文化審議会第13期文化政策部会(第3回)議事録

平成27年9月28日

【三木企画調整官】定刻でございます。開会に先立ちまして,事務局から配布資料の確認をさせていただきます。
 次第の1枚紙に続きまして,資料1「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(第4次基本方針)の実現に向けた今後の方向性と主な具体的取組,資料2の1-1と1-2,資料2-1-1は日本版アーツカウンシルの試行的な取組について,資料2-1-2は一番上に白マルで日本芸術文化振興会の沿革となっている資料です。資料2-2は,文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの試行的取組に関する報告書となっておりまして,分厚いものでございます。資料2-3は,文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの在り方について(報告書)の取組状況で,A3の横長のものでございます。それから,その次にはパンフレットといたしまして,「日本芸術文化振興会では文化芸術活動に対する助成について新たな取組を進めています」というパンフレットが入っております。資料3,平成28年度文化庁概算要求の概要,資料4,文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想,資料5が今後の予定となっております。
 このほか,机上資料といたしまして,南條委員からご提供いただきましたイノベーティブシティフォーラムのパンフレット,それから第4次基本方針の冊子,それから平成28年度文化庁概算要求の概要と,この三つについては机上のみの配布とさせていただいております。もし,足りないもの等がございましたら,今おっしゃっていただけますか。
 それでは1点,事務局からスタートの前に御報告を申し上げます。
 文化庁内の人事異動がございまして,2名御紹介をさせていただきたいと思います。一人目は村田文化財部長でございます。

【村田文化財部長】村田でございます。よろしくお願いいたします。

【三木企画調整官】もう1名,大谷伝統文化課長でございます。

【大谷伝統文化課長】大谷です。よろしくお願いします。

【三木企画調整官】事務局からは以上でございます。部会長,よろしくお願いします。

【熊倉部会長】皆様,おはようございます。本日もお忙しいところをお集まりいただき,誠にありがとうございます。また,多くの委員の方々が先日の懇談会にも御参加をいただきました。本日その引き続きの議論もございますので,あの時語り尽くせなかったことなど,続けてお話ができればと思っております。
 ただいまより,今期第3回目の文化政策部会となります。次第にございますように,本日は議題が二つあり,それぞれについて1時間程度御議論いただくことを予定しております。
 それでは,議事に入る前に,文化行政に関する最近の動きについて,事務局から報告がございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【吉田会計室長】それでは,まず資料3を,一番最後から3番目にあると思いますが,文化庁の概算要求の概要について御説明させていただきます。資料3,28年度文化庁概算要求の概要という資料でございますが,よろしいでしょうか。
 それでは,この8月末に財務省に提出いたしました平成28年度文化庁の概算要求の概要についてです。これについては,後ほどの第4次基本方針に基づく今後の施策の展開に関する方向性についての議論があると思いますので,私からは全体の概要について,主なものについてのみ御説明させていただきます。
 資料3の1枚目でございます。文化庁は今年度,28年度要求ですが,総額として1,192億円,対前年度といたしましては154億円増,率にして14.8%の増要求を行いました。その下にありますように,世界に誇るべき「文化芸術立国」の実現,文化力で地域と日本が輝くということで,その下にありますような四つの大きな項目で要求をしております。
 まず,一つ目でございます。その下,豊かな文化芸術の創造と人材育成です。その下の(1)文化芸術立国実現に向けた文化プログラムの推進の中です。マル1といたしまして,リーディングプロジェクトの推進で新規に13億円を要求しております。内容といたしましては,文化庁にゼネラルプロデューサーやプロデューサー,ディレクターを配置した実行チームの設置経費といたしまして3億円,実際のリーディングプロジェクトの事業費として10億円の要求をしております。マル2といたしまして,国が地方公共団体,民間とタイアップした取組で,文化庁が実施しているメディア芸術祭等の事業についての充実を図っていきたいと考えております。
 2ページ目を御覧ください。二つ目の黒ひし形です。文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業についてでございます。これは地方自治体が企画する事業に対して支援するものですが,その中の三つ目の黒ポツがあります。地域の文化施策推進体制の構築を促進する取組で,地方版のアーツカウンシルに向けた経費を新たに要求するとともに,全体として支援の件数の増を図っていきたいと考えております。また,その下,舞台芸術創造活動活性化事業についてでございます。これは従来,トップレベルの舞台芸術創造事業として,芸術団体等が行う文化活動に対して支援を行っておりました。今年度は事業の一部見直しを行いまして,入場料収入に応じた支援を一部導入するとともに,芸術団体の機能強化に対する人材配置の支援を新たに要求するなどの支援を内容を組み替えて増額要求をしました。また,その下,劇場・音楽堂等活性化事業についても,来日外国観光客向けのプログラムや受入環境の整備についての支援を新たに要求いたしました。
 続いて,2ページの一番下でございます。文化芸術による子供の育成事業や伝統文化親子教室事業についても,増額を図りまして,子供の文化芸術や伝統芸能の体験の機会の増加を図りたいと考えております。
 続きまして,3ページ目を御覧ください。かけがえのない文化財の保存,活用及び継承等でございます。まず,マル1,日本遺産魅力発信推進事業です。これは各地域に点在する史跡,伝統芸能など有形・無形の文化財をパッケージ化しまして,我が国の文化,伝統を語るストーリーとして日本遺産に認定する仕組みを今年度27年度から実施したものです。28年度につきましては倍増の要求をしました。なお,日本遺産につきましては,2020年までに100件程度の認定をしたいと考えております。また,その下のマル2でございます。文化遺産を活かした地域活性化事業につきましては,地域の文化財について外国人旅行者が正確で分かりやすい解説や情報発信についてのモデル事業を新たに実施したいと考えております。なお,このほかに重要文化財の建物について,構造にかかわる部位に影響がない壁や屋根等の外見等を健全で美しい状況に回復するための支援を,美しい日本探求・探訪のための文化財建造物活用事業として新たに実施し,観光資源としての魅力向上を図りたいと考えております。
 続きまして,(2)真ん中あたりです。(2)のマル1,建造物等の保存修理等で煉瓦造や鉄筋コンクリート造の近代化遺産についての保存整備や伝統的建造物群の保存修理についても増額の要求をしております。また,一番下にございます無形文化財の伝承・公開等で,伝承者養成や用具の修理等についても補助の必要な予算を確保していきたいと考えております。
 最後に,4ページ目でございます。我が国の文化芸術の発信と国際文化交流の推進についてです。マル1にありますように,芸術文化の世界への発信と新たな展開で,海外フェスティバルへの参加・出展や国内における国際フェスティバルの開催などの支援を引き続き実施していきたいと考えております。またその下,マル2でございます。アーティスト・イン・レジデンス活動を通じた国際文化交流推進事業についてです。これは,海外のアーティストが一定期間日本に滞在して,地域のアーティストや地域住民との交流等のプログラムに支援を行っておりますが,28年度要求におきましては,招聘だけではなくて,双方向交流が可能なプログラムの支援を新たに行いたいと考えております。
 最後に,4として文化発信を支える基盤の整備・充実で,この後議論もありますが,日本芸術振興委員会に対する日本版アーツカウンシルの本格実施についての経費を初め,文化施設における多言語化,観覧・鑑賞環境の充実も図っていきたいと考えております。
 以上,簡単ではございますが,文化庁の概算要求の説明をさせていただきました。

【富田文化プログラム推進企画官】続きまして,資料4に基づきまして,文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想につきまして,簡単に御説明させていただきます。文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想につきましては,文化庁が実施します文化プログラムについて基本的な枠組を取りまとめたものでございます。3枚めくっていただきまして概要版がありますので,それに基づきまして説明をさせていただきます。
 文化プログラムにつきましては,御案内のとおり,2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて日本文化を世界に,国内外に発信する非常に大きな好機であります。それを生かしまして,文化庁といたしましては,文化庁の取り組む文化プログラムを「文化力プログラム(仮称)」と名付けまして,今後全国的に文化芸術で国・地方を盛り上げるようなそういったキャンペーン活動,文化芸術活動をやっていきたいと考えております。

 この「文化力プロジェクト(仮称)」につきましては,今後名称も検討していきますけれども,2020年以降も文化庁がその文化芸術立国に向けて大々的にやっていけるようなプロジェクトと考えております。今後文化庁が作成したガイドラインに基づき,都道府県や市町村等と協力をして認定をしていくことを考えております。そういったものを通じて,ここに数値目標を書かせていただきました。20万件のイベント,5万人のアーティスト,5000万人の参加というようなロンドンで非常に活発な文化プログラムが行われておりましたが,それを超えるような文化プログラムを実演したいと思っております。それを踏まえて訪日外国人旅行者の2000万人に貢献をしたいと考えております。
 そういった文化庁が進める取組の三つの枠組みを考えておりまして,一つ目が我が国のリーディングプロジェクトの推進です。これは日本の顔となるような文化芸術活動を国が主導してやっていきたいと考えております。その中では,人材育成の強化や教育,科学技術,医療・福祉等の分野との融合によるイノベーションの新しい創出についてもあわせて促進していければと思っています。二つ目が,国が地方公共団体,民間とタイアップした取組の推進です。これは,従来,文化庁がやっております地方公共団体や民間の文化芸術団体等への支援を,今回の文化プログラムにおいてもより充実していければと考えております。三つ目は民間,地方公共団体主体の取組を支援です。これは地方公共団体や民間がやっているような文化芸術活動について,こういったロゴマークを一緒に普及をすることで,文化庁としてもより取組を後方的に支援する等,そういうバックアップをしていくことで国全体で盛り上がっていければと考えております。
 次のページに移らせていただきます。それを進める上での七つの戦略です。まずは,戦略1,企業・団体との協働,メセナ活動が支援する協働などをどんどん,より活発に進めていければと思っております。戦略2といたしましては,地方公共団体,文化芸術団体等との協働で,例えば地域の優れたプログラムに対する新しい検証制度を検討する,また,都道府県等に文化力プロジェクトを統括するようなコミッショナーの配置を促進していければと考えております。戦略3としましては,組織委員会,オリパラ推進本部,関係省庁などと一体的展開や他の分野との連携によって,先ほども話しましたとおり,新しい分野との融合による文化芸術活動の新しい可能性を推進していければと考えております。戦略4といたしましては,文化プログラムの企画立案やその記録・評価に当たりましては,大学や学生たちの参画を促していきたいと考えております。また,戦略5といたしまして,新たな文化芸術の担い手を支援ということで,若い三十代までのアーティストやアートマネジメントをやられる方々を「文化芸術アソシエイツ(仮称)」として認定をいたしまして,全国的にこういう方々が文化芸術,こういった活躍できる場を提供できるようにしたいと考えております。それが将来の地域版アーツカウンシルの雇用が生まれることを期待したいと考えております。また,戦略6,戦略7では文化芸術の国内外への発信ということで,文化ボランティア活動の促進やシンポジウム等を積極的に開催していくとともに,ポータルサイト等を活用して国内外への発信を積極的にまたやっていきたいと思います。
 右側ですが,こういった取組を進めるための推進体制といたしまして,積極的に民間の方々を登用いたしまして文化庁に実行チームを結成いたしたいと思っています。全体を統括するゼネラルプロデューサーから広報,企画,地域・大学連携,ファンド・レイジングなど様々な機能別のプロデューサーやディレクターを民間からお招きして,官民が一体となってこういった取組を進めていければと思います。
 最後に,スケジュールを簡単に書かせていただいております。現在先ほども説明がありましたとおり,この基本構想に基づきまして概算要求を行い,具体的なリーディングプロジェクトの仕様や基本的な枠組みについて検討している状況でございます。そういたしまして,リオ大会が終わった後,スポーツ・文化・ワールド・フォーラムという大きなキックオフイベントも開催されますけれども,リオ大会後にこの文化力プロジェクトがキックオフできるように進めていければと思っております。
 以上で,簡単ですが説明は終わらせていただきます。

