第15期文化審議会第2回総会(第65回)及び第13期文化政策部会第1回合同会議

平成27年4月16日

【三木調整官】  開会に先立ちまして,配布資料の確認をさせていただきます。配布資料は,資料1から4までございまして,右肩に資料番号を振ってございます。資料1,文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)の答申(案)。資料2はそのポイント,カラーの2枚のものでございます。資料3,文化審議会文化政策部会・関係資料。資料4は今後の審議の論点についてでございます。
 この資料のほか,参考資料が三つございまして,一つがパブリックコメントの概要。それから,参考資料2が前回の総会以降の主な修正点,参考資料3が審議の経過についてでございます。そのほか,机上の資料としましてファイルを用意しております。諮問文等々,過去の資料について閉じておりますので,適宜御参照いただければと思います。
 それでは,開会の前でございますけれども,本日,人事案件がございますので,一般傍聴者の方におかれましては,しばらく御退席を頂くようにお願い申し上げます。職員より御案内をいたします。
 それから,委員の皆様方の机上には,茶色の封筒で各委員の皆様方への下村文部科学大臣からの任命書を置いてございます。お持ち帰りをよろしくお願い申し上げます。
 それでは,ただいまより文化審議会の今期第2回の総会及び第1回の文化政策部会を開催いたします。本日は,御多忙のところ,委員の皆様にお集まりいただき,誠にありがとうございます。本日は文化政策部会につきましては1回目でございますので,後ほど部会長を御選任いただく必要がございます。それまでの間,私の方で議事を進めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 文化政策部会委員の御紹介をさせていただきます。文化政策部会の委員の皆様を御紹介させていただきたいところでございますが,時間の都合上,資料3の3ページに名簿を御用意してございます。全体の委員の皆様の御紹介はこちらに代えさせていただきたいと思います。今期新たな委員としまして6名の方々に御就任を頂きました。私の方からお名前を御紹介させていただきたいと思います。まず,大南信也様でございます。

【大南委員】  大南です。よろしくお願いします。

【三木調整官】 続きまして,亀井伸雄様。

【亀井委員】  亀井でございます。よろしくお願いいたします。

【三木調整官】 続きまして,信田阿芸子様。

【信田委員】  信田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【三木調整官】 続きまして,柴田英杞様。

【柴田委員】  柴田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【三木調整官】 続きまして,長谷川祐子様。

【長谷川委員】 長谷川でございます。よろしくお願いいたします。

【三木調整官】  本日,御欠席でございますけれども,南條史生様にも委員に御就任いただきました。
 以上の6名が新たに委員に御就任いただくことになりました。新委員の皆様,そして今期も引き続き御快諾くださった皆様方,1年間,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続きまして,文化庁新幹部異動の紹介をさせていただきたいと思います。文化庁長官官房審議会,磯谷でございます。

【磯谷審議官】 磯谷です。よろしくお願いします。

【三木調整官】 同じく長官官房国際課長,匂坂でございます。

【匂坂課長】  匂坂でございます。よろしくお願いします。

【三木調整官】 続きまして,文化部宗務課長,大金でございます。

【大金課長】  大金でございます。よろしくお願いいたします。

【三木調整官】 それから,続きまして文化財部美術学芸課長,萬谷でございます。

【萬谷課長】  萬谷です。よろしくお願いします。

【三木調整官】 同じく文化財部参事官建造物担当,熊本でございます。

【熊本参事官】 熊本でございます。よろしくお願いいたします。

【三木調整官】 以上でございます。

(傍聴者退出)

※ 部会長に熊倉委員,部会長代理に片山委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

【宮田会長】  よろしゅうございますか。ありがとうございます。それでは,第15期文化審議会第2回総会,第65回になりますが,及び第13期文化政策部会第1回の合同の会議を開催したいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 本審議会の概要と運営上の規則について確認をしておきたいと思っておりますので,よろしくどうぞ。これらの点につきましては,事務局から御説明を願いたいと思います。

【三木調整官】  本審議会の概要につきまして,資料の3を御覧ください。資料3,1ページ,文化審議会の組織の全体図がございます。文化審議会は文部科学省設置法によって設置されておりまして,文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項の調査審議等を行うこととされております。この文化審議会の下に,ここの図にありますように国語分科会をはじめ,四つの分科会と文化政策部会を含めまして三つの部会が置かれているところでございます。
 2ページ目が文化審議会委員の名簿,それから,3ページ目は文化審議会決定で文化政策部会の設置についての紙でございます。4ページ目は,文化政策部会委員の名簿でございます。それ以下につきましては関連の法令について記載してございます。文化審議会のルールとしましてポイントだけ申し上げますと,公開についてでございます。先ほど一時退席いただいたように人事案件等,特別な以外のものにつきましては,会議は公開,議事録,資料についても公開となってございます。
 非常に簡単ではございますが,以上でございます。

【宮田会長】  ただいま御説明がございましたが,人事案件以外に関しては公開をするということで,広く国民に文化政策を御理解いただくという方向で1年間動いていきたいと考えております。今までのことについて何か御質問等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは,進めさせていただきます。そして,後半の方に約1時間,先生方からの忌たんのない御意見を頂戴したいと思っておりますので,議事的に進められるところは暫時さくさくとやっていきたいと,かように考えておりますのでよろしくお願いします。
 先月の30日に第1回の総会を行いました。答申(案)について最後は私に御一任いただくということで,それもまたしばらくの期間,パブコメを使いまして結果を基にして答申(案)の一部修正を行いました。本日の政策部会,この第1回で新たに加わっていただきました委員の方もいらっしゃいますので,事務局の方から答申(案)及びパブコメの結果について御説明を頂きたいと思います。では,事務局,お願い申し上げます。

