第14期文化審議会第3回総会(第63回)議事録

平成27年3月16日

【内田調整官】  お疲れさまでございます。お時間でございますので,始めさせていただきたいと思います。
 最初に,配布資料の確認ですが,1枚目が議事次第,2枚目に名簿でございます。その後,資料1といたしまして,「これまでの審議経緯」,資料2といたしまして「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次)(答申案)のポイント」というカラー刷りの資料,資料3といたしまして「答申の案」,資料4といたしまして各部会・分科会からの報告,資料5といたしまして「平成26年度著作権分科会における審議状況について」の資料をお配りいたしております。このほか,左側に机上資料といたしまして,様々な基礎資料を束ねまして紙ファイルを用意させていただいております。万が一,過不足がございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは,宮田会長,よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ただいまより,今期最後の文化審議会の総会を開催させていただきます。先生方におかれましては,年度末で大変御多忙のところ御出席いただいたことを,深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
 本日は,文化政策部会でこの1年間審議を行いました第4次基本方針の答申案の説明と,意見交換を行います。次に,今期の各部会の分科会その他の審議状況の報告も頂きたいと思います。よろしく御協力のほどお願い申し上げます。
 それでは,まず,第4次基本方針の答申案について,文化政策部会の審議状況と,答申案の内容を,文化政策部会で大変活躍していただきました熊倉部会長から,御説明を頂戴したいと思います。熊倉さん,よろしくお願いします。

【熊倉委員】  御説明申し上げます。
 まず,資料1を御覧くださいませ。昨年3月下旬に,大臣から第4次基本方針について審議を要請する諮問を頂きまして,これまで,文化政策部会で計10回,答申起草ワーキング・グループで4回の審議をいたしました。最終的には来月4月16日の総会・文化政策部会合同の会議で,文化審議会会長から大臣へ答申いただきたく,準備を進めてまいりました。
 続いて,内容ですが,資料2を御覧いただきたいと思います。ここに答申案のポイントを添付してございます。今回の改訂のポイントといたしまして,対象期間はおおむね6年間とし,地方創生,2020年オリンピックの東京大会,諸情勢の変化について触れております。赤文字のところですが,我が国が目指す文化芸術立国の姿をお示ししております。あらゆる人々が様々な場で創作活動へ参加すること,2020年を契機とする文化プログラムの全国展開,被災地からの復興の姿を世界に発信,雇用や産業の大幅創出といった姿を掲げ,成果目標・成果指標として様々な目標を例示しております。これらは閣議決定に盛り込まれるものなので,飽くまで大枠のみを定めたものでありますが,来年度の宿題としては,文化政策部会でこれらの具体的な個別施策ベースの数値設定などが必要になってくるものと考えられます。
 第1では,「社会を挙げての文化芸術振興」として,文化芸術を地方創生の起爆剤にしていくこと,「文化プログラム」の全国展開をすること,2016年のリオ大会後から,オリンピック・ムーブメントを国際的に高めていく取組を実施していくことなどを定めております。
 第2では,「文化芸術振興に関する重点施策」として,もろもろの個別政策を記載しております。本文で,第3次方針と異なる内容のものは下線を付しております。次に資料3,本文の方を少し御覧いただければと思います。12ページ以降の黒い枠組みの部分が,4次方針の要となります。まず12ページに記載しております重点戦略1といたしましては,文化芸術活動への支援として,伝統芸能と西洋芸術をつなぐ工夫,地方公共団体など多様な主体による文化芸術政策の立案,アーティスト・イン・レジデンスの取組,創造都市ネットワークの充実・強化,そして日本版アーツカウンシルの本格導入などが記載されております。13ページの重点戦略2は,人材に関する項目です。子供や若者の二つの創造力と想像力,クリエイティビティーとイマジネーションを豊かにする施策,学校における芸術教育の充実,文化施設など指定管理者制度の留意事項の周知,特に専門スタッフの配置などが記載されております。14ページに参りまして,重点戦略3では,次世代への継承や地域振興などへの活用といたしまして,「日本遺産」認定の仕組みの新たな創設,ユネスコの世界文化遺産や無形文化遺産への登録推進,水中文化遺産の保存・活用についての調査研究などが挙げられております。同じく14ページの重点戦略4では,文化的多様性,相互理解の促進として,各専門分野の芸術家,文化人による海外での講演,次代の文化芸術の創造の基盤となる知的インフラを構築するためのアーカイブのシステム,地域の文化施設や歴史的建造物を生かして,MICEの誘致や開催につなげる取組への支援などが挙げられています。最後に,重点戦略5といたしまして,重点戦略1から4を実行に移すための体制整備について記載をしております。
 第3,17ページ以降は,文化芸術振興基本法の柱立てに応じて総論的に施策を記述しております。例えば18ページには,各国立文化施設間の密接な連携や協力,平成24年に制定された古典の日に関する法律,19ページには日本遺産に関する記述,20ページには,古墳壁画の保存・活用,近現代建築資料館に関する記述,また21ページには,沖縄やアイヌ振興に関する記述,23ページから24ページに渡って,アートマネジメント人材育成や,国語,日本語教育に関する記述,25ページから27ページには,例えば著作権,障害者の芸術活動,土日・放課後における活動,また27ページの下の部分からは,まとまった記述で,劇場,音楽堂等の活性化に関する記述などを記載してございます。
 以上,簡単ですが,これまでの文化政策部会における審議経過及び答申案について,御説明をさせていただきました。

【宮田会長】  熊倉部会長,ありがとうございました。計10回でしたね。大変精力的な議論を積み重ね,第4次基本法案の答申案を,今,御発表いただきました。しばらくお時間を頂戴いたしまして,先生方から忌たんのない御意見を頂戴し,完成されたものにしたいと思っております。いかがでしょうか。
 私も委員として出席させていただいたのですが,本当によく微に入り細に入り,頑張ってくれましたね。皆様ありがとうございました。3次が皆様のお手元にございますが,飽くまで,3次の基本方針をしっかりとベースにしながら,その上に構築していった感があるので,私も大変うれしく拝見をいたしておりました。
 どなたか御意見はありますでしょうか。お願いいたします。

【石上委員】  私は文化財分科会に関わっているので,そのことについて発言させていただきます。19ページから20ページにかけて,文化財等の保存及び活用というところで大変重要な御指摘を頂いています。特にジャパンヘリテージは重要な提起だと思います。実際に奄美諸島の市町村の教育委員会の仲間と活動したりしますと,学芸員,専門職員が大層苦労していることがわかります。芸術のことは別にして,文化財の場合,民俗,考古学,文献資料,それから建造物,自然と様々な分野に及びます。しかし,それらの多様な分野・対象を,単独の町や市の専門職員などでは対応しきれません。そのようなときに,どのようにして,県や県の下で広域を担当している部局などが,それらは縦割りで総務系と教育系は分かれていますが,どのようにして相互に小さな市町村を援助して人材を育成していけるかということは,大きな課題であると思います。芸術に関しては広域でということが特に提起されているのですが,文化財等についても,広域で,かつ市町村の独自性を生かしながら,人材を育成し手当てをしていくかを,御検討いただければと思います。

【宮田会長】  ありがとうございます。その辺に関しても,十分丁寧な対応をせねばいかんなという感じはいたしますね。そのために,広域に当たって専門性の人材が少ないということも言いますよね。

【石上委員】  そうですね。考古学の場合は,例えば圃場(ほじょう)整備とか,道路整備,都市再開発ということで,どうしても事前調査をしなければいけないので,補助金もありますし,人材も多く充てられています。しかし,民俗とか芸能とか自然とか歴史とかいう専門の職員は相対的に少ない。これはやむを得ないことですが,これをどのように県等が指導して発展させていくかということが課題だろうと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。ほかに先生方の中でございますか。

【土肥会長代理】  お尋ねもあるのですが,私もこの日本遺産について非常に関心を持ちました。私の認識が十分ではないのかもしれませんが,従来,世界遺産の経過的なスケールとして,このようなものがあったのかなと思ったのですけれども,ここでは新たに認定の仕組みを創設していくと書いてありまして,要するに,認定の仕組みをまた変えて,行政からの認定というよりも,つまり100名山とか100選とかいう形ではなくて,それぞれの主体の方から申請を受けて,それを独自に判断していくということかなと思って拝見したわけですが,つまり世界遺産であって同時に日本遺産でもあるし,世界遺産ではないけれども,日本遺産ではあるというようなものを,今後認定されていくということだろうと想像しました。重要文化財というものも一方においてあるわけでございますので,こういう重要文化財,それからジャパンヘリテージというのですか,日本遺産,あるいは重点戦略4にある,デジタルアーカイブ化の中にある様々な日本独自のカルチャーをまとめて,一つのワンストップウエブサイトのようなものを設けていただいて,国内外から日本にどのようなものがあるかをアクセスできる,知ることができることは,発信という意味でも重要だと思いますし,それから,北海道から九州まであるわけですが,どこにどのようなものがあるのかを,我々は余り知らないのではないかと思います。そのようなものについて,正確に的確に情報を共有できる,そういう持続的な仕組みを作っていただければと思いました。感想でございますが。

