文化審議会第12期文化政策部会(第9回)議事録

平成27年1月19日

【内田調整官】  お疲れさまでございます。それでは定刻ですので開会させていただきたいと思いますけれども,まず,宮田委員と大林委員につきまして,若干遅れるという御連絡を頂いております。
 開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。最初に,議事次第がございまして,その次に名簿がございます。資料1-1といたしまして,第4次基本方針の骨子の議論のたたき台。資料1-2といたしまして,第4次基本方針の本文の議論のたたき台。資料2といたしまして,事務局の説明資料でございます。それと,机上の左側ですけれども,紙ファイルに閉じさせていただいておりますが,基礎資料とそのほか,片山委員からは,全国アートマネジメント会議のブルーの1枚紙を置かせていただいております。資料は以上でございます。もし過不足などございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,熊倉部会長,よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】  では,ただいまより,文化政策部会第9回を開催させていただきます。昨年は大変回数の多い開催に皆様お付き合いいただきまして,ありがとうございました。少し間があきましたが,今年も是非活発な議論をよろしくお願いいたします。お忙しい中,お集まりいただき,ありがとうございます。
 本日は,第4次方針基本方針策定のためのたたき台というものが出来上がっておりまして,こちらにつきまして,皆様から御意見を頂戴できればというのが中心でございます。最初に,私からワーキンググループの検討状況などについて簡単に御報告をいたしまして,それから,皆様と自由討議を行いたいと思います。
 ワーキンググループは昨年2回,開催をされまして,事務局で作成いただいた骨子に従って,今回どういうことを目指すべきかということを昨年度,話合いを致しました。二度にわたって,骨子に関するこういう整理の仕方でいいのではないかということが話し合われたのですが,それで年末になりまして,冬休みの間に,今,皆様のお手元にある第1次の草案が作文として出てまいりました。ただ,これに関しましては,ワーキンググループで詳細に検討したわけではございませんので,ワーキンググループのメンバーの皆様からの御意見を頂いて,それを反映できることは反映していると思いますが,まだ完成版ではございませんので,どうぞ委員の皆様方からワーキンググループに遠慮なく忌たんのない御意見をたくさん頂ければと思います。
 それでは,早速,事務局から本日お示しいただいている第4次基本方針のたたき台の御説明をお願いいたします。また,併せて今後の審議スケジュールや最近の文化政策の動きについても御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【平林課長】  それでは,まず初めに,今,部会長からお話のございました,たたき台についてお話したいと思います。
 今ございましたように,答申起草ワーキンググループを12月1日と15日の2回にわたって開催させていただきました。部会長,片山代理,太下委員,吉本委員,湯浅委員の5名で,たたき台について御議論いただきました。そこで御議論いただいた骨子が,資料1-1に当たります。
 まず,こちらを御覧いただければと思います。現行の基本方針を左側に書いてございます。基本方針は大きく3部構成になってございまして,第1が,国家戦略としての文化振興の方向性。第2が,文化芸術振興に関する重点策。そして第3が,文化芸術振興に関する基本的施策となってございます。
 第1が,総論的に今後の方向性を語り,第2が,基本方針対象期間中の重点戦略。そして第3が,文化芸術振興基本法に定める分野ごとに文化政策を総論的にまとめた部分でございます。
 その資料の1-1の1ページ目で,第1部分の現行の基本方針との比較を色ごとに矢印で示してございます。アンダーラインを引いておりますが,そちらが新規に追加しようと思っているところでございます。キーワードだけですけれども,御紹介させていただきますと,まず,第1の1で,諸情勢の変化への対応といたしまして,東日本大震災の経験,2020年東京大会の決定。それにより,文化プログラムで東京一極集中を打破していく必要性。それから,地方の衰退・疲弊,地方創生の必要性といったものを入れさせていただいております。
 2といたしまして,我が国が目指す文化芸術立国の姿でございます。文化資源が我が国の最大の資産であるとの認識で,2020年に文化プログラムを全国展開し,2030年に目指す姿としては,営利,非営利を問わず,多彩な人材がいきいきと文化活動で活躍している姿を掲げさせていただいております。
 それから,3の文化芸術振興の基本理念といたしましては,文化芸術が持つ社会包摂機能に着目していくこと。領域横断的な施策展開。それから,政策評価の必要性,地方公共団体の文化政策の推進といったものを挙げさせていただいております。
 また,1枚めくっていただきまして,2枚目には冒頭申し上げました重点戦略についての比較表を掲げさせていただいております。現行,3次方針では6つの戦略を掲げておりますが,今のたたき台では5つの戦略という形でまとめております。
 戦略1は,「地方の文化芸術振興への支援・基盤強化」といたしまして,多様な主体による活動への支援。伝統と現代をつなぐ文化政策。地方のアーツカウンシル。障害者の芸術活動。公演,イベント情報の国内外への発信といったものを新たに掲げさせていただいております。
 戦略2でございますが,「芸術家,芸術を支える人材,鑑賞者の育成」といたしまして,子供や若者の育成,地方の人材育成であるとか,指定管理者制度の課題を踏まえた留意事項といったものを新たに掲げさせていただいております。
 戦略3でございますが,「次世代への継承,地域振興等への活用」といたしまして,東日本大震災被災地からの発信。日本遺産,ユネスコ世界文化遺産,無形文化遺産への登録推進であるとか,水中遺産というものを新たに掲げております。
 戦略4でございますが,「文化の多様性尊重の機運醸成,国際的な相互理解の推進」といたしまして,MICEとの連携であるとか,日本語教育の推進を新たに掲げさせております。
 戦略5でございますが,「文化振興のための体制の整備」といたしまして,国立のアイヌ文化博物館,文化政策に関する調査研究,デジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度等の整備を新たに掲げさせていただいているところでございます。
 こういった骨子をベースに,部会長からございましたように,文章で起こしたものが,資料1-2のたたき台でございます。先週,事前にこの資料につきましては,あらかじめ委員の先生方には送付させていただいておりますので,詳しい資料は省きたいと思いますが,現行の3次方針から大きな変更のあった箇所につきましては,下線を引いているところでございます。
 まず,3ページ目を御覧いただければと思います。第1の部分でございますが,東日本大震災の経験で,文化芸術の力が再認識されたことであるとか,2020年東京大会を契機とした計画的な文化振興についての記載をさせていただいております。
 それから,4ページ目には,第1の2として,我が国が目指す文化芸術立国の姿について記載をしております。2020年,それから,2030年をも見据えて文化芸術によって立つ国づくりを目指そうという理念を掲げてございます。
 それから,6ページ目には,第1の3といたしまして,文化芸術振興の基本理念を記載しております。こちらには,第3次方針の記載を継承しつつ,しっかりと政策評価を行っていく必要性であるとか,次のページには,地方公共団体における施策展開について触れてございます。
 8ページ目,第2の文化芸術振興に関する重点施策でございます。1に,先ほども申し上げました「五つの重点戦略」を整理させていただいております。
 まず,重点戦略の1でございますが,地方の活動への支援をまとめてございます。前書きには,地域の文化芸術活動の重要性であるとか,文化芸術活動の従事者が希望をもって活躍できる環境の整備を掲げております。
 四角の中に重点的に取り組むべき施策を幾つか掲げてございます。例えば,4つ目の四角でございますが,2020年に向けて「創造都市ネットワーク日本」加盟の自治体が,文化プログラムの実施拠点になっていくということ。
 それから,5つ目の四角には,日本版アーツカウンシルと地方版のアーツカウンシルを想定した記載を行ったところでございます。
 そして,9ページ目の上の四角でございますが,障害者の活動への支援を掲げております。
 8つ目,最後の四角ですけれども,企業メセナのファンド等について触れてございます。
 それから,重点戦略2は,人材育成策についての記述でございます。同じように四角の中の施策について紹介いたしますと,最初の2つの四角については,学校教育などの取組を掲げてございます。
 3つ目の四角ですが,地方の人材育成でございます。
 5つ目の四角でございますが,指定管理者制度の課題を踏まえての留意事項の周知について触れてございます。
 それから,10ページ目は重点戦略の3でございます。文化資源の継承であるとか,関係行政機関との横断的な連携方策についてまとめてございます。
 同じように,重点施策について御紹介いたしますと,3つ目の四角でございますが,2020年を見据えて,被災地からの世界発信といったものを記述させております。
 次の4つ目の四角については,日本遺産について記述をしております。
 それから,6つ目の四角には,ユネスコの世界文化遺産,無形文化遺産への登録の推進。その次の四角には,水中遺産。
 そして,最後の四角については,省庁横断的な施策展開の必要性を掲げてございます。
 次の11ページ目,戦略4でございますが,国際的な施策をまとめてございます。
 同じように重点施策について若干御紹介いたしますと,4つ目の四角で,アーティスト・イン・レジデンスの取組の整備であるとか,5つ目の四角におきましては,MICEとの連携といったこと。それから,7つ目の四角ですが,東アジア域内の文化交流の促進といったこと。最後の四角には,日本語教育の推進を掲げてございます。
 12ページ目には,重点戦略の5といたしまして,4つの戦略までの基盤として,体制の整備をまとめておるところでございます。
 最初の四角には,国立文化施設の整備について。2つ目の四角には,分野横断的なアーカイブの基盤整備といったことを掲げております。4つ目の四角については,エビデンスに基づく文化政策展開の必要性。それから,最後の四角には,著作権制度の整備を掲げてございます。
 それから,13ページ目でございますが,第2の2といたしまして,全ての戦略,共通の配慮事項といたしまして,2020年を見据えての文化プログラムの育成。それから,文化プログラムに向けた環境整備,発信強化といったものを掲げてございます。
 14ページ目以下には,目指す成果指標例を掲げております。上から申し上げますと,約1割の首長さんが,文化政策を政策の中心に据える状況を創出していこうといったこと。
 それから,2つ目には,各地の文化力を「面」で発信する状況といたしまして,日本遺産や歴史文化基本構想を100程度目指そうといったこと。
 3つ目の黒丸では,世論調査で国民が誇りとして「文化・芸術」を掲げる割合であるとか,次の4つ目ですが,地域の文化環境に満足すると回答する割合を6割にしていこうといったこと。
 一番下ですが,寄附の割合を倍増しようということ。
 次のページの上ですけれども,子供の鑑賞・体験機会を義務教育期間中に毎年1回を目指そうといったこと。
 それから,鑑賞活動の割合として,例えば,1年間に鑑賞活動するものの割合を,8割を目指していこうといったこと。
 それから,年間の訪日外国人を,2,000万人を目標にしていこうといったことを掲げてございます。
 16ページ以下には,第3の基本施策について掲げてございます。こちらについては,基本法,法律の規定の条項に併せまして,網羅的に関連する文化政策を記載する部分でございます。第2の重点施策とも大分重なってはおりますけれども,下線部がところどころ引いているかと思いますが,時点更新等行って,新たな制度改正等も加えてございます。
 例示だけさせていただきますと,17ページ目の一番下には,平成24年に公布・施行されました古典の日に関する法律の趣旨を踏まえた記載をしております。
 また,27ページ目を御覧いただきますと,これも平成24年に施行されました劇場法の趣旨を踏まえた記載なども追加しているところでございます。
 簡単でございますが,第4次基本方針のたたき台についての説明は,以上でございます。
 続いて,説明だけ先にさせていただきたいと思います。資料2の事務局説明資料を御覧いただければと思います。
 1枚めくっていただきますと,今後の検討スケジュールの記載がございます。今,こうして第4次の基本方針の検討を頂いているところでございますが,この部会の後,来月の2月4日と18日に引き続き,答申起草に向けたワーキンググループを開催したいと思っておりまして,それを踏まえまして,3月2日に再びこの部会の原案についての御議論いただきます。その後,3月16日月曜日に今の文化審の総会を開催いたしまして,パブコメを行って,4月の上旬に答申を頂いて,4月下旬に基本方針の閣議決定を目指していきたいと考えてございます。スケジュールは以上でございます。
 続いて,2ページ目を御覧いただければと思います。こちらの委員の皆様方から御紹介いただきました,各団体から書面でヒアリングを実施いたしました。昨年の11月から年末にかけまして,取りまとめたものでございます。2ページ目と3ページ目には,その概要をかいつまんで整理させていただいております。4ページ目以降には,実際のそれぞれの団体からのヒアリング,書面の内容を添付させていただいておりますので,後ほど御覧いただければと思います。
 それから,34ページ目を御覧いただければと思います。先週の1月14日に政府の27年度の予算案が閣議決定されたところでございます。文化芸術関係予算について簡単にまとめたものが,この資料でございます。27年度につきましては,今年度から2億円増の1,038億円を計上しているところでございます。主要な施策については,34ページ目に丸として2つ掲げてございますが,文化遺産の活用の視点からの整備推進といたしまして,文化財総合活用戦略プランの創設等々,今年度より14億円増の92億円を計上しているところでございます。
 それから,2つ目の丸には,2020年の文化プログラムに向けての経費といたしまして,120億円,今年度9億円増の予算案を,現在,計上しているところでございます。
 次の35ページと36ページにそれを若干詳しくした内容,内訳を記載させていただいておりますので,こちらも後ほど御覧いただければと思います。
 続きまして,37ページ目を御覧いただきたいと思います。先般,2020年に向けた文化イベント等の在り方検討会というものを立ち上げたところでございます。先月12月17日に第1回を開催したところでございます。次のページにその名簿を記載しておりますが,この文化政策部会からは吉本委員にも参加していただいています。本文化政策部会におきましては,2020年や2030年を見据えての文化芸術立国実現のための方向性につきまして御議論いただいていますが,資料にお付けしましたこの検討会につきましては,2020年にどんな文化イベントが考えられるかといったアイデアを発表いただく会という位置づけでございます。12月17日の会議におきましては,出席委員から自由討議という形でアイデアを頂いたところでございます。今後,いろいろとアイデアが出てきますと,例えば,吉本委員から政策部会で状況を報告いただくなど,本部会とこの検討会との双方の連携も考えていきたいと考えてございます。
 事務局からの説明は,以上でございます。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 それでは,以後は自由討議を行いますが,いかがでしょうか。どなたからでも結構ですので,お手を挙げていただければと思います。
 では,加藤委員,お願いします。

