文化審議会第13期文化政策部会(第4回)議事録

平成28年2月15日

【三木企画調整官】開会に先立ちまして,資料の確認をさせていただきたいと思います。
 まず,配布資料として,委員の先生方から頂いているものを机上に置かせていただいております。1つは,仲道委員から頂いております,「音楽がヒラク未来」というパンフレット,それから,熊倉部会長からお預かりしております,「音まち千住の縁」というものと,その中に2つ,「熱タイ音楽隊の一週間」,大巻伸嗣准教授の「くろい家」のパンフレットが入っているものを机上に置かせていただいております。
 それから,会議の資料でございます。議事次第がございまして,配布資料,机上資料と2種類ございます。配布資料は,資料1「平成28年度文化庁予算(案)の概要」,資料2「第4次基本方針の実現に向けた文化政策部会における主要な論点について」,資料3「平成27年度地方の文化芸術政策に係るシンポジウムへの文化政策部会委員の参加について」,資料4「平成27年度文化政策部会 今後の予定」という資料でございます。
 それから,机上資料といたしまして,皆様の机に置かせていただいております。1つは,第4次基本方針の冊子,それから,予算の概要につきまして,本日御説明します資料よりも,もう少し詳しい資料になっているものを1つ置かせていただいております。最後が,前回の資料で,概算要求ベースで書いてあるものを予算案ベースでリバイスしたものでございますけれども,「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の実現に向けた今後の方向性と主な具体的取組というものを机上の資料とさせていただいてございます。
 もう1点,事務局の方から御連絡申し上げます。文化庁は人事異動がございましたので,御紹介させていただきたいと思います。
 1月1日付けで文化庁次長に任命されました,中岡司でございます。

【中岡次長】中岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【三木企画調整官】開会に先立ちまして,事務局からの連絡は以上でございます。
 それでは,熊倉部会長,よろしくお願い申し上げます。

【熊倉部会長】おはようございます。では,ただいまより今期第4回目の文化政策部会を開催いたします。皆様,御多忙のところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 本日は,次第にありますように,年末に閣議決定された文化庁予算の全体について御報告をいただいた後に,第4次基本方針の実現に向けた文化政策部会における主要論点について議論いただくことを予定しております。
 それでは早速ですが,平成28年度文化庁予算(案)について,事務局から報告をお願いいたします。

【吉田会計室長】それでは,文化庁予算(案)について説明させていただきます。私は文化庁政策課の吉田と申します。よろしくお願いいたします。
 資料1を御覧いただきたいと思います。文化庁予算(案)の概要という資料を配布させていただいていると思いますけれども,それに基づいて説明させていただきます。
 まず,一番上にございます箱囲みでございますが,文化庁予算総額としまして1,040億円,対前年度2億円増,率にしまして0.2%増となってございます。
 その内容でございますけれども,中ほどに,「1.豊かな文化芸術の創造と人材育成」とございますが,その中の(1)文化芸術立国実現に向けた文化プログラムの推進ということで,対前年度8億円増の135億円としております。
 まず,マル1でございますけれども,「国が地方自治体,民間とタイアップした取組」とありますが,例えば障害者の芸術活動の支援や離島山村での鑑賞機会の提供など,国が芸術文化振興上推進することが必要な事業を行う「戦略的芸術文化創造推進事業」や地方自治体が企画する事業に対し支援する「文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業」,また,舞台芸術団体が行う事業に対して支援する「舞台芸術創造活動活性化事業」について,少しずつではございますが,増額を図っております。
 特に2つ目でございますが,「文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業」においては,地域において文化芸術制作の企画立案,文化活動への助成等を実施する体制を構築する取組への支援を新たに計上したところであります。
 1ページの一番下でございますが,「舞台芸術創造活動活性化事業」におきましては,芸術団体の集客努力を促して,より多くのすぐれた舞台芸術を提供するために,入場料収入に応じた支援を一部導入したところでございます。
 なお,概算要求時点におきまして,文化庁が行う文化プログラムの経費として要求しておりましたリーディングプロジェクトの推進,13億円につきましては,昨年11月に行政改革推進会議が実施した秋のレビューにおける指摘を踏まえて,28年度には予算を計上しないこととなったところでございますけれども,ただいま説明した事業など,既存の事業の枠組みにおいて必要な施策を行っていきたいと考えております。
 続きまして,2ページ目を御覧ください。真ん中あたりにございます,「文化芸術による「創造力・想像力」豊かな子供の育成」ということで,小・中学校等への実演芸術の巡回公演,芸術家の派遣などによる質の高い文化芸術の鑑賞・体験機会の提供,また,子供たちが親とともに伝統文化・生活文化などを体験できる機会の提供について,前年度と同額の予算を確保したところでございます。
 次に,2ページ目の一番下,文化財関係の予算でございますが,2.かけがえのない文化財の保存,活用,継承として,451億円とございます。
 まず,マル1,日本遺産魅力発信推進事業についてですが,これは各地域に点在する史跡,伝統芸能など,有形・無形の文化財をパッケージ化し,我が国の文化・伝統を語るストーリーとして日本遺産に認定する仕組みを27年度から始めまして,初年度18件を認定しましたが,28年度におきましても同規模程度の新規を認定したいと考えております。なお,日本遺産につきましては,2020年までには100件程度を認定したいと考えております。
 続きまして,3ページ目でございますが,上から3番目にございますマル4,美しい日本探訪のための文化財建造物活用事業でございますが,これは観光資源としての魅力向上を図るため,重要文化財の建物について,構造に影響がない壁や屋根等の外観や公開範囲の仕上げに関わる箇所を健全で美しい状態に回復する事業ということで,新たに2億円を計上したところでございます。
 次に,その下の(2)のマル1に,建造物の保存修理等とありますように,国宝重要文化財建造物の保存修理や,れんが造りや鉄筋コンクリート造りの近代化遺産についての保存修理,伝統的建造物群の保存修理についても増額を図ったところでございます。なお,この建造物の修理につきましては,27年度補正予算においても5億円を計上したところでございます。
 また,3ページ一番下にございます,無形文化財の伝承・公開ということで,伝承者養成事業や民俗文化財等の用具修理等の支援についても,引き続き必要な予算を計上したところでございます。
 最後,4ページ目でございます。3.我が国の文化芸術の発信と国際文化交流の推進についてでございます。
 マル1にありますように,芸術文化の世界への発信と新たな展開ということで,海外フェスティバルへの参加や出展,国内における国際フェスティバルの開催などを引き続き実施していきたいと思います。
 その下,マル2,アーティスト・イン・レジデンス活動を通じた国際文化交流についてですが,これは海外のアーティストが一定期間,日本に滞在して,地域のアーティストや地域住民との交流等のプログラムに支援を行っていますが,28年度におきましては,招請だけではなく,双方向交流が可能なプログラムの支援を新たに実施するとしております。
 その下,4.文化発信を支える基盤の整備・充実ということで,まずは,日本芸術文化振興会運営費交付金に今回,日本版アーツカウンシルの実施経費を計上するとともに,国立文化施設における多言語化,観覧・鑑賞機会の充実を図っていきたいと考えております。
 最後に,4ページ一番下に記載してありますけれども,東日本大震災からの復旧・復興対策ということで,東日本大震災復興特別会計において,被災した国指定文化財等の保存修理や被災した博物館の史料の修理について,引き続き実施していくための経費として11億円を計上したところでございます。
 以上,大変簡単ではございましたが,これで28年度予算の御説明とさせていただきます。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 本日,細かい議題が続きますが,最後に皆さんと総合的にディスカッションする時間も設けておりますが,それぞれの議題の後に,短めですけれども,質疑応答のお時間をとっていこうと思います。
 ただいまの事務局からの予算の説明につきまして,御質問や御意見があられましたらお願いいたします。
 よろしゅうございますか。次へ参りますか。
 それでは続きまして,本日の議題2である,第4次基本方針の実現に向けた文化政策部会における主要な論点について,皆様に御議論をいただこうと思います。
 議論が円滑に進むよう,トピックごとに,まず事務局から説明を聴取し,その後,議論を行いたいと思います。また,この4つの点についてそれぞれ,先ほど申し上げましたように,御議論いただいた後,最後に全体討議として20分程度を予定しております。
 では,文化プログラムの推進について,御説明をよろしくお願いいたします。

【富田文化プログラム推進企画官】文化プログラム推進企画官の富田と申します。
 資料2に基づきまして,文化プログラムの推進について,28年度どのように行っていくかについて御説明をさせていただければと思います。資料2の1枚目と参考1の2枚目を御覧になりながら,お聞きいただければと思います。
 まず,参考1ですけれども,文化プログラムに関しましては,昨年度,閣議決定されました第4次基本方針等を踏まえまして,昨年7月に,文化庁が進める文化プログラムに関する基本構想を発表,取りまとめさせていただいております。その中において,文化庁としては,文化プログラムを「文化力プロジェクト」として推進していくこと,また,数値目標として,20万件のイベントを実施することや,3つの枠組みとして,国が主導するプロジェクト,いわゆるリーディングプロジェクトの推進をやっていくことですとか,国が自治体,民間とタイアップした取組を推進していくこと,また,民間,自治体の幅広い取組について後方的な支援をやっていって,全体として,文化プログラムを通じた文化芸術立国を最終的に目指していこうという方針に基づいて,概算要求をさせていただきました。
 先ほどの御説明のとおり,昨年11月に開催されました行政改革推進会議の下で行いました行政事業レビューの下では,リーディングプロジェクトの推進に関しては,そもそもオリンピックの文化プログラムは組織委員会がやるというような,オリンピック憲章の下に義務付けられているという観点の下では,また,文化庁であれ,東京都であれ,オリパラ推進本部であれ,そういった責任に対して,まずはきちんと明確化してから行うべきだということで,今回,その部分については,残念ながら予算が認められませんでしたけれども,28年度につきましては,ここにありますとおり,先ほどの御説明でもありましたとおり,参考1の真ん中に「28年度予定額」とありますけれども,国が地方自治体,民間とタイアップした取組推進ということで,今までどおり,地方自治体とか芸術団体が取り組む文化芸術活動への文化庁としての支援を充実させていきますとともに,括弧2になりますけれども,文化プログラム推進のための基盤整備として,国立文化施設の環境整備の多言語化対応とか地方の美術館の訪日外国人対応などの支援をしていきたいと考えております。
 また,この機会に,全国的にあらゆる主体の文化芸術活動が盛り上がるよう,先ほど申しましたとおり,オリンピックの文化プログラムにも,より幅広いものを対象とした「文化力プロジェクト(仮称)」ですけれども,これを夏頃までに開始するために,文化庁としてのコンセプトやロゴマークといったものを現在,検討しているところでございます。
 また,「文化力プロジェクト(仮称)」につきましては,全国の文化芸術を活用した取組の情報を一元化した文化情報ポータルサイトを構築いたしまして,大会後の秋頃に立ち上げたいと考えております。
 また,10月にはスポーツ・文化・ワールド・フォーラムを,スポーツだけでなく,文化プログラムのキックオフとして開催いたしまして,オリンピック・パラリンピックのムーブメントの機運醸成を図り,これをきっかけに文化による地方創生,観光振興につなげていきたいと考えております。
 簡単ですが,私の説明は以上です。

