第13期文化審議会第2回総会(第60回)及び 文化審議会第11期文化政策部会第4回合同開催 議事録

平成26年3月10日

【内田調整官】  それでは,定刻でございますので,まず,開会に先立ちまして配付資料の確認からさせていただきたいと思います。お手元の左側の束でございますけれども,議事次第の次に資料1といたしまして,各部会・分科会からの報告があります。資料2が26年度の文化庁予算(案)の概要でございます。資料3が2020年に向けた文化関係の取組等という資料です。
 お手元の右側が参考資料でございますけれども,文化政策部会における意見,ヒアリングの概要。また,昨年11月の末ですけれども,文化庁と観光庁との間で連携協定が締結されておりますので,その協定書。また,異字同訓の漢字使い分け例の報告。日本語教育の推進に当たっての主な論点に関する意見の整理。平成25年度著作権分科会における審議状況について,という資料でございます。
 このほか机上には,本日,加藤種男委員から「オリンピック文化プログラム推進のために」という資料を御提供いただいております。もし過不足がございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,宮田会長,どうかよろしくお願いいたします。

【宮田会長】  大変お忙しい中,年度末でございますが,御出席いただきましてありがとうございました。中身のある会議にしたいと,かように思っております。本日は各部会,分科会,それから,今年度の審議状況報告のほかに2020の東京五輪に向けた文化政策についての議論もテーマとしております。それでは,総会と文化政策部会との合同開催としておりますので,よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 それでは,開会に先立ちまして昨年の7月から文化庁長官の御異動がございました青柳長官より御挨拶を一言お願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

【青柳長官】  青柳でございます。文化庁に勤める前までは国立美術館で現場を担当させていただいておりました。私は,どちらかというとデスクワークよりも,フィールドワークを中心とした研究活動をしておりましたので,ある意味で現場主義の人間でございます。そういう人間から見ましてやはり,国際的に文化というものがそれぞれの国で,あるいはそれぞれの地域で,以前以上に皆さんが文化というものを意識するようになってきた時代ではないかと思います。それは恐らく冷戦が終わって,いわゆるイデオロギーというものが人類平和のために,あるいは個々の人間の幸せのためにそれほど有効なものではなくて,もっと小ぶりで優しくて,肌に合った考え方とか,あるいは文化というものがイデオロギーよりも重要だということを皆さん世界中の人たちが理解するようになってきたからではないかと思われます。
 そういう中で,日本にも世界に誇るべき文化がたくさんございますが,よく言われるようにおいしい食い物屋があったら,それをテレビで映したり,人に知らせたりしないで自分だけで楽しんだ方がいいというように文化というものも本当の良さはその中で浸っていることの方がよくて,余り外に言いはやすことなく楽しむことが幸せのコツだとは思うのですが,世界的にそれぞれの地域や国が文化というものの重要性を言いはやすようになってきている現在,私どもも,私たち日本だけがいいものがあるけれども,それは余り人には見せない,知らせないという状況は,国際社会のいろいろな圧力の中で許されなくなってきてしまっております。これは,文化自体にとってはそれほど望ましい状況ではないですけれども,社会状況,世界状況,国際状況が変わってきてしまっているというのが現実ではないかと思われます。
 こういう中で,宮田先生を中心として,文化審議会及び文化政策部会で様々な御意見を頂き,提言を頂いて,この文化庁がそれを施策として実行しているわけでございます。特に,去年からの変化の中では,2020年がオリンピック・パラリンピックを我が国へ招へいすることとなり,そして,下村大臣もお話をしておりますように,オリンピックというものはクーベルタンが主張したように,決してスポーツだけではなくて,文化というものも,非常に重要な部分としてやっていくべきことであるということをもう一度,あるいはロンドンのオリンピックも参考にしながら,文化のプログラムというものを,あるいはカルチャー・オリンピアードというものを,是非実行していきたいと考えております。そのあたりも念頭に置きながら,是非是非御議論を深めていただきたいと思います。
 もちろん,今回は平成25年の最後の年でございますので,その新しい考えというものの具体化は,来年度からではございますが,しかし,それぞれの委員の先生方,あるいは部会のお考え方というものを集約しながら,是非2020年につながるようなお考えを御提示いただければと思います。そして,本日はその各部会,それから,各分科会からこの1年間の審議状況の御報告も頂くことになっております。そして,そのために本日は総会と文化政策部会との合同会議となっております。総会も文化政策部会も我が国における文化政策の基本的な方針を審議し,その意見を政策に反映させていくための審議会でありますので,どうか委員の先生方に忌たんのない御意見を賜りたいと思いますので,どうかよろしくお願い申し上げます。

【宮田会長】  ありがとうございました。これからの推進につきましても深い御発言を頂戴いたしました。大変感謝申し上げます。
 長官が先ほど申しましたように,長官がかつて会長代理を務めておられましたが,青柳長官の就任に伴い,後任を決める必要がございます。現在,目まぐるしく進展しております情報化やIT化の中で著作権制度の議論を取りまとめいただいておられます著作権分科会の会長でございます土肥一史先生にお願いしたいなと私は考えました。土肥氏は,本日は御欠席でございますが,先般,お願いいたしましたところ,御快諾を頂きましたので,このことも皆様に御報告しながら御了解を賜りたいと,かように思っております。よろしゅうございますでしょうか。 (「異議なし」の声あり)

【宮田会長】  ありがとうございます。
 さて,それでは,議事の方に進めさせていただきたいと,かように思います。本日は議事次第にありますとおり,各分科会等において審議状況について,それぞれ7分程度御報告を頂くことにしております。その後に文化政策について2020に向けましてどのようなことに取り組んでいったら良いかについてフリーディスカッションを開かせていただきたいと思っております。
 なお,本日は今期で最後の審議会となります。皆様,どうか忌たんのない御意見を短い時間の中ではございますが,頂戴したいとかように考えておりますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,最初に私から政策部会の進捗状況について,発表させていただきたいと思います。それでは,お話しさせていただきたいと思います。文化政策部会は平成23年2月に閣議決定され,第3次基本方針の記載にあるような施策の進捗状況を確認しながら合計4回にわたりまして審議させていただきました。今年度は,第3次基本方針の実行3年目に当たる年度でありますが,これまでの間に東日本大震災が発生しました。劇場法の成立以来,その他の動きもありました。また,昨今では文化芸術の力で子供たちの能力を引き出すための取組の大切さや関係省庁の連携の重要性が指摘されております。そこで,こうした観点に詳しい先生や関係省庁からもヒアリングなども行わせてもらいました。
 まず(1),東日本大震災からの復興のための取組に関する事項といたしまして,紺野委員,赤坂委員より被災地におけるこれまでの取組についてのヒアリングを頂戴しました。また,(2)の教育と芸術との関係に関する事項につきましては,湯浅委員,仲道委員,上野学園大学よりヒアリングを行いました。さらに(3)としましては,省庁の横断的な文化芸術振興の在り方に関する事項について総務省,外務省,経済産業省,観光庁をお招きし,省庁の横断的なメンバーにより活発な御意見を頂戴いたしました。
 具体的にどのような御意見を出されたかにつきましては,お手元の右側にございます参考資料において置かせていただいております。少し分厚い資料でございますが,その中に第11期文化政策部会における意見やヒアリングの主な概要という資料があります。その資料に記載がございますので,恐縮でございますが,お時間のあるときにお目通しを頂ければ幸いかと思っております。
 今後のスケジュールでございますが,来期に現行の第3次基本方針の改定に向けた審議を開始する予定でございます。また,2020に向けた文化振興の在り方についても,当然のことながら検討を行うこととしております。今期までの審議の成果を踏まえ,来期は第4次基本方針策定に向けてまた2020年に向け,議論を更に深めていきたいと,かように思っております。
 以上でございます。文化政策部会に関しての進捗状況でございました。  それでは,次に移らせてもらいます。美術品補償制度部会の審議の状況につきましてお願いしたいと思います。

【鈴木委員】  鈴木でございます。よろしくお願いします。美術品補償制度部会における審議状況と今後の課題について御説明を申し上げます。資料1の2ページを御覧いただきたいと思います。美術品補償制度部会は,展覧会における美術品損害の補償に関する法律の規定により審議会の権限に付せられた事項として,展覧会のために借り受けた美術品の損害を政府が補償する契約を展覧会の主催者と締結することについての適否を審議しております。今期の部会におきましては,申請のあった展覧会,4件について審議を行い,いずれも契約を締結することが適当である旨の答申をしたところでございます。具体的な展覧会の名称は資料の方を御覧いただきたいと思います。
 また,今期の部会におきましては,補償契約締結の適否に関わる審議のほか,美術品補償制度に係る関係機関等からのヒアリングを行っております。この法律は平成23年6月1日に施行されましたが,この法律の附則におきまして法律の施行の3年を目途として法律の施行の状況,社会経済情勢の変化等を勘案しまして国民が美術品を鑑賞する機会の一層の拡大を図る観点から,補償契約による政府の補償の範囲についての検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすると規定されております。ちょうど本年6月をもって法律の施行が3年経過することから,今期の部会におきましては,美術品補償制度の改善に向けて制度に係る問題点や課題を抽出するため,展覧会の主催者となり得る新聞社などマスコミ,あるいは国公私立の美術館,博物館,関係団体及び有識者から4回にわたりヒアリングを行ったところでございます。
 今後の課題としましては,引き続き補償契約の締結に関する審議を行うとともに,先ほど申し上げた美術品補償制度に係る関係機関等からのヒアリングを踏まえ,美術品補償制度の改善に向けた論点をまとめていく予定ですし,併せて制度の適切かつ円滑な運用について,審査方法等の改善を進めていく予定でございます。
 説明は以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 次に,世界文化遺産・無形文化遺産部会の審議状況につきまして,西村部会長様から御報告をお願い申し上げます。

