第11期文化審議会第1回総会(第53回)議事録

午前10時 開会

○滝波企画調整官
 皆様,おはようございます。開会に先立ちまして,本日お手元に配付しております配付資料の確認からさせていただきたいと思います。
本日の配付資料ですけれども,まず,第11期文化審議会第1回総会(第53回)の議事次第ということで,本日の会議の議事次第を掲載しております。
資料1としまして,第11期文化審議会委員ということで名簿をつけております。それから資料2として文化審議会についてのペーパーです。資料3としまして,文化審議会関係法令がございます。それから資料4としまして,各分科会への委員の分属についての資料でございます。資料5としまして文化審議会運営規則(案),資料6としまして文化審議会の会議の公開について(案),資料7としまして文化政策部会の設置について(案),資料8として文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)の概要,資料9としまして文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)の平成23年度予算案等への反映状況,横長のペーパーです。資料10としまして,展覧会における美術品損害の補償に関する法律案の概要のペーパーでございます。
それから,机上資料ということで,4種類ございます。1つが,文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)の冊子にまとめたものでございます。表書きに「成」というふうに書いた冊子がございます。それから同じく文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)についてという,これは前期にまとめました答申の冊子,内容は一緒なんですけれども,参考資料が充実したものになっております。それから机上資料として3つ目に,平成23年度文化庁予算(案)の概要のとじたものがございます。それから最後に先ほどの法律案,展覧会における美術品損害の補償に関する法律案関連資料ということで,要綱から本文,新旧対照表等をつけたクリップどめしたものを用意しております。
以上の資料を取りそろえておりますけれども,万一,過不足等ございましたらば申しつけをいただけたらというふうに思っております。
特にないようでしょうか。
よろしいようでしたら,早速,文化審議会の会議を始めたいと思います。
ただいまより,文化審議会第53回総会を開催させていただきます。
本日は本当にお足元の悪い中,またお忙しい中,たくさんの方々がお見えいただきましてありがとうございます。
私は文化庁の方で政策課企画調整官をやっております,滝波と申します。本日は第11期文化審議会の第1回総会ということで,後ほど会長の選出を頂く必要がございますけれども,それまでの間,私の方で議事の進行をさせていただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
それでは,初めに第11期文化審議会委員の皆様方の御紹介をさせていただきたいというふうに思いますけれども,先ほどごらんいただきました資料1をごらんいただけたらというふうに思っております。まだお見えでない先生方もおられますけれども,名簿の順に沿いまして御紹介させていただきたいと思います。
五十音順になっております。
まず,青柳政規委員でございます。
それから,本日少し遅れるというふうな御連絡をちょうだいしておりますけれども,石上英一委員が御就任されております。
それから,岩澤忠彦委員でございます。
それから本日御欠席の連絡を頂いておりますが,内田伸子委員が委員として御就任されております。
次に岡本真佐子委員でございます。
次に河東義之委員でございます。
それから佐々木丞平委員でございます。
里中満智子委員でございます。
道垣内正人委員でございます。
東倉洋一委員でございます。
都倉俊一委員でございます。
土肥一史委員でございます。
中村紘子委員でございます。
中山信弘委員でございます。
西原鈴子委員でございます。
それから,きょう欠席という御連絡を頂いていますが,林史典委員も御就任されておられます。
それから,遅れておられますけれども,林田英樹委員が御就任をされておりますので御紹介します。
次に宮田亮平委員でございます。
次に森西真弓委員でございます。
最後に鷲田清一委員でございます。
以上が委員の皆様方でございます。
続きまして,本日出席をしております文化庁の関係者を御紹介させていただきたいと存じます。
まず,近藤文化庁長官でございます。
吉田文化庁次長でございます。
小松文化部長でございます。
関文化財部長でございます。
松村文化財監査官でございます。
大木政策課長でございます。
山崎芸術文化課長でございます。
白間伝統文化課長でございます。
それから,遅れておりますが永山著作権課長が参る予定になっております。
次に大路国際課長でございます。
最後に舟橋国語課長でございます。
以上で紹介を終わりにしたいと思います。
それでは,この第11期文化審議会の会長及び会長代理の選出をお願いしたいというふうに存じます。人事に関する案件につきましては,非公開とさせていただきたいと存じます。大変お手数ではございますけれども,一般傍聴者の方々おられましたらば,ここで一度御退席をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

(傍聴者退出)

※ 会長に西原委員,会長代理に宮田委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

○西原会長
 本日から新しい期ということになりますので,本審議会の概要等について事務局から御説明いただきまして,運営規則及び会議の公開について決定したいと存じます。どうぞよろしくお願いします。

○滝波企画調整官
 それでは,資料に基づきまして説明させていただきたいと存じます。
資料2をごらんいただけたらと思います。
文化審議会の構成についてのペーパーでございます。御案内の方々は多いと思いますけれども,文化審議会につきましては平成13年1月6日から設置をされているものでございます。大臣又は長官の諮問に応じて,文化の振興,国際文化交流の振興に関する重要事項を調査審議し,大臣や長官に意見を述べるといったことを中心に議事を進めているところでございます。
分科会というのを設けておりまして,国語分科会,著作権分科会,文化財分科会,それから文化功労者選考分科会というのもございます。こういった分科会に加えまして,必要に応じて部会等を設置していくというふうなつくりになっております。
次に資料3でございますが,文化審議会関係法令ということで,先ほども少しごらんを頂いたわけですけれども,この審議会の設置の根拠となっていますのが,文部科学省設置法という法律がございます。そこの中に第30条として文化審議会に関する規定が設けられております。これは先ほど紹介したことと重複しますので割愛をします。
また,3ページからは文化審議会令ということで,政令でこの組織や委員の任命,任期等に関する規定,あるいは会長を置く,分科会を置く等の規定が設けられているところでございます。こういった規定に則してこの審議会が置かれているということでございます。
それから資料4でございますが,これは資料1がこの文化審議会の委員の名簿ということでございましたけれども,資料1の名簿の中で大臣から委員の就任の発令をお願いしたわけですけれども,その際に各分科会への分属が大臣の方から指名をされているわけでございます。資料4の形で,それぞれ分科会への分属が定められておりますので,御承知いただきたいと存じます。また,各分科会につきましては,この審議会総会のもとに置かれるわけでございますけれども,それぞれ審議テーマを持って調査審議を進めていただくことになっております。なお,ここの資料4に記載のない方々がおられますけれども,また後ほど御説明したいと存じますが,文化審議会総会のもとに直属で置かれている文化政策部会というものがございますけれども,そちらの方に分属いただくことになりますので,また後ほど御説明させていただきます。
それから,資料5でございますけれども,資料5は文化審議会運営規則ということで,この審議会の会議を開くための手続等を定めたものでございます。第1条が総則ということで,この審議会の議事の手続,その他審議会の運営に関し必要な事項は,先ほどの文化審議会で定めるもののほか,この規則に定めるところによるということになっております。
第2条では会長が招集していただくということ,第3条では,分科会の会議は必要に応じて分科会長が招集いただくということの規定がございます。
各分科会の審議事項は,2ページ,3ページにかけましての表の中に記載のような事柄を御審議いただくことになっております。
また,第3ページの第3項のところでは,前項の表の下欄に掲げるもののほか,同項の表の上欄に掲げる分科会の所掌事務のうち,それぞれ審議会があらかじめ定める事項については,当該分科会の議決をもって審議会の議決とすることができるというような規定も設けられております。
それから4ページからは部会ということで,部会の名称あるいは所掌事務については,会長が審議会に諮って定めるということになっているということがございます。部会についても基本的に分科会と同様の規定の準用になっているということでございます。
また,第5条につきましては会議の公開ということで,この審議会の議事は公開して行うことを原則としているということでございます。ただし,特別の事情により審議会が必要と認めるときはこの限りではないという例外規定も設けられております。
5ページの最初の第2項のところですが,審議会の会議の公開の手続,その他審議会の会議の公開に関し必要な事項は,別に会長が審議会に諮って定めるというふうにされております。
こういった事柄が運営規則(案)として今回お諮りするものでございます。
それから続けて資料6でございます。
資料6は,資料5の最後のところにございました審議会の会議の公開に関する規定を別途定めようとするものでございます。文化審議会の会議の公開については,文化審議会運営規則の第5条第1項に定めるもののほか,下記により取り扱うものとするということで,少し細かくなりますけれども公開のルールを定めております。
第1項のところ,会議の公開でございます。
会議は,次に掲げる案件を審議する場合を除き,公開して行うということで,先ほど御審議いただきました,会長の選任,その他人事にかかわる案件,それから2つ目に文科省設置法の規定の中で規定されている一定の案件については非公開ということにしてございます。その他,会長が公開することによって,公平,中立な審議に著しい支障を及ぼすというふうに認める案件等については非公開とすることができるという規定になってございます。
第2項につきましては,会議を開くに当たりましては,原則として1週間前までに周知をしていくというふうな規定になってございます。
また,第3項につきましては,会議の傍聴に関するルールを定めております。事務局の方に登録を頂くというのを原則とするというものでございます。
第4項につきましては,この登録を受けた人は傍聴ができるわけですけれども,会長の許可を受けて会議を撮影し,録画し,又は録音することができるということを原則としております。
その際に,第5項ですが,登録傍聴人はこういった許可を受けようとするときは,事務局の定める手続により申請いただくということとともに,会議を撮影し,録画し,又は録音するに当たっては,事務局の指示に従っていただくということにしてございます。
第6項につきましては,そういった登録傍聴人は会議の進行を妨げる行為又はほかの登録傍聴人の傍聴を妨げる行為をしてはならないという原則を書いております。
第7項につきましては,登録傍聴人がこういった前2項の規定に反する行為をしたという場合には,当該登録傍聴人に対して退場を命ずるなど適当の措置をとることができるという旨の規定を置いております。
こういうことで,原則公開ですけれども,その際の様々な手続を定めるということにしてございます。
また,第8項につきましては会議資料の公開ということで,会議資料は原則として公開をしますということでございます。一部,公開によって支障が生ずるようなケースについては非公開とすることができるという例外を設けております。
また,第9項につきましては議事録の公開ということで,議事録は公開する,ただし会長が公開することによって支障が生ずると認めるとき等のケースについては非公開とできるという規定になってございます。
第10項につきましては,前項の規定により議事録の全部又は一部を非公開とする場合には,会長は非公開とした部分について議事要旨を作成して公開するということになってございます。
最後に,その他として第11項,このほか,本審議会に置かれる分科会及び部会における議事の公開については,各分科会及び部会で決定いただくというふうな規定になってございます。
少し手続論が多くなりますけれども,会議の最初でございますので,これらの点についてお諮りし,御決定いただきたいと存じます。
以上でございます。

