そういったものでお使いいただければと思っております。
 お願いは以上の2点でございます。
 それでは,ビジット・ジャパン予算を簡単に御説明させていただきたいと思いますが,来年度は,この1枚目にございます2つの大きなポイントがございます。1つは,東南アジア集中プロモーションでございまして,これまで訪日外国人の構造としましては,人数的には東アジアが大部分を占めておりました。特に韓国の200万と中国,台湾,それぞれ150万人ほどおりますので,この3か国・地域で約500万人がございました。ただ,やはりこういった国,いろんな政治情勢等もあり,なかなか,数は多いもののリスク要因もありますので,ほかに数を増やすエンジン役を増やそうということで,来年度以降,東南アジアに集中的にプロモーションをしていきたいということでございます。
 特に,外務省さんが今年7月1日からタイやマレーシアでビザ免除措置をとっていただきました。ほかの3か国につきましてもビザ緩和をしていただいたわけでございますが,こういったことを受けまして,タイからの訪日者は最近急増しております。こういったことも捉えまして,今年から徐々に始めておりますが,この東南アジアプロモーションを来年度から本格化し,東アジアに並ぶ数拡大のエンジン役に育てていきたいという要求が1つ目でございます。
 それから2つ目が,これまで選択と集中ということで,ビジット・ジャパンのプロモーションを主に,重点14市場とありますが,次のページの左上に重点14市場が書いてございますけれども,ここを中心にやっておりました。しかしながら,今後1,000万を超えて2,000万人,3,000万人を目指すためには,やはり裾野を広げなければいけないということで,例えばブラジルやトルコ,こういった国からはお隣の中国には5倍あるいは15倍の方々が訪れています。こういった親日の国にプロモーションを実施することで,訪日数を増やしていきたいということで,これまでの重点14市場に加えまして,EUの横断事業をするですとか,そういったことをして数を拡大していきたいというものが,新規要求の2つでございます。
 それから,2枚目,1つだけコメントさせていただきますが,これまでやはり1,000万人という数にこだわっておりましたけれども,今後は,更に高みを目指すためには,やはり質の向上もこれまで以上に取り組んでいかなければいけないということで,例えば一番下にございます,富裕層市場というのが別途ございます。いろんな国から富裕層の方々,いらっしゃっておりますが,こういった取組も今後本格化していきたいということでございます。特に,こういった島国日本でございますので,エアラインやクルーズの増便,新規路線の開設と連動したプロモーションに力を入れていきたいというのが,来年度のビジット・ジャパン事業の予算要求でございます。
 以上でございます。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 これで各省庁の皆様からの御説明を頂きました。大変熱心に,省庁の方々のアピールをお聞きしました。少し時間が予定よりも30分もずれましたが,それは熱が入っているという証拠で,御了解いただきたいと思いますが。
 この件に関して,先生方はいかがでしょうか。何かございますでしょうか。
 はい,加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】  ありがとうございました。特に経産省の大変勇ましいプレゼンテーションの後で,はばかられるんですけれども,2つ,御質問したいと思います。
 先ほど文化庁の御説明の中に,国立文化施設の機能強化の部分がありましたが,これ,青柳長官が以前から,国立美術館,博物館等の統合に関する非常に強い異論を唱えておられたわけですけれども,その流れは止まっているのか。つまり,それぞれの美術館,博物館について独立性を維持できるのか。そのために,したがって予算が増強されるという考え方で良いのでしょうかというのが1つでございます。
 それからもう1つ,いわゆるアーティスト・イン・レジデンスの事業についての予算が具体的に見えなかったんですけれども,それはどこにどういう形で存在しているのかなというところをちょっとお聞きしたいと。

【宮田部会長】  この2点については,清水さん,よろしいですか。

【清水課長】  それでは,まず,文化関係の独立行政法人統合の問題でございますが,前政権時代,一度,独立行政法人の見直しの中で文化関係の3法人の統合といったことが話題になり,閣議決定をされたことがございました。これについては,現在,凍結ということでございます。一方で,独立行政法人の運営の在り方についての改善の検討が進められてきておりますが,ただ,独立行政法人の組織の問題というのもまだ検討課題としては残っているところでございます。この秋にもまた独立行政法人,文化関係だけでなく全体で,組織の在り方についての検討がなされるというところでございますので,引き続き,統合の問題も含めた形での検討はやはりあるところでございます。
 私どもといたしましては,美術館,博物館や文化財研究所の文化財機構,また国立劇場などを設置する日本芸術文化振興会,それぞれがむしろ機能を強化していくことが必要だと考えて,今回,概算要求したところでもございますので,今後とも独立行政法人のいろいろ議論はあろうかと思いますけれども,それぞれが充実をし,それぞれが機能を果たしていくということを目指して,独立行政法人とも協力をしながら訴えていきたいと思っているところでございます。アーティスト・イン・レジデンスについては,担当者が大臣レクで外しているため,後ほど,別途,御説明申し上げます。

 

【宮田部会長】  今,せっかくおいでになっている4人の各省庁の方々からのものに対しての御質問等にちょっと特化させていただきたいと思いますが,いかがでしょうか,先生方。よろしゅうございますか。
  はい,林先生,どうぞ。

【林委員】  どうもありがとうございました。
 非常に,私,大変うれしく感じましたのは,すごく営業マインドがあるというか,各省庁さんに,やるぞという感じがとても聞こえて,うれしゅうございました。
 ちょっとお伺いいたしますけれども,最後のビジット・ジャパンは観光庁でいらっしゃいますね。それで,ちょっとすみません,私,個別の話で恐縮でございますが,横浜市も非常に外国人観光客を横浜市にお招きしたいということで懸命にやっておりますけれども,例えばクルーズ会社との連携強化なんですが,当然,横浜,港がございます。そして,今,大変にこのところ盛んになってきまして,外国の船籍が横浜発・横浜着の,そういったツアーの組成がすごく盛んになってまいりました。これ,国内の旅行会社も外国の船会社もかなり真剣にやっているんですが。
 ちょっとすみません,私が分かってなくて申し訳ないんですが,観光庁様と例えば当市の文化観光局,それから観光コンベンションとか,船事業をやってる方,我々の関係者とのかなりの交流の,要するにミーティングの機会なんていうのはあるんでしょうか。

【飯嶋参事官】  観光庁の出先機関としまして,国土交通省の外局でございますので,地方運輸局がございます。関東運輸局に企画観光部というのがございまして,国際観光課というのが中にございますが,ここは常に自治体の皆様と御連絡をさせていただいております。それから,クルーズ,大変我々も期待をしておりまして,既に,受入れ窓口の,海外との連絡の窓口も一本化をしまして,各省庁さんとお話ししまして,国土交通省の港湾局というところが受けております。そういったことで,関係省庁あるいは自治体の皆様と常に連絡を取らせてただいております。

