第11期文化審議会第2回総会(第54回)議事録

平成23年6月1日

【滝波調整官】  皆様,こんにちは。開会に先立ちまして,本日の会議の配付資料の確認をさせていただきます。
本日の資料ですが,議事次第がございまして,その下に資料1「文化審議会運営規則(改正案)」,資料2-1「展覧会における美術品損害の補償に関する法律等の施行について(通知)」,続いて資料2-2「美術品補償制度部会の設置について(案)」,続いて資料3「国語分科会における審議状況と今後の課題」,それから資料4として「著作権分科会における審議状況と今後の課題」,続いて資料5-1「文化財分科会における審議状況と今後の課題」,それから資料5-2として「指定等の答申をした文化財の概要」,資料6として「文化政策部会における審議状況と今後の課題」,それから資料7-1として「東日本大震災に伴う文化芸術分野の主な被害状況について」,資料7-2としまして「東日本大震災を受けた文化庁等の主な対応について」。それから,「宮田委員御提出資料」が付いているかと思います。
さらに参考資料としまして,いつものように「委員名簿」,「文化審議会について」,「文化審議会関係法令」,それから「東日本大震災復興構想会議の開催について」の閣議決定,それから「これまでの審議過程において出された主な意見」という,復興構想会議の中間整理,それから,それらとは別に机上資料として「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」のリーフレットが置いてあるかと思いますので,適宜御参照いただきたいと思っております。そのほか,いつものようにファイルにとじました参考資料集があろうかと思います。
以上が本日の配付資料でございます。特に過不足等,ありませんでしょうか。
特にないようでしたら,御出席予定の先生方はほとんどお集まりでございますので,会長の方で以下,お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【西原会長】  では,定刻になりましたので,ただいまより文化審議会第54回総会を開催いたします。本日は御多用のところ,多数御出席いただきまして,誠にありがとうございます。開会に当たりまして,近藤長官から一言御挨拶を頂きたいと存じます。

【近藤長官】  文化審議会の第54回総会開会に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。委員の先生方におかれましては,大変御多忙の中,それぞれ,国語,著作権,文化財の分科会,それから文化政策部会におきまして非常に貴重な御意見を賜り,御審議いただいておりますこと,改めてお礼申し上げます。それから,この総会は3月11日の大震災以降,初めての総会でございます。後ほどお時間が若干あると思いますので,是非,この震災の対応につきましても先生方の御意見を賜りたいと思います。
私どもは日ごろから,文化芸術というものをもっと国民生活の中心に位置づけ,そしてまた国の政策の柱にもしていくべきだということを強く感じ,そういう方向で先生方の,各分野においての御指導を仰いできたわけでございますが,こういう大震災は,もちろんまずは人命,そして被災者の方々の生活のとりあえずの復旧といったことが大事ではございますが,ある意味では大きな地域,場合によっては町ごとゼロから造り直すような,大変な作業がこれから長い間,続くわけでございますが,そういうときに私どもが日ごろ考えております,信じております文化芸術,あるいは精神性,精神面の重要性といったことを是非反映させていくべきではないかと考えております。
過去の,阪神・淡路も含めていろいろな大震災等々の事例を見ますと,どうしても目の前の,目に見える物理的,肉体的な回復,復興に目が向いてしまい,メディアの目もそちらに移りがちである。その結果として,気がついてみると,一応復旧はできたけれども,実は文化が,伝統が,歴史が失われてしまったというケースもあったように聞いております。今度はそういうことがあっては決してならない,そういう意味では今からこれからの建設のつち音を聞きながら,確実にそれぞれの地域の文化,歴史,住んでいる方々のアイデンティティーの基になるものを同時並行的に創っていくことによって,精神面での支えにも貢献していく,それに対して国として,そしてまたそれぞれの立場から貢献を,御支援していくということが大変大事だろうと思っています。
現在,行われております復興構想会議というものも,それぞれの分野の大家の方々がお集まりいただいて,大変いい議論をしていただいておりますし,そのもとの検討部会というところでも,より広い分野の方々が,良い議論をしていただいております。その中で,やはり復興には文化芸術が一つの大事な柱であるという議論は出ているというふうに了解しております。しかし,なかなかこういうソフト面というのは形になりにくいだけに,どうしてもいざというときに後回しになってしまう。私どもが予算とか法律,制度等でいろいろ作業をする上でも,どうしてもすぐに目に見える成果が出ないゆえに,この文化芸術分野というのは常に置いてきぼりを食らうリスクがあると思います。そういうことをよく踏まえた上で,最初のうちからしっかりとした文化芸術を軸とした,そしてその地域の伝統,歴史を踏まえた復興に御協力をしていく,そういうしっかりとしたレールを今から敷いていきたいと,そこまでは思うんですが,じゃ具体的に何をしたらいいのか。それぞれの地域には地域の独特の伝統がございましょうし,中央から勝手に物事を押しつけるわけにもいかない。地域の方々の御意思を一番,尊重していく。しかし同時に中長期的な,先ほど来申し上げているような視点もある程度,こちらからサジェストしていかなければいけない。どういう形でそれを実現したらいいのか,どこの地域にはどういう形のものを,仕組みを,あるいは場合によっては箱もの的なものを,ソフトを入れる箱を造ったら良いのか,なかなか一朝一夕に良いアイデアが浮かんでくるわけではございません。
そういうことで私どももいろいろ考えておりますけれども,是非委員の先生方,それぞれのお立場,それぞれの御見識をフルに御披露いただきまして,今からどういうことができるか,どういうレールを今から敷いておくべきかということにつきましても,是非お知恵をいただければと思っております。きょうの時間は限られておりますけれども,今後の分科会や政策部会,それからそれ以外の場でも是非そういったことで,私どもに御指導,ごべんたつをいただければと思います。
そういったことをお願いいたしまして,とりあえずの開会の御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【西原会長】  ありがとうございました。
今回は,1回の会合に御欠席でありました内田委員と林委員に御出席いただいておりますので,一言ずつ御挨拶を賜ればと思います。内田委員からよろしくお願いいたします。

【内田委員】  お茶の水女子大学の内田伸子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【西原会長】  では,林委員。

【林委員】  林でございます。よろしくお願いいたします。

【西原会長】  ありがとうございました。
本日の議題でございますけれども,議事次第にありますように3つあります。第1は,美術品補償制度部会の設置について御審議,御決定いただくということでございます。議題の2は,各分科会等における審議の状況について御報告いただくということ,それから最後に議題の3としまして,このたびの東日本大震災への対応等について意見交換を行う,その3つを予定しております。
まず,議事に先立ちまして,本総会運営規則の改正についてお諮りしたいと思います。事務局より御説明をお願いいたします。

