文化審議会第12期文化政策部会(第7回)議事録

平成26年10月27日

【内田調整官】  お疲れさまでございます。定刻ですので,始めさせていただきたいと思います。
 まず開会に先立ちまして,配付資料の確認からさせていただきたいと思います。
 まず,座席表と議事次第,名簿がございまして,資料1が,本日の各団体さんからの発表資料でございます。中身といたしましては,1つ目が「産業文化を観光・交流資源に」という見出しの横長の資料でございます。そのほか,「第4次基本方針に関する意見」という見出しの横長の資料。「第4次基本方針策定に係る各施設意見集約」という見出しの縦の資料。ファッションウィークさんの横長の資料,「歴史の町並み」という青色のパンフレットでございます。
 資料2-1といたしまして,事務局資料丸1という資料がございまして,資料2-2といたしまして,事務局資料の丸2という資料がございます。
 以上のほか,机上の右側には,紙ファイルの基礎的な資料を束ねたものを置かせていただいております。
 さらに,先ほど皆様から頂いた資料として,幾つか配付させていただいているものがございまして,まず裏千家さんからは,茶道の道について記していただきましたA4の横の1枚紙の資料でございます。それと,ファッションウィークさんからは,ファッションウィークのオフィシャルブックでありまして,さらに,平田委員から2種類,青と赤のチラシ,それぞれ1枚紙でございますけれども,それぞれ組踊,それとMusic from Okinawa,その2種類の資料を配付させていただいております。
 机上に置かせていただいている資料は以上でございますので,過不足がありましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,部会長,よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】  はい。ありがとうございます。
 それでは,ただいまより,文化政策部会,第7回を開催させていただきます。
 本日は御多忙のところ,ゲストの皆様,委員の皆様,お集まりいただき,誠にありがとうございます。
 本日は,前回,前々回からの引き続きで,前半に文化芸術団体へのヒアリングとなっております。本日は,5団体に御出席いただいております。皆様方,大変短い時間で恐縮ですけれども,是非御意見を賜れればと思いますので,よろしくお願いいたします。
 また,ヒアリングの後,本日の後半は,現行の基本方針である,第3次基本方針について,河島委員からチェックをしなくていいのかという御指摘が随分前に,春先にあったのが,ようやくかないまして,第3次基本方針について,簡単にまとめていただいております。そのレビジョンを,少し時間を取ってしていきたいと思っております。
 また,その中から,次期の基本方針に向けた論点などにつきまして,説明を頂きながら,委員の皆様と自由討議を行っていきたいと思います。
 それでは,早速ヒアリングに入らせていただきます。
 最初に,日本観光振興協会様,よろしくお願いいたします。

【丁野日本観光振興協会常務理事】  はい。皆様,こんにちは。御紹介いただきました,日本観光振興協会の丁野と申します。
 ふだんは,協会の中に研究所がございまして,そこでいろいろな観光関係の調査研究活動をやっております。今日は,こういう場にお招きいただきまして,大変光栄でございますが,私どもの活動の紹介,それから,文化政策の課題等について,大きくは2つのテーマについて,お話をさせていただきたいと思います。ほとんどは私どもの活動の紹介ということになろうかと思います。
 お手元に,「産業文化を観光・交流資源に」と書いた資料を配付していただいております。冒頭に,フランス式の繰糸機,岡谷の蚕糸記念館が8月1日にシルクファクトということで,改装オープンいたしまして,その中に,明治5年の富岡にありました繰糸機が岡谷の場所にあるということでありますが,この話をしていますと,また長くなりますからやめておきますが,お手元の資料で御説明いたしますが,2ページ目に,きょうのお話の骨格を書かせていただきました。
 20枚ちょっとありまして,15分でしゃべらなければいけないので,1枚当たり,平均40秒ぐらいでお話をいたします。よろしくお願いします。
 最初に,私どもの活動の取組からということで,ここには産業文化財という言い方をしていただきましたが,私どもの産業観光という活動を,1990年代の半ばぐらいから続けてきておりまして,その産業観光についてのアウトライン。
 それから,産業文化財を,観光まちづくりへ。別に観光はなくてもいいんですが,まちづくりに使うための点から線への展開。
 そして,3つ目には,観光ということになりますと,やはり物語化というんでしょうか,ストーリーが大事になってまいりますので,その辺のストーリー化をどう進めるかといったことについて,お話しいたしたいと思います。
 最後に,文化政策の課題についてということで,これは1枚ペラしかありませんが,そんなお話をさせていただきます。
 最初に,3ページなんですが,私どもの活動の取組からと書いてございます。活動自体は1990年代から,いわゆる産業遺産とか,現役の工場,工房みたいなところを活用した観光交流の取組を開始いたしましたが,私は,実は日本観光振興協会に参りましたのは,かなり遅れてからでありまして,2004年に観光協会に移りまして,全国産業観光推進協議会という,全国の産業観光に取り組んでいる市町村の首長の連携会議のようなものを作りました。
 そして,2005年からは,こういう政策を推進するための産業観光推進会議,座長は元経産省の事務次官をやっておられました福川伸次さんに座長になっていただきまして,第4次までの活動を展開してまいりました。
 そして,実はこの11月に,最初の絵にありますように,全国産業観光フォーラムに,秋田の小坂,これは小坂鉱山です。ここで大会を開催いたします。14回目になりますが,これに合わせて,これまでの活動を取りまとめて,産業観光の指標という本を出版しようかと思っている。いきなり最初からPRですが,そんな活動をやっております。
 それから,次のページでありますが,「『産業文化財』とその活用」,ここは本当に説明に当たるような部分なので,ざっと文字を追い掛けていただければと思います。
 「産業観光とは何か?」というところに,2番目に書かせていただいたんですが,歴史的文化的価値のある産業文化財,遺産とか,古い機械器具,それから,稼働中の生産現場,工場,工房,その他生産物。こういうものをコンテンツにした,新しい交流形態というものを,広く産業観光と捉えております。ただ,最近は,特に一次産業,二次産業,サービス業,非常に広範囲の産業を対象にするようになったということであります。
 続いて,5ページでありますが,産業観光の発祥というのは,実はどの辺にあるのかというのがありまして,フランス辺りが,今で言うMICEの感覚で,これは1950年代なんですが,日本で言う経団連とか,経済同友会のようなところが,国内製品を海外に展開するための便宜を図るといった活動から始まったと,俗に出発点でありますが,私は更にさかのぼりまして,1851年のロンドン万博が,要は鉄とガラスのミュージアム,水晶宮というものがあったわけでありますが,これが世界初の産業革命を達成したイギリスが,世界に国の光を見ていただくという意味合いで始めたものが,実は産業観光の発祥ではないかと思っております。
 それから,正に150年後ですが,名古屋で「愛・地球博」という国際博が開かれたわけでありますが,このときに,いわゆる中部エリアというのは,日本一の製造業出荷額を誇っておりますが,いわゆる観光資源というのは,名古屋城の金のしゃちほこしかないということで,当然,世界からいろいろな方々をお迎えするのに,これではいかんということで,トヨタをはじめ,各社が非常にすぐれた民間のミュージアムを持っておりまして,そのミュージアムの二十五,六館でネットワークをして,そこから産業観光をスタートしようと。つまり,世界の方々に中部エリアの日本の製造業の現在を見ていただこうということで始めたのが,実は,日本における産業観光の最初の出発点だったろうと思います。
 それから,6ページになりますが,産業観光と一口で言いましても,1960年代から70年代というのは,まさに興廃が激甚だった時代であります。この時代は,企業の,ある意味,社会的な広報PR活動の一つとして,つまり,うちの製品は非常に安全だとか,あるいは公害を出していないんだという意味合いで,第一世代の産業観光が始まったわけですが,第二世代が1990年ぐらい以降からと思っております。私は,そのエポックは,原爆ドームが世界遺産になった1996年とか,文化庁が登録文化財で,「活用なければ保存なし」という,非常に有名なフレーズの提言をされたわけでありますが,その頃が,ある意味,「眼差しの変化」と書いていますが,私たちが近代に対する眼差しを大きく変えた転換点だったのではないかと。
 そして,2004年には,政府が観光立国推進会議で産業観光ということを含めた提唱を行ったという辺りが大きな引き金になって,産業観光が大衆化していく。つまり,どんどん数が増えて,団体バスで工場を訪れるという現象が,この頃から起こってきたわけです。
 ところが,今,どうも第三世代に入っているのではないか。1つは,単に,今ある工場とか工房を見ていただくのではなくて,事業として持続性を担保したい。つまり,企業側が,特に食品とか,飲料とか,繊維とか,あるいは専用のミュージアムみたいなところは,当然,ある一定の収益を頂かないと継続性が担保できないということで,見ていただくための工場に投資をする。いわゆるファクトリー・パーク,後ほど出てくるんですが,ファクトリー・パークという考え方を取り始めたのがこの頃からでありまして,これは,産業観光で言うと,第三世代と勝手に呼んでおりますが,そういうことが起こってきたのではないかと思います。
 それから,7ページに,産業観光の視点ということが書いてあります。地域には多くの資源があるんですが,それを様々なアートとか,グルメとか,歴史とか,スポーツとか,いろいろな観点があるわけですが,産業観光というのは,その技術とか,たくみの技とか,デザインとか,そういうものから編集したものが,産業観光の1つの考え方ではないかと思います。
 そして,8ページ。こういうことの結果として,産業観光は,今や年間総参加者数は7,000万人と。これは,大体日本で観光で動いている人たちが,年間で3億人ぐらいおります。だから,3億人中の7,000万人が,こういう産業文化財を対象にした観光を展開していると。詳細は省略いたしますが,そういうことであります。
 それから,その下には,事業収益を上げている企業。これは,トータルで言うと15%なんですが,いわゆる食品,飲料,繊維産業というところでは,既に3割以上が投資を開始するということができているというわけです。
 それから,10ページは,今,特に海外のお客様を大変たくさん受け入れるようになってきています。これは,観光というよりも,どちらかというとMICEという感覚だろうと思います。したがって,外国人の方々を受け入れている企業は,既に半数近くに達している。これは面白いんですが,重厚長大型の産業にいたっては,60%が既に受入れをしていらっしゃる。ネイティブのガイドも,既に置いているという状況であります。
 次に,2つ目ですが,産業文化財と観光まちづくり。つまり,点から線にどう展開していくかということでありますが,12ページ目に,産業文化財を観光まちづくりに生かす視点と事例と入れてあります。これは,多くの視点があります。
 例えば,労働者の暮らしや娯楽,これは食,それから,芝居小屋とか,あるいは大きなお風呂,これは諏訪の千人風呂なんかが,女工さんを入れた風呂で有名になったんですが,そういう暮らし,娯楽です。
 2つ目が,職人・たくみの技を生かす。これは,事例が出てまいります。
 3つ目が,なりわい,地域に根付いた様々ななりわいをネットワークする。これも事例があります。
 4つ目は,冒頭にありました,産業ミュージアムを核にしたまちづくりができないだろうか。
 それから,5番目は,地域の中の食,特に市場というものをベースにしたまちづくり。
 それから,最後は,固有の景観。これは,梅だとか,あるいは桐生の例が後ほど出てまいります。
 最初に,13ページ目の事例Aと書いたところです。これは,高山であります。高山は,御案内のとおり,春慶。これは高山の市長の話によりますと,春慶がこれから20年,30年続くかどうか分からないということがありまして,実は春慶塗りの工芸をやっていらっしゃる方が,イタリアのクレモナの楽器職人とコラボレーションしまして,楽器に春慶を塗ったと。木目が非常にきれいに出るんです。こういう活動を展開することによって,よその地域の伝統工芸をリノベーションしていくということであります。
 次のページは,今度は,なりわいということなんですが,ここではいろいろな例があります。オープンファクトリー,これは,大田区の町工場です。これが3年ほど前から工場をオープンする。つまり,職人が1年で一番しゃべり,職人さんというのは本当によくしゃべるんですが,そういうことをベースにしたフォーラムとか,ツアーみたいなものを展開している。
 来年,私どもは,燕三条(つばめさんじょう)でこれと同じことをやるわけですが,こんなものがあります。
 それから,3つ目は,さっき申し上げましたシルクファクト。これは,もともと片倉財閥の作ったミュージアムでありますが,そのミュージアムが今年8月1日にリオープンしました。実は,ミュージアム,学芸員,そして,その中に現役の宮澤製糸場という工場がそのまま入っているんですね。これは,恐らくミュージアムの中では初めての取組ではないかと思いますが,地域のミュージアムというのは知の宝庫でありますが,それが地域にどう展開していくかということのモデルとしてやりました。
 それから,4つ目は,16ページです。桐生ののこぎり屋根です。これは,皆さん行かれたことがあると思いますが,全体で230棟ののこぎり屋根が残っている。天井から柔らかい光が北の方から差してくる。こういう独特の建物,そして景観を生かして,しかも,ここは日常使いをする。
 つまり,観光用ではなくて,むしろ日常使いをするというところも大きなポイントで,一番左側はベーカリーカフェというパン屋さん,とてもおいしいパンです。それから,2段目の真ん中はパーマ屋さんです。これも非常におしゃれなパーマ屋さんですね。それから,その下がお菓子屋さん。それから,上は,有燐館の中のギャラリーです。それから,右の一番下はショコラ・ノアというイタリアンのレストランですが,とてもおいしいです。こういうふうに,日常使いでこういうものを使っていくということをやっています。これが,正に,産業文化財を地域の中に生かすという,1つの大きな例になっていると思います。
 それから,17ページは,ファクトリー・パークという考え方というものを挙げてあります。これは,さっき御説明しましたが,もう一つの例はタオルミュージアムです。今治にあります。外見はお城です。ところが,中にはジャガードの機械が10台並んでいます。それで,四国経済産業局の届出は工場という届出をしておりますが,やっと日本にもこういうヨーロッパ型のお城のような工場が出てきたかなと考えているんですが,こういう展開があります。
 それから,3番目に資源連携です。18ページになります。すみません,本当に早口で。
 実は,近代化産業遺産33群というのを,平成19年,20年度に経済産業省と一緒に取りまとめを行いました。33群掛ける2年間なので,66群のストーリーがあります。この中にいろいろなタイプのものがありますが,story3とstory24の例を示しておきました。
 Story3は,ページがちょっと消えていますが,story3という紙がありまして,最適解を見つけろ。これは,オランダから技術を導入して,島津斉彬の集成館。この事業が幕末に2,000人の工場を持っていた,アジア初のコンビナートです。その製鉄の技術が,やがて常陸那珂,韮山,そして釜石で最初の近代高炉ができるわけですが,その技術が,更に成熟して,1901年の北九州の八幡製鉄所の初出世につながっていく。そして,この技術が,国内各地,そして中国,ブラジルに伝搬していく。
 実は,ストーリーというのは,こういう大きなストーリーがあると,例えば,観光面から見ましても,昔,シルクロードとありましたけれども,大変すばらしいストーリーになっていくということであります。
 それから,story24,これは,もう皆さんよく御存じの琵琶湖疏水(びわこそすい)であります。ここも疏水に船が通せないかということで,今,30石船の復元なんかをやっておりますが,一応,ここは京都市水道局が管理をしておられて,中の検査では船が通るということを確認済みでありますが,その次のページには,インクラインの昔の写真,船,山に登るという,その写真をちょっと載せてあります。
 それから,その次のページ。これは,(2)地域の産業と都市・文化の骨格を結ぶ。実は,北海道とかいろいろなところで,我々はこういう取組をしておりますが,北海道では炭,鉄,港,つまり北海道の骨格は,石炭,鉄鋼,あるいは鉄道,そして港,この3つをうまくつなぎながら連携をしていくという事業をやっております。
 すみません。やっと最後の24ページに来ました。ちょっと息が切れてまいりましたが,すみません。
 24ページで,3つほど,この課題についてということで書かせていただきました。もう既にいろいろなお話をいたしましたが,1点目は,いわゆる面としての取組。これは,重伝建とか,歴史的風致とか,いろいろなことで,既にかなりよくできていると思いますが,ただ,近代遺産については,全くこれからなのではないか。したがいまして,同じ文化財でも,こういう産業遺産というものをどう生かしていくのかということを,是非御検討いただければというのが,1点になります。
 それから,2点目は,よく地域連携と言うんですが,さっき鉄の連携で見ていただきましたように,これからはテーマで連携をしていく。だから,北海道と鹿児島がつながるとか,そういうダイナミックなテーマ連携ができれば,海外の人から見ると,北海道から鹿児島への移動というのは,そんなに苦ではないんですね。ですから,こういう意味で,いわゆる地域連携に加えて,テーマ連携,特に文化財によるテーマ連携みたいなものを,是非取り組んでいかなければいけないのではないかと思います。明治日本の産業革命遺産は,まさにこのテーマ連携なんです。
 3点目は,これは高山の例で見ていただきましたように,地域の伝統工芸を残すためには,創造的な再生,つまりリノベーションが必要なんだということでありまして,そういうことを,是非進めていかなければいけない。
 そして,もう一つは,伝統工芸から先端産業への大きな流れは,海外向けのいろいろなMICEの非常に大きな素材になっていく。これは,特に2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて,文化庁としても,こういう事業に是非お取り組みいただければなということで,すみません,息が切れましたが,トライアスロンのようなプレゼンでございます。ありがとうございました。