【熊倉部会長】ありがとうございました。懇談会に御出席いただいた方は,そのようなことを聞いたという同じ資料が出てまいりましたが,今日初めて御覧になった委員の先生方も多かろうかと思います。今の資料3と資料4について,何か御質問があれば,幾つかお受けしようと思いますが,いかがでしょうか。
 信田委員,どうぞ。

【信田委員】おはようございます。信田でございます。
 この文化庁の推進体制のところで,実際民間の方も含めてチームを結成されるということですが,御存じのように既にカルチャービジョンサミットなるものが昨年ぐらいから活動されていて一般社団法人化されています。私は経産省も8年ぐらいずっと出入りしている関係上,経産省でも同じような民間人の現場で活躍する方を集めるような試みは何回もあります。あそこまで現場の方から経営者の方まで含めて,上手にバランスよく人が集まることは多分過去にも事例がないと思います。それほど求心力と言いますか,文化業界全体の求心力は結構カルチャービジョンサミットさんは持っていらっしゃるので,そこをそのまま人的に活用されるなど,そのような可能性はお考えでしょうか。

【熊倉部会長】いかがでしょうか。

【有松次長】よろしいでしょうか。今御指摘のカルチャービジョンサミット,一般社団法人化されまして,この文化プログラムに限らず様々な非常にたくさんの第一線の方々がお集まり,今ここにいらっしゃる方もたくさんおやりになっている団体だと思います。ですから,そこと連携しながら大いにやっていきたいと思います。現実にはいろいろな形で御支援いただく方があそこと重なることはあろうかと思います。一つの一般社団法人でいらっしゃいますので,そこだけではない形で,実際には人が重なることもあり得る形で連携をさせていただくことになろうかと思います。

【熊倉部会長】よろしいでしょうか。どうぞ。

【仲道委員】細かいことで申し訳ないのですが,資料3のジャパンリーディングプロジェクト事業の中に,音楽という言葉がないのが気になりました。小さい文言の中であっても抜け落ちるとそのまま抜け続けてしまうこともあるのではと思いまして,念のため申し上げたく存じます。演劇,映画のところに「等」とありますが,是非「等」ではなくて「音楽」と一言,足しておいていただけるとうれしく存じます。

【熊倉部会長】こちらの表ではなくて文言……。

【仲道委員】資料3の「文化庁概算要求の概要」の,「ジャパンリーディングプロジェクト事業」の括弧の中です。この文言がそのまま実施される事業となるのか分かりませんけれども,「音楽」という言葉を是非落とさないでいつも書いていただければと思います。

【熊倉部会長】それを言えば,美術もないですが。言っていたら切りがないような気もするのですが,もちろん音楽もやってくださると思いますけれども,先がありますので先に進めて……。もちろんこの概算要求とこのオリンピックの文化プログラムについても,引き続き次のお話の後に御意見を賜っていきたいと思います。
 それでは,本日の議題の1にございます第4次「文化芸術の振興に関する基本的な方針」に基づく今後の施策展開に係る方向性について,少しまとまったようですので御議論いただきたいと思います。今後年末に向けて,政府においては予算獲得に向けた折衝が本格化するとともに,施策の具体化が進む段階において,皆様からこの第4次基本方針の実現に向けた基本的な方向性とそのための施策につきまして,財務省と戦っていく上でのいいアイデアをたくさんいただければと思います。
 それでは,事務局から御説明をいただきます。お願いします。

【三木企画調整官】資料1を御覧ください。「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の実現に向けた今後の方向性と主な具体的取組ということで,第4次方針に掲げております「文化芸術立国」の姿,4本の柱があったと思います。その実現に向けて取り組むべき方向性と具体的な28年度から取り組む事項につきまして,概算要求中の事項を中心に新規のものを中心にピックアップして整理したものがこの資料1でございます。
 柱の一つ目の中身でございます。一つ目のマルとしまして,全国様々な場で創作活動への参加・鑑賞体験ができる機会を提供するという部分につきましては,劇場・音楽堂等が行っております自主企画について全国各地を巡回することを新たに盛り込んでおります。それから,障害者の芸術活動への振興といたしまして,実態の調査研究や試行的展示ということを新たに行っていきたいと思っております。

 マル2,国や地方等の文化芸術事業の実施体制を強化するという点です。一つ目は議題2の部分ですが,振興会で試行的に取り組んできた日本版アーツカウンシルの機能を本格導入するということで,概算要求上POの一部常勤化及び事務体制の充実を要求しております。二つ目は,地域レベルですが,文化施策推進体制の構築を促進する取組等に対する支援を今回新たに要求しております。
 こちらは,添付資料の11ページを御覧いただけますか。文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業,この真ん中あたりにあります。新規の枠組みとしまして,地域の文化施策推進体制の構築を促進する取組を設けております。専門性を有する組織を活用した文化芸術政策の企画立案・遂行,文化芸術活動への助成,調査研究を実施する体制を行おうとする自治体に対して,モデルを構築する観点から支援をしていきたいと考えております。
 次のページを併せて御覧ください。この地域レベルでのこの体制構築につきまして,二つの主な取組をしていきたいと思っております。一つは今申し上げましたようなパイロットモデルをつくるということで,この12ページ目の文化庁から左向きに矢印が伸びている方が今申し上げた部分でございます。もう一つが右側に矢印が伸びておりますけれども,文化プログラムの実施に合わせて実施体制が強化されるような方向に促していきたい,自治体と協力してやっていきたいと考えております。文化プログラムを実施するに際して,都道府県,市町村等において,コミッショナーの配置を国としては促すとともに,国として認定する文化芸術アソシエイツというものの活用も進めていきたいと考えております。
 前のページ,2ページ目に戻っていただけますか。次に,マル3,文化芸術を次世代に継承するという部分です。まず一つ目,文化財の活用につきましては,先ほど説明申し上げましたように日本遺産を倍増して地域活性化や国内外への積極的な発信を行っていくこと,それから,2ページ目,一番下のb)です。文化財の保存・継承といたしまして,伝統的建造物群保存地区につきまして,整備を一体的・総合的に実施をしていくことに取り組んでまいります。3ページ目でございます。登録文化財の耐震対策も推進することを予定しております。
 飛びますけれども,4ページ目を御覧ください。(2)目指す文化芸術立国の姿,二つ目でございます文化プログラムについての全国展開です。先ほど事務局から御説明しましたように,文化庁といたしましては,「文化力プロジェクト(仮称)」を開始するということで,三つの枠組み,リーディングプロジェクト,それから国が地方自治体,民間とタイアップした取組,それから民間,地方自治体主体等の多様な取組も併せて,3本の大きな枠組みで文化ボランティアの一層の参加も進めながら,全国津々浦々で実施したいと考えております。
 三つ目の文化芸術立国の柱3番目,日本全国津々浦々から世界中に各地の文化芸術の魅力を発信していく部分でございます。5ページ目,マル2,国際文化交流を推進し,諸外国との相互理解を促進するという部分では,アーティスト・イン・レジデンスの活動の機能を強化すること,それからネパール及びシリアの紛争による遺跡の破壊や盗掘に対応するための緊急支援の拡充を予定しております。マル3,文化発信を支える基盤を強化するという部分につきましては,文化財に対する多言語対応を初め,外国人旅行者のニーズに合わせた正確で分かりやすい情報発信や推進体制の取組を新たにモデル事業として支援をしたいと考えております。
 最後でございます。四つ目の柱は,文化プログラムの全国展開に伴い,国内外の多くの人々がそれらにいきいきと参画する,そして文化芸術関係の新たな雇用や産業が現在よりも大幅に創出されているという柱でございます。この実現のために文化プログラムにおいては,リーディングプロジェクトを予定しております。その中におきまして,地域課題の解決を図る地域創造人材の育成について先進的な取組を行いたいと考えております。イノベーションの創出といたしましては,文化芸術と周辺分野,教育や科学技術,医療・福祉サービス分野との融合によるイノベーションの創出となるような取組を文化プログラムのリーディングプロジェクトと位置付けまして,イノベーションの創出に取り組んでまいりたいと思っております。
 以上,第4次方針で目指すべき方向性とその具体化に向けて今後新たに取り組む施策に絞りまして,概算要求事項を中心に御説明させていただきました。
 部会長,よろしくお願いします。

【熊倉部会長】ありがとうございます。ただいま御説明がありました中で,アーツカウンシルに関する部分がございましたが,去る9月2日に懇談会形式でこの中でも多くの委員の方々にお集まりいただき議論を行いました。国のレベルのアーツカウンシルにつきましては,後ほど議題2で詳しく,振興会から今日は関理事もいらしていただいておりますので,御説明を伺いながら改めて議論をしていければと思います。こちらは先ほどの概算要求にもございましたが,常勤職員の設置などに向けて具体的な進捗があったように思われます。地方レベルのものにつきましては,9月2日の懇談会以降特段具体的に進捗した部分はまだないようです。このアソシエイツやコミッショナーなどどうするというあたり,まださほど具体的に進んでいないようですが,懇談会御欠席の委員の方々もいらっしゃるので,皆様方から忌たんのない御意見,御質問をいただければと思います。もちろん,この第4次基本方針,オリンピック絡み,地方版アーツカウンシル絡みでないところでも結構でございますので,御意見のある方,挙手をお願いいたします。
 加藤委員,どうぞ。