【平林課長】  政策課長をしております平林でございます。3月30日に開催されましたこの総会を欠席された委員の先生方や,今回新たに文化政策部会の委員に就任された方もいらっしゃいますので,改めてお手元の答申(案)につきまして簡単に御説明させていただきます。また,国民からの意見募集等を行いまして,3月30日の答申(案)から会長と相談いたしまして,若干変更した箇所がございますので,そちらについても後ほど御説明させていただきます。
 答申(案)につきましては,資料1がございますが,そのポイントをまとめました資料2を御覧いただければと思います。この文化芸術の振興に関する基本的な方針でございますが,文化芸術振興基本法という法律に基づきまして,おおむね5年に一度策定しているものでございます。現行の3次の基本方針は平成23年2月に策定されたものでございます。一方,この3次の基本方針を策定した後に23年の3月には東日本大震災が発生いたしました。また,2020年の東京オリンピック・パラリンピックの招致が決定したということ,更に昨今では政府において地方創生といったことの取組がございます。こういったことを踏まえまして,昨年3月に下村文部科学大臣から本文化審議会に対しまして次期基本方針の策定の諮問がございました。それを踏まえまして文化政策部会において約1年間,御議論いただきまして取りまとめたものがお手元の資料1の答申(案)でございます。
 まず,改訂のポイントについて御説明いたします。先ほど申し上げましたように,この基本方針の対象期間は2020年までのおおむね6年間としております。そして,現行の3次の基本方針策定以後の諸情勢を踏まえた文化政策の方針というものをまとめて明示したものでございます。それから,文化芸術立国の姿というものを明示しようということで4点ございますが,あらゆる人々が創作活動へ参加,鑑賞体験ができる機会の提供ということ。それから,2020年の東京大会を契機とする文化プログラムの全国展開。被災地からの復興の姿を地域の文化芸術の魅力と一体となり,国内外へ発信するということ。そして,文化芸術関係の新たな雇用や産業が現在よりも大幅に創出されているといった文化芸術立国の姿というものを明示しているところでございます。また,この文化芸術立国の実現のための成果目標と成果指標を提示しているところでございます。各種の世論調査等を踏まえたものを幾つか並行にございまして,赤字でその目標を示しているところでございます。
 全体で3部構成になってございまして,まず,第1でございますが,社会を挙げての文化芸術振興について御説明いたします。文化芸術,町並み等を地域資源として戦略的に活用して文化芸術振興を地方創生の起爆剤とすること。そして,2020年に向けて全国津々浦々であらゆる主体が文化プログラムを展開していくということ。東日本大震災からの復興に関しましては,文化芸術の魅力で国内や世界のモデルとなる新しい東北を創造するということ。文化芸術への公的支援を戦略的投資と位置づけて文化芸術振興への支援を重点化するといったことを掲げてございます。
 続きまして,第2の文化芸術振興に関する重点施策について御説明申し上げます。この4次方針におきましては,文化芸術振興のために五つの重点戦略というものを定めたところでございます。重点戦略1でございますが,文化芸術に対する効果的な支援というものをまとめてございます。この箇所におきましては,戦略的かつ工夫を凝らした創造活動の推進,それに地域の多様な主体による文化政策の立案ということ。文化芸術の創造性で地域の活性化等に取り組む文化芸術創造都市について全国的ネットワークを充実,強化したり,あるいは観光産業振興との連携を図るといったこと。それから,日本版アーツカウンシルといったようなことを記載してございます。赤字がポイントになってございます。
 2ページ目を御覧いただければと思います。重点戦略2でございますが,文化芸術を創造し,支える人材の充実及び子供や若者を対象とした文化芸術振興策の充実についてでございます。こちらにおきましては,子供や若者の二つの創造(想像)力の育成ということ。学校における芸術教育の充実ということ。雇用の増大を念頭に置き,文化芸術活動や施設の運営を支える専門人材の育成や活用などにつきまして記載してございます。続いて重点戦略3,文化芸術の次世代への確実な継承,地域振興等への活用についてでございます。こちらにおきましては文化財の積極的活用による各地域の地域振興・観光振興といったこと,日本遺産認定の仕組みの新たな創設。そして,ユネスコの世界文化遺産や無形文化遺産への推薦,あるいは登録の積極的推進といったことについて記載しているところでございます。
 そして重点戦略の4,国内外の文化的多様性や相互理解の促進についてでございますが,こちらにおきましてはデジタルアーカイブ化の促進といったこと,我が国の高度な文化遺産保護に係る知識・技術・経験を活用した国際協力の推進ということ,東アジア文化都市の取組であるとか,東アジアにおきます若い世代の芸術家等の交流の促進といったことについて記載してございます。最後に重点戦略5,文化芸術振興のための体制の整備の箇所につきましては,国立の美術館,博物館や劇場の機能の充実。それから,国立のアイヌ文化博物館(仮称)でございますが,その2020年の開館に向けた準備,そういったことについての記載がございます。
 そして,第3の部分でございますが,現行の基本方針と同様に文化芸術振興に関する基本的施策といった項目を設けてございます。こちらにおきましては,文化芸術振興基本法に定められました文化芸術振興の基本理念に基づきまして,それぞれ事項に具体的な施策を定めているところでございます。こちらの説明は時間の関係上割愛させていただきます。
 以上,簡単でございますが,第4次基本方針の答申(案)の説明をさせていただきました。
 続いて,国民からの意見募集の結果につきまして御説明させていただきます。資料は,参考資料1を御覧いただければと思います。1枚目に記載がございますように,本年の3月23日から4月3日まで文化庁ホームページや記者発表等におきまして意見を募集したところでございます。2.を御覧いただきますと,43の団体,それから,52名の個人の方,合計して95件の御意見を頂いたところでございます。御意見を頂戴いたしました皆様方におかれましては,この場をかりて御礼申し上げます。2ページ,意見の内訳は3.にございますし,その主な意見につきましては,1枚めくっていただきますと,2ページ以下に別紙として掲げさせていただいてございます。頂いた資料につきましては,答申取りまとめの参考とさせていただくとともに,今後の施策の検討,推進の参考にしてまいりたいと考えてございます。
 続いて参考資料の2を御覧いただければと思います。会長からの御発言がございましたように,先月30日の総会におきまして答申(案)の修正につきましては宮田会長に御一任を頂いたところでございます。今,御紹介させていただきました国民からの意見募集結果などを踏まえまして,答申の文言の最終的な調整につきまして事務局が宮田会長と相談し,修正いたしましたので,その御報告をさせていただきます。主な修正点を参考資料2にまとめてございます。
 簡単に御紹介させていただきますと,我が国が目指す文化芸術の姿の記述におきましては,赤字が修正点でございますが,子供から高齢者まであらゆる人々が我が国の様々な場で創作活動への参加,鑑賞体験ができる機会を提供する主体,その幾つか列挙されている中に赤字にございますように芸術家,文化芸術団体を追記しているところでございます。それから,第1の社会を挙げての文化芸術振興の記述におきましては,2020年東京大会の項目におきましては,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会をスポーツの祭典であるとともに,文化の祭典であるといったようなことを追記いたしましたし,また,東日本大震災の項目におきましては,大震災を契機に文化芸術の果たす役割の重要性が改めて認識されたといったことを追記いたしたところでございます。
 第2の文化芸術振興に関する重点施策,重点戦略1以降の記述につきましては,文化芸術のすそ野の拡大に加えてトップレベルの伸長も同時に重要であるといったことであるとか,分野の特性に配慮した支援について,また,2ページ目でございますが,メディア芸術について,さらには平成24年に成立した劇場,音楽堂等の活性化に関する法律を踏まえて,「劇場,音楽堂等」といった文言の追加などをしているところでございます。
 主な箇所ではございますが,御紹介をさせていただきました。説明は以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。この答申については,文化審議会総会,それから,各部会において大所高所から御意見をくださいました委員の皆さん,それから,ヒアリングに御協力くださいました文化芸術団体,大勢の方々からの御意見をお寄せいただいた皆様にここで改めて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。この答申(案)を本日,大臣,今,国会審議中でございますので,お昼に審議会を代表しまして私と熊倉部会長から下村科学大臣に答申をお渡しするということをさせていただきたいと思います。よろしくどうぞ。
 それでは,次の議題に移りたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。今期最初の文化政策部会でございますので,今後の審議の論点について御意見を頂戴したいと思いますので,それにつきまして事務局より御説明を頂きたいと思います。よろしくどうぞ。

【平林課長】  続きまして,今後の審議の論点につきまして御説明いたします。お手元の資料4を御覧いただければと思います。中期と短期の二つの観点で整理させていただきました。中期的な論点といたしまして三つ掲げてございますが,一つ目は,第4次基本方針につきましては,文化芸術の振興に関する理念を定めたものでございますが,その理念を踏まえて進めるそれぞれの具体的な施策につきまして,どのように進めていくのか。また,特に優先度の高い施策は何かといったようなこと。それから,二つ目でございますが,4次方針におきまして成果目標を定めているところでございますが,個々の施策をどのように組み合わせてこの成果目標を実現するか。あるいはどのようなスケジュール感でそれを進めていくかといったようなことが一つ考えられるかと思っております。そして,三つ目でございますが,その1と2の進捗状況というものをどのようにフォローアップしていくのかといったようなことを論点として掲げさせていただきました。
 そして,短期的な論点につきましては,特に28年度の概算要求に盛り込むべき優先的な施策といったものについて,さらには文化芸術を取り巻く諸情勢の変化を踏まえた施策,予算の有無,関係なく広く短期的に取り組むべき施策というものはどういうものがあるかということにつきまして,論点として掲げさせていただきました。今後,基本方針が決定した後,文化庁をはじめとした,政府全体で基本方針の理念にのっとって具体的な施策を取りまとめていこうと考えてございます。より効果的な内容で,又は適切なタイミングで各施策を実施していくためには,各委員の先生方からの現場やそれぞれの御専門を踏まえた施策の具体化に向けた御意見であるとか,幅広く文化芸術分野を見通した新たな視点や取組の御意見といった幅広い御意見を頂戴したいと思ってございます。もちろん,この資料はあくまでも議論のたたき台という性格でございます。この資料の論点以外の観点でも結構でございますので,是非忌たんのない御意見を頂戴できればと考えてございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 今,平林さんからお話がございましたように,これに限らず広く先生方から御意見を頂戴したいと思います。終わりの時間は11時半を予定しております。その後に大臣にお渡しするという時間調整もあります。どうぞ先生方から忌たんのない御意見等も頂戴したいと思います。いかがでしょうか。

【道垣内委員】  せん越ですが,私,今日,早めに退席しなければいけないものですから発言させていただきます。

【宮田会長】  どうぞ。

【道垣内委員】  データによれば,日本に来る外国人の数が相当増えており,これは町を歩くと明らかでございます。この人たちに本物の日本文化をちゃんとお見せして,拡大再生産というのでしょうか,お国に帰っていただいた後に日本の正しい文化を正確に伝えていただくようにする必要があると思います。多分,今,余りに外国人観光客が急増しているので,日本側が対応できていないのではないかと思われます。質の良いものがちゃんと外国の旅行会社に分かるような仕組み,例えば,正しい日本の着物の着付けを体験できる施設はここにあるといった情報が外国人観光客にツアーを提供する会社に分かる仕組みが必要だと思います。認定システムみたいなものがあってもいいのではないかと思います。
 また,日本の遺産とか,あるいはユネスコへの世界遺産登録についてですが,もちろん大変結構なことなのですが,このまま続けていくと,だんだんと質が低下するおそれがあるように思います。際限なく遺産を認定していくと,希釈化されるおそれがあるので,よく考えていただいて,番号をつけるとかして,1桁は立派だけれども,3桁になるとだんだんとそうでもなくなるということが分かる仕組みがあってもいいのではないでしょうか。そのような方法で,もう少し情報を正しく伝えることが必要なのではないかと思います。