【宮田会長】  ありがとうございます。大変重要なことだと思います。
 ほかにございませんでしょうか。

【髙橋委員】  関連して,質問というか意見を述べさせていただきたいと思います。
 日本遺産は,私も非常に興味を持っておりまして,これからの重要な取組になるだろうと期待しています。ただもう一方で,例えばどの地域からも日本遺産を申し出ることができるかというと,間違っているかもしれませんが,歴史文化構想を持っていないと出せないという,かなりきつい縛りがあるようにも思います。そういう点で,範囲を広げることも希望したいと思っています。
 それから,ここにも認定の仕組みと書かれていて,制度という言葉は全く使われていないのですが,日本遺産という言葉のパワーといいますか,力からすると,これを世界遺産であるとか,あるいは国宝と同じように,しっかり制度的に位置付けることが大事ではないかという気がいたします。世界遺産が世界遺産条約に基づいているように,国宝が文化財保護法に基づいているように,いずれ日本遺産もしかるべき法律の下で,世界遺産と文化財保護法の間でとなるのか,あるいは文化財保護法の改正で新しい文化遺産のジャンルを生み出しつつ法改正が行われるのか分かりませんけれども,しっかりした位置付けがなされることが,その次に書かれているような歴史文化基本構想等との関連も含めて大事ではないかと思います。つまり,言い方を変えますと,2020年までの短期的な政策ではなくてもっと長期的な政策として継続していただけると非常に有り難いと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございました。世界遺産と国宝との間にそのようなものを検討する,日本遺産を検討するという考え方ということで,よろしゅうございますね。ありがとうございました。
 ほかにはございますか。

【岩澤委員】  日本遺産は国会でも名前が,今日取り上げられていたと思いますけれども,日本遺産というもののイメージを,今もお話が出ましたが,もう一つどういうものを想定されているのかなと。もしどなたか御披露していただけるのでしたら,どんなイメージを持っていらっしゃるのかを聞きたいなというのが,1点です。
 それと,私は自分の担当の関係でよく文化庁のホームページを拝見するのですけれども,海外への発信力の強化を是非お願いしたいという点です。これまで,これだけ内容のあるものを今回おまとめいただいているのですが,実際にホームページを拝見すると,もし自分が外国人で日本の文化庁のホームページを見て,果たしてどれだけ理解できるかということと,あるいは訪日外国人が果たして見るようなものになっているだろうかと。政策を我々が理解しようとして見るためには,こういうまとめがいつあったということは非常によく分かるのですが,日本の魅力だとか,特に日本国内の地方の文化ですね,もちろん各県のホームページもありますから,バナーを張ってということでもいいと思うのですが,日本の文化について理解したい,あるいは日本に旅行してどこかで文化的な体験をしたいという方にとって,果たしてどれだけサービスされているかというところを,是非チェックをしていただいて,訪日外国人の役に立つということと,日本の文化への理解促進につながるホームページを,是非構築してほしいなと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございました。特に最近は外国の方が,東京のみならず地方の面白さにひかれて行かれているという話を,よく聞きますね。そのときに,ポータルサイトでもいいですし,Wi-Fiでもいいですし,もちろん今お話があったホームページは当然のことながら,そういうインフォメーションはとても大切なことではないかと思います。ありがとうございました。
 日本遺産に対しての定義みたいなことは,どなたかお話しできますでしょうか。

【髙橋課長】  日本遺産を担当しております記念物課長の髙橋と申します。イメージがまだ分かりにくいというお話でございました。これは,27年度から新しく始める事業でございますので,まだ具体のものがないという意味で,どういうものなのかは分かりにくいところはあろうかと思います。現時点で考えている中身といたしましては,例えば国宝とか重要文化財は,単体で個々の指定をして保護するものでございましたけれども,日本遺産は文化財の価値に着目をして,日本遺産という名称を冠して権威付けるものではなくて,つまり,保護のための規制を掛ける措置ということではなくて,現にある文化財を,しかもパッケージで,単体ということではなくて,その地域にあるいろいろな文化財を一つのストーリーの下に,このストーリーというのは,新しく全く新たに作り上げるものではなくて,その地域に根差した話,伝承とか説話とか何でもいいのですが,その地域の歴史的特徴をよく醸し出しているような話,それを通じてまた日本文化というものが,何となく分かるような,にじみ出ているようなストーリーを作っていただいて,そのストーリーを具現化している文化財で,こういうものがありますと。それは指定,未指定を問わず,その地域にある文化財,そのストーリーに関係するものはパッケージにして打ち出す。新たな規制を掛けるということではなくて,飽くまでそれらの文化財の活用を図っていくという取組でございます。
 こうやって申し上げるとかなり抽象的なので,まだ分からないというお話が出ようかとも思いますが,ここで具体的なものを申し上げるわけにもいかないので,なかなか説明に窮するところではあるのですが,飽くまで,先ほど髙橋先生からも制度でというお話がありましたが,これはあえて制度にせずに,事業として,予算事業としてやろうと。要するに,柔軟な地域の取組,地方創生に生かせるような取組でやっていっていただこうと。しかも地域からの提案を基に認定をしていくということですが,ここで地域から出てきたものの中からそのまま認定するということではなくて,むしろ地域の提案を踏まえて,国と一緒によりいいものを作り上げていく。中から出たものから,提案されたものの中からどれかいいものを選ぶということではなくて,その中に正にクールジャパンの文化財版としてふさわしいものになるよう,国と地方が一緒になってストーリーを作り上げていって,いいものになったものを認定するというイメージでおります。
 もちろん,世界遺産とも全く趣旨が異なるものでございまして,世界遺産は飽くまで保護の方に重点が,保存に重点が置かれておりますけれども,日本遺産はそういうものではなくて,したがって,世界遺産であり日本遺産であってもいいですし,世界遺産だけれども日本遺産にならない,あるいは日本遺産であって世界遺産という,そこは上下関係があるわけではないので,どういう形で地方がそういう文化財を活用していくかということから,いろいろ考えて取り組みをしていただければと思っているところでございます。
 まだ分かりにくいかもしれませんけれども,予算を今国会で審議中ですが,27年度予算事業として始めますので,予算が通ったら可能な限り速やかに日本遺産の認定をしようと思っております。そこで幾つか認定されるものを御覧いただいて,初めて具体的なイメージとしては,なるほどこういうものかということが,より分かるようになっていただけるのかなと思います。現時点で,こういうものですという説明がなかなか難しいものですから,こんな説明になってしまって申し訳ないのですが,現時点で考えているのは,そういうものであります。

【石上委員】  芸術に関してアーツカウンシルというものを,県のレベルでも作るという積極的なお話が前回ありました。今回のジャパンヘリテージにかかわり,県レベルの教育委員会と文化審議会という制度を基にして,そこに新しいヘリテージのカウンシルのようなものを,どのようにして学識経験者や地域の代表を入れて,作り出していくか。また,観光開発などと関わるときに,公平性を保つためのカウンシルのようなものが必要でしょう。国の指導で47都道府県全体にジャパンヘリテージのための新しいカウンシルのようなものを作るという指導も,必要ではないかと思います。そのときに,最初に申し上げたような一人一人の専門職員が積極的に参加し交われるような仕組みを,是非検討していただければと思います。

【髙橋課長】  今回のこの事業については教育委員会だけでやるのではなくて,飽くまで首長部局,観光部局や地域振興部局,あるいは産業振興部局と必ず連携をとってくださいと。その上で,あと民間の業者とかも入れて,もちろん外部有識者の方も入っていただいて,いわば実行委員会を作ってそれが主体になってやってくださいということで,それぞれの自治体にはお願いをしておるところでございます。非常に熱心な自治体さんについては,これを機に,新たに,それこそ今先生がおっしゃったように,専門職員を採用してこれからどんどんやっていきますというところもございますし,そういう動きが徐々に出始めている状況でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。この話題はここまでにさせてください。今後,よりいい日本遺産の構築ということになっていただけたらと思います。
 今ここでもう一つ戻させていただけたら有り難いのですが,第4次の基本方針に重点を置きながら,もう少し時間を頂戴したいと思いますが,いかがでしょうか。