【加藤委員】  前回拝見したものから見ると,さすがにワーキングを経てすばらしい内容だと,その点は非常に良くなったと理解をいたしました。その上で,ざっと拝見しただけですが,懸念というか,もう少し御配慮いただけるといいかなと思う点が2点ありましたので,その点について申し上げたいと思います。
 1番目は,例えば,9ページの上の方の四角に,「企業メセナ協議会が構築をした基金をはじめ,民間団体等が設ける様々な基金への寄附等への協力を,民間企業等へ要請する」とあって,この基金にも言及していただいた点は非常に有り難いなと思うのですが,全体を読んでいると,企業に期待していることは金だけだと読み取れるわけです。それで,企業メセナが開発してきた,いろいろなソフトがあって,そうしたものと連携しようという姿勢が,どこにも全然記載されていない。企業の自主性を尊重していただいているのだと理解すれば,それはそういう理解もできなくはないですが,特に振り返ってみると,前段の前文に当たるような理念等の中に,そもそもオールジャパン体制でやると書いてあるのですが,それはあくまでもクールジャパンの話で,もしこれを企業の人間が読むと,この文化の推進そのものを国がやるわけねと。我々は金だけ出せと言われているのだなと読み取れるので,我々が立案したことを企業が分担してやれと言われると,またそれはそれで困るのですけれども,少なくとも連携してやるという記載がもっと前文にもあるべきでしょうし,もう少しお金だけではないのだよということを分かるように書いていただいてはいかがかなという点が1点でございます。
 もう一つは,アイヌの文化施設。これは前からいろいろ議論になっているのが,ようやく本格化するという意味で記載をされている点はよく分かるのですけれども,同じように,沖縄における文化の振興,特に国立劇場,沖縄の振興を含めては,この部会の中でも何度か触れられています。特に1回目の部会のときに,何人もの委員が言及をしておられるにもかかわらず,この中で全体の国の施設の中でさらっと触れておられる点はありますが,しかし,これはやはり沖縄の国立劇場を中心とした文化振興について何らか特記されるべきではないか,その点が抜けているのではないか。その2点を申し上げたいと思います。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。企業との連携というか,お金だけではないという部分に関して,何かこういう文言だというサジェスチョンはおありですか。

【加藤委員】  文言を今すぐ提示ということは特に考えていませんが,少なくとも民間が進めてきた企業メセナと連携してこうしたことをやるという,「連携」という文言はどこかにあるべきだろうと思います。
 それから,特にオリンピックに向けて,今後はプログラムを仮にロンドン並みに開催するとなると,4年間でということになるかと思うのですが,18万件ぐらいのプログラム,数だけの話ですけれども,少なくとも同じ規模を東京は期待されているはずなので,ロンドンと日本と比較したときに,日本側の優位性があるのは,日本は企業がこれまで文化プロジェクトを年間に1万件ぐらいやっているわけで,そうした観点からいうと,そこを無視してはならないだろうし,したがって,企業が行っている自主的な活動にも配慮するというのが当然あるべきだろうし,オリンピックに向けてのプログラムの中で3分の1ぐらいを企業メセナが担うのは当然だなと我々は理解していますから,そういう方向で今後組立てをしていきたいというときに,国サイドは金だけ出してくれればいいよというメッセージを出されるのはまずいのではないですか。

【熊倉部会長】  今の最初の9ページのこの上の四角の中のひし形,最後のところは,寄附文化の醸成のことなので,そこへ入ると少し混乱するかなと思うのですが,一方,7ページの「社会を挙げての文化芸術振興の必要性」というところで,やや漠然とした形ですけれども,国,地方,公共団体,個人,企業,NPOなどの民間団体うんぬんと書いてあるので,一応その主旨は挙げてあるのですが,もしかしたら,その3ページの2020年東京大会の開催決定というあたりに,最後にもう一,二行,国だけでなく官民挙げての参画が求められるみたいな一言があるとよろしいですかね。

【加藤委員】  逆に言うと,今の7ページの「社会を挙げて」の部分以外に,少なくとも見た感じでは,今の段階でどこにもないのです。そこも羅列してあるだけで,それぞれが一体どういう特質があって,どういう業績というか,これまで実績があるかということについて何の言及もないので,言ってあるよといえばそのとおりだけれども,それは少し企業メセナに対してリスペクトが足りなさ過ぎるのではないですかと。虚心に企業の立場から読むと,要は期待しておらんが,金だけは出せよと言っているなと読めますよ。そこは少しまずいのではないですかということを申し上げているだけで,多少の工夫をされれば,特にこの点についても大きな問題はないと思うのですけれども,やはり姿勢はきちんとお示しになられた方がいいのではないでしょうかということです。

