第12期文化審議会第1回総会(第57回)議事録

平成24年3月12日

【滝波調整官】  それでは,ただいまより文化審議会第57回を開催させていただきます。委員の皆様には,今期の文化審議会の委員に御就任を賜りますとともに,本日は年度末の大変御多忙のところを御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
私は,文化庁の政策課で企画調整官をしております滝波と申します。よろしくお願いいたします。
本来でしたらば,冒頭に開会のごあいさつがあるところではございますけれども,諸事情によりまして,後ほど行うこととしたいと存じます。
本日は,第12期の文化審議会の第1回総会でございますので,先ほど御覧いただいた議事次第にございますとおり,後ほど会長を御選出いただく必要がございます。それまでの間,私で議事を進めてまいります。よろしくお願いします。

(傍聴者退出)

※ 会長に宮田委員,会長代理に青柳委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

【宮田会長】  よろしいですか。ありがとうございます。第57回第12期の1回目の文化審議会会長を拝命いたしました。
昨日はちょうど1年ということで,大震災に対して文化庁がなすべきこと,近藤長官の下,私どもあらゆる方面で努力いたしましたが,文化芸術は特に長期において変わらず支援をしてきたいと思っておりますので,この文化審議会が意味のあるものになっていただきたいと思っておりますので,先生方には良い知恵を頂きたいと,かように思っております。同時に,文化芸術の役割というのは,経済等もとても大事なのですが,やはり,心の支えになるということを考えますと,この審議会が重要な役割を果たすのではないかなという気がしております。
たまたまですが,10年前に東京芸大に奏楽堂と美術館がやっとできたということだったのですが,その最初にやった展覧会が「見たことあるでしょう,教科書で」というタイトルでございました。その中にはヨーロッパに行ったこともない高橋由一氏が,「洋画はこうであるべきだ」というので,何も知らない絵具しか持っていないときに,和紙に描いた絵が実はこれなのですね。この高橋由一氏の『鮭』なのです。タイトルですが,「ああ,思い出した,あの鮭だ」という,ちょうど10年後にこういうものを出させていただいたのですが,実はこの文化芸術というのは,美術でも音楽でもなく,あらゆる部分に表現されていると思います。何を言いたいのかと言いますと,実はこの『鮭』を描いたモチーフは,新潟の村上の鮭,南限と言われております。ここからが大事なのです。「はるかじゃのう」という言葉があるのですよ。「はるかじゃのう」というのは,村上の方言で「久しぶりですね」という言葉なのです。日本のものも,音もそうですが,何て言葉に大きな意味があるのだろうかという気がします。
そんなことも考えられますと,冒頭に震災で全てをなくしたところなども,形だけではなくて,心のある,いわゆる方言までも含めて,私どもがしっかり包んでいってあげる必要があるのかなという気がいたしました。そんな意味があったので,ちょっとこんなものを持ってきたのですが,是非とも先生方もいろいろなこういう会議で,御自分のところ,また周辺で活躍しているようなもの等も含めて,この場所を大いに利用していただいて,発表の場所,伝える場所にしていっていただけたらと思っております。ちょっと話が長くなりましたが,「はるかじゃのう」という気持ちで,是非また新しい世界を創っていきたいと思っております。ありがとうございました。
それでは,次に移らせていただきます。本日,最初の審議会でございますので,本審議会の概要と運営上の規則について確認しておきたいと思います。
まず,事務局から簡潔に説明をお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。

