第14期文化審議会第1回総会(第61回)議事録

平成26年3月28日

【内田調整官】  それでは,定刻でございますので,開会させていただきたいと思います。開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。まず,議事次第がございまして,資料1が文化審議会関係資料でございまして,資料2が第4次基本方針の策定に向けての諮問文,資料3が文化芸術立国中期プランとなっております。
 その次に,参考資料がございまして,文化審議会の関係法令をまとめた資料となっております。
 このほか,右側でございますけれども,机上資料といたしまして,第3次基本方針の冊子,平成26年度の予算,関連データ集を置かせていただいておりまして,このほか,一番下に青い冊子で,2月21日に国語分科会にお取りまとめいただきました異字同訓の漢字使い分け例の報告を置かせていただいております。もし過不足等がございましたら,事務局までお知らせいただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 そうしましたら,文化審議会の第61回を開会させていただきたいと思います。委員の皆様には,今期の文化審議会の委員をお引き受けいただきますとともに,年度末の御多忙なところお集まりいただきまして,まことにありがとうございます。本日は第14期文化審議会の第1回の総会でございますので,後ほど会長を選出いただく必要がございます。それまでの間,私の方で議事を進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。また,会長の選出は人事案件でございますので,一般傍聴者は,会長選出がなされるまで,この部屋の外で待機いただいている形になっております。
 まずは,委員の皆様の御紹介でございますけれども,お時間の都合上,今日お配りしております資料1の1ページ目に名簿を付けさせていただいておりますので,全体の御紹介はこちらの名簿をもって代えさせていただきたいと思っております。今期からは新たに薦田治子委員,迫田久美子委員,髙橋康夫委員,やすみりえ委員の合計4名が委員として新たに御就任いただくことになりました。新しい委員の皆様,そして今期も引き続き委員の就任に御快諾くださいました皆様,どうか今期,よろしくお願いいたします。なお,本日,薦田委員とやすみ委員は,所用のため御欠席となっております。
 なお,本日ですけれども,文部科学省の政務三役といたしまして,冒頭から西川副大臣,後半には下村文部科学大臣が,大臣は,大体,16時半前後だと思いますけれども,到着して出席させていただきますので,どうかよろしくお願いいたします。

(傍聴者退出)

※ 会長に宮田委員,会長代理に土肥委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

【宮田会長】  それでは,今期の文化審議会の開会に当たりまして,会長に御指名いただきまして,ありがとうございました。一言,御挨拶申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
 何しろ2020が決定し,しかも一つの大きな意味での文化立国日本ということの指針,柱をスタートさせたいと。いってみれば,今回,キックオフをしているというような感じが私はしております。そんな意味で,それぞれお集まりの各界の先生方には,忌たんのない御意見を頂戴いたしまして,それを構築していくことによって,すばらしい国,文化立国というものができるのかなという気がいたしております。折しも安倍内閣の下,日本の国も追い風を受けているような雰囲気がございますので,そういうときに,取り残されたりということがないように,むしろ前向きに進んでやっていきたいと,かように思っております。そして,第4次の基本方針がじきにできるわけでございますが,その辺のことも踏まえながら,先生方の御協力を頂戴したいと,かように思っております。
 簡単ではございますが,挨拶に代えさせてもらいます。よろしくどうぞお願い申し上げます。

( 拍手 )

【宮田会長】  それでは,本日の最初の審議でございます。今期最初の審議ですので,本審議会の概要と運営上の規則について確認しておきたいと思っております。また,あわせて,各分科会への委員の分属についても確認したいと思います。なお,本会議の委員は3月20日付けで発令されております。発令書を机の上に置いていただいておりますが,各分科会に属する方については,その発令書に分属を記しております。また,資料1にもその分属を記しておりますので,御確認を頂きたいと思います。いかがでしょうか。大丈夫でございますね。
 では,これについて,事務局より説明してください。

【内田調整官】  説明させていただきたいと思います。まず,資料1をごらんいただければと思います。2枚おめくりいただきまして2ページ目に文化審議会概要というページがございまして,1の設置の経緯といたしまして,平成13年1月の中央省庁再編に伴いまして,既存の複数の審議会を整理・統合して設置されている審議会でございます。
 2の主な所掌事務といたしまして,大臣や長官の諮問に応じまして,文化の振興,国際文化交流の振興に関する重要事項の調査審議,意見の陳述,国語の改善など,様々な法律の権限に属する事項,そういったことを所掌としております。
 委員の構成といたしましては,30人以内,任期1年となっておりまして,各分科会がこちらの記載のとおり,それぞれの所掌を担当しております。
 お手元のお配りしている資料の中の参考資料,横長,縦書きの資料でございますけれども,こちらを御覧いただきますと,関係法令が記載されております。簡単に確認させていただきますと,まず,文部科学省設置法がございまして,第30条にこの審議会の設置根拠がございます。また,同じページの左側,文化審議会令といたしまして,この審議会の組織,定員,各分科会の所掌などの規定がございます。
 ページをおめくりいただきまして,文化審議会の様々な細則を決定いたしました文化審議会運営規則というものが3ページ目にございまして,こちら,更に様々なそれぞれの分科会や部会の手続的なことなどを規定しているものでございまして,最後には,会議の公開などについて定めました文化審議会決定を添付してございます。この資料でございますけれども,会長の選任など,人事案件以外の会議につきましては公開としておりまして,会議資料や議事録も含めて公開すると定めております。
 次に,委員の分属の確認についてでございますけれども,先ほど宮田会長からも御説明がございましたとおり,本審議会の委員に関しましては3月20日付けで発令がなされておりまして,その発令書が机上に置いております。分科会に属する方々に関しましては,分科会の分属をその発令書に記しておりますので,御確認いただければと思います。各部会に属する方々に関しましては,部会の設置というのを,この審議会でこの後に決定いただいてからになりますので,後ほど議題とさせていただきたいと思います。
 説明は以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。ただいまの御説明の内容でございますが,何か御質問等,ございますでしょうか。よろしゅうございますね。ありがとうございました。
 それでは,次に進ませていただきたいと思います。各分科会のほか,今期も本審議会の下に3つの部会を設置することを予定しております。その内容について,皆様にお諮りをしたいと考えております。これも事務局からお話しください。

【内田調整官】  御説明いたします。文化審議会におきましては,各分科会のほか,今期はこの審議会の下に3つの部会を設置することを予定させていただいております。資料でいきますと,資料1の4ページ以降でございまして,3つのうちの1つ目でございますけれども,4ページ目に,文化政策部会の設置についてのページがございます。この部会は,文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項を調査審議する部会について設置しようとするものであります。5ページにはメンバーの案を記載させていただいております。
 6ページ目でございますけれども,美術品補償制度部会の設置についてでありまして,調査審議事項といたしまして,展覧会における美術品損害の補償に関する法律第12条2項の規定で,審議会の権限に属せられた事項といたしまして,政府が主催者と補償契約を結ぶ際の審議を行う,そういった部会でございます。同じように,7ページにはメンバーを記載させていただいております。
 続きまして,8ページでございますけれども,世界文化遺産・無形文化遺産部会の設置についてでございまして,調査審議事項といたしまして,世界遺産条約,無形文化遺産保護条約の実施に関しまして講ずべき施策,世界遺産暫定一覧表に記載すべき資産の候補の選定に関する事項,世界遺産一覧表に記載されることが適当と思われる資産の候補の選定に関する事項,無形文化遺産の目録の更新に関する事項,無形文化遺産の候補に関する事項などとなっております。同様に,メンバーにつきましては9ページに記載してございます。
 これらの部会の設置に関しまして,御審議を賜れればと思います。
 説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田会長】  御苦労様でした。ただいまの,本会議の下に3つの部会を設置しました,それについての御説明を頂戴いたしましたが,いかがでしょうか。皆様,御質問等,ございますでしょうか。
 後で,この部分はということなどもございましたら,追ってでも結構でございますので,次へ進ませていただいてもよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【宮田会長】  ありがとうございました。それでは,3つの部会の設置を決定したいと思います。文化政策部会,美術品補償制度部会,世界文化遺産・無形文化遺産部会ということでございます。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは,異議がないようですので,今の案を決定し,それぞれの部会について構成員を同じ資料1のとおり御指名をさせていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
 以上で,今期審議会の発足に当たっての手続は終了いたしました。ありがとうございました。
 それでは,冒頭より西川副大臣に,大変国会等でお忙しい中おいでいただいております。恐縮でございますが,一言,御挨拶を頂戴できればと思います。よろしくお願い申し上げます。