【加藤委員】資料1,さすがに文化庁だと思いました。つまり,非常にまとめが前回提出されたものと格段に違っていて,よくまとめていただいたと思いました。全体がすばらしいことをまず評価申し上げた上で,1ページ目の(1)のマル2の今言われたアーツカウンシルの部分の中身については後ほど議論されると思います。中身ではなく,推進体制と実施体制と言っている以上,この1から4全体をまとめた最後に実施体制をまとめられてはいかがかと思いました。そうしないで,この1から4に入れてしまうとこの部分がわい小化される可能性があります。むしろここは,もちろんアーツカウンシルだけで全てが実現するわけではないのですが,それを含めた新しい実施体制を国としても取り組んでいくという意気込みを示していただくためにも,1から4が全て終わった後,実施体制という形でおまとめになられるといいのではないかと思いました。その点を御検討いただければと思います。

【熊倉部会長】何かございますか。よろしいですか。
 ほかにどなたか,河島委員。

【河島委員】今年度になりましてから,欠席続きだったもので申し訳ありませんでした。もしかしたら既にお話があった,議論が随分なされたことかもしれません。文化芸術アソシエイツというものが今日頂いた,あるいは送っていただいた資料からも常々気になっていました。気になるというか,どういうものなのか,イメージがもう一つつかめませんでした。もう一つコミッショナーもですが,特にアソシエイツの方がここに書いてある限りでは分かりにくいので,御説明いただけますか。

【熊倉部会長】もう少し具体的にイメージだけでもお話しいただけますか。

【三木企画調整官】まず,アソシエイツでございますが,まだなかなか文字化できていない部分があって,今後具体化をしていく意味ではまだ中身は十分決まっていないのが現状でございます。現時点で考えていますのは,若手の芸術家であったり,企画立案をするプロデューサーのような若手の方を文化庁が認定するのをきっかけにしていただいて,この文化プログラムを通じて活動の幅を,もし文化庁のこのアソシエイツという枠組みで広げることができれば,それが終わった後にレガシーとして人が巣立っていただけるかと思っております。その意味では繰り返しになりますが,若手の芸術家やプロデューサーの方を文化庁が認定をすると,それを場合によれば,それによって文化庁においては人材バンク的なものができます。地域によってもしニーズがありましたら,マッチングをさせていただくなど,この前も別の委員からもサジェスチョンを頂きましたが,例えばアソシエイツを国で定期的に集まっていただいてその人達のつながりを強めるなど,そういうようなきっかけづくりをしていきたいと考えております。

【熊倉部会長】ということですが,でも,文化庁が給料を払うわけではないそうです。

【亀井委員】すいません。その場合,人材をどのように発掘されますか。団体がいろいろあると思うのですが,そこから,若手をこういう人がいいですよと推薦を受けてやるのか,あるいは公募して全く名の知れていないけれども実績のある,そういうところで判断されて文化庁が認定するのか,人材の発掘の手法というのはどのようにお考えでしょうか。

【三木企画調整官】現時点ではまだ,すいません,決まっておりません。自薦・他薦それぞれメリット,デメリットあると思いますので,しっかりと皆様方の御意見をお伺いしながら具体化をしていきたいと思っております。

【河島委員】続きまして,すいません。先ほどからの御説明で認定と若手アーティスト,プロデューサーというのは分かったのですが,認定という限りは何々というカテゴリーで交遊している人たちをアソシエイツと呼びましょうという意味ですよね。アーティストの芸術的な活動自体をほめましょうということではなくて,その人自分は創作活動をしながら,けれどももう少しプロジェクトとして何か大きいことをやっている人など,そういうことなのでしょうか。目的は人材バンクやネットワーク化というのは,それはとてもいいと思います。ただ,今亀井先生がおっしゃったようなその認定の方法もですし,何をしていることを認定するのかが,私は分からなかったです。

【熊倉部会長】その辺も全く白紙なので,是非委員の皆様方から,こういうふうにしないとただのお墨付きだけになって機能しないのではないか,あるいは,これももちろん文化庁が全部集めてやるというわけではなく,例えばもう地域で取り組んでいるプロジェクトの中で,若手のプロデューサー候補のような人たちを地元からこの人をアソシエイツというふうにして,うちは七つのモデル事業ですか,地域版アーツカウンシルの基礎になるようなところに全体を統括していくコミッショナーがいて,その人をアソシエイツに認定してくださいということもありなのか。その辺もいろいろあり得ますという話以上を特に考えているわけではないので,是非皆さんのサジェスチョン大募集中でございます。
 信田委員,どうぞ。

【信田委員】この要求額は是非とも満額勝ち取っていただきたいので,その上で例えば,今財務省から出ているキーワードであったり,例えばもう少し民間からアイデア的に厚みを持たせて盛り込まないといけないポイントなど,何かこれを補強するための民間としてすべきことが何かあれば御指示いただきたいです。

【熊倉部会長】いかがでしょうか。

【三木企画調整官】なかなか整理できなくて申し上げるのですが,日頃やっている感じだと当たり前に言われることなのですが,何で国がしないといけないのか、地方に任せておいたらいいのではないかということはよく聞かれます。例えば,文化プログラムは全国でやるという話のときに,財務省からすれば地域でやることは地域がお金を出せばいいのではないかというものに対して,どのように積極的に国が役割を果たしていかなければいけないのかというあたりは,我々はいつも説明に困っているというか,いい知恵がないかと思っています。最近は予算でも同じですけれども,経済波及効果というものをよく言われます。なかなか我々は計算が不得意でよく困っているのですが,そういうものもよく求められたりしております。
 対財務省という関係ではございませんが,文化プログラムをやっていくにあたって,公的なお金だけではなくて民間と一緒に協働しながらやっていくと,今までやっていないレベルのものをやっていくのは重要な視点だと思っております。そのようなあたりも御一緒にさせていただくのは有り難いと思っております。

【信田委員】あれですよね。では,つまりは地方でばらばらそういうのも大事ですけれども,国が集約することによって,海外への発進力を要は高めるのだと。国がまとめることによって,海外から注目されるそのポジションに引き上げるのだというポイントを強化すべきということですかね,多分。

【熊倉部会長】それも一つポイントになりそうですが,あるいは地域の人材不足や文化政策への関心の低さやそのようなこともあるかもしれません。文化政策を通じてストーリーをつくることができるような人材がなかなか任せておくだけではできないというのか,あるいはリーディングプロジェクトに関しても,是非いろいろアイデア,御意見などがあればと思いますが,いかがでしょうか。
 すいません。では,柴田委員から,次,赤坂委員でよろしいですか。

【柴田委員】大きく二つあります。1点目はコミッショナーとアソシエイツの件です。人選される御当人の意欲はもちろんですが,その人選に求められている資質や能力,これを明らかにした上で人選を行って採用してほしいと感じました。採用に当たっては,透明性,公正性,中立性を担保して,いつ誰がいかなる理由で選ばれたのかを明確にすることが必要だと思っています。このルールや手続が不明瞭であった場合,人間は感情の持ち主でありますので,地域の中で事業を推進していくことについて非常に大きな問題が出てまいります。2020年までの事業推進が困難になる場合もあるのではないかと予想しております。
 地域の声をお届けしようと思って今日は来ました。公立文化施設の職員やトップの方々と意見交換する場がよくありますが,不安と期待が入り混じっております。文化庁さんの政策に対して非常に期待が高まっている反面,不安も大きいです。行政関係者,行政OBの施設長さんからは,「文化に精通していない人が文化力の判断をどうするべきか分からない」,「文化に精通していない人が人選されたら非常に困る」,「既存団体中心なのではないか」,「民間によって中立性が担保できるのか」等々,このような御意見を伺っております。いずれにしましても,社会に開かれた全ての国民に機会を提供してほしいという御意見だろうと思っています。

 それから,二つ目です。昨年度の議論から文化芸術のパラダイム転換が度々指摘されているかと思います。流れとしては共益から公益に向かわなければいけないのではないかということです。チーム編成に当たっては,新陳代謝を促す仕組みづくりを是非構築していただくようにお願いしたいと思います。地域においては既存の団体に入りにくい個人や入ることを選択していない団体や人材が見受けられます。人口の少ない地域ではこのような現象があからさまに出る場合があります。既存団体を活用しつつ,新しい人材や団体に参加してもらうことがとても重要で,次代を担う中堅,若手の活躍の場をどうつくるのかが大事であると思います。文化芸術が国民全体に広がること,それから次世代の育成や確保につながるという視点が最も重要だと思っております。
 以上です。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 赤坂委員,お待たせしました。

【赤坂委員】僕は被災地を背負っているので,あえてそういう発言をさせていただきます。そもそもオリンピックを誘致するときに,さんざん東日本大震災の被災地に対する支援や復興をテーマにしてこのテーマも動き出したと思います。今回これを見せていただいて,4ページの(3)の四角の囲みに,「東日本大震災の被災地からは力強く復興している姿を地域の文化芸術の魅力と一体となって国内外へ発信している」という言葉がありまして,ああまだこの言葉は残っていたと安心したのですが,その後を見ると一つも具体的な提言というか提案がないです。つまり,もう呼び声というか言葉だけで,もう忘れられてしまったのかと僕は暗い気持ちでこれを眺めていました。
 つまり,東日本大震災の被災地から力強く復興している姿を見せてほしいという大切なテーマだと思います。実際にオリンピックに来られる人たちも行かないにしても気にしている方は多いと思うのですが,そこに対する支援はどこにも具体的に書き込まれていないことが,とても僕は気になります。
 僕らもさんざんやってきました。文化芸術活動をやってきましたし,文化庁からの支援ははっきり言うと頂いています。だから,有り難いと思っているのですが,でも,ないのです,ここに。どうして具体的にここにどこにもないのだろうというそういう思いはきちんと伝えなくてはいけないと思いますので,あえて言わせていただきます。

【熊倉部会長】事務局からも補足していただきたいのですが,恐らくここまで何となくもやもやと話をしてきて考えました。例えば,国が主導してやるリーディングプロジェクト,今は国立文化施設の中で,私も東京の国立の文化施設の中で展覧会やコンサートなどで華やかなものをやるのかと思っていました。でももしかしたら,例えば東北の被災地で国が主導してのリーディングプロジェクトのようなものを1本,これは実行チームの方々にこの政策部会からのお願いとして強く要望することはできるのかということと,それから是非この復興に合わせて,東北地方で非常に多くのNPOや文化施設や地域連携のいいプロジェクトが育ってきています。そういうものが今のグローカルの中の七つの新しい地域版アーツカウンシルにつながってくれるといいというネットワークインフラづくりのアソシエイツとコミッショナーがどこがどうかですが,そういったところに是非積極的に働きかけて,あるいは指導をしたり,採択したりというような可能性は十分考えられるのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

