第15期文化審議会第3回総会(第66回)及び第13期文化政策部会第5回合同会議

平成28年3月14日

【三木調整官】開会に先立ちまして,配布資料の確認をさせていただきたいと思います。
 資料最初の,議事次第に配布資料の一覧がございます。こちらのものが同封してありますけれども,1つ目が,「資料1 各部会・分科会からの報告」です。基本的に,それぞれ右肩の上に,資料番号が打っております。「資料2-1 文化庁予算(案)について」,資料2-2,A4横ですけれども,「文化プログラムの実施に向けた文化庁の取組について」という資料。それから,配布資料の一覧には載っておりませんけれども,「資料2-2 参考資料」も付けております。それから,「資料3-1 中央省庁の地方移転の基本的考え方(案)」が,1枚。それから,資料3-2,これも1枚ですけれども,「中央省庁の地方移転の基本的考え方(案)のポイント」というもの。参考資料といたしまして,「平成27年度著作権分科会における審議状況について」という資料でございます。最後は,湯浅委員から御提供いただきました,3月21日の障害のある人々の芸術についてのフォーラムと,トレーニングについての御案内の資料でございます。そのほかは,机上資料等でございます。
 私からは,以上でございます。会長,よろしくお願いいたします。

【宮田会長】大変お足元の悪く,また,えらい寒いときに御参集いただきまして,誠にありがとうございます。
 本年度最後の会議となると思います。文化審議会第3回総会並びに13期の文化政策部会第5回合同会議でございますので,よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 本日は,今期各部会・分科会の審議状況,それから,文化庁の予算,文化庁の文化プログラムの取組,最後に,その他として,文化庁京都移転について議論を行いたいと思っておりますので,よろしく御協力のほど,お願い申し上げます。
 それでは,すぐ審議に進めさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
 それでは,議題の1番目でございます。今期の各部会・分科会の審議状況の御報告をお願い申し上げます。
 まず,第1に,文化政策部会審議状況等について,熊倉部会長から,御報告のほどお願い申し上げます。

【熊倉委員】御報告を申し上げます。
 資料を開いていただきますと,1ページ目に概要がございます。文化政策部会の今年度の審議状況と今後の課題について,簡単に御説明させていただきます。
 文化政策部会におきましては,平成27年5月22日に閣議決定いたしました第4次基本方針,「文化芸術の振興に関する基本的な方針 -文化芸術資源で未来をつくる-」に基づく施策の実施状況や方向性などについて,議論を行いながら,合計5回にわたる審議を行いました。
 特に,今年度は,日本版アーツカウンシウルの試行的な取組が最終年度となり,28年度からは本格実施を予定していること,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などを契機とした文化プログラムを,全国津々浦々で実施していく状況を踏まえまして,文化施策の推進体制の充実に向けて,議論を行いました。
 具体的には,日本芸術文化振興会より,日本版アーツカウンシルの試行的取組の状況について,ヒアリングを行ったほか,文化芸術活動に対する助成システムの機能充実及び地域の文化施策推進体制の構築についても,議論を行いました。また,文化政策部会委員が,地方各地の文化芸術施策に係るシンポジウムに参加いたしまして,第4次基本方針や,文化プログラムの推進方策について周知を図るとともに,地方の文化芸術政策の推進に携わる行政職員などと意見交換も行いました。
 今後の本部会における審議内容でございますが,政府方針等を踏まえまして,文化芸術資源を活用した,経済活性化に向けた政策の在り方について議論を行うほか,文化プログラムの全国津々浦々での推進についての審議を,引き続き行ってまいります。
 また,第4次基本方針の実施に当たって,文化芸術振興の諸課題についての審議も行っていく予定です。
 以上でございます。

【宮田会長】熊倉部会長,ありがとうございました。
 それでは,次に移らせてもらいます。美術品補償制度部会審議状況でございます。こちらは,馬渕部会長,お願い申し上げます。

【馬渕委員】はい。美術品補償制度部会の審議状況の御報告をいたします。
 今期の審議状況でございますが,まず資料1の2ページを御覧いただきたいと思います。
 美術品補償制度部会は,展覧会における美術品損害の補償に関する法律に基づきまして,展覧会のために借り受けた美術品の損害を政府が補償する契約を,展覧会の主催者と締結することの可否について,審議を行っております。
 今期の部会におきましては,申請がありました展覧会5件について審議を行いまして,いずれも補償契約を締結することが適用である旨を答申いたしました。具体的な展覧会の名称は,2ページの表にあるとおりでございます。5点,表に載っております。
 また,資料の3ページですが,今期は美術品補償制度の在り方に関しても,引き続き検討を行いました。美術品補償法は,平成23年6月1日施行されておりますが,この法律の附則において,政府は,この法律の施行を,3年をめどとして,この法律の施行の状況,社会経済情勢の変化等を勘案し,補償契約による政府の補償の範囲について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,所要の措置を講ずるものとすると規定されております。
 このため,制度創設以来の運用実績を踏まえまして,補償契約による政府の補償の範囲を含め,美術品補償制度の在り方について検討を行い,平成27年7月に審議のまとめを取りまとめました。その概要は,4ページのとおりですので,お時間のあるときに,後ほど御覧なっていただければと思います。
 今後の課題といたしまして,引き続き,補償契約の締結の適否に関する個別審議を行っていくとともに,審議のまとめに記載された制度の改善について検討することとしております。その一つとして,今月末までに申請要領の改訂等行って,申請書類の簡素化を図ることとしております。
 簡単に申し上げれば,一応,保険金の補償額50億というラインが,非常に高いものでありまして,かなり大きな展覧会でないと,なかなかこれを利用できない問題がございます。それを,部会では,なるべく下げていただきたいという希望を申し上げておりますが,なかなか,それがうまくいかなかったこと。それから,できることとしては,申請書類の簡素化,つまり,既に申請書類を通過した美術館等がございますので,そういうところは,2度目以降は,もっと簡素に書類を製作できる方向に進んでおります。
 簡単ではございますが,説明は以上とさせていただきます。

【宮田会長】はい,馬渕委員,ありがとうございました。
 それでは,続きまして,世界文化遺産・無形文化遺産部会の審議状況について,加藤記念物課長から,御報告をお願い申し上げます。

【加藤課長】失礼いたします。本日は,西村部会長が,御都合により欠席でございますので,事務局から代わって御説明させていただきます。記念物課長でございます。
 資料1の5ページを御覧いただきたいと思います。世界文化遺産・無形文化遺産部会における審議状況と今後の課題について,御報告申し上げます。
 まず,これまでの審議状況でございますけれども,部会の下に世界文化遺産特別委員会を設置しまして,世界遺産条約に基づく一覧表に推薦する候補についての調査審議を行いました。
 世界文化遺産特別委員会の意見を踏まえまして,平成27年度につきましては,部会として,「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を選定いたしました。また,そのほかに,「北海道・北東北の縄文遺跡群」,「金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群」,「百舌鳥・古市古墳群」の準備状況について検討を深める必要がある事項を整理いたしまして,推薦準備を進めている関係地方公共団体に伝達を行った次第でございます。
 また,平成25年度に世界遺産登録がなされました「富士山 -信仰の対象と芸術の源泉-」につきまして,登録時,世界遺産委員会の指摘事項に従っての保全状況報告書を提出すること,及び,「紀伊山地の霊場と参詣道」につきましても,保護の水準を更に引き上げることを目的に,資産範囲の軽微な変更を提案することについて,御了承を頂きました。
 平成26年度の推薦案件として了承を行って,その後,政府から推薦を行っておりました「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」についてでございますが,既に報じられているところでございまして,委員の皆様も御承知の点かと思いますが,イコモスから推薦内容の見直しを求める中間報告が届きまして,イコモスから直接の助言も受けながら,推薦書の改定を行うことで,一旦推薦を取り下げることとして,部会了承がございました。政府からは,平成28年2月9日付で推薦の取下げが行われているところでございます。
 また,無形文化遺産の関係でございますけれども,やはり,部会の下に,無形文化遺産特別委員会を設置いたしまして,無形文化遺産保護条約に基づきます人類の無形文化遺産の代表的一覧に,「来訪神:仮面・仮装の神々」を記載すべく,ユネスコに対して提案することについての調査審議が行われました。その後,部会における調査審議を経まして,文化審議会として,提案候補とすることが了承されたものでございます。本件につきましては,無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議を経まして,平成28年3月までに,この後,誤植が入って,大変失礼いたしました。「仮面・仮装」でございます,「来訪神:仮面・仮装の神々」の提案書が,ユネスコへ提出されることとされております。
 今後の課題でございます。引き続き,関係の両条約の実施に関する事項について,調査審議を行う予定であるということでございます。
 御報告は,以上です。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 それでは,今までの中で,御質問等ございますか。よろしゅうございますね。
 それでは,次に,文化庁の予算案について,平成28年度……,失礼いたしました。
 国語分科会の審議状況でございます。岩澤分科会長,よろしくお願いいたします。