【薦田委員】  伝統芸能の継承及び発展というところで,国立劇場とか国立能楽堂,文楽劇場といったような,劇場間の連携を強めることが書いてあって,これはとてもいいことだと思います。私は伝統芸能,特に伝統音楽に関わっておりまして,今伝承の危ない分野がいっぱいあるのですね。そういうときに,演奏家が幾ら頑張っても,その演奏家だけの力ではどうにもならない。あるいは楽器屋さんも潰れそうだったり,その周辺の関連分野もいろいろ,みんな問題を抱えて悩んでいるのですが,それを解決するためのネットワークというのでしょうか,関連諸分野のネットワークが欠けていることを痛感しております。例えば国立劇場の伝統芸能館がありますが,そういうところで関係者のネットワークの構築とか,例えば海外に向けての音楽文化の発信といったこと,今もホームページはとても充実してきてはいるのですが,更にそれを広げて,日本の伝統音楽のことだったら,そのホームページに行けば一応そこから大枠がつかめる,演奏家情報とか,楽器屋さんとかの情報がつかめる,そういったネットワークのセンターを国で作っていただけたら,非常に伝統芸能の継承のために役に立つのではないかと考えております。

【宮田会長】  ありがとうございます。どちらにしても,日本の文化は,なかなか日本人は海外に対しても日本人同士に対しても,良さを自ら訴えることに対しては非常にシャイなところがございますので,そこは是非ネットワークということで発信,並びに共有ができたらいいかなという御提案かと思いました。ありがとうございました。
 それでは,次のページに移らせてもらいます。今頂いたような修正等も踏まえて,それから今後は国民の意見募集という手続を進めてまいりたいと思っております。今後の修正に関しては,恐縮ですが事務局と私の方で調整していきたいと思いますので,御一任を願えれば有り難いと思いますが,よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)


【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,次に参ります。今期の各部会並びに分科会の審議状況の報告を頂きたいと思います。まず,美術品補償制度部会の審議状況でございます。早川美術学芸課長から御報告,早川様,お願い申し上げます。

【早川課長】  部会所属の委員の先生方は,本日都合によりまして御欠席ですので,美術品補償制度部会における審議状況と今後の課題について,事務局から御説明をさせていただきます。
 資料4の1ページ目を御覧いただきたいと思います。美術品補償制度部会は,展覧会における美術品損害の補償に関する法律に基づきまして,展覧会のために借り受けた美術品の損害を政府が補償する契約を,展覧会の主催者と締結することの適否について,御審議を頂いております。今期の部会におきましては,申請がありました展覧会4件について御審議を頂きまして,いずれも補償契約を締結することが適当である旨の答申を頂きました。具体的な展覧会の名称は1ページの表に記載のとおりでございます。また今期は,補償契約締結の適否のほか,美術品補償制度の在り方に関して御検討を頂きました。展覧会における美術品損害の補償に関する法律は,平成23年6月1日に施行されておりますが,この法律の附則で,法律の施行後3年を目途として,補償契約による政府の補償の範囲について検討を加えまして,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものと規定をされております。このため,制度創設以来の運用実績を踏まえまして,補償契約による政府の補償の範囲を含め,美術品補償制度の在り方について検討を行っていただいたところでございます。今後の課題といたしましては,引き続き,補償契約の締結の適否に関する個別審議を行っていただく予定でございます。また今申し上げました美術品補償制度の在り方につきましては,特に補償契約による政府の補償の範囲に関しまして,なお整理すべき課題があることから,引き続き御検討をお願いし,次期の部会におきまして,その結果を取りまとめていただきたいと考えております。
 簡単ですが,説明は以上でございます。

【宮田会長】  早川さん,ありがとうございました。美術品補償制度部会のお話を頂戴いたしました。
 それでは続いて,世界文化遺産・無形文化遺産部会の審議状況を,西村部会長様からお願いしたいと思います。西村様,お願いいたします。

【西村委員】  それでは,次の2ページを御覧ください。世界文化遺産・無形文化遺産部会は,二つの特別委員会から成り立っております,世界文化遺産の特別委員会と,無形文化遺産特別委員会,無形文化遺産の方は今日御出席の神崎先生に委員長をお願いしております。世界遺産の方は私が委員長をしております。これの上にこの部会が置かれているという形をしています。
 まず,世界文化遺産の特別委員会の審議の状況でございますけれども,「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」と,それからこれはル・コルビュジエの建築作品群の一部として西洋美術館,これはフランスの推薦枠を使うわけですが,この2点を世界文化遺産として記載すべくユネスコに対して推薦することが適切であるかということを,審議を行いました。その結果,これが了承されました。そして,この件に関しましては,特に西洋美術館はフランスの方の手続に回るわけですが,長崎の教会群に関しましては,その後,世界遺産条約の関係省庁連絡会議,閣議了解を経まして,平成27年1月に提出されています。またそれ以外に,その後に日本から提出できるであろう,準備がかなり整っているという地方,それぞれの地域の申出がありました以下の四つ,すなわち「北海道・北東北の縄文遺跡群」「金を中心とする佐渡金山の遺産群」「百舌鳥(もず)・古市古墳群」「宗像・沖の島と関連遺産群」に関して,それぞれ準備状況を御報告いただきまして,ヒアリングを踏まえて,その後更に検討を深めるべき点を整理して,それぞれの自治体に文書で伝達しております。この後,それぞれから推薦書の原案が提出されることになろうかと思います。また平成25年1月に推薦されました「富岡製糸場と絹産業遺産群」につきましては,皆様御承知のとおりだと思いますけれども,平成26年6月25日に世界文化遺産の一覧表に記載されております。そのことが特別委員会でも報告されております。
 また,無形文化遺産特別委員会に関しましては,具体的な「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に,「山・鉾(ほこ)・屋台行事」を記載すべく調査審議を行いました。そして,この後,部会における調査審議を経て,文化審議会として提案候補とすることが了承されています。本件につきましては,この後,無形遺産保護条約の関係省庁連絡会議を経て,平成27年3月末までに提案書がユネスコに提出される予定になっております。なお,これは2年に1回のサイクルで審議がユネスコの方で行われているのですけれども,前回のサイクル,25年から26年にかけるサイクルのときに提案されました「和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術」につきましては,平成26年11月26日に代表一覧表に記載されたことが報告されております。
 また,今後の課題としましては,そこにありますように,今後のそれぞれの条約の実施に関する事項について,引き続き,またそれぞれ推薦すべき案件の審議などを行う予定にしております。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。美術品補償制度部会,並びに世界文化遺産・無形文化遺産の審議の報告がございました。
 では,続きまして,国語分科会の審議状況を岩澤分科会長様からお願いしたいと思います。岩澤様,お願いいたします。

【岩澤委員】  それでは,1枚めくっていただいて,資料4の3ページを御覧ください。今期の国語分科会の審議状況について御報告をいたします。国語分科会では,去年5月23日,今期第1回の分科会を開催しまして,まず国語分野について検討する漢字小委員会,及び日本語教育分野について検討する日本語教育小委員会の二つの小委員会を設けまして,審議を進めてまいりました。漢字小委員会では,「国語分科会で今後取り組むべき課題について(報告)」平成25年2月にまとめたものでございますが,ここで取り上げられた「常用漢字表の手当てについて」のうち,「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成について取り上げ,検討をしております。まだ検討が続いております。来期も引き続き,この「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成を進めてまいります。
 次に,日本語教育小委員会の審議状況について御報告いたします。日本語教育小委員会では,「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と論点の整理について(報告)」,これも平成25年2月でございますが,ここで整理した11項目の論点のうち,現在,「論点7 日本語教育のボランティアについて」「論点8 日本語教育に関する調査研究の体制について」の二つの項目について検討しております。来期も引き続き,この二つの論点について検討を進めて,今年7月を目途に報告を取りまとめたいと考えております。
 また,国語分野を検討する小委員会におきましては,「国語分科会で今後取り組むべき課題について(報告)」の平成25年2月において課題として挙げられたものの中から,順次具体的なテーマに即した検討も並行して行うことにしております。
 国語分科会は以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,著作権分科会の審議状況について,土肥分科会長からお願いします。土肥様,お願いいたします。