【三木企画調整官】部会長のおっしゃるとおりでございます。具体化に向けてそういうことはしっかりと考えていきたいと思っております。それで,資料1のつくりで全く出てきていないところは,私は担当者としてつくりながらも当然意識したのですが,大変申し訳ございません。今回メリハリをつけたいと新規や増額のものだけをやりましたので,今おっしゃっていただいたように,今までも文化庁がやってきていてそれは引き続き来年度も当然取り組みます。今回ある意味焦点化したような資料になっておりまして,新規などというのが出てきていない部分で少し見えないようになってしまっている状況でございます。

【赤坂委員】部会長が言われたように,新規で1本考えるようなことを是非提案いただけると本当に有り難いと思います。既に復興予算はどんどん減っていますし,僕らが復興予算に文化芸術で何か出しても,はっきり言うと通ったことはない。ですから,文化庁は積極的にリーダーシップをとっていただかないと動かないと思います。是非よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】待ってくださいね。すいません,今の補足です。

【磯谷長官官房審議官】補足ですが,審議官の磯谷です。今先生の御指摘のあった平成28年度の文化庁概算要求の概要という冊子の37ページにリーディングプロジェクトの推進がもう少し細かく書いてあります。その中に,既にいろいろ先生方の御指摘のあったことも踏まえて,リーディングプロジェクトの推進の中で,例えば三つのタイプがあります。公益分野公団型プロジェクトや人材育成型や,文化拠点創出型で,例えば文化拠点創出型の中で今御指摘のようなことを取り上げることも考えられると思いますし,そのあたりは十分検討してまいりたいと思っております。すいません,細かい資料の方に飛びまして申し訳ございません。

【熊倉部会長】では,馬渕委員から武内委員の順番でよろしいでしょうか。

【馬渕委員】今赤坂委員と部会長から御提案がありました震災復興を文化プロジェクトとして位置付けるのは,私は大賛成です。日本が最近国際的にニュースの的になったのは,本当に東日本大震災ではないかと思います。それで,私はたまたま海外におりましたが,あの映像はものすごいインパクトで一瞬で海外に流れ,そして日本に来る海外の人たちはその記憶をかなり持っていると思います。
 それで,もう4年たってしまってだんだん風化していく中で,私はこのプロジェクトを非常に強力な中心に据えるべきではないかと思います。というのは,文化であれだけの災害を復興するというそのメッセージは,それこそ正に文化力のメッセージになります。それから,日本が一体何をもって文化力とするかというときに,人の力あるいは伝統のある文化の力というのが非常に分かりやすく発信できるし,それこそ正にあそこで非常につらい出来事を黙々と耐えて,またそれを次の力に発信していこうという人の力は世界の人々に訴えると思います。
 ですから,たくさんいろいろ,盛りだくさんで結構です。中心をそこに据えてそれに関連するほかのいろいろな人材もそうですし,日本文化再発見もそうです。それをもう少し強力に真ん中に据える方が,私は絶対に世界にアピールすると思います。

【熊倉部会長】ありがとうございます。
 では,武内委員,お待たせしました。

【武内委員】ちょうど先週末にありました「ツーリズムEXPO」で,フォーラムにも参加しました。そのテーマ自体に,実は「観光」と「文化」が取り上げられていまして,非常にそういった意味では観光が文化に焦点を当ててきていることを感じました。ここでも多分一番注目されているのは,2020年に向けての2000万人の外国人観光客誘致で,そのためにも観光の中で文化をアピールすることが強調されていると思います。
 そうすると,国の外客誘致の動きに向けて,ちょうど文化の発信として文化庁が文化プログラムを推進していくタイミングで注目されるところだと思います。その意味では,観光庁との予算の取り合いの部分も出るところなきにしもあらずかもしれないのですが,それぞれの省庁間で文化と国の発展の推進の観点から,是非文化プログラムに,他省庁とのリレーションも相乗効果的に活用いただき,予算を取っていただければと思います。

 今,それぞれの省庁が予算取りの項目を出しておられると思います。重複というか,強調点など,もし重複している点等で,文化庁としてはどのように推進していくとか,どこを強調していかれるなどありましたら教えていただきたいと思います。

【三木企画調整官】各省庁との連携というのも非常に重要だと思っております。今回の構想に取り組んでいく戦略の一つとしても書いてございます。先ほど予算の関係でいいますと,連携も少しずつ始まっております。例えば,文化財関係でいいますと,文化庁は文化財関係を補助できるのですが,国交省の観光庁はまちづくりとしてやると。同じところについて補助を出すことによって,全体として文化財だけではなくて地域のまちづくりにつながって,それが観光につながっていくというあたりで,実際それぞれの省庁が事業をやっていくに当たっての連携は少しずつ始めております。今回2020年に向かって,そういうことをより一層文化プログラム等においても,連携は一層深めていきたいと考えております。

【磯谷長官官房審議官】補足ですが,先ほどの平成28年度文化庁概算要求の概要の53ページに今三木がお話しした一つの事例です。文化財総合活用戦略プランの強化という中で,文化庁は日本遺産にて促進等々やりますが,観光庁はむしろ観光案内所やWi-Fiや周遊バスの実証運行といったことでやろうと。具体的にもう少し何をやるかについては,これからしっかりと観光庁とも詰めていきたいと思っております。

【熊倉部会長】太下委員,どうぞ。

【太下委員】この資料1について二つ御意見を申し上げたいと思います。一つ目は1ページ目に書いてあります文化芸術による地域活性化国際発信推進事業です。口頭で地域版アーツカウンシルという補足をしていただきましたけれども,この項目についてです。恐らく中央政府が本格的に地域で自立した地域版のアーツカウンシルを支援していこうという政策をとることは,ほかの国にない非常に画期的なことだと思います。なので,これがもしうまくいけばオリンピックにおける大きなレガシーになると思いますので,是非積極的に推進していただきたいと思います。
 それに当たって,今年度七つ採択をするという事業は,恐らく公募型の事業になると思うのですが,最初に選ばれる七つというのが今後展開するモデルになっていきますので,先ほど柴田委員からも御意見がありましたが,この選び方が非常に大事なポイントになってくると思います。
 つきましては是非2点,御配慮いただきたいと思います。自治体からの提案においては,うちはこのような事業をやりますという内容がきっと出てくると思います。ただし,そのような事業内容の提案にポイントを置くのではなくて,今後例えば文化庁さん等からの補助金の再配分など,自らの資金の助成,審査,配分の仕組みをこうやりますなど,域内での事業を推進するにしてもこういう観点でこういう専門家を雇用して配置してやっていきますというような,WhatではなくHowの部分,こういう仕組みでこういう人材を雇用してやっていくという部分をポイントに是非選んでいただきたいということが1点目です。
 もう1点は,前回の懇談会でも申し上げましたけれども,恐らくこのように文化が力強く支援されるという動きは2020年までは非常にスムーズに行くと期待できるわけです。問題は2021年以降です。恐らく残念ながら資金の流れは変わってくるという予想があるわけです。そこで,自治体から地域版アーツカウンシルの提案を募るに当たっては,2020年が終わった後,専門家の人材雇用をどのように継続するつもりなのかという一種のイグジットプランまで併せて提案していただき,このせっかく雇用した専門人材を地域でどのように雇用し続けるのかという点を重視して選定していただきたいと考えています。この際,今議論に出たような観光とのタイアップという方向性は源氏的な選択肢になってくると思います。そういった観点で是非最初のモデルになる七つの自治体を選んでいただければと思っております。
 ちなみに,なかなかイメージがつかめないので慎重にされているというお気持ちはよく分かるのですが,地域版アーツカウンシルという呼称もそろそろ正式に使っていただければと思います。この後議論になる日本版アーツカウンシルとこの地域版アーツカウンシルが,大きな車の両輪になると私は考えていますが,「地域版アーツカウンシル」という名称を使うことによって,それがより明確になると思います。先ほど加藤委員がおっしゃったそれが体制という形で是非明示していただければと思います。
 最後にもう1点ですが,文化庁さんの資料の中で,コミッショナーを配置したり,専門化人材を配置されるという記述がある点,これについてです。これも先ほど柴田委員からも御意見がありましたが,是非選び方,そして決定の仕方といいますか,プロセス,これを是非慎重に御配慮いただければと思います。
 恐らく,私が言うまでもないとは思いますけれども,昨今オリンピックに関して二ついろいろ話題になりました。新競技場,それからエンブレムの問題ですが,これらの問題は突き詰めて考えればどちらも選び方に問題があったのではないかと思っています。そういった意味で見ますと,この地域でのアーツカウンシル以上に文化庁さんが選ばれる人材が,特に世間的には注目されると思います。是非,ここで問題等ないようしっかりした資質のある人材,能力のある人材を選んでいただければと思っております。
 以上です。

【熊倉部会長】では,南條委員,手を挙げていらっしゃったと思います。

【南條委員】今いろいろな議論を聞いていて思ったのですが,文化力プロジェクトというものをこれも認定すると言っているのですよね。ここにブリティッシュ・カウンシルの湯浅さんもいらっしゃっていますが,私が理解している限りでは,イギリスの場合には,いろいろな文化プログラムをオリンピックに向けてインスパイアル・バイ・オリンピックゲームスという言葉で認定していくことをやったように聞いております。
 この最初の資料といいますか,資料4の2ページを読んでいると,オリンピックという言葉も出てきます。この文化力プロジェクトはオリンピックを想定してオリンピックのときに終わるものではないのかなど,オリンピックとの関係が余りはっきりしないと,関係がないのならないでいいのですが,そのあたりが疑問が少し出てきました。これは,そうするとオリンピックを想定しないのであるならば,ではオリンピックのためというものはないのかということも思います。
 それから,1のマル2を見ると文化庁が取り組むプログラムを文化力プロジェクトとして実施すると,その後には今度認定するものもあると,これは外から見たときに何か違うのか,違わないのかなど,どうもこのあたりはクリアな感じがしない気がいたしました。それから,リーディングプロジェクトについてもこの最初の資料を見ると2020年に向けた文化イベント等の在り方検討会で提案されたイベント,あるいは国立文化施設を拠点とした海外との共同イベント等を想定しているということで,では,そうするとこれはその二つ以外のものはリーディングプロジェクトにはならないのかなど,非常に認定という言葉に絡んで何を狙ってやるのかがまだクリアカットにここに表現されていないような感じもするのですが,そのあたりはもし御説明いただければ聞きたいと思います。

【熊倉部会長】いかがでしょうか。

【富田文化プログラム推進企画官】文化プログラム(仮称)とオリンピックでのプログラムとの関係です。オリンピックに関連するイベントとしての文化プログラムに関しては,もちろん今組織委員会が検討しておりまして,その中でIOCとの関係で,IOCの承認を得ながら具体的に決まっていくと聞いております。この文化力プロジェクト(仮称)につきましては,文化庁としてはそれを包含するものを考えておりますけれども,オリンピックを契機として,全国的に文化芸術活動を盛り上げるための一つのプロジェクトとして位置付けております。今後組織委員会と連携して検討を進める中で,この文化力プロジェクトがオリンピック・パラリンピックの文化プログラムにつながっていくようなことを考えております。今そのあたりの関連性についてはまだ検討段階ですので,少し分かりにくい部分があるかと思いますけれども,そこは今後はっきりとさせていければと考えております。