○西原会長
 ありがとうございました。
ただいまの説明していただいた事柄につきまして,御質問等ございますでしょうか。
もし,特別に御質問がないようでございましたら,これを決定したいと思います。特に資料6の会議の公開について,それから資料5の運営規則を(案)のとおりに決定したいと存じますが,よろしゅうございますか。
はい,どうぞ。

○道垣内委員
 つまらないことなんですが,資料6の第1項の「次ぎに」の「ぎ」は要らないんじゃないかと思いますので。

○西原会長
 ありがとうございます。
では,それを修正の上,(案)とするということで,ありがとうございました。これは事務局の勇み足でございます。
では,それ以外に御異議がないようでございましたら,これで決定としたいと存じます。よろしゅうございますか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)

○西原会長
 ありがとうございました。
次に,文化政策部会の設置について御審議いただきたいと存じます。今,決定していただきました運営規則第4条第1項,これは今の資料5の4ページでございましたけれども,それによれば部会の設置については,会長が審議会に諮るということとされております。まず,そのことにつきまして,部会設置の趣旨等につきまして事務局から御説明いただきたいと存じます。

○滝波企画調整官
 それでは,先ほども少し御紹介したところですけれども,資料3,文化審議会関係法令のところを少しごらんをいただけますでしょうか。これの5ページでございますが,文化審議会令という政令がございまして,そこの中の第6条ということで,審議会及び分科会はその定めるところにより部会を置くことができるという規定になっております。この規定に基づきまして,従前から文化政策部会という部会を設置してきてございます。
昨年というか,前期の文化政策部会のもとでは,先ほども少し御紹介がありましたけれども,この文化芸術振興に関する基本的な方針,第3次基本方針というのがあるんですけれども,これをまとめるための審議をこの文化政策部会の方でしていただいたというふうなことでございました。この点につきまして,今回資料7ということで,今期第11期の文化審議会のもとにおきましても改めて文化政策部会の設置をお願いしてはどうかというふうに思っているところでございます。資料7の1.設置の趣旨でございます。文化審議会令第6条第1項及び文化審議会運営規則第4条第1項の規定に基づき,下記2.に関する調査審議を行うため,文化審議会に文化政策部会を設置するという趣旨でございます。
その調査審議事項につきましては2.のところ,(1)として,文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項について,(2)その他ということで,基本政策について御議論いただく,御審議いただく場として,文化政策部会を設置しようというものでございます。
また,3.として,構成でございます。これは別紙参照ということになりますが,既に文部科学大臣から委員の方々の任命がございましたけれども,それに加えまして,文化審議会令第6条第2項の規定に基づきまして会長が指名する委員,それから臨時委員及び専門委員により構成するということで,別紙ということで次のページに記載のある方々でございます。第9期文化政策部会委員ということで,ここの正委員,それから臨時委員の方々ですが,この正委員につきましては,先ほどの資料4のところで資料1の名簿の中に記載のなかった,記載はあるけれども資料4には記載のなかった方々がここの文化政策部会のところに掲載されておりますのに加えまして,一部の委員の方々には幾つかの分科会と重ねての御就任を頂くケースもございますけれども,そのような形でこの政策部会の委員に御就任を頂くということを資料7として決定を頂きたいというふうに存じております。
また,臨時委員の方々につきましては,これも既に本日,2月28日付で発令がされております臨時委員の方々も併せてこの文化政策部会の審議を頂こうということを考えております。
以上でございます。よろしくお願いします。

○西原会長
 ありがとうございました。
ただいま,御説明がありましたとおりに決定したいと存じますけれども,それはよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)

○西原会長
 ありがとうございました。では,これを決定とさせていただきます。
今御説明がありましたように,構成委員につきましては次のページにある先生方,委員の方々でございますので,どうぞよろしくお願いします。また,今御説明が別途ありましたように,佐々木委員と里中委員におかれましては,それぞれ文化財分科会,それから著作権分科会と前期に引き続き,御兼務いただくということになりますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。
今日の第1回の総会は,以上のことを審議するということでございましたけれども,せっかくお集まりでいらっしゃいますので,自由討議ということで残りの時間を使いたいと存じますが,その前に少し時間を頂いて,先般閣議決定された第3次となる文化芸術振興基本方針,それから現在国会審議中の来年度の文化庁予算などにつきまして,これからの審議に関連する事項について事務局より御説明を頂きたいと存じます。よろしくお願いします。