【林委員】  かなり個別に自治体を掘り起こすというか,一緒にミーティングをしてやるのが一番効果が出てくるかなと思います。
 すみません,もう1点,よろしゅうございますか。あと,今日,4人の方にお話を伺いましたけれども,ほとんどこれはいわゆる観光行政とか文化行政で全部つながっているわけですね。私なんか横浜市長として,君のところは縦割りだとよく市民の方に言われるんですが,こういう連携というのはきちっとやってらっしゃるんでしょうか。予算をこう別々に立てていますけれども,つながりみたいなものを教えていただいてよろしいですか。

【須賀総括補佐】  ちょうど御質問いただきましたので。
 実は,各省連携,かなりこの分野は努力して,現場で頑張っている方だと思うんですけれども。1つ,例を挙げさせていただきますと,先ほど御説明した155億円のJ-LOPという補助金なんですが,そもそもローカライズはテレビ局に対して総務省と経産省が同じ方向で応援しているというメッセージ自体が結構価値があるものですから,それを考えて,山中さんのところと初めから共同要求をして,予算もテレビ番組についてはお互い折半で持って執行していくということをやっています。J-LOPの事務局の会議も毎週やっているんですが,そこに我々も総務省さんも1人ずつ必ず行くようにしております。
 それから,予算ができた後に,海外でイベントをやる場合のプロモーション支援に際して,外務省の在外公館が,できるなら会場として大使公邸を貸してくださるとか,そういうことも全部,岸守さんとうちの担当で相談をして,ロジも全部組んで,1つ1つ案件を拾って,これはどうしましょうかというふうに相談をしていますので,非常によく連携をしていると思います。
 あと,観光庁さんでいうと,観光庁長官とJETRO理事長の発案で,経産省とJETROと観光庁さんとJNTO(政府観光局)と4者で共同行動計画というのを作りまして,ホームページにこの6月に発表しております。中を読んでいただくと,すごく細かいことの連携,積み重ねなんですけれども,それを現場では頑張ってやるというふうにしております。

【飯嶋参事官】  いいですか。私もここにおります関係省庁の関係課長さん,あと文化庁の課長さんもそうですが,常にお会いしています。それで,仕組み的には,官邸に国際広報強化連絡会議というのができまして,クールジャパンとビジット・ジャパンは特に密接にありますので,クールジャパン-ビジット・ジャパン合同ワーキングチームというのも,課長クラスの会議がございますし,今,この分野では,先ほど経産省さんがおっしゃられたように,かなり連携が進んでおります。
 以上です。

【岸守首席事務官】  その国際広報強化連絡会議については,うちの課も共同事務局になっているので,今日はちょっと来ていませんけれども,官邸の国際広報室と,議題を設定していただいて,この間もちょっと会議をやったばかりですけれども。多分,皆さんが想像する以上に,仲良く,同じ方向を向いて連携を強化しているところであります。

【林委員】  ありがとうございます。自治体同士も,例えば三重県と横浜市がそういう観光交流をやるとか,そういう動きもすごく伸びております。どうもありがとうございました。

【宮田部会長】  大変良い質問を頂きました。2月のときにも私,感じましたけれども,やはり,文化というのは連携ですね。信頼ですね。それが横断的なものではないかというふうにとても感じましたし,今回も,今,林先生からの御質問,御指摘に対しても,非常に良い連携がとれているように思います。ありがとうございます。ますますその辺のところを進めていっていただければ,2020も大成功になるというところまでは絶対もっていきたいと。
 ほかにございますでしょうか。
 河島先生,はい,次でお願いします。

【河島委員】  すみません,多少さ末なことになるかもしれませんけれども,総務省の資料についてお伺いします。
 頂いた資料2の4ページと5ページを拝見していると,これは,コンテンツ対外展開に対する支援という補正予算からの金額,映像業界にとっては大変インパクトのある,非常に話題となった基金だと思います。ところが,執行状況をざっと確認すると,15億円ぐらいのように見受けられまして,交付決定が今年度の終わりまでということで,170億円のうちの15億円しかまだ執行が決まっていない状況で,この先,使い切れるのかなという不安が個人的にありまして。もし使い切れなかった場合どうなるのかとか,あるいは,今言うべきことではないかもしれませんけれども,実は使いにくいタイプの交付金なのかなという疑いを勝手に持っておりますので,その辺の御説明を頂ければと思います。

【宮田部会長】  お願いいたします。

【須賀総括補佐】  すみません,総務省と一緒に執行しているものですから,私からまとめて回答させていただきます。
 正に,初め,結構,事務局が我々以上に真面目で,本当にこれは国益に資するのかということで,1つ1つのコンテンツについてしっかり精査して執行していた結果,出足が遅れまして,政府の中でも執行率を心配されておりまして。で,我々,大丈夫です,ちゃんとやりますっていうことをずっと説明しているんですけれども,その後,要件緩和ということで,ここは使いにくいという御要望を全部受け止めて,このぐらいのところまではオーケーですというのをかなり詳細に決めて情報を出しておりまして,今は,毎週,100件以上の申請を頂いていて,事務局がもう処理が追い付かないということで,本当に物理的に,頑張って,皆さん何か倒れそうになりながら執行してくれているという状況ですが,来年の3月まで,このペースでどんどん,事務局も少しずつマンパワーを増やしながら執行していきまして,もし万が一執行し切れない場合は,執行期間の延長を視野に考えるということだと思っております。

【宮田部会長】  はい。頑張ってやってください。
 じゃあ,この件に関しては太下先生がラストということで,次の方に移らせていただきたいと思います。

【太下委員】  各省庁の皆さん,御説明ありがとうございました。
 どの省庁に向けてということではないのですけれども,文化庁の清水課長の方から冒頭に2020東京オリンピックの話もありましたので,このオリンピックに関連して3点,お話ししておきたいと思います。
 まず1点目は,ここにいらっしゃる皆さんは御存じかと思いますけれども,オリンピックは単にスポーツの祭典ということではなくて,文化の面でも非常に重要だということを是非お伝えしておきたいと思います。御案内のとおり,オリンピック開催に当たりましては文化プログラムというものの実施が義務付けられております。実はオリンピズムにおいては,オリンピックの提唱者であるクーベルタン男爵の理念にのっとって,文化とスポーツ,その両方が非常に大事であるとされています。ただ,残念ながら,オリンピックというと一般的にはスポーツの祭典というイメージが非常に強いものですから,逆に言いますと,オリンピックは文化の祭典でもあるのだ,ということを文化庁さんから是非強くアピールしていただきたいということが1点目でございます。
 2点目は,2020年のオリンピックは,でも東京の話でしょうというふうに思われている方も多いかもしれませんが,実は,昨年開催されましたロンドンオリンピックでは,全英を12のブロックに分けて,各ブロックのイニシアチブで,イギリス全土でオリンピックムーブメントを盛り上げる文化プログラムが行われました。しかもそれは,基本的には公募で,アーティストが主導するアイデアを実現するという「Artist taking the Lead」という,アーティストに主導権を委ねるのだ,というコンセプトで行われた非常に大規模な文化プログラムです。
 もちろん,このまねをする必要はないのですけれども,恐らく,2020東京オリンピックの開催に当たっては,東京だけでなく全国で文化的なプログラムが行われるということが期待されるわけです。そうなりますと,当然,国,文化庁さんはじめ各省庁のみなさんのいろいろな事業が2020に向けて行われているということが期待されるところです。先ほど,省庁間の連携を非常に積極的にされているということでしたので,これを2020へ向けてより盛り上げていただきたいということが2点目です。
 それから3点目が,そうは言っても,2020年は今から7年後随分先の話ですね,というふうに思われるかもしれませんが,実はオリンピックの文化プログラムは,開催に向けて4年間ずっと続けるものなんですね。より具体的に言いますと,2016年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで次のオリンピックが開催されますけれども,その閉幕式,Hand overCeremonyが行われた瞬間から,2020年に向けての文化プログラムが開始されるわけです。別の言い方をしますと,いわゆるスポーツの祭典としてのオリンピックは,4年に1回,世界のどこかで開かれるというものですけれども,文化に注目しますと,常に世界中どこかでオリンピックの文化プログラムが行われているという状況になるわけですね。それぐらい存在感を持って行われているものです。つまり,文化プログラムは,最初の開始は3年後の2016年になるのですね。準備期間も実は余りないと思います。そういった意味で,是非,今のこの省庁間の連携というスキームをより強化していただき,なおかつ,できればそこに東京都も入れて,2020年へ向けてどういうふうに日本全国で文化プログラムをやっていくのかという体制作りを御検討いただければと思います。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 先生,僕の記憶では,クーベルタンの考え方では,スポーツ,文化,教育とありました。これが,継続していく上で,非常に,先生のお話の下支えにもなるような気がしています。