【熊倉部会長】  はい。丁野様,大変興味深い発表,ありがとうございました。
 それでは,引き続きまして,茶道裏千家淡交会の関根様,よろしくお願いいたします。

【関根茶道裏千家淡交会副理事長】  皆様,こんにちは。裏千家でございます。
 今日は,余りデータ的なことは少のうございますが,伝統文化の一翼を担っております茶道につきまして,少しお話をさせていただきたいと思っております。
 来る前に家元から,我が田に水を引く話をするなよという話がございましたけれども,少し我が田に水を引くような話になるのかもしれませんが,お聞き及びを頂きたいなと思っております。
 私もお茶の関係で,年に10回以上,海外に出ます。東北の大震災の後は,日本人の非常に規律ある,節度ある,そして謙虚なる姿というものが,世界で大変評価をされてこられました。徳育が日本の中に行き渡っているものが顕著に現れたのではないかなと思っております。
 そういう背景には,道という世界が大きく影響しているのではないかなと思います。お茶も,もちろん総合芸術であるとか,総合文化と言われるわけでありますが,茶道が数百年にわたって及ぼしてきた影響ということも,十分にそれがそこに現れているのではないか,そんな気がします。
 今日は,東京藝大の宮田先生も,部会長さんもいらっしゃるんですが,岡倉天心のものを,少し引いておきました。中略の後に,「茶の宗匠」と書いてございますが,これは茶人という意味です。「茶の宗匠が芸術界に及ぼした影響は偉大なものではあったが,彼等が処世上に及ぼした影響の大なるに比すれば,ほとんど取るに足らないものである。上流社会の慣例のおけるのみならず,家庭のさ事の整理に至るまで,我々は茶の宗匠の存在を感ずるのである」。
 また,戦前戦後に,国語の教科書でもたくさん取り上げられました,奥田正造という人が,『茶味』という本を書かれました。そこも少し引用いたしておきました。1行目からでございますが,「茶道の修養は更にその上のものをねらって居る。何ぞや曰く真実の生活是である。茶の修養は茶室裡にのみ止って居るべきものではない。我々の居間・茶の間・田舎家の炉のほとりにまで進出しなければならぬ」と書いてあります。
 茶道というものが,日本人の衣食住の生活の規範になっているということを表す,1つのよい文章かなと思って,きょうは御紹介をさせていただいたわけでございます。
 今,日本の教育の中で,道徳教育が非常に注目を浴びております。
 皆さん,ちょっと裏をめくっていただけますか。裏にも印刷がございます。左端の方に3と書いてあるんですが,私どもの芸の世界のことを少し書いておきました。
 我々は,一々のお茶の所作というものは型でございまして,1つのわざでございますが,それが身に付くんですね。身に付いた後に,心が出来上がっていく。これを,心技体一体というわけであります。
 こういうことを私どもの伝統文化,特に道の世界というのは求めてまいりました。こういうものが,高い精神的な境地に立つ。わざが身に付いて,そして,次は精神を高めていく。こういうことが,私どもの日本人の中にある。
 ところが,だんだんと,こういうものの姿が,今,継承しにくくなってきています。伝統文化が,今,教育の中でも取り上げられようとされていますし,日本の国際化の中で,日本の伝統文化を見直さなければならないという話がございますが,私どもがこれを支えてきたものが,その裏側にある,2番目の民間教育機関としての「社中」という在り方でございます。これが,茶道のみならず,伝統文化というものの教育と継承,伝承に大きな役割を果たしてまいりました。
 ところが,核家族化によって家が狭くなって,畳の部屋がない。畳の部屋があっても,お茶をするためには,そこに物は一切置いてはならないという現状の中で,だんだんと社中の運営がしにくくなってきているわけであります。
 さりとて,公的機関の中に,なかなかその適切な,畳の部屋があっても,畳の部屋だけとか,備前もなければ,踏込畳もないという状況の中で,実際上,お茶がなかなかしにくいような状況が生まれてきているわけです。
 私どもとしては,歴史的・文化的風土としての社中というものに対して,もう少し市民権が欲しいというか,認知してほしいというか,そういうものがあってもいいのではないかなという気がしてならないんです。そうでないと,伝統文化というものが,これから保ち得ないのではないだろうかなという気がしています。
 税制上の問題もそうでございます。私ども,女の方がこの世界を支えております。お花もそうだろうと思います。舞踊の世界もそうかもしれません。みんな,女性が大いに支えているわけでありますが,それぞれが御主人がいらしたり,独身の方もいらっしゃるのでありますが,税制上の問題も,大変厳しいものがございます。一切経費は認めてもらえない。お菓子を買っても,お茶を買っても,道具を買っても,畳を替えても,障子を替えても,何も一切ない。
 ただ,130万円を超えたら健康保険から除外しますという形だけでは,女性たちが,こういう問題に取り組まなくなってきているんですね。もう面倒くさいという形になっていく。やればやるほど,私たちは十分なことができない。何か自分たちの生活に影響を及ぼして,マイナス影響が出てくるんです。ただ,好きだからやっているんだ。一生懸命やっているという形だろうと思うんですね。
 もう少し,私はこういうところについて,社会的認知,あるいは市民権を得られるような状況づくりを国家であるとか,あるいは地方公共団体がしていかなければならないのではないかな。そうでなければ,これからの伝統文化を支える担い手をなくしてしまう。そんな気がしてならないんですね。そうした意味で,今日は,そういうことについても,少し御審議の対象にしていただくとか,お願いをしておきたいなと思っております。
 学校教育の問題でございますけれども,私も教育についてはそれほど詳しいわけではございませんが,知育と体育と徳育があると,よく言われております。
 1番目のところでございますが,学校における教育の「室間」と書いてありますが,「空間」の間違いです。学校における教育の空間に改めていただきたいと思うんですが,知育については,もちろん教室がある,実験室がある,講堂がある。どの学校にも,これはある。
 体育はどうか。体育館がある,運動場がある,プールがある。プールというのは,よくよく考えてみると,夏に使うものでありますが,大半が夏休みですから,ほぼ学校では1か月ぐらいしか使っていないだろう。しかし,小学校から高等学校まで,プールがないところはない。当然,それはあってはいけないと言っているわけではなくて,あっていいことだろうと思います。
 しかし,徳育に関する文化・芸術に対する空間が,学校の中にあるんだろうか。ほとんどない。私ども,学校茶道といいまして,裏千家は早くから学校でお茶を教える,教育の一環として茶道を取り上げていただいて,そこでお教えをして,伝統文化について触れていただきたいというつもりで努力をいたしております。
 しかし,私どもの学校茶道というのは,ないない尽くしだと言われています。場所がない。時間がない。理解がない。お金がない。道具がない。せっかく私どもが茶道というものを知っていただいて,伝統芸術,あるいは総合芸術,総合文化というものをお教えするにしても,余りにも環境的に悪いというわけであります。
 今,少子化の中でたくさんの空き教室ができているわけでありますが,それがどのように使われていっているんだろうか。私は,茶室と言わなくてもいい,お茶ができる空間があっていいし,学校の中にピアノがどれだけあるんだろうか。子供たちが楽器で練習する。そういう個室が高等学校や中学校にあるんだろうか。何もない。本当に何もないんです。
 こういう状態の中で,本当に文化であるとか,芸術というものが,日本の国の中で伸ばしていけるんだろうか。あるいは,伝統文化というものが保ち得るんだろうかという気がしてならないんですね。
 そこに書いてございます。彫刻をするにしても,時間が掛かりますよ。それを置いておく部屋がない。それで,クラブ活動も十分にできないのではないだろうかな。私は体育の中に体育館があるならば,私は学校の中に文化館があってもいいのではないかな。それでこそ,初めて調和の取れた子供たちが,そこに巣立っていくのではないかなという気がします。
 そうした意味で,私どもの茶道というのは,日本の伝統文化を民間のレベルで支えてきたつもりでいます。国際的にもそうでございます。今,私ども裏千家は,世界各国に107か所のブランチを持って活動しています。これも,ほとんどというか100%私費でやっているわけであります。これも認知がないというか,市民権がないというか,しかしながら,役割は十分に果たしてきたと思っています。
 ちなみに,数字だけ挙げさせていただきますが,全国の幼稚園から大学院まで,今現在,お茶を学んでいる児童生徒,学生諸君が16万人います。そこに携わっている先生方が,7,000人ほどいます。ほとんど薄給なんですね。
 道具もほとんどありませんから,私の家内も3つほど学校に行っておりますが,いつも水差しを積んで,今日は,この水差しを使わなければならない。今日は,このお軸を掛けましょう。今日は,恵山のものを掛けていきましょう。今日は,こんなお道具を使わなければならない。車にせっせと積み込んでいく。お花も自分のお金で買っていくんですね。こういう状況だと思うんですね。
 私は,文化というものについて,特に伝統文化の世界なんですが,環境の中で,今,これを継承していこうとしているのだというところにも,少しお考え合わせを頂きながら,伝統文化の振興に,ひとつ御努力を頂ければ有り難いと考えて,お話をさせていただきました。
 私どものお願い事ばかりで申し訳ないのでございますが,これでお話を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【熊倉部会長】  はい。関根様,ありがとうございました。
 では,引き続きまして,全国公立文化施設協会様,よろしくお願いいたします。

