第14期文化審議会第2回総会(第62回)議事録

平成26年7月24日

【内田調整官】  そろそろ始めさせていただきたいと思います。
 ただいま連絡が入りまして,会長の宮田先生が若干遅れて到着されるということでございますので,それまでの間,会長代理の土肥先生に進行をお願いしたいと思っております。どうかよろしくお願いいたします。
 開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。まず,座席表がございますけれども,その下に今年度の文化政策部会の審議についてという1枚紙がございまして,これは今日,発表いただきます文化政策部会長,熊倉先生からの御説明資料でございます。その下に配付資料が束となってとじてございまして,議事次第1枚紙がございまして,その次に名簿があります。資料1ですが,審議経過報告として,文化政策部会からの報告,そして,資料2が,第4次方針策定までのスケジュールを記させていただきました1枚紙でございます。これらのほか,机上資料として,関連資料をまとめさせていただきました紙ファイルがお手元にございますので,ごらんいただければと思います。もし過不足がございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 本日は,下村文部科学大臣が15時30分前後に到着の予定となっておりますので,どうかよろしくお願いいたします。
 すみません,それでは,宮田会長がいらっしゃるまで土肥先生,よろしくお願いいたします。

【土肥会長代理】  承知いたしました。会長到着までの間,私の方から代わって説明させていただきます。
 まず,文化審議会総会第2回を開催させていただきます。本日はお忙しい中,お集まりいただきましてまことにありがとうございます。現在,文化振興に関する基本方針,第4次方針の策定に向けて,文化政策部会において検討いただいておりますけれども,本日は,その中間報告を文化政策部会で取りまとめていただいておりますので,部会から報告いただきます。なお,本日は,文化政策部会からも8名の委員の方に同席いただいております。
 それでは,早速文化政策部会の熊倉部会長から御報告を頂戴したいと存じます。よろしくお願いします。

【熊倉委員】  熊倉です。報告をさせていただきます。
 最初に,1枚紙で私の名前でお手紙を添えさせていただきましたので,こちらの方を読ませていただければと思います。
 ここにいらっしゃる皆様方は記憶されている方も多いかと思うんですけれども,昨年度の最後の文化審議会総会において,2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催では,開催までの盛り上がりのみで終わるのではなく,開催後にレガシーとして何を残せるかを見据えて取り組むべきという意見が多数出ました。今年度の文化政策部会では,こうした課題に取り組むべく,全委員に,2020年とその後を見据えた重要な点に関して意見シートを提出していただき,委員会での個別発表をお願いいたしました。どの委員も大変熱心に意見をお寄せいただき,委員会では毎回,白熱した議論が展開されております。
 今回文化庁で,審議経過報告の重要な点を抽出しつつまとめていただいたら,12ページにもなってしまいまして,それでもまだちょっと方向性が絞り込めてはいない状況です。今後後半でそれをしていければと思っております。また,本当に皆さんが熱心にこの宿題に取り組んでくださいましたので,今回資料1の後半部分に,各委員の意見シートもそのまま添付させていただいております。是非皆様もお時間のあられるときに御一読いただければと思います。手紙の方に戻ります。
 ここで特に多くの委員から出た意見を2つ御紹介したいと思います。
 まず1つが,芸術関係のアーカイブセンターの必要性。我が国の資源として,文化が更に活用されるために,芸術をリソースと捉えて集積する措置を講じることが肝要であると。ストックがあることで,より豊かなフローが生まれる。
 もう1点,文化芸術を社会に生かす人材措置の必要性。専門機関の人的配備の不十分はもとより,昨今注目される,地域での芸術祭や創造都市の取組を推進する人材を配備することが,地域社会の未来において喫緊の課題である。文化のフローを生み出すために,専門性の高いファシリテーターが置かれることが重要と。
 また,今回の部会では,経済産業省,総務省,外務省,観光庁などの担当者から,我が国の未来において文化的厚みの重要性に熱い注目が集まりつつあり,各省庁とも新たな施策に取り組んでいることを示すプレゼンテーションがあり,部会出席の委員たちとの議論が大いに盛り上がりました。特に,中国や韓国では,日本はなぜこれほど文化的に豊かなのかと問われるという経済産業省担当者の発言に,私たちは大変鼓舞されました。
 こうした機運を飛躍につなげるべく,是非とも2020年が大きな契機となることを政策部会の委員全員が切望しております。文化芸術振興基本法制定以来,毎回すぐれた基本方針が策定され,徐々に変貌・成長を遂げつつある日本の文化政策ですが,再び我が国でオリンピックが開催されるこの機に,スポーツとともに文化環境の大幅な改善が施され,少子高齢化に苦しむ日本社会においても,文化芸術の力で,誰もが幸せを手にし得る創造的な未来像を描けるような基盤整備がなされるべきと確信する次第です。
 それでは,資料1のカラーの1枚紙をごらんいただければと思います。
 まず文化政策の中長期的な方向性について。1番目の丸,2020年を契機とし,2020年以後をも見据え,文化振興方策を講じていく必要。これは私が述べたことと同じでございます。文化力で社会課題,地域振興ですとか,震災復興などへも対応。これは既に文化芸術を通じて大きな成果を上げていることが報告されております。行政や文化施設における専門人材が不足しており,充実すべき。こうした文化のフローを作っていくのに,人材が専門的に配備される必要性があるということです。続きまして,アーカイブの在り方を総合的に検討する中で,日本の強みを生かす国際的な拠点づくりを推進ということでございます。これも私の手紙と重複いたしますが,特にアジア諸国に,日本が持っている日本文化だけではない西洋文化のコレクションも御紹介することもあり得るのではないかという具体的な御意見も,委員の中から頂いております。省庁横断的な文化政策の戦略を講じるべき。従来の文化振興のための文化振興だけではなく,福祉,教育,産業,観光などとの連携が見据えられるべきと。それから,日本文化のファンを世界に創造し,日本ブランドの認知度向上により,市場の創造につなげる。そして,文化芸術のフローを創出するため,現在試行中のアーツカウンシルの本格実施を検討すべきという意見も多数出ました。
 また,講ずべき施策についてですが,2020年東京大会の文化プログラムに向けて。これは,全国の様々な文化プログラムの取組への支援。東京だけでなく,東京一極集中を打開すべく全国へと波及していく別のベクトルを作っていく新たな契機になればという意見が出ております。また,文化プログラム実施のための環境の整備などとございますが,このあたりは,もっとたくさん意見が出ておりますので,本日御出席の委員に,後ほどフリーディスカッションで補っていただければと思います。
 文化芸術立国実現に向けて。人をつくる。子供の想像力・創造力の育成。芸術家によるワークショップ活動,あるいはここには書いてございませんが,ワークショップができるファシリテーターの育成ということも出ておりました。また,地域を支える人材,高度専門人材,後継者などの育成,そして配置。自治体の政策を担う人材育成や,あるいは人材の配置をもっと充実してほしいということです。
 (2)の地域を元気にする。各地域の文化芸術を生かしたまちづくり。文化観光コンシェルジュ機能の整備。あるいは,社会課題に対応する文化活動への支援。また,創造都市への支援。それから,MICE誘致に伴う文化資源のPR。文化財の活用などで魅力あふれる地域の創出・発信。ここでは,私どもの部会からではないんですが,日本遺産を認定する仕組みの創設も文化庁では御検討のようです。それから,部会で多く出たのが,次のアートNPOなどへの支援の重要性も言われております。それから,伝統的な生活文化への支援。
 右側へ行きまして(3)世界の文化交流のハブとなる。復興への支援,復興した姿の発信。被災地で,昨今各地で大きな成果を上げている国際芸術祭を開催すればいいのではないかという意見も複数の委員から出ております。ちょっと重なりますが,国際的芸術祭の開催。海外への発信力強化・支援。それから,日本語教育を推進する環境整備ということで,日本語の部会の方からも政策部会に御出席いただいて,意見交換をさせていただきました。そして,国際交流・協力の推進,東アジア文化都市,また,新たな大きな施策を考えている国際交流基金との連携なども話題に出ました。
 そして,施設・組織,制度の整備。文化関係資料のアーカイブの構築,国立文化施設の機能強化,著作権制度などの整備というふうに取りまとめられております。
 大ざっぱではございますが,以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。すみません,ちょっと道が混んでおりましたので,遅刻をいたしまして申し訳ございませんでした。
 今,熊倉部会長による御説明がございました。15分ぐらいお時間をとらせていただきたいと思いますが,15時30分頃には下村大臣がおいでいただけるということでございますので,それまでの間,貴重なお時間でございますので,先生方から,部会長からのお話の補足,あるいはそれ以外の御意見でも結構でございますが,いかがでしょうか。忌たんのないお話を頂戴いたしたいと思います。