【太下委員】  そうですね。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 ということでございます。何しろ,連携がとても,コンテンツの中で大切であるということをつくづく,4人の皆様からお話を頂戴いたしました。ありがとうございました。この件に関してまたございましたら,そのときは,この後ということにさせてください。
 今,教育という話をさせていただきました。議題の2でございますが,教育と芸術の関係ということに移らせていただきたいと思います。4人の先生方は,お忙しいようでしたら御退出いただいて結構ですが,興味があるようでしたらそのままいてくださってということでございます。
 ありがとうございます。大変活力のあるお話を頂戴いたしました。改めて感謝申し上げます。
 それでは次にいきます。教育と芸術の関係でございます。文化庁の国の施策の説明を頂いて,その次に仲道先生からこれまでの取組,最後に上野学園大学の船山学長代理から,音楽ワークショップ・ファシリテーター養成講座の取組について御紹介いただきたいと思います。
  では,お願いします。

【北風室長】  芸術文化課の室長の北風と申します。課長の舟橋が大臣レクで席を外しておりますので,私の方で替わって御説明させていただきたいと思います。
 資料6を御覧になっていただきたいと思います。文化芸術の力を教育に生かすといった取組は,文化庁においてはまだ緒についたばかりでございまして,まだ十分な体系的な取組というものは行われておりませんが,現状における関係の取組をここでまとめております。
 まず1枚おめくりいただきますと,「アートで子供たちの才能を引き出す」というシンポジウムを7月16日に開催しております。裏面を見ていただきますと,実際にどのような方に御発表いただいたのかということが分かると思いますけれども,全体に事例発表とパネルディスカッションという2部構成で発表していただいております。事例発表におきましては,日本フィルハーモニー交響楽団の富樫尚代様から「音楽の森(エデュケーション・プログラム)」の取組について,武蔵野美術大学の三澤一実教授から「旅するムサビ」の取組について,東京藝術大学の伊藤達矢助教と東京都美術館学芸員の稲庭彩和子様から「とびらプロジェクト」の取組を,また,横浜市芸術文化教育プラットフォームの小川智紀様から同プラットフォームの取組について御発表いただいております。
 その後のパネルディスカッションでは,モデレーターを,本日御欠席でございますけれども東京藝術大学の熊倉先生に務めていただきました。実際に出た意見というのは,お手元の資料の3枚目にあるとおりでございますが,例えばファシリテーター,文化芸術を活用してそこで感じたこと,考えたことといったものを引き出す取組を行う役割の方ですけれども,こういったファシリテーターとなるアーティストには資質が必要で,育てるのは非常に大変であると,トレーニングも必要であるといったことでありますとか,分野によってもこのファシリテーターの役割や養成方法については違いがあるというようなことが,御指摘されております。
 また,ワークショップの在り方についても,子供に教えようとするのではなく,自主性を引き出す取組が必要であるというお話もございましたし,学校で求められる取組として,芸術体験を通じて子供たちが芸術に親しむ情操教育的な取組と,自己肯定感が低かったり,他者との関係を作るのに困難を抱えていたりするような子供たちに自己肯定感を高めてもらうという,切実型の取組があるというような御指摘も受けているところでございます。
 その他の御発言内容については,資料を御覧になっていただきたいと思います。
 次に,概算要求の関係の部分でございますけれども,既に清水課長の方から御説明を頂きましたが,文化芸術による子供の育成事業といったものを要求させていただいております。この事業は巡回事業と派遣事業とに大きく分けられるんですけれども,そのうちの,芸術家を学校に派遣してそこで教育に携わっていただくという内容については,3つ目の,コミュニケーション能力向上事業といったところで特に分離して要求しております。
 学校において,芸術家による表現手法を用いた計画的・継続的なワークショップを実施するために必要な経費を要求しているところですが,今回全く新たに実施するということではなくて,25年度までの取組においても,主に初等中等教育局,いわゆる教育を担当する部局の方で主に執行していただいておりまして,その部分,文化芸術を教育で活用していただく取組について,更に充実させていきたいと考えているところであります。
 その具体的な取組が,その次からのページにございますけれども,これは資料を御覧になっていただきたいと思います。
 また,最後のページ,大学を活用した文化芸術推進事業といったものもございます。特に芸術系大学の有する機能を活用していくという事業なんですけれども,その中で,対話型の鑑賞を提供するファシリテーション能力を養成するための取組を,この事業の中で推進していこうと考えているところでございます。
 大きく分けて2つの事業について,文化芸術の力を教育で活用するために要求しているところであるということを御紹介させていただきました。
 簡単ですが,以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,次に,仲道先生,お願いいたします。

