第10期文化審議会第1回総会(第50回)議事録

1  出席者
(委員)
足立委員,いで委員,佐々木委員,里中委員,田村委員,堤委員,東倉委員,土肥委員,中山委員,西原委員,野村委員,林委員,林田委員,宮田委員,森西委員,山内委員,山脇委員
(事務局)
川端大臣,中川副大臣,後藤政務官,坂田事務次官,玉井文化庁長官,清水文部科学審議官,合田文化庁次長,戸渡文化庁審議官,清木文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長
2  議事内容
○大木政策課長
定刻となりましたので,ただいまより文化審議会の第50回総会を開催いたしたいと存じます。
本日はご多忙な中ご出席を賜りまして,まことにありがとうございます。
私は,文化庁政策課長の大木でございます。本日は,任期が変わって第1回の総会ということで,後ほど会長をご選出いただくことになります。それまでの間,私が議事を便宜的に進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
本日は大臣が出席させていただく予定となってございますが,公務のため若干おくれております。大臣到着後,本審議会に対して大臣のほうから諮問をいたしました後,自由討議を行う予定ですので,よろしくお願いいたします。
まず初めに,資料1をごらんいただきたいと存じますが,第10期のここにご出席の文化審議会の委員の方々をご紹介させていただきます。名簿に沿ってお名前をお呼びいたします。

《委員紹介》

続きまして,本日の会議に出席をしております文部科学省の関係者をご紹介させていただきます。

《文部科学省幹部紹介》

それでは,早速でございますが,第10期の文化審議会の会長及び会長代理をお選びいただきたいと存じます。
人事につきましては,非公開とさせていただいております。恐縮ですが,傍聴者の方々,一たんご退席をお願いいたします。

(傍聴者 退出)

※ 会長に西原委員,会長代理に宮田委員が選ばれた。

(傍聴者 入室)

○西原会長
本日は,まず本審議会の概要について,事務局から簡単にご説明いただきます。それから,審議会の運営に必要な事項としまして,審議会運営規則,議事の公開について決定をしたいと存じます。
では,事務局,ご説明よろしくお願いいたします。
○大木政策課長
《資料2〜資料6により文化審議会の概要説明》
○西原会長
ありがとうございました。
ただいまのご説明につきまして,ご質問ございますでしょうか。
それでは,審議会運営規則,議事の公開について,配付資料の案のとおり審議会の決定といたしたいと思いますが,いかがでございましょうか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)

○西原会長
ご異議がないようでございますので,これをもって決定とさせていただきます。
大臣がお着きでいらっしゃいますので,これより川端文部科学大臣より諮問をいただきたいと存じます。
○川端文部科学大臣
それでは,諮問をさせていただく前に一言だけ,ごあいさつをさせていただきます。
文部科学大臣の川端達夫でございます。きょうは,大変お忙しい中を皆様お集まりいただき,また各委員それぞれの識見とご経験を生かして文化審議会委員にご就任をお受けいただきまして,大変ありがたく思います。ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
川端というのはどんなやつだろうと思われる方が多いと思いますので,言葉のとおり関西人でありまして,滋賀県に生まれ育ちました。私が生まれたまちは近江八幡市というまちでありまして,豊臣秀吉の甥っ子で養子になった秀次という人の城下町で,安土の隣なんですが,北海道海産物の近江商人発祥の地として栄えました。そこで私も古い商売人の家に生まれました。そういう自然と長い町衆の文化等を含めまして,平成18年に重要伝統的景観に全国第一号で採択されたまちであります。私はそのようなまちに育ちました。
私自身は,北海道の海産物というのは京都の鰊そばとか,お正月はいもぼうという棒鱈を必ず食べますけれども,これは北前船で北海道から京都へ運ばれて,それがそこで育っていったということで,まさに人の動き,人の生活は文化そのものを育んでいるということを改めて感じております。そういう中で,文化芸術についてもまさにその部分は同じことであろうと思います。過去から未来へ受け継がれて,人々に喜び,感動を与えると同時に,経済,国際交流を含めて大きな役割を担っていただいております。人々の幸せ,繁栄にとってなくてはならない極めて重要なものであると考えております。
我が国は戦後,経済成長により大きく発展いたしまして,大変豊かな国になったと言われております。また,同時に質の高い文化芸術が車の両輪としてあってこそ,世界の中で誇るべき国になれるというふうに思います。真の成長する国として新たな国家戦略,言い換えれば「新たな文化芸術立国」の時代を迎えたということで,先般の施政方針演説でも鳩山総理から文化に重きを置いた理念高い演説をしていただいたところでございます。子どもから大人に至るまですべての世代で文化芸術に触れ,そして,豊かな人間性を育むということに大変大きな意味があると同時に,それを支える活動していただいている人々が立派に活動できるように環境を整備することも大変重要だと思っております。
就任以来「ハード」の整備から「ソフト」と「ヒューマン」への支援に重点を置いて,文化芸術の振興に私も努めてまいりました。このたび,第10期の文化審議会の発足に当たりまして,第3次の文化芸術の振興に関する基本的な方針の策定も念頭に置きまして,改めて「文化芸術の振興のための基本的な施策の在り方について」,包括的に諮問を行うものであります。具体的な諮問の考え方は,諮問理由のとおりでありますけれども,一つは国の政策としての文化芸術振興の意義について,2番目に文化芸術振興のための基本的視点について,3番目に文化芸術振興のための重点施策についての3点にわたり,包括的にご審議をいただきたいと考えております。
なお,ご審議の成果については,当面は平成23年度概算要求にある程度の反映ができるよう,夏前を目途に中間的にご報告をいただきたいと思います。また,最終的な取りまとめについては,さらにその1年後を目途にお願いしたいと思っています。
終りに当たりまして,会長はじめ委員の皆様にはこのようなご趣旨をご理解いただき,精力的なご審議をいただきますように,そして,我が国の文化芸術の発展のために大きな方向をお示しいただくことをお願い申し上げて,冒頭のごあいさつにかえさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