【滝波調整官】  それでは,この文化審議会の概要について御説明させていただきます。資料2を御覧ください。既に御案内の先生方も多いとは思いますが,念のため御説明したいと思います。
この文化審議会ですが,1ポツにありますように,平成13年1月に従来の国語審議会,著作権審議会,文化財保護審議会,それから,文化功労者選考審査会の統合により発足したものでございます。
2番のところにありますように,主な所掌事務としましては,文化の振興,国際文化交流の振興について,意見を述べるということ。国語の改善,普及に関して意見を述べること。それから,文化芸術振興基本法,展覧会における美術品損害の補償に関する法律,著作権法,文化財保護法,文化功労者年金法等の規定に基づいて,審議会の権限に属させられた事項を処理するといった事柄になっております。
3番の構成ですが,委員は30人以内,任期は1年で,再任が可能である。
4つの分科会を設置するということで,国語分科会,著作権分科会,文化財分科会,文化功労者選考分科会の4つを置くということとされております。
それから,審議会及び分科会には,必要に応じて部会を設置することになっております。
4番,最近の主な答申としては,記載のような事柄,つい最近ですと,昨年の1月に「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)について」という答申が出ております。
それから,参考資料の1,2,3を御説明したいと存じます。
参考資料1は,文化審議会関係法令ですが,今,御説明しました文化審議会の概要について,法律的に書いてあるのが,この「文部科学省設置法」の規定と「文化審議会令」という政令でございます。
文化審議会令を少し見ていきますと,第1条,今申し上げた委員が30人以内で組織するということが書かれております。
第2条は,委員の任命ですが,委員や臨時委員,専門委員については,大臣が任命することになっております。
第3条,委員の任期等ということで,委員の任期は1年になっております。
第4条は,先ほど御覧いただきましたが,審議会に会長を置き,委員の互選によって選任する。会長に事故があるときは,その指名する委員が職務を代理することになっております。
それから,裏面ですが,4つの分科会が置かれるということで,国語,著作権,文化財,文化功労者選考の各分科会が置かれております。
ここの第2項ですが,分科会に属すべき委員は,大臣が氏名をすることになっておりまして,分科会に分属いただく先生方については,発令書の中で分科会の指名もあわせて明記されているところでございます。
それから,第6項で,「分科会の議決をもって審議会の議決とすることができる」という規定もございます。
同じく第6条は部会ですが,審議会に部会を置くことができる。部会に属すべき委員には,会長が指名をすることになっております。
第6項で,「部会の議決をもって審議会の議決とすることができる」とされております。
第7条では,議事として,委員の過半数の出席がなければ会議を開き議決することができないことになっております。本日は,文化功労者選考分科会を除く3つの分科会の分属の方々,及び関連部会の御参加いただく委員の方々20名のうちの過半数が御出席いただいておりますので,定足数を満たしているところでございます。
それから,最後の第10条,雑則としまして,「この政令の定めるもののほか,議事の手続,そのほか,審議会の運営に関し必要な事項は,会長が審議会に諮って定める」ということになっております。
この最後の雑則の規定に基づきまして,参考資料の2として,「文化審議会運営規則」というものが定められております。
参考資料2の文化審議会運営規則は,平成23年6月1日,文化審議会決定となっておりますとおり,昨年,この前期文化審議会の中で決定を頂いたものでございます。その折に期をまたいでの有効とする取扱いとすることが決定をされておりますので,今回,このような形で決定しているものを御紹介するものでございます。記載されている内容につきましては,先ほど政令で御説明したような内容と大体重複しておりますので割愛いたしますが,最後のところ,参考資料2の裏面の最後,第5条の会議の公開のところだけ御覧いただきたいと思います。
会議の公開。審議会の議事は公開して行う。ただし,特別の事情により審議会が必要と認めるときは,この限りでないということ。
審議会の会議の公開の手続その他審議会の会議の公開に関し必要な事項は,別に会長が審議会に諮って定めるとされております。
この規定に基づきまして,参考資料3でございます。「文化審議会の会議の公開について」というものが決定されておりまして,この参考資料3につきましても,昨年の前期文化審議会の中で決定されているものでございます。
1番の会議の公開。「会議は,次に掲げる案件を審議する場合を除き,公開して行う」ということで,基本的に公開。ただし,人事等に関する事項については非公開とするという扱いが書かれております。
それから,3の会議の傍聴ですが,会議を傍聴しようとするときは,手続によって登録を受けないといけないということが書かれております。
また,4番のところ,登録を受けた者は,会長の許可を受けて会議を撮影し,録画し,又は録音することができることとされています。
それから,8番は会議の資料の公開でございます。会議資料は公開とするということが原則です。ただし,事情のあるときは,会議資料の全部,一部を非公開とすることができるとされております。
9番,議事録の公開についても同様に,議事録は公開とする。正当な理由があるときは,議事録の全部又は一部を非公開とできるとされております。
このような運営上の規則が定められておりますことを冒頭に御確認いただきたいと存じます。
説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございました。ただいまの内容等について御質問等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは,次に移ります。前期に続きまして,今期もこれらの規則に即して本会議の議事を進行したいと思っておりますので,よろしく御協力ください。
さて,ここで近藤長官に御挨拶を賜りたいと思います。よろしくお願いします。

【近藤長官】  改めまして,近藤誠一でございます。文化審議会の第12期の最初の会合,通算で57回目の会合に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。
まずは,大変公私ともにお忙しい中,この審議会の正委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
また,宮田学長,青柳館長におかれましては,この総会の取り仕切りをお願いできるということで大変心強く思っております。よろしくお願いいたします。
先ほど岡本委員もおっしゃいましたように,この20名の委員の方々の中で,8名が今回から正委員として審議会に加わっていただきます。全体の4割に当たる方々に新しく加わっていただいたということで,また,装いも新たにして,これからの文化政策について幅広い見地から御指導いただきたいと思います。8人の方々の入れ代わりによって,平均年齢と女性の比率が前進をいたしました。活発な議論を頂きますことを期待しております。
昨日,国立劇場で東日本大震災の1周年の追悼式に出席いたしました。両陛下のお言葉,遺族の方々のお言葉,代表の方々のお言葉,そして,マスコミの報道などを見ていまして,今,日本は大きな過渡期にあるのだなということをつくづく感じました。通常,過渡期にあったかどうかというのは,後になって振り返って分かるものではないかと思います。
しかし,この3.11は,その真っただ中にある我々に今,日本が過渡期にあるのだと,しっかりと過去を振り返り,将来を見据えて新しい日本づくりにしっかり貢献してくれと,そんなメッセージと受けとめるべきではないかと考えた次第でございます。
先行き極めて不透明で,何をどうやったらいいのか,どこからどう手をつけたらいいのか,なかなか答えが見つかってまいりません。文化というものも,もともとなかなかつかみどころのない分野でございます。今後,文化芸術を日本の再生にどう使っていくのか。いろいろな御意見があろうかと思いますが,こういうときにこそ,文化芸術が持つ固定観念にとらわれずに,新しい発想をしていく力を発揮する機会ではないかと思っております。
そして,この機会に,これを契機としまして,国民の方々の生活のより多くの地位を文化芸術がしめる。それによって,文化芸術の持つ力が一人一人の中により一層いかされていく,そういう契機にすべく,政府としても自治体とか民間の方々と,あるいはNGOの方々と連携して,より良い日本づくりに貢献していくべきであろうと考えております。
したがいまして,これから1年間の様々な分科会での御議論に当たっても,政府の果たすべき役割,自治体,地方が果たすべき役割,そしてNGOや個人が果たすべき役割を一層明確にして,それぞれが自覚を持って,文化芸術面における貢献をし,お互いに連携をしていくという,大まかなと言いましょうか,ブループリントを作っていくようなつもりで,私どもとしても会議の準備をさせていただきます。先生方から是非大所高所からの御意見をいただければと思っております。
特に,文化芸術というのは,それだけで独立して自己完結的に何かができるものではないと思います。複雑な世の中でございますから,経済とか観光とか,それ以外のものとも密接に関連をしております。したがいまして,文化審議会だけで何かを完結することは,恐らくできないと思います。文化芸術についての政策がほかの分野にもいろいろな影響を与えますし,またほかの分野の政策,人々の行動が文化芸術にも影響を与えます。したがいまして,全く唯我独尊でいくのではなくて,ほかの審議会とか,ほかの知識者の方々の御議論ともうまく連携をしながら,インターアクトしながら,文化芸術のあるべき姿について御提言を賜ればと思います。
やや大げさに構えた言い方かもしれませんけれども,私としましてはそういった観点で,この1年間,この審議会,そして各分科会からいろいろな御提言を賜りたく思っておりますので,冒頭,私のそういった希望を申し述べることで御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございました。近藤長官からの力強いメッセージ,並びに私どもに対する御期待を頂きました。忌たんのない御意見をどしどし頂いて,それをまとめて,また常に提言していくというふうにさせていただきたいと,かように思っております。ありがとうございました。
では,各分科会への委員の分属と部会の設置について議題といたします。本審議会委員は,本日付で発令されましたが,その際,文部科学大臣から原則として各分科会への分属が指名されておるのですね。その内容について確認をしたいということでございます。
また,その各分科会のほか,今期は本審議会の下に3つの部会を設置することを予定しております。その内容について皆様にお諮りする。この点について,まず,事務局から御説明をください。