【仲道委員】  本日はこういった場を設けさせていただきまして,誠にありがとうございます。
 私は,最近行われております音楽のワークショップ,それがどのようなことを行っているのか,なぜそういったことをしているのか,そしてそれがもたらす可能性,そして現在の問題点についてお話しさせていただきたいと思います。
 音楽はすばらしいものであるというのは共通の認識ですが,実生活とかけ離れた感覚があるというのも事実です。それは,音楽というものが,いわゆる鑑賞,理解するものとしてのもの,それから実践,誰かが演奏する,皆で演奏するものという,この二元性を持っているが故に,なかなか実生活に落とし込めないというところからきているのだと思います。
 クラシック音楽は専門的な,平たく言えば難しいジャンルのものであります。それを,なぜすばらしいのかということ,すばらしいものがどうしてなのか,なぜなのかということを,実感,体感するプロセスを経ることによって,音楽を理解するためにということだけを目的とするのではない,幅広く音楽がもたらすものを享受することができる可能性が広がるのではないかと思うのです。それが,この鑑賞と実践の間に交わる,「ワーク」ということなんです。音,言葉,絵,体を使ってワークをするという概念です。
 ここで「ワークショップ」という言葉が出てきます。昨今,ワークショップという言葉はよく使われておりまして,楽器を指導するようなクリニックであるとか,それから,先生がいてみんなが作品を作るというようなものもワークショップと言われております。が,学術的には,協働する場面がある,即興的な場面がある,体を動かす,そして,自分がそこにいることが価値があるという感覚を持つということを内包するものを,ワークショップと位置づけるのだそうです。今日はそれらを踏まえた上での音楽のワークショップについてお話しいたします。
 それによります効果は,このように各国でももたらされていますけれども(表),すごくいいことが並んでおりまして,本当かなとお思いになるかもしれませんが,実際に音楽ワークショップはこういったことを実現できるものとして存在しております。それは,音楽芸術の理解だけにとどまらない幅広い効果があると言われます。
 それでは,実際に私がしていることを紹介させていただきます。学校に行きますときには,鑑賞プログラムとワークショップを2本立てで行うことを今,基本にしています。知識としての音楽ではない体感型の音楽を目指しています。で,子供たちに体感型ということで音楽を,例えば五感に落とし替えたり,言葉にしてみたり,絵にしてみたり,いろいろな感覚から,「じゃあどう思うの?」と聞いたときに,みんなが答えを探すんですね,そこに。正しいことは何だろうと。それで,子供たちに,「答えは君たちの中にあるんだよと。1人1人のところにあって,正解というのはそれぞれが持っている」と言いますと,大体きょとんとします。「学校を卒業したときに,人生において答えのあることなんか何もなくて,みんな正解なのか分からないけれども,それを探して一生懸命生きているんだよ」と言うと,もっときょとんとします。そういった答えのない,けれどもとても大切な何かを感じ得ることが,実は音楽の鑑賞から得ることができると思うのです。
 プログラムとしましては,この写真にありますような例なのですがフラフープを使って音の動きを見せたり,シャボン玉でまた音の動きが,どういうものかを見せたり,見えないボールを手の上で転がしながら音の動きを考えてみたり,絵の中に音楽をどう聴くかというようなことをしてみたり。そして,この写真ではドビュッシーの作品を,日本の版画から影響を受けた,浮世絵から影響を受けた作品ということで浮世絵を見せ,その雨の音を聞いてみようということをしてみたり。また,こちらの写真では詩を使って,言葉にいろんな音楽が付いたときにどう言葉の意味が違って聞こえてくるかということをしてみたり。握手をしながらいろんな悲しい音楽,勇壮な音楽を聴いたときに,この握手の意味がどういうふうに見えるかというようなことをしてみたり。
 こちらは,音楽を聴いて絵を描くようなアクティビティーの写真ですけれど,ある時こういうアクティビティーを学校でしましたときに,ある子がある曲を聴いてスキー場の絵を描いたんですね。で,先生は,どう考えてもその音楽とスキーが結びつかないから,「おまえ,何,ふざけてるんだ」みたいなことをおっしゃったわけなんですが,よく聞いてみますと,その子は家族でスキーに行ったときに,ホテルでそういう音楽が流れていたと。その楽しい思い出がよみがえってきてスキーの絵を描いたのだと。でも時として,学校の教育現場では,そこではなくて,結果が何か間違いであるといったような考え方をされてしまうような場面に遭遇することもございます。
 鑑賞型のプログラムをするときには,音という曖昧なものを自分の中でそしゃくして,様々な感覚,理論,そして知識に置き換えていくことができるというようなことをします。こういったことを経まして,ワーク型,ワークショップ型の時間を設けます。
 私がワークショップというものに最初に触れた衝撃的な体験は,英国におけます免疫学のシンポジウムと音楽ワークショップのコラボレーションの現場でした。お渡ししてある資料に,どんなことが行われたかを記してございます。ベートーヴェンの「運命」のシンフォニーの「タタタタン(↓)」という音のモチーフを,ベートーヴェンがいかに変容させて曲を作ったかということを,ワークを通して知り,なおかつ,その「タタタタン(↓)」というモチーフがあたかも遺伝子の配列と同じことであると。「タタタタン(↓)」というものが,「タタタタン(↑)」と変わっていくことが,遺伝子が変わることと同じであるというようなことを,免疫学者が出てきまして,遺伝子変異とか免疫システムについて説明するんです。そうしますと,子供の中では,単に説明を聞く以上に,音体験とそれが結び付きます。しっかりと子供の中に実感,深い興味として,多分一生忘れない記憶として,その免疫学の理論が入っていくという。これは音楽のワークショップをしながら,それがほかのジャンルの教育にどれだけ有効であるかということを認識したワークショップでございました。
 その次の写真ですが,こちらのワークショップは,私が東京音楽大学の音楽教育研究の生徒たちに施したものです。130人の生徒がいるんですが,幾つかのプレプログラムを経ましたあとに,○と△と□のどれでも良いから自分の紙に書きなさいと指示しました。そして,1人1つずつ描くんですが,それを持ち寄って十何人かのグループを作り音楽を作りなさいと。それだけの指示をしました。全く,それ以上のことは何も言いませんでした。全部で7グループあったんですが,それぞれが全く違った考え方で音楽を作りました。これらの模型を,印をリズムに見立てたり,音に見立てたり,ストーリーに見立てたり,相談し合いながら考えていった,非常に革新的なアイデアがたくさん出ました。終了後には,彼らは,音楽とはどのようにできているかということがよく分かったというふうに感想を述べました。こういったワークの手法は,机上の教育だけではない実際的な理解への非常に直感的な道筋として効果があると思いました。
 次の例は,宮城県の七ヶ浜町という,津波で甚大な被害を受けた町の小学校で行いましたワークショップです。これにつきましては,資料7-2で報告書が添付されておりますので,御覧いただければと思います。ここで行ったことは,未来の七ヶ浜,20歳になったときの私たちということをみんなで話し合って,それをキーワードに音楽を作るということです。震災後になかなか言葉にできない自分たちの思いを言葉にし,みんなで語り合い,それを音にして表現するということで,何らかのカタルシスであったり,共有,共感を生むことだったりができるようなワークショップだったと思います。
