文化審議会第12期文化政策部会(第6回)議事録

平成26年9月1日

【内田調整官】  おはようございます。定刻でございますので,開始させていただきたいと思います。
 まず開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料1が,関係団体御発表資料。資料2が,ワーキング・グループメンバー(案)。資料3が,事務局資料というふうに,3種類の配付資料となってございます。そのほか,机上の左側でございますけれども,平成27年度概算要求の概要。それとその下に関係資料の紙ファイル。机上の右側には,熊倉委員からの提供資料でございますけれども,足立区の文化プロジェクトのチラシをお配りさせていただいております。もし過不足などございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,部会長,よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】  皆さん,おはようございます。ただいまより,文化政策部会(第6回)を開催させていただきます。本日は御多忙のところお集まりいただき,誠にありがとうございます。また,今日はヒアリングで多くのゲストの方にお越しいただき,ありがとうございます。
 前回からの引き続きで,本日も文化芸術団体へのヒアリングをさせていただきます。本日は5団体に御出席いただいておりますので,よろしくお願いいたします。金曜日にまた概算要求が文化庁から財務省に提出されたようですので,ヒアリングの後,この部会のワーキングの設置に関しますことや,そちらの概算要求の内容などを事務局からも御説明いただきながら,自由討議を行いたいと思います。また,ヒアリングの皆様方への質疑応答の時間は,いつもどおり一通りヒアリングを頂いた後に,20分か25分ぐらいとれればなと思っております。
 それでは,早速ヒアリングに入りたいと思います。最初に,日本芸能実演家団体協議会様,よろしくお願いいたします。

【福島日本芸術実演家団体協議会常務理事】  おはようございます。芸団協の常務理事で,政策,法制部門を担当しております福島と申します。よろしくお願いいたします。今日は貴重な時間を頂きましてありがとうございます。
 今日の意見に当たりまして,従来の芸団協の意見を3点ほどに絞り込んで申し上げるということにさせていただきたいと思います。大きな柱としては3つなんですが,1つは芸術団体への支援政策,助成政策をどう展開するかという問題が1つ。それからもう一つは,実演芸術連携交流センターの提唱ということを芸団協は言っていまして,その中身についてということになります。そして3つ目が,大きくは文化省の設立に向けた展望をどう持つかということになります。
 一つ目,資料の(1)なんですけれども,芸術団体への助成の問題でいいますと,今日非常に経済環境の厳しさも伴っていて,なかなか芸術文化団体も,実際にはかなり自助努力はしているものの,悪戦苦闘中というのが現状であろうかというふうに思っております。そういう意味でいいますと,ただ国が政策目的で,最初に芸術政策の確立のところに書きましたのは,国が行う文化政策目的のための事業と同時に,芸術団体によって自主的に行われるものをどう尊重するかという視点が決定的に重要であろうと。その視点に沿ってのバランスある政策をどうつくるかということが,芸術政策ではかなり重要だということが1点目に申し上げたいことです。
 その意味でいいますと,2番目のところで,実は芸術団体の経営基盤,前からよく言われることなんですが,芸術団体自身の自主的な基盤を確立することなくして,助成金漬けとかそういう構造を作ってはいけないということははっきり言えるわけで,その意味でいうと,現在トップレベルの助成については赤字補?方式が改善されたわけですが,芸術文化振興基金,あるいはほかの助成においては,いまだに赤字補?という方式が残っているという意味においては,その制度設計を是非変えていただきたいと。第4次基本方針にあっては,そのとこが大きな課題かと思っています。その上においても,実は文化庁,芸術文化振興会も含めまして,データベースが十分にそろっていないと。統計もとられていないということがありまして,これは各芸術団体がとっている統計数字がかなりございますので,それを素材にしながら集約をして,文化政策,あるいは芸術政策の基本に据えていただくということが必要だということか2番目。
 そしてもう一つは,芸術文化振興会が現在進めているPD,POの試行的な活動をしているわけですが,それより更に専門化を進めていただくという作業を通じて,専門助成機関を作っていくということが重要だろうと思っています。
 あと助成額の拡充,助成希望額の充足率の問題も1つありますが,この3番目の問題でいいますと,劇場音楽堂との連携,提携を,芸術団体の立場からいっても大いに進めていきたいというふうに考えているんですが,現状では劇場,音楽堂の活動の活性化事業についていいますと,ほとんど大半が,ネットワーク事業を除きますと劇場,音楽堂からの申請になっております。ネットワーク事業以外の,例えば教育ですとか,普及啓発の活動においても,芸術団体がかなり重要な役割を担っているということから考えますと,是非芸術団体からの申請ということも含めて検討をお願いしたいと考えています。これが大きな1番目の,助成政策の展開に当たって,当面私たちが求めることでございます。
 二つ目の(2)に,実演芸術連携交流センターの始動をということを申し上げたのは,特に中期プランに当たって,2020年の東京オリンピック,パラリンピックの開催との関連が言われているわけですが,この際,国内外の人材が交流できる芸術センター,アートセンターのようなものをきちっと確立すべきではないかというのが,芸団協としての意見になります。
 この中身としてどういうことが期待されるかと申し上げますと,1番目は,国際的な窓口としての芸術センター。現状では,国内外様々な芸術家が日本を訪れたとしても,いわばそこを集約する場がない。迎賓館的なとは言いませんが,オリンピックセンター程度のものが実際にはあってしかるべきではなかろうかということなんですが,そこすらもない,合宿施設もない,宿泊施設もないという状況がありまして,もっと国際的な交流を深めるとすれば,そういうセンターが必要ではないかというのが1点目。
 2番目は,実演芸術の連携交流の拠点としてということでいいますと,現在芸団協が扱っている芸能花伝舎というところは,1つのモデル的な事業を進めていますけれども,あそこに一定の芸術団体が集まることによって,実演芸術の様々な交流が一定促進されたところはあるんですね。その意味でいいますと,国内外の,特に国内の芸術団体の交流のセンターという位置付けというのは,2番目に言えるかなと。そこでは研修や,アーツマネジメント等々についての経営基盤についての調査も行うことができるかということを考えております。
 3番目には,もう一つには展示発表機能ということでいうと,これは特に伝統芸能の問題で言われることなんですが,邦楽,邦舞の発表の機会,発表機能を持った空間が非常に少なくなっていると。能楽堂を除きますとという意味ではそういうことになりますが,是非そういう意味でも,国際的に発信する意味でも,発表の空間,機能を持った施設が必要かというふうに考えています。
 三つ目の(3)の文化省の問題なのですけれども,これにつきましては改めて言うことではないような気もするのですが,一言でいうと文化大臣もいないような国で,オリンピック,パラリンピックを開催するというようなことがあってよいのかというような基本的な問題意識を持ちつつ,つまり,日本が文化についてのどれだけの位置付けを持っているのかということを国際的にも発信するという意味では,外務省や,あるいは経済産業省,総務省等々の現在行われている文化政策を統合した形での文化省というものを設置していくということが,中期的な展望としては求められるのではなかろうかというふうに考えております。是非そういう意味での全体的な方向性を,この第4次基本方針の中に反映させていただければというのが,私ども芸能実演家団体協議会としての要望ということで,まとめさせていただきたいと思います。以上でございます。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして全国美術館会議様,よろしくお願いいたします。

【建畠全国美術館会議会長】  建畠でございます。全国美術館会議につきましては,ここにいらっしゃる青柳文化庁長官が前会長でいらっしゃいましたので,私の方から御説明するのがちょっとはばかられるようなことですけれども。
 ごく簡単にお話ししますと,お手元の1-2の資料を御覧いただきたいと思います。赤い字で簡単に書いてございますが,1952年に設立しまして,今日では約371館,これは国公立,私立の主立った美術館を網羅している組織でございます。活動内容はそこに書いているとおりでございますが,特に最近では,青柳長官が会長の時代ですけれども,東北震災の復興支援のチャリティーオークションがございまして,予想以上の大きな収入を元にして,様々な復興事業を広域的,継続的に立ち上げております。また,文化庁と連携しながら,支援等の事業にも取り組んでおります。
 それで,これからお話しすることでございますが,まず2ページ目の現状における文化政策の課題でございます。私は公立美術館の館長もしておりますが,全国各地の,主に公立の美術館等の文化施設は,最近建物はほぼ,政令指定都市レベルや東京の場合は区のレベルまで立派な建物が建ったのでございますけれども,その後の予算削減がかなり厳しくて,一般に美術館は冬の時代と言われる状況です。それからもう一つは,指定管理者制度が必ずしもポジティブに機能していないケースもございまして,学芸員等の雇用も不安定で,人材の確保にも苦慮しているような状況でございます。
 こうした美術館,主に公立美術館をどうやって活性化するかというのは非常に重要な問題でございまして,私自身が前に国立美術館におりましたし,現在は大学に勤めておりますけれども,そうしたものと比較しても,美術館の財政的な現状はかなり厳しいというか,むしろ衰退に向かっているような気がしておりますので,これは非常に大きな問題だと思っております。
 それからもう一つは,アーティストの頭脳流出。これは文化庁の資料にもございましたけれども,頭脳流出自体は大変結構なことだと思うんですが,人材の相互交流になっていないと。つまり,流入という意味で考えると,展覧会やコンサート等は盛んに行われるんですけれども,滞在型,あるいは日本に居住して活動しているアーティストは非常に少ないんです。これは大きな問題だと思っております。アーティスト・イン・レジデンス,最近文化庁さんも助成をされるようになりましたけれども,こうした面でもさらなる充実が必要だと思っておりますし,展覧会も大幅な輸入超過でございまして,海外からの巡回展は数多く受けられるけれども,日本発の展覧会となると,国立西洋美術館や新美術館などがたまにそうしたものを海外に発信するだけで,これも一方的な状況でございます。
 それから,学芸員等の人材登用に関しても,私どもの大学と比べてもほとんどないに等しいようなことでございまして,これは欧米のみならず,アジア諸国と比べても,キュレーターレベルでの外国人の登用というのは非常に遅れているような気がいたします。ちょっと刺激的ですが,ガラパゴス化というふうに書きましたけれども,これは何かの方法で改善していく必要があるだろう。後からちょっと御提言申し上げますが。
 それから,国の支援は舞台芸術分野に偏重と。舞台芸術関係の方もおられるので,余り強く言えないところでございますが。芸術文化振興基金が国立劇場と同じ法人であるところを見ても,ちょっと片手間で美術にきているという状況を何とかしたいなと考えております。
 それから,次のページで,2020年まで,あるいは20年以降の文化行政に対する期待というところでございますが,オリンピック,パラリンピックに向けて,現実問題として,大規模なハードは,時期的にも予算的にも難しいと思いますけれども,これは必ずしも悪いことではなくて,ソフト面で対応するということに特化していけばいいのではないかと思っております。文化の発信の起点は,東京だけではなくて全国各地からであることが望ましい。これは現実に進んでおりまして,京都では京都市で既に文化施策の委員会が立ち上がって,今,座長を仰せつかっておりますし,埼玉県でもここに来る前に上田知事がちょっとレクチャーしてくれというので,出かけてきました。あるいは今日も,これから東京都美術館で,同じような舛添知事のヒアリングがあるという,かなり自治体レベルでは取組が進んでおります。
 それから,もう一つ期待したいのは,これは文化庁さんも助成しておられますけれども,全国各地のトリエンナーレ,ビエンナーレというものが,オリンピックに向けて2年に1回,3年に1回開かれてきて,プレイベント,あるいはオリンピックの年のイベントとして非常に有効に機能するのではないかというふうに思っております。
 それから,あと個人的な提言としては,大規模なハードはなくても,例えばこれは勝手な考えですが,国立新美術館とか,東京都現代美術館とか,非常に大きな規模の美術館がございますので,6年後ということであれば,極端に言えば全会場を確保して,大規模展を立ち上げて,国際的に発信する。ちょうど期間が短いので,オリンピックの会期をぶつけて,今の規模とは違った大きなイベントとして開催するというようなことができたらいいなというふうに夢見ております。
 海外との交流の促進。これは先ほどガラパゴス化と申し上げましたけれども,大学ではサバティカル制度で海外に行く,あるいは海外から受け入れるという相互交流がかなり定着しておりますけれども,これを美術館,博物館でも,そうした滞在型調査研究というのを,例えば,館同士の相互交換のようなシステムでやっていく。それから,先ほど申し上げましたが,アーティスト・イン・レジデンスの拡大。これは自治体レベルでも,文化庁が助成されておりますが,非常に有効なシステムだと思っております。
 最後に全体的期待ということですが,自治体レベル,国レベルでより活発な支援の施策が重要だと思うんですけれども,民間でも,サポートシステムを発展させるということでございます。大阪でも,例えばアーツサポート関西というのが,サントリーなどが主体になって既に出発しておりまして,これは大阪のブルジョアの人たちから資金を募って,特定寄附ですね。このプロジェクトに,このジャンルに寄附するというシステムが既にスタートしております。まだ助成はこれからなので,どれぐらいの寄附が集まるかはっきりしませんが,こうしたことはメセナ協議会が既にありますけれども,それ以外の自治体レベルでの,あるいは国レベルでの寄附文化の進展を図るということが非常に重要なことかと思っております。
 それから,芸術分野における女性の活動支援。これも美術においては,ほかのジャンルに比べてどうかということはちょっと言えませんけれども,ある程度進んでおりまして,例えば国立美術館に関しては,理事長は女性でいらっしゃいますし,理事,事務局長も女性でいらっしゃいますし,中枢は女性の方が占めていらっしゃるという,既に理想的な状況が達成されていると言えなくもない。全国各地の公立美術館でも女性館長が増えております。ただ,そうした勢いがもっともっと進めていっていいのではないかと思っておりますし,それから,理科系は大学レベルでいうと,女性研究者の支援の組織がありますけれども,文化・芸術系でも,そこに書いてありますように,研究者養成のシステムがあってもいいんじゃないか。
 それから,学校教育でございますが,これはよく言われておりますように,芸術教育の時間が大幅に削減されて,今まで2時間続きだったのが1時間になってしまうために,実技ではほとんどまともな活動ができないということで,これはなかなか難しい問題がございますが,それを補完するような形で各地の公立美術館が,アウトリーチの一貫として,美術館に生徒たちを呼んで,あるいは学校に出かけていってワークショップなどの活動をしております。こうしたものを更に発展させるような機運を,助成なり何なりでかもしていくことは重要なことかと思っておりますし,それから,大学レベルでいうと,アメリカの大学はよく言われますように,4年間はリベラルアーツ教育というのを重視している。例えば大学寮の中にピアノのレッスン室があって自由にそこで弾けるとかというようなことがございます。そうした大学でのリベラルアーツ教育の中に,アートの専門学校でなくてもそういうものを何らかの形で組み込んでいくというようなことが期待されます。
 それから,ごく最近の経験なんですけれども,これは埼玉で,今夏休み中の開催なんですけれども,県下の高校生のトップレベルの大秀才を15人――15人のうち実は12人が女性だったという話ですけれども,15人ほど集めて,リベラルアーツ教育の夏季プロジェクトをやる。これは一級の人に接しようというので,蜷川さんに頼んでワークショップをやってもらう,彩の国劇場で。それから美術の方は,美術館に伊東豊雄さんを呼んでレクチャーをやってもらうということを開催しました。
 最近学生がおとなしいといいますけれども,県下の大秀才たちは非常に熱心で,これは何もアートを希望している人じゃなくて,進学校の生徒たちなんですが,伊東さんも感心するほどの高校レベルの生徒にもかかわらず熱心な討議が行われて,こうしたリベラルアーツ教育というのを,一般大学や高校でも充実していくというのが1つの方法じゃないかと思うので,今後その発展を期待しております。
 いろいろ申し上げましたが,以上でございます。