【西村委員】  この部会は二つの特別委員会を持っております。一つは世界文化遺産の特別委員会,もう一つは無形文化遺産特別委員会であります。世界文化遺産の特別委員会では,そこにもありますけれども,日本の中の暫定一覧表に載っているものの中から準備が整ったものをユネスコに推薦するのを,どこを推薦するかということを議論しておりまして,今年度は長崎の教会群とキリスト教関連遺跡がふさわしいのではないかということで審議を行いました。
 ところが,そこの括弧にありますように近年,平成24年5月の閣議決定によりまして稼働中の産業遺産を含む遺産の場合は,これは文化庁ではなくて内閣府の方で取りまとめをする。そこに置かれた有識者会議が判断をするということで,明治日本の産業革命遺産,九州・山口と関連遺産について,こちらの方で推薦候補が決定されております。ということで,推薦候補が二つ出たということがありますが,政府の中で調整が行われて,今年度は明治日本の産業革命遺産の方を推薦するということで,今年1月に既に推薦書が提出されております。また,富士山につきましては昨年の6月26日に世界遺産一覧表に記載されまして,大変な話題になったということは皆さんお記憶に新しいと思います。
 続きまして,無形文化遺産の特別委員会の審査ですけれども,これは委員長がここに,神崎宣武委員が委員長なわけですけれども私が説明させていただきまして,ここも無形文化遺産条約の下に人類の無形文化遺産の代表的な一覧表に対して日本から推薦するということを行っているわけですけれども,昨今のユネスコの財政事情や,ここにたくさんの審議が係るということで審議の件数が非常に絞られているということもありまして,日本としては一つ一つの無形文化財に指定されている案件を一つずつ挙げていくというのは非常に困難だという状況から,テーマをグルーピングして,その一つ一つのテーマについて総合的に提案書を出していこうという方針を決めまして,昨年3月に「和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術」という形でユネスコに提案をしております。
 また,23年3月に提案された「和食:日本人の伝統的な食文化」についても,これは昨年の12月に一覧表に記載されて,これも大変な大きな話題になったところも記憶に新しいところでございます。
 以上であります。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして国語分科会の審議状況につきまして杉戸分科会長から御報告をお願い申し上げます。

【杉戸委員】  杉戸でございます。今期の国語分科会の審議状況でございますが,昨年5月に今期第1回の分科会を開催しました。そこで引き続き漢字小委員会と日本語教育小委員会,二つの小委員会を設けて審議を進めました。資料1の4ページが国語分科会の分ですが,そこにこの二つの小委員会の審議状況をまとめております。また,それぞれの小委員会で取りまとめた報告書が,二つございます。それぞれ分厚いものです。参考資料の中で「「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)」及び『日本語教育の推進に当たっての主な論点に関する意見の整理について(報告)』,をお配りしております。
 二つについて,初めに漢字小委員会における審議状況について,国語分科会の副分科会長である岩澤委員から説明をお願いします。

【岩澤委員】  岩澤でございます。国語分科会の漢字小委員会におけます審議過程について若干の御報告をいたします。漢字小委員会はこの1年,国語分科会が去年まとめました「国語分科会で今後取り組むべき課題について」に沿って,異字同訓の漢字の使い分けについて検討をしてまいりました。御承知のように異字同訓は同訓異字という言い方もいたしますが,違う漢字でありながら訓では同じ読みになるというものを指します。具体的には,この厚い配布の資料を御覧いただければと存じます。この異字同訓の使い分けをテーマにした理由,大きく分けて二つ挙げられます。一つは昭和47年に当時の国語審議会の漢字部会が総会での参考資料として作りました「「異字同訓」の漢字の用法」」が示されてから40年以上経過しまして,実態にそぐわないものが出てきているということ。
 もう一つは,平成22年の常用漢字表の改定に当たって新たに生じました,「こたえる」,「つくる」などの使い分け,こちらの方は,改定常用漢字表の「参考」にある用法例として整理されているため,異字同訓の用法について本格的に調べようとしますと,昭和47年のものと改定常用漢字表の参考の両方を見ないといけないということになりまして,利用者側の一覧性という点で課題があったということが挙げられます。見直しに当たりましては,報告の2ページの前書きにありますように,常用漢字表に掲げられた漢字のうち,同じ訓を持つものについて,その使い分けの大体を簡単な説明と用例で示しております。具体的には昭和47年のものと平成22年の用法例を一体化しまして,現在の表記の実態に合わせて使いやすく分かりやすいものになるよう取り組みました。簡単な説明を加えるとともに,用例も時代に合ったものといたしました。一部追加・削除を行った結果,最終的には133項目となっております。
 また,使いやすさという観点から,末尾に五十音順の収録項目一覧というものも付けたのが特徴でございます。なお,「使い分けの大体を示す」と言いますのは,同訓の漢字の使い分けに関しては,使い分けを明確に示すことが難しいケース,使い分けに関わる年齢差ですとか,個人差,分野による表記,習慣の違いなども考えられるためです。
 以上です。

【杉戸委員】  もう一つの小委員会,日本語教育小委員会の審議状況について私から御報告させていただきます。日本語教育小委員会では,前期に課題整理に関するワーキンググループを設け,「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と論点の整理について(報告)」を取りまとめました。この報告では,日本語教育を推進するための主な論点を11項目に整理しましたが,今期は,この11の論点について日本語教育小委員会で様々な方からのヒアリング,あるいは文化庁主催事業などの場で地方自治体の日本語教育関係者,国際交流協会などの日本語教育担当者,NPO法人やボランティア団体,で日本語教育を行っている方々から意見を聞くとともに,必要なデータの収集,整理を行ってきました。
 それらを整理してまとめたものが,お手元の参考資料,「日本語教育の推進に当たっての主な論点に関する意見の整理について(報告)」でございます。この報告の134ページの「おわりに」というまとめの部分にも記載しておりますが,様々なヒアリングなどで得られた意見の多くは,地方自治体や,NPO法人で行っている日本語教育に関するものが中心でしたが,実際の現場では,ボランティアが大きな役割を果たしていることから,来期以降の日本語教育小委員会では,論点7として整理した「日本語教育のボランティアについて」を中心に検討をすることとしております。ここでいうボランティアとは,それぞれの地域社会において自発的に日本語教育に取り組む人と考えておりますが,その内実は非常に多様になっておりまして,その定義も含め,位置付けや在り方についてしっかりと議論することが必要だと考えております。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,次に進んでよろしゅうございますか。それでは,続きまして著作権分科会の審議状況について,大渕副分科会長から御説明のほどお願い申し上げます。