【宮田会長】  ありがとうございます。本当にそうですね。今日,来るときも地下鉄の半分が西欧の方だったのでびっくりしましたね。こんなにいらっしゃるのかと思った。ああ,すごいものだなと思いました。東洋の方だと何となく分からないのですけれども,確実に西洋の方々がいました。ああ,こんなに変わるのか。そのときに持っているマップが随分貧乏くさいなという感じがしましたね。あの辺がもう少しきれいな捉え方をさせてあげると,もっともっといいのかなと。特にWi-Fiだとかいろいろなものがそこに付随することも大事なことかと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。信田先生,どうぞ。

【信田委員】  今年から初めて参加させていただきますファッション業界を担当しております信田と申します。どうぞよろしくお願いします。たまたま今日,発言したいなと思ったことが先ほどの委員の方のストーリーが合致しますので,手を挙げさせていただきましたが,ファッション業界の役割というのは,あくまでも皆様の黒子に立ってファッションが裏で動くことによって物事がマーケットインに見えたりとか,非常に伝播(でんぱ)力が増えたりとかということで常に黒子で働けばいいかなと思っておりますが,この1年間。ちょうど今年の1月に御紹介いただいて,ロンドンのシティガバメントの文化政策部長とお会いして討論してきましたけれども,是非ロンドン側も自分たちで予算を付けてでも,この日本のオリンピックを盛り上げることに尽力したい,協力したいと言っていただいていまして,予算はもう取ってきたと,そこまでおっしゃっていまして。
 何をしましょうかということなのですけれども,正におっしゃったように日本には文化財,芸術というものは非常にネタ的には豊富にあるという認識をしております。今,新たに作るというよりは,既にたくさんあるものをいかに分かりやすく格好よく世界に広めるかということが非常に大事なのだろうと思っております。そこで,日本人だけではなくてロンドンのアーティストともコラボしながら,例えば一緒に新しい形のWebメディアを作らないかというお話を頂いています。Webメディアを中心に情報発信して,年に1回だけ非常に格好良いカタログを作るとか,そういうことをロンドンと日本のアーティスト,若手のアーティスト同士が合作でできないかみたいなお話も頂いています。そういうことを,具体的に1年間通してどうやってアウトプットしていくか,立派な理念をどういう形で世の中に示すかということを具体的に提案できると思っていますので,また改めて具体策を次回までに持ってきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【宮田会長】  ありがとうございます。ロンドンの話を聞きましたけれども,この前は湯浅先生から17万という話をお聞きしましたけれども,先般,下村大臣は20万と言っておりました。完全に意識しているなというのがよく感じましたので,今のようなことを含めましてどんどん構築させていきたいと思います。ありがとうございました。
 ほかに。都倉先生。

【都倉委員】  余計なことなのですけれども,今のこのスピーカーとマイクのことを申し上げてよろしいでしょうか。このコード,このレゾナンスがすごく多分,6秒か7秒ぐらいあるのではないかというぐらいワンワンするコードでして,余りカラオケには向かない。このマイクの問題よりもスピーカーの問題だと思うんですよね。スピーカーの種類もあるけれども,位置ももう少し直角ぐらいにしていただければ,もう少し皆さんも,先ほどの委員の方ははっきり,非常に発声がよろしくていらっしゃるので聞こえたのですけれども,どうも僕,ここから会長,じかに話した方が聞こえやすいような感じなので,ちょっとこのスピーカー,工夫していただければと思います。僕の発言はそれだけです。

【宮田会長】  さすが都倉先生ですね。ありがとうございます。では,いろいろ努力を怠らないというところで進めさせていただきたいと思います。
 加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】  一つ反省といいますか,もう少し議論しておけばよかったなと思う点を1点,補足をさせていただきたいと思います。全体的に大変よくできた方針になったと思うのですが,26ページ目に高齢者と障害者のことについて触れられていまして,その中で両方共通する課題ではあるのですが,特に高齢者の事柄について,ここに書いていただいたのは,できるだけ幅広い配慮をしろということが書いて,これはこれで別に結構なことだと思うのですけれども,実は蜷川幸雄さんが今ゴールド・シアターというのをやっておられて,65歳以上の方々,平均で言うと75ぐらいなのですけれども,三,四十名で芝居を作っておられます。それを来年さいたまでトリエンナーレというのを開催するのですが,その際に1万人の高齢者が出場するゴールド・シアターをやろうということを今計画しております。それは何を申し上げたいかというと,高齢者の創造的な活動,芸術活動,鑑賞ではなくて自らが創造的な活動をするときにバリアフリー等の配慮をするだけではなくて,むしろ,その主体的な表現能力というものをきちんと評価していく必要があるのではないのかなという点が1点でございます。
 さらには,高齢者は平均的に,全ての方ではありませんが平均的に言うと,ある程度,財があると思うんですね。そうした財,資産をお持ちなので,そうした資産を若い芸術家の育成等に充てるというようなこともあり得るのではないのかなと。つまり,高齢者を介護やケアの対象として考えるのではなくて,むしろ,積極的にその表現活動を評価するとともに,次世代の人々を応援する,むしろ,応援の主体なんだと。高齢者を支援するのではなくて,高齢者が逆に支援をしていただく。我々後進を。いや,私はもう高齢者のがわなのですけれども,支援をしていただくというような,そういう観点というのも少し議論しておけば良かったかなという点を今反省しているところであります。なので,そうした観点でここの26ページを読み替えて,少しそうした幅広い対応というものもこれから一緒に取り組んでいただければ有り難いなと思った次第です。
 以上です。

【宮田会長】  加藤先生,ありがとうございます。  少し声,何かマイクがいい感じになってきたな。都倉先生,大丈夫ですか。聞こえますか。

【都倉委員】  はい。こちらは。

【宮田会長】  ありがとうございました。今,加藤先生のお話でふっと思い出したのですが,今度の25日か何か,別に宣伝してもいいのかどうかよく分かりませんが,北野武さんが高齢者だけの映画を作りますよね。楽しみにしていたので,ああ,なるほどなと。積極的な登用ということ,若者だけではなく,常に意識的に若者登用という意識がどうしてもあるのですけれども,観点を変えるというのが面白いことだと思います。ありがとうございました。
 では,湯浅先生,どうぞ。

