文化審議会第12期文化政策部会(第3回)議事録

平成26年6月16日

【内田調整官】  お疲れさまでございます。
 開会に先立ちまして,まず,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の右側に資料1と書かれた資料を置かせていただいておりますけれども,この資料1に関しましては,本日委員の皆様から御発表いただく資料でございます。事務的に本当は1つの冊子に印刷しようと思っていたのですけれども,時間的に間に合いませんでしたので,すみませんが,冊子の後ろの方に,湯浅委員,熊倉委員の御発表の資料をおつけしております。また,その資料1の束の最後でございますけれども,参考の説明資料といたしまして,大林委員,湯浅委員,吉本委員からそれぞれカラー刷りの資料を頂いております。
 次に,議事次第の下に資料2が添付されておりまして,これまでの2回開催させていただきましたこの部会での皆様の御意見を整理した資料でございます。また,その下には,資料3といたしまして,これは前回までもお配りしております資料でございますけれども,今後の部会の進め方に関して整理させていただいた資料でございます。
 このほか,机上資料といたしまして,様々な文化政策関係の資料をとじさせていただきまして,紙ファイルを左側に置かせていただいております。また,熊倉部会長より,最近御執筆されました『アートプロジェクト』という御本,そちらの本を紹介した資料を配付させていただいております。ほかの委員の皆様におかれましても,皆様の御活動に関することで,この場で周知やPRされたいような資料などございましたら,事前に事務局までお知らせいただければ配付させていただきますので,よろしくお願いいたします。
 資料の確認は以上でございます。資料に関しまして過不足などございましたら事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,部会長,よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】皆様,こんにちは。今日も6時までと,通常より少し長めのお時間をとっていただいておりますが,今日は10人の委員の方々から御発表いただくということで,前回からその5分はかなり厳しいよという声も頂いたのですけれども,ただ,お1人10分になってしまいますと,もう恐らくお1人ずつ発表してそれきりになってしまいますので,できればなるべく5分を目指していただいて,その後,ほかの委員の御発言なども踏まえて,2度目,3度目に御発言をいただけた方が議論としては活発になるのかなと考えております。
 また,本日は,4時頃ですか,西川副大臣がお見えになると伺っております。副大臣がお見えになったら,皆様方の御意見発表の合間に一言コメントを頂戴しようかなと思っております。
 それでは,早速大林委員からお願いできますでしょうか。

【内田調整官】  部会長,すみません。最初,冒頭に前回と前々回の皆様からの意見を資料2として整理させていただきましたので,それを発表させていただきたく思います。

【熊倉部会長】  そうでした。すみません,大変失礼いたしました。もう少々お待ちください。

【内田調整官】  お手元の資料2でございます。前回,前々回の皆様の意見をおさらいさせていただく資料でございます。まず,2020年,そしてそれ以後も見据えました基本的視点ということで,基本的コンセプトを整理し,意見としてここにまとめさせていただきました。
 地方からの文化プログラムで,2020年には人を呼び込み,地方から都内の競技場へ出向いてもらうという地方プラス東京という発想で「プラス・東京」,そういう発想がコンセプトとしていいのではないかという御意見がございました。このほか,「創造経済」が今後大きなソフト・インフラになるということですとか,「産・学・官・民」の連携の重要性。文化芸術は,人間の情操や心を形作るという点に注目した政策を打つべきであるといった御意見ですとか,2020年に向けましては,アートだけではなく,芸術以外のコンセプトと結び付けまして,「○○とアート」といった形のキャッチコピー,そういったものが考えられるのではないか。国家戦略としての文化政策の必要性。長年日本に根付いてきた文化観,世界観,勤勉さ,精神性,そういったものが世界へ提案できるのではないか。
 2ページ目に行きまして,社会課題への対応に関する御意見といたしまして,芸術が社会課題に応えていくといった役割を探求していくことの必要性。また,災害時の応援協定を締結する自治体間におきまして,平時は文化交流で関係を深めていくということが考えられるのではないか。高齢者の参画を視野に入れた様々な体験プログラムの実施。高齢化,限界集落の問題に対して,文化芸術がどう向き合うべきかということがテーマになってくるのではないか。温泉はとても面白い社会資本である。英国では,高齢者対象のプロジェクトというものがどんどん重みを増してきている。
 スポーツ競技そのものへの文化の活用といたしまして,漫画など日本の文化の素材そのものをスポーツ競技に用いていくということですとか,東アジアとの関係といたしまして,国立劇場おきなわも東アジアの芸能のセンター的機能といった性格を持たせられないかという御意見がありました。
 また,関係省庁の施策との関係といたしまして,観光政策ですけれども,文化芸術の振興策とも連動して質の高いプロモーションといったものが必要である。また,産業でもうけたものを非営利の領域に還元するようなことも必要であって,文化庁と経産省の連携が重要ではないかといった御意見がありました。
 3ページ目,2020年に向けて,今後,特に推進していくべき施策ですけれども,「人をつくる」といたしまして,子供や若者に文化芸術の素養・教養を持たせることを目指す取組。障害者や高齢者の表現や生きがいのための施策。東北地方に学びにいくことの重要性。また,文化に従事する職業,そういったものをレガシーとして生み出していってはどうか,といった御意見。
 次に,「地域を元気にする」施策といたしまして,東京一極集中ではなくて広域的な取組,過疎の限界集落の再生,そういったものも文化が役に立つのではないか,また,芸術教育を強化するための地域中核拠点を整備することの必要性,地域のマネジメント人材,また文化のマネジメントの専門人材,そういったものの配置。さらには,被災地支援の文化イベントが重要であるといった御意見がありました。
 「文化発信・国際交流」といたしましては,国際的なワールドミュージックの見本市の開催。パフォーミング・アーツに関しましては,演出も含めた総合芸術としての舞台作品。日本独自の映画の上映形態を世界発信できないか。また,日本が優先して連帯を図っていくべき国や地域を設定するといったことの重要性が意見として出されております。
 次,4ページ目でございますけれども,多言語化の必要性。また東アジア文化都市に関しましては,2020年は複数都市を選定してもいいのではないかと。あと,地域の文化遺産を資源化して国際芸術祭のようなものが開催できないか。東アジア文化都市に関しまして,東南アジア,インドへの広がりも視野に入れた発展が求められる。また,作品のアーカイブ,これを進めることによって,諸外国のニーズに対してより迅速に対応できるのではないか。
 「体制整備」といたしまして,文化庁の省への格上げ,また文化政策に関わる専門職員の採用。デジタル・アーカイブを整備,保存,活用,公開をしていく必要性。アーツカウンシルの試行が行われておりますけれども,これを助成だけではなくて文化政策の検証まで含めていった機能が求められてくるのではないかということですとか,東北,関西,九州など広域圏でアーツカウンシルを設置してみてはどうか。地方において,民間事業者や団体を支援したり,ニーズとシーズをマッチングする機能が必要ではないか。人口減少地域においては,国際会議等の招致がもたらすインバウンドの経済波及効果が大きい,そこに着目してはどうかという御意見がありました。
 また,5ページ目に参りまして,アーカイブ化が重要課題であることですとか,文化芸術に関する情報を一元化して多言語化し,海外の人に分かりやすく明示するようなコンシェルジュ的な機能を整備していくことが求められる,といった御意見がございました。
 最後に,「早急に対応すべき事項」といたしまして,地域の文化力を高めるための人材育成として,大学生をインターンとして文化施設に派遣して実践的な教育を行うこと。高度専門人材,芸術家の育成というのを関係機関間の連携により生み出していくこと。大学の有する人材育成機能,国際ネットワークを生かしてプログラム開発をしていくこと。多様な人材の社会実践活動,アウトリーチ活動の事例を共有していくこと。
 社会課題に対応した文化活動への支援といたしまして,高齢者のための音楽や体操を組み合わせたようなプログラム,そして,
 創造都市への支援といたしまして,財政的に重点的な支援を強化していくことですとか,京都の文化芸術創造都市振興室,これを創造都市に関するセンターとして充実させることが考えられる,といった御意見がありました。
 MICE誘致に伴う文化資源PRといたしまして,地域の文化資源のユニークな活用方法をプログラムに含めていくこと,それが大きなPRポイントになってくる。
 国際的芸術イベントの開催といたしまして,今からできることとして,日本の文化芸術の力を誇示するような国際的イベントの開催が求められているのではないかという御意見。
 6ページ目に行きまして,国の政策研究機関の創設。
 国立文化施設の支援といたしまして,国立劇場おきなわを東アジアの文化芸術の拠点と捉えて支援を充実する。国立施設相互の連携を強化する。
 最後ですけれども,海外への発信といたしまして,2020年に向けて発信力を高めていくために,国内の芸術家が海外のフェスティバルへ参加できるようにするための経費の支援といったことですとか,2020年を見据えて海外に戦略的に展覧会を実施していく。そういったことが早期に対応すべき事項としてあげられております。
 説明は以上でございます。

【熊倉部会長】  大変失礼いたしました。すみません,既に物すごく多くのアイデアや重要な指摘がなされておりますが,本日もすごく力作ぞろいの発表資料を拝見させていただいております。
 お待たせいたしました。では,大林委員からお願いいたします。

【大林委員】  
 お手元に,パワーポイントのプリントアウトをお配りしていますので,それをご覧いただきながらと思います。私は,いろいろな方がかなりダブっていろいろな発言もしておられるので,では私はどういうことを言えばいいかなと,私の立場と私の個人的な一番興味のあるところで,都市,建築,それからアート,特に現代美術というところをお話しさせていただければと思っています。
 特にこれから21世紀の時代には,都市間競争ということとどう向き合っていくかということが大事だと思うのですけれども,日本を世界から文化人が集まる,そういう国にしなければいけない。あるいは,日本は文化が育つ国なのだというイメージをどう持ってもらうかということで,日本の文化及び文化人が世界で活躍できる,そういう環境というのを作っていかなければいけないと思っております。
 ページをめくっていただきまして,そのためにどういうふうにそれを世界に発信するかということですけれども,私は都市というところにもう少し注目をしていただきたいなと思っております。というのは,海外の人たちが日本に来たときに,日本の都市のイメージというのをビジュアルに認知するわけですね。日本の若い人たちも日本のまちを見て育っていくわけですから,もう少しその都市のビジュアルな姿に関して,感性が感じられるような,あるいは文化を発信するような,そういう都市を計画的に発信していく必要があるのではないかなと思っております。
 一方で,その中にどういうコンテンツがあるかということも大事だと思っております。そういう意味では,日本は確かに美術館はたくさんあるのですけれども,しかし正直申し上げて,ではどれだけクオリティーの高い例えば現代美術の作品が展示されているか。特に日本では,日本の現代美術に特化した国立の美術館というのはないわけですね。日本は大変すばらしい近代のコレクションとかもありますけれども,逆に海外では,今本当にひっきりなしに日本の現代美術というものにスポットライトが当てられているにもかかわらず,そういうものが日本では余り紹介されていない。
 あるいは,その建築でも,日本の建築家というのは,プリツカー賞で7人も受けているにもかかわらず,プリツカー賞を受けたような建築家が建てた美術館というのは極めて少ない。金沢21世紀美術館,SANAA,妹島さんたちの美術館もそうですし,例えば根津美術館の隈君は,彼はプリツカー賞受賞者ではありませんけれども,非常に美術館として建築家として海外でも認知されている。安藤さんも直島,プリツカー賞受賞者ですけれども,非常に建築でも人に非常に評価されているということがありまして,ここに今,日本の公立を中心にどういう美術館でどういう展覧会があるというのを見ていただくと,いかに日本の世界で評価されている現代の建築家の作品が実は少ないかということと,それから,いかに例えば日本の現代美術が日本国内で紹介されてないかということが分かると思います。
 そういう意味で,3ページ目の下を見ていただきますと,世界の国際都市において,現代美術を紹介する美術館を建設する際に,先ほど日本の建築家の話をしましたけれども,一方で国境を越えて世界で活躍する建築家というのも紹介されてないというのも事実であって,こういう意味で,本当に世界のトップクラスの建築家を都市のシンボルとして美術館とか博物館に起用することによって,その都市のイメージというのを作っていくということも大事なのではないか。あるいは,その日本が誇るべきコンテンツというのをそういうところで紹介していったらどうかと思っております。
 次からグッゲンハイムの,これはフランク・ゲーリーのグッゲンハイム。それから,ニューヨーク近代美術館の谷口吉生先生。サンフランシスコもサンフランシスコMoMAでスノヘッタというスカンジナビアの建築家。そしてイギリスのテート美術館では,スイスのヘルツォーク&ド・ムーロン。さらには,SANAAが設計したルーブル・ランス,ルーブル美術館の別館ですか。あるいは,これは美術館ではありませんが,ベルリンにあるドイツの国会議事堂の古い建物のリニューアルとして,イギリスのノーマン・フォスターが設計したと。こういうように,本当に国境をまたいで公立の美術館,博物館,あるいはシンボル的な建物を世界中で活躍する建築家がデザインしている。今,日本を代表する世界で活躍する建築家が多数いるのですが,なぜそういう人たちを起用しないのか。あるいは,なぜその日本の現代美術を紹介するような美術館が少ないのかなという日頃の疑問を提示させていただきました。
 ここに,最後に谷口吉生先生の法隆寺宝物館というのがありますが,これは割と数少ない実は建築で海外からの文化人も集めている施設だと思っております。もちろん中の法隆寺の宝物も大変すばらしいものですけれども,これをこういう本当に世界で活躍する建築家が見せることによって,非常に小さな施設であっても,非常にそれは本当に小さな宝石のように輝いていると思っております。
 それから,最初にも申し上げましたけれども,世界にないものを日本にということで,その建築と同時に,是非日本の近現代美術コレクションというのを例えば見せたらどうだと。これは,例えば印象派のコレクションなども,来年ドイツで日本にある印象派のコレクションを集めて,これだけすばらしい実は印象派のコレクションは日本にあるのだという画期的な展覧会をやるのですけれども,実はこういうようなものももう少し日本で整理されて見られてもいいのではないかなと思っています。もっとも非常に印象派展というのは必ず人を呼べるので,日本中どこかで必ずやっていますけれども,それが8ページの上の段のところにありますけれども。
 あるいは,その下に世界にないものを日本にということで,例えば建築デザインのアーカイブ,建築及びデザインのアーカイブですね。今,国立近現代建築資料館というのが去年できましたけれども,非常に小さくてお粗末なものです。それから,21_21という三宅一生さんが力を入れて安藤さんがデザインした美術館,これはプライベートな財団かやっているものとしては非常に注目を集めているものだと思います。それから,例えば京都服飾文化研究財団のように,大変すばらしいコレクションがあるけれども常設のスペースがなくて,しょっちゅう海外への貸出しを行っているようなものもあります。こういうものも実は何も大きな箱を作ってやらなくても,小さなスペースでもそういうものを展示することによって国内外の人たちをたくさん集客することができるのだと思っております。以下に国立近現代建築資料館,21_21の説明も少し入れておきました。
 時間がなくなったので,最後にいろいろなビエンナーレ・トリエンナーレを日本各地で今行われています。そういうのをもっと広めたらという意見もありますけれども,私は逆に,文化はレベルの高いものがあると,レベルの高いものから低いものには流れていくけれども,低いものから高いものにはなかなか流れていかないので,是非レベルの高いビエンナーレあるいはトリエンナーレというのを日本で育てていくべきだと思っています。そういう意味では,今横浜でやって,かつては国際交流基金が相当力を入れていたのですけれども,今は大分ファンドがなくなって横浜市と民間でやっているような次第ですけれども,この横浜トリエンナーレをもっともっと充実させるものによって,本当に世界からもっと人を集めてくるような,そういうものに育てることができるのではないかなと思っております。そうすることによって,日本は文化を発信しているのだなというイメージを植え付けることができるのではないかと思っております。
 それから,人材について最後もう一言言わせていただくと,海外からは優秀な人材も入れていく,これを是非美術館とか大学でもやっていただきたい。こういうことをやっていくことによって,自然と国内の人材というのが私はそういうのを見て聞いて育っていくのではないかと思っております。
 すみません,少しオーバーしました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 では,続いて片山委員,お願いいたします。