【大渕委員】  ただいま御紹介いただきました大渕でございます。著作権分科会長の土肥先生が今日欠席ですので,副分科会長である私が代理して御説明させていただきたいと思っております。
 今期の著作権分科会における審議状況等につきましては,お手元にあります資料1の5ページにこれまでの審議状況として著作権分科会の審議状況が書いてございますが,ここにありますとおり著作権分科会では平成25年5月に出版関連小委員会,法制・基本問題小委員会,国際小委員会を設置し,検討を進めてまいりました。そして,去る3月5日に出版関連小委員会から報告書について,その他の小委員会から審議経過について報告をそれぞれ受けましたので,その内容について御説明いたします。
 それでは,次に,参考資料の最後につづられております平成26年3月10日付の参考資料,平成25年度著作権分科会における審議状況についてという,この間にパワーポイントが入ったものなので分かりやすいかと思いますが,パワーポイントと普通のA4のものが一緒につづられたこの参考資料に基づいて,以下御説明いたしますので,それを御覧になりつつお聞きいただければと存じます。
 まず,この参考資料2ページ目がパワーポイントでこういうふうになっておりまして,ページが分かりにくくて,パワーポイントのこの左側のところに2ページと書いてあるこれでございますが,まず,先ほど申し上げました最初の出版関連小委員会について御説明いたします。問題の所在・検討の経過等については,このパワーポイントの2ページ目にあるとおりでございます。ここにありますとおり,一番上の方から,近年,電子書籍が増加する一方,出版物が違法に複製されインターネット上にアップロードされるという海賊版被害が増加しております。しかしながら,現行の著作権制度は紙媒体による出版のみを,ここの二つ目の四角に書いてあるところでございますが,紙媒体による出版のみを対象としており,電子書籍は対象としておりません。
 こうしたことを背景といたしまして,その次の三つ目のボックスでありますが,平成25年5月以降,出版関連小委員会において検討を実施し,関係団体からのヒアリングや意見募集も踏まえて12月に電子書籍に対応した出版権を整備することが適当であるという報告書を取りまとめました。そして,内容といたしましては,そこでは,この一番下のボックスでございますが,電子書籍に対応した出版権を設定した場合,出版者が権利者として独占的に電子配信をすることができ,また,出版者自らインターネット上の海賊版に対して差止請求ができるという,この点が重要でございますが,このことによりまして我が国の健全な電子書籍市場の発展や出版文化の更なる進展が期待されることが示されております。これが一番下のボックスでございます。
 次に,その次のパワーポイントの3ページ目のところでございますが,今申し上げました電子書籍に対応した出版権というものを設定するのが適当だということを今申し上げましたが,その概要がここに書かれております。その出版権の主な概要について,以下説明いたします。
 まず,(1)の電子書籍に対応した出版権の設定につきましては,著作権者は電子出版をすることを引き受ける者に対し,電子出版に対応した出版権を設定することができることとしております。これが出発点でございます。次に(2)の権利の内容等でございますが,電子出版に対応した出版権の設定を受けた出版者は,電子出版を行うために必要な権利を専有――専有というのは専ら有するという。等としております。それから,(3),やや地味に見えるかもしれませんが,義務と消滅請求についてでございます。1といたしまして電子出版の義務としては,出版者は原稿等の引渡しを受けてから一定期間内に電子出版する義務などを負い,また,2で消滅請求についてですが,義務違反の場合等に著作権者から消滅請求を認めることが適当であるとしております。
 それから,次に主な検討内容につきまして4ページと5ページ,パワーポイント,引き続き主な検討内容1,2となって,小委員会における検討内容をこの4ページ,5ページで整理しておりますが,まず,4ページ目を御覧いただきますと,これが非常に大きな論点としてあったところですが,紙媒体での出版と電子出版について権利を一体とした制度設計が適当かどうかというこの一体化の是非という部分でございますが,この点について検討を行いました。この内容につきましては,次の真ん中あたりに書かれているとおりで,積極的な意見,消極的な意見,両方書かれておりますけれども,この小委員会における検討では,ここのように関係者から賛否両論が示されたわけでございますが,検討の結果,一体的な権利として制度化する場合と別個の権利として制度化するとで実際上の差異は特段ないことが確認されまして,報告書では立法化に当たっては,小委員会で示された関係者の意見や出版・電子出版の実態,出版者の役割等を考慮することが必要であるとされました。
 次に5ページ目に移っていただきまして,海賊版対策について検討を行いました。小委員会における検討では,電子出版に対応した出版権を設定した場合,出版者自らインターネット上の海賊版に差止請求等ができること。この差止請求が重要だということは先ほど申し上げましたが,そのことが確認されまして,著作権者の意向により紙媒体での出版のみを行う場合については,期間限定の著作権譲渡契約を締結するなど著作権者と出版者の協力により効果的な海賊版対策を行うことが重要であるとされております。なお,ここで今御紹介いたしました小委員会報告書を踏まえ,著作権法の改正案を本国会に提出すべく現在準備中であると聞いております。
 それでは,引き続きまして参考資料の,今度はパワポーポイントが終わって普通のA4の紙でございますが,7ページ以下を御覧いただければと思います。次に法制・基本問題小委員会,7ページの一番上の方に書いてあるところでございますが,における審議の経過等について御報告いたします。7ページです。今期の法制・基本問題小委員会では,クラウドサービス関係とクリエーターへの適切な対価還元の関係について,ワーキングチームも設置いたしまして検討を進めてまいりました。また,裁定制度の在り方等についても検討を進めてまいりました。これらについてごく簡単に御報告いたします。
 まず,7,8ページのところの真ん中少し上から始まるところで,各課題の検討状況の最初のクラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元に係る課題についてというこの最初の課題でございます。そこで真ん中あたり,2にありますように小委員会ではクラウドサービス関係について,関係者からヒアリングを実施いたしまして,対象となるサービスや法的論点について議論を行ったところ,クラウドサービスの内容をより細かく具体的に分析し,集中的な議論を行う必要があるとの意見が示されたことや,クリエーターへの適切な対価還元の在り方も併せて検討すべきであるとの意見も示されたことから,ワーキングチームを設置することとしたところでございます。そして,この7ページの一番下の方にある3にございますように,ワーキングチームにおいても検討を行ってきたところでございます。
 次に8ページに移っていただきまして,裁定制度の在り方等に関する課題についてでございます。この3分の1ぐらいのところにある2のところを御覧ください。ここにありますとおり,小委員会では文化庁が委託研究として実施した調査研究に基づき,諸外国における権利者不明著作物に関連する法制度について検討を行い,また,裁定制度の利用状況等を把握するための関係者ヒアリングや,これを踏まえた上での議論を行ったところでございます。このうち,裁定制度の見直しについては,権利者探索のための相当の努力という,こういうものの要件等について,法律の要件でございますが,議論の結果を踏まえ,まずは文化庁において告示等の見直しを行うこととなったところでございます。これらの課題につきましては,今後も引き続き検討を行うこととされております。
 それでは,次に9ページ以下でございますが,最後になりますが,国際小委員会関係,国際小委員会における検討結果について御報告いたします。これは9ページの一番上の方でありますが,(1)から(4)まであるように,今期の国際小委員会では(1)インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,(2)著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,(3)知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方,(4)主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点の整理の四つの課題につきまして検討を行いましたので,それぞれ簡単に御報告いたします。
 まず,9ページから11ページにかけてが,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方でございます。特に中国における対応として9ページの一番下の段落,パラグラフにありますように,権利者による団体としての行動,連携を政府としても支援することの必要性や正規コンテンツの流通促進についての検討の必要性が指摘されております。また,2,政府間協議の,これは11ページの3段落目でございますが,これと併せて御覧ください。政府間協議の対象国拡大に向けた今後の取組につきましては,東南アジア諸国との協議の結果を踏まえ,今申し上げました11ページの3段落目にありますとおり,著作権集中管理の強化等に対して支援を行う必要性が必要とされております。
 それから,次に11ページから14ページにかけてでございますが,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方についてであります。ここで12ページにありますとおり,昨年6月に,これは12ページの上の方でございますが,採択された視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約について早期に締結されることが望まれるとしております。この他にも,そのあたりにございますが,SCCR,すなわちWIPOの著作権等常設委員会では,現在,放送条約の保護等について協議が進められているところでございますので,議論の状況を整理しております。
 それから,次に15ページ,フォークロア問題の対応の在り方についてでございますが,フォークロアの保護の取組は各国が地域の特性や文化に合わせて柔軟に対応することが可能となるように対処すべきとされております。最後に15ページ以下でございますが,主要外国の著作権法及び制度に対する課題や論点の整理のため,有識者からヒアリングを行っており,各種の論点について現状把握と課題整理をさせていただいております。
 以上,まとめてでございますが,以上今期の著作権分科会における審議状況について,ごく簡単でございますが,御説明申し上げました。なお,開催状況や委員名簿につきましては,18ページ以下を御参照いただければと存じます。今後につきましては,引き続きの検討が必要とされた課題については,来期以降の分科会におきまして順次検討を進めてまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。膨大な量の御報告を頂戴いたしました。御苦労さまでございました。ありがとうございました。
 では,続きまして文化財分科会の審議状況について,鈴木分科会長さんからお願いいたします。

【鈴木委員】  文化財分科会の開催状況でございますけれども,資料1の6ページを御覧いただきたいと思います。今期は,昨年3月26日に第135回分科会を開催いたしまして,本年2月14日の第145回分科会まで11回開催しております。今後,加えて3月18日に今期最後の146回分科会を開催する予定でおります。文化財分科会では,文化財保護法第153条の規定によりまして文部科学大臣又は文化庁長官から諮問された案件について調査,審議を行っております。今期は国宝・重要文化財の指定等について125件,登録文化財の登録等について464件,重要文化財,史跡等の現状変更の許可について1,661件の答申を行いました。
 それでは,答申を行った文化財のうち代表的な事例を紹介いたしたいと思います。1の8ページを御覧いただきたいと思います。建造物関係の国宝・重要文化財につきましては,国宝1件,重要文化財18件の計19件の指定について答申いたしました。昨年5月の第137回分科会におきまして,重要文化財であった鑁阿寺(ばんなじ)本堂を国宝に指定するよう答申いたしました。鑁阿寺本堂は足利氏の居館跡に建てられた中世の密教本堂で,鎌倉時代,最新の建築様式でありました禅宗様をいち早く導入いたしました。後の宗教建築の構造と意匠に大きく影響を与えた禅宗様の受容と定着の様相を示しておりまして,極めて価値が高いものでございます。また,様式の選択には明確な意図が認められ,我が国における外来新技術の受容の在り方を示しており,文化史的に深い意義を有しております。
 また,重要文化財の指定解除が1件ございました。岡山県の金山寺本堂が火災により全焼いたしまして,その価値を失ったため指定解除について答申いたしました。
 次に,史跡名勝天然記念物につきまして82件の指定を答申いたしました。資料1の9ページを御覧いただきたいと思います。昨年6月に開催いたしました138回分科会におきまして,纒向(まきむく)遺跡を史跡に指定するよう答申いたしました。纒向遺跡は奈良盆地東南部桜井市に所在する3世紀初めから4世紀初めに営まれた大規模な集落跡でございます。周辺には纒向古墳群や箸墓古墳など出現期初期の古墳が点在しております。遺跡は東西2キロ,南北1.5キロというこの時期では類を見ない規模で,居館と考えられる大規模な掘立柱建物などの遺構や様々な地域の土器や木製仮面などの遺物が検出されております。今回,最も保存を急ぐ居館跡等を含む辻地区と太田地区の一部,約1万4,000平米を指定いたしました。纒向遺跡は大和政権との関わりのある遺跡と考えられ,我が国における古代国家形成期の状況を知る上で極めて重要なものでございます。
 次に重要無形文化財については,昨年7月の139回文化財分科会におきまして4件答申いたしました。資料1の10ページを御覧いただきたいと思います。ここにありますのは,蒟醤(きんま)という技法のものでございますけれども,我が国の蒟醤は漆を素材とする漆芸の技法の一つでございます。漆を塗った表面に彫刻刀で文様を彫り,そのくぼみに色漆を埋めて文様を研ぎ出し,磨いて仕上げるものでございます。我が国では古来の線彫りに加え,点彫りや面彫りなど様々な技法が行われるようになり,我が国の主要な漆芸技法と現在なっております。
 山下義人氏の蒟醤の技法は面彫りを特色としております。幅広い彫りと色塗りを丹念に繰り返すことにありまして,これによって濃い色から淡い色に至る数十色の色漆を塗り重ねて緻密なグラデーションを表現しております。その作風は自然の微妙な生動を詩情豊かに表現するものでございます。同氏は日本伝統工芸展等で受賞を重ね,更に紫綬(しじゅ)褒章を受けるなど高い評価を得ております。また,後進の指導育成にも尽力されているところでございます。
 以上,文化財分科会の今期の審議状況について,大まかでございますが,報告を申し上げました。以上でございます。