【湯浅委員】  ブリティッシュ・カウンシルの湯浅と申します。今,加藤委員の方から高齢社会についてお話しいただきましたので,共有をさせていただきたいのですけれども,お手元に,今日,文化庁さんにお願いして冊子を配らせていただきました。ちょうど今週1週間,英国から高齢社会の課題に向けて活動しています文化芸術団体とアーツカウンシル・イングランドなど助成機関を含めて14団体16名の方を招聘(しょうへい)しています。今,加藤委員から,この26ページのここの表記のことについてお話がありましたが,ちょうど昨日で3日間のプログラムが終わりまして,3日の間に日本の文化芸術関係の方,福祉関係の方,医療の方,ビジネスの関係,企業の方で高齢社会に活動していらっしゃる方,あと研究者の方,多様な方といろいろな形の議論をさせていただく中で,ここに書かれている,この26ページに書かれていること以上にも,この文化芸術が高齢社会にできることというのは非常にあるのだなというのを実感しました。
 ここでまとめさせていただいているものも,高齢の方の参画,表現というだけではなくて,高齢社会にまつわる課題というのが,例えば高齢の方,特に地方,今,日本もそうだと思うのですが,孤立の問題ですとか,認知症の方,又は認知症の方のケアをされる方,特にケアの方の状態が今非常に厳しいということが英国でもありまして,そういった社会全体の中で,この高齢化に向けていろいろなセクターが今動いていらっしゃると思いますが,文化芸術に何ができるのかというのが非常に今課題なのかなと思い,いろいろな方が日本でも実践を行われているなと思いました。
 一つ,英国では,デーヴィッド・キャメロン首相が2013年にこの高齢社会の課題というのは,国際的に連携をしなければいけないということで,G8のディメンションサミットをして全主要国に連携を求めているのですが,その中でいろいろなビジネスのセクターが,国づくりということで働きかけがあるのですけれども,昨年の9月から文化芸術セクター,オーケストラと劇場,全てが集まったサブグループができていまして,今回,そのチェアの方もいらっしゃっているのですが,今,英国では子供たちのファミリーフレンドリーではなくて,エイジフレンドリーな文化芸術のガイドライン,それは劇場の在り方とか,表現の在り方というものは何なのとかいう大きな議論があって,恐らくもうすぐ発表になると思うので共有をしたいと思います。
 あともう一つ共有したいのですが,今日,午後にフォーラムをさせていただくのですけれども,非常に短い期間の告知だったのですが,参加される方を見てみますと,日本の劇場関係者,あとアーティストの方,劇場,音楽堂の方,あとオーケストラの方,美術館の方,通常,こういった文化政策的なフォーラムというのは,割と文化政策の専門の方が多いと思うのですが,非常に現場の方が多い。それも多様なセクターの方があるということと,研究者,NPO,福祉関係者,企業の方々からお申込みがありまして,定員を大幅に今上げています。ここの数日の議論の中で,中からも声が挙がっているのが,他セクターとの,他ジャンルとの共同のきっかけがなかなかないので,非常にすばらしい実践があるけれども,福祉の方,研究者とここでお話ができれば非常に伸びるのにというようなお話があったことと,芸術団体,アートのNPOも含めて横のつながりが本当にないのだなということも少し思いました。私たちが意見交換にお呼びして,そこで初めて,同じような活動をしている方がこの市にもいて,この都市にもいてということがつながってきたということがあります。
 あと,長くて申し訳ないのですが,英国の方のフィードバックとしては,日本と英国との文化的背景ですとか,文化のインフラ又は医療の在り方,全くシステムが,国が違うので違うのですけれども,その違いの中に非常に共通する文化機関として,芸術セクターとして非常に多い。それは今ここの基本法にもあります全ての人が文化芸術に触れるという人間の,人としての権利というところで,そこにアクセスがない人たちに対して私たちは何かをしなければいけないという強い思いがあるというところですとか,アートというものがどんな効果があるのかということに対しての真摯な思いというものが非常に共通するということをおっしゃっていまして,国を超えて連携をして,実践を重ねていきたいということと,かなり英国は研究が進んでいますので,そこら辺も大学機関との連携ということで共有ができるかなと思いました。是非今年のこれを具体的にする中で,また更に共有させていただければと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 とてもいいタイミングですね。日本も元々高齢に対して大変すばらしい言葉がいっぱいあるんですよ。例えばですが,近代美術館で平櫛田中が100歳のときに展覧会を開いてスピーチで,「60,70は鼻垂れ小僧,男盛りは100から100から。わしは,あと30年分の木を買うたぞ」なんて言って,それがスタートだったんですけれども,その後,107歳ぐらいまで製作をし続けたというようなことがございますが,仲道先生,どうぞ。

【仲道委員】  はい,湯浅委員の御発言ともつながることなのですけれども,まずこの第4次基本方針は本当に細やかにできたものだと思います。去年1年間,文化政策部会で御一緒させていただいていて,私たちの中では,何をしなければならないのか,何が必要なのかということは,もう共通の理解になっていると感じています。そのために必要なことは,やはり仕組みを作ること,それを実現するネットワークを作ること,そしてシステムの構築なのだということも,分かっています。これから最初にしなければならないのは,それぞれのトピックにおいて,「いつまでに何をしなければならないか」ということの大きな枠組みをこちらで考え,そのためのチームを作ってしまうことです。というのは,それぞれのフィールドにおいて,専門的な御意見を持って心を砕いていらっしゃる方が,たくさんいらっしゃるわけで,そういった方々でチームを作り,そのチームの人たちがまたネットワークを作っていくといった流れがあれば,いつまでに何をするかということに向かってどんどん進んでいくことができると思います。
 その途中で,それぞれのチームがまた集まって情報を共有し,それをきっかけとして,「それならこんなことが手伝える」という新たな展開も起こってくると思うのです。そうすれば,今,湯浅さんがおっしゃったような横のネットワークも作っていくことができると思います。ですから,そういった大枠の形を文化庁の方で作り,民間から上がってくる動きを随時その中に当てはめていきながら,協力体制を作っていけば,動きがスムーズになり早くなるのではないかと思います。どの施策の優先度を上げるかという議論もあるのですけれども,私はこれからの6年間は必死で全て同時進行でいかなければならないと思っています。「これを優先して,次にこれだ」というような悠長なものではなく,全てを平行して行っていく中で見えてくる形や,問題というものがあり,それを協力して解決していく中でできてくるものがまたあるはずです。そうすることによって,昨年1年間の議論を通して浮き上がってきた問題を解決へと向かわせることができるのではないかと考えています。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。すばらしい御発言。
 柴田先生,どうぞ,お願いいたします。

【柴田委員】  全国公立文化施設協会の柴田と申します。改めまして,どうぞよろしくお願い申し上げます。私は日常,地域の劇場で働いておりまして,いろいろな環境整備に努めております。第3次基本方針において劇場の法的基盤整備が重点戦略の1の中に挙げられまして,劇場,音楽堂の根拠法となる「劇場,音楽堂等の活性化に関する法律(略称:劇場法)」ができました。劇場関係者としては,この上ない喜びです。この劇場法と指針をこれからどうやって活用して更に地域の劇場をパワーアップしていくかということが今後の課題です。したがって,劇場,音楽堂の社会的な役割というのがますます高まってきているのではないかと感じております。
 2020年までの6年間この第4次基本方針のロードマップをどういうふうに描いていくかということが一番重要な課題であると今認識しております。また,それ以降のことについてどのようなロードマップを描いていくかということも併せて考えていくことが必要で,この第4次基本方針の位置付けを明確にすることが重要と思います。その中で劇場,音楽堂が社会に果たすべき役割を具体的に考えて実践していかなければいけない。とりわけ,劇場が若者たち,これから次代を担う子供たちにとって憧れの的,魅力を感じるような職場となるように私たちは努力していかなければいけないと思っております。それは雇用の安定化に向けて尽力しないといけないということにもつながっていくと思います。
 劇場法制定以降,非常に大きな変化がありました。現在,鑑賞事業は全国的に減少傾向にあります。一方で,参加型,普及啓発事業が非常に急増しているということで,従来,貸し館事業を中心に実施していたその劇場,音楽堂が今は参加型事業に転じているという傾向が少しずつ生まれているという状況であります。貸し館事業のみを事業としている会館は,全体の9%でございまして,これは5年前と比べますと24%の変化。今は貸し館事業中心のホールでも何らかの事業を実施している劇場が多くなってきているということであります。
 また,地方公共団体の文化行政官の育成の問題も併せて考えていかなければいけないと思っています。また,その人材をフォローするアドバイザーや助言者の育成も必要でありまして,日本全体を盛り上げるためには急務の育成です。地域の文化振興は頂点の伸長からすそ野の拡大まで幅広くもあるわけなのですけれども,プロフェッショナルとアマチュアを含めた文化芸術活動の活性化を目指して,文化芸術が社会にとって有益な活動となるように努めていかなければいけないと思います。そのための2020年まで,それ以降のロードマップというのをどのように作っていくかということが喫緊の課題だと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。亀井先生,どうぞ。