【熊倉部会長】  建畠先生,ありがとうございました。
 では続きまして,映像産業振興機構様,よろしくお願いいたします。

【石川映像産業振興機構事務局長】  ただいま御紹介いただきました,映像産業振興機構(VIPO)の事務局長の石川でございます。本日は,貴重なお時間を頂戴いたしまして,誠にありがとうございます。短い時間ですが,本機構の概要,それとこれまで行ってきた事業の一部ですが,御説明をさせていただきたいと思います。そして,日本映画の現状,コンテンツの海外展開ということについてお話をさせていただこうかと思います。
 まず,映像産業振興機構(VIPO)についてですけれども,VIPOは日本経団連,関係省庁,内閣府,文化庁,総務省,経済産業省などの支援を受けまして,映画,放送,アニメーション,ゲーム,音楽などのコンテンツ5業界が中心となりまして,2004年12月に立ち上げまして,翌年の6月にNPOの認証を受けました。今年の12月で設立10年ということになります。人材育成の支援,国内外の市場開拓支援というものを2本柱に掲げまして活動を行ってきております。
 これまで行ってきた,ごく一部の事業の説明をさせていただきます。まず,若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)というものが2006年から本年まで続いております。これは文化庁様からの委託事業でございまして,この事業は,映画監督を目指す映像制作経験者を募集しまして,六,七十名応募がありまして,その中から15名を選抜してワークショップを行い,更に5名を選抜しまして,シナリオを出してもらいまして,プロの人が入りまして,監督として35ミリフィルムを使いまして撮影をしまして,制作の研修を行ってもらいまして,それで30分の作品を完成させます。映画を作るということよりも,人材の育成という経験をしてもらって,人材を育成するという事業でございます。
 次に,アジアにおける日本映画特集上映事業。この事業も文化庁様からの受託で,当機構としては2005年から2009年の間,韓国のソウルで日本映画の上映,人材交流などを担当させていただきました。
 そのほかに文化庁の事業としまして,専門家派遣によるポップカルチャー分野を通じた日本文化の発信・交流事業ということで,昨年度,そして今年度行っております。この事業は,アニメ,ゲームのシナリオライティングなどの専門家をアジア諸国に派遣して,日本とASEANの各国の未来を担う若手クリエイターを育成し,連携強化を図っていこうというものです。昨年はシンガポールで実施しまして,今年は加えてインドネシア,マレーシアで実施で,ただいま準備を行っております。
 この次にコ・フェスタ(JAPAN国際コンテンツフェスティバル)ですけれども,これは間もなく始まります東京国際映画祭でありますとか東京ゲームショウ,ドラマフェスティバル・イン・トーキョー,コンテンツのマーケットでありますTIFFCOMなどのコンテンツイベントやマーケットを取りまとめて連携を深めることを事業として行っております。これは経済産業省様からの事業です。
 一番下に書いてあるジャパン・コンテンツローカライズ&プロモーション支援助成金,これはJ-LOP事業と呼んでおりますけれども,これは昨年度からございまして,経済産業省様,総務省様から155億円の支援助成金をお預かりしまして,コンテンツを活用したクールジャパン展開に資する海外展開,事業に対しての支援をしまして,助成金を交付するというものを請け負わせていただいております。
 まだほかにもやっておりますが,本日の御説明はここまでということで,次に,いろいろなコンテンツの業界とやっていくわけですけれども,特に日本の映画について話をさせていただきたいと思います。これは皆さん御存じの話かとも思いますけれども,簡単に日本の映画の歴史みたいなものになっちゃって恐縮ですけれども,1958年に映画人口は最高11億2,000万人おりました。それが64年の東京オリンピックの年には4億3,000万人と3分の1ぐらいに減少。これは明らかにテレビの普及というものの影響が大きかったと思います。それからしばらくたちまして1975年に,邦画と洋画の映画のシェアで,この時代は配給収入ということでやっていますけれども,邦画が洋画,外国映画に負けたという年がありまして,その後10年間ぐらいは一進一退だったんですけれども,1986年から2005年の20年間に関しましては,洋画が邦画を上回る時代が続きました。1993年にはスクリーン,映画館数,昔は劇場数と言っていましたけれども,最近はシネコンが普及しましてスクリーン数といっています。一番多いときは7,067で,1,734まで減りましたけれども,シネマコンプレックスが日本にも入ってきまして,2006年には3,000スクリーンまで戻ってきて,全国各地に映画館が戻ってきているという状況です。
 1996年の映画人口,これは1億1,900万人とかなり減少して,最低ここまで減りました。邦画のシェアに関しましても,2002年には27.1%というところまで下がってしまいましたけれども,これがいろいろ努力もありまして,2006年には20年ぶりに邦画が洋画を逆転しまして,この後2008年から2013年までは,邦画が洋画を上回っているということが続いております。2010年には興行収入2,200億円という過去最高を達成しました。実は入場料金を見てもらうと,58年には64円の平均だったものが千二百幾らとかなり大きく上がっているので,興行収入に関しては上がってきているというところでございます。
 ただし,映画人口も随分盛り返してきたんですけれども,2011年の東日本大震災の年の数字を見ていただきますと分かるように,大分ここで落ち込みまして,この後の2年間,3年間で復調しつつあると。元の数字までは戻ってはおりませんけれども,復調しつつあるということです。ただ,2013年には,公開本数に関しては今まで過去最高というようになって,1,117本が公開されております。
 この日本映画の興行状況だけ見ますと,邦画,洋画のシェアでも一見高く,邦画の方がいいので順調なのかなと思われるかもしれませんけれども,ただ,スクリーンが大分増えてきたりしてきておりますけれども,売上げが比例して伸びていなかったり,観客の年齢層もなかなか若者が来てくれない,高齢者が来てくれないとかいろいろな問題がございまして,制作者の本音でいいますと,公開本数が増えてはいるんですが,やっぱり興行収入が30億円,40億円という大ヒット作品に関しては,映画館の売上げで映画の制作費を回収することができますけれども,それ以外のほとんどの作品と言っていいと思いますけれども,DVDパッケージにしたり,テレビの放送をしたり,ネットでの配信などで2次,3次利用で収入強化を目指していくということになって,そう簡単にもうかる商売ではないんですよというようなことだと思います。
 続きまして,日本映画の制作の現場と人材確保,人材育成についてです。映画というのは,映画監督の名前で売られることはありますけれども,映画監督1人で作るものでは決してなくて,脚本家,カメラマン,照明技師,録音技師,美術監督,そしてその助手たちといった多くの人たち,スタッフや出演者に支えられた上で,皆さんの経験や知恵の集合体として映画が完成するわけでございます。ただ,現在の映画の制作費というものは,利益を確保する,リスクを分散していくというような観点からどんどん減少傾向にありまして,制作費を削っていくということになりますと,行き着くところは人件費の縮減ということで,賃金のカットだったり,人を減らしていくということになってしまっているということです。
 カメラマン,照明,録音,美術のメーンスタッフには,まだまだ経験を積んだ方々がいるにしても,現場で経験をこれから積んでいってもらっていかなければならない助手さんたちの人数をカットしてしまって,仕事がなかったり,給料がどんどん安くなるということで,ある年齢になると転職してしまったりというようなことで,映画のスタッフの空洞化が起こっているというふうに聞いております。また,現在は日本で映画を制作されているわけですけれども,多くの現場がかなり疲れていると。人材育成には手が回らなくて,撮影技術の継承が行われていないというふうに聞いております。日本映画界にそうした技術を残していくためには,何らかの対策が必要ではないかなというふうに思います。海外との共同制作などということもあるんですけれども,聞くところによりますと,中国,韓国などとの共同制作を進めている人に聞いてみますと,この予算では中国とか韓国ではできないというような予算で,日本が今映画を作っているというような状況ということです。
 たくさんの映画が作られていますので,全ての映画を支援するということは難しいでしょうけれども,予算の豊富なトップレベルだったり,これから頑張っていくという実践を育てられるということではなくて,これから日本の映画を支えていくであろう中間層のレベルの作品制作の現場に関しましては,何らかの支援がなされるシステムが必要なのではないかなと思います。
 もうちょっと広く言いますと,映画だけではなくて,我々の守備範囲はテレビなんかもありますけれども,テレビの制作現場でも,非常にお金が回ってこなくて大変苦労しているということを聞いています。海外では付加価値税,日本でいうと消費税なんかの軽減税率を導入して,その中で特別税を作って産業振興に活用するということとか,宝くじで集めた資金で,そういうコンテンツの制作を支援していくというような例もあるように聞いております。
 また次に,35ミリフィルムとデジタル化ということです。現在の映画制作では,映画館での興行化,映画の制作,それから映画館での興行に至るまで,ここ数年で一気にデジタル化が進みました。このデジタル化は時代の成り行きであるということで,止めるというようなことはできないと思います。しかし,35ミリフィルムでの撮影と上映機会を守ることというのも,方針として持っていただきたいなと思っています。と言いますのは,今でも日本の巨匠の監督の中には,35ミリフィルムにこだわりまして撮影を続けている方も多いようです。デジタルにはない画質であったり,撮影過程での緊張感など,デジタルでは得られないものがあるということだろうかと思います。
 時代の流れとして,デジタル化を止めることはできないでしょうけれども,映画誕生以来100年以上続けてきたフィルムでの撮影技術,上映環境を,せめて映画文化として今後残していくべきではないかと思います。フィルムセンターなどを中心として,日本の中でもネットワークを作って,上映可能な施設を残していってもらいたいものであると思っております。日本映画の旧作,名作の多くは,まだまだフィルムで残っているものがほとんどですので,フィルムでなければ見られないということもございます。
 一方,ちょっと矛盾しますが,35ミリの保護ということがもう片一方でありますけれども,今,デジタルデータがないとなかなか気楽に映画が見られないということになってきますので,35ミリフィルムからデジタルフィルムへの変換というものも大変お金がかかるものですので,何らかの支援があってもいいかなと。あと映画だけではなくて,アーカイブということで,映画はフィルムセンターでアーカイブしておりますけれども,日本では放送番組というものも日本の文化の蓄積かなと思います。そういうものもアーカイブしていかないと,この後できなくなってしまう,名作がなくなっていってしまうという状況であることもつけ加えたいと思います。
 では続きまして,日本のコンテンツの海外展開の意義についてということで,日本のコンテンツ,映画,放送番組,音楽などのコンテンツの海外展開。先ほど言いましたように,VIPOではJ-LOPの補助金ということを行っておりますけれども,申請が1年で3,000件以上ございました。大変企業による海外展開が活発に行われている様子が窺われます。発表されている金額ベースですけれども,2013年の映画は6,117万ドル,約65億円ですけれども,これは映倫4社の数字ですので,本当はもっと大きな数字だと思います。一方,放送コンテンツに関しましては,2012年で,番組で62億円,あとフォーマットのほかにリメイク権などがありますけれども,これが42億円となっておりまして,日本国内での売上げを考えると,まだまだ伸びる可能性を持っているものだと思います。
 そして,コンテンツの海外展開の意味なんですけれども,まず何といっても直接売上げが立つということで,映画やテレビを作った人たち,コンテンツを作った人たちにお金が還元されていくということでございます。それに加えまして間接効果として,キャラクター商品であるとか関連商品などが売れていく。あとは文化的効果ということで,日本の文化を浸透させることができる,日本ファンを増やすといったことができる可能性がございます。また,直接的に映画に出てくるものではなくても,日本企業の商品の販売を増やしていくということもできますでしょうし,あと最近大分増えてきていると思いますが,外国からの観光客の増加ということにもつながっていくということだと思います。古くはアメリカのハリウッド映画を見て,アメリカがどんどん世界に理解されていったということもありますし,近くは韓国の映画,ドラマなどが世界に出ていくことで,韓国の商品が売れていくという例もございます。海外展開ということで,大きな意味があると思っております。
 今,国を挙げてクールジャパン戦略というものを展開しておりますけれども,この先更に日本のコンテンツを海外に広めていくためには,やはり良質なコンテンツ作りを続けていくことが重要だと思います。そのためには,海外展開の販売のサポートなどが重要ですけれども,売り物がしっかりしていないと売れないのではないかと思います。それにはクリエイター人材の育成であるとか,制作現場への支援がどんどん必要になってくると思います。2020年の東京オリンピックに向けて,海外の放送関係者から,日本の紹介についての番組制作についての問合せが大変多くきていると聞きました。日本は今,大きな興味を持たれておりますので,コンテンツの海外展開に大きなチャンスがあるというふうに思います。物を作る体制を整えなくてはいけないのではないかというふうに思います。今,こういうことをやっていかなければいけないというふうに思っております。
 以上で,私の発表とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,日本レコード協会様,よろしくお願いいたします。