【松本全国公立文化施設協会専務理事】  公文協の松本でございます。本日,意見表明の機会を頂き,ありがとうございます。
 まず,私から意見の概要につきまして,御説明した後,可児市文化創造センターの衛館長と,当協会代表理事,田村副会長から,補足意見を述べさせていただきます。
 全国の文化施設からの意見,要望をまとめた参考資料がございますが,それは後ほど御覧いただければと存じます。
 それでは,資料の2枚目,3枚目を御覧ください。当協会は,1961年に東京文化会館で産声を上げまして,95年に社団法人,昨年,公益社団法人に移行いたしました。現在,1,263施設が加盟し,全国各地区に7支部を設置し,47都道府県の協議会と密接に連携しながら活動しております。
 活動内容につきましては,3ページに記載のように,研修事業,情報提供事業,調査研究など,施設の活性化のための取組を展開してございます。
 4ページ,5ページ目を御覧ください。劇場,音楽堂等の現況でございます。全国には,約2,200の施設が多種多様な形態で存在しております。運営は,指定管理者が直営を上回り,民間営利法人による運営が増加傾向にございます。
 特徴といたしましては,雇用関係でございますが,非正規職員の比率が高いなど,不安定な雇用状況や,下の方にございますが,進まない施設の改修などが挙げられます。特に改修につきましては,自治体の財政難で放置されているような実態がございまして,利用者の安全と生命に関わる喫緊の課題であると認識してございます。
 6枚目を御覧ください。第3次基本方針後の劇場・音楽等の現状・課題を記載してございます。劇場法が制定され,一定の成果があったと評価しております。しかし,まだ途上であり,これから,より実行性のある取組が求められていると認識してございます。
 現状における課題として,事業面における環境整備や,専門人材の育成が十分でないこと,それから,それらを支える財源確保と,指定管理者制度の運用上の課題等を示しております。劇場・音楽堂等を支える人,物,金が十分に確保されていない状況にございます。
 そもそも,これらの問題の根本的な原因は何か。その原因の大本には,文化芸術の必要性や重要性が十分浸透していないことにあると認識しています。文化芸術は何となくいいものだと認識されてはいても,社会にとって真に役に立つ不可欠なものという理解には,まだ至っていないのではないかと思います。
 7枚目から,私どもの提言ということで,まとめてございます。文化芸術の現状といたしましては,文化芸術を他の行政分野と比較して,総体的に低い評価しかされていない。その背景として,文化芸術の持つ多様な効果が十分に知られておらず,娯楽や趣味の延長程度にしか理解されていないということがあるのではないかと思います。芸術家や芸術団体も,また,国や自治体も,そのことについて十分には普及・啓発をしてこなかったのではないでしょうか。
 施策の考え方ということで,社会問題を解決するためには,文化芸術は人間力・地域力を高める力となり得ることを,誰もが納得する形で明確にすることだと思います。そして,何より,国と自治体の意識変革が急務であると思います。
 右側を御覧いただきたいと思いますが,少子高齢化,人口減少,産業の空洞化,地域の衰退など,これからの日本社会は,押しとどめなくマイナスのスパイラルに陥っていきます。この社会を文化力によって人間力を高め,地域を活性化し,是非プラスのスパイラルに持っていかなければなりません。文化芸術には,そうした力が備わっていると確信しております。地方再生も,文化力の活用なくしては実現しないと言っても過言ではないと思います。
 8枚目を御覧ください。文化芸術には,もともと芸術性と社会性が備わっており,それらは車の両輪であると思います。ただ,これまで文化芸術の社会性には余り着目されてこなかったのではないかと思います。真の文化芸術立国というならば,文化芸術の社会的な機能を発揮させる取組を積極的に進め,国民的コンセンサスを得る必要がございます。芸術性と社会性,どちらが大きくても,小さくても,前へは進めません。バランスよく,両方が回ることによって前進するものと思います。
 9枚目を御覧ください。真の文化芸術立国実現のための戦略ということで,3つの施策を提言させていただきます。
 1つは,「文化芸術立国」の前提となる文化芸術に対する理解の普及でございます。文化芸術の持つ社会的効果の実例を広く収集・検証し,様々な媒体により,積極的にPRしていくことだと思います。
 2つ目は,文化芸術による「社会貢献プログラム」の開発と人材の確立でございます。劇場・音楽堂等が取り組む地域活性化や社会包摂の活動を推進するための助成制度を,是非確立していただければと思います。
 また,それらの活動を担う専門人材として,仮称でございますが,「コミュニティ・アーツ・ワーカー」制度の創設を提案させていただきます。文化芸術による地域での社会活動に従事する専門職を確立し,高等教育機関でのカリキュラムを創設,育成し,地域文化施設等へ配置するということです。そのことにより,芸術系大学等の卒業生の新たな活躍の場と機会の提供につながると思います。
 3つ目は,文化芸術活動の「総合情報サイト」の構築でございます。全国の劇場・音楽堂等で行われている文化芸術公演・社会貢献活動に関する総合情報サイトを整備するものです。観光・文化体験などのプログラムとも連携するとともに,海外からの訪問者向けに,多言語による情報提供やチケッティングシステムの導入も考えられると思います。そのことによって,2020年の東京オリンピックだけでなく,それ以降の有力な情報インフラとして機能するものと考えます。
 最後のページ,10枚目でございます。参考として,文化芸術基本法の前文にある文化芸術の意義を掲げました。ここに示されている文化芸術の力を具体的に検証し,国,自治体はもとより,国民的コンセンサスを得て,その効果を最大限発揮させる取組が重要だと思います。
 概要の説明は以上です。御清聴ありがとうございました。

【衛可児市文化創造センター館長】  可児市文化創造センターの衛でございます。私から,現場から感じている2点を御提案申し上げたいと思います。
 1つは,第3次基本方針で,非常に画期的な文言が織り込まれた。文化芸術の社会包摂機能ということが言われたということと,それへの公的支援は従来の考えを改めて,社会的な投資であるという考えが書かれました。これは,非常に大きな転換だと思います。文化行政の中でのエポックになることだと思っています。
 それ以降,従来,アウトリーチワークショップということはやられていました。恐らく,地域創造さんの統計によると50%弱の会館がやっていたんですけれども,大体それがお出掛け演奏会みたいなものとか,あるいは演劇体験教室みたいなものに終始していたんですね。
 明らかに,第3次基本方針以降は,更に踏み込もう,下村文科大臣が,この審議会の総会の冒頭でおっしゃっていました社会課題ということと,省庁横断的ということが,具体的にどういうことなのかというのを,全国の劇場・音楽堂の人間たちが探り始めているのが,今の状況だと思います。
 例えば,民間でも,それ以降,聖マリアンナ医科大学を中心に,4つの首都圏の大きな大学病院が提携して,NPO法人のキッズアートプロジェクトというところが,長期入院の子供たち,がんだとか,腎臓病で入院している子供たちのために,社会性を養成するために,アートによっての1つの交わり,仲間作りみたいなことを民間では始めています。
 私どもの事業で恐縮ですが,若いお母さんとゼロ歳児から3歳児までの市民へのワークショップ。これは,若いお母さん方は,子育てで非常にストレスを感じて,それが最終的に虐待とかネグレクトということを思うのではないかという仮説を立てましてやりましたところ,たった10万人の町なのに,何でこんなに多くの若いお母さん方がアプライしてくるんだろうと思うぐらいアプライしてまいりました。ニーズが非常に大きい。残念ながら,仕切りをしてしまいましたけれども,そういう活動というのが,これから劇場・音楽堂も含めて,社会から求められているのではないかと考えています。
 健全な地域社会とか,健全な社会を形成するために,文化芸術が大きな力を発揮する時代に,あるいはそういう時代にならなければいけないというところに入ってきたのではないかなと思っています。
 私どもの例で言うと,県立東濃高校というのが,私どもの町の近くにあるんですが,ここが非常に入学者の約半数,80人が中途退学しているんですけれども,コミュニケーションワークショップで,私どもが支援して入って3年たちましたけれども,中途退学者が20人台に激減いたしました。その多くの子供たちが,単身親家庭の,まさに貧困家庭の子供たちです。彼ら,彼女たちを孤立させないために,そういうワークショップをして,いい成果が出てきているということを御報告申し上げたいと思います。
 その意味では,もう一段,第4次基本方針ではこれを進めて,今,模索している状態なんですけれども,更にきちんと方向を示していただければ,現場で仕事をしている人間の励みになるかと思います。
 それから,2つ目は,多くの場合,人材育成ということが言われるんですが,実は人材育成が,指定管理者制度の中で空洞化してきています。つまり,今,ほとんど3年で雇い止めというケースが多いんです。
 私の知っている例で言うと,名古屋大学を出た新卒の女性が,近くの関西地区にある有名なホールに入ったんですが,実は給与が14万円ぐらいなんです。年収で百五,六十万円で,もちろん勤勉手当,期末手当はないという状況で勤め,3年で辞めて,次に地元のホールを受けて入ったんですけれども,2回雇い止めを食らうと,もう30歳近くて,せっかくのいい人材にとって,希望が持てる職場ではないんですね。これを何とかしなければいけないのではないか。
 そういう意味で言うと,人材育成は,穴の開いたバケツに水を注ぐような状態なんです。せっかくいい人材がいるのに,その人たちを育てることがなかなかできない。
 私どもは,私が就任したときに,すぐに指示を出して,全員正規雇用にしたんですけれども,今,非正規率がひどいところだと100%非正規です。それから,皆さんも御存じの有名な劇場で言うと,非正規率が90%を超えています。役所から来た人間以外は,全部非正規というところがあります。それから,皆さんが御存じの特別支援施設でも,役所から14人も来ているのに,プロパーの職員がそれ以下であって,あとは全部20代,30代の使い捨ての人材ということになっています。
 これは,どれほど人材育成をしようと言っても,全部水が漏れていってしまう。何よりも私どもが困っているのは,10年,20年先の劇場,ホールがどうなっていくのかという,中長期で雇用の環境を整えるということが,全くできない状態なんです。完全に空洞化する。
 そのことを,例えば,人材の流動化という言葉で美化しますけれども,人材の流動化は,離脱的にキャリアアップして,初めてできてくるのであって,私は人材が浮遊化してしまうと考えています。
 これは,基本方針に織り込むのは,若干お門違いかもしれませんけれども,何らかの形で指導するということができるのではないかと思いますし,是非していただきたい。でないと,直近は何とかなるんですが,恐らく10年後,専門職員がいなくなってしまうということが起こりますので,是非これは危機感を持って対応していただきたいと思います。
 以上でございます。

【田村全国公立文化施設協会代表理事・副会長】  よろしくお願いします。全国公文協の副会長をしております,田村でございます。
 先ほど,松本から御紹介しましたように,公共の文化施設というのは2,200もある。海外には例のないことです。それが,機能すれば,文化の格差というのは,本当はなくなるはずでございます。でも,そんな意味で,2001年の基本法成立から10年以上掛かってしまったんですけれども,劇場法と,それに基づく指針が示されたことは,日本の文化政策にとっては,私は大きな転換点と思っております。
 この機を生かすためには,国はもちろんなんですが,各自治体が,それぞれ長期的な視点を持った文化政策を持つことが,私は何より大切と思っております。私自身の経験で恐縮でございますけれども,私は,基本法成立前後は,NHKの解説員でございました。そして,劇場法成立前後は,実は静岡県のグランシップの館長をしておりました。
 何でこんなことを申し上げるかと言いますと,静岡は,ある意味,国より先進的な文化政策を執った県だったわけです。と申しますのは,地域振興のためには,人材育成。そのためには,文化が必要ということで,1997年に静岡県舞台芸術センター,SPAC,劇団というソフトを持った機関,施設をスタートさせているわけです。私は積極的に足を運び,放送でも取り上げてまいりました。
 でも,私が実際グランシップをお引受けして,びっくりいたしましたのは,静岡の実態を知ったわけです。確かに,短期間では文化環境が変わるものではございません。でも,演劇だけでは足りないと感じたのが正直な感想でございます。
 ですから,私はグランシップのスローガンを,「上質な多彩な芸術を身近に」としました。
 最も大切にしている事業の1つを御紹介させていただきたいと思うんですが,以前から実施されていた中学生のための鑑賞教室,この質を高めたいと思いました。そして,引き受けてくださった指揮者と相談しまして,「中学生のための音楽会」としました。指揮者とオーケストラから,中学生へのメッセージとして,シンフォニーを必ず1曲演奏するというものにしたんです。
 金聖響指揮,アンサンブル金沢。このときは,ベートーベンの交響曲第7番だったんですが,子供の感想に,こんなものがございました。
 「あんなにいろいろな国の人がいて,あんなにいろいろな楽器があって,でも1つに聞こえ,そして震えるほど感動した。ということは,オーケストラの方たちは,今日の僕たちの演奏会のために,よほど練習していらしたに違いない。僕は将来何になるかは分からないけれども,きょうのオーケストラの方々の姿勢は学びたい」。全部の子供が,このように書いたわけではありません。でも,今お聞きいただいたような感想が出るということは,ステージの演奏の様子はお分かりいただけると思います。芸術性と社会性,両輪が備わったとき,音楽の力は必ず伝わると感じました。
 文化庁予算の今年のトップは,「子供に質の高い芸術体験を」でした。各地の文化環境を豊かにするためには,このことが,私は一番大切と思っています。芸術家をはじめとする関係者が,真剣に取り組んでほしいと思っております。アートは心の栄養,演劇は心の食べ物,暮らしの中に音楽を,これからは,文化財や芸術家などへの行政サービスだけではなく,立派な公共文化施設を生かし,文化政策としてどうあるべきかを,各自治体が真剣に取り組まなくてはならない,そんな施策を国で執っていただけたらと願っております。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 松本様,衛様,田村様,メッセージありがとうございました。私どもが中間報告でまとめたところと,非常に共鳴するところも多くあるかなと思いました。
 それでは,大変お待たせいたしました。日本ファッションウィーク様,よろしくお願いいたします。