【宮田会長】  鈴木先生,ありがとうございました。
 以上,三つの部会と三つの分科会からそれぞれ審議状況や今後の課題について御報告がございました。しばらくお時間を頂戴します。どの分科会や部会からのものでも結構でございますので,皆様の中で御質問等ございましたら,お受けいたしたいと,かように思っております。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。国語分科会の報告に関連しますが,言葉の使い分け,同じ言語の表現でも,随分な違い,微妙で分かりにくいものが存在するのですね。

【鈴木委員】  分野によってかなり違います。

【宮田会長】  先ほど申しましたけれども,著作権の分科会においても大変難しい問題等も,非常に良くこなしていただいて,感謝申し上げます。有り難いことだと思います。大変,複雑な部分,特に国際的問題になってくると非常に複雑な部分が出てくると思いますが,ひとつよろしくお願い申し上げます。
 もし,今,御審議の中で御質問等が後から出てきましたら,そのときでも結構でございますので,これ以上質疑等,ございませんようでしたら進めていきたいと思いますが,よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは,その次に移らせていただきたいと思います。最近の文化政策について,特に2020年の東京五輪に向けて文化関係の取組の方向性について事務局より御説明いただけますか。

【平林課長】  文化庁政策課長の平林でございます。それでは,資料2の予算と引き続き資料3の2020年に向けた文化関係の取組等につきまして御説明したいと思います。まず,平成26年度予算案につきまして御説明したいと思います。現在の国会において審議中でございますが,そこにおきます文化庁の予算案についてでございます。この資料の見方でございますが,資料2に,右側にオレンジ色で囲ったページ番号が付いておりますけれども,こちらは別添に付けておりますのが参考資料,横書きの参考資料で説明している箇所を示してございますので,そちらを併せて適宜御参照していただければと思います。
 では,資料の2に戻っていただきまして,この予算案でございますが,世界に誇るべき「文化芸術立国」の実現というものを柱といたしまして,大きく四つの施策について重点を置いて,全体として1,036億円と前年度比3億円増の金額を現在計上しているところでございます。まず,資料2の1ページ目に1といたしまして,豊かな文化芸術の創造と人材育成という施策を掲げているところでございます。今回,特に子供たちに質の高い文化芸術鑑賞,また,体験機会を増やそうということで,(1)にございますように1として文化芸術による子供の育成事業,更に2として伝統文化親子教室事業というものをそれぞれ拡充しているところでございます。例えば子供の義務教育期間中の鑑賞体験機会については,1.8回から2回に拡充しようと。また,伝統文化親子教室につきましても,3,400教室から4,000教室へと拡充をしているところでございます。
 それから,1ページめくっていただきまして資料2,2ページ目の下の方に2番目の柱といたしまして,文化財の保存,活用及び継承等というものを掲げてございます。こちらにおきましては,この(1)にございます文化財修理の抜本的強化,防災対策等の充実というものを図っているところでございます。その(1)の1を御覧いただきますと,建造物の保存修理等とございますが,こちらにおきましては木造文化財建造物等の保存修理につきまして,中期的に適切な修理,すなわち根本修理であれば平均150年,維持修理であれば平均30年といった周期の実現を目指して拡充をしているところでございます。保存修理件数につきましては,60件から66件へ,そして根本修理につきましては10件から11件へと拡充を図っているところでございます。
 それから,三つ目の施策でございますが,次の3ページ目でございます。我が国の文化芸術の発信と国際文化交流の推進という施策でございます。(1)を御覧いただきますと日本文化の発信・交流の推進ということでございますが,地方からの文化芸術発信への支援メニューといたしまして,ここに1にございます文化芸術創造都市の推進というものを拡充しているところでございます。また,我が国の優れた芸術文化を戦略的に普及するため,海外のフェスティバルへの参加・出展であるとか,国内における国際フェスティバルの開催などの取組を支援いたします,この2で掲げている芸術文化の世界への発信と新たな展開ということのために,これまで音楽や舞踊等の支援分野に加えまして現代アートに対する支援も新たに行おうと考えてございます。
 最後でございますが,4ページ目を御覧いただければと思います。四つ目といたしまして,文化発信を支える基盤の整備,充実というものを施策として掲げておりまして,そこの1,国立文化施設の機能強化といたしましては,収蔵品の充実,あるいは専門人材の確保や設備整備などに活用可能な支援制度を創設しようといったことで,国立文化施設の機能強化を図ることとしております。
 予算案の説明は以上でございます。
 続きまして,資料3について御説明したいと思います。横長の方のポンチ絵でございます。冒頭,長官の挨拶にもございましたように,2020年に東京においてオリンピック・パラリンピックの開催というものが決定したところでございます。この2020年を単にオリンピック・パラリンピック開催の年とするのではなくて,新たな日本の創造の年とするということを目標にしてはどうかということを考えてございます。オリンピック憲章におきましても,スポーツと文化,教育の融合というものが掲げられておりますし,直近のロンドンオリンピックにおきましても,かなり大々的に文化オリンピック,カルチュアル・オンピアードということで4年間にわたって実施してきたということもございまして,そういったことも参考にしながら,それを継承していくということも重要だろうと思ってございます。
 資料3の1ページ目を御覧いただければと思います。資料の左上の方には最近の文化関係の主なトピックスを掲載させていただいております。御覧いただければと思います。また,右側の上の方には文化芸術立国中期プランというようなものの文言を記載しておりまして,その策定ということを考えております。このプランというものでございますが,現在,下村大臣の下で年度末までに今後の文化振興の方向性についてまとめようということで,別途検討中のものでございます。このプランにつきましては,また別の機会に御紹介申し上げたいと思っております。この同じ1ページの下の方に2020年の東京オリンピック・パラリンピックに併せまして,全国津々浦々で様々な文化的なイベントや取組,すなわち文化プログラムというものを実施して,文化芸術立国中期プランに基づきまして日本各地の文化力の基盤を計画的に強化していくというような構想を書かせていただいております。
 これらを通じまして2020年に目指す姿というものを1ページ目の下に記載しておりますが,日本が2020年に世界に尊敬され,愛される文化の国になっている状態,例えば多くのアーティスト,若者,文化人,学者等々の方々が日本を訪れて,日本が世界の文化芸術の交流のハブとなっている状態を目指す姿としております。さらに文化芸術に支えられた成熟社会の新モデルというものを世界に提示して,日本から新しい価値が創造されているということも文化芸術に根ざした国として日本が2020年に世界に提示する一つの姿と考えてございます。
 続きまして2ページ目でございます。この資料はあくまでも文化プログラムの素案という位置付けでございます。各界の文化人であるとか,あるいは文化庁内からの様々なアイディアを集約して,その検討中の資料でございますので,そのように御理解いただければと思います。コンセプトにつきましては,日本の強みであるとか,被災地からのメッセージ,地域の力とか,あるいは芸術競技,参加体験とか,文化財の発信,また,成熟社会,日本への国際会議の招致等々,様々な案が寄せられておりまして,2020年までの6年間で文化的教養を教え合う学びの場作りであるとか,芸術競技の試行であるとか,キャンプの招致に合わせたプログラムの企画等々を進めていこうというようなアイディアでございます。これもイメージでございますが,2020年におきましては,ここの上にございますが,お祭りとか,温泉とか,お花見,そして10億人の合唱祭等々,春夏秋冬に応じたプログラムを展開していこうではないかというような提案でございます。
 この年の日本全国の姿といたしまして,全国を「文化おもてなしロード」,あくまでも仮称でございますけれども,それでつないで文化プログラムを全国展開しようというようなイメージを掲げてございます。今後更に各界,各層の様々な方々からお知恵を,あるいは御知見を頂いていこうと考えてございます。本日,お配りしたこの資料でございますが,あくまでもイメージというものでございまして,文化庁として内容を固めたという性格の資料ではございませんので,その点は御理解いただければと思います。本日は,皆様方から2020年の姿,あるいはコンセプト,そして文化プログラムにつきまして自由に様々な忌たんのない御意見を賜れば幸いかと思っております。
 説明は以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 今,予算,文化庁予算の概要及び2020年に向けた文化関係の取組等の御説明を頂きました。資料2の世界に誇るべき文化芸術立国の実現と書いてあると,さっきの国語分科会の文章と,数字と文字とが少しずれているのがいかがなものかという感じもややするのですが,この辺は頑張ってもらうということで,すばらしいものになってもらえればなと考えておりますが,この件に関してお時間を頂戴したいと思います。また,先ほどのお話の部分のことでも,発表のことでも結構でございますが,その後,加藤先生からも御発言を頂きたいと思います。