【岩澤委員】それでは,国語分科会の審議状況について,御報告いたします。
 資料は,6ページ以降になります。
 国語分科会では,去年4月17日,今期第1回分科会を開きまして,漢字小委員会及び日本語教育小委員会の2つの小委員会を設けて,審議をしてきました。
 資料1に,2つの小委員会の審議状況をまとめたものを載せております。
 まず,漢字小委員会の審議状況について,報告します。漢字小委員会では,平成25年2月の国語分科会で,「今後取り組むべき課題について(報告)」で取り上げられました「常用漢字表の手当てについて」のうち,「「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成について」を取り上げ,平成26年度から2年間にわたり検討してきました。
 その結果,去る2月29日の国語分科会において,「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」が了承されました。この指針は,平成22年に改訂しました常用漢字表の字体についての解説を,より分かりやすく,具体的に説明しようとしたものです。
 もともと,伝統的な漢字文化においては,多様な形の手書き文字が認められてきました。常用漢字表でも,印刷文字の標準字体を示しつつ,手書き文字の多様性を尊重し,手書き文字の字形と印刷文字の字形には,表現の習慣に基づく違いがあること,手書きの楷書でも,いろいろな書き方があることを示してきました。しかし,近年,情報化の進展により,漢字を手書きする機会が減っていることから,印刷文字と手書き文字の違いが理解されにくくなり,どちらか一方が正しいとみなされたり,手書き文字の細部に必要以上に注意が向けられ,正誤が判断される傾向も生じています。
 そこで,この指針では,手書き文字の字形と印刷文字の字形には,表現の習慣に違いがあり,一方だけが正しいというわけではない,また,文字の細部に違いがあっても,骨組みが同じであれば,誤っているとはみなされないことを,概要に「命令」の「令」の字についての例を示したとおり,Q&A方式の説明や,常用漢字2,136字全てについて,印刷文字と手書き文字の例を示す字形比較表などによって,詳しく説明をしております。これにより,漢字の字体,字形に関する理解が広まり,誰もが安心して漢字を用いたコミュニケーションができるようになることを,期待しております。
 なお,今回の指針につきまして,学校での漢字教育について,多数問合せがあり,社会の注目も高くなっています。先日,国会でも,学校教育への影響についての質問がありました。そこで,本日は,実際に議員から出されました質問と,それに対する文部科学大臣の回答を,抜粋ではありますが,参考資料として付けております。当指針の概要と合わせて御覧いただき,常用漢字表における漢字の字体,字形に関する考え方と,学校における漢字教育について,御承知おきくだされば幸いでございます。
 次に,日本語教育小委員会の審議状況について,御報告します。
 日本語教育小委員会では,平成25年2月に,課題整理に関するワーキンググループが取りまとめた「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と論点の整理について(報告)」で整理した11項目の論点のうち,「論点7 日本語教育のボランティアについて」「論点8 日本語教育に関する調査研究の体制について」の2つについて,平成26年度から2年間検討してきました。その結果,去る2月29日の国語分科会において,「地域における日本語教育の推進について(報告)」が了承されました。
 論点7については,国,都道府県,市区町村におけるボランティアを含めた実施体制の考え方について示すとともに,各地における日本語教育体制の構築事例を,6つのポイントから紹介をしております。
 論点8については,地方公共団体が行っている外国人の日本語教育に関する調査項目の共通化について提案しています。これは,共通化された調査項目により実施された,外国人の日本語教育に関する調査結果を,文化庁において収集・分析することによって,外国人の日本語教育の全国的な状況を把握するとともに,関係者との情報共有により,今後の日本語教育施策の企画・立案に役立てることを目的としたものです。
 なお,来期の国語分科会では,国語施策に関しては,平成25年2月の国語分科会で,「今後取り組むべき課題について(報告)」において,課題としてあげられたもののうち,言葉使いについて,コミュニケーションの在り方についてを中心に,検討を行う予定です。
 日本語教育に関しては,平成25年2月の「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と,論点の整理について(報告)」で整理した11項目の論点のうち,「論点5 日本語教育の資格について」「論点6 日本語教員の養成・研究について」の2つについて,検討を行う予定にしております。
 国語分科会の報告は,以上です。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 それでは,次に移らせていただきます。著作権分科会の審議状況でございます。土肥分科会長,お願いいたします。

【土肥会長代理】はい,報告申し上げます。
 今期の著作権分科会における審議状況等について,資料1の12ページを御覧ください。
 著作権分科会では,平成27年6月に,法制・基本問題小委員会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,そして,国際小委員会,この3つを設置し,検討を進めてまいりました。
 まず,法制・基本問題小委員会における審議の経過等について,御報告申し上げます。
 今期の法制・基本問題小委員会では,環太平洋パートナーシップ協定,いわゆるTPP協定でございますけれども,この協定への対応,教育の情報化の推進,障害者のアクセス改善を目的とするマラケシュ条約への対応,著作物等のアーカイブ化の促進,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定や,ライセンシング体制等の在り方について,検討を行ってまいりました。
 まず,環太平洋パートナーシップ協定への対応についてでございますけれども,12ページのマルの2つ目でございます。昨年10月に,TPP協定が大筋合意に至ったことを受けまして,小委員会において,集中的な検討を行いました。関係団体から意見聴取も踏まえ,検討を進め,本年2月に環太平洋パートナーシップ協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書を取りまとめております。
 報告書の概要は,参考資料がございますけれども,その1ページから4ページにございますので,適宜御参照いただきたく存じます。
 報告書におきましては,TPP協定に伴い,制度整備を要する事項として,1つに著作物等の保護期間の延長,2つ目に著作権等侵害罪の一部非親告罪化,3つ目にアクセスコントロールの回避等に関する措置,4つ目に配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与,5つ目に損害賠償に関する規程の見直し,これら5つの事項に関して,著作権法上の制度整備の在り方につき,提言を行いました。あわせて,施行日やTPP協定を契機として,なお検討すべき措置等についても,提言をしておるところでございます。この報告書の内容を踏まえた著作権法の改正案が,現在国会に提出されていると承知しております。
 次に,12ページの(2)でございますけれども,教育の情報化の推進に関する審議状況について,御説明いたします。
 本課題につきましては,教育関係者から,授業の過程における著作物等の送信,教員間あるいは教育機関の間における教材等の共有,MOOCなど一般人向けの公開講座における著作物等の送信,この3点に関して要望がございまして,これらに関する権利制限規定による対応の是非等につき,権利者団体からも意見を聴取した上で,検討を行いました。
 この中で,授業の過程における著作物等の異時送信に関しましては,権利制限規定による対応について,おおむね肯定的な意見が示されております。今後は,教育関係者と権利者との間で行われております,著作権法の適切な運用に向けた協議の状況を注視しつつ,更に検討を進めることといたしております。
 次に,マラケシュ条約への対応について御説明申し上げます。これは,13ページでございます。本課題につきましては,昨期,権利者団体及び障害者団体の間で,意見集約に向けた取組が行われ,その上で検討をすることとされておりました。そこで,今期は,文化庁によるコーディネートの下,その取組が行われていると承知しておるところでございます。この取組を,引き続き注視いたしますとともに,その結果を踏まえて,改めて小委員会において,継続して検討を行っていく予定でございます。
 それから,著作物等のアーカイブ化の促進について,御説明申し上げます。これは,(4)でございますが,本課題について,昨期の小委員会において示された対応の方向性を踏まえ,今期は,文化庁において,所蔵資料を保存のため複製することができる施設の範囲の拡充,及び権利者が不明の場合に著作物を利用できる裁定制度の改善が行われた旨,報告を受けております。このほか,さらなる制度整備に向けた関係者からの意見聴取や,調査研究も実施されておるところでございます。
 次に,(5)でございますけれども,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定や,ライセンシング体制等の在り方に関する審議状況について説明いたします。
 デジタルネットワークの発達に伴い,著作物等の利用に関するニーズが,新たに生じている状況を踏まえ,これらに関する課題を集中的に検討するため,昨年7月,小委員会の下に,新たにワーキングチームを設置いたしました。
 今期は,国民から寄せられたニーズに基づき,課題の整理及び優先順位付け等々を行い,優先的に検討すべきとされたニーズにつき,権利制限規定による対応の是非の検討を行いました。その結果,一定のサービスに係るものに関しましては,権利制限規定により,対応する正当化根拠となり得る社会的な意義につき,肯定的意見が示されているところでございます。
 今後,権利者団体の意見も聴取し,規定の柔軟性の内容や程度を含め,具体的な制度設計の在り方を検討することといたしております。
 それから,同じく13ページの,一番下のマルでございます。著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会における審議の経過等について御報告いたします。
 本小委員会では,クリエイターへの適切な対価還元に係る課題や,クラウドサービス等に係る円滑なライセンシング体制への構築に係る課題につき,検討を行いました。
 まず,(1)でございますけれども,クリエイターへの適切な対価還元に係る課題につきましては,昨期に引き続き,関係者からヒアリングを行い,その上で,今後,私的録音録画に係るクリエイターへの対価還元につき,その現状,権利者に補償すべき範囲,対価還元の手段,この3つの論点に沿って,今後,更に検討を進めていくこととなりました。
 1枚めくっていただいて,14ページでございます。クラウドサービス等に係る円滑なライセンシング体制の構築に係る課題につきましては,昨期取りまとめたクラウドサービス等と著作権に関する報告書の提言を踏まえ,現在,音楽関係権利者3団体において,仮称でございますけれども,音楽集中管理センターの設立に向けた準備が進められておると承知をしております。
 次に,最初のマルでございますけれども,国際小委員会における審議の経過等について,御報告いたします。今期の国際小委員会では,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,著作権分野における国際的な課題や論点の整理,これら3つの課題について審議を行いました。
 まず,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について,御説明いたします。今期は,インドネシアにおける著作権侵害実態調査の結果報告や,侵害発生国・地域における海賊版対策の政府の取組,関係業界における取組について,報告が行われました。今後,TPP協定の発効に伴い,関係国への日本コンテンツの輸出増が期待され,関係国における侵害対策の強化が見込まれることを踏まえ,国境を越えた海賊行為に,一層対応していくことが必要であるとしております。
 次に,(2)でございますけれども,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方につきましては,WIPOにおける議論について報告が行われました。
 放送条約については,各国における議論の動向等も踏まえつつ,積極的に対応していくべきであるとされております。また,権利の制限と例外の議論については,引き続き既存の条約に規定された,いわゆるスリーステップテストの考え方を踏まえ,適切な議論を行うことが必要である,このような方針を維持すべきとされております。
 それから,著作権分野における国際的な課題や論点の整理でございます。これらにつきましては,国際的な動向を把握するため,有識者からヒアリングを行っております。
 14ページの,下から2つ目のマルでございますけれども,使用料部会でございます。著作権分科会では,各小委員会における検討のほか,使用料部会において,平成27年度の教科用図書等掲載補償金等につき,審議を行っております。
 まとめとして,以上,今期の著作権分科会における審議状況について,御説明申し上げました。
 なお,審議の状況の詳細や開催状況,委員名簿等につきましては,参考資料として付けておりますので,それを御参照いただければと存じます。
 今後につきましては,引き続きの検討が必要とされた課題を含め,著作権制度に関する諸課題につき,来期以降の分科会におきまして,順次検討を進めてまいりたいと考えております。
 私からの御報告は,以上でございます。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 著作権に関しては,大変難しい問題がいっぱいございますね。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは,文化財分科会の審議の状況でございます。これは,薦田委員,お願い申し上げます。