【片山部会長代理】  静岡文化芸術大学の片山でございます。資料は3ページからが私の提出したものになっております。私自身は,自分の住んでいる東京都港区の文化芸術振興プランの取りまとめを担当したこともあり,東京がいかに国際競争力を持っていくかということにも非常に関心があるのですけれども,今日はあえてそうではなくて,地方の視点からお話しさせていただきたいと思います。
 東京オリンピックは,日本で一番富が集中した東京に重点的に投資をしていくというイベントでありますので,その文化プログラムは,東京ではない地方圏の文化的創造における発展に寄与するものであることが国の政策としては不可欠であろうと認識しております。ただ,残念ながら地方圏の十分な基盤が整わない現在のような状況で,単に文化イベントをやるための事業費だけを地方に注ぎ込んでも,東京等からの移入が一時的に増えるだけで,2020年以降を見越した持続的な活動にはつながりにくいのではないかと認識しております。したがいまして,これから作る次期の基本方針においては,地方圏の基盤整備,中でも人材の充実というところに焦点を当てていく必要があるのではないかと考えております。
 地方圏における文化的な創造,発信が定着していくためには,地方圏に軸足を置いて活動する芸術家や,文化事業などの企画,運営を担う人たち,そしてそれを地方で経済的・社会的に支える基盤を作るということが必要です。それなしに,事業をやるための予算だけを注いだとしても,結局のところ,その補助金がおりている期間だけのものに終わってしまう危険が高いのではないかと日頃地方圏の状況を見ていて感じております。
 したがって,そうならないような取組が重要なのではないかと思います。そのときに鍵になるのが地方自治体における文化政策の担い手となる文化政策の人材と,その地域の文化施設,文化団体,フェスティバルの実行委員会等を含むいろいろな文化団体の運営を担うアートマネジメントの人材が必要だろうと思っております。
 前者の文化政策の人材においては,その地域において文化の活動をすることの意義を自治体の内部,特に財政当局や議会などに対して説得力を持って語ることのできる人材が重要なのであろうと思います。そして,アートマネジメントの人材においては,そうした政策を受けて,それぞれの文化施設あるいは文化事業,イベント等がどういう意義を持っているのかを明確に説明し,それを運営し続けるための人的資源や資金的な支援等を集めてくることができることが必要です。これができて初めて,芸術家や文化事業を実際に企画,運営する人たちの活躍の場を提供することができます。つまり,こうした事業を継続的に行っていくことができる環境を作れる人が求められるのだと思います。
 国としては,こうした人材の充実を図るための施策を2020年頃までの期間限定で実施すべきです。地方分権の観点からみると,ずっと国が支え続けるのは好ましくありませんので,あくまでも期間限定ですが,こうした人材を配置するための人件費の補助や能力開発,あるいはネットワーク化の支援をやっていくのが有効なのではないかと考えております。
 来年度の概算要求なども見据えて早急に取り組むべきものとしては,文化政策の人材もアートマネジメントの人材も両方重要なのですけれども,地方圏における文化施設,あるいはフェスティバルなどをはじめとする文化事業は,多くの場合,地方自治体のイニシアチブで行われているということを考えると,まず自治体の中にこういう人材の充実を図るということの優先度が高いのではないかと考えております。
 施策として,具体的にはじいてみると,例えば,1件当たり1,000万円程度の補助金を200自治体,合計20億円ぐらい用意する。これによってやる気のある自治体1都道府県当たり4自治体ぐらいが,文化政策の専門的な人材をこの5年間の間にきちんと配置する。そうすると,その人が中心になって,その地域でオリンピックの文化プログラムをやるにしても,フェスティバルを充実させるにしても,文化施設の活動を充実させるにしても,実施することができます。佐々木先生が提唱されている創造都市を推進するための核になる人材もそれに当たるかと思います。そして,こうしたことは,国の補助金の期間だけやるのではなく,それぞれの自治体の財政当局をはじめとした行政,議会あるいは住民に対してこのことの意義をきちんと説明し,2020年以降もそれが継続するような基盤を作ることが重要なのではないかと思います。
 こういう人材をまずは配置する補助をした上で,その人たちの能力形成を図る必要があります。なぜなら,それぞれの自治体の中でこうした人材は孤軍奮闘という状況になりますので,この人たちの側面支援ができるネットワークを形成するための事業を並行して行う必要があると思います。現在,アートマネジメント人材育成については,大学がそれを担うためのプログラムが昨年度から進んでおりまして,私どもの大学でも取り組んでいますが,ここでは自治体の文化政策人材を育成するための事業を,政策系の大学や政策研究をしているシンクタンクなどへの委託事業で全国展開して,自治体の中で孤軍奮闘して,文化事業の推進を図っている職員の人たちの理論武装とともに,お互い連携したり支え合ったりということを支援する事業を並行してやっていくのがよいのではないかと考えています。
 芸術や文化に関する専門性とともに,法律,財政,政策評価,それから,指定管理者制度をどう運用するかというのも大きな課題ですので,公共経営に関する専門知識が必要です。それから,非営利経営。非営利経営の知識は自治体の中にも欠けていますし,地域の経済界の中でも,必ずしもノンプロフィットのマネジメントについての理解を持っている人は多くありませんので,そういった力を自治体の政策マンがつけていくということが有効なのではないかと考えております。
 簡単ですけれども,こんなところで私の意見表明とさせていただきたいと思います。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 それでは,西川副大臣にお越しいただきましたので,一言御挨拶を頂ければと思います。

【西川副大臣】  皆様,こんにちは。大変お忙しい中を今日の文化政策部会に御参加いただきましてありがとうございます。
 今日は3回目ということで,いろいろ,いよいよ議論も具体策,その他,深まってまいったと思います。本当にこの皆様の御議論が,今年また新しく,日本,この文部科学省の文化振興の基本政策といいますか,文化芸術の振興に関する基本方針に閣議決定されるということで,大変大切な皆様の御意見を頂戴するということになると思いますので,よろしくお願いしたいと思いますが,御承知のように今もうお二方の御意見を伺っていて,大変具体性に富んだお話,提言を頂いております。2020年のオリンピックに向けてということで,日本全ての文化発信の年にしたいと,要はスポーツだけではないよと,総合力としての日本発信の年にするということで,もう強い思いで総理大臣,文部科学大臣以下,非常に張り切っているところでございますので,これは私自身も,実は日本が,日本の芸術というと印象派に影響を与えた浮世絵とか,それこそ本当に限られた分野だったのが,今は例の食のユネスコ登録あたりも含めて,アニメから全て,本当に総合力として日本文化というものの本質が,皆様が少しずつ分かってきてくださっていると思うのですね。そういう意味で,日本こそ,まさに芸術立国だと,そういう発信をして,それがある意味では経済力の基本にもなるし,観光の力にもなるしということで,非常に即物的な言い方かもしれませんが,そういう大きな意味を持った,世界のリーダーの国の1つである日本がそれだけ高い芸術文化を持っているのだという,そういう発信にしていきたいと思っていますので,その基本になる議論を皆様方には頂戴しております。
 本当にお忙しい中,御協力いただくばかりで恐縮でございますけれども,本日も,活発な御意見を頂戴して,いい結論をお導きいただきますように心からお願い申し上げます。よろしくお願いします。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 それでは,お時間の許す限り,是非御参加いただければと思います。