【斉藤日本レコード協会会長】  日本レコード協会の斉藤でございます。プレゼンテーションの機会を頂きましてありがとうございます。
 今日,私どもレコード協会の活動概要を簡単に資料に沿って説明をさせていただいて,文化政策の現状の課題ということで,日本の歌謡曲,ポップスの海外展開,これが我々の今最大の課題でございますので,それについての説明をさせていただこうと思います。資料に沿って説明させていただきます。
 団体の概要について簡単に説明させていただきますけれども,一般社団法人日本レコード協会と申します。ちょっと歴史が書いてありますが,1877年,エジソンがフォノグラフというレコード蓄音機,大きなものですが,それを発明したのが大本であります。
 日本では1910年に日本蓄音機商会,今の日本コロンビアさんが設立されて,ですから,100年を経た会社も存在するということで,1942年(昭和17年)に社団法人日本蓄音機レコード文化協会として設立されました。そのときは,会員が僅か5社でありました。57年には,世界のレコード産業連盟(IFPI)の日本支部になりました。そして社団法人になり,現在はレコード各社,正会員17社を含む全61社で構成されております。1942年の設立というのは,たしかJASRACさんが1939年(昭和14年)ですので,それに続いて2番目に古い音楽団体ということになるかと思います。今,このレコード各社が加盟している私ども会員社は,日本で製造販売するレコードの国内市場の約9割を占めております。
 主な事業ということでここに書いてありますけれども,録音した音源,レコードの普及促進,事業拡大。それから2番目,今日のテーマでもあります,歌謡曲,ポップスを中心とした日本音楽の海外展開支援。現在はアジアをメーンに,今進めております。そのほかレコードに関する調査・統計,権利確保のための法的諸施策の実施。それから,今大変私たちの頭痛の種になっております,特に配信の世界における違法利用についての啓発活動。それから最後に,2次使用料,貸しレコード等の徴収・分配団体に規制されております。今,この6つの大きな柱で行動をしておるわけであります。
 次に,日本のレコード会社,レコード業界というのはどういう規模かということをちょっと簡単に述べますと,日本は世界第2位のマーケットであります。第1位は当然アメリカで,アメリカが3割。日本は21%ということで,第2位の大きなマーケットであります。右側の棒グラフで御注目いただきたいのは,昨今のデジタルとアナログのシェアです。音楽配信と呼ばれているデジタル配信ですね。アメリカは圧倒的にパッケージがどんどんシュリンクをしまして,6割強が配信のマーケットになっております。日本とドイツはパッケージがまだまだ強くて,8割以上のパッケージの市場を持っているということです。これは2013年の実績ですから,人口はアメリカの約3分の1とすれば,日本人は国民1人当たり世界一の音楽消費者ということが言えるかと思います。これは人口対比でございます。こういった状況の中で,まだまだ日本のマーケットはパッケージというのが十分に活動している,健闘しているということがお分かりいただけると思います。
 次は,どんな規模の団体なのか,業界なのかということで,ここに3兆1,000億円というふうに挙げております。これは日本のレコード産業と音楽関連産業の市場規模,2012年の販売額ベースで推定をしたものです。それで放送市場などは,音楽番組,機器市場は音楽関連機器といったものを抽出した数字です。それから,ライブ市場も,ここでは音楽のポップス等を中心としたライブ市場ですが,ここ一,二年本当に伸びておりまして,現在はライブ市場は2,000億円を超えているということで,いずれにしてもレコード会社が作ったヒット曲といったものを中心としてでき上がっている市場が,年間3兆円に達していると。大変大きな規模のマーケットであるということを御理解いただければと思います。
 そして次が,肝心の日本の海外展開がどういう現状かということですが,これは邦楽と洋楽,海外からの音源によるビジネスと邦楽のビジネスの割合でございます。直近の2013年は87%が日本の音楽ということで,100年を経過しましたけれども,いろいろ動きはありましたけれども,日本の流行歌,歌謡曲がだんだんレベルも上がってきて,どんどん洋楽に追いついてきたということが言えるかと思います。もちろん海外からの音楽も,積極的に今も取り入れております。しかしながら,日本の音楽がどんどんどんどん伸びていって,直近の2013年は87%が邦楽になっているということです。
 現状では年度によって確かに,1982年あたり,まだ洋楽が強かったときは,マイケル・ジャクソンの「スリラー」とか大変な,今年あたりは「アナと雪の女王」という大爆発している洋楽がありますので,邦洋比というのは年度によってちょっと違ってきますけれども,総体的な流れとしては,邦楽のシェアがどんどん高くなっているということで,日本の歌謡曲,ポップスの文化的価値が高まってきたなということが,海外の方へ押し出していくというようなことになっていってほしいと思っているわけであります。
 音楽というのは,単なるヒットソングを売るということではなくて,日本語の普及だとか,日本の他の文化。先ほどの映画とかいうものと密接な関係もあります。それから,日本という国の好感度というかイメージを大変作り出すものだと思いますので,そういったところで音楽というものが,ほかの文化との親和性の高いものですから,十分に海外に行く波及効果があるかと思います。
 最後のページですが,じゃあ具体的にどういったことをやっているかということですが,折しも2020年,東京オリンピックに向けてクールジャパンが出されまして,日本の音楽文化の世界展開という目標を明確化されました。これはどういった手順でどんどん進めていこうかということで,ここで一例を申し上げますと,昨年の11月から12月にかけての1か月間,インドネシアのジャカルタでJ-Music LABということで,日本の歌謡曲,ポップス普及のためのイベントを手がけました。今年もまた行いますが,こういった海外展開をするためにも,どうしても拠点が必要になります。
 1つは,このジャカルタというのを拠点化しようということですが,今私たち協会の中では,アジアの中で3か所ぐらいの拠点を作っていって,点から線につなげるようなことをしないと,アジア全体での日本の音楽の普及ができないだろうということで,私たちとしてはこういったことを是非バックアップしていただけるような施策を打っていただければということで,各省庁さんと非常につながりがありまして,いろいろ御支援を頂いておりますけれども,できれば国を挙げてというか,統一した形でこういうことの御支援をいただけるようなことがあれば大変有り難いと思っております。
 今,最大の課題であります海外展開についての御説明をさせていただきました。ありがとうございました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 それでは最後に,デザインアソシエーション様,よろしくお願いいたします。

【川崎デザインアソシエーション理事長】  初めまして。デザインアソシエーションの川崎でございます。私どもの存在は,皆様ほとんど御存じないかなと思っておりますが,この場に呼んでいただいて本当にありがとうございます。
 デザインというのは,機能が作り出した文化であるというようなことで,私ども29年活動をいたしておりますが,経済産業省さんとの関わりは結構ございました。今回,文化庁さんからこういうような形でお呼びいただきまして,本当に光栄に思っております。
 今日は,まず私どもの紹介をメーンにさせていただき,最後にちょっとした御提案をさせていただきたいと思います。後で映像もございますので,長官,部会長,大変恐縮でございますが,映像が映った際にはちょっと後ろを向いていただければと思います。
 まずNPOのことについて。これは皆様御承知だと思いますが,お話をさせていただきます。実はイギリスの文系の人気就職先ランキング,ちょっと見せてください。NPO,NGOがトップ10に2社入っている。今日,5人のプレゼンテーターの中に2社NPOが入っている。そういった意味では,NPOというのは非常にこれから大きな役割をますます私はすると思っております。
 これはちょっと古いデータでございますが,アメリカでは約128万団体,日本はたったそれの25分の1。そして寄附。World Giving Indexというのがあるんですが,これは日本は何と105位。これは文化の違いということがありまして,寄附を行うという習慣が私どもにはないということで,私どもも大変恥ずかしい話ですが,寄附を受けたことがないNPOでございます。しかし,先ほどお話しいたしましたとおり,5年後,10年後,恐らくこの社会的課題を解決するソーシャルビジネスの担い手として,NPOがますます私は活発になっていってほしいというふうに思っております。
 これから私どものお話をいたします。これは私どものロゴマーク,DとAでございます。名和晃平さんという方がいらっしゃいまして,名和さんはアーティストです。ところが今,建築で非常に活躍をされている。このマークは十数年前に作ったんですけれども,異分野のジャンルが重なるところに新しい発想が生まれ,新しいビジネスになると,こういうようなことで作ったものでございます。ところが,デザインの運動を29年間やっておりましたけれども,なかなか発展していかない。そういった意味で,四,五年前からクリエイティブの運動体へ方向性をちょっと変えました。
 これは何かと申し上げますと,デザイン,アート,ミュージック。どれだけ頑張っても,ミュージックにはかなわない,アートにはかなわない。これは何かと申し上げますと,動員力なんです。デザインはまだまだ専門分野なんですね。この専門分野のいいところもございますが,多くの支持を得るためには,やはりデザインだけという殻の中で運動していても発展しない。しかし,ビジネスの部分でいいますと,圧倒的にデザインなんです。そういった意味では,デザインの持っている良さをますます出すためにも,私どもとしてはクリエイティブの運動体に今変わろうとしております。
 様々なネットワークを持っておりまして,国内ですと学校が約60校入っていただいております。それから,メディアも入っていただき,そして海外と,このネットワークが私どもの財産だと思っております。
 1986年からスタートいたしまして様々な変遷を経まして,今に至っております。特に今,私どもがやっておりますのは,TOKYO DESIGNERS WEEKというイベント。今年も10月25日から10日間,明治神宮外苑で行いまして,昨年,一昨年と10万人を初めて突破いたしました。そして,左側にありますのは,今年ミラノ。これはVIPOさんの御協力も頂戴いたしまして実現いたしました。9月19日からはロンドンでも行います。DESIGNERS WEEKを積極的に海外に展開させる。それから,テレビ番組を1つ持っております。今日,もう放送されますので,もし皆様,お時間がございましたら,BS日テレの11時から,「発想の種 IMAGINE」という,茂木健一郎がMCを務める番組でございます。この番組は12年間,名称はちょっと変えておりますけれども,やっております。それから,出版。今年はこれから4冊出します。こういうような運動を,今いたしております。
 今年,DESIGNERS WEEKのちょっとした変遷をちょっとお見せしますと,このときは2008年7万人台,6万人,7万人,9万人,10万人,10万人を超える。これは台風の影響とかいろいろなことがあるんですが,昨年は台風の直撃を受けました。にもかかわらず,10万人を突破したというのは大変有り難いと思っております。
 そのときのコンテンツを,幾つかちょっと簡単に御紹介します。お願いします。これは伊藤若冲のインスパイア作品展です。江戸中期の絵師の伊藤若冲にインスパイアされた,国内外のトップクリエイターがやったものでございます。
 実は1986年に私ども,TOKYO DESIGNERS WEEKがスタートしたんですけれども,今現在,世界では約60都市でこのDESIGNERS WEEKが行われております。2日,3日でやっているところはDESIGN DAYS。ロンドンはちょっとプライドが高いので,WEEKを使わないでDESIGN FESTIVALと。でも,同じようなものなんです。実は私ども,この3月,4月,7月と,ヨーロッパ,アジア,アメリカを回りました。いろいろなお話をさせていただいておりまして,私どもが言ってみれば起点だというふうに自負しておりますので,この方々をお集めして,今年,WORLD DESIGN WEEK SUMMITをアンダーズ東京で行いたいと思っております。この60都市はほとんど交流がございません。理由は何かというと,オーガナイザーが市であったり,国であったり,NPOであったり,企業であったりまちまちなんですね。そういった意味では,そういうようなオーガナイザーの違いを乗り越えて,この60都市を束ねていくというようなことを一緒にやりませんかという提唱をいたしております。
 そこで私どもは,プラットフォームを作りましょうと。世界中のクリエイターが自由に作品を発表できたり,小さな企業が展示会へ参加できる。言ってみれば,皆さんホテル・ドットコム。旅行なさると,ホテルを探すときにいろいろございますね。あれのデザイン版をやろうじゃないかと。簡単に申し上げますと,そういうことでございます。
 この上のところにそれぞれの検索エンジンが実は出ているんですけれども,現在,御賛同いただくDESIGN WEEKはこのような形になっておりまして,全てをお呼びするということはちょっとできませんで,20DESIGN WEEKを御招待して東京でやろうと思っております。
 このプラットフォームは,様々な検索のエンジンを持っておりまして,これはカレンダーで,11月はどこでやっているの。それから,どこの国でやっているのかということが分かったり,そしてイメージで検索をしたり,いろいろなことができます。そしてもう一つ,世界のアワードを作ろうじゃないかということで,世界5大陸のアワードを作り,グランプリを作っていく。これは私どもが主導するのではなくて,60都市が一緒になってやりませんかと,こういう提唱をいたしております。そしてもう一つ,今話題のクラウドファンディングです。TOKYO DESIGNERS WEEKでも,ロボット展のクラウドファンディングですとか,幾つかやります。つまり,世界のアーティストやクリエイターたちを世に出していくための資金を全世界から集めようと,こういうようなものを提唱したいと思っております。
 そして,TOKYO DESIGNERS WEEKの海外のものがございますので,後ほど御覧になってください。これはクールジャパンのはしりを私ども務めさせていただきまして,パリのルーブルの装飾美術館の模様が映像にちょっとございますので。