【加藤委員】  ありがとうございます。幾つか補足というほどでもないんですけれども,申し上げたい点がございます。
 1つは,この中にも幾つか触れられましたけれども,国際的な拠点づくり等の,既にある意味で拠点があるにもかかわらず,それが十分活用されていないのではないかという点について申し上げるんですが,せっかく国が幾つかの文化施設を造っておられて,美術の分野とか,舞台芸術の分野においても様々な拠点を作っておられるんですが,それぞれが先ほどからアーカイブの話を含めて議論されているところですけれども,国際的な水準から見た場合に,せっかく国が造っているにもかかわらず,その機能が国際的レベルに達していないのではないかという点を,あるものをもっともっと生かせば,予算運営その他は多少プラスして掛かるかもしれませんが,相当効果を発揮できるのではないか。つまり,ハード面その他はあるにもかかわらず,そこに専門的なスタッフが少ない,あるいは事業予算が少ない。この点については,青柳文化庁長官が長官になられる前に,何度も唱えておられた点ですが,国の,例えば美術館経営のアーカイブ機能や,創造的な機能みたいなものについても当然でしょうし,また舞台芸術,私が特に強調してきた点は,沖縄ですが,国立劇場おきなわで実際に沖縄の舞台芸術を見ることはほとんどできない。ほとんどできないというのは言い過ぎなんですけど,毎日何かやっていただいていれば見ることができるんだけれども,ほとんど開催されることはないという,非常に活用頻度が少ないわけです。そうした面で,抜本的に創造機能を付与していけば,これらのものが国際的な拠点づくりとして非常に機能していくのに大変もったいないという点が1つございます。
 それから,NPOへの支援というのが大変重要だと思っておりまして,というのは,最終的な我々の目標は何だろうかと考えると,国民全てが創造的になることが我々の最終目標なのではないのかなと。そうした観点からいうと,市民自らが芸術文化の振興,さらには社会的課題の解決とともに連携して振興している,こういう点を進めておられる。これがまた,NPOが非常にリーダーシップを発揮しておられる点だと思うんですけれども,そうした点にもっと着目して,支援する仕組みが要るのではないか。そういう観点からいうと,昨今,与党の内部で認定NPOの税制の優遇等に抜本的な見直しをしようという意見があるように報じられていますが,これはどうも時代に逆行するのではないのか,むしろせっかく作られた制度を生かして,更に支援する仕組みを進められたらいいのではないかな。
 3点目は,アーツカウンシルの部分について,再度申し上げておきたいんですけれども,これについては,いろいろな検討をこれまでもなされているようではありますが,是非速やかに本格的な実施をされるべきではないかなと。このことがされていないことが,もしかすると日本の文化政策そのものの進行を数年遅らせているんじゃないかとさえ言えるのではないか。そういう意味で,本格的実施に踏み切られるべきではないか。是非御検討されればいいなと思います。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。特に3番目のアーツカウンシルにおいては,先生はたしか,東京都でもアーツカウンシルのことでいろいろと振興なさっておられますよね。それとリンクみたいなことなどはお考えになっておりますでしょうか。

【加藤委員】  それぞれに当然役割が違うので,完全なリンクがどこまでできるかはともあれ,しかし東京都で進めている今の手法は,なかなか見るべき点があるだろうと思うので,そうした点を是非参考にして,国の方がもちろん進んでいる点もあるんですけれども,概していうと,東京都の方が,今アーツカウンシルについてはシステムがうまく機能しつつあるかなと。さらに,今後の展開ですが,東京都の場合でいうと,現在ある文化発信プロジェクトというものと,アーツカウンシルを一体化させて,更に強化をしていくという方針が出ていまして,順調にいけば,来年度からそういう方向になるのではないかと期待しております。それは,国と連携していくということが非常に役立つのではないかと思います。

【宮田会長】  ありがとうございます。できれば2つの道ではなくて,最後には1本の道になるようにと願っております。ありがとうございました。
 ほかに先生方,いかがでしょうか。
 太下先生,どうぞ。

【太下委員】  先ほど熊倉部会長から1枚紙で御説明いただきました。大変よくまとめていただいているかと思います。やはりレガシーということは非常に大事かと思っておりまして,これは部会でも申し上げたことですけれども,1960年の東京オリンピックの開催を通じて,デザイナーという職業が広く社会から認知されて,職業としてきちんと確立する契機になったということを考え合わせますと,この2020へ向けては,アートに関わること,今,仮に名前が付いていないとしても,それが新しい職業としてきちんと生計が立てられるようになるのが非常に大きな目標になるのではないかなと思います。その上では,ここに熊倉部会長が整理していただいた2つの点,アーカイブと人材というのは,非常に大きな柱になると思います。
 私なりに補足をさせていただきますと,まずアーカイブについては,更にアナログとデジタルという2つの大きな側面に分かれると思います。アナログに関しましては,以前から美術館,博物館でもアーカイブの機能は持っていたわけですけれども,従来まだ不足している分野として考えられますのは,例えばデザインの分野のような新しい切り口,それから,漫画,アニメのようなサブカルチャーに位置付けられるもの,また漫画の原画なんていうものは,非常に保管も難しい,そしてあやふやに保管されているものですけれども,海外のコレクターなんかは,今,収集しているとも言われていますし,下手をすると,江戸時期,江戸の末期,浮世絵が海外に流出したのと同じことが現象として起こってしまう。第2の浮世絵になるんじゃないかと私は危惧しています。さらには,建築関係の資料とかいったものを海外の大学等が日本の建築家,又は建築部署の資料を丸ごとアーカイブしようとしているというお話もよくお聞きしますので,こういった分野に対する目配りも,アナログ分野では必要かと思いますし,更に重要なのが,デジタル分野のアーカイブかと思います。御案内のとおり,EUではユーロピアーナという,フランスが中心となった大きなデジタルアーカイブの動きがありますし,これは御案内のとおり,アメリカのグーグルという1企業が,世界中の情報を一元化しようという動きを示していますので,これに対する対抗措置なわけですけれども,こういった大きな動きがある中で,是非日本も日本独自の文化というものをきちんとアーカイブして,世界に発信していくことが必要かと思います。
 これはアーカイブに関してですけれども,もう1点の人材に関しましては,これも2つの側面があるかと思っております。1つは,今いる人,それからもう1つは,これからの人材ということです。今いる人,アート関係者に関しましては,先ほどお話も出ましたアーツカウンシルを通じて,より大きな資金がアートのフィールドに流れていくことが必要ではないかと思っております。そのためには,文化庁さんが今試行されております日本版アーツカウンシルを是非本格化していただきたいと思うと同時に,全国で,アーツカウンシル東京のような地域版のアーツカウンシルがやはりないと,文化庁さんが一元的に全国のいろんな文化団体を見ていくのかというと,これは現実問題として不可能だと思いますので,是非地域版のアーツカウンシルを育成していく方向の施策も必要かと思っております。これが現在いる人のことですけれども,もう一方,これからの人材ということで考えますと,子供たちに対する文化の接点作りは非常に重要かなと思っております。文化庁さんの方では,既に「次代を担う子供の文化芸術体験事業」ということで,全国の小中学校にプロフェッショナルを派遣するという事業をされておられますけど,是非こういったものをより充実させて,より大きくしていくことが必要ではないかと考えております。
 簡単ではございますが,以上です。最後補足ですけれども,現状,審議経過報告ということでまとめていただいております。これに関しては,これがゆくゆく第4次基本方針になっていくということだと思いますけれども,前回の第3次基本方針の際には,私は委員ではなかったので聞き及んでいる範囲ですけれども,かなり早い段階でワーキング等が立ち上がって,具体の文章作り等に委員も参加していったとお聞きしております。是非今回もそういう形で委員の意見がよりダイレクトに反映されるような形で進めていただければと思っております。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。3点頂きました。アーカイブの中で,今大きく大学が動こうとしているのは,関西では京都精華大学ですね。それから,関東では明治大学がマンガ図書館ということで,いろいろ大きな動きを作っておりますけれども,今まで日本人の作るアーカイブというのは,お蔵に入れるという感覚でしかないので,いかにそれが生きたアーカイブにするかという,集積と同時に発信との関係がバランスよくできるということがすごく大事かもしれませんね。また,その辺のことでは,いろいろと御指導いただけたらと思います。ありがとうございました。
 さて,他いかがでしょうか。あと,4分ぐらいで大臣が到着される予定です。

なるべく全員の先生方から御意見を頂戴したいと思いますので,短く,しかし非常に中身の濃いものを頂戴したいと思っておりますが,いかがでしょうか。

 ただ今,大臣が到着されました。

(大臣入室)

【宮田会長】  今,議論がちょうど盛り上がっているところです。

【下村大臣】  そうですか。すいません。中断させてしまいました。

【宮田会長】  いえ,大丈夫です。ありがとうございます。
 早速でございますが,大変お忙しい中,大臣が到着なさいました。よろしゅうございますでしょうか。

【下村大臣】  はい。

【宮田会長】  それでは,少しお時間を頂戴いたしまして,大臣から文化行政について,お言葉を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。