【西川副大臣】  途中で抜けるかもしれませんので,よろしくお願い申し上げます。

【熊倉部会長】  では,引き続きまして,お待たせいたしました。河島委員,お願いいたします。

【河島委員】  今回この意見を提出するに当たりまして,第3次基本方針を改めて読み直してみたのですけれども,かなり踏み込んだところまで書き込まれていて,少し語弊がありますけれども,官僚的な文章というよりは非常に内容的にも示唆に富む,前期の委員の方々が非常にすばらしい御意見を出されたのだなということが十分うかがえるいい方針だったと思うのですね。そこから5年たたない今の時点で,次の第4次基本方針を作るということで,これは私の認識違いでしたら正していただきたいのですけれども,その第3次基本方針の中に,それなりに重点戦略ということで具体的な戦略とこういうことをすべきであるということがかなり踏み込んで書いてあるわけなのですが,それに関して実際どこまでできたのかなという検証をすべきだと思うのですね。多分して,公式的な形では伺っていないのですけれども,政策検証というような大げさなところまで3年や4年では効果が現れていないと思うので,そういう評価というような大げさな作業ではなくても,少なくとも検証といいますか,自己点検といった形でやるべきことの1つで,それなしにこの4次基本方針ということにどんどん進んでしまうと,今回の,今期の委員たちの意見収集をしてそれをまとめただけというのはもったいないなと強く感じました。もしまだでしたら,まだまだ時間はありますので,是非どこかの場でやっていただきたいということが最初にお願いしたいことの1つです。
 今回,私自身自分なりに見まして,ここの部分が弱いのではないかなと思うところを幾つか指摘しております。これから話させてもらう中で時々触れるかと思います。
 まず,最初の基本的な視点というところなのですけれども,一番言いたいことを一言で言うと,我々のこの経済というのは,日本の経済社会というのは,今後文化に助けてもらっているのだという,有り難い存在なのだという,文化というのは。経済的に豊かになってぜい沢だから少しやりましょうとか,お荷物だけどそれは成熟国の責任だから少しは文化もやりましょうということではなくて,文化こそが経済力の発展の今後の源泉になっているのだという,発想をそこまで転換しないといけない時期なのではないかなと思っております。
 ここに書いておりますが,昨年度,同志社大学で創造経済研究センターという研究センターを作りました。私,実はセンター長を務めているのですが,文部科学省の私大戦略研究拠点事業というのに採択もされまして,それなりの金額を頂きまして,隣の佐々木委員とか,前文化庁長官の近藤誠一さんに本学の客員教授として参加していただいて研究も進めていますので,少なくとも文科省にはこのコンセプトがある程度理解してもらえたのかなということで,今後は是非その頭の固い文科省からもっと次に上にも上がっていってほしいなと思っているところです。
 ここでは,前回加藤委員もお話しされましたけれども,創造性というものこそが社会のイノベーションを起こしていき,そういう人材というものが必要だということは,本当にどこでも言われていることですね。それを企業社会にとってだけではなくて,こういった行政の現場でも創造性のある人材というのは恐らく本当に必要だと思いますし,本当にどの場でも必要とされる,そういう人たちを育てていくための芸術文化,アート,伝統文化全ての文化というのがもう何より大事だということを,本当に心を皆で1つにして言っていかなければいけないと思います。
 前回のその第3次基本方針では,ややウェルフェア・エコノミクスという,何ていうんですかね,市場の失敗があって文化はその市場の中だけでは生き延びられないこともあるから公的な資金を出すべきであるというような論調がございまして,それ自体もちろん誤りではないんですけれども,もう一歩踏み込んで,そうではなくて,文化こそが経済のドライバーなんだと捉えていきたいと思っております。
 具体的には,ではどういうことかということです。まず1番の特に「人をつくる」ということで,これがその第3次基本方針ではやや弱いなと個人的には評価いたしました。例えば,学校教育における芸術,あるいは子供・若者向けの鑑賞機会の提供が重要であるということが具体的な戦略として述べられているんですけれども,それだけではなくて,また未来の鑑賞者を育てるためだけではなくて,子供にとってその年の時点で文化に感動したり心を奪われること自体が大事で,それは何歳になっても大切だということで,ファシリテーターという言葉をとりあえず使ったらよいかと思うんですけれども,学校教育における芸術も大事ですけれども,文化の現場において,その作品と鑑賞者との対話を助けるような人材とそのメソッドの開発というものが非常に具体的な策としては御提案したいなと思っています。
 この会議ではない場で,京都造形芸術大学の福のり子先生もその分野の第一人者でそういうことをおっしゃっていますが,ただ1人でできることというのがどうしても,しかも何千人に向かってとか何百人に向かって一遍にできる活動ではないので,効果が少しずつしか現れないんですけれども,それだけにある種のメソッドみたいなものを開発して,ツールキットのようなものを生み出して,各学校に配付するとか,あるいは各美術館だとか文化センターのようなところに配付していって,それを手掛かりにそれぞれの地域なり施設なりの,あるいは団体の事情に応じた新たなファシリテーター,ファシリテート事業といいますか,そういうものを開発していくように,すそ野を広げていく,人材だけだとどうしても限界があるかなと思いますので,すそ野を広げていくための工夫があってもいいかなと考えました。この点では,芸術系の大学との連携なども大変有効な手段だと思います。
 それから,2番目に「地域を元気にする」という点ですが,これについては,私はもう熊倉部会長が後で多分おっしゃると思いますし,お詳しいのでほとんど飛ばしますけれども,サポートとして申し上げると,日本風のアートプロジェクトというのが今物すごい勢いで広がっていて,玉石混交かもしれませんけれどもすごく面白いことになっていて,しかもそんなにお金がかかることではない,ほんの少しの費用を出してあげるだけでも相当なインパクトが生まれて,これこそアートと地域とのコミュニケーションだの,高齢者だの,それからソーシャルビジネスを生み出したり,様々な広がりを生み出し得る物すごくポテンシャルの高い今風の文化の在り方の1つだと思いますので,これを支える何か仕組みというのが欲しいなと強く感じました。
 それから,「文化発信・国際交流」についてですが,もう言うまでもなく東京オリンピックというのが今回会議に,他省庁の4つでしたか,4省庁の方々が来て対話があったということも画期的だと思いますし,そういう意味では,彼らの持つ多大な予算からほんの少しでももぎ取っていくまたとない機会だと思います。ですから,ここのところはもううまく戦略的に私たちの言葉を使い分けて,文化も観光に役立つということも言ってもいいと思います。実際そういう効果もありますし。
 去年でしたか,今年の初めにイギリスのロンドンオリンピックの文化プログラムに関わった重要な人物が3名見えまして,文化庁の方々,観光庁の方々,あるいはここの委員の方々も多くの方がお聞きになったことだと思いますけれども,その中で1つ面白いなと思ったのは,スポーツイベントというのは,本当にそのぎりぎり最後の16日間しかないと。その前にもう各国のメディアが来てうろうろしているけれども,まだ開幕までレポートすることに欠けていて,ここでその文化というものを見せていくと,実はメディアはそういうストーリーに非常に飢えていたと。これを使えるとうまくいくんですよねみたいな話があって,なるほどそうだなと思いました。確かに各国のメディアが来るのは,その開催の半月ぐらい前かもしれませんけれども,もう日本では,半年,1年かけて,それで様々なショートビデオを多言語で作って,日本全国でこんなことがあります,そこにはこんなヒューマンストーリーがありますというのをどんどんアップロードして,短いショートビデオでいいと思うんですけれども,そういうものを紹介していくことで,日本に来たときにはここに行こう,あそこに行こうと,今の人はそういうので物すごくプランを立てて,全てiPadに全部情報を取り込んで計画してくるという観光客は多いですから,それを助けるためにも文化の全国的な動きというのを伝えていくビデオなり,写真と文字でも構いませんけれども,たくさんのものを作ったらどうかと思います。
 これについては,吉本委員が非常に面白い案をお持ちのようなので,私のお話はこれぐらいにしておきます。
 あとは,もう一つだけ言わせていただきますと,「体制整備」ということでは,そのPDCAサイクルの確立ということも前の基本方針でも言われていますので,是非そこのところ,アーツカウンシル的な組織において戦略的に政策を立てていき,そして調査研究も含めた機能を持たせた,そういう組織があればなおよいのではないかと思います。
 それと,すみません,最後に1つだけ。現在の予算構成というのは,創造活動,何々整備,発信というふうに機能別になっていると思うんですね。そういう予算編成なのかなということは理解はできるんですけれども,本来全てを1つのサイクルで回していきたいわけですね。創造,企画開発から始まって,実際の制作と,上演なり展示なり普及なり,それからそこにおける教育や鑑賞活動があって,そして最後にアーカイブがあって,次へのまた創造へという,そういうサイクルで文化というのは動いていくのだと思うんですけれども,その全てをカバーした戦略的な予算編成というのを,例えばある重点領域を1つ作ってみて,数年間試してみてどういう効果が出るかなということを,包括的な戦略というのを何かやってみられるとよいかなと思っております。
 とりあえず以上です。ありがとうございました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 では,続きまして相馬委員,お願いします。

【相馬委員】  相馬と申します。よろしくお願いします。
 既に多くの委員の方々から非常に示唆に富む包括的な視点の御提案がありますので,私の方からは,なるべく現場,そして若い世代をある種代表するような意見を述べさせていただければと思います。
 まず,基本的なコンセプトですけれども,既に下村大臣が発表された中期プランに「世界に尊敬され愛される文化の国」ですとか,「成熟社会の新モデル」を示すというような非常にすばらしい理念が掲げられていると思います。これをまた別の言葉で言っていく必要があると思うんですけれども,その際に是非改めて確認していっていただきたいこととしまして,基本的な人権であるとか表現の自由,すなわちその文化を根本で支える理念,これをもう一度改めて確認すること。そして,それゆえ成熟国家としての芸術文化のモデルを示すということを改めて言っていくのは必要なのではないかと。
 といいますのも,ここに書きましたが,例えば表現の自由ですとか,あるいは報道の自由といったことに関して,世界から今日の日本は余り高い評価をもらえていないというのがあります。それから,例えば男女同権ということに関しましても余り高い評価を得ていないのは皆さん御存じのとおりかと思います。ですので,これはもちろん文化のセクターだけが言っていくことではありませんけれども,改めてオリンピックという世界から注目が注がれる場においては,この日本が成熟国家であるということをこうした根本的な理念のところで示せるような視点というのはあった方がいいのではないかと思います。さらに,既存の制度上では非常に不利ないしは不安定な立場に置かれた人々こそが文化芸術の主体的な担い手になるという,そしてそれが持続的に参加を可能とするような環境ですとか保障といったことも重点に置いていくと,その成熟国家としての新たな展開がなされるのではないかと思います。
 それから,2点目は,震災の経験を芸術文化を通じて全世界とシェアし,復興を後押しすると書かせていただきました。これは,もう既に多くの委員からも御提案がありますけれども,私としては,東京からの発信はもちろんですが,そして日本全国からの発信ももちろんですが,オリンピックに向けては,東北のカタストロフの経験をいかに芸術文化を通じて世界中とシェアしていけるかということが,芸術文化のある種存在価値を証明していく上でも非常に重要な試みになるのではないかと思っております。
 次のページで具体的に「地域を元気にする」という項目でも書かせていただいたんですけれども,そのために東北地方を新たな芸術文化特区にするというぐらい,ある種ラディカルな施策を行っていくことも視野に入れていただきたいなと思っております。特に東北地方におきましては,現在その復興と関連した様々なアートプロジェクトが幾つか展開され始めておりまして成果も上げていますけれども,それらはまだ点でしかなく,それらが線となり,そして面として形成されていくには,何かそれらをつなぐような大規模なプロジェクトないし芸術祭のようなものが必要なのではないかと思います。
 また,東北地方には国立の文化施設がないということは,既にこの審議会でも昨年度も議論になりましたけれども,2020年に向けて国のイニシアチブで東北を芸術特区にするという試みの延長線上に,では東北から世界に向けてダイレクトに発信できるような国立の文化施設の設置ということも是非具体的に検討していっていただけると有り難いなと思います。
 戻っていただきまして,基本的理念の3点目のところですが,余暇政策・労働政策と連動した文化政策の導入と書かせていただきました。これは,この審議会では,経済産業政策,外交政策,観光政策といった視点で非常に豊かな議論がなされ始めておりますけれども,実はそのアートの現場は,作る側も見る側もかなり過労といいますか,低賃金で日夜働くのが,オリンピックが来るとますます大変になるのではないかという危惧がありまして,またそこを根本的に変えていくような視点というのは,是非この機会に導入していただければなと思います。
 また,芸術文化を鑑賞する受け手の側も,これ以上更にそのすそ野を拡大していくに当たっては,その観客層,潜在的な観客層のライフスタイルそのものも変えていくような労働政策との関連というのが必要だと思います。それに関連しまして,次のページの「人をつくる」という具体的な施策で何点か御提案させていただいておりますが,この10年間,アートマネジメントの専門人材というのは非常に数は増加したと思いますけれども,しかしながら,その専門人材が一時的な現場経験にとどまらず,この仕事で食べていけるですとか,この仕事で一生キャリアを形成していけるというリアリティやモチベーションを保ち続けるということは,現状の制度では非常に難しいと言わざるを得ないと思います。それは,人材育成の先に雇用が創出されていないという現状があるからだと思います。また,アートマネジメントの現場では,それを支える人材の多くは女性でありまして,その女性が今後出産・育児等を経験しましてもキャリアを断念せずに2020年の主戦力として活躍できるような支援施策というものも早急に必要なのではないかと思います。特に安倍内閣の成長戦略には,男女共同参画ということが,女性の力の活用ということが強くうたわれておりますので,それらとも強力に連携をしていくということが文化政策の分野でもなされていくべきだろうと思います。
 それから,2点目ですが,民間芸術団体におけるアドミニストレーション強化と書きましたが,要するに日本の文化芸術の現場の母体は,御存じのとおりNPOですとか劇団,あるいは中間支援団体といった民間の組織でございます。そこが企画や事業を推進するノウハウは蓄積されても,なかなかその財務,法務,総務,労務といったアドミニストレーションに関わる部分というのがなかなか蓄積されていかないと。今後恐らく問題になってくるであろうこととして,その2020年に向けて事業の規模が拡大すると,そのときにそうしたアドミニの機能がしっかりしていないと,逆に民間NPO等の経営を圧迫する,あるいは脆弱化させてしまうということが起こる危険性があると思います。そういった意味でもアドミニの強化は必要だと思いますが,その1つのアイデアとしまして,定年退職したシニア人材を芸術文化の現場に再雇用するなど,そうした専門スキルを持っている方々が次世代のアートマネージャーの育成にも貢献するというサイクルを作っていくのはどうかと思います。
 ページをめくっていただきまして,国際交流ということに関しましては,アジアにおける次世代イニシアチブ育成とプラットフォーム化と書かせていただきました。これは,既に文化庁の方でも東アジア文化都市,また国際交流基金のアジアセンター開設等,既に国レベルの施策としても進められておりますけれども,中でも今関係が悪化しているアジア諸隣国との国際交流というのが非常に急務であると思っておりまして,是非アジアの次の世代のビジョンを共有,形成できるような人材の交流に重点を置いてはどうかと思います。
 また,アジアとの国際交流を考える上でもう一つ重要な視点となり得るのが,日本に在住しているアジアの方々,アジア人コミュニティ,ここをどう巻き込んでいけるのかということが今後重要ではないかと思います。ですので,そうしたアジア人コミュニティを巻き込むような文化事業を積極的に支援するですとか,またそれを可視化してつなげるようなプラットフォーム機能を持つ事業や団体に対して集中的,継続的に支援を行ってはいかがかと思います。
 「体制整備」に関しましては,既に多くの委員から御提案がありますとおり,文化芸術活動のデータベース化,アーカイブ化というのが急務であると思います。特に私が専門としております舞台芸術に関しては,本当に急務といいますか,諸外国からのニーズも非常に高まっていると。私もフェスティバルの事務局をやっておりましたが,海外の研究者の方からの問合せというのは本当に日常的にたくさんありまして,あの上演のビデオを貸してほしいとか資料を貸してほしいというのは,個々の民間団体には常に行っているんですが,その団体が継続しない場合は,こうした資料が散在していってしまうという危険があります。これは是非早急に取り組んでいただきたいと思います。
 それから,最後の点ですが,劇場・音楽堂です。これも劇場法の後押しもありまして,自主事業の数というのはここ数年で飛躍的に増加したと思いますけれども,それらが本当にその日本における舞台芸術創造の国際競争力の向上につながっているかといいますと,まだまだ十分ではないというのが現状ですし,また,海外からの作品招へい数というのは,今は減少傾向にあります。今後世界のハブ機能というものを地方も東京も含めて個々の劇場が持っていくためには,予算の拡充はもちろんですけれども,その国際競争力のある専門人材を登用するですとか,あるいは,それぞれの地方自治体の中で国際的なクリエーションの妨げになる様々な規制がありまして,そういったものを緩和していく働きかけというのを国の方からもしていくことができればと思います。
 以上となります。概算要求に対しては,もうどれも急務で是非すぐに取り組んでいただきたいというのが本音ですが,そのときに,是非その意思決定のフローの中にどれだけ若い人材,といってもオリンピックの頃には中堅あるいはそれ以上になっているわけですので,そういった若い世代の声を反映できるようにしていただきたいということと,あと日本に在住する外国人という,世界と直接日本を結んでいる人たちの視点というものも是非積極的に取り入れていただければと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  では,続きまして,仲道委員,お願いします。少し時間の方を御協力いただけると有り難いです。