(映像上映)

 これは1,000年の感性ということで,1008年に源氏物語絵巻が日本に出まして発刊されまして,ちょうど1,000年がたったという形で,ちょっと面白いものを作りました。音,出ますか。
 これは電子掛け軸です。日本の共生文化というか,そういったものをテーマにしたものでございまして,この展示会にはフランス側の大臣が4名出ていただきました。その当時,麻生総理が大変な時期でございまして,日本からはどなたもおいでにならなく,JETROのパリの所長と私がプレゼンテーションをさせていただきました。そして,今年4月にVIPOさんの御協力を頂戴いたしまして,ミラノサローネもやってまいりました。これはミラノのスカラ座の練習場をお借りして,5年契約をいたしてございます。ちょっと御覧になってください。

(映像上映)

 この中で,三つ星のお寿司屋さんの銀座水谷さん,今,実質ナンバーワンと言われておりますが,水谷さんをお連れして,世界のメディア約600社に,本物のお寿司を味わっていただいたというようなこともございました。
 これは風呂敷ですね。風呂敷展をやったり,いろいろなコンテンツを持ってまいりました。
 そして,今年10月に始まるコンテンツを少し御紹介します。今年は,クリエイティブの天才たちが神宮の森に集うと。つまり,デザインとかクリエイティブという言葉だけでは人は動かない。これは,本当に私はそう感じます。笑わないでください。そこで,クリエイターって,アーティストってやっぱり天才なんだなと。私は天才の定義を,面白いこと,新しいことをやること,これが天才だということで,様々な天才を,これは才能寄附です。約90%の方々が無料で御参加を頂戴いたします。私が今,一番メーンに考えておりますのが,朝崎郁恵さん。皆さん,御存じでしょうか。78歳なんです。私はクリエイティブというものが,テクノロジーにどんどんどんどん引きずられて,心というものを少し失っていると。そういった意味では,この奄美の歌い手さんですね。NHKの「新日本紀行」の今テーマ曲。この方を4夜お呼びいたしました。この方を中心に,様々な天才たちを今やっているところです。
 1つ,建築模型とその提案書展。これは伊東さん,隈さんに主催していただいて,日本のトップ建築家13組の方々をお呼びして,模型はよく見られるんですけれども,例えば妹島さんの提案書,企画書ってどんなの。見たいと思うんですね。名和晃平さんの企画書,見たいと思うんです。こういうようなものを本にもしますし,そしてDESIGNERS WEEKでもお見せしたい。これは日本のクリエイターの収容人口がどんどんどんどん激減しているんです。美大を出ても就職できないんです。そういった意味では,私はこれから建築を目指す若者へのエールのイベントであり,本だと思っております。
 もう一つは,これは来年ミラノとニューヨークに持っていきますけれども,北斎漫画のインスパイア展,これもやります。
 それ以外にアジアアワードを昨年からやったり,テーマはアバンギャルド。どうも最近,クリエイティブが保守的になっている。若者よ,もっとアバンギャルドになれというようなことで,そこにMYをつけたことによって,自分なりのアバンギャルドを提案していただくということで,4部門,第1次審査が終わりました。
 これは昨年のグランプリを取った作品でございます。「揺れる輪郭」。これは建築学部の人たちが作ったもの,これがグランプリでございました。学校展。今年は面白いことに,ヨーロッパからも随分出ていただくんですが,アメリカンスクール,中学校,高校が出ます。出ていいかと聞かれまして,学校作品展の規定に中学,高校は出ちゃ駄目だということはないということで,今年出ます。非常に私は楽しみだと思っています。それから,スーパーロボット展や大きなドームでの天才の様々なイベント。それから,昨年文化庁さんに御協力を頂戴いたしまして採択いただきましたフューチャーラボ。これの特別展示,講演も行います。
 それから,面白いのはけんちく体操という,これも面白いんですね。子供たちがエッフェル塔とか歌舞伎座とか,そういうような形で建築をもっと身近に感じてもらう。こういったものもやろうと思っています。
 それから,都内の100以上のショップがギャラリーになります。つまり我々は,明治神宮外苑でのイベントだけではなくて,町全体を動かしていきたい。そういった意味では,今年映画祭の方々と御一緒させていただくのは大変有り難いというふうに思っております。
 そして,2020年に向けて,スポーツの祭典がオリンピックであるならば,私どもは文化芸術の祭典。先ほど申し上げました,世界から東京にクリエイティブの天才たちが集まる,まさしく文化のオリンピックをやれたらなというふうに思っております。そこでタイトルが,TOKYO GENIUS EXPO。この天才たちを多く呼ぶことによって,日本の文化も当然やりますけれども,私は成功するには,世界の人たちをどれだけ東京に呼ぶか,そこの交流こそが,私はこのオリンピック精神に結び付くというふうに思っております。どうもありがとうございました。

【熊倉部会長】  御発表の団体の皆様,ありがとうございました。
 それでは,ただいま皆様の御発表を受けて,30分ぐらいいけますかね。質疑や意見交換を行えればと思います。委員の皆様方,どなたからでも結構ですが,御質問や御意見などいただければと思いますが,いかがでしょうか。平田委員,ちょっとマイクが参りますのでお待ちください。

【平田委員】  おはようございます。沖縄から来ました平田でございます。
 2点ほど。1つは,全国美術館会議の発表がありました。建畠会長のお話を伺いながら,1点ちょっと御質問なんですが,例えば,資料の1ページに,研究部会の中に7番で美術館運営制度研究部会というのがあります。その中で,先ほど指定管理に関する部分のお話があったと思うんですが,指定管理による経理とか運営面での実際のうまくいっている事例,またそうでない事例もあると思うんですね。これは美術館に限りはしないと思うんですが,いわゆる公共の文化施設や公共の施設の指定管理の状況というのが,全国的にうまくいっているんだろうかというところのまず現状を,これは答えられるところでいいと思いますが,1つ。
 あと今お聞きしたかったのは,美術館運営制度の研究部会という話の中で,どういうような状況で,今お話が推移されているのか。一方では,PFIであったりとか,コンセッション方式のような,これから新しく施設を作ろうというところは,これまでの従来の指定管理ではどうやら限界がきているんじゃないかと。民営の,民間が持っている力を発揮して,本来活発な管理運営をするというところが,むしろ先ほどから話があるように,赤字の穴埋めをするような,それぐらいの感じでもいいんじゃないかと。要するに,売上げを出したら,次の指定管理の予算というのに,いわゆる影響が出てくるというような形がある中で,この美術館運営制度研究部会の中ではどのような議論がされているかという点と,それから,実際文化庁の方で,今,公共文化施設に関する指定管理における状況というのを,もしよろしければお聞かせいただければと思います。このままの方法で指定管理をずっとやっていくのか,平成18年からずっと指定管理の制度というのが導入されていると思うんですが,それでうまくいっている事例というのもあると思うんですけれども,うまくいっていない事例の方が多いのではないかとちょっと考えたりしますので,その点お聞かせください。

【建畠全国美術館会議会長】  指定管理者制度は,スポーツ施設から動植物園,様々なところに適用されておりますので,全容を把握しているわけではございませんが,私ども美術館に関することだけ,それから,全国美術館会議で情報を把握している範囲で申し上げるんですけれども。かなりの部分が指定管理に移行しているんですが,まだ直営のところもございます。国立美術館は独立行政法人でございますし,私が今勤めています埼玉は,まだ直営でございます。指定管理はさっきおっしゃったように,民間的な経営手法を導入して,効率のいい運営をするということでございますが,そのことでかなり活性化しているというふうに思われる美術館もございます。例えば,金沢の21世紀美術館とか,横浜の美術館とか,厳しい財政状況に追われてはおりますけれども,内部に立ち入っているわけではございませんが,外から見ていると活発な,直営館よりも活発な運動をしているところもございます。
 ただ一方では,大きな問題とされていますのは,指定管理者制度は,指名の場合もあるんですけれども,基本的には2年,3年から長い場合は5年ぐらいで入札を繰り返すということでございますから,美術館の場合には安定的,継続的な運営母体が保証されていません。そういう意味では,3年で委託すると,2年目,3年目に海外の美術館と展覧会,巡回展を契約するときに,契約母体と運営母体が違ってしまっているというようなこともございますし,そうした継続性ということで大きな問題があると。
 これは詳しい導入の経緯は知っておりませんけれども,イギリスにならったと言われております。しかし実際には,イギリスでは指定管理者制度は結局サッチャーが最終的に美術館,博物館を除外したと聞いております。ともあれ,日本での適用は,必ずしも全てがうまくいっているわけではない。ただ,うまくいっている館もあります。いろいろな事例がだんだん蓄積されましたので,全国美術館会議としては,そうした事例を踏まえて,指定管理者制度の是非,あるいは改善点,あるいは将来性があるのかないのかということを検討していきたいと思っています。
 それからもう一つ,大きな問題は,国立の方は独立行政法人が導入されておりまして,今,地方独法の美術館への導入は,大阪市をはじめとして要求してきております。文化庁さんではお認めいただいても,なかなか総務省で許可されるには至らなかったんですけれども,ようやっと地方独法も美術館には認められるというので,大阪市の8館の1つのアソシエーションを作って指定管理者になっているんですが,それを独法に移行する準備を進めていると聞いております。
 独立行政法人の場合は,もちろんそれも民間的な経営手法を導入するということではありますけれども,先ほど申し上げた継続的,安定的な運営母体が保証されているという意味では,よりふさわしいのかなというふうに私は個人的には思っております。ただ,私は指定管理者制度の美術館に勤めた経験がございませんので,それも詳しくはそういう方から直接伺った方がいいと思いますが,全国美術館会議で把握している限りでは,そのような状況でございます。

【北風室長】  劇場,音楽堂等における指定管理の状況について,把握している範囲内でお答えをさせていただきたいと思います。芸術文化課の文化活動振興室長の北風と申します。
 今,美術館のお話でございました。あと劇場,音楽堂等の方でも,指定管理はかなり進んでおりまして,大体全国のほぼ半分の館で指定管理の制度が導入されているというふうに伺っております。当初は直営で始まったところが,徐々に外部の方に委託されて,指定管理という形で委託されているという状況で,指定管理と言いましても,全てのところが公募というわけではございませんで,大体委託先はある程度そういった指定管理を受けることができる能力がある団体といったものが大体指定されて,自治体が設立しているような文化財団が受けることが,第1期の場合は多かったというふうに伺っております。それが徐々に指定管理の制度が導入されてから時間がたちまして,公募といった形態での指定管理が最近は増えてきていると。
 その中で,美術館の方でも同じようなことが発言されましたけれども,そこで働く人たち,いわゆる指定管理を受ける団体が,必ずしも次の指定管理団体になれるわけではないということで,人的なつながり,継続的な運営といったものがなかなか難しくなっているというような課題がございます。簡単ではございますけれども。