【西川副大臣】  皆様,こんにちは。今日は本当に,それぞれの分野のスペシャリスト,すばらしい方々でいらっしゃいます。お忙しい中足をお運びいただきましてありがとうございました。そして,また,宮田会長,そして土肥会長代理をスムーズに御選出いただきまして,本当にありがとうございます。本来でしたら,下村大臣に冒頭に来ていただいて,皆様に御挨拶を申し上げなければいけないところですが,ちょうどいろいろと公務が重なっておりまして,後ほどこちらの方に参りまして,皆様に御挨拶申し上げると思いますので,とりあえずというと大変失礼ですが,私の方から一言お礼を申し上げたいと思います。
 本当に,この文化審議会,皆様のこの御議論が,いわば文科省の文化政策の基本になるわけでございますので,本当にこれから,今回のこの文化芸術の振興に関する基本的な政策,指針,この策定に向けて,1年を掛けて,どうぞ皆様からのいろいろな御意見を出していただいて,その中でいわばエッセンスの塊のようなものをしっかりと受けとめさせていただいてまとめてまいりたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
 大臣が,文化芸術立国中期プランというのを,今朝発表させていただきました。後ほど長官の方から皆様に御説明があると思いますけれど,皆様,それも御参考にしていただきながら,皆様の本当に実り多い御意見を頂戴したいと思いますので,どうぞよろしくお願いしたいと思います。本当に,今後ともよろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。お忙しい中,おいでいただきました。優しく言っておられるけれど,しっかり頑張れと言っているように激励と受け止めます。

【西川副大臣】  恐れ入ります。

【宮田会長】  そのように受けとめることができました。ありがとうございました。
 さて,それでは,次に進ませていただきたいと思います。青柳長官においでいただいております。文化芸術の振興に関する基本方針第4次の方針でございますが,それの諮問と,文化芸術立国中期プランについて簡単に御説明を願いたいと思います。長官,よろしくお願い申し上げます。

【青柳長官】  ありがとうございます。今期,文化審議会委員をお引き受けいただきまして,心よりお礼申し上げます。私が申すまでもございませんが,日本の文化について考えますときに,この日本列島に繁栄した文化というものは,歴史時代に入ってからでも大変長い,連綿と受け継がれてきておる文化でございます。そして,地理的な特徴もございますが,その歴史時代,ずっと継続性を持っているということ。それから,大陸や半島から,あるいは沖縄を通じて南から,様々な文化がその時々に入ってきておりますが,それを柔軟に受けとめながら,自家薬籠中の物としていっているということ。そして,しかも非常にしなやかで,それから,いつの時代も自然との対話というものを大変に大切にする,今流に言えば,エコロジカルな文化というものがこの列島に継承されてきておりまして,そのすばらしさを私たち自身が実感し,私たち自身が自分の国を誇りに思い,世界にも発信していくことが今後とも大変重要なことではないかと考えております。
 これから,次期の「文化芸術の振興に関する基本的な方針の策定に関しての諮問文」と,下村大臣の下で検討を進めてきました「文化芸術立国中期プラン」の御説明をさせていただきたいと思います。本日の御議論,そして,今後,各分科会,部会における御議論を通じ,委員の皆様の御知見を賜りながら審議を深めていくことができればと考えております。
 最初に,お手元に資料2と右上に書いてある大臣の諮問文がございますけれども,これは,本日は後ほど,予定では16時半頃に大臣が到着いたします。大臣が到着した後,改めて大臣の方から宮田会長に対して,次期基本方針の策定についての諮問文を手交させていただき,大臣からも文化政策に対する考えを表明していただきます。その前に,簡単ではございますけれども,この資料2をごらんいただきながら,私の方から簡単に御説明させていただきたいと思います。
 ページをめくっていただきますと,理由というところがございます。まず,今回の諮問に至る背景でございますけれども,文化芸術は我が国全ての営みの基盤になるものとして,極めて重要であるという基本的な考えがございます。そして,昨今,国内外の諸情勢は急速な変化を続け,文化芸術を取り巻く状況にも大きな影響を与えております。過疎化あるいは少子化といった課題,グローバル化の進展,情報通信技術の急速な発展と普及などがこうした諸課題等に向き合うときの文化芸術の果たす役割について,考えていく必要があるかと思います。
 また,現行の第3次の基本方針,これは皆様の手元にございます,そして,宮田会長が「成」という字で揮毫(きごう)をしてくださっている冊子でございますが,この現行の第3次の基本方針が閣議決定された日は平成23年2月でございますが,その翌月に3・11が,東日本大震災が発生いたしました。この大震災は,文化と人間,あるいは社会と文化との関わりについて,根底から考え直す契機になったのではないかと思います。
 そして,我が国の世界に誇るべき有形・無形の文化財や,ポップカルチャー等の現代文化など,日本の文化力は世界に誇る我が国の最大の資産とも言えるかと思います。この資産を維持,継承,発展させていくことはもとより,日本人自身がその価値を十分に認識した上で,国内外への発信を更に強化していく必要があります。
 また,昨年9月には,2020年に開催するオリンピック・パラリンピック競技大会の東京開催が決定されました。この2020年には,日本が世界の文化交流のハブになることを目標に置いております。
 ページをめくっていただきたいと思いますが,まず,そういう中で,2020年を見据えた文化振興方策の基本的な視点でございますけれども,第一に,2020年を見据えた文化振興方策の基本視点について,我が国古来の伝統文化,衣食住に関わる基層の文化,メディア芸術,現代アートあるいはポップアート等のこれまでの着想や手法を超えた,国家戦略としての文化振興方策の基本的視点が今後のテーマになるかと思います。
 そして,想像力の豊かな子供や若者,文化芸術を創造し支える人材の育成については,第2のところに書いてございますけれども,「人をつくる」ための施策についてで,学校等での文化芸術体験の推進等,人や鑑賞する人の育成に関する施策全般について,その振興策が大きなテーマになるかと思います。
 そして,第3に,地域を元気にするための施策として,日本各地の文化力による地域振興のための施策全般について,その振興策が大きなテーマになるかと思います。
 4番目に,文化発信と国際交流の推進のための施策として,メディア芸術,現代アート,ポップアート等の発信強化のための方策,日本の有形・無形の文化財や文化財保存技術,それから,衣食住にわたる生活文化や日本語の海外発信の強化のための施策等について,その振興策が大きなやはりテーマになるかと思います。
 そして最後に,文化振興のための体制の整備についてでございますけれども,具体的には,国立文化施設の機能強化,日本の強みを生かす拠点づくりの推進,そして,調査研究機能の強化など,今,上に挙げた1から4のことに掲げている各施策を着実に推し進めるための施設・組織,制度などの体制の整備の在り方が大きなテーマになるかと思います。
 そして,さらに,最近の文化芸術を取り巻く新たな課題として特に関心が高まっている諸分野,例えば,文化関係資料のアーカイブの構築,劇場,音楽堂等の文化芸術拠点の強化,充実,それから,生活文化の振興,文化芸術創造都市への支援なども大きなテーマになるかと思います。
 この諮問文は,また後ほど大臣の方からお話があるかと思います。
 そして,次に,お手元の資料3をごらんいただきたいと思います。1ページ目にカラーでの概要が示されており,その後に,文化芸術立国中期プランとしての冊子がございます。お手元に,これまでの下村大臣の指示の下に検討を進めてきました文化芸術立国中期プランがございますが,まず初めに,カラーの1枚目をごらんいただければと思います。このプランは,東京五輪の開催される2020年までの間を文化政策の振興のための計画的強化期間と位置付け,国の文化芸術振興施策を飛躍的に充実させるための方策を大臣の下で検討してきたものであります。本プランは,緑色の線で囲まれている「人をつくる」,それから次が「地域を元気にする」,そして「世界の文化交流のハブになる」という,矢印の中にありますが,を3本の柱として掲げております。
 本文をお開きいただいて,3ページをごらんいただきたいと思いますが,まず,2020年をスポーツの祭典としての五輪開催の年という位置付けだけではなく,これを契機として,新しい日本を創造するための年にするといった理念や,地域に根付いたお祭りや踊りに参加する伝統があり,日常においてもお稽古事や趣味などを通して様々な文化芸術体験をする機会が多いといった我が国の特色,そして,3番目としまして,我が国の強みである世界に誇る日本各地の文化力について記載しております。2020年には,世界中の人々が日本を訪れ,日本が世界の文化交流のハブとなり,その交流を通して日本から新しい価値が創造されている状態を目指していきたいと考えております。これらが実現した結果が,地球儀で示した右下のところにございますイメージ図の状態であります。それは,日本津々浦々で,文化芸術を媒介とした人の往来がなされる状態ということになろうかと思います。2020年には,日本が世界に愛される文化の国を目指し,また,平和や環境をテーマとして人々が交流する姿を描いております。
 続いて4ページ目でございますけれども,2020年末段階での成果についての記載であります。文化芸術に支えられた成熟社会の新モデルを世界へ提示することで,日本国内で実現する内容の例を数値目標で示しております。
 5ページ目以降は,2020年に日本が世界の文化芸術のハブとなるために必要な基盤整備についての記載でございます。以降のページは,「人をつくる」,「地域を元気にする」,「世界の文化交流のハブになる」といった各視点で各論的な施策を述べておりますので,是非ごらんいただきたいと思います。
 以上,簡単ではございますが,文化芸術立国中期プランの概要を説明させていただきました。現在,第3次文化芸術の振興に関する基本的な方針にのっとり,様々な文化を振興しておりますけれども,今後1年,特に文化政策部会の委員の先生方には,次期基本方針策定に向けた御審議を頂ければと考えております。
 私からの説明は以上でございます。是非,幅広い御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  大変力強いお話を頂戴いたしました。経済や国際協力をはじめ,我が国の全ての営みの基盤となると。極めて重要であるということでございます。そして,「人をつくる」,「地域を元気にする」,「世界の文化交流のハブになる」ということ等を御説明いただきました。長官,ありがとうございました。
 ここで,少し時間を頂戴いたしまして,御説明いただきました長官からのお話,文化芸術立国中期プラン等について,御意見を皆様から頂戴いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 何はともあれ,文化を作るのは人でございますので,まず「人をつくる」というときに,いろいろな作り手,いろいろな芸術に対する,文化に対する考え方等を皆さんもお持ちかと思います。「地域を元気にする」などは,祭りのこととか,いろいろなものがございますが,いかがでしょうか。
 西村先生,どうぞ。