【薦田委員】はい,御報告申し上げます。
 今期,第15期の文化審議会文化財分科会における審議状況等について,御報告いたします。
 資料1の15ページを御覧ください。文化財分科会では,文化財保護法第153条の規定により,文部科学大臣又は文化庁長官から諮問された案件について,調査,審議を行っております。
 今期は,分科会を11回開催し,国宝・重要文化財の指定等182件,登録文化財の登録等559件,重要文化財や史跡等の現状変更の許可等1,788件の,合計2,529件について,答申を行いました。
 答申を行った文化財のうち,代表的な事例を御紹介いたします。17ページを御覧ください。
 国宝,重要文化財,美術工芸品については,国宝4件を含む59件の指定等について答申しました。このうち,本年3月の第168回分科会においては,紙本金地著色洛中洛外図岩佐勝以筆六曲屏風を国宝に指定するよう答申しました。
 本件は,江戸時代初期に活躍し,浮世絵の祖と言われる岩佐勝以の代表作です。おおむね東山から下京辺りの景観が,左右隻連続して描かれており,人々の様子が,大変密度の高い描写で生き生きと表現されています。文化史的に,美術史的に,また,都市景観を研究する上でも,大変重要な作品です。
 次のページを御覧ください。史跡名勝天然記念物については,82件の指定等について答申しました。このうち,11月の第164回分科会においては,西山御殿跡(西山荘)を史跡及び名勝に指定するよう答申しました。
 西山御殿跡(西山荘)は,茨城県常陸太田市にある,水戸藩2代藩主徳川光圀が隠居した際に住んだ邸宅跡です。関東平野の北端に位置し,建物は茅葺(かやぶ)きに土壁という簡素なものです。光圀は,ここで領内の巡検をしながら,国宝「那須国造碑」の修理や,史跡「侍塚古墳」の発掘,「大日本史」の校閲などを行っていました。光圀の没後,この建物は,解体,再建,消失を経て,元禄期の3分の1程度の規模で再建され,今日に至っています。なお,東日本大震災により被災したため,平成24年から27年にかけて,建物の解体修理が行われました。御殿の現在の間取りを,光圀の死去の直後に作られた資料と比較すると,当時のものが忠実に再現されていることが分かります。また,池をつなぐ水路や滝が整えられ,門や文庫なども,当時と同じ位置に再現されており,光圀の理想とした風景を今に伝えています。西山御殿跡は,徳川光圀が隠居し,「大日本史」を編纂した記念碑的な場所であり,光圀の作り上げた風致景観を,現在もたどることができ,重要です。
 次のページを御覧ください。重要無形文化財については,4件の指定等について答申いたしました。このうち,7月の第161回分科会においては,觀世三千子(芸名 井上八千代)氏を,重要無形文化財「京舞」の保持者に認定するよう答申いたしました。
 京舞は,主に座敷舞として発展した京阪における舞踊の一つで,京都祇園に根ざした井上流によって伝承されており,江戸後期に初世井上八千代が基礎を築き,品格高い舞の要素に,能楽や人形浄瑠璃,文楽からの題材や所作も加わって継承され,現在に至っています。女性により伝えられてきた舞であり,その表現は,柔らかな中にも,鋭敏で直線的な所作が含まれるなど,極めて特徴的な技法となっています。井上八千代氏の特徴は,伝統的な京舞の技法を高度に体現し,卓抜した技量によって,積極的な舞台活動を展開するとともに,京舞井上流五世家元として流派をけん引するのみならず,これまでに,芸術選賞,文部大臣賞,日本芸術院賞,紫綬褒章などを受けるほか,日本芸術院会員にも選ばれるなど,その技芸は高い評価を得ており,後進の指導,育成にも尽力をされています。
 以上が,今期文化財分科会の審議状況の内容でございます。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 さて,それでは,これから,自由討議に入らせていただきたいと思います。
 以上,3つの部会と3つの分科会から,それぞれ審議状況や今後の課題について御報告がございました。それでは,これより,意見交換をいたしたいと思います。どの分科会や部会からでも結構でございます。お時間を少し頂戴したいと思いますが,いかがでしょうか。
 立派な御報告があったので,また何か御質問があったら,その後でも結構でございますので,次に進ませていただくということで,よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
 それでは,最近の文化政策について,次の議題に移りたいと思います。議題2になります。「文化庁の予算(案)について」になりますが,平成28年度の文化庁予算案で,事務局から御報告いただけたらと思います。

【吉田室長】それでは,平成28年度文化庁予算(案)について,説明させていただきます。
 私,文化庁政策課会計室長,吉田と申します。よろしくお願いします。
 まず,資料2-1をごらんください。「文化庁予算(案)の概要」という資料でございますけれども,最初の1ページ目でございます。1番上の箱囲みの中にありますように,文化庁予算総額につきましては,28年度予定額として1,040億円,対前年度2億円増,率にして0.2%の増となっております。
 内容につきましてですが,中ほど,1番,「豊かな文化芸術の創造と人材育成」とありますが,その中の(1),「文化芸術立国実現に向けた文化プログラムの推進」ということで,対前年度で8億円の増,135億円になっております。内容につきましては,1ページから2ページの中ほどまでにさいてある事業でございますけれども,地方自治体が企画する事業や,文化芸術団体の支援,また,障害者の方々の行う芸術活動支援などを行うこととして,それぞれ少しずつではございますけれども,増額を図ってございます。
 この経費によりまして,各地域や芸術団体が実施する東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化プログラムの取組について,国として支援していきたいと考えております。
 2ページ目を御覧ください。2ページ目の真ん中あたり,「芸術家等の人材育成」でございますけれども,「文化芸術による「創造力・想像力」豊かな子供の育成」で,小・中学校への実演芸術の巡回公演,芸術家の派遣などによる質の高い文化芸術の鑑賞,体験機会の提供,また,子供たちが親とともに伝統文化・生活文化などを体験できる機会を提供する事業について,前年度同額を提供してございます。
 次に,2ページ目の一番下でございます。2番として,「かけがえのない文化財の保存,活用及び継承等」で,451億円とありますが,ここからは,文化財関係の予算についてでございます。
 まずは,マル1「日本遺産魅力発信推進事業」とありますが,これは,各地域に点在する史跡,伝統芸能など,有形・無形の文化財をパッケージ化して,我が国の文化・伝統を語るストーリーとして,日本遺産に認定する仕組みを,27年度から始めまして,初年度18件を認定いたしました。28年度におきましても,同規模程度を新規認定したいと考えております。また,日本遺産については,2020年までに,100件程度を認定したいと考えております。
 続きまして,3ページ目。上から3番目にございます,マル4「美しい日本探訪のための文化財建造物活用事業」とありますけれども,観光資源としての文化財の魅力向上を図るため,重要文化財の建物について,構造に影響がない壁とか屋根の外観,公開範囲の押し上げに掛かる箇所を,健全で美しい状態に回復させる事業の支援として,新規に2億円を計上したところでございます。
 次に,その下の(2),マル1「建造物等の保存修理等」とありますように,国宝,重要文化財建造物近代化遺産,伝統的建造物群の保存修理等についても,文化財の次世代への継承とともに,魅力ある観光資源としての活用を推進するということで,その増額を図ったところでございます。なお,建造物の修理につきましては,27年度補正予算においても,5億円の計上をしたところでございます。
 最後,4ページ目でございますが,3番「我が国の文化芸術の発信と国際文化交流の推進」とありますけれども,芸術家の方々の海外フェスティバルへの参加や出展,国内における国際フェスティバルの開催,また,文化芸術活動による国際交流などについての支援を,引き続き実施したいと考えております。
 その下,4番,「文化発信を支える基盤の整備・充実」で,ここには,日本芸術文化振興会の運営交付金に,日本版アーツカウンシルの実施経費を計上するとともに,国立の美術館,博物館などの文化施設の多言語化,観覧・観賞環境の充実を図っていきたいと考えております。
 最後,一番下,1行書いてあるだけでございますけれども,東日本大震災からの復旧・復興対策で,東日本大震災復興特別会計におきまして,被災した国指定の文化財の保存修理や,被災した博物館資料の修理について,引き続き実施していくための経費として,11億円を計上してございます。
 以上,大変駆け足の説明になって申し訳ございませんが,これで,予算の説明とさせていただきます。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 それでは,続きまして,文化プログラムの実施に向けた文化庁の取組でございます。資料2-2でございます。