【仲道委員】  皆様から大変にすばらしい細やかな御意見が出ておりますので,私は,こういったことを大切にしていただきたいといったことでお話しさせていただきたいと思います。
 国の施策というものは,文化にかかわらず幸せな社会を作るためになさっていると思うんですけれども,それを万人が生を受けたことを喜びとし,その生の営みを全うできる社会とするのであれば,その幸せな社会を作るためには,次です。
 「文化芸術の力を使うことが最も有効である」と言い切っていくことが大事なのではないでしょうか。銀行にお金がたくさんたまってもそれだけでは幸せではありませんし,おいしいものをたくさん食べてもそれだけでは幸せではありません。立派なお家に住んでもそれだけでは幸せではありません。では幸せとは何かといったら,そこに文化芸術があるから幸せになれるということで,次,文化施策というものは,その幸せな社会を作るために文化芸術を効果的に使えるように形を整え,機能するように整備することと考えるのであれば,今,日本で大事だとされていることが,次です。
 「再生する」ということと,「共生する」ということと,「未来を見据える」というこの3つだと思うんですね。「再生」,東日本大震災,経済,人間力の不足。「共生」,異文化流入,異業種,異世代。「未来」,高齢化社会を迎える社会構造の変化,そして未来の子供たち。これらの課題を文化芸術の力をかりて解決していくといった,その視点のもとに,次です。
 現在は,様々なことを試みているんですけれども,それぞれのものたちがいろいろなことをしているけれども,単なるイベントで終わってしまったり,社会に生かせていない現状があるときに,今の問題点は,皆様のいろいろなお話を伺っていると,様々なことの中で大きく2つだと思うんですね。その2つというのは,次です。
 まず,連携ができていない。なぜならば,連携がうまくいく仕組みがない。もう一つ,有能な人材がいるのに活用されていない。人材はあちこちにいると思うんです,そういった意識を持った人が。それが有効に活用される場が設定されていない。この2つの問題を改めて先ほどの3つの考え方,次です。
 当てはめて考えてみると,1,2,3,4,の人を育てるとか,その枠組みから少し外れて考えてみて,「再生」するための事業であったり,「共生」する目的のために何をするか,「未来」を見据えるために何をするかと考えていくと,1,2,3,4,の全てのものがそれぞれに当てはめることができる。そうすると,その事業が何に向かってしているのかという目的を非常に明確にすることができ,これまでばらばらに行われていたものたちが,その「再生」,「共生」,「未来」というそれぞれの目的のために連携をとることがしやすくなる。ということは,その事業をどう評価するのかといったことが,その「再生」のためにこれだけのことをしたというふうに評価がしやすくなる。それから,複合的な予算組みをすることができる。その文化事業ということだけではなくて,ほかの様々な予算をその「再生」ということで,文化とほかのことと組んで予算を組むことができる。すなわち今までなかなか広がりが持てなかった,広がりというものを,その目的とするものを考えることによって設定することができるのではないかと思います。そして次です。
 もう一つの問題,人はいるのに活用されていない,人を育てなければならない。これから行うことは,今まで行われていなかったようなことをしようとしているのですから,これまでのノウハウを教えるといったことでは効果がない。だけれども,今非常にフレキシブルでリーダーシップを持つ人たちというのは,各地にいろいろなフィールドで出ています。その人たちと新しい次の世代の人たち,ほかの人たちが実地で一緒にしていく,今ゴーするということが結局は一番早く人を育てていくことになると。既にいる有能な人材をハブとして適所に配することが急務であると。
 というのは,その次で,人がいればつながることができる。次です。
 ハブというものは,もしかしたら機能であったり,設備であったり,何かでなければいけないような感じがしてしまうんですけれども,ハブというのはもしかしたら人であって,施設でも組織でも何でもないのではないかなと私は思います。この下の他国からの反省,ハブというものを作っても,その人材がうまく機能しなかったのはなぜかとか。例えば,オリンピックがあったときに,レガシーとして建築物だけではなく何を残していくことができたのかということも,そういったことを検証しつつ,行われていることのアーカイブ化,それから,検証を同時に行っていってデータとして蓄積すること,そして有効なこと,失敗の経験を即時に共有できるような仕組み作りというようなものを考えて,そして次に複合的文化芸術振興施策を作っていただきたい。問題は,その複合的,いかに複合的にするかということで,その2つのポイントは,文化政策のための新しい考え方の枠組みを設定することと,ハブとなる人材を適切に配すること。これは,同時に全てやろうとすると難しいので,一点突破全面展開,1つのモデルケースを作って,それを有効に全面的に展開するといったような方針でこれからのこの2020,2030に向けていっていただけたらいいなというところが質問1のところでございます。あと,早く,質問2と質問3について資料を見ていただきながら幾つか提案させていただきたいと思います。
 まず,「人づくり」に関しましては,学校教育の中の芸術教育を見直す。これは文化庁だけの問題ではなくて,文科省を含んで,今芸術教育ということについて新しい風が吹いている,その芸術教育を教育の中にどのように取り入れるかということをまず考えなければならないことと,それから,これまでも行われてきた子供のための文化芸術プログラムの質の検証。どのような方法で何を行うかということの質の検証。そして,3つ目は,芸術の現場での実践的インターンシップ制度の構築。実学が今一番必要とされていることだと思います。それが成り立つ仕組み作りも含めたことでございます。
 そして,2番目の地域づくりに関しましては,従来の概念を取り払った施設,資源の文化芸術的活用方法の提案。これまで文化的には使うことができなかったであろう施設であるとか,そういったものを使うことができる,そういった考え方を推奨する,使うことができるという縛りを,規制を取り払う,そういったことが必要になってくると思います。
 そして,3つ目,交流,文化発信なんですけれども,これまでの知る,見る,感動するということだけではなくて,これからは体験する,対話するということが重要なのだと思います。ですから,そういったプログラムを作るときに,必ず相互の体験をする,それから対話をするといったスキームを必ず入れるということ。なおかつそれを可能にするために,例えば海外アーティストが日本に来るときに,何度も訪ねてくる方のいろいろな入国の際の,これは文化庁だけの問題ではありませんけれども,いろいろな手続の規制の緩和であったり,ということも交流のために必要になってくるのではないかと思います。
 そして4つ目,体制整備ということにおきましては,人材活用のための,効果的に人材を配置するための体制整備,プラットフォーム作りなんですけれども,まずは,見いだす,その見いだした人の使い方を考える,使うということが,経済的にも成り立ってスムーズに進むための助成であったり,仕組み作りということが今必要なことではないかと思います。全ては複合的に文化芸術振興施策が進むための方法ということで考えていただきたいと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 体験や対話が重要ということは,先ほど河島委員がおっしゃった京都の福のり子さんがやっていらっしゃる手法と同じだと思うんですけれども,教えるというよりファシリテートしていって引き出していくというような方向性の重要性というのはもう何十年も前から指摘されていつつ,なかなか反映されてはいないのかなという気はいたします。
 お待たせいたしました。平田委員,お願いいたします。