【熊倉部会長】  劇場や公共ホールなどの指定管理者制度については,芸団協さんからも何かございますか。

【米屋日本芸能実演家団体協議会室長】  今の室長の御発言とかなり重複しますけれども,やはり問題になるのは,継続的に雇用ができないと。指定管理5年なら5年で,その先の雇用が保障されないということで,新しい人材を雇うことができないというのが非常に問題になっていまして,そういったところに優秀な人材はなかなか来ないとか,集めにくい。また,せっかく来てくれてもその先を保証することができないので,人が育てられないと。これが一番厳しいことではないかなというふうに伺っております。

【熊倉部会長】  はい,大林委員。

【大林委員】  建畠会長にちょっとお伺いしたいんですけれども,1点は,アーティストは頭脳流出という,正にそうだと思うんですね。これはマーケットとの関連性もあると思うんですけれども。やはりかなり日本の優秀なアーティストの方たちは,特に美術に関していうと,ニューヨークとかロンドンとかベルリンとか,そういうところに出ていってしまう。一方で,なかなか日本にやってきて,日本に住みたいというそういう人がいない。じゃあどうすればいいかということで,何かアイデアがあれば教えていただきたいというのが1点と,もう一つ,人材育成で,キュレーター,学芸員の方々について,何かステップアップの姿が見えないと,やっぱり学芸員の方たちも,なかなか学芸員になってここを目指そうというのがないような気がするんですね。
 というのは,例えばですけれども,海外なんかですと,ビエンナーレとかトリエンナーレを経験して,それから今度ステップアップして,次のこういうもののディレクターをやって,それからこういうところの館長であるとか。ですから日本も,例えば横浜トリエンナーレで何かする。それから次に,ベニスビエンナーレのそういうディレクターに選ばれる。そして,例えばキュレーター出身の館長がこうやって誕生するんだという,そういうのが出てこないとあれなんでしょうが,1つはいろいろ役所の管轄が違ったりとか,それからもう一つは市町村が違ったりとか,なかなかキュレーター出身の館長さんが割と少ないということもあるのかよく分からないんですが,どういうふうにして国際的なキュレーターを育てるか。やっぱりキュレーターの人たちが,日本のすばらしいアーティストを世界に紹介するという,そういう役目も持っていると思うので,そこについて何かアイデアがあればお教えいただきたいと思うんですけれども。

【建畠全国美術館会議会長】  非常に重要な問題を2つ御指摘いただきましたが,まず頭脳流出のことです。確かに頭脳流出自体は歓迎すべきことだと思うんですね。海外で日本の人たちが定住して活躍していると。これが双方交流になっていないという点が問題でして,同じように海外から日本に定住して活躍する人がいてくれれば非常に助長すべき方向なんですけれども,日本に,展覧会をやりにきてくれるアーティスト,コンサートをやってくれるアーティストはいるんですけれども,そのまま住んで日本を拠点に活躍するという人は余り見当たらないんですね。
 じゃ,どうしたらいいのかということですが,まず1つは,大林委員のような大コレクターが日本に多数いてくれれば,それに従って日本の画廊の活動も活発になってということでございますが,今のところマーケットを見ると,国立美術館はちょっと例外なんですけれども,私立,公立美術館は購入予算が軒並みゼロに近い状況で,どの画廊も美術館をターゲットに営業活動できないというような状況で,日本に来ても,あるいは日本でアートフェアをやっても,ほとんどはかばかしい売上げを上げられないと。
 そうした経済的な,構造的な問題は文化行政だけでは改められないでしょうが,先ほど申し上げましたけれども,アーティスト・イン・レジデンスという方法がありますので,3か月なり,短い場合は二,三週間ですけれども滞在して,制作して,発表して帰っていくという,それはある程度今でも別に構造改革しなくても,文化庁さんの助成なり,自治体なり,民間なりでできるかと思うんです。ただ,マーケットは全国美術館会議ではどうしようもないので,それはむしろ大林委員にどうすればいいんだろうと御教示を賜りたいところでございます。
 それから,もう一つの方のキュレーターの処遇の問題でございます。これも重要な問題でございまして,私が詳しい内容を知っているわけではないのですが,文化庁さんの方で美術館の制度の改変を目指したときに,学芸員を2種類に分けようじゃないかという議論,上級学芸員制度を作ろうとかいうようなこともございました。結局,大学の授業の単位数を少し増やすということで,抜本的な制度変革は起きなかったんですけれども,学芸員制度というもの自体が障害になっているという。これは普及期においては非常に重要だったんですね。単なる事務職員や行政の人たちを学芸員に登用するということを防ぐという意味で,学芸員は専門職であると認識するには意味があったんですが,それはここまで美術館が数多くなってそれなりに機能をしてくると,日本の今の学芸員制度でいいのだろうかと。
 例えば,海外と比較してもしようがないと言えばしようがないんですけれども,私も大学と美術館を行ったり来たりしているんですが,欧米での学芸員の処遇は,必ず個室があって,秘書がいてというような制度で,まあ,全ての国じゃないんですけれども,定着しています。そういう意味では,経済的にというよりも,社会的なステータスの問題かもしれません。
 それをどうしたら改善していくかということでございますけれども,難しいんですが,先ほど申し上げましたように,学芸員がステップアップしていくための方法の一つとして,私は個人的には大学と美術館が相互交流して対等の関係があるというのがいいと思うんです。あるところまでキャリアがいくと,美術館の中での館長への道が直接にはないので,大学にスピンアウトしていくということがある。でも,大学の先生が学芸員に転職するケースはほとんどありません。
 内部的に言えば,役所の昇進試験を受けないと,上の道が閉ざされてしまうとか,外に出るかわりに県庁に行って,県庁でステップアップして戻ってくるとか,そういうことがございまして,なかなか難しいんですが。ただおっしゃったように,私も学芸員の処遇や昇進のシステム,あるいは社会的なステータスというのに危惧を感じておりまして,何とかならないかなと。この全国美術館会議でも努力すべきことだと思っておりますし,青柳長官もよくそういう実情を御存じでいらっしゃるでしょうから,是非文化庁も一緒になって,そういうことへ取り組んでいただければと思っております。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。吉本委員。

【吉本委員】  先ほど指定管理のことで意見交換があったので,ちょっと情報提供なんですけれども。私が最近聞いた話は,今,指定管理が2004年からですから,多分3期目とか4期目になっていると思うんですけれども,だんだん指定管理が増えて,なおかつ民間事業者の数が増えてきていると。劇場の話なんですけれども,ということを聞きました。それで当初は,もともと財団を作って委託をしていた都道府県や政令市などの大きい都市が指定管理で,小さな市町村はむしろ直営が大変多かったんですけれども,今,小さな市町村から直営を指定管理に切りかえるケースが徐々に増えてきていると。これはやっぱり文化予算をなかなか確保できないというような状況があって,その中で効率的にやるとか,予算を切り詰めてやるというようなことがあるそうです。
 非常に生々しい話なんですけれども,そういうところに指定管理を受ける民間事業者の方が,うちならこの金額でできますよというのを耳元でつぶやいて,それでそういう安い,ちゃんとした運営ができないような金額が指定管理を受けているというようなところがあるというふうに聞きました。
 それから,民間事業者で複数の館を指定管理で受けると,1つのところにある作品を提供すると,それを全国に回しちゃうわけですよね。これは効率的と言えば効率的なんですけれども,それが果たして地域の個々の施設にとってベストの事業をやっているのかどうかというのは疑問になる点もありますので,10年以上たって,やっぱり指定管理は次の新しい状況になってきていますので,そのあたりは是非現状をしっかり把握して,非常に足元がどんどん揺らいでいくといいますか,基盤が緩んでいくような気がしますので,そこはしっかり調べてどう対応すべきかというのを検討したら良いのではないかなと思いました。今,1つ情報提供です。
 それから,美術館に関して,先ほど建畠さんから,公立の美術館はコレクションの予算が全くないということだったんですけれども,たまたま最近,世界で最も来場者の多い美術館と,世界で最も来場者の多い展覧会というデータを調べたんですね。そうすると,第1位はルーブルで970万人,次がメトロポリタンで600万人,次は大英博物館で500万人,テート・モダンで500万人,ナショナル・ギャラリーで500万人と続いていて,日本は東博が150万人で28位なんですよ。
 この圧倒的な差は何なのかなと思う一方で,でも単回の展覧会の入場者数,これは1日当たりですけれども,一番多いのは東京都美術館,マウリッツハイス美術館展なんですね。このあたりが日本の美術館の,これは海外から来た展覧会ですけれども,すごく表しているような気がして。やっぱり地理的な問題はあると思いますけれども,コレクションをしっかり作って,それを海外の方にもしっかり見ていただくというようなことを,是非国立美術館が本腰を入れてやるべきではないかなと思います。
 地域的な問題はありますけれども,ちなみにアジアで一番多いのは,第7位に台北の国立故宮博物館,400万人ということで,すごい人数を集めていますので,海外からの観光客数を増やそうという努力がありますので,そういうのと合わせて,国立美術館のもっとセールスをしっかりして,入場者数をがんがん増やしてほしいなと思いました。以上です。

【熊倉部会長】  そうですね,大体世界のそういう美術館でいいますと,やはり基本はコレクション展で,逆に特別展の方は難しいので,特に海外からの観光客の人は余り入ってくれないと,ルーブル美術館の人は嘆いていらっしゃいましたが。大林委員,そろそろお時間で。

【大林委員】  大丈夫です。

【熊倉部会長】  学芸員に関しては,劇場やホールなどが,まだ劇場法が必要なぐらい,専門の教育を受けた専門家の配置がほとんどなされていないのに対して,一応美術館の学芸員は,教育委員会なんかからも先生と呼ばれるんですが,ただ激務ですよね。最近は特に美術館の大衆化の世界的な傾向の中で,プロデュース能力などが求められるのに対し,いつでしたかね,2000年ぐらいの全国的な大幅な予算削減で,そういう外での対応能力,コミュニケーション能力,プロデュース能力のある学芸員の方から辞めていったのは,大変ショックでした。

【仲道委員】  まず,指定管理につきまして一言。全国回っておりまして,やはり民間の管理が入っているところは,大抵において地域性とはかい離している現状がありまして,それがいいのかどうかということが大きな問題になっていると,私は現場の実感として思っております。
 質問が3つございます。1つ目は,芸団協さんにでございまして,こちらは実演家の団体なんですけれども,伝統芸能の分野におきましては,例えばその周りの衣装であるとか,日本の伝統文化を担っている方たちが御一緒にいらっしゃると思うんですけれども,この方々は伝統文化の保存,継承ということにもつながると思うんですけれども,現状がどうなっていらっしゃるのかということと,どういうことが必要となっているのかということを伺いたいのと,それから,DAの大変感銘を受けました。わくわくするプレゼンテーションをありがとうございました。
 その中で問題となっているようなこととか,課題となっているようなことがどんなことが見えてきていらっしゃるのかということを伺いたいなと思います。
 次はもう一つ,これはどの方たちになるか分からないんですけれども,芸団協さんの中で,実演芸術の迎賓館というようなセンターがあったらというような御提案があって,大変すばらしいと思いました。前回のこういった会議のときも,日本に来た外国人の方が比較的安易にできること,お食事とかそういうことはまずするけれども,2回目に来たらしたいことということで,この日本の文化を見てみたいとか,何かを体験したいということがあって,1回目にはやはりできていないということがあります。きっと何かワンクッション,簡単にそれができないから,そこに滞りがあるのかなと思うんですけれども,そういったことがスムーズになるような仕組みといいますか,そういうことをできたらなと。これは質問ということではないのかもしれませんけれども,よろしくお願いいたします。

【米屋日本芸能実演家団体協議会室長】  では,まず1点目の伝統芸能の件につきましてなんですが,衣装,装束のようなものをどう継承していくかといった場合,個人所有の場合,相続税の問題であるとかいろいろございますので,その辺の減免というようなこともお願いしたりということもしてきたんですが,公益財団化がされているようなところに関しては,継承されていくのだろうと思いますけれども,そういった各流儀で持っているというようなものを超えて,もう少し広く伝統芸能で問題になっているのは楽器の問題でして,扱う方が非常に少なくなっているので,総体的に楽器が非常に高価になっていると。それで三味線の皮であるとか,琴の素材であるとか,そういったものが非常に貴重なもので,輸入もまたままならない,象牙を使っていたりとかというようなことがありますのでますます高くなるというところで,非常な悪循環で,楽器の問題をどうにかしてくれないかということはいつも聞いているところでございます。
 その元凶は何かと言いますと,畳の生活が我々の日常の中から失われてきて,少子化で,伝統芸能を習うという人が非常に少なくなってきておりまして,今,芸団協では実演家の実態調査をちょうどやっている最中ですので,また集計結果に出るかなと思っているんですが,継続的に伝統芸能に触れていこうという人が減っている。また,伝統芸能だけでなく,多分洋舞,洋楽といった楽器や踊りを,ずっと訓練を経てやっていくというような形で親しんでいき,専門家を目指すという人が随分減っているというのが,日本の芸能のかなりの危機になっているのではないかということがございます。
 最近では体験型のワークショップという形で,伝統芸能に触れる機会を提供しようというような施策を各自治体がお持ちになったりということも進んでおりますが,一過性に終わってしまって,その先,継続的に親しんでいく,継続的に追求していくというところまでいく人がなかなか出ないと。そこの環境は何かというと,楽器が高いとか,発表会にとてもお金がかかって,経済的に絶対無理であるとか,そういった障壁になっているように伺うところでございます。かなり構造的な課題になってきているのではないかなということがございます。ちょっと解決策までは御提案できないんですけれども,そういった問題があるということで,まず1点目の御質問です。