【南條委員】私の記憶では,ブリティッシュ・カウンシルさんがわざわざ早い時期に関係者を呼んできてフォーラムをやっていました。突き詰めると一つ重要なことを言っていました。それはオリンピックに向けてやる文化プログラムは1カ所に情報を集約して,そこには都も国もそれ以外の民間の団体も入るのかもしれませんが,若干のそういったところが全部集まって,そして押しなべて全ての文化プログラムをきちんと見て認定していくことをやらないと大変なことになりますと言っていたように思うのですが,そういう方向性は今のところはないということですね。

【富田文化プログラム推進企画官】そのように進めようと東京都,組織委員会,文化庁として,連携しながら進んでいます。連携しながらやってはいるのですが,まだ全体的なオリンピックに関わる組織委員会の検討が,まだ具体的には段階を踏んでやっていると認識しております。ただ,文化庁としては早く予算要求などもありますので,それを進めるために先にこういう基本構想をつくりまして,文化庁としての取組を先に進めていくと御理解いただければと思います。

【熊倉部会長】吉本委員,そのあたりも含めて何か補足がございますか。

【吉本委員】ありがとうございます。まず,この資料の1についてですが,先ほど三木さんからも御説明のありましたように,新規及び増額要求をしているものを中心に記載をいただいております。これが全部実現すると,かなり前に進む勢いがつくと思いますので,是非予算要求を頑張っていただきたい。先ほど信田委員からも満額という話がありましたけれども,そこは是非よろしくお願いしたいと思います。
 そして,今の南條委員の御意見とも関係することですが,先ほどアソシエイツ,それからコミッショナーの認定の話がありました。それと並行して,資料の1の8ページの真ん中,文化力プロジェクトとして推進の下に文化庁のガイドラインを作成して認定するとございます。ですので,私はこのガイドラインも非常に重要なのではないかと思います。ここで余り細かくガイドラインを決めてしまうのではなくて,例えばオリンピックの最大の理念である平和,それからオリンピックの価値というのが卓越,友情,敬意,あるいはパラリンピックの価値というのが決断力,平等,勇気などそういうところがあります。オリンピック精神に合致するようなものというような大きな枠組みで設定いただきたい。もちろんその点については,これから組織委員会ともいろいろ議論されると思います。
 組織委員会は基本計画の中で五つの柱を掲げています。その中で町づくりや持続可能性,あるいは先ほども議論にもなりました復興,オールジャパンなど,五つのテーマがあります。そうした大きなテーマや枠組みだけこのガイドラインでは提示する形にして,あとはアソシエイツなりコミッショナーが地域独自のいろいろなプログラム,多様なプログラムを展開できる。是非地域の自主性,多様性が実現できるようなそういう仕組みにしていただきたいと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】すいません。まだあると思うのですが,本日もう一つ議題がございまして,また御意見など文化庁にお伝えいただく機会もあるかと思います。私は全然吉本委員のように詳しくないので推察ですが,なかなか恐らく,組織委員会も大変であるようで,なかなかこのカルチュラルオリンピアードと呼ばれるリオの閉会式の後,本開催までの位置付けと一般的にされているものをどうするのかという具体検討がなかなか決まらない中,東京都はまず先にこれがIOCに認められなくても東京都はやるという決断を下して,現在準備をしています。文化庁ももちろんIOCに認められて公式になるように御努力をなさりながらも,とりあえずやるという決断を下しているので,そのあたりまだ少し歯切れの悪い状態にならざるを得ないのかという気がいたしました。
 また確かに何年か前にジュード・ケリーさんなどをお呼びしてお話を伺ったときに,総合コミッショナーの認定というようなお話もそこが非常に重要で,ロンドンの場合,とてもそれが遅れたのが最後まで尾を引いたというお話も確かにありました。この間吉本委員が文化経済学会でお呼びになった方はもっと扉は多い方がいいというような御意見もあったのも印象的でした。いずれにせよ,この実行チームが是非この第3ののろいにならないようにするには,どういう決め方をしていったらいいのかが大変気になります。
 すいません。まだ来年の4月から本格実施に向けて鋭意やっていかなければいけないと思うのですが,またこの仕組みに関しても,改めて懇談会などをしてはどうかと私からは御相談を申し上げているところです。
 というわけで,すいません。もう一つ,今日は二つ目の議題といたしまして,議題2,文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの試行的導入に関する報告といたしまして,日本芸術文化振興会から日本版,国の直営のアーツカウンシルの試行的取組について御報告を頂きながら御議論してまいりたいと思います。
 それでは,お待たせをいたしました。振興会の皆様,よろしくお願いいたします。

