(3)基本的視点

人的資源の源泉

 もとより資源の少ない我が国においては人材が重要な資源であり,ハードの整備からソフトへの支援に重点を移すとともに,国民生活の質的向上を追求するためにも,人々の活力や創造力の源泉である文化芸術の振興が求められる。

公共財・社会包摂の機能・公的支援の必要性

 文化芸術は,成熟社会における成長の源泉,国家への威信付与,地域への愛着の深化,周辺ビジネスへの波及効果,将来世代のために継承すべき価値といった社会的便益(外部性)を有する公共財である。

 また,文化芸術は,子供・若者や,高齢者,障害者,在留外国人等にも社会参加の機会をひらく社会包摂の機能を有している。

 このような認識の下,従来,社会的費用として捉える向きもあった文化芸術への公的支援に関する考え方を転換し,社会的必要性に基づく戦略的な投資と捉え直す。

 文化芸術は,その性質上,市場のみでは資金調達が困難な分野も多く存在し,多様な文化芸術の発展を促すためには公的支援を必要とする。

このため,厳しい財政事情にも照らして支援の重点化等により文化芸術活動を支える環境づくりを進める必要がある。

国際的な文化交流の必要性

 伝統文化から現代の文化芸術活動に至る我が国の多彩な文化芸術の積極的な海外発信や,文化芸術各分野における国際的な交流の推進は,我が国の文化芸術水準の向上を図るとともに,我が国に対するイメージの向上や諸外国との相互理解の促進に貢献するものであり,中国,韓国,ASEANといった東アジア地域等の日本と緊密な関係を有する国との間では,友好関係の深化にもつながるものである。このことを踏まえ,引き続き戦略的な施策の展開を図る必要がある。また,グローバル化が急速に進展する中,国際文化交流を推進するに当たっては,我が国の存立基盤たる文化的アイデンティティを保持するとともに,国内外の文化的多様性を促進する観点も重要である。

社会への波及効果

 文化芸術は,もとより広く社会への波及力を有しており,教育,福祉,まちづくり,観光・産業等幅広い分野との関連性を念頭において,それら周辺領域への波及効果を視野に入れた施策の展開が必要である。また,新たな成長分野としての観点や世界における我が国の文化的存在感を高める観点も踏まえ,官民連携によるオールジャパン体制で進められているクールジャパンの取組等については,これまでに実施してきた施策の成果を基礎として,文化芸術等の「日本の魅力」をより戦略的・効果的に発信する必要がある。

多様な主体による活動

 文化芸術は,人間の精神活動及びその現れであることから,まずもって活動主体の自発性と自主性が尊重されなければならず,その上で,活動主体や地域の特性に応じたきめ細かい施策が大切である。

 また,文化芸術振興の意義に対する国民の理解の上に,個人,NPO・NGOを含む民間団体,企業,地方公共団体,国など各主体が各々の役割を明確化しつつ,相互の連携強化を図り,社会を挙げて文化芸術振興を図る必要がある。

地方公共団体における文化施策の展開

 地方公共団体においては,それぞれの地域の実情を踏まえた,特色ある文化芸術振興の主たる役割を担うことが期待される。特に基本法の制定後,地方公共団体においても文化芸術振興のための条例の制定や指針等の策定が進んでいるが,そうした条例・指針等に基づく施策の展開や,広域連携による取組の推進も望まれる。

政策評価の必要性

 文化芸術各分野及び各施策の特性を十分に踏まえ,定量的な評価のみならず定性的な評価も活用し,質的側面を含む適切な評価を行うとともに,年度によって選択的に軽重を付した評価を行うことも検討する。

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