(川端文部科学大臣から西原会長へ諮問文を渡す)

○西原会長
どうもありがとうございました。
大臣はご公務ご多忙でいらっしゃいますので,これでご退席されます。
どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
それでは,ただいま大臣よりいただきました諮問について,配付資料7により,事務局から諮問理由を朗読していただきたいと思います。事務局,よろしくお願いいたします。
○大木政策課長
それでは,資料7に,ただいま大臣から会長に手渡していただきました諮問文と,その理由が記されておりますので,私のほうから朗読させていただきたいと思います。

次の事項について,別紙理由を添えて諮問します。
文化芸術の振興のための基本的施策の在り方について−「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)」の策定に向けて−

平成22年2月10日  文部科学大臣 川端達夫

理由といたしまして,
文化芸術は,過去から未来へと受け継がれ,人々に喜びや感動を与えると同時に,経済や国際協力をはじめ我が国のすべての営みの基盤として極めて重要であると認識しております。
我が国は,戦後,大きく経済発展を遂げ,文字どおり成熟した経済の時代を迎えましたが,それと同時に,質の高い文化芸術の振興が心豊かな国民生活,活力ある社会を構築し,真の経済発展をもたらすという新たな国家戦略,言い換えれば新たな「文化芸術立国」の時代を迎えつつあると言えます。このような時期にあっては,豊かな文化資源の蓄積を促し,そこから新たな文化を創造し,優れた人材を育て,内外に積極的に発信していく視点が極めて重要であると考えます。
また,子どものうちから,文化芸術にじかに触れ,豊かな心や感性,創造性やコミュニケーション能力を培うことは,人格形成に大きな影響を与えるものであり,新たな「文化芸術立国」の時代においては,次代の文化芸術を担う人材の育成の観点からも,ますますその重要性が高まっております。
私は就任以来,「ハード」の整備から「ソフト」と「ヒューマン」への支援に重点を置き,文化芸術の振興に努めてまいりましたが,このたび第10期文化審議会の発足に当たり,第3次の「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の策定をも念頭に,改めて文化芸術の振興のための基本的な施策の在り方について包括的に諮問を行うものであります。
具体的には,以下の事項を中心にご審議をお願いいたします。
(1)国の政策としての文化芸術振興の意義について
まず第一に,国の政策としての文化芸術振興の意義についてであります。
文化芸術振興の重要性については論をまちませんが,改めて国が文化芸術振興に果たす役割についてお示しいただきたいと思います。
国においては文化庁はじめ関係府省によりかねて各般の文化芸術振興施策が講じられ,平成13年に成立した文化芸術振興基本法においても,文化芸術振興に関する施策を総合的に策定・実施することが国の責務として明確に位置付けられておりますが,最近の「国から地方へ」「官から民へ」の流れの中で,文化芸術振興に果たす国の役割が改めて問われております。
このような状況を踏まえ,文化芸術振興は国民にとってどのような意義を持つのか,国が公共政策として文化芸術を振興することはなぜ必要なのか,社会を挙げて文化芸術振興を目指す上でどのような取組が必要なのか等につき,しっかりとしたご議論をお願いいたします。
(2)文化芸術振興のための基本的視点について
第二に,文化芸術振興のための基本的視点についてであります。
まず,文化芸術振興施策の現状について,現行の第2次基本方針の実施状況を中心に検証・評価し,それを踏まえ,文化芸術振興のための基本的な方策を明らかにしていただきたいと思います。
また,「ソフト」と「ヒューマン」に軸足を置いた文化芸術振興について,頂点の伸長,裾野の拡大,経済活動・地域活動の活性化,国際交流の推進等の観点から,今後の基本的な方向性をお示しいただきたいと思います。
さらに,文化芸術振興を担う各主体の役割に関し,国,地方,民間,個人等の役割は何か,国の推進体制をどのようにするか等についてもご検討をお願いいたします。
(3)文化芸術振興のための重点施策について
第三に,上記の文化芸術振興の意義及び基本的視点を踏まえ,文化芸術振興のための重点施策について具体的にお示しいただきたいと思います。
まず,文化芸術の分野ごとの振興策についてであります。
舞台芸術,美術,映画,メディア芸術,生活文化,文化財など分野の区分と政策目標をどのように設定するか,それぞれの効果的・効率的な振興方策をどのように構築するか等につき,明らかにしていただきたいと思います。
次に,文化を支える人材の育成についてであります。
芸術家とそれをサポートする人材をどのように育成するか,無形文化財の伝承者や文化財保存技術の後継者をどのように育成するか,将来の文化の担い手たる子どもたちへのアプローチをどのように図るか等の観点から,ご検討をお願いいたします。
さらに,文化発信と国際交流の推進についてであります。
文化発信をどのように進めるか,特に東アジアを中心に世界との文化交流の推進方策について,ご検討をお願いいたします。その際,狭い意味での文化のみならず,日本人の生活文化全般を,観光振興等にも留意しながら積極的にアピールしていく視点も重要であると考えます。
最後に,文化芸術を振興するための新たな手法の導入についてであります。
具体的には,寄附税制の拡充を含む寄附文化の醸成についてどのように考えるか,マッチング・グラントなど民間資金導入の新たな仕組みをいかにして構築するか,国,地方,民間,企業等による共通基盤と協働の場をどのように整備するか。劇場,音楽堂など文化芸術拠点の充実をいかに図るかをはじめ,文化芸術振興のための効果的手法について,広くご検討いただきたいと思います。
以上の三点が,中心的にご審議をお願いしたい事項でありますが,このほかにも文化芸術全般にわたり必要な事項についてご検討をお願いいたします。