【加藤委員】  では,ペーパーを御用意してお配りさせていただきました。オリンピックの文化プログラムの進め方と関係するので御報告をさせていただきたいと思います。今日申し上げたい点は3点なのですけれども,そのバックグラウンドといいますか,それを御説明するために1枚おめくりいただいて,横長のカラーのページを先に御報告をさせていただきたいと思います。これは何かといいますと,近年の企業メセナ,つまり企業ないし企業の財団が行っている文化に対する活動をごくかいつまんで取りまとめたもので,内容は一部速報値に近いところがありまして,更に精査が必要かと思うのですが,数か月かけてより詳しい資料もいずれ御報告ができればと思っております。
 結論的に言いますと,現在,企業が行っている文化に対する1年間の支出額が約207億円ある。それから,企業関連の財団が実施をしている文化への支援額が603億あるということで,総額が811億円というふうになっております。これは飽くまでアンケートにお答えを頂いた数字だけなので,我々が把握できる範囲だけでも実態はもっと大きなものになるのではないかと思っていまして,そうした数字を更に補強した上で後日御報告をさせていただきたいと思っています。それだけ企業は文化活動を推進する上で相当頑張っているということを今日はまず御理解をお願いします。
 あわせて,後の御説明に関係するので,二つ数字を御説明しておきたいのですが,右側の企業メセナ協議会,これはメセナ協議会の内部にあるシステムとしてやっている助成認定制度というのがございまして,これは,いろいろな方々から寄附を頂戴して,それを芸術家,あるいは芸術団体,活動等に私どもの協議会を通して寄附をするという制度でございます。これが5億余りあったということでございます。それからもう一つ,同じ2013年度にGBFundというものを実施いたしておりまして,これは東日本大震災に対して芸術文化で復興を応援するという,これも広く浄財を集めさせていただいているものでございますが,現在,総額で,ファンドそのものの総額が1億2,300万ぐらいになったところで,2013年度については43件に対して1,499万円の助成ができたというところでございます。
 それらを背景にして,もう一度表にお戻りを頂きたいのですけれども,3点のことを御提案,しておきたいと思うわけです。1番目には,文化について多様な価値を尊重していくことが重要ではないかという,これは確認でございますが,今更釈迦(しゃか)に説法で,この場で申し上げるまでもないかもしれませんが,現在のところ,文化への着目というものが経済とか観光とか,そうした波及効果の方を中心に議論されているのではないか。もちろん,そうした様々な領域への波及効果,社会創造に寄与するということについて,私ども協議会も早くから指摘をしてきたわけですが,そうしたことが可能になるためにも,しかしながら,文化に多様な独自の価値があるのだということを再確認する必要があるのではないか。そうした多様な価値があるがゆえに,様々な文化というものに着目をして,今後,支援をしていく必要があるのではないかということの確認でございます。特に,先ほどオリンピック,2020年に向けた文化関係の取組等について,全国津々浦々で実施をするという御報告がありましたが,こうした方向は非常にすばらしいと思います。
 2番目なのですけれども,文化ファンドの形成が必要で,可能かもしれないということ,あるいはこれを是非取り組みたいということを申し上げておきたいと思っております。一つは,国等が相当の予算を組まれることは当然でありますが,民間においてこれを機に文化ファンドを形成することができるのではないか。あるいはするべきではないか。それぞれのファンドは独立をしたファンドでありつつ,しかし,オリンピックを契機に文化の制度そのものを,基盤を整備していくという観点から,長期的な文化制度の形成を図るために,こうしたファンドを作ってはどうかということで,現在,いろいろと具体的な準備を図っているところです。この点については,是非皆様方にもいろいろな面で進め方について御意見を頂戴できると有り難いなと思っております。
 それから,3番目に,これも私どもが政策提言で早くから御提案していることの一つですが,例えば最終的に文化の振興を図っていくためには,文化省を作るべきではないかということを御提案申し上げてきましたが,そうは言っても,それが急に実現するとは現実的に思えないので,であるとすれば,今,アーツカウンシルを国がお作りになった。そこに外部の専門家を登用しておられる。この方向性は結構だと思うのですが,せめて文化庁の中といいますか,担当省庁の中に文化政策の専門家を養成していくという方向も考えられるべきではないかなと思います。若手の優秀な方々を集めて,庁内にこうした研究機関,政策の研究機関のようなものを作って,自らも人材育成をされる必要があるのではないのかなということを付け加えさせていただきました。
 したがって,今日の話は,1は包括的なもの,2は民間側でファンド形成をこれから図るよということの宣言でもありますが,三つ目はそれに対応してきちんと国側も政策の研究専門機関をお作りになるべきではないのかということでございます。
 以上でございます。

【宮田会長】  先生,ありがとうございました。1,2,3と非常に明快なお願い事,全国規模でやりたい,そして,最後には養成をしたい,養成をしてもらいたいというふうな御提案を頂戴いたしました。ありがとうございました。
 さて,これから少しフリーにトーキングをしていきたいと思います。お手をお挙げいただけたら有り難い。  では,三好先生,どうぞ。

【三好委員】  アーツカウンシル東京の三好でございます。今,オリンピック文化プログラムの話が出ていますので,それに関連して私から審議会及び文化庁にお願いをしたいと思います。今日の各分科会の御報告を聞いていると,オリンピックの文化プログラムはこうあるべきと考えていたことが非常に関係していると改めて認識をさせられました。といいますのは,オリンピック開催の立候補ファイルにDiscover Tomorrow未来をつかむという言葉を掲げており,これは東京や日本がこれまで蓄えてきたものである記憶をよみがえらせて未来にどう進んでいくのかという意味というふうに捉えております。ですから,文化プログラムでも記憶ということが非常に重要な言葉になってくると思います。
 例えば今,日本が世界に誇るフィギュアとか,アニメというものは,先ほど文化財の方からお話のありました伝統工芸というものが非常に色濃く影響しているものであります。また,私どもでは,東京の神楽坂で趣のある街角で楽しむ日本伝統芸能の世界というのをやりました。これは,三つの要素があって,まず一つは場所で,神楽坂にある昔ながらの町並みを歩く,それから,二つ目に伝統芸能をみんなで楽しむ。三つ目は地元の人たちが一緒になって作っていくという人のつながり。ですから,場所と文化資源と人のつながりというものが同時にそこで行われるというものです。
 これから文化プログラムを,東京については我々も一緒に考えますが,文化プログラムは東京だけではなくて日本全国ということになりますので,それぞれの地域ごとにあるいろいろな記憶の要素,場所,物,人,をつなげていく。先ほど国語分科会の方からもありましたし,会長もおっしゃっておりましたが,言葉を通じて年齢,地域を越えてコミュニケーションができるとい,そういう国語の特徴というのもあります。様々な記憶というものを是非生かしていって,その記憶を呼び起こすような,文化プログラムを作っていく必要があるのではないか。単にイベントをたくさんやればいいということではないわけでして,こういう審議会の場,あるいは文化庁,国を中心として是非まとめていっていただいて,日本の総合力を文化プログラムで示していく,そういう段取りを是非取っていただきたいというのが希望であります。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 さて,ほかに。片山先生,どうぞ。

【片山委員】  はい。文化政策部会の静岡文化芸術大学の片山でございます。資料3のところで,これはあくまでもイメージだということで御説明を頂いたのですが,イメージであればなおさら留意していただきたいなと思うことがございます。この図を見ていただくと,一番右側のゴールが2020年夏となっているのですが,この文化プログラムを実施する場合は,この2020年の夏をゴールとして,そこで燃え尽きて終わってしまうということがないように是非展開していただきたいと思います。
 ここに向けていろいろなことをやって,その結果,燃え尽きて終わるのではなくて,そのプロセスで形成される人的資本とか,社会関係資本とか,そういう資本ストックが基盤となって,その後全国の各地域で継続的にいろいろな文化的な活動を続けられるような,そういう形,要するにそこで燃え尽きて終わりではなくて,これに向けて蓄積していったものがその後も継続して全国のいろいろな文化の活動につながるようなことが必要だろうと思います。
 放っておくと,ゴールに向けて全力で全てを投入して燃え尽きてしまうというのが,日本人にありがちだと思います。ですので,恐らく,全国に対してこの事業に関する補助金などを,公募するようなこともあると思うのですが,その際には,例えば2020年以降5年間のプランなどもきちんと立てたものでないと採択しないとか,そういうような形で,必ず長期的な展望を持って実施されるような進め方が重要です。こうしたやり方をしていけばオリンピックの後も全国にいろいろな活動が続くようになるのではないかと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございます。2020以降もつながっていくということでございますね。大変いいお話だと思います。
 ほかにどうぞ。林先生,どうぞ。