【土肥会長代理】  それでは,御報告申し上げます。
 今期の著作権分科会における審議状況でございますけれども,資料4の4ページを御覧ください。ここにございますように,著作権分科会では,平成26年7月に,法制・基本問題小委員会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,それから国際小委員会の三つの小委員会を設置し,検討を進めてまいりました。
 資料5がございますので,次にこの資料5を御覧いただければと思います。まず,法制・基本問題小委員会でございますが,表紙をめくっていただいて,1ページでございますが,今期の法制・基本問題小委員会では,マラケシュ条約についての対応,著作物等のアーカイブ化の促進,教育の情報化の推進等についての検討を行ってまいりました。これら三つの課題の検討状況につきまして,以下,簡単に御報告をいたします。まずマラケシュ条約でございますけれども,この条約は,発行された著作物に関し,視覚障害者等のアクセスを促進することを目的としたものでございますが,本小委員会では,本条約締結のために必要な最低限度の制度整備だけではなく,障害者のための権利制限規定の在り方全般について,所要の検討を行っております。その検討の結果でございますけれども,マラケシュ条約の締結に必要な手当てを講ずることについては,関係者の意見は一致しておるわけでございますが,その他の制度整備につきましては,権利者団体側と障害者団体側の意見に相当程度の隔たりがございます。このことが明らかになっておりますので,結論から申しますと,まずは障害者団体と権利者団体との間で,両者の間で意見集約に向けた取組を進めていただいて,その結果を踏まえて,改めて本小委員会において検討を継続していきたいと考えております。
 それから,資料5の2ページ目でございますけれども,著作物等のアーカイブ化の促進について説明をしております。本小委員会では,アーカイブ化に取り組んでおります施設からのヒアリングを行いました。更に諸外国における著作物等のアーカイブ化に係る制度についての報告を受けました。これらは2ページ,ヒアリングの部分でございますけれども,それから外国制度の御紹介については,3ページ以下8ページまで紹介してございます。これらを踏まえまして,9ページから15ページにかけて説明してございますように,著作物等のアーカイブ化に係る著作権制度上の課題について,著作物等の保存と活用という二つの観点から検討を行っております。検討の結果,現行法下でアーカイブ機関において所蔵資料を保存のために複製することが可能であることについて,一定の整理を行いました。このほか,美術の著作物等の解説・紹介のためのデジタルデータの館内閲覧や,サムネイルのインターネット送信を行うことができるよう,所要の制度,措置を講ずることについての検討が適当である。さらには権利者不明著作物等の利用円滑化の観点から,裁定制度の見直しの検討を行うことが適当である。そのような検討を現在進めております。ここまでについては,15ページまで説明させていただいております。これらの点につきましては,今後,具体的な措置の在り方について検討を行いまして,可能なものから順次具体的な措置を講ずることにしております。つまり,現行法の下で可能なもの,諸政令の改正を伴うもの,法改正を伴うものを,順次進めていくということで,まとめております。
 16ページでございますが,ここに教育の情報化の推進等というところがございますけれども,これについても御説明申し上げます。デジタル・ネットワーク社会の進展に伴い,情報通信技術を活用した様々な教育活動が行われるようになってきております。教育の情報化の推進等に係る著作権制度上の課題について,本小委員会の当面の検討課題の一つとして挙げられております。ただ,本課題につきましては,現在,文化庁による委託調査研究において,ICT活用教育など,情報化に対応した著作物等の利用実態の調査が行われておりまして,今後,本調査研究等を踏まえて検討を行うことが求められておるところでございます。以上が,法制・基本問題小委員会に関する報告でございます。
 17ページを御覧ください。ここに,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の検討報告を上げさせていただいております。この小委員会は今期より新たに設けられた委員会でございまして,クラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元に係る二つの課題について,検討を行ってまいりました。これらの課題の検討状況につきまして,簡単に御報告をいたします。
 まず,一つ目でございますが,クラウドサービス等と著作権に係る課題についての審議の状況でございますが,これについては,本年2月に,クラウドサービス等と著作権に関する報告書として取りまとめております。本日はその概要で御説明をさせていただければと思います。20ページを御覧いただければと思います。20ページ下半分に,ロッカー型クラウドサービスについてという説明を挙げておりますけれども,22ページの下も少し御覧いただければと思いますが,七つほど枠がありまして,メディア変換サービス,個人向け録画視聴サービス,プリントサービス,スナップショット・アーカイブ,論文作成・盗作検証支援サービス,評判分析サービス,法人向けTV番組検索サービス,合わせて八つのサービスがあるわけですが,これに加えてあと二つ,22ページの上の段の下のところにアスタリスクマークが付いておりまして,アクセシビリティサービス及びeラーニングという二つのサービスが挙がっております。実は,本小委員会において,この10のサービスについての検討が求められておりました。アクセシビリティサービスとeラーニングに関しましては,法制・基本問題小委員会において検討することになりましたので,残る八つのサービスについての検討ということになったわけでございます。
 それで,20ページの下を御覧いただければと思いますけれども,まず,ロッカー型クラウドサービスについて御説明申し上げたいと思います。このロッカー型クラウドサービスと言われる私的使用目的での複製に関するクラウドサービスにつきましては,いわゆるプライベートアップロード型という,自分で用意したコンテンツを自分のみがアクセスできる領域に保存する形でクラウドサービスを利用する場合,これは20ページの下のところで言うと,Y軸とX軸である第1象限のところにありますが,タイプ2と記載してございますが,ロッカー型クラウドサービスについては,ロッカーに保存するコンテンツを誰が用意するのかという観点から,配信型とユーザーアップロード型,すなわちクラウド事業者が用意する場合については配信型,それから利用者自身がそのコンテンツを用意する場合はユーザーアップロード型としております。それからY軸の方は,そのコンテンツを誰が利用できるのか,ユーザーだけか,それとも多数の利用者が可能かということで,プライベート型と共有型と分けておりまして,これらの組合せについて,タイプ1,タイプ2,タイプ3,タイプ4としております。
 これから申し上げるのは,タイプ2のプライベート・ユーザーアップロード型についてでございますが,基本的には著作権法30条の私的使用目的の範囲内の複製であり,権利者の許諾が不要であるという意見で一致をいたしました。それから,許諾が必要とされるサービスを円滑に実施するための方策としましては,21ページですけれども,下半分に,「集中管理による契約スキーム」のイメージが見出しとして上がっておりますけれども,この集中管理による契約スキームの案が権利者団体を中心に示されておりまして,その有用性を評価する見解でおおむね一致したところでございます。したがって,タイプ2については30条の問題であるけれども,タイプ1,タイプ3,タイプ4については,ロッカー型クラウドサービスでも契約等で対応すると基本的に考えておりまして,その場合,先ほどの21ページの下のような契約スキームが有効なのではないかということを期待しているわけでございます。それから残りの七つのサービスでございますけれども,22ページの下半分にございますが,この七つの各サービスについては,検討の結果,現時点においては法改正を行うに足りる明確な立法事実は認められない一方で,円滑なライセンシング体制の構築が重要であり,関係者の動向を本小委員会としても今後注視する必要があるという結論に至っているところでございます。
 それから17ページまで戻っていただきたいのですけれども,本小委員会におけるもう一つの検討課題であります,クリエーターへの適切な対価還元に係る問題でございます。本小委員会では,まず私的録音・録画に関する実態調査についての結果報告を受けまして,その後,権利者団体より調査結果の分析,あるいはクリエーターへの適切な対価還元についての意見発表等を受けておるところでございます。本小委員会における議論の中で,クリエーターへの適切な対価還元について様々な論点が現在示されておりまして,本課題の解決に向けて,関係者の御意見を踏まえながら,今後更なる検討が求められているところでございます。
 それから,三つ目の小委員会の国際小委員会の審議経過についても御報告をいたします。これについては24ページを御覧ください。今期の国際小委員会では,上に(1)から(4)までございますように,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方,それから主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点整理,これら四つの課題について検討を行いましたので,以下,簡単に御報告を申し上げます。
 最初の,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方についてでございます。本小委員会においては,タイにおける著作権侵害実態調査の結果報告や政府間協議,集中管理団体育成支援,普及啓発等の政府レベルでの取組の報告,権利者団体等での取組についての報告が行われました。これらを踏まえた今後の取組としては,引き続き,中国,韓国,ASEAN諸国を中心に継続的な支援を通じて侵害対策のための環境整備を進めていくこと,特に集中管理団体や政府当局の能力育成や,普及啓発活動を支援することが重要であるとされております。またWIPOや国内関係省庁,関係団体との連携により,効果的な対策を講ずることも必要であるとされております。
 次に27ページを御覧ください。著作権保護の国際的な対応の在り方でございますけれども,WIPOで行われているいわゆる放送条約に関する議論について,先進国,途上国,双方とも議論に前向きであることから,早期の条約の成立を目指し,我が国としても引き続き積極的に対応していくべきであるとされております。また図書館アーカイブ,教育研究機関等のための権利制限に係る議論については,我が国としてはスリーステップテストを基礎として,国ごとの国内事情を踏まえた対応が可能となるような方向で,適切に議論を進めていくべきであるとしております。
 次に29ページを御覧ください。真ん中あたりでございますけれども,フォークロア問題への対応でございます。フォークロア問題,フォークロアの保護の議論については,文化財保護の取組なども含め,国ごとに柔軟な対応ができるようにすることが適切であるとの従来の方針を,引き続き維持していくことが必要であると指摘されております。
 それから,30ページでございますが,主要な諸外国の著作権法制度に対する課題や論点整理についてでございますけれども,今後の国際的な著作権保護の議論の動向を把握するために,主要諸外国の著作権法及びその制度に対する課題や論点の整理を行っております。詳細につきましては,30ページから32ページにかけて紹介させていただいております。
 資料4に戻っていただいて,4ページの下から二つ目の丸でございますけれども,そこに,著作権分科会では各小委員会における検討のほか,使用料部会におきまして,平成26年度の教科用図書等の掲載補償金等の審議を行っております。
 以上,今期の著作権分科会における審議状況につきまして,説明を申し上げました。なお,開催状況や委員名簿については,資料5の33ページ以下を御参照いただければと思います。今後につきましては,引き続き検討が必要とされた課題を含め,著作権制度に関する諸課題について,来期以降の分科会において順次検討を進めてまいりたいと考えております。私からは以上でございます。