【下村大臣】  文部科学大臣の下村博文でございます。皆様方には,文化審議会での審議に御尽力いただき,心より感謝を申し上げさせていただきたいと思います。
 前回の総会には,文化芸術の振興に関する基本的な方針の策定について,私の方から諮問させていただき,審議をお願いいたしました。その後,この文化審議会の下の文化政策部会で,2020年,そして,それ以降を見据えた文化政策の方向性についての精力的な御審議を頂いていると伺っております。本日はこれまでの審議の中間報告として,審議経過報告を頂き,この報告を基に総会としても更に深い御議論をいただければと思います。私も,本日配られております審議経過報告を拝見いたしましたが,各省庁の縦割りではなくて,産業や,観光,福祉とも連携しつつ,省庁横断的な戦略で文化政策を進めていくという方向性,また,日本の文化芸術のブランドで世界に市場を創造していくという方向,更に文化力で様々な社会課題,例えば地域振興,震災復興などの課題にも応えていくという方向性,これらの点は,いずれも重要な点であると再認識いたしました。
 きのう安倍総理が,富岡製糸場を,青柳長官も御一緒されておられましたが,視察をされました。私も,決定した2日後に富岡製糸場,これは次長と一緒に視察をしてまいりましたが,改めて文化庁の役割というのは,このような文化財保護的な視点からフォローアップするだけでなく,世界遺産をどう活用しながら保存するということだけでなく,これをきっかけに,国内外からいかに観光客や,あるいは,地域の地方の活性化に資するような形での文化のクリエイティブな在り方,これは文化庁そのものの意義も大きく変更しなければならないほどの重要なテーマでありますが,文化庁,そして我が国が,これから文化芸術を重要視するという視点から,大変大きな文化庁の新たな価値を創造する時代に来ているのではないか,また,そういう使命があるのではないかということを改めて感じました。
 また,2020年には,オリンピック・パラリンピックが東京で開催されますが,これはいろんなところで私自身申し上げておりますが,スポーツだけの祭典ではなくて,文化芸術そのものによって,そして,東京一極集中させるイベントではなくて,日本全体に活気がみなぎるという位置付けにする必要があるのではないかと考えております。東京大会の前のリオ大会は2016年に開催されますが,そのリオ大会の直後,熱が冷めないうちに――2016年の夏に,リオのオリンピック・パラリンピック大会が開かれますが,その年の秋には,日本で,スポーツ文化ダボス会議を開催する予定で,関係者と既に準備をしております。そのときには,スポーツの関係者,アスリートやスポーツビジネス関係者,約1,000名,また,アーティスト,それから,文化芸術関係,世界トップレベルの方々約1,000名,合わせて2,000名ぐらいの方々が,世界中から日本に来ていただけるようなプログラムを作ることによって,2020年,文化芸術としても我が国が花開く,そういう様々な仕掛け,文化プログラムの実施の機運を盛り上げていければと考えております。しかし,2020年が単なるターゲットイヤーではありません。是非2020年以降,2030年頃までを見据えて,しっかりと真の文化芸術立国の実現を日本がどう図っていくか,また,世界の文化交流のハブをどのように作っていくか,それを目指していく必要が我が国はあるのではないかと思います。
 文化審議会は,こうした高まいな目標に向けた方向性をかじ取りする重要な審議会であります。どうかこれまでの発想の枠を超えて,大胆でダイナミックな方向性を打ち出していただければと思います。今後,年明けに文化芸術の振興に関する基本的な方針についての答申を頂くことを目標に,様々な関係者からのヒアリング等も行い,更に幅広い視野から審議を進めていただければと思います。本日も,自由かっ達な御議論をしていただきますように心よりお願い申し上げまして,私の冒頭挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

【宮田会長】  ありがとうございます。大変力強いお言葉を頂戴いたしました。
 本日も大変すばらしいお話を頂戴いたしました。できれば,フランスの文化政策の中でアンドレ・マルローが作ったような非常に歴史に残る環境づくり,全てが文化芸術から経済全て,観光も含めて行われているというようなことを,2020年を1つの契機として,新しい日本のアンドレ・マルローを作っていただけたらと思います。ダボス会議のお話も大変興味深いですね。

【下村大臣】  はい。

【宮田会長】  これは是非具体になったところでお話を積み上げていけるようになってくれたらと思っております。
 部会長,御苦労さまでした。部会長からもこのときとばかりにお話しすることがありましたら言ってください。

【熊倉委員】  ありがとうございます。
 文化政策部会は議論が大変盛り上がっておりまして,重たい宿題を内田さんから頂いたんですけれども,皆さん大変熱心に準備いただきまして,まだ方向性が絞り込み切れておりませんので,今回資料としてそのまま付けさせていただきました。まとめとともにアイデア満載ですので,是非ごらんいただければと思います。
 ここには記載しませんでしたが,まさにおっしゃるとおりでございまして,前回の東京オリンピックが,様々な意味でのハード面での日本の高度経済成長の発端となったことは知れ渡っているところですけれども,実は先ほども太下委員からあったように,デザイナーという言葉が職業として定着する契機になったオリンピックであったようです。次のオリンピックは,まさに日本の文化政策の大きな契機だと思いますので,部会の中からは,日本版アーツカウンシルをもっと整備して,霞が関に1個あるだけではなくて,全国地域ごとに配備するぐらいの必要があるのではないかと。それはもしかしたら,アンドレ・マルローの文化の家構想に通じるかもしれません。そしてもう1つ,是非この2020年の機に,文化予算2倍,3倍ももちろんなのですが,文化庁が文化省になってくれればという意見も意見シートの中に幾つか散見されますので,そのぐらい議論が盛り上がっているということで,よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 大臣,よろしゅうございますか。

【下村大臣】  はい。

【宮田会長】  今,しかと受け止めたということであります。

【下村大臣】  いいですか。すいません,では,申し訳ございません。他の用務が重なっておりますので,これで失礼いたします。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  貴重なお時間を頂戴いたしまして,ありがとうございました。

【下村大臣】  ありがとうございました。

(大臣退室)

【宮田会長】  ありがとうございました。熊倉先生もありがとうございました。
 これからというわけではないんですが,今の大臣のお話などもお聞きして,より力強い発信を私どもの中から,机上からの配布ではなくて,本当に汗をかくという感覚で動いていきたいと私も覚悟しておりますので,いかがでしょうか,先生方。
 それでは,私の方から勝手に御指名させていただいてよろしゅうございますでしょうか。
 仲道先生,どうですか。

【仲道委員】  ありがとうございます。
 この政策部会の経過報告のこれらのことが,全ていい形で実現していったときには,日本はユートピアになると私は思うんですけれども,改めてこういった会議でお話ししていますと,何か私たちは形を作っていかなければならないと考えていくんですけれども,文化,目に見えないことを私たちはしているわけで,目に見えないということは,最終的に目に見える何かにするということを目的にする,形にするということではなくて,これらのことを実現していくための何らかのプロセス,いろんな立場の人がいろんな立場でもって実現していくために行っていく行為そのものが,多分私たちが今必要とするつながりであったり,広がりを生んでいって,その暁に,何か大きな手応えを得ることができる。だから,国際芸術祭を開いたという事実が大事なことになるのではなくて,それに至るまでの,様々な起こり得ることをきめ細やかに丁寧にすくい上げて,策を講じていっていただくことが,多分この議論で皆様とお話ししていることを一番生かせる形につながるのではないかと。形を作るのではなくて,人を生かしていくと考えていただけたらと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。人を生かすですね。もちろん,両者必要になってくると思います。ハードの面も当然必要なんですが,そして,それを運用できる人間ということでございます。ありがとうございました。
 湯浅先生,いかがですか。

【湯浅委員】  部会で先ほど,熊倉部長からの御報告があって,非常に熱いいろいろな多くの委員の方からたくさんの意見が出されたものを非常に分かりやすくまとめていただいていて,この次のステップは,よりフォーカスを作っていって,クリアな政策といいますか,方向性を出していくことかと思うんですが,お話をしている中で1つ感じますのは,前回に報告が出たときから環境が非常に大きく変化している中で,より今まで以上に,先ほどもおっしゃいましたけれども,他の省庁との連携の必要性,また,文化芸術を通して市場を作っていく必要性とか,あともう1つ御紹介したいのが,まとめていただいた資料の6ページの中で,社会課題自体が非常に今変化をしてきていて,部会の中にも,よく少子高齢化についての言及も多くの委員の方からなされていたかと思います。今までの文化芸術の活動の中で,子供たちの創造性育成ということで大きなプロジェクトもなされておりますけれども,これから世界をリードする超高齢社会に向かっていく日本の中で,文化芸術としてどういう役割を果たせるのかということについて,これから考えていく必要性がより高まっているかと思います。
 その中で,人をつくる,先ほど熊倉部会長からまとめていただいた中で2つありますけれども,特に人材が2020年に向けて大事だと思います。これから6年後の2020年,そして,そこから先を考えたときに,そこを支える人材を今どのように投資をしてつくっていくかということが大事だと思うんですが,そこで,文化芸術の担い手をきちんと配置していくべきだということも書かれておりますけれども,環境が変わっている中で,文化芸術に携わる人材や,必要とされているスキル自体も変化していると思います。外国でも,21世紀型の文化芸術に携わる人に必要なスキルというものは,文化プロジェクトの政策ができるだけではなくて,他の省庁の人たちを説得でき,文化芸術に関わらない人たちにも文化芸術の意義を伝えるとか,非常に大きな議論が必要だと言われていますので,今これからの人材に対して必要な技能は何なのか,それを通してどういう投資,育成をしていくのかということも,この後の部会の中で一緒に判断していきたいと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 髙橋先生,いかがですか。