【富田企画官】はい,文化プログラム推進企画官をしております,富田でございます。
 私からは,資料2-2と,資料2-2の参考資料がありますので,それに基づきまして,御説明させていただきたいと思います。時間も限られており,簡単に御説明をさせていただきます。
 まず,資料2-2の,1枚めくっていただきまして,今回の文化庁が実施する文化プログラムの推進について,基本的な考え方です。文化芸術立国の実現のために,今回の東京オリンピック・パラリンピック競技大会や,ラグビーワールドカップ2019等,いろいろな,そういった機会を生かしまして,それ以降も,多様な文化芸術活動の発展や,文化財の着実な保存・活用を目指し,国と東京都が一体となって推進する文化プログラム「beyond2020プログラム」の下に,文化庁といたしましては,2016年秋から,全国津々浦々で実施する文化プログラムを,「文化力プロジェクト(仮称)」として実施したいと考えております。
 また,政府が主体となる文化プログラムのキックオフ会議として,今年10月に,スポーツ・文化・ワールド・フォーラムを,文部科学省とともに開催いたします。
 今,出てきておりました「beyond2020プログラム」ですけれども,資料2-2の参考資料を御覧になっていただきたいと思います。
 先日,3月2日の文化関係の関係省庁会議で,文化庁も含め,内閣官房オリ・パラ事務局とともに,提案して上奏されたものですけれども,これが,2020年以降を見据え,国と東京都が一体となって展開する文化プログラムを,「beyond2020プログラム」(仮称)と位置付けて,政府と東京都,地方自治体等が一体となって,機運を盛り上げていこうというものでございます。
 1枚めくっていただきまして,参考1です。ロンドンオリンピックのときも,英国政府のグレートキャンペーンがございましたけれども,こういったものを意識しながら,今後進めていきたいと考えております。
 また資料2-2に戻っていただきまして,続きまして,資料2ページの「文化力プロジェクトのコンセプト(案)」について,御説明させていただきます。
 文化庁が実施する文化プログラム,文化力プロジェクトのコンセプト案として,現在,私どもとしては,以下の3つを主な項目として考えております。
 1つ目が,日本の多様な文化力を高め,国民生活の質を向上する。2つ目は,文化芸術を資源として,他分野との融合により,イノベーションを創出し,社会的・経済的課題を解決するとともに,文化GDPを増大する。3つ目ですけれども,文化芸術により世界の人々との交流を進め,世界平和に貢献する。
 こういったコンセプト案を元に,次の3ページになりますけれども,文化庁が進める文化プログラムとしては,3つの枠組みを考えております。1つ目が,文化庁や国が率先して指導するプロジェクトを通じて,実施するもの。2つ目が,従来どおり,文化庁が,地方公共団体や芸術団体に対して,いろいろな文化芸術活動の取組に対して,支援を行ってまいりましたので,そういった取組,支援を充実させることが2番になります。3番目につきましては,文化芸術活動が,もっと幅広く,民間や様々な芸術団体,いろいろなNPO団体が幅広くやる活動も,後方的に支援をすることとして取り組んでいきたいというものが,3つ目でございます。
 4ページ目に移らせていただきます。そういった中で,28年度に具体的に実施する事業について,幾つか紹介させていただきます。
 まず,国が取り組む,国(独法等)が主導するプロジェクトといたしましては,文化プログラム推進体制や環境を整えたいと考えております。まず,文化庁長官の下に,アドバイザリーボードを設置いたしまして,検討推進体制を強化するとともに,全国で展開する文化プログラムの情報を,総括的に一括で統括するポータルサイト,文化情報プラットフォームを構築して,国内外に,日本全国の文化芸術活動を発信したいと考えております。また,文化力プロジェクト,文化プログラムの中から,表彰するような新しい検証制度も考えていきたいと考えております。
 また,下になりますけれども,具体的なプロジェクトといたしましては,リオ大会にありますジャパンハウスに,文化庁としても出店しまして,日本文化をPRしていきたいと思っておりますし,先ほども触れました,スポーツ・文化・ワールド・フォーラムなどを通じて,文化を通じた機運醸成につなげていきたいと考えております。
 次のページになります。3つの枠組みの2つ目ですが,既存の,これまでもやっておりました地域の,地方自治体ですとか芸術団体が行っております,芸術祭や芸術活動,トップレベルの舞台芸術活動等に関する取組支援を,より来年度も充実させていきたいと考えております。
 3つ目の「民間,地方公共団体主体の取組を支援」という観点につきましては,先ほどの説明にありましたとおり,文化情報プラットフォームの構築を通じて,幅広い団体・機関が行う文化芸術活動を,国内外に発信することに,力を入れていきたいと考えております。
 6ページになりますけれども,これが,現在,国主導で取り組む,2020年以降を見据えたプロジェクトの具体例について,幾つか示させていただいております。
 国が2020年以降を見据えてやる必要なことといたしましては,人材育成ですとか,新たな文化産業の拠点の形成,また,この機会に,最高水準の日本文化を発信することが必要だと考えておりますので,こういったことを主体で置きながら,将来の文化芸術立国の実現に向けて,今検討しているところでございます。
 次の7ページでございます。今まで御説明させていただいた3つの枠組みについて,まとめさせていただいたのが,この図になります。
 28年度につきましては,文化情報プラットフォームの運用を開始するとともに,地域の魅力ある文化芸術の取組,横浜音祭りですとか,瀬戸内国際芸術祭ですとかといった,様々な文化芸術,日本全国で文化芸術活動が行われますので,そういったものを文化プログラムの機会を通じて,国内外に発信していければと思います。
 8ページになりますけれども,これが,全国津々浦々で行われる文化プログラムのイメージになります。このように,文化プログラムの機会を活用しまして,日本全国で行われる様々な文化芸術活動や文化庁の取組を,日本を通じて,日本文化の魅力を発信し,観光振興,産業振興,地方創生につなげるような取組を行っていきたいと考えております。
 いまだ検討中であることも多いものなので,今後,検討状況を,この審議会や政策部会で報告をさせていただければと思っております。
 以上で,私の説明は終わります。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 盛りだくさんでございますが,文化プログラム,折からに向けてでございます。「文化芸術立国・日本」を掲げるには,やはり,これだけの資料が必要になってきますが,この件に関しては,ちょっとしばらくお時間を頂戴して,先生方から,こういうものを入れたらいいのではないか,あるいは,このへんに対してはもっとふくらませたらいいかというお時間を頂戴できればと思っております。いかがでしょうか。どうぞ。

【林委員】ちょっとよろしいでしょうか。
 実は,今日,この文化庁様が,東京オリンピック・パラリンピックに向けて,特に地方創生というか,自治体に頑張ってもらいたいというので,いろいろ,今,発信なさって,このプランは,本当に,私はすばらしいと思うのですね。
 ただ,申し訳ない,原点に戻りますと,この予算が,変わらないわけです,全然。昨年と今年は,ほとんど変わっていないですね。国家予算の0.11%という非常に貧弱な予算。これは,誰に申し上げていいか分からない。私たちが,自分たちで,こう言い合っているよう。私,これが問題で,これだけのことをやろうとしているし,また,今,議長が「いろいろな意見を」とおっしゃっていますけれども,本当に苦しい話だと思うのです。これをやろうとしたら,まるでお金が足りない。
 あと,本当にいいことですけれども,「文化芸術立国」とうたっているし,「文化GDP」という言葉もうたってらっしゃいますね。だから,これは,今,世界中で,本当に経済活性をしていく中で,文化事業は,全く一つの経済活動になっているのですけれども,日本の場合は,全く違うわけです。
 ですから,今回の2016年問題といって,コンサートホールも劇場もなくなる,こういうことは当然予想されたのに,もう誰も助けの手を出さなかったわけです。それで,演奏家の方とか音楽関係とか,いろいろなバレエとかオペラとか,ポップスもそうです,皆困っている。アメリカのように寄附してくださるわけでもない。
 だから,根本的に,今の段階では国が支えるしかないのに,1,000億ちょっとしか予算がないのは,これは根本的な問題だと思うのです。だから,これを何とかしないと,最低2,000億付けてくれなければできないと,私は思うのですね。それは,私は,誰がどうとか言っているのではないのですが,これが,どうして,毎年1,000億ぐらいしか付けてもらえないのか。
 今,文化芸術事業で,横浜を支援していただきましたけれども,横浜市が夜景が美しいとか,クリエイティブシティという形で街並みをきれいにしようとかということにすごく力を入れてきたのです。ナショナルプロジェクトの現代アートには,力を入れてきましたけれども,それ以外のダンスだとか音楽だとか,クラシック音楽もそうですけれども,楽しいことに対してお金を掛けることに,非常にためらいがあって,全くそういうことをしなかったのですね。それを2011年から始めて,おかげさまで,経済効果もできてきて,文化庁にも御支援いただいています。
 しかし,実際は,これは,もっとたくさん,我々,地方自治体が持ち出すのは当たり前ですが,すごい寄附を集めるのです,必死になって。いろいろなところに行って,100万でも50万でもお願いしますとかき集めて,大体5,000万ぐらいの予算を作ってやるような規模です。ですから,そういうことをやらなければならない。一番の問題は,最高レベルの芸術に対する補助とかやっていますね,バレエ団とかオペラとか。本当に,様子をうかがうと,もう,きゅうきゅうです。
 特に,バレエ団は,食べていけないのですよ。もう,バレエダンサーが食べていけません。こんな国というのは,あるだろうかという。ですから,パリ・オペラ座でもボリショイでも,いろいろな歴史的ないきさつがあるにしろ,私は,もう芸術はグローバルですから,例えば,この間,アメリカで,どこの大学か学生が「忠臣蔵」をやったというのですね。全部メイクして。そのとき,気が付いたのですけれども,日本でも,あるバレエ団が,新しい演出の「白鳥の湖」をやりましたが,全部日本人でやったのです。そのとき,私は,ものすごく感動したのです。外人のダンサーではないと,バレエは,どうもスタイルがよくないと思っていて,そんなの関係ないのですね。ですから,もう完全にグローバルですから,オペラでもイタリアから入ったバレエでも,何でもかんでも,もうそんな垣根がなくなるだろう。そういうときに,海外と,このように,ソフトの分も芸術予算が段違いに違うのは,これは,幾ら文化庁様が頑張っても,本当に苦しいのではないか。
 これは,すみません,誰に言っていいのか分からない。私は闘いますよ,本当に。
 だから,28年度予算は決まってしまいましたので,しようがないのですけれども,とにかくオリ・パラに向けて,次には予算を獲得しかないと思いますね。最低2,000億レベル。私は,1,000億ちょっとしか出せないのは,信じられないのです,今,日本の国家予算の中で。
 だから,ちょっと質問させていただいてよろしいでしょうか。文化庁関係者の方にお伺いしたいのですが,この1,000億ちょっとしか予算が付かない理由は,どう国が回答しているのか,教えていただきたい。これは,文科省の問題ですか。すみません,ちょっと無知で。それだけ教えてください。
 これは,毎年,確か,皆で,1,000億では足りないと言っているのです。だけど,全然変わらない。これの予算の内訳を見ても,多くがしようがないのですけれども,文化財保護とか補修とかに,ほとんど5割ぐらい取られているのです。
 それで,例えば,後ろの方で「文化発信を支える基盤の整備充実」は,325億付いておりますが,国立文化施設の機能評価とか,この中にいろいろあるけれども,恐らく運営交付金も入っているけれども,環境を整えるといっても,これは,結構ハードの部分になってしまうのではないかと。本当に,各都市で文化を盛んにしていくのだったら,東京一極集中もありますし,劇場が本当にないわけで,横浜市は全く劇場がないのですが,それを建てなければいけない状態ですけれども,誰もそのようなことに手を出すことはできない状態です。だから,基本的に,芸術が尊敬されるすばらしい価値だと知らせていく教育,もうボーダーレスだと思います。芸術家で,あんなに一生賭けて,クラシックのバイオリンとか努力しても,ほとんど食べられない。
 失礼,先生,すみません,都倉先生。