【林委員】  ありがとうございます。横浜市の経験で加藤先生にお話を伺いたいのですが,実は先ほど文化芸術は経済成長のフックだというふうに語られることが多いというのですが,全くそのとおりで,私が横浜市で文化芸術アクション事業を起こすときにも大変理解をされませんでして,税金の無駄遣いではないかというような感じ。そうすると,これが経済成長,人を引きつけることになるとか,経済効果が出るということを言わないと理解されないという側面がありました。でも,私の本音はそうではなくて,懐の深い都市になるという意味でも子供の教育には絶対必要。ただ,日本はその文化がまだ根付いていないと思うんですね。それで,今,メセナで大体800億ぐらいですか,もっと集まるかもしれない。国の文化予算が1,000億強でございますよね。
 それで,私はまだ,当然,国がお金を出すだけではなくて,もちろん民間が経済利益を上げたときに貢献していくのは大事だけれども,今,日本は本当に文化芸術が大事なのだということを示すためには,文化庁さんの予算が余り年々変わらない。そしてオリンピックに向けて強く踏み出そうとしているのに余り変わっていないという,このことは本当にいろいろな場面で我々は団結して申し上げて,私は文化庁,必要だと思いますけれども,先ほどお話があったけれども,難しいのであれば,予算をとにかく付けてくださいということですね。ここのみんなで要請するとかやりたいと思います。
 ただし,私自身がこの横浜市で文化観光局を作るときも大変難しくて,文化と付けるだけでそこに抵抗がある。しかし,実際にやってみたら,それが大変いろいろな意味の効果が出ると,実際すると理解していくという,それで,すみません,もう少しお願いします。文化庁さんが今回,東アジア文化都市というのを文科省と一緒にやられた。この象徴的な事業が大変後押しになりました。ですから,是非これから文化庁さんが力強くリーダーシップをとっていただいて,大変必要なことなのだと。決して基礎自治体の税金の無駄遣いではない。基本的に大事なのだということを強烈に主張していただいて,そして何らかの形で象徴的な何かをおやりになる。
 それから,こういった会のことももっとアピールして宣言を出していくみたいな,そうすると私たちがやりやすいんですよ。そうでないと,極めて首長は孤独でございまして,なかなか支援してもらえない。今回,東アジア文化都市に選定されましたということが,文化事業,いろいろ反対を受けながら,2年にわたってやってきた。そのことの成果で今回もお選びいただいたのではないかと勝手に,お話をすると皆さんすごく理解するんです。だから,文化庁さんのお役目ってすごく強くて,お願いします。
 あともう一つです。これでおしまいにしますけれども,文化財の修理のお話がございました。そして,各基礎自治体で,いろいろ地域で持っているすばらしい文化財の発見,大変いいのですけれども,私は最近,その点で地方に出張して興味深く見ています。この1点,2点を見るとすばらしいんですよね。ただ,それが全然つながらなくて,それをどのように生かしていくかというのはなかなか難しいんです。横浜市もそうです。ですから,要するに修理,修復,それから,選定することとセットで人材育成をして,これをどのように生かすのかとか,また市民の方に広く周知するとか,海外の方をお招きする,セットでそういうノウハウをお伝えできるような仕組みがちゃんとあれば,もっと私は生きてくるかなと。一つ一つはすばらしいんですけれども,やっぱりなかなか行きにくいというか,それだけでは人も来ない。でも,やっぱり見てもらわないと意味がないと思うんですね。こういう国宝級のものとかですね。
 以上です。ありがとうございました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 長官,もっと頑張れというエールでございますので,よろしくお願いいたします。

【青柳長官】  どうもありがとうございます。

【宮田会長】  その一言がやはり多くの人たちの勇気につながるのかなということでございます。林先生,ありがとうございました。
 では,先生,どうぞ。

【平田委員】  沖縄から来ました平田です。二つお話ししたいと思います。資料3の2020年に向けた文化環境の取組の中で,非常に大事なポイントだなと思っていますが,この文化芸術立国中期プランの策定の中の「人をつくる」というところです。これまでずっと話をさせてもらいましたが,どういう人をつくるのかというのは非常に重要だなと思っています。そのヒントになるのが目指す2020年の姿の中に世界に尊敬され,愛される文化大国になっているというようなことであるのですが,そういう姿になるためには世界を尊敬し,愛することができる,いわゆる人づくりというのは大事なのではないか。愛されたい,尊敬されたいという国ではなくて,いろいろな国々を尊敬し,愛することができるような人づくりをするということが結果的には愛され,尊敬される国になるのではないかと思いますので,この点,是非「人をつくる」という点の中で大事なポイントにしていただけたらいいのではないかというのが一つです。
 二つ目は,この最近の主なトピックスにもありますけれども,劇場法,文化芸術振興基本法が制定されておりますけれども,果たしてこれが各県,それから,市町村にどこまで浸透しているのか,普及しているのかということは大きな課題だと思います。実は平成25年,昨年の10月に沖縄県でもやっと文化芸術振興条例ができました。県でやっと条例ができまして,これからうちの財団が先頭に立って,この条例を各市町村に普及するための運動をやっていこうと思っています。それはなぜかというと,大事なポイントでありますけれども,アーツマネジメントの人材を幾ら育成しようと,育成してもやはり財政課から言われるのは,育成した人材は一体どういうふうな使い道があるんですかというときに,それは劇場を抱えている市町村がそれぞれの劇場でプログラムディレクターになり,芸術監督を一人雇うということをやっていくということも連動しながら重要だと思うんですね。
 そのためにはこの劇場法というのが非常に重要な上位計画になってまいりますので,そういった面では,この劇場法の普及というのを是非国と一緒になって県もやっていかないといけないな。市町村は毛細血管だと思いますので,毛細血管が生き生きしている体というのは元気ですから,市町村にどうやったらこの大きな国の柱,ビジョンというのをつなげていくのかというような意味で言うならば,我々の役割というのは大きいなということで,改めてこの辺の連携が取れていけたらいいなと思っております。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございます。いわゆる発信基地が必要ですね。

【平田委員】  はい。

【宮田会長】  本当にそんな感じがいたします。それから,先ほどの林先生の話ですが,文化財1個とっても点,線,面とつながっていくことによって大きな動きができるんじゃないでしょうかね。3点が必要ではないかと思います。
 さて,ほかにございますでしょうか。今,湯浅先生がちょっと早かったので。その次,都倉先生,お願いいたします。

【湯浅委員】  ブリティッシュ・カウンシルの湯浅と申します。既に御案内もさせていただいたかと思うのですが,2月の中旬にロンドンの2010のオリンピックの関係者3名を招へいいたしまして,アーツカウンシル東京さんと御一緒にフォーラムをさせていただくと同時に,文化庁さん,観光庁さんともフォーラムをさせていただいて,たくさんの方々と意見交換をさせていただきました。そこで,ロンドンの方々はこの7年前の今の東京,日本に来てとても活発な議論がされているということで,ここから7年,7年前からこれだけの議論があるのであれば,ロンドンを超えるすばらしいオリンピックになると思いますとおっしゃっていたので,こちらでお伝えしたいと思いまして,特にここ1年,2年というのは非常に大事なプランのときになるのだと思います。
 先ほど課長の方から来年度の文化政策の方でもそのビジョンを話していくということだと思いますが,その3日間,いろいろな方々との議論がされた中でキーワードをロンドンの方から出てきたのはパートナーシップということとビジョンということがあったと思います。ほかにも幾つもありまして,特にパートナーシップの中では,先ほど加藤さんの方から国の予算だけではない,企業の文化に対する予算の大きさというものも,報告もありましたけれども,そのほか特に大きな世界に日本が提示するオリンピックという舞台になりますと,観光関係者とのパートナーシップですとか,あとはそのほか全国の自治体,東京だけではなく全国の自治体,そして文化といっても幅広いデザインですとか,プレビュー産業全体的ないろいろなセクター,そしてオリンピックの企業スポンサーというのも非常に大きくあると思いますが,そういった大きなところ,メディアとのパートナーシップを作っていく中で特に文化プログラムを進めていく中での文化のここの人たちの,私たちのリーダーシップというものが非常に重要になってくるのだと思います。
 そういった中で多様な人たち,せっかくのパートナーシップを組んでいく中で,昨年もほかの省庁との意見交換会もありましたけれども,ここ1年,2年の中で特にそういったクールジャパン戦略の中でいろいろな発信事業が行われておりますので,このいろいろな部会だけではなく,省庁間の方との意見交換もあるといいのではと思ったことと,特にそのビジョンの中で,先ほど片山さんからもお話のあった2020年,先に何を残すのかということが一番大事で,それに向けて7年後,この場にいる方々というのは,今まだ現場で頑張っている人たちだと思いますので,そういった人たちをどういうふうに育成していくのかというところでビジョンと重ねて人材育成をここから数年間やってリーダーシップをつけていくといいのではと思いました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,都倉先生,お願いいたします。