【亀井委員】  文化財研究所で文化財の研究をしています亀井と申します。この4次答申につきましては,皆さんいろいろ議論がなされて,立派な報告ができたわけですが,一つ,これを読んでいて,今更というわけにもいかないのでしょうけれども,気になるのは重点戦略3に日本遺産という言葉が出てくることと,その次に歴史文化基本構想という言葉がございます。両方の文章を読んでみますと,共に「総合的かつ一体として」という表現がありますので,両者を付けるような形で読み取るのではないかとは思うのですが,分離していますと,歴史文化基本構想と日本遺産というのは別物であるというような捉え方をされる危険性があると思います。もし修正が許されるのでしたら,歴史文化基本構想の前に「そのため,」と入れていただくと,両者が一致するということになるのではないかと思います。
 先ほど文化財というか,日本には様々な文化遺産がたくさんあって,それをうまく結び付けるということが必要で正しい理解をさせるために大事だということを言われましたけれども,正にそのとおりでありまして,幾ら文化財とか伝統文化があっても,それを人々に見せるときの媒体となる仲介人が正しい理解をしていないと,面白おかしく脚色して説明してその結果何か誤った理解をさせてしまう。それが日本文化なのかと思われてしまうと,問題だということですね。2020年という当面の目標が出ているわけですが,人材の育成というのを各公共施設でもって,例えば博物館,美術館,あるいは遺跡を抱えている姫路城でありますとか,吉野ヶ里遺跡でありますとか,三内丸山遺跡であるとか,そこには専門家が張り付いておりますので,彼らに多くの方々へ説明できるボランティアガイドといいますか,そういう方を育成してもらう必要があるのかなと。既に各地でそういう事例がございますけれども,より正確に正しい歴史の理解のためにそういうボランティアガイドの人たちを教育するという機会を広く設けることと,それに対する助成が必要なのかなと思います。
 もう1点,昨今,増田さんあたりが盛んに日本は,2060年ぐらいには人口が半減してしまうというようなことで,縮小社会ということを言われております。成熟社会の中で少子高齢化していきますと,いずれはその担い手といいますか,そういうものがどんどん失われてしまう危険性がありますので,その辺に対する手だても,これは文化財に限らず芸術文化全般の担い手の話でありますけれども,その辺をどうしていくかということも真剣に考える必要があるのか。これは予算だけの問題ではなくて,地域でやる気のある人をいかに盛り上げていくか,そういう社会全体で盛り上げるような仕掛けというのも,これは政策のうちの一つだと思いますので,是非そこを検討していきたいなと思っております。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございました。文化財や芸術を通じて,少子高齢化まで含めてということでございます。
 すみません,太下先生が早かったので,その後,馬渕先生,お願いします。

【太下委員】  事務局の方でせっかく資料4という今後の審議の論点というペーパーを用意していただいているので,これにのっとって意見を申し上げたいと思います。この中で二つ,中長期的論点と短期的論点と掲げていらっしゃいますけれども,短期的論点の方がより分かりやすいと思います。このうち,特に平成28年度概算要求に盛り込むべき優先施策と書いてありますけれども,和暦で書いているとちょっと分かりにくいですけれども,平成28年というのは2016年のことであって,2016年というのは御案内のとおり,リオ・デ・ジャネイロでオリンピックが開催され,それが終わった瞬間から日本でオリンピックの文化プログラムが開始されるという年になります。これも御案内のとおり,前回のイギリスのオリンピックのときには英国全土で17万7,000件以上の文化プログラムが,本当に英国全土で実施されたわけです。
 足元を見た場合,ホストシティの東京においては,この委員会にもアーツカウンシル東京の三好機構長が参加されていますけれども,アーツカウンシル東京という組織を立ち上げて,本体の東京都でも着々と万全の体制を作りつつあります。文化庁として考えなくてはいけないのは,東京都以外の地方のことだと思います。この文化プログラムというものを,ここに第4次基本方針も書いてあるとおり,全国で実現していくためにはどうしたらいいのかということが大きなポイントだと思います。
 ここでポイントになるは,地方で何をしていくのか,すなわちWhatではないと思うのですね。何をしていくのかということは地域ごとに考えていただければいいことなのです。けれども,地域で文化プログラムを実現するためにはどうしていったらいいのか,その仕組み,すなわちHowが極めて重要なのだと思います。どういうふうにその仕組みを作っていくのかということが正にこれからの文化政策なのではないかなと考えています。この地域で文化プログラムを実現する仕組みをいかに文化庁が側面から支援するのかということが,正に短期的論点の最大のポイントになると私は考えています。具体的に言いますと,この第4次基本方針にもそのフレーズとして暗示されていますけれども,地域版のアーツカウンシルというものをいかに実現するのかということが短期的論点の最大の課題になるのではないかと考えています。
 一方で,中長期的論点はもっと複雑だと考えています。どういうことかといいますと,当面,2020年に向けての期間は,文化プログラムを実現するということに注力していくことが大事だと思いますけれども,一方で,この文化プログラムというものは2020年に確実に終わってしまうものです。ですので,この文化プログラムというものに文化政策,そして文化庁なり地方自治体も含めて,文化セクターがどのように対応していくのかという,その対応の仕方を誤ると,いわゆる毒まんじゅうのようなことにもなりかねないなと思っています。つまり,当面はおなかがすいているので,まんじゅうを食べることになるわけですが,2020年を過ぎると文化予算が削減されて,毒が全身に回ってくるという懸念です。
 もちろん,そうなってはいけないと思っていますし,2020年以降の文化政策の持続可能性というものを考えていく場合,IOCが言っているキーワードであるレガシー,どういったものを残し継承していくのかということが極めて重要だと考えます。社会的,経済的,そして文化的なレガシーというものをどう残していくのかということです。その仕組みをあらかじめ見据えて,2020年までの文化プログラムに取り組んでいかないといけないと思います。文化プログラムの実現自体もすごくハードルが高くて,非常に大変なことだと思いますけれども,その実現が目的化してしまうと,きっと文化プログラムは毒まんじゅうになってしまうと思います。そこに留意しながら,短期的,中期的の双方をにらみながら,今後の文化政策を進めていく必要があると考えています。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。大変重要な問題だと思います。短期,中長期との関係,大変すばらしい発言をいたしました。
 それでは,馬渕先生,お願いいたします。

【馬渕委員】  私が申し上げるのは,今まで皆さんのおっしゃったことの中で一つ,非常に重要だと思うことをまとめさせていただくだけなのですが,それはどういうことかというと,やはり誰がそれをやるのかということですね。つまり,人材というふうな言葉を皆様お使いになって,人材というのはいろいろなところで育っておりますし,それから,本当に末端まで人材が育っていけば,日本の文化はすばらしいものになると思うのですが,それをある意味でまとめて,そして特に継続させていく人材というのを私は絶対に必要だと思うんですね。
 もちろん,それは文化庁さんの中でやっていただいても結構なのですが,むしろ,やはり独立した何か法人のような形で,いろいろな分野の専門家,育ち始めている,そういう文化のいろいろな仕掛けを作ったり,それをボランティアのような人材を集めたり,いろいろな形で発信したり,海外とつないだりという,前からアーツカウンシルというような言葉でも出ておりますが,そういった特に継続性,これ,私は30年,40年勤めていただくような人,本当に20代の若手の人でも,ずっと一生それをやっていくような,そういうぐらいの長い期間にきっちり責任持って,そういう方たちにやっていただくような,そういう人材をきちっとポジションを与え,組織を作り,そこでいろいろなものを吸い上げ,発信し,あるいは新しいものを考えていくという人材ボランティアとか,各地でいろいろ活動していらっしゃる方たちは,やはりそれほど継続的にできないと思うんですね。日常,自分の生活もあったりするので。
 ですから,むしろ,そういう方たちの力をどうやって吸収し,どうやって構築していくかという,そういったプロフェッショナルがやはり日本でもそろそろ育ち始めていると思いますし,いろいろなところに実際にいらっしゃると思うので,そういう方たちの力をきっちり利用できるような,そういうプロフェッショナルを国としてやはり雇用していくというのは変ですね。国の文化の中心として組織化していく必要があるのではないかというのが私の考えです。ありがとうございました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 吉本先生,お願いいたします。