【平田委員】  沖縄県の外郭団体であります公共財団法人沖縄県文化振興会の平田でございます。多少といいますか,かなり理想も夢想も織りまぜながらの内容にはなりますけれども,率直に思いを発表させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 資料の15ページを開いていただければと思います。大命題としまして,「文化立国」から「感動立国へ」のシフトチェンジと,サブタイトルで,文化を基調とした人と地域と未来の話とうたわせてもらいました。私のスタンスというのは,文化,芸術の人ではなくて,誤解を恐れずに言うならば,地域おこし,地域活性化の人であります。そういった面では,その手法としての文化活動というのをこれまでやってまいりましたので,あくまでも考え方の基本に文化芸術のための人づくりでなく,人づくりのために文化芸術があるのだという視点でこれまでも活動してまいりました。その中で,今まで話題の起点になっているところでいくと,例えば地域を元気にするという前回の話の中にも,東京一極集中に帰結せずにという話がありますように,2020年を目指していく中で,どうしても中央が起点となりがちなところを何とか地方,地域の視座を持つということが重要ではないかと思っておりますので,今回はあえて沖縄起点での提言をさせてもらいまして,この中で幾つかが全国のモデルになったらいいなと思っております。
 文化で成し得る3つのことというのを,1つは地域のこと,2つ目に仕事のこと,3つ目に次の世代のことというふうにまずは書かせてもらいました。
 最初の地域コミュニティの再生と創造というところで,大事なことは,文化を地域活性化のエンジンに据えて新しい祭りを起こす,同時にもちろんこれまでありました古き祭りを起こすという意味で,創造と再生というのを是非文化を起点でやっていこうと。
 それから,2つ目が仕事のことでございます。これは感動産業クラスター構想というのを提起してはどうか。感動産業というのは,感動体験型産業の略でございまして,県の方で今その戦略構築に向けての検討会が始まっているところでございます。文化を基調として,教育,観光,農漁業,健康,福祉,環境などと連動した仕事作りをしていくという形でございます。
 それから,3つ目が,これは次の世代のことですけれども,まず交流人口増大,交流人口の増大プロジェクトということで,これは県内全ての高校生をどこかのタイミングで必ず1回は海外派遣をさせてみよう。沖縄は,昔から列強から言われていろいろなところを回ってまいりましたので,そういうふうに回ることで,視点は郷土に,なれど視野は世界という,そういう人材が作れないかという提案でございます。
 2つ目に,更にもっと沖縄に特化して地理的優位性を駆使した文化振興策ということで,法の整備と人の整備をダイナミックに展開できないかと書かせてもらいました。少しショッキングな文言もありますが,1つは琉球言語法の制定でございます。これは,ハワイが実現しておりますように,沖縄でいうしまくとぅばを第二公用語に位置付けるということでございます。「ちいき誇り政策」の創設と書かせてもらいました。これに関しましては,文科省の大胆規制緩和が必要ではないかと思っておりますが,なぜならば,現在学校教育の中では,方言というくくりの中で沖縄の言葉も含め地域,地方の言葉というのはくくられておりますが,これを言語へ是非格上げして,実際にユネスコでは,琉球言語というのは今1つの位置付けがありますので,言語というふうに格上げすることで,その地域に誇りを持つ政策というのが展開できないか。1つは,歴史,空手,琉舞,風水,天文学などを生かした,ある意味沖縄学,地域学のカリキュラム化というのを学校の中でできないかということが大きな提案です。
 2つ目,思い切って時差を設定してはどうかということでございます。もっと言えばパスポートも復活させようと。これは,ホンコンがやっていますように,一国二制度的な地域に指定し,地域ブランディングを図るというところでございますが,実際台湾,うちはすぐそばなのですが,1時間の時差があります。もう沖縄は,60分ぐらいの差が,時差があってもいいのではないかということで,思い切ってそういう取組というのはどうか。ただし,当然としてこれはイデオロギーがかった独立論とは一線を画して,あくまでも地域ブランディングを図るという観点からという提案にさせてください。
 3つ目が新税の導入。これは,財務省から待ったがかかりそうですが,文化芸術振興税というのを是非創設すべきであると思います。1つは,今沖縄県が検討している入域税,観光税の1つでございますけれども,入域税と,観光客からだけお金をもらうのは非常に酷でございますので,県民税も是非これも一部税として取り,さらには,沖縄で今検討されているIR導入の際の収入の仕組み作りも加味しながら,大事なことは,公益的文化財産の保存継承を支える財源の確保と。つまり,三線のさおの材でありますクルキッチですね,琉球黒たんであるとか,それからしまくとぅば,食文化,今すぐに収益性が余り見込まれないけれども,その地域の宝であるというものに関してのものの財源の確保,保存,継承。さらには,独自の文化活動を引っ張るシステムの構築というのを,何とかその財源を充てるための1つの方法として,独自に自主財源確保の動きがあった方がいいのではないかと思っております。
 キャッチフレーズ,これは人材育成というのを1つ大きく捉えて言いました。まず一流の島人(しまんちゅ)が一流の国際人である。それから,視点は郷土,なれど視野は世界という考え方。さらには,人づくりの種をまく。この種というのが感動体験が種なんだと位置付けて,子供たちでも分かりやすいような形での呼びかけというのをやっていくべきだと思っています。
 踏まえ上で,2020年以降のキャッチフレーズとしましては,あえて次の世代を大きく意識しました。「Next generation changes the next!」ということで,次の世代が“次”を変えるんだ,次の世代が協議をする次ではなくて,次の世代が今の時点から“次”を作るということにどう取り組んでいくかということを施策としてやったらどうか。文化芸術活動を基調とした表現教育,感動体験型コミュニケーション教育を充実させて,次の世代が自らの手で手がける,クリエイトする次の世代を喚起していくと。
 案の2つ目は,「感動立国!にっぽん」ということで,「文化,スポーツ,この眺め,出会う全てが感動の国,日本」というように位置付けまして,文化とスポーツと観光がここではマッチングされたキャッチコピーとさせてもらっております。尽きるところ,ある意味,感動産業とは人づくり産業とも言えると書かせてもらいました。
 次のページ,16ページでございます。必要なものは,1,2,3,4,5,全部番号で言えば重要だと思っております。その下の方にその理由が書かれております。その中でも僕は人材育成,人をつくるということが重要ではないかと思っておりますが,経済活動とか地域活性化,学力向上も非常に大事だと思いますが,つまりは人材育成であり,教育こそが最大かつ重要なテーマであるとも考えております。その上で大事なテーマというのは,キーワードを「命」と掲げたいと考えています。
 沖縄では,古来より「命(ぬち)どぅ宝」,これは命こそ宝と,それから「命(ぬち)ぬぐすーじさびら」,命のお祝いをしましょう。これは戦後語られている言葉です。それから,あるおばあちゃんだとかが舞台を見て「命薬(ぬちぐすり)やっさー」,命の薬だねということを言いますけれども,命にまつわる多くの言葉が存在しています。震災以降考えることは,働くって何だろうとか,学ぶって何,若しくは生きるって何だろうという根源的な自問自答の自問であって,それはずばり命をキーワードにした学びをすること,仕事の対策をすること,命をつなぐための仕事であること,それがコミュニティの活動であること,交流事業であること,平和教育であるということをいにしえの人たちは示してくれているのではないかなと思っております。生命力あふれた人間教育こそこれからは急務なのではないかと考えています。
 もう一つの視点は,これは,我が沖縄は移民県でもありますので,世界中に約45万人の県系人が暮らすとも言われております。5年に1回,世界のウチナーンチュ大会というのがありまして,我がルーツを求めて大勢のウチナーンチュが帰郷します。その際,3世,4世,5世はほとんど沖縄は始めてというようなメンバーでございますが,彼らの望郷の原動力となっているのが,まぐれもなく沖縄をルーツとした文化・芸能活動であるんですね。尽きるところ,文化はアイデンティティー継承のDNAとして機能するのだということを改めて考えさせられるわけでございます。
 2020年の東京オリンピック,それから東アジア文化都市と同じこの年に,この第7回を数える世界のウチナーンチュ大会が計画されております。是非移民文化,国際交流文化をきちんと定義付けて,新しい視点からの文化政策がたてつけられないかを是非模索してみたいと思っております。海は道であり壁ではない。それからレキオス,これは琉球人のことをポルトガル語で昔こう呼ばれていましたけれども,レキオスと呼ばれた先人たちに負けない生命力で現代(いま)を生き抜くと。我々もまた現代(いま)に生きるレキオスなのであると位置付けさせてもらいました。
 そういう観点から,8年後になりますが,沖縄本土復帰50周年に当たる2022年,これを「新生おきなわ(ゼロ)元年」としてリスタートさせて,法の整備と人の整備を含むあらゆる取組の流れの中で大いなる節目を作り出せたら面白いのではないかと考えております。
 次のページ,最後になります。右肩上がりの沖縄県の観光入客数というのは,昨年は650万人に迫る勢いでありまして,今年も更に増加が見込まれております。併せて現在計画中の那覇空港第2滑走路が完成すれば,観光入客数は1,000万人を超える試算にもなっております。国際競争力が激化する中で,沖縄,いわんや日本がいかに存在感を発揮できるかは,まさに文化を基調とした情報発信力の強化にかかっていて,効果的な文化施策への予算措置は,これはもう急務であると考えております。
 一方で,既存にある文化施設を活用すると同時に,時代のニーズに合わせた新たな文化発信交流拠点とのシナジー効果を図るべきだとも思案をしております。具体的には,国立劇場おきなわを核として,新たに今県が計画しておりますインキュベート施設「(仮称)芸能シアター」,これは平成29年に完成予定でございますが,その国立劇場と隣接して作られる予定でございます。連携を図りながら文化機構・文化施策の集積地を目指したい。そのためには,関係する国と県と,これは那覇市,浦添市が積極的に歩み寄りながら,ダイナミックな規制緩和と予算計上,関連施策をばんばん打つべきであると考えております。
 例えば,組踊や琉球舞踊,エイサーなど,沖縄芸能の定時定常公演の実現を目指すことももちろん重要な施策でありますが,同時に県立芸術大学の法人化はもちろん,座学と実技を兼ね備えたアートマネジメント分野の学科の設置も急がれると考えます。特に文化人材におきましては,演者,制作者,行政職員,これは文化行政の職員に加えてオーディエンスの育成を図りながら,今後は文化・芸術の振興と同時に感性・文化産業の確立こそが県の振興策としても,また我が国の将来においても最も重要不可欠な要素であると確信しております。
 ますます国と県が連携強化を図りながら,地方が元気な日本を実現させるべきであると断言したいと思います。文化に対する意識・認識もこれまでと違って,おやつやデザートのようなサイドメニューとして考えないで,御飯のような,文化は主食であるというような考え方にもう一度しっかり立ち返って,感性豊かな社会環境を作り出せたらどんなにわくわくするだろうかと夢想する今日この頃であります。
 すみません,実はこの提案をさせてもらった後にショッキングなニュースがあったものですから,是非この件も踏まえて今日の提案の最後に締めたいと思いますが,それは国民文化祭が中断を検討しているという報道でございます。この件に関しましては,国民文化祭がこれまで地方,地域に果たしてきた役割というのは非常に大きいと考えております。そういった中で,ますます2020年に向けて,東京五輪で加速する中で,地方,地域にもう一度しっかりとした視座を持った取組として見つめ直してもらえないかと考えております。特に沖縄県では,五輪に向けて長期的なスケジュールで国民文化祭を位置付けたいと考えていて,今まさにそれの検討議論を始めているところでございまして,是非,せめて47都道府県全部回ってから終わるなり何なりしてもらえないだろうかということで,まだうちは実現ができていないので,是非そういったことも踏まえてこの調査検討をこれからもやっていきたいと思っておりますので,何とぞ是非国民文化祭を支える検討もまた今後もやってもらえたらと考えております。
 以上でございます。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 では,引き続きまして,山下委員,お願いいたします。

【山下委員】  毎回大量の添付ファイルがついた通知が来て,そこに記入する時間をとれなかったものですから,口頭でのみ発表させていただきます。このペースでいくと全然終わらないですよね。ですから極力簡潔にお話ししたいと思います。
 私は,明治学院大学というところで日本美術史を教えています。もともとはアカデミックな美術史の世界,特に日本の古美術,室町時代の水墨画などを研究していたんですが,ここ20年ほどは,その学者としての仕事というよりもメディアを通じて日本の美術の魅力を伝えるという仕事が多くなってきました。また一方で,大学の教師をする傍ら,自分で発想した展覧会を企画してプロデュースをするという仕事を随分たくさん手がけるようになってまいりました。ちなみに,今ですと日本橋の三井記念美術館というところで,明治工芸の展覧会を開催していますが,あれは私が企画してプロデュースした展覧会です。
 そういう立場から,今回ここで申し上げたいことは大きく分けて2点あります。1点は,まず2020年に向けた展覧会の構想についてです。もう1点は,ほかの委員の方からも提言がありましたが,文化資源のアーカイブに関する提言であります。
 まず,1点目の展覧会ですが,2020年,東京オリンピックを機会に,当然日本の美術の神髄を紹介するような本格的な大規模な展覧会が企画されるはずだと思います。それは,本当にもう古美術も現代美術も両方,1つの,例えば東京国立博物館1館だけとかではなくて,幾つかの中心となるような館が連携して統一的なテーマのもとに開催していくべきだと思うんですね。ところが,国立博物館,あるいは国立の美術館,あるいは東京都の施設,あるいは県立の施設,あるいはプライベートな私立のミュージアム,それぞれその成り立ちが違いますから,それが連携をして大きなテーマで展覧会を構成していくということのためには,もう時間は余りないんですね。
 普通展覧会というのは,皆さん,どれぐらいの期間をかけて準備するか御存じでしょうか。私が手がけている展覧会,これはいろいろな美術館でやる場合があるんですけれども,平均すると3年前ぐらいから準備を始めます。発想して準備を始めるのが3年前ぐらい。というのも,ほとんどの美術館は,2年後ぐらいまでの予定は入ってしまっているんですね。ですから,今2014年で2020年までというのは,意外ともう時間がないんです。ですから,早急に文化庁が主導するような形で,統一的なテーマのもとで日本の美術を世界に向けて紹介する本格的な展覧会を企画していただきたい。これは,ただ国宝,重要文化財を並べればいいというようなことではありません。明確な日本の文化,日本の美術というものはこういうものなのだということを世界に向けて,世界に向けてだけではありません,当の日本人に向けてももちろんですけれども,発信するような体制を築いていただきたい。幸い今の青柳長官は,美術史の出身で私の大学時代の恩師でもありますから,是非そういうことを進めていっていただきたいと思います。そのためには,本当に時間がもうないと思います。
 あと,その展覧会に関して,先ほど大林委員の方から建築で人が呼べる美術館というのが重要であって,特に日本の現代美術を紹介する美術館を作るべきだという御提言がありました。それは私ももっともだと思いますけれども,もう2020年には間に合いませんから,これから新しい美術館を作るというのは。ところが,幸いなことに,今年の秋にリニューアルオープンする京都国立博物館の新館は,先ほど大林委員からも御紹介があった世界的な建築家である谷口吉生氏が手がけられたすばらしい建物です。私もその京博の新しい建物を秋に雑誌で紹介する特集にも関わっていますけれども,これは相当期待できるのではないかと思うんですね。では,東博,京博はもちろんのこと,ほかの公立あるいは私立の美術館が連携する展覧会を是非2020年に向けて構想していただきたい。
 もう1件,アーカイブのことであります。アーカイブ化の必要性というのは,先ほども複数の委員の方から御提言がありました。私もそれは同感です。既存のものを考えてみますと,例えば映画に関してはフィルムセンターがあります。これは国立近代美術館の附属施設という形です。建築に関しては,ようやく,つい昨年ですか,建築の資料館的なものがオープンした。しかし,これはごくごくまだ貧弱なものである。では,ほかにどういう分野,美術,ファインアート以外のものでどういう分野が重要かというと,戦後の日本人クリエーターの中で最も世界的に評価されているのは,まずは建築家と,そしてファッションとデザインと漫画・アニメだと思うんです。では,映画とか建築というのは,そこそこのアーカイブ化というのは国によって進められているのでしょうけれども,そのほかの分野,ファッションですとかデザイン,そして,特に漫画だと思いますね,僕は。紙の漫画の原画というのは大変貴重な文化資源だと思います。特に1960年代から70年代,80年代ぐらいにかけてのものですね。これは50年,100年たったら重要文化財に指定されるようなものだと思いますよ。しかし,そういう漫画の原画のアーカイブ化などは全然進んでいないですよね。民間レベルで,京都には京都精華大学がマンガミュージアムというのを作っています。東京でも明治大学がそういう施設を作ろうとしているという話も側聞しますが,それを国が主導するような形でアーカイブ化ということが将来的にもっときちんと進めていただけないかと,それが私の要望するところであります。
 昔,漫画・アニメのミュージアムを作るという構想があったのが実現しなかった,ということを聞いていますけれども,これはもうミュージアムというか,その展示施設というよりもアーカイブ化の方を第一に考えて実現していっていただければと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  湯浅委員お願いします。