【熊倉部会長】ということなんですが,皆様から御質問,御意見を頂きたいと思います。
 宮田委員,お願いします。

【宮田委員】非常に重要な問題だと思っておりますが,今,御説明にもあったように,柱が3本になっているので,この柱をどこかで,3本は立てたままで結構ですけれども,その中で,どれがどの部分で主役になり,どれが脇役としてバックアップできるかというあたりのすみ分けが今後,きちっとできていくと成功するのではないかと思っております。
 ここに簡単に,ロゴマーク,コンセプト等々書いてありますけれども,これ1個でも大変ですよ。それだけでも,ちょっと言っておきます。

【熊倉部会長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 湯浅委員,お願いします。

【湯浅委員】御説明ありがとうございます。2枚目のページのところで,数値目標というふうに,文化力プロジェクトというのを,これからその内容ですとかコンセプトを含めて検討されるということなんですけれども,ここで上げている数値目標というものについてお伺いしたいんです。
 果たして,「20万件のイベント」,「5万人のアーティスト」と書いてあるものが,いわゆる目標として,これでいいのかどうか。文化プログラム全体については,先ほども御説明にあったとおり,どのように日本全体として,組織委員会を含め連携,推進をしていくのか,まだディスカッションがあるんだと思うんですけれども,文化プログラムをこれから4年間やった結果,どういったインパクト,アウトカム,どういったものを残していくのかというのがレガシーだと思うんですけれども,こちらの資料では読み取れないと思います。
 特に,20万件のイベントの根拠というものが何なのかというのが,最近,20万件がいろいろなところに,メディアにも出ているので,大きな目標として掲げられていて,それはインスピレーションとして,大きくやっていくんだということでは非常に大きな効果があると思うんですが,このイベントの数というのは,目指すインパクトを達成するためのアウトプットでしかないと思うんですね。アウトプットの数を目標というのはそぐわないと私は思います。
 そもそもの20万件の根拠というのは,あるところでは,ロンドンの17万件をしのぐというふうに言われていると思うんですけれども,17万件という数字について,ちょっと精査が必要かなと思っています。イギリスが出したレポートをもう一度見直したんですけれども,恐らくその数字の基になっている,発表されたレポートでは,アクティビティーとプロジェクトを明確に分けて書いてあります。17万件の基になっているのはアクティビティーで,これはリサーチャー,エバリュエーターのレポートを基に出しているんですけれども,それを見ますと,この数字の根拠は,648のプロジェクトをリサーチした結果,648のプロジェクトが行ったアクティビティーが17万,数字では11万7,000という数もありますけれども,というふうになっているんですね。
 なので,この20万件,17万件をどう認定したんでしょうかという質問を私もよく頂くんですけれども,17万件の中には,内訳を見ますと,イベントの,1個のプロジェクトの中には100個ぐらいのアクティビティーがあるんですね。それを数えた,出席した数になっていますので,認定自体はもっと少ない,600とかそういった数になっていると思います。
 特に17万件が示しているというのは,英国の文化プログラムが目指したものというのは,多くの参加を増やしていきたい。目的の一つが市民参加,観客拡大というのがあったので,非常に多くの参加の機会を作っていくという目的がありました。そのためにこういった数字を出して,これが達成されたというエビデンスとして,これが出ているということなんですね。
 ただ,先ほどの,細かいんですが,648件については,インスパイアマークは入っていないです。あと,何千件もイベントがあって,オープンウイークエンドも入っていないので,余り数自体は意味がないかなと思います。特に,展覧会のような何日もあるものを1日1日数えているのと,かなり多くのプログラムが,例えばポストショーのパフォーマンスの後のトークだったり,エデュケーションのプログラムやトレーニングといったものは,1個のプログラムが幾つもあります。それも数えてのことなので,実際に17万件を物語るものというのは,もっと中を見ていくと,実はそのうちの53%は,参加型のものやトレーニング,エデュケーションプログラムだったという数字が出ています。
 ということは,ロンドンが目指したのは市民参加であり,キャパシティービルディングやそういったものを目指していたんだということになるので,今,そういったことを踏まえた上での20万件という目標なのかどうか。もしかしたら私たちも,きちんと英国側としてもお伝えができていなかったかもしれないんですが,そこのところを確認したいなと思います。特にロゴマークの認定ということを,20万件をもしロンドンのベースでやるとすると,大変間違ったことになるのではないかなと思いました。

【富田文化プログラム推進企画官】御指摘ありがとうございました。
 もともとの20万件の経緯から申しますと,ロンドンが全国的に幅広い参加を得て,文化プログラムが成功したというお話をお聞きしていたので,それに基づいて,日本はもっと人口も多いですし,全国的な文化の広がりという点ではイギリスにも劣らないということで,数字が先に独り歩きしてしまいましたけれども,できるだけ,いろいろな国民全体が文化プログラムを通して文化に参加していただけるという意味で,その数という形で,20万件という目標を掲げさせていただきました。
 20万件に到達することが目標ではなくて,できるだけの人が参加して,できるだけ全国的にこういった盛り上がり,機運を醸成するという形をもって,20万件ということを掲げさせていただいております。
 湯浅委員がおっしゃるとおり,ロンドンでの数え方というのは,なかなかこちらとしても把握が難しいなと思っていますけれども,日本でやる場合にどういうふうな数え方,分類の仕方は今後,どういう形がいいのかを考えながら,それが将来の情報として残っていくことも考えながら,今後引き続き検討していければと思っております。

【熊倉部会長】長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】湯浅委員に続いて,また数字についての御質問なんですけれども,これはよく書かれるんですが,「5万人のアーティスト」と書いてありますけれども,5万人のアーティストという内容で,その前にあるものを読み砕いていくと,恐らくいろいろな表現者を要請していらっしゃると思うんですが,これはもちろん内外のアーティストを含んでいるんですが,5万人というのはどういう意味で数字を上げていらっしゃるのか。つまりは,20万件のイベントに関わるアーティストの数として,プロキシミティでお出しになっていらっしゃるのか。このアーティストの中には,文化力という場合に,単に芸術家,デザイナー,演劇関係者だけではなく,いろいろな意味でのアカデミックとか専門家ということも,文化力の増強として非常に必要なのではないかと思いますけれども,そこら辺についてもどのようにお考えかということを御説明いただけますか。

【富田文化プログラム推進企画官】5万人のアーティストというもともとの目標の経緯は,やはりこれも,ロンドンが約4万人のアーティストが参加したということで,ロンドンでも特に若手の方ですとか,海外のアーティストの方ですとか,幅広いアーティストの方が文化プログラムに関して参加をされたという形をレポートから聞いておりますので,同じように,できるだけ日本の今回の文化プログラムにおいても,海外の方も含め,できるだけ幅広い層の方々に参加していただく。
 分野につきましても,いわゆる芸術文化といったアーティストだけではなくて,もっと幅広いいろいろな分野,芸術文化とほかの分野との融合も重要だと思っておりますので,そういった中で幅広い文化が,もっとこの機会に裾野が拡大するような意味で,参加を募っていければと考えております。

【熊倉部会長】武内委員,お願いいたします。

【武内委員】カットされた13億円の文化プログラムの件です。少し御発言はありましたし,秋のことなので大分前ではありますけれども,ちょっと復習しておきたいというか,それがカットされたことによって,できなくなったことは何なのか,もう一度,併せて教えてください。

【富田文化プログラム推進企画官】13億円では2点,実施することを考えておりまして,1つ目は,民間の有識者や民間の方々をゼネラルプロデューサーやプロデューサーとして,文化庁が作る文化プログラム,文化力プロジェクトの実行チームを形成しまして,その中で,文化プログラムPRとかそういったものをやろうとしていましたけれども,実行チーム自体を作ることが難しくなったということと,あと,国が主導して,今まで文化庁が,先ほど申しましたように,今回も28年度予算,135億円としましたけれども,地方公共団体や文化芸術団体への支援という形で文化芸術活動を推進してまいりましたけれども,この機会に,文化庁が直接,企画立案する形で何かプロジェクトをやろうということを考えておりましたけれども,それを28年度については大々的にやるということが,その2点が,28年度について実施することが難しくなったということで。
 ただ,この機会にこういった取組を推進していくことは重要だと考えておりますので,こういったものがどういう形でできるのか,やっていけるのかというのは,また来年度,再来年度に向けて,引き続き検討していきたいと思っております。

【熊倉部会長】では,吉本委員。これでこの話題を最後に。

【吉本委員】1点だけ確認をさせてください。また数字のことで恐縮なんですけれども,17万何千件とか,4万人とか,4,000万人とか,そういう数字を私もあちこちに書いたので,ちょっと責任を感じています。実は,17万何千件というのは,太下委員が指摘されているんですが,誤植じゃないかと。11万数千件が正解だったという情報もあり,ですので,数字は,大きくやるんだということのある種のスローガンとして出されているんだと思いますので,それはそれでいいと思うんですけれども,やっぱり数字を目標にしてしまうというのはちょっとどうかなという気がします。
 それで,1点だけ確認したいのは,20万というのは「文化力プロジェクト(仮称)」の数であって,この中に,組織委員会が認定する公式の文化プログラムが含まれているという関係なんですよね。ですから,20万件全てが文化プログラムではないという理解でよろしいですよね。

【富田文化プログラム推進企画官】吉本委員の御認識のとおりでございます。文化庁がこの機会にいろいろやる文化力プロジェクトとして,認定というか,登録というか,今後,まとめていくものの目標が20万件ということでございます。

【亀井委員】ちょっとお願いなんですけれども,ロンドンでのイベントとかアーティスト参加を目標にされておりますけれども,その結果,イギリスにおいて,ポスト・オリンピックでどういうふうに文化が展開していったというのも,是非,この機会に関係者でトレースしていただきたい。
 と申しますのは,一応,2020年までの計画で立てて,その後に,文化芸術立国の実現ということを銘打っています。したがって,ロンドンの例というのは非常に参考になるのではないかなと。失敗例,成功例,いろいろあると思います。日本に適したやり方というのはもちろんあろうかと思いますけれども,その辺も関係の方で分析していただければ有り難いなと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 それでは,この話題は,最後の総合ディスカッションのときにも御意見を頂ければと思いますが,続きまして,文化財総合活用戦略プランに移りたいと思います。
 事務局から御説明をお願いいたします。