【滝波調整官】  それでは,まず,各分科会への委員の分属について,資料3で御説明したいと存じます。資料3には,本日お集まりをいただきました委員の皆様方の分科会への分属について記載がされております。これは,文化審議会令の第5条第2項に基づくものでございまして,文部科学大臣が分科会への分属を指名することとされております。
国語分科会につきましては,ここに記載の岩澤委員以下4名の委員の先生方が分属を頂きます。
著作権分科会につきましては,大渕委員以下4名の委員の先生方に分属を頂きます。
それから,文化財分科会につきましては,石上委員以下5名の先生方について分属を頂くことに,文部科学大臣で指名がなされておりますので,御了解ください。
次に,部会の設置ということで,資料4,5,6につきまして,それぞれ御説明申し上げたいと思います。
まず,資料4ですが,これは文化政策部会の設置についての案でございまして,先ほど御説明した文化審議会令の第6条第1項の規定によりまして,審議会に部会を設置することについてお諮りするものでございます。
1番の設置の趣旨でございますが,今,御説明しましたように,文化審議会令の6条の1項の規定等に基づきまして,下記の事項に関する調査審議を行うため,部会を設置しようとするものでございまして,調査審議事項としましては,文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項となっておりますが,具体的には,昨年の1月に答申いただきました第3次基本方針の重点戦略の進行管理を適切に図っていくことを中心に考えておりまして,その中でPDCAサイクルの確立のための様々な政策評価の在り方であるとか,あるいは,文化芸術への支援の在り方といった事柄について,今期につきましては御審議を賜れればと存じております。
3番の構成でございますが,この部会を構成いただく委員,臨時委員及び専門委員の方々につきましては,別紙ということで裏面ですが,記載の委員の先生方,正委員につきましては,青柳委員ほか5名の記載の委員の方々に御参画いただきたいと存じます。
また,臨時委員につきましては,本日付で文部科学大臣から指名がなされておりますので,この方々につきまして,同部会に御所属いただこうと考えているものでございます。
続きまして,資料5は,美術品補償制度部会の設置についての案でございます。これにつきましても,審議会令の規定に基づきまして,部会の設置をお諮りするものでございます。
2番の調査審議事項ですが,これは展覧会のために借受けました美術品に損害が生じた場合に,政府が所有者に対しまして,その損害を補償することができるという法律,展覧会における美術品損害の補償に関する法律ですが,これが昨年施行されておりまして,この法律に基づきまして,政府が補償する補償契約を締結するに当たりまして,文化審議会の意見を聞くこととされておりますことから,その専門的事項について調査審議するための部会として設置しようとするものでございます。
3番,部会の議決としまして,文化審議会令の第6条6項等の規定に基づきまして,上記のような事項に掲げる事項については,美術品補償制度部会の議決をもって審議会の議決とする。ただし,審議会が必要と認めるときには,この限りでないという議決に関する手続をおいておるものでございます。
4番,構成する委員,臨時委員,専門委員につきましては,裏面に記載のとおり,正委員の皆様方からは,青柳委員及び鈴木委員に御参画いただきたいと考えております。
また,臨時委員,専門委員については,既に大臣から任命されておりますが,これらの記載の委員の方々にこの部会に御所属いただく,分属いただこうと考えております。
続きまして,資料6が,「世界文化遺産・無形文化遺産部会の設置について(案)」でございます。これにつきましても,文化審議会令の規定に基づきまして,文化審議会にこの部会を設置しようとするものでございます。
従前は,世界遺産条約及び無形文化遺産条約の実施に関する事項についての調査審議につきましては,文化財の保存及び活用について,重要事項の調査審議を行っていただいております文化財分科会の中に関連の特別委員会をおきまして,調査審議を行ってまいりました。今期におきましては,この点,必ずしも文化財保護法に基づく文化財の保存・活用だけでは捉え切れない部分を含めまして,幅広い見地から御審議いただくことがふさわしいのではないかという考え方から,今回,文化財分科会からは独立した部会として,この世界文化遺産・無形文化遺産部会を設置することとし,調査審議をお願いしようと考えているものでございます。
具体的な審議事項につきましては,2番の(1)から(6)までに掲げる事項,世界遺産一覧表へ記載することが適当と思われる資産の候補の選定を初めとする各事項について,調査審議をお願いしたいと存じます。
3番の部会の議決ですが,これは美術品補償制度部会と同様に,この部会における議決をもって審議会の議決とすることとしたいと考えております。ただし,審議会が必要と認めるときは,この限りでないこととしております。
4番の構成委員につきましても,裏面及び3ページに記載のとおり,正委員につきましては,神崎委員及び西村委員にこの部会に分属いただきたいと考えております。そのほか,臨時委員として稲葉委員以下5名の委員の方々に分属いただきますとともに,3ページ目の専門委員の方々につきましては,この部会のもとに設置される予定の委員会の方で御審議に参画いただこうと考えているものでございます。
説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございました。
資料の4,5,6のとおりでございますが,まず,文化政策部会,そして,美術品補償制度部会,最後に世界文化遺産・無形文化遺産部会,3つの部会の設置について決定をいたしたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
それでは,この案のとおり決定をさせて,今,御説明がございましたように,構成委員についても,資料4,5,6の別紙のとおりでございますが,そのとおり御指名させていただいてよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
特に青柳先生,鈴木先生,神崎先生におかれましては,複数の分科会と部会をかけ持つわけでございます。大変御多忙かと思いますが,よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
さて,それでは,今期の審議会の発足に当たっての手続は終了いたしましたので,これより自由な討議を行いたいと思います。あらかじめ事務局より3つの関連資料を準備しております。昨年2月に閣議決定されました第3次の文化芸術振興基本方針。現在,国会で審議中でございますが,新年度の予算案。それから,3.11,昨日,1周年を迎えましたけれども,その間の文化芸術分野での復旧・復興等に関する取組。これらについて事務局から一括して御説明ください。その後に自由討議とさせていただきます。