【熊倉部会長】  はい。ほかにいかがでしょうか。

【仲道委員】  大変すばらしいたたき台なのですけれども,1つ,もう一言踏み込み,かつ決意を持った文言が入ってもいいのではないかと思うことがございます。それは,例えば,6ページ目に「生きる過程を」という部分がありますが,例えば,「生きる力を育む」であったり,言葉のニュアンスをもう少し変えた方がいいのではないかなと思います。なぜかと申しますと,私は,ここ数年来,全国各地の小学校へワークショップで伺わせていただいておりますが,たった数年の間ですけれども,無気力,無関心,無感動なお子さんたちが劇的に増えている感じがいたします。それは,震災の被災地だけではなくて,特に災害があったとかそういうところではない地域でも増えているのですね。自分を肯定できない子供がいる。多分,子供としてかわいがられて育っていないのではないか,というようなお子さんたちがとても増えているのですね。そういう子がこれからどう育っていくのか。日本はどういうふうになっていくのか,とても不安になるのです。それは家庭の問題だと言われることが多かったのですけれども,次の日本を作るために,国が何らかの介入をしていかないと,これからどんどん加速度的に大きくなってくるのではないかなと思うのです。文化芸術は生きることの面白さを培うものでありますから,文化芸術からほど遠いと思われている人たちにこそ,文化芸術が必要なのではないかと思うのです。この,基本的な方針の部分では,文化に興味がある人を対象としていたり,地域の振興のためというように書かれているのですけれども,振興というのはより盛んにするためのものであって,それ以前にもっとベースの部分で恩恵を被らずに人間としての生きる価値観を見いだせないでいるような人たちが,明らかに増えている現実を見ていきますので,そのことを考える必要があるのではと思うのです。この第4次基本方針,これは2020年まで見据えているわけですよね。そうすると,その間にオリンピックであるとか,華やかなことは当然注目されるのですけれども,そういった底辺の部分での基本的に大事なことに対して,文化芸術が何をすべきかという国家戦略としての文化ということをもっと重くとらえてそこかしこの文言の中で訴えた方が良いと思うのです。振興のためにということだけではなくて,何か決意と覚悟を持った文言が盛り込まれると,そういった方針もこれから立てやすくなっていくのではないか。「スラム」という言葉がありますけれども,日本の中でスラム化が起きていると私は思います。これからの人間の人格と人権を守るために,文化芸術が行えることがあって,それを国の戦略として行っていくといったような,何かはっきりした文言を是非取り入れておいていただきたいなと思いました。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。確かにワーキンググループでの議論も,いわゆる社会課題への取組という視点とか,そういうことでの議論はあったのですが,今,この作文にしていただいたものから,やや哲学的な部分が足りないかなという印象は私も抱いておりまして,春先の部会のときにも,これまで文化庁の文化振興の1つの大きな意味合いは,傑出した才能,タレントをどういうふうに育んでいくかということであって,そのことはもちろん変わらないのですが,クリエイティビティ,創造性という問題は,国民全員に関わる問題なので,そこをどうきちんと担保していくのかということが,これから問われている時代ではないかと申し上げたと思うのですけれども,国民全員に関与していくことだというような生きる力の基本だとか,そういう理念が,少し言葉が足りないかなと。

【仲道委員】  哲学的な概念としての折り込みだけではなく,例えば,第1の国家戦略としての方向性のところで,東日本大震災,2020年,中長期的社会課題という部分がありますが,その中長期的社会課題の中で,より明確に,一言でいいので,この疲弊している地方を過疎化や少子化,高齢化といった課題というだけではなくて,基本的な権利と,何か,もう一言踏み込んだ言葉をそこに盛り込んでおいていただけたらいいのではないかなと,とても強く思うところでございます。

【熊倉部会長】  権利の問題は法律そのものに書いてあるので,課題としてはどうなのでしょうか。子供たちの生きる意欲の低下みたいなことでしょうか。生きることを楽しむ力ですか。

【仲道委員】  生きる意欲の低下というよりも,もっと根本的な,子供たち,子供を取り巻く親たち,社会の……言ってみれば,低下といったらよいかの……。もっと本当にとてもリアルなところが,この6年間に向けては,とても大事になると思うのです。

【熊倉部会長】  分かりました。
 では,続きまして,佐々木委員。すみません,お待たせしました。

【佐々木委員】  今の御意見,非常に大事だなと思っていて,私の観点から,別なアプローチから少し話したいと思うのですけれども,第4次基本方針は2020が目標ですが,例えば,3ページにも「中長期的社会課題」とありますよね。つまり,これは,恐らく2020を超えてと。例えば,2050ぐらいを考えたような問題の立て方をしているとすると,先週,実は国交省の計画局からヒアリングを受けたのですけれども,国交省は今,国土のグランドデザイン2050の見直しをしているのですね。2050になったときに,一番衝撃だったのは,例のマスダさんが言っているような話に近いのだけれども,ともかく人口メッシュで見て,人口が増加するのは首都圏と名古屋圏ぐらいで,関西圏も減るわけです。先ほどスラム化という話があったわけですが,つまり,ほうっておきますと東京オリンピック後の日本の姿というのはどういうことになるかというのは,やや楽観的な見方と悲観的見方といろいろ3つぐらい考えておいた方がいいわけです。そうしたときに,この社会の底辺の状態が地方圏で広がっていると。そうしたら,そこから出てくる問題というのは,例えば,今回のパリで起きたテロ事件ですね。あの社会背景というのは,移民の第2世代,第3世代の人たちが社会の底辺にいて,この西欧型社会の中ではどうも浮かび上がれないという絶望感があるわけですよね。これが移民の第1世代と違うわけです。つまり,適用しようにも適用できなくなってきている。そういったことが東京対地方という形で,仮に日本の国土の中で起きてきたということ。そういった批判的な見通しを考えるとすると,そのあたりをどうやって,中長期的には引き上げていくか。これは社会法制という言葉では入っているのだけれども,その深刻さというか,もっとリアルに見つめるという話でしょうかね。そういったことを多分言われたように思うので,そのことが入ってもいいなということですね。
 それから,例えば,震災の中で出てきた1つの法律が,国土強靭(きょうじん)化法だったわけです。これは,実は英語ではresilientという概念を使うのですが,Resilient Societyといった場合は,もっと生物学的な反発力の話なのですね。社会全体が大きな危機,自然災害に遭ったときに,もう一度奮い起こして立ち向かっていくといった概念でして,何かコンクリートの堤防をもっと強くしようというだけではなかったと思います。概念として。残念ながら,日本ではそのresilientという概念が,文化芸術も含むものであると。それで,今言ったようなスラム化というか,地方圏で起きてくるスラム化みたいなことも含めて,もっとresilientなパワーを強めるということで,どうしたら何かすっきりするかなと思いながら,今,聞いていました。
 それで,私が本来言いたかったのはこれから先なのですが,私も創造都市の国内外の推進について,文化庁の方々と一緒に幾つか議論してきたので,それが反映している方針になっていることは非常にうれしく思うわけです。例えば,8ページにありますように,2020の東京大会を含めて,日本の津々浦々で文化プログラムを推進するというときに,創造都市ネットワーク日本の都市地域が拠点になっていく。これは文字通りそうであるし,かなり意欲的にも準備をされてきているし,そういったところを地方でもアーツカウンシルが支えていくという体制があるというのはいいと思います。
 その上で,例えば,14ページに重点施策の中で約1割の主張が文化政策を政策の中心に据える状態。まだ1割には達していないけれども,かなりこういう機運は強まっていると感じるのですが,2ポツで,文化政策の専門性を高めるために,研修に職員が派遣されるという,この評価にやや弱いのですよね。もっと文化庁がリーダーシップをもって,そういう機会を作る。あるいは,文化政策,あるいは創造都市専門の研修機関を常設するとか,重点施策であるならば,それぐらいの気迫が欲しいなということが1点です。
 それから,2点目は,11ページにありますが,「東アジア地域内の文化交流を推進するため,東アジア文化都市の取組を進めましょう」とありますね。これは,昨年の10月31日に横浜市で創造都市首長サミットをやりまして,そこでアジェンダを採択しているのですが,この東アジア文化都市も含めて,アジア全体に創造都市のネットワークを広めたいという流れがありました。それは,このどこかに入っているのかと思ったのですけれども,どうも余り見当たらないので,つまり,東アジアから広がっている流れと,東南アジアで広がっている流れがあるのですよ。これをリンクしていく。そういったことが必要かなと。
 それから,もう一点だけですが,日本遺産のところに,ユネスコの世界遺産登録を進めようという話があって,これはもちろん大賛成ですが,現実には世界遺産の方は約1,000に近づいてきていますよね。ですから,恐らくかなり新規のものは少なくなってくる。それに対して,ユネスコも創造都市ネットワークを提唱していて,昨年の12月1日に新たに30都市ぐらいが認定されて,現在,世界32か国69都市に増えています。恐らく100とか150とかという,この次の段階で増えてくるわけで,そうなると,ユネスコ創造都市ネットワークの動向を見据えて国としても,助言したり情報提供したりして認定をサポートするなど,ユネスコの動きと連携していくべきである旨,何か言及しておいた方がいいのではないかと思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 では,三好委員,お待たせしました。