【髙橋委員】  審議経過報告の中で,特に地域を元気にするあたりを興味深く読ませていただいております。各省庁間の連携も関連してくるかと思うんですが,ここに挙げられている幾つかの項目は,それぞれ大変有り難い項目で,施策としてやっていただければ有り難いと思います。ただ,施策を考えていく上で,それぞれ個別に切り分けていく,施策として個別になっていくと,全体として地域を元気にするという大きな目標を実現することが大事なんだけれども,実際にそれが地元,地域にしてみれば,1つ1つの事柄を分けられた課題として見えてくる。すごく混乱するといいますか,戸惑う側面が出てくるようにも思います。例えば,具体的な例を挙げても仕方がないのですけれども,文化財の活用等と,伝統的な生活文化への支援というのは,意外と密接不可分なところがあるので,全体の統一性というのか,統合性というのか,そういう中でそれぞれの位置付けを考えておく。施策の統一性,統合性というのでしょうか,そういう配慮をいただければ非常に有り難いと思っています。
 それから,日本遺産という施策に非常に興味を持っていまして,これはもっと詳しい御説明をお伺いしたいと思っています。これも世界遺産という制度があって,そして文化財保護法という制度があって,この日本遺産というのがどこに収まるのかという位置付けですね。個人的に言えば,これが例えば国宝と世界遺産の間に来るようなものではなくて,むしろ一番裾の未指定文化財の幾つかのセット,あるいは,指定文化財と未指定文化財のセットを日本遺産というような形で,とりわけ地域に根差して,地域の人たちが自らこういうものを認定するような仕組みだと,すごく地域づくりには有り難い施策かなと思いました。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。施策の総合性,統合性というんですか,これがとても大事なことではないかと思います。ありがとうございました。

【石上委員】  よろしいですか。

【宮田会長】  はい,石上先生,どうぞ。

【石上委員】  ちょっと目を通しただけではとても追い切れない豊かな内容です。それについてのクレームではなく,細かいことであります。
 まず一つは,片仮名での概念の提示です。多分,今日の資料は,概算要求にも関わるのだと思います。片仮名表記の場合に,「プログラム」とか日本語になっているものはよろしいですが,「アーティスト・イン・レジデンス」とか,「アウトリーチ」,「ファシリテーター」,これらは語釈を付けていただきたい。新聞では語釈が付くような概念ではないかと思います。キャッチフレーズとしてとか,外国における先進的な文化政策とのリンクを張るためにこういう言葉を使うのは反対ではなくて賛成ですが,それらが学界でも社会でも,省庁の間でも共通の概念になるようにするためには,語釈を是非お願いしたいと思います。
 それから,「アーカイブ」が一つのキーワードになっています。私は日本史ですが,アーカイブという言葉が使われるのは賛成です。私は英語の専門家ではありませんが,歴史学などではアーカイブは単数では表示しないでアーカイブズと言っている,「s」を付けているように思います。アーカイブとして単数形で扱うということでよいならそれでいいですが。もう一つ,アーカイブといった場合に歴史学でイメージするのは,現代も含めた歴史的なものです。現代のオーラルヒストリーもアーカイブです。11ページに,文化関係資料のアーカイブの構築という大変重要なテーマが出されています。しかし,アーカイブがそこだけに限定されてしまうのでしたら残念だと思います。やはりアーカイブというのは,歴史的な過去から現在までにわたるものです。アーカイブを強調するというのでしたら,当面の文化行政的な情報資源だけではなくて,歴史学会で言われているアーカイブ全体の中で,今回はどこに重点を置くのかということをはっきりしていただければよいと思います。
 それからもう一つ。9ページに,海外への発信力強化・支援というのが提案されています。私も大賛成です。観光客よりも,日本での国際学会の方が大きな役割があるというようなこともあります。国際交流基金や日本学術振興会などに働き掛けていただいて,2020年の数年前から国際的な日本文化,日本芸術,日本学に関わる国際会議を連続的に行っていただくことが必要だと思います。それらが,2020年を契機とした日本文化の世界発信の場になるのではないか。歴史学で言えば,アメリカのアジア研究協会(AAS)とか,ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)とかフランス日本研究協会(SFEJ)とかと連携して,是非日本に集まっていただいて,日本学とは何かというような国際学会を行う。そういうようなことを,国際交流基金や日本学術振興会などに働き掛けて実現していただければ有り難いと思います。以上です。

【宮田会長】  最後の国際会議というのは大変面白いですね。私も実は,ちょっと余談ですが,新国立劇場の評議員で,そのお話をさせてもらいました。せっかくあれだけいい劇場でいいことをやっているんですが,日本人しか来ない。外国人がどういうカウントで来るのかといったときに,国際会議の中にセットで日本の文化,それから芸能も含めたものを入れ込んでいって,必ず見てもらう。そうじゃないと,会議だけやって,あとはもうパーティーでそのままおしまい。もったいないですよね。日本を知ってもらうチャンスなので,ああいうところとも組む。しかも,それが文化芸術だけの国際会議ではなくて,化学,医療とかいろんな国際会議があると思うんです。それを軒並み2020の間に入れ込んでいく。そこを施策で入れ込んでもらう。必ずそのときには,どこか夜はすてきな場所に行くのをセットにして,その後は勝手に飲むなら飲めというぐらいの感じの方が,非常に統計的にいろんなものを見てもらえる感じがするんですけれども,どうもそういうところのレイアウトといいますか,お献立が上手でないな,という感じがしていますので,是非ともお願いしたい。石上先生,ありがとうございました。
 道垣内さん,お願いします。

【道垣内委員】  私は法律家ですので,いつもはぎすぎすした世界に住んでいまして,ここに来ると心地よくお話を伺うことができます。
 国際的な法律分野を専門としているものですから,国際的な話に関心があります。現在の世界を見ますと,まだまだ多くの国で憎しみ合い,殺し合いをしているわけです。そのような中で,こういう平和な国,2020年まで恐らく平穏無事に生きて行けそうな人たちが住んでいる国はそんなにないわけです。そういう幸せな日本が世界に何か文化面でも貢献できると非常にいいと思います。文化芸術を通じて,大きく言えば国際平和の構築に貢献するということです。これまで恐らく,いろいろな日本文化の世界への発信をしてきたと思うのですけども,英語による発信が多分多くて,フランス語とか,イタリア語とか,若干のヨーロッパ言語はあると思いますけども,もっと人口が多く,しかも,ぎすぎすした人たちに,そういう文化の香りをお届けすることができればいいと思います。そうすると,アラビア語とか,東ヨーロッパの言語とかによる日本文化の紹介が大切だということになります。様々な分野の日本文化をパッケージにして,それらの言語を含む多言語化することを考えてはどうかと思います。また,それぞれの国のキーになる適切な人を見付けて,その人を通じてその国や地域に日本文化の香りを浸透させていくべきだと思います。下手な翻訳では台無しなので,いい翻訳者を見つけ,また育てて,その人をちゃんと待遇して,いい言葉で伝えてもらうことが大切だと思います。きっとその人は刺激を受けて,次のステップに行くと思うんです。自分たちの文化の大切さを認識し,それを更に外に発信するという好循環が生まれればすばらしいと思います。相互理解が余りない世界において,文化芸術は法律とは違い,感性で理解することが可能です。法律の言語ではそうはいかないのですが,文化芸術は世界共通言語になり得るので,日本文化を多言語で世界に発信して,世界平和につながるようなことをしていただければと思います。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。世界平和は芸術文化からということで。多言語化というのは,大変私も興味深いと思います。ありがとうございました。
 それでは,紺野先生,どうぞ。

【紺野委員】  紺野美沙子です。5月の末から7月の初めに掛けて,演劇の公演で日本各地を巡演しておりましたので,文化政策部会に出席できず大変失礼いたしました。
 先ほど海外の方に日本の文化を知っていただきたいという御意見がありましたけれども,それはもちろん大切なことなんですが,私は,今日本に住んでいらっしゃる方,特に若い方たちに,日本の国の文化,自然のすばらしさを幅広く知ってほしいという気持ちがございます。そのためにはどうしたらいいかということなんですけれども,今回演劇の公演で島根県の隠岐の島,隠岐の島町というところに参りました。6月の下旬でして,ちょうど蛍のシーズンでした。島のあちこちで蛍が見られるんですが,偶然私が見ることができたのは,小さな川がございまして,その川べりにゲンジボタルとヘイケボタルが乱舞していて,島全体が森のようなところなんですけれども,森の中には,ヒメボタルという森の中で生息する蛍がたくさんおりまして,森の蛍と川の蛍,それから,ぱっと上を向くと満天の星空が見えたんですね。地上でも,空の上でも,無数の光を見ることができました。日本ってまだまだこんなところが残っているんだなと,とても心を動かされたんですね。そういった体験を,日本の特に子供たちにしてほしいなと思いました。心が動くような体験,そういった体験型のいろいろな文化事業をもっと増やしていただきたいと思います。
 そのためにはどうしたらいいのかというのが議題だと思いますが,太下先生がおっしゃったように,地域にアーツカウンシルみたいなものを設立すればいいのか,そのあたりはこれからだと思うんですけれども,日本中の特に子供たちが自国のよさを知ることができる体験,それは地域ごとの交流かもしれませんけれども,そういったものを2020年に向けて,ますます盛んになるようになったらいいと思います。以前大分県から一村一品運動というものが始まりましたけれども,文化の面でも,地域発の日本遺産のようなものがどんどん活発になるといいと思いますし,そういったことに向けて,何かお手伝いができればと思っております。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。2020の開会式のときに,ちょうど東京の上野のところに不忍池ってありますよね。あそこは日本で初めての博覧会を開いたところで,初めての競馬をやったところで,初めて水上飛行機を飛ばしたところなんですよね。うまく飛んだかどうかは分かりませんけれども,要するに,私は今,「隅田川ルネサンス」ということで「東京ホタル」というのをやっていたんですが,それが大勢入り過ぎちゃってちょっと危険になったので,何か飛ばしたいと思いまして,隅田川ではなくて,池ではヘイケボタルは飛べるんですよ。せせらぎでなくて。ちょうどあと6年ありますので,今から計画すると,100万匹の蛍を不忍池から飛ばすことができる。そうすると,ちょうどオリンピックの開会式のど真ん中あたりで,1分ぐらい真っ暗にするんですね。そして,ふわっと100万匹の揺らぎが。大都会東京に大自然が確実に両方備わっていると。12月31日の「紅白歌合戦」の後に,「ゆく年くる年」のドーンという永平寺の鐘のような変化があったら,僕は面白いんじゃないかなと思って,今からいろんなところを辻説法しようかと思ったんですが,紺野先生,ありがとうございました。きっかけを作っていただきましてね。