 その次のものは,広島県の3月末で閉校してしまう小学校で行ったものです。これは,学校の校歌と地元に伝わる和太鼓のリズムを組み合わせて,その中に,学校の音ってどんな音?ということを探すワークです。朝,学校に来たら,授業が始まるまでどんな音がする? 授業が終わって学校から帰るまでにどんな音がする?ということを,現代音楽のように音を探して音楽を作っていきました。それを校歌と地元の和太鼓と全部組み合わせて組曲にすることで,感動と心に残る学校の思い出,また日常生活で起きていることに音を通して意識を配るというような効果があったように思います。
 そして,次です。こちらは,先日参りました福島県南相馬市でのワークショップなんですが,南相馬はまだ市の3分の1が避難区域に指定されています。人口は6割になりました。この小学校は児童数が半分になりました。ここで,人と人とのつながりを歌った美しい曲の間に,みんなでボディパーカッションやリズムを使って,何か元気の出る曲を作ろうということをいたしました。南相馬では,参りましたときに,表情のない子供が多いことが印象的でした,表情の乏しい子が。もちろん,元気な子もシャイな子も,いろんな子がいるんですけれども,音楽ワークショップの特色というのは,みんなが元気にすばらしくしなくていいんです。シャイな子はシャイな子だけれども,ほんのちょっと音を出すだけでも,必ず出さなければいけない,必ず参加する。それで良いのです。それで良いということがそこにあなたのあり様でいていいんだよというメッセージをあげることができます。元気な子は元気に,そうでない子はそうでなくても,あなたが必要なんですということを,音を使った体験によってみんなに知ってもらうことができる。音楽という感動をもたらすものを使って行うことができる。音楽ワークショップにはそういった要素もあるのです。
 このような音楽ワークショップは社会の中において,教育の場面におきまして活用することができます。学校の先生が,教育者が使えば教育効果もあります。アーティストによって音楽や芸術への理解に向けて行うこともできます。ワークショップデザイナーとコラボすればコミュニティーデザイン,地域の人たちのつながりを強める効果もあります。治療に関しましても,療法士の人と何らかの効果につなげることができる。福祉の面でも効果を及ぼすことができる。なぜならば,ワークショップには創意工夫を必要とします。そして,頭の中のふだん使わない領域を使うことにより,クリエイトすること,イマジンすること,そして革新的な考え方をもたらすことができるのです。音楽という正解,不正解がないもの,その上,勝ち負けのないものを使って,そして人間は精神的な生き物である,その精神的な営みを行えるものであることを使うことによって,そういった効果をもたらすことができるのだと思います。
 それでは次に,そういったワークショップを行う上に必要とされることについてお話します。これも資料の方に書いてございます。プログラムを作るときに,何のためにどのようなワークを設定するかという専門的知識が必要になること,参加者の年齢,環境に適したものを作ることができるか,その場に適したものを作ることができるかという力が必要になります。もちろんスケジュールも構築しなければなりませんし,関係する人とのコミュニケーション,関係の構築能力も必要とします。進行と成果のレポートも作らなければなりませんし,それをどう評価するかということも求められてきます。これをアーティストが主導で行うには負荷が多過ぎるのが実情です。アーティストと,それらをコーディネートする人,そしてファシリテーターが必要になるのです。このファシリテーターという言葉が先ほどから出ております。これにつきましては,私の次に船山先生が御発言くださいますので,そちらをお聞きいただけたらと思いますけれども,そのようなコラボレーションが必要になってまいります。
 そして,教育の場面における,学校に入るときの問題点もあります。先生方からしますと,こういったワークショップを御覧になると,子供が遊んでるようにしか見えないと。これが学習指導要領の一体何に合致するのかというところで,疑問を持たれてしまうということがございます。また,学校の授業の45分という短い時間の中で一体どこまで何ができるのかという問題。それから,評価の概念の相違。先ほどのスキーの絵を描いた子供の例もありますが,何を評価するのかという概念の,考え方の相違の問題もございます。またアーティストという外部侵入者が学校に入った場合に,アーティストという学校の現場をよく分かってない人が勝手にやってきて,何か勝手なことをしているというように捉えられてしまうようなこと。
 そして,特に感じることなのですが,学校は知識を得るところという考え方の大きさです。できるということ,分かるということ,分かち合うということ,この3つが学校の教育の柱だとしましたら,「できる」と「分かる」が非常に比重が大きくて,「分かち合う」ということのすばらしさというものをどのように先生方が捉えていらっしゃるかというところが,このワークショップといった考え方が学校の教育の中にどのように入っていけるかということをひもとくことのできるポイントになるのではないかと思います。同様に,こういったワークショップの考え方を学校の教育の現場だけではなく社会の様々な場所で行うときの,説明責任というものが今,非常に問われています。これが一体何をどうする,一体何なのかということをきちんと説明しないと,なかなか受け入れてもらえないという現状がございます。そして,その効果は数値で表せるような単純なものではないのです。
 音楽のワークショップに関して申し上げるのであれば,音楽というジャンルの中には非常に高度な思考体系であるとか,分析体系が入ります。それは,数学にも国語にも美術にも,そして体育にも理科にも歴史にも地理にも,ありとあらゆる分野への思考,教育に広げることができるものです。そういった,それぞれの教育をつなげることのできる大きな力が音楽にあります。音楽というのは,人間古来の,音を楽しむ,リズムをたたく,歌を歌うという,コミュニケートしたいとか表現したいという本来の欲求に基づいています。そこに高度な知的体系が付加されてきました。それを使って工夫したり創造したり,みんなで協働していく作業をしていった時にもたらされることの大きさは計り知れません。
 ワークショップの一番大事なところは,それぞれのアイデアを否定しないということです。「それ,だめでしょ」という言葉は絶対使ってはいけないというのがワークショップの概念なんです,みんなが「それ,いいね」と認めたところから,じゃあもっと良くするにはどうしたらいいんだろうと考えていくというこの作業は,これからの私たちに必要とされている考え方なのではないでしょうか。
 芸術は,答えのないところ,何かへ向かっていく,探していくということを繰り返してきました。それが芸術の本質だと思います。それはすなわち,答えのないところへ向かっていくということ,人が生きる力を持つということと同じだと私は思います。それを,シチュエーションを超えて,広義においてもたらすことができる音楽の力の可能性を,教育の現場に,そして社会に取り込んでいくことは,非常に重要な大事なことだと思っております。
 私の発表は以上です。