【石崎文化財保護調整室長】文化財総合活用戦略プランについて,御説明させていただきます。
 資料を戻っていただいて恐縮なんですが,資料1の2ページ目でございますが,真ん中下の方に,大きなくくりの「2.かけがえのない文化財の保存,活用及び継承等」という項目がございます。(1)が文化財総合活用戦略プランの強化となっているところでございますが,文化財関係で申しますと,(1)のほか,(2),(3)という項目が2つございます。文化財の適切な修理等による継承・活用,文化財の公開活用・伝承者養成という項目になってございますが,こちらの項目が,どちらかといいますと,文化財をしっかりと修理し,保存し,守っていこうという予算でございます。
 それに対比する形で,(1)の文化財総合活用戦略プランということで,予算を要求させていただいたところでございます。こちらは,文化財の魅力を国内外に発信する取組などを進めまして,地域の文化財群の一体的な公開,活用を推進するための各種事業をひとくくりにして予算化しているということで,そちらに書いてありますとおり,96億円という予算を計上させていただいたところでございます。
 具体的には,参考2にございます横長のポンチ絵で御説明させていただきたいと思います。まず,文化財総合活用戦略プランということで,今,申し上げた文化財群の一体的な推進活用ということで,6つの事業をまとめて行っていきたいと思ってございます。
 1つ目で,「日本遺産の認定促進」でございます。1番に書かせていただきました。
 地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」と認定しまして,ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の文化財群を,地域が主体となって総合的に整備・活用を推進して,国内外に戦略的に発信することで地域の活性化・観光振興を図っていこうというものでございます。
 本年度は18件の日本遺産を認定いたしまして,2020年度(平成32年度)までに100件程度の認定をしていきたいと思い,また,28年度には同数の18件程度の認定をしようと,今,準備を進めているところでございます。
 次に,2つ目の「地域の文化財群の魅力を効果的に発信する取組への支援の強化」という項目についてでございます。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えまして,ますます増えることが予想されます外国人観光客に,文化財施設において,文化財の本来の価値・魅力を分かりやすく伝えるような環境整備の促進が必要だろうという問題意識を持ってございます。そのために,文化庁と観光庁が共同で「文化財の英語解説の在り方に関する有識者会議」を開催いたしまして,文化財の魅力を分かりやすく外国人観光客に伝えるための表現上の工夫,留意点などについて検討しているところでございます。
 その会議の中で出た話題として,日本人には当然のことでありますが,日本語をそのまま英訳にしてしまうと,実は外国人は分からないことが多いという指摘が幾つもあります。例えば一例を申し上げますと,江戸時代といえば1603年に始まった時代を指すというのは日本人にとって当然でありますが,外国人で日本語をよほど勉強している方でないと,江戸時代,エドピリオドと訳されても,それがいつ,17世紀を指すのかどうかがはっきりしないというような指摘などなどがございました。
 このようなことを大量に外国の方に伝えるために,日本語訳をそのまま英語に直訳してしまうようなことをすると,なかなか伝わらないという指摘などを頂いておりまして,どうやっていったら文化財の魅力を外国の方に分かっていただけるか,その検討を進めているところでございます。
 それから,先ほど会計室長の説明にもございましたが,建造物の関係でも,重要文化財の建造物の構造に関わらない壁や屋根などの外観,公開部分を美しい状態に回復するための取組の支援なども行っておりまして,観光資源として活用するメニューをいろいろ新設しているところでございます。
 最後,下の方にございますが,文化庁では以上のような取組を進める一方で,観光庁でも,広域観光周遊ルートなどを作ったり,地域観光ブランドの支援をするなどということで,観光案内所の整備や景観向上のための電柱地中化などの環境整備を行っておりまして,こうした取組とも複合的に活用することで,観光資源を生かした魅力あるまちづくりと地域の活性化を実現させていきたいということで取り組んでいるところでございます。
 雑駁(ざっぱく)ではございますが,説明は以上でございます。

【熊倉部会長】こちらの件に関して,御質問,御意見,いかがでしょうか。
 加藤委員,お願いします。

【加藤委員】御説明ありがとうございました。大変いい取組だと思うんですけれども,いろいろと全国の文化遺産といいますか,資源といいますか,そういうものを拝見していると,例えば近年,非常に着目されて,先般,ユネスコの遺産にも登録されましたけれども,鉱山を含む近代の産業遺産というものを拝見していますと,ああいうふうに登録されたものはいいんですけれども,それ以外に,それに匹敵するものがあっても,今,どんどん失われつつあるというか,非常に危機的な状況というふうに私は理解しているんですけれども,鉱山を含む産業遺産等,あるいは,その他の様々な文化遺産について,いろいろと文化庁でも調査をしておられると思うんですが,是非,総合的に新しい観点からの悉皆(しっかい)調査を進められるべきではないかなと。その際に,民間で既にいろいろな調査がされているので,そうしたものを連携して活用するということもお考えになられてはいかがかなと。
 例えば,1つだけ例を申し上げますと,今,瀬戸内海の創造的な拠点,あるいは文化遺産というものの悉皆(しっかい)調査を瀬戸内海の自治体から受けて,私どもで調査をしているという事例がございます。そういうものをやってみますと非常にいろいろなことが分かってきますし,それらを総合的にどうやって活用していけばいいのかという観点も生まれてまいります。
 そういう意味で,観光庁等の御支援も受けながら活動をやっている例があるので,そうしたことをやってみますといろいろと厄介な課題も見えてくるので,是非,そうした民間との連携も視野に入れて進められると有り難いかなと思います。よろしくお願いいたします。

【石崎文化財保護調整室長】御指摘ありがとうございます。貴重な視点で,大変参考になりました。
 資料の中では割愛させていただいたんですが,「1.日本遺産の認定促進」という項目の2つ目の丸で,歴史文化基本構想の策定のための支援の促進というのをやってございます。歴史文化基本構想と申すのは,国が指定した重要文化財,国宝の類いだけではなくて,地域で気付かれていないけれども,昔から守られてきた文化財というようなものがいろいろあるだろう。必ずしも国費で,国が指定する形で守るだけではなくて,地域で気付いて,文化財的な価値のあるものを守っていこうということで,まず悉皆(しっかい)調査をし,自分の地域をもう一回見詰め直すようなことを構想として,各地方自治体さん,市町村さんが計画,構想を策定される際には,文化庁としてもできるだけ支援していこうということで,今,この取組をさせていただいてございます。
 歴史文化基本構想を今,全国の自治体さんで作っていただいておりますが,その中で,地域の埋もれた文化財という言い方は変かもしれませんが,気付かれていない地域の文化財を悉皆(しっかい)調査するというようなことで,例えば市の歴史,市史に当たっていただくとか,あと,多くあるのが,地元のNPOさんと連携しながら,地域の歴史のある,由緒ある品物を確認し,悉皆(しっかい)していくという取組を文化庁としても支援させていただいておりますので,委員御指摘のような点につきましても,歴史文化基本構想の策定を支援する中で,できるだけ地域の方を御支援させていただきたいと思っております。

【熊倉部会長】では,柴田委員と馬渕委員。

【柴田委員】昨年から,文化財系の日本の技体験フェア,伝建制度の40年,文化財調査官,この3つのシンポジウムを拝聴させていただきました。文化財における取組が新しいステージを迎えているということを非常に強く感じましたし,また,未来に向けて,後継者の育成を行っていくことは本当に重要課題だと思っております。
 特に伝統的建造物群の取組については,国から指示ではなくて,地域住民からの盛り上がりによって,それをサポートするという体制を作っているということも非常に感動いたしましたし,これは,佐々木先生がいろいろ御苦心されている「創造都市」の概念にも通ずるところであると考えました。
 文化財の総合活用戦略プランは非常にうまく体系化できていると思いますので,是非,頑張って推進していただければ有り難いと思っております。

【石崎文化財保護調整室長】ありがとうございます。大変うれしいお褒めの言葉を頂きまして,感激しております。
 柴田委員御指摘のとおり,地域の方々の活力をうまく,活用という言い方は変ですが,地域を守っていく,まさに一番,草の根的に活動されている方々と一体となることで,我々,文化財を守るという取組が進められるのかなという意識に立って,できるだけ多くの方々と連携しながら,いろいろな事業をやっていきたいと思っております。
 引き続き,どうぞ御支援,よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】馬渕委員,お待たせしました。

【馬渕委員】文化財といいますと,比較的分かりやすいというか,物であったり,建物であったり,美術品であったりということなんですが,文化財を理解するために非常に重要なものとして,関連資料というのがありますね。文化財,美術品の関連資料の中で,特に戦後日本の美術活動に関する様々な資料が今,国外に流出し始めているという,非常に危険な状態になっているということをちょっとお話ししたいと思うんですが,ある意味で,日本の美術活動というのが数十年,日本の国内だけの関心の中で盛り上がってきたということがありました。
 ところが近年,日本の活動が海外から注目され始めてきて,そして,国内での活動がまた海外に広がっていくという,ある意味で,日本の文化力を示す非常によい例だと思うんですが,そういう中で,作家活動なり,グループ活動なり,あるいは,画廊の活動なり,批評の活動なり,あらゆる活動に関する資料というのが海外から注目されてきました。注目されるのは大変結構なんですけれども,お金のあるところがどんどんそういうものを買い占めているんですね。それで,お金のあるところが買い占めて何が悪いのかという点もあります。
 ちゃんとした組織がちゃんとした分類のやり方に基づいて,データベースで公開してくだされば,それは大変有り難いことで,かえって海外に行った方がいいという場合もあり得るんですが,ただそのときに,まず1つは,日本人の研究者がたくさんいる場合には,オリジナルを見にくいということがありますね。それと,整理の体系というのが,恐らく日本人がやった方が緻密にきっちりできるのではないかと思うので,私は,しばらくは重要な資料を国内にとどめておきたいと思うんですね。
 ところが,それをとどめておくシステムというのが余りできていなくて,例えば,ある美術家の方が亡くなって,遺族の方が非常に御理解があって,地元の美術館なり,国立の博物館なり美術館なりに寄贈してくださればいいんですけれども,そういったものがセールスの対象になる可能性があります。御遺族の方もいろいろな事情がおありなので,資料をまとめて売るというようなことがあって,実際に,今年の初めに亡くなったある美術批評家の資料が,亡くなって1か月以内に海外からオファーが来たという話もありまして,電光石火というぐらいの速さで海外の研究所とか大学の関心の対象になっております。
 そういったものが国内で何らかの形で蓄積されていくシステムというのが,私どもは国立美術館なので,なるべく所蔵作品の作家のものは保存したいと思うんですけれども,何せお金がないのと,そういうものを整理する人間,人材も非常に不足しております。ですから,文化財というのはもちろん重要ですけれども,文化財にまつわる資料も含めて,保存・活用というのをお考えいただけたら大変有り難いと思って発言いたしました。