○滝波企画調整官
 それでは,皆様方たくさんお集まりを頂いておりますので,この機会に少し今の状況などを御説明したいと存じます。
まず資料8でございますが,前期のこの文化審議会の方に御参画いただいておりました委員の方々にはもうお見知りおきいただいているところでございますけれども,第3次となります文化芸術振興基本方針というものが去る2月8日に閣議決定をされております。その内容そのものにつきましては,先ほど宮田会長代理の方から御紹介がありましたけれども,この「成」という字でまとめました冊子この中に本文が掲載をされておるところでございます。
また,この閣議決定をしていくに当たって御審議いただいた内容の詳細も含めて御紹介しているのが,この答申というふうに書いて,同じ「成」という字ですけれど答申というふうに書いた,1月31日に文化審議会の方で御答申いただいたものをまとめたものがこの冊子になっています。ここの中には関係のデータ集ですとか,審議会あるいは部会のもとに置かれたワーキンググループというのがありましたけれども,そこのところの意見のまとめといったもの,データ集等も織り交ぜて冊子にまとめたものになっています。
これはまた,お時間のあるときに少しお目通しいただくこととしまして,資料8の概要の方で少し簡単に御紹介したいと思いますけれども,第3次基本方針ということで,これまで1次,2次にわたって基本方針を策定してまいりましたけれども,今回,第3次ということでまとめております。
構成につきましては,第1として基本理念,第2としては重点施策,第3として基本的施策という3つの構成になっております。第1の基本理念に関しましては,文化芸術振興の意義ということを改めて再確認をするということでございます。国の政策の根幹に据えて,今こそ「文化芸術立国」を目指そうというふうな考え方のもとに,この基本理念のところの意義をまとめております。また,基本理念の中に,基本的視点として3つの視点を今回置いております。1つ目の基本的視点としては,成熟社会における成長の源泉ということで,文化芸術への公的支援を社会的必要性に基づく戦略的投資ととらえ直そうということ,あるいは,成熟社会における成長分野として潜在力を喚起する,社会関係資本を増大する観点から公共政策としての位置づけを明確化しようということ。あるいは,文化芸術の特質を踏まえて長期的,かつ継続的な視点に立った施策を展開しようということ,こういった視点を1つに置いてあります。また,2つ目の視点としましては文化芸術振興の波及力ということで,教育,福祉,まちづくり等々,様々な分野,領域への波及効果を視野に入れた文化芸術振興を図っていく必要があるだろうと述べております。また,雇用の増大,地域活性化を図り,我が国の文化的存在感を高める観点から強みを出した施策の展開を図っていく必要があるということを述べております。
そして,3つ目の視点としましては,社会を挙げて文化芸術振興を図ろうというとで,国や地方,民間等,各主体がそれぞれの役割を明確化し,相互の連携強化を図って社会を挙げて文化芸術振興を図ろうと,こういった3つの視点を据えて,これからの文化芸術振興を図っていこうということをうたいあげております。
また,第2のところでは文化芸術の振興に関する重点施策ということで,この第3次方針の中で具体的に取り組んでいく,取り組むべき6つの重点戦略というものを位置づけております。
戦略1から6まで6つ柱立てがございます。戦略1としましては,文化芸術活動に対する効果的な支援を図っていこうということで,もうお見知りおきの方々は多いと思いますけれども,記載のような事柄の効果的な支援を図ろうというものを述べております。
また戦略2の中では主に人材育成ということで,文化芸術を創造し,支える人材の充実ということを図っていくということを重点戦略として2つ目に挙げております。
また,3つ目につきましては,子供たちや若者を対象とした文化芸術振興策を充実しようということの内容を盛り込んであります。
また,戦略4としましては,文化芸術の次世代への確実な継承ということで,文化財の保存,修復,公開,活用といった事柄に加えまして,文化財の総合的な保存活用,あるいは保護のすそ野の拡大を図る,あるいはアーカイブといった事柄も含めて次世代への継承ということをうたいあげております。
戦略5につきましては,先ほどの基本的な視点のところとも関連しますけれども,文化芸術の地域振興,観光産業振興等への活用ということを具体的に図っていこうというふうな内容を盛り込んであります。
また,戦略6としましては文化発信・国際文化交流の充実ということで,文化が持っている力というものをどんどん発信をしていく,あるいは国際交流を進めていくという事柄について具体的に列挙しております。
第2の2.で留意事項を少し書いてあります。こういった重点戦略を進めていくに当たっては,各施策を横断的に実施をしていくことが必要であるということに加えて,関係府省庁間の連携・協働といったこと充実していく必要があるということ,あるいは(2)でPDCAサイクルといったところの確立が大事だということの留意事項が掲げられております。
また,第3として,基本的施策ということで,これは法律の条文に則しまして,文化芸術の各事柄,事項につきまして基本的施策を列挙する,こういうスタイルで第3次方針というものが今回,閣議決定をされているところでございます。この内容につきましては,平成23年度から27年度までの5年間というものを対象期間と据えまして,計画的に進めていくということを予定をしております。
また,これに関連して資料9でございます。これについて少し御紹介をしたいと存じますけれども,資料9は,ただいまの第3次基本方針が23年度からの5年間を対象期間としているということを申し述べましたけれども,そのうちの初年度に当たります平成23年度の予算案等にどのような形で反映ができているかということを,少し対比表の形でまとめたものになってございます。
詳しく述べますと時間がかかりますけれども,先ほど申し述べた6つの重点戦略という事柄がございますけれども,それぞれにどのような事柄の内容が提言をされておって,どのような施策でそれを具体的に実現を図っていくのかということが見える形でまとめたものにしてございます。
重点戦略1につきましては,7つのダイヤ印が記載されております。それぞれ1つ目でしたら文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入ということで,これについては文化芸術団体への支援方法を抜本的に見直し,インセンティブが働く新たな支援制度を導入しようということを内容としているものでございまして,具体的には一番右側の欄ですが,舞台芸術創造力向上・発信プランといった形の事業の中でこの実現を図っていこうというふうにしております。
2つ目のダイヤ印についても,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みを導入しようということで,新たな審査・評価,調査研究などの仕組みの試行的な導入を図っていこうというような内容になっておりますが,これについても予算で対応する部分と,それから,より詳細な検討をしていくために文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査研究会といったものを置いて具体的な検討に着手をしているということの紹介もしてございます。
以下,このような形で提言事項について,予算やあるいはこのような調査研究会であるとか,あるいは税制であるとかといった形で,どのように今後その実現を図っていくのかというのが,対応関係が明らかになるような形で,資料9という形でまとめたものになってございますので,またお目通しいただけたらというふうに思っております。
それから,もう一つ御紹介したいんですけれども,文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次答申)というふうに書いた冊子がございます。これを少しお開けいただきますと,いろんなデータ集ですとか,部会のもとにおかれましたワーキンググループの意見のまとめですとかいったものが,かなり細かいレベルまで書いたものになってございまして,これを1つにまとめた冊子になってございます。
ここの中で,先ほどの資料8の第3次基本方針を具体的にどういう形で点検・評価していくか,PDCAサイクルの確立ということが大変重要だということを少し申し上げましたけれども,その点で具体的にどのような戦略目標を打ち出し,どのような評価の進め方をしていったらいいか,あるいはその際に参考となるべき指標といったものはどういうものなのかといったことを検討した際のペーパーが,この白い冊子の24ページから後ろに記載をされております。これもまた,この後の討議の中で御参考にしていただけたら有り難く存じます。
24ページでしたら重点的に取り組むべき施策ということで,重点戦略の事柄が一番左側の欄にございます。あとは真ん中の欄にはそれを具体的にどういう施策で対応させていくのかということを書いていますし,一番右側の欄ですと具体的にどのような形でその点検評価をしていくのかということのイメージがわくような形で記載をしていくという形でまとめたものになってございます。この点につきましても,前期の文化政策部会のもとでかなり時間を割いて入念に御審議いただいたところでございます。この点については,24ページから27ページまで記載がございます。
それから,同じく28ページから後ろを少しごらんいただきますと,今回の第3次基本方針につきましては,平成23年度から27年度までの5年間を対象期間としているということを申し述べましたけれども,ではこの5年間で具体的にどのような行程表といいますか,見通しを持って施策をそれぞれの施策を講じていくのかということをある程度わかるように,ただ,なかなか具体化するのが難しい状況もございまして,今一つ十分じゃないという御指摘も頂いているところですけれども,28ページから31ページまでにかけまして,この5年間の中で具体的にどのように取り組んでいくのかということの行程期間がわかるような形でまとめたものも御用意をしております。
今後,第3次方針を具体的に進めていくに当たりまして,こういった評価の進め方であるとか,具体的にどのような行程期間をもって施策を講じていくのかということも十分頭に入れながら,私ども文化庁としても各仕事を進めていきたいというふうに存じておりますので,またその点につきまして,御指導・御助言いただけましたら大変有り難く存じます。
以上でございます。よろしくお願いします。