【日本芸術文化振興会関理事】失礼します。日本芸術文化振興会理事の関でございます。本日は発言の機会を与えていただきまして,ありがとうございました。
 それでは,資料2のシリーズでございますが,レジュメ風のもの,2-1-1をお配りしておりますので,それを中心にして御説明をさせていただきたいと思います。
 まず,冒頭少しお断りをさせていただきます。私の立場でございますが,私は平成23年の9月にこのポストに着任をいたしまして,基金の業務を担当してまいりました。したがいまして,日本版アーツカウンシルの試行的な取組につきまして4年間担当させていただきました。4年間の感想,思いというものを先に申し上げさせていただきます。この日本版アーツカウンシルの取組はやって良かった,やらせていただいて良かったと思っております。助成の精度が上がった,あるいは団体との風通しがよくなったといろいろあるわけですが,この助成業務が近代化されたのではないかと思っております。
 しかしながら,この4年間の経験として感じますのは,何を実施すればよいのか,日本版アーツカウンシルという名前のもとに何を,何のために,どのように実施すればいいのかについては随分苦労したのも実感でございます。試行錯誤の部分もあったわけでございます。もちろん,その理由というのは初めての新しい取組であるというのが大きな要因であったわけですが,それと同時にこれのもとになりました第3次基本方針,一つ前の基本方針の記述が必ずしも明確ではなかったことも一つの要因だったのではないかと思っております。
 そういう意味で,本日これから我々第3次答申をどのように読み解いて,何をやってきたのかもお話をさせていただきたいと思います。もちろんそれだけではないのですが,その前置きの部分がかなりございます。多分先生方,多くの方にとっては何をしゃべっているのだと思われると思いますし,御存じの方にとっては何を今更と多分おっしゃるであろうかと思います。今回試行的な取組から本格導入というように階段を一つ上がるわけですので,この際私どもとしてもきちんと総括をしてレポートバックをさせていただきたいと,こういう趣旨でお聞きいただきたいと思います。
 それからもう一つ,冒頭申し上げさせていただきたいのは,現在までの試行的な取組でございます。私としては大変円滑に進んできているのではないかと思っております。その原因でございますが,あえて二つ申し上げさせていただきます。1点目はPD・PO,この皆様方が献身的に取り組んでくれたことが一つ,それからもう一つは基金の運営委員会,この運営委員会の先生方が御理解いただいて御協力いただいたと,この二つが大きな要素であったのではないかと思っております。すなわち,それぞれの立場でこの試行的な取組が我が国の助成制度上,新たな取組であり,大きな変革であることを十分に理解をし,御尽力いただいた,御協力いただいた。それによりまして,今まで円滑に進んできたのではないかと思っております。
 それでは,このレジュメに戻らせていただきたいと思います。レジュメの1ページ,1でございます。独立行政法人日本芸術文化振興会,芸文振,あるいは振興会と略称いたしますけれども,その概要と書いております。これは何を言いたいかといいますと,私ども振興会がどういう組織なのかを改めて御理解いただきたいということでございます。レジュメにも書いてありますし,このスライドは資料としてもお配りをしております。
 私どもは,もともとは国立劇場として設立されました法人でございます。昭和41年,特殊法人国立劇場として設立されまして,当時は国立劇場は一つ,半蔵門といいますか,三宅坂といいますか,最高裁の隣といいますか,お堀端の国立劇場,1法人1劇場という形で開設いたしました。その後国立劇場の数も増えたわけでございますが,業務として大きな変革がありましたのが平成元年と平成2年の法改正,これによりまして業務が追加されました。すなわち,国立劇場というのは日本の伝統的な芸能,それの保存と振興を図るものでございます。(改行しないで続ける。)
 新たに付加されました業務といたしまして,まず平成元年には現代舞台芸術に関する業務も担当することになりました。ちなみに,その拠点施設になりますのが,初台にあります新国立劇場でございます。それから,続きまして平成2年に更に法律の改正がされまして,このときに芸術文化活動に対する助成業務が追加されました。
 そして,その財源というと失礼になるかもしれませんが芸術文化振興基金というものが設置されました。これは官民の共同の基金ですが,その運用益をもって助成をするという基金が設置されました。このときに至りまして,さすがにもう国立劇場という名称ではいられなくなりましたので,日本芸術文化振興会,英文名称といたしましては,Japan Arts Councilという名称に変わりました。これが私どもの経緯でございます。
 それから,続きまして,今回のアーツカウンシルにかかわるものは,平成2年に追加されましたこの助成業務です。それでは,助成業務についてどのような形で法律に規定されているのかと,これはスライドが見づらいと思いますので,お手元の資料を見ていただいた方がよろしいかと思います。これも先生方御案内のとおり,私どもは独立行政法人ですので,独立行政法人通則法という法律とそれぞれの独法ごとに定められた個別法によりまして,何をやるのかということが決まっております。
 そこで助成業務にかかわる規定でございますが,振興会の目的第3条,それから,業務の範囲第14条,こういうところを見ていただきますと,例えば第3条でいえば一番冒頭の部分に書いてあります。「独立行政法人日本芸術文化振興会は,芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動その他の文化の振興又は普及を図るための活動に対する援助を行い……,」とこの部分を目的として書かれております。それから,14条の業務規定におきましては,この1号という規定が当時追加されまして,柱書きだけ読んでみますと,「次に掲げる活動に対し資金の支給その他必要な援助を行うこと」と,こういう規定が平成2年に入りまして,それ以来この条文に基づきまして,業務を進めてきたことになります。
 続きまして,それではこの助成業務を実施するに際してどのようなスキームで実施してきたのかということでございます。芸術文化振興基金運営委員会という委員会を設置いたしまして業務を進めてきました。これはどういう組織かといいますと,理事長の諮問機関でございます。どのような団体に助成をするのか,幾ら助成をするのか,そういった事柄につきましては,この運営委員会の議決をもって行うと,このような意味で私ども芸文振の理事長の諮問機関を設置いたしまして業務を進めてきました。
 それから,事務的には基金部という組織を設置しまして,三つの課を置きました。PD,POそれから分析研究員等は今回新たに設置したものでございますが,基金部という組織を平成2年から置いて事務を担当してきました。
 それから,続きましてレジュメの(4)で助成の種類を書かせていただいております。資料2-1-1の一番下の部分です。これは何を言いたいかというと,私どもが今取り扱っておりますお金が2種類あるということです。助成の種類としては,芸術文化振興基金による助成,それからもう一つが文化芸術振興費補助金による助成と二つあります。芸術文化振興基金による助成が平成2年以来行ってきている助成,平成26年度の助成額でいうと11億円ぐらいのものです。それからもう一つ,文化芸術振興費補助金による助成,これは平成21年から私どもが担当しているのですが,もともとは文化庁の補助金でございます。文化庁が直接自ら執行されていたものです。それを平成21年度から私どもがお預かりをいたしまして,私どもがお配りをすると。これが平成26年度の額でいえば大体35億円あります。
 この文化芸術振興費補助金による助成にも変遷があります。現在はトップレベルの舞台芸術創造事業と映画創造活動支援事業の二つの事業が私どもに託されておりまして,この日本版アーツカウンシルの試行的な取組は,このトップレベルの舞台芸術創造事業,これがベースになっているものでございます。何で殊更こういうことを申し上げるかというと,日本版アーツカウンシルのベースになっておりますのが,文化庁から頂いている補助金をもとにしてやっているものであることを申し上げたいわけでございます。
 そこで,レジュメの裏の2ページに行っていただきたいと思います。日本版アーツカウンシルの概要と書いてありますが,それでは日本版アーツカウンシルというのはどういうものなのだろうかです。その(1)に書きましたのは,第3次基本方針にどう書かれていたのかということです。これにつきましては,この資料2-1-2にお配りしておりますし今スクリーンに表示もしております。23年2月の閣議決定,第3次基本方針ではこのような書かれ方をしていました。箱書きの中を見ていただきますと,「文化芸術への支援策をより有効に機能させるため,独立行政法人日本芸術文化振興会における専門家による審査,事後評価,調査研究等の機能を大幅に強化し,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みを導入する」云々と。それから,その上の文章を見ていただきますと,真ん中より少し下でございます。「文化芸術活動への支援に係る計画,実行,検証,改善(PDCA)サイクルを確立することによって国としての支援策を有効に機能させる」と,このような記述がなされておりました。
 それで,レジュメに戻っていただきますと,(1)の①,②,③とブレイクダウンして書かせていただきました。日本版アーツカウンシルの目的としては,一つは文化芸術への支援策をより有効に機能させると,それからもう一つ,文化芸術への支援に係る計画,実行,検証,改善サイクルを確立すると,この2番目のものが目的なのかどうかは議論があるかと思いますが,大目的に対する小目的と考えればこれも目的なのだろうと。その方法でございますが,振興会における専門家による審査,事後評価,調査研究等の機能を大幅に強化します。そして,実施機関は私ども振興会となっております。
 続きまして,その下の(2),振興会の取組でございます。それでは,この事業を託された私ども振興会としては何をやってきたのかです。そこに同様に①,②,③と書いております。一つは振興会において,更に検討会を設けて検討をいたしました。平成22年12月から平成23年の6月までですが,文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査検討会を設置いたしました。9人の委員の方に御参加いただきまして,従来の助成にどのような問題があったのか,あるいはそれに対してどのようにすればいいのかを御検討いただきました。
 それから,続きまして②,プログラム・ディレクター(PD),それからプログラム・オフィサー(PO)の配置でございます。これにつきましては,4分野につきましてプログラム・ディレクターそれぞれ一人,それからプログラム・オフィサー4分野合計で16人設置をいたしました。4分野といいますのは,トップレベルの舞台芸術創造事業に連動しておりまして,音楽,舞踊,演劇,それから伝統芸能・大衆芸能とこの四つの分野のことでございます。そして,この国から頂いているお金,トップレベルの舞台芸術創造活動を中心といたしまして,助成事業に実施に係るPDCAサイクルの確立を目指す取組をしてきました。そして,今までのこの事業の財源は文化庁からの補助金で対応してきました。
 それから,では何をやったのかという具体の取組でございます。審査基準をあらかじめ公表する審査基準の事前公表,あるいは公演調査を充実させる,それから事後評価を新たに実施する,団体との意見交換を密にするとこういった取組を行ってきました。このあたりのどのような問題点を認識して,どうして③のような活動をしたのかということにつきましては,資料2-3,A3横長のものでございます。この資料2-3に記載してございますので,これを御参照していただきたいと思います。
 続きまして,私どものレジュメの3ページ目を御覧いただきたいと思います。第3次基本方針に関する論点と書かせていただいております。冒頭申し上げましたように,この第3次基本方針をどのように解釈すればいいのかにつきましては,私どもなりに苦労しましたが,そのポイントを申し上げさせていただきたいと思います。
 まず,実施機関でございますが,実施機関につきましては私ども日本芸術文化振興会と明示されております。何が言いたいかというと,この独法である振興会が実施機関と特定された時点で,ある意味いろいろな条件がここで決まってきたことを申し上げたいわけでございます。そこに三つ書いておりますが,一つ目が独立行政法人の基本的性格との関係です。独立行政法人はあくまでも,国が決める政策,施策の実施機関でございます。そういうことを申し上げたいわけです。それから,二つ目は個別法との関係,先ほど私どもの法律の条文を御覧いただきましたが,私どもの実施できる業務の範囲は法律によって決まっており,この個別法に書かれております第14条,これが業務の規定でございますが,この範囲で実施をするということになります。それからもう一つ,③は既存の事業実施スキームとの関係ですが,先ほど運営委員会というのがあると申し上げました。この運営委員会はもともと基金のお金を分配するための組織であったのですが,これは基金運営委員会とありますように,本来は基金による助成をするための組織でありますが,国から頂いている補助金につきましても,この基金運営委員会を通して助成をしております。その意味で,この既存の事業実施スキーム,すなわち運営委員会に諮問してその答申を得てやるというスキームが,当然このアーツカウンシルの試行的な取組についてもかぶってきます。
 それから,次に(2)これがPDCAサイクルの話でございます。答申では文化芸術活動への支援に係るPDCAサイクル,ある場所においては,文化芸術活動のPDCAサイクルとお書きになっているところがあるのですが,私どもの考えました次の問題は,では,このPDCAサイクルはどのレベルの,何についてのPDCAサイクルなのだろうかということでございます。このレジュメに三つの事柄を書かせていただきました。考えようによっては三つのものがあり得るのだろうということです。助成事業の制度自身のPDCA,それから二つ目が助成事業そのものの実施・運用上のPDCAとこれが二つ目,それから三つ目,助成を受ける団体側のPDCAと,PDCAといった場合にはこの三つが考えられるのだろうと思っております。私どもが取り組んできましたのはこの2番目,すなわち既存の助成事業を前提として,その実施・運用上のPDCAをきちんと回すと。助成事業は基本的に年度単位でございますので,年度ごとのPDCAをきちんと回すという取組をしてきました。
 それから,その下(3),「専門家」とは誰かと書かせていただきました。これは先ほど御覧いただきました括弧の中ですが,「専門家による審査,事後評価,調査研究等の機能を大幅に強化する」と,ではこの専門家というのは一体誰のことをいうのだろうかということです。これにつきましても,今の繰り返しになりますが,私どもの実施スキームとしては運営委員会がございまして,この運営委員会については正委員,運営委員本体の委員の方が15名,それから専門委員の方が百十数名いらっしゃいます。既にこういう専門家の方々のノウハウを結集して助成をしていると現状があります。
 であれば,それに加えての専門家というのはどういった者が必要なのであろうかと考えますと,運営委員会というのはあくまでも外部の有識者でございます。私どもが考えましたのは,外部の有識者としての専門家ではなくて,私ども振興会の内部に専門家を置いて外部の専門家と内部の専門家と両方の力を結集してこの機能の充実を図っていこうと考えました。私ども日本芸術文化振興会の中に,理事長がおりまして,担当理事の私がおりまして,基金部長,私の右隣の大和がおりまして,その下にPD・POを配置いたしました。
 このPD・POが何を担当するかと申しますと,基金の運営委員会,これも3段階の親,子,孫の組織ですが,その基金の運営委員会に対して助言をするという機能,それからもう一つ大きな機能としては,関係団体との窓口になることでして,そういった機能をPD・POが果たしております。基金部の中に置かれる専門家でございます。ちなみに,現時点までは非常勤という形で運用をしてきました。
 レジュメで,その下に参考として書かせていただいております。これは私の私見と思っていただいて結構です。PD・POというのは何に例えるのかと考えますと,文化庁で言えば文化財調査官という方々が分野ごとにいらっしゃいます。この文化財調査官に相当する役回りだろうと,このように考えております。これは私が御紹介するのは変な話なのですが,文化庁には文化財調査官という方がいて,例えば重要文化財の国宝の指定をするという調査や一旦指定したものをどのように活用するのかと,あるいはそれに際して所有者や都道府県等々とどのように打合せをしていくのかといったことを担っていらっしゃいます。あえて言えばこういったものに相当する,つまり内部に置く専門家なのであろうと考えております。
 それから,私のレジュメの3ページの一番下に戻っていただきます。それでは,強化すべき機能は何なのかということです。これも先ほどの第3次基本方針では,「審査,事後評価,調査研究等の機能を大幅に強化」すると書かれておりました。私どもからすれば,審査,事後評価と調査研究というのでは,意味合いが違うと思っております。何を言いたいかといいますと,審査や事後評価は助成業務を行う上では当然含まれてくるもの,今までやってきたかどうかは別問題といたしまして,PDCAサイクルをきちんと回すという意味では審査や事後評価は当然にやらなければいけないものであろうと思っております。
 それに対して調査研究は実はそうではないわけです。私どもの所掌事務では,先ほど振興会法を見ていただきましたけれども,振興会法の14条の中には,調査研究という文字はないわけです。ただ,だからといって,調査研究が一切できないかといえばそのようなことはないわけです。この1号業務,あるいは6号業務に付随する範囲でやるということは当然できるわけでして,それはそこに書きましたように助成業務を効果的,効率的に運営するために必要な調査研究,実はこれは文化庁がおつくりになったフレーズを使っているのですが,助成事業の効果的,効率的運営に資するための調査研究,この程度のものはできるでしょうとこういうことを言いたいわけです。
 それでは,以下は少し簡潔にやらせていただきます。続きまして,4ページを御覧いただきたいと思います。4ページは第4次基本方針に関する論点ということで,第4次基本方針をどのように読めばいいのでしょうかということでございます。まず(1)本格導入とは何かということでして,試行的な取組と何が違うのかです。時間がないので,私どもの考えていることを言えば,少なくとも今までのところ,文化庁から想定していたこととは違うというようなことは何もお聞きしていないので,試行的な取組をそのまま続けるということだろうと理解をしております。
 それから,続きまして(2),第4次基本方針の中では必要な措置を講ずると書いてあります。そこで,では必要な措置によりまして何をお願いしたいのかが,この(2)です。そこで第3次から第4次の変化として,やることは変わらないとしても何が変わるのかということですが,少なくともフェーズ,段階としては試行的な取組が本格導入になると1段階段を上がるということです。それから,その財源措置,先ほど概算要求の中で御説明がありましたけれども,今までは補助金でやっていたものがこれからは運営費交付金の中に組み込まれます。あえて言えば,今までは補助金という外部の資金によりまして,外付けで行っていた事業,それが運営費交付金になるということですので,運営費交付金のテクニックはあるわけですが,これからはそういった外付けの業務という位置付けではなくなってくるのではないかと思っております。
 その上で,必要な措置として何をやっていただきたいのかになります。そこに書きましたように,権限,カネ,ヒトとあえてどぎつく書いております。一つ目は個別法の改正をしていただきたいと。ちなみにこれも誤解のないように申し上げますと,本格導入するためにこの個別法の改正をやってほしいということではございません。平成21年度にとるべきであった措置を今回とってほしいという意味でございます。これもなかなかお分かりにならないと思いますが,平成21年に国の補助金が私どもに移管されてきました。それ以前からも国の補助金をお預かりすることはやっていましたが,21年にお預かりした額はそれ以前のものに比べて格段に大きい額でございます。私どもが本来業務として実施してきた基金の業務の数倍,26年度の額でいえば11億円と34億円ぐらいですので,基金のお金よりもはるかに大きいお金をお預かりすることになったと,それが今後も続くと思われます。そうであれば,私どもが2種類のお金を預かっていることを法律上明記していただきたい,こういうことでございます。
 それから,カネとヒト,カネというのは予算措置でして,これはきちんと措置していただきたいということです。それからもう一つここに書きましたのは,これは今まで頂いていた補助金と新たに頂く運営費交付金の額が仮に同じだとしてという図で書いているのですが,見ていただくと分かりますように運営費交付金の額がその分増えるわけです。何でこのようなことを言うかといいますと,運営費交付金というのは常に減らさなければならないというルールのもとに運用されているものでございます。運営費交付金が増えるということにつきましては,非常にある意味厳しくチェックされるわけでございます。
 そこで何が言いたいかというと,運営費交付金が増えるのは当たり前であると,当然の結果として増えている,何も悪いことはしているのではないことをきちんと担保していただきたいということです。これにつきましては,中期目標,中期計画をきちんと直していただきたいと思います。
 最後,レジュメの5ページでございます。その他の論点,これはもう駆け足で言わせていただきます。(1)助成事業の制度設計というのは,今までPDCAサイクルを確立するために取り組んできました。それで感じますのは,助成制度,助成事業の制度設計そのものがしっかりしていないと,どうしようもない。助成事業の趣旨や目的等そういった制度設計がきちんとしていないと,いかにPDCAサイクルをきちんとやれと言われてもできるものには限度があります。(1)で言いたいのはそのようなことです。それから,(2)は先ほど申し上げた三つのPDCAの中の残りの1個でございます。団体側でもきちんと意識改革をしてもらわないといけない。これは私どもとしても引き続き取り組んでまいりたいと思っております。それから(3),日本版アーツカウンシルでどういったものを取り扱うのかということです。これは現状の表なのですが,今までこの一番上ですね,補助金の中のトップレベル,ここを中心として日本版アーツカウンシルの取組をしてきました。それ以外の部分は,それ以外に私どもが取り扱っているお金でございまして,文化庁から頂いている補助金にはほかに映画製作の部分もございます。それから基金につきましては,そこに書いてあるような,これは五つの分野にまとめておりますが,そういうお金を基金から配っています。そこに対して,例えば左から二つ目,審査基準の事前公表,こういった取組につきましては,全分野にこれを広げてやっております。しかしながら,それ以外の部分については,同じような取組はできていないと,これが現状でございます。
 その上で今後どうするのかということでございます。文化庁の補助金を更に私どもがお預かりして,このアーツカウンシルの中でやっていくのかどうかという問題があるわけです。この問題については,是非慎重に文化庁で御検討いただきたいと思っております。文化庁と振興会との役割分担の話もございますし,振興会で執行すべきというものが直ちに日本版アーツカウンシルの傘のもとに入るわけではないということも今御覧いただいたとおりでございます。この辺の議論はきちんとしていただきたいということです。
 それから,(4)PD・POの体制の強化,先ほどの予算でも一部常勤化するということが出ていました。配置すべき分野,4分野以外にあるのかと,それから常勤にすることをどう考えるのかということでございます。常勤につきましても,是非そこはいろいろな要素を検討していただきたいと思っております。例えば,常勤にした場合にその人は終身雇用でいくのか,任期付きでいくのかといったような問題もすぐに出てきます。例えば基金の運営委員会の委員,これは3年,1期1年なのですが,3期を限度とすると,もちろんまた戻ってきてお願いする人もいるわけですが,余り一人の方が長期間関与されるのはいかがなものかということをしておりますので,そういったこととの関係でもここは慎重に御検討いただきたい。
 それから,最後の(5)の費用と書きましたのは,この日本版アーツカウンシルの取組に幾らお金をかけるのだろうかと,もちろんそれは多ければ多いほどいろいろな取組ができるわけですが,それをどこまで文化庁としてお考えであろうかと,こういったことをあえて書かせていただきました。
 大変長くなりまして恐縮ですが,私どもとしてくどいのですが,別にこれを否定的に考えているわけではなくて,文化庁と一体になりまして,より良いものにしていきたいと思っております。ただ,その際是非お願いしたい点が二つございます。一つは条件整備,先ほど必要な措置で申し上げましたが,条件整備をきちんとしていただきたいことが一つでございます。
 それから,もう一つのお願いは今も述べましたが,こういった私どもが今まで取り組んできた事柄,これについては少なくても事実関係としてきちんと御理解いただきたいということです。これはひっくり返して言いますと,私どもの今までの取組を無視してアーツカウンシルというのはこうあるべきだということを言われても,少なくとも私どもの立場ではどうしようもないということがあります。それから,もう一つ私どもとしてつらいのは,アーツカウンシルにやらせれば何でもよくなりますといったようなことを言われるとこれも困るわけでございます。アーツカウンシルというのは,打ち出の小づちではないことをあえて申し上げさせていただきたいと思います。
 大変長時間ありがとうございました。

