(1)文化芸術を取り巻く諸情勢の変化

昨今,国内外の諸情勢は急速な変化を続け,文化芸術を取り巻く情勢にも大きな影響を与えている。

国内では,「国から地方へ」,「官から民へ」の流れの下,民間と行政の役割分担の見直しや地方分権の推進等が図られている。民間部門では,規制緩和等により新たな分野への進出が拡大してきたほか,非営利活動やボランティア活動等の活発化に伴って,民間と行政の協働による取組が進められ,企業のメセナ活動も多様な広がりを見せている。

他方で,人口減少社会が到来し,特に地方においては過疎化や少子高齢化等の影響,都市部においても単身世帯の増加等の影響により,地域コミュニティの衰退と文化芸術の担い手不足が指摘されている。昨今の経済情勢や,厳しさを増す地方の財政状況に加え,公立文化施設への指定管理者制度の導入等の影響も指摘される中,地域の文化芸術を支える基盤の(せい) 弱化に対する危機感が広がっている。

国際的には,グローバル化の進展に伴い,文化芸術による創造的な相互交流が促進される一方,文化的アイデンティティや文化的多様性をめぐる問題が生じている。東アジア地域では,経済社会面で各国間の一層の連携・協力が求められる中,文化芸術面での交流の深化も期待される。それと同時に,周辺国の経済・文化両面における発展が著しく,我が国の国際的地位の相対的な低下が懸念されつつある。

また,インターネット等の情報通信技術の急速な発展と普及は,国境を越えた対話や交流を活性化させたり,情報の受信・発信を容易にしたりするなど,あらゆる分野において人々の生活に大きな利便性をもたらす一方で,新たな社会的課題を惹起している。例えば,人間関係に及ぼす様々な影響が指摘されるほか,人々の知的コンテンツ利用の在り方に係る変化に伴い,違法配信等による著作権侵害の深刻化といった問題も生じている。

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