○西原会長
 ありがとうございました。
ただいま委員の皆様方には,御指導・御助言をということでございましたけれども,多分これは,これからの御審議の内容を直接に表すということも皆様方のお仕事でございますが,ということでもあろうかと理解いたします。この内容につきまして,これから残りの時間で自由に御意見を頂きたいと存じます。継続して御審議をくださる委員の方々には,それぞれの分科会あるいは部会についての御意見でも結構でございますし,ただいま,全体的な予算等の御説明もありましたので,そのことでも結構でございます。新しく加わってくださいました委員の皆様方には,そもそもここで何をしようと思っているかというような所信の表明ということでも結構でございますが,残りの時間は全員の御意見を伺いたいと存じますので,まことに恐縮で,当ててしまいますが,会長代理の宮田委員から,ずっとお席をめぐって御発言いただけばと存じます。終わりが11時半に設定されておりますので,委員の皆様方にはそれぞれ良識を働かせていただいて,それぞれの持分を御計算いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○宮田会長代理
 これぐらいの危機感が大変よろしいことではないでしょうか。
昨年,私は文化政策部会の方でお仕事をさせていただきました。6つの柱を立たせていただいてワーキング会を。で,非常に実のある1つの答申を出させていただいたんですが,紙だけでは何の意味もございませんので,これをいかに具現化するかということの作業というのと同時に,この1年間はもう一つ,私もこの間からずっとしっかりと読ませていただいたときに,やはり抜けているな,あるいは,もうちょっと強く言いたいなという部分が出てくるものですね。現場が私は大学でございますので,できれば若者たちが巣立って,それから力をつけて世界に発信できるような環境づくり,その橋渡しの部分が非常に欠けておりますので,その辺を強く,すばらしい若者たちが発信できないという状況にならないようにしたいなということも含めて一生懸命やりたいというふうに思っております。
以上でございます。

○西原会長
 ありがとうございました。

○青柳委員
 私は,この審議会は新参者ですけれども,今考えていることは,いろいろ経済状態もそれほどかんばしくないということで,だけど量的に相対的に下降しているわけであって,実質的にはずっと大体同じ生産量を持っているんじゃないかと思っていますが,その相対的に何となく下降しているというような,精神的な意味での何とはない気持ちが非常に大きく国を動かしているんじゃないか。そういうときに,やっぱり日本のような国際社会に加入したのが比較的に新しい国の場合,なかなか国際社会でイニシアチブをとれないんですが,そういう国であればこそ,国の中に空疎間とか空虚感とか,そういうものをつくることは非常にまずいことで,この部分をカバーできるのが文化の充いつ感だと思うんですね。ですから,今こそ経済に代わって国全体に充いつした気持ちを我々みんながきちんと抱けるようにするためにこそ文化というものがあるし,それをもう一回見直す必要があるんじゃないか。
先ほどの政策部会の中の前期行われた中でも多くの方々がやっぱり文化庁を文化省にすべきではないかというようなことを何度もお話になっていますが,やっぱりそういう具体的な目標を掲げながら文化というものの充いつ感をこの国に満たしていくということに,この審議会が少しでも役に立てればいいなという感想を持っております。

○石上委員
 遅れて参りまして申し訳ございません。石上でございます。
私は昨年から文化財分科会に配属されて,お仕事をさせていただいております。もともと,日本の古代史を東京大学の史料編さん所というところで研究してまいりましたけれども,この二十数年来,個人的な感心もありまして,奄美諸島の歴史を勉強させていただいております。そういう中で現在,歴史文化基本構想とか,地域の伝統文化の活性化事業というようなものを積極的に文化庁が進めてくださっていますけれども,そういうようなものにも地元の学芸員の方や専門職員の方,教育委員会の方たちと一緒に携わらせていただく機会を持っております。そういう中で考えますことは,1つはこの何年かで文化財の政策というものが基本的に大きくいい方向に変わってきた。1つはコアになる従来の文化財保護法に守られてきた文化財を核にする。もう一つは地域の振興とかいうようなものと併せて歴史文化の基本構想というようなもので,広く歴史文化遺産というのをとらえるというふうに変わってきた。これはなかなか,実はまだ現地に,地元に行くと,いろいろな教育委員会の体制等では,十分に認識されていない。現場の専門職員の方たちの苦労というようなものをいろいろと私も見分するところがありました。そうことでいろいろな現場でも手伝わせていただいて,新しいこの文化施策がうまく実現していくようにお手伝いできればというふうに思っております。

○岩澤委員
 NHKの放送文化研究所の岩澤でございます。よろしくお願いいたします。
私どもの研究所は,国民生活時間調査ですとか,あるいは世論調査,あと常用漢字表の関連で言うと高校生が実際に漢字が書けるかどうか,読めるかどうか。読めるかどうかという調査を私どもはしたりしております。
そういう中で,つい最近まとまりました国民生活時間調査,5年に1度,国も今年別な形で調査をやる予定になっておりますけれど,その調査結果がまとまりまして,睡眠時間がまた減少しているんですね。その中でまた,一方で面白い傾向が1つ出ていまして,男性の20代,30代,男の70歳以上で家事時間が増えていると。男の70代の家事というのはなかなか分析が難しいかもしれませんが,男の20代,30代は比較的早く家に帰って,家事をする時間が今までよりも長くなっている。かなり若い人を中心に,やっぱり生き方,物の考え方というのが,日本の社会の中で変わってきているんじゃないかというふうに思うんですね。自由に使える時間,自由に使おうという時間も以前よりは増えてきていると,そんなに急に,10分,20分と増えるわけではありませんけれど,前の数字よりは確実に増えてきていると。そういう中で文化施策というものがどうあるべきなのかというようなことも含めて,考えていけたらいいなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

○岡本委員
 桐蔭横浜大学の岡本と申します。初めて参加をさせていただきますので,既にいろんなことを御議論されている点について,もし申し上げた場合には,失礼をお許しいただければと思います。3点,手短に。
1つは,私は大学で学生を見ていますと,やはり従来ヨーロッパとかでは,その格差であるとか,いわゆる階級社会の中で文化芸術がそれをどういうふうに融和させていくかというふうに調整を図っていけるかという役割が議論されてきたんですけれども,日本の場合だんだん開いてきているといいますか,非常にやはり経済的に厳しいという状況が若い人の中にも出てきていますので,その中でこういった文化芸術にかかわる施策というものが,これからの日本社会というものをつくっていく上でどういうふうな役割を果たせるのかというのが本当に重要だなというふうに感じています。これが1点。
それから,例えばベルリンのホロコースト・ミュージアムなんかに行きますと,日本人の失明者がいるんですね。ホロコーストのように非常にその国,その経験した人にしかわからないと思われるようなものでも,外国人がそれを発信していく。この答申の内容についてはすばらしいものがたくさんあると思いますし,具現していくときに,つくったものを国際的に発信していくという2段階ではなくて,つくる段階,共有する段階からどんどん開いていってもいいのかなというのが1点あります。
それから,もう一つは,若者のという御発言が宮田委員の方からもありましたが,本当にそのとおりだと思っています。私は本当に日常的に学生と対していると,どんなにいい内容でも,こういうものがいいよって言われると彼らは動かないんですね。何か考えることが楽しいとか,コミットすることが何か面白いと思ったときに爆発的に力を出してくる,関与してくるということがあります。ですから,例えば日本の次の目指すところとして,文化芸術立国という言葉を聞いたときに,降りてしまわないかなという気がするんですね。つまり,これが言いたいことでいいんですけれど,これ自身がどれだけ重要かということを本当に思うんですけれども,ただ,どういう表現が心に伝わっていくのかということを含めて考えていければいいなというふうに思います。
以上です。