【石崎文化財保護調整室長】貴重な御指摘ありがとうございます。委員御指摘のお話というのは大変奥が深くて,我々直ちに,どうしましょうという答えを持ち合わせているわけではないところでございます。文化財そのものにまつわる各種資料というのは,どこまでどう守っていけるのか,広げれば広げるほど範囲が広くなってきております。
 現状で制度として持っておりますのは,国が指定しました文化財について,国費で買い取る。それは重要文化財という類いに指定したものに限って,買い取るという制度はございますが,それ以外についてとなると,全部,国が買い取る,国立美術館でお預かりいただくというようなこともできないわけでございます。
 先ほどの御指摘もありましたが,国だけでどうこうするという話ではなくて,民間の方も含めた形で,何か体制を考えていかないといけないのかなということで,直ちに答えが出る問題ではないのでございますが,検討の課題の一つにさせていただきたいと思っております。

【熊倉部会長】長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】文化財建造物を活用した地域活性化事業というところで,当然もうお進めになっていらっしゃると思うんですが,昨今の建築の一つの動向の中に,レム・コールハースが指定したように,近代の建築遺産ということがあって,もちろん古いものは古いもので,それ以上は建物として実際に活用するのは困難ですので,近代のものについては,実際に住む,活用するということ,そして,ある意味での建築としての重要性をどうやって生かすか,そのテクニカルな面,そして,先ほど馬渕先生がおっしゃったような資料として,資料価値としてどう残すかということのいろいろな工夫が今,建築界でも,欧米でもなされています。
 そういうことをもうちょっと全面的に研究していただいて,実際に今,例えば京都でも町家とか古いところ,川越でもそうですけれども,指定まで行かなくても,古い建物を活用して,実際にそこを,ある意味で,観光的なランドマークにうまくしながら,しかも建物の歴史も伝えるというような工夫を大切にされています。そのときに,これは文化財だから一切くぎを打てないとか,そういう建築上の非常に厳密な問題もあり,どうやって共存して,実際の地元にいらっしゃる方がそれを活用できるのか,そして,資料としてもきちんと保存できるのかということを総合的に考えて,御指導いただけるとよろしいのではないかと思います。

【石崎文化財保護調整室長】御指摘ありがとうございます。確かに文化財という形で指定されてしまいますと,現状をいかに守っていくかということにやや力点が置かれるところはございます。それとは別に,必ずしも文化財に指定されていませんけれども,地域に昔からあるランドマークのような建物を活用しようという民間の取組が各種進んでいるところでございます。そういうところにつきましては当然,文化財という指定がないので,ある程度自由にできるというメリットもございます。
 そういう地域の方,特に最近多いのは,NPOの方などが町家を使ったり,地域に昔からある由緒ある建物を使って,そこで喫茶店を開くとか,地域の方が集まる寄り合い所にしたり,ないしは観光客の方に来ていただけるようなちょっとしたお店を開かれ,地域の人気スポットになっているという話もございます。
 そうした地域の方が地域の資源を使っていろいろ行われる取組について,まさに地域発想の取組を,我々文化庁としてできるだけ支援するように,財政的なところで苦しいところがあれば補助金を出すというような仕組みも,一部メニューとしておりますので,そうしたメニューを活用いただいて,できるだけ,建造物も含めて文化施設,文化財を活用していただけるように,応援していきたいと思っているところでございます。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 それでは,次の話題に移ろうかと思います。続きましての議案は,文化芸術活動に対する助成システムの機能の充実に向けた取組です。御説明をよろしくお願いいたします。
 また,本件につきましては,前回の部会において,日本芸術文化振興会の理事,PD・POの方々に御出席いただき,日本版アーツカウンシルの試行的な取組の成果について御報告いただきました。その後,私と片山部会長代理,事務局と相談いたしまして,本件に関心の高いと思われた幾人かの委員とともに,別途,同振興会の方々と意見交換をさせていただきました。本日は,その際の概要にも触れていただきながら,本格実施について御説明いただきたいと思います。

【小林芸術文化課長補佐】それでは,資料2の参考3を見ていただければと思います。芸術文化課の小林と申します。よろしくお願いいたします。
 横の1枚紙でございますけれども,「文化芸術活動に対する助成システムの機能の充実に向けた取組」について,御説明申し上げます。
 文化芸術活動に対する助成事業をより有効に機能させるために,平成23年度から27年度の5年間において,独立行政法人日本芸術文化振興会に専門的知見を持つプログラムディレクターとプログラムオフィサーを段階的に配置しまして,助成事業の審査や事後評価などの機能を強化する取組を試行的に実施してきたところでございます。
 5年間の試行によりまして,一通りPDCAサイクルを回して実施してきたところでございまして,ポンチ絵の桃色の枠の中の「成果」が上がったところでございます。この成果につきましては,昨年12月に開催されました懇談会がありまして,振興会の各分野,音楽や演劇,舞踊,伝統芸能・大衆芸能のプログラムディレクター又はプログラムオフィサーから,アーツカウンシルの試行の効果と今後の課題について御説明いただきまして,それをまとめたものがこの資料となります。
 まず,Pということでプランでございますけれども,助成事業の計画に対する取組ということで,PD・POの意見を反映することで文化芸術活動の実態,分野ごとの特性を踏まえた募集方法の改善が図られてきたところでございます。
 具体的にどのような取組を行ったかということでございますけれども,PD・POを中心として既存の業務の内容を検証し,そして音楽,舞踊,演劇,伝統芸能など,分野ごとの審査基準を明確化してきたところでございます。また,審査の基本方針というのを募集案内に掲載して,基本的な方向性を提示してきたところでございます。また,従前は,日本文化芸術振興会の中での意見を踏まえて,事務担当職員が募集案内の改正案を作っていたところでございますけれども,現在では,専門的知識を持つPD・POの意見を踏まえて,募集案内の内容などを改善してきたところでございます。
 次に,Dの部分でございますけれども,ドゥーということで,助成事業の実行に対する取組でございます。そこでは,PD・POの審査に係る情報の総合的な収集・管理によりまして審査の質,継続性,効率の向上が図られてきたところでございます。
 具体的にどういうことをやったかと申しますと,PD・POは団体からの申請内容を分析して,振興会内の委員会に対して専門的な助言を行ってきたところでございます。また,採択・不採択理由や期待される効果を整理して,審査時に指摘された意見を,申請されてきた団体へ伝達などをしてきたところでございます。
 次に,チェックの部分でございますけれども,助成事業の検証に対する取組といたしまして,PD・POによる公演調査を大幅に充実したところでございます。助成団体・助成活動のきめ細やかな状況の把握や事後評価による助成活動の達成度の把握が可能となってきたところでございます。
 具体的な取組といたしましては,公演調査の充実,平成23年には553件だったところを,26年には1,168件を行うなど,調査対象数を拡大してきたところでございます。また,事後評価を実施したり,また,事後評価の結果の伝達を行ってきたところでございます。
 次に,Aということでアクション,助成事業の改善に対する取組といたしましては,PD・POによる審査・事後評価結果の伝達や専門的観点からの助言により,助成団体の活動の改善が可能となりまして,これによってPDCAサイクルが一通り,5年間で実施されてきたところでございます。
 また,「成果」の枠内の最後のポツになりますが,文化芸術団体の活動状況,鑑賞動向や助成対象分野の動向など,施策立案に資するデータの収集分析が行えるようになってき始めているところでございます。
 今度は,赤い「課題」の部分でございますけれども,このように5年間の試行によりまして着実な成果を上げてきたところでございますが,今後は,事後評価手法を確立しながら助成事業を更に改善していくこと,また,文化芸術団体の意識啓発等が課題であるため,助成システムの体制の更なる充実が重要となってきているところでございます。
 左下の図になりますけれども,次に,「効果的な助成のための推進体制」の部分について御説明申し上げます。
 真ん中の部分でございますけれども,事業実施主体の日本芸術文化振興会において,各種助成事業の事後評価の精度を向上させるとともに,助成事業に必要となる調査研究を充実させて,これらの知見を,上にある,文化庁に情報提供いただき,文化審議会とともに文化政策形成に生かしていければと存じます。
 また,ポンチ絵の右下の部分になりますけれども,機能充実のための体制の整備といたしまして,PD,POの増員及び一部常勤化が必要ということが懇談会でも御指摘がありましたので,PD,POの増員及び一部常勤化がなされたところでございまして,平成28年度予算として増額が図られたところでございます。
 また,12月に行われました懇談会では,PD,POの常勤化を検討すべきということで,ここでPD,POの増員及び一部常勤化がなされまして,また,懇談会では,助成事業を政策的に体系化すべき,また,地方版アーツカウンシルについても議論すべきとの御意見があったところでございます。
 助成事業を政策的に体系化するということについては,今後,振興会と調整しながら,事業の段階的な移管など,検討していくこととしたいと存じます。
 説明は以上でございます。

【熊倉部会長】ありがとうございます。
 こちらに関して,いかがでしょうか。仲道委員。

【仲道委員】とても重要で必要なシステムなので,さらなる機能の拡充をお願いしたいところなのですが,今,全国の,例えば地方のオーケストラなどは,助成を頂かないとやっていけないような状況にあります。そのため,もちろん助成の申請をなさっているのですが,そこで今,少々問題が起こっています。何が起きているかといいますと,助成を頂いて,ちゃんと集客をして結果を残すために,どこに行っても同じような名曲プログラムが行われるというような状況が見られるようになってきているのです。
 地域のお客様に対してどういうことをしたいとか,ある目的のために冒険的にでもこういうことを深めたいとか,自分たちが何をしたいか,すべきかを問うよりも,助成を下さる方の方を向いた音楽活動づくりというような側面が表れてきているのです。このことへの危機感というものがございます。
 今後,助成システムやアーツカウンシルというものを構築していくときに,どのような審査をするか。芸術というものは「測る」ということが非常に難しいジャンルでございますので,その辺りもよく御議論いただけたらと思います。