【宮田会長】  土肥分科会長,御苦労さまでございました。大変,著作権に関しては難しい問題が次々と現れてくると思いますが,本当に膨大な処理をしていただきまして,ありがとうございました。今後ともよろしく,どうぞまた御指導を頂きたいと思います。
 それでは,次にお進めさせていただきます。文化財分科会の審議状況,これは石上分科会長代理様からお願いしたいと思います。石上さん,お願いいたします。

【石上委員】  本日は鈴木分科会長が御欠席ですので,私が代わって報告をさせていただきます。
 今期第14期の文化審議会文化財分科会における審議状況について報告いたします。資料4の5ページを御覧ください。文化財分科会では,文化財保護法第153条の規定により,文部科学大臣又は文化庁長官から諮問された案件について,調査審議を行っております。今期は分科会を11回開催し,国宝・重要文化財の指定等について199件,登録文化財の登録等について506件,重要文化財や史跡等の現状変更の許可等について,1,787件の答申を行いました。
 答申を行った文化財のうち代表的な事例を紹介させていただきます。資料4の7ページを御覧ください。建造物関係の国宝・重要文化財については,国宝3件,重要文化財18件の計21件の指定について答申いたしました。このうち,昨年5月の第148回分科会においては,重要文化財であった京都の本願寺御影堂,及び本願寺阿弥陀堂を,国宝に指定するよう答申いたしました。御承知のように,本願寺は西本願寺と通称される浄土真宗本願寺派の本山で,伽藍(がらん)中央に御影堂と阿弥陀堂が当面して並び立っています。宗祖親鸞の木造を安置する御影堂は,寛永13年に建てられた江戸時代の建造物としては,現存最大級の木造建造物で,広大な外陣と壮麗な内陣を有しております。また,阿弥陀堂は宝暦10年に建てられた阿弥陀如来像を安置する堂で,真宗本堂の範型となった仏堂です。いずれも真宗の信仰の象徴として高い価値を有しております。
 次の8ページを御覧ください。史跡名勝天然記念物については,94件の指定について答申いたしました。昨年11月の第153回文化財分科会で答申いたしました,茨城県大子町の袋田の滝及び生瀬滝です。袋田の滝及び生瀬滝は関東地方北部を流れる久慈川の支流,茨城県の北部にある川でありますが,その支流,滝川の渓谷にある滝です。袋田の滝は4段からなり,高さ78.6メートル,幅50.7メートルあります。弘法大師空海が春夏秋冬4度にわたり訪れたとの言い伝えがあり,「四度の滝」の名も持っており,特に冬の凍結した姿がよく知られています。江戸時代には,徳川光圀や斉昭ら,歴代水戸藩主が訪れ,和歌に詠み,近代には,大町桂月,長塚節,徳富蘇峰らが詩歌を残しました。生瀬滝は袋田の滝の200メートル上流にあり,高さ9.9メートル,幅27.4メートルの規模の滝です。傾斜する岩面の多数の白糸を垂らすように水が伝え落ちるたたずまいが,優れた風致を誇っています。袋田の滝及び生瀬滝は,長い歴史の中で多くの芸術作品の題材となってきました。渓流の地形や植生が織りなす風致景観の観賞上の価値,及び学術上の価値は高く重要であることから,名勝として答申いたしました。
 9ページを御覧ください。重要無形文化財について,8件答申いたしました。そのうち,昨年7月の第150回文化財分科会で重要無形文化財保持者の認定を答申した,今泉今右衛門の作風について説明させていただきます。色絵磁器は釉薬(ゆうやく)を掛けて焼いた磁器の表面に特殊な絵の具で文様を描き,焼き付けて装飾する技法です。この技法は,中国の明清時代に発達したものとして知られています。日本における色絵磁器は,近世初期に中国の影響を受けて佐賀県の有田で始まり,以来,各地で独自の発展を遂げました。現代の陶芸においても重要な分野であり,高度の芸術的表現を可能とする技法となっています。今泉今右衛門氏の色絵磁器の特徴は,色鍋島の技法を中心としながら,金属のプラチナを表面に焼き付けるなどの表現を行うことにあります。その作風は,伝統技法の上に独自の作風を確立し,色絵磁器の表現に新生面を開いています。今泉氏は日本伝統工芸展等で受賞を重ね,更に紫綬褒章を受章されるなど高い評価を得ており,後進の指導・育成にも尽力されているところであります。
 文化財につきましては膨大な件数がございますけれども,これらは御承知のように『月刊文化財』に詳細な説明をもって載っておりますので,それらを御覧いただき理解を深めていただければと思います。
 以上,文化財分科会の今期の審議状況につき,要点を報告させていただきました。最後に一言,個人的なことでございますが,この中にあります登録の有形文化財に行田の足袋の道具,職機があるのですが,私,戦後に疎開先の行田で生まれまして,曾祖父は足袋の事業に関わったことがあると聞いております。ですから,桜が咲く頃に忍城を眺めながら行ってきたいと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございます。すばらしい作品群,並びに人の認定でございました。ありがとうございました。
 以上,二つの部会と三つの分科会から,それぞれの審議状況や今後の課題について御報告がございました。
 それでは,これより全てを含めて意見交換をしたいと思います。どの分科会あるいは部会に関してでも,どちらでも結構でございます。御質問あるいは御意見等がございましたら,お時間を頂戴して進めたいと思います。いかがでしょうか。
 私の方から,著作権分科会の土肥先生にお聞きして,最近はサイバー攻撃がいろいろなことがございますね。ああいうあたりは,先生の分科会などではいろいろ議論をなさったのでしょうか。

【土肥会長代理】  いわゆるセキュリティーとかですね。私どもでは,著作物の創作と保護と利用というところがメーンになっていまして,国の安全とか情報セキュリティーというのは,恐らく総務省あたりでおやりになっているのではないかなと思います。ですから,セキュリティーという問題ではなくて,権利を侵害する状態があれば,それを解消して,著作権の実効性をいかに確保するかというところに集中して,議論を進めております。

【宮田会長】  ありがとうございます。
 本日は,それぞれの部会の長がいらっしゃいます。言い足りない部分が皆様あるのではないかと思いますので,熊倉先生あたりから,いかがでしょうか。

【熊倉委員】  部会に関してはもう御報告申し上げたとおりですが,先ほどどなたかからの御指摘もございました,文化庁のホームページについてです。経済産業省のクールジャパン政策に関しましては,民間のこういうアート関係に強い業者さんが,とても素敵なホームページを作っていらっしゃって,海外の方がタブレットやスマートフォンでそういったものを見ながら,かなり通ではないと知らないようなところまで外国人の方々が散策に訪れていらっしゃるような状況ですけれども,文化庁としては難しいのでしょうか。ヘリテージと大型芸術祭とかだけでも,結構魅力があるのではないかと思うのですが。