【信田日本ファッションウィーク国際ディレクター】
 本日は,お時間を頂きまして,ありがとうございます。一般社団法人日本ファッションウィーク推進機構にて国際ディレクターをやっております信田阿芸子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 当機構は,いわゆる日本のファッション産業における業界団体でして,パリコレ,ニューヨークコレクションに相対する東京でのファッションウィークを年に2回やっております。あと,生地の展示会も年に2回開催しております。
 いわゆる日本のファッション業界の川上から川下まで,全てを網羅し,担当している団体でございます。本日は,日本のファッションについての現状を,皆様に少しでも御説明できればと思っております。
 つい先月,9月にロンドン発で,世界的に権威のある業界紙であります『BoF――The Business of Fashion』,これは200か国で読まれているメディアなんですけれども,そこが選びました,世界で業界に影響を与える500人という発表がありました。その中に,私が選ばれました。初めてです。500人の中で日本人が選ばれたのは15人だけですが,どうして無名の私がここに選ばれたかといいますと,日本のファッションに対しての関心がますます強まってきた,世界中で高まってきたということが言えるかと思います。
 そもそもファッションというものが,どうして国にとって必要なのかということを説明したいと思います。ファッションというものは,国全体のイメージを上げます。ファッションが強い国となると,その国で生産されたものは,全て売り単価を上げることができます。フランスやイタリア,ニューヨークがファッションによって国力を上げた,大変よい例です。ファッショナブルな国というイメージが付くと,何でも値段が高くても納得してしまうということになります。メイド・イン・フランスや,メイド・イン・イタリーという響きで,高い商品でも売れるようになるということです。
 こういうことで,ファッシナブルな国となると,観光客も増えます。このファッションの効力を注目した国は,世界中の国でして,どの国も,今現在ではファッションウィークなるものを,国を挙げて,政府を挙げて,取り組んでおります。
 つい先週,トリニダード・トバコという南米のすごく小さな国の方からメールを頂きまして,どうしても自国でファッションウィークを発展させたいんだということで,協力を求められました。そのように,どんなに小さな国であっても,ファッションウィークというものを政策として取り組んでいるということが言えると思います。
 ここで,ファッションウィークの本当の一部の写真をお見せいたします。よくファッションウィークと言いますと,ガールズコレクションと勘違いされる方が多いんです。ガールズコレクションは,いわゆるマスメディアの露出が非常に成功されているので,ファッションウィーク・イコール・ガールズコレクションと言われていますが,あちらは,いわゆるコンサートイベントです。音楽の合間にファッションウィークっぽいものをやる消費者イベントです。
 こちらの,当機構でやっているファッションウィークというのは,いわゆるB to Bでして,バイヤーとプレス向けだけに発表しているファッションウィークです。
 ガールズコレクションで発表されている服というのは,ほとんどがメイド・イン・チャイナなんですけれども,こちらで発表しているクリエーターの方たちは,ほぼ100%,日本の各産地の機屋さん,生産地とコラボしてできているお洋服になっています。
 次に,皆さんおなじみのパリコレの写真を出しています。やはり歴史的に,残念ながら,ファッション業界では,パリが世界的なヒエラルキーは,断トツナンバーワンです。ただし,パリコレに出ているお洋服の素材は,実は今,ほとんどが日本の素材でございます。これは,オフレコで言えませんが,ランバンみたいなブランドは,今60%以上が日本の素材を使っています。
 また,コートで大ブレイクしているモンクレールというブランドがありますけれども,モンクレールにいたっては,80%以上が日本の素材でできています。
 ということで,日本のファッション自体は,非常にポテンシャルがあると言えると思います。世界に誇る素材を作る産地であって,そことコラボする有能なデザイナーがたくさんいます。
 改めて申したいんですけれども,日本のファッションというものは,産地の活性化につながっています。今回,すぐ終わった,10月にやったファッションウィークの中で,新しいプロジェクトをやりました。若手のデザイナーが産地とコラボするときに,自分の目線で,自分の表現の仕方で産地を表現してくださいという,「THIS IS MY PARTNER」というプロジェクトです。
 今回,DRESSEDUNDDRESSEDという若手のショーを一部見ていただきます。

(映像上映)

【信田日本ファッションウィーク国際ディレクター】  2人組の若手のデザイナーのブランドでして,世界の賞も幾つか取っている,非常にエッジーで実力のあるブランドです。このDRESSEDUNDDRESSEDがふだんお世話になっている機屋さんで,山栄毛織さんという,岐阜県にある100年以上続いている機屋さんがあります。そこの産地を彼らの目線で,彼らのクリエーターでもって表現しました。

(映像上映)

【信田日本ファッションウィーク国際ディレクター】  時間の関係で,10分の1ぐらいの作品しか見ていただけないんですけれども,ふだんファッションショーを手掛けている音楽アーティストが,この音楽も作って乗せていただきました。このように,ファッションデザイナーが切り取ると,産地も工場も非常にエッジーでかっこいいものに見えるという効用があります。
 続きまして,うちの機構は,約6年前から,世界各地でいろいろなファッション産業をプロモーションする事業をやっていますが,その中でも特に伝説を作った事業を紹介したいと思います。
 これは,2012年1月に世界におけるメンズファッション業界では最高峰の展示会です。フィレンツェでやっていますPITTI UOMOという展示会に出展しました。初参加で,21ブランドを連れていきました。あえて21ブランドの中で10ブランドぐらいは,かなり無名な,日本人バイヤーでも知らないようなブランドを連れていきました。このとき,PITTI UOMOは1,000社以上の世界中からの出展者がありましたが,その中で,初出場でバイヤーズ評価ナンバーワンを取りました。世界中のバイヤーが,これを見て,やはり日本は宝の宝庫だなということを認識していただきました。
 このときに,先ほどありましたけれども,パーティーのときのコンテンツがラーメンでした。まだヨーロッパでラーメンブームが起きる前のときに出しました。このときにも,非常にファッション業界で注目されまして,ファッション業界イコール,インフルエンサーの方たちなので,一気にラーメンのうわさが広まって,その後,パリでラーメンのブームが起きたということが言えると思います。このように,ファッションは商品のイメージを引き上げる効能があります。
 このときの展示会は,いまだにPITTI UOMO,年2回あるんですけれども,そのたびに,バイヤーの中で語り継がれていただいております。
 ちなみに,先ほどはメンズでしたけれども,日本のファッションというのは,実はレディースよりもメンズの方が,評価は断トツに高いです。今でもそうです。
 続きまして,次は,去年の10月末にモスクワのファッションウィークに出たときの映像を見ていただきますが,ロシアで日本のファッションというものを御紹介したのは,これが初めてです。外務省でコスプレのファッションを紹介したことが過去にありましたが,モードとして,コアなファッションを見せたのは,今からお見せするショーが初めてです。これもメンズですけれども,16ブランドのショーのメンズのブランドが一堂に会して,合同ショーという形で,1つのショーにまとめました。
 この16の個性の強いブランドをまとめるときの統一コンセプトが「和」という,着物だったんですね。現代のエッジーなストリートファッションと「和」,着物という伝統なものを組み合わせると,非常に難易度の高い商品になっています。これは,後々,業界でも非常に評判になったショーですので,これもまたごくごく一部ですけれども,見ていただければと思います。

(映像上映)

【信田日本ファッションウィーク国際ディレクター】  ちょっと映像が重過ぎて,音と映像のスピードが合わなくて残念なんですけれども,本当にこれはごく一部ですので,またYou Tubeで見ていただければと思います。
 だんだん時間が押してきますので,次は,ファッションが非常にアートと近いというところをお見せしたいと思います。
 これは,今年の2月にニューヨークファッションウィーク期間中に,このときのお題は,レザージャパンという,日本の皮革産業の方から予算を頂きまして,皮をあえてファインアートのギャラリーで,ファッションデザイナーの人たちがアート作品を作って展示しました。これも大変好評で,ニューヨークの重鎮からも,この後,非常に評価を受けました。
 これは,2009年にSENSEWEARということで,これも非常にアートとファッションが融合したイベントですが,近いようで,何気にファッションとアートが一緒になってやる機会というのは,まだまだ少なくて,これはミラノのサローネに出たときです。ミラノのサローネの中でも,一番このシーズンは評判のあった企画となりました。
 そして,ここで今回お時間を頂いた中で,是非お願いしたいことがあります。これだけポテンシャルのある日本のファッションというものを,文化庁の中に,是非ともファッションという文字を入れてほしいということです。各地方の活性化のためにも,是非とも文化庁の文化という言葉の中に,ファッションを挿入していただきたく思います。
 やはり,目の前の成長戦略に終始せざるを得ない経産省だけがファッション産業を支えているという構図は非常に無理がありまして,是非とも長期で戦略を練られるポテンシャルのある文化庁さんも,ファッション産業を一緒に見守っていただければいいかと思います。
 また,これはロンドンオリンピックの映像が出ていますけれども,ロンドンのオリンピックのときには,ファッション業界団体であるブリティッシュ・ファッション・カウンシルが裏方で,大変活躍をしました。こちらのファッションウィーク推進機構の相対であるんですけれども,非常に今でもコラボして仲良くしておりますが,若手デザイナーたちが一緒になってオリンピックを盛り上げました。閉会式,あと文化事業2つをブリティシュ・ファッション・カウンシルが裏方をやって手掛けたと聞いております。
 是非オリンピックのタイミングにおいて,日本のファッションは実はすごいということを,世界に示すよいチャンスだと思っております。日本の産地とファッションデザイナーがコラボして,おしゃれなお土産屋さんを作ってもいいかもしれませんし,また,世界のメディアが注目しているファッションウィークにおいて,オリンピックをテーマに,各産地とコラボして,若手デザイナーが一堂に会する合同ショーみたいなことをやってもいいかと思っております。
 また,ファッションクリエーターというのは非常にエッジーな存在でございまして,エッジーな者同士という意味で言いますと,実はパラリンピックとファッションデザイナーというのは非常に相性がいいかと思っておりまして,是非パラリンピックの演出をファッションが手掛ける,裏方をするというのは,非常にいいことかと思っております。
 何かと裏方としてファッションを起用していただけるといいかと思っております。どうか,今後も日本のファッション産業への御指導も,併せて文化庁様,よろしくお願いいたします。御清聴ありがとうございました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。大変勉強になりました。
 それでは,最後に全国伝統的建造物群保存地区協議会様,よろしくお願いいたします。