【湯浅委員】  手短に発表させていただきたいと思います。
 資料の提出が遅れまして大変申し訳ありません。別刷りに今日つけていただいておりますが,2020年に向けて今回の対象は2015年から2020年と書かれておりますが,特にこれからの5年間というのは,人材育成,基盤整備,前の片山委員も御発言がありましたが,非常に重要な時期だと考えております。ですので,私は,既にいろいろな御意見がほかの委員の方々からたくさんありましたので,その人材育成と基盤整備にのみ集中してお話をしたいと思います。
 前の第3次のときにも文化芸術を取り巻く情勢が変化しているということが書かれておりますが,そこから現代,2014年に入って更にその変化の速度は大変急速だと思います。申し上げるまでもありませんが,超高齢化社会という新しい課題も大きくなっていますし,同時にグローバル化が非常に進んでいて,テクノロジーが進んでということで,急速な変化に今囲まれている中で,いかに文化芸術分野がこの変化に対応していくか,そして21世紀とこの社会において,時代遅れになっていかない対策をどういうふうに打っていくかということが2020年に向けて非常に大事だと考えます。
 英国の文化芸術で働く現場の方々とお話ししていましても,美術館もそうですが,レレバント・トゥー・コミュニティとかレレバント・トゥー・ソサエティという,その今の社会にどういうふうに重要性を提示していくかということが非常に活動の中心で語られておりますので,これは,今第4次に向けてもそういった視点が入っていくと非常によいのではと思います。
 特にその人材については,今こういった変化の時代の中で,文化芸術で働く人材に必要な資質というものは非常に変わってきていると言われていまして,英国でも21世紀型のリーダーシップとか,これからのアーティスト若しくはそのアートを届けていく担い手の人たちに必要な資質というものは,すばらしいアートを作れるだけではなく,例えばアートの実践も領域を横断してきていますし,社会の様々なステークホルダーとのパートナーシップ,また説得ができる人材ということで,非常に多様なスキルが今必要になってきているかと思います。そういった中で,今現場で働いている人たち,そして組織の上から下までの人たち,そしてこれから新しい担い手になる人たちに対してどういった教育をしていくか。また,必要なプログラムをしていくかということは検討が必要で,今までとは違った視点が求められるのではと思います。
 もう一つ,国際化というものが2020年に向けて語られていますけれども,アート以外の文脈でもイノベーション人材とかグローバル人材育成ということが非常に求められていまして,調べてみましても,文科省ですとか経産省でもイノベーション人材育成のプログラムというものも制作が行われていると思いますが,文化芸術でもそういった人材をどういうふうに作っていくかということを他の省庁と連携して検討していく必要もあるのかなと思います。
 特に私ども国際文化交流の組織として,今ちょうどアジアのブリティッシュ・カウンシルの国々と連携して,この文化のチェンジメーカーとか文化の担い手をネットワークするプラットフォームを作っていこうという話をしているんですが,そうした中で,日本の文化で働く人たちをそのネットワークで御紹介をしたい,ネットワークに参加してもらいたいと思っても,英語の問題というもの,若しくはグローバルなプラットフォームでのコミュニケーションができる人材というところで,いっぱい紹介したいのにいつも同じ人になってしまうのではないかという危惧もあります。ここでもう一度2020年に向けて英語力と,英語力だけではなくてグローバルな視点を持って,例えば今日的なテーマで海外の人たちと意見交換ができる機会というのがなかなか少ないのではと思いますが,そういったことが可能になる人材をどうやって育成していくかということを,もしかしたら大学と連携するなりほかのセクターと連携して検討が必要かと思います。
 あわせて,既に他の政策分野との連携とか他の省庁との連携ということがいろいろな委員の方から御説明もありますが,そこについてもより具体的に政策なり文化振興を進めていく中で,例えば省庁連携,2つの省庁が連携した例えば政策,アクションプランを作るとか,若しくは人材育成のプランを作るとか,そういったことが可能にならないのかなと思っています。
 参考でつけたものは,このカラーのものですが,よくこの会議の中でARTS COUNCIL ENGLANDの名前がよく出てきますけれども,今年の4月にARTS COUNCIL ENGLANDが出しました文化芸術の社会・経済・教育・福祉・健康についてのインパクトというものを数値で出したものです。これは大きなレポートの結果をインフォグラフィックスで,今はやっていますので,まとめたものなのですが,こういうふうに日本の文化芸術が今ではどういうふうな,各地でいろいろな活動やイニシアチブが今行われていると思いますが,実際それはどういったインパクトがあるのかということを提示することによって他の省庁との連携を深めるというような考え方もできるのではと思います。
 もう一つ,余り今までの基本法の中でテクノロジーに対する施策というものが大きくうたわれてないのではという気がいたしますが,特にその文化芸術期間の2020年,今のこれからのIT化,これは単純に例えばホームページを充実するとか,アーカイブ化するということだけではなくて,観客も今どんどん変わってきていて,デジタルネイティブな観客が新しく生まれてきている中で,将来の観客とどういうふうにつながっていくか,又はアーティストの作品制作の在り方,作品の制作のディストリビューションの在り方というのがテクノロジーで大きく変わってきています。そういった文化芸術からイノベーションを創出するんだという意気込みで大きな政策を作っていく,若しくは,かなりその現場の美術館にしろホールにしろすごく予算的にも時間的にも限られた中で,新しいこういったところにチャレンジをすることがすごく難しいのではないかと思いますが,そこを何か枠組みを作って新しいチャレンジができるような,リサーチができるような施策がとれないかなと思います。
 次のページで,1,2,3,4と書いてありますが,これは個人的に人材を育成し,基盤を作るという1番,4番を非常に整備することによって,文化芸術セクターが力強くなっていけば,いけばということではありませんが,なっていったという前提で地域が元気になるようなすばらしい活動が生まれて海外ともつながっていけるのかと思いますので,この1,2,3,4の関係性としては,基盤整備があって,そしてそれをすぐれた文化芸術で社会に対して大きなインパクトで行くという整理かなと考えました。
 特に「人をつくる」というところで,既に鑑賞型から体験型ということを多くの委員の方が言っていらっしゃいますが,エデュケーションからラーニングという形で今世界的にも変わってきていますので,実際にそういった実践ができるには,それの担い手となるアーティスト,若しくは現場の方々,そして組織の上から下までの方たちのスキルアップと意識の改革,そして,もしかしたら芸術機関のビジョンの中にどういうふうにそれを組み込んでいくのかということだと思いますので,そういった今既に日本でも多くのケーススタディが行われて,実践が行われていますので,更にそういった鑑賞型から体験型のクリエイティブな機会が増える枠組みを作るとともに,既にある日本全国で行われている実践が点を線にするような形で共有するようなプラットフォームができないか。
 それから,高齢社会について,前回の部会でも何人もの委員の方が御発表をなさいましたけれども,これから特に高齢社会に向けたプログラムの開発というものは,これからいろいろな取組がなされていくのだと思いますが,そこをドライブといいますか,推し進めるために,この分野については,文化芸術だけではなくて大学機関とかリサーチ,又はビジネスの分野でも非常に大きな今取組も積まれていますので,そういったところと連携ができるような枠組みや,とかく美術の方々,舞台芸術の方々,音楽の方々ということ,それぞれでいろいろなディスカッションがありますけれども,領域を横断して文化芸術のセクターとして何ができるということを考えられるような,クロスセクターの取組を後押しできないかと思います。
 もう一つ,グローバル人材については,具体的な件ですが,既に新進芸術家の制度を何年もやっていらっしゃって,とてもすばらしい取組だと思います。行かれた方,行こうとしている方,行っていらっしゃる方々とお話をする機会もありますが,とても大きなインパクトがあると思いますけれども,これから先のグローバルな人を作っていく,もう既にある枠組みの中で,では更にこれをスケールアップ,レベルアップするにはどういう取組があるかということで,検証と見直しを,見直しというのもよりよいサポートの在り方はないかということで検討もできればいいのかなと思います。
 あともう一つ書かせていただいたのが,私たちを含めて日本で活動しているブリティッシュ・カウンシルのような海外の機関も,この日本の,特に私たちの活動としては,日本の文化芸術で働く人たちの育成とか,これから先のコラボレーション創出のためにいろいろな事業をしておりますので,是非そういった日本にある機関との連携を深めて,同時に一緒に戦略的なパートナーシップを組ながら事業を進められるような枠組みができないかなとも考えます。
 もう一つ,文化発信・国際交流ということなのですが,よく発信という言葉がとても多く使われておりますけれども,真の国際交流,国際的な関係構築というのは,双方向であるべきだと考えます。一方通行で2020年に向けて日本から発信だけしていっても,そこに関係性が生まれてこないと思いますので,よりグローバルな対話ができる在り方,又は国際的な海外のものが日本でも見られるコラボレーションが促進される,一方通行ではない双方向の在り方というのを探っていく必要があるかと考えます。
 2つ早急に対応すべき点なのですが,先ほど河島委員からもこれまでの第3次基本方針の検証についてお話があったと思いますが,人材育成が急務であると考える中で,では実際に今文化芸術で働く人たちのどういうスキルのギャップがあって,どういう人材があって,どういうチャンスがなくて,でもこんな今はトレーニングスキームがここにはあってというような,Skill Auditとよく英語で言われますけれども,そういったものをされる必要があるかと思います。日常的な文化芸術で働く方々との対話の中で,まだこれからはリーダーシップではないかとか,私たちの中でも足りない部分に考えるものはありますが,では,実際に今どういう状態なのかというデータがないことには政策が立てられないかと思います。私たちブリティッシュ・カウンシルの方でこういった人材育成をするに当たり,これまでにホンコン,インドネシア,ミャンマーでもこういったSkill Auditをして,各国の発展の途上に,段階に合わせて,文化芸術で働く人材に必要なスキルというのは違ってきています。そういったデータが今出てきているんですが,では日本では今どうなのか,これから先の発展に向けて足りないものは何なのかという少しリサーチコンサルテーションをされてはいかがかと思います。
 もう一つ,2020年文化プログラムというとビジョン策定が今一番の優先事項になるかと思いますけれども,国,自治体,またいろいろなレベルで文化プログラムについて積極的な意見が交わされていますが,是非検討するといいなと思うのは,実際にそれを担っていく,文化芸術の担い手の人たち,また文化機関の人たちとの大規模なコンサルテーションというものをされる予定があるのかどうか。実際にロンドンオリンピックのときに,2007年,2008年の時期に6か月かけて,約4,000人の文化芸術の分野で働く人たちとの英国全土で大規模なコンサルテーションが行われました。これをもとにビジョンですとか,あとテーマ,レガシーの在り方などというものが検討をされています。これは,もちろん中央の組織委員会を含めて力強いリーダーシップというものが必要ではありますが,セクターの働く全ての人が関わることによって,彼らのオーナーシップ,又は意見を一緒に吸い上げるという仕組みにもなりますので,もしかしたら来年を待たずにこれから始められるところだと思いますし,いろいろな機関がオリンピックの文化プログラムについては組織委員会をはじめパートナーシップを組むのだと思いますが,日本全国の文化に関わる人たちとのネットワークを一番構築しているのは文化庁さんだと思いますので,文化庁さんの方でリーダーシップをとってコーディネートをされて,文化セクターからの意見としてのビジョンを提案していくという必要性はあるのではないかと思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】  吉本委員お願いします。