【滝波調整官】  それでは,今,会長からお話がございました点について冒頭御説明しまして,その後,自由討議をいただけたらと思います。
まず,1つ目にこのリーフレットですが,「文化芸術の振興に関する基本的な方針 第3次基本方針の概要」ということで,先ほど少し触れましたが,昨年の1月にこの文化審議会で答申を頂きまして,その後,昨年2月8日付で閣議決定をされております「文化芸術の振興に関する基本的な方針」というものでございます。これは,文化芸術振興基本法に基づきまして,政府が基本方針を定めることとされているものでして,見開きのところを開きますと,「文化芸術振興の基本理念」ということで,文化芸術振興の意義,あるいは,基本的視点が明確に位置づけられております。特に意義のところでは,真ん中のあたり赤い字で,「文化芸術の振興を国の政策の根幹に据え,今こそ新たな『文化芸術立国』を目指す」ということがうたわれております。
また,基本的視点としましては3つ。
1つには,「成熟社会における成長の源泉」として,文化芸術を捉えようということ。
2つ目に,「文化芸術振興の波及力」ということに着目をして,戦略的な展開を図っていこうということ。
それから,3点目に,「社会を挙げての文化芸術振興」を図ろうという,この3点を基本的な視点に据えまして,平成23年度から27年度までの今後5年間をかけまして,これらの取組を進めていこうということにしております。
具体的な中身につきましては,更に観音開きを開いてまいりますと,文化芸術振興に関する重点施策ということで,6つの重点戦略という字が書かれておりますが,重点戦略の1から6までの6つの重点戦略について,この5年間の中で強力に推進することとされておるものでございます。
それから,このページの左から2つ目,留意すべき事項が下段のところに書かれておりまして,「横断的かつ総合的な施策の実施」ということに加えまして,計画,実行,検証,改善(PDCA)サイクルの確立が重要だということがうたわれております。こういった事柄を内容とする基本方針が,昨年の2月に閣議決定をされているということを御承知いただければと思います。
続きまして,資料7を御参照いただきたいと存じますが,これは,今,御説明しました第3次基本方針の重点戦略1から6までの記載されている各事項につきまして,平成24年度予算案にどのような形で反映をされておるかということを体系的に整理した表でございます。
少しポイントだけ御紹介したいと存じますが,重点戦略の1番といいますのは,文化芸術活動に対する効果的な支援という内容でございます。この中に具体的な施策として,ひし形が7項目掲載されておりますが,ほかの重点戦略についても同様の作りになっておりまして,各重点戦略の中で特に重点的に取り組む施策をひし形で記しております。
例えば,1つ目のひし形,「文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入」ということが書かれておりますが,これにつきましては,本年度23年度に導入しました,文化芸術団体の経営努力のインセンティブが働く支援制度を平成24年度につきましても引き続き実施をしていこうという形で整理をしているものでございます。
以下同様の形で整理をしておりまして,2つ目のひし形は,「諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入」ということで,これは,新たな審査・評価,調査研究などの仕組みの試行的導入を本年度23年度から行ってきておりますが,24年度につきましては,対象分野を拡大しようということ。PO,あるいは調査員と呼ばれる方々を拡充し,その体制を強化していこうということが盛り込まれているものでございます。
以下,このような形で整理したものが,資料7でございます。予算事項と絡めまして紹介する形で整理をしておりますので,御紹介させていただきます。
なお,この予算の詳細につきましては,最初に御確認いただきました平成24年度文化庁関係予算(案)という左側2か所でとじた資料の中に,各予算事項について詳細に記載がされておりますので,後ほどお目通しをいただけたらと存じます。
それから,資料の8につきましては,先ほど会長の御挨拶の中にも,また,長官からの挨拶の中にも触れられておりましたけれども,東日本大震災から1年が経過したということで,昨日は政府主催の東日本大震災1周年追悼式が国立劇場で開催されたわけでございます。また,被災各地におきましても,様々な形で追悼行事が行われたところでございます。各委員の皆様方におかれましても,様々な形でこの復興について御支援・御尽力を賜っておりますことをこの場をお借りしまして厚くお礼申し上げたいと存じます。
この1年間,主に文化庁が中心となり取り組んでまいりました事柄について整理したのが,資料8でございまして,最初のページは,「Ⅰ 文化劇術分野の被害状況」ということで,国指定の文化財の被害,あるいは文化会館等の施設の被害,それから,公演などへの中止・延期等の影響が出たケースをかいつまんで御紹介しているものでございます。
2ページでございますが,Ⅱとして,「文化芸術分野の復旧・復興に向けた取組状況」ということで,震災発生以来,これまでの間取り組んでまいりました事柄につきまして,事柄ごとに整理して御紹介しているものでございます。
1番の文化庁長官メッセージの発出につきましては,震災直後に,昨年4月ですが,メッセージを続けて発しましたほかに,1周年の昨日付で「東日本大震災から1年を迎えて」というメッセージを改めて発しておるところでございます。これにつきましては,この資料の8のすぐ後ろに,「東日本大震災から1年を迎えて」という長官のメッセージとして,別刷りで用意したものがございますので,また後ほど御覧いただけたらと思います。あるいは,長官からも後ほどあるかもしれませんが,このような形でまとめたものでございます。
それから,※で,上記のほか,文化審議会会長から文化庁長官に対し意見書が出されたということが記載されておりますが,これは,昨年の6月にこの文化審議会におきまして,復興に向けた意見書を取りまとめいただきまして,文化庁長官に対し御提出いただいたものでございます。
2番,「被災文化財の調査・復旧等」ということで,震災直後から文化財の被害状況の調査,あるいは文化財レスキュー事業ということで,美術工芸品などの動産を中心としまして,これを緊急に保全するための救援活動を行っております。この点につきましては,別途チラシを御用意しておりまして,だいだい色の「文化財レスキュー事業の今後を考える」ということで,3月24日にこの1年間の取組についてシンポジウム形式で開催することがございますので,御紹介させていただきました。
それから,[3]文化財ドクター派遣事業は,建造物につきましても同様に,専門家の方々を派遣し,復旧に向けた技術的な支援を行っているものでございます。この文化財レスキューと文化財ドクターの事業につきましては,公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団を窓口といたしまして集められた寄附金も活用させていただいているところでございます。これまでに,ここへの寄附金として2億円を超える額が募金をされておるということでございます。
それから,[4]として,「被災文化財の修理・復旧」についても,意を用いておるところでございます。
次のページで,3として,「復旧・復興事業に伴う埋蔵文化財の取扱い」ということですが,復旧に当たって埋蔵文化財の扱いについて,弾力的に取扱うことができるようにということの通知などを発出しているものでございます。
4番として,特別名勝松島に関しては,別途宮城県等と検討会を設けまして,検討を行って報告書を取りまとめている状況でございます。
5番として,「文化施設の復旧」ですが,これについては関連予算を講じまして,その復旧を今急いでいるところでございます。
6番,「子供の文化芸術体験の充実」ということで,これは,「次代を担う子供の文化芸術体験事業」という事業を活用いたしまして,被災地の学校,避難所の子供たちに,様々な文化芸術体験活動を提供するものでございます。これまでに459件の実施を見たところでございます。
それから,7番としまして,「文化芸術による復興支援コンソーシアム」ということで,社団法人全国公立文化施設協会及び社団法人日本芸能実演家団体協議会を共同事務局としますコンソーシアムを本年4月に立ち上げることを目指しまして,調査研究を進めておるものでございます。本日お見えいただいております委員の皆様方にも様々な形で御支援を頂いているところ承知しております。
このコンソーシアムの立ち上げに先立ちまして,明日3月13日にこのコンソーシアムの設立記者会見とシンポジウムを東京国立博物館で開催予定でございます。これについては,ピンク色のチラシがお手元にあると思いますが,3月13日に東京国立博物館・平成館大講堂でシンポジウムを開催いたす予定にしてございますので,御紹介させていただきます。
それから,Ⅲは,「今後の取組」ということで,いずれにしましても,様々な予算等を講じまして,今後とも被災地を初め,日本全体の創造的復興に向けて息の長い取組を進めていこうということで,文化財の調査,復旧,修理・修復,伝統行事や方言の再興,博物館・美術館の再建支援,地域を元気づける文化芸術活動に対する支援,芸術祭・音楽祭等のイベントの開催支援などの取組を進めてまいりたいと考えております。
自由討議に先立ちましての説明は,以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございました。今の事務局からの御説明でございますが,よろしゅうございますね。各専門の委員の先生方におかれましては,本当に大変ですが,ひとつよろしくお願いします。
それでは,自由討議を行います。事務局に対して激励するお話があっても構わないと思いますし,どのようなことでも,結構でございます。是非とも先生方の忌たんのない意見を頂きたいと思います。
と言いながら,おしりを決めてありますので,15時58分には終わりたいと思っております。先生方はお忙しゅうございますので,その後も詰まっておると思いますので,大体1人2分以内で,よろしくお願い申し上げます。
どうぞ,都倉先生。