【滝波調整官】  資料1と参考資料3をお手元にお開きいただきたいと思います。資料1,文化審議会運営規則の改正案ということでお示しさせていただいております。この資料1の1ページ目のところにアンダーラインを引いた箇所がございます。会議の招集のところが第2条にありますけれども,ここに第2項として新設し,「前項の場合において,会長は,審議会の会議を開く暇がなく,合議によらないことをもって審議会の運営に特段の支障を生ずるおそれがないと認めるときその他正当な理由があると認めるときは,持ち回り審議とすることができる」といった旨の規定を新設しようというものでございます。
この趣旨でございますが,ただいまも会長から本日の議題の御紹介がありましたが,本日,美術品補償制度部会の設置についてお諮りしようと思っております。そういうことでこの総会を開催しているわけでございますが,時宜を得て,今回,東日本大震災への対応等についても議題を設けるということも併せてしておりますけれども,今後,例えば今回のような,美術品補償制度部会といった形で部会の設置のみを議題とするようなケースを考えますと,そのためだけに総会を毎度,開催するということについてなかなか,費用対効果の面からも難しいものがあるのかなということも考えまして,合議による審議会を開催せずとも,持ち回り審議による開催が可能であるというふうにしてはどうかと考えまして,その旨の規定を設けようとしたものでございます。なお,その際に,持ち回り審議の乱用は避けなければいけないというふうに存じますので,その旨,なるべく限定がかかるような規定ぶりにした上で,第2項として今回新設しようとするものでございます。それが1点目でございます。
それからもう1点目は,改正に直接かかわらない事柄でございますけれども,従来,運営規則あるいは公開規則といったものにつきましては,その運用上,各期の時限的な扱いということで運用してまいりました。今回,第11期ということになっておりますけれども,何らの修正がなくとも期を改めるごとに第1回の総会において決定していくというふうな運営規則,公開規則の手続の仕方をしてきましたけれども,今後,特段の修正の必要がない限りにおいては,期を越えて恒常的に効力を持たせるという扱いにしてはどうかと考えております。この点については資料1の中で,特に改正するといった事柄ではなくて,運用上の問題としてそのような扱いにしていきたいということを考えているものでございます。
以上の2点につきましてお諮りしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【西原会長】  ただいまの御説明につきまして,御質問等はございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
それでは,資料1の運営規則改正案につきまして,案のとおりに決定させていただきたいと存じます。それと同時に,今,御説明のありましたように,この運営規則と,前回総会で決定した公開規則につきましては,運用上,期を越えて効力を有する,したがいまして,期が変わるごとの決定はしないという扱いとしたいと思いますけれども,御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【西原会長】  ありがとうございます。では,その旨,決定させていただきます。ありがとうございました。
それでは,議題1に入ります。美術品補償制度部会の設置についてでございます。今御覧いただきました運営規則第4条の第1項,資料1の4ページによりますと,部会の設置につきましては会長が審議会に諮ることとされておりますが,まず,美術品補償制度創設の経緯,それから制度概要,また今回の部会設置の趣旨につきまして事務局より御説明をお願いいたします。

【滝波調整官】  それでは資料2-1及び2-2を御覧いただきたいと存じます。資料2-1は,展覧会における美術品損害の補償に関する法律等の施行についての通知ということで,ちょうど本日付の通知となっております。この法律は,昨年の臨時国会に政府から提出いたしまして,継続審査となった上で今通常国会において先般,成立し,4月4日付で公布されているところでございます。それにつきまして,このたび,本日6月1日付をもちまして施行されるということになりまして,その旨,関係機関に通知するというものがこの資料2-1でございます。
この法律でございますが,2-1の通知文の真ん中あたりに趣旨が書いてあります。本法は,政府が美術品の損害を補償する制度を創設することにより,海外等からの美術品の借受けの円滑化,展覧会の主催者の保険料負担の軽減等を図り,国際レベルの展覧会や地方巡回展の開催を促進しようとするものでございます。こういった新しい制度を動かしていくことになりますけれども,その際に,次のページをお開きいただきますと,法律等の概要が書いてありますが,ローマ数字1,法の概要の,少し飛びまして2の補償契約というところがございます。ここの(1)マル1を御覧いただきますと,政府は,展覧会の主催者を相手方として,当該主催者が展覧会のために借り受けた美術品に損害が生じた場合に,政府がその所有者に対し当該損害を補償することを約する契約,補償契約を締結することができるというふうなくだりがございます。
この補償契約を締結するに当たりまして,少し,条文,詳しくなるんですが,後ろの方に別添資料としまして,展覧会における美術品損害の補償に関する法律の本文がございます。ここの中で少しめくっていただきますと,第12条という規定がございます。業務の管掌という規定ですが,ここの第2項で「文部科学大臣は,補償契約を締結しようとする場合には,あらかじめ,文化審議会の意見を聴くとともに,財務大臣に協議しなければならない」という規定がございます。この規定を受けまして,文化審議会が具体的な中身の審査を行っていくということになるわけでございます。その際には,補償契約を締結しようとする場合に,契約の申込みがあった展覧会につきまして,主に制度の対象となるのかどうかの判断をするということ,それから補償対象とする美術品は何なのかということ,それから補償対象とする美術品の約定評価額は幾らぐらいなのかといったような事柄について,具体的な審査を行っていくことが必要になってくるということでございます。
これを具体的に審査いただくための部会として,今回,資料2-2として美術品補償制度部会の設置についてお諮りするものでございます。ただいま西原会長からも御説明がございましたように,審議会令,あるいは運営規則に基づきまして,文化審議会に美術品補償制度部会を設置しようとするものでございます。その具体的な調査審議事項としましては,(1)に記載のとおり,先ほど御説明したような事柄についての審議会の権限に属させられた事項について調査審議していただくとともに,その他上記に関連する事項について御審議いただくものでございます。
概要説明は以上でございます。よろしく御審議のほどお願いします。

【西原会長】  ありがとうございました。
それでは,美術品補償制度部会の設置について,資料2-2の案のとおりお諮りさせていただきたいと思いますけれども,ただいまの事務局の説明につきまして,何かご質問,御意見等ございましたら是非御発言いただきたいと思います。特に,関係する委員の方々,何かご意見等,ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
特段の御意見がないようでしたら,それでは資料2-2のとおり,美術品補償制度部会の設置について決定をしたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【西原会長】  ありがとうございます。では,その旨決定させていただきまして,構成委員を決めなければいけないわけでございますが,資料2-2の別紙のところを御覧いただきますと,委員候補の名前が挙がっております。それによりますと,ここに御出席の青柳委員,佐々木委員におかれましては,それぞれ文化政策部会及び文化財分科会と兼務いただくということになりますが,よろしゅうございますでしょうか。これは,会長が指名してよろしいということでございますので,どうぞよろしくお願いいたします。それから,その他の委員のお名前につきましても,どうぞ御了承くださいますようにお願いいたします。ありがとうございます。
では,これで議題1を終了いたしまして,議題2にまいります。各分科会等における審議状況について御報告いただくということでございます。まず,国語分科会でございますが,林分科会長と代理である私から報告させていただきます。よろしくお願いいたします。