以上でございます。

○西原会長
ありがとうございました。
ただいま大臣よりいただきました諮問事項につきましては,配付資料8のとおりに文化政策部会を設置して,同部会において審議いただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。ご賛同いただけますでしょうか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)

○西原会長
ありがとうございます。
それでは,文化政策部会の設置については,配付資料のとおり決定いたします。
続きまして,文化政策部会に所属する委員につきましては,先ほどご決定いただきました資料3に文化審議会令第6条第2項に基づき,会長が指名するということになっております。
つきましては,資料1の委員のうちから7名の方を指名したいと存じます。佐々木委員,里中委員,田村委員,堤委員,宮田委員,山内委員,山脇委員の7名の方でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
なお,佐々木委員は文化財分科会,それから,里中委員は著作権分科会と兼務ということにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
では,続きまして,平成22年度の文化庁予算(案)及び文化芸術関連データが配付されておりますので,それにつきまして,事務局より説明をお願いいたします。
○大木政策課長 
《資料9〜資料10により説明》
○西原会長
ありがとうございました。
では,残りの時間を自由討議とさせていただきます。本日は,大臣からの諮問がありましたので,その内容について主としてご意見を頂戴できればと思います。ただいまのご説明も含めて,それに対する質問でも結構でございますけれども,委員の皆様から,お一人,残る時間を計算しますと,2分ぐらいしか差し上げられないのですけれども,その程度で,基本方針の在り方に関するご意見,それから,文化芸術の振興全般に対するお考えなど,忌憚のないご意見をお伺いできればと存じます。
途中ご退席のご予定のメモもここにありますものですから,勝手でございますが,五十音順を逆にさせていただきまして,山脇委員のほうから,時間少のうございますが,どうぞよろしくお願いいたします。
○山脇委員
大臣のほうから文化芸術立国を目指してとか,既に文化芸術立国として認識していらっしゃるようなイメージを持ちましたが,私はまだまだ日本は文化国家と言えないのではないかというふうに常々思っております。いかに経済大国であろうとも,文化国家でなければ世界から尊敬される国にはならない。フランスが経済的によくなくても,やはりフランスだというのは,先ほどの数字にもあらわれていたように,文化国家だからだと思うんですね。
ですから,そこのところをきちんと,どういう文化国家を目指すのかというグランドデザインを国としてきちんと描かなければ,日本は経済はちょぼちょぼ,でも,文化も全然だめというような,世界から尊敬されない国になるというふうに思っております。危機感も持っております。
○西原会長
ありがとうございました。
それでは,山内委員,お願いいたします。
○山内委員
課長からご報告があった文化芸術関連データ集の中の「芸術文化」のところで,オペラ,劇団公演,オーケストラとあるんですが,歌舞伎や文楽,あるいは邦楽といった,日本の伝統芸術文化の公演状況についてのデータはないように見えたんですけれども,それは数字としてないのでしょうか。
○大木政策課長
確認いたしまして,データがあれば,またご用意いたします
○山内委員
さようですか,はい,わかりました。以上です。
○西原会長
ありがとうございました。
では,森西委員。
○森西委員
大臣からも「国から地方へ,官から民へ」というお話がございました。大阪では3年前に上方落語協会の定席が戦後初めて生まれました。これも企業や市民の寄附でできたということで,選挙中に鳩山総理が,そのときは総理ではありませんが,鳩山議員が来られました。上方落語協会の桂三枝会長の落語のファンでいらっしゃるそうです。繁昌亭という名前なんですが,繁昌亭の場合はそんなふうに企業の寄附,市民の寄附でできました。けれども,伝統文化,伝統芸能を中心に地方や民だけではできないということはいろいろございます。そういうシチュエーションのときには国が一定の役割を果たしていっていただきたいというふうに考えております。
○西原会長
ありがとうございました。
では,林田委員。
○林田委員