【宮田部会長】  大変すばらしいプレゼンテーションでした。ありがとうございました。教育の根幹をお話しいただきました。ありがとうございました。
 さて,ちょっと時間が大分過ぎておりまして,大変恐縮なんですが,あと船山先生からファシリテーターのお話を頂いて,質疑応答していって,今日を終わらせたいと思っております。冒頭にも申しましたが,先生方大変お忙しいと思います。時間が12:00を過ぎましたら,もしいろんな次の御予定などございましたらば,大変私の進行が悪くて恐縮なんですが,御中座なさって結構でございます。
 それでは,船山先生,よろしくお願い申し上げます。

【船山学長代理・教授】  御紹介ありがとうございます。音楽学専門の船山信子と申します。
 資料8を御覧いただきます。この8月の4日間という,恐らく日本において初めての本格的な音楽ワークショップ・ファシリテーター養成講座を開催いたしました。私は会場の上野学園 石橋メモリアルホールの館長もしておりまして,その関係で,ここに足早の具体的な御説明を申し上げます。
 30名を予定しておりましたが,50名以上のエントリーがありましたので,急きょ,来る12月に同じ規模の第2期の開催を決めたところでございます。受講生の40名の内訳は資料の3ページの通り,多種多様な人たちが全国から集まりました。
 資料の1枚目を御覧いただきます。御覧のように,平成21年から毎年,音楽ワークショップ・ファシリテーター養成講座,及び子供向けのワークショップを開いてまいりまして,それらを踏まえ,昨年8月には初のフォーラムを開催し,近藤元文化庁長官にも御臨席を頂きました。その報告書を参考資料としてお手元にお届けいたしております。特に9ページ以降のパネルディスカッション抄録には,パネリストの御発言に貴重なヒントがあろうかと思います。なお,誤植がありますことをお許しください。
 こうした過去の経験を踏まえて,満を持して今回の4日にわたる講座開催に踏み切りました。この趣旨は,スライドの4点であります。少し補足いたします。1)今までは,受講生に音楽経験を問うことはありませんでしたが,今回初めて,本格的な音楽ワークショップの学びと実践を目指す音楽家の育成を目的としたわけでございます。2)でありますが,英国で実績をあげているスペンサー講師の方法論を日本の精神的風土にどう適応させるかという命題です。先ほど仲道さんも御指摘になりましたが,小・中学校にワークショップを導入する際,いつも問題になるのは,きちんとできている指導要領になかなか入る隙がないことのようです。3)受講生の約半数に当たる19名の大学生たち(大半が音楽大学生)にファシリテーターへの関心を喚起する。4)グループワークを通して参加者同士のコミュニケーション力や連携力,連帯感を強めることを目指しました。
 資料の4枚目を御覧ください。4日間,約30時間のカリキュラムは,10のセクションと2つのグループワークで構成されます。1日目の第1,第2セクションは座学でありまして,マイケル・スペンサー氏,私どもの音楽文化研究センター客員研究員でありますが,そのワークショップ総論。午後には,カリキュラムデザインが専門と自己紹介された,ワークショップの碩学(せきがく),苅宿俊文教授の,ワークショップ全体の理念・意義をめぐるレクチャーでした。
 さて,グループワークというのが私どもの特徴でありまして,40人を6グループに分け,この日の2つのレクチャーの総括を大型の模造紙に書き出し,各グループの代表が発表しました。この形は連日繰り返して,その日の反省と反すうに役立てられました。また,それらは最後の日まで壁新聞のように会場に張り出され,全てのセッションが鳥観できる仕組みでした。また,受講生が附箋に質問を随時メモして,ホワイトボードに張っておき,スペンサー氏が内容ごとに質問を分類し,それらに丁寧に答えて一日を終えるという運びでした。
 2日目のレクチャーとワークで,ワークショップの素材作りのコツが次々と語られました。内容のアイテムは資料のとおりであります。第5セッションは即興演奏のだいご味を知る貴重なワークでした。思い思いの教育楽器を手に,3つに分かれたグループがアイデアを競い,披露する場となりました。そのうちの1例を御覧ください。

(ビデオ上映)

【船山学長代理・教授】  このグループにつけられたタイトルは「ゲリラ攻撃」というものでした。
 3日目は,ワークショップのテーマをどう選んで組み立てるかという,スペンサー氏の創意の手の内が披露されるという,講座のハイライトとなりました。例えば,テーマがムソルグスキーの『展覧会の絵』の場合,その導入のために,グループごとに出されたテーマを身体表現するワークから入ります。まず,御覧の写真は,テーマの「ピラミッド」を全員で表現しなさいということでした。これでは「正面はうまくできたが,後ろの胴体部分がないね」と,スペンサー氏が指摘している場面です。次に,「花束」というテーマの表現です。つぼみや葉っぱも人体で表現され,座っている人はリボンのつもりなのです。そこで,本題の『展覧会の絵』の中の「カタコンベ」という曲の表現に入りました。後ろの大きな十字架,そして手前の小さな十字架,祈る人もいます。「カタコンベ」に続いては,大きい門。これは「キエフの大門」という曲のイメージを体で表現する。また,お城を表現する。次は「古城」という曲のための身体表現です。
 こうしたワークは,作品を身体自体で感じ取る場となりました。彼の独創的なワーク作りは,十数年のオーケストラ経験に基づくのには違いないですが,着想と準備に実に時間を掛け,楽譜を徹底的に読み,マニュアルを作成することから生まれます。その膨大なプロセスがあってこそ,ワークショップ参加者の心をつかむワークができることを,一堂は体得しました。
 ここで,ストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』の極めて複雑で精緻なリズム構造をばらして子供たちに歌わせるという,鮮烈な手法を映像で見ることにいたしますが,これは指揮者泣かせ,演奏家泣かせのこういうリズムなんですね。(リズムのデモンストレーション)
 こういう難しいリズムを子供たちがどのように歌ったでしょうか。

(ビデオ上映)

【船山学長代理・教授】  これは平成23年8月に静岡のグランシップでスペンサー氏が行った,子供のためのワークショップの1シーンでした。なお,「ン,ターン(16分休符・8分音符)」という,その「ン(16分休符)」というときには足を踏みならします。「ターン(8分音符)」というときの1拍だけのときには「ブーヤ」と言うわけですね。「ン,タン(16分休符・16分音符)」のときは「ン(16分休符)」は足踏み,「タン(16分音符)」は手拍子となります。こうした身体によるリズム表現を子供たちはいとも簡単に身につけてしまします。最後には,原曲を聞かせて,難解なリズムが易々と理解できるという仕組みです。ちなみに,このワークショップのマニュアルは25ページに及んでいました。
 この日の最後の2時間掛かけて,8グループのワーク作りがホールの内外で行われ,最終日に1グループ10分という制限のワークを各グループが発表しまして,充実の時間帯を持ちました。その1つが,唯一,3歳児を対象とした幼児のワークの創作でした。では,その記録の一部を御覧いただきます。

(ビデオ上映)