【紺野委員】  いえいえ。池のお掃除のお手伝いとか何でもおっしゃってください。

【宮田会長】  もう是非頼みます。カワニナから淡水シジミ,いろいろ放すときれいになるんですよ。是非。

【紺野委員】  シジミもいいですよね。

【宮田会長】  はい。是非。

【紺野委員】  すいません。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。夢を語りましょう。語る夢と,具現化するもの,両方を織り交ぜてお話をしていただいて,もう少しお時間がございますので,そして,それが概算要求に向けて歴史ができたという感じになってもらえたらと思っております。

【都倉委員】  よろしいですか。

【宮田会長】  どうぞ。

【都倉委員】  今,夢ということで突然,それだったらちょっと一言ということで。
 さっきどなたかおっしゃっていましたけど,仲道先生がおっしゃっていたのか,すばらしいリッチな内容の中間報告だと思いますけど,これができたら本当に僕は日本はユートピアになると思いますよね。ただ,これをどうやってやるかというところにいつも帰結するわけですけども,やっぱりお役所というのは――僕は一番末端の本当にグラスルーツをいつも申し上げているので,また繰り返しになるかも分からないですけど,何を皆さんがやっているかということ,情報を吸い上げていただくことが全ての原点だと思うんですよね。例えば和食にしたって,おすしにしたって,アニメにしたって,ゲームにしたって,誰かが計画してわーっと国策でやったわけじゃなくて,自然発生的にやったものが世界的に,今のけん玉だってそうですよね。けん玉という日本の古い文化を,あんなに技術が必要なんだということで,世界中の子供たちがやっているという現象を,我々音楽とか演劇とかの世界は,よくそういうムーブメントがありまして,例を披露すると,世界のジュニアのダンシングカンパニーというのがありまして,これは日本が断トツなんですよ。この間パリで行われた世界大会は,16歳以下は1位,2位,3位,全部日本なんですね。ですから,ダンシングムーブメントといったって,要するにバレエとかモダンバレエをやるわけじゃなくて,これはまた日本独特なんだけども,何々系,何々系という流派がありまして,そして,それぞれ師匠みたいな人がいて,別に正式な,でもこれはすばらしい動きをするという。
 先ほどの御報告にありましたように,世界というか,特に東南アジア,ASEAN諸国は,僕は今若い子のオーディションを実はASEAN諸国でぼつぼつやっているんですけれども,いかに国策的にK-POP,あるいは韓国のポップカルチャーが進出しても,僕の実感として,やはり日本に対するあこがれというのはすばらしいものがあると思うんですね。だから,僕は日本人自身がそれに気が付いていない部分があるのであれば,もっと自信を持って実践していくと。本当に今,日本の若い子たち,あるいはそれぞれの分野の人たちが,何を世界に向かって発信しているかというところを,やっぱり国がアンテナを張って,それを吸い上げる。それで,こういうものの実現に彼らを利用するという発想が僕は絶対必要だと思っています。
 実は,僕は新国立競技場の文化芸術利活用座長をやっているんですけども,これはまさにさっき宮田先生がおっしゃったような,蛍をどういうふうに利用するかを今僕はこれから考えたいと思っていますけども,本当にキーワードは,今,建設部会でいろいろ御苦労されているんですけど,かつて明治時代に上野の森から世界に文化を発したように,やっぱり神宮の森からも,スポーツだけではなくて文化芸術の情報発信拠点にしたい。その一番の中心に新国立競技場をしたいと。これは8万人という規模の世界でも多分例のないような近代的な装備ができる施設になると思うんですね。それで,今我々がやっているのは,是非70メートルの天井で8万人規模の残響音を5秒にしてもらいたいと実は申し込んでいるんです。これが実現すると,今は大体8秒から10秒ぐらいまでになって,普通のコンサートホールというのは,御承知のとおり2秒ぐらいなんですね。武道館ですら4秒ぐらいなんです。ですから70メートルで8万人ですから,これが5秒ぐらいになれば,日本の建築というのは,そういう技術の粋を結集して,それが実現したら,世界中のアーティストのコンサートの拠点になるだろうという僕は気がします。
 今年,総務省の発表で,ライブアリーナのコンサートの入場人員が3,000万人を超えたんですね。これが2013年の報告で。日本並びに世界のアリーナコンサートの需要というのは恐ろしいものがある。その分CDが売れなくなっているという逆の結果もあるんですけど,ライブエンターテインメントというものの興味というか,この間のワールドカップでも参加型のあれというのは顕著だったわけですけども,ですから,ありとあらゆる意味で,やっぱり2020年から日本の文化拠点になることは,僕は間違いないと思うんですけども,グラスルーツ的にそれを是非吸い上げていただきたいと。ちょっと長くなりまして,しゃべらないと言ったのにこんなに長くしゃべってすいませんでした。

【宮田会長】  反動みたいなものですかね。よろしいんじゃないでしょうか。ありがとうございました。先ほど,都倉先生の中でダンスという言葉がありましたけど,この間NHKで「EXILEの500日」というのをやっていて,非常に私は感動しました。パフォーマーのリーダーが500日掛けて,そして最後に辞めて新しい若者をピックアップするというのを見ていて,なるほど新しいまさしく日本の文化だ,創られた新しい文化だなとも感じました。ありがとうございます。
 さて,それではほかにまたどなたかお願いできませんでしょうか。副会長,いかがですか。

【土肥会長代理】  審議経過報告及びそれから熊倉会長の審議経過についての御報告を伺っておりまして,非常に私も感動いたしました。文化遺産のアーカイブ化というのは,非常に重要なコアの1つだろうと思います。こういったことの重要性というのは,先ほど太下委員でしたか,ユーロピアーナの紹介があって,ヨーロッパあたりでもEDLというんでしょうか,電子図書館というものでワンストップポータルサイトを作って,1つのところであらゆるデジタル資源を集中して,時間的そして地域的格差を解消していつでもどこからでもアクセスできるようにするということをやっておるわけであります。実はこれはヨーロッパ2020という,要するに文化的な問題というよりも,むしろEUがこのあたりで1回イノベーションをやりたいという文脈の中で,ユーロピアーナとかEDLとかいったものを入れているわけです。つまり,文化遺産を文化資源といいますか,文化産業の資源にできないかということであります。
 つまり,そのためにどういう制度が必要なのかということで,いろいろ考えておるようでございますけれども,その1つは,やっぱり財源の問題ですね。財源に関しては,PPPというんでしょうか,民間と公的な機関の間のパートナーシップを活用して,限りある財源を克服して,持続的な,サステナブルなシステムを1回でなく継続的に循環させていこうと考えておるようであります。国費による立ち上げも必要なことですが,その後の継続がより大切なことではないでしょうか。利用目的についても,つまり公共目的なものとビジネス目的なものをちゃんと分けてやっておりまして,あたかもヨーロッパ2020に対して日本では東京2020なんでしょうが,時期的には同じようなところで収まるんだろうと思いますけれども,日本でも要するに日本の文化遺産のアーカイブ化というところから,それも重要なんですけれども,更に文化産業,文化資源としてこういうものを活用して,新たな持続的なシステムの循環的な制度を構築することが必要なんじゃないかと思います。
 そのときに,私は非常に立場としては寂しい思いもあるんですけれども,中間報告の11ページの中で,著作権というのはほとんど出てこないんですよね。わずかちょっとだけ出てくるわけですけれども,先ほどのヨーロッパ2020,ヨーロピアーナの中でも,今年の10月28日までに28のEUの加盟国は,それぞれオーファン著作物の権利処理の取引費用を最小化する仕組みのための,国内法の整備をしなさいと言っています。そういうものを受けて,ドイツとかは著作権法を改正したり,あるいは更に絶版著作物の活用を可能にする著作権管理法を改正したりして対応しているようであります。こういうことを仮にやろうとすると,やっぱりどこかで著作権とぶつかってきますので,著作権とぶつかったときに,悪いのは著作権法だと言われないように,文化庁におかれては,是非そういう法的な整備も併せてやっていただきたいと思っております。以上でございます。

【宮田会長】  文化とその法的な裏付けは,著作権も含めてとても大事な話で,結構永遠に係る問題かもしれませんね。その都度,その都度,階段を上がっていっていただけたらと思っております。ありがとうございました。
 ここで青柳長官にも一言いかがでしょうか。突然振って申し訳ないんですが。