【都倉委員】いえいえ。

【林委員】食べられないということは嫌ですけれどもね。本当に苦しいのですよ,生活が。そんなことでいいのだろうか。もちろん,だから,すみません,話が長くなって。海外がどのような状況かも,余り分からないところがあるのですけれども,こんな日本ほど食べていけないところはないと思います。
 特に,バレエ団の人は,お給料もらわないですから。持ち出しているぐらいです。それで,皆が享受して,すばらしい,あんなに苦労しても,5歳くらいから頑張って,頑張って,全部持ち出して,それを皆見過ごして,ただバレエを皆で見ている,こんな国はないのではないか。これを申し上げたくて。
 だから,今回の,いわゆる企画は,すばらしいと思います。ただ,そのために,私ども,地方自治体も頑張りますので。
 ただ,最後に申し上げたいのは,今回,東アジア文化都市という事業を,おととしやっていただいて,日・中・韓の代表的な芸術文化都市をそれぞれ選んで,3国でやってくれというので,横浜は,最初に選んでいただいて,コンペだったのですが,それから,その後,ものすごく交流が盛んです。韓国の光州広域市,あと,中国の泉州,その後も交流しています。それぞれの国が,お互いに芸術家を派遣したり,一般の,民間のレベルの人を派遣して,すごく,今,交流してますし,子供たちの交流も盛んです。ですから,カウンターパートで,都市の文化芸術交流が盛んですから,そういう意味でも,もっと国がお金を出してくれないと,本当に地方自治体も財政が苦しいですから。
 すみません,長くなって。よろしくお願いします。

【宮田会長】いえいえ。ありがとうございました。ほとんど,根本的な問題になってくるのですけれども。

【増子課長】文科省大臣官房会計課長でございます。
 多分,この話は,文化庁だけで答えるのは,かなり難しいと思いますので,私から,全体の話をさせていただきます。
 まず,文科省の予算,林委員も御案内のとおり,教育,それから科学技術,文化,スポーツ,いずれも重要な施策ということで,予算要求を毎年しっかりとやっているわけです。28年度は財政健全化初年度ということで,特に林委員,中教審で,私は予算を説明させていだきましたが,教育だけでも,相当厳しい闘いになった中で,教育全体,それから科学技術は,マイナスになっております。
 その中で,スポーツと文化,パイは低いのですけれども,それなりに伸ばしていかなければならない中で,何とか財務省を説得して,増の形に整えているのが現状でございます。
 各省の配分も,大きく切り替えるのは,財政当局なかなか許してくれないこともありまして,ただ,29年度以降,しっかりと予算を確保するのと,また補正予算とか別の機会も活用しながら,しっかりと予算を確保していきたいと考えております。
 その上で,次長,何か。

【宮田会長】お願いします。

【中岡次長】すみません。
 林先生には,本当に,教員定数のときにも,大変お世話になりました。
 文化庁につきましては,先ほど申し上げました会計上は,省全体で0.2%減の中で,文化庁は0.2%増になっているのですけれども,私どもは,これだけでは,当然,先ほど2,000億という話がございましたけれども,例えば,施設整備1つにとりましても,これから,補正予算ということも,いずれにせよ出てくるわけでございますから,そういったものが,どういう状態で出てくるかを,我々,相当予想して,できるだけ前広に,その需要を掘り起こして,それをそちらに付け加えることによって,こういった事業予算が,また確保できるとか,そういうことも併せて考えていかなければならないと思っておりますので,そういったことも含めまして,努力したいと思っております。
 以上でございます。

【林委員】昨年で,補正予算は,どれぐらい増になったのですか。

【増子課長】27年度ですか。27年度は,文科省全体だと,例年よりも少なくなっています。と申しますのは,TPP対応とか,御案内のとおり,いろいろな需要がございまして,全体として,文科省としては878億円。
 ただ,従来,文化庁関係は,補正予算関係がほとんど付かなかったこともあるのですが,特に,文化財補修関係で5億円,規模は小さいですけれども,そのへん中心に,28年度,仮に補正予算があった場合は,しっかりと準備を進めて,文化庁も補正予算対応ができるように,今準備をしていただいております。

【林委員】ちょっとよろしいですか,もう一言。
 政令指定都市市長会で,この文化芸術というのは,余りプロジェクトの話題になってないのですが,これは考えて,経済団体と密にしようとしているのです。
 だから,今,ここに,係の方,御担当の方,先生もいらしたと思いますけれども,もうちょっと寄附文化というところも,東京オリ・パラに向けて,企業の参加を求めるとか,私ども努力してまいります。

【宮田会長】ありがとうございました。
 はい,どうぞ,馬渕先生。

【馬渕委員】今,林委員のおっしゃったことの最後に,寄附文化ということをおっしゃって,これは,国からお金をもらうのは大変結構ですが,もちろん,企業等,経済界からお金を集めなければいけないと思うのですけれども,そのときに,もう皆さん,よく御存じのとおり,税制が非常に硬化していて,要するに,文化・芸術に寄附をしても,税制のメリットがほとんどないという状況でいいのだろうかと,常々思っております。
 やはり,企業が,文化・芸術に寄附をし,そういう活動を推進することに対する,減税の見返りをしっかりやっていただければ,日本は経済大国の1つですし,もちろんアメリカとかヨーロッパの諸国も,非常にそういう寄附文化は進んでおりますけれども,そのへん,皆で力を合わせて,財務省に圧力を掛けるというか,お願いをするというか,そういう構造を,長い時間かかるとは思うのですけれども,変えていかなければいけないのではないかと思います。

【宮田会長】今の馬渕先生のお話で,税制ということに関しては,ちょっとどなたかお答えできませんか。ずっと腹が立っているのですけれども。前向きな切り口などは。

【青柳長官】1つよろしいですか。

【宮田会長】はい,どうぞ。

【青柳長官】税制で,私は,アメリカと比較して,以前,日経にエッセイを書いたことがあるのですが,個人の控除や企業の控除は,それほど違わないのですね。
 ところが,株の寄附というときには非常に違っていて,安く落ちている株でも,一定のときに,ある一定の高さであったというと,高い値段ではないのですけれども,平均値のあれで,算定してくれるのですね。だから,そういうあたりが,かなり大きく違うけれども,一番違うのは,やはり社会全体のドネーション・マインドというか,寄附習慣がどれだけあるのかが,一番違っているようです。アメリカなどでは,中流のサラリーマンで,最後が,年間1万ドル寄附するということが,当たり前になっているわけですけれども,日本で,クラウドファンドを,今,インターネットでたくさんやってらっしゃいますから,見ていただければ分かりますが,皆,苦労しているのですね。
 例えば,今,科博が,ヘイエルダールのように日本人の起源を探るというので,台湾から沖縄へ船を出そうというので,2,000万円という目標額を出してやっていますけれども,850万ぐらいしかいってなくて,あれは2か月で集まらないとチャラになって,寄附者に戻すことになるのです。
 そういうクラウドファウンドも,まだ本当にはうまくいっていない。これは,もう,まさに意識ですね。ですから,そういうあたりも,皆で,変えていかなければいけない。
 もう一つ,最近のトピックスとしては,美術品を購入するとき,今までは,買ったときに,5年間で償却できる金額が20万だったのが,去年1月から,これは,国税庁で,ホームページに出していますけれども,100万に上がりました。だから,これは,若い芸術家にとっては,もう大変な朗報です。ところが,企業が,いろいろな社長さんに言っているのだけれども,「そんなの知らない」と言うのですね。ですから,100万のものを減価償却できれば,これは,大変なコンテンポラリーな絵だったら,買っていただけて,それこそ美大の大学院生ぐらいだったら,日本で活躍していこうという気になると思うのですけれども,そういうことを知らなくて,実際に,その制度がうまく使われていないので,海外で活躍せざるを得ない状況も生まれている。
 だから,一方では,どれだけ周知徹底するか,それから,マインドをどう作るかが,今,日本の一番の問題だと考えております。

【宮田会長】はい,ありがとうございます。
 この間,卒業制作展というのがあったのですけれども,お買上げが,全部100万以内に。それで,その制度は,大いに利用して。
 ですから,いい作品を創ると,若者は,少なくともある程度の材料費が確保できる,また新しいいい作品ができると,そのようなことでございます。もう十何点ありましたか。