○河東委員
 新任の河東と申します。よろしくお願いします。
私は専門は建築士で,建築関係の文化財でございますが,特に幾つかの都市で,地方都市であったり東京や周辺の都市であったりするんですが,幾つかの都市で建造物,町並み関係の保存や活用にかかわっておりまして,このところ各地でこういった文化財の活用ということが積極的に行われ始めている。これは恐らく国の指導方針に基づくものもかなりあると思いますが,この第3次基本方針の戦略5の文化芸術の地域振興というところにかかわりがあるんだろうと。その中で特に最近考えることがございまして,ここにも書いてありますけれども,文化財を保存・活用して地域振興に役立てるというのは,どこも今そういったものを持っているところは目標にしていろいろ頭をひねっているところなんですが,もちろん国の指導を仰ぎながらというところもあると思います。
1つ,一番大きく気になっていますのは,ここに書いてありますように,地域振興はともかく,環境との関係が特に最近言われ始めてきて,特に東京都あたりは数年前から国指定の文化財である庭園の保存活用と観光ということで,そういう方針で復元の費用がついたり整備が進んだりということはしておりますのですが,ここにも戦略5にも観光という言葉が書いてあります。まだ日本人の中で,観光ということの定義がはっきりしていないような気がします。悪く言うと人集めが結論みたいなところに,特に地方の観光課というのが陥ってしまう。いかに人を集めるかという,人を集めて地域振興に役立てる,そういった観光課というのは,それ自身は悪いことではないと思うんですが,そのことによって,当然のことなんですが文化財の質が落ちる可能性が非常に強くなるんですね。ですから,観光とは何ぞやというのをやはり1度きちんと国の方でも示しておく必要がありはしないかという。下手すると単に海外から来てもらう,その頭数だけで,観光課の達成度を図るというようなことが行われていやしないか。もちろんそんなことはないというのは当然ですけれども,でも,実質的にはそういったことが行われていやしないか。観光というのは要するに見せるだけなのか,文化財の質のところまで,本当に見せる努力をすることが観光ではないかということもありますので,どうも観光という言葉は,私も最近ちょっと年のせいを感じるようになって,若い方の観光という感覚と私が考える観光という感覚は少しずれがあるのは承知しているんですけれども,どこを見ても観光の定義が書いていないんですね。この基本方針のところの観光に関しても,まだよく内容を読ませていただいていませんが,観光の定義というのをきちんと設定された上で文化財と文化遺産と観光という取組を提案されているかどうかというようなことに,最近特に疑問を感じております。地方の方へ行くと,そこまで難しいことを言うとだれも話を聞いてくれませんので,もう少しくだけた話で,何しろ質を落とすとだれも来なくなるよというようなことは常々言っているところではございます。

○佐々木委員
 佐々木でございます。私の仕事の関係で申しますと,国立博物館,それから文化財研究所にかかわる仕事をしておりますが,我々の仕事の中心は何といっても文化財そのものであります。文化財というのは,我々の認識といたしましては,文化という非常に豊かな樹木の根っこを支えているんだという,そういう意識で我々は日々仕事をいたしております。今後も文化財行政というものの基盤を支えるという意識でしっかりと仕事をしていきたいというふうに思っております。
それから,過去1年,この基本的な方針をまとめる際に常に議論になっておりました,その1つに子供の教育,やはり将来の文化を支えるいわば予備軍としての子供の教育の中で,文化というものをいかに教育の中に盛り込んでいくかということは,非常に重要な問題と認識しております。この基本方針の中で6つの重点施策というものがまとめられましたが,いずれも非常に大切なものでありますけれども,特にそういう将来の文化というものを考えましたときに,子供の教育のというものを特に学校教育の中でいかに文化教育というものを織り込んでいくかという,これは非常に今後,本当に具体的に考えていかなければいけないことだというふうに思います。是非,何らかの形でいい仕事ができればというふうに願っております。

○里中委員
 里中でございます。一応,私がやっている仕事は創作者として作品を書くこと以外に,かなり以前からアジアの中での漫画家と若者の交流ということで,スタートしてからもう20年近くなるんですが,NPOをつくってそういうことをやっております。それと大学でも若い方を教えているというのと,各専門学校にもいろいろかかわって顧問をしたりとかで,若者の育成と漫画とかアニメによるアジアの中での相互理解交流ということにずっと頑張ってはおります。その中でいろいろ気がついたこともあり,また国の中でいろいろやっていて気がついたこともあり,国内では著作権のこととか,著作者のがわに立っていろいろ勉強させていただいておりますけれども,ただ,ざっくりとした感想で申し訳ないんですけれども,私はこういう文化芸術立国とか,こういうことを国がうたうようになっただけでも,物すごくすばらしいことだと思っているんです。日本人の美意識というか,日本人の癖で,すぐ何でもこれでは駄目だとかね。若い方たちも結構お上の世話になりたくないという方が何となく据わりがいいので,ありますよね,昔からね。
私どもの職業でもそうです。作品が支持されて結果的にお金になるということは,それは有り難いことなんですが,そのことをよしとしないような風潮もありまして。ただ,共通して言えるのは,表現したいという若者たちは,その作品は認めてもらいたいんですよ。その後たまたま経済的基盤がついてくるならそれはそれでうれしいという,そういうのがありますので,ついつい意欲がなさそうに見えたり,自己否定に陥ったり,果てはこの国を愛していないという方が据わりがいいのでそう言ったりとか,様々な日本人らしい癖というようなものはありますので,私は非常に楽観的にとらえてはいるんですけれども,やはりそのベースになる最後の最後は支えられているんだということは安心材料になりますし,ですからこの厳しい厳しいと言われる今のこの御時世の中で,少なくともこういう方面の予算が確保されるということだけでも,いろんなことにばんばんお金を使えた時代の割合と比較いたしますと,大変な進歩だと思っております。
私が過去の経験の中で,すみません,この場で参考になるかどうかわからないんですけれども,かつて韓国が経済危機に陥ったときに,ちょうど私は漫画の交流であちらにいまして,本当大変なんじゃないかと,何か支援策でも持っていった方がいいんじゃないかと思っていたら,向こうの漫画とかアニメとか出版業界とか,それに関連するところですね,あとテレビとか映画,みんな物すごく喜んでいたんですよ。どうしてって。大丈夫だ,大丈夫だって,これから僕たちの時代が来たって喜んでいるんですよね。どうしたんだと聞いたら,国はこんなことになってしまって,資源も何にもない国なんだから方向転換をして,人のアイデアだけで国としてもうけられることに力を入れるから,もはや工業とかそういうのよりも,あんたたちに予算をいっぱい落とすから頑張れといって,すごい予算が下りたという非常に短期的なことでとても喜んでいたんですね。じゃ,頑張らなきゃいけないわねと言ったんですが,その後の様子を見ておりますと,それにはいろいろな確かに弊害もありました。結局,かなりなその支援金が余りきめ細かな配分ではなく下りるものですから,当然そこに生まれる不正とかいろいろあって,ちょっとそれはそれで大変なことが起きたりもしましたが,あのときに私が実感として感じたのは,若い人たちがそれですごく意欲的になっているということですね。そして,これから我が国はこれで頑張るんだということで,非常にこのかかわっている,これからその道を目指そうという方たちの励みにはなったと思います。現実にそれを実行するときに周りの近隣諸国,特に中国に対しての売り込み方,国の見せ方というのも非常に感心しました。つまり本気でやっているんだと,まず国内の若い人たちに思わせた,またそれをラッキーととらえる,やはりそれでうまくいった面もあるのかなと思います。
だから,国が本気なんだよということを見せるのはとても大切なことなんですね。ですから先ほど申しましたように,普通,まだこれでも文化省になっていないとか,ほかの予算と比べると少ないとかということばかりに目が行きがちなんですが,いろんな予算が減ってきている中,この方面の予算が割合としてこんなに増えたということはアピールしていいんじゃないかなと思っています。それによって国の本気度を知ってその気になる方たちもいっぱいいると思います。
あとは,やっぱり周りの近隣諸国を見ていますと,自国の文化財というものに対する誇り,これは国がそういう姿勢である。つまり,どこの国も我が国はこれだけの文化があって,それの積み重ねで今があるんだと。ちょっとここから先は,お国によって言い方がいろいろあってちょっとなと思う面もあるんですが,だから我が国こそがアジアの文化的基盤なのだという言い方は,結構どこの国もなさいますね。それは日本人の場合,なかなかそういう言い方はしないと,よそから教えていただいたことによって,ここまで育ってきましたという,そういう態度がある。それを美徳か何かわかりませんが,それはそれでしょうがないと思うんです。日本人って,言われなければ前に出ようとしませんし,日本人同士でわかる美徳というのはいっぱいありますよね。ただ,長年根気よくつき合っていますと,そういうことのわかる方,日本人ってそうなんだなと,それがすてきだなとわかってくださる方も着実にアジア各国の中で増えております。それを何によって彼らは実感として知るかというと,文化によって知るわけですね。映画を見たりテレビドラマを見たり,アニメとか漫画によって日本人の基本的考え方を知っていくわけです。だから,それはとってもいろんなものが浸透していってよかったなと思います。
翻って見れば,私ども戦後世代というのが,膨大に入ってきた欧米映画とかアメリカのテレビドラマによって,アメリカ人が考える正義とかアメリカ人が感じる潔さとか男らしさとか,そういうものを知って,ある意味アメリカの文化とかアメリカ人的やり方を知らず知らずのうちに理解してつき合ってきたように思うんですね。だからサブカルチャーの力って,やはり大きいものがあるなと思います。
長くなって申し訳ありませんでした。ですから,アピールの仕方についてはもう少しとは思いますが,まずはそのマイナス面に目を向けずに,プラス面を多少その恥じらいもなく強調してもいいんじゃないかなと思いました。失礼しました。