【熊倉部会長】  デザインアソシエーションさん,すみません。何か課題というものがありますかということでしたが。手短にお答えいただけると大変有り難いんですけれども。

【川崎デザインアソシエーション理事長】  先ほどもちょっと申し上げましたけれども,3月,4月,7月と海外を回りました。特にヨーロッパに行ってお話をいたしますと,どうも彼らは私に対して上から目線なんですね。これは私の英語力の問題もありますけれども,どうも上から目線で,デザイン,文化はヨーロッパが一番だと思っていらっしゃる方々が非常に多いです。私は,このWORLD DESIGN WEEK構想というものをお話をいたしました。そうしますと,俺も考えていたんだよ,このことは。異口同音に言っていただきます。皆さん御賛同いただき,拒否したのはシンガポールです。なぜか。俺がやりたかったと,そう言っていらっしゃいました。
 私は,アジアはアジアの文化があるじゃないか,日本は日本の文化がある。その文化というのは,それぞれの歴史の中から生まれたものなんだから,20世紀型のヨーロッパが中心ということは,私は捨てるべきだと。そうじゃなくて,もっと世界を1つにして,我々でいうクリエイティブ,こういう世界を作ろうじゃないかということで,課題として感じたのは,まだまだ我々は,日本は文化はすごいんですけれども,海外の理解度は非常に低いと,そういうふうに実感をいたしました。それが課題と言えば課題かもしれません。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。では,宮田委員,先ほど手を挙げられて。

【宮田委員】  ありがとうございます。久しぶりに前向きなお話を,川崎さんから頂きました。時々感じるのは,文化庁の皆さんに対する関係団体の皆様の御発言というのは,駆け込み寺に苦情を言い,助けてくれというようなお話が多いんですが,その中で川崎さんのお話というのは,結構小気味いいなという感じがしました。
 その中に言われているのは,結構現代目立った活躍をしている人と,これから目立つだろうという予測の人たち,その辺の人たちが非常にうまくピックアップされているなという感じがしました。これはそういう意味では,日本の文化を支える1つの支流になるかなという気がしています。これがあるのは,東京オリンピック第1回のときに,デザイナーとして亀倉雄策さんがポスターを作りました。あれがやはり世界に,日本のデザインがすごいということを言わせたような記憶が私の中にあるんですが。
 さあ,そうすると,ここまではとても素敵なことをやったし,天才の万博も面白いと思うんですが,2020に対してどんなことをお考えですか。2020,2回目の東京オリンピックに関してはどんなことを。

【川崎デザインアソシエーション理事長】  考えていません,まだ。ただ,先ほど申し上げましたけれども,スポーツでの世界という部分と,この文化庁さんが中心になられて,私は文化のオリンピックを是非やるべきだと。そこの中で,例えばイギリスはこの前,ロンドンオリンピックをやりましたね。ポール・マッカートニーも出ましたし,いろいろな人たちが出た。しかし,日本から何人がそこに参加したのかというと,定かじゃないんですが,私が調べた限りでは,イギリスの方々が中心だったと。私は,そうじゃないと。世界の方々を是非呼んでいただいて,やはり名実ともに文化のオリンピックにしていただければ,私は面白いと思うんです。それと,学生たちですね。学生たちをどれだけ動員するか,これが私はポイントだと思います。

【熊倉部会長】  まだ議論は尽きませんけれども,もう一つ議題もございますので,ヒアリングに関してはここまでというふうにさせていただきたいと思います。御発表いただきました団体の皆様,お忙しい中,本当にありがとうございました。おかげさまで大変有意義な議論ができたと思います。
 皆様方におかれましては,お時間などの御都合がおありでしたら,ここで御退席いただいても構いませんし,もしもお時間などありましたら,このまま引き続き私どもの文化政策部会をそちらの席で傍聴いただいても結構です。皆様に御礼を申し上げます。
 それでは,次の議題に移ります。何人かの委員の方々からも御提案を頂いておりましたが,第4次方針の策定に向けて,中身のある答申の執筆に向けてワーキング・グループを設置することで,この部会員の皆様の御了承は既に頂いております。今回資料2として,ワーキング・グループのメンバー(案)を御用意させていただきました。資料2のペラの1枚ですが,こちらの5名で進めさせていただきたいと思いますが,御了解を賜れますでしょうか。御異議がなければと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。

(「はい」の声あり)

【熊倉部会長】  ワーキング・グループの皆さん,忙しい年末年始になるかと思いますが,よろしくお願いいたします。
 では,ありがとうございました。それでは,前回の部会で委員の皆様方から提示された質問やスケジュール,概算要求などについて,事務局から説明をお願いいたします。

【平林課長】  それでは,お手元に資料3ということで幾つかとじたものがございますので,それをお開きいただければと思います。
 初めに,前回8月6日のこの部会におきまして,委員の先生方から御質問いただいた件につきまして御回答させていただきたいと思います。まず,1ページ目でございます。「文化」の定義についてというものを御覧いただければと思います。こちらですが,増田委員から,文化の定義について御質問を頂いたことを踏まえまして,現行の第3次基本方針,文化芸術の振興に関する基本的な方針を抜粋して作成した資料でございます。関係部分に棒線を引かせていただきました。文化芸術はという形で記述がございますが,最も広義の文化と捉えれば,人間の自然との関わりや風土の中で生まれ,育ち,身に付けていく立ち居振る舞いや,衣食住をはじめとする暮らし,生活様式,価値観など,およそ人間と人間の生活に関わる総体を意味するというようにございます。他方で,「人間が理想を実現していくための精神活動及びその成果」という視点で捉えた場合にはという形で,意義の1から5まで掲げてございまして,1つ目が,豊かな人間性を養成し,想像力と感性を育むなど,人間が人間らしく生きるための糧となるものということ。
 それから2つ目に,他者と共感し合う心を通じて意思疎通を密なものとし,人間相互の理解を促進するなど,共に生きる社会の基盤を形成するもの。3つ目として,新たな需要な高い付加価値を生み出し,質の高い経済活動を実現するもの。4点目で,科学技術の発展と情報化の進展が目覚ましい現代社会において,人間尊重の価値観に基づく人類の真の発展に貢献するもの。5つ目として,文化の多様性を維持し,世界平和の礎となるものというように整理をしているところでございます。詳細につきましては,お手元の資料を御覧いただければと思います。
 それから,次の2ページ目でございますが,本日も行っておりますが,関係団体への依頼事項についてでございます。こちらは湯浅委員から,発表いただく団体にどのような趣旨で依頼をしているのかというような御質問を頂きましたので,お手元の資料のように取りまとめたものでございます。関係団体の方々には,関係資料を事前に送付させていただくとともに,ここに3点ございますが,各団体のこれまでの活動内容や活動実績,それから現状における文化政策に対する認識。2020年,そしてそれ以降の我が国の文化政策への期待,こういった内容を中心に御発表していただきたいということを御依頼しているところでございます。
 委員からの事務方への御質問についての回答は,以上のとおりでございます。
 続いて,3ページ目を御覧いただければと思います。こちらは前回と同様に,今後の文化政策部会の検討スケジュールをまとめた資料でございます。本日第6回,9月1日ヒアリングとございますが,この先,第8回の11回までは,様々な団体の皆様方から,次期基本方針策定に向けて御発表を頂く予定にしてございます。その後,これらの内容を踏まえまして,先ほど御了承いただきました資料2の委員の先生方によるワーキング・グループで,答申の起草に向けた検討を行っていただく予定でございます。
 なお,御発表いただく団体につきましては,現時点での案を,次の4ページ目の資料のとおりまとめているところでございますが,並行して先生方に御推薦いただきました団体について,現在調整しているところでございまして,後日結果を御連絡させていただければと思います。スケジュールとヒアリング団体の詳細につきましては,この資料を御覧いただければというふうに思います。
 続きまして,5ページ目から9ページ目までは,この8月末にまとめました,平成27年度の文化庁の概算要求の概要資料をつけさせていただいております。併せて机上には,もう少し厚い,ポンチ絵のついた資料もつけているところでございます。
 まず初めに,5ページ目を御覧いただければと思います。世界に誇るべき「文化芸術立国」の実現ということで,文化を起爆剤とする地域と日本の再生というものを目指しまして,平成27年度要求として,今年度より182億円増,17.6%増の1,218億円を現在要求している。要求,要望ということを行っているということでございます。
 簡単に項目の柱を御紹介させていただきたいと思います。大きな柱は,全体では4つに分かれてございますが,まず1つ目の柱でございますが,豊かな文化芸術の創造と人材育成ということで,229億2,000万円の要求をしているところでございます。具体的には(1)と(2)がございますが,文化力による地域と日本の再生というのが1つ目の大きな柱。それから,(2)といたしまして,文化芸術創造活動への効果的な支援という形の支援事業。続いて,次の6ページ目に(3)がございまして,こちらは芸術家等の人材育成ということで,新進芸術家等の育成,あるいは子供の育成というのを掲げてございます。それから,同じ6ページ目の下の方に(4)がございまして,史上最大規模の文化プログラムを実現する。そのために2020年の文化プログラムに向けてというようなことで項目がございますが,これは最低にはなりますけれども,162.6億円の要求をしているところでございます。
 続きまして,7ページ目を御覧いただければと思います。2つ目の大きな柱といたしまして,かけがえのない文化財の保存,活用及び継承等というような柱におきまして,527億4,000万円の要求を行っているところでございます。
 まず(1)でございますが,文化財を活用した地域活性化方策への支援といたしまして,文化財総合活用戦略プランの創設を予定しているところでございます。それで141億円ということを整理させていただいております。この大きな2の柱につきましては,次の8ページ目に(2)として,文化財の適切な修理等による継承・活用等。それから(3)に,文化財の公開活用・伝承者養成・鑑賞機会の充実等というようにございますように,文化財の積極的な公開や活用というものを目指しているところでございます。
 それから,9ページ目でございます。大きな柱の3つ目でございますが,我が国の文化芸術の発信と国際文化交流の推進というようなことで,40億円の要求を行っております。
 こちらに2つ大きな柱がございまして,1つは,日本文化の発信・交流の推進ということ。それから2つ目として,外国人に対する日本語教育の推進といったものを一層進めることとしているところでございます。
 それから,4つ目の柱といたしまして,同じページの下の方に,文化発信を支える基盤の整備・充実といたしまして,約400億円の要求をしております。国立文化施設の機能強化等のための計上が中心でございまして,そちらについて392億円の要求ということを行っているところでございます。それから,一番下に※がございますが,これら以外に復興特別会計がございまして,こちらで国指定等の文化財の復旧など,30億円を要求しているところでございます。
 27年度の文化庁の概算要求の概要についての御説明は以上でございます。冊子の方にも幾つかポンチ絵等御覧いただければと思います。
 次に10ページ目を御覧いただければと思います。これまで委員の先生方には,2020年に向けて特に推進していくべき施策,それから,27年度概算要求を見据えて,早急に対応すべき事項等につきまして御発表いただきまして,そういった内容を先日,審議経過の報告ということで,本資料のとおりまとめさせていただいたところでございます。
 この審議経過報告の各施策と,今御説明させていただきました概算要求との対応を示したのが次の11ページ目でございますが,審議経過報告の各施策と概算要求との対応の資料になります。かなりざっくりと対応関係を整理したものでございます。例えば,審議計画の報告の各施策の一番上に,2020年東京大会での文化プログラムに向けてでございますが,こちらについては先ほどの概算要求資料でいいますと,6ページ目に1番目の(4)というものが該当するということで,その旨をこの概要資料との対応というように,1の(4)というふうに記載させていただけるということでございます。なお,今申し上げた5ページ目,9ページ目までの概算要求資料については,あくまでも主要事項をまとめたものでございまして,全ての概算要求の内容は,期待したものではございません。そのため,11ページ目の中には,※として概算要求資料には記載なしというふうにございますが,これは今,6ページ,9ページ目の中の記載はないんですけれども,概算要求自体は行っているというような意味でございますので,そういうふうに御理解いただければと思います。
 時間の関係で,詳細な説明ができませんで大変恐縮でございますが,お手すきのときにでも御覧いただければと思います。
 最後に,12ページ目と13ページ目に,今も申し上げました2020年の文化プログラムに向けて取りまとめた資料がございます。12ページ目にございますように,この資料,2020年までの目標といたしまして,魅力のある文化プログラムを全国津々浦々で展開するという目標に対しまして,それを次元するために文化プログラムの育成,それから環境整備,発信強化というものを重点施策として推進するということを取りまとめたものでございます。後ろの方に,どういうものを育成,環境整備,支援強化していくかというものを,具体的に記述させていただきました。
 また,併せて2020年を超えて,1つの目標として2030年には,真の文化芸術立国を実現するということを目指していこうというように考えてございます。資料3の説明は以上でございます。引き続き貴重な御意見をよろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。というわけで,こちらの概算要求は既に先週,財務省に提出されたものだそうですので,今更この予算配分だの中身だのに関して我々がとやかく言えるわけではないようですし,またこれから年末に向けての財務省との調整の中で,このとおりにいくかどうかはもちろん何とも言いにくいところなんですけれども。
 我々の議論はどこにいったのみたいなのに関しては,この11ページの方を見ていただいて,ただこれが多少削られたとしても,うまくこんなようなパターンでいったとして,その運用に関してもうちょっとこういうふうにしないと,今回ここで重ねてきた我々の議論が反映されないのではないかというような具体的な運用案ですとかに関しての御意見は,これからまだまだ反映されますので,是非そうしたあたりで,残り30分となりましたが,皆さんからいろいろ御質問,御意見などをいただければと思いますが,いかがでしょうか。