【船山学長代理・教授】  右の白い小柄の方がコーディネーターで,ほかの方たちは3歳児という見立てです。
 最終日には,ワークショップコーディネーターの草分けの吉野さつき氏の,演劇が中心の実例が紹介され,第10セッションの総括は,「ファシリテーションとはskill of lifeにほかなりません」というスペンサー氏の言葉で締めくくられました。
 次に,資料の5ページ目のアンケートを御覧いただけますでしょうか。ファシリテーター経験者と未経験者がほぼ半々であり,内容の難易度の答えにもその数字が反映されていたと思います。「この講座で役に立つと思ったことを3つ挙げてください」という問いかけに多くの答えが寄せられました。それをまとめてみました表でございます。例えば,新しいところでは,「スポンサーや受益者の立場を十分理解する」と。これは,受講生が深い印象を受けたようなところだったかと思います。それから,4の「即興演奏の重要性を再発見した」というのが多かったと思いますね。
 次に,今度は,ファシリテーターの育成の問題点・課題でございます。まず,「ファシリテーター」という用語ですが,企業関係ではこの語はかなり定着しているようですが,音楽関係ではまだ市民権を得ているとは言い難いと思われます。これは,ラテン語の「ファチエーレ」から来ていまして,辞典によりますと,50ほど意味がある歴史のある語です。「ファチリターレ」がイタリア語,「ファシリテ」はフランス語,「ファシリテート」が英語です。例えば文科省の大学連携プログラムの傘下で活動してこられた3つの音楽大学の共同プロジェクトは,「コミュニケーションリーダー」という言葉を使っています。また,東京音楽大学の講座名は「音楽ワークショップリーダー」です。それから,確か,仲道さんは「ワークショップデザイナー」という言葉を使っていらしたと思います。そのほか,「ワークショップクリエーター」。一番下の「ワークショップコーディネーター」は,ワークショップの参加者とかファシリテーターとかアーティストなどの調整役という意味で使われているようで,どこかで整理が必要かと思います。
 この用語について,スペンサー氏と何度か意見を交換しましたところ,「ファシリテーター」にどうしてもこだわる理由は,彼の哲学に関わっている,つまり,リーダーというと,上下関係が発生するので何としても避けたいと言われるのです。「ファシリテーター」の格好の日本語訳が見つかりません。大学の内部において,日本語にならない言葉はどうなのかという議論もありましたが,推進役,助言者,促進者,何役といったような日本語しか見つかりません。どうも,日本語というのはそもそも抽象語になじまない,そのところで和製英語が氾濫するということが起こっているわけですね。これは解決できておりません。
 次に,私ども上野学園大学のこの講座は今後とも継続していく所存であります。昨年のフォーラムの折に,ファシリテーターのステーションになってほしい,という発言を頂いたことを忘れてはおりません。継続の課題は山ほどあります。具体的には,年間の開講の回数を定め,綿密なカリキュラムを構築する必要があります。今回は,ファシリテーターを,座学と実践を配しつつ,総花的に概観する形になりました。しかるに,ファシリテーターと一口に言いましても,立脚点は様々です。学校教育へのワークショップの導入があり,また,文化施設事業の普及・開発があり,また,仲道さんのお立場ですが,演奏家や作曲家が需要側との音楽理解の深い共有を目指すという視点もございます。それらの知的要請にカリキュラムがどう対応していくのか。初心者と経験者の差異化をするか否かも検討してまいります。
 最後に,「ファシリテーターの養成に関わる音楽大学の使命は」という,大仰なタイトルをつけてしまいましたが,まず昨今,音楽大学には新しい基軸の学科改編の動きが盛んですが,ファシリテーターへのアプローチ及び養成を標ぼうする講座はいまだまれであります。この分野に光が当たり,音大卒業生の仕事先としてそういうファシリテーターというものが定着するまでには,長い道程が必要でしょう。私どもの大学では,今回の講座の積極的推進と並行して,カリキュラムに,ファシリテーターの理論と実践に関わる講義を来年度には開講するように,進めているところでございます。
 もうひとつ,私どもは,音楽文化研究センターを軸として,ファシリテーターを教育と演奏の両面から科学することをじっくり深めていく,そういう研究体制の構築ということも課題としております。
 ちょうど12:00になりました。本日の資料でも拝見いたしましたが,日本の大学を活用して文化芸術を推進するという事業の中で,アート・マネージの人材についての,「作品を鑑賞する者と作品をつなぐ『対話型鑑賞』を提供するファシリテーション能力」がうたわれており,私どもは,この政策に背中を押されている思いでございまして,今後とも鋭意努力して取り組む所存でございます。
 御清聴ありがとうございました。

【宮田部会長】  お二人の先生方,本当にありがとうございました。中身の濃いお話を頂戴いたしました。
 教育と芸術の関係でございました。この件に関して,どなたか,御質問あるいは御意見等ございますでしょうか。
 はい,湯浅先生,どうぞ。

【湯浅委員】  今,仲道さんと上野学園さんから御説明いただきまして,日本でのいろいろな活動が分かり,大変参考になりました。
 前回の政策部会で私は英国の状況を御説明させていただきましたけれども,仲道さんの御発表の中で,問題点の1つが学習指導要領のすり合わせということが,先ほどの上野学園さんの方からも出てまいりましたが,英国の方でもこういった子供のため,若しくは幅広い方々の文化芸術の活動というのが,過去二,三十年行われていますけれども,特に教育との関係で大きく動いたのが,90年代後半に,教育に関する省庁と文化・メディア・スポーツ省が共同で設立しましたNational Advisory Committee for Creative and Cultural Educationという,長い名前ですが,日本語に訳しますと,文化芸術教育に関する諮問委員会というものを,文化に関する省庁と教育に関する省庁が共同で設立しています。そして,そこで出されました「All Our Futures」というレポートが,この後10年以上,現在続くまでの教育とアート(芸術)の関係の基盤になって大きく動いています。
 特に,1つは,ちょうどイギリスも何年かに1回,学習指導要領のようなナショナルカリキュラムが改訂されますが,そのタイミングで,文化,芸術,教育というものをカリキュラムの中にどう落とし込むかということで,レコメンデーションもかなり出ていました。
 先ほど,予算のお話の中でも省庁連携ということが話題になりましたけれども,これからこの文化,子供に対する創造力育成の事業を進めていくに当たって,教育庁関係の省庁は文科省1つですけれども,それと文化庁の強力な連携というのが非常に必要になるかなと思いました。
 前回も御説明,御紹介しましたが,つい最近,文化芸術教育に関するレビューペーパーとレコメンデーションが出ておりますので,また機会がありましたら御紹介をしたいと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございます。

【三好委員】  仲道先生,船山先生,それと前回の湯浅さんのプレゼンテーションにもあったのですが,教育と文化というのが本来密接に関わる,子供にとって教育と文化というのはお互いに裏表で,連携されて初めて子供にとっても意味があるということが,前回,今回の話でよく分かったかと思います。
 それで,1つ,文化庁に質問は,先ほどの資料6を御説明いただいた中に,2番目の,文化芸術による子供の育成事業というので,予算に関する資料を出していただいているんですが,これでは,例えば一番左の巡回公演事1,900公演,2つ目の芸術家の派遣事業が,学校公募とNPO法人でそれぞれ千数百件ずつあるのに比べ,一番右側のコミュニケーション能力向上事業というのは,学校公募で100件,NPOで100件と,桁が違うんです。
 さらに,特に私が関心を持ったのは,その実施例の中でも,それぞれいろんな教科がある,芸術文化といってもいろんな教科に関連している。国語,社会だけでなく,もしかすると,ここには出ていない理科とか算数とか,ほかにも関連するようなことが多分あるのではないか。そういう意味では,先ほど部会長がおっしゃった,スポーツと教育と文化というのはやはりお互いに連携しながらやっていかなきゃいけない,そういうものだろうと思っております。
 そういう意味で,今のコミュニケーション能力向上事業というのが,予算段階でも学校公募で100件という数字が果たしてどうなのか。小中ですから市町村の教育委員会が主体だと考えると,市町村の数は1,700あるわけですから,少なくとも全ての市町村において取り組まれるということが必要ではないかと思うんです。この100件という数字がどういう数字なのか,もし分かれば教えていただけると有り難いと思います。
 以上です。