【宮田会長】  その辺はどなたか。では内田さん,どうぞ。

【内田調整官】  文化庁のホームページに関しましては,確かに以前から,内容が少し抽象的であるとかアクセスしにくいとか,必要な情報になかなかたどり着きにくいという御指摘もございましたので,来年度,予算をある程度確保いたしまして,中身を少し充実したものにできないかということで準備を進めておりますので,来年度以降,御意見を頂きながら中身をより充実したものにリニューアルできるように,進めていきたいと思っております。

【宮田会長】  よろしく,期待しておりましょう。
 あと御発言のない方で,いつも元気な,伊東先生どうぞ。

【伊東委員】  いつも元気ではないのですが,国語分科会日本語教育小委員会の伊東でございます。外国人が日本にどんどんやってくる,そして居住する外国人も増える中で,ボランティアの人たちが,地域で日本語指導という形で外国人と接するという,国際交流の最前線にボランティアの人たちはいると思います。つい言葉を教えるという視点で外国人との関係を考えることが多いのですけれども,国際交流の最前線で地域のボランティアの人や,ビジネスではない,仕事ではない人たち,いわゆる生活を基盤としたところが,一番文化を発信する最もいいところではないかと思います。そういう意味で,日本語教育審議会では,ボランティアにどう今後頑張ってもらうかという議論の中に,もう少し文化の発信とか,易しい日本語でコミュニケーションするというので,何も教えることに視点を置くだけではなくて,我々が外国人といかにコミュニケーションをできるようにするか,我々の日本語をもう少し見直すことによって,易しい日本語で,そして彼らが学んでいる易しい日本語で交流する,草の根と言ってはあれですが,対等な立場での文化交流を推進できればいいかなと思います。したがいまして,文化の発信,言葉の発信,そして最近だと外国人も俳句や落語に非常に興味を持っていて,留学生などもうまく俳句を作ったりというのも結構興味を持ってくれますので,言葉の視点における文化伝授,発信をもっと推進できたらいいかなと思いました。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。そういうことで行くと,やすみさん,川柳としてはいかがでしょうか。

【やすみ委員】  今のお話を伺って,私も,実際に外国からいらっしゃっている旅行者や,定住されている外国人の方などと一緒に,川柳や俳句の句会をしたことが何度もあります。そういった場で,日本語の楽しさとか表現力の豊かさを実際に体験していただくことによって,その向こうにある日本文化のより深い魅力ですとか歴史を一層学んでみたいとおっしゃってくださる方も,たくさんいらっしゃいます。ですから,そういった活動はそれぞれの俳人や川柳作家などが,また短歌の世界の方も個人的にされている方も多いのですけれども,もっとワークショップというような形でチームワークを組んで,そういった短詩系文芸の者たちが何かお手伝いできることがあればいいなと,いつも思っております。よろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございました。言葉の部分で行くと,今度はどうしても音楽の部分になってくると思いますが,薦田先生,何かございますか。突然,すみません。

【薦田委員】  先ほど発言して,もう番が回ってくるとは思っていなかったので,すみません。海外への発信というようなことは,つい,実は3月10日にもそういうシンポジウムをやったばかりだったのですけれども,音楽だけを切り離して発信するというよりは,例えば日本の文学作品の多くの部分が音楽と結び付いておりますし,またネットワークになってしまうのですが,そういう分野間のつながりみたいなもの,あるいは総合的な文化としての発信も大事ではないかと考えております。

【宮田会長】  ありがとうございます。そうですね。日本の言葉は歌で表現できますものね。歌と言葉,なるほど。ありがとうございました。それでは河島先生,いかがですか。

【河島委員】  質問ですけれども,美術品補償制度部会で御報告いただいたことについて,よろしいですか。最後の方で,美術品補償制度の在り方に関して検討を行いというようなことが書いてありまして,そういうお話があったのですが,何か具体的に課題と問題となっているといいますか,そのようなことがあるのかなと思いまして,それを伺えたらと思います。そう申しますのは,知り合いに朝日新聞社で文化事業に関わっている人がいて,その人に簡単な会話の中で,この制度はいいけれどもなかなか使いづらいというようなことを言われたことがありました。そういう声がほかにもあって,この在り方の検討を行っているという文脈なのか,それとも全くそれとは関係ないところなのか,具体的に教えていただけますか。

【早川課長】  御質問をありがとうございます。この美術品補償制度におきましては,美術品に損害が生じた場合に,その損害の合計額が一定額を超える場合に,政府補償の対象といたしております。このため,この一定額以下については,民間保険に入って対応していただいております。その一定額が,現行制度では地震等の原因による損害の場合には1億円,その他の一般的な損害の場合には50億円となっております。つまり50億円以上を超えないと政府補償の対象とはならないようになっております。このように美術品補償制度が適用されるためには,対象美術品の総評価額が50億円を超えるような大きな展覧会になってしまうということがございまして,それ以下の展覧会では,今河島委員がおっしゃったようになかなか対象となりにくい。ですから,この適用の範囲がなかなか広がらないという課題がございます。そういったことも背景にございまして,この法律の附則の中で,補償契約による政府の補償の範囲について検討を加えて,端的に言いますと,この50億円を引き下げるかどうかという議論が,一番大きな課題となっております。そのほか,申請に当たりまして,いろいろな書類を御提出していただいておりますので,もっと書類の簡素化を図ってより適用が容易になるような形に持っていくべきではないかとか,そういった様々な課題を出していただいておりますが,主な課題といたしましては,この法律の附則にございます補償契約による政府の補償の範囲,つまり50億円の引下げということが大きな課題となっている状況でございます。

【宮田会長】  よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 あと三,四人,御出席で御発言がないので,御指名させていただいてよろしいですか。都倉先生,お願いしていいですか。

【都倉委員】  来ると思っておりましたので。土肥先生,著作権の本当に大変なまとめをしていただきまして,本当に分かりやすくてすばらしいと思います。1点だけ,この中の集中管理による著作権の管理ということですけれども,先日,国際会議でパネルディスカッションをやりまして,シザックとシアムというクリエーターの世界団体の代表をはじめとして,クラウド時代の著作権管理というテーマで討議をしたのですが,集中管理システムがいいのか悪いのかという議論は,既に過去のものであるという印象が非常に強く,私もそういう印象を得ました。つまり集中管理ありきでやらないと,クラウド時代の著作権管理はできないのではないかということであります。芸術とそのユーザー,それから消費者ということを見ますと,その三位が共存しないと,このシステムは成り立たないというのが前提なのですね。もちろん事業者は,無数の楽曲あるいはコンテンツを,なるべく安く大量に使いたいというのが目的です。消費者も実はそういうことを一見望んでいるように見えるという議論がありました。それは安いものだったら何でもいい,でもそれは違うのではないかと。消費者は飽くまでも芸術を消費するわけですから,これはnuts and boltsや,ねじやくぎではないわけでありますから,そういうものがいかに安くてもそのクオリティーに対しては対価を支払う。これは産業構造的に言うと見落としやすいのですが,芸術の必ず持っている力だということです。そして我々クリエーターはどういう立場に立つべきかというと,利用者に対して,どんな事業者,どんな産業でもコストというものが必ず付きまとうものであると。このコストというものが,そういうシステム,このデジタルという世界の中でいろいろなシステムを発明していくわけですけれども,そのシステムを考案した事業者はコストを支払わなければいけない。これが著作権であるという。この3者がバランスよく,このクラウド時代に共存していかない限りは,技術発展しないという結論でありました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,道垣内先生,いかがでしょうか。

【道垣内委員】  先ほど追加質問しようかと思った点を伺いたいのですが,美術品の補償制度についてでございます。こういう制度は,民間とのすみ分けということが多分必要なのだろうと思うのですが,今の政府による補償制度には一定の閾値(いきち)があって,そこを超える損害の場合だけを対象としているということでしたが,その金額までの損害に対しては民間の保険会社で保険を提供することができるということでしょうか。改正しなければいけないというお話でしたが,民間の保険が提供できなくなっているということですか。地震のリスクのように,なかなか民間ではリスクをカバーできないのであれば,それらを政府補償契約でカバーする必要はあっても,そうでなく,民間で賄えるリスクであれば,政府補償契約の対象とする必要はないのではないかと思うので,状況を教えていただければ有り難いと思います。