【都倉委員】  今回まだ2期目の委員でございまして,新米のうちでございますけれども,ちょっとピント外れなことをもしかしたら伺う可能性があるので,お許し願いたいと思います。
この文化芸術振興に関する基本的な方針というのを見せていただいて,私,日本の劇場文化,音楽堂文化に関わって,非常に重要な項目がここに列記されている,ちゃんとした予算もついていると,今,拝見したわけでございます。この内容を私は把握していないのですが,結局,劇場経営,あるいは,コンサートホール経営というのは,基本的には,欧米の場合は,私は作曲家ですからミュージカルを専門にやってまいったわけですけれども,ある程度の商業ベースに乗せるというノウハウを覚えないと,ためになるもののためにその場限りの予算を使ってしまうというふうに,何も育たないんですね。やっぱり,大衆にアピールするということは,大衆は自分でお金を払って見に行きたいというぐらいのものを育てないと,僕は本来の意味での創造的な意味がないと考えているのです。例えば,ヨーロッパの場合でもアメリカの場合でも,劇場の在り方というのは,ほとんどが,国立劇場はもちろんございますけれども,地方自治体の経営,あるいは,subscriptionによるその地域の人たちが会費を払って成り立っている劇場経営。そういう絶対に責任を持って経営しなければならない立場の劇場の経営責任者,そしてまた芸術監督と言いますか,アートディレクターと言いますか,そういう立場で真剣にその劇場の演目を考える立場の人たち。こういう人たちを専門的に教育する。また,ある意味では,例えば,アメリカだとニューヨークとか東海岸,西海岸に通じている人脈も持っているようなアートディレクターをある程度の給料を払ってよく雇っているというケースが多いのですね。ですから,草の根からの舞台,コンサートホールの経営に関わるような人材を育てるつもりがあるのかどうかということが,私,一番,この予算を見ていて知りたいと思うのです。
ですから,僕の希望を言わせていただくと,こういう分科会の中に劇場,コンサートホールなどの専門分科会みたいなものがもしあったとしたら,いろいろな人材が日本にもいらっしゃるわけで,専門委員を雇ってそういうことを検討することが果たしてできるものなのかどうなのか。ちょっと伺いたいなと思いました。

