第16期文化審議会第1回総会(第67回)議事録

平成28年4月4日

【三木調整官】開会に先立ちまして,配布資料の確認をさせていただきます。議事次第がございまして,その後に配布資料,資料1,文化審議会関係資料が一つ。それから,資料2,パワーポイントのA4横のものですけれども,文化芸術資源を活用した経済活性化(文化GDPの拡大)という資料2。資料3は,政府関係機関移転基本方針(平成28年3月22日まち・ひと・しごと創生本部決定),こちらが資料3でございます。それから,参考資料といたしまして,三つ用意してございます。一つは文化審議会関係法令,参考資料2,文化審議会運営規則。参考資料3,文化審議会の会議の公開についてというものでございます。机上資料といたしまして,第4次基本方針と28年度文化庁予算案の概要というものを席に置かせていただいております。もし足りないものがございましたら,今,お教えいただければと思いますが,お気づきのときにまたおっしゃっていただいてもよろしいかと思います。

それでは,受付の際にも傍聴の方にお伝えいたしましたけれども,本年度最初の第1回の総会でございます。人事案件がございますため,一般職員以外の傍聴者,途中入室をお願いしたいと思いますので,人事案件が終わるまで一時退席を,今からお願いいたします。係の誘導がありますので,それに従ってよろしくお願いします。委員の先生方はしばらくお待ちいただけますでしょうか。

(傍聴者退出)

※ 会長に馬渕委員,会長代理に土肥委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

【馬渕会長】それでは,今期,文化審議会の開会に当たりまして会長として一言御挨拶申し上げさせていただきます。このたび文化審議会会長という重役を仰せつかりました。文化審議会においては,昨年4月に第4次基本方針の答申を行いました。第4次基本方針では,副題を「文化芸術資源で未来をつくる」といたしました。政府では,2020年には訪日外国人旅行者4,000万人という目標を掲げるなど,観光に特に力を入れているところでございます。

観光をはじめ,まちづくり,産業などの幅広い分野への波及を意識するとともに,社会の諸課題の解決に向けて文化芸術が役割を果たしていくということが求められていると思います。本年秋以降,つまり,リオのオリンピックが終わった後,2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた文化プログラムが開始いたします。文化プログラムの全国津々浦々での実施を,文化芸術立国を実現していくに当たってのチャンスというふうに前向きに捉えていきたいと思います。

初めての会長職でございますので,どうぞ委員の皆様におかれましては,本審議会の文化芸術の振興のための調査審議や円滑な議事運営のためにお力をおかしいただけたらと思います。1年間,どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)ありがとうございました。

それでは,続きまして,この4月に文化庁長官に着任いたしました宮田亮平長官から御挨拶を頂きたく存じます。よろしくお願いします。

【宮田長官】4月1日付で長官を拝命いたしました宮田亮平でございます。よろしくお願い申し上げます。全く考えていなかったものですから,私も大変驚いてはいたのですが,今日,2日目,そろそろ年貢の納め時かなという気持ちで,そしてまたこの文化審議会があったときに,先生方のお顔を拝見しますと,これは逃げてはいけないなという気分で,しっかりと進んでやっていきたいと,かように思っております。特に日本の文化芸術の埋もれたもの,それから,輝いているもの,その両者をどうやって日本の力としていくかということ,このことがやはりこの審議会の中からしっかりと審議をし,そして発信していってもらえたらいいのかなと思っております。

やはり文化芸術資源で未来をつくるということをどうしてもやっていきたいと,かように思っておりますが,私はやっぱり文化芸術だけではなくて,そこにサイエンスが入ったり,そして観光なども含める,いわゆるマネジメントも入るというような大きく三つの輪で持っていって,その中のリングが広がったときに,これが五つの輪のオリンピックにまで持っていけるというふうな連携がとれたら,こんなすばらしいことはないのではないかという気がします。

どうしてもマネジメントの方が優先されまして,文化というものに対しての何か絡めとられるものの空気というものがあるのですが,その空気を文化庁へ来ることによって逆に,むしろ宝物を探しに来る,宝物を与えていく,その両者があるような文化庁,大変明るい文化庁であってもらいたいと私は思っておりますので,是非とも先生方の忌憚(きたん)のない厳しい,そしてまた楽しい御意見をちょうだいできたらと思っております。文化資源を大いに生かして,そして経済の活性化も両者相まっていくということでやっていけたら幸いかと思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。私からは以上でございますが,どうぞすばらしい御指導をいただけるよう御祈念して,ありがとうございました。