手短にと思ってやります。私は今,国立新美術館におりまして,日本博物館協会のメンバーでございます。前にもちょっとここの場で申しましたけれども,今,日本の博物館は冬の時代というようなことで,国立,公立,私立とも非常に厳しい状況の中にございます。諸外国では,特に西洋,アジアも,この間韓国でアジアの美術館長会議がございましたけれども,韓国の現代美術館,それから,シンガポールも新しい美術館をつくるというようなことで,文化施設で国の勢いを示すような感じは非常に盛んになってきているように思いますけれども,日本も頑張っていかなければならないということを改めて感じたことでございました。
博物館関係者は,先般,博物館法が改正になっていろんなことで発展を期待したのでございますけれども,現場からしますと,余り期待した成果が出なかったというような感じがございます。特に従来のやり方ですと,法律をつくって,登録制度をつくって,それで認定させるといろんな補助金を差し上げて振興するという仕掛けでやっていたのでございますけれども,その補助金が今はもうほとんどなくなってしまいましたので,逆に登録制度自体が地方を縛るものだから,そういうことはやめにしたほうがいいのでないかというような,地方制度の改革などではそんな話が出て,現場としては困ることがいろいろ出てくるということでございます。私立のほうも,税制などでそこのところは法人制度の改革に伴ってどうなるだろうかということを心配しておりますので,今回いろんな形でこういう議論が行われる際には,この点をご配慮いただければと思っているのが一つでございます。
それから,もう一つは,我々もいろんな形で,特にこの間の仕分けの議論などにもございましたけれども,文化が大事だということだけを言っていたのではあれなので,もう少し国民の皆さんに応援を得られるような運営をしていこうというので,子ども向けの活動をやったり,来館者の視点に立った運営の改善というようなことをやっておりますけれども,もう一つ,最近では特に欧米ではこういう施設が経済的にこういう波及効果があるということをやっているわけですね。日本でも,例えば金沢の21世紀美術館は投資が200億円だったけれども,1年間で300億円以上の波及効果があったというようなことをこの間発表なさっていらっしゃいました。こういうことが大分注目を集めてくるようになりましたので,我々もやっていかなければならないと思っていますけれども,文化庁のほうでも少しそういう議論を進めていただけるとありがたいなと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
○西原会長
ありがとうございました。
では,林委員。
○林委員
メディア芸術といったような新しい芸術や文化のジャンルが確立されて,育って,世界から注目されるというのは大変結構なことなのですが,それとの関係において,特に若年層の文化的な関心が伝統芸術から離れていくような心配を感じております。文化芸術の振興というのは需要層を育てるということが基本だろうと,特に感性の非常に敏感な豊かな若年層において,そういう機会をつくるということが大事だというふうに考えておりますので,私自身は以前から学校教育の中に積極的にそういうものを取り入れていくと。
具体的に申しますと,例えば,日本文化というような教科科目をある時期に,例えば1年なら1年だけでもいいからつくって,そういうことを通じて,子どもたちに伝統文化に目を向けさせ,新しいポップカルチャーとのバランスをとりながら,幅の広い文化的需要のできる人材を育てていく,それが舞台芸術をはじめとしてそういう人材を育成していく基盤になるのではないかと,そういうふうに考えております。
○西原会長
野村委員,お願いいたします。
○野村委員
第1次の基本方針のときには,総会でずっと議論していましたので,参加しておりましたけれども,今は部会でということで。私自身は著作権分科会に属しておりまして,著作権分科会はどちらかというと文化芸術の振興という点からすれば基盤みたいなものですので,それが振興のための阻害要因にならないようにいろいろ検討していきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
○西原会長
ありがとうございました。
では,中山委員。
○中山委員
去年も一昨年も同じことを申し上げたんですけれども,予算について一言申し上げたいと思います。この財政厳しき折り0.5%伸びたということは,事務方としては大変な努力をされたと思いますけれども,大局的に見ると日本の文化予算というのは余りにも低すぎる。先ほどの一覧表を見ましても,諸外国と比べて非常に低いわけですね。もっともこれは国によって違って,アメリカは恐らく連邦の予算でステイトは入ってないとか,ドイツはラントが多分入っていないとかありますし,日本も多分県は入ってないのでしょうけれども,それにしても余りにも予算が低すぎる。