○道垣内委員
 道垣内でございます。この審議会の新人でございまして,私の専門は法律分野でございまして,その中でも国際的な法律問題を専門にしています。国際的な法律問題と申しますと,またいろいろございまして,国と国が国境をどうするとか,あるいは戦争,平和,そういう問題もございますけれども,私の専門はそうではなくて,そのアクターといいますか,主体は個人であったり企業であったりでございまして,国際結婚とか国際離婚とかあるいは相続の問題でも国境を越える場合がありますし,あるいは企業間の取引で国境を越える取引,あるいは国際的な倒産事件とか,いろんな国と国が出てこないような法律問題を中心にずっと研究をしてきております。
そういう分野から見ますと,著作権が一番,私は関係してきたわけですけれども,著作権は目に見えないものですから,なかなか取扱いが難しゅうございまして,必然的に国際的に広がるものであるにもかかわらず,国によって随分法律も違いまして,そのようなことを中心にこれまでやってまいりました。
この上の文化審議会の方に入れていただいて,どれほどのことができるのかというのは心配なところなんですけれども,国際という面では何かお役に立つことがあるのではないかと思います。今,この基本方針等を御説明いただき,また,内容を見てまいりますと,中には日本文化とか,あるいは我が国の国力とか国民全体の社会的財産と,いろんな言葉が出てきているわけですが,それは裏返しますとそうでないものとの区別をしているわけでありまして,その区別が合理的であればいいんですけれども,ともすれば縮みといいますか,日本のためになることならばお金を出すけれども,そうでないものには出さないということになっては非常にまずいだろうと思います。
そういう趣旨では恐らくないんだろうと思いますけれども,しかし日本を元気にしようみたいなことが今,随分言われていますと,日本というのが出てきてしまいまして,その中で恐らく私は一番違和感を抱くのは国民という言葉で,国民というのは国籍を基準にしていまして,国籍と日本文化とは必ずしも結びついていないので,余りその言葉を使うと日本にいる外国の方,あるいは外国で日本文化に感心を持っている方に対するその施策が欠落するおそれがあるので,むしろその定義はしない方がいいぐらいで,私の法律分野でも国際というのを定義しようという議論はいろいろあるんですけれども,なかなかできませんで,普通の交通事故でも車が外国製だったら国際的な事件かと,日本での交通事故であってもですね。そういう,すべてドメスティックに限定することがそもそもできない状況ですし,特に文化はこれこそ著作権以上に見えないもので,既に先ほどどなたか委員がお話になったように,もともと混ざり合って,流れてきて,どこかでいろんな方の参加のもとで醸成されてきたということでございますので,余りそこを定義しなくていいのかなと思います。
ただ,そうは言っても税金を使ってやるので,そこはどうかということですけれども,外国における外国文化も保護の対象にするんだと,我々は日本国として文化国家としてそこにもちゃんと目を配るということさえはっきりしていれば,今申し上げました縮みということはなくなると思いますので,どうも今の,少なくともこの基本,重点施策の中にはそこは入っていないのかなと思いますので,そういった観点から,ですからずっと法律をやってきて,文化的潤いのない人生を送ってきている最たる者の人間ではございますけれども,何か貢献できるとすれば,そういう国際的な観点かなと思います。よろしくお願いいたします。

○東倉委員
 東倉でございます。私どもの研究所は国立情報科学研究所といいまして,情報通信技術が中心になりますけど,人文科学から文化まで広いものを対象としております。この数年間,私はこの審議会の委員として国語分科会に所属させていただきまして,特に漢字ワーキンググループで常用漢字の見直しということに関連させていただきました。常用漢字の見直し自体が情報機器が非常に世の中に入ってきて,それによって常用漢字を読んだり書いたりするということは非常に大きな影響を受けたということがきっかけとなったわけです。情報通信技術,すなわちICTというのは日常生活とは切っても切れない関係に今ありまして,つい最近では大学入試とも切っても切れない関係になって,ヤフー知恵袋というQ&Aのサイトが悪意に利用されていると。現実に私どもは,このQ&Aのサイトはヤフーと契約してデータベースをヤフーから情報科学研究所に頂いていまして,情報科学研究所を経由して広く研究者の方々にそれを配布して,そこからどのくらいその知恵として役立つかなというようなことに活用していただいているということで,非常に関連深いこととして我々もとらえています。
情報通信技術というのは,非常に文化とは私はなじみがいいと思っていまして,情報通信技術を使って攻める文化ということ,すなわち文化的なものの情報発信というようなことにもっと使えるのではないかと,近年ではメトロポリタンオペラが非常に高画質な映像でメトロポリタンのライブ中継を日本で劇場中継するとか,そういったことは考えてみれば日本の方が非常に得意で,技術的に一番であったということで,その適用範囲の実験も過去に行われてきていたわけです。いろんなそういうライブ中継だけじゃなくて,情報発信のやり方としてまだまだ使っていただいていないところが多いのではないかと。異分野の方々にとっては,情報発信の中身がわからないために,そういった使いにくさがあるのではないかということで,私どもの責任の一端もあるかなというふうに思っていまして,これからそういういろんな文化活動にこういう技術も使っていただけないかというようなことを土台に置いて,ますますこの文化立国の支えとなっていきたいというふうに思っておりますので,どうかよろしくお願いいたします。