【熊倉部会長】河島委員。

【河島委員】日本芸術文化振興会にPD・POという人たちを置くというようなことが,試行の以前の委員会に関係しておりまして,もう5年もたったのかなと思いまして,大変成功というか,うまく軌道に乗って充実しそうだということを大変うれしく思いました。とてもよいことだと思います。
 それで,1つは,事後評価というところまでやっているのかというのがちょっとびっくりしたんですけれども,でも,もう一つ,事後評価の手法を確立というのが今後の課題ということは,まだシステマチックにはやっていないということかなと思いますので,現在どういうふうにやっていらっしゃるのか,それから,今後どういうふうに事後評価を取り組もうと考えていらっしゃるのか,伺いたいというのが1点目です。
 もう一つ,このシステム,芸術文化振興会の中にある,今後もその中にということですよね。そうすると,一般の人にやや分かりにくいところがあるのではないかなと懸念しておりまして,例えばインターネット上で,文化庁の文化政策とかを調べている人がここにうまく誘導されていくとか,一般の方々にも分かりやすい,文化関係の団体にはもちろんですけれども,そうでない,特に助成金を求めていることで調べているわけではない人たちにも,情報が透明に見えるような形にしていただいた方がいいかなと思いました。

【熊倉部会長】あわせて,いかがでしょうか。

【小林芸術文化課長補佐】それでは,御説明申し上げます。
 現在では,確かに今後,音楽の分野,仲道先生からもお話がありましたとおり,どのように事後評価を行っていくかなど,あと,事前には,事後評価を行うためには,現在どのような実態になっているのかということをまず調べなくてはならなくて,現在,芸術文化振興会においては,助成制度に関する調査分析事業というのを行っておりまして,まだ正確な数字は出ていない状況でございますけれども,25年度の段階では,例えば音楽分野では,助成額の総計の35%が東京都に配分されている。又は,舞踊分野では55%が配分されているといったデータがあるわけですけれども,そういった調査研究を振興会及び文化庁において行って,今後どのような政策展開をしていくかというのを考えていく必要があると思っておりまして,このようなアーツカウンシルというシステムが,一旦サイクルが回ったことによって,まず調査研究を行って,実態を把握して,今後の政策展開に生かしていければと思っております。
 あと,先ほど河島先生からも話がありました,PD・POの日本におけるアーツカウンシルの取組について,今も一応,このような簡単なA3の表裏で,1枚紙であるんですけれども,広報の紙があるんですね。どういうふうにPDCAサイクルを回しているかというのがあるんですけれども,確かにこの取組の広報については,余りまだ日本全国的に充実が図られていない状況でございますので,今後,こういった広報の取組についても行ってまいりたいと思っております。
 以上でございます。

【宮田委員】広報紙が配られていない。

【小林芸術文化課長補佐】申し訳ございません。これは今日の机上資料には配布されておりません。ですので,これを後ほど,URLでお知らせします。失礼いたしました。

【加藤委員】具体的な個々個別のいろいろな分野において,大変大きな成果が上がっているという御説明については,前回も直接PD・POからも御説明いただいて,非常によかったなと思っていますが,そもそも助成システムの在り方全体といいますか,いわば文化振興の政策的な判断で,それが例えば,ジャンル分けがいいのかどうかとか,もっと違う取組の仕方というものもあるのではないかという政策的な評価ということについては,今後,文化振興会とも議論しながら進めるんだということを一番最後におっしゃられたので,いいかなと。それでよしとしておくかなと思ったんですが,例えば,今まではこの調子でよかったと思うんですが,成果も上がっていますし,ただし,PDとかPOという専門家を組織の中に入れる場合でも,ジャンルの分類されたそれぞれの分野ではなく,そもそも助成の在り方というものがこれでいいのかどうか。
 文化振興というものの全体の政策の中で,助成金の占める位置というのはどういうものなのかとか,新しい助成金のあるべき姿というものが,今の実情に合った,いろいろ社会の変化に伴う助成金の在り方というのはどういう仕組みがいいのかということを含めた,政策的評価のできる専門家が要るのではないかということを,これは前から何度も申し上げている点ですし,そもそも日本版アーツカウンシルというのは,個々個別の助成の問題も重要だけれども,そうではなくて,全体の政策を評価できる仕組みが必要なんだということを何度も申し上げてきている点が,今のところ,今後相談しながら進めるんだというお話だけでは余りにも貧弱だと。
 何で,文化庁がこの課題を取り扱うことになると,いつもこうやって,何と表現していいか,表現に困るような矮小化ですね。極めて貧弱なものになるというのは一体どうした訳なんだろうということを常々不思議に思っているんですが,なので,これは是非,根本的にもう一度,そのあたりの取組というものを,今の状態はすばらしいですよ。それはそれで評価している。しかしながら,次の1歩に踏み出すべき時期に来ているのではないか。
 そのあたりについて,きょう,すぐお答えを求めても無理でしょうから,是非,本気で取り組んでいただきたいなということを申し上げておきたいと思います。

【小林芸術文化課長補佐】分かりました。

【熊倉部会長】まさにおっしゃるとおりで,たくさん重要な指摘がされたと思います。
 取りあえず5年間の試行で,やる気になってくれたらしいということは,前回の部会での長い御説明の後に,ようやっと我々が少し手応えを得たものでした。また,懇談会で現場の各分野のPD・POのお話を聞いて,非常に真剣に取り組まれている,誠心誠意取り組まれているということはよく伝わりました。
 分野によって多少,今の振興会の方針との温度差みたいなものはないわけではないと思ったんですが,ただ,今,御指摘にあったように,「成果」のピンクの枠の中,第3次基本方針にはっきりとPDCAと書いてありましたので,ただ,このPDCAが非常にミクロなレベルのPDCAに終始してしまうと,非常に危険性が高く,ましてや今のような,全く従前で,今は一部のトップレベルの団体への支援策のみを考えているので,ともかくとして,仲道委員が御指摘になったように,これはイギリスのアーツカウンシルにも鋭く批評されているところですけれども,非常に大ざっぱな,政策かどうかよく分からない評価,人がたくさん来てよかったねというような評価に傾きがちになるところを,どういうふうに防いでいくのか。
 また,加藤委員からも御指摘がありましたけれども,しかしながら,これが進んでいくと,例えばありていに言って,ずっと助成先と更にPDCAサイクルを詰めていくことによって,ただでさえ何となくもたれ合っているように見えたのが,更に癒着しているようになるといけないと思いますので,第4次基本方針はPDCAという言葉を排して,政策評価というふうにしてあると思いますので,将来的にこれが,効率よく助成されているかではなくて,日本が文化立国になるためにきちんと機能しているのかどうかということをもうちょっと考えていくような部分も,もっと必要ではないかという御指摘だったかと思います。
 それでは次に行きたいと思いますが,地域の文化施策推進体制の構築でございます。御説明をよろしくお願いいたします。

【田村長官官房付】芸術文化課で文化活動振興室長職を命じられております,長官官房付の田村と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 地域の文化施策推進体制の構築についてでございますが,いわゆる地域版アーツカウンシルの導入の必要性につきましては,この文化審議会の場でも委員の先生方から,第4次基本方針策定以前から御議論いただいていたところでございます。
 その中の主な意見としましては,中央政府が作る,今,御説明がありました日本版アーツカウンシルと,更にそれに対応するような形で,全国で地域版のアーツカウンシルというものをどんどん立ち上げていくことが必要だろう。それを文化庁としても側面支援していくような政策とすることが,両輪のアーツカウンシルという形で非常に望ましいのではないかという御意見とか,2020年東京オリンピック・パラリンピック,文化プログラムを含めて,日本の津々浦々で文化プログラムを推進するというときに,地方でもアーツカウンシルが支えていくという体制があるというのが望ましい姿ではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 こうした御議論,御指摘を受けまして,私どもの方で,ではどういう形で,地域における文化施策推進体制の構築を促進していけるだろうか,支援していくべきだろうかということを考えまして,既に先行した助成プログラムとして行っております,文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業という助成事業の中に,柱の一つとして立てることを考えました。
 先に参考資料4-2を御覧いただければと思います。横長のポンチ絵がございまして,文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業の説明の資料になります。
 このプログラムについては先生方も御案内かと思いますが,タイトルそのとおりでございまして,地域地域で文化芸術による地域活性化,あるいは国際発信をしていこうというような,芸術祭とかそうしたイベント系のものに対して,文化庁から支援を行っているものでございます。
 この資料の真ん中に,「新規」というオレンジ色の楕円が付いているところがございます。「地域の文化施策推進体制の構築を促進する取組」とございます。これ以外の柱については,今年度行っている事業の中でも柱として立っていたわけですけれども,これは来年度の予算の資料なんですけれども,この取組についても,規模はそれほど大きくありませんが,新しく助成の対象,支援の対象にしようということにしまして,新しく柱を立てました。
 これについて財務省の方にも説明をしたところ,そこにありますように,支援件数5事業と非常に小さいんですけれども,一応認められましたので,28年度からこの取組についても,一部ですが支援を行うこととしております。
 支援の内容ですけれども,そこにございますように,専門性を有する組織を活用した文化芸術政策の企画立案・遂行,地域の文化芸術活動への助成,調査研究等を実施する体制の構築を促進する取組への支援というものになります。
 これをもう少し詳しく書いたのが,1つ前の参考資料4-1を御覧いただければと思います。
 真ん中のぐるっと囲んであるところの中が,新しい地域の文化施策推進体制となるべきものがやっていただけるのではないかと思っている内容でございまして,今,申し上げましたとおり,文化芸術施策の立案・遂行,それから,助成事業の企画運営とか調査研究,情報発信というものをやっていただけるのではないか。その柱になる,土台になる要因として,下にありますように,文化芸術分野の支援に専門性を持つ独自の職員の配置というものが求められると思いますが,そうした体制の構築をやろうとしている都道府県,政令指定都市等に対して支援を行うことにしたものでございます。
 実際,28年度の募集を行いまして,先ほど4-2で御説明しました,今回の新しい施策推進体制構築を促進する取組以外の部分については,昨年から募集を掛けていたんですが,ここの部分は予算の先行きがある程度見えてからということにいたしましたので,今年に入ってから,別途募集を掛けさせていただいたところでございます。そのため,募集期間が非常に短い期間になってしまいまして,なかなか広報不足,周知不足だったところもございまして,出てきた応募件数はそれほど多くないんですけれども,既に以前からこうした取組に実績がある自治体とか,まだ実績がないけれども,以前から非常によく検討を進めている自治体等から,十数件の応募がございました。そこにありますように,来年度は取りあえず5事業ということで,今,審査を行っているところでございます。
 という形で,地域版のアーツカウンシルについては,先ほどの日本版アーツカウンシルに比べますと,まだ始まったばかりというところがございまして,我々事務方もやや手探りのところもございますけれども,今後もよりよい取組が根付いていくよう,広報に努めるとともに,支援の内容,方法についても更に検討していきたいと考えているところでございます。
 私からの説明は以上です。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 皆様,いかがでしょうか。太下委員。