【西村委員】  1つ質問をさせてください。今の,その文化芸術立国中期プランの中にも3本柱があって,3本柱の施策がそれなりに書かれていると思うんですけれども,先ほどの諮問文の理由書の中にも,その3つの柱というのは出てくるわけですよね。ということは,今度やろうとしている第4次の基本方針と,今示された中期プランとの関係というのはどういうふうになっているのか,それがちょっとよく分かりにくいので,その辺を御説明いただきたいと思いますけれども。

【宮田会長】  お願いいたします。

【河村次長】  先ほど長官から御説明をいたしました文化芸術立国中期プランは,別名下村大臣プランとも呼んでいるわけですけれども,文部科学省の中でというか,文部科学省独自でと申しますか,作ったプランでございます。今回は大臣からの諮問でございますので,その内容も踏まえながらの諮問となっておりますけれども,今後,御審議を頂きます基本方針は,文化芸術振興基本法に基づくものでございまして,最終的には政府全体閣議で決定する方針となるというものでございます。ですので,中期プランの内容は諮問文の中にも生かされておりますし,審議の材料としてお使いいただくという性格のものであり,それを更に発展させ,また,委員の皆様方からの御意見でより進展させたものとして方針の案を審議会としてお作りいただき,それを閣議決定に持っていきたいということでございます。

【西村委員】  分かりました。

【宮田会長】  先生,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

【西村委員】  結構です。

【宮田会長】  ほかにどなたか,いかがでしょうか。しばらく時間を頂戴して議論を頂きたいと思います。はい。

【石上委員】  石上でございます。諮問の5ページの,「以上の5点のほか」というところについてです。私は,文献史学,歴史学の者でございますので特にこの1行に関心を持ちましたが,最後の段落の3行目に,文化関係資料のアーカイブの構築というのがございます。これは,中期プランの方を熟読はしておりませんが,このタームは入ってこないようなんですが,これはどういう内容であるのかを……諮問の結果としては出てくると思いますので,今お答えいただくというよりは,是非政策部会の方でこれについて建設的な御意見を頂ければと思っております。これは,文化関係資料のアーカイブといったときには,文化行政のアーカイブだけではなくて,歴史文化遺産としての歴史的な資料も含まれてくると思いますけれども,そういう広い視野でこれを是非御検討いただければと思います。
 以上です。

【宮田会長】  大変貴重な御意見を頂戴いたしました。特に,進めば進むほどアーカイブの重要性というものが問われると思います。政策部会の方でしっかりと御議論させていただくということを,御提案を頂戴いたしました。ありがとうございました。内田さん,この辺のところもよくメモをしておいていただいて,今後の審議において,調整いただくようにお願いを申し上げたいと思います。特に,アーカイブは大変重要な位置を占めていると思います。
 いかがでしょうか。こっちから指名してもよろしいですか。神崎先生,どうぞ。

【神崎委員】  それでは,ちょっとお尋ねしたいんですが,これまで国は国民文化祭を続けてきておりまして,これが県別,地域というのを県というような単位で捉えますと,人材育成とそれから地域の活性化というのは,目的はこれと重なると思うんですけれども,国民文化祭のこれからの,この整合性とは言いませんけれども,関係はどうなるのでしょうか。

【宮田会長】  ありがとうございます。どなたか。

【川端部長】  文化部長でございます。国民文化祭,毎年繰り返されていて,一定の成果を上げてきておりまして,そろそろ今のやり方が本当に効果的に成果を上げられるのかどうかということも一旦立ち止まって検討する必要があるのではないかと考えております。今ここで国民文化祭をどうこうするということは申し上げられませんけれども,そういったものの本来の意義に立ち返って将来どうするかということをこの場でも考えていただきたいと思いますし,文化庁の中でも考えていきたいと,今はまさに一つの検討課題になっていると理解しています。

【神崎委員】  はい。分かりました。

【宮田会長】  ありがとうございます。目標としましては,4時半に大臣が御到着ということでございますので,それまでの時間は先生方の御質問や御意見等に充てたいと,かように思っておりますが,いかがでしょうか。どなたか,いらっしゃいますでしょうか。何かございませんでしょうか。岩澤先生,いかがですか。

【岩澤委員】  前年度の最後の文化審議会の議論が大変参考になりまして,2020年の東京オリンピックに向けてという表現が非常にあちこちに見られるわけですけれども,前後例えば5年ずつ,そうすると10年ですよね。今後10年の文化振興施策を例えば考えていくというような発想がやはり必要じゃないかなと,この前の議論を聞いていて,大変そういう印象を持ちました。ただ,これまでの基本方針を見ますと,5年単位に大体はなっているわけで,そのあたりの扱いをどうするのかということがあると思いますが,仮に2020年を踏まえということでも,それから先の日本の文化振興の姿というものもかなり議論していただいて,その部分を方針の中にやっぱり盛り込んでいただきたいなというのが意見でございます。

【宮田会長】  ありがとうございます。是非,その辺を取り入れたいと思いますが。
 ほかにはございませんでしょうか,どなたか。都倉先生なんか,どうですか。

【都倉委員】  必ず一言言わなきゃいけないんだったら,本当に最初の方が有利だと思います。この大変すばらしい中期プラン,今,長官から御説明いただきましたけれども,あえてちょっと水を差すようなことを言って申し訳ないんですけれども,大衆文化というか大衆芸術というのは,やはりグラスルーツみたいなところが基本中の基本でして,せん越ながら,例えばお国が何かを考えてこれをトップダウンしても,それが大衆に本当の,いわゆる知識としてじゃなく,エンターテインメントとしての文化として受け入れられるということはあり得ないと僕は思っています。ですから,2020年に向かって,例えば6年間で日本で何か新しいポップカルチャーを起こす,こんなことは不可能なんですね。このポップカルチャー自身は,もう巷に存在しているわけです。それで,その業種によっては,例えば韓国とあるいは東南アジアと交流しているミュージシャンもいれば役者も,小さな映画を作っている若い監督たちもいるわけです。こういう連中の能力を査定するのは,やっぱり大衆なんですね。
 僕がお願いしたいのは,やっぱりそういうものを査定する場所を提供してあげて,そして,それがいかに効率よくそういうふうに広がっていくか。情報だけでもいいですね。これは,例えば今の音楽のヒットチャートなんかを見ておりますと,絶対的に地上波ではものは説得できない時代になっています。これは,最終的な事実としての,エスタブリッシュメントしたという証明にしかなっていないですね。昔みたいに,例えば新人がドラマに出て主題歌を歌ったからそれが大ヒットするとか,あるいは,歌番組に出たからその子はスターになるとかって,こういう一つの情報の伝達の仕方はもうしていないんですね。何といったって,やっぱりネットで,本当に直接的に1対1の情報を彼らが消化して,それを再確認するという意味で大衆メディアで確認すると。この方式は,僕は,これからますます顕著になっていくだろうと思います。
 ですから,そういう意味では,ボーダレスになるということもあり得るわけですから,やっぱり日本のそういう大衆文化が世界中に波及するという方法は今,20年前とは比べ物にならないぐらい情報の伝達力,量,質,それから速度,共に速くなっていると僕は思っているので,そういう意味での,さっき申し上げたグラスルーツの接触ですね,国が。どういうリサーチをして,どういう連中が何をやっているかということを,本当に情報を収集していただいて,そういう情報を我々も提供できると思うので,そういうものをやはり効率よくやっていただければ,6年という時間はあっという間ですけれども,僕は間に合うんじゃないかという気がいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。そうですね。本当に,ネットの膨大な量というのはすごい伝達力でございますね。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。熊倉先生,いかがですか。

【熊倉委員】  すみません,この中期プランに関しましては,先ほどもありましたし,前回の審議会のお話でも幾つかの意見が出たように,この先,2020年の次のレガシーをどういうふうにイメージをしていくのかということが実は最も肝要で,この五輪開催を社会変革の大きな契機とするという点に関しては,大変心強いと思いました。
 すみません,1点,全然専門外のことで,もしかしてここで扱う問題ではないのかもしれないんですけれども,著作権問題とTPPについて,国の方針など,もし御存じであられましたら,お教えいただければと思っております。非常にもめている分野で,特にサブカルチャーの分野で大丈夫なんだろうかと。日本固有のサブカルチャーの比較的著作権に甘いコミックマーケットですとか,ボーカロイドですとか,pixivなどのネット文化にも代表される,そうした風潮に大きな支障が出るのではないかと懸念をしている声を聞きましたもので。