○都倉委員
 東倉委員の隣におります,「と」が短い都倉でございます。よろしくお願いします。ちょっと時間が1人残り計算すると1分,2分足らずしかないので簡単に。

○西原会長
 多少の延長は許されるかと。

○都倉委員
 そうでございますか。じゃ,2分ぐらいで。
僕は音楽著作権の方もちょっとやっておりますが,僕はいつも小泉内閣以来,日本は知的財産立国にならなきゃいけないと,日本がこれから得るものというものは高付加価値な知的財産であるということをよく言っておりますが,この知的財産という意味がよくわからないということを僕はよく申し上げるんですけれども,いわゆる科学技術の技術なのか,またそれの究極の知的財産というのは,高付加価値なものというものはやっぱり芸術作品ではないかというふうに僕は考えておりますが,科学技術の高付加価値なものが,著作権を侵していくというこの危険性を日常の生活で僕たちはすごく感じているわけですね。一番端的なのはデジタル技術で,これがなかったら世の中,我々は生きていけないわけですけれども,このデジタル技術というのが非常に中国を初めとしてアジア各国の映像から音楽まで,その技術がなかったら今の海賊版はあり得ないぐらい世界に浸食していると,こういう視点で僕はこういう技術というものは必ず責任を伴うということを強く今,音楽著作権協会の方で発信したいというふうに考えています。
僕たちは,19世紀はもちろん音楽の分野ではヨーロッパであり,20世紀は明らかにアメリカであり,21世紀はアジアというふうに信じておりますが,アジア各国で交流しておりますと,やはり著作権が確立されていないところに文化は育たない。これはもう,古い歴史,四千年の中国の歴史の中でもすばらしい文化は,これはもう否定できるものではありませんが,我々の世代では,早くそういう若い才能というものが世に出る,世界に出ていくためには著作権の整備が必ず必要だということを主張しております。いろんな分科会で僕は何かアサインされているみたいでございますけれども,できる限り御協力して,勉強もさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○土肥委員
 著作権分科会に配属されております土肥でございます。よろしくお願いします。
時間がないということですので,1点だけお話ししたいと思いますけれども,著作権分科会は当然ながら著作権制度の在り方ということを考えておるわけでありまして,しばしばそこでは著作権の保護ということが割合よく出てくるわけでございますけれども,私といたしましては著作物の利活用,こういったことが非常に重要である。つまりそれは,文化芸術立国ももちろん大事なんですけれども,それを通じて文化産業立国にもなるところでありますので,その利活用の面のバランスですね。それから,何よりも重要なのは,創作であります。文化財,著作物の創作,つまり創作のための人材をどう育成していくかということだろうと思います。
今回の予算案を拝見しますと,全体としては昨年に比べて増えておりますけれども,この若手,豊かな文化芸術の創造と人材育成という面からすると減っておるわけですね。こういう部分については,米国なんかでは個人の寄附によるところが非常に多くて,それが日本なんかに比べると100,200倍も違うということがよく言われるわけでありますけれども,日本人はタイガーマスク現象にもありますように,寄附は決して嫌いではないんですね。つまり,自分のファンドがどういう目的でどういうふうに役に立っているかということについての筋道さえはっきりわかれば,これは一気に米国並みということにはならないかもしれませんけれども,国の予算の足らないところは十分に補っていけるような仕組みができるのではないかということを私は期待しておるところであります。文化政策部会ですか,そういったところで,そういう仕組みも御検討をいただければ有り難いなというふうにお願いをいたしまして,私の意見にかえさせていただければと思います。

○中村委員
 ピアニストの中村紘子と申します。3歳からピアノを始めまして,今年でデビュー52年目なんでございますけれども,今つくづく思いますのに,子供のときにもっとやっておけばよかったと,本当に改めて,子供の脳みそというのはいかに重要であるか,一生を決める基本であるかというのをこの年になってしみじみと感じております。
例えば昨日,8時間練習しても,きょうケロッと忘れちゃったりするんです。それで暗譜しようと思っているのが,どうしても頭に入らない。ところが,思い出せば5歳のときに親せきのお葬式に行ったら,これが生まれて初めてのキリスト教式のお葬式で,賛美歌を聞いて感動しまして,この賛美歌を一字一句,そのときしか聞いていないのに,いまだに歌えるんです。それから,何か調子が悪いときにふっと何十年も練習しないでもパッとはじけるのが,8歳とか9歳とかで勉強した曲なんですね。いろいろと世界の大変業績を残した演奏家なんかの話も聞いてみますと,みんな十五,六ぐらいで演奏家としての物すごい高度な技術を完成させてしまって,あとはいかにレパートリーを冬眠前のリスのごとく蓄え込むか,それでもう二十過ぎちゃったら,余生はそれで暮らす,そのくらいの分野なんですね。これをなかなか一般的には理解されていない。
ピアノに限らず,ほかのいろいろな分野で,例えば京都の伝統工芸とか,そういったものでも,とにかく小さいときから技術を鍛え込まないと一生の損になる。そういった分野が,これは脳生理学の上から証明されているんですね。そういったときに必ず大きな障害になるのは,学校へ行くということです。この学校,特に小学校あるいはいっそ幼稚園,そういうところで大変幼児に手間暇かかる勉強をしなきゃならない,そういう分野に才能を持っている子供たちを,例えば午前中か午後かわかりませんけど,一般の学校に行かせると同時に,そういう午後から実技の勉強の方に行かせる,それを両立させる,そういう特殊な何かクラスというのがあってもよろしいのではないかと思っておりまして,私は実は二十何年か前にもやはり文部省の文化審議会で同様のことを申しましたんですけど,どなたも聞いてくださいませんでした。
今回,この文化芸術の振興に関する基本的な方針ということ,資料8を拝見しておりまして,本当に戦略に,若手を初め芸術家の育成支援,この育成を若い芸術家ではなくて,もっと幼年から必要な分野があるということを何とか御理解していただき,かつそれをサポートできるような,これは結局やらないと,表面的には技術的にみんな高くなっていますから何となくやっているようですけど,何となく超一流,歴史に残るような大芸術家は育たないですね。それはやはり極端に言って2歳,3歳からの何かそういった環境が大変重要になってくるのではないかと,改めて思っております。
そういう点に関しまして,もう一つこの育成,子供や若者を対象とした文化芸術振興策の充実,そういったことにもう一つ更に踏み込んだ何か教育方針を国が理解していただけたら,日本は本当の芸術大国として,将来大きなものに育っていく礎になるのではないかと思っております。そういったことのいろんな私の申し上げたようなことは,とっくに皆様お考えなのかもしれませんので,この文化審議会でこれからゆっくりお勉強させていただけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○中山委員
 中山でございます。この数年来,この会議で同じことばかり言って恐縮なんですけれども,文化庁の予算の一千億というのは余りにも少ないと,これは0が1つ違うんじゃないかという気がします。この財政厳しい折,毎年1%の増というのは,これは役所としては大変な努力をしているということは重々承知をしておりますけれども,絶対額として一千億というのは余りにも少ない。これは多分,東大1校の予算の半分ぐらいしかないんじゃないかという気がします。これが日本の文化政策の予算かというとちょっと悲しい気がするんです。
この報告書のキャッチコピーに文化芸術立国というのがございまして,これは私は大賛成で,これは非常に結構だと思うんですけれども,これにプラスいたしまして,先ほど土肥教授がおっしゃいました文化産業立国ということも入れた方がいいんじゃないか。このことは第3次基本方針を見ますと随所に散りばめてありまして,特に戦略5にそれは書いておりますし,予算を見てみますと22年度に比べると23年度の予算は,戦略5はかなり増額になっておりまして,文化庁としては力を入れているということはよくわかっておりますけれども,しかしやはり,その絶対額が余りにも少ないのではないかという気がします。
芸術に産業ということを言い出しますと結構反発が強くて,サッキノ改正でも産業的視点を入れようと思うと非常に嫌われるという状況にあるわけですけれども,すべての芸術とは言いませんけれども,ある種の芸術は産業と現在密着に結びついているだろうと思います。
よく言われますけれども,例えば「おくりびと」という映画は別に観光業のためにつくったわけではないでしょうけれども,山形の観光産業に非常に役に立っている。あるいは,韓国なんかはこれを国策的にやっているわけですけれども,先年,済州島に行きましたら,「チャングム」という韓流(はんりゅう)ドラマがありますけれども,あれのロケ地がたくさんありまして,チャングムが隠れていた洞くつとか,洗濯をした洗い場とかいっぱいありまして,行きましたら日本の御婦人方であふれておりまして,ちょっと男が行くのは恥ずかしいような面もありましたけれども,とにかく済州島の観光に非常に役に立っている。これは映画だけではなくて,去年,島根県の足立美術館というところへ行ってまいりましたら,畑の中にぽつんとある美術館なんですけれども,押すな押すなの大盛況で,まるでパンダじゃないかというぐらいたくさん客がおりました。これは横山大観とお庭で有名ですけれども,別に大観は観光業と関係なくかいているわけですけど,結果的に島根の観光に非常に役に立っている。
先ほど河東先生がおっしゃったように,観光の質ということももちろん問題だと思いますけれども,人が来てくれなければそもそも話にならないわけですから,まずは人を呼ぶということが非常に大事なことではないかと思っているわけであります。
この点は知的財産戦略本部でも非常に議論しておりまして,クールジャパンという,これはJポップとかアニメが中心ですけれども,それ以外にも日本食とかファッションとか全部含めて日本の文化を売りだそうということで議論をしておりますけれども,文化庁といたしましても,単に芸術というだけではなくて産業という観点を入れる必要がある。それによって税金の収入が増えれば,また文化政策に対する予算も増えてくるのではないかという,好循環が生まれてくると思います。是非,キャッチコピーといたしまして,文化産業立国ということも考えていただければと思います。以上です。
○森西委員
 森西でございます。文化財分科会に所属しております立場で,感じていることを1点申し上げさせていただきます。それは,文化財を支える技術技能の伝承の大切さと難しさでございます。これまでにも国や地域で支援を行ってきているところではございますが,やはり時代状況とともに課題が変化してきております。
例を2つ挙げてみます。
民俗芸能を考えてみますと,戦後,昭和30年代に娯楽の多様化ですとか過疎化が原因で衰退傾向にありましたときに,保存会が生まれたり,それまで女人禁制だった分野に女性が進出したりいたしまして振興が図られてまいりましたが,今また少子化という問題に直面をいたしておりまして,新たな施策が必要になってきております。
もう一つは文化財の保存技術ですが,これは例えば楽器を思い浮かべていただくとわかりやすいと思いますが,三味線やお琴をつくる技術者,またそこに張ります糸をつくる技術者の養成に加えまして,今また原材料の不足という問題が起こってきております。第3次の基本方針に伝承者養成のすそ野の拡大というものを挙げていただいておりますけれども,一層きめ細やかな調査や支援が必要であるというふうに感じているところでございます。以上でございます。