【林委員】  資料3を御覧いただきたいと思います。ここに記しましたうち,日本語教育に関しましては日本語教育小委員会の主査をなさっていらっしゃいます西原会長からお話しいただくことといたしまして,それ以外を私の方から簡単に御報告申し上げます。
まず,これまでの審議状況の最初の丸印でございますが,常用漢字表の改定に係る審議が終わりましたので,今後,取り組むべき調査審議事項についての検討をするために,問題点整理小委員会を設置いたしました。これは本年,5月25日の国語分科会においてでございます。
それから,1つ飛ばしまして国立国語研究所の大学共同利用機関法人への移管が行われましてから,本年10月で2年が経過いたします。法律に基づきまして,国語に関する調査研究等に係る業務を担う組織及び当該業務の在り方について検討する必要がございまして,そのためにやはり同日,5月25日の国語分科会におきまして,8月ごろに国語研究等小委員会を設置して,そこで検討を行うことになっております。
これからでありますが,今後の課題の最初の丸印でございますが,今期末までの国語の改善及びその普及の観点から,国語分科会として今後取り組むべき新たな調査審議事項について検討を行う予定でございます。それから,最後の丸印でございますが,国語研究等小委員会におきましては,8月ごろに設置する予定でございまして,10月中旬までを目途に国語施策の観点から国語に関する調査研究等に係る組織・業務の在り方について検討を行うことを予定しております。なお,この検討に際しましては,科学技術・学術審議会研究環境基盤部会に設置される予定の小委員会と連携して進めることになってございます。
私の方からは以上でございます。

【西原会長】  ありがとうございました。続きまして,今お読みくださらなかった,これまでの審議状況の2番目の丸印のところでございますが,日本語教育小委員会の方では,生活者としての外国人ということで取り組んでまいりました。今まで,標準的なカリキュラム案と活用のためのガイドブックを取りまとめました。今期は5月25日の分科会におきまして,引き続き日本語教育小委員会を設置し,カリキュラム案等を踏まえた教材を作成,そして生活者としての外国人の日本語能力の評価及び日本語指導者の指導力の評価について検討するということになりました。それを受けまして今期はそれらのこと,教材等の作成,評価の報告書を取りまとめると同時に,指導者の指導力についての大枠の提示を行う予定にしております。
以上でございます。
続きまして著作権部会の御報告を頂くんですけれども,今日は土肥分科会長,中山分科会長代理ともに御欠席ということでございますので,永山著作権課長からの御報告をお願いいたします。

【永山課長】  それでは,資料4を御覧ください。著作権分科会の審議状況について御説明申し上げます。分科会は,去る4月18日に第1回が開催されました。その1回目の会議で,最初の丸にございますように2つの小委員会,法制問題小委員会及び国際小委員会の設置を決定いただいております。検討事項といたしましては,次の丸になりますが,法制問題小委員会におきましては10期,昨期からの継続の検討事項として2つ,マル1にございますネット上の複数者により捜索されたコンテンツに係る課題,マル2,間接侵害に係る課題,この2つの課題を引き続き検討を行う。それに加えまして今期から新たな検討課題として権利制限規定の見直しについても検討を行うことにしております。今後,法制問題小委員会におきましては権利者,利用者を含めた関係団体のヒアリングを予定しているところでございます。また,国際小委員会におきましては,国際的ルール作りへの参画の在り方に関する事項について審議を行う予定となっております。現在,2つの小委員会で精力的な検討を頂いているところでございます。
私からは以上でございます。

【西原会長】  ありがとうございました。続きまして文化財分科会の審議状況と今後の課題につきまして,佐々木委員からお願いいたします。

【佐々木委員】  それでは,今期第11期の文化審議会文化財分科会における審議状況等について御報告を申し上げます。資料5-1を御覧いただきたいと思います。
分科会の開催状況でございますが,今期は本年2月28日に第112回分科会を開催し,5月20日の第115回分科会まで4回,開催いたしております。文化財分科会では,文化財保護法第153条の規定によりまして,文部科学大臣又は文化庁長官から諮問された案件について調査審議を行っております。諮問案件については基本的に文化財分科会に設置されております5つの専門調査会の調査に付し,その調査報告を受けて文化財分科会でその内容を調査審議し,決議を行います。今期はこれまでに重要文化財の指定,重要文化的景観の選定等について100件,登録有形文化財の登録等について199件,重要文化財や史跡等の現状変更の許可等について,530件の答申を行いました。
それでは,答申を行った文化財について幾つか御紹介いたしたいと思います。建造物関係の重要文化財については,本年4月の第114回文化財分科会において,大分県大分市の柞原八幡宮など8件の指定等について答申をいたしました。資料5-2の1ページを御覧ください。柞原八幡宮は,本殿の周囲に楼門や申殿,宝殿などが特徴的な配置で立ち並んでおります。本殿は,類似の少ない八幡造本殿であるとともに,楼門や申殿を軸線上に並べるなど,宇佐八幡宮を範とした独特の本殿形式と社殿配置を持ち,縁に花堂と呼ばれる小建築を設け,楼門は下層に軒唐破風つきのひさしを付すなど特異な形式で,顕著な地方的特色を示すものであります。
美術工芸品関係の重要文化財については,50件の指定等について答申いたしました。本年3月の第113回文化財分科会では,絵画の部において紙本著色黄瀬川陣の安田靫彦筆六曲屏風を重要文化財に指定するよう,答申をいたしました。資料5-2の2ページをごらんください。安田靫彦は,小林古径,前田青邨と並んで評価の高い,再興日本美術院の日本画家であります。本作品は,昭和16年に開催された再興第28回日本美術院展に出品されたものでございまして,駿河国,黄瀬川における源頼朝,義経兄弟の20年ぶりの対面を一双のびょうぶ絵に描いた靫彦の代表作であります。
史跡名勝天然記念物については31件の指定等について答申いたしました。先月の第115回文化財分科会では,宮城県気仙沼市の十八鳴浜及び九九鳴き浜を天然記念物に指定するよう答申をいたしました。資料5-2の3ページをごらんください。十八鳴浜は,気仙沼湾に浮かぶ大島の北東部に位置する鳴き砂の浜であります。九九鳴き浜は同じく気仙沼市の唐桑半島の西部に位置する鳴き砂の浜であります。なお,2つの浜とも今回の東日本大震災で津波の侵入を受けましたが,気仙沼市教育委員会が直後に現地確認や,あるいは専門家による調査を行っておりまして,浜の砂の量は変わらず,また砂も鳴くことが確認されております。東日本大震災への対応につきましては,また後ほど報告事項がございます。
次に,重要文化的景観については7件の選定等の答申をいたしました。先月の第115回文化財分科会では,群馬県邑楽郡板倉町の利根川・渡良瀬川合流域の水場の景観を選定いたしました。資料5-2の4ページであります。群馬県の最東端に位置する板倉町には,利根川と渡良瀬川の合流点に形成された低湿地,水場が展開しております。当地は,古くから洪水多発地帯でありまして,豊かな土壌,生態系がはぐくまれる一方で,生活を営むための様々な工夫が行われてきました。大河川の合流域で形成された低地における水と共生する生活,生業上の様々な工夫によってはぐくまれた価値の高い文化的景観でございます。
続きまして,重要伝統的建造物群保存地区につきましては,4月の第114回文化財分科会において,福島県の南会津町前沢伝統的建造物群保存地区など,3件の選定等の答申をいたしました。資料5-2の5ページを御覧ください。当該地区は,明治末期から昭和前期に立てられたかやぶき民家が混在して建ち,周辺の耕地,山林,河川などとともに,会津地方南部の雪深い山間部に独特な農村集落の歴史的風致を形成し,我が国にとって価値の高い建造物群でございます。
次に,世界文化遺産特別委員会の調査についてでございます。今期も,世界文化遺産特別委員会を設置して調査審議を行っております。なお,世界遺産として推薦を行った結果でありますが,先月7日にまず文化遺産候補である「平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」と,それから自然遺産候補であります小笠原諸島について,世界遺産委員会の諮問機関から世界遺産一覧表への記載が適当との勧告がなされたところであります。また,文化遺産候補で国立西洋美術館が含まれる「ル・コルビジェの建築作品−近代建築運動への顕著な貢献−」につきましては,先月27日に世界遺産一覧表への不記載が適当との勧告がなされました。今月19日からパリで行われます世界遺産委員会において,世界遺産一覧表への記載について最終的に決定される予定でございます。
以上が審議内容の報告でございます。今期は,引き続きまして国宝,重要文化財等の指定のほか,重要無形文化財や民俗文化財の指定,それから選定保存技術の選定等についても審議していく予定でございます。
次に,先ほど申し上げました東日本大震災への対応に関する報告でございます。先日,5月20日の第115回文化財分科会におきまして,東日本大震災の復興に向けての意見交換を行いました。その際,文化財を今後,復興における一つの重要な軸として位置づける必要があること,また,各自治体の復興再生事業においては,文化財担当者や専門家の意見を十分に取り入れた復興計画が望まれること,そして登録文化財や地方指定文化財への支援が必要であるということ,このような意見がございましたので,ここに御報告を申し上げます。
以上,今期,第11期の文化財分科会の検討状況と今後の課題について,報告を終わらせていただきます。