(拍手)

【馬渕会長】長官,どうもありがとうございました。

続きまして,本日は今期最初の審議会ですので,本審議会の概要と運営上の規則について確認をしておきたいと思います。また,併せて各分科会への委員の分属についても確認

したいと思います。また,資料1にもその分属を記してございますので,各自御確認いただければと思います。これらの点について事務局より説明をお願いいたします。

【三木調整官】事務局でございます。資料1を御覧いただければと思います。2枚おめくりいただきまして,2ページ目に文化審議会概要というページがございます。設置の経緯といたしましては,平成13年1月の中央省庁再編に伴いまして,既存の複数の審議会を整理・統合して設置されている本審議会でございます。2.の主な所掌事務といたしましては,大臣や長官の諮問に応じまして文化の振興,国際文化交流の振興に関する重要事項の調査審議,意見の陳述,国語の改善など様々な法律の権限に属する事項,そういったことを所掌してございます。3.委員の構成といたしまして,30人以内,任期1年となっておりまして,各分科会がこちらに記載のとおりそれぞれの所掌を担当してございます。

次に,お手元にお配りしております資料の中の参考資料1を御覧いただきたいと思います。こちら,横長縦書きの資料でございます。こちらを御覧いただきますと,関係法令が記載されてございます。小さい字で恐縮でございますけれども,簡単に確認させていただきますと,まず,文部科学省設置法がございます。その第30条にこの文化審議会の設置根拠がございます。すみません,21条です。そして,同じページの左側,文化審議会令といたしまして,この審議会の組織,定員,各分科会の所掌などの規定がございます。

続きまして,参考資料2でございますけれども,文化審議会の様々な細則を決定いたしております文化審議会運営規則というものがございます。こちらは,更に様々なそれぞれの分科会や部会の手続的なことが規定してございます。

最後に参考資料3でございますけれども,会議の公開などについて定めました文化審議会決定を添付してございます。会議の公開に関するルールといたしまして,会長の選任など人事案件以外の会議については公開としておりまして,会議資料や議事録も含めて公開すると定めてございます。

次に,委員の分属の確認についてでございますけれども,先ほど馬渕会長からも御説明がございましたとおり,本審議会の委員に関しましては,3月20日付で発令がなされてございます。発令書が机上に置いてございます。分科会に属する方々に関しましては,分科会の分属をその発令書に記しておりますので,御確認いただければと思います。各部会に属する方々に関しましては,部会の設置といいますのをこの審議会で,この後に決定いただいてからになりますので,今日の会議で後ほど議題とさせていただきたいと思います。

説明は以上でございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。

それでは,ただいまの御説明いただきました内容について,委員の皆様方から御質問等がございましたらどうぞお願いいたします。挙手の上,どうぞ。

【道垣内委員】つまらないことですけれども,文化審議会の設置根拠は21条ではなくて20条だと思います。21条は所掌事項が書いてあります。

【三木調整官】大変申し訳ございません。ありがとうございました。

【馬渕会長】訂正箇所をもう一度,確認をお願いできますか。今の御質問が大変申し訳ないのですけれども,聞き取りにくかったので,もう一度繰り返してお願いします。

【三木調整官】申し訳ございません。私の言い方が悪かったのですけれども,現行,今回の参考資料に載っておりませんけれども,20条に設置が根拠としてはございまして,私の説明としましては21条に文化審議会の事務の内容が書いてあるということでございます。

【馬渕会長】分かりました。

【三木調整官】20条が設置根拠,21条で事務について書いてあるというふうに説明を訂正させていただきます。ありがとうございました。

【馬渕会長】よろしいですね。皆様。どうもありがとうございました。

ほかに御質問等ございましたら。それでは,部会の設置の審議に移りたいと思いますが,文化政策部会,美術品補償制度部会及び世界文化遺産・無形文化遺産部会の設置について,各分科会のほか,今期も本審議会の下に三つの部会を設置することを予定しておりますので,その内容について皆様にお諮りしたいと思います。よろしくお願いします。事務局の方から御説明ください。