【野村全国伝統的建造物群保存地区協議会会長】  皆さん,こんにちは。山口県から,今着いたばかりで,まだ息が切れておりますが,萩市長,野村でございます。
 なぜ田舎の市長が――実は,全国の伝統的建造物群保存地区協議会の会長を仰せつかっております。いわゆる伝建,昔は分からなかったんですが,今は海外にも通用するような言葉になりました。きょうは,この伝建の現状と,そして可能性といったところも,是非御理解を頂きたいと思いまして,やってまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 3つの分野に分け,まず,伝建は一体何なんだというところから,簡単に御説明を申し上げたいと思います。
 伝統的建造物群保存地区協議会,俗称,伝建地区と言っています。町並み保存,集落保存であります。昭和50年,今から39年前,文化財保護法の改正がございまして,それまでは社寺仏閣の建物とか,仏像とか,こういったものが文化財だったんです。しかし,昭和50年,画期的な改正がありまして,いわゆる町並みとか集落といったものを文化財にしようという,当時としては大変大胆な決定となりました。法改正が行われたわけであります。来年でちょうど40年になります。
 初めは,伝建は一体何だ。町並みなんて文化財になるわけないじゃないかという多くの意見がございましたが,この40年近い中で,いろいろな議論を頂きました。そして,様々な各地域におきまして,実績を上げてきたわけであります。
 昭和51年に,その法に基づきまして,初めて奈良地区5市に,それぞれの町並みが指定を受けたわけです。もちろん文化庁から,当時,建造物課というのがございまして,今は参事官制度に変わりましたが,そこで検査を頂きまして,スタートしたわけであります。
 現時点では,全国84の自治体,108地区まで広がってまいりました。下にありますのは,初めの5つの市の内容であります。仙北の角館,しだれ桜が有名な,黒い塀がある伝建地区,そして,南木曽町の妻籠の宿,そして萩市。
 この制度につきまして,いろいろ特色がございますが,まず1つは,国の制度で指定を受けたわけでありますが,地域が主体であるということであります。それぞれ地域が指定を受けます前提条件として,伝建条例という,どうして今から保存し,管理していくかといった観点を含めて,そういう条例を作りました。計画を策定しました。それぞれ国からのいろいろな技術指導を得ながら,文化庁からも技術指導を得ながら,資金的にも支援を頂きながら,それぞれの自治体が今まで地域主体と書いてありますが,頑張ってきたわけであります。
 そして,もう一つの特色は,そこに人が住んでいるわけです。普通の社寺仏閣,いろいろなものは,もちろんそこで宗教活動が行われるものもございますけれども,そこに住んでいる,そういう町並みであるといった特色があります。
 そして,まちづくり制度とのいろいろな連携と書いてあります。実は,平成16年に,日本は非常に遅れましたけれども,景観法ができました。景観法が先進国で一番遅れたわけでありますけれども,この景観法ができまして,私どもの町並み保存には,非常に大きな武器が加わったわけであります。そして,歴史のまちづくり法,「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」というのが正式な名称でありますが,そういったものもできまして,この町並み,環境,いろいろな意味で,法的な側面も含めて,非常に力強い支援を頂きました。
 今はそういうことで,財源的にも,社会資本交付金制度。いつも話題になりますが,道路やあるいはもろもろの関係のやつが合体して,地域に交付金という形でありますが,これは,実態としては,まだまだ使いづらいところもございますけれども,そういう制度改正も行われてきました。
 そして,下にありますように,民家の保存修理といったものが進んできたわけであります。これが,今の対応であります。
 そして,協議会を作りました。これは,昭和54年であります。制度が発足しまして4年目に,先ほど言いました5市が中心になりまして構成しているわけであります。この萩市が会長を仰せつかっておりますが,とにかく,この活動の主たる内容は,伝建地区,町並みの保存活動の普及を行おう。そして,この中には,もちろんいろいろな技術も伝搬していくということで,各地区みんな,それぞれの時代の町並みを保存する専門家もだんだん年を経るごとに少なくなっておりますが,そういった中での研修。
 そして,官民のネットワーク,これが実は大きな特徴でありまして,全国伝統的建造物群協議会には,私ども自治体の代表と,それに携わる民間のグループの代表といったものが一緒になって,そこで行われます講演とか研修を共に学びまして,住民プログラムの中には交流会といったものもしっかりなっているわけであります。
 そして,伝建地区町並みについての提言,税の問題とか,いろいろな問題がありますが,そういったものの提言も行ってきております。
 それが概況でありますが,その次に,伝建の実情です。多くの伝建地区は,皆さん御承知のとおり,京都とか,神戸とか,函館,一部都市部にございますが,大部分は地方であります。なぜ地方に町並みが残ったか。これは,お考えになれば,すぐ分かると思います。
 実は,あの戦災に遭っていないと。大部分の主要都市は,戦災でいろいろな建物が壊滅しました。東京もそうであります。そして,そういう戦災と戦後の経済成長によります経済開発,その対象になっていない。それは,地方に昔からの町並みが残っている,その理由であります。
 ここは,そういう中で,例えば川越,これも何度かの火災に遭いましたが,明治時代のものがそのままずっと残っています。今日も,川越の町並みを使った大きなイベントが行われています。それぞれ白川村の農村集落,この建物の中では,養蚕の事業も行われたわけです。いろいろなものが残っています。
 それぞれいろいろなタイプのものが残っています。門前町もありますし,お茶屋町もあります。商家もありますし,武家屋敷もあります。それぞれ地域の内容は違いますけれども,そこに皆,人が住み,その町並みを何とか守っていこうという気風がちゃんと受け継がれているわけであります。
 この町並み保存をやっています伝建地区に住む人は5万人と言われています。もちろん伝建地区の指定地域は,本当に僅かなものでありますから,私ども萩市も,萩市の人口は5万3,000人でありますが,その中で4つの伝建地区を持っています。それぞれ地区の人口は,実はそんなに多くありません。それを全国集めますと5万人。そして,建造物の数,1万3,000棟であります。そして,工作物,土塀とかいろいろなものがありますが,それが9,000。毎年度,再生され,修理をしたり,いろいろなことをいたしますが,そういったものが約382軒。これで,どのぐらいの予算が掛かっているかといいますと,毎年の予算はわずか20億円であります。
 皆さん,史跡には大変お金を掛けます。お城を直したり,いろいろなものがありますが,これは200億円近い整備であります。その約10分の1の予算でありますが,文化庁のいろいろな意味でのやりくりと,各自治体も工夫をしながら,それぞれの町並みを,集落を守っていっているわけであります。
 硬い言葉で書いていますが,話の内容はもう少し柔らかいです。伝建地区の町並み保存,いろいろなことであります。先ほど来,言っていますように,持続的にもたらされる効果と言っていますが,祭殿や伝統的な文化行事といったものの拠点になってきています。伝統工法の継承,これはもちろん建物の話も入っていますけれども,そういったものの中で,いろいろな町並み,伝統といったものが展開されています。古民家,要するに江戸時代のもの,あるいは明治のもの,それぞれ工夫をしながら,ゲストハウス,レストラン,いろいろなものがございます。そういったものが,ある意味,地域の再生といいますか,地域の経済に1つの大きな力になっているといったことを言いたいわけであります。
 これはちょっと派手な,広報ベースに載っているものでありますが,一番左の方は,まさに今展開しています,「マッサン」。これは,広島の竹原地区の伝建地区が,一番初めに奥さんをイギリスから連れて帰ってきたところが,マッサンの出身地であります。大阪の酒屋さんですが,そこの商家がずっと残っております。こういったような形で,ドラマの場面に使われる。
 下の方は,ジブリの「ももへの手紙」,これは,御手洗伝建のところであります。
 右の上の方は,実は私どものところでありますが,大和ハウスのコマーシャルにずっと使われています。今もまだ流れておりますが,そういった場面に使われるとか,右下の方は,小浜の「ちりとてちん」,これも舞台になりました。
 こういった昔からの町並みが,1つの地区を代表する風景といいますか,風致といいますか,そういったものに使われている。同じようなことが,ずっと言えるわけであります。いろいろな形で,この地区や地域が,それぞれ町並みを何とか生かしていこうということであります。
 一番下の真ん中の,ちょうど白川村と同じような建物。白川村と同じようにライトアップをしたり,いろいろな工夫をして,今アピールをされているところであります。
 要は,ここで交流と言っておりますけれども,それぞれの地区でいろいろなことが行われます。文化的な行事もありますし,それぞれが,ある意味では,ゲストハウスを作られたり,いろいろなことをやっています。要は,そこに具体的に人が住んでいる,そしてまた,そこに新たに都会地から店を開きたいとか,ゲストハウスをやりたいとか,いろいろな形で来られるわけであります。
 名所旧跡,ともすれば,そこには宗教法人がやられるもの,いろいろなものがありますけれども,そこに具体的に市民や住民が住んでいて,そこでいろいろな事業が展開される。そして,その住民の皆さんは,いろいろな形でずっと伝承される文化や,あるいは日本の心といいますか,それぞれ地区によって状況は違いますけれども,持っており,そこで,まさに地域の誇りを語っていく,こういった新しい1つの観光資源といいますか,観光の在り方。エージェントがぼんと乗ってきて,そして帰っていく,そうではなくて,そこで地域の皆さんと交流するという,1つの新しい観光と私どもは言っておりますけれども,そういったことが,今,実は起こっているわけであります。
 今までは全く観光と地域の住民の皆さんとは無関係の存在でした。観光の具体的な地方に入っていって,例えば登別,日光江戸村とか,あの事業者は,一番初めに萩に来ました。萩で江戸村を作りましょう。それをやっていたら,外部の資本が入って,いろいろなもので忍者が出て,江戸時代のお殿様が出て,仮装してといったことで終わってしまったかもしれません。しかし,萩は偶然にも,途中,進出したダミーの会社が潰れてしまったので,私どもは排除したというよりも,本当は乗ってしまっていたら,どういうふうになっていたのかなという思いもございますけれども,そういうふうに,地域の皆さんとの交流というのが1つの大きなポイントであります。
 したがって,派手さはない,非常に素朴な交流の場合もありますし,やり方はそれぞれ地域によって違いますが,今,地域創生と言われています。各地域,地方のいろいろな問題を考えていこう。こういったときに,1つの大きなヒントになるのではないか。まだまだ力といいますか,規模といったものは小さいものでありますが,もともと地方に,もし昭和50年の伝建の指定がなければ,これらの集落は,みんな消滅したか,若しくはほかの建物の中に埋没したものであります。誰も見向きもしなかった町並みが,この40年の歴史の中で,実は文化資産として輝き始めたのであります。こういったことは,その当時の人は,誰も思いも付かなかった。
 これは,文化庁の皆さん,調査課の皆さん,実は大変努力をされたんですね。これは宝物なんだということを教えていただいたんですが,なかなか地元の方は,初めは,この調査課の先生方に反発する者もかなりいました。そんなことをやって人が来るか。誰が,何のためにやるんだという話も多かったわけでありますが,今や,この数から見ましても,どんどん伝建地区に入りたい,指定を受けたいといった実際の数が増えているわけです。正に,この効果といいますか,機能がしっかり働いている。こうも言えるわけであります。
 これは,ちょっと厚かましいんですが,私ども萩市の状況でありますけれども,1つは伝建の修理者,市民,住民,こういったものがいろいろな形で,生活文化の伝承をしています。いろいろなお祭りもあります。その地区は,もう崩壊寸前なときだったのでありますが,伝建地区が1つの大きなよりどころとなりまして,地区の力が何とかつながってきているということが,左のところで言いたいわけであります。
 真ん中の方は,またそこでいろいろなイベント,行事が始まりました。すぐそばに史跡,御船倉という毛利公の御船倉がございました。そこはかなり広さがありまして,そこでコンサートが行われ,あるいは浜崎の伝建地区全体が,それぞれの家が,必ず宝物になっている。そういったことの宝物を出して,それはたわいもないものかもしれません。竜馬が使った茶わんとか,いろいろなたわいないものがありますけれども,そういったものを年に1回,必ず町の家の中に飾って,そこに大勢の皆さんが訪ねて来られるようになりました。こういったもの,今,海外からも参加を頂くようになりました。本当にうれしい限りです。
 そして,右の方をずっと見ますと,新しい1つのふるさとのUターン,あるいはゲストハウスということで,どんどん人が減っていく中で,新しい人が入ってくるようになった。再生古民家の定住といったこともありますし,いま一つは,建築士の皆さんが,何とかこれを支えていこう,この浜崎の町並みを何とか守っていこう。それは,建築技術の観点から,そういったようなことであります。
 これは,いろいろな形で,今,図柄を描いておりますけれども,とにかく,今までいろいろな形でそれぞれの町が努力をしてまいりました。それぞれの町の文化といったものをしっかり伝承していく。それは,正に今,例えば和食の文化が世界で評価をされると同じように,地方の町並みの保存を通じまして,そこに伝わりますいろいろな文化,日本の心。
 例えば,私どもの町は昔からお茶とか,お花とか,そういったものが盛んでありました。今,東京で考えてみれば,マンションの中に畳の部屋があるところは,もう数えるほどしかありません。床の間なんかもございません。
 ここの町並みは,全部,各おうちには,必ず床の間があり,必ず畳の部屋だけで生活するようなシステムになっている。もちろん若い人は,一部はフローリングにしまして,あるいは板の間にしてという部分はありますが,そういう日本の伝統的な茶道とか,あるいは華道とか,いろいろなものが,まだ息づいているわけですね。そういうことも,ひとつ,是非知っておいていただきたいと思います。
 もうこの辺りは,我田引水になりますので省略しますけれども,要は,言いたいことは,今,地方創生という中で,こういったこともそれぞれの町で,そういったものを中核としながら,物販の直販なり,あるいはそこで新たなものを作るとか,いろいろなことをやっている。
 国も自治体も,円が1ドル70円時代に,ほとんどの地場産業は壊滅しました。今,107円,108円,元に戻ったとしても,世界にネットワークができた輸入システムは,なかなか元に戻りません。
 私どもは水産の町でもあるのでありますが,水産の町でありますけれども,そこでスーパーマーケットに行けば,アフリカの白身の魚,中南米のいろいろな魚,こういったものを売っているわけですね。安い。安くなれば,そちらを買う。それぞれ地方の地場産業は,ほとんどのものが壊滅をしました。要するに,企業城下町,輸出産業も,大半の工場が,中国系やベトナムに移ってしまったわけです。形だけ残っている。
 そういう中で,それぞれの地方が,今からどう生きていくかということの中で,こういった文化とともに,ささやかであるけれども,よりどころとして,誇りを持ってやっていくことができる,数少ないものではないかと思っています。
 やや我田引水な説明かもしれませんが,ここで,一応終えさせていただきます。ちょっと長くなったかもしれません。ありがとうございました。

【熊倉部会長】  野村市長,お忙しい中ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御発表を受けて,ディスカッションの時間が短めになってしまうかもしれませんが,15分か20分ぐらいは質疑応答の時間を設けたいと思います。どなたからでも結構です。
 はい。では,宮田委員,お願いします。

【宮田委員】  ありがとうございました。皆様,御苦労さまでございました。
 特にファッションに関して,大変すばらしいプレゼンを頂きました。それにしては,世の中が明る過ぎるなという気がしていますが,これは,すぐさま,足下がきちんと講演会のときには直るのを期待しておりましょう。
 実は,ファッション関係の話を,実は,私は聞くのが初めてなんですね。これは,新しい1ページかと思っています。今まで,私は経産省のお仕事もさせていただいたり,内閣府のお仕事をさせていただいたときにも,ファッションの方を非常に熱っぽく語ってくれていました。
 ほかの省庁を非難するわけではないんですが,語る割には,算数でしか,彼らは皆さんの活動を評価していない。心で評価することの意義というのは,僕は大変大きいと思いますので,今後とも,経済ときちんと感性が結び付いたという点で,いろいろな意味で,きょうの提言になるのかなという気がいたしました。ありがとうございました。
 それから,家の話。大変すばらしいと思いました。たまたま,私の生まれ故郷の佐渡の宿根木の家なども出ていたので,余計反応したのかもしれませんが,これも,まさしく新しい文化の創生になるのかなという気がしました。
 そのとき,野村さん,ちょっと残念だったのは,関根さんがしきりに茶の話をしていたんですよ。そうなんですよ。今度はちょっと仲良くやって,もっと文化を作ってください。
 全国で,この町並みで,一斉に茶会を開くということをやったらどうか。そういう意味で,休日を作る。例えば,今日,全国で絵を飾りましょう。絵を飾る日,山の日,海の日があったら,絵の日もあっていいでしょう,茶の日もあっていいでしょうというふうな,何か皆さんで,いろいろな意味で,小さな部分での競い合いみたいな。「おっ,隣のうちは孫の絵を掛けたぞ,うちはどうしようか」と言っているうちに,だんだん大家の絵も掛けられるようになるかもしれないという持っていき方です。文化庁で休日を作るということをやったら,ファッションだって,茶だって,その中の日に入れていくということ。
 それから,同じように,田村先生,久しぶりでございます。前,よく議論を戦わせましたけれども,地方で,特に芸術文化の舞台という意味では,大変だと思いますが,最後のシナリオ,子供の言葉というのは響きました。もっともっと伝えていっていただけたらと思いまして,ちょっと長くなりました。失礼しました。

【熊倉部会長】  はい。ほかにどなたか,御意見,御質問のある委員はいらっしゃいませんか。
 はい。河島委員の手が挙がりました。

【河島委員】  私もファッションの信田さんにお聞きしたいんですけれども,大変面白い発表を頂きまして,また,私たちにとって新鮮な話ではなかったかと思います。
 2つ,お話があったと思うんですけれども,2つの種類のファッションがあるのではないかと。1つは,素材として,物すごくいいものを作っていて,海外のランバンとかおっしゃっていましたけれども,超高級ブランドのかなりの部分を担っていると。
 でも,それは,日本の力にもう一つならないというか,言い方は悪いですけれども,下請けであって,倉敷市の児島のことを,私,違う場で聞いたことがあって,この本にも書いてあります。そうすると,ブランドの方で,違うところに移っていってしまう可能性がありますよね。ですから,日本で独自のブランドを作っていって,世界に認められないといけないと思うんですね。
 そちらの話も,もう一つあったんですけれども,そちらについては,もの作りの素材もあるし,技術も非常に卓越したものがあるし,クリエーティブな力もあるんだろうと思いますから,連れていったりすると,海外の展示会場とかでは,高く評価されるというお話だと思います。
 それが,もう一つ大きな産業として,日本の文化産業として,世界にまだ羽ばたけていないのだとすると,その原因は何かなと。きょう,お話になるお時間がなかったと思うんですけれども,恐らくクリエーティブと,素材と,技術はあるけれども,それをプロデュースするとか,マーケティングしていく,ブランドとして発信していく,プロデュース能力みたいなものが,まだ日本には,もしかしたらないのかなと勝手に思っていました。
 あとは,もう一つ,大きな資本が付かないと,やはり今,グローバルに展開できないので,その辺がネックなのかなと思うんですけれども,これはちょっと感想と質問をまぜこぜに言っているんですが,御意見があれば,是非伺いたいと思いました。よろしくお願いします。