【青柳長官】そうですね。

【宮田会長】ありがとうございます。
 この話をずっとしていくと,暗くなってくるので,片山さん,どうぞ。

【片山委員】税制の話になりましたので,一つ申し上げさせていただきます。
 私は,アメリカの文化政策の研究をしておりますけれども,日本とアメリカについて,税制そのものを見れば,それほど大きな差はない,というより,むしろ,日本の方が,個人の所得税に関しては,税額控除が認められている点等では,進んでいると言って良いぐらいだと思います。
 何が一番違うかというと,寄附をしたときに優遇の対象になる対象が,日本とアメリカでは,大きく違うのです。日本の場合には,公益財団法人とか公益社団法人,認定NPO法人といった非常に限られた団体しか,その対象になっていないのですけれども,アメリカの場合は,大多数の非営利団体が,皆,優遇の対象になっています。その差が大きいです。
 ただ,それを克服するために,企業メセナ協議会が,助成認定制度という制度を創って,寄附金税制の対象ではない団体に寄附をした場合も,企業メセナ協議会が仲介すれば優遇が受けられる仕組みをとっているのです。けれども,これだけでは十分ではありませんので,やはり,寄附金税制の対象になる芸術団体,文化グループを増やしていくことが必要ですね。
 そのためには,アカウンタビリティを果たせる,きちんとした経営形態に,芸術団体や文化の団体がなっていく必要がありますので,そのための施策を講じていくことが,非常に重要だと思いますね。アメリカは,その点で,すごく努力をしてき結果,民間非営利団体のマネジメント力が高いです。それは芸術の分野だけではなくて,福祉とかまちづくりとか,いろいろな分野のNPOの底力が違いますので,そこをやっていくことが,非常に重要かと思います。
 それから,ちょうど明日が確定申告の締切りですけれども,日本は,年末調整という仕組みによって,サラリーマンの税金に関しては,ほとんど確定申告をしなくて良い仕組みになってしまっています。年末調整で寄附金の処理ができることになれば,もっとサラリーマンが寄附をするようになるかもしれませんし,逆に,年末調整をやめてしまって,全員が確定申告をすることになると,役所に税金を納めるよりは,ここに寄附をした方が良いと判断する個人は,かなり多いのではないかと思います。
 ですので,見込みがないわけではなくて,きちんとした取組をしていけば,個人の寄附を増やしていく基盤は,十分あるかと思います。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 今までのものを,ちょっと要約すると,文科省として,文化庁として,寄附税制は,このように利点があるのだということを,もう少し宣伝をすることは,必要だと思うのですね。
 私ども,もう絶対,これはチャンスだというので動き出しましたけれども,是非,日本の国民,多くの人に,それを伝えて,長官が今おっしゃったこと,それから片山先生がおっしゃったことも含めて,そういうアピールが必要かもしれませんね。
 是非,そうやっていくことによって,がま口の大きさが決まっているわけですから,あとはそちらの方向で持っていくしかないかもしれませんので,そのへんを。
 どうぞ,湯浅さん。佐藤さんは,その次で。それから,次移る前に,まだ佐藤さんやってないですね。どうぞ。

【湯浅委員】今,林委員と片山委員で,財源のことのお話があったので,続けたいのですけれども,もう1つだけ。
 今,公的な,国の予算が少なすぎるということと,寄附の問題というのがありました。もう1つは,恐らく,やはり民間とのパートナーシップだと思います。ひいては,芸術文化団体の,今,お話がありましたけれども,経営基盤の拡充ということではないかと思います。
 英国でも,2010年以降,文化,国の予算が,3割,4割減ってきている状態があります。その中で,芸術機関を更に力強くしていくために,実務上,今,力を注がれたのは,芸術文化機関の基盤を拡充していくことと,自活力を高めていく。そのためには,国の予算1本かぶりが厳しいというイギリスの状態ですので,今も下がっていますので,そこでミックス・ファイナンスのモデルを取り入れるようにと,フィランソロピストに対するアプローチですとか,さらには,企業とのパートナーシップの在り方,それが,CSRだけではなくて,よりもう少し成熟した企業とのパートナーシップをいかに創っていくか。
 そこの中で,2020年のオリンピックというものを,非常にいい効果をしています。そこで,企業のスポンサーの在り方が,単純なものでのCSRではなくて,共同パートナーとしての在り方ということに,企業側も文化にお金を出すことがどういうことかという気付きもありましたし,芸術機関も,どういう形で企業と話をしていけばいいのか,「お金をください」と言うだけでは,お金はやはり企業から出てきませんので,そこの在り方は非常に変わってきています。
 今,イギリスの,国の大きな支援が入っているところではない,通常の芸術団体ですと,公的な資金率,やはり3割ぐらいで収めています。そうでないと,国の予算は,やはり下がっていきますので,倒れてしまうと,よりほかのファイナンスと,あと,ビジネスモデルを確立する意味でのデジタルテクノロジーの使い道とか,多分,それが全て,こちらの日本ですと,これから2020というオリンピック・パラリンピックが来ますので,このオリンピック・パラリンピックの契機に,そういった基盤の整備をしていこうということだと思うのですが,恐らく,このプラン,非常にいろいろなことが盛り込まれていますけれども,1つお伺いしたいのは,より企業とのパートナーシップを強めていく中では,組織委員会との関係性ですとか,公式スポンサー,その他の企業との関係,非常に大事だと思います。そこの中で,今,文化庁さんの,この文化力プロジェクトがあって,国が推薦するbeyond2020があって,また,公式プログラムがある中で,どういう大きなシナジーを組んでいって,戦略的に,民間やその他の自治体も含めて,財源を確保していくのかは,大きな1つの図を作っていく,フレームワークを作る必要があると思うのですけれども,そこらで,他の省庁とかとの話合いは,どうなっているのかということと,かなり,この中で,発信ということがありますと,観光庁ですとか外務省とか,その他の省庁との連携は欠かせないと思うのですが,そこの推進に向けての話合いの在り方,進捗などが伺えればと思います。

【宮田会長】いかがですか。

【富田企画官】政府全体の取組につきましては,beyond2020でも紹介させていただきました,文化を通じた機運醸成の関係省庁の会議がありまして,そのメンバーについては,資料2-2参考資料の後ろに付いておりまして,これがメンバーでして,内閣官房のオリ・パラ事務局が,基本会議長となりまして,文化庁と知財事務局がありまして,その中には,組織委員会や東京都も一緒に入っておりまして,その中でいろいろ,今後どういう連携をしていくかが,この会議を基本としてやっていきたいと考えています。
 発信とかにつきましては,観光庁とも連携をしておりますし,この連携が,今後具体化していくことになると考えております。

【宮田会長】はい。
 あと,その他などもあるものですから,時間が大分過ぎておるのですけれども,佐藤さん。

【佐藤委員】今,お話が,もう関係省庁のことになったので,私もちょっとそういうことを申し上げようと思っていたのです。
 予算の増額が,なかなか,すぐには難しくて,寄附もすぐに難しいということなので,例えば,今のオリンピックの場合もそうですが,あるいは,文化庁で,既に歴史文化のまちづくり事業とかいうのがあって,その場合は,農水省や国交省と文化庁が連携して事業を進めていると,私は理解しているのですが,文化庁の予算が増えない場合は,他省庁の予算を使うと言いましょうか,力を借りることも考えていただいて,他省庁も恐らく,文化的な事業を,あるいはオリンピックに向けての事業を目指しているところがあると思うのですね。その際に,文化庁が,文化的な事業についてはノウハウを提供して,イニシアチブを取っていただいて,他省庁とも互いに上手にタッグを組んで,リンクをして,上手に予算を出し合うような形で進めていただくのも,1つの知恵かと思いました。

【宮田会長】ありがとうございました。
 どうも,私,文化政策部会をずっとやって,それから,文化審議会もずっとやってきていると,愚痴大会みたいになってしまっているのですね。
 例えば,今,私は,オリ・パラのエンブレムをやっておりますけれども,1発目,大炎上しましたよね。2発目は,今のところ,1個もないのですね。何をしたかというと,常にアピールしているのです。必ず1回会議をやった後は,ぶら下がりを作っています。50人から70人は来ます。それで,つらいことも面白いことも,常にアピールすることによって,メディアがこんなことでいいのかと,いろいろなことを書いてくれます。
 これは,やはり,文化庁さんが見ていると,この中で愚痴り合っていても,何も答えが出てこない。だから,文化庁は,こんなことやってすごいね,では何とかしようかという空気をつくることも,これは,すごく大事なことではないかという気がいたしますので,そのへんを,先生方も含めて,特に,林先生は,実際に自治体をお持ちですから,御苦労の上でお話をなさってくださっていたと思うのですけれども。

【林委員】ちょっとよろしいですか。

【宮田会長】どうぞ。

【林委員】すみません。申し訳ございません。全然愚痴を言っていないと思います。

【宮田会長】いや。

【林委員】すごい前向きですよ。私は,愚痴で言ったのではないですね。
 余り(会議に)出てこないで,いきなりこんなことをバッと言ったのは失礼ですけれども,その後に,いろいろな先生がおっしゃったこと,全くそのとおりで,すばらしい意見を,皆さんに言っていただいていますし。
 ごめんなさい,愚痴めいて聞こえたのは,私の反省点だと思いますが,御理解賜りたいと思います。すごく前向きだと思います。

【宮田会長】ありがとうございます。どうも私が言葉足らずだと。

【林委員】先生,すみません。でも,本当,前向きだと思います。

【宮田会長】そうですね。もっと前向きに行きましょう。
 それでは,ありがとうございました。
 恐縮でございますが,少し,時間を延長してもよろしゅうございますでしょうか。もう6時になってしまいましたが,本来ですと6時で終わりですが,お時間のある方は,ここで御退出なさって結構でございますけれども,約10分程度延長させていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,最後の議題に入っていただきたいと思います。(3)その他でございます。文化庁京都移転について,事務局から御説明くださいませ。