【宮田会長】  先生,全員からお話を聞きたいので,それに対する答えは最後に一括して対応させていただきます。答えの機会を設けておりますと,先生一人だけでやりとりが終わってしまうので。大変重要なことだと思います。私は,小学生とか中学生からしっかりと,というのと同時に,先生が大衆から持ち上げていくという,ある意味共通しているところがあるのかなという気がしております。

【都倉委員】  ここに14億という予算もついておりますが,これはどういうふうに使われているのかというのが,非常に興味があります。

【宮田会長】  ありがとうございました。

【都倉委員】  済みません,長くなりまして。

【宮田会長】  いえいえ。
それでは,次の方。岩見先生いきますか。

【岩見委員】  国語分科会に配属されております岩見でございます。私は,日本語教育小委員会臨時委員も務めております。
生活者としての外国人のための日本語教育の在り方について,内閣でいろいろと審議をしてまいりましたけれども,現在,外国人が日本に200万人おりまして,今後,日本の将来を考えて,国際的な人の移動の激しい時代ということもありますし,経済的に外の力も使っていく必要がある時代であると思いますので,現在も200万人ですが,今後増えていくことは自然の状況であると考えます。諸外国におきましてもいろいろな移民政策がありますけれども,これを少子高齢化待ったなしの状況で,今,特に私の分担の範囲で言えば,言語政策をきちっとしておかなければ,集住化といいますか,今も都市によっては5%,10%の街もありますし,そういう集住してしまうことを避けるために,一般の社会の中に溶け込んで生活していくような,そのための言語の政策を,国として基本方針を立てていくべきであると思います。
今,地方はいろいろな現実に直面して,いろいろな施策を立てていますけれども,国として基本的な方針がなされますと,いろいろな意味でそれが無駄がなく,政策もいける。日本語教育にしましても,多文化交流にしましても,大事なことである。今後,新しい時代の文化政策と長官がおっしゃいましたので,1つ,そのところが重要であると思います。
基本的に,多様な言語の人たちとともに暮らす地域があるわけですよね。それがだんだん広がっていくと思いますので,そのためにもう一つの側面としては,一般の日本人にとりましても,多様な言語でもコミュニケーションができる。そういう政策も学校教育の中で日本的なところから始めるべきだと思います。ですから,両面ですね。共通語としての日本語を使ってコミュニケーションを図っていくということと,それから,どういう言葉でもその言語で話せるような,そして対面活動ができるような,そういった基盤を教育の中でやっていきませんと,それはいきなりでは無理だと思うのですね。そういったことは長期的な展望に立って図られるべきだと思いますので,その点をしかとお考えいただきたいと思います。

【宮田会長】  ありがとうございます。これも都倉先生ともつながってきますね。底辺を拡充することが,結果的には文化芸術だと。

【岩見委員】  そうなんです。

【宮田会長】  ありがとうございました。
先生方,どうぞ。

【岡本委員】  非常に手短に。昨年,震災が起こりましたので,文化に関する取組というのは,とにかくそれに向けて対応を取るというところで,終始した1年だったと思います。その中で,今年,その震災を受けて翌年になるわけですから,文化の取組として,日本の文化政策がこの震災を踏まえてどういう政策であり得るのか,どういう政策になり得るのかというメッセージを発するのは,多分,今年の役割ではないかと思います。個別のことについては,それぞれ分科会もございますので,そのときに発言をしたいと思いますけれども,大きな今年の位置づけとして,この会で震災の翌年として日本の文化政策から固まったメッセージが発信できると良いのではないかと感じました。
大学の学生が被災地支援の中で,実はカフェを運営しました。日本ぐらい日常生活のレベルが文化的に高いという場合に,日常生活を取戻すという感覚の中に,少しおしゃれなものを着て,少しいいものを食べてというところが,既に日常生活の中に入っている。したがって,そのあたりを復興支援のあるフェーズの中にどのように支えていくかという活動も非常に意味があったなと考えております。
ここに既に担当の方から御報告がありましたような昨年の取組,そこから引き出される意味,それらを今年何らかの形でまとめるということも,こういう会の1つの役割ではないかなと感じております。
以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。ある意味,決意表明のような感じがしますね。
杉戸先生,どうぞ。

【杉戸委員】  国語分科会に分属させていただく杉戸でございます。今回初めてこの委員を仰せつかりました。よろしくお願いします。
言葉のことを仕事にしておりますので,きょうの,例えば,資料8,大震災から1年間の文化政策という資料の中で,言葉,それも文化財とか,あるいは芸能などに至る前のごく日常的な普段の言葉といったものがこの文化政策の枠組みの中でどんなふうに出てくるものか,扱われているものかということを気にして資料を目にしておりました。
それで,幸い1か所だけは見つかったのです。資料8の最後のページ,4ページですね。この1年たって進めてきた分だけ取組のその先,今後の取組の中に6つポツで並んでいるその3つ目に,「方言の再興への支援」というのが,ちょっと言葉がきついかもしれません,ようやく出てきていると拝見しました。この点を事柄のサイズとしては具体的で細かいかもしれませんが,是非短期的なことでなく,これから続けなければいけない長期的な取組のこととして,是非認識していきたいものだと,そういうことを申し上げたいと思います。
集落ごとに高台へ移転するとか,あるいは集落の住民の方たちがばらばらに分散するという事態がもう始まっています。方言を支える地域社会が,いわば崩壊する。その過程がもう始まっています。これが,先ほど言った短期的に分散した,その瞬間を捉えるだけではこの言葉を追い切れない。これから,新しい地域社会ができて,そこでどういう新しい方言社会が生まれるか。そういういったことを追跡しなければいけないですね。国語分科会,国語審議会時代以来,ずっとその国語の実態を追いかける仕事をしてきていると思うのですが,方言もその1領域として是非やらなければいけない。そして,今回の不幸な震災で,新しい方言の流動性が始まった。これを長期的に追いかける仕事を文化政策の枠組みの中に是非位置づけていっていただきたいと思います。
先ほど,会長の最初の御挨拶で,村上の挨拶言葉が出ました。ああいう何げない日々の暮らしの言葉,文化財とか芸能の言葉ももちろん大切ですが,それ以前というか,それを支える暮らしの言葉も文化だと私は思いますので,そういう枠組みの中に入れて考えたいと思いますし,期待します。どうぞよろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございました。都倉先生がスタートしたときのすそ野を広げるということと,ある意味共通した日常の言語。それは岩見先生の多言語からも同じようにつながっていくのではないかと思います。杉戸先生,ありがとうございました。
それでは,道垣内委員。