鳩山内閣の看板は「コンクリートから人」というスローガンを掲げておりますが,「人」というのは失業対策とかあるいは貧困層対策とか,そういう救済的なものももちろん必要ですけれども,人をつくっていくのは文化であって,文化の振興,文化で国を建てるという,あるいは,文化で産業を起こすという文化産業,そういう観点が必要なのではないかと思っております。そのためにはこの予算とこの寄附の額ではとてもではないけれども,やっていける金額ではないと毎年同じことを申し上げて,記録にとどめておいてほしいために申し上げおりますけれども,よろしくお願いいたします。
○西原会長
ありがとうございました。
では,土肥委員。
○土肥委員
土肥でございます。本日初めてこの審議会の場に座らせていただきまして,前回何も申し上げていないのは当然なんですけれども,大事なことは伝統文化の保全・継承と新規創造のバランスをうまく図りながら施策を進めていくということだと思います。 中でも,ただいま中山委員もおっしゃいましたけれども,人の問題ですね。人材の育成をいかに進めるかということだろうと思います。私は著作権制度を研究しておりますけれども,著作権というのは現在の創作者,もう既に功なり名を成した方の利益を,権利という形で保護をしていくわけでございますし,亡くなっても死後50年と,そういう仕組みになっておりますが,この著作権者の利益というものが現実にこれから育っていく方の利益にはなかなかつながらないわけであります。
何かうまいサイクルを,前にいろんな成果を出されて,権利として保護され,財産的な保護ももちろん受けるわけですけれども,その方の利益がうまく次の世代につながっていく,人材育成につながっていくようなサイクルみたいな世代間サイクルをうまく考えていくことはできないのかということでございます。例えば先ほどあった予算の問題もありましょうし,寄附の問題もございましょうけれども,それ以外の仕組みを考えていただければというふうに思っております。
それともう一点は,69ページの資料からしますと,デザイナーというのは突出して多いんです。このデザイナーの創作活動は,文化審議会の場で議論できるというところを超えていたりするわけでございまして。そういう他の分野についてもできれば協働していって,現在のデザイナーの保護制度として十分なのかと,もっとほかにできるようなところがあるのではないかということも合わせて,ほかのほうにも働きかけていくようなことをやっていただければというふうに思っております。
以上でございます。
○西原会長
ありがとうございました。
では,東倉委員。
○東倉委員
国立情報学研究所の東倉でございます。私の専門としております情報技術に関しては,世界に先駆けて日本が高いレベルにあるわけでして,文化の面と情報技術の面をますます融合させて,いろんな形で新しい文化技術というようなものもつくっていけるかなというふうに思っております。
○西原会長
ありがとうございました。
では,堤委員,お願いいたします。
○堤委員
堤でございます。特に細かいことはございませんけれども,私として3点,大きな流れとしてお考えいただきたい。
1つは,ハードからソフトへということで,いかにソフト,特にこれから世界の趨勢としてこの面がますます重要になってくるのではないか。
それから,日本におきましては東京のレベル,すべての文化が,すべてにおいてですけれども,レベルは世界でも一流ですし,すばらしい方がたくさんいらっしゃるし。日本のこれからの国力ということ,それから,文化芸術力とか,そういう言葉で出てまいりますけれども,本当に日本がそういう意味で強くなるには,東京他の都市でのいろいろな活動が盛んになることによって,日本の全体の力がつくのではないか。そういうことで予算とかそういうことも含みまして,そういう方針で進んでいっていただきたいと思います。
3点目は,これはフィロソフィーの問題ですけれども,量から質,量よりも質ということ。最近の『ニューズウィーク』では「Japan as number three”なんて出ていましたけれども,数よりも本当は内容,人材育成にしても一人ひとりがどんな人間として育っていくのか,どんな文化をつくれるのかと。そういうことで発想の転換と言いますか,量とか数字,もちろん大きいほうがいいんですけれども,本当はクオリティーがこれからの勝敗の分かれ目ではないかなと私は思っております。
以上です。
○西原会長
ありがとうございました。
田村委員,お願いいたします。
○田村委員
先ほど山脇委員から文化国家とは言えないというお話がございましたけれども,予算もふえているといって喜んではいられないような現状況です。減額されるときはほかのものと同じパーセントで減らされるのでございます。それに一番最初に減らされるのが文化予算というのが日本の現状でございます。そういう意味では文化国家とは言えない,文化振興の重要性をどれだけ周知していくかということが大切なことだと思います。