【吉本委員】  ありがとうございます。吉本です。この4次基本方針の取りまとめ,事務局,本当にお疲れさまでした。そして,私もこの資料4の論点についてということで少し発言をしたいと思います。1の第4次基本方針の優先度の高い施策は何かということなのですが,これは仲道委員もおっしゃったように優先度は付けられないというか,全部是非実現していただきたいと思います。そして,それに関連して質問になるのですけれども,今日,御説明いただいた資料2の答申案のポイントのそれぞれの重点戦略の中の具体的な施策を見ると,本文には入っているんだけれども,こちらのポイントには入っていないものがありますよね。例えば重点施策の2の中に劇場,音楽堂のことが本文の方にはあるのですけれども,こちらのポイントにはないんですね。
 そして,これ,全部突き合わせると,カウントが間違っているかもしれませんけれども,ポイントの方には九つほどないんですよ。今回のこの4次方針を今までの基本方針と比べると,具体的な施策をこれだけ数多くきっちり出していて,非常に基本計画的ものになっているというのが特徴だと思います。このポイントはA4裏表に何とか収めようとして作っておられると思うのですが,どれか抜けていると,この資料で説明すると,全部推進していただきたい施策の幾つかが漏れるのではないかという気がします。ですので,レイアウト等工夫していただいて,是非全部の施策がこちらのポイントにも載るようにしていただきたいということが一つ目の意見です。
 そして,2番目に,ここにあります成果目標を個々の政策でどう組み合わせていくかということなのですが,これは確かワーキング・グループのときに太下委員がおっしゃっていたと思うのですけれども,ここに出ている政策目標というのが必ずしもこの基本的な方針に盛られた政策の実施によって実現するというものではないというか,その因果関係が明確ではない気がするんですね。
 例えば外国人の観光客を2,000万人にするというのは,今,増えているのはたしかビザを緩和したりすることが非常に大きな要因になっていると思います。ですから,ここに盛られている目標というのは,この基本的な方針を総合的に推進した結果,評価の3段階のレベル,いわゆるインパクトとして表れてくる成果だと思いますので,もちろんこの目標達成に向けて様々な施策をやらなければいけないと思うのですけれども,余りここに書かれている数字目標にとらわれ過ぎて,2,000万人に達成するためにどういう施策をしたらいいかというふうになっていってしまうと本末転倒になる危険性がある。ですので,目標は常に意識しながら施策をやりつつ,ただ,その数字目標に余り縛られ過ぎると政策の本来の目標とずれる可能性があるので,その点は十分注意いただきたいと思います。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございます。何しろA4にまとめるというのは,なかなか難しい部分があるので,全部入れると,てんこ盛りになって結局は何も伝わらないという部分もあるので,そうは言いながらも,吉本先生,ありがとうございます。その辺のところも意識してやっていきましょう。それから,変な目標があると,その目標のみのためにいって本末転倒するということもよく気をつけなければいけないことかと思っております。ありがとうございました。
 では,どなたか。長谷川先生,お願いいたします。

【長谷川委員】  現代美術館でチーフキュレーターをしております,多摩美術大学教授で芸術人類学研究所の所員でもあります長谷川と申します。よろしくお願いします。私は今までの審議会は出ておりませんで,それで今回,委員の方々の審議プロセスをお伺いして,すばらしい過程を踏まれていらっしゃったということを受けとめております。私の発言は,馬渕先生の御発言を受けてなのですけれども,私は具体的な問題から入っていく方ですので,二つの点,まずお話をしたいと思います。一つは,日本の文化がどのように国際的に発信し,国際グローバルの中で連携していくかということの一つの考え方のモデルです。私は先日,コペンハーゲンで国連のUNライブミュージアム設置を企画するワーキング会議に出てまいりました。国連は各国をまとめていくものなのですけれども,それがなぜ美術館を作るのかというところで始まったわけです。
 国連が危惧しているのは,現在の状況,移民とか,環境汚染とか,グローバルエコノミーも含めていろいろな形のクライシスが深刻になってきている。このクライシスの状況を受けて,このUNライブミュージアムは世界中の25歳以下の若い人たちを対象にこの状況をどうやって伝えていくのかを目的にしたいと言われました。そこで,いろいろな国から美術館の専門家だけでなくて,社会学者であるとか,心理学者など,10人ほどの方たちが集められ,話をしました。まず,コペンハーゲンに,国連の機関の一つ,国際保健機構(WHO)がございますので,それがきっかけになったのですけれども,やはりコペンハーゲンが世界のクライシスに対して文化が何をできるかということについて手を挙げる。
 UNライブミュージアムというものができて,世界中にサテライト美術館を求めていくというやり方というのは,非常にインパクトの強いことと思いました。そして,日本は2つの大きな原理主義キリスト教にも,イスラム教にも属さず,ある意味でいろいろな主義の中間の和を大事にしていく場でもあります。そういう日本の文化的立ち位置を生かしながら,提案をする美術館なり,文化的機構なりを考えていくということも一つの可能性ではないかと思いました。無論,そのUNライブミュージアムのサテライトの一つになっていくということは,重要かと思います。
 もう一つは,いわゆるアートを支援していく,あるいはそれにまつわるマネジメント,コーディネーション,そしてワークショップをつないでいくコーディネーター,プログラムコーディネーターの育成です。先ほど馬渕先生がおっしゃったことに関わるのですけれども,いろいろな美術館の展覧会とか文化プログラムへの支援,そしてアーティストへのじかの支援,それは非常に目に見えやすいものですし,ある意味で成果として出しやすいものです。先日もアジアセンターの方もお話をしたのですけれども,今,ASEANの国々と何ができるかというときに,私が申し上げたのは美術館の整備と同時に美術館の専門家,それこそレジストラーとか,コンサベータとか,あるいはミュージアムアドミニストレーションができる方たちの育成の助成があると思います。意志を持った方たちを是非こちらが大学なり,美術館なりでお招きして,そういう方たちに実践的教育をするプログラムを日本が提案すべきだと。
 アーティストへの支援というのは簡単です。しかし,それを支える,インフラやシステムを作っていく人たちの支援はもっと大切なことだと今,私は考えています。日本は美術館制度においてアジアの先進国です。そういうところで,日本の経験を発揮していく。でも,そのときに美術館や大学で受け入れるときに,では,その人たちがやってくる旅費を出せばいいのですかと尋ねられたんですね。それも必要ですが,こちらでプログラムをコーディネートする人たちを年間雇用するため,資金を助成してくださいと申し上げました。考え方をそういうふうにシフトしていただきたい。つまり,文化インフラを支える人,つなぐ人々,芸術,あるいは文化をきちんと他言語で翻訳して語っていける人々の育成をよりシステマティックに考えていただければと思います。現場からの意見でした。

【宮田会長】  ありがとうございます。授業を聞いているみたいな感じで大変いいお話を頂戴いたしました。ありがとうございます。今後もよろしくお願い申し上げます。
 それでは,佐藤先生,ありがとうございます。

【佐藤委員】  これまでのお話と重複するかもしれませんが,個々の文化プログラムの面でやはり人材という面が大事ではないかなと私も思います。特にそれぞれの地域の行政の方に専門性もあり,マネジメントできる人材がいてほしいし,個々の市民,団体にも,あるいはNPOとかボランティアの方たちにもそういった人材が必要だし,それから,それを個々で支える専門家,研究者のような方々が必要だろうと思います。また,2020年を目指してだと,それを国際的に発信することを支援するようなスタッフも必要かなと思います。それを全体でネットワークして文化庁や全国的な専門の方がそれを支援するようなシステムができるといいかなと思うのですが,個々の場合は,例えばそれぞれの地域に近い大学だとか,そういう研究機関みたいなものともリンクしたらいいのかなという気がするのですけれども,こういう全体の文化発信について,恐らくそれぞれの地域の大学もかなり関心を今お持ちだと思うので,そういったこととリンクするといいのかなという気がいたしております。
 それから,文化プログラムの一例については,前回の会議のときに少し発言する機会があったのですが,私,余り思い浮かばなかったのですが,1点,御紹介してもいいでしょうか。

【宮田会長】  どうぞ。

【佐藤委員】  2020年というのがどういう年かというと,私ども日本史を勉強している者なのですけれども,古代の日本で初めての正式な国の歴史,日本書紀が編さんされて1300年という年で,一部では御存じだと思うのですけれども,奈良県とか,島根県とか,三重県とか,宮崎県とか,和歌山県とか一緒になって2020年に向けて大きなイベントを持ってこようということで,これは2012年に古事記1300年,2013年に風土記1300年というような古代文化の大きなイベントがありましたので,それを2020年まで継続して,そして更にその後も続けていこうというので,もう既に古代の歴史文化賞というのをそういった複数,去年は5県だったと思いますけれども,5県で全体の賞を作ったり,あるいは今年だと16県に広がって,古代の国際的な古代文化の漢字文化ですとか,あるいは古代の都城ですとか仏教の広がりだとか,そういったことの共同研究を16県が共同してやるという事業が始まっているわけなのですけれども,その点は国際的に中国,韓国とも共同してやるという方向で進んでおりまして,そういった地方公共団体で行われているような事業も上手にリンクして文化庁が支援していただいて,いろいろな形で2020年を盛り上げていただければと思っております。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 時間があと10分余りになりましたので,その中でうまく大勢の方々からの御意見をちょうだいしたいというのはなかなか至難の業なのでございますが,御協力をお願いしたいと思います。三好先生,お願いいたします。どうぞ。