【道垣内委員】  ありがとうございます。6つの重点施策を御説明いただき,もう一年を経過したわけでございますけれども,私,法律家で国際的な法律問題をやっているものですから,重点戦略でいうと5と6に特に関心があるのですが,しかし,5と6もその1から4までの基盤がないとどうしようもないので,全体としてつながっていると。特に5と6について言いますと,この2つも随分つながっていて,5の外国からのお客さんを呼ぶためには,6の日本から出ていくという方もあってのことだろうと思いますので,そういう総合的な組合せでこの文化政策が行われていくべきだというように,非常によくできたプランだと思います。
私が申し上げたいのは,もう既に予算を執行したことからだと1年だと思いますけれども,検証すべき段階にあり,これからもう4年間,5年間,年度ごとに検証することになっているわけですが,この検証の仕方がなかなか難しいだろうと思うのです。本当ならば数値を見て,予算を使う方は簡単に数値が出せるのですけれども,その効果があったかどうかの方の数値を何かいい指標を見つけて,ここの数字が伸びないので見直さなければいけないみたいなことが,軌道修正できるようなビルトインされた仕組みを考えるべきではないかと思います。私に何かアイデアがあるかと言われるとそうではないのですが,例えば,劇場にどれぐらいのお客さんが足を運ぶようになったのかとか,その中に外国からのお客様はどれぐらい含まれるかを調べるには相当お金が掛かるかもしれないので,その費用対効果の問題がありますが,そういったことを組み込んで,5年待つのではなくて刻々と軌道修正しながら目的を達成していくことも効果的にやっていきたいと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。
それでは,石上委員,お願いします。

【石上委員】  文化財分科会配属の石上でございます。本日,1つの大きなテーマが震災復興への対応ということでございましたけれども,それに伴いまして,地域の歴史・文化・民族遺産の役割と保全は大変重要であると明らかになったことは,御了解いただけると思います。
同時に,文化庁では,その前から歴史文化基本構想というものを作る仕事を進められていました。私もそれには大変関心を持っておりました。それ関係の文化財の証拠的把握モデル事業の奄美地域のプロジェクトにも参加をさせていただいているところであります。
そういう中で,私は震災復興における地域の歴史・文化・民族遺産の保全活用ということと,歴史文化基本構想における地域の歴史・民俗・文化遺産の総合的な把握ということは,全く別のことではないということを思うようになりました。正にそれは被害に遭われた方たちの問題と,これから被害に遭う可能性がある方たちの問題の違いでしかないと思うわけであります。そのときに重要なのは,どのようにして地域の歴史・文化・民族遺産を掌握するかという問題であると思います。指定された文化財だけではない,広く文化財を考えるという方針は,もう明確に定立されているわけであります。そういう中で,それは,やはり県の教育委員会が指導するわけですけれども,市町村という地域からそれが発信されなければならないでしょう。
しかし,市町村の教育委員会は弱体でありまして,民俗・歴史・自然,そういう分野を全てカバーしているところは少ない。そういうのは特に県の教育委員会などがコーディネーターになって,歴史的な由緒のある地域を広域市町村連携として捉えて,そこの歴史・民俗・文化遺産を掌握していく必要があるだろうと思います。是非歴史文化基本構想がそのようなものにも発展していってくださることを期待しているところです。
同時に,全国のそういういろいろな遺産は,例えば,図書館関係であれば,国立国会図書館のネットワークがありますし,博物館では,博物館のネットワークがあるわけであります。
また,全国のネットワークができておりませんが,県,市町村で収集した資料が,各県市町村の教育委員会にはデットストックになっているわけであります。そういうものを行政の縦割りを超えてどのように全体を掌握するかということは,大変重要な国の課題になっていくと思います。また,それを日本の国内でどのように交換して保護するか。又は,外国と連携して保護するかということも是非検討していただければと思います。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。

【森西委員】  関西から参っております文化財分科会の森西でございます。
国の文化振興施策が後退することはないと思っております。信じておりますけれども,先生方も御承知いただいているかと思います。きょうは意見というよりもお願いでございます。今,大阪で文化芸術に対しまして,予算の大幅削減というあらしが吹き荒れようといたしております。国の重要無形文化財である文楽,その真っただ中におかれております。大阪府にも大阪市にも文化振興条例がございます。理念はもちろん大切ですけれども,それを実現,実行していくためには,様々な立場の方たち,また,多くの人たちの理解と支援がどうしても必要でございます。ここ3月,4月でもまた動きがあるかと思います。関西に比べると,こちらでは報道は余り大きくないかもしれませんのですが,是非先生方にも関心をお持ちいただきまして,また,お知恵やお力も拝借できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田会長】  御苦労さまです。では,湯浅先生。