【熊倉部会長】ありがとうございました。ルール,沿革の部分から制度的なひずみがどこにあるのかということも何となくかいま見えるような気がしましたが,残念ながらこれで本来だったら予定の時間で,またこれはやらなければいけないと思います。今日はぎりぎりまでと思いますので,今のお話を聞いてせっかく今日いらしていただいているので,御質問,御意見など幾つかだけでもと思います。いかがでしょうか。
 加藤委員。

【加藤委員】現場の御苦労というか,制度上どうあるべきかについて今日御報告を頂いて,これはないよりあった方が良かったと思いますが,ディテールの部分はもう少し文化庁と事前に御相談された方がよかったと,それが一つ。それから,もう一つ今日聞きたいのは,冒頭で関理事がおっしゃった,やって良かったと思うその中身の部分が一体どこがやってよくて,まだ制度上のいろいろ課題があるのは今分かりましたが,具体的にこういう成果が上がって,でもこれがとても我々にはできません,あるいはやるためには相当バックアップしてもらわなくては困りますというところを,その具体的な御報告が今日は伺えると思って期待して来たのが期待はずれだった。そのあたりで手短で結構ですから,何かあれば教えていただければと思います。

【日本芸術文化振興会関理事】すいません。大変失礼をいたしました。それでは,今加藤先生から御指摘のありました点について,基金部長の大和より簡単に説明させていただきます。

【日本芸術文化振興会大和基金部長】基金部長の大和でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 具体的にやってよかった中身といいますのは,従来の私どもの助成制度ですと,基金の職員内部に専門家がいない体制では,どうしても助成をしてお金を配って終わりということでありました。このたびこういう試行的な取組をさせていただいたおかげで,実際助成を受けた団体がどのような活動をしているか,それから団体自身がどのように自己検証,自己点検をしているかをPD・POを通じて把握することができました。これによりまして,私どもの助成制度の在り方もブラッシュアップができますし,アドバイスを受ける団体自身も自分たちがどのような視点を持って次の企画を立てていいのかが分かるようになってきたという話が聞かれるようになりました。

 そういった意味で,私どもの事業のPDCAサイクルを,まだ確立しているとは言いませんけれども,始めたことによって,団体にも,それから私ども職員にもそういう意識改革が始まった,助成という政策を有効に回すための意識改革が始まってきているという印象を持っております。

【熊倉部会長】また一歩ポジティブに踏み出せたということで。
 三好委員,お願いいたします。

【三好委員】ありがとうございます。質問というよりは希望なのですが,せっかく本格実施というからには,システムとして今までとは違うことをはっきりさせた方が良いと思います。従来一番気になっているのは,今の基金部長さんのお話にもあったように,専門家がせっかく内部にいらっしゃるわけですから,その専門家がどのような活動をするのかを,システムとしてもう少し強化していく必要がある。
 具体的に言うと,振興会と運営委員会の関係の図があります。一番上は理事長から運営委員会に諮問,答申という形になっています。下の方に見ていくと,これは実態を多分反映しているのだと思いますが,PDPOは専門委員に対する助言という形になっているのですね。そうすると,どちらが専門性が強いのかという疑問が出てきてしまうので,振興会としてアーツカウンシルという専門家をきちんと活用する,それによって運営委員会に諮問,答申するという,そこの違いをもう少し明確にされた方が本格的という意味がはっきりするのではないかと思います。
 同じことは資料1に戻って恐縮ですが,地方で今度いろいろ文化力プロジェクトでアソシエイツやいろいろあります。あれも単にラベルを貼るというのではなく,そこはシステム化するための工夫をやっていくべきだろうと思っています。振興会の場合は法律で規定されているので,文化庁が法律でやるなり,振興会が定款なり,業務方法書でやるという方法もあるし,地方の場合には法律というわけにはなかなかいかないので,何かそういう仕組みをきちんと提案するということが必要かと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 紺野委員どうぞ。