【三好委員】  ありがとうございます。今回,全体を読ませていただいて,非常に言葉を丁寧に使われて,かつはっきりと表現されている。役所の文章は往々にして抽象的,あいまいな言葉を使うことが多いのですけれども,その中で今回のものは,言葉も選ばれて非常にはっきりと書かれているというのはいいと思います。そうなってくると,少し気になることが3か所ほどありますので,そこを述べさせていただきたいと思います。
 まず,6ページで,基本的視点。これも非常にそれぞれを短い文章で,かつ明確に打ち出されているので,非常に分かりやすくなっているのですが,その中の1つ,6ページの2の2つ目と3つ目に「公的支援の必要性」と「公共財としての性格」が書かれています。この辺は片山部会長代理が御専門なので,多分,その辺はかなり議論されて書かれたのだと思うのですけれども,書いていただくのは非常にいいことだと思うのですが,書くのであれば,順番としては,まず公共財のことを先に書いて,その後に公的支援というのを入れた方がいい。あるいは,この2つの項目は一緒にしてもいいのではないかと思います。というのは,先に公的支援の必要性を書いてあるのですが,これを見ると何となく採算が取れないから税金で補てんしろ,みたいに読まれてしまうので,それはかえってよくないのではないかということで,せっかくそういう言葉を使うのであれば,そこはもう少しはっきりと表現された方がいいのではないかというのが,1点目。
 それから,2点目は,第2の「五つの重点戦略」。ここも非常にはっきりと打ち出されていて,例えば,基盤の強化とか,体制の整備という言葉を使われているというのは非常にいいと思います。そうなってくると,重点戦略の2が,人材,鑑賞者の育成というテーマになっていて,かつ内容的には,例えば,支援の充実でありますとか,あるいは,重点的な支援とか,そういう言葉がいろいろ並んでいるのですが,特に基本方針は国だけではなくて地方自治体が施策を行っていく上でのよりどころにもなるものですので,単に支援の充実というだけではなくて,そのための仕組み作りとか,体制の整備といったことをやはり入れておいた方がいいのではないか。前回の第3次のときには,劇場法について法的基盤の整備を検討する。「検討する」という言葉ではありましたけれども,結果的にそれを実際に検討した結果,法的な法制化ができたわけですので,やはりここの「人材,鑑賞者の育成」は非常に重要なポイントですので,ここも何か制度的な検討が必要なのではないか。例えば,1番目,2番目のところ。特に2番目のところでいうと,芸術教育を充実するというだけではなくて,それはきちんと学校教育の中でどういう位置付けにするかという,そこをはっきり踏み込んだ方がいいのではないかと思います。
 また,3つ目の地方公共団体の人材育成うんぬんについても,ここもやはりそういう専門的な人材,先ほどの研修のところにもありますけれども,研修以前の問題ですし,きちんとそういう人材を配置するのだということを明確にしていただいた方がいいのではないか。むしろ,すぐにできるかどうか分かりませんが,制度的な検討をしていただくということが1つあってもいいのではないか。そこは地方自治体にとってみれば非常に大きなよりどころになるであろうと思います。
 それから,3つ目が12ページの重点戦略の5で,文化芸術振興のための体制の整備。ここも「体制の整備」と非常に強く言っていただいているのは非常に有り難いのですが,その1番目の国立文化施設のところが,施設の整備,体制の整備と言われているのですけれども,実際には機能強化,事業の充実ということになっていまして,例えば,先ほど加藤委員もおっしゃいました国立劇場,沖縄,それから,例えば,文楽劇場と東京の国立劇場。この3者の持っているものを,お互いにもっときちんと使えるようにしていくことも必要なので,そういう意味での体制の整備。単にそれぞれの施設が機能強化するだけではなくて,国立施設と全体としての体制の強化。そのためには,それぞれが持っているものをお互いに融通し合うこと。あるいは,それぞれの場所でいろいろなものが見られる,鑑賞できることになるような体制の整備も是非考えていただきたいなと思っております。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。もしかして皆様方はこの書面ヒアリングの資料は,今日ここで配られて初めてなのかもしれませんが,中を見ていきますと,やはり数多くの団体が,我々がここで夏に向けて散々議論していたように,マネジメントというか,つなぎ手の支援,だれも「育成」とは言っていないのですね。その「育成」という概念から一歩進んだはずなのに,もう「ぎりぎり限界です」という声があったりして,そこら辺のところでも,それを今回ワーキングでは,割ともう少し巨視的な部分から課題の整理みたいなことに終始してしまったので,この部会の中で多くの委員から御指摘があった,そのマネジメント専門人材に関しては,余り明確にいかずに,あちこちに少しずつ散らばっている程度になってしまって,この資料2の29ページ,劇場,音楽堂等連絡協議会さんなどでは,マネジメント専門職の人材育成と,雇用環境整備とまではっきり書いていただいていて,こういうことが多少,今回の中ではあいまいな表現に終始してしまって,散々ここで指摘された全国で頑張っている人たちにとっては,余り第4次方針は進展がないなという印象を与えるかなという気は私もいたしました。
 すみません,馬渕委員,お待たせいたしました。

【馬渕委員】  今,この28ページに,「美術館,博物館,図書館等の充実」と書いていただいて,正に私どもがこれから充実してやっていきたいという内容をしっかりと記載していただいて,大変感謝しております。その中で,今ちょうど三好委員がおっしゃったように,国立美術館,あるいは国立文化財機構等の国立の機能を充実強化することが,お互いの機関の互換的な政策に利用できると大変いいのではないかというお話がありまして,正にそういうことを考えているのですけれども,例えば,アーカイブですね。アーカイブに関しては,国立美術館の所蔵する作品の完全なアーカイブ化を来年度から取り組むという工夫に手をつけ始めました。それは前から申し上げているのですが,国内にどういうものがあるのかということ。これは,とりあえずは国立美術館のものだけなのですが,一体,国立美術館は何を持っているのかということを国内の納税者の方というか,国民にはっきりお示ししたいということが1つと,あと国外の方ですね。例えば,日本美術と日本近代美術に関心を持って来る方が非常に海外から増えてきて,例えば,日本の具体の研究をしたいというときに,日本のホームページを見ると,日本語しか書いていない。あるいは,断片的にしか出てこないということがあって,日本も発信する手段として,英語と日本語の2か国語で発信したいということはあるわけです。そうやって日本にあるものをある程度,とりあえずは美術館の中できっちりアーカイブ化して発信したいのですが,ただそれだけでも日本全体の資産というものはそんなものではとても覆い尽くせるものではなくて,地方自治体が持っているもの,地方美術館,博物館,私立,寺社,様々あって,それをデータ化することは非常に大きな仕事になりますし,ここのところを見ていると,地方自治体のそういった美術館,博物館活動は非常に疲弊し,予算の不足,人員の不足で大変苦しんでいるのですね。実際に個々の学芸員の方たちに会うと,本当にそういうものを作りたいのだという気持ちは大変あるし,ノウハウも持っているのだけれども,予算もない,時間もないという苦しい状況の中で,一体いつになったら日本全体のアーカイブができるのかという,夢のような遠い話になってきてしまっているので,そこのところで,先ほど文化庁主導というお話が出ましたが,まず,国立をしっかりするのは当たり前ですが,それをじわじわととにかく広げていくためのお手伝いをしていただきたいと強く思います。
 それと似たようなものではないのですけれども,美術館の中の美術図書においては,ART LIBRARIE’S CONSORTIUMというのがあって,ALCというのですが,それが美術館,博物館が持っている図書資料を横断検索できるというのをもう10年ぐらいかけてやっていまして,それに関しては,国立も地方の美術館も博物館も,できるところから入ってきているわけですね。そうやって参加してくださって,少しずつですけれども増えてきている。ですから,何かそういう形で,できるところから参加していって雪だるま式に増えていく。それが,それこそ一発の検索で,例えば,「藤島武二」というのを入れると,藤島武二の全作品がアーカイブとしてバーッと出てくるような,そういうものを私は希望して夢見ているわけですが,そういう意味で,国立のそういった活動を充実させることは,私どもは疲弊している地方美術館などになるべくお手伝いをしたいわけなのですね。例えば,所蔵品を貸してほしいと言われたときに,貸し出せるものなら是非貸して,一緒に展覧会をやっていきたいということを考えているのですが,こちらとしても人もいない,そういうことをできる人材が少ないという問題がありますので,そこのところで国立美術館等の機能を強化することによって,その波及効果として,日本全国のそういった美術館,博物館との連携を強め,活性化をするという一言を是非頂きたいなと思っておりました。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。夏の各委員からの提案提出のときに,馬渕委員が,日本美術を海外に紹介するだけではなくて,日本の美術館が数多く所蔵している西洋美術のコレクションなどをオーガナイズして,アジア諸国などに展覧すると,日本の近代化の豊かな財産がきちんと提示できて面白いのではないかという御発言があったことを非常に興味深く思ったことを記憶しております。
 ほかの委員はいかがでしょうか。はい,武内委員。

【武内委員】  いろいろお聞きできて,逆に2020年,2050年と,これだけ課題がいろいろあると,ビジネスチャンスとしてもうまく取り込めないか,産業界として何かいろいろ考えれば,ある意味でわくわくするところもあるかなと,お聞きしていて思いました。
 11ページの施策の中で,今回恐らく文化庁としては初めてだと思いますけれども,MICEに関する言及を頂きましてありがとうございます。これでいろいろなきっかけ,広がりになればいいなと思います。
 その中で,支援するということでおまとめいただいているのですが,割と控えめといいますか,文化庁の中でこれだと協力しましょうということで終わってしまうともったいないと思っていまして,ある意味,文化,それだけで誘致できるわけではないのですが,誘致,それから開催時に発信できるということもありますので,そういった機会に日本発信をするということで,少し支援ということからもう一歩踏み込んで文化についての強化発信の機会ととらえていただけると,よりMICE等の取組が強化できるかなと思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。ほかにいかがですか。
 では,宮田委員,どうぞ。

【宮田委員】  2次から3次にかけて私もお手伝いさせていただいた人間として,今までと違って,2020という,はっきりとした目標があるわけですよね。残念ながらこれを見ると,何回読んでも3次までのものの角を取って丸くして投げやすくしているだけだという雰囲気が,私はしています。むしろ逆に丸くなったら球としては投げやすいのだから,この中であと5年しかないわけですから,そのうちに最低でもこの3年計画ぐらいの中で,これとこれは重点的にやるのだと。総花ではなくて,そういう意識の強さみたいなものがもっと前面に出てきていいのではないかと思うのです。私どもの国立大学の中にも降りかかっている大変厳しい状況の中でも,重点的に総花ではなくて配分も考えるということに対して,我が大学もそれなりに頑張ってはいるわけですが,やはりやっているというのと,来るのを待つというのでは,文化は違ってくると思うので,その辺のところをもう一つこれだけの数があったから,ここは二重丸だよというあたりがあってもいいのではないか。
 加藤先生,そのあたりはどう思います? 割にそういうのに対してかちっといってくれる人なので。