【太下委員】  本当は先ほどの団体の皆さんのプレゼンテーションにコメントしたかったのですけれども,進行上時間がなかったようですので,この場で今後是非文化庁さんに取り組んでいただきたいという意見を交えてお話ししたいと思います。
 5つの団体さんがいらっしゃったので,5つに分けてコメントをお話ししたいと思います。順不同でまいりますけれども,1つ目は,デザインアソシエーションさんが提案された天才万博ですが,すごく面白いなと思いました。ああいうわくわくするようなことを,オリンピックの文化プログラムの中でも展開していきたいと思った次第です。特にプレゼンテーションの画面で出ていましたけれども,GENIUSという背景にいろいろな職業がうっすらと書いてありました。先ほど宮田学長もおっしゃったとおり,1964年のオリンピックのときには,デザイナーという職業が社会の中で確立されたということです。では,2020はどうするのかというと,あのような様々な職業もそうですし,更に言えば,今はもしかしたら名前がついていないような職業もかもしれないですよね。そうしたアートとかクリエイティブに関わる職業というものがきちんと確立されることが必要だと思います。そのために何をすればいいのかというと,まずはそういう人材が活躍する場を作っていくということが,この文化プログラムの役割になると思います。
 これが1点目です。 2点目は,全国美術館会議の建畠会長からいろいろ御提案いただいた中で,寄附のお話がありました。デザインアソシエーションさんも寄附のお話はされていましたけれども,やはりアメリカと比較しますと,社会制度,又は宗教観の違いもあり,なかなか寄附というものが日本に定着していないということになろうかと思います。一方で,日本は御案内のとおり,世界で最先端の少子・高齢化の国という課題を抱えています。ただ,少子・高齢化という状況は,ポジティブに考えてみると,自分の持っている資産の受け取り手のない高齢者がこれから増えていくのだ,という状況だと私は思うのですね。
 そういうふうにポジティブに考えると,この資産を芸術文化のために寄附していただくという,そういう新しい流れをもっと作っていけないと思います。キャッチフレーズとして,例えば「税務署に金を残すのではなくて,文化に名を残そう」とか,ちょっと冗談めいてはいますけれども,そういう社会運動みたいなものを作っていけないかと考えています。そのためには,自分の遺産を文化のために残したことで,それがとても素敵だねと言われるような事例が幾つか出てくると,では私もそうしてみようかなという人たちが続いて出てくると思うので,そういう良い事例を作っていくモデル事業的なものがうまくできないかなというふうに思っています。これが2点目,寄附の問題です。
 3点目は,日本レコード協会さんからいろいろ御説明いただきました。一方でデザインアソシエーションさんから,天才歌手の朝崎郁恵さんの御紹介がありましたけれども,流行の音楽,最先端の音楽だけではなくて,我々の根っこにあるルーツミュージックをきちんと見直していくということも必要ではないかと思っています。今日,沖縄から平田さんも来られていますけれども,沖縄にはそういう文化資産がたくさん残されているわけですね。そして,それが単に復古的な価値ということだけではなくて,現代に生きる我々の心も打つし,世界の人たちにも訴えかける力が大いにあると思います。であれば,こういうルーツミュージックの国際的な音楽フェスティバルを日本で開催してもいいのではないかと私は思っています,また,そこに新しいマーケットを作っていくということもできるのではないかと思います。ヨーロッパでいえばWOMEXのようなイベントです。WOMEXは,かなり大きな経済活動にもなっていますので,このアジア版を是非検討していただきたいと思います。実際国際的なフェスティバルという項目も上がっていますので,是非そういう中で御検討いただければと思います。これが3点目です。
 それから4点目,VIPOの石川事務局長からもいろいろ御説明いただいた中で,人材の確保・育成という項目があがっていました。映画という産業分野で捉えてしまうと,これは経済産業省さんのマターになってしまうと思うのですけれども,もっと広く捉えて,文化的表現としての映画,映像のための人材の育成と位置付けると,私は義務教育に映像教育があってもいいぐらいではないかと考えています。御案内のとおりインターネット,特にYouTubeが広く普及する中で,従来はテキストベースで我々がいろいろな知の情報を継承して保存したりしてきた活動が,映像が知の体系の基本になるような時代がやってくるのではないかと思っています。そういった意味でも,是非子供のうちから映像のリテラシーを養成していくということが,非常に重要ではないかなと思っています。
 イギリスでは,さすがにまだ公教育は入っていませんけれども,子供たちに映像リテラシーを養ってもらうような活動をしている,ファーストライトというNPOがあったり,様々な動きが起こっています。ですので,日本でも,いきなり義務教育は無理としても,映像教育を子供たちに届けるような仕組みを,例えば文化庁さんで実施されている派遣事業の中で検討されるとか,そういう仕組みがこれからは必要ではないかなと思いました。これが4点目です。
 最後に5点目ですけれども,芸団協さんからいろいろな御提案を頂きました。芸団協さんが今までずっと御検討されていたエッセンスを頂いたと思います。御提案は全部そのとおりだと思いますし,全部実現できればいいと思います。その中で1点だけコメントさせていただきますと,芸術文化振興基金部のPD,POの専門性を高め,専門助成機関の確立をという項目があります。いわゆる日本版アーツカウンシルの確立かと思います。これはそのとおり,是非やっていただきたいと思います。
 一方で,特にオリンピックの文化プログラムを全国的に展開していくという状況を考えた場合,霞が関で一元的にそれらを全てコントロールしていくという状況は,私は非常に難しいのではないかと考えています。恐らく地域ごとに様々な中核的な機関がそれを担っていくということが現実的な形ではないかなと思っています。
 御案内のとおりイギリスでは,アーツカウンシルという組織が国全体をカバーしています。例えばスコットランドでは,分権化が進んでおり,アーツカウンシルという名前を使わずに,クリエイティブスコットランドという名称になっています。そういった意味では,日本においても中央集権型にするのではなくて,アーツカウンシルの動きに関しても,地方をきちんと見据えて展開していく必要があると思っています。ですので,文化庁さんの日本版アーツカウンシルの取組は文化庁さんとしてどんどんやっていっていただくとともに,並行して地域版アーツカウンシルをうまく立ち上げていき,それを側面から支援していくという動きを,是非早々にしていただければと思っています。それが正に全国で文化プログラムをうまく遂行していくための一番の基盤になるのではないかと思っています。以上です。

【熊倉部会長】  11ページの表を見て今気がついたんですけれども,アーツカウンシルに関しての取組は,特に今回概算要求の中ではないんでしょうか。私が見落としているのかな。

【平林課長】  御存じのように,今国の方で試行しているところでございまして,来年度につきましても,予算としては机上配付している冊子の方の3ページ目には,日本版アーツカウンシルの試行的導入という形で1億3,500万円を現在計上しているという状況でございます。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。お待たせいたしました,相馬委員。

【相馬委員】  直接概算要求の質問,コメントではなくて恐縮ですが,先ほどのヒアリングを受けて,実は建畠さんに御質問させていただきたかったんですけれども,お帰りになったようなので,ちょっとふわっとした質問というかコメントになるかもしれませんが,できれば文化庁のどなたかにお答えいただければなと思って発言させていただきます。
 今日の様々な方々からのコメントでも,やはり日本から世界に文化を発信していく,それを戦力にしていくという話がたくさんありましたけれども,今後そういったものを強力に推進していくに当たっては,日本における表現の自由ということをもう一度確認していく必要があるのではないだろうかということを思っておりまして,最近でも愛知県立美術館でしたでしょうか,鷹野隆大さんというアーティストの作品が,率直に申し上げて性器の露出のある写真を展示したところ,市民の方から通報があり,そして結果的に県警がやってきて撤去を求めて,作家側はそれを拒否する形で写真の上に布をかぶせるというようなことがありました。
 こういうことが美術館の現場を束ねていらっしゃる方々の立場から,どのような美術館側からの動きがあるのかというのを,今日お伺いしたかったんですけれども,お帰りになってしまったので,私から問題提起といいますか,是非今後こういった場で考えていく1つの議題として申し上げさせていただきたいんですけれども。実はこれは今回,このような形で可視化され,アート界では割と大きな議論にはなっていますけれども,これは本当に氷山の一角であって,可視化されないものはたくさんあるわけですよね。それが美術館ですとか劇場という,芸術活動が行われるという前提の場で,そういった直接的,間接的な様々な性的な表現があるというときに,それを当然今の刑法でいいますと公然わいせつということかありますので,どうしても犯罪性を認められるというふうに判断されてしまえば,やめざるを得ない状況があります。
 しかしながら,今,様々なこれまでの判例でもそういった見解が出ているので,表現の現場の側も自主規制といいますか,ここでトラブルが起きるとよくないということで,そういった表現を取り下げるであるとか,あるいは演出家やアーティストに頼んで事前に削除してもらうということも,実際に起こっていると。ですが,今後日本から世界に発信していく,更には日本が世界から尊敬される文化国家のモデルを示すというときに,このような問題が解決されないまま,オリンピックの文化プログラムに向けて走っていくというのはなかなか厳しいものがあるのではないかと思います。
 実際にアーティストは,先ほど建畠さんからお話もあったように,どんどん世界に出て世界で発表している中で,世界の大抵の場所ではできることが,日本ではできないという,ホームではできないというようなことが,今,現実に起こっているというところで,いきなりラディカルな判例を作って社会的な議論にしていくという急進的な方法でなくても,芸術文化に関わる現場と,あるいは文化庁さんとが一体になって,何かしらそういうステートメントを出していくですとか,ガイドラインを作るというような働きかけをしていくことによって,何とか表現の自由というものの在り方を,もう一度パブリックな議論にできないだろうかということを思います。

【熊倉部会長】  そろそろよろしいですか。趣旨は何となく分かったんですけれども。

【相馬委員】  はい。これを質問という形ではちょっとお答えいただけるか分からないんですけれども,こういった審議会の場で,是非検討していただく議題の1つにできればと思うんですけれども,いかがでしょうか。

【熊倉部会長】  行政の方はなかなかお答えいただきにくい問題かなというふうに思いますが,ほかの委員の方々はいかがですか。私は先ほどの建畠さんもおっしゃっていましたけれども,学芸を含めたコンテンツを選ぶ側の専門職の,まず1つの企画の中においての数の少なさ,立場の弱さと,あとは世論に対する文化芸術事業全般の表現の自由に関するぜい弱さという問題は,政府がどうこう言うだけの問題でもないかなという気はするんですけれども。委員の皆様方,いかがでしょうか。

【青柳長官】  よろしいでしょうか。これは長官というんじゃなくて,私個人なんですけれども,実は去年,ブリティッシュミュージアムで,日本のすばらしい春画展が開かれました。これはコレクションは日文研が持っている,あそこに早川さんという春画等を専門に研究している研究者と,それから,向こうのブリティッシュミュージアムのティム・クラークさんという学芸員の方が。それで展覧会の構成は,日本のものが半分強ぐらいで,それでブリティッシュミュージアム等のコレクションを集めて,すばらしい展覧会で,カタログも大変学術的なもので。それを日本の方が,たしか2,000万円ぐらい寄附して,それをブリティッシュミュージアムで成功したというか実現して。ですから,その後日本に持ってこようということで,これは私,文化庁になる前なんですけれども,いろいろなところに関係機関,あるいは関係美術館にお願いをしたんですけれども,結局実現できませんでした。
 そのときに感じたことは,官の方でどうこうするというよりも,やっぱり我々――我々というか一人一人の市民の方々の認識がどれだけそういうものに対して芸術性が,美術品だけれども,今は日本社会では禁忌になっている部分をどれだけ許容するかということのいろいろな議論や,あるいは少しずつ間口を広げていくとか,やっぱりかなり時間を使って社会的な合意を形成していくということが,一番重要なことじゃないかなと,文化庁に来る前にそれを実現したいと思っているときに,いろいろな場で感じた印象でした。

【熊倉部会長】  じゃ,別のテーマでの質問ということですか。はい,分かりました。ほかの意見に移させていただいてよろしいですか。武内さんが手を挙げていらっしゃったので。