【佐藤課長】はい,失礼いたします。文化庁政策課長佐藤でございます。
 中央省庁の移転の関係の御説明をさせていただきます。資料3-1,3-2。3-2が分かりやすいかと存じますので,御覧いただきながら,お願いをしたいと思います。
 初めに,本題に入る前提として,地方創生とは何かでございます。これは,急激に進む人口の減少とか超高齢化といった我が国の直面する課題に対して,政府・地方一体となって取り組もうと,平成26年から始まったものでございます。
 データで紹介しますと,総人口は減少して,今後50年で,3分の2の8,000万人台になります。それから,高齢化も進み,今,我が国は高齢化率25%でございますけれども,50年後には4割が高齢者となる。その多くが,都市部に居住をし,集中をし,高齢者単独世帯を形成することになります。また,生産年齢人口が激減をしておりまして,20年前がピークで8,700万人でしたが,50年後には半減して,4,400万になる。
 これは,人口減少とは,すなわち文化にとっては担い手の減少ということになりますし,文化産業を支える人たちが,いなくなるという話でございます。この人口減少とか超高齢化を,事象として捉えるだけではなくて,これから,人口の社会像とか自然像といったところに直接影響させる施策,こういった発想の転換が求められているのが,この地方創生でございます。
 東京一極集中を是正して,地方の仕事や人のよい循環を促進する観点から,政府関係機関の地方移転の検討が始まってございます。昨年3月に,道府県に対しまして,政府関係機関の地方移転についての提案を募集いたしまして,これを受けて,昨年8月末には,42の道府県から70機関,研究機関,研究所,地方省庁合わせましてですが,提案がございました。そのうちの1つが,この文化庁及び関係3独法の移転の提案でございます。
 これまで,内閣官房に,まち・ひと・しごと創生本部,本部は全閣僚が構成員でございますけれども,その下で検討が行われまして,提案自治体や該当する府省,それぞれに対するヒアリングが行われたり,有識者による検討が進められてまいりました。検討の中で1つ示されているのが,基本的考え方で,1,2,3とございます。1は,地方創生の視点があるかどうか。2としては,国の機関としての機能確保の視点。地方移転によって,機能の維持,向上が期待できるかという視点。
 具体的には,左側に点線で囲まれております箱がありますが,地方移転に,メリット,デメリット,それぞれあるだろうと。メリットについては,移転によって現在と同等以上の機能が発揮できることが期待できるか,また,なぜそこかについて理解が得られるか。デメリットとしては,危機管理や関係機関省庁,国会対応に支障が生じないか。4番目として,効率的な業務運営,国民サービスの低下を招かないかといった全体方針の下,右側が現在検討しております,省庁ごとに業務の内容に応じた検討がなされているところでございまして,マル1,マル2,マル3と,危機管理業務,政策の企画・立案業務,ここでは,関係省庁との調整が不可欠なものは移転検討の対象外,それから,政策の企画・立案業務は,執行業務との近さが求められるので,移転対象の業務とともに密接不可分なものは移転。マル3が,施策・事業の執行業務。効率的な業務運営を損なわず,できる限り現場,地方に近いところで実施することが適切である。こういう方針に照らして,文化庁についても検討がなされているところであります。
 それから,3つ目の移転費用の視点でございます。地方移転による費用増大や組織肥大化の抑制が図られるかどうか。こういった点でございますけれども,京都側からは,文化庁の庁舎については土地を提供し,また,庁舎については建設費の応分の負担をするようになることが,表明をされております。また,職員が転居することになるわけですけれども,職員住宅についても協力をすることが,出てきております。
 こうした中で,今,検討がなされているところでございますけれども,まち・ひと・しごと創生本部におきまして,月内にも,政府機関の移転の基本方針が決定される運びとなってございます。
 なお,これまで,馳文部科学大臣が,国会答弁や記者会見で積極的に発言をしておりますが,ポイントを御紹介いたします。この資料にありますメリット・デメリット,それぞれの視点で御紹介いたします。まず,メリット面の視点としては,馳大臣の発言では,移転をするとしたら,ただ右から左に移るのでは,意味がない。地方創生という観点から,地方移転をした場合に,新たな文化庁の機能強化であったり,組織として果たすべき役割といったものを詰めていく必要がある。また,京都において,我が国の文化行政において,どのような機能を発揮して,貢献をしていただけるのかといったことも,議論する必要があると発言をされております。一方,デメリットへの対応の視点でございますけれども,議院内閣制の下で,行政は国会に対して説明責任があり,法案の準備もあり,予算折衝もある。それから,各国の大使館との連携もある。そして,文化芸術団体との日頃の連携もあるといったことを引き合いに出しながら,東京に置いておくべき機能は何かということも,判断していかなければならないと発言しております。
 以上,説明を終わりますが,今後の検討に当たりまして留意すべき点,御意見を頂ければと存じます。

【宮田会長】はい,ありがとうございました。
 この件に関して,いかがでしょうか。はい,どうぞ。

【三好委員】ありがとうございます。
 今,説明がありました,大臣の御発言も紹介いただいたので,それに関連することです。先ほどのお話のように,検討に当たっての意見ということで,ちょっと発言をさせていだきたいと思います。
 今,資料3-2の御紹介がありましたけれども,色の付いたマル1,マル2,マル3という,「業務内容に応じた検討が必要」という中のマル2とマル3は,政策の企画・立案,施策・事業の執行業務という考え方は,平成13年に中央省庁の再編が行われたときの考え方を踏襲していると思うのです。
 当時,文部省は,科学技術庁と統合して,文部科学省になられたのですけれども,文化庁は,文部科学省の外局という形で,言わばそのまま残られているわけであります。
 文部科学省の外局である文化庁の性格というのを,もう一度思い出していただきたい。いわゆる外局とは,本来は,この分類で言うと,マル3の執行業務を行うのが,原則外局である。例外的に,政策の企画・立案を行う外局を置いてもいいというのが,幾つか例外的に決められている。その1つが,文化庁です。つまり,文化庁とは,マル3にある,社会保険庁とか気象庁とか国税庁のように,執行業務を行う外局ではなくて,政策の企画・立案を行う外局として,例外的に認められた外局である。それが13年のときの考え方ですので,まず,それが,1つポイントだと思います。
 なおかつ,同じ13年の省庁再編の基本方針の中でうたわれていることが2つありまして,文化行政の機能の充実を図ることというのが法律の中に,基本方針として書かれている。もう1つは,国際文化交流については,外務省とも連携を緊密化し,文化庁がより重要な役割を果たすと,ここまではっきり書かれているわけですので,是非,この際,もう一度,この15年前の省庁再編の原点に立ち返って,文化政策の機能強化をやることを,はっきりと打ち出していただくのが,まず1つ必要かと思います。
 それに併せてですが,これは省庁再編のときには書かれていないのですけれども,もう1つの問題は,いわゆる社会教育との関連ですけれども,例えば,今日,分科会からの御報告がありました,国語ですとか,あるいは文化財というものが文化庁にあり,社会教育に分類されている図書ですとか博物館が,文部科学省の本省に置かれていて,文化庁から切り離されている状況になっているわけです。文化財を活用する,あるいは,国語の取締りを進めていくためには,図書館ですとか博物館といったものを一体として,文化行政の中に取り込んでいくという考え方も,当然必要だろうと思うので,社会教育との整理,これは,もともと文化庁あるいは文化局ができる以前は,社会教育として一体的に行われていた文化行政ですので,もう一度,原点に立ち返った文化政策の在り方というものを,この際,御議論いただければということで,是非,積極的な御検討をいただきたいと思います。
 以上です。

【宮田会長】ありがとうございました。
 はい,佐々木さん,どうぞ。

【佐々木委員】今,お話がありましたように,10年ほど遡りますと,当時,河合隼雄先生が京都におられて,文化庁長官をなさるという経緯がありましたので,関西分室を置かれました。当時は,国立京都博物館の中にあったのですけれども。その後,その分室は,今,文化芸術創造都市振興室と名前を変えて,京都府庁の中に,部屋を借りているわけですけれども。河合先生は,ゆくゆく京都に文化庁が移転する方向を考えておられたわけで,それが,今,やっと日の目を見ると言いますか,考えると随分時間が掛かったなというわけです。
 2020年に東京オリンピック・パラリンピックという,非常に大きなスポーツ文化イベントが目前に控えている。この時期に,移転という形は,大変画期的な,シンボリックなことだろうと,私は思うのです。
 つまり,私は,常々申しましたが,今,本当に地方は疲弊しています。特に,文化的に立ち後れるわけですね。ですから,東京オリンピック・パラリンピックが,東京再集中という結果になってしまうことが,一番この国にとって不幸だと思うのです。
 日本が,本来,成熟した文化立国を目指すのであれば,より多様な,多極的な文化の拠点の展開こそ,まさに今,やらなければいけないことだと思います。その意味で,オリンピック・パラリンピック2020が1つのきっかけになって,文化庁の京都移転に新しく踏み出すのは,大賛成です。
 その上で,先ほど,林委員が言われたように,最低,2,000億の文化予算の確保というものも併せてできないかと思います。つまり,やはり予算が少ないというままであれば,東京から京都に文化庁が移ったときに,プレゼンスが下がって,今よりもっと文化行政が貧弱になるのではないかという心配があるだろうと思うのです。そうではないという形を,予算倍増できちんと示さなければいけない。
 それから,もう1つは,この文化政策部会や,あるいは第4次基本方針でも出ておりますが,アーツカウンシル日本は,トライアルから本格実施に,段階が移ってきます。そうすると,アーツカウンシル日本は,恐らくは,東京周辺に自立した,確立した形であるだろう。しかし,それだけでなく文化庁の移転とともにアーツカウンシル・イーストとアーツカウンシル・ウエストという機能分担が,考えられるので,この移転のプロセスの中で,アーツカウンシルの本格実施・確立と,それから分権的な展開が重要になると思います。
 もう1つは,特に,文化芸術で地方を創生する「地方文化創生本部」などというものを,京都に先行的に設置する。京都移転とともに,あるいは,移転に先駆けて,段階的に置いていくことが必要になると思います。
 そして,これも,文化政策部会で議論されておりますが,文化GDPなり芸術文化が日本の再生に果たす客観的なデータを収集し分析して,数値化していって,財務省と交渉していく力を持たなければいけない。そのためにも,文化政策研究所というのは,必要だと思うのです。
 だから,こういうものをセットにして,新しい文化庁のイメージを持ちながら,移転する形に,是非していただきたいと思います。

【宮田会長】ありがとうございました。
 今,お二人同時に挙げたのですが,どちらにしましょうか。普通,レディファーストですけれども,太下先生,どうぞ。
 このお二人で,すみませんが,時間が来てしまったので,終わりにしたいと思います。