そういう意味で,先ほどの芸術家のデータ,今,堤委員がおっしゃいましたように,東京中心になっておりますので,地方にいかに文化的に豊かな地域を生み出していくかということがとても大事なことだと思っております。そういう意味で,国の支えというものが必要であると思います。
○西原会長
ありがとうございました。
里中委員。
○里中委員
先ほど来文化国家たり得るかという話も出ておりましたが,確かにおっしゃるようにグランドデザインというので,我が国の文化芸術を守るという,守りではなくて,私が思うには,フランスは文化芸術の国と言われておりますが,多分に国家戦略として輸出産業,あるいは,国のイメージアップのための政策として,積極的に国家の方針として育て上げてきたように受けとめております。
フランスの文化予算が多いというのは,それだけの経済効果が上がるような国のかかわり方を過去200年ぐらいにわたってやってきたからであって,よくよく考えますと,芸術の都パリと言いましても,よその国からかき集めてきたもので最初は立ち上げて人を呼ぶと,それによって刺激を与えることによって,若い人が集まってお互いに育て合うと。その国の後押しというのは,実は資源とか新しい技術よりも,芸術文化というのがどれだけの経済効果を生むかという一大プロジェクトに基づいてやってきたような気がしているんですね。
よその国のことですから,詳しいことは,聞きかじりも多くて,わかりませんけれども。我が国においても文化芸術を守るとか,若手をどうやって育てるとかというよりも,国が積極的に,文化芸術というのは資源のない国でも大きな経済効果を上げて,輸出産業になり得るのだという視点から,もう少し堂々と計画を立てていただきたいと思うんですね。言い方は悪いんですけれども,ほんの少し予算がふえただけで,我が国が文化芸術を大事にする国だとは,外からは見えないと思います。
今,車も大変なことになっておりますが,ものを売るというのは上限があります。どこの国でもその人口に対してこれぐらいのものが売れるだろうという上限の数字というのはあるわけですね。しかも,車にしても1台売れれば,その人はすぐ1年間のうちもう1台は買わないだろうということで,そこでメーカー同士の競争になるわけです。でも,文化芸術分野というのは売れる上限がありません。また,多くの人がダブってというと変な言い方ですけれども,そこに感動と喜びと充実感があればお金を出してくださるわけですよね。そういう視点で対外的な効果ということを考えて,もうちょっと積極的な話し合いができればいいなと願っております。勝手なことを申し上げましたが。
○西原会長
ありがとうございました。
佐々木委員,お願いいたします。
○佐々木委員
私自身,特に伝統文化にかかわる仕事をしておりますので,その立場からお話を申し上げますと,私がふだん一番強く感じますのは,やっぱり伝統文化というものに対しての一般の国民の支持がないとなかなかやっていきにくいと。ですから,一般の国民がどうすればそのほうに目を向けてくれるだろうかとか,あるいは,認識してくれるだろうかと。つまり,とにかく目を向け認識してくれるということが非常に重要であるわけなんです。
目を向け認識してくれるというためには,先ほど林委員がおっしゃいましたけれども,何といっても教育の問題が一番だろうと思うんです。時間はかかりますけれども,教育の中で,先ほどのデータを拝見しておりますと,体験学習であるとか,そういうことはありますけれども,むしろ歴史,つまり,芸術史あるいは文化史というきちんとした,いわゆる学術的立場からそういうものを教育のカリキュラムの中に組み込んできちんと教育していくということが,結局は,時間はかかるけれども,早道ではないかなというふうに思っております。
○西原会長
ありがとうございました。
足立委員,お願いいたします。
○足立委員
今まで大所高所からのお話を伺って,私自身も大変参考になったわけです。きょうおいでになっている委員の中で企業で出ているのは私だけかなと,こんな感じがいたします,日本経済新聞社さんもいますけれども。そういう立場からちょっとお話を申し上げることが必要なのかと思っています。
その前に,日本における文化とは何なのか,無形文化財とか有形文化とかいろんなことがありますけれども,そういう中にあって,伝統文化等々のことがありますけれども,これからマーケットが変わっていく,時代が変わっていくことによって,文化が変わってくる。いってみると,メディアコンテンツとかいろいろなことがありますけれども,こういうものに対する取組も必要であろうかなと思います。