【熊倉部会長】  振られた加藤さん,少しお待ちください。
 実は,これは,これまでの基本方針の作られ方,構造をそのままのっとって作られているので,皆様方にはそれだけでいいのかという御指摘かと思うのですけれども,実はワーキングでは個別のことだけではなくて,そもそも論も結構議論されました。例えば,我々のワーキンググループの共通した意見として,日本の文化政策のパラダイムシフトが求められている時代なのだけれども,なかなかそのことが明記できない。そもそも,これは吉本委員の御意見でしたけれども,法律が文化芸術振興基本法と,文化芸術を振興することしか考えてこなかった文化庁なのかと。
 でも,今,そうではなくて,文化芸術を使って社会をどうするのかということが大きく問われていて,今,ここで書かれていることは,文化芸術の振興に関する,名前はさすがに変えられないのですけれども,第4次方針においては。ではなくて,文化政策に関する基本的な方針になっているのに,そこにそもそも齟齬(そご)があるでしょう。もともとの法律も,もしかしたら,もうそろそろ文化政策に関する基本法という名前にしないと,齟齬があるのではないかなという意見があったり,それに関して文化庁側から,「そんなに広めてしまうと,どこが守備範囲なのか逆にぼんやりしてしまって,予算獲得などが難しくなるのではないか」という危惧が出されたりしたことも事実です。どうすると作文の妙だけでなくて,そうしたことが,今年は残念ながら2億円の増にとどまりましたが,この2020年までを見据えてのこの基本方針で,少しずつこれを実行していくと,「文化政策にもう少し予算がいるよね」という国民的なコンセンサスを調整していけるのかということにも関する重要な問題だと思うので,もう少し前文みたいなものをつけた方がいいのかなとか,あるいは,仲道委員や佐々木委員のお話を伺っていて,そもそも文化芸術立国でなくて,創造都市政策を1つの重要な柱として据えるのであれば,もう少し,例えば,「創造立国に向けて」みたいにもう少し概念を広くして,そこに向けてほかの様々な省庁とも関連することだし,特に文化芸術が重要な役割を果たしますよ,くらいのところまで言わないと伝わらないのかなと,皆さんの御意見を伺ったりして思ってみたのです。
 大林委員,ありがとうございます。

【大林委員】  両方おっしゃっている意味,よく分かるのですけれども,私もどちらかというと,もっと絞るべきだと思っています。それは,今,文化創造であるとか,文化政策という話が出ましたけれども,シンガポールのような新しい国では,国が相当なリーダーシップを取って,そういう文化創造をしていかないといけないのですが,日本は既にすばらしい文化がいっぱいあるわけですよね。
 ところが,例えば,世界に通用する日本文化がありながら,それが世界に紹介されていない。あるいは,世界で非常に認められたすばらしい文化というのが,日本に紹介されていないとか,あるいは,伝統文化の保護であるとか,発展であるとか,そういう部分がまだ十分できていないではないかと。あるいは,文化財の保護については,もっともっと本当はやらなければいけないとか,あるいは,次世代の子供たちへの文化の教育が,まだまだほかの国と比べてもできていないねとか,そういう部分はあると思うのですね。
 ですから,私は国にやっていただくべきことは,それを創造していくというよりも,むしろ個人とか企業ができないことがいっぱいあるわけです。そこをどういうふうに押していただくか。その押し方もどういうふうに,例えば,予算だけ取るという話だけではなくて,どうやって企業のお金をうまく回してやる。先ほど,企業のお金を吸い上げているだけみたいに聞こえるという話もあって,あれも私もそう思ったのですけれども,そうではなくて,民間でも企業はいろいろ苦労してそれぞれの分野で文化政策をメセナとして,特に最近はそういうことを強くやっているわけですね。ところが,そういうことに対するいろいろな,例えば,税務上の問題であるとか,あるいは,企業もいろいろ雇用の部分でできないところがあるとか,いろいろなところが制度的な問題とかあると思うのですけれども,そういうものについて,もう少しお金をかけなくてもできる部分もある。お金をかけなければいけない部分もある。いろいろあると思うのですけれども,いずれにしても,その辺のサポートをどういうふうにしていくかということの方が実は大きいのではないかなと私は常々思っているのです。
 それはそれとして,これもそもそも,私はこの第4次から入ったので,先ほどのようなずっと第3次からの流れというのは,見ただけでしか分からないのですけれども,しかし,それでも,少し総花的感というのはぬぐえない。百歩譲って,基本的,基本方針というのはそういうものなのだと。役所の出す基本方針はそういうものだ。これは建設省の,例えば,全総でもそうだったのですけれども,でも,そのタイトルがありますよね。要するに,5年後,6年後,では文化庁,あるいは文科省はどういう方向に日本のそういうおっしゃるような文化政策をもってきたいのかということについて,一言でどういう表現をされますかといったときに,例えば,部会長さんは一言で言うとどういうのかというのを。

【熊倉部会長】  ですから,今,申し上げたように,まずは全体の概念を広げて,日本が創造立国を目指すべきなのではないかというのが1つで,なので具体的に個別に文化芸術ができることに,政策をしていくことももちろん重要ですし,タレントを育てることも引き続きやらなければいけないのですが,幸いなことにタレントは非常にあちこちから出てくる豊かな文化的土壌があるところなので,正におっしゃったように,非常に豊かなアセットがある中で,これを21世紀型にコーディネートし直すというか,プロデュースしていくことに関しての仕組みを大きく変えていく,この6年間にした方がいいのではないかというのが,私が今,皆さんとお話をしていたのは前文で考えられることなのですが。

【大林委員】  ちなみにこの4次基本方針にはそういうサブタイトルみたいなものはつくのですか?

【熊倉部会長】  ここでつけなくてはと皆さんに言っていただいて,何か欲しいですよね。

【大林委員】  何かあった方がいいですね。

【熊倉部会長】  3次方針が結構ラディカルなことを言っているのに,同じ構造でやっていくと何か組み換えだけやっているようで,この2020に向けた割には,何かパンチに欠けるのですよね。何をしたいのかがはっきりできないけれども,そんなことはいろいろ具体的な施策の継続もあるし,そもそも財務省に「何するつもりなの?」と言われたら説明がつかないし,いろいろ事情もあって,それはまた文化庁の皆さんにも御意見いただきたいと思っているのですけれども,ほかにいかがでしょうか。
 では,宮田委員。

【宮田委員】  一言なのですが,今の要因ですね。やはり,オリンピックに向かってということに対してなのですね。キャッチフレーズが欲しいですね。旗が。その旗の下にはいろいろな文言があっていいのです。裏付けとして。これを全部持ち上げてこうやると,ばらばらになってしまって,何をやっているか分からなくなるので,そのキャッチコピーがここにあって,方針がこうだとなっているというとらえ方はいかがですかね。

【熊倉部会長】  加藤委員,どうぞ。

【加藤委員】  今,言われた創造立国みたいなキャッチコピーは,是非あったらいいなと思います。国が政策として何をやったらいいかというのは,確かに正に文化政策のパラダイムシフトをしなくてはならない。そのときにもちろん,ここに書かれているようにいろいろな具体的な施策は決めないと前に進めないので,お決めになるべきだ。しかし,本当にやってほしいことは,今,日本にはこれだけ豊かな文化活動があるのだから,それをそれぞれでおやりになることが一番ですが,その上で国としては,皆様から御提案があったら,それに応えられるだけの財源を用意しておきます,ということ。つまり,何でも応援できる財源みたいなところがあって,そこに提案してくださいという。何をどうしたいのかと,あなたのところで何がどういうふうにやると,お金が使えるのだという提案をしていただければ,1件当たり幾ら幾らを上限として,その中でいろいろな,もちろん使い方その他に細かい制約はありますが,その制約の範囲内でお使いいただけますよというマルチファンドみたいな,何でも使えるファンドみたいなものを作られたらどうか。それは我々企業メセナが2021ファンドを作ったときに実は考えていることで,何にしか使えない,例えば,自治体を通した国際芸術祭にしか使えないとか,そういうことではなくて,何にでも使えますよという,それは御提案いかんですね。その代わりきちんと議論し合った上で最終的な着地を決めていくという事柄が1つ。
 その前提で,重点はどこかに絞らなければならないのだけれども,そもそも我々がやってきたことは何かというと,文化の領域をできるだけ拡大しようとやってきたわけです。何でも文化。まさかこれがと思うものも文化だと言っていいのではないか。ただ,それらを全部国が振興するとか,自治体が振興するとか,あるいは我々企業が振興するとか,そんなことはできないので,それはもちろん,その中で何を振興するかはそれぞれの自発性にお任せします。企業メセナが今やっていることは,それぞれの企業が自発的におやりになればいい。ただ,困っておられる事柄があれば相談に応じますし,少しアレンジメントをしてみてもいいですよねというぐらいのところなので,できるだけ領域を広げた上で,フレキシビリティも確保した上で,最後は創造的な御提案さえあれば,それは何か相談に応じますということになるのが理想的だと思いますが,そうは言っても,そんなことは国が言ってみてもなかなか財務省はお金をくれないでしょうから,そこはいろいろと手練手管をもちろん,少し抽象的な表現で大きな枠組みを作っておかれるのは必要なことだろうし,ある程度の基準を決められるのは必要なことだろうと思うのですけれども,せっかくオリンピックなのですから,創造性という一語があれば何でもやれるぐらいの対応,そうした意気込みは必要なのではないかと思います。