【早川課長】  ありがとうございます。この50億円の引下げというのは,逆に言うと50億円を超える大きな展覧会でないと,なかなかこの制度の適用の対象にならないということがございまして,元々,できる限り全国津々浦々の美術館,博物館で,幅広くこの制度が適用されて,そして国民の皆様にいい美術品の鑑賞機会を拡大していこうという趣旨があったということでございます。この50億円を引き下げることによって,より中小規模の展覧会においてもこの制度が適用されるようにということを,御要望として全国美術館会議等の団体からも頂いておりますし,この部会の中でも,そういう御意見が多数を占めているということでございます。

【道垣内委員】  民間では保険は提供できていないということですか。

【早川課長】  もちろん民間でも適用できておりますので,この50億円を決めるに当たっては,一つの論点として民業圧迫にならないような金額ということで,50億円という額を定めた経緯がありますので,この50億円を下げれば下げるほど,恐らく民間保険会社からすれば民業圧迫という可能性が出てくるかと思いますので,そのあたりも今後ヒアリングもさせていただきながら,どこが一番合理的な金額なのかということについても議論を深めていきたいと考えております。

【道垣内委員】  私は保険会社の言い分を代弁するつもりはないのですけれども,政府の補償契約の金額が民間の保険料率よりはずっと安いというのであれば,それは補償契約の問題はなく補助金のような機能を果たしていることになり,どこかに不合理なところがあるのではないかと思います。保険というものは計算で成り立っているので,同じリスクであれば,民間の保険料でも,政府の補償料でもそんなに違うわけはないと思います。民間でできるところは民間でやり,それでできないところは政府が出ていくということでよいのはないでしょうか。政府にしかカバーできないリスク,すなわち,民間の保険で免責になっているところには政策的配慮からどんどん出ていった方がいいと思うのですが,50億円の引下げというのは,私はぴんときません。

【宮田会長】  青柳長官,どうぞ。

【青柳長官】  私は,ここに来る前,この補償制度を作ってくれと一生懸命お願いした側だったので,少し経緯を知っているので,そこをお話させていただきます。
 この国家補償というのは,美術品の価額がどんどん高騰しておりまして,展覧会の総評価額が数百億円にのぼることもあります。そうすると,日本の保険会社1社では到底引き受けることができないので,しかも大体2回か3回の空輸便で来ますので,飛行機に乗っている美術品も数百億円とかになって,民間保険会社ではなかなか負担できないということで,日本の民間保険会社は引き受けたらそれについてロイズに2次保険を掛けるという形で行っておりました。しかしロイズの方も,いろいろなテロであるとか,あるいは最近の災害等があって,なかなか,おいそれとその2次保険も受けてくれない。ロイズ自身が大変な赤字にもなっておりますし。そういう状況の中で,先進国では国家補償で文化交流を国際的に進めていこうということで,もう1970年頃から,アメリカをはじめ先進国はほとんどこの国家補償を取り入れておりました。それを例として私どもは文化庁や,財務省,当時は大蔵省にお願いをして,国家補償をしてくれということを言っていたのですが,国として国家補償をやるのは,当時は原子力発電所ぐらいしかなくて,2番目に美術品の国家補償などとんでもないという状況でございましたが,いろいろなことがあってやっとこの制度が通りました。今,道垣内先生の御質問の免責部分の50億円のところは,普通であれば,全体として例えば300億円という評価額があったときに,民間だけでやれば1000分の2ぐらいの料率で保険が掛かってくるわけですが,50億円の部分については,民間保険会社としては少額のところに一番いろいろな支障が起こる,事故が起こることがあるというので,なかなか国家補償を制度としてやっているにも関わらず,軽減額はなかなか出てきていなかった状況でございます。しかし,最近,日本の民間保険会社だけではなくて,海外の民間保険会社も出てくるようになり,かなりこの50億円以内の免責部分の料率も,1000分の2に近いものに徐々になりつつあるということで,恐らくこの補償によって民業圧迫をしているわけでもないし,お互いにうまくいきつつある方向にあるのではないかという感じがしております。

【宮田会長】  よろしゅうございますか。

【道垣内委員】  私の発言の趣旨だけもう一度明確にしておきたいと思います。申し上げた趣旨は,民間でできるところについては,そこに別に政府が出ていく必要はないのではないかということと,民間が保険を提供しないところ,例えばテロとか地震とかですが,そのリスクを心配して日本での展覧会開催に消極的になる外国の美術館等があるとすれば,それはよろしくないので,そういうところこそ,政府の補償契約の対象としていくべきあること, したがって,50億という閾値は自然に決まるはずであって,そこを無理やり引き下げるとかいう話ではないのではないかということ,以上です。民間の保険会社が50億以上のリスクは取れませんというのであれば,隙間があくことになるので補償契約の対象となる閾値を引き下げるべきだと思いますが,その点を明確にする必要があるということを申し上げただけでございます。

【宮田会長】  長官は随分この件に関しては頑張っていただいた経緯がございますので,よく存じ上げています。ありがとうございました。
 次に,大渕先生にお話を承りたいと思いますが,いかがでしょうか。

【大渕委員】  私は著作権の関係に属しており,今年度も土肥先生から非常に詳細な御説明をいただきました。皆様少し閉口されるのではないかと思うほど細かい話がたくさんありましたが,元々法律というのはそういう面があるため,やや嫌われがちであります。縁の下の力持ちではありますが,敬遠されがちな面があります。その中でも著作権法は,法律の中で一番細かいとは言わないまでも,割と細かい方なので,皆さんに敬遠されがちです。本日,文化ということで改めて,国語も含め,いろいろな文化に関するものを総合的に出していただきましたが,一つ一つも奥深いのですが,こうして一覧にしてみますと実に幅広く多様であるとの感を強くします。正しく音楽ほか,多くのものが日本の文化,世界の文化を形成し,壮大なネットワークのような体系が出来上がっております。その中に著作権があるわけですが,著作権法という法律の目的は,文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することです。そして,広い意味ではパフォーマーも含めたクリエーター,要するに文化の担い手がいなければ,文化というものは生まれないものであります。その担い手にきちんと財産上,人格上の権利を保障し,しっかりと著作物の創作等に励んでいだくために,図書館等も含めどの分野にも,著作権は必ず関係するという形で,お支えしております。クラウド等で急速に技術も複雑になるにつれ,細かい話で対応せざるを得ませんが,その中で,縁の下の力持ちとして,地味ではありますが,文化を根底から支えるために大いに頑張っておりますので,よろしくお願いします。

【宮田会長】  最後は文化のためということですね。ありがとうございました。
 髙橋先生,いかがでしょうか。

【髙橋委員】  それでは,今年の初めに登録文化財建造物の1万棟突破のシンポジウムに出席させていただいて感じたことの一つは,建造物に限らないと思うのですが,保存・活用というときに,多くはハードの保存・活用ということに,言葉はきついですけれども,偏りがちで,ソフトの方に余り関心が向いていない。別の言い方をしますと,人に例えると,体のケアに非常に丁寧に目配りが行っているけれども,むしろ心や魂だとか,土地の記憶とか歴史の記憶をどう生かしていくかということに,余り関心が向いていないというか,なおざりにされているように思いました。各地で文化財マネジャーという制度といいますか,ボランティアの人たちを養成しているわけですが,それも専ら物としての活用だとか修復だとか,そういう方に偏りがちで,むしろ,これからはそれと並行して土地の記憶,地域の記憶をうまく伝えていけるような,裾野の広がりを作る政策というかシステムが要るのではないかと思いました。