【西原会長】  ありがとうございました。続きまして,最後に文化政策部会につきまして宮田副会長よりお願いいたします。

【宮田会長代理】  2月28日,前回,第11期の総会において部会の設置を決定いたしました。3.11がございまして,当初の日程を延期いたしまして,4月27日に第1回の部会を開催させていただきました。やはり,主な議題としてはこの大震災への対応について,各委員から説明があり,あるいは取組等について長い時間をかけて意見交換をさせていただきました。震災からの復興に向けた文化芸術分野における様々な取組の紹介,これには基金の創設,募金活動,大学やNPO法人による支援活動等々を含め,また阪神・淡路大震災のときのいろんな事例も紹介しながら,今後に向けてどのような対策をとったらいいかということを御討議いただきました。1つの例でございますが,記憶のミュージアムに関する御提案,復興構想会議中,中間整理の中にも関連の提案がございました。その後,予定時間を大幅に超えたんですが,この意見交換は大変重要なものであったと思っております。今後,文化財や文化芸術の復興,復旧に,私ども文化芸術の観点からどのようなことができるか,日本全体を見て何ができるかということを積極的に意見交換をしたいと思います。
次に,本題の第3次の基本方針につきましてでございますが,概要の説明をし,23年度予算への反映状況についての報告がございました。今期の部会において中心的なテーマになる第3次基本方針の概要,予算への反映等について復習的に協議をいたしております。今後の課題になりますが,第3次基本方針を踏まえ,重点戦略に係るPDCAサイクルの確立を目指し,その適切な進行管理を図る。具体的には主として以下の事項について,調査審議を行う予定でございます。第3次基本方針の抜粋にもあるとおり,重点戦略に係るPDCAサイクルを確立するために各施策の進ちょく状況を点検していく,あわせて不断の改善を図るために今後の文化政策,予算や制度を含めて意見交換を行いたいと思っております。
進ちょく状況の点検の一環としましては,文化芸術活動の助成に関する審査,あるいは評価の在り方,劇場や音楽堂の制度的な在り方,国立文化施設等の運営の在り方等について検討し,意見交換を行うというふうに考えております。これらの審議を通じて第3次基本方針の初年度において,各施策の確実な進行管理,ペーパーだけに終わるのではなくて,確実にできる進行管理を行っていくということを皆さんで確認をいたしました。
以上でございます。

【西原会長】  ありがとうございました。ただいま頂きました御報告につきましては,できれば後ほどの時間に御意見等を賜ればと存じます。時間もございますので,議題3に移らせていただきます。先ほども申しましたが,東日本大震災への対応等ということで,近藤長官からも御説明,御挨拶を頂きましたし,文化財分科会,それから文化政策部会でもいろいろと御議論いただいたと報告されました。この機会に,この総会といたしましても意見交換を集中して行えればと思います。まず,東日本大震災を受けての文化庁の対応等につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。