【信田日本ファッションウィーク国際ディレクター】  ありがとうございます。信田でございます。
 もともとうちの機構自体は10年前に作っていただきまして,繊維産業の中で業界団体は,多分200ぐらいあるんですけれども,皆さん,いずれも川上主導の,戦前に繊維,絹が,今の鉄,自動車みたいな立ち位置だったので,そこからの業界団体でして,どこもファッション政策をやるところがないということで,10年前に,えいやで経産省の中で作っていただいたのは,大変恩義に感じているところです。
 ただ,おっしゃっていただいたように,経済産業省となりますと,目の前の数字だけの指標になるということと,全部ぶつ切りになるということです。1回,1回の事業が全部ぶつ切りになって,毎年,毎年ゼロからスタートするということで,長期に一斉政策は執れないというところと,お話しいただいたように,素材もすごいし,ブランドもすごいんだけれども,何でそれが大きな固まりになっていないのかというところです。
 私は,7年前にうちの機構に来ているんですが,6年前から日本のファッションを海外に連れていって,プロモーションする事業を始めましたが,韓国は,更に15年前から始めています。現地でも,例えば日本のファッションウィークに来たいという著名なジャーナリストはいっぱいいるんですけれども,うちの予算では,今1人とか,2人とか,ワンシーズンに招へいができない。
 一方,韓国は,毎シーズン100人規模でジャーナリストを招へいしています。それだけ,国として構えている力と,パワーと,予算の差がございます。
 例えば,新興国であるタイのバンコクでもファッションウィークがありますが,タイのバンコクは,ついこの間,聞いて,ちょっとショックだったんですけれども,まだまだファッションは今からというところでもありますし,展示会というシステム自体も今からというところなんですけれども,そこでもワンシーズンに2億円,国が展示会のためだけに使っているんですね。
 うちは,今,一応,経産省との約束で独立しましたので,今は国内の事業には自立化しておりますので,ほぼゼロでやっておりますけれども,それぐらいの開きがあるというところで,要は,有能なクリエーターはいます。これは,世界一います。素材も世界一です。これを,声を大にして言ってあげる。海外に対して,自分たちで言ってあげるということが,余りにも,今,足りていないというところです。
 PITTI UOMOに行って,イタリア人,ヨーロッパ人が絶賛して日本に帰ってくるみたいな。その前に,自分たちで,もっと声を大にして,「うちは世界一です」と言いたいんですけれども,それが言えていない。それが,本当にオリンピックみたいなときに大きく言える,飛躍できるタイミングかなと思っております。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 ほかに,どなたかございませんか。
 はい,平田委員,どうぞ。

【平田委員】  はい。沖縄の平田でございます。
 今日は,全て非常にためになるというか,本当に毎回この会議に来ると,いつも感心するんですけれども,関根事務総長の道を大事にした教育の,次の世代に何をやっていくかというところ,それから,衛館長の,政府雇用を含めた人材育成と指定管理の関係とか,非常に興味深い話がいっぱいありました。
 私は2つ,短めに発言をしたいと思いますが,実は,つい先ほどスペインから帰ってきたばかりなんです。今日はスペインの,いわゆるWOMEXという,The world music EXPOという,世界音楽,ワールドミュージックの国際日本一みたいなものがありまして,そこに参加したときに,ガリシアとか,カタルーニャ,バスク,スコットランドのケベックとか,いわゆる独自の文化と言語等,非常に言葉を持っている地域というのが,とても力を発揮して,ますます頑張っているなという気がするんですね。
 今日,その中でも,JFWの信田さんのお話,それから,伝建の野村さんのお話なんかを聞いていると,やはりこれからは,地域とか地方の力に,もっと光が当たることが,とても大事になってくるのではないかと感じたわけです。
 具体的な提案といいますのは,1つは,そういったWOMEXのような国際的な音楽イベントというのを,例えば,しっかりと日本でも誘致をしてやってみるみたいな形のこと。WOMEX自体が看板化しているわけではないので,音楽的な国際イベント。これはなぜかというと,ワールドミュージックというのは,20年前から,結構大きく広がってきていますけれども,ファッションも含めて,いろいろと大きな,さっきのファッションショーのときの後ろの曲,BGMとかも,やはりその地域のものをベーシックにしながら,次の新しい作品というのが生み出されていると考えてみますと,是非WOMEX的なことをやるべきだなと。
 その際,丁野所長がおっしゃったみたいな,地域の連携に加えて,テーマの連携というのを掲げて,例えば沖縄であれば,言語と文化と言えば,もちろん独特ですが,同じようにアイヌであるとか,そういう彩りがある地域が連携をして,テーマを持って,1つのものをやっていくということは,とても大事かなと思いました。
 なので,具体的な提案の1つとしては,WOMEX的な国際音楽イベントを中心として,クリエーティブな世界観というものを,どう出したらいいかということを,思い切って沖縄も担えたらいいなということが1つです。
 もう一個は,そういったことも含めまして,地域,地方の伝統や習慣,文化をしっかりと宿すためにも,地域や地方の言葉,方言の保存,継承とか,基本的な施策から,重点施策に格上げした方がいいのではないかということを,最近,強く思います。
 というのは,沖縄は9月18日が「しまくとぅば」,9月18日,「くとぅば」ということで,「しまくとぅばの日」というふうに県で条例を制定しまして,非常にこの二,三年で,島言葉に関する力が発揮できているんですね。もちろん,大前提としてアイデンティティーの問題であって,これは飽くまでイデオロギーの問題には発展させない方がいいと,個人的には思います。しかし,アイデンティティーのルーツというのは,今後,ますます大事なテーマになってくると思うんですね。我が国の,それから,おらが町の,おらが村の,島のアイデンティティー,ルーツというのを,しっかり考えていく意味では,やはり地方や地域の言葉というのを基本的施策から重点施策に格上げするという感じにした方がいいのではないかと感じています。
 もちろん文化庁では,危機的状況の調査研究を行ったり,これも第3次基本方針の中でも基本施策にして,しっかりと位置付けてくれて,沖縄としても,そういったことを受けて,大きく動き出しているところではあるんですが,一歩間違えると,その取組が形骸化したものになりかねないなという気がしております。ですから,これは教育も含めて,全体的に,基本的施策から重点施策に格上げすることで,恐らく,もっと突っ込んだ形での,自分たちのアイデンティティーやルーツということを考えるきっかけになるのではないかなという気がしました。具体的な提案としては,是非その2つをお願いしたいと思っております。
 以上です。

【熊倉部会長】  はい。ほかに,どなたかございますか。
 はい。紺野委員,どうぞ。

【紺野委員】  紺野です。きょう,皆様の発表を伺って,日本の文化の底力というものを改めて感じました。ありがとうございます。
 その中で,可児市文化創造センターの衛館長に伺いたいと思います。可児市文化創造センターでのいろいろな取組,私も以前,出演させていただいたことがございまして,非常に田村副会長のおっしゃるような,質の高い創造活動が行われていると思います。
 今日,初めて伺ったのは,例えば,ゼロ歳児から3歳児を持つお母様とのワークショップですとか,不登校の子供たちが多い高校生とともに作るワークショップ,非常に芸術文化の幅広い可能性というものを感じました。そういった中で,可児市のような成功例が全国に広がるために,やはり質の高い芸術活動が全国に広がるために,最も必要なものというのは,もちろん予算とか,人材があると思いますけれども,その中で,プロデュース能力というものが特に必要であると思うのですが,その辺り,衛館長の御意見を伺いたいと思います。お願いします。

【衛可児市文化創造センター館長】  はい。ありがとうございます。
 やはり1つには,本当に人材がないということがあります。私ども,年間422回,こういうプログラムをやっているんですが,なかなか社会課題に対応するようなプログラムができる方がいらっしゃらないということが多くて,誰でも演劇や音楽,ダンスを知っている人間ならできるというものではないために,松本専務理事からも提案がありましたように,コミュニティ・アーツ・ワーカーのような人が育成できれば,一番いいなと。
 基本的には,みんなやりたいと思ってはいるんだけれども,社会課題も,一応分かっているんですね。地域で,今,何が問題なんだ,あるいは,この学校で何が問題なんだ,あるいは,この福祉施設が何を解決しなければいけないのかということは分かっているんだけれども,そこをつなぐ人材が余りいないと思います。
 日本で1970年代から養成ということが言われ始めて,およそ60年以上たっているんですけれども,そこのところが,全く育成できてこなかったというか,アーティストはたくさん出てきたんだけれども,コミュニティとつなげる,つながる人材が,なかなか育ってこなかった。そういう意味では,ちょっと偏った文化に対する助成であるとか,支援ということであったのではないかなと考えています。
 劇場に支援が来るようになって25年,ようやく2011年2月に閣議決定された第3次基本方針で,もうちょっと社会に自分たちの文化芸術の可能性,潜在力を還元しろということが言われて,そこから,皆さんの動きが非常に始まってきたんですけれども,まだなかなか人材がいないというのが一番の悩みですね。
 私どもは,劇団文化座さんと,新日本フィルハーモニー交響楽団さんと地域拠点契約を結んで,彼らにもいろいろなところに入っていってもらっています。そのほかに,コンテンポラリーダンスの新井英夫さんと,金沢の「Ten Seeds」というグループがあるんですけれども,金沢市民芸術村から生まれた,障害を持っている子たちと向かい合うアーツグループです。それぐらいで,しっかり人材がいないというのが,数多くプログラムを展開すると,なかなか悩みになってしまうということで,ここが抜けていると,幾ら補助制度ができても,なかなか動かないと思います。文化庁の補助制度の中で,活動支援というのを作っていただいて,普及・啓発ということで申請できるようになっているんですけれども,それをやる人材がいないというのが,一番難しいところかなと思っています。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 では,吉本委員。手短にお願いできますか。もうあと5分ぐらいで,質疑応答の時間が既にオーバーしてしまっていて,すみません。

【吉本委員】  今日は本当に幅広い話を伺うことができまして,大変勉強になりました。
 同時に,産業文化から始まり,茶の湯があり,文化会館があり,ファッションがあり,伝建がありと,これを4次方針にどうやって盛り込むんだろう,頭が痛いなと思いつつ,どれも重要な問題だなと思いました。
 その中で,私もファッションのプレゼンに大変興味があり,勉強にもなったんですけれども,経産省さんは,どうしても目の前の成果に注目しがちで,そこではない視点から,文化庁で何かできないかということでした。何か具体的に文化庁の政策に位置づけた方がいいような提案というものはないかなと。
 1つ私が思ったのは,経産省さんのプレゼンでも,先ほどの御説明でも,日本にはタレント,才能はすごくいますということだったんですけれども,例えばそういう人材を育成するようなことはどうだろうかと。文化庁さんは,若手の芸術家を育成する様々なプログラムを持っています。その中に,例えばファッションというのが1つ入ると,効果があったりするのかなと素人考えで思ったりしたんです。何か文化庁の政策として,こういうことをやってほしいという,具体的なことがあれば,御意見を頂けたらと思いました。

【信田日本ファッションウィーク国際ディレクター】  すみません。一言だけ。
 多分,大きく違うのは,経産省さんは,やはり最初から,マーケットの中でも,マスに行きたいんですね。なので,赤文字系も応援するし,コスプレもやるし,ファッションは横並びなんです。
 ただ,ファッションの構造で,残念ながら,そうはなっていませんでして,やはりヒエラルキーがはっきりしていまして,文化度の高いもの,クリエーションの高いものをやっていないと,全体を認められないといいますか,刺さらないんですね。
 そこは,やはり文化庁さんでないとできないと思っていまして,おっしゃるようにインキュベーションの部分,若手を育てるにしても,本当にエッジーでクリエーションのレベルが高くて,文化度の高い人で,対外的にも文化人に刺さるものをピックしてインキュベーションするというのは非常に大事です。これは絶対に底上げにつながるんですけれども,長期で見ないと底上げにならないので,そこは文化人,知識人に刺さるものをやっていくというのは,非常に大事なことだと思っています。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 ほかに,どうしてもという方はいらっしゃいませんか。
 今日は本当に実りの多いヒアリングで,我々の第4次方針にも,示唆に富むサジェスチョンがたくさんあったように思います。
 委員の皆様方,今日は,もう時間がなくなってしまったんですけれども,もう少しこういうことが聞きたいということがありましたら,事務局の方にメールで頂ければ,きっと皆さん方にメールで更に突っ込んだことを御回答いただいて,それをこの審議の場で御紹介していくことも可能かと思います。
 団体の皆様,本当にありがとうございました。大変有意義な議論ができました。
 皆様方は,ここで御退席を頂きましても,また,そのまま引き続き傍聴いただいても結構でございます。
 改めまして,重ね重ね御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 それでは,次の議題に移りたいと思います。冒頭にも御紹介いたしましたが,春から夏にかけて,今,衛さんからも御指摘がありましたが,第3次方針にはすごくいいことが書いてあるのに,一体これがどこまでできたのか,そのチェックをしなくていいのかということで,今日は事務局に現行の第3次基本方針の進捗状況の確認,今後の検討スケジュール,更には引き続き,今後のヒアリングの予定,また,第4次基本方針策定に当たっての論点抽出などについて,もろもろ併せて,資料の御説明をお願いいたします。