【湯浅委員】  今年初めて参加させていただきます。湯浅と申します。
先ほどお話がありましたように,非常に大事な時期にこの1年参加させていただくということは非常に身の引き締まる思いをしておりますが,昨年度はワーキンググループに参加させていただいて,内田先生と一緒にとても白熱した議論が毎回出ていたと思います。特に政策部会の方にも今年,参加させていただきますので,そこで大きな話題になるのが,アーツカウンシルに相当する仕組みの導入というところで,PDCAのサイクルをどういうふうに入れていくのかということで,ワーキングの中でもかなりお話をしながら,これからまた話していきましょうということだと思います。
予算を拝見しますと,分野も4分野に拡充し,今,POを募集されているということで,恐らくこの予算の増額というのは,日本の文化に関わる,アートに関わる方々,非常に注目しているところだと思いますので,実際にはプログラムを走りながらシステムを作っていくという,今年は非常に重要でかつ難しいときかなと思います。非常に火急な課題かと思いますので,そこでいろいろお話に参加できればという決意表明であります。
ワーキングでもかなりお話が出てきたので,今日にもお話があったと思いますけれども,人材の育成というところで,特にそのアーツカウンシルの仕組みに関するこういったお話の中でも,何度かこれからのPOの育成ですとか,人材の育成のときに戻ってきていたと思います。併せて今年の議論の中で,これから文化を支えていく中で,どういった人材を必要なのかという議論も一緒にできればいいのかなと思いました。
もう一つ,こちらの基本理念の中で,相同的な経済活動の源泉であるという文化芸術に対する定義が書いてありまして,併せて中のページですと,「施策の横断的な実施」ということが書かれているかと思います。今,海外でも文化芸術と創造的産業の関係性ですとか,シナジー,日本の場合ですと文化庁さんと経産省さんに分かれて,文化的,創造的産業が今,とり行われていると思いますけれども,今年,自治体のレベルでもこういった分野が非常に今押されていますので,どういうふうに省庁間,若しくは,担当を横断してシナジーを組んでいくかということも,非常にこれから日本が伸びていく上では必要かなと思いますので,その辺も含めてお話ができるといいかなと思いました。

【宮田会長】  それでは土肥委員と,後,申し訳ございませんが,もう一人どなたかということにさせていただきたいと思います。お願いします。

【土肥委員】  土肥でございます。2年目になりまして,何かということで申し上げますと,前回も申し上げたわけですけれども,文化庁関係予算というのは大体1,000億で,今年は少し増えたということでございますが,この概要の中でいわゆる三角がついているところがあるのですね。つまり,減っている。それはどこかというと,もちろん,いろいろ理由はあると思うのですけれども,私が注目しているのは,芸術家等の人材育成,これが大きく……大きくと言いましても,1,000億のうちの大体6%,60億が人材育成に投入されている予算になっておりますが,それが昨年と比べると4億ぐらい減っているということでございます。
この点に関しては,前回申し上げたのですけれども,なかなか国の公費でもってこういう人材育成を進めるというのは,財源的な問題があって難しいということがありまして,米国などの比較の関係で,寄附を大いに活用できるような仕組みを作ってほしいということを申し上げておったわけです。
この取組の中の6つの重点戦略の中の5つ目の中に,認定NPO法人等に対する個人からの寄附の税額控除があります。これは1つ,前回なかったところで評価したい点でありますけれども,日本人の寄附というのは,間接的なものが好まれるかどうか。つまり,タイガーマスクのこともありましたけれども,直接きくところに寄附をしたい。ランドセルを持っていきたい。そういうのが日本人にあるのではないかということなのですね。
震災のときに,あるドイツの写真の多い雑誌のタイトルで,フォルクデアヒルフェ,救済の民族であるということで日本人を特集していたのですけれども,恐らく日本人はこういう直接きくところに対しての救済の気持ちといいますか,援助の気持ちというのは,十分持っているのだろうと思います。それが,震災のボランティアなどの継続的な活動にも現れているわけで,恐らくここの環節的なそういう寄附,税額の仕組みは,もう一歩進めていただく必要があるのではないか。こういうことをお願いしたいと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございました。それに近いものは,長官の御発案がありまして,私どもの財団が引き受け手になって,先ほど事務の説明がございましたけれども,文化財レスキュー,直接的な寄附と援助をやっておりますが,それがもっともっとつながっていけば良いかなという気がしたのです。
後、お1人でございますけれども,どなたか。青柳先生。

【青柳会長代理】  3点お願いします。1つは,今,石上委員がおっしゃったことに関してですけれども,文化財保護保存というので,今の国がやっている指定主義だけでいいのかどうかを,やっぱりこの際,3.11を契機として,そろそろ考えるべきではないか。欧米がやっているのは,リスクマップの作成ということですね。それが1つ。
第2点は,私は国語には大変興味があるのですが,今まで国立国語研究所が文化庁の下にあったわけですけれども,それが人間文化研究機構に移りました。それで,例えば,国語分科会でいろいろ研究調査をするときに,そういう足腰がどうなっているのか。例えば,ユネスコのin danger languageの中で,もう日本は既に方言が,向こうはlanguageと言っていますが,8つ危機にひんしているということがマップにちゃんと出ています。それをどこでどういうふうに対応するのかということ。
それから,先ほど岩見委員がおっしゃっていたように,やっぱり私,言語学を良く知りませんが,動態言語学とか,あるいは言語社会学というものの積極的な協力を頂くことが重要ではないのかなという感じがしております。

【宮田会長】  ありがとうございました。1年間頑張ってやっていきたいと思っておりますので,御協力ください。何しろ会議のための会議ではございません。即,待っております。現地では。日本では。そして,アジアでは。世界にという気持ちでやっていきたいと思っております。
さあ,事務局から次のことに対しての発言をお願いします。

【滝波調整官】  ありがとうございました。会長の円滑な進行によりまして,時間どおりの終了となりました。今後はこの総会の下に置かれます各分科会及び部会の方で具体的な審議を進めていただきたいと存じております。各分科会や部会の審議の開催の御案内につきましては,それぞれ各分科会,部会の庶務担当より御案内を差し上げることとしておりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,以上で終了したいと思います。ありがとうございました。

【宮田会長】 今後とも,御協力のほどお願いします。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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