【宮田会長】  ありがとうございました。それでは,事務局から回答をお願いいたします。

【作花審議官】  失礼いたします,文化庁審議官の作花でございます。TPP交渉につきましては,よく新聞でも批判的に論じられていますが,この交渉の内容はクローズドになっています。これは,TPP交渉加盟国の約束として,そういうルールで今交渉していますので,具体的な状況等はそういうことでお答えはできません。ただ,今,先生が御指摘のようなことも報道されているということは承知しています。サブカルチャー,コミックマーケット等の方々が,規制が強化されるのではないかという御懸念を表明されているということも承知しています。それに関わる制度について交渉事項になっているかどうかということも,私の立場ではお答えできませんが,いずれにしても,交渉加盟国12か国の合意の下に成立をさせなければいけませんので,我が国は我が国の固有の問題もあるということは十分認識しながら,一生懸命交渉しているという,その限りでございます。

【宮田会長】  よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 いかがでしょうか。伊東先生,どうぞ。

【伊東委員】  伊東でございます。私は日本語教育を専門としておりますけれども,さきの文化審議会の日本語教育分科会でも,地域に在住する外国人の数が増えてきているということを考えますと,今回の文化芸術立国中期プランの「人をつくる」,「地域を元気にする」というのは,まさに日本語教育の最前線で交流活動をしているボランティアの人や地域の人たちが,そこの中から日本の文化を発信し,何も海外に向けてではなく,日本にいる外国人に向けての文化発信が必要ではないかと思います。それと同時に,人をつくるというものも,内向き志向で日本人学生が海外に行かなくなったってよく聞きますけれども,地域の中で外国人と交流することによって,自分を見つめ,そして,その中から国際性の養成ということを考えれば,地域であっても人をつくることもできますし,そして,外国人に,日本の和食を含めた文化を発信することによって,地域の活性化にもつながりますので,このプランを地域から是非実現していただけたらいいかなと。そして,また,文化や日本語教育という部分からの視点も是非入れていただけたらいいかなと思いました。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。そうですね。英語を一生懸命といっても,日本語をしっかりしていないと,伝わらないですものね。ありがとうございました。
 湯浅先生,どうぞ。

【湯浅委員】  湯浅です。今お話を伺って,2020年というキーワードが前回も出てまいりましたけれども,2020年に向けての文化力の強化期間というふうにこれから2020年までを位置付けて,その中で,特に「人をつくる」というところに重点を置くというような組立てというのは,とてもすばらしいフレームワークではないかと思います。
 そこの中で,今年の部会でも議論をしていくところだと思うんですが,今,この資料を拝見いたしますと,特に,つくっていく,育てていく人材として,ファシリテーター,アートマネージメント人材と限定的に書いてありますが,特にこれは中期プランということですので,これからのいろいろな政策ですとか,アクションの基になるものだと思いますので,新しいビジョンをやっぱり提示していけるような中期プランになるといいんだと思います。そこの中で,果たしてこのファシリテーターとか,アートマネージメントという言葉を,今後の中期プランの中に盛り込んで使っていくのかというところは,すごく注意をして審議をしていきたいと思います。
 英国の例になりますけれども,世界的に,今22世紀に向けていろいろなチャレンジが生まれてきている中で,特に人材育成の中では,リーダーシップというのを文化部門でもとても重点を置いて育成をしていました。特に,2006年から5年間に掛けて,アーツカウンシル・イングランドもカルチャーリーダーシップ,特に文化芸術に関わる人たち,いろいろな人材のリーダーシップを育てていこうという形で,そういった言葉を使っていまして,5年間で2万人の若い文化芸術に携わる人のリーダーシップを育成しているんですね。
 これから2020年に向けて,やはり世界からは,日本のカルチャーリーダーはだれですかということを聞かれることになるんだと思います。私も,海外と関わる仕事の中でよく聞かれることなんです。今,アジアの国とも仕事をよくしていますと,香港ですとかほかの国でも,アートマネージャー育成という言葉よりは,やはりカルチャーリーダーシップとかカルチャーアントルプルヌールシップとか,そういった,これからのリーダーシップを発揮できる,起業家精神のある人材というような言葉を使っていますので,これから国際的な中での日本の文化を語っていく中で,どういった言葉をチョイスするか,そして,日本の人材の中でどういう資質を持った人を育てていきたいか,その結果,すばらしいファシリテーターが生まれてくるとか,アートマネージャーになるというような考え方もあるのかなと思います。
 また,今週ずっと,英国のBBC交響楽団の特に教育の分野で音楽教育をしているリーダーの方を招いて,日本のオーケストラの音楽家のためのトレーニングをしています。そこでかなり主要オケの方に参加していただいているんですが,やはりキーワードはリーダーシップという言葉を使っています。ファシリテーター育成というよりは,音楽家一人一人がリーダーシップを発揮できるスキルと自信をつけていくという短いコースをしています。そういった世界的な,国際的な流れもありますし,ビジョンという中で言葉のチョイスを,少し今年話をできればと思いました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 馬渕先生,どうぞ。

【馬渕委員】  国立美術館をお預かりしている立場から,2つ申し上げたいと思います。1つは,先ほど石上先生がおっしゃった,文化関係資料のアーカイブの構築ということですね。これに関しては,各機関,各組織がそれぞれアーカイブというのはそれなりに構築しているわけですけれども,まだまだ総合的には足りない部分がたくさんあって,それに関してはやはり全体で,分かりやすく言えば,例えば雪舟の絵が一体日本にどのくらいあるのかというような,どこに何があるのかというような,そういう非常に検索が全国的に,あるいはいろいろな,国立だけでなくて私立なり寺社なり,全部そういうものがどうやってできるのかという視点から,やはりもし国力を,国の文化力ということであれば,そういったところに目を向けて,現在ある日本の資産をデータベース化するという視点が必要になってくるだろうと思います。
 それからもう一つ,ここの,今書いておられる5ページの上から2行目です。文化関係資料のアーカイブ構築というのは5ページの10行目ぐらいにあるんですが,その上のところで,国立文化施設の機能強化と書いていただきまして,これは大変有り難い御指摘なんですけれども,アーカイブとも関わり合いがありますが,機能強化をしたり,あるいはアーカイブを構築したり,あるいは日本の文化を発信したり,いろいろな活動をするときに,とにかく人材が必要なんですね。それを実際に,いろいろな形で仕事を整理したり,有効活用したり,いろいろしておりますけれども,今やっていることの中で,とにかく人間の絶対数が足りないんです。その辺に関して,やはりここ数年,いろいろ,国立なり準国立なり,私どもは独立行政法人ですけれども,そういうところで人が増えないと。しかし,その仕事の成果を問われるという事態で,非常に行き詰まっているわけで,こういうふうにしていただける,機能を強化するというような,あるいはアーカイブを構築するというような,そういう指針を示していただいた以上,やはりそれをやる人間を増やしていただきたいと非常に強く思うので,その点に関して,まだ文科大臣おいでになりませんけれども,文科大臣を通じて是非政府の方からそういう,実際にそれを行う人をどうやって増やしていくのかということの方針を決めていただきたいと強く思います。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございます。マンパワーでございますね。ありがとうございます。
 どうぞ。

【石上委員】  今のマンパワーのことについて,一つ言わせていただきます。人材について,この間,年度末の審議会の政策部会の御報告でもありましたけれども,アートディレクターでありますとかファシリテーターとかの概念が提示され,なるほどと思いました。文化・芸術の場合,アートの方ではよく分かるのですが,カルチャー,といっても,文化財とか文化資源の方について,地域などを全体としてコーディネートしたりする政策力量のある方をアートの場合のような職で位置付ける制度がまだないのではと思います。例えば,県には教育委員会があり,文化審議会があり,それから,地域連携して文化財の協議会というのがあったりはします。しかし,文化・文化財行政について,実務に限定されず,その地域に特有の文化を振興する,つまり芸術とはちょっと別の方面の文化について政策立案をする人材の必要性です。ただし,文化というのは思想と関係してきますから,そこは注意深くなければいけません。そういう人材をどういうふうに,文化政策の中で育成し,位置付けていくのかということは大きな課題であると思います。
 それからもう一つ。考古学調査の発掘などは重要ですから,そういう分野に関しては地域の文化財行政においても適切に人材が配置されているのですけれども,例えば民俗芸能でありますとか,歴史資料でありますとか,そういうような分野の専門職は市町村では専門の方はいない場合が少なくありません。それから,自然系もほとんどおりません。自然系については,環境省の方がかなり熱心に,必要な地域については派遣をしたりしていますが。文化・文化財の各分野についてのバランスのとれた専門職員や人材,これを県や地域を,全体を見ながら配置する,そういうようなことを是非政策的に考えていただければと思います。
 それからもう一つ。例えば考古学などは1つの市や町に複数の専門調査員がいる場合もあります。しかし,全ての市町村に,考古,民俗,歴史,建築を一人ずつ置くというようなことは無理でしょう。そうなりますと,やはり,県の教育事務所や広域事務組合などの仕組みを利用したりして,より広い地域での連携による人員の配置ということが必要になると思います。是非,文化政策部会でこの諮問に答えられるときに,芸術系ではない方の文化系の人材配置についても,御検討願えればと思います。よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。いい御提案でございます。
 いかがでしょうか。紺野先生,どうぞ。