【三好委員】  ありがとうございます。では,貴重な時間で手短に申し上げたいと思います。文化政策として考えたときに国際的に高いレベルのものを外国人などにも見てもらうというのももちろん大事なことだと思うのですが,もう一方では,芸術文化創造という観点で言えば地域の活動というのは非常に重要だと思います。地域でいろいろな活動をやっているのですけれども,その中で一つ,文化財を活用した新しい芸術創造というのを是非各地域で進めていけるようにしていただきたいなと。
 文化財,あるいは歴史的遺産というのはたくさん日本国内にあり,例えば昨年も文化政策部会の方では全国伝統的建造物群保存地区協議会の方にお話を伺ったのですけれども,私も実際,見てそういう伝建地区などで新しいアーティストがそこに入って,いろいろクリエーションしているというのが各地で非常に盛り上がっていまして,こういうものをもっと総合的な文化政策として捉えていく必要があるなという感じがしています。そのときにやっぱり,地域のことですから,できるだけ地域でいろいろな活動ができるように,もちろん文化財保護という観点は必要だと思いますけれども,文化財保護に抵触しない範囲,あるいはそれを少し緩和できる範囲でできるだけ地域でいろいろな活動ができるようにする。
 これは文化財だから,これはしてはいけないとか,逆にこれはちゃんと証明された文化財でないから,そういう言い方をしてはいけないとか,そういう縛りをできるだけ緩くしていただいて,例えば伝統芸能祭りなどというのは,伝統と言っていますけれども,必ずしもそれは昔からやっているものと同じとは限らない。比較的新しいものでも,地域にとっての伝統芸能としてやっているものはたくさんあるわけですので,その辺の縛りを少し弾力的にしていただいて,地域が新しい芸術創造活動に場所を提供できる,そこでいろいろな人が活動していけるというための仕掛けを是非作っていきたい。それが結局,2020文化プログラムの全国展開という話にも多分つながっていくだろうと思っていますので,その辺を文化政策部会の中でも是非議論していただければと思っております。
 以上です。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 その関連でいきますと,地方にいらっしゃる方,大人ではなくて,例えば小中高とか大学とか,全国に文化系の大学がいっぱいございますよね。国公私を含めて。そういうところからでも大きな連合体みたいなものを作っていって,その地域発信ということをつなげていったら,面白くなっていくかもしれませんね。その辺のことも考えていきたいと思います。
 紺野先生,どうぞ。

【紺野委員】  この基本的な方針を拝見しまして,一つ感じたことです。日本全国津々浦々,あらゆる場所で様々な方が創作活動に参加していらっしゃると思いますが,そうした皆さんに共有体験をしていただく場所,お金をかけずに共有体験ができるイベントを実施するという具体的な動きを2020年に向けてどんどんしていっていただきたいと思います。
 例えば私が思いますのは,最近,ネット動画,一般の方も気軽に投稿できるネット動画のサイトがございますが,そのような場所で一つのキーワード,本当は誰にも教えたくないのだけれども,是非外国の方に伝えたい日本の景色をテーマに,実際にその場所で,例えば佐渡島の荒波を受けながら宮田会長とやすみさんが一句読む。それを例えば何月何日かの俳句の日,夕方4時から佐渡島で宮田会長とやすみさんがその場で1時間どんどん詠みます。全国の皆さん,海外に紹介したい,おらが村の絶景ポイントでも皆さんどんどん詠んで投稿してください。それでライブ感が生まれると同時に共有体験につながる。もしかしたら世界中で詠んでくださるかもしれない。
 そのイベントのみで終わるのではなくて,佐渡島の別の場所でこんな面白い句を詠んでいる人がいる。そういったものがどんどんネット動画に広がっていって,閲覧回数が増えていく。意外とそうしたことが集客につながると思うんですね。例えば和歌山県で何とかという駅に猫の駅長がいるとか,武蔵小金井のたばこ屋さんに店番をしている柴(しば)犬がいるとか,それを目当てに日本に来てくださる方というのは実際にいらっしゃるので,費用がさほどかからない文化のプレイベント,例えば仲道さんが清水の舞台で日本の名曲を弾くので,皆さん同時に弾きましょうとか,一緒にコーラスしましょうとか,そのようなことでいいと思うのですけれども,お金をかけずに世界中,日本中の人が参加できるようなプレイベントを継続していくことによって2020年にもつながっていくのかなと思いますし,日本中の皆さんに共有体験とか,連帯感とか,文化に対する関心が生まれるきっかけ作りにもなるのかなと思います。

【宮田会長】  ありがとうございます。
 ついこの間,双葉みらい学園の開校,入学式に行ってまいりまして,派手にやってまいりました。そうすると,子供たちがカチカチだったのが,いきなり踊り出してくれまして,やっぱりそういう勇気というのが大事かなと思いました。そういう意味では大変いい経験をしましたし,やっぱり最初の勇気,扉を開く勇気,これが大事かなという感じがします。あとは彼らがどんどん動いてくれますので,ありがとうございました。佐渡だけでなくて,いろいろなところでやって。
 ほかにございますでしょうか。片山先生。

【片山部会長代理】  片山です。引き続き副部会長を務めさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
 ワーキングで,この答申案を検討する中で議論したことと関連して,太下委員が先ほど発言したことについて少しお話しさせていただきたいと思います。太下委員は短期で取り組むべきこととして,地域レベル,地方レベルのアーツカウンシルを作っていくということが重要だと。そして,長期でレガシーのことをきちんと考える必要があるという御指摘をされたわけですけれども,そのレガシーとして何が必要かというと,多くの委員の方々が御指摘されていますように,人材の問題が非常に重要です。イベントをやってそれで終わりではなく,その後,各地域に人材がきちんと定着して活動を続けていく状態を作るということです。人材について,今回の基本方針の中では,単に育成とだけ書くことはやめましょうと言いました。雇用とか,配置とか,活用とか,その人たちが仕事としてそれを続けていけるところまでを担保しないといけない。育成だけして終わってしまったのでは持続しない。
 3ページの文化芸術立国の姿というところの4番目に文化芸術に従事する者が安心して希望を持ちながら働いている。そして文化芸術関連の新たな雇用や産業が現在よりも大幅に創出されているというところを描きました。文化庁がまとめる政策としては思い切ったところにまで踏み込んでいます。農業に例えれば,家庭菜園や第2種兼業農家ではなくて,専業農家や第1種兼業農家,そのレベルのところをきちんと充実させていかないと,レガシーとして続いていかないということだと思います。そこさえできれば,舞台芸術にしても,美術にしても,文化財にしても,いろいろな分野のものを推進していく体制が2020年以降もできるだろうということです。
 ですので,太下委員が短期的に,と指摘された地方レベルのアーツカウンシルがやらなければいけないことは,単に2020年に向けての20万件のイベントを考えることではありません。そのイベントの実施を通じてこうしたレガシー,つまり各地域で専門的な人たちが仕事として働いていける,そういう状況を作るための政策立案をすることがアーツカウンシルの仕事です。単にイベントをやるのではなくて,そういう中長期のことを展望できる政策をつくる。しかし,残念ながら現状の地方自治体の文化政策の担当者だけではこれはできないので,各地域において,大学とか,NPOとか,企業とか,いろいろな主体が集まってアーツカウンシルを作って,その地域の将来を考えた政策を作っていく。この辺からまず取り組むことがいろいろな分野の文化的な政策を実現していくためには重要なのではないかなと思います。

【宮田会長】  ありがとうございました。片山先生のちょうどそのプラスアルファを頂きました。
 あと1分になってしまいました。困ってしまいましたね。どうぞ。時間になりましたら,恐縮ですが,それぞれお忙しいと思いますので,中座とは申しません。どうぞ,お立ちになって結構でございますので。