【吉本委員】  
 資料の18ページ以降になります。最初に基本的な視点について私は2つ提案をしたいと思っております。
 1つ目がクリエーションとアーカイブに重点を置くということです。クリエーションといっても既に文化芸術創造活動を促進するための政策は強化されてきておりますけれども,よりコアなクリエーション。ですから,例えば演奏会を開催するのではなくて,その根本になる作曲を支える,演劇の舞台を作るよりも前にそのもととなる脚本を作る,つまり個人の芸術家,ここでは創造的芸術家と書いてありますけれども,そうした活動を支えるようなことを強化してはどうかということです。日本から新しい芸術表現を世界的に発信していくというイメージです。
 もう一つは,全く反対方向のアーカイブ。これはもう既に多くの方がおっしゃっておりますので,これも是非強化していただきたい。アーカイブというのが実は新たなクリエーションのリソースになるという視点も大変重要かと思います。既に文化庁さんでは懇談会も作られてアーカイブを検討されているようですけれども,未来と過去,今現在のいろいろな公演とか展覧会というのは,既にかなり政策が充実していると思いますけれども,この未来と過去の部分というのは,基本的に入場料収入などの収入が全くないところですので,そういったところこそ国が政策を強化すべきではないかというのが1点目です。
 2点目は,ポリシー・ミックスという言い方をさせていただいたんですけれども,文化が既にここに書いているような様々な分野で効果があるというのは認識をされておりますし,様々な取組が行われていますが,どちらかというと芸術や文化の側からの働きかけというか,要するに芸術はすごく教育にいいんですよといって一生懸命学校に入っていこうとするんだけれども,そこにはハードルがあると。だからここに“片思い”と書かせていただいたんですけれども,是非それを脱却して,例えば何年か前に始まったコミュニケーション教育の推進というのも確か文化庁の予算で今は続いていると思うんですけれども,それを是非教育予算で大幅に拡充するようなこと。あるいは福祉の分野でも,芸術が様々なインパクトがあるということが立証をされておりますので,是非厚労省のそうした政策の中に文化を位置付けていくという,そうなってほしいなと思います。
 以上2点が基本的な視点です。
 この質問の2-1,この4つというのは,もうどれも順番が付けられないので,3と4は括弧にしましたが,全て重視すべきだと思います。
 質問の2-2ですけれども,今までのその基本方針というのを振り返ってみますと,第1次基本方針というのは,重視すべき方向というのがうたわれて,基本的な考え方が示され,第2次方針では,もう少し突っ込んだことを方針として提示すべきということで,重点事項として6項目が示され,第3次では,更にもっと具体的な施策ということで,重点戦略が6つの戦略,重点施策というので24の施策というのが記述されました。その中で,皆さん御存じのようにアーツカウンシルとか劇場法とか具体化されていったものがあります。ですので,今回も2020年というのをターゲットにしていますから,是非この人をつくるのに相当する政策はこれ,地域を元気にする政策はこれというふうに分けるのではなくて,1から4を一気に貫いて整備するようなシンボルプロジェクトというのを立ち上げてはどうかというのが私の提案です。本当は5つ考えたかったんですけれども,今日は4つまで整理できたので御説明したいと思います。
 1つ目が「アートサイト日本2020(日本文化ミシュラン)」と書いてありますけれども,4年間のカルチュラル・オリンピアードの期間に,全国でマストシー・スポット2,020件,1県当たり約40件換算になりますけれども,それを選定してそこの観光を促進するというイメージです。お配りした資料の最後のページにROUGH GUIDE社というトラベルガイド出版大手ですけれども,このホームページを1枚付けてございます。これで日本のTHINGS NOT TO MISSというのを1位から20位まで書いてございますけれども,これはほとんど文化とスポーツとあとは食ですね。ですから,例えばこういうサイトを新たに作って,そして観光にもつなげるということを行えば,オリンピック・パラリンピックは東京だけではないということになりますし,それから,今既に文化庁,観光庁との協定が結ばれておりますので,その具体的な政策にもなるのではないかと思います。
 それから,言語を日本語以外にも英語,ドイツ語,フランス語,中国語,韓国語は当たり前ですけれども,例えば世界200か国ぐらいからアスリートが来ると思いますので,その200の言語に対応して作るぐらいのことができるといいのではないかなと思います。これは,「日本文化ミシュラン」と書いておりますけれども,先日ブリジストンがオリンピックのトップスポンサーとなりましたので,「日本文化ブリジストン」ぐらいに加速して,是非ブリジストンのスポンサーを得てこういうことができないかなというのが1つ目の案です。
 2つ目が「クリエイティブ・フロント日本」という名前にしましたけれども,芸術の未来を作る,クリエーションを作る,特に若手のアーティストにプロポーザルや制作委嘱をして,若い才能が世界中から集まってきて,2020年に世界の最先端の芸術表現を提示できると,そういうことを今から企画していってはどうかと思います。特に日本とアジアの諸国の共同制作というのを推進して,アジアにおける文化的ハブの形成につなげていく。これも新しい政策で展開するというよりも,今既にあります劇場・音楽堂の活性化事業ですとか,海外発信拠点形成事業ですとか,東アジア文化都市ですとか,海外研修制度,それから国際交流基金の事業になりますけれどもアジアセンター事業,そういったものの中に2020特別枠というものを設けて対応すればいいのではないかと思います。
 前回,太下委員から温泉地のアートフェアというのがありましたけれども,私,これは大変賛成でして,城崎アートセンターというのがつい先日もオープンしましたが,そこでは平田オリザさんが新しい作品を作るためにフランスからカンヌ映画祭の女優賞を取られたイレーヌ・ジャコブさんを呼ばれることになったそうなんですけれども,城崎アートセンターと,もう一か所どこかがあるけれども,どこがいいですかと聞いたら,もうすぐに温泉がいいと返事が返ってきたということですので,温泉というのは非常にインパクト,吸引力があると思います。
 こういう政策を推進するというのは,人材の育成にもつながるということはあると思いますけれども,世界の芸術の中心がロンドンだったり,パリだったり,ニューヨークだったりとしたわけですけれども,それを是非アジアあるいは東京というところにこの2020年を機に移してこられないかということがございます。
 それから,3つ目のシンボルプロジェクトは,再三皆さんがおっしゃっておりますアーカイブの創設です。これは,アーカイブを作るといっても,少し考えただけでも膨大な仕事になりまして,まず分野をどうするのか。アニメ・マンガ,デザイン等々ここに書いておりますけれども,日本独自のもの,それから国際的に見ても資産価値の高いもの,美術と最後に書いたんですが,これは美術館に美術作品そのものがかなり保存されていますので,音楽,演劇等の時間芸術のもの,これが弱いということでこういうふうに書いております。
 全て新たに作るのではなくて,国会図書館もございますし,既存のアーカイブもあると思いますので,そことのポータル的なこともできるだろうということがございます。
 それから,活用も促進すべきだと思うんですけれども,実はそこの反対として,権利保護,それから物理的保護。貴重なものの現物を見るということは物理的な保護と反しますし,目録やデータベースをどう作るのかということも,これも本当に膨大な作業になってくると思います。
 施設についても,膨大なスペースがありまして,音楽アーカイブの国際的な調査をしたときに,もう収納スペースの拡張との闘いです。あるいは,建築資料館の調査をしたときは,とりあえずごっそり図面から模型から受け入れて,必要なもの,必要でないものを分けるというために,その最初の受入れのすごい場所が要るとか,そういうこともございます。
 それからセキュリティの問題。アメリカの国会図書館では,国立視聴覚資料保存センターというNAVCCというものを作っているんですけれども,これは何ともと核シェルターとして作られたところに全てのアーカイブを移すというぐらい徹底した取組をやっています。それから,前回上野にイルカ(International Resource Center of the Arts,IRCA)をという話があったんですけれども,私はもう全て東京に集中するより,アーカイブは京都とか奈良の方が立地としてはふさわしいのではないかなと思いました。
 それから,シンボルプロジェクトの4つ目は,スポーツ・文化省の創設です。文化省の創設というのは,この文化政策部会でも何度もこれまで出てきたと思いますけれども,まさしくオリンピックがスポーツと文化の祭典であるということを象徴するレガシーとして是非こういうものを作れないかと。本当は文化・スポーツ省と言いたいところなんですけれども,ここはスポーツに敬意を表してスポーツを前にしたんですけれども,この2つだけだと弱いので,これと親和性のある,例えば観光とか健康とか食文化とかデザインとか,こういったものも含めた省にできないかと。イギリスは文化・メディア・スポーツ省です。ですから,例えばスポーツ・文化・観光・食文化省とかいうのもいいかもしれないと思いましたし,先ほど平田さんの話を伺っていて,スポーツ・文化・感動省というのもいいなとか個人的に思ったんですけれども,何かこういうものをシンボリックに作ったらどうかなと。
 ここにスポーツ基本法,これは2011年改訂と書いてありますけれども,改正の間違いです。失礼しました。2011年に改正されて,スポーツ基本法の中には,スポーツが地域の一体感や活力を醸成するとか,健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠であるとか,まさしく今文化で話し合っているようなことが基本法に既に書かれています。ですので,文化芸術振興基本法はまだ2001年にできたばかりですけれども,そういったあたりのことも書き込んでこれを改正するというのも1つの案ではないかなと思いました。
 この延長線,このプログラムの一つとして,ロンドンではUNLIMITEDという障害者のアートを称賛するプロジェクトがあったんですけれども,これを継承して,障害者だけではなくて,日本ほどお年寄りがこんなに文化芸術を楽しんでいる国,自ら何かやっている国はないと思いますので,それも是非見てもらうということをやってはどうかなと思いました。
 最後に,非常に現実的な話としまして,急いでやるべきことということなのですが,私は是非アートNPOの基盤整備と活動の強化に向けた取組というのを早急に立ち上げるべきだなと思います。先ほど相馬さんの報告にもありましたけれども,現場で働いている特に若い人たちというのは,将来が見えないということが現状としてございます。NPO法が施行されて15年が経過して,これまで約5万件ありますので,毎日10件NPOができてきているんですね。文化の分野は今でも多少増えているんですけれども,全体では解散するところも増えてきております。特にアートNPOというのは,今,日本の文化政策になくてはならない存在になっていると思うんですけれども,とりわけアートプロジェクトとか中間支援的な機能を担うNPO,教育や福祉と連携するところですね,そうしたところというのは,アートNPOは本当になくてはならない存在になっております。ですので,ここを,法律ができて15年たっているのでもう一度強化する方法を考えてはどうかなと思います。
 アートNPOの現状に関する資料をアートNPOリンクに作っていただいて参考資料として出させていただきました。全部説明すると長くなりますので,ポイントだけ言いますと,4ページ目のアートNPO法人組織と規模というのを見ていただきますと,失礼しました,その下の方ですね。アートNPO法人組織と規模の下の方に常勤の人数1人のNPOが約50%。それから日常的に従事する非常勤のアートNPOが2人というので約50%。それから,右側の給与の平均額,100万円以上150万円未満というところまでで約50%。これが今のアートNPOの現状だと思います。これを改善するために,助成金があればいいということでは私は決してないと思っていまして,そのNPOの経営をどうやって強化するかということを真剣に調べてその政策を作っていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 もうあと話ができるのが残り時間20分ほどだと思うんですけれども,吉本さんはその,私も言いたかったのはこの第4次方針ですか,今,毎回アートマネジメントって出てくるんですよね。ただ,今おっしゃったように,果たしてその人材は増えているのかというところで,今見たところ増えているのだろうなと思いますが,でも食べていけないというところ,今日何人かの方々に指摘がありましたけれども,ここはどうしたらいいんですかね。助成をすればいいというわけではないということですが。
 割と簡単なことだと思うんですけれども,今多くの委員の方々から出てきた,特にその社会の中での連携を作っていくとか,プロデュースとか,リーダーシップとか,給料が出ない分野に優秀な人材は来ないですよ。なので,アートNPOにいる人たちは,比較的純粋なアート好きです。優しくていい子たちだけど,たくましくリーダーシップとかという,きのうも今日もおとといもアートNPO,私は4つぐらいのアートNPOの現場を抱えておりますので,その子たちの顔を思い浮かべながら皆さんの発言を聞いていたらだんだん暗い気分になってきてしまったというところで,もう少しこれはきちんと,その産業にするつもりは特にないんですが,非営利だからこそもう少しパワフルな人たちが入ってきてくれないことには,経営基盤強化とかというのはどうしたらいいんですかね,委員の皆さん方,あるいはこの人材はどうしたらいいんでしょうか。

【大林委員】  もちろんその給料もそうですし,実際非常にあれですけれども,もう一つそのアートマネジメントもそうですが,例えばキュレーターなども非常に日本では正直言ってポジションが低いですし,給料が極めて安いんですね。ですから,これでは本当にいい人材が集まってこない。だから本当に逆に国の美術館などでは,しっかりそういうところにお金を払って,それでいい人材をそれこそ館長にするぐらいのことをやる。だからお金とポジション両方だと思うんですけれども。一般的にだからそういうようなこともあるので,そういうアートマネジメントとかアート,文化をやっている人たちのポジションというのが低いのかなと思うんですけれどもね。ですからお金だけではなくて,そういういろいろなところでの場所でのポジションというのもあるのかなと思います。

【熊倉部会長】  ほかにいかがですか。加藤委員。

【加藤委員】  今,福祉との絡み,その他の領域の話があったので,福祉の領域で考えると,福祉社会施設を運営しているNPOがあって,そこが福祉事業とアートと両方やっていたんですが,近年アートはやめると。なぜやめるかというと,福祉はきちんと,きちんとかどうかはともあれ,でも少なくとも,大変ではあるけれども,福祉事業をやって国からいろいろと支援をもらうとそれはそれで経営は成り立つ,若干利益も上がるという状況でやっていける。したがって,ある程度の処遇ができる,スタッフに対して。ところが,文化事業を幾ら,アートを幾らやっても,もらえるときはあるけれども,また来年もらえるとは限らない。福祉は毎年もらえる。それはもう必要な事業だと思われているから。ところが,アートは,時々余裕があったときだけやらせておけばいい事業だと思われている。だからそこの考え方をまず抜本的に変えなくてはならないだろう。
 そのときに,今回も,前々回ぐらいでしたかね,ほかの省庁の方々を招いていただいて,あれは非常によかったと思うんですけれども,あそこに厚労省も是非招いてもらいたいなと思うんですね。というのは,近年,つい,月曜日だったかな,締切り,最終締切りはもう少し後かな,いずれにしても厚労省側が障害者のアート活動に対する助成金の制度を作ったというわけです。その中身を拝見して,率直に申し上げてよく頑張られたと思いますが,もう少し我々の意見を聞いておいてくれればもう少しいい制度になったのだろうになと思うところがありました。それは,障害者がアート活動をやられる中で,絵画と陶芸等の造形芸術というか,造形芸術に対する助成金です。そんな時代ではないだろうと,今は。もう何でも障害者はあらゆる,一番進んでいるところでは,障害者の行為自体がすこぶる興味深いとまで言われている時代に,そんな絵画と陶芸だけに限定していること自体が時代錯誤だと思うんですが,とはいっても厚労省としては多分頑張られて,精いっぱいここまで来て,しかもアートにもきちんと配慮していこうという,非常に建設的な提案だと思うんです。そのときこの文化のセクション,専門家たちとももう少し議論をされれば,もう少しこの制度はよくなったのではないのかなと思って,したがって文化庁が今後各省庁のいろいろなアクションを更に丁寧にリサーチしていただいて,こういう席に引っ張ってきていただいて。逆に,厚労省ならうまくいっている,NPO育成がうまくいっているのに,何で文化がうまくいかないのかということも逆に学ぶ必要があると思うので,その辺は人材育成及びいろいろな省庁間の横断という観点からも必要なことかなと思いました。