【紺野委員】  紺野美沙子です。皆さん,1年間よろしくお願いいたします。ささやかに文化,芸術活動の現場で活動している実演家の1人として,発言させていただきます。
 頂いた資料に,「文化を身近にするには面白いきっかけづくりの工夫が必須である」と書かれています。本当にそのとおりだと思います。そのためには何が必要かというと,日本の伝統文化をはじめ,文化を分かりやすくかみ砕いて伝えるファシリテーターの役割というのが非常に重要であると思います。ただ,ファシリテーターといっても,まだ日本では人材が多くはないと思いますし,具体的にどのような人材,どのような方がファシリテーターとして,理想的な人物であるのか,そういった具体的なものを伝える必要があると思います。例えば,宮田会長のような方がファシリテーターとしても非常に優秀な方であるのかとか。それはなかなか数値化できない,言葉にも表せない部分の才能というのが必要だと思うんですね。言葉の力であったりとか,伝える力,人の心を動かす言葉が使える人物,そういった方,ファシリテーターの理想的な形を伝えるにはどうしたらいいのかということを思います。子供たちの創造力を育むというためには,一流の文化芸術をプロフェッショナルのファシリテーターの案内で子供たちにじかに鑑賞させることが一番大切だと思います。現在も文化庁さんで学校巡回公演などが行われていますが,そういった内容ももちろんすばらしいものだと思いますけれども,その内容のすばらしさを具体的に伝えることができる人材がいるのかというと,そのあたりはよく分からないのですが,是非優秀なファシリテーターの人材の確保・育成をお願いしたいと思います。
 私もこれから人生の残りの時間を,子供たちの創造力を育てるために使いたいと思っております。例えば,私は今,「朗読座」という活動をしておりますが,地方から,是非うちの学校で公演してくださいというお話を頂くこともあります。つい数か月前もそういったお話を頂いたのですが,こういう場で発言していいのかどうかちょっと分からないのですが,校長先生が,予算はないですと。交通費はお支払いしますと。私がボランティアで行くことはありますが,ただ,私だけではなくて,ほかのスタッフであるとか演奏家の方も一緒に行動しますので,全く予算がないというのはちょっと無理なのですね。ですから,子供たちにいいものを見せたいという思いはあるのですが,そこと現場とのマッチングがなかなかうまくいかないという現実がありまして,そのあたりをもう少し具体的に行動に移せるようなシステムがあればより有り難いと思いますし,そういった御要請があれば,喜んで日本全国津々浦々,御協力させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。オファーがたくさんですね。
 西村先生,どうぞ。

【西村委員】  先ほども発言したんですけれども,今,予算がないというお話があって,実は,この中期プランもそうですし,全体として我々が考えないといけないことの1つには,文化に関する予算がやっぱり少ないんだと。これを増やさないといけないということが,やっぱり戦略として必要なんじゃないかと思うんですね。それは,国家予算に占める比率でいうと,韓国よりもはるかに少ないわけです。中国よりも少ないと思います。また,今年の予算も,ここに出ておりますけれども,1000億円ちょっと。少しずつ伸びていますけれども,でも,例えば環境省は,今年で多分2400億か500億ですよね。恐らく20年前の文化庁の予算は,ここにもありますけれども,大体500億で,その頃環境庁は同じぐらいの規模の役所だったと思うんですね。やっぱり一つ,庁が省になって,環境の専門家が環境政策の専門家に育っていって,それが大きく政策を動かしていくというところで,差がついてしまっているんじゃないかと。そういう意味で,戦略的にどういうことをやったらやはり文化に関する予算が増えるのか,そのために,私は前から文化庁になるべきだと。文化政策の専門家がフルタイムで,一生をそのことに捧(ささ)げるという意味で公務員になるような人が,政策を立案するプロが育っていくべきだと私は思っているんですけれども,そういう大きな政策の仕掛けを作るということも並行してやらないと,20年に向けて何か花火を打ち上げるというだけでは,なかなか大きな構造的な変化は生まれないんじゃないかと。そういう意識が若干,中期プランを見ても,ちょっと薄いのかなという気がするので,是非そういう議論もどこかでやっていただきたいなと思います。
 以上です。

【宮田会長】  これは毎回出ている話でございますので,本当によく見ると,少しずつは上がっているんですけれども。ほかの省庁と比べますと,少しずつなんですけれど,西村先生の言うように,大きくどんと行くということが重要です。ただ,下村大臣も前の総会のときにおいでいただいたときが初めてのときですが,これを倍にするんだということはたしか私は耳にしておりますが,そうあってもらいたいと,かように思っております。ありがとうございました。
 さて,ほかにございますでしょうか。どなたかいかがでしょうか。河島先生,いかがでしょうか。

【河島委員】  余り大きいことで申し上げることがなくて,中期プランもよく考えられた,大変すばらしい文書だと思うんですけれども,細かいことだけ,ちょっと気になったところだけ申し上げます。
 1つは,先ほど紺野さんがおっしゃった,湯浅さんもおっしゃっていたと思うんですけれど,ファシリテーターというところでして,昨年度の委員会から度々使われてきた言葉で,非常に魅力的な概念のようでもあるんですけれども,ちょっといろいろな概念が入り過ぎていて,例えば,5ページだと,「芸術教育者(ファシリテーター)」と書いてあって,そうかなという感じがしていたり,それから,どこかほかの場所では,芸術を分かりやすく楽しく説明する人のことですというような注釈があったように思います。結構違うことでして,それと,子供の創造力を引き出すということが,分かりやすく解説することによって必ずしもそこに結びつくかどうかも分からないので,目指すところの意味は何となく分かるんですけれども,もしこの部分を,かなり前の方に出てきていて,「人をつくる」ということが非常に重視されている大変いいプランだと思うんですが,ここのところをきっちりともう少し分けて概念をはっきりさせていき,それから,芸術を通してコミュニケーション能力を育てるというのは,またちょっと違うことだとも思うんですね。教育一般におけるコミュニケーション能力を育てるために芸術が果たす役割があるという話と,芸術を言われたとおりに,絵を上手に描きましょうということではなくて,子供なり,大人も含めてだと思うんですけれども,自分で考えて,自分の創造性を発揮していくということはまた違う話でして,通じるところはあるんですけれど,その辺の概念の整理を一度した方が,審議会等,部会等を通じてやらせていただいた方がいいかなと感じた次第です。
 それからあと,紺野さんが先ほど御指摘されたところですが,5ページ目の一番下に,「文化を身近にするには「面白いきっかけづくり」の工夫が必須である」という一言がありまして,これってどういうことかなと。身近に感じられない人が多いという実状は確かにあると思うんですが,それが問題意識として非常に強くあるのかなと。ところが,前の方を見ると,余りそういう,そんなにネガティブ的なことは書いていなくて,国民は自信と誇りを持って心豊かな生活を送っているというような,鑑賞活動も活発であるという,ポジティブなところだけ書いてあるので,こういう問題意識があるのであれば,それはそれできっちりと言った方がいいのではないかなと思いました。
 最後にもう一つ,これ,長官の御専門の分野ですので,もし伺えたら伺いたいのですけれども,15ページの施策2として,創造や人材養成の場でもあるフローとしてのミュージアム構想を検討するって面白そうだなと思いまして。あるいは会長,御専門で,どういうことをお考えなんでしょうか。

【宮田会長】  それでは,長官,お答えをお願いできませんか。

【青柳長官】  今までよく美術館,博物館等の箱物という言葉があって,私は,それはそれで十分に価値があるとは思っていますが,しかし,社会一般の中で箱物というものが,決してポジティブなイメージだけではない。そういうときに,アーカイブを充実させるべきである,あるいは,人材育成をする場が必要であるという考えがございます。そういう機能にまず注目して,その機能が充実してきた段階で,その場を確定していくというような方向が,これからの文化施設などを充実させていく方向ではないかと。そういう意味で,ここにフローとしてのミュージアムという言葉が使われているのではないかと思います。