【青柳長官】  いえいえ。ようやく1年がたちまして,最初のあたりでは,何が何だかよく分からなかったんですが,文化庁の仕事と,それから文化政策というものがどういうものかということが少し分かり出してきました。御存じのとおり,文化庁は文化財保護委員会の発展形として今現在あるので,どうしても文化財保護に重点があるということはよく言われております。しかし,もうかなり前から,文化財保護という観点だけではなくて,それをどういうふうに活用していこうかということをかなり真剣に考えてきておりました。
 先ほど髙橋先生がおっしゃった,地方にとってつまり文化施策をどう受け止めるかという立場の方から考えたときに,それが1個1個分かれていると非常に分かりにくくなるんじゃないか,もうちょっと総体的な形として発信すべき,あるいは受け止められるような形にすべきじゃないかとおっしゃって,まさにそうでありまして,そのために,もう既に文化庁では,正確な年代は知りませんが四,五年前から歴史文化基本構想を様々な市町村に作っていただきたいとお願い申し上げています。それぞれの地域で,自分たちにとって何が文化的に,あるいは歴史的に重要なのか,そしてその脈略をそれぞれの地域で作っていただいた上で,自分たちにとってどういう文化を強調したいのか,あるいは,どういう文化を更に発展させていきたいのかが市町村ごとに決まっていくのではいかということをお願い,そういうことで統合性というものを考えているのではないかと私は思っています。しかし,まだ私たちの歴史文化基本構想を作っていただきたいという宣伝というか,お願いが少し弱いためか,まだ余りたくさんの市町村が,基本構想を作ってくださっているわけではありません。それなので,これからもなお一層,歴史文化基本構想を作っていただけるようにお願いしていきたい。
 それと同時に,1年間いろいろな地域を見させていただいて,やっぱり現代社会の中でいろいろな潮流があると思うんですが,今現在の時点で,恵まれた,いわば日当たりのいい地域と,決して日当たりがそれほどよくない地域があって,我々がいつも考えておかなくちゃいけないのは,決して日当たりがいいわけではない地域にも,文化的なぬくもりというか,文化に浸ることの楽しみというか,そういうものが行き渡るようなことをしていくのが,やっぱり国レベルでの文化政策の1つの大きな狙い目ではないかと思っております。事実,今現在官邸の方でも,「まち・ひと・しごと」――全部平仮名だそうですが,という名前の本部を作って,様々な新しい重点政策をしていくことがこれから始まるようであります。そういう中で,文化庁も,文化でなければ地域おこしができないというところになるべく貢献していきたいと考えております。
 というのは,先日地域の活性化に大変面白い,すばらしい仕事をやっていらっしゃる藻谷浩介という方がいらっしゃる。この方は,里山資本主義という新しい考え方を唱えて地域おこしをやっていらっしゃる方ですが,その方に,結局地域おこしって一番大切なのは何ですかと聞いたら,そこに住んでいる人たちがどれだけ誇りを持っているか,誇りを持つかということだとおっしゃっていました。それを聞いたときに,やっぱり文化こそが誇りなのではないかということをつくづく思いまして,そういう意味で,これから私どもがやっていく仕事の大きな指針となるのではないかということを感じました。
 それから,先ほど日本遺産のことで御発言がありましたけれども,私どもも指定物件だけではなくて,地域の指定物件や,あるいは地域の人たちが大切と思っているような文化財というものもグルーピングをして,そして,その中で何か物語性を作ったり,歴史性を見出したりして,それを地域の方々が誇りにし,その誇りに我々が魅力を感じてそこへ訪れるといういいサイクルができるようになればと思っております。
 それからもう1点だけあれなんですが,やっぱり文化の迫力というか,エネルギーというのは,古いものよりもはるかに現代美術,あるいは現代音楽,現代文化の方があるわけで,そういう現代の文化の持つエネルギーをなるべく拡大した形で行けば,それが結局は古いものにまでつながるのではないか。例えば今海外でも注目され始めている古田織部の『へうげもの』という漫画がございますけれども,あの中では,いわゆる戦国大名たちが使った工芸品,井戸であるとか,油滴であるとか,そういうものが出てきて,結構若い中学生ぐらいが,漫画に出てくるから油滴などに興味を持ち出しているんですね。そういうことが,恐らく現代と古いものをつなぐ懸け橋になっていくのではないか,そういうことも考えながら,しかしやっぱり現代の美術,文化の持っている力を頼りにしながら,古いところまでスパンが届くような形になっていけばと思っています。そういう意味で,今日も,あるいはこの文化政策部会でも様々に御指摘いただいていることを参考にさせていただきながら,より豊かな文化政策が実行できるようにしていきたいと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございます。1年というものはそうすると早いものでございまして。
 大渕先生,どうぞ。

【大渕委員】  それでは,先ほども会長を含めて非常に夢について語っていただいて,抽象論だけでなくて,具体的な夢を語っていただくと大変説得力があって,そういうのをどんどん盛り上げていただくといいのではないか,こういう審議会としては非常に珍しいわくわくするようなお話が伺えたんじゃないかと思いますが,実際にそういうものを実現していくのが次に重要になってくるんですが,今回最初に出していただいた1枚紙の中では,今までになかった大きな2つとしては,アーカイブと人材があったかと思うんですが,アーカイブにつきましては,先ほども出ておりましたけれども,非常に重要な施策であることは間違いないんですが,どうしても,著作権というのはもともと,ここにおられる方の多くがクリエーターの方だと思うんですが,クリエーターを保護するための法律ですので,著作権法といろいろ調整が必要になってくるという,先ほどどなたかがおっしゃっていたとおり,非常に永遠の課題のような難しい問題になってくるので,やっぱりアーカイブを進めていくためには,アーカイブといってもいろんなパターンがありますので,具体的に詰めていかないと解決しないような難しい問題が,夢を実現するためにはそういうものが必要になってくるんだということであります。
 それから,2点目,人材というのも非常に重要な点だと思うんですが,これは皆さん,教育を担当されている方が多いと思うんですが,人材育成というのは,最も息の長い仕事ですので,2020年までに間に合うためには,すぐにでも始めない限りは,結局,人材育成は間に合わなかったということになってしまいますので,具体的な施策をどんどん早めに取っていただければと思います。
 それから,あともう1点出ておりましたけれども,文化というのは非常に重要なものでありますけれども,狭い意味での文化以外の,例えば産業とか観光とかいろいろありますけど,そういうものと大きく絡んでいますので,全てトータルに考えていかない限りは,なかなか文化も前進が図れないということで,文部科学省が中心になって,他省庁も巻き込んでオールジャパンでどんどん文化政策を進めるためには,ほかの政策も巻き込んでいかないと前進しないと思いますので,そういうトータルな政策を推進していただければと思っております。
 そういうことで,できるだけせっかくの夢だから確実に実現できるように,早め早めに具体的な施策をどんどんできるところから積み上げていくことが重要だと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。具現化するためのということでございますね。
 あと,お二人ばかりいかがでしょうか。西村先生,どうぞ。

【西村委員】  先ほど長官が,歴史文化基本構想のことをおっしゃってくださって,私も本当に非常に重要だと思うんですけども,なかなかそれがうまく浸透しないのは,多分やってもやらなくても何のその先の支援策がないからだと思うんですね。ですから,なるべくこういうマスタープランがあるところに様々な文化支援をやっていくとかいう戦略的なことを考えていただく必要があるのではないかというのが1点です。
 それともう1点は,今回の中にも少し触れられていますけども,やはり先ほどありました日の当たらない地域といいますか,伝統文化のことを考えれば,日本の小さい集落や条件の不利なところは,本当に豊かな伝統文化を持っている。だからそういう意味でいうと,大都市よりもはるかに豊かな行事や様々なものがあるということがありますので,そういうところにもきちんとサポートしてあげたり,光を当ててあげたり,歴史文化基本構想の中で位置付けて,それをサポートするということになると,日本の農村のかなりの部分に光が当たってくるのではないかと思いますので,そういうところの施策も是非進めていただくといいんじゃないかと思います。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。大変重要なことです。
 薦田先生あたり,いかがでしょうか。

【薦田委員】  文化政策ということについて余り考えたことがなかったので,自分の関わっている狭い範囲のことからしかものを申し上げられないかと思いますけれども,私自身は,日本の古典音楽に関わっておりまして,その絶滅危惧種ですとか,日本音楽,邦楽の分野での演奏者の減少という問題と日々直面しております。これは,多分教育の問題とも関わっていて,学校教育の中で,異文化の音楽を日本に導入するという壮大な実験を明治政府がいたしまして,それから百数十年たって現状があるわけですね。学校教育の中で,日本音楽が全く扱われなくなった時期を経て,第二次世界大戦後にまた日本の音楽にも目を向けましょうということをしきりに指導要領なんかでもうたい始めるわけですが,そういう全体の方針と,それから現場で教員を養成するシステムがどうもかみ合っていないのです。これは文化庁ではなくて文科省の話になるかもしれないのですが,指導要領で伝統音楽を大事にしましょうとうたい,非常に懇切丁寧な教師用の参考書なども出てきているのですけれども,先生そのものが,大学でしっかりとした日本音楽についての教育を受けていない,受けるためのシステムが不十分なために,先生御自身の個人的な熱意や,演奏家のボランティア的な努力というもので辛うじて日本の伝統音楽が伝承されている現状があるんですね。
 その問題と,ここで話し合われている文化政策と,どういうふうに関係があるのかしらということをさっきから考えながら拝見していたところでございまして,まだよく理解しておりませんが,またいろいろ教えていただきながら,そういうことにも目配りをしていただけたらと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございます。まさしく,先ほど長官も地域のお話をしましたけれども,地域,地域の中にどういうふうに教育という問題がございますし,その教育の中から子供たち,そして文化芸術が着々と育っていくということがございますので,これは決して別のものではなくて,リンク,非常に深いきずながあるのかなという感じがしております。貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは,青柳長官の後に御就任いたしました馬渕先生,ひとつお願いいたします。