【滝波調整官】  それでは,資料7-1を御覧いただきたいと存じます。東日本大震災に伴う文化芸術分野の主な被害状況をまとめたものでございます。記載のとおり,1つには国指定等の文化財の被害状況としまして,本日現在で1都1道18県にわたりまして,552件の国指定等の文化財に何らか被害が生じているということがございます。具体例につきましては,被害を受けた主な文化財というところに記載のとおり,幾つか被害が生じているところが見て取れるかと思います。それから2番で,文化会館等の被害状況につきましても,5月30日現在で文化庁として把握しているものにつきまして申しますと,被害のあった報告としては257の施設がございます。主な被害状況については,ホールの天井の落下等の被害があったということがございました。
続きまして資料7-2でございます。東日本大震災を受けた文化庁等の主な対応についてというペーパーでございます。3月11日以降,様々文化庁としても取組をしてまいりましたけれども,それを少し整理してまとめたものが,この7-2の資料でございます。かいつまんで御説明しますと,まず1番,文化庁長官メッセージの発出でございます。これは,震災の発生後,文化庁長官の方からメッセージを発出したところでございまして,2本ございまして,1本が,当時の名前ですが「東北地方太平洋沖地震被災文化財の救援と修復に協力を」という形のメッセージ,これは後ほど御説明したいと思いますが,文化財レスキュー事業に関する支援,あるいは義援金のお願いをした内容のメッセージでございます。それから「当面の文化芸術活動について」ということで,これについても別添2にありますような,あまり自粛ばかりするのではなくて,文化を通じて日本の復興を成し遂げていこうといった趣旨のメッセージを出しているところでございます。
それから2番の文化財調査官の派遣ということで,被災地等から要請があった場合に順次,文化庁の調査官の派遣をしてきております。文化財建造物等の応急措置などの対応をそれに応じてしてきているところでございまして,本日現在,9県において190件の調査件数に達しておるところでございます。今後も引き続き進めていくこととしております。
続いて3番が,重要文化財等の滅失,毀損の場合の届出義務の延長ということで,滅失,毀損等があった場合に本来の履行期限までに履行しなければいけないところ,この震災によって特例的にその期間が延長されるといった趣旨の通知を出してきているところでございます。
4番は,埋蔵文化財の調査の弾力的運用ということで,これについても文化財保護法の運用の弾力化によりまして,埋蔵文化財の調査が弾力的にできるようにしようといった趣旨の通知を出しているところでございます。
裏面に飛びまして5番,文化財レスキューの事業でございます。これは別添3の裏面を御覧いただきますと,スキーム図がございます。それも御覧いただきながらと思いますけれども,東京文化財研究所を事務局といたしまして,被災文化財等救援委員会といったものを組織して,緊急に保全措置を必要とする文化財等の救出,応急措置,博物館等における一時保管などを行うものでございます。その際には,公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団さんを窓口として寄附金あるいは義援金を募って助成を行っていくという形にもなっております。これまでに,石巻文化センター内の文化財の搬出・応急措置,あるいは岩手県立博物館への資材の供給などの実績を積んできております。
次に6番,文化財ドクター派遣事業でございます。これも詳細は別添4のところに記載してあるわけでございますけれども,これについては主に建造物等の不動産を対象としたものでございます。文化庁と社団法人日本建築学会が連携,協力して現地に文化財ドクターと呼ばれる調査員を派遣して,建造物の被害状況を調査するとともに,復旧復興に向けての支援を行うという事業でございます。既に栃木県栃木市を第1号にして,調査員を順次,派遣してきているところでございます。
次に7番,国立文化施設の対応でございます。地方の博物館,美術館や民間の美術館,博物館等においても様々,この震災を受けての影響が生じているところでございますけれども,国立の文化施設におきましても,公演,展覧会等について,ここに記載のように公演が,例えば延期になったり中止になったりといったケースが生じてきております。また,そういったことのほか,帰宅困難者の受入れであるとか,支援物資の提供,義援金箱の設置といったような取組も講じてきているところでございます。詳細については別添の5のところに記載のような内容になってございます。
文化庁等の対応については以上のようなことでございますけれども,これに加えまして,参考資料4及び5を参考程度に御覧いただければと思いますが,これは先ほどからの紹介の中にもありましたけれども,政府におきましては4月11日付で東日本大震災復興構想会議というものを発足し,それぞれ精力的な審議を行っているところでございます。この復興構想会議の趣旨のところを少し見てみますと,「被災地の住民に未来への明るい希望と勇気を与えるとともに,国民全体が共有でき,豊かで活力ある日本の再生につながる復興構想を早期に取りまとめることが求められている」ということで,有識者から成る会議を開催し,復興に向けた指針の策定のための復興構想について,幅広く議論を行うということで今,御審議されているところでございます。
当該会議の方で先般,5月29日付で中間整理が出されておりまして,それについては参考資料5のところに本文を用意してございますので,御参照いただければと思います。なお,この復興構想会議につきましては,参考資料5の箱の中にありますように,本年6月末目途の提言,第1次提言と呼んでおりますが,これが取りまとめられる予定になっているということでございます。
事務局の説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【西原会長】  ありがとうございました。また,各委員におかれましてはそれぞれのお立場からこの復興につきまして活動をしていらっしゃることと思いますけれども,きょうは特に宮田委員から資料を頂いております。それにつきまして宮田委員から御報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。「宮田委員御提出資料」というものが添えられていると思います。

【宮田会長代理】  貴重なお時間を頂きまして,ありがとうございます。1枚でございますが,東京芸大が行えることということで,裏面も含めまして4つの提案をしております。1つ目がチャリティコンサート,これはもう終わったものでございますが,朝日新聞の記事に,高校生がZARDの「負けないで」という曲をトランペットで吹いている,その写真の記事を見て,そこからすべてがスタートしたわけでございますが,たまたま我が大学の卒業生である東フィルのトランペット奏者の安藤さんを呼びかけ人の一人としまして,ほとんどが芸大の教員や学生たちでやったんですけれども,多くの賛同者を得まして完売いたしました。そして,高校生の彼女も呼んで演奏してもらいました。この中で大変,僕が感動的であると思うのは,寄附金を,楽器を買って現地に送る。送るだけではなくて,中村先生がいらっしゃいますからあれですが,やはりそれに良い指導者がいて,本当に良い,すてきな音楽を鳴らす,演奏することによって初めて勇気が得られるのではないかということで,5年,10年というスパンをかけて我が大学がやっていきたいというふうに思っております。
2番目でございますが,ちょうどきょうからスタートしたんですが,美術学部の教員が作品を持ち寄りまして,大学の中にあるアートプラザで作品の販売をしております。これは全て芸術振興財団の方に,私が理事長をやっていますが,そこに寄附をし,そしてそれが文化庁の方へ行き,文化施設に,先ほどのレスキュー等々に持っていくというふうに考えております。
裏面になりますが,大船渡と郵船というのは大変長く,いろいろなおつき合いがあったそうでございますが,ちょっと交渉いたしまして,飛鳥2を大船渡の港につける。現在,大船渡の港は何もありません。数年たったら家が建ちます。そうすると,飛鳥2は見えなくなります。何もないところで飛鳥2を呼んで,そこで絵をかく。同時に飛鳥2の中に多くの方,若者たち,子供たちもお呼びして,人間が作ったときの最高のものと,何もない自然の厳しさとの関係を絵にとどめてもらい,そして音楽で心をいやしてもらうという企画を立てております。これは当然,私も行きますが私も初めて乗りますので,大変期待をしております。
最後になりますが,大学美術館でございます。この美術館で,実はこの時期に,今年は形のない美術展をずっとやっておりました。例えば先日終わりましたが香りの展覧会,香りは形がないんですが,それを展覧会にする。同時にこの8月には夏ですから涼しくしようということで,幽霊の展覧会,うらめしや展というのを企画しておりましたが,いかんせん,これはちょっとということでやめました。かわりに,その辺が有り難いことに,うちの連中はすぐ,そのままにしたらもったいないと叫びましたら,茨城近代美術館の天心記念館だとか,茨城大の五浦美術研究所,水戸芸術館,いわき,郡山,宮城の美術館,多くの方が今,実際に開館できないようなもの,それぞれの展覧会場でそれぞれにやるのもいいんですが,きょうのように多くの方がいらしたときに,ちゃんと横軸をきちんと持つということの展覧会をしたいと思いまして,一つの会場に集結することによってこの厳しい状況を乗り越えていく展覧会をしようということで,各館に呼びかけております。これも必ず成功するのではないかと思っております。
一つの事例でございますが,ちょっと紹介させていただきました。