【宮田会長】  よろしゅうございますか。

【河島委員】  ありがとうございました。

【宮田会長】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。道垣内先生。

【道垣内委員】  私は国境を越えた法律問題を研究していて,外国との関係が専門なのですが,文化でも法律でも国によっていろいろなことが違っていて,違うからこそ面白いわけでして,法律ですといろいろトラブルが起こるわけですが,文化だと多分新しいものが生まれたりするのではないかと思います。日本の文化は,いろいろなところからいろいろなものが入ってきて現在に至っているわけで,様々なもののミクスチャーが上手なのかもしれないなと思うのですが,資料を見ますと,3番目の柱の「世界の文化交流のハブとなる」と記載されています。これは非常にいいコンセプトだと私は思います。ただ,具体的に書いてあることのほとんどは,日本の文化を発信するということであり,やや傲慢になりつつあるのかなと思います。最近の風潮がそうなのかもしれませんが,日本はすごいと確かにすごいと私も思います。いろいろな国に行っても,日本はいい国だと本当に思います。しかし,だからといって,外から学ぶということは大切で,今までは随分学んできたと思うので,これからもその姿勢は崩さないようにしないといけないと思います。
 どうすればいいかということですけれども,日本を文化人が集まるにはふさわしい場所にすることができれば,それがハブになるという意味だと私は思うので,そのように,外国からの文化人を呼ぶ,あるいは持ってきてもらうとか,そういうところにももう少し目を向けて,日本という地で,新しい文化が創造される工夫をすることが大切かなと思います。日本の文化の中にも,実際,外国から評価されて発見されたものもありますよね。多分,外国にもそういう未発見の文化があると思います。ここまで来た日本ですから,そういうものを見つけてあげて,これはすごいですねというふうに育ててあげるといった活動をすることも考えられると思います。海外の文化を理解し,育てる努力をすれば,自分のこともよく分かり,相乗効果が生まれると思います。具体策が,ハブにしては偏っているかなと思う次第です。飛行機も両方向に飛ばないとハブになりません。出ていくばかりだと飛行機がなくなってしまいます。ちょっとそのように思いました。

【宮田会長】  なるほど。大変興味深いお話をありがとうございました。
 迫田先生。

【迫田委員】  迫田でございます。よろしくお願いいたします。先ほどの御意見と関連がありますので,感想というか,提案を申し上げたいと思います。さっきおっしゃったように,「日本の文化は日本人だけのものか」ということを考えたときに,実は,海外の日本語学習者の数が2009年の国際交流基金の調査では365万人でしたが,2012では398万人に伸びております。30万人も増えております。これは,世界で,日本語が多くの地域で学ばれているということで,これらを今度は日本の中に取り入れていく。ここに,4ページのところに,「在留外国人の日本語学習者の割合を向上させよう,1.5倍にしましょう」ということが書いてあります。魅力のある日本に行ってみたいと思わせることというのがやっぱり大事だと思うんですね。
 私は,海外で日本語を教えている方々にお会いする機会がございまして,最近もいろいろなところに行ってまいりました。ポップカルチャーの勢いは非常に強く,やはりまだ日本語学習者の動機のトップなんです。アニメ,漫画,そして最近ではドラマ。最近見たドラマは何ですかと聞きますと,「半沢直樹」という言葉が返ってまいります。そして,ロシアでは,「日本料理の何が好きですか」と聞きますと,「丸亀製麺!」という言葉が返ってまいりました。うどんが人気あるそうです。こういった,目と耳と舌で感じる日本のすばらしさを伝えていくと同時に,彼らを日本に呼んで,そして高度人材といいますか,日本を一緒に作っていくという,外国人とともに歩む多文化共生の視点を取り入れた文化力というものを作っていっていただけるといいなって,そういうふうに考えてみました。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。先ほどのハブ,行くそして帰る,両方あるということと同じ,同様でございますね。大変興味深いお話をありがとうございました。それと同時に,日本にあって意外と日本が評価していないものを,外国人から評価されて改めて認めるということなどは,過去にも随分ありましたですよね。例えば,江戸のことですと,洛中の絵などはとてもぎらぎらしていてと言っていたのが,ボストンで,アメリカで認められたと。いろいろな交流ということが必要。それがあるからこそできるということだと思います。
 あと,いかがでしょうか,どなたか。神崎先生,お願いいたします。

【神崎委員】  改めて神崎です。一番評価したいのは,この文化振興施策には柔軟性を随分入れられておるということです。例えば,「人をつくる」ところの注釈ですけれども,言葉遣いや立ち居振る舞い,そのあたりまで視野に入れるということは,これまでなかったかと思います。そういうことを明文化していただくことはとてもいいことだと思います。
 私,地方を回っておりまして,市町村で随分差がありますけれども,この頃,文化を築いた人たちとかその地域の有形無形の文化財についての教本の類を作る,そういう市町村が出てきております。例えば,岡山県の美作建国1,300年記念のときに,子供向けに美作の歴史と文化,それから文化を築いた人たちを特集した,とてもいい本が出ました。私は,もろもろの記念行事の中で一番それが後世に残る事業だろうと思いました。
 今,私たちがここで論議しているのは,日本という対象ですね。日本の文化芸術です。そうすると,私たち日本人がどれぐらいそこへ力を注いできたか,あるいはお金を投じてきたかということが,歴史的に総覧できる手ごろの資料というのが乏しいのではないでしょうか。行政の上でも努力をなさった人たちがあるはずですし,民間でも伝統文化の継承に心血を注いだ人たちがいるはずです。それから,最近では企業メセナといいますが,日本の文化は,基本的には旦那衆が寄附をするということで成り立ったところが大きいですね。そういうところをピックアップするのは大変難しいのですが,そうか,私たちの日本はこういう形で文化というのを大事に育んで伝えてきたかというような,何か見えるもの,読めるものが欲しいと思います。そうすると,次の世代は,それをどうつないでいくか,この中のどれをつないでいくかということの目安にもなるでしょう。伝統文化と申しましても,古色蒼然と直線状態で続いているというようなことはなく,時々に変わってゆきます。その時々の変化は許容して,しかし,総合的には日本はこれだけの文化力を維持してきたということが,教本というと大げさなのですけれども,今,地方の行政単位でそれぞれやっている冊子類をまとめる形で日本の文化芸術の年表読本のようなものができないものでしょうか。国としてそういうものを編じることも,私は大事だと思うのです。

【宮田会長】  そうですね。ありがとうございました。
 大渕先生,いかがですか。

【大渕委員】  それでは2点ほど申し上げたいと思うんですが,まず,2020年で,中期プランということで,これは非常にタイムリーで結構かと思うんですが,これを,説得力をあらしめるには,やっぱりもう少し長期のものがバックグラウンドにあって,その第一段階みたいな形で2020年って持っていかないと,突然2020年ってだけよりは,後ろがあってからの方が説得力があるんじゃないかと。先ほどの,今後の日本文化のあるべき方向性というのをもう少し,100年代,もうちょっと長期のものから出してきた方が説得力があるかなというのが,第一の感想でございます。
 その反面,ただ,こういう施策ですので,スピード感を持ってやっていただくのがいいのかと思いますので,長期の視点を持ちつつも,できるところから少しずつでもやっていくということで,盛りだくさんに,オールラウンドにやっていただくというのが,文化というのは非常に多面的なものですので,例えば先ほど,アーカイブ,これは大変重要なことだと思いますけれど,アーカイブの問題をやりだしたら著作権の問題とかいろいろ掛かってきて,ここはまさしく著作権,非常に地味な法律の話なんですけれども,そういうものも必ず掛かってくることなので,そこも全部視野に入れた上で,先ほどハブというので,この頃こういうのが,情報発信とかいうのは前は目新しい言葉だったのに当然のように出てくるようになったので,大変日本のいいものだったら,しっかりと情報発信していくというのはこのネット時代には非常に重要なことなので,それは当然のようになされているのは大変いいこと。
 その中でちょっと思いましたのも非常にいろいろあって,たくさん個別にいいものがあるのをもっとどんどん具体的に積み上げていただく,できることから少しずつ,予算がないというのはありましたけれども,そういうのを積み上げていくにつれて,予算の方も出るようになってくるかと思いますので,できるところから少しずつでもやっていくと,あといろいろなものが組み合わされて,シナジー効果が発生してということになって,最終,この文化交流のハブということでなっていくかと思いますので,最終目標はそうなんですけれど,できるところから少しずつやっていって,早いうちからどんどん予算をつけるなどして,どんどん盛り上げていただいて,そうすると,ほかも刺激を受けて,どんどんやるということもありますので,そういう,できるところからどんどん,先ほどからお聞きしているだけでもたくさんアイデアがありそうなので,スピード感を持って具体化,推進していただくことが重要であると思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。スピード感のお話。
 会長代理,いかがですか。

【土肥会長代理】  分かりました。土肥でございます。どうぞよろしくお願いいたします。あっちの方に座っておりましたときには,例えば文化庁の予算1,000億中,若手人材育成に充てられる予算は,今年の場合ですと22億そのあたりだろうと思うんですけれども,非常に少ないじゃないか,これをどうすべきかということに関して,旦那衆に代わる寄附,そういうような個人的な寄附を積み上げるというようなことも考えられるんではないかと申し上げたことがあるんですね。つまり,タイガーマスクがこれだけいるんだったら,そしてまた,AKB48で推しメンという制度が成立するんだったら,それは人材育成との関係で,まだまだ有限的な国家資源,そういうものの不足を補うことができるんではないかということを申し上げたんですけれども,なかなかそれも難しいということであれば,私は,今回,文化芸術ということが中心で述べられているんですけれども,文化芸術と文化産業というのは別の話ではないんじゃないかと思っております。つまり,人材の育成というものを常に国家資源,そういったもので考えるのではなくて,継続的な人材育成を産業の中でも継続させることができるんじゃないかなと思います。つまり,例えば,今回の場合,文化関係資料のアーカイブの構築,こういったことは非常に重要なことでありまして,私個人としては浪曲なんかが非常に好きで,桃中軒雲右衛門の「赤垣源蔵徳利の別れ」というのが日本のレコードの一番初めの録音だということを聞いたことがありますけれども,実は,ああいうものは,現在ないんですね。アーカイブ化しようと思っても非常に難しいんだろうと思います。でも,しかし,恐らくニーズは結構あると思いますし,こういうアーカイブあるいは人材育成,芸術文化とともに文化産業,こういったものの育成を図りながら,持続的な伝統芸術なり文化振興なり,こういうものにつなげていくことも私は考えていただいてもいいのかな,こういうふうに今考えて,感じておるところです。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。