【都倉委員】  都倉と申します。さっき林市長からの御指摘がありましたけれども,文化庁予算は1,000億ちょっとという,これは前々から,前,この審議員のメンバーだった中森洋子さんなんかと度々このお話でイギリスの3分の1,ドイツの4分の1というのは,いかにも心もとないという話をいたしました。JASRACの徴収料が1,100億を超えておりますので,それより文化庁さんは少ないということでは,何とも悲しいような感じがいたしますけれども,これは実は文化芸術というものに対する日本の,これはさっきのメセナの話もありますし,国もそうだと思うんですけれども,やはりお金が芸術文化にあげる。いわゆるちょっと上から目線で言いますと,くれてやるみたいな発想がどこかにあるのではないかと私は思うんですね。
 日本は,今,エンターテインメント,音楽業界が世界で今2番目のマーケットなわけです。これは自然発生的に日本が経済大国になったと同時に人の生活が豊かになって,音楽を愛する日本の国民が音楽文化を享受できるような環境があって初めて,こういう大きなマーケットになったことは事実で,それはやっぱり1964年の東京オリンピックから始まった。これもまた歴史的にははっきりしていると思うんですね。しかし,ちょっと頭を切り替えていただいて,1,000億という金額を4,000億にする。じゃあ,理由は何を理由付けするか。これはやはりそこから国がお金を戻してもらえる。つまり,文化芸術産業を育成するという意味では,4,000億や5,000億なんかわずかなお金ではないかという感じになるのではないかと思いますね。
 実際に,例えばお隣の韓国は先端医療とスポーツとエンターテインメント文化を輸出産業にしようということで,この四,五年,着実に世界中でお金を稼いでいるんですね。今やKポップの世界のシェアというのが非常に増えているということは,これはもうデータを見ればはっきりしているわけでございますけれども,ですから,私が先ほど申し上げた,昭和39年のオリンピックで日本が経済成長にスタートしたきっかけになったと同時に,今度の2020年のオリンピックに関するありとあらゆる官民一緒になって,高付加価値な日本の商品を作ると,これは芸術文化しかないわけですから,これが究極的な付加価値商品,製品になるとしたら,先ほどもございましたように継続的にこれからの考え方,2020年以降も日本の文化芸術育成とするという,そのレールに乗せる。そのきっかけになるのが2020年だとしたら僕はすばらしいことだと思うし,これからの日本の将来のある意味では青写真を描けるのではないかというような気がいたします。是非,そこら辺の視点を変えていただければ,1,000億がすぐ4,000億になるのではないか。そういう気もいたします。ありがとうございました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 国家予算の公共料金の公共事業の1%は必ず文化芸術産業に投入することフランスでは確実に法制化されています。隣の韓国でもそうされています。ですから,必ず1個何かの物ができたときには,そこには美しい何かが必ずそこに存在するということですね。ですから,どこかから予算を確保するのではなくて,1%は確実にその場所に付随している,付録のようにくっついている。しかしながら,それは附属ではなくて非常にそこに付加価値があるというふうな提案を新聞記事にさせてもらいました。1%フォー・アートということです。そうすると,都倉先生が今,4,000万なんて言っていましたけれども,小さい,小さい。もっともっと大きなお金が十分に出てくると思いますので,でも,精神的な部分においては全く同じでございます。ありがとうございました。
 さて,ほかに。どうぞ。よろしいですか。

【太下委員】  文化政策部会の太下です。オリンピックの文化プログラムについて2点御意見を申し上げたいと思います。1点目は,先ほど片山委員,又は都倉先生等からも御意見がありましたとおり,2020年がゴールではないということです。むしろ,それから続いていくものが大事だということで,これはIOCも非常に重視している点だと思います。皆さん御案内のとおりレガシーというキーワードでこれを語っているわけです。
 いろいろなレガシーを追求すべきですけれども,過去のオリンピックで非常に分かりやすいレガシーの事例があります。2004年のアテネオリンピック,このときには文化プログラムを実施するために専門チームが立ち上がり,それがオリンピック後,アーツカウンシルという形で残ったわけです。そういった意味で言いますと,ちょうど先ほど御説明いただいた資料2の中に日本版アーツカウンシルの本格的導入への取組を推進するという文言が実はありましたが,多分,当初のスケジュールよりは前倒しでやっていただいた方がいいのではないかと思っています。
 これは,日本版アーツカウンシルについて,試みの導入,試行という段階にあると私は理解しておりますが,仮に試行ということであれば,それがいいということであれば本格的に当初の想定よりも前倒しでやるべきですし,もしこの日本版アーツカウンシルというものが日本の制度になじまないということであれば,これに代わる何かを文化庁として早急に立ち上げる必要があると考えています。先ほどブリティッシュ・カウンシルの湯浅さんからも御紹介があったルース・マッケンジーというロンドンオリンピックの責任者に来ていただき,いろいろとお話を伺いましたけれども,彼女の着任は,確かに遅かったのですが,遅い着任でも着実に文化プログラムができた背景は,イギリスにはアーツカウンシルがあったからですね。

【宮田会長】  そうですよね。

【太下委員】  日本には現状まだそれに対応する組織がありませんので,これはかなり喫緊の課題ではないかなと理解しています。これが1点目です。
 もう1点目が,先ほど横浜市の林市長からも御紹介がありました東アジア文化都市,私もオープニングに行ってまいりまして大変すばらしい幕開けだったと思いますけれども,これは御案内のとおり日中韓の3か国で持ち回りになります。そうしますと,次に日本に来るのが2017年,その次が2020年ということで,どちらもオリンピックの文化プログラム期間内に入ってまいります。恐らく特に2020年というタイミングにおきましては,各地方自治体も是非うちの都市でやりたいという,そういう声が上がってくるんじゃないかなと思っています。
 この2020年に関しては,私のアイディアですけれども,複数都市を,東アジア文化都市として認めてもいいのではないかと思っております。これはもちろん,日中韓3か国でやっている事業ですので,中韓両国の御了解を得る必要があるかと思いますけれども。この東アジア文化都市のモデルになった欧州文化首都という事業がありますが,これは2000年のミレニアムのタイミングではヨーロッパ中の9都市で同時に開催されました。そういった意味で言いますと,恐らくこの2020年のオリンピック,これだけのタイミングというのは,多分,21世紀中には,日本にはもうないと思いますので,このタイミングでやりたいという都市があれば,複数都市を,認めていくということも必要ではないかなと考えています。
 今,2点申し上げましたけれども,こういったことを戦略的に考えていく上でも,先ほど加藤委員がおっしゃった文化政策のための政策研究の機関といいますか,そういった部隊が是非文化庁にあるべきではないかなと,こういうふうに考えております。以上です。

【宮田会長】  非常に貴重な意見,ありがとうございました。
 ほかには。それでは,内田先生,お願いします。

【内田委員】  国語分科会から内田が発言させていただきます。現在,日本では学力低下問題,これが非常に大きな問題になっておりますが,うれしいことに2012年,PISA調査の結果は過去最高でございました。ただし,読解力,科学リテラシー,それぞれ4位。そして数学的リテラシーは7位とやはり振るわない状況でございます。実は2000年から導入されたPISA調査,2006年まで常に世界のトップはフィンランドでございましたが,2009年と2012年,上海が世界一に躍り出ました。いずれもそれらのところでやっているのは,理性と感性の共同の国家プロジェクトの推進です。教育改革に,やはり感性を育成する。そういう部分をすごく重視して教育改革を行ってきた,その結果であると分析されております。
 ところが,我が国文科省の教育改革は,それとは全く逆でございまして,主要教科を重視し,時間数を増やす。表現科目である図工や音楽,体育,あるいは物作り科目である技術・家庭科などを非常に細らせてしまっております。そのような状況の中でやはり特に想像力,イマジネーション,あるいは考える力,論理力,記述力などが非常に落ちているというふうなことも学力調査の結果,分かっております。そういうふうな状況にあって,先ほど来,林委員や都倉委員の御発言にありましたが,文化庁の予算についてやはり私ももっと拡大してほしいなと願っております。ただ,文化芸術による創造力,クリエーティビティー,それから,イマジネーションの想像力,こういった創造力・想像力豊かな子供の育成というものについては昨年より6億増えて63億円配分されている。これは大変うれしいことだと思いました。しかし,問題は中身でございます。この創造力・想像力豊かな子供を育成する事業の中身については,是非しっかりと精査,検討していただきたいと思います。
 それから,若手芸術家などの人材育成の面については,これは微減でありまして,これは残念なことでございます。それで,是非これにつきましても,来年度はやむを得ないとしても,更に拡大していってほしいと願っております。多くの委員の方が言われましたように,2020年の文化プログラムの策定に当たっては,中長期を見通した本当に中身のあるものを作り上げていっていただきたいと願っております。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 考える力,理性,感性,そうですね。本当にすばらしい御発言を頂戴いたしました。
 それでは,熊倉先生,お願いいたします。

【熊倉委員】  文化政策部会の東京藝術大学の熊倉です。アートマネジメントとアートプロジェクトについて一言申し上げたいと思います。今回のこの2ページ物のパワーポイント,下の段にたくさんプロジェクト,1か所空欄が出ているところもありますけれども,言葉が出てきて「おっ」と思いました。先ほどからレガシーということもありますけれども,プロジェクトというからには,これは単なる一過性のイベントではなくて,プロジェクトにおいて何が重要かというふうに考えたときに,私はこの2016年からの,この前段階の準備が非常に重要で,そんなの当たり前ではないかとお思いになるかと思いますが,そこへの関わり代をどう作っていくかということが特に地域社会の中では必要だと思っています。どこかからプログラムだけ降ってきて,広告代理店などのお祭りだけをやっても恐らくお金だけ使って何も残らないのではないかと思います。
 これが特に被災地支援と絡めて痛感したのですけれども,先ほどのその前の予算の段のところでも,来年度も存続が決定したのでしょうか。イニシアティブ事業の審査員を初年度から務めさせていただきまして,心の復興ということで被災地から上がってきた案件は優先的に全て支援を,予算を付けてまいりました。ここから浮かび上がってくるのは,残念ながら,例えば隣にいらっしゃる紺野委員がなさっているようなきめ細かで小さくて,でも,コーディネートに手間が掛かるような案件は残念ながら被災地の自治体からは一つも挙がってこなかった。全てホールの中で行われる単発の講演事業であったということです。
 もう3年たったので,もしかしたら慰問でおなか一杯という事態は過ぎているのかもしれないですけれども,恐らく被災地の行政担当者は現在どちらかというと土木の復興計画などの方で手一杯で,このイニシアティブに出してくれたことだけでもものすごく文化に関心があるのだとは思いますが,圧倒的な人材不足。そうした地域の中で文化を使って社会を作っていくということの面倒な社会関係資本形成を作れる専門的な人材が全くない。先ほど平田委員からアーツマネジメントに関しての強化も,御発言もあって全く同感でございますが,ただ,残念ながら文化庁のアートマネジメントの人材育成は文化施設の専門家だというふうにやや決め付けている感がございます。
 もちろん文化施設の中にも専門家がいないことには文化施設,文化施設と言えないのでそれは当然なのですが,もう一つの両輪として今申し上げたような,この2016年のリオの修了からこの2020年,もし1年間全国各地でアートプロジェクトが開催されて,それに多くの人たちが担い手となって参画できる。そして自分たちでオリンピックの文化プログラムをやったのだというふうに思えて,そしてそれをそのときのつながりを形成できた人材がその後の地域文化政策を考えて,実施して,国の予算をより地域で有効に使っていけるような,いわゆるアーツカウンシル,イギリスのアーツカウンシルというのは半分ぐらいはこういう仕事をしているのですけれども,そこの部分も是非このオリンピックのレガシーとして形成していっていただければと思います。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 では,赤坂先生。