【宮田部会長】  この件に関していかがですか。

【舟橋課長】  先ほども御説明したかもしれませんけれども,このコミュニケーション能力向上事業というのは,この資料の2の芸術家の派遣事業,この中の一部の運用として実施しているものでございます。100件という数字は,確かにまだ十分ではないかもしれませんので,今後,予算全体の拡充を図る中で,このコミュニケーション事業についても増やしていければと思っております。真ん中の芸術家の派遣事業,これは芸術家を学校現場に派遣するものですけれども,この中でも,場合によっては,ファシリテーター的な活動をしていらっしゃる先生も含まれる可能性はあると思っております。
 いずれにしても,この事業全体でそういった活動をこれから充実できるように,文化庁としてもいろいろ芸術家,あるいは学校現場にも,情報提供などをしていきたいと思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 よろしゅうございますか。

【三好委員】  是非そういうふうにしていただきたいと思いますし,さっきもあったように,現場に行くと,市町村教育委員会というのは当然,教育と文化と両方に関係しているわけですから,是非,文部科学省さんの中でも小中局とよくその辺の連携をとっていただければと思います。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 今日はあれですな,何事も連携をすることによって歴史ができるというようなことをつくづく感じましたね。と同時に,元気な子もそれなりの子も,音楽を1つのベースにすればとても生き生きしているという感じが,映像の中からも出てきましたね。ああいう,正しい答えがあるとかないとかによって人を区別するというのは,あるいは差別になったりすることは,大変危険なことだなと。教育とはもっともっと大きな,尊厳のあるものであるということをとても感じました。ありがとうございました。
 すみません,ちょっと時間が過ぎてしまいましたが,あと1人,2人。ええ,赤坂先生。これを,赤坂先生だけでラストでいいですか。
 相馬先生,いいですか。はい。
 では,赤坂先生,お願いいたします。

【赤坂委員】  予算関係を見ていたんですけれども,復興に関わる項目が全く見えてこないんで,質問をあえてさせていただきます。
 実は,日本博物館協会が2月に福島県立博物館で,僕のところですけれども,シンポジウムを開きまして,原発の警戒区域,相双地域の文化的アイデンティティーをどのように保っていくかという議論をいたしました。その中で,文化財レスキューという形で,警戒区域内の博物館の収蔵品は,今,「まほろん」という文化財センターに何とか移すことができるめどが立ちました。けれども,それは飽くまで仮の収蔵施設で,恐らく8年ぐらいしかもたないと言われています。同時に,それは展示施設ではありませんので,全く,収蔵はとりあえずできたというだけであって,今,相双地区の人たちは,戻ることができない地域が生まれている。そして,戻らないことを選択する方たちもたくさんいらっしゃると思います。そうしますと,その地域の,地域に生きてきたことの歴史的,文化的なアイデンティティーが解体状況に追い込まれているんですね。それをどのように保障していくのか,保っていくのかという,誰も体験したことのないテーマを負わされています。
 ですから,日博協は提言書を出しました。その中でこういうことを言っています。「長期的視点に立った文化財保存活用のための恒久施設の在り方を議論していこう」ということを言われている。つまり,1つ1つの小さな村や町に施設を作ってどうこうするという状況ではもうない。だとしたら,相双地区全体の広域的な連携ができるような施設を何とか作ってもらえないだろうか。例えば,民俗芸能の保存1つとっても,1つ1つの地域ではもう無理です。
 ですから,相双地域全体でそれを,教育とか活用とかいろんな意味を含めた施設を作るといったテーマも含めて,恒久的な,例えば双葉地方博物館のようなものを何とか作っていただかないと,多分,文化的なアイデンティティーという意味ではもう難民状態になっていますし,解体状況のまま放置されて,消えていってしまうような状況が見えてきていますので,是非,そういう議論の場を作り,恒久的な施設――とっても嫌がられていると思いますけれども――もう最低限の施設としてやはり作っていただかないと,原発事故の収束に向けてのシナリオがどうしても見えてこないという意味で,是非ともそういうものを議論のテーマに据えていただきたいし,予算の中でもきちんとした措置をしていただけるように,お願いを申し上げたいと思います。

【宮田部会長】  はい,わかりました。
 その件に関しては,一度,前向きに御検討いただきたいと思いますが,石野さん,どうぞお願いいたします。

【石野部長】  文化財部長でございます。
 福島での原発地区を中心にした文化財あるいは民俗芸能等とどう関わっていくかという大きな問題です。私ども,これまで,お話がありましたように日博協さん,あるいはいろんな関係者と文化財レスキューをやってきましたけれども,特に福島に限った形の文化財レスキューというのを国立文化財機構あるいは各団体と一緒になって,またこの夏から始めております。そういう中で,旧警戒区域等からの指定・非指定を問わない文化財についてのレスキューをまず進めていくという点が,1点です。
 それから,2点目は,この予算の中に隠れていますけれども,復興特別会計の中で,これは2年ほど前からやっておりますが,被災ミュージアム再興事業ということをして,福島県で今,一部使っていただいております。その中で,まだ恒久的施設というところまでいきませんけれども,運び出したものの処理それから一時的保存については,国としてもしっかりバックアップするというのが2点目です。
 それから3点目に,私ども,このレスキューも含めて,文化財の復旧についての,文化庁と国立文化財機構等も含めた恒常的に検討する場というのを設けておりますので,日博協からの提案も含めて議論していきたいと思いますし,また,この予算の中でも,国立文化財機構の中でも文化財防災・救出センターという形で体制を整備しながら,きちっとその手当てができるようにということは取り組んでいきたいと思います。
 いずれにしても,日博協の提案自体はきちっと重く受け止めて議論をしていきたいと思っています。

【宮田部会長】  ありがとうございます。是非ともその辺はしっかりとやっていただきたいと思います。
 まだ数多く御質問等あるかもしれませんが,今日はこの辺でよろしゅうございますでしょうか。
 ありがとうございました。大変中身の濃い2時間だったと思います。
 それじゃあ内田さん,今後の流れについてお願いいたします。

【内田調整官】  次回以降の日程につきましては,また事務局から改めて御連絡させていただきたいと思いますけれども,現在,1月20日の15:00,3月10日の15:00というような方向で調整をさせていただいているところでございます。改めましてまた,調整,御連絡を申し上げたいと思います。
 本日は議事の中にたくさんの議題を盛り込んでしまいまして,時間オーバーになりまして申し訳ございません。事務局としても,次回からは時間配分に十分配慮して議事を組みたいと思っておりますので,どうかよろしくお願いします。すみませんでした。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,仲道先生,それから船山先生,ありがとうございました。大変すばらしいプレゼンテーションを頂きました。中身が非常に,いろんな課題が含まれていると同時に,希望そして勇気をも頂いたような気がいたします。ありがとうございました。
 先生方,どうも御苦労さまでございました。それから,文化庁の皆様,ありがとうございました。

 

―― 了 ――

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