【宮田会長】  ありがとうございます。
 それでは,神崎先生,一言お願い申し上げます。

【神崎委員】  私は世界文化遺産・無形文化遺産部会の中で,無形文化遺産の特別委員会の立場から皆さんにお諮りしたいことがございます。御承知のように,和食以来,日本の無形文化遺産というのは,一つにまとめるという方向になっております。これを私たちは,グルーピング化というのですが,つまり13分野の日本の無形民俗文化財,その分野ごとに指定の古い順に並列して並べてあげれば,何年かすると全部引っ掛かるだろうというような最初の方針がございましたが,ひとえにユネスコの対応といいますか,指示によって,どんどん枠が狭まってきました。そうすると,何年待っても受からないことになります。各分野で,いってみればオールジャパンにまとめなければいけないということで,少々厄介な検討作業がこの何年間か重なっております。厄介といっても,私どもはその会議のときに発言すればよろしいのですが,文化庁の担当の方が相当御苦労なさっております。それぞれの学会や保存団体がありますので,そこでの主張があったりします。例えば神楽というテーマを挙げますと,日本の神楽は歴史を遡ってみても大事な問題を含んでおりますが,巫女(みこ)系であるとか,修験系であるとか,あるいは神話神楽系であるとか,様々ありまして,学会で議論してもなかなかまとまらないところがあります。しかし,これをまとめないと,ユネスコの無形文化遺産には申請さえもできないということで,相応の苦労をしております。
 私は,これは厄介だと思いましたけれども,途中から考え方を変えまして,多分今のところこれが正しいだろうと自分で思っておりますが,日本で一つにまとめる作業は良い機会ではないかと思います。それによって,それぞれの地方で多様な発達をしたということが無視されるのではないのです。より原初に帰って,神楽の例を続いて引きますが,元々神楽とは何だったかというようなところを共通の認識とする。歴史的にそれが様々に枝葉を付けて流派を発生するような形になっているわけですから,それを否定するのではなくて,幹はどうだったか,更に根っこはどうだったか,ということで見直すことは,とても大事だろうと思います。それがなぜ大事かといいますと,次の世代の人に個々の神楽の由来話をするところでは,余りにもなじみがなく,既に隔たりが出てきております。総体としてどういうものなのか,だから最低何と何はそれぞれの地方で大事に伝えよう,という言い方が,次の世代に対して必要なのだろう。ということは,外国の人たちに分かってもらうためにも,同じような整理の方法が必要なのではなかろうかと思います。個々の神楽の説明をそれぞれに細かくしても,その共通理解はなかなか難しい。ということは,日本の神楽はこういうもので,元はこういうところから始まって,これが歴史的にいろいろな要素を相乗してこうなっているという,先ほど出ましたストーリーですね。日本遺産のところでも話されましたそういうストーリーを,分野ごとに出す必要があると思います。
 西村部会長が御報告なさいましたように,無形文化遺産は,和食から和紙に進みまして,それで現在へ「山・鉾(ほこ)・屋台」というもう一つのグルーピング化が進んだところです。これをまだまだ分野ごとにやっていかなければいけないので,これは大変難しい作業となります。内部でも難しいのですから,皆様方の御理解と御協力を頂かなければいけない。これを基本方針に盛り込んでいただきたいとは申しませんが,日本のというくくり方で,どれだけ簡潔に的確に表現できるかというのが,私たちからしますと大きな問題になっておりますので,今後とも皆さんの御理解と御協力を頂きたいと思います。これは内部の人から時間があったら諮ってくれと言われていたことでもありまして,どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田会長】  背中にずっと背負っていたものですね。よく理解させていただきました。
 貴重なお時間,先生方にいろいろと御意見を頂戴いたしました。大変ありがとうございました。この後,第4次の基本方針をしっかりとまとめまして答申したいと思っておりますが,ここで恐縮ですが,長官,ひとつお願い申し上げます。

【青柳長官】  ありがとうございます。私どもも社会全体から,あるいは世界全体が文化というものに対する注目度が依然よりもはるかに上がってきているということを,毎日ひしひしと感じております。恐らくちょうど,じわじわと水位が上がってくるように,文化というものが特に先進国では非常に重要なものになっていって,既にもうポスト工業社会ということが言われてから20年あるいは30年になっているけれども,そのポスト工業社会の工業社会以降のものは何か,恐らく文化社会とかあるいはそういうものを想定しているのですが,それはまだ実際には実現していないわけで,しかし,工業の,特に重厚長大な工業がどんどん空洞化を先進国で進めていることは事実であります。そういう中で,ナントをはじめとする創造都市というものが,文化で大変,地域興しで目覚ましい力を発揮しているということで,今,先進国では創造都市,あるいは日本では最近は創造農村という言葉まで使われて,文化を地域興しの軸にしていこうということに力をそそがれている。そういう意味で,文化庁自身もそういうところに貢献していきたいと考えております。
 その中で,今のインターネットの社会でいろいろな意味でネットワークというものが非常に有効であることが証明されておると思います。先ほど伝統文化で御発言いただきましたように,ネットワーク化することによってということは,本当にこれから早急にしていかなければいけない。例えば3.11のときに,東北のり災を受けたあるところで,お神楽用のかつらが破損してしまった。それをどのようにして修復するか。昔だったら時代劇などの映画を作っているチームにかつら屋さんが必ずいたので,そういうところで修復してもらえばいいのではないかということで探したらしいのですが,結局探し当てられずに,当分,東京国立博物館に相談を持ち込まれて,博物館が一生懸命探して,結局,NHKの大河ドラマを担当しているところに,一人だけそのかつらを修復するというか,かつらを作る人がいる。その方に頼んで修復をしていただいて,今現在も少しずつ修復をしてもらっているようです。そういう意味で,いろいろな意味でネットワークというものが,現代の社会の中で大きな力になっていくのではないか。
 ですから,その手始めに,先ほど文化庁のホームページがということをおっしゃいましたが,正にそのとおりで,もっと改良していかなければいけない。特に海外発信もしていかなければいけない。けれども,もちろんそのネットワーク上での海外発信もですが,文化庁としては,例えば文化交流使ということで,いろいろな方々に海外に行って大変すばらしい新しい出会いを作っていただいていますし,それから多分,若い芸術家を海外派遣するということで,皆さん大変いい経験をして,それを文化庁としてはDOMANIと言いますが,向こうに行かれた方々が戻られた後の展覧会をやって,これが大変すばらしい展覧会に成長してきております。そういう意味で,ネットワーク上の,あるいはある意味でバーチャルな世界とリアリティーの世界を,どううまく組み合わせながら,この要望のある,文化の重要性が大変いろいろなところで気付かれ始めている中で,我々ができるだけの対応をしていかなければならない。
 しかし,御存じのとおり,来年度も1,038億の予算しかないので,いろいろな形でほかの企業などと協力関係,あるいは大学であるとか,様々なNPOなどとの協力が,非常に重要になってきているのではないかと思います。先ほど少しお話がありました登録文化財の中での建造物などは,文化庁だけの力ではどうしてもできませんから,ジャパンナショナルトラストなどのようなところと連携していくことがこれから非常に重要になっていく。ネットワーク上のこと,それからリアリティーのこと,他分野との連携のようなことを,これから第4次基本方針の中にもいろいろ書いてありますから,それを武器にしながら努めていきたいと思いますので,今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。要するに,一個だけではなくて重ね技で,その上にもう一個重ねるということによって,文化力,人間力というものが大きく出てくる。そして,来年ですか,リオがありますよね。その後,今後2020に向けても,大きな日本力というものを世界に発信できる環境ができるのではないかと思っております。たまたまですが,私の大学も文化芸術部門においてスーパーグローバルを獲得することができました。大いに今も発信をしております。というのは,教員もそうですが,学生がいるということによって,彼らのエネルギーをどう,むしろやや抑え気味にしないと数が多過ぎて選択肢に困るというような,今の環境でございますが,文化というものが,そういう意味で,私はこういうことを面白いからやりたいといったときに,一人ではなくていろいろな方の御協力があって,その人をひのき舞台に上げてやるというような環境作りを,今一生懸命やっているわけですが,是非とも,この会がより日本の文化の中で発信していってくださるような,そしてグローバルでありたいと思っております。
 どうしても,これはもう一回言わないといけないというような話が,先生方の中にございましたらお願いします。

【熊倉委員】  先ほど頂いた資料の1のところで,国民からの意見募集が3月中旬からとなっております。できればパブコメが始まりましたという,そのままメールで拡散できるような,「是非意見をお寄せください。URLはこちら」みたいなものを,各委員の方々にお送りいただけると,このパブコメに少しでもお手伝いできるのではないかと思いますので,よろしくお願いいたします。

【宮田会長】  先ほど私も申しました,いわゆる国民からの生の意見も非常に大事なことだと思います。ありがとうございました。
 それでは,皆様におかれましては,1年間,各部会,分科会で,御協力を賜りましたことを深く感謝申し上げます。まことにありがとうございました。
 それでは,事務局,ひとつよろしくお願い申し上げます。

【内田調整官】  どうもありがとうございました。本日は,特に事務局からの連絡事項等はございませんけれども,今期1年間,御多忙の中,総会に御出席くださいまして,本当にありがとうございました。今期はこれで終了になります。本当にどうもありがとうございました。(拍手)

── 了 ──

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