【三木調整官】御説明申し上げます。文化審議会におきましては,各分科会のほかに今期はこの審議会の下に三つの部会を設置することを予定させていただいてございます。資料1の4ページ目以降でございます。資料1の4ページは文化政策部会の設置についての資料でございます。この部会は文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項を調査審議する部会として設置しようとするものでございます。次の5ページにはメンバーの案を記載させていただいてございます。

二つ目の部会といたしまして,6ページには美術品補償制度部会の設置についての資料でございます。調査審議事項といたしましては,政府が主催者と補償契約を結ぶ際の審議を行う,そういった部会でございます。同じように,次の7ページ目にはメンバーを記載させていただいてございます。

三つ目の部会,8ページを御覧ください。世界文化遺産・無形文化遺産部会の設置についての資料でございます。この部会は世界遺産条約,無形文化遺産保護条約の実施に関して講ずべき施策,世界遺産暫定一覧表に記載すべき資産の選定に関する事項,世界遺産一覧表に記載されることが適当と思われる資産の候補の選定に関する事項,無形文化遺産の目録の更新に関する事項,無形文化遺産の候補に関する事項などとなってございます。次の9ページ目にメンバー,委員の案を記載させてございます。

これらの部会の設置に関しまして御審議を賜れればと思います。説明は以上でございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。

今,三つの部会を設置するという御提案の内容を説明くださいましたので,何か御質問等ございましたら,どうぞお願いいたします。どうぞ。

【亀井委員】東京文化財研究所ですけれども,7ページ,委員の肩書,所属が4月1日付で変わりました。臨時委員の一番下にあります山梨絵美子ですが,副所長になりました。それから,専門委員の欄,先頭にあります佐野千絵ですけれども,文化財情報資料部部長に変わりました。この2箇所ですが,訂正していただきたいと思います。よろしくお願いします。

【馬渕会長】今の御質問というか,御異議は,東京文化財研究所の2名の方の肩書が変わられたということで,これは,では,速やかに御訂正をお願いいたします。

【三木調整官】はい。

【馬渕会長】ほかに何かございますか。それでは,今,御説明いただいた資料1のとおりに文化政策部会,美術品補償制度部会,世界遺産・無形文化遺産部会の三つの部会の設置について決定したいと思いますが,いかがでしょうか。御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【馬渕会長】御異議ないようですので,案のとおりに決定し,それぞれの部会について構成委員を同じ資料1,皆様のお名前等が入ってございます,今日御参加でない方のお名前も入っておりますが,この1のとおりに指名させていただきたいと思います。ありがとうございました。

以上で今期審議会の発足に当たっての手続は終了いたしました。どうもありがとうございました。それで,あとの時間を最近の文化政策の動向について,事務局の方から御説明いただきたいと思います。最近のいろいろテレビ,新聞等,マスコミで報道されている文化政策の動向,いろいろ御懸念等あると思いますけれども,まず,御説明いただき,その後に委員の皆様より自己紹介を兼ねて,それぞれ御意見等を頂きたく思いますので,どうぞ御説明,三木企画調整官よりお願いいたします。

【三木調整官】御説明申し上げます。最近の文化行政の動向ということでございますが,本日,第1回の総会で皆様から御意見を頂く際に,トピックを少し絞らせていただきたいと思いまして,第4次方針でも文化芸術資源を活用するということを打ち出していただいたことに関連しまして,今,文化庁として今後進めていきたい,この文化芸術資源を活用した経済活性化につきまして,今の文化庁における検討や今後の方向性を少し簡単に御説明させていただいて,本総会の先生方,非常に幅広いバックグラウンドの先生の方々ですから,必ずしも御専門ではないトピックを挙げている部分もあるかもしれませんけれども,よろしければこちらについて少し自由討議をしていただきたいなということで,本日,御用意させていただいております資料2でございます。

1ページを見ていただければと思うのですけれども,まさに先ほどから会長や長官からもお話がありましたように,文化芸術というのが文化分野だけではなく,他の様々な分野への経済波及効果を生み出すものだと認識してございます。このたび初めてではございますけれども,国民総生産のうち,文化がどれぐらい占めるのかというのを文化庁において試算をしてみました。そうすると,約1.2%,5兆円ということでございました。諸外国では定義がまちまちではあるのですけれども,このように少しデータが得られたものを見てみますと,諸外国3,4%というような数字がありまして,日本は文化芸術資源を更に活用することによって諸外国並みに文化芸術が日本の経済の活性化に資することができる可能性があるのではないか。また,そのように持っていきたいなと思っております。