【西原会長】  ありがとうございます。同様な御計画を既にお持ちの,又は展開していらっしゃる委員も多くいらっしゃることと思います。この機会でございますので,被災地の復興に向けて文化芸術が担うべき役割ということで御紹介いただく事例,あるいは御意見等,ございましたらどなたからでも結構でございますので,御発言いただけたらと存じます。よろしくお願いいたします。
佐々木分科会長からは,何か。

【佐々木委員】  先ほど,事務局から詳しい説明があったんですけれども,その中でやはり文化財を救うという事業は,なかなか今,大変でございまして,1つは先ほどお話がありましたように,建造物等の不動産の文化財を中心にしました,文化財ドクター派遣事業というのを現にやっていらっしゃいます。それから,私どもの文化財機構を中心にいたしまして,文化財レスキュー事業,これは被災文化財等救援委員会というのを立ち上げまして,文化財研究所の中に事務局を置いて活動しているわけでございます。
これは現状はなかなか大変なようでございまして,現在,現地の本部に私どもの機構から常に1名,常駐させております。来週から2名体制で臨むわけでございますが,現地は本当に大変で,大変という意味は,1つはなかなか足が確保できない。ですから足の確保のために研究所から2台,車を持って行っているわけですけれども,そういう車で足をまず確保する。それから,現地の文化財に非常に詳しい方が被災されている,あるいはお亡くなりになっているということで,的確な,正確な情報がなかなか得にくいというのも現状でございます。そういうこともございますが,とにかく現地に人を常駐させまして,現地からの要望があればできるだけ的確に,迅速に対応したいと思っております。
現在は,どちらかといいますと応急の処置をするための,保存の箱であるとか,あるいは物を包む薄い紙であるとか,そういう物資を送ってほしいという要望が随分ございますので,今現在は物資,資財を中心に現地に送り込んでおりますが,やがてもう少し事情がはっきり,明確になってきますと人的な支援も出てくるでしょうし,それから例えば文化財を保管してほしい,保管場所を提供してほしいということも出てくるだろうと思います。そういう様々な要望に対しまして,的確に迅速に対応できるような体制を整えているというのが現状でございます。

【西原会長】  ありがとうございました。いずれにしましても宮田先生,佐々木委員の御発言も,これから長期にわたっていろいろと必要なことがあるということだと思います。
ほかに何か,御発言がありますでしょうか。
はい,どうぞ。

【都倉委員】  私は作曲家でございますが,音楽著作権協会というところにおりますが,よく物心両面というふうに申しますけれども,音楽の持つ物心両面というのは,ある,NHKのニュースのインタビューを聞いておりましたら,震災の1週間後ぐらいですか,今,何が一番必要かというインタビューで,やはり電気と水と,歌が欲しい,こういうことをおっしゃっていた方がいらっしゃって,JASRACとして何が,JASRACらしいことでできるかなというふうにいろいろ考えたんですけれども,著作権というのはいろいろなことで利用していただくことによってお金を徴収できるわけです。支分権というのがございまして,みんなで楽しく歌を歌うことによって,あるいは演奏することによって,その著作権収入を義援金として寄附しようじゃないかと。つまりカラオケで楽しく歌えば歌うほど義援金が集まって,そしてまた現地の方もやはり楽しみながら,その人たちのカラオケ聴取料は免除しよう,こういうシステムを考えたんです。
ただ,これは税金的にいろいろ問題がございまして,また著作家の許可を得ないと,JASRACがそれを勝手にやるわけにはまいりません。そして,そのシステムをどういうふうに構築しようかということでさんざん研究したんですけれども,1つは支分権,つまり演奏権,放送使用料,そういうものを作家の個人的な自由意思によって,タームと支分権と期間と,その楽曲を寄附してもらう。例えば2年間,ということは2年間という期間にわたって,演奏すればするほど,演奏使用料が向こうにいくというシステムを実行しております。幸い,驚くほどの著作家から,作詞家も含めて賛同を得まして,それを四半期ごとにJASRACのホームページで公開していこうということをしております。
私の場合で恐縮なんですけれども,私の作品の中にピンク・レディーという楽曲がございまして,多分,昭和50年代にピンク・レディーで育った若いお母さんたちがたくさんいらっしゃる,そういう人たちも是非,また若いころに戻って大いに歌って踊ってもらうことによって,義援金が集まる。みんなが自粛ムードから少し明るく,みんなでパーティをしようと,こういうある意味での物心両面での援助ということを考えております。

【西原会長】  ありがとうございました。ほかの委員から何か。
はい,どうぞ。

【青柳委員】  私は全国美術館会議の会長をやっているんですけれども,350館ぐらい入っておりますけれども,今,大体の大筋しか固まっておりませんが,この秋に東日本大震災チャリティアート展を開催する予定でございます。全国美術館会議と,それから全国美術商連合会が主催で,共催に文化庁にも加わっていただいて,日本で大体400人ぐらいの作家の先生方に作品を寄附していただいてチャリティアート展を開いて,今,皮算用ですけれども1億円以上集めようと,そしてそれを,我々美術館,あるいは美術品のレスキューのためにということで,そのお金が,皮算用がうまくいけば長官にそれをいろいろなところへ配っていただく役を是非していただきたいということを考えております。
それから第2点は,私ども美術館会議,あるいは国立美術館として石巻文化センターのレスキューを中心にやっております。既に1か月以上前からやっておりまして,平面の作品は救出した大部分を国立西洋美術館に持ってきて,これからゆっくりと修復しようと。それから立体物,大変いい,舟越桂などの彫刻もあるんですが,それは東北芸工大に持っていって,あちらで修復をしてもらおうと。
それから3点目は,これは石上委員に少し補充していただきたいんですが,阪神大震災のときに文書類が非常に毀損してしまったんですね。それを反省して全国で歴史資料保全ネットワークというのを,各県単位でつくっております。今回,東北に関しましては東北大学の東北アジアセンターの研究施設,そこのヒラカワ先生が中心になって,常日ごろから旧家やいろいろなところに学生たちも行って,文書資料を救出したり,採録したりしている。そのネットワークが非常によく,うまくいっているんです。ですから今回の救出作業を見ていると,やはり常日ごろの,震災以前からの人間関係の構築というものが,こういう震災時になったときに大変,役に立つと。というのは,震災が終わってすぐに商売を目的とした人々が徘徊して,その文書を持っていってしまったりするので,地元では非常に警戒心ばかりがあるんですね。ところが,大学院生たちは既にそういう旧家の方と顔見知りなものですから,すぐに出してくれてしかるべき対策を講じることができるということで,是非,このネットワークの活動には文化庁も注目していただきたいなと考えております。