それとともに,先ほどから子どもさんの教育というお話がたくさん出ておりまして。私の企業のことを申し上げてあれなのでございますけれども,ほぼ10年前から500坪ぐらいの印刷博物館,それから,408席なんですけれども,小さい音楽ホールを企業としてメセナ活動の一端,もしくは文化活動の一端としてそんなものをやっているわけです。印刷ということで,私も国語分科会の中に所属しているんですけれども,活字の文化をどう残すべきなのかということで,そんなものをやっているんですけれども,大変ありがたいことに9年間で30万人ぐらいの方々に毎日お出でいただいて,500坪ぐらいのところですけれども,お出でになると平均して2時間半ぐらい興味深く活字を見ている。
何を言いたいかといいますと,そういうものを企業として維持管理していくことは大変貴重なことであり,重要なメセナ活動だろうと思いますけれども,日本の企業の中において,私の所属している印刷産業以外にもいろいろの業態の産業形態があるわけでございまして,それぞれの産業がそれぞれのメセナ活動的にそういうものを,文化というものの目線であらゆる活動ができるような助成なり支援なりをしていただけると,もっとメセナ活動なり社会文化貢献活動が広まり,子どもさんの教育にもなってくるのではなかろうかというふうに思っています。
私の印刷博物館のことだけでいいますと,ありがたいことに北海道から九州まで,修学旅行の一環として印刷博物館を見に来るということになっておりますし,国立博物館等々と一緒になりまして,バーチャルシアターを持っておりますと,世界の文化遺産を見てきた後でバーチャルでもう一度改めて世界遺産を見るというようなこと,そういう活動もしております。そういう意味でも,世界遺産等々のことを含めて,もちろん日本の中における世界遺産等々を広く社会に広めていくためにはどうすればいいのかということを,現物だけでなくて,例えばバーチャルでどういうふうに見せることができるか等々も含めて,新しい時代の要請に合わせた手法で見せていくことが必要だろうと思っていますので,よろしくそういうこともお願い申し上げたいと思います。
ありがとうございます。
○西原会長
ありがとうございました。
では,最後に宮田委員。
○宮田会長代理
先生方から大変いいお話をいっぱいいただいて,そうだなということは感じておりますが,特にこのデータ集,自画自賛していたけれども,なかなかいいね。だけど全くだめなのが2ページ,皆さんごらんになってください。ここに大きな意味があると思うんです。予算のことで大変だと思いますが,私も大学の頭をしているものですから,運営費で苦しんでおりますので,よくわかります。
財布の量というのは決まっております。そうすると,ここでできることは民間からの寄附,この部分に対して大きなメスを入れる必要が絶対あると思うんですね。国大協でも大学の中で随分議論した記憶があります。ほかのものは結構いいんだけれども,このグラフだけ一番肝心なのに余りよくない。ここをぜひ。私も仲間に入れてください。そして,いいグラフにしましょう。これをもっと訴えましょう。それによって,別に金ありきではなくて,心ありき,人材ありきの上に,それを補佐するための資産,新しい導入だと私は思っておりますので,この辺をちょっと入れたいなと思っています。
○西原会長
文化庁のためにちょっと訂正というか補足させていただきたいんですが,このグラフが悪いのではなく,グラフにあらわれている数字の在り方が日本として情けないというご意見でございますよね。
○宮田会長代理
もちろんそのとおりです。同時に,国家としてこういう仕組みそのものも,寄附税制に対しても考えなければいけないと,それによって大きなバックアップになる資金提供というのがあるのではないかと,かように思っております。
○西原会長
ありがとうございました。
薬が効きすぎ,ご協力をいただいて,かなり余裕をもってこの審議会のご意見の場を設けさせていただくことができました。どうもありがとうございました。
今後,部会,それから分科会の中で,今おっしゃられたことを含めてそれぞれご審議がなされて,特に文化政策部会につきましては,夏場に中間報告を要求されているということでございますので,お忙しくなると存じますけれども,今期の活動につきまして,委員の方々どうぞよろしくお願い申し上げます。
時間近くなりましたので,本日の討議はこれにて終了したいと存じますが,きょうは中川副大臣が冒頭からずっとご出席でいらっしゃいますので,最後にごあいさつを賜ればと存じます。よろしくお願いいたします。
○中川副大臣
ご紹介いただきました,この文化芸術を担当しております副大臣の中川正春でございます。
きょうは文化審議会委員にご就任をいただいて心から感謝申し上げます。これからよろしくお願い申し上げます。来年度に向けての芽出し,それから,具体的な政策提言をしていただくということ,そのことをぜひ期待をしていきたいと思いますので,よろしくお願いします。