【平林課長】  それでは,まず初めに,第3次方針の進捗状況について,御説明いたします。事務局説明資料1という,資料2-1を御覧いただければと思います。
 現行の第3次方針のポイントと,特に重点施策の進捗状況についてまとめたものでございます。第4次方針策定を念頭に置いて,御覧いただければと思います。
 まず,1ページ目を御覧いただければと思います。これは,全体の第3次方針のポイントを整理して,それぞれの施策の進捗状況を1枚でまとめたものでございます。一番上,第1というのが,文化芸術振興の基本理念というものをまとめたところでございます。ここにございますように,文化芸術振興の意義と,振興に当たっての基本的視点というものを3点挙げているところでございます。
 こちらについて,現行の基本方針,東日本大震災の直前,平成23年2月に閣議決定されたということもございますので,震災対応であるとか,2020年の東京大会といった近年の諸情勢を踏まえた記述にしていく必要があるのではないかということがございます。
 中心的な施策については,第2の真ん中にあります,「文化芸術の振興に関する重点施策の進捗状況」というところを御覧いただければと思います。
 第3次基本方針におきましては,6つの重点戦略というものを立ててございます。それぞれの重点戦略に,更に重点的に取り組むべき施策というものを黒四角で幾つか掲げてございまして,このペーパーにつきましては,それぞれについて,どのような取組を実践してきたかという取組状況を例示として記載しているものでございます。
 まず,戦略1を御覧いただきますと,文化芸術活動に対する効果的な支援というものがございまして,その四角の初めですが,文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入。これにつきましては,赤字を御覧いただきますと,トップレベルの舞台芸術創造事業といった取組が行われております。
 また,2つ目には,アーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入という御提言がございますが,こちらについては,ここにございますように,現在,試行的導入を行っているところでございます。
 また,芸術・音楽堂等の法的基盤整備の検討ということがございますが,こちらにつきましては,御存じのように劇場法が制定されまして,また,指針についても策定がなされたところでございます。
 それから,美術品の補償制度についても,美術品の補償法,また政省令も策定されているところでございます。
 戦略2でございますが,文化芸術を創造し,支える人材の充実の2つの施策について例示として挙げてございますが,芸術家の育成支援,また伝承者への支援充実といたしまして,新進芸術家グローバル人材育成事業などの予算事業についての概算要求も,現在行っているところでございます。
 それから下,戦略3でございますが,子供や若者を対象とした文化芸術振興策の充実につきましては,芸術鑑賞機会,伝統文化等に親しむ機会の充実などのために,文化芸術による子供の育成事業であるとか,伝統文化親子教室といった事業を実施しているところでございます。
 それから,その右ですが,戦略4,文化芸術の次世代への確実な継承につきましては,文化財の適切な保存・継承,あるいは文化財に親しむ機会の充実といった提言がございますが,文化財の保存修理であるとか,アーカイブ構築の調査研究の段階ですが,そういったものの概算要求を行っているという段階でございます。
 続いて,戦略5,文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用につきましては,文化芸術資源の地域振興,また,観光・産業振興等への活用などのために,文化財総合活用戦略プランといった概算要求を行っているところでございます。
 それから,最後,戦略6でございますが,文化発信・国際文化交流の充実につきましては,海外公演・出展,あるいは国際共同制作等への支援充実などにつきまして,世界発信や,東アジア文化交流などの概算要求を行っているというところでございます。
 2ページ目以降に,全体の具体的,重点的に取り組む施策,それぞれについて,現在,講じている施策状況についての詳細を記載させていただきました。
 1ページ目の第3に,文化芸術振興に関する基本的施策とありますが,これは,文化芸術振興基本法の第3章の各条に沿った基本的な施策を列挙しているところでございまして,こちらについては,やはり同じように,各施策の進捗状況を踏まえながら,新たな基本方針に向けて施策を盛り込む必要があるのではないかなと思っております。
 2ページ目以降は説明を省略したいと思いますが,また,後ほど御覧いただければと思います。
 続きまして,資料2-2の事務局説明資料の丸2を御覧いただければと思います。
 1枚めくっていただきまして,まず1ページ目ですが,今後の検討スケジュールについてでございます。前回配付させていただいたものと大幅な変更はございませんが,次回,11月10日に開催いたしまして,地方公共団体やNPOの皆様からの御発表を予定しているところでございます。
 具体的には,次の2ページ目に,団体名等の予定を載せさせていただいております。
 それから,先日,委員の先生方から,ヒアリングすべき団体の御推薦を頂いたところでございますが,全ての団体にヒアリングするということは,ちょっと時間の関係上厳しいという面がございますが,一方で幅広い団体から御意見を伺って,次期基本方針の策定の際の参考にしたいと考えております。つきましては,直接お伺いできない団体につきましては,書面でのヒアリングに代えたいと考えてございます。
 具体的には,2ページ目の下の方に,書面でお伺いする団体を記載させていただきました。
 お願いする事項につきましては,次の3ページ目に,以下,聴取事項を掲げさせていただいております。基本的には,この場でヒアリングする場合と同じ内容にしているところでございます。
 続きまして,4ページ目を御覧いただければと思います。第4次基本方針策定に当たっての論点,大枠についての御議論をお願いしたいと思っております。第4次方針の策定に当たっての論点ということで,御説明させていただきます。お手元に第3次方針の冊子もございますので,必要に応じて御確認いただければと思います。
 まず初めに,全体構成についてでございます。4次方針の内容,構成をどのようにしていくかということが,まず議論としてあるのかなと思っております。参考には,第3次基本方針の構成を掲げてございます。第1,第2,第3とございまして,基本理念,それから第2で重点施策,そして第3として基本的施策という形で,3本の柱で構成したところでございます。この柱をどうしていくかという,そもそもの論点がございます。
 その上で,この構成を取った上でという形で御説明させていただきますと,まず,第1の柱について,文化芸術振興の基本理念というところでございます。こちらには,文化芸術振興の意義であるとか,文化芸術振興に当たっての基本的視点といった,長期的で普遍的な文化芸術振興の基本的な考え方というものを示しているところでございます。
 論点といたしましては,先ほど申し上げましたように,震災前に第3次基本方針が策定されているということもございますので,そういった震災での経験を踏まえた視点であるとか,あるいは2020年のオリンピック・パラリンピックの東京大会,更には,その後も見据えた視点というものを新たに盛り込むといった,昨今の社会情勢の変化も踏まえての加筆・修正等を行うという方向性が考えられるのではないかと思ってございます。
 続いて,第2の柱でございます,文化芸術振興に関する重点施策についてでございます。
 まず,構成についてでございますが,現行の基本方針におきましては,先ほども申し上げましたように,6つの重点戦略というものを,文化芸術立国の実現を目指すために掲げているところでございます。参考にございます,戦略1から6でございます。これらは,施策目的を6つに分けて,各施策の目的ごとに重点的に取り組むべき政策,施策をそれぞれ掲げているという構成になってございます。
 第4次基本方針に向けた今回の審議要請の諮問,3月末の諮問分につきましては,次の5ページ目に掲げてございますように,2020年を見据えた基本的視点,それから,人材の育成,地域振興,観光産業振興等,国際交流,更に体制整備といった大枠の構成というものを行っているところでございます。これにつきましては,2020年を目標にして,人材育成,地域振興,観光産業振興等,国際交流,体制整備という大枠の下で,それぞれ文化政策の在り方を総合的に審議するということに意義があるのではないかといった考え方に立ってのものでございます。
 一応,括弧書きに例示がございますけれども,例えば人材育成に関する施策については,現行の基本方針におきましては,幾つかの柱のところに,戦略の別々のところに記載されているということがございます。人づくりという観点に立つのであれば,共通と位置付けてもいいだろうということで,大くくりに1つにしているというものでございます。大臣の下で,3月28日に策定・公表いたしました文化芸術立国中期プランにおきましても,それに準じた構成となっているところでございます。
 第4次方針におきましては,このような諮問文であるとか,文化芸術立国中期プランの構成を参考とするかどうかというのが,1つの論点になるのではないかと思ってございます。
 続いて,6ページ目を御覧いただければと思います。内容についてでございます。
 例えば,ここに記載されているような施策というものが,重点施策として新たに盛り込む必要があるのではないかと考えてございます。いずれも,それぞれ,この7月にまとめさせていただきました,審議経過報告に盛り込まれている施策の例でございます。こちらを御覧いただければと思います。
 最後に,第3の文化芸術振興に関する基本的施策についてでございます。こちらは,文化芸術振興に関しまして,文化芸術振興基本法の規定に即しながら,網羅的に基本方針の対象期間中の施策を記載している箇所でございます。
 現行の方針に記載のある各施策の進捗状況を反映するとともに,例えば,今御紹介させていただきました,6ページに列挙させていただいたような新たな施策というものを,新たに盛り込む必要があるのではないかと思ってございます。
 参考までに,7ページ目に現行の文化芸術振興に関する基本的施策の構成を掲げさせていただきましたので,御覧いただければと思います。
 説明は以上でございます。

【熊倉部会長】  はい。ありがとうございました。
 残り時間20分でございますが,いかがでしょうか。まずは,加藤委員どうぞ。

【加藤委員】  第3次基本方針の進捗状況について御説明いただいて,ありがとうございました。
 こうやってまとめていただくと,非常に基本がある意味ではよく分かるというか,どういうふうに分かるかというと,それぞれの重点戦略に対して,文化庁としては誠実に施策を立案し,それに対する予算措置を講じたというところまでは分かるので,ここは頑張っておられるということは,よく分かりました。
 しかしながら,その結果,本来やろうとしていた理念にのっとった結果が出たのかどうかというところ。もちろん,第3次方針が,現に今,進行中であるし,そもそも文化のいろいろな施策について,政策の実現には,中長期の時間が掛かるということは十分理解した上での話なんですけれども,少しでもこういう効果が上がりつつあるとか,この部分では施策そのものを変えるべき必要があるかもしれないとか,そういう成果についても,是非,幾ばくかなりとも分析をしていただきたいなと思いました。そのことがないと,次の第4次に,特に何を重点的にやっていくかということが言えないのではないかと思うので,その点をよろしくお願いしたいと思います。

【熊倉部会長】  それは,多分,文化庁に聞いても出てこないような気がするので,この場で,正に……。

【加藤委員】  議論する。

【熊倉部会長】  ええ。その方がよろしいのではないかと,個人的には思っておりまして,幾ら言っても,いわゆるアウトプット指標しか出てこないんです。湯浅委員の御専門のところかと思いますが,アウトカム指標,更にはインパクトみたいなものは,なかなか因果関係を行政的にきちんと責任がある形で出すことは難しいと思いますので,この委員会で皆さんに御評価いただければと考えておりますが,河島委員。

【河島委員】  この委員会の評価というのは,なかなか難しいと思うんですけれども,加藤さんがおっしゃっていたのは,政策の評価がないということなんですね。確かに,よくやっていらっしゃるということは分かるけれども,そうすると,最初からこういうのがあって,そこに合わせた形で,実は第3次方針を作ったのではないかと,意地悪に見ると,そう見えてきます。
 本当は,理想を言えば,私が最初にお願いしたときというのは,どこか調査機関のようなところに依頼するなりして,政策評価をある程度してほしいというのが,本当の一番の理想だったんです。時間と予算の関係から,なかなか難しいのかなとは思うんですけれども,この場で議論できるのかなと。

【熊倉部会長】  でも,御指摘いただけることがあれば,例えば,先ほど衛さんや田村さんから,第3次方針の中で,「社会包摂的な」という言葉まで使って述べているにも関わらず,一体それに関してのイニシアティブがあったのかみたいなことは,不明なのではないかということが出てくると,いや,それはこうやったんですと出てくるのではないかと思います。
 また,今日の今日で,すぐに御返答は難しいかと思いますが,私が吉本さんも一緒でしたけれども,幾つかの支援プログラムでは,成果に関して助成を受けたところから,吉本さんが設計してくださった,かなり詳細な評価シートに従っての評価事業みたいなものをやってきて,議論までしていて,そこから抽出された次への課題みたいなものが,何で載っかってこないのかなという気はするんです。そこら辺のところを,今日は突くので,終わりではないのかという気がしないでもないですが。
 吉本委員,次に湯浅委員。はい。

【吉本委員】  まさしく,今,河島さんがおっしゃっていたような評価というのが,予算をどれぐらい投入しましたという話なので,インプットしかないんですね。アウトプットがないと思うんです。
 第3次方針の中に,留意事項でPDCAサイクルの確立というのが明記されていて,第3次方針ができた後だったと思いますけれども,うちの研究所で委託を受けて,文化政策の評価に関する調査をやらせていただきました。
 実際,熊倉会長がおっしゃっていたのは,レジデンスの事業だと思うんですけれども,それを参考にした評価が行われているものもある。ほかにも同じように助成金を審査する過程で,何か評価なり何なりが行われていると思いますので,余り体系立ってきっちりしたものを今からというのは,とても大変だと思いますけれども,そこで議論されていること,こういうことは成果だったけれども,ここは課題だよねみたいなことを,是非もうちょっと出していただけたらなと思います。
 それから,事務局説明資料の2番に関してなんですけれども,これを今後どうまとめていくかということなんです。ここの中の,例えば6ページに,内容についての考え方で,施策の例というので,このうちの5番目のところに,「省庁横断的な文化政策の戦略の検討」というのが出ていて,福祉,教育等々あります。それで,その右側に,施策の構成が出ていますが,恐らく,この文化芸術の振興そのものの中に入らないものを重点施策として柱に立てるというのはどうかなと。
 つまり,従来の文化芸術プロパーのことは,もちろんしっかりやっていかなければいけないんですけれども,それ以外のものですよね。ですから,今日のファッションの話なんかも,多分,基本法にファッションは入っていないでしょうから,本当にその典型だと思うんですけれども。
 そういうものであったり,創造産業系のものですよね。これは,創造産業と言った途端に,経産省とバッティングするので,違う表現がないかなと,さっきから考えているんです。例えば,創造的文化資源をどうやって作っていくかとか,あるいは創造的な才能をどうやって育成していくといったときに,いろいろな違うものが入ってくると思うんですね。
 それと,教育や福祉のことがここに書かれているので,基本法に基づいて,この基本的な方針が作られるわけですけれども,法律ができて,もう十数年たっているわけですから,この中に入っていないものも,方針としてちゃんと打ち出していきますよというのを,是非,柱として立ててはどうかなと。その書き方次第で,非常に新しい第4次ならではの特色が出るのではないかなと思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】  そうですね。ちょうど2020年に振興基本法ができて20年なので,それに向けて,少し委員の中からも,文化の定義についての御質問があったこともあります。そこをどう捉えるのか,余り片仮名を使うと,また国語審議会から怒られてしまうけれども,「文化政策のパラダイムシフトを明確にしていくべき」くらいのことは書きたいかなという気はします。
 湯浅委員,お待たせしました。