【馬渕委員】  国立美術館をお預かりしております馬渕でございますが,皆さんは非常に夢のある概念としてのすぐれたいろんな御意見をお出しくださって,本当にそれが実現したらどんなにすばらしい文化国家になるんだろうかと思いつつも,一方で,いろいろ実務を預かっている立場として,それをやるには一体どのぐらいお金が要るんだろうかという気持ちでおりまして,もちろん概算要求をしていただいて,今消えかかっている,どんどん消えていく例えばアニメや漫画もできては消滅しつつありますし,デザインも保存するのは非常に大変なものがありますし,建築に関しては,近現代建築資料センターですか,あれができたので,少し拠点ができたと思っておりますが,消えそうなもの,消えかかっているものでは,誰がどこでそれをアーカイブ化していくのかということが非常に重要な問題として認識されていると思います。一方,国立美術館が持っている,お預かりしているたくさんの美術品や資料が,今までいろんな形で少しずつアーカイブ化はされているんですけれども,まだ国際基準に照らして,例えば英語でアクセスしようと思っても出てこないとか,作家とタイトルぐらいは出てくるんですけれども,それ以外の細かい作品がどういう来歴をたどってここにたどり着いたのか,どういう関連資料があるのかというものができていないわけですね。
 それで,皆様方は国や文化庁にこういうことをしてほしいと要求する側なんですが,私の立場としては,今お預かりしているものをどういうふうに皆様に見ていただき,満足していただくかという,非常に違う立場に立ってお話しせざるを得ないんですけれども,そうすると,とにかく私の立場としては,あるものをきっちりデータとして保存し,それを発信することが非常に重要だろうと思うんですね。それで,いろいろお金のないところで何ができるかを考えておりますが,1つは国立新美術館というのが国立美術館の中にありまして,そこは収蔵庫を持たないんですね。その代わりに,やはりここはそういったデータの集積センターになるべきではないかということを,昔からそういうアイデアを出してくださった方もいますし,私もそう考えているので,何とかそこを中心に,少なくとも国立美術館が持っている全ての作品,全ての資料,全ての図書をそこで情報としてデジタル化して,発信できるようにしたいと。それから,今申し上げたように,国際レベルに到達していない部分を早急にやはり少しでも高いレベルで充実させていく。そういうことをやることはできるわけです。やらなければいけないことなのでできるし,ある程度の予算をそれに付ければ,急には完成しませんけど,できていくと思うんですね。
 ただ一方で,そういうデジタル化を進めましょう,芸術関係のアーカイブをきっちりしましょうという動きが,同時にいろいろなところで今生まれつつあって,それがお互いに何を目指しているのかがよく分からないままに,あちこちでふつふつと湧き起こっているのを目の当たりにしまして,私どもはある種危機感を持っているんですね。というのは,誰のために何の目的でどういうふうにデジタル化するのかということが,余りきっちり議論されていないのに必要だという形で出てきていて,もしかすると,ちょっと違う方向で導かれてしまうのではないかという危惧さえ持っております。ですから,国立美術館が,まず自分たちが持っている西洋美術と,それから日本の近現代に限られているわけですが,その美術品をこういう形でデータ化したいということを,とにかくはっきりとお見せしたいと思っていまして,できたら,そのシステムをきっちり作り上げることによって,ほかの市町村の持っているもの,あるいは地方自治体が持っているものを,スタンダードといったらおこがましいかと思うんですけども,ある基準に合わせて作っていっていただければ,少しずつ全国的に統一の形ができ,そして,それが1つのアーカイブとして膨大なものになってくるだろうと考えていまして,そのときにやはり外部の方たちから,こういう情報が欲しいんだ,こういう部分がないんだということを言っていただきたいんですね。
 例えば国立文化財機構のある博物館のデータをクリックすると,やっぱり写真が少ない,ものが見えてこない。そのときに,じゃあ何が不足していそうになっているのか。それは,例えば写真を撮るお金が足りないとか,それから,作品が余りにも膨大であるとか,作品数が,例えば東京国立博物館は10万点も持っているわけで,それを全部デジタル化するのは夢のような時間が必要なわけですね。そういう問題もありますし,やっぱり時代によって取るデータが違うこともありますし,基準を作り上げるのにまだ時間が必要なのかなと思いますので,そのときに,使う人たちがこういうデータが必要であると,いろんなリクエストをしていただくことによって,それができていくのではないかと思っております。内部の人間が勝手にこういうふうに作っただけでは,結局使えないということになってしまうのが大変残念なので,そういう意味で,多少の予算,それから,高い志というものを持って取り組んでいきたいと思いますので,文化関係資料のアーカイブの構築の一部ですけれどもやっていきたいので是非お力を拝借したいということ。それから,ここに書いていただいていること,1つだけ,国立文化施設の機能強化と書いていただいていますが,保存修復という部分が非常に不足しておりますので,是非こちらもよろしくお願いいたします。以上でございます。

【宮田会長】  とてもいいお話をありがとうございました。
 相馬委員、どうぞ。

【相馬委員】  すいません。遅れてまいりまして申し訳ございませんでした。
 前半の熊倉部会長からの報告,そしてほかの委員の皆様からの御意見を全く拝聴しない中で意見を申し上げるのもなかなか難しいのですけれども,今手元にお配りされている概要を改めて拝見して,ここに至るまでの数回の文化政策委員会での議論が,かなり具体的な形で反映されていまして,よくぞまとめてくださったなと御礼を申し上げたいと思います。
 私からは,この概要を改めて強調しておきたいポイントだけをお伝えしたいと思うんですけれども,やはり過去の文化政策部会で非常に大きな議論になったのが,人材育成のところで,人材はどんどん育成されてもいるし,数も増えていると。しかし,若い人たちを中心とするアートの担い手たちの雇用の現場というのは,果たして増えているのだろうかということです。実際にNPOや民間の芸術団体においては,雇用が安定しないですとか,あるいは継続した雇用につながらないという現状が今非常に大きな問題になっておりますので,2020年に向けては,まずその部分をかなり具体的な施策として展開していただけると,より説得力のある文化政策の実現になっていくのかなと思います。
 それから,もう1点,もう既に議論に出たかもしれませんけれども,やはり震災復興に関して文化が果たすべき役割は非常に大きいと。この概要の中にも,被災地での国際芸術祭の開催が具体的に盛り込まれておりまして,これは実際どのような形で実現されるかは分かりませんけれども,是非,関係各位の御協力の下,実現に向けて具体的なアジェンダを示していっていただけると,被災地にとっても大きな励みになると思いますし,また,日本が世界に成熟した文化のモデルとして示し得るカタストロフィーの後の人間の姿を,芸術を通じて世界に発信し得る非常に重要なポイントになるかと思いますので,是非この点に関しても,引き続き審議をしていっていただければと思います。以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。多分,2番目のお話は,大変重要なことだと思っています。ありがとうございます。
 あと,三好先生と鈴木先生が2人残っておるんですが,よろしゅうございますか,先生。鈴木先生。三好先生はラストで。