【赤坂委員】  文化政策部の赤坂です。この頂いた資料3の3枚目のイメージ図をずっと見ていたのですけれども,もしこれがこのまま行われれば,きっと全国に小さな単発のプロジェクトに大きな予算を分散して配って消えていってしまうのだろうなと思いながら僕は眺めていました。何かが足りない。何か凝縮していくような深いものが欲しいなと思っていました。今,ちょっと唐突なのですけれども,思い出していたのは,『遠野物語』という小さな明治43年にできた物語があるのですけれども,その英訳版が公開されているんです。それをアラスカ大学の若い学生さんたちが読んで二つの感想を語るというふうに先生に聞きました。一つは不思議だ。「不思議だ」は分かるんですね。もう一つが懐かしいと言うんですね。アラスカ大学の学生さんたちが何で『遠野物語』の英訳版を読んで懐かしいと感じるのか。多分,それが我々が今も生きているこのグローバルの世界の中のローカルな本当に小さな文化の持っている価値とか輝きというのが,多分,伝わるんですね。それは僕らにとっては鍵だと思います。
 例えば僕は国交省のプログラムでモニターツアーということで山形に留学生たちを案内したことがありました。山形でどこを案内したかというと,修験道の聖地である出羽三山であったり,あるいは最上川も歩いて,草木供養塔という草や木を供養するという,そういう塔に連れていきました。分かるんですね。つまり,アジアのとりわけ留学生たちは,これって自分たちの文化と一緒です。つまり,深いところまで下りていくと必ずそれがつながっていくような,そこにもしかしたら懐かしさとかを感じたりする。多分,このおもてなしの中で,そういう日本文化の深いところに降り立ったときに懐かしいというふうに海の向こうから来てくれた旅人たちが感じてくれたら,僕は勝ったなと。そこまで行きたいなと思うと,僕は文化おもてなしロードではないなと思います。
 これは道なんですね。道という言葉を使ったときに,これは日本文化の深いところに下りていく回路がそこに浮かび上がってくる。道の向こうに巷(ちまた)があり,祭りがあり,広場があり,盆踊りがあり,いろいろなものが一斉に見えてくる。そういう文化と観光のつなぎ方というのが僕はここで試されているのではないか。それをきちんと演出することができれば,2020で終わらないし,もっと深いところに世界に尊敬され,愛される文化を持った日本というのが世界の人たちに伝わっていくのではないか。そういう意味で,このページ,みんなできちんと議論して,本当に深いところまで戦略的に理念とか,そういうものもきちんと作れたら,僕は結構面白いところに行けるのではないかなと思いました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 佐々木先生。

【佐々木委員】  余り時間もないようなので二つだけ手短にお話ししたいと思います。今,赤坂さんが言われたこととも関係があるのですけれども,世界から尊敬される文化政策というか,文化発信をするということについて,実は先週,ユネスコで行われた創造的デザインとサステーナブルディベロップメントという会議に出てきたのですけれども,今,ユネスコはアメリカが分担金を払わなくなってから財政危機になって,幾つかの重要なプログラムが動かなくなっているんですね。それに対して中国政府はきちんとお金を出して,今回も実はユネスコ主催だけれども,中国政府からお金が出ている会議なんですね。我が国政府も大したお金でなくても,そういう大事な会議とかシンポジウムを主催するという世界的な視野で予算を配分できるならば,今こそすべきだと思います。
 それからもう1点は全く別なんですけれども,2020で盛り上がっているのは,東京が盛り上がっているのはよく分かるんですけれども,私のように大阪に来ると,実は2050年問題というのがあるんですね。これは赤坂さんが言われた国交省との関係でいきますと,2050年に人口増加しているのは国土の1.9%です。つまり,東京と名古屋中心の都市圏しかないわけです。予測ですよ。東京オリンピックとリニア新幹線ができますと,関西はもう完全に衰退してしまうわけです。そういう予測があるわけです。では,その中で文化でどう東京圏以外のところも再生できるかという視点を持っていかないと,このロードというか,道,日本全体が元気にならないと思うんですね。その視点を入れていかなくてはいけないと思います。
 一つは例えばアーツカウンシルジャパンを作るだけではなくて,アーツカウンシルの地域版が要りますよね。これは広域で要ると思います。たまたま私,今回,関西分室と名前が変わって引き受けることになったんですけれども,関西全体でもアーツカウンシルが要るだろうし,それから,日本文化の精神性の奥深いところからの発信をするといった場合の関西地域,あるいはその他の地域が持っている役割みたいなことがあるんだろうと思いまして,そういう幾つかのレベル,層のレベルが必要で,そういったことがこの戦略の中に入ってくるといいなと思います。

【宮田会長】   ありがとうございました。
 時間が大分少なくなってまいりました。短くお話しできるようでしたら,あとお2人まで大丈夫ですけれども。

【宮田会長】  仲道先生,どうぞ。

【仲道委員】  今日,いろいろなお話を伺っていて,私の中で文化という言葉の意味が少し分からなくなってまいりました。文化芸術立国,文化芸術の日本を作っていくと言ったときに,「文化」というものがお祭りであったり,人とのつながりのにぎわいであったりという部分のみに焦点が当てられてしまって,では文化がなぜ必要なのか,芸術が文化にどのような役割を与えることができるのか,ということが希薄になりそうで少し不安を感じます。日本人はこういう民族であり,このように生きていくという根幹の部分をはっきりさせていくと,オリンピック2020年に何をするのか,その後に一体何を残したいのかということが見えてくるような気がいたします。
 文化を作っているのは,非常に思慮深い人間であり,人間のその思慮深さであったり,賢明さを育てていくための文化プロジェクトが行われていくといいなと思いました。そのときの楽しさであったり,にぎわいが人を作るのではなくて,文化芸術による人づくり,知性,感性を開化させていく結果,人々が楽しいと感じるような,そのような考え方のプロジェクトが進んでほしいと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。そうですね。文化そのものの価値観とか,モチベーションというのは,それぞれいろいろな色合いがございますので,そういう意味では,ただ単なるお祭り,にぎわいだけに終わらないようにしてもらいたいということだと思います。
 本当はもっと大勢の先生方からお話を頂戴したいのですが,もう1人,どなたか。森西先生,どうぞ。では,大変恐縮ですが,最後にさせていただきます。

【森西委員】  文化芸術立国の実現に向けて芸術家,文化人の人材育成,また,文化芸術による想像力豊かな子供育成が行われているわけですけれども,子供さん,小さいころは情操教育が必要だ,感性を磨くことが必要だということでお琴の体験教室,お茶の体験教室に行かれます。高校生になって,いよいよ将来を見据える段階になりましたら,そのまま芸術系の大学へ進みたいと本人が思っても,親御さん,また,冷静になった本人がどこへ行くかといいますと,いわゆる理高文低でございまして,今,理系の大学学部,学科へ進む若い人が増えております。文化芸術というのはもちろん一流の専門家というのが必要,また,アートマネジメントですとか,アーツカウンシルのような専門の橋渡しをする方たちも必要なのですけれども,地盤を支える鑑賞者,理解者,支援者というものがいなければ,文化,文化財というものの今後の保存,育成というのが危ぶまれるのではないかという気がいたしておりまして,人文科学系の教育,研究というものの充実も是非忘れてもらいたくないなと考えております。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 まさしく私の勘違いかもしれませんが,文化とは文明開化の略語であると私は思っているんです。つまり,それはどういうことかというと,文明とは非常にあらゆるものを網羅されております。それをいかに開化させるか,そしてそれをいかに人に伝えるか,伝達するかというところにあるのが文化,文明開化の略語ではないのかなという感じがいたしております。
 大変貴重な2時間でございましたが,お時間になってまいりました。お話ができかねた残念な先生方がいらっしゃると思いますが,すみません,申し訳ございませんが,この辺でお時間にさせていただきたいと思いますが,内田さん,事務局の方から何かございますでしょうか。

【内田調整官】  本日で文化審議会の総会と政策部会,今期は終了ということになります。事務局のいろいろな段取りで至らない点,多々あったかと思います。御容赦いただければと思います。
 今期限りの委員の皆様,本当にありがとうございました。今後ともいろいろな形で引き続き,御指導を賜れればと思います。また,来期引き続きお願いする委員の先生方もおられますけれども,また引き続きどうかよろしく御指導の方,お願いしたいと思います。また,次回以降の日程など,改めて御連絡申し上げたいと思います。ありがとうございます。

【宮田会長】  それでは,本日はこれにて解散させていただきたいと思います。先生方,どうもありがとうございました。

── 了 ──

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