【西原会長】  ありがとうございました。石上委員から補足がございますでしょうか。

【石上委員】  今,青柳先生がおっしゃったことに尽きるんですけれども,被災した物に,文化財だけでなく行政文書などもありまして,写真は富士フィルムがサポートしているということが良く報道されますが,行政文書の復旧等に関しましても,この歴史資料のネットワークの蓄積等が役に立っておりまして,あとは全史料協という団体ですね。そういうことがあって,文化財だけに限らないところでレスキューの方も対応していただければと思っております。

【西原会長】  ありがとうございました。この際でございますから,ほかの委員からも。
はい。

【道垣内委員】  私の日ごろやっていることとは違うことなので,一国民として申し上げますと,この文化財レスキュー事業の実施要項を見ますと,「文化財等」ということになっていて少し含みがあるわけですが,立派な文化財,有形,無形のものに限らずお祭りで使うようなものにどれぐらいお金なり支援が行くのか。恐らくあの地方はいろんな村があって,漁村があったり農村もあったりで,それぞれお祭りがあって,この秋,そういうお祭りが行われるかどうかというのは,コミュニティーの維持の観点から非常に大切で,恐らくいろんなところに散らばった人も,そういう機会があれば集まるということもあり得るわけで,それが1回,飛んでしまいますとなかなか次につながらないおそれがあって,できればそういった,レベルの高い文化財とは言えないもの,おみこしとか太鼓とか,そういったものにも目が届くようなことをお考えいただければと。既に行っていらっしゃるのであれば,それで結構でございますけれども。
以上でございます。

【西原会長】  ありがとうございました。佐々木委員の方から何か,又は事務局の方から何か,それに関してありますか。

【佐々木委員】  もちろん,今お話のありました,コミュニティーにとって非常に重要な,貴重なもの,特に民俗文化財を中心にしたものであるとか,あるいはあの地方は例えば民謡の宝庫でありますので,そういう民謡の貴重なデータであるとか,テープであるとか,そういうものも極めて重要だと私どもも認識しておりまして,できるだけ広い枠を想定しながら救済事業というものを考えていきたいというふうに思っております。

【西原会長】  ありがとうございました。まだまだ御意見があろうかと思いますが,実は,この文化審議会の中でも意見書をまとめて出してはどうかということがありまして,宮田会長代理及び佐々木分科会長とも御相談をした上で,案文をまとめていただいております。それをこの審議会の意見書として出してよろしいかどうかということも御検討いただきたいと思います。それをお読みいただいた上で,これを審議会の意見書としていいかどうかということでございますので,恐れ入りますが事務局の方から案文をお配りいただけますでしょうか。その上で,もし宮田会長代理及び佐々木分科会長から何か補足の御意見がおありでしたら御発言いただくということでございますが,まず事務局の方からこれを朗読していただこうと思います。
行き渡りましたら朗読させていただきますので,どうぞお読みください。

【滝波調整官】  それでは,朗読をさせていただきます。
「平成23年6月1日,文化庁長官,近藤誠一殿。文化審議会会長,西原鈴子。文化芸術分野の東日本大震災からの復興に向けて(意見)。このたびの東日本大震災により被災された方々に心からお見舞い申し上げますとともに,救援・復旧活動に御尽力されている皆様に心から敬意を表します。
発生から3か月近くが経過した今なお,物心両面を通じて復旧・復興のための努力が続けられています。そうした中,自らも被災した芸術家たちによる文化芸術活動や,用具が不ぞろいな中で執り行われた民俗芸能が被災地の方々に心の安らぎや勇気を与えるなど,文化には計り知れない力があります。文化庁ではいち早く職員を派遣し文化財の被害状況の現地調査等に当たるとともに,関係者の尽力により開始された文化財レスキュー事業や文化財ドクター派遣事業により,文化財や美術品の救出や応急措置がほどこされつつありますが,これらは土地の記憶を物語り,地域の絆を強める貴重な地域の資産であり,ひとたび失われれば元には戻りません。
このように,文化は人々に明日への希望を与えると同時に,復興への歩みを進める人々の心の滋養ともなるものです。
政府においては,東日本大震災復興構想会議を設け,被災地の住民に明るい希望と勇気を与え,豊かで活力ある日本の再生につながるよう,復興の指針となる復興構想の策定に向けて精力的に議論を進めており,今月末にも第一次提言が取りまとめられるものと承知しております。復興構想の策定に当たっては,単なる復旧ではなく未来に向けた創造的復興を目指すことが重要であり,そのためには地域課題の解決に果たす文化芸術の役割の重要性を十分認識し,その視点を取り入れることが極めて重要です。
政府においては,こうした視点を踏まえ,復興構想の具体化に際し,以下のような施策を講ずるよう要望します。
各地の文化財は地域の風土や人々の生活の中で育まれ,現在まで守り伝えられてきたものとして,地域の絆を象徴し,文化の向上・発展の基礎となるものである。こうした被災した文化財の保全について,救援・復旧・修理等を通じて万全を尽くすこと。
・国指定等文化財の復旧等に対するさらなる支援
・地方指定文化財の復旧等に対する地方交付税措置などによる支援
・現在,支援措置のない登録文化財に対する復旧支援
・無形文化財や民俗文化財の保存,伝承のための支援」
2つ目の項目です。「各自治体による復興・再生事業に当たり,文化財担当者や専門家の意見を十分取り入れた復興計画が策定され,有形・無形の文化財が後の世代にも引き継がれていく,豊かで希望に満ちた地域社会が取り戻せるよう必要な支援を行うこと。
・被災した自治体が復興計画を策定する際の文化庁のサポートの強化
・民間団体が実施する文化財救援のための事業に対する支援
・各自治体が行う復興に際しての埋蔵文化財調査への支援
・文化財に関する防災事業の一層の推進」
3つ目の項目です。「文化芸術活動によって日本全体の元気を取り戻し,力強い復興を実現するため,また特に文化芸術活動が展開される文化施設について,地域コミュニティの核として人々の心のよりどころとなる場を整備するために必要な施策を講ずること。
・被災地における文化芸術活動への支援
・被災した文化施設の復旧支援
文化審議会としては,これらの取組が国,地方公共団体,関係機関等の連携の下,社会を挙げて行われることを通じて被災地を始め日本全体において文化芸術分野の創造的復興が早期に実現することを切望します。」
以上でございます。