また,その際には単に文化に関する産業自体の規模を大きくするだけではなくて,観光でありますとか,製造業,クリエイティブ産業等々含め,こういう周辺分野への波及ということも非常に大きいと思っておりますので,1ページ目の真ん中で,赤字で書いてございますけれども,文化を広い概念で捉えまして観光や他産業への波及を重視し,文化芸術資源を活用した経済活性化,文化GDPの拡大に取り組んでいきたいと考えてございます。

どのように取り組んでいくのかという方向性を,非常にまだ粗いものですけれども,方向性を次のページにまとめてございます。2ページ目を御覧ください。方向性,三つある内の一つ目,インバウンドの増加・地域の活力の創出ということでございます。2020年,東京大会に向けた文化プログラムというのも契機といたしまして,地域の文化芸術活動の魅力を最大化して,それを地域経済への波及を創出していきたいと考えてございます。これは今,文化庁におきましては文化力プロジェクト(仮称)というものを構想しておりまして,それを全国展開していきたいと考えております。その際には,やはり国内外へきっちり発信していくということが重要だと思っておりまして,最高峰のアワードをつくったり,全国でのイベントの状況をポータルサイトで,多言語で発信していくことも取り組んでいきたいと思っております。これが方向性1でございます。

二つ目が方向性2,文化産業における潜在的顧客・稼ぎ手の開拓ということでございます。御案内のとおり文化というものが様々な人々を,多様性を包容するというものがあると思います。様々な障害者や外国人の方々等,あらゆる国民,あらゆる人々が活躍する場を創出して,結果として文化活動の裾野を拡大するというようなことにつなげていきたいと思っております。様々な児童生徒,老若男女,様々な人を対象にワークショップ等,いろいろな取組によって社会包摂プログラムを全国で展開すること。障害者のアートというものを振興していくこと。それから,あらゆる子供に対する文化芸術の機会を提供すること。外国人への日本語教育の実施といったようなことが具体的な取組として考えてございます。

最後の方向性3,これは文化財ですけれども,文化財で稼ぐ力の土台の形成ということで,地域の文化財の戦略的活用や適切なサイクルの修理,それから,美装化によりまして文化財で稼ぐ仕組みへの転換を図っていきたいと思っております。具体的には解説を多言語化する。それから,しっかりと魅力あるものになるように修理したり,美装化をしたり,文化施設の機能強化を図る。それから,日本遺産をはじめとした文化財を中核とした観光拠点を全国200拠点程度整備するといったようなことに取り組んでいきたいと思っております。

時間の関係上,御説明は割愛させていただきますけれども,次のページ以降は文化財,全国での祭りや芸術祭,それから,先ほど御説明しましたような可児市の例でございますけれども,文化芸術拠点を子育て支援とか高齢者の生きがいづくり等に活用した事例等々,方向性1から3についての現時点でのいろいろな例をイメージとして持っていただくために載せてございますので,参考として御覧いただければと思います。文化庁といたしましては,このような方向性で取り組んでいきたいと思いますので,本日,短い時間でございますけれども,総会の委員の皆様方に今後文化庁が施策を進めていく上で御示唆を,自由討議としていただければと思っております。

私からの説明は以上でございます。

【馬渕会長】御説明,ありがとうございました。文化GDPという少し耳慣れない用語が出てきまして,私,議長,会長なので余り冒頭から何か水を掛けるようなことを言ってはいけないのかもしれないのですが,文化GDP,例えば日本は今1.2%と見積もっていらっしゃるようですけれども,諸外国は確かに3%,4%というところがあるのですが,やっぱり今の予算規模でこれだけ3%にしろとか,そういう話ではないのでしょうねというのがまず疑問として起こるところでございまして,結局,文化GDPの高い国というのはやっぱりそれなりに文化に投資している国だと思うんですね。それを今の投資の枠の中でいろいろ工夫して確かに数字は挙げることはできるかもしれないのですが,考え方として今のままでGDPだけ挙げろと言われても私は非常に違うのではないかという気がいたしますけれども,その辺はどういうふうにお考えになっているのか聞かせてください。