【内田調整官】  今,大臣が間もなく到着するという連絡がありました。

【宮田会長】  そうですか。ありがとうございます。
 まだお二人ばかり,お言葉を頂戴してはいませんが,大臣がおいでになったときに話が中断するのも大変失礼かと思いますので。ここで一区切りしましょうか。大臣は,どれくらいおられる予定ですか。

【内田調整官】  大体15分はおれる予定です。

【宮田会長】  そうですか。その後にでも,また御意見を頂戴するというふうにさせていただきたいと思いますが。
 今までの中で,大変先生方,様々な視点からお話を頂戴して,ありがとうございました。文化庁の皆様もいかがでしょうか。いろいろな,なるほどという点,それから同時に,これは構築しなくてはならないという点,それから,あるいはもうひとつ整理をしなきゃいけないということとか,そういうところをいろいろと考えながら感じて,時間を過ごしたのではないかと,かように思います。
 あと,今後は,これが終わりましてから,また,それぞれの分科会になったりとか,いろいろ動きが出てくるわけでございますよね。その辺のところは,また内田さんの方から後ほどお願いします。
 ちょうど大臣がお見えになりました。ありがとうございます。大変お忙しいところ,下村文科大臣においでいただきましたことを感謝申し上げます。大臣,ありがとうございます。

【内田調整官】  そうしましたら,ただいま大臣が到着いたしましたので,諮問文を宮田会長へ大臣から手交をさせていただきたいと思っております。その後,下村大臣から一言御挨拶をさせていただきたいと思っております。 そうしましたら,会長と大臣の座席の後ろの方で,諮問文の手交をお願いできればと思っております。

(下村文部科学大臣から宮田会長へ諮問文を渡す)

【内田調整官】  そうしましたら,一言お願いいたします。

【下村大臣】  途中で大変恐縮でございます。今期第14期の文化審議会委員をお引き受けいただきましたこと,心より感謝申し上げたいと思います。
 ただいま,文化審議会の諮問文,宮田会長に手交させていただきました。この諮問は,第4次となる文化芸術の振興に関する基本的な方針について,審議要請をするものでございます。これまでの発想の枠を超えて,ダイナミックで野心的な方向性を是非頂戴いただければと考えております。
 最近,特に,文化政策に対する関心が高まりを見せております。2020年の五輪の東京開催が決定いたしました。オリンピックの精神に鑑みても,2020年はスポーツだけでなく,文化芸術によって日本中に活力がみなぎる年として位置付けたいと,私自身,五輪担当大臣でもございますので,そのようにしたいと思っております。また,そのような気運が,今,国内で高まりつつございます。今,開会中の通常国会におきましても,かなりの頻度で文化政策の議論が取り上げられております。例えば,我が国の最大の資産である,世界に誇る日本文化を戦略的に発信すべきであるといった意見が,与野党問わず,あるいは衆参問わず,いろいろな国会議員から出されております。国会をはじめ,各界,各層で文化政策に対する応援や関心が高まっているこの状況下において,今が一つのターニングポイントであると考えております。
 こうした機運に応え,2020年を一つの目標として,文化政策を戦略的に推進していくため,お手元に配付しております「文化芸術立国中期プラン」をまとめました。このプランは,1つは「人をつくる」ための施策,そして2つ目には「地域を元気にする」ための施策,3つ目に「世界の文化交流のハブとなる」,そのための施策,これらを通じまして,2020年には,我が国に強固な文化力の基盤が形成されている姿を目指すというものであります。こうした基盤の上に,2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせ,世界に誇る日本各地の文化力を生かした文化プログラムを,日本全国津々浦々で展開したいと考えております。これは2020年単年度ということでなく,その数年前から取り組み,そして,その先の日本においても,毎年更にそれが拡大していくような文化芸術の取組を,是非これからチャレンジしていきたいと思います。
 本日の諮問文は,中期プランの内容も踏まえたものでございますが,このプランは,審議の素材の一つにしながら,ここに示している視点や施策を更に超えて,現代における日本文化の発展について幅広く自由に御意見を頂戴できればと思います。日本の文化を海外に戦略的に広報発信し,世界のより多くの人々に知っていただくことは,国際社会における日本の存在感の増大や,日本人のアイデンティティーを世界に更に認知していただくことにもつながり,外交的に利益にも結びつくものと考えます。それによって,日本の文化の魅力を求め,文化体験や観光のために日本を訪れる外国人の増加も見込まれるところでもございます。
 また,民間の積極的な投資を促すような文化政策も必要になると考えます。文化イベントへの投資が公共事業の投資と比較しても,十分引けをとらないとのデータもあります。経済的利益という観点でも,他領域への投資と,相対的に見て効果を期待できるのではないかと思います。さらには,文化に関連する施策を担う関係省庁がしっかりと連携をし,領域横断的で強力な文化政策を打ち出すことが必要であると考えております。
 2020年は単なるオリンピック・パラリンピック開催という位置付けだけではなく,これを契機として,新しい日本を創造するための年にしたいと考えます。このため,従来の着想や手法を超えた国家戦略としての文化振興策を御議論いただければと考えます。この文化審議会総会は,日本の文化政策の基本的方向性を御議論いただく場であり,我が国の将来の筋道を描く上で極めて大きな意義を有する審議会でもあります。どうか今期も自由,かっ達な御議論を頂き,実りの多い内容を作っていただきますことをお願い申し上げまして,私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

( 拍手 )

【宮田会長】  ありがとうございます。大変力強いお言葉を頂戴いたしました。各省庁を超え,国家戦略的な協力の下に文化政策を行っていくという,大臣からのお話でございます。ありがとうございました。大臣もまた,この後大変お忙しいということ,国会もございますので,お時間は許すところまでで結構でございますが,いかがでしょうか。

【下村大臣】  それでは,大変申し訳ありません。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

( 拍手 )

【宮田会長】  本当にありがとうございました。
 ありがとうございました。大臣から大変力強いお言葉を頂戴いたしました。
 それでは,今の大臣からの御意見なども踏まえながら,引き続き,あと少しお時間がございますので,今,あとお2人ばかりお話を頂戴していなかったですね。髙橋先生,どうぞよろしくお願いいたします。

【髙橋委員】  私は,都市と建築の歴史を専門にして,京都で暮らしております。そういった立場から少し希望を述べさせていただきたいと思っています。とりわけ,中期プランの「地域を元気にする」というところについて,お願いがございます。それぞれの柱は,文化財保存修理の抜本的強化と,非常に重要なことを含んでいてありがたいと思うわけですが,言いたいことは,具体的にここに挙げている3つの項目の関係性ということでございます。
 キーワードはまちづくりという点でございまして,まちづくりは,普通に考えられている意味で言うと,都市計画とは大分異なっていて,つまり,トップダウンの,国あるいは地方公共団体の都市計画ではなくて,先ほどの言葉を使えば,グラスルーツの活動というのがまちづくりではないかというように考えています。そのような意味でまちづくりを行っていく,歴史の,あるいは文化の,あるいは景観のまちづくりということになるのかもしれませんが,そのようなことを通じて地域を元気にするということを考えたときに,実際に行われているグラスルーツの活動を支援するプログラムがここに含まれているのかどうかという点が,少し気になってまいります。今,実際には,文化財保護法だとか,景観法だとか,歴史まちづくり法によって様々なサポートがなされているわけですけれども,京都で少し見ておりますと,規制の加わる補助というか,そういうことが非常に嫌われているのですね。ですから,文化財保護法で言えば,登録文化財は構わない,そして,歴史まちづくり法の歴史的風致形成建造物は構わない,府・市の登録文化財は構わないけれども指定文化財はお断りしたいと。ですから,文化財保護法の登録文化財までは,あるいは歴史的風致形成建造物はいいけれど,景観重要建造物はちょっと辞退させてくださいというようなことが結構ございます。実際には,何ほどという規制が掛かるわけじゃないと思うのですけれども,そういうことが一般に言われていて,つまり,文化財というものに対する理解が余り及んでいないという実感があるということと,そういう規制に対するいわばアレルギーがあることを踏まえると,サポートの仕方にもう少し,国の立場としては規制が全然ないサポートは難しいのかもしれないけれども,そういう,モチベーションを上げるようなサポートの仕方を工夫していただくことが,グラスルーツのまちづくりを活発にするのだろうというように思います。思いつきで言いますと,例えば登録文化財について,ある種の,とりわけ文化財ですから,文化財的価値の担保は当然なのですけれども,それに加えて,活性化する,活用するということを所有者の方が行いたい場合に,何らかのサポートがあれば,それがまちづくりにかなり強く結びついていくのだろうというようにも思います。
 そういうグラスルーツのまちづくりが進んでいけば,それがそのまま,恐らく創造型というか,創造都市ネットワークということにもつながっていくようにも思いますので,この創造都市ネットワークということになりますと,恐らく文部科学省,文化庁の枠を超えていくことになろうかと思います。歴史まちづくり法のような形で,いろいろな省庁の枠を超えてまちづくりのサポートがなされれば,非常に有り難いというように思っております。
 以上です。