【武内委員】  すみません,予算案に関わらない部分もあるのですけれど,先ほど指定管理者というお話が出たときに,すごく皆さん反応されたというか,たくさんのお話がありましたので,少しだけ触れて。私ども,逆に指定管理者に手を挙げるという仕事を幾つかやっています。実際は会議施設が多いのですが,中には科学館とか博物館系,又は,美術館にも関わることがあります。そういった中で,やはり民間がやることは問題という御指摘も時々あるのですが,大体指定管理者の選定ポリシーとして,コスト削減というのが大いに強調されまして,「それが民間活用の意義」みたいなことになるので,それをいかに実現していくかということ。かつ,更新のたびに指定管理料が下がるというのが,一般的な状況でして,これをどうしていくか。民間ということをいかに活用してやっていくかということになりますと,寄附を民間で求めるって結構難しいかもしれないのですが,テーマによってトライするとか。あと,リスクがとれるということで申しますと,そういった経営の在り方と,いろいろな営業ができるという民間のメリットを生かした活動をしていく。
 今回の予算等に関連しますと,指定管理者は基本的には地方自治体から受けるというのがベースですので,地域を元気にするため,運営と,施設のテーマに適した自主企画的なものをどういうふうに結び付けていくか。何とかコストをやり繰りしてやっていくために考える工夫にプラスして,そういった国の動きから,地域,主には地方自治体の方とやりとりをすることなんですけれども,こうした文化に関する今後の動き,それは地方自治体との連携,企画から,何とかコスト削減を営業でカバーしてやれるようなプログラムが積極的にできると,地域を元気にするということに結び付くのかなと思いました。
 また,先ほどやはり美術館の点で,企画と運営の期間が合わないというお話があったのですが,正に他でも同じような話,MICEの場合も,国際会議を誘致する期間と指定管理者として運営している契約期間が合わないということがよく問題になって,今は文化庁様のプログラムの問題なんですけれども,内閣府様に言うべきか,何とか担当期間を対象のテーマに沿って館の在り方によっては,例えば10年にしてくださいとお願いしています。大体は,今の期間はおっしゃったとおり4-5年ということになっておりまして,長期にわたって考えられると,雇用の点とか,「文化」のような長期にわたって検討が必要となるプログラムに関してはより良いのではないかということで,働きかけを是非したいと思っております。

【熊倉部会長】  指定管理の期間に関しては,どうですか。

【武田委員】  傾向としては,地方自治体さんの方で,大体4,5年が多いという状況です。少しずつ延びてはいるのですが。最初は3年というのも多くありました。

【熊倉部会長】  これは,指定管理者よりも,設置主体の側の政策やポリシーによるところが大きいと思います。東京都なんかは8年間で8館一括ということです。次回も同じかどうかは分かりませんけれども。
 はい,ありがとうございました。じゃ,吉本さん,お待たせしました。

【吉本委員】  先ほど太下さんからアーツカウンシルのお話が出て,私もそれは大変賛成で,是非推進していただきたいと思います。それでこの予算要求の概要の3ページ目に,日本版アーツカウンシルの試行的導入で,取組は一層推進していると書いてあるんですけれども予算は減っていて。それでこの政策部会でも,アーツカウンシルを本格化すべき,今,試行段階のものをですね。そういう意見が多くの委員から発せられたと思いますので,ここは国のアーツカウンシルを強化しつつ,地方のアーツカウンシルも併せて推進をして,日本全体としてそういう仕組みになっていくべきかなというふうに思います。国だけで強化していく,国で全部ってやはりできないと思うんですね。ですから,沖縄の平田さんもいらっしゃいますし,それから東京の三好さんもいらっしゃるので,既に先行しているところの御経験とか課題とかがあると思いますから,そういうのを是非全国でシェアしていただきたいなと思います。
 最終的には相当時間が掛かると思うんですけれども,国で全部判断するのではなくて,例えば沖縄の助成金ですね。国の助成金で沖縄県の団体が受けるものについては沖縄で判断するとか。つまり,東京のプログラムオフィサーが沖縄で幾らかかるんだろうと考えると,それは資金になった方がいいと思いますので,一見都道府県単位でやるとちょっと大変だと思いますけれども,ある地域,例えば九州・沖縄地域とか,何かそういうふうなものができてきて,それで国と連携をすれば,逆に芸文振の機能強化,組織強化をそんなにすごく拡充しなくても,ひょっとしたらできるかもしれない。そんなデザインを描きながら,ここのところは強化をしていくといいかなと思いました。
 それが1点と,もう一つは,この資料3にオリンピックのことが出ていまして,文化庁さんは3つの重点施策でいこうということなんですが,今,いろいろなところで2020年のオリンピックで文化交流をやろうという検討が始まっています。もちろん東京都もやっておりますし,それから,京都あたり,京都府,市が一緒になって何かやろうと。だけど,肝心の組織委員会が全く動いていなくて。ですから,東京都では評議会を検討していますけれども,それが最終的にオリンピックの文化プログラムになるかどうかは分からない状況なんですね,今。同じように,都道府県とか市町村とか,あるいは民間企業などでもそういうことをやろうというのが随分出ているんですけれども,どこかで交通整備をして,組織委員会が本格的に動かないと,どんどん混乱が助長していくだけのような気がするんですね。
 ですので,その辺は文化庁さんが是非音頭をとっていただいて,全国のそういう動きを,文化庁が集約をするということは恐らく無理だと思いますし,望ましいことじゃないと思うんですけれども,組織委員会がとにかく動いて,そこの中で検討されていかないと,組織委員会の予算もつかないし,それから,オリンピックとすら言えないという,IOCの非常に厳しい規定がありますので,そのあたりの交通整備が必要かなと思います。
 ロンドンのときも,各地で4年前からいろいろな動きが立ち上がって,オリンピックプログラムでい続けるために,彼らはインスパイアという枠組みを作って,ロゴはオリジナルのロゴなんですけれども,オリンピックマークのついていないインスパイアと書いてあるロゴを開発して,それに各地が手を挙げてオリンピック文化になっていったんですね。それが逆にまた今度はいろいろなことがあり,ある方に聞くと,IOCはロンドンで作ったインスパイアの仕組みというのは,IOCの規定上,ロンドンのときはそれはオーケーな仕組みになったそうなんですが,もうそんな穴はふさがれているそうなんですね,規定で。それぐらいIOCは厳しいので,そのあたりは是非文化庁さんに組織委員会とうまく連携しながら,全国で起こっている動きをうまくコーディネートするようなことも期待したいなと思います。以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。佐々木先生。

【佐々木委員】  手短にいきたいと思います。今,太下さんと吉本さんの方から出ましたけれども,アーツカウンシルの試行段階を早く終わってほしいと思うんですね。つまり,2020年には確立していると。あるいは,もうちょっと前に確立すると。その確立ということと文化プログラムに関する責任の主体がはっきりしてくることというのが,多分大事なのではないかなと思っていまして。恐らくいろいろな動きが強まるだろうけれども,しかし文化庁としては,ここは決して譲らないというか,それを是非お願いしたいです。
 先週,大阪でアーツカウンシルの議論をしたときに,様々な自治体レベルの多様な動きがあって,これは本当にアーツカウンシルと呼べるのかというような疑問が出るようなタイプのものもあるわけです。ですから,やはり国が確立をしていって,その水準に合わせて地方で作ってくるというのがはっきりしないと,名前だけ一人歩きしていって,実は単なる文化事業の評価のみを行うような,そして予算カットにつながるような方向にいかざるを得ないというような危惧もあるわけです。そういった意味でいくと,国の制度がきちっと確立しながら,同時に先ほど出たように,広域ブロックのところで企画・立案をできるようなタイプがいいと思うんですが,その構想が出ていないんですね。その構想というのは,これはワーキングではないのかもしれないけれども,日本のアーツカウンシルって一体どういう姿が望ましいかという議論を,専門的に立てながら進めないと間に合わないのではないかと思っています。私も実は関西で,どう広域的に企画立案するかということでちょっと悩んでいることがあるので,是非よろしくお願いします。

【熊倉部会長】  そうですね。ちょっとこの概算要求を見ると,これまでどおりの金額のような気がしてしまって,ここまでの議論で,文化庁さんがもちろん今,試行をしてしまっているがゆえに,それをそうそうなかったことにはもちろんできないと思いますし,それはそれなのかどうかという仕切りがまだもう少し時間が掛かるのかなと思いつつ,政策部会で出てくるアーツカウンシルという言葉がもたらすイメージや可能性の幅の広さと,現行の試行されているものとのギャップの大きさを,ちょっと少しずつ埋めていく場が,もしかしたらちょっと政策部会では大き過ぎるかもしれませんが,今後少しそういう時間も設けていかなければいけないんじゃないかなというふうに感じております。
 ちょっとお時間なんですが,せっかく御出席いただいて,一言ずつぐらいと思いますので,紺野委員,お願いします。

【紺野委員】  よろしいですか。では,30秒だけ。本日,皆様のプレゼンを拝聴させていただきまして,ありがとうございました。その中で感じたことは,よりよいプレゼン力,スピーチ力の大切さということです。シンプルな分かりやすい言葉,聞きやすい発音で,いかに人をひきつけるかということが,これからますます重要になってくると思います。そういった中で,例えば芸団協さんなどに講師としてプロの方を招いていただいて,一般の政財界の方に向けてのワークショップであるとか,そういったものに皆さんも参加していただけると,それがひいては世界の人々をひきつける,日本全体の魅力になるのではないかというふうに思いました。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。三好委員。

【三好委員】  ありがとうございました。予算の方の関係で,大きな柱の4つのうちの2番目の文化財の保護,活用で,その1番目の文化財の活用の戦略プランというふうに大きく組みかえられたと。これは非常にいいことだと思います。是非文化財を地域でもっと地域のものとして使っていくということを,是非積極的に進めていただきたい。それが事務局の御説明の最初にあった文化の定義の中にも,共に生きる社会の基盤を形成するというのがある。そういう意味では,文化財というのは正にそういうものであると思います。
 その上で是非お願いしておきたいのは,これは予算の要求の説明ですので,どうしても予算となると,地方自治体を通じてということが非常に大きくなるし,今回もジャパンヘリテージも,地方公共団体が計画するようなことを書かれていますけれども,その際,是非お願いしたいのは,例えば複数の市町村が広域でやるということも,是非積極的にやってもらいたいし,もう一つ,逆に集落とか,もっと小さい地域単位のことにも是非目を配っていただきたいというのと,3つ目には,やっぱり市町村でなければできないのは,条例の制定権を持っている。文化財関係,結構法律がいろいろあるので,例えば建築とかほかの法律もいろいろあるので,是非条例でそういうことをうまく使えるような,そういう法律と条例の関係の整理というのも,是非この際併せてやっていただきたいと思います。今回,予算の説明ですので,法律部門の話まで出てきていませんけれども,そういうことも併せて考えていただきたいということでお願いしたいと思います。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。今日はもうちょっと時間がなくなってしまいましたが,是非皆さん,今回の概算要求に関して,案外さらっと読むと,我々が話したこと,ほとんど具体的には反映されていませんので,いや,文化庁さんはしたとおっしゃっている,いや,するつもりとおっしゃっているので,そこのところをまた次回も立ち戻って,もうちょっと細かい議論もした方が,ここでただ文化政策部会,言いっ放しの議論ばかり続いていてもしようがないかなと。
 それから,今日は残念ながら増田委員いらっしゃいませんで,今日,御丁寧に御説明を頂いたんですが,文化の定義ということは,基本的に専門家の間では,個々個別に自分の研究対象において何を文化と称するのか決めろというのが常識で,世界で最も定義の難しい概念というふうに,多くの哲学者や社会学者が言っておりますので,それを行政や法律,一時の政府がどうのこうのというべきではないと思うんですが,でも多分,増田委員の御趣旨は,前回,あるいは前々回に大林委員もおっしゃっていらしたように,限られた予算の中で,今日華やかなお話がたくさんありましたが,経済産業省のクールジャパン政策で500億円ですよ,それ1本で。文化庁の半分ですよ。
 ですので,クールジャパン政策2本分しかない予算を,どこに重点を置いて,どう設計をしていくのかというのが,我々の最大の役割だと思いますので,そこのところで,だからどこまで広げるのと。いわゆるコンテンツやデザインという,これまで経産省が扱ってきたものを,あるいは文化庁としてどう捉えて,どういうふうに推進をして,どういうバックアップをしていくのかというようなことを,少し4次答申,基本方針に向けては合意形成をしておかないと,ものすごくあやふやな言葉でしかワーキングの中でも語れないかなと。あるいは,もちろんワーキングの方でそれを提案させていただいて,皆さんの中で年明けにもんでいただくというようなことになろうかなという感じが,ここ数回の文化団体の皆様方のお話を聞きながら感じた次第です。
 すみません,仕切りが悪くてちょっと延びてしまいましたが,本日の審議の方はこれで終わらせていただきます。お戻しします。

【内田調整官】  どうもありがとうございました。次回は,10月27日の15時から,そしてその次ですけれども,11月10日月曜日,15時からを予定しております。引き続き団体の皆様からのヒアリングなどをさせていただきたいと思っております。また,第3次基本方針のフォローアップなども同時にさせていただきたいと思っておりますので,引き続きどうかよろしくお願いします。本日は,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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