多少反論もしなければいけないと思うので申し上げますと,政権が変わって,文化予算,本当に多少なんですか,全体から見ると増えたのは厚生労働省と文部科学省,2番目なんですね。国土交通省は18%からカットしたんですよ。あるいは農林水産省もカットしたんですよ。こんなことはこれまでの政権のやり方の中ではない形であります。これまでは,さっき宮田先生からお話が出ましたけれども,運営交付金でも一律カットで,メリハリつけずにずっとカットしてきたと,そういう議論しかできなかったんですが,いよいよ本格的にメリハリつけて,何が大切なのかということをしっかり議論しながら,政治の中でそれを決断してやっていきたいという,我々の意気込みだけでもひとつご理解いただければありがたい。その中で一緒に議論をしていただければありがたいというふうに思っています。
そういう意味で,予算をふやしていくというのは,モメンタム(勢い)が必要だと思います。今回,成長戦略という私たちの政権の目標の中で,幾つかあるんですが,一つは観光立国,それから,もう一つはアジアなんですね。これに向けて焦点を絞っていって,私が事務方に言っていますのは,守りの文化行政あるいは文化庁から攻めの文化庁にいって,文化財を守っていくということから,それを活用して,アジアなどに新しい文化のアピールをしていく。これから観光ということを活用しながら,その枠組みをもっていろんな具体的な施策をつくり出して,来年の観光立国という予算の中に文化庁の枠組みをつくり上げていくと,そういう具体的な戦略をとっていきたいというふうに思っていまして,そのためのお知恵もぜひいただきたいと。実はさっきの諮問のいろんな文章の中に,私たちの思いを最後のほうのところに書かせていただいて,その意図をもって諮問をさせていただいたということであります。
それから,もう一つは,これからの政治日程の中で具体的に起こってくることと言いますか,私たちが改めて心してそれに対応していきたいと思っていることが二つ三つあります。一つは事業仕分けでありまして,これが,予算の審議が一段落してきましたら,また入ってきます。これは誤解があったのは,事業仕分けで委員から主張されたことが国の意思であるように受けとめられて,そんなふうに報道されたというのは私たちは心外なんです。そうではないんです。
あの切り口でもって切って,それに対して当事者が,我々自身が反論もして,その議論をもってどこが無駄でどこが大切なのかというのをしっかり決めていこうと,そういう意味での事業仕分けでありますので,そういう体制をつくっていきたい。今回は独立行政法人,特殊法人,公益法人,ここへ向いてメスが入りますので,さっきお話のあった博物館や美術館の在り方というようなところも全部対象になってきますし,補助金を流すときに公益法人を通じて流している今の文化庁の政策についても,それでいいのかどうかというふうなことも,事業仕分けの対象として入ってくるということでありますので,ここもひとつよろしくお願いを申し上げたいということです。
それから,もう一つは寄附税制です。税制調査会で,これは私が提案したんですけれども,寄附税制を考えていこうということで,ことしの税制調査会の中にそうしたプロジェクトをつくっていくということが決まりました。それは,たまたまと言いますか,もう一つ大きくとらえれば,新しい公共,新しい公ということをもう一つ私たちの政策の基本にしていこうという考え方が出てきたものですから,この新しい公を含めた寄附税制議論をしようということで,そのプロジェクトが始まります。これは5月までに結論を得ていって,来年の税制改正の中にそれを組み込んでいきたいということでありますので,ぜひ力を貸してください。精いっぱい頑張っていきたいと思っております。
それから,最後に,川端大臣は近江の出身で近江商人の血を引いておられるということですが,私は三重県の松阪で伊勢商人の血を引いています。本居宣長の世界でもあるんですが。そういう意味からいうと,文化というものをもっと大きく取り上げていって,新しい時代対応もどんどんしていきたいということを考えています。著作権の話がちょっと出ましたが,グーグルがアメリカであれだけ暴れているわけですが,今度日本にきてどうなるんだというのをやろうよと,文化庁も著作権について,話し合いの基盤をつくってやろうよというようなことも申し上げまして,そんなことも議論が進み始めております。
○西原会長
ありがとうございました。
何か檄文をいただいたというようなごあいさつでございました。
以上をもちまして,文化審議会の第50回総会を終わらせていただきます。ご協力ありがとうございました。
ページの先頭に移動