【熊倉部会長】  そうですね。まだ書き込まれていないのですが,ワーキングでは,やはり直接片山委員御自身からおっしゃっていただいた方が,あるいは太下委員もおっしゃっていただいた方がいいかと思うのですが,今のような何を文化と称するかというのは,地域,地域で特性があっていいはずだし,食文化のところもあれば,伝統芸能のところもある。温泉文化のところもあるが,そこで何か面白いことをしたいという人たちを増やしていって,その人たちが自発的に,より効果的に新しい文化創造ができるような仕組みをバックアップしていける仕組みを地方版アーツカウンシルとイメージしているのではないかな。そして,このところにおいて,このアーツカウンシルに関する文言においても,まだ文化庁側とは非常に大きな開きがあるのは事実で,これを2020年までに少しずつ具体的な姿として落とし込めていくような記述を何か盛り込みたいと思っていらっしゃいましたよね。それに限らずですけれども,ワーキングを通じて今日の御意見などで太下委員,片山委員,いかがですか。

【太下委員】  ワーキングにも参加させていただきました太下です。
 今まで委員の皆さんがおっしゃった意見ともかぶる部分もあるのですけれども,3つコメントをさせていただきたいと思います。
 1つ目が,今,熊倉委員長もおっしゃった地方版アーツカウンシルについてです。このすごくきれいな色で書かれている前回の基本方針と今回の第4基本方針の比較の中では,日本版アーツカウンシルの横に地方のアーツカウンシルという形でキーワードを入れていただいています。ただ,実際,該当する部分が9ページの部分になると思うのですがこの9ページ目の一番上に「日本版アーツカウンシルの本格的な導入を図るとともに」とあります。これは,今,日本版アーツカウンシルの試みをやっていらっしゃるので,これを本格的な形にするのが当然のこととして,その後,「地方公共団体等が文化芸術団体,企業,NPO等の民間団体や大学等と一体となって企画・実施する計画的な文化芸術活動を推進する」と書かれていて,もちろん,これはそのとおりではあるのですが,地方版アーツカウンシルの推進というにはまだ少し表現が弱いかなと思います。こちらの骨子の方には書かれているのですから,文化庁さんの方で日本版アーツカウンシルと,地方においては地方版アーツカウンシルをやるという,この両輪だということを是非明記していただきたいと思うのです。もちろん,地方での文化行政というのは,第一義的には地方自治体が担うというところはあろうかと思います。けれども,残念ながら,これは国もそうでしょうが,地方自治体で専門職制度がない以上,地方自治体の職員の方に教育とか研修の機会などを提供しても,多分,それだけではなかなか地域の文化振興というものは十全にできない懸念があると思います。
 更に言えば,先ほど加藤委員がおっしゃったように,これから2020年に向けて,日本全体で18万件弱もの,イギリスと同程度,又は経済規模とか人口規模を考えるとそれ以上の文化プログラムを実施していかなければいけないということを考えると,多分,これは霞が関一極集中では現実的に対応できないと思います。したがって,地方版アーツカウンシルを実現することが,この第4次基本方針の大きな柱になるのではないかと考えています。その意味でも是非,9ページ目の表現をもう少し踏み込んだ形に変えていただければというのが,1点目のコメントです。
 それから,2点目は,アーカイブに関してです。これは先ほど馬渕委員からアーカイブの重要性についての御指摘があったところです。これは中身としましては,12ページ目に「貴重な各種文化資源を継承するアーカイブの在り方を総合的検討する中で」うんぬんという表現もありますし,24ページに「権利者不明著作物の活用等,アーカイブ化の促進のための方策を検討し必要な措置を講ずる」とあります。さらに30ページ目で,「また,美術館,博物館,大学や研究機関,民間施設等の関係機関と連携し,様々な分野のアーカイブについて共通の基盤整備を図り」という記述があります。既に御担当課でも様々な御検討をされ,取り組んでいらっしゃいますし,こういう形で表現していただくことは大変有り難いと思っています。
 ただ,あえてコメントさせていただくと,ここで書かれているアーカイブは,何となく今あるものの情報の整理と情報発信という形にとどまっているような気がするのです。しかし,文化資源というものがアナログからデジタルに全面的に移行している過渡期にある中で,今後の文化振興を考えると,このアーカイブというのが新たな文化創造の源になる非常に重要な機能となると思います。そういった意味では,是非今までの取組を更に加速させていただいて,このアーカイブへの取組をやっていただければと思います。
 皆さんも御案内かと思いますけれども,青柳長官,宮田学長が主催者のメンバーとなられているアーカイブサミットという会合が,ちょうど来週の月曜日に開催されますし,このアーカイブへの取組の重要性ということについては,かなり多くの関係者の間で共通して認識されているところではないかと思いますので,是非このアーカイブへの取組も,第4次基本方針の大きな柱に位置付けて実施していただければと思います。これが2点目です。
 それから,3点目,最後ですけれども,きょう初めて16ページ目以降の第3部という部分をお示しいただいたと思うのですが,ここの部分についてです。この第3部については先ほども御説明があったとおり,非常に網羅的に書かれていますし,逆に言うと,恐らく網羅性があることが必要な部分なのだと思います。そして,ここの書き順は文化芸術振興基本法の項目の順番にのっとって書かれています。これは前段と見比べていただくと分かるのですけれども,前段が非常に重点化した形で戦略が書かれているのに対して,その順番と全く整合していないのです。これはもちろん,法にのっとって網羅性のある施策をここに書くのだという性質上,文章としてはしようがないかなと私は思うのですけれども,であれば,これはこれとして,16ページ目以降の基本的施策を全部一たんばらばらにして,それまでの書かれている重点戦略1から5にどういうふうにひも付くのかという体系を整理した資料を併せてこの資料に添付していただいて,それでもって全体として第4次基本方針とすることが必要なのではないかなと思います。
 なぜそういうふうに申し上げるかというと,16ページ目以降の基本的な施策の部分が実際の政策・施策として実施していかれることになるわけですけれども,これが要するに何のためにという部分のプランの設定と結びついていないと,PDCAは回していけないことになると思うのです。前回のこの部会でも,PDCAの資料を出していただきましたけれども,なかなか評価は難しいという議論があったかと思います。恐らく「評価が難しい」となってしまった背景の1つは,実際にやっている施策が政策目標とひも付いていないところに根本的な原因があるのではないかと思います。ですので,この施策の書きぶりはこれでしようがないとして,これとは別に,重点施策と結びついた,いわゆるツリー状になった,全体何のためにこれをやっているのかというのが分かるような資料を是非お作りいただいて,それでPDCAを回していくということを御検討いただければと思います。これが3点目です。
 以上です。

【熊倉部会長】  片山委員,いかがですか。

【片山部会長代理】  ワーキングに出席していた立場から,少し補足をさせていただきたいと思います。
 ワーキングの中で5人の委員が完全に意見が一致していた点についてお話ししますと,この骨格をまとめた,図式化したものを見ていただければと思うのですが,「我が国が目指す文化芸術立国の姿」のところに書かれている,2030年以降にどういう姿を目指すのかというところのあたりの記述です。文化や芸術に関わる非営利の団体や営利企業が非常に活発に活動しているという点です。こういう表現を盛り込むのがどうかという議論があって,結局は見送られたのですけれども,英語圏の世界では,そうしたものを産業という形で表現しています。“Profit and Not-for Profit Arts and Cultural industry”という言い方で,営利,非営利の文化芸術に関する産業としています。先ほど,佐々木先生からは文化の範囲を広げていくというお話がありましたけれども,これらが1つの日本の基幹産業としてあって,そこで働くことが生きがいであり,誇りであり,そして,人々が安心してそういうところで活躍できる状態。そういう状態を作っていくことを2030年の姿として目指していこう,そして,そのためのステップが2020年なのだというところを共有しましょうという形で議論をしました。これまでどちらかというと,日本の文化政策はサプライサイド,つまり文化の担い手を非常に軽視されてきた面があります。文化は重要です,必要ですというと,国や自治体がそれを,福祉政策的に給付する形になっていました。日本が経済的に豊かになったから,ゆとりと豊かさの中で文化の活動を民でもやりましょうというような形です。どちらかというと国民が受け身の形で文化を享受するというところばかりが強調されてきたと思うのですけれども,そうではなくて,文化の活動自体が1つの産業であって,それを強くしていくのだということです。したがって,働く人たちの環境を整備することも,その中では重要な政策として盛り込まれる必要があるという認識になっています。一応このところだけは全員で共有し,これがこの1枚紙のところに書かれているのですが,こちらの冊子の方だと5ページのところで同じようなことが書かれているだけで,まだ戦略のところに余り書き込まれていない状況だと思います。ですので,この部分を戦略のところにもう少し落とし込んでいくことで,これまでになかった,かなり強いメッセージが出せるようになるのではないかなと思っているところです。
 それから,そのような状況をつくり出すためには,国だけが旗振りをして,北海道から沖縄まで全国をその状態にするというのは無理ですから,やはり地域レベルでそういう状況を作るための政策展開をすることが必要である。それが,地方レベルのアーツカウンシルの設立・推進だと思うのです。
 それで,9ページの記述が,地方レベルのアーツカウンシルの設立になるのですが,ここの表現については,今,太下委員からも,もう少し書きぶりを検討したら,というお話がありました。3行目で「企画・実施する計画的な文化芸術活動を推進する」と書かれているのですね。この「活動を推進する」となると,自治体が地域のいろいろな主体と連携して,自らそれこそコンサートをやったり,展覧会をやったりという事業をやるかのように受け止められてしまうのですけれども,そうではなくて,ここでやるべきことは,そういった地域の自治体や企業やNPOとか大学とかの主体が一緒になって,地域の文化政策を推進することだと思うのですね。文化事業というよりは,地域レベルの文化政策の主体としてのリージョナルなアーツカウンシルを作っていく。それを国がサポートするというところが重要なのだろうと思います。加藤委員が先ほど,使途を限定しないようなファンドみたいなものが重要だというお話をされましたが,そういったものをブロックグラント的な形でリージョナルなアーツカウンシルに対して国が出す。自治体や企業やNPOや大学や,そういった地域のいろいろな主体が一緒になって,地域の文化政策を推進する主体をつくり,そこに包括的なグラントを国が流し込んで,実際に何を使うかはリージョナルなレベルで考えて推進していくといったことができると,2030年に描いた姿は,できるのかもしれないと思ったのですけれども,なかなかそれを戦略や施策レベルに書き込むというのが,現実的には難しいところがあって,まだ実現していないところがあります。皆様のお知恵も拝借しながら,この後まだ2回ほどワーキングがあるので,具体的な戦略や施策に落とし込めるようにしていきたいという議論をしていたところです。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 相馬委員,はい。