【湯浅委員】  資料2-1のところについて,今,皆様,先生から御意見があったとおりだと思うんですけれども,特に個人的に,今ここで重点的戦略に合わせた施策を見ると,いろいろやっているなという印象を受けます。
 今日の公文協さんのプレゼンテーションと,衛館長のお話を伺うと,非常に危機的な現場の状況というのが,とてもにじみ出てきていて,特に10年後の人材が非常に心配だというのは,どうにかしないと,10年後どうなるんだろうということをおっしゃっているように理解しました。
 もう一つが,芸術立国と言っていますが,その前提となる文化芸術と社会との関係性といったものの言葉がまだ弱い。あとは,社会とか教育,福祉,その他のところの,具体的には現場でこういった施策を反映して,いろいろな活動が生まれていて,皆さんのところでもやっていらっしゃると思いますが,実際どういう効果,インパクトがあるのかということが,日本全国の中で言語化されていないということもあるんだと思います。
 1つは,こういうヒアリングの中で,資料2-1で漏れている,特にニーズだと思うんです。何が足りなくて,どこが危機なのかというところに合わせて投資をしないと,もう間に合わないということだと思います。まだこの後のヒアリング,とかく書面でもかなりの団体がある中で,今の課題というか,2020年の期待というのは,リクエストになるわけですけれども,一体どこが問題点なのか,何が足りないのかというところ,特に今の設計図ですと,例えば,人材とか,社会との関係とか,幾つかあると思いますので,今日の議論の中では,地域でプロデュースできる人材が足りないとか,言語化をどう継承していくという,まだその手法がないのかなという気もしますので,そこを強くしていくといいと思いました。

【熊倉部会長】  はい。ありがとうございます。
 片山委員,どうぞ。

【片山部会長代理】  これまでの議論やヒアリングの中で,かなり多様な視点で物を見ることができるようになってきたかなという認識を持っています。
 ただ,非常に重要なところで抜けているということで気になっているのが,学校教育の問題です。この審議会に他省庁の方々が出てくださるようになったのは,すごく大きな進歩だと思うのですけれども,肝心の文部科学省の学校教育の担当の方がここにいらっしゃっていないんですね。
 学校教育の中で,芸術や文化の重要性,社会的な意義をきちんと教育することは,すごく重要なことなのに,現在の学習指導要領の中ではそれができていない。その問題が,地方の教育委員会の中での文化や芸術に対する閉鎖的な対応につながっていると思います。地方自治体の教育委員会の改革とか,自治体のスタンスを変えるためには,文部科学省の学校教育の政策の中における芸術や文化の位置付けを,文化政策のプランと整合性の取れたものにしていく必要があると思うのです。
 ですので,ヒアリングという形よりは,むしろ素案を作っていく段階で,かなり膝を詰めた議論を学校教育の担当者の方々とやることが必要なのかなと思っております。これまでも,なかなかできなかったことなので,一筋縄ではいかないと思いますけれども,今回はその辺のところにまで踏み込みたいなと思います。

【熊倉部会長】  では,加藤さん。

【加藤委員】  さっきからの評価の話と絡むんですけれども,実は文部科学省全体の政策評価に関する有識者会議というのがありまして,そこに私は参加させていただいていて,文化庁の政策についても,再々そこでいろいろ意見を申し上げています。例えば,それをフィードバックしていただくだけでも大分違うと思うので,せっかく評価をしているのに,何もフィードバックされないのはいかがなものか。
 その際に,文部科学省全体の政策についても,いろいろ議論をしているので,そういうこともひっくるめて,その中で,今言われた,学校教育の中で文化に関わる部分についてのコメントがあれば,そういうものも併せてフィードバックしていただくと,すごく分かりやすくなるのになと思いました。

【熊倉部会長】  はい。ありがとうございます。
 きっと委員会の数が多過ぎて,覚えていないのかもしれないですね。今日の今日は難しいと思いますので,是非,次回に向けての宿題とさせていただければと思うんですが,ほかに……
 はい,武内委員,どうぞ。

【武内委員】  はい。コングレの武内です。
 文化の御専門の先生ばかりですので,話すのを控えてしまいがちなのですが,方針について,特に文化という大きな視点からやるべきことを把握して発言するというのは,私にとっては,とても難しく感じます。
 確かに第3次と第4次で明らかに違うことであり,チャンスとしても外せないのがオリンピックでしょう。もう既に予算措置をはじめ,いろいろなところで反映なさっていると思いますが。 MICEや観光関連の仕事をしていましても,やはり今,一番問題としてあがってくるのは,情報の発信と人材育成と地域振興という,これは同じテーマです。
 オリンピックは,16年にリオが終わりますと,多分,これに絡めた情報発信のまたとないチャンスということになるでしょう。専門の方の育成とか,それぞれの文化の専門分野のところについては発言できることはないのですが,それ以外,私自身もですが,「文化」について余り詳しくない一般の人も,オリンピックというテーマがあったら,そこを入り口としていろいろな文化情報を受信し,また発信する機会を得て,広がりが生まれるのではないでしょうか。もちろんカルチュラル・オリンピアードという具体的な機会もあります。
 そこに向けて,内外のうち,特に内側の国内へのPRということがあります。海外にPRするチャンスも,ちょうど多くなる。海外で情報発信をすると,ファッションの話にもありましたけれど,それが国内に戻ってくるということもあります。裾野を広げる意味での情報発信,また人材育成の施策が,この機会に第4次に載るようにと思っております。
 それから,地域振興。本当にちょうど地域,地方という話が,政府の方でも強くあるところですので,これを第4次に載せて,今,それぞれ御発表のありました地域の施設の力にもなればと思います。

【熊倉部会長】  はい。ありがとうございます。
 三好委員,どうぞ。

【三好委員】  はい。ありがとうございます。
 ちょっと細かい,具体的なことで,お願いなんですが,資料2-2の今後の進め方に関連します。きょうは野村市長さんにお越しいただいて,ただ,今回は伝建地区だけのお話だったので,次回,八戸市,小田原市が入っておられるので,そこでは,またいろいろお話が聞けると思います。
 先ほど,田村代表理事がおっしゃったように,これは行政サービスではなくて,文化政策としてしっかりやっていく。そのためには,県なり市町村のトップの意識というのが,非常に重要だろうと思います。
 例えば,オリンピック文化プログラムの関係でも,今,各都道府県で,それに関連して,どうしようかという議論が,もう始まっているようですし,前回の話にもありました,具体的にどう進めていくのか。全国でやるという話は分かったんだけれども,それを具体的にどう進めていくのかというのが,これから非常に重要なことです。そういう意味で,是非,もっと地方自治体からの意見を基本方針の中に反映させる,あるいは逆に基本方針が自治体の人たちにちゃんと届くように,文化関係者に届くのはもちろんなんですけれども,ちゃんと行政政策として,自治体のトップに届くようにしていただきたいなと思います。
 そういう意味では,今回のヒアリングの中に市は入っているんですが,県が入っていないので,ここでヒアリングできればいいし,できなければ,どこかで,それをちゃんと意見として取り入れていただきたいなと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 馬渕委員から,すみません。

【馬渕委員】  お帰りになってしまって残念なんですが,先ほど,伝建の保存について,大変興味深い御発表を頂きまして,ただいま,三好委員もおっしゃったように,古いものを保存する。日本が長い期間を掛けて作ってきたものを保存するということが,そういうことを提案すると,皆さん当たり前だと思われるし,当たり前のように考えられていると思いますが,実際には,あるものを保存するというのは大変な苦労が要ると思いますし,例えば,建築物などは人が住んでいる。そうすると,そこで生活スタイルが変わってきても,なおかつ,それを保存しなければいけない。基本的には,いろいろな補助とか,いろいろな免税とかの施策があっても,やはりそこは個人の持っているもので,それを個人の意思を統一しながら保存していくのは,いかに大変なことかということを,今日は特に教えていただきました。
 それと同じように,私どもは文化財というか,美術品を扱っている側としても,そういったものが日々老化していく,日々傷んでいくわけなので,もう既にあるもの,国民の財産としてあるものを,やはりどうやって保存していくかということを,もう少し力を入れていただきたいなと。
 つまり,ここでアーカイブという発想がありまして,アーカイブの場合には,デジタル的に保存するという1つの考え方があり,それに対して,もう一つは物を保存するという,2通りの保存の仕方があると思うんです。両方とも極めて必要なので,アーカイブも大事ですし,物そのものを保存するということの両方の面で,今までずっといろいろな形でやってきてはいるんですけれども,特に人材の面でも,まだまだ足りないということがあると思います。
 ですから,なるべくできることとしては,そういうものを保存すると同時に,保存するプロセスが見えるような形で,国民に発信していく。例えば,ある建物をどうやって保存してきたのか。どうやって,これから保存していくのか。あるいは,ある美術作品をどうやって修復し,どうやってふだんから保存していくかという形で,何となく古いものを保存するよりも,いろいろな新しいプログラムは魅力的なんですけれども,それと同じように保存,それから活用といったところを,もう少し具体的な必要なものとしての評価をしていただきたいなと思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】  平田委員,お待たせしました。はい。

【平田委員】  すみません。付け加えで,忘れていました。
 きょう,チラシを入れさせてもらっているんです。1枚は,先ほど言ったチラシと,赤い方は,僕が手掛けている舞台のチラシです。
 今日の話を聞きながら,2020年までに重要なのが,ローカルコンテンツ,それもハイパーローカルコンテンツというものと,ネクストジェネレーションという2つのテーマだなと,とても感じるんですね。つまり,次の世代に,一体何をどういうふうにつないでいくかという,教育的な分野だけではなくて,それをクリエーティブな分野が次の世代を育てるということを,本当に積極的にやっていくということを実際にやっている取組なんです。それを沖縄で試行的にやっているんですが,11月に,それをしっかり頑張ってやっていきたいというので,チラシを折り込ませてもらいました。
 先ほど,地域の言葉の話もしましたけれども,第4次の,正にこれから討議が始まる中で,地域,地方がもっと力を発揮できるような取組や仕組みを作れたらいいなと感じています。
 以上です。すみません。

【熊倉部会長】  はい。ありがとうございました。たくさんの御意見を頂戴いたしました。
 残念ながら,第3次方針の評価については,なかなか議論が進んだとは言いにくい状況のような気もします。また,もう一回,11月に引き続きヒアリングなどがございます。それから,夏に皆様に申し上げていた概算要求についてのペーパーも頂戴もしています。概算要求自体は,どうこう言えるような段階ではないと思いますが,実際の実施に当たって,もうちょっと政策的に配慮すべきところがあるのではないかと感じました。
 その辺も,次回また,きょうと同じように,もっとこうすべきという点を絞っていきまして,12月から起草のワーキングが始まりますので,皆様方のここでの御意見を基にしながら,起草の作業に入って,またこちらにお諮りさせていただくという作業になろうかと思います。
 せっかく最後まで残ってくださったので,すみません,私も質問したかったんですけれども,皆さん,いつもここで熱い議論があり,全然そのすきがありませんでした。
 松本さん,コミュニティ・アーツ・ワーカーという御提案を頂いて,我々もそうした専門職を何とかしないといけないのではないかということを言っておりますので,お忙しい中,大変恐縮なんですが,もうちょっと具体的なイメージとか,なぜそういう名称になさったのかとか,お考えがあれば,また後日,事務局の方に教えていただければと思います。
 田村さんにも,是非,質のいい,ちゃんと感動させられるアウトリーチをやるのに,芸術家の方も全然意識が足らないということもありました。これは,衛さんからも御指摘があったことですが,何か,ただ出前に行けば,教育普及だ,社会との連携だと言いがちなんだけれども,そこにどういったことがないと,本当に社会を動かすというか,意味のあるようなことにならないのかということについて,もし追加で分かりやすい御意見などがあれば,お寄せいただきたいと思います。
 信田さんも,今日,突然,振られてだったと思いますので,経産省だけではなくて,文化庁でこういう視点の部分をやってくれたらいいのにということ,すごく具体的なことでも,あるいは人材育成の問題という抽象的なことでも結構ですので,また追加で御意見を頂ければと思います。
 皆さん,本当にありがとうございました。
 少し,時間が延びてしまいましたけれども,本日の部会はこれにて閉会とさせていただきたいと思います。
 では,事務局にお戻しします。

【内田調整官】  御議論ありがとうございました。
 まず,日程のお話に入る前に,幾つか,今回の宿題が出されたと思いますので,次回までにまとめまして,また改めまして報告させていただきたいと思います。
 特に政策評価のインプット,アウトプットではなくて,アウトカムとか,定性的な評価という部分に関しまして,23年度から吉本先生のところに調査研究を頂いて,その後,日石総研さんの後は,富士通総研さんに,吉本先生のところで作っていただいた評価票を試行して,成果や課題が見えてきている部分もありました。
 先ほど,加藤委員からもお話がございましたとおり,文部科学省全体としての政策評価の中での議論の中で,成果や課題として指摘いただいているようなこともございますので,そういった,現時点で私どもが成果や課題として把握できているものに関しまして,また改めまして御紹介させていただきまして,御意見を頂きたいと思っております。
 またもう一つ,三好委員から意見がございました,都道府県へのヒアリングでございます。これに関しまして,今後,起草ワーキンググループで案を作っていただくわけですけれども,その原案が練られていく過程の中で,国民からの意見募集ということも考えております。そういった手続の中で,自治体や,都道府県知事会とか,様々な団体の皆様へも御意見を広く伺っていきたいなと考えております。
 そういった手続などの過程で,幅広く意見を伺い,答申に反映できる部分があれば,反映させていきたいなと思っているところでございます。
 今日,いろいろ御意見を賜りまして,宿題として感じているところは,以上でございます。
 今後の予定でございますけれども,先ほど事務局からの御説明にもありましたとおり,11月10日に国際交流基金,八戸市さん,小田原市さん,NPO法人・アートNPOリンクさんからヒアリングを頂きまして,第4次方針に向けて,様々な御意見を賜ってまいりたいと思っております。
 間,2週間しかなくて,非常にタイトなスケジュールで恐縮でございますけれども,また次回,どうか御出席いただきますように,よろしくお願い申し上げたいと思います。
 事務局からは以上でございます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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