【紺野委員】文化プログラムを振興,普及させていくためにどのような具体的な方法が必要かということです。実演家の立場として,助成を頂きますととてもうれしくて,どうしても規模の大きいものを,そして内容も濃く時間も目一杯,とにかく全てを見ていただこうと,上演時間も2時間,3時間,4時間と長いものになって価格帯も高くなりがちのものが多いように思います。だけれども,今はオリンピックに向けて海外からの方も,それから国内の地方からのお客様も幅広く日本の文化芸術に触れていただく立場から考えると,より時間が短く価格帯もある程度抑えて,良いものを敷居を低くして見せていただくという工夫がとても大切だと思います。
 ですから,今はみな忙しくて観光もしたいし,文化も見たい,グルメも買い物もとそういった中で,文化芸術,日本の特に古典芸能,音楽などそういったものを選んでいただくためには,例えば60分で本物を余り拘束されずに見ていただけるプログラムなど見せ方の具体的な工夫をするというのがとても大切だと思います。
 例えば,ミシュランに三ツ星というのがあります。日本の文化芸術も桜の花びら一つだとこれは入門で誰でも分かりやすいものですと価格帯も押さえていますなど,フルコースでトップレベルのものが見たい,時間もたっぷりあるという方のためには花びら三つなど,そのように外国人の方やなかなか日本の国内の方でも芸術文化に触れる機会の少ない方が分かりやすい提示をして,とにかく幅広く見ていただくという方法を考えていただけたらと思います。

【熊倉部会長】ありがとうございます。ちょっと待ってくださいね。せっかく今日いらっしゃったのに一言も発していらっしゃらない湯浅委員と宮田委員も是非一言,その後吉本委員にも一言いただいて,最後に片山部会長代理もまとめてくださるということなのでいかがでしょうか。
 では,湯浅委員,お願いします。

【湯浅委員】今ずっと御説明いただいて,第3次に書かれているものを読み解きながらという言葉があったのですが,それがまた特に例えばPDCAとは何なのかなど,基本的なところを読み解きながら試行錯誤されていたのだということがお話で分かりました。
 これから本格導入するに当たって,先ほどスライドで試行から本格導入には矢印があるだけでしたが,一番大事なそこがどういうことなのかということを恐らく更に皆様,先生方とお話をしていくと思います。この試行的取組に関する報告という長い書類を拝見させていただいているのですが,個人的にPDCAを導入することをすごく大事にされて,毎年いろいろ試行錯誤されていたと思います。
 特に,Cのところですね,事後評価という言葉がここに使われていますけれども,これを拝見すると毎年改善をしているのは分かります。果たして今,PDCAとここで言われているもの,その3次で思ったもので,ここから先2021に向けてこの仕組みで良いのかどうかというところから考えていくといいのではないかと思います。今の問題で事後評価に関する評価指標が定型化されていないのは非常に大きな問題だと思いますし,評価について一体誰のために,何のためにやるのかがここの中で合意されているのかが少し疑問に思います。
 今とても時間をかけてPDPOの方がされているのは,助成した団体に対する幾つかの指標,社会性などありましたが,その個別の団体の評価をその後その団体にもフィードバックして,次の制度にも枠組みにも反映しているとここに書いてあります。
 恐らくもう一つ,今されているのかもしれないですし,もしかしたら調査研究の方でカバーされているのかもしれないのですが,そのそれぞれのトップレベルだったり,芸術活動の事業に対する評価,そのインパクトメジャメントというものは,今されているのかどうか。特にそこにおいては,このPDCAというサイクルの中ではもしかしたらカバーしきれない仕組みの問題があるかもしれないと思います。
 あわせて,文化庁さんとの役割分担のところで,そもそもこの二つの事業として試験導入した場合に,何をどのような効果を目指しているのか,合意されているのか,それに対してどういう検証を毎年しているのかということで,この試験導入の中でこの公的資金を文化団体に投入した結果何が起きたのかというようなことが見えてくると,非常にこの先の改善,本格試行にも役に立つと思いました。

【熊倉部会長】残念ながら,今日はその辺の質疑応答を行っている時間はもうありませんが,インパクト評価をしていないから第4次基本方針からPDCAという言葉を取り政策評価をすべきと,確か去年の議論で表記を変えたと思います。PDCAそのものが目的化してはいけないということは非常に重要な御指摘だと思います。
 宮田委員,いかがでしょうか。

【宮田委員】ありがとうございます。全体をお聞きして抜けていると感じがしたのは,皆さんは柱は立てているのですが,根っこはどこにあるのか探すのですがありません。やはり大きな柱を立てるには,根っこがきちんとできていなければ立ち上がらないことがあります。その議論をもう少ししたいと思います。
 同時に,例えば今エンブレムのことでこれから動いていくわけですが,そのための踏まえるべきことは何か,論点がはっきりしていなければ動けません。反省点も当然であると同時に問題点もそうです。この会議そのものも実は全く同じことをしているという感じがずっと先ほどから聞いていて感じました。
 ですから,そのあたりのところの論点をきちんと踏まえてその上で何をすべきか,20万件が何とか,旗印が何とか,いろいろあると思います。その先ほどのお話の桜の花1個など,とてもすばらしい話ですが,何のためにこうするのか,そのあたりの論点をもう一つしっかりと事務局の方,三木さんからも含めて今日はこれでいきますという部分も少しやりませんと総花的になってしまう。そこをひとつよろしくお願いします。
 それをやらない限り,短期間でこれはやらないともう時間がありません。エンブレムも相当短期間でこれは進めていくつもりでございますので,是非すばらしい文化プログラムの何のためにというところから改めてスタートさせていっていただけたら,幸いかと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】吉本委員,すいません,手短にお願いします。

【吉本委員】では,短く。関理事,詳しい御報告どうもありがとうございました。それで,お示しいただいたレジュメの4ページ,5ページに論点がありまして,本格導入に向けてということですが,このことについて詳しく議論しなければいけないと思います。恐らく,この政策部会でこれを議論するだけの時間や回数はないと思います。文化庁と振興会でこのことについては詰められると思うのですが,場合によっては少人数のワーキング会議やそういったものをつくった方がいいと思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】では,片山部会長代理,お願いします。

【片山部会長代理】本当は,今日はもう少し時間を十分とって議論したかったのですが時間切れですので,今後文化政策部会としてどう取り組んでいったらいいのかということを含めて,少し私見を述べさせていただきたいと思います。
 これまで試行として取り組んできたことの成果については,また改めて情報共有できる場を是非作っていきたいと思います。その上で,今後どういう検討をしていくかということです。今日関理事がおっしゃられましたとおり,これまでの試行というのは,助成事業の実施,運用上のPDCAのところだけをやっていて制度自体のPDCAのところは取り組んでいないということです。つまり振興会はあくまでも政策の執行機関として位置付けにあったということです。
 ただ,諸外国のアーツカウンシルの議論などを踏まえてアーツカウンシルの在り方を議論することになると,アーツカウンシルは行政側が決めたことを単純に執行するだけの機関でいいのか。プログラムを立案し,それを直していくという政策立案の機関としての位置付けもあるのではないかということになります。つまり,文化庁と振興会の関係をどうするかについて最初に議論しないと,法律や中期目標,中期計画についても定まらないだろうと思います。振興会の中だけで議論することも不可能だと思います。
 現在は,補助事業の制度設計は文化庁芸術文化課でやって,その執行を振興会でやっているのですが,専門家が振興会の中に十分に配置されれば,補助金のプログラムの設計自体も振興会の仕事とする可能性も出てきます。つまり,もう少し高次のレベルのミッションを振興会に与えてそれが果たされたかどうかを文化庁がチェックするというやり方です。
 今国立大学法人の在り方がかなり議論になっています。国立大学法人所管省庁から交付金を受けて運営してますが,独立性を持つべきだと位置付けられている機関です。日本芸術文化振興会,あるいは日本版アーツカウンシルが,政府本体とどういう距離感を持つのかについては,文化庁さんも当事者ですし,振興会さんも当事者ですので,当事者間での仕事の押し付け,あるいは縄張り争いになると議論がニュートラルにできません。したがって,これについては中立的な立場で議論ができるこの政策部会でやっていく必要があると思います。
 ただ,全員で議論するのは難しいので,吉本委員がおっしゃられましたとおり,これに関してワーキングなどを立ち上げて,まずは大枠のところで文化庁本体と振興会がどういう役割分担をするのかを,きちんと議論していくことを今年度にやるべきだろうと思います。
 それから,もう一つ重要な点として,関理事も御指摘されましたが,助成を受けるがわの問題があります。昨今も補助金をめぐっていろいろなスキャンダルなども出てきております。民間非営利セクターを充実させることが必要だと思います。芸術文化も分野ごとの業界団体はありますが,民間非営利セクター全体として,共益ではなくて公益の担い手として,どういう健全な発展をしていくか,そこをやっていく部分というのは第4次の基本方針全体の目指すべき「文化芸術立国」の目標の4のところや1のところにも絡んで重要だと思います。これは政策部会としてきちんとやっていく必要があると思います。
 アートNPOについてはアートNPOリンクのような機関がありますけれども,そこには従来の財団法人や社団法人などは入っていませんので,文化や芸術にかかわる民間非営利セクター全体をレベルアップして結集していく,自分たちの利益誘導ではなくて公益のためにそういった団体がきちんとした経済主体としてやっていけるような基盤づくりとしての,サポート,ネットワークづくりのようなことに取り組む必要があると思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】今おっしゃられたとおりだと思います。第3次基本方針からもう足掛け5年以上になりますか,恐らく文化庁の中でアーツカウンシルと言ってきた責任が文化政策部会にはあるでしょうと何となくおっしゃられたような気もします。どのようにその責任を果たしていけるのか,また何でもアーツカウンシルにさせればバラ色なわけではないし,そもそももろもろゆがみやひずみの部分をどうするのかということも併せて提言を行っていただかないと動けませんよというお話だったと思います。
 というわけで,今日はたくさん宿題を頂いた日だったと思います。この国の直営の芸文振のアーツカウンシルについて,次はどういうミッションを掲げていくべきなのか。そして,それがどのような制度設計が必要なのか,細かい法的な議論なども含めての話合いになると思いますので,ワーキングの御提案も頂きました。また,同様に文化プログラムもそのレガシーに向けてのロードマップといいますか,何をどうすればそのレガシーにつながっていきそうなのかということの制度設計も急がれます。こちらの方に関しても,引き続き考えていかなければいけないと思います。
 すいません。今日は盛りだくさんで10分以上時間が押してしまいました。では,最後に事務局からお願いいたします。

【三木企画調整官】委員の先生方,ありがとうございました。今後の予定は,また議題等は部会長と相談しまして,日程等もまた調整させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

── 了 ──

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