【太下委員】御説明ありがとうございました。
 2点,意見を言わせていただきたいんですけれども,まず1点目は,これからの文化プログラムを中心とする地域の文化政策を実現していく仕組みですよね。まさに御説明にあったとおり,地域版アーツカウンシルというものが絶対必要だと思います。それで,御説明にあったとおり,これは多分,地域版アーツカウンシルというものが,芸文基金の方にある日本版アーツカウンシルと車の両輪のようになる。まさにそのとおりだと思いますので,是非,そういう政策なんだということをもっと明示していただいた方が,よりいいかなと。
 余り地域版アーツカウンシルと正面から書いていらっしゃらないんですよね。想像するに,日本版アーツカウンシルについては,口やかましい委員がいろいろ言うので,どうもトラウマになっていらっしゃるんじゃないかなという気がしなくもないですが,是非,地域版アーツカウンシルというところをしっかり打ち出していただきたいと思うんですね。
 ただ,もしこの機関が,これからオリンピックの文化プログラムの認定も担っていくということを考えると,2つ課題があるかなと思っていまして,1つは件数の問題ですね。先ほど湯浅委員からもお話が出ましたけれども,実は,先ほど吉本委員から御紹介していただいたとおり,17万7,000件というのは歴史に残る誤植じゃないかなと私は疑っているんですが,それはさておき,もう20万と言っちゃったんだから,取りあえず20万を目指すのがいいかなと思っていますが,その際に問題になるのは,実はイギリスのときに,件数,アクティビティーの数え方というので明確な定義がないということなんですね。イベントデーという表記があったり,多分,現場で様々な判断があったと思います。
 一方で,日本人はこういうのを定義するのが得意ですから,是非,日本で,文化庁さんの方で,20万というのを1個1個はどういうふうに数えるのか。多分,芸術のジャンルごとによっても数え方は違ってくると思いますし,活動内容によっても違う。これをきちんと定義していけば,逆に,オリンピックの文化プログラムという仕組みのレガシーになると思いますので,是非,それをやっていただきたいと思います。
 もう1点,クリアしなければいけない課題は,先ほど,やはり湯浅委員からちょっと紹介があった,ロンドンのときに使われた,インスパイアードと言われるノンコマーシャルのマークですね。御案内のとおり,本来であればオリンピックの文化プログラムというものは,組織委員会又はオフィシャルスポンサーが行うものだけが,厳密に言うとオリンピックの文化プログラムになるわけです。ただ,これだけですと非常に範囲が限定されてしまうということで,ロンドン・オリンピックのときには,それ以外の主体,民間企業であったり,様々なNPO等も関われるようなノンコマーシャルというグレーゾーンを作ったわけですね,インスパイアードと言われる。
 ただ,これも御案内のとおり,次のブラジルのオリンピックでは認められないということになっていますので,組織委員会さんに頑張っていただいて,是非復活していただく必要があるわけですけれども,ただ恐らく,仮に復活できたとしても,その運用について,IOCは相当センシティブになると思うんですね。なので,単に機械的に認定して,はい,終わりという形にはならないと思います。
 実際,ロンドンのときにも,地方でヒアリングしてみますと,地域のアーツカウンシルが個々のプログラムに寄り添って,例えばインスパイアードのマークを付けるときには,どういう運用をするのかというのを事細かにオリンピック関係者と折衝しているんですね。それで初めてノンコマーシャルというものが成り立っていたという経緯がありますので,地域版アーツカウンシル,日本版アーツカウンシルもそうでしょうけれども,芸術文化を支える人たちがきちんと雇用された環境の中で,プログラムに寄り添って,プログラムを1個1個作っていくという環境を早急に作ることが,20万件と掲げてしまった目標の実現のための絶対必要な条件になるんじゃないかなと思います。これが実現する仕組みという点の大きな一つの意見です。
 もう一つは,その中身として何をするのか。先ほど亀井委員からも,ロンドンで一体,文化プログラムをやってどういう効果があったのかという御指摘がありましたけれども,これはやはりレガシーという言葉に象徴されるものだと思うんですね。振り返ってみると,ロンドンのときには,アンリミテッドと言われる障害者の芸術表現というものに大きく光を当てて,これは御案内のとおり,日本でも継承していく。確実なレガシーになったわけですね。
 ただ,当然ですけれども,これをやるだけでは,IOC的な視点からは,日本のオリンピックのレガシーというのはないじゃないかという話になっています。それ以外に新しいレガシーというものを,日本は創っていく必要が絶対あると思うんですね。この大きな柱を是非考えていただきたいなと思うんですね。
 この30分ぐらいで,何があるかなと考えてみたんですけれども,ぱっと考えても,例えば,日本は世界最先端の高齢先進国ですから,高齢者の芸術表現,これは日本でこそフォーカスしてやっていく分野じゃないかとか,あと,世界的に見ると,日本はやはり技術立国,テクノロジーの国ですから,最先端テクノロジーとアートの融合という分野も非常に重要だと思います。
 ちなみに,イギリスにはNESTAという,技術とアートを両立させる新しい分野を開拓する組織があるわけですけれども,残念ながらというか,NESTAは,実はロンドン・オリンピックのときには,組織としては積極的に文化プログラムに関わっていなかったんですね。そういった意味で言うと,逆に日本で,テクノロジーとアートの融合分野をやるということは,非常に大きなレガシーになり得ると思います。
 更に言えば,文化の担い手のフラットな構造ですよね。そして,お互いの成果物をシェアしていく文化,古くは俳句の本歌取りとか,季語という仕組みとか,建築の写しとか茶器,陶器の写しという独特の文化がありますね。これはネットの世界の初音ミクなんかを先取りするような,非常に面白い文化構造だと思います。こういったこともきちんと,表層的なアウトプットとしての作品だけじゃなくて,文化構造の違い自体を世界に発信していくということが,この機会に是非必要じゃないかなと思います。
 これは,ロンドンがリオを超えて東京にまでインパクトを与えているように,日本のオリンピックがそれに成功すれば,2024年のオリンピックはおろか2028年,それ以降のオリンピックにも日本の文化は影響を与え得るわけですね。そのぐらい,今から12年ぐらい先のことまでにらんで,是非これからの5年間というのを取り組んでいただく必要があるんじゃないかなと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】ありがとうございます。
 ほかに。赤坂委員,どうぞ。

【赤坂委員】僕は,たまたまですけれども,地域の現場にいるので,そこからの発言をさせていただきたいんですけれども,例えば,先ほどの歴史文化基本構想の西会津町の委員長というか,責任者をやっているんですね。現場は全く理解されていません。歴史文化基本構想ということで,僕は試行の段階から少し関わっていましたので,それが何を目指しているのか。つまり,文化財を保存するというよりは,文化財を活用して,大きな町の物語のようなものを創って,観光とかいろいろなものを巻き込みながら,あるいは芸術文化活動も巻き込みながら,展開するための起爆剤にすると僕は理解しているんですね。
 でも,現場は,残念ながら全く理解していません。ですから,委員会の中に文化財審議の方たちばっかりになってしまうと,身動き取れないんですね。だから,あえて僕は若い観光の現場にいる人たちとかを入れるんですけれども,長老支配ですから,大変厳しいわけですね。
 つまり,今,出てきているもの,僕は方向性は大変正しいと思いますし,進めるべきだと思うんですけれども,それは,これまでの規制のしがらみとか,利権とか,全部それをひっくり返して新しい仕組みを作らないと機能しないんです。だから,助成金のシステム,立派なものを作って,こういうものがあるから応募してくださいと言っても,現場からは対応し切れないものがたくさんあるんです。
 僕なんか,例えば歴史文化基本構想という場の中で,若い人たちが,かつて行われていた紙すきの道具が残っている。何も指定されていないんですけれども,それを引っ張り出してきて,紙のアーティストがいるんですね。そういう人たちが関わって,紙すきしながら,こんな新しい表現として,紙すきを使って地域おこしをしようみたいなことが起こる。つまり,僕の中では,文化財の活用ということと芸術文化プロジェクトみたいなものが重なっているんですよ。
 是非承知しておいてほしいのは,人がいないんです。だから,文化財の基本のこっちの方をやる人たちと文化芸術プロジェクトをやる人たち,みんな重ならざるを得ないんです。だとすると,本当にこういうものを全部串刺しにするような,徹底してやわらかい開かれた運用というものを現場に許してもらえないと,人はいないし,そもそも,文化財の保存と言っていますけれども,ちょっと調べてみたら,市史が編さんされた頃に認定された文化財が大分壊れています。それを保全していく力もないんですよ。人もいないし,お金もないし。
 だからこそ,こういう仕組みの中で,文化財に対してアーティストたちが光を当てるということが物すごく有効だということを僕らはすごく感じてきましたので,地域版アーツカウンシルって,ないんですよね。言葉として出てこない。絶対に必要だと思います。それで串刺しにしていかないと,20万件なんて夢物語になるだろうし,それ以上に,地域の文化状況というものを考えたときに,もしかしたらこれが大変重要な最後のチャンスなのかもしれないという,僕なんかひりひりした感触を持っていますので,繰り返しますが,徹底して開かれたやわらかい運用というものを目指しながら,仕組みそのものを変えていくという思考をみんなで共有できればいいなと思いました。

【熊倉部会長】ありがとうございます。
 三好委員,どうぞ。

【三好委員】御説明ありがとうございます。地域での取組は非常に重要なことだと思っておりまして,文化プログラムを進めていく上でも,全国にきちんとした組織を作っていくということは必要だと思います。
 その上で,幾つかの懸念があります。御説明にもあったように,募集期間が非常に短かったにもかかわらず,それなりの数が出てきたというのは,それはそれでよかったかなと。かなり前からやろうとしていた県や市が幾つかありましたので,そういうことではないかと推測するんですが。ただ,文化プログラムということを考えていくと,これは全国的に何らかの取組が進んでいかなければいけないと思うんですね。
 そうすると,例えば28年度で,これは予算上のことですからしようがないのかもしれませんが,採択5件というのが果たしてそれでいいのかという問題がある。また赤坂先生が御指摘のように,現地で,各地域で専門的な人がどれくらいいるのかというところが重要だと思うんですね。今回の事業の内容を見ていても,助成事業であるとか,調査研究とか,あるいは専門性を有する組織を活用したという,政策を企画立案する行政ではなくて,その外側に何か作ろうとしているようにしか見えないんですね。
 もちろん,助成というのも重要だけれども,我々は別に助成だけが最大の手段だとも思っていないので,むしろもっと広く,いろいろな支援の形というのはあっていいはずだと思うんですが,各都道府県なり自治体がそういうことを企画立案できるような,まさに行政組織そのものの問題について余り踏み込んでおられないところが,不満というか,懸念を感じるんです。それで言うと,例えば自治体で美術館,博物館などは,教育委員会所管のところが多いと思いますし,文化条例なんかも持っているケースも多いと思うので,そういう意味では,教育委員会なり,あるいは知事部局,市長部局でもいいんですが,文化政策をきっちり担っていくような,少なくとも人がいなければいけないと思うんですね。
 大分以前にも言ったことですが,例えば社会教育であれば社会教育主事という,実際の活動はともかくとして,そういう名前の人がいるんですね。では文化政策について,それを専ら専門とする人がいるかというと,自治体が独自にやっていればあるけれども,文化庁としてはメッセージは発していないですよね。
 以前,劇場・音楽堂法を作ったときにも,是非,指針を示して自治体にアピールしてほしいというので,指針を出していただきました。文化プログラムをやるのであれば,まずは自治体に対して文化庁のメッセージをはっきり出して,文化行政としてやるという基本のところを是非アピールしていただきたいなというのが,これについての意見でございます。
 以上です。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 吉本委員,どうぞ。