【迫田委員】  国立国語研究所の迫田でございます。23ページと24ページに書いてあることについて少し簡単に申し上げたいと思います。特に日本語教育の普及と促進という観点からの意見を申し上げたいと思います。ここに書いてございますように,国際交流基金の2009年の調査と2012年の海外での日本語学習者の人口が365万から現在は398万人おります。このような形で海外での日本語教育,そしてもちろん国内での日本語学習者も増加をしております。その中でやはり多様性というものが求められていきます。たくさんの学習者の方が増えても,昔のような留学生ではなく様々な就労者,外国人の花嫁の方,そして,高度人材,そしていろいろな形で日本に滞在していらっしゃいます。その中で,もっともっと日本の良さを知ってもらうために,これまで幾つかの御意見が出てきたのですけれども,私もその中で文化芸術と言語教育の融合,発展を考えてはどうかというのが1点です。先日,国際交流基金賞を落語家のさん喬師匠がお取りになりましたが,それは単に落語が海外に認められたのではなく,落語を使って日本語教育を行うといったものです。こういったことをもっともっと私たちは文化との関係でもっと融合させて考えてはどうかと思います。先ほどどなたかが横のつながり,他ジャンルとの交流ということをおっしゃっていましたけれども,そういった意味でもっともっと言葉の教育と文化というものを融合させていけばいいのではないか。例えば朗読で日本語の美しさを伝えたりとか,歌で日本語の楽しさを伝えたりとか,それから,海外で調査を行って感じますのは,日本のテレビ番組が非常に受けております。
 もちろんアニメ,それから,漫画というのはよく知られていますけれども,最近では「半沢直樹」とか,「昼顔」とか,私も存じ上げないようなテレビ番組を彼らの方がよく知っていて,非常に興味を持っております。そういった意味で,ここに書かれている,もっとデジタルアーカイブ化を進めて海外に日本のものをもっともっと伝えて,それを言語教育に生かすということを考えていただきたい。海外で頑張っている日本語教師の人たちからも,いつも頼まれていることなので,是非お伝えしたい。
 もう一つ,お話ししたいのは,日本の良さを海外に発信するためには,日本人自身がその良さを知っていることが必要です。私たちは改めて「へえー」と思う,例えば先日,外国人が「どうして日本語を勉強するようになったのですか」と私が聞いた質問に,「いや,日本語には海外にはない言葉がありますよね。お疲れさま,御苦労さま,そして,頂きます,こういう言葉は外国になかなかないんですよ。日本語って美しいですね」と言われました。そういった日本語の良さ,あるいは逆に日本の良さですね。おもてなし,風呂敷,割り箸,いろいろな日本に固有のものが実は日本人が気づいていないことがたくさんある。そういったものをもっと気づかせる。
 もっと大事なのは,子供たちに日本語の面白さ,日本語のユニークさに気づいてもらって大切にしてもらいたいと思っています。私自身,実は英語教師から出発したのですけれども,英語教育を伸ばしていくためには,実は国語がとても大事なんです。そういった意味で,ここに書いてある国語の正しい理解が,実は日本語教育,外国語教育へ発展するということを是非申し上げて,2点,お示ししたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 それでは,申し訳ございませんが,少し時間が過ぎましたので,会長代理,ひとつどうですか。

【土肥会長代理】  御指名でございますので,一言だけ申し上げたいと思います。前回も申し上げたのですけれども,短期的にはやっぱり内外に発信するような日本の文化のポータルサイトを作っていただければと思います。それは日本全国に数千ある美術館,博物館,そういったものを一つにまとめて,それを日本語のみならず外国語でも併記して紹介をするような,そういうワンストップなポータルサイト,これを短期的に是非お願いしたいなというところです。
 もう一つは,中長期的には,皆さんの御意見を伺っていてなるほどと思ったのですけれども,やはり人材なんですね。私,文化庁の予算は大体1,000億というのは聞いているのですけれども,半分は保存なんですね。文化の保存。それからあとは支援が残りの半分でやるということなんです。例えば人材の純粋の真水のクリエイターの育成部分というのは,恐らく8.6%ぐらい。要するに86億ぐらいしかないと思うのですけれども,要するに人材育成ということになると,財源の上では非常に難しいんですね。先ほどから伺っていると,いわゆる文化財というものを単に文化遺産にとどめない,ということが求められているように思いました。
 文化遺産ではなくて文化資源,あるいはもっと,誤解を招くかもしれませんけれども,文化産業資源,そういうようなものとして運用し,転がしていけるような,そういう人材の育成というのも非常に重要なのではないかなと伺っていて思いました。したがって,中長期的にはそういう単に500億をかけて文化財を保存するということだけではなくて,それをどんどん活用できるような,そういう持続的なシステムを中長期的に考えていただくということも大事ではないかなと思っていた次第でございます。ありがとうございました。

【宮田会長】  ありがとうございます。いわゆる生きた文化財ということでございます。
 そう言えば先ほどの話ですけれども,おもてなしとか,日本はいろいろな言葉がいっぱいありますよね。ドイツでは,僕は「Bitte Bitte」だけだったですね。それで何とかなったような気がするのですけれども,本当に日本の「おもてなし」,いろいろな部分の言葉の中には複雑な,しかも,心に響くものがございます。
 時間が尽きましたが,やはりここで先生方の中で御発言がまだなかった方もいらっしゃいますが,次回以降,たっぷりとお話を頂くということにしていただいて,最後に長官から一言,お願い申し上げたいと思います。

【青柳長官】  今いろいろすばらしい御意見を頂いて,これからの文化庁のいろいろな仕事の中で是非役立てていきたいと思いますが,今,私,一つだけ申し上げたいのは,我々を取り巻く状況のことについて簡単に御説明申し上げます。文化庁予算は1,000億円ちょっとなのでございますけれども,今,国が大変な赤字,世界にも類を見ない,実際は1,000兆超えているのではないかというぐらいになっていて,財源がない限り予算が増える可能性はございません。そのために今まで文化庁の中でのそれぞれの事業を,それぞれギリギリまで削り落として新しい事業を立ち上げるというようなことをやってきて,それもなかなかこれ以上財源を見つけることは難しい状況になっております。そういう中で,だけど,文化の重要性というのはどんどん高まっているのでどうすればいいのか。
 今日,いろいろな方々からお話がございましたように,国の予算だけではなくてNPOやNGOや,あるいは企業や個人,そういう方々といかに協力関係を結んでいくかということが大切だということをつくづく思いました。その中で皆さんが人材というものが重要だというのは,これは今申し上げたような国の予算の限界というものを超えるためにも,この人材というものが非常に大切である。そういう意味で,今回から委員になってくださいました大南さんなどは地元でずっと長年そういうことをやってきてくださっているので,是非是非いろいろな意見を頂きたいと思います。
 それからもう一つ,今,多様性というものがユネスコでも,あるいは国連でも維持するために文化というものが一つの切り札であるということは盛んに言われております。しかし,では,文化というものは何かというので,我々,やっぱりもっと文化の概念を拡大しなければいけないと同時に,もう一つは文化というものが感動や,あるいは興奮や非日常的なものを味わわせてくれるということでの,いわゆる伝統的な考えから,むしろ,日常生活の中で,ギリギリでやっていらっしゃる方は,そのギリギリの日常生活を客観的に見ること自体を怖がっている方もたくさんいらっしゃるんですね。そういう方々をも文化というものに少しでも触れていただいて,じわじわと少しずつ,その日常生活を豊かにしていく方向にするにはどうすればいいのかというようなことが,我々,今,問われているのではないか。
 そして,それが例えば今の健常者中心の社会である日本の中で,いろいろなマイノリティの方々が当然のこととして存在し,その健常者の社会と対等にあり得るようなものができてきて本当の多様性が実現されていくのではないか。そして,それぐらいの多様性が実現されれば,本当のサステイナビリティにつながるのではないかなということを感じております。そういうような状況が今現在ある。そして,最後に2020年があるわけですけれども,恐らく太下さんがさっきおっしゃったようなHowの部分が本当に重要で,だけどやっぱり,その先にまでサステイナブルな文化プログラムとなるには,今現在行われている文化プログラム,町や村のお祭りであるとか何とか,そういうもののちょっとしたお化粧直しというようなことでも十分にその20万件のプログラムに入り得るのではないか。そういうことも是非是非御検討いただければと思います。
 以上でございます。

【宮田会長】  ありがとうございます。大変いいお話をちょうだいいたしました。
 よくある話ですが,貧すれば鈍するということがありますけれども,清貧に前向きに生きるということも,これはとても大事なことではないかと感じました。済みません,時間が10分ばかり超過してしまいましたが,大変すばらしいお話を頂戴いたしました。同時に,今日,再度申し上げますが,今日御発言のなかったというか,少なかったという方は是非是非今後の会議が盛り上がると,そのきっかけ作りを作ってくれた。そのために今日,発言しなかったというふうな感じでいきたいと思っております。
 それでは,事務局,お願いいたします。

【三木調整官】  次回の日程は,また追って御調整をさせていただきます。政策部会,昨年は10回も答申案を作っていただくために濃密に集まっていただきましたが,今年度は順行軌道の回数で考えておりますので,また御相談させていただきます。

【宮田会長】  ありがとうございました。
 この後は先ほども申しましたが。本日これから,私と熊倉部会長から下村文科大臣に答申をお渡しさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。皆様,ありがとうございました。

── 了 ──

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