【宮田会長】  まちづくりについてでございますね。ありがとうございました。
 鈴木先生,いかがでしょうか。

【鈴木委員】  最後になってしまいましたけれど,鈴木でございます。今,髙橋先生からも指摘がありましたように,文化財の保存修理,防災対策の抜本強化ということが入っておりますので,大変有り難いと思っておりますけれども,それに絡めて2点ほど話をしたいと思いますけれども,1つは,保存修理技術の,あるいは資材の開発のことなんですが,文化財,文化創造の基盤とよく言われているわけですけれども,その文脈で言えば,文化財の保存や修理ということが基本的に重要になってくるんだと思っております。近年,そのための技術の伝承,原材料,修理用資材とか用具の十分な確保,あるいは科学技術を応用した技術開発が課題となってきていると思っておりますけれど,もちろん私も言わずもがなで,文化庁もそのための様々な努力をされているわけですけれども,それらに関わる方々の生活のことなどを考えますと,なかなかやはり限界を感じざるを得ないし,また,より国家的な技術開発も更に進める必要があるのではないかと思っているわけです。その中で,保存修理の現場では,以前から科学技術を取り入れた材料・用具・技法などの研究開発がなされてはおりますけれども,もちろん伝統的なものとの併用,活用が行われているわけですが,なかなか,さっき申し上げたように,それが人の問題もあって,うまくいかないということがあります。そういうわけで,伝統技術や資材の代替というわけではないんですが,伝統文化が新たな創造発展にも資するものとして,やっぱり文化庁として,総合的に力を入れた文化財に関する保存,科学,修理技術に関する技術研究の開発を目的に特化して,総合的な力強い施策,是非ここにも抜本的とありますので,強化,大幅な予算確保が必要だろうと思っております。予算が増えれば,かなりの部分は解決するところがあるかと思いますので,是非予算を増やしていただきたいということでございます。
 それから,もう一つは,3・11から3年もたちますと,なかなかこういう会議でも話が話題に上がってこないようなことはありますが,今,直下型とか南海トラフの大地震とか言われております。富士山の噴火などもニュースで話題になっておりますけれども,そういう大災害の発生の確率が高いことも指摘されているわけです。それへの対応策として,今後とも長期的,継続的に取り組めるような,文化庁さんも考えておられると思いますけれども,中心となる防災センターの設置というものを,是非専門家を,職員を配置した,そういうものを考えて実現していただければなと思っております。
 これに絡めて,最近,防災という言葉とともに,減災なんていう言葉もあります。少しでも減らす,事前にいろいろな手を打って減らすということがありますが,その一つでもありますけれども,これはなかなか状況が許さないとは思いますが,現在の保管場所とか,所在場所から移動しておく,事前に避ける,避災の考え方も視野に入れられるのではないかと思っております。何か,私自身がこういう具体的な施策が頭の中にあるわけじゃありませんけれども,ついそういう視点を持って,視野に入れてやっていただければ有り難いなと。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。先生方から貴重な御意見を,それぞれ頂戴いたしました。
 ここで,もうちょっと時間がございますので,文化庁さん側からもどなたか。長官,ひとつよろしくお願い申し上げます。

【青柳長官】  どうもいろいろ御議論,ありがとうございます。これから,是非政策部会等でこの御議論を深めていただいて,この次の答申につなげていただきたいと思います。
 私どもも,先ほど西村先生がおっしゃったように,予算というものが小さいことは十分に認識しております。いろいろな形で努力をしておりますけれども,政府全体の巨額な財政赤字の積み重ねでなかなかそれがうまくいかないけれども,やはり一つには,我々の文化庁の突破力も十分ではないことも認めざるを得ないということで,先生方からの様々なお知恵を拝借しながら,どうにかそれを突破していけるように考えたいと思います。
 そして,私ども文化庁としては,やはり1980年頃からカナダを中心にした多文化社会の議論,それから,その後の文明間の対話の議論,そして,文化多様性の議論というようなものがこの地球上で大変活発に行われるようになって,1980年以前とは文化,文明の位置付けが,国際社会の中で明らかに変わってきている。これは恐らく,グローバル化の中での,先ほど大臣もおっしゃっていましたが,各国のアイデンティティーというものが,あるいは地域のアイデンティティーというものが非常に重要になってきている。それの確立というものをそれぞれの地域や国が熱心に行うようになってきている結果ではないかと思います。そういう国際的な動きの中で,やはり我々もある程度それに対応した,しかし,文化的な覇権を狙うのではなくて,あるがままの自然な,等身大の姿を国際社会の中で認めてもらうというようなことをこれからきちっとやっていきたい。
 それから,先ほど都倉先生もおっしゃいました,ポップカルチャー等での草の根的な要素は非常に重要だということも我々十分に認識しておりまして,その部分が,しかし日本文化,現代文化の大変大きな活力になっていて,その活力が更に拡大すれば,柔軟な理解力で伝統文化などにも理解が及ぶのではないかというようなことも考えて,これからいろいろ努力していきたいと思いますので,どうぞよろしく御指導いただきますよう,よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 もう少しお時間がありますので,河村次長からの一言お願いいたします。

【河村次長】  たくさんの御示唆,御意見を頂戴しまして,ありがとうございました。中でも,前回の審議会でも御指摘を頂いたことでもございますけれども,今,2020ということで,私ども,オリンピック・パラリンピック招致の前から,オリンピックがもしも招致されれば,それはそこでスポーツだけではない文化があるんだということを言っておりましたものの,余りに2020だけを一つのターゲットとして,そこで何か大きな打ち上げ花火があればいいのではないのだということに,終わればいいということに陥らないために,いろいろな施策の作り方も工夫していかなければいけないと思っております。
 2020に向けて,様々な関心が健全にまた広がっていくようにという仕掛けとして,2020になる前の,例えばリオオリンピックが2016ですけれども,ロンドンの例をとれば,その直後から文化のいろいろなプログラムが始まっていったということでありますので,それをよく学ぶということと,それから,2020で終わりではなくて,むしろそこに向けて作られてきた様々なシステムとか連携の実態というものが,更に2020を超えて,我が国のために又は世界文化のために資していくようなものになるようなという,先を見た視点が必要だということも,是非,皆様方からも繰り返しまた御指摘を頂いた方がいいのではないかと思っております。どうしても2020に向けて,私ども何をするかということに視野が陥りがちかと思いますので,どうぞ繰り返し御指摘いただきたいと思いますし,私どもも自戒をしてまいりたいと思います。
 そのときにできるだけ,政府の中でも文化庁だけではなくて,これまでも何回かほかの省庁の職員にも来てもらい,文化政策部会の中で意見,発表とか,情報の提供をしてもらっていったわけですけれども,これからもそのような運営ということも,また会長や委員の皆様方と御相談しながら広げていく必要があると考えておりますし,地方自治体や文化芸術の関係者の皆様方とどういうパートナーシップを持っていくかということも,これからしっかりと進めていかなければいけない仕組みづくりだと思っております。どうぞこれからも幅広い御示唆を頂きますようにお願いを申し上げます。

【宮田会長】  ありがとうございました。そうですね。2020はあくまでも,私などは,3段跳びの跳ぶ手前の踏み台ぐらいの感じで,その気持ちで行くという大きな視点の中で,そして,今の足元はどうなのかというあたりの連携を,高いところ,低いところ,いろいろなところからの角度から見て,施策していくのが大事なのかなという感じがいたします。ありがとうございました。
 大変,先生方,端的に,また,非常に示唆の富んだお言葉を頂戴いたしまして,おかげでちょうど時間となりました。2分前でございますので,ちょうどよいと思います。
 それでは,内田さん,事務局の方から何か。

【内田調整官】  本日はどうもありがとうございました。今後の日程に関しましては,またそれぞれの分科会,部会ごとに,各課の庶務を担当している者から追って御連絡をさせていただきたいと思います。
 また,もう一点,本日は机上に,文化審議会の委員に御就任いただきました発令書がございますので,そちらの方をくれぐれもお忘れなくお持ち帰りいただければと思っております。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。発令書の判は私が作ったものでございますので,皆さん,大事に持って帰ってくださいね。
 本当に長い時間,ありがとうございました。第1回の文化審議会,これにて閉会とさせていただきたいと思います。御協力,ありがとうございました。

── 了 ──

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