【太下委員】今,三好委員,そして,佐々木委員からの御発言は,この文化庁の移転の問題ということを,単に文化庁がどこにあるという問題に矮小化してはいけないという御趣旨が,その発言のベースにあると思うのです。
 私としては,先ほど御説明のあった文化プログラムの,文化庁の取組についての,まさに文化プロジェクトのコンセプトが,この問題にダイレクトに絡むと思っています。
 どういうことかと言いますと,この2ページ目に,大きな3項目が掲げられていますけれども,例えば,このうちのマル2の項目で,第1行目に,文化というものが,観光振興や産業振興とか,地方創生を実現するということになっています。
 先ほど,確か佐藤委員だったと思いますけれども,文化予算が限られている現状の中で,他省庁の予算も取っていくべきだと御意見がありましたね。これは,私も大賛成で,実は,イギリスに前例があります。イギリスでは,創造産業政策,クリテイブ・インダストリー政策というのがありました。これは,1997年,トニー・ブレアが首相になったときのことです。御案内のとおり,日本も十数年遅れで今やっていますけれども,実は,イギリスのDCMS,いわゆる文化省が,クリエイティブ・エコノミーという費目で予算を付けたのは,2008年が最初なのです。では10年間,一体何をやっていたのか。いろいろなことをやっていたのですけれども,一番大きなポイントは,DCMS,イギリスの文化省が,省庁内ファンドレイジングをやっていたということが重要なのです。要は,このクリエイティブ産業というのは伸びていくということ,マッピング・ドキュメントと言いますけれども,いろいろな証拠を出しながら,だから一緒にやりましょうと,日本でいう経産省や外務省に働き掛けて,パートナーシップを組んで,他省庁のふんどし,すなわち他省庁の予算で,創造産業政策を10年間やり続けたのです。
 そういうことで考えると,特に,文化庁さんの場合,余り広く知れ渡っていないですけれども,観光庁と包括連携協定を結んでいらっしゃいます。青柳長官が,当時の久保長官と結ばれた協定です。これは,観光庁からのラブコールで結ばれたものです。要は,観光庁サイドから見て,文化の振興が地域の観光振興につながるに違いないということで,結ばれたと伺っています。いわば,ラブコールを受けて,愛ある結婚をされたわけですね。結婚には,持参金が付きものではないでしょうか。私は,是非,観光庁並びに国土交通省の予算を,もっと文化振興に使っていくべきだと思います。
さて,このような観光庁との連携を進めて行くに当たり,文化庁はどこに位置しているのが良いか,ということが問題だと考えます。
 更に言うと,文化庁移転の問題は,この3つ目の観点という論点とも絡むのです。ここに,世界との交流,世界平和に貢献すると書かれていますけれども,そもそも,この文化庁の移転の問題が,移転がありきではなくて,地域創生が大きな看板のはずですね。地域創生のための1つの手段として,省庁移転が検討されているという流れです。
 そういうことで考えると,省庁を移転するよりも先に,もっとやるべきことがきっとあるはずです。例えば,世界との交流ということを考えると,オリンピックに向けて内閣官房で,ホストシティという事業をやっています。ただ,このホストシティの一番の要は,キャンプ地の誘致になっています。これは,ちょっともったいないと私は思うのです。
 どういうことかというと,ロンドンオリンピックのときには,204の国と地域が参加しましたが,そのうち3分の1以上の74の国・地域は,まだ1回もメダルを取ったことがないのです。これは,明らかに,その国の経済力とメダルは,比例する関係にあるからですけれども,ただ,これら74の国と地域の中で,今日本と経済的な結び付きが極めて強くなっている国は,いっぱいあるのです。例えば,ミャンマー,カンボジア。どうでしょう,これから5年間,日本が国を挙げて,そして地域を挙げて,例えば,ミャンマーとかカンボジアがメダルを獲れるように精一杯応援していくと想像してみてください。もし万が一メダルが獲れたら,その国と日本との結び付きは,経済,文化を含めて,極めて強くなっていくでしょう。
 更に言えば,このホストシティと絡めて,例えば,仙台空港がある宮城県が,ミャンマーをこれから5年間応援するとしましょう。これは,スポーツも文化も両面でということです。そしてもしも,ミャンマーがメダルを獲ることができたら,私は,絶対に仙台空港に,ミャンマーからの直行便が飛ぶと思います。これからの国際交流とは,そのぐらいのスケールで,これから5年間絶対に考えなければいけないと思うのですね。それが本当の地方創生だと思います。
 というわけで,まだまだ文化振興やオリンピックに絡めて,やるべきことはいっぱいあると思います。そういう状況において,省庁が移転するという論点は,果たしてどうでしょうか。もしも本当に実施するとしても,もうちょっと後でもいいのではないでしょうか。まだまだ,この5年間に,やることはいっぱいあります。そして,恐らく,省庁移転にも,相当の費用が掛かるでしょう。先ほど,文化庁の予算が少ないという御意見がありましたが,移転のための費用は,むしろ文化のソフトに費やすべきだと思います。特に,この5年間は最優先ですね。以上が私の意見です。

【宮田会長】はい,大変,比喩がとても分かりやすくて,よろしゅうございました。ありがとうございました。
 それでは,熊倉先生,お願いいたします。

【熊倉委員】はい,はっきり申し上げて,多くの芸術団体や文化関係者が,今回の話に,非常に大きな懸念を抱いていることは,お伝えをしなければいけないと思っております。
 なので,今,太下委員が,どっちを言いたかったのか,それどころではないだろうと最後におっしゃったので,どちらかというと反対かと思ったのですが,私は,明確に,移転している場合ではないだろうと申し上げたいと思います。
 まず,この第4次基本方針だけでなく,第1次基本方針から第4次基本方針まで重ねて,単に芸術文化の振興をするだけではいけない,特に,経済と両輪であると,第1次基本方針では書かれておりました。徐々に広げて,第3次基本方針でも,社会包摂という問題。第4次基本方針でも,政策全般に関して,文化がいかに重要かを,実現していかなければいけない。部会ではお伝えいたしましたが,委員の中からは,単に文化・芸術振興,基本法ではなくて,本来,文化政策とは何かを考えるパラダイムシフトを,時間を掛けてやってきて,ということは,まさに,先ほど佐藤委員からもお話が出ましたように,文化庁の予算が増えないのであれば,本来,文化庁は,政策の中でのコーディネーター的機能を担うことが,設立の趣旨だったはずですが,それが余りできていない。それをこれからしなければいけないときに,1人京都へ行っている場合ではないのではないか。
 また,文化財保護に関して,非常に大きな成果を上げてきましたが,予算が1,000億を超える頃から,そうではない部分に関しての政策を,徐々に強化してきているのに,よりによって京都に移転するのは,非常に,先祖返りぽい印象が与えられて,せっかく,今日の芸術,今生きる芸術に関しても,どのようにそれが社会に資するのかを考えていくことで,新しい方向性を探っている中に,イメージとして,あるいは実務上も残念かという気がいたします。
 そして,ただでさえ予算が少ない中で,昔の職員の方々の移動のために,JR東海だけにもうけさせてどうするのかという気も,ちょっといたします。
 オリ・パラより前ということはないと思うのですけれども,大事なときに,そのようなことを考えている場合かという気がいたしまして,個人的には,一定数,福島に移転するのだったら考えたいと思います。なぜなら,文化政策の様々な昨今の審査などに携わらせていただいておりますと,大変西高東低な感じがいたします。これは,何年か前の総会でも申し上げましたが,東北地方の文化政策に関して,西の所見に比べると,文化政策振興ビジョンの策定ですとかといったところ,まだまだ弱い気がいたしまして,この第4次基本方針でも掲げております2020に,復興している姿を見せるという意味合いにおいて,もっと東北の近くに,東北に何ができるのかを考えるべきだと思っておりますので,どうしても,どこかに移転しなければいけない,しかも西ということであれば,先ほどお話があった大幅な機能強化ですとか予算倍増ですとか,そういう大きなお土産が付いてくるのだったら,考えないでもないかという感じを抱いております。

【宮田会長】はい,両極が出ました。当然のことではないかと,私も思っておりますが,これは,今後の課題として,よく議論をして,前に進んでいってもらいたいと,かように思っております。先生方の御意見は,非常に貴重なものだと,私も感じておりますので,しかと踏み込んでいきたいと思っています。
 私の進行が大変まずくて,25分超過してしまいましたが,ここで,どうしても,やはり,長官からコメントを,1つよろしくお願いしたいと思うのですが。

【青柳長官】多分,これが,私にとって,最後のこういう場ですので。
 ただ,何も心配しなくて,隣にいらっしゃる方,私が今のポストに就く前から,この審議会の会長をやっていましたから,はるかに,文化審議会の,あるいは文化庁の政策にはお詳しいと思います。
 最後に1つか2つだけぐらい。私がなったときに,世間の中で,文化庁という名前が,小さくなればなるほどいいなと思っていました。というのは,それだけ文化が充実して,皆さんが文化を楽しむようになれば,文化庁に頼ることもないこと,あるいは,文化庁予算に期待することがなくなっていくと思ったので,文化庁の存在が小さくなればいいと思ったのですが,少なくとも2年半ちょっとやらせていただいた中で,文化庁の存在感というのが,より大きくなって,あるいは期待感や要求がより大きくなってきているのではないか。それだけ,文化というものに憧れたり,希求したり,あるいは文化があってほしい気持ちが,日本全体に,より強くなっているのではないかと感じておりましたので,それを一つよろしくお願いしたい。
 それから,もう皆さんがおっしゃいましたが,今,地方が,やはり大変な状況です。特に,大都市とか中都市ではなくて,もうちょっと小さな地域や町村,あるいは限界集落などは大変な状況で,それを見ていると,合っているかどうか分からないのですが,よく言われるのは,個体発生の中に類発生がある,見ることができると言いますが,これは,過去の生物の進展の仕方の中を言っているのですが,将来的に,逆説ですけれども,非常に困っている地域を見ると,これは,個体発生の中に,日本全体の将来を映しているのではないかという気がしてなりません。
 そういうときだからこそ,地域に,少しぐらい経済的に縮小していっても,地域の文化というもので生きがいを持ったり,あるいは,愛着を持ち続けることが,生きていくためにどれほど大切なのかを,我々は,もっともっと認識しなければいけない。恐らく,今申した,将来への類発生というか,類展開というか,というものが,今,地方のどうしようもない状況の中に既にあることを,どれだけ日本全体が認識しているのかを,この2年少しの間,いろいろなところを見せていただいて,感じました。
 そういうわけで,是非,ここですばらしい活躍をなさっている皆様方に,そういうことを,具体的な政策の中に,どう取り込んでいくのかをお考えいただければと思います。
 どうも,いろいろありがとうございました。(拍手)

【宮田会長】ありがとうございました。
 非常に,大きな課題をいただいた気がいたします。
 それで,今日は,大変申し訳ございません。全員の先生方からのお言葉を頂戴できなかったのが,とても残念ですが,時間の都合上,今日は,これにて閉会とさせていただきます。
 事務局,どうぞお願い申し上げます。

【三木調整官】会長,ありがとうございました。委員の先生方,ありがとうございました。

―― 了 ――

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