【西原会長】  という文案でございます。宮田会長代理及び佐々木分科会長から何か補足の御発言がございますでしょうか。

【宮田会長代理】  結構です。

【佐々木委員】  この意見書を御承認いただければ本当に,特にこの意見書に関しましては,私どもの文化財分科会の第3専門調査会でも非常に強い要望,意見が寄せられまして,私ども,先日の文化財分科会におきましても議論をいたしました。是非,ここに書かれておりますような趣旨を盛り込んだ意見書を御提出いただければ,委員全員,非常に有り難いと,うれしく思っております。

【西原会長】  どうぞ,石上委員。

【石上委員】  今,佐々木先生がおっしゃったことはまさにそのとおりなんですが,この中で文化財の範囲につきまして,一応,書くことができなくてもここで了解されるべきことを1つ,述べさせていただきたいと思うんですけれども,それは,文化財と言った場合に指定されているものと,それから未指定のものという大きな分け方と,それから従来の概念で不動産,動産,無形とか有形というような考え方と,それからもう一つ,地域の伝統文化の活性化事業ということを最近,文化庁として積極的になさっていますけれども,先ほどありましたお祭りの道具でありますとか,民謡でありますとか,祭りの歌ですとか踊りでありますとか,そういう文化財を更に広く考えて,記念物等として指定する,しないよりも広く文化財を考えるという,3つのいろいろなジャンル,考え方の範囲があると思うんですが,特に重要なのはそういう,未指定であるとか,文化財の概念をより広く考えていくということが,ここの文章に書く,書かないは別として全体としてこの会議で了解されることが必要ではないかと思っております。

【西原会長】  国が指定したり,文化庁が今まで指定を発表してきたりしたものに限らないという,そういう広い範囲の考え方が必要だということでございますね。具体的にはここに何か,文言の修正を加える必要がございますでしょうか。文化財ということの解釈で,2ページ目の冒頭に「地域の風土や人々の生活の中で育まれ,現在まで守り伝えられてきたもの」というのを文化財と書いているわけでございますけれども,今,石上委員のおっしゃったことはそれの解釈を非常に広いものとするということでございますね。

【石上委員】  4月の,別添のところの1でございますが,長官のメッセージの中にも指定,未指定を問わずということが強調されていますので,全体としてそういうことが了解されているということで,私はよろしいというふうに思っています。

【西原会長】  はい。念には念を入れてということでございますが。
ほかに。はい,どうぞ。

【宮田会長代理】  文化財であろうが何であろうが,つくったのは全て人でございますので,人というものの心とか何かが,改めてこうやって読んでみますと,どうも文字しか見えない。もう少しつくった人が見えるような文言がこの中にもう一つ,つけ加えて長官にお渡ししたい。

【西原会長】  例えば。

【宮田会長代理】  これは林先生と御相談しないといけないかもしれませんが。

【林委員】  まさか,うっかりしておりまして,そんな御指摘,御質問があると思いませんでしたが。
これは,マイクをとおして申し上げるようなことではなかったものだから,雑談的に申しますと,スケジュールから言いまして本日お渡しする必要があればそれなりの,そうでなければもう少し考えてということですが,その辺はいかがですか。

【西原会長】  もし,具体的な修正御意見がこの場でなく,後に御提案されるということが確約されました場合には,そのようにさせていただきまして,各委員には恐れ入りますが,会長に最終的な文案の修正を御一任いただけるようでございましたら,後ほどホームページ等での公開をもって,それを各委員が御了承くださったという形にさせていただくということも可能なんですけれども,ほかの先生方,いかがでしょうか。更にこれをもう少し,人間の見えるというふうに宮田会長代理から御意見があったんですけれども,することがよろしいという御意見が強いようでございましたら,そのようにさせていただく可能性がございます――可能性がゼロではないと言ってはいけないんですね。大丈夫だと思います。

【林委員】  多分,こういうものを用意されていてここで審議されるということでしたら,スケジュールから言って本日お渡しできればそれが一番いいのではないかというふうに思って,便法を申し上げます。この裏面の先ほど読んだ一番上の丸印です。4つ,黒ポツがございますが,5つ目にその他上記の趣旨に基づく支援とか,従った支援というふうなのを入れますと,これ以外のもので上の4行にわたる文章に即した支援というふうなものが出てまいりますので,若干ではありますけれども人の姿も,影ぐらいは映るかなというふうに思います。両方を満たすというのはちょっと欲張りかもしれませんので,後の方を取り消すといたしますと,無指定のものを広く,そういうものも対象とするという含みは出てくるのかなと思います。とっさのことですので非常に不十分な意見で申し訳ありません。

【西原会長】  事務局の方に伺いますが,それをここに今,書き足すということは可能でございますか。それはちょっと無理だということであればその御意見も含めて,後ほど修正の上長官に差し上げるということでさせていただきたいと思います。
宮田先生,何かございますか。

【宮田会長代理】  済みません,余計なことを言ったみたいですけれども……そんなことはないですよね。

【西原会長】  そんなことはございません。よい意見書になればなるほど,強い意見とか,広い,深い意見が盛り込まれれば盛り込まれるほど,この審議会の見識を示すものと存じます。
では,こうさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。ただいま,林委員からの御意見もございました。また,きょうは御発言はないけれども,こうしたらというような御意見をお持ちになっている委員もいらっしゃるかもしれませんので,1週間を区切りとさせていただき,きょうが水曜日でございますので,週末を越えて来週の火曜ごろまでに,ここはこうしたらという御意見を事務局まで恐れ入りますがお寄せくださいませ。それは,どんな細かいところでも,句読点に及ぶようなことでも結構でございますし,もう少し大所高所,つまり1面に書いてあるようなことをもう少しきちんと書くべきだという御意見でも結構でございます。それを火曜日までお受けし,恐れ入りますが最終案につきましては,持ち回り審議というようなことをせずに会長に御一任くださいますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【西原会長】  ありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。

【宮田会長代理】  済みません。

【西原会長】  いえ,決して余計なことではございませんので,よろしくお願いいたします。
そのようにさせていただき,会長から長官へはそのような形で改めてお渡しする,それに対する対応はそのようにお受けいただき,ホームページに載せますのでそれをもって委員の御了承を頂くということにさせていただきます。ありがとうございました。
後ほど御意見を頂くようなこともあろうかとちょっと言ったのですが,実はあと3分しか時間がなくなりましたので,その御意見も意見書の中にお含めいただくということで,これにて今期第2回の審議会を閉じさせていただきたいと思います。本日はお忙しいところ御出席くださいまして,ありがとうございました。
事務局の方から何かご連絡はありますでしょうか。

【滝波調整官】  ありがとうございました。また次回の日程につきましては,改めて御連絡を差し上げるというふうにしたいと思います。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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