○鷲田委員
 新任の鷲田でございます。私は小学校のときからいつも発言順が最後で,大体言いたいことは全部言われてしまいます。先ほど中山委員からありましたように,私が一番やっぱりこの文化庁の予算を知ったときショックだったのは,成長から成熟へ,あるいは産業立国,経済立国から知的立国,文化立国へと大きな国の方針の転換が言われているのに比して,この文化庁の予算が日本の幾つかの大学の予算より少ないということはやはり大変ショックでございました。ただ,もうそのことは申し上げません。
1つだけこれまで言われなかったことを申し上げさせていただきますと,確かに文化立国とか文化産業立国と言われますが,やはり文化を語るとき,国として語るときは常にやはり経済と違う次元で,あるいは経済を活性化するというような文脈の中で語られることが多くて,今回も成熟社会における成長分野にしようとか,経済発展の基盤を担おうとか,戦略的投資をしようとか,いろんな波及効果にも目を向けようとかというふうに,やはり経済を活性化するという視点でまだ語られているところがあると思うんですが,本当に文化立国というのでしたら,逆に経済活動を,あるいは産業を文化の視点から見ていくということも必要になるのではないか。これからの企業というのはもちろんグローバルなルールの中で,あるいは論理の中で動いていかないといけませんが,同時にやはり日本の企業がこれまで尊敬されてきたのは,その企業文化あるいは日本独特の会社文化とか商道徳とかといったものだと思いますので,私たちはもう一度企業活動もグローバルの論理で,例えば安価な労働力を求めて全部外部に人材を求めるという,国外に求めるというのではなくて,日本の企業を文化の1つの組織として見直すような視点,そういうことをここから発信していくことも重要ではないかと思っております。以上です。

○西原会長
 それぞれの御見識を,これからの分科会ないし部会の御審議に生かしていただいて,御活躍くださいますことをお願いしたいと存じます。ありがとうございました。
では,最後に長官からごあいさつを頂きます。

○近藤文化庁長官
 文化庁長官の近藤でございます。
昨年の7月末に就任をいたしまして,前期の審議会の途中から参加をして,いろいろ御議論を拝聴してまいりました。このたびは第11期の第1回の総会に御出席を賜りまして,まことにありがとうございます。また,遠路はるばる来ていただいた方もいらっしゃると思います。ありがとうございます。既にこれからの1年間の活発な議論を予測させるようないろんな御意見が出てまいりまして,これからの御議論を楽しみにしております。
私は40年近く外務省に籍を置いて,そして今度,文化庁に来たわけですが,かねがね日本にはすばらしい才能を持った人材はたくさんある,それからそういった過去の才能,芸術文化を体現している有形無形の文化財もそこら中にある。しかし,それをうまくつないで国の力にしていく何かシステムが不十分ではないか。国全体としてのアートマネージメント的なものが不足しているのではないかということを,かねがね思ってまいりました。
つい最近,ノーベル化学賞を取られた先生の御講演を拝聴しましたが,全く同じことを言っておられまして,一人一人科学者はすばらしい。しかし,それが国の力になっていない。何かそこをつなぐシステムが欠けているということを言っておられまして,今,日本が世界に誇り得る先端技術と文化,共に同じ問題に直面しているのかなと思っております。そこのマネジメントの部分をどうするのか,そういったことにつきまして,是非先生方のこれからの御議論の中でアドバイスを賜りたいと思います。
いろいろ私も先ほどの御意見に対して申し述べたいところもございますけれど,お時間の都合もございますので,またこれからの政策部会,あるいは分科会,できる限り私も全行程出席をしたいと思っております。その場でチャンスがございましたら,私の考えていることも御参考までに申し上げて,いろいろ御批判,御忠言を賜りたいと思います。
本当にこれからの1年間,楽しみにしております。どうぞよろしくお願いをいたします。

○西原会長
 ありがとうございました。
時間を少々経過しておりますけれども,最後に事務連絡をよろしくお願いします。

○滝波企画調整官
 ありがとうございました。
今後の日程等につきまして少し御連絡ですが,この文化審議会のもとには先ほどから御説明していますように,分科会や部会が設置をされることになっております。具体的な審議につきましては,それぞれ分科会や部会の方でお願いしていきたいというふうに思っております。それぞれの日程につきましては,それぞれ御連絡をさせていただきたいと存じます。また,この総会につきましては,節目の折に総会ということで開催をしていきたいというふうに存じておりますので,またその必要の際に御連絡を差し上げたいというふうに存じます。なお,きょう付で就任いただいておりますので,各委員の先生方にはお机のところに辞令を置いてございますので,お忘れなくお持ち帰りいただきますようお願いしたいと存じます。
本日は,まことにありがとうございました。

○西原会長
 ありがとうございました。
以上をもちまして,文化審議会総会を閉会といたします。ありがとうございました。

午前11時43分 閉会

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