【相馬委員】  主に3点フィードバックさせていただきたいと思います。
 まず,国際交流ということが随所にうたわれていて,これから非常に重要なことだと思うのですけれども,その中で東アジアを推進しようということが明確に打ち出されているのですが,これは何の予備知識もない人にとっては,なぜ東アジアなのか,そして,東アジアとはどの地域を指しているのかということが説明されていないと思います。余り詳しく書き過ぎるのもどうかと思いますけれども,一言,二言,そこを追加していただけるといいのではないかと思いました。
 それから,国際交流というと,当然,他の国との交流,相互理解ということになりますけれども,日本国内には他の国から来た移住者,あるいは留学生,在日の外国人の方も多数いるということで,そういう方々も日本国民と同等にその文化的な生活を享受できるということがうたわれてしかるべきであろうと思います。実際,文言でも,6ページの「公共財としての性格」というところに,「子供・若者,高齢者,障害者,在留外国人等」と明記されてはいるのですけれども,ここだけだと少し弱いかなという気がします。昨今,いわゆるヘイトスピーチのように,まるで他者を尊重する気のない人たちが実際に日本にいるということもありますので,そういったものに明確に対抗していくためにも,我が国としては,異なる文化背景を持つ人たちの文化も尊重し,かつその文化的生活も保障するのだということをもっと理念的なレベルで打ち出せるといいのではないかと思いました。
 それに関連して,先ほど来,戦略的に重点を強く打ち出した方がいいのではないかという,あるいはキャッチフレーズやキャッチコピーをつけて,分かりやすい旗印があった方がいいのではないかという話がありました。それに賛同すると同時に,一方でそうした分かりやすい戦略には乗りづらいものの存在も取りこぼしてはいけない,ということを強く思いました。それは先ほど仲道委員の御発言の中にあったようなこと,仲道さんがアーティストとして皮膚感覚で感じられている危機感に通じるものです。社会の中で取りこぼされてしまっているものは,可視化されづらく,社会の中で見えづらいものですよね。よって,日本の国力向上の文化政策のために戦略として位置付けるなんていうことはとてもできづらいものなのですけれども,だからこそ,そういったものも取りこぼさずに,施策にしっかり乗せていくことが重要だと思います。具体的には,先ほど仲道さんが「スラム化」とおっしゃいましたが,そうした貧困層の文化状況であるとか,在日外国人であるとか,あるいは,福島であるとか,東北もそうだと思いますが,何かポジティブに打ち出すのではなく,そのボトムアップという意味でしっかりと支えていくべきところも取りこぼさないという姿勢は非常に重要かなと思いました。
 それから,最後の点です。舞台芸術に特化した話にあえてさせていただきたいのですけれども,27ページですね。劇場法を経ての記述。これは,下線が引かれた部分がほとんどで,新たに盛り込んでいただいて非常に有り難いなと思います。劇場法というのは,結局はある種,理想を掲げる法律になっていまして,こうであったらいいという理念をうたっているもので,法的な拘束力というか,絶対こうしなさいという種類の法律ではないので,ややもすると絵に描いた餅といいますか,理想はこうだけれども,現場は全然そうはできないよねというふうにもとらえてしまいかねないところで,理念を掲げつつも,これを実現していくためにどういう文言を盛り込んだらいいかということをもう少し,舞台芸術の内部でも議論をする必要があるなと改めて思いました。
 個別の団体からのヒアリングもまだ細かく見る時間が今ないのですけれども,ざっと見た限り,先ほど熊倉委員長もおっしゃっていたように,皆さん,雇用であるとか,人材の安定的な在り方を願っていらっしゃるということもあります。私はヒアリング団体の一つ,舞台芸術製作者オープンネットワーク,ON-PAMの理事をさせていただいておりますので一言付け加えさせていただきますが,最近プロデューサーや,劇場や劇団に勤務している若手製作者が,非常に強い危機感を持ってこういったネットワークを立ち上げて,自分たちの権利を守っていこうという動きもあります。そうした背景には,やはりこの部会でも何度も何度も申し上げてきたことですけれども,人材育成から雇用ということが何よりも重要であって,そうした文言をこの27ページのどこかにもう少し力強く入れていただけないだろうかということを思います。
 最後の項目で,「劇場,音楽堂等における専門的人材の養成や職員の資質向上」と最後の一文にありますけれども,例えば,ここに安定的雇用を促すであるとか,何かしら,雇用があって初めて育成されるという論理を入れていただけると,より具体策として効力があるものになるのではないかと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。一通り委員の皆様方からの御意見を頂いて,無理強いはできませんが,今日は是非,文化庁の皆様方からも,今回のこの基本方針に向けて,あるいはワーキングで行われた今の御意見も踏まえて,忌たんのない御感想をいろいろ頂ければと。そうは言ってもこうだというのもあるでしょうし,あるいは,もっとこうしたいと思っているのだけれども,こういうことが悩みでとか,そういうことをおっしゃっていただけると,次のワーキングの中に反映していけるかなと思うのですが,最初に青柳長官,いかがでしょうか。長官を差し置いて皆さん,ものは言いにくいかなと思いますので。

【青柳長官】  今,いろいろ本当に貴重な御意見を頂いてありがとうございます。大変勉強になります。
 今,考えていることは3つぐらいあって,1つは3.11の件ですけれども,我々の社会というのは,いつでもある一定の安定した社会がある。それが自然災害によって不安定な状況になる。不安定な状況になったときから,復旧・復興へ向かうわけですけれども,そのときに外部からの支援策があり,自分たちの自助努力による復旧・復興があり,それから,新たな生まれた環境への適応能力があって,復旧・復興した社会がまたその地域に出てくるのであろう。その不安定なものから復興した社会が生まれたときに,震災後,あるいは災害後の新たな地域社会が,罹災(りさい)以前と比べて縮小社会になっているのか,あるいは拡大社会になっているのか。これが非常に重要なことではないか。
 今,たまたま朝日新聞の「プロメテウスの罠(わな)」のところで,広野町が復興住宅を造らなければいけない。だけれども,どうももしかすると遺跡があるということで掘り出したら,古代のお役所みたいなすばらしいものが出始めてきて,発掘自体には大反対だった広野町の町長自身が,遺跡を保存せよということを町長自身がおっしゃっていて,これからそこは出てくるのですけれども,これは,恐らく新たな復興社会ができたときに,それまで広野町が持っていなかった,古代までさかのぼる地域の歴史が拡充するという意味で,拡充社会に復興社会が向かっているということだと思うのですね。それを考えたときに,文化というのは,社会現象,社会活動の中で最もきずなや相関性,連関性,あるいはしがらみがあることが文化であろうと私は考えております。
 そういう意味で,例えば,経済活動に比べても,あるいは,いろいろな社会活動に比べても,それ以上に複雑なきずな,関連性,あるいはしがらみがあるものであるからこそ,その社会が壊れそうになる。特に日本の場合は,災害によって不安定化したときに,この文化が持っている相関性やしがらみや関連性が非常に重要になってきている。それが今現在,3.11の結果としての東北や,福島で実に見事に浮かび上がってきていると思うのです。
 ですからこそ,一方で,我々はその文化の力を改めて確認し直しているのですけれども,我々,もっと普通に考えたときに,我が国の文化というのは,オーディエンスとプレーヤーが非常に近い文化なのです。ですから,プレーヤーが西洋文化のように事細かに,あるいは冗舌に自分が何をやっているかということを説明しなくとも,そのオーディエンスの方は理解しているから,ある意味で寡黙な文化,寡黙な芸術だったのですね。それに浸っていたのですけれども,5ページのあたりに書いてありますが,日本の誇りとしてのすぐれた文化や芸術が,30年前は20%,20年前では29%,10年前では34%で,去年の場合は50%にまでなっている。これは,グローバル化の中でのアイデンティティとしての文化というものをそれぞれの国が意識するようになった。その影響で,自分たちだけの立場であれば,お互いにプレーヤーもオーディエンスも分かり合っていたものが,そうだけでは済まなくなっている。
 もう一つは,純粋オーディエンスとしての外国人が日本文化をいろいろな形で取り上げてくれているから,日本文化に浸っている我々日本人というプレーヤーも,そのオーディエンスの意見を意識せざるを得なくなっている。それが恐らく日本の文化の国際化,あるいはグローバル化の現状だと思うのです。
 そういう中で,今,我々は2020年を迎えて,何をこの文化でしようとしているのか。今,申し上げたような,1つは,いかに文化というものがほかの社会現象,社会活動よりもはるかにしがらみや,あるいはきずな,連関性の強いものであるかということを再認識することと,もう一つは,我々が今まで分かりきったものだと思っていたものをもう一回,日本の我々が持っている文化を意識化させるという相対を,それが2020年に向けての様々な文化プログラムを実際に行うことによって我々が無意識状況にあった日本文化というものを,あるいは日本の中の文化というものをもう一回きちんと総棚卸しをして,更に2020年以降,我々が出発する次なる段階への,本当の棚卸しをした後の資産を明確にした後での2030年,50年への旅立ちのためのものであることになるのではないかと,皆さんの御意見を聞きながら思ったところです。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。そうですね。旅立ちに向けて,どういう準備ができるのか。その文化の,正に棚卸しをして新たな結び付きを考えたり,市民参加と言われるのは,一人一人が自覚をしないと,新しい文化観といいますか,新しい連関を生み出すことができないから,市民と一緒にやらなければ意味がないと思うのですけれども,力強いお言葉を頂きました。何だか,「あれ? 大丈夫じゃない」とか事前に言っていた部会長,大うそつきと文化庁の皆さん方は思っていらっしゃるかもしれませんが,第4次方針も宮田審議会会長から出されるわけですから,駄目出しを頂いてしまいましたけれども,いかがでしょうか。読まれてどのように思われますか。個別具体的なことでも結構ですので,何か職員の皆様方からも頂けると有り難いですが。