【吉本委員】私も,是非これは強く推進していただけたらなと思います。そのときに,これは2020年のオリンピック・パラリンピックというのがきっかけにはなっていると思うんですけれども,資料4-1の一番上の行を見ると,「実施に向け」となっているので,オリンピックが終わっちゃったらなくなるのではないかと危惧しています。そうではなくて,これはあくまでもオリンピック・パラリンピックを契機に,全国にこういうものを作っていくんだという,そこの目標観をまずはっきりしたいなと思います。
 それと,今,三好委員がおっしゃったように,私も5件というのは少ないと思いました。20万件という数字を出すのであれば,全ての都道府県,政令市で70件とか,こっちで何か数値目標を出してほしいなと思いました。
それから,地域版アーツカウンシルと,先ほどの国のアーツカウンシルとの関係というのも当然出てくると思いますので,今は,地域は地域,国は国という,両方でそれぞれに推進していると思うんですけれども,相互の関係をどうするのかということも併せて検討する必要があるのではないかと思います。
 アメリカの場合は片山部会長代理が詳しいと思いますが,NEAが,金額は多くないですけれども,州政府のアーツカウンシルに分配して,そこから州内の市町村などに分配されていますよね。でも,イギリスの場合は全国組織の中に地域事務所があるという関係になっています。すぐに整理は難しいと思いますけれども,国のアーツカウンシルと地域アーツカウンシルはどういう関係をこれから作っていくのかということも,全体として是非検討いただきたい。
 そのときに,ちょっと話が戻って恐縮なんですけれども,参考3にある,国のアーツカウンシルに関してなんですが,この資料を見ると,本格稼働といったときに,「対象とする事業の拡充も検討」とあるんですけれども,僕はここが一番重要な気がするんです。今,文化庁が直接やっている補助金の中から,アーツカウンシルに移管できるものは是非移管して,それで全体として大きくしていかないと本格導入にはならないと思いますので,文言を直せるかどうか分かりませんが,「拡充も検討」ではなくて,「拡充を実施」と是非書いていただきたいなと思うんですね。
 それと併せて,国と地域のアーツカウンシルの両方を,先ほど加藤委員もおっしゃっていましたが,もっと骨太にがんと進めるというのを,予算が決まってしまった来年の28年度は難しいと思いますが,翌年度以降も含めて,大きく打ち出していただきたいなと思います。
 もう1点,地域版アーツカウンシルと国のアーツカウンシルの関係を考えたときに,地域のアーツカウンシルはオリンピック・パラリンピックの文化プログラムというのが念頭に入っているんですけれども,国のアーツカウンシルにはそれは含まれていないという整理に今なっていると考えてよろしいんでしょうか。最後は質問なんですけれども。

【熊倉部会長】いかがでしょうか。

【小林芸術文化課長補佐】今,吉本先生から話がありましたとおり,別にこれは,飽くまで機能の充実に向けた取組ということでありますので,少なくとも,オリンピック・パラリンピックに向けた取組を全くやらないということではございません。
 以上でございます。

【熊倉部会長】ちょっと待ってくださいね。宮田委員,そろそろお時間で。

【宮田委員】次のものがあるので,申し訳ない,退室するんですが,1つだけ。
 リオはもう半年切りました。少なくとも,この事業全てが2020にやるんじゃないんです。リオの後,すぐやらなければならないんですよ。芸術は,先ほど仲道先生が,数字では表しにくいということをおっしゃいましたね。全く芸術というのはそういうものであります。ところが,企画,それから,スタートさせること,それはできることなんですよ。でも,今日の話は全部,その話は一個も出ていない。
 私は,春は桜が咲くときまでにはエンブレムを完成させなければいけないんです。そういう思いがあるので,是非この会議の中には,この日までには,今です,ここです,あなただけですで終わらないように,全体で,ここまでで決めましょう。アーツカウンシルにしても何にしても,PDCAサイクルにしてもそうなんですが,ここまででスタートするぞという,キックオフをきちっと作るという言語がこの中にもうちょっとあるといいのかなという感じがして,去らせてもらいます。済みません。

【熊倉部会長】宮田委員,是非,組織委員会との連携もよろしくお願いいたします。

【宮田委員】恐らく,そのとおりです。

【熊倉部会長】佐々木委員,お待たせしました。

【佐々木委員】今,宮田委員,吉本委員,いろいろ大事なことを言われたので,私は,少し物事を整理しておきたいなと思うのは,まず,日本版アーツカウンシルの試行という段階は終わっているんですよね。本格実施ですね。その段階で,「日本版」というのは取れないといけないですね。日本型のアーツカウンシルに関する法律条例の枠組みというものが恐らく準備されるんだろうなと。
 先ほど赤坂委員が言われたけれども,制度を変えていかないといけない,もっと本格的にシステムを変えていかないと,地方では分からないよ,まだ既存の考え方で事業を進めているよという話があったとおりで,それから,加藤委員が言われたとおりでして,単にPDCAサイクルをミクロで回している話ではないのですね,ここまで来ると。
 逆に,自治体のと言いますけれども,地域という言葉がちょっと不明確なので,自治体のアーツカウンシルで,条例設置に基づいて展開する。つまり,条例設置ということは,何らかの法的な枠組みを考えているわけですよね。そうすると,日本のアーツカウンシルの在り方というものは,国のレベルと自治体のレベル,両方が含まれるわけで,片方だけが日本版アーツカウンシルではないのですね。
 だから,ある程度問題を整理して,本格実施をする上で,どういう枠組みが国と地方で必要なのか。そして,地方と言っている場合に,自治体,つまり都道府県がやるものと,私は前から言っていますが,少なくともイギリス型であれば,国のものが広域的に4つぐらい,国のシステムとして,あってもいい。ということになってくると,これはすなわち東京だけの話ではないのですね。
 このあたりも整理していかないと,今は地域版アーツカウンシルという言葉の中に,実はこれは都道府県,市町村のレベルの話なんですね。広域のレベルがないわけです。この辺の整理というのは,そろそろ検討委員会があって,やっていかないと,まだずっと混乱が続くのではないかと思います。

【熊倉部会長】ありがとうございます。
 幾つか御意見が出ましたが,文化庁の方から,まとめていかがでしょうか。

【田村長官官房付】大変参考になる,そして適切な御指摘,ありがとうございました。

 先ほども冒頭申し上げましたように,確かに,検討が十分でないまま,取りあえず助成プログラムに柱を1つ追加で立てるという,取り急ぎの対応という感が否めないところがございますので,今日,いろいろ頂いた御指摘を踏まえまして,日本版アーツカウンシルとの連携等の面も含めまして,今後更に検討を進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】もう五,六分ありますが,何か言い残したこと,全体的に。
 加藤委員,どうぞ。

【加藤委員】1つは,今の地域版アーツカウンシルについては,文化庁に是非,応援を具体的に,もちろん助成金も大事なんですけれども,直接現地に行って応援をしてくださいねということをお願いしたところ,早速,三木さんが非常にフットワーク軽く,行っていただいたというのを先般報告を聞きまして,ありがとうございました。そういう意味で,やっぱり文化庁の方が地方に直接出向いていただけると,それはそれで非常に効果が上がるんじゃないかなと思っています。
 その上で,地域版に限らずなんですけれども,オリンピックの関連で,そもそも文化プログラムを進めるというのは,組織委員会がIOCと契約をしたんだという御意見が偉い方の中にあって,それは事実そのとおりでありましょうが,しかし,これを契機にまさに文化立国を進めようという国の姿勢というものが,必ずしも内閣全体の統一的見解にさえもなっていないのではないかということを大変憂いています。
 それは,この間,たまたまある席で審議官と同席させていただく機会があって,審議官の御説明が実にすばらしかったんですけれども,非常に的確に,いい説明をしておられるんですが,やっぱり国を挙げて,本当にこれを契機に文化立国をやるんだという気概を国側が示さなければ,一体誰が取り組むのかということは言えないので,ある大臣に至っては,スポーツの大会に対する,文化は便乗しているとまでおっしゃった。
 今現状,そういう認識があることはやむを得ないけれども,それを1つ1つ払拭して,そうではないんだ,そもそも文化というものはいかに重要か,国策として非常に大事なんだということを,文化立国というものについての説得を是非,皆さんでお進めになられるべきだと思います。
 一方,もちろん我々民間側は民間で,組織委員会が何であれ,国がどういう御方針であれ,関わらず勝手に進めますから,どんどんやっていきますが,それもオフィシャルスポンサーだけに限らず,幅広く民間で今,文化を進めようとしていて,我々はもう既にエンブレムもロゴマークも作りました。それは,「創造列島」というキャッチコピー,エンブレムを制作して,その下で,民間側はオリンピックを契機とした文化プログラムを更に推進していこうということをやっています。
 それに対して,やはり国も相当の気概をこの際,見せていただいて,なおかつ,国全体の中の説得ということも是非,進めていっていただきたいなと思います。