【鈴木委員】  私からは特に意見というわけじゃありませんので,ちょっと印象めいたことをお話ししたいと思うんですけども,今回の審議経過の中で1つの大きな柱となっているものは,海外への発信力があると思うんですけども,これを聞きまして,ちょっと前ですけども,インターネット上で,世界の各国の人々が日本文化についてどう思うかなんていう記事がありまして,その中に,中国の評論家だと思うんですけど,中国人の方が,中国文化は固体である氷のようだ。安定性はあるが活力を失うと。それに対して日本文化は液体である水のようだ。世界文化の流れに従って,世界の流れを作り出すこともできるという,大変日本にとって有り難いような,素直に受け止めた次第なんですけども,確かに日本の文化は,水の流れのようにいろいろ変化はしてきていますけども,芯となるものは,伝統的なものが常に残っていて,それを中心になって流れとしている,いろいろ発展してきているということが言えるのではないかと思っております。
 私どもは美術工芸史の世界の人間ですので,そういうことから世界への発信ということで考えると,歴史的に見ても,近世以降の話でありますけど,ヨーロッパに対してまき絵とか,伊万里,柿右衛門,磁器類,ああいう色絵磁器が向こうに大量に輸出されて宮殿等に飾られているわけですけども,まき絵ですと,向こうでそれをまねて作ろうとして,漆がないものですからいろんなことをやるわけですけども,ジャパニングという疑似まき絵みたいなことを作ってそれが流行したことがありますし,英語のジャパンに漆とか漆塗りという言葉がありますけど,多分そのことから来ているんだと思います。伊万里,柿右衛門にしても,ヨーロッパの色絵磁器の発展に一役買っていたわけですが,浮世絵版画,さっきもちょっと出ましたが,あるいはその他の日本美術工芸品の影響によりまして,多大な影響を与えたわけですが,その流れの先に19世紀のジャポニズムなんていう一世を風びしたのもありました。まさに世界の流れを作り出した前例となるものではないかと思っていますけども,日本文化というのは,ヨーロッパの人から見るとちょっと異質な感じがするんだと思いますけど,逆にそこに魅了されるといいますか,日本文化の有数の歴史的な特性があるのではないかと思うわけですね。
 先ほど青柳長官から古田織部の話が出ましたけども,ちょっと話がまた横にそれますけども,私も海外で古美術展の経験をたくさんやっております。印象,インパクトを与えるのに一時的なもので,なかなかそれが継続,永続性がないということがありまして,古田織部の『へうげもの』が非常に流行するとか,けん玉が流行しているとか,いろいろ話がありましたけども,古いものをただ見せるだけではなくて,やっぱり新しいものとの,長官がおっしゃるようにコラボレーションといいますか,そういうものの仕組みが大事ではないかなという気がして,具体的に,じゃあ何をどうすればいいかというと,私もなかなか言えないんですけども,是非積極的に推進していただければと思っております。
 それから,1つだけお聞きしたかったんですが,8ページに伝統的な生活文化への支援ということがあって,食文化やお茶等,伝統的な生活文化の保護体系の位置付けというのが出てきて,あるいは,子供たちがそれを体験しようとしているという話がありますけども,ここで言うお茶というのは,和食とか茶道のことを言っているんだと思いますけども,よく分かりませんが,実は平成8年に,近代の文化遺産の保存・活用に関する調査研究協力者会議というのがありまして,その中で,近代以降の生活文化,技術について,いろいろ保護について検討するということが報告書の中にあるんですね。お茶とか,華道とか,茶道とか,香道とかがありますけど,そういうものが生活文化という言葉になじむかどうかというのが1つ印象としてありまして,今申し上げた近代以降の生活文化,技術のカテゴリーとはちょっと異質なものがありますので,生活文化という言葉の概念,定義というものの議論を深めていっていただければいいのかなという気がしたりして,以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。今,生活文化のお話をしましたけど,先ほど私は国際会議,そしてその後に芸術文化,その後勝手に飲めばいいというんじゃなくて,飲むというのとか,食というのも大変日本の文化としては大切なことですので,3段重ねのサンドイッチみたいな感じで行くことも是非大事かと思います。失礼をいたしました。
 三好先生,お願いいたします。

【三好委員】  ありがとうございます。文化政策部会の三好でございます。
 最後で意見,まとめを別にする立場ではないと思いますので,文化政策部会については,先ほど熊倉部会長から御説明いただいたように資料1でまとまっているところですが,ちょっと1点だけ誤解のないように補足をさせていただきたいと思います。
 資料1のところで,講ずべき施策のところで大きなくくりが2つあって,2020年東京大会での文化プログラムに向けてというくくりと,もう1つ,文化芸術立国実現に向けてという2つになっているんですが,この2つは別々のものではないということは是非誤解のないようにしていただきたいと思います。特に2020年東京大会での文化プログラムに向けてというのは,2020年にぽこっと出てくるわけではなくて,当然それは,いろんな文化政策の積み重ねの中で,2020年をどうするかということであります。特にここで2つばかり注意していただきたいのは,1つは東京大会というのは,オリンピックが東京大会であって,文化政策自体は,そこにも書いてあるように,全国で展開される文化プログラムでありますので,是非そこは先ほど来お話がありますように,各地域でのいろんな取組が非常に重要になりますし,例えば地域でのアーツカウンシルというものがもしあれば,それも1つの方法だと思いますが,全国で様々な文化プログラムができるためのまず仕組み作り,先ほどの仲道先生のお話を別にひっくり返すつもりは全くないんですけど,やっぱりやっていくための仕組み作りというのは,2020年にいきなりできるわけではもちろんないので,そこに向けてどうプロセスを組んでいくのか,それをどう全国に展開していくのかということが重要であると思います。
 そのために,次の文化芸術立国実現に向けてというのが,基本計画はこれから作るわけですけれども,具体的に2020年を1つのターゲットとするならば,予算年度でいうと,もう2015年度から始めていかなければいけないということで,文化芸術立国実現に向けてと書いてある項目を,2020年に向けてプログラムを組んでいくことが是非今必要だと思いますし,今日は概算要求に向けての総会だと思いますので,概算要求のところでその形を2020年に向けた6年間のプロセス,プログラムという形で是非示していただける要求を出していただければと思います。
 余り長くなるといけないので1つだけ例を挙げますが,(3)のところにあります世界の文化交流のハブとなるというので,3つ目に海外への発信ということで,文化芸術団体への海外参加への支援がありますけれども,例えばこれから3年,4年掛けて海外でいろんな日本文化を展開していく。各国でそういうことが知られてくると,じゃあ,2020年東京に行ってそれを見にいこうかということにもなりますし,それをまず先駆けて,1つ上のところにある国際的芸術祭を日本の各地で何か所かやってみて,それをきっかけにして2020年につなげていくという戦略的プロセスの中で概算要求をお願いしたいというのがこれに書いた趣旨だと私が勝手に思っている解釈でございますので,是非そういう点を踏んで要求していただければと思います。以上です。

【宮田会長】  しっかりまとめていただきました。ありがとうございました。
 あと一,二分あるんですが,河村次長,異動されますよね。何かここで一言お願いできればと思います。突然で恐縮なんですが。

【河村次長】  すいません。貴重なお時間を私にも分けていただいてありがとうございます。しかも,今日も国会関係の業務がありまして,大変長い間中座をしたままで失礼いたしました。
 文化芸術の振興を考えていくに当たって,文化芸術を創り出す人たち,その主体となる方々の自主性を尊重するというのは最も基本だとずっと存じております。文化芸術振興基本法でもそういう精神だと思います。ただ一方,文化芸術というものが,関係者のコミュニティーだけで閉じられていてはいけないということも,この審議会を通じて,私も再三学ばせていただいたと思っております。特に,東日本大震災がございまして,様々な関連の事象からも文化芸術が持つ力,その潜在力を含めて,実は様々なところで文化芸術が生きるということをまた学んだと思っております。これは大臣からもお話がございましたけれど,文化芸術というのは,やっぱり活用されていくべきだと。活用するというのは,産業と結び付くとか,観光と結び付くとか,又は社会の中で人が生きていく力になるということでございますけれど,それが活用されて,また実は文化芸術の新たな創造にそれが生かされていくというサイクルが回ることだと理解しております。私たち施策を遂行する側がどのようにそれを受け止めるべきかということに置き直して考えてみますと,これもこの審議会の中で会長はじめ様々な方々の御意見で,他分野との連携とか融合,組織論で申し上げれば,文化庁や文部科学省だけではなくて,ほかの省庁,それから様々なNPOの方も含めた多くの民間の皆様や日本中の地方公共団体の方々と一緒に何かをやっていく,その重ねわざであるとか,他分野との連携を進めていくことだと思っております。
 小さなステップではありますけれども,例えば青柳長官就任後,観光庁との連携協定も結びまして,いろんな意味で活用に向けて,文化庁,観光庁とのどういう連携があり得るかということも今いろんなレベルで模索しておりますし,国際交流基金の方々とのお話合いということも,作花審議官の下で行っておりますし,前に審議会で仲道委員からの御指摘ありました地域創造という法人との連携も実は始めております。それをもっと大きな施策レベルにしていくこと,それから,よりまた形の見えるプロジェクト,例えば工芸というような日本の強みのある分野に関して,もっと省庁の枠を超えた,もしかすると発信のプロジェクトということも考えられるかもしれない。そのようなことをより大きく進めていければと思う気持ち半ばですが,すいませんけれど,明日付けで私は生涯学習政策局に替わることになりました。ただし,生涯学習政策局というのは,社会教育などの政策も取り扱っておりますので,いわば参加型の様々な市民の活動を進めていくという点では,文化庁が,これまで皆様方の御指導を得ながら進めてきた施策と連続性がある場だと存じておりますので,どうぞ今後とも先生方からの御指導をお願い申し上げまして,御挨拶ではなく,今回の御審議への文化庁の一員としてのコメントとさせていただきます。ありがとうございます。

【宮田会長】  大変ありがとうございました。いいタイミングでしたね。とてもすばらしい御業績を頂戴いたしました。ありがとうございました。また是非移られてもつながったところで,私どもの積み上げたものをより大きく積み上げていっていただけたらと思っております。
 ちょうどぴったり時間が参りました。3分前でございますが,それから,まだ先生方でちょっと言い残したとかはありますか。よろしいですか。それでは,内田さん,よろしくお願いいたします。

【内田調整官】  本日は様々な貴重な御意見,まことにありがとうございました。
 これから今年度の中盤,後半に向けまして,答申を策定する作業に移ってまいりたいと思っておりますけれども,本日頂いた御意見に関しましても,反映させるように今後進めてまいりたいと思っております。
 今後の日程に関しましては,まだ決まっておりませんので,改めて調整をさせていただきました上,御連絡申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。

【宮田会長】  本当に先生方,貴重な御意見を頂戴いたしましてありがとうございました。
 これをもちまして,文化審議会第62回を終わらせていただきたいと思います。先生方,御協力ありがとうございました。

── 了 ──

ページの先頭に移動