【熊倉部会長】  はい,平田委員から手が挙がりました。

【平田委員】  吉本さんにお聞きしたいんですが,最後の21ページに書かれているNPOの団体が減っていると,アート関係の,これは一般社団法人とかはどうなのでしょうか。

【吉本委員】  分野全部をきちんと調べたわけではないんですけれども,全体の,減ってはないですね。伸び率が落ちてきていて,その中で文化はまだ割と伸びているということだと思います。

【平田委員】  2つ僕は是非,実は今うちのアーツカウンシルをやりながら,うちは基盤整備,組織の体制を作るという中で,NPOを作るというのが非常に今は時間もかかるし,非営利というところでとても大変ですね。だけど一般社団法人であれば2週間でできると。結構一般社団法人化を進めているんです。ですから,その観点からきちんと利益を出しながらやっていくという意識が,そのNPOから一般社団法人になることで随分と変わってきたなというまず感覚が1つ。
 もう一つは,補助金の仕組みも,やろうとしているその事業の補助,支援なので,黒字を出したり利益を出すと,それはもちろん返さなければいけないという,保険的な感じの補助金の形があるんですが,そういう中では,恐らく産業を生み出そうというような人たちの作り出す心構えというのがなかなか難しいのかなと。できなくはないんです,やろうと思ったら。補助支援,補助金ですよというところはこういう仕組みですよ,ここで基盤を整備したら今度はファンドに行ってくださいというふうに,きちんとたてつけていけばいいと思うんですけれども,どうもその地域の人たちや文化団体の人たちは,補助金というと,補助金は何か頂くものというイメージがあるので,そうでなくて活用するものなのだというところの考え方に意識を変えていかない限りは,ソーシャル・アントレプレナーというんですかね,社会起業家的な感覚の文化人材というのは生まれてこないのではないかと思うんですね。ですから,是非そういった面では,仕組みも含めてですけれども,何か問題点があるかなという感じもします。

【熊倉部会長】  吉本さん,いかがですか。

【吉本委員】  確かにNPOよりも一般社団の方が作るのも楽だし,何ていうんでしょう,報告義務というんですかね,そういうものもNPOより楽だと聞きますし,そういう方にシフトしているというのも私はよく聞きます。ただ,その制度の違いが私は少しよく分からないんですけれども,今はだからNPO法ができた後に公益法人制度改革が行われて,公益法人というのが何かもうねじれているというか,2つの状態になっているわけですよね。その根本までたどっていくと,とても変えられない,すぐには変えられないと思うので,だからその一般社団とNPOになった場合の何がどう違うのか,それでここで言っているような非営利の芸術活動を促進するための法人形態がひょっとして本当に一般社団の方がいいのであれば,NPOで苦労している方々にはそっちにシフトする方向を促してもいいのではないか思うんですけれども,そこはきちんと研究をした上でどうあるべきかということを政策として作っていった方がいいと思うんです。それで私もこの最後の提案のところ,具体的にこうやったらいいのではないかというのを考えられればよかったんですけれども,とても複雑でそんなに簡単に考えられるものではないので,そこのところをどうやったらいいのかということを,来年度になるのか,ひょっとしたら今年度ぐらいから調査費ぐらいつけられるのであればそのことに本格的に取り組んでいったらどうかなと思います。

【熊倉部会長】  河島委員が先に手を挙げていらっしゃいました。

【河島委員】  先ほど加藤さんがおっしゃったことへの延長なんですけれども,他省庁も厚労省だけではなくて,それを言ったら文部科学省,本丸のね,そこも含めてだし,国交省も全てで,文化政策は固有の領域であると同時にあらゆる政策分野の視点であるべきだと思うんですよ。ここだけ一緒にやりましょうとかいうことではなくて,都市のデザインから,福祉から,教育から全てに文化的な視点というのが大事だということも付け加えます。

【熊倉部会長】  相馬委員。

【相馬委員】  懸案のNPOで働いて生活させていただいているので一言だけ追加させていただくと,要するにアートNPOの現場で一番不足しているのは,現場ができる人材とか,企画を立てられる人材というよりは,経営ができる人材だと思います。ただ,ここに矛盾があって,ばりばり経営できるような算数とかの強い人が率先してアートの分野に来るかというと来ないのが現状で,そこがニワトリと卵だと思うんですね。アートでしっかり生活ができる,社会的なステータスもそれなりにあるということが実証されていけば,むしろ非常にそういう野心や能力を持った人材も来る可能性があるということで,これは何人かの委員からの提案にもありましたが,そのアートマネジメントのMBAのような人材育成のスキームというのは,今後日本でも検討していっていいのではないかということと,もう1点だけ,では人件費的な部分を助成すべきかどうかという,これも随分昔から議論がされてきたところだと思いますけれども,今の芸術関係のNPOで公的なミッションを担い体現しているところというのは幾つかあると思います。かなり実績も積み重ねられており,実際日本のその文化政策を遂行していくのに欠かせないようなパートナーシップを組み得るNPO等に対しては,継続的な運営そのものに対する支援というものも今後検討してもいいのではないかと思います。もちろん吉本さんがおっしゃったように,それを決定していくためには様々な研究,実証が必要と思いますけれども,今経営する人材,事業ベースではお金が出ているので事業ごとには人を雇える,しかしNPOそのものの経営にはお金が出ないので,そこの人件費をどう工面していくかというのが非常に切実な問題ですので,その2点に関して,是非今後具体的に検討をしていただければと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  太下委員。

【太下委員】  今,相馬委員からのお話にあった経営のできる人材はアートの分野に来ないという点についてです。また,熊倉部会長からも同じようなお話がありましたけれども,この理由は端的に言ってお金が文化の分野に流れていないからでしょう。例えば,私には男の子どもが2人いますけれども,将来アートの分野に進みたいとかと言われたら私でも考えてしまいますから。前回もお話しましたけれども,1964年の東京オリンピックのときには,デザイナーという職業が社会から認知されて,これが職業として確立したということです。これは何で職業として確立したかというと,当たり前のことですけれども,特に民間企業という資金提供者,クライアントがいたからですよね。一方で文化の分野を考えると,鑑賞者等からの収入でそれが成り立つという分野ではないということは,文化経済学の世界では証明済みのことです。そうすると,必然的に鑑賞者以外のファウンダーが必要ということですよね。
 この点に関して,今,皆さんのお話をお伺いしながら6つの可能性を考えてみました。1つは,下村博文文科大臣が文化庁予算を倍増させるとおっしゃっていますから,是非倍増させていただきたい,ということです。
 2つ目は,今もお話が出ましたけれども,他省庁の予算です。私はイギリスのDCMS,文化・メディア・スポーツ省がかつて1977年,1978年からクリエイティブ産業を振興してきた歴史を調べましたけれども,彼らは,実は,提唱はしていながら,実際にクリエイティブ・エコノミーという費目で予算を計上したのは2008年が初めてなのです。それまでの10年間は,実は他人のふんどしでその政策を実施していたのです。そういうクレバーな政策を是非文化庁の皆さんにも展開していただきたいと思います。これが2つ目。
 3つ目は,そうはいっても,日本の予算全体が厳しくなっていく中で,余りバラ色の路線は描けないでしょうから,是非新しい財源を獲得していただきたいと思います。私は,平田委員からもお話がありましたけれども,IR,すなわちカジノの収入がその大きな候補になると思っています。
 4つ目,文化庁だけでなくて,また,中央政府だけではなくて,地方自治体も同じような動きを示してほしいと思います。具体的に言うと,地方におけるアーツカウンシル化を是非促進するような政策を文化庁にとっていただきたいと思います。地方のあらゆる自治体に文化のための基金があり,アーツカウンシルがあるという状況を作っていくという政策もあるのではないかと思います。これが4つ目。
 5つ目は,民間セクターにも頑張っていただきたいと思います。この会議には加藤委員もいらっしゃいますけれども,特に企業メセナ協議会を中心に,もっと民間の財源が厚くなることが望ましいと思います。これについても国が側面から支援できることはあると思います。
 そして最後,6つ目です。日本は経済的に厳しいとか言われた時代もありますけれども,何だかんだ言って1,400兆円の個人資産があるとも言われています。でも,特に若者の世代にそれだけの資産があるという実感がないのは,理由は単純でこの資産が主に高齢者に集中しているからですね。でも,これは逆にいうとチャンスでもあって,特に2020,それからそれ以降の時代を考えた場合に,高齢者のみなさんがその資産をずっと持ち続けるということはあり得ないわけです。いずれ亡くなられるわけですから。そのときに,金や不動産を子孫や親せきに残すのではなくて,「社会に名を残す」という風潮,カルチャーと言ってもいいですね,そういう文化を作っていくということがこれから大事ではないかと思います。カーネギーとか,そういうような形です。そういう風土を作っていき文化のための財源が多様にあるという状況を作っていかないと,冒頭の課題である優秀な人材が文化に来るという循環はなかなかできないと思います。今申し上げたことには,多少バラ色の夢も含んでいますけれども,でもそういうことを今やっていかないと本当に人材は定着しないし,枯渇していくと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  いろいろ示唆に富む御意見をありがとうございました。今日は次々物すごくたくさんアイデアも出ましたし,今の太下委員のお話ではないんですが,すごく働かなければいけなさそうな感じなんだけれども,大丈夫なのかなと少し心配になってしまいました。
 その人材の問題,私はもう研修も育成も極端なことを言ったら必要ないと思っているんです。十分行えていると思います。だって行き先がないので,優秀な学生は,それはメディアへ行っちゃったりとか,目端の利く,要ははったりの利く学生から別の分野へ行くんですよ,幾らアートマネジメントを学んだって。心優しくて,そのアートがどうしても好きという子がアートNPOに残っていくのと,あと美術館などの専門機関で真剣に文化活動,クオリティーの高いものをやろうと思うと,欧米の館が20人ぐらいでやっていることを,少し誇張して言いますけれども,1人で学芸員がやっていらっしゃるという恐ろしい状況があって,どっちに行っても物すごいブラックな状況なんですよね。
 ただ,1つは,先ほどMBAとおっしゃいましたけれども,総務管理などをされたらたまらないですよ。たまらないですよね。公立文化施設でよく館長と現場職員との間でもめることが残業をするなということなんですけれども,もう24時間365日自分の全てのエネルギーを突っ込んじゃいたくなるのが常ではないですか。
 もう一つは,普通の経済感覚,社会感覚の人が物好きにボランティアでいろいろ見ましょうと言ってアートNPOに来てくれることはあります。でも,一般的な社会的な感覚というものと相入れないんですよ,理解できないんです,アートNPOがなぜこういうことをやっているのか。ということで,それは社会全体の価値観が問題だと思うので。だから少しこの人たちばかだから,少し儲ける気持ちを作ればいいんじゃないかってよく経済側の方々に言われて,実は物すごくかちんとくるんですけれども,そういう価値観じゃない価値体系を社会の中で実現するから非営利として意味がある,存在価値がある。理屈にならない部分にむちゃくちゃ一生懸命になる人たちが何か感動とかハッピーとかを生むというその生態系をよく理解して,それを社会化していくというのは,これはなかなか難しい作業で,そこの人材育成はもちろん必要だと思いますけれども,でもそこに給料が出ないので。
 先週,どうなったらいいかねと,ここのところ2020年以降のことを周りの人にぶつぶつ聞いているんですけれども,その人材の部分に関しては,何とかして,もう1000億円ぐらい何とかしない限りは,何か小手先の自助努力でどうのこうのなるというような問題ではなくて,そこに構造的な,私はその構造的なギャップは全く負のものだと思っていないので,物すごくそれが次の日本に実は本当は重要な価値があるということをここで認めなかったらどこが認めるのだろうかという気はいたします。
 また,そのアーカイブ化などに関しても,もう少し委員がそろわれる会などに引き続き話をしていきたいと思います。
 それから,第3次方針の検証がそもそもできているのかと,そんな難しい数字を上げてというよりは,委員の皆様方から幾つかの項目に関してこうなのではないかという感想を述べていただくでも1つの,もう一つの出発点としての認識になるのかなとも思いました。
 いずれにせよ,大変内容の濃い御提案を次々頂いて,会の進行の設計が御負担になることばかりで大変申し訳ありませんでした。次回はもう少し議論ができるといいなと思います。
 では,最後に事務局にお戻ししたいと思います。

【内田調整官】  どうもありがとうございました。
 次回,第4回ですけれども,7月3日,木曜日,13時からお願いしたいと思います。ヒアリングの第3回を予定しておりますので,引き続きよろしくお願いします。
 以上です。ありがとうございました。

―― 了 ――

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