【熊倉部会長】ありがとうございます。
 片山委員,今日はまだ御意見を頂いておりませんが。

【片山部会長代理】重要な点を皆様方から多く出されていますので,私から新しいことを言うつもりはないんですけれども,これから取り組まなければいけないのは,政策の体系化ということだと思うんですね。国のアーツカウンシルもありますし,地方のものもあります。それぞれどういう関係にあるべきかということを考える必要があると思うんですね。
 それから,アーツカウンシルが今,扱っていない補助金のプログラム,例えば子供の体験の部分だとか,自治体向けの補助金とか,劇場・音楽堂の補助金といったものもあります。それで,例えば自治体向けの補助金は自治体向けの補助金を通じて,実はそれが自治体を経由して,地域の芸術団体や文化施設に流れているようなものもあるわけですね。ここで地域版アーツカウンシルができるというときに,全体としてどういうスキームでそれを支援していくのか,盛り立てていくのかという,全体の体系を制度設計していく必要があると思います。
 それから,抜け落ちているものとしては,国立劇場,新国立劇場といった国が直営でやっている機関との役割分担とか,その関係というのもやっていく必要があると思うんですね。第3次基本方針あたりから,個々の事業,取組に対して問題を指摘して,それを改善するということは大分進んできたと思うんですけれども,それぞれ相互の関係というところがまだ手が付いていなかったところなので,次の段階で,それをまずやらなければいけないと思います。
 特に今回,5自治体というのは非常に少ないですけれども,地域版アーツカウンシルがスタートしますので,スタートしたら,それぞれの地域版アーツカウンシルを進めようとしている自治体さんは,国とどういう関係を築いていくのか,どういう役割分担をしていくのかということで,まずは非常に戸惑うところがあると思いますので,そこでうまくそういった人たちを取り込んで,だから多分,ローカルアーツカウンシルのミーティングみたいなものをきちんと組織していくのがいいと思うんですね。
 アメリカなんかも,ステーツアーツカウンシルをNEAが1960年代に設立を促して,その後,ネットワーク化されているんですね。ナショナルアセンブリーというような組織がローカルアーツカウンシルの州レベルの連合体を作って,そことして意見をまとめたりということもしていますので,日本も,地域版アーツカウンシルができたら,そこを連絡する会議などを作って,そこが常に国と対話をしながら,全体の政策の在り方を議論するような場を作っていくのが重要かなと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】4月以降,次期のことを言うと鬼が笑うかもしれませんが,5事業なら,是非ここへいらしていただいて,どういう取組が具体的にされ,コミッショナーなりアソシエーツがどういう人なのか,しっかり教えていただいて,参考にさせていただくのがいいかなと思いました。
 それから,私から1つ提案をさせていただきたいんですが,先般,2月に太下委員と一緒に,全国公立文化施設協会さんのオリンピック・パラリンピックに向けて云々というシンポジウムに呼んでいただいたときに,聴覚障害のあられる方が会場にいらっしゃって,パラリンピックもあるけれども,我々はもっと文化施設に行けるようになるんですかと言われて,がーんと思いまして,障害者の方々が表現をするということに関して,アンリミテッドに触発されて,それに関しては東京都も既に取り組んでいらっしゃいますが,もうちょっと通常の,障害のある方々のバリアフリーはどこもやっていると思うんですけれども,多分,行けていない。
 そこを促すのは,やっぱり人が必要なんじゃないかなという気がしまして,いろいろな障害があられる方々に,どういうサービスを提供したら楽しんでいただけるのか,あるいは,そういうサービスを一緒に開発したり,営業して回ったり,行きましょうよとお誘いするような仕組みもできて,2020以降は,多少何らかの障害があっても,文化施設に行くのは当たり前という国にならないといけないんだなと,そこのところを全然考えていなかったので,盲点だったかなと思います。
 ちょっとレビュー,加藤さん,大変な思いをされて,御苦労様でございました。ネットで大声援が飛んでいたそうですけれども,大変話題になっておりましたが,がっかりしている場合じゃないので,どうも今日の皆さんのお話を聞いて,もうちょっとこれをがしっと前へ進めないと。20万件は簡単でしょう。20万件ぐらい,日本全国で行われている文化事業はもちろん20万件では済まないと思うので。
 でも,既存の既にあるものが,何も変わらずにロゴマークだけ付けてもらうというのだったら,やらない方がいい。お金の無駄遣いだと思うので,何とか古いシステムの,もちろん古いものでもいいものは生かしつつですけれども,横串を刺して,新しい文化政策が,地域の中でもあちこちで様々な形で起こってくるような契機にならないといけないんですが,どうやって強くメッセージを出していくかということが次の課題かなと思います。
 そろそろお時間ですが,本日も活発な御議論をありがとうございました。今日取り上げました4つのポイントは,昨年からもこの部会で議論をしてきたところです。本日の議論を踏まえながら,今後の政策の具体化を進めていただければと思います。
 最後に,青柳長官から一言,お願いいたします。

【青柳長官】どうも,いろいろありがとうございました。
 私,今いろいろな御意見を聞いていて,これからやっていかなくてはいけないのは,文化政策の3次元化ではないかと思っております。この3次元,1つは,個人から組織団体,それから地域社会,都道府県,市町村というような軸と,それから,ハイカルチャーからポップカルチャーまで,あるいは伝統芸能から民衆芸能までというような軸,それから,縦軸に時間というものが来て,その中で,それぞれの分野や組織がどう多様に絡まっていくのか。
 文化というものはそもそもいろいろな規定がございますけれども,1つの考え方は,多様な係累を持っている社会活動というのが文化の定義ではないか。どれだけ多くの係累を持っているかという社会。経済などに比べて,文化活動というのははるかに大きな係累を持っております。その係累を持っている文化活動,社会活動が増えることによって,どこを断ち切ってもどこかが結び付いているので,結局,戦争というものが無意味になる。それから,世界平和につながる。だからこそ文化というものは大切だということが言われるのではないか。そういうことを考えながら,文化政策の縦軸と,時間の縦軸と,単位の縦軸と,それから,文化の様々な分野の横軸というようなものを絡めたものが3次元的になっていく。
 この中で,恐らく今,アーツカウンシルに関しましては,早く日本語にして文化芸術評議会とか何とか,是非,ここでいい名前を考えていただきたいんですが,今現在,地方自治体でアーツカウンシルに相当するようなものが,まだ七,八件しか,沖縄とか東京とかいろいろ,なっていなくて,まだ本当に草の根というか,地面から湧き出てくるような感じになっていない。
 ですから,その一方で,エンカレッジするための全国規模のものが必要なのではないかと考えていますが,様々な行政が地方分権化に行く中で,大きな流れでアーツカウンシルというものも,地方の細やかなそれぞれの事情に即した文化政策というものが非常に重要になっていくのではないか。しかし,その一方で,国際的なものとか,あるいは,どうクオリティーを保つのかということで,全国版のアーツカウンシルも必要なのではないか。
 先ほどから,オリンピック2020の文化プログラムですが,これはレヴィ=ストロースの言葉をかりるわけではないんですが,世界が熱い社会,冷たい社会というふうに彼は分類していて,日本などは冷たい社会に入る。そうすると,冷たい社会の中でのストレスを解消するのは何かといったら,彼なんかは,お祭りであると言っています。つまり,この間も珠洲市に行ったんですけれども,市長さんが調べてみたら,珠洲市という1万2,000人の小さな能登半島の先の市でも,約500ぐらいのお祭りがあるというんですね。これはお祭りだけです。それ以外にもいろいろな文化,いわゆる,湯浅さんがおっしゃったアクティビティーは,まだほかにもあるんですね。
 そういうものをきちっとリストアップして,2020年のために,日本にどれだけの文化的なダイバーシティーがあるのかという,ある程度のパースペクティブを持つには,これらそれぞれがちょっと模様替えをしたり,ちょっと2020年のために向けて活動をしたりすれば,恐らく20万件というものが単なる目標ではなくて,かなりキャッチアップできる数になるのではないか。そしてそのことによって,我々は2020年以降,非常に厳しい経済状況,社会状況になるこの日本で,勇気を持って,我々にはこれだけの文化的な基盤があるんだということで将来に向かっていけるし,次の世代にも勇気を与えられるのではないか,それがレジェンドだと私は思っています。
 そういう形で,文化庁としては文化政策を繰り広げていきたいし,そのために,こちらにいらっしゃる皆様方に様々なお知恵やアイデア,あるいは情報を頂いて,御指導をよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

【熊倉部会長】ありがとうございました。熱いメッセージ,ちょっと心強くなりました。
 それでは最後に,今後の予定について,事務局からお願いいたします。

【三木企画調整官】部会長,ありがとうございました。
 私の方から,今後の予定等を御案内させていただきます。
 資料3が,地方の文化芸術政策に係るシンポジウムへの文化政策部会委員の参加というものでございます。今年度,委員の先生方にお願いをしまして,ここに書いてあるようなシンポジウム等に御協力をいただきました。今年度まだ幾つかありますし,来年度も,第4次方針の周知でありますとか,文化プログラムにつきまして様々なシンポジウム等を予定しておりますので,先生方,非常にお忙しいところ恐縮ですけれども,個別にまた御協力をお願いさせていただくことになると思いますので,是非,引き続き御協力のほど,よろしくお願いしたいと思います。
 それから,資料4が,次回の文化政策部会でございます。3月14日,総会との合同会議を予定しております。総会でやる議題も入っておりますけれども,議題で予定しております(2)について,一言だけ御説明しますと,最近の文化政策ということで,2つ目の中黒でございますけれども,今,政府におきまして,一億総活躍社会の実現に向けて取り組んでおります。その中での文化庁の取組について御紹介をさせていただいて,先生方から,また御指導いただきたいと思っております。
 ここに,(文化GDPの拡大等)と書いてございますけれども,第4次基本方針におきまして,文化芸術資源を活用するという副題がございます。その延長上でございますけれども,文化GDPの拡大というのは,もう少し従来から使っている言葉で申し上げますと,文化芸術による経済の活性化ということを目指しておりまして,それ以外にも,より多くの人々に文化芸術分野で活躍いただきたいということも目指しておりますので,それにつきまして御議論を頂きたいと思っております。
 3月14日,夕方に予定しておりまして,終わった後,庁内におきまして懇親会を予定しておりますので,この後も2時間程度,御予定を空けていただければと思っておりますので,後ほど別途,御案内をさせていただきたいと思います。
 それから,会議の途中で,先ほど説明がありました,日本版アーツカウンシルの試行についてのパンフレットを配らせていただきました。それから,追加的で恐縮ですけれども,紺野委員からお預かりしておりましたものを今,配らせていただきました。日本文学と伝統芸能との新しい取組の紹介ということで頂いておりますので,こちらも併せてお持ち帰りいただければと思っております。
 以上でございます。

【熊倉部会長】ありがとうございました。
 次回は3月で,大林委員は帰られてしまいましたが,1年半以上前に大林委員から,かた苦しい会議ばかりやっていないで,みんなで懇談会などどうかというのが,ようやく実現する運びとなりました。こちらも是非,奮って御参加いただければと思います。
 それでは,大体予定の時刻となりましたので,本日はこれで閉会とさせていただきたいと思います。次回以降も引き続き,活発な御議論をよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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