【宮田委員】  この沈黙が嫌なので,一言いいですか。実は今,文部科学省で大学に与えられている大きな課題の中に,スーパーグローバル構想がございます。それは,国公私立大学,全て含めてのものです。それで,大変有り難いことに,私どもの大学も文化芸術の大学として1校だけ取り入れられました。一気に私ども,部会長もそうですが,走り出しております。
 だから,こういう大きな国の,文部科学省の流れみたいなもので一番感じるのは,海外へ行く,あるいは海外の人が来たことによって,異国のものとのすり合わせをやったときに,日本文化のすばらしさがわかってくる。今,長官もおっしゃっていたことと通じるのですが,ずっと日本人ばかりでいると,日本文化のよさが分からないですよね。そこを今のこの流れがあるときに,どうしてこの中に,その辺の取り込みは入れていないのかなと。何ページでしたか,海外とのうんぬんというのが前半の方にありましたよね。そういう直接的に動いているものも入れていくと,大分リアリティのある,即効性のある部分,もちろん,棚卸しをするような大きな文化というのは時代性もあるのですが,即効性は,いわゆる化学肥料と,落ち葉が落ちてそれがちゃんとまた肥料になる有機肥料のような違いみたいなものもこの中に入れておくと,より深さが出るのかなという感じがしたので,お役所の皆さん,いかがですか。一番,そういう論点を書かれている人たちですから,この中にその辺のところを入れてみたら。それで,ワーキングの先生方もその辺をもう少しお考えになる。本気で今,動いているものですから,そして10年計画ですので,ちょうどいい雰囲気で形ができるのかなと思って,1つ国の流れの中でのものとはいえ,文化庁の仕事というのは地方の中で自然に動いている。その両方を取り込む姿勢みたいなものも,もしあったら有り難いと思っております。

【熊倉部会長】  どうでしょうか。まず,内田さん,たくさん宿題が出てしまいましたけれども。

【内田調整官】  今,宮田委員がおっしゃられた,芸大のこの間採択されたスーパーグローバルの事業のことだと思うのですけれども,そういった最新の動きも含めまして,高等教育の中で文化芸術の最近の流れといいますか,初等中等行政は今回幾つか入れさせていただいたのですが,そういった最新の動きなども高等教育局などとも盛り込めないかどうか,また相談させていただきたいと思います。

【宮田委員】  そうしないと,少しカビ臭く見えてしまうのです。それは絶対避けたいのです。深い歴史があるというのと,カビ臭いというのは全然違いますから。その両方を取り入れたらいかがでしょうか。

【青柳長官】  1つよろしいでしょうか。

【熊倉部会長】  はい。

【青柳長官】  すみません,つけ足しをさせていただきます。例えば,平林課長がさっき簡単に来年度の予算の仕組みを御説明いただきましたけれども,26年度に地域と共働した美術館,博物館の創造的活動に関する手当に関しても,来年度からは国際共同事業も入ることになりました。26年度に現代美術の海外発信に関する有識者会議というものをやりながら,それによって若手の美術展などに対しても,海外でも助成をすることができるようになっております。
 それから,その現代美術の有識者会議のいろいろな努力がいろいろなところに影響いたしまして,今年まではまだ名もないような現代美術作家の作品を企業が買うときの減価償却額は5年で20万円が限度でした。これは文房具と同じような考え方です。それが,100万まで拡大するということが,今年の4月からになります。これは,国税庁が去年秋にパブリックコメントを求めて出していて,それが反対がなくて,そのまま通るようになった。こういうこともいろいろな形でうまい循環になりつつあるのではないかということがあるかと思います。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。ほかに。例えば,政策レベルへの落とし込みなど,あるいは文化政策の在り方とのかい離も含めて,何か皆様方からコメントありませんでしょうか。是非。
 浅田さん,いかがですか。こちらの方を見てくださっているので,もしかして何か言いたいことがあるのでは。

【浅田課長】  すみません。文科省の総務課長の浅田といいます。
 初めて出ているので,余りいい加減なことを言って迷惑をかけるつもりは全然ないので,とんちんかんだったら聞き流していただいたらいいのですけれども,あくまでもこれは総務課長としてというよりは,私個人の感想みたいになってしまうのですが,ぱらぱらと見せていただいて,例えば,4ページに「我が国の文化資源の強み」とあります。いろいろな議論の積み重ねでこうなっているのだろうと想像しますけれども,正直に言うと,その日本の文化とか,芸術の価値,なぜそれを振興させなければいけないのか,なぜ発信しなければいけないのかというところについて,何かこんな薄っぺらいことではないのではないのという気が正直しました。日本の文化芸術というのは,世界を見渡しても相当ユニークなものとして発展してきたものだと思いますし,それが日本人の精神文化と分かち難く結びついているものだと私は思っていますし,それが世界の文化の多様性という観点から見ても,とても大事なものだろうと思っているのです。それを日本の中でより豊かなものにしていくということと,併せてそれを外に向かって発信する。あるいは,逆方向で,外のいろいろな文化を日本に受容していくということが,いろいろな意義があると思っているのですけれども,例えば,1つには,それぞれの精神文化と結びついているだけに,相互理解にもつながるでしょうし,新たな文化の創造にもつながってくるでしょうし,だからこそ大事にしなければいけないのだよという,一番のスタート地点のところをもう少し書き込んだ方がいいのかなという感じがしたのが1つ。
 それから,私は前職が高等教育課長ですから,正にスーパーグローバル大学の担当課長だったのですけれども,そちらの視点が大事だとも思いますし,同時に同じような視点でいうと,地方創生もまた今の,あるいは,これからの非常に大きな課題です。だから,それぞれの地域で,それぞれの地域の文化を大事にしていくということも,書かれているとは思いますけれども,もっとストレートにどかんと書いたらどうなのかなということを感じながら読ませていただき,聞かせていただきました。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。もう少し,1つは,やはりなぜ文化芸術が大事なのか。あるいは,非常に文化芸術が豊かな国であるというところから出発をして,しかし,それを活用なんていう言葉は薄っぺらいので,もう少し格調高い概念にしていきたいと思うのですけれども,そして,その2030年に新たな日本社会,特に地域創生とか,次世代の日本人を作っていく上での重要な視点ということで,その出発点にそういうことがあった方がいいのではないかなという気がしました。
 また,スーパーグローバルもそうですけれども,単純に大学だけの問題ではないと思いますので,後ろの方の施策には具体的に言及していただいたりすると助かりますが,それよりも2020に向けて,グローバル時代における多文化共生の在り方というのを日本は非常にこの豊かな文化,産業面でも,伝統文化の面でも,地域文化の面でも,あるいはお稽古事などを含めた生活文化の面でも特に。それから,ファッションなどについても,今回,書き加えていただいたのですが,そうしたものを新たに見直して,先ほど長官は「棚卸し」とおっしゃいましたけれども,組み換えを行ったり,そこから新しい価値や,「しがらみ」というのは非常に現実的な言葉だと思うのですが,連関を生み出していく力が少し足りないという認識かなという気がします。なので,もう少し,どこを重点的にやっていきたいのかということの何点かを盛り込んだ前文みたいなものがあった方がいいのかなと。最後のところはもうしようがないですね。現行の法律にしたがって,「こういうことはやります」と書かざるを得ないので,ここの齟齬(そご)が大きくなると,2020年ぐらいにはこの文化芸術振興基本法という法律を少し考え直したりすることも必要なのかなと,今回,ワーキングを始めて,この審議会に参加させていただいてそんなことは考えたことは一度もなかったのですけれども,ふとそんなことも思い付いてしまいました。確か,夏の時点で出ていた,なぜアーカイブが必要なのかとか,そうした新しい棚卸しや接続替えをしていくことを,実は文化プロデュースというのではないかなとか,そういった人材が多方面で非常に足りていないというか,登用されていない,配置されていないという問題とか,そういう新しい仕組みを,国の一極集中でやるのではなくて,地方版も含めて,全く新たな創造立国を,地方創生にまで結び付けて考えていくのが,本来の,将来あるべきアーツカウンシルという仕組みなのではないかというあたりのビジョンを少し変えていく必要性もあるのかなと考えて,できるかどうか分かりませんが,頑張っていきたいかなと思います。きょうは本当に活発な御議論をありがとうございます。
 それでは,議論の方は時間を過ぎてしまって申し訳ありませんでした。これで閉会とさせていただきますが,最後に事務局から,次回以降の会議日程の御確認を再度お願いいたします。

【内田調整官】  ありがとうございました。
 今後の予定ですけれども,2月4日と2月18日に,答申起草のワーキンググループを開催いただきまして,合計2回ですね。それで,その次ですけれども,次回3月2日の月曜日の15時に,同じこの場所でございますが,10回目,次回の文化政策部会を開かせていただきたいと思います。
 詳細につきましては,事務局より後日改めて御連絡申し上げたいと思います。本日はまことにありがとうございました。

―― 了 ――

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