【三木調整官】一般的なお答えになって恐縮ですけれども,やはりこれを目指して必要な予算というのはしっかり確保していきたいと思いますので,そのためにもやはり文化がしっかりと我々の生活,経済生活に貢献している,つまり,コストセンターではなくて,ちゃんとプロフィットを生むものなので,投資といいますか,必要な予算も必要であるということを我々しっかりと見せていきながら,必要な予算を確保していきたいと思ってございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。予算を確保してくださると言っていただいたので,大変心強く思いますが,どうぞ皆様,今の文化芸術資源を活用した経済活性化というこの方針について御意見,どうぞお聞かせ願いたいと思います。どうぞ,都倉委員。

【都倉委員】先ほどの宮田長官の言葉の中の埋もれているもの,そして輝いているものというお言葉がありました。そして,やはり文化といろいろなほかのジャンルの産業でありますとか,技術でありますとか,そういうものが融合して初めて大きく花開くというのは全く僕も同意見でして,インバウンドという今の現象というのは,これはまさに畑に水が入ってくるようなものだと僕は思っています。埋もれているものがあったとしたら,それは日本人の目に見えなかったものというのもあると思いますね。僕はいつも文化行政というのはグラスルーツを絶対に見過ごしてはいけないということが僕の持論なのですけれども,計画して,例えば伝統芸能を向こうに持っていったから外人が喜ぶという既成概

念というのは,これはもちろん,それは大切に保護していかなければいけないものだし,活性化していかなければいけないものですけれども,必ずしもそれが日本の文化を輸出する成功につながるとは限らない。

つまり,我々が気がつかなくても勝手に向こうが魅力的だという,埋もれている日本の伝統,これはもうポップカルチャーも含めて,そういうものが発見されるわけですね。だから,富士山と何県でしたっけ,五重の塔がすばらしく写る,あれもインターネットでたまたまその写真を見た人がそこを探して,外国人がそこを観光名所にしたという例もあるわけですよね。それと,例えば劇場文化にしてもニューヨークのブロードウェイは1,000万とか1,200万とかという入場人員があるということを言われておりますけれども,そのうち半分は観光客ですね。

つまり,パッケージでニューヨーク見物に行くと必ずブロードウェイの切符が入るんですね。だから,このミュージカルが見たいという発想でニューヨークに行く,ブロードウェイに行くわけではなくて,観光事業がブロードウェイの切符の売上げの大体半分ぐらいを担っているという,こういう産業と芸術との融合というか,これは自然にそういう現象になってきているわけでありまして,今度,この日本のインバウンドで,いかに,今,逆に彼らが満足しているもの,もちろんいろいろな見たことのないものを見ているのでしょうけれども,これからますます日本の新しいカルチャーを彼らが発見してエンジョイしてくれる時代になってくるのだとしたら,その情報を役所はやっぱりいつもアンテナを張っていなければいけない。

それで,そうだと思ったときにワッとそこにグラスルーツにジョインしていくという,そういう考え方というか,その視点を絶対に持っていただきたいと思います。これから2020年にかけて,やっぱりこれはもうイギリスが2,500万なら日本は4,000万を目標にしているというのですから,島国の中で本当にそういうことが起こったら,すごいことだろうと僕は思いますけれども,是非文化行政はクロスオーバーのことが新しいエネルギーになるのだということをいつも視点に置いていただきたいと思います。ありがとうございました。

【馬渕会長】どうもありがとうございました。

情報のアンテナが必要であるということと,それから,それに速やかに対応する適応力というか,そういう姿勢を要求されていらっしゃいますが,ほかの方の御意見は何かございますでしょうか。どうぞ。

【道垣内委員】道垣内と申します。風邪で,申し訳ございません。法律をやっているものですから,さっきからつまらんことを申しまして申し訳ございませんでした。余り楽しいことを申し上げることはできないのですが,この文化GDPという発想は面白いとは思います。しかし,どうやって算定したのかということを相当明らかにされないとなかなか,どれぐらい伸びたかの計算が難しいし,いわんや国際比較は相当難しいといます。日本でさえ平成23年度と書いてありますけれども,これはどうしてそんな古いデータをお使いなのか。各国,いろいろ年代が違いますけれども,これもどこから探してこられたのか。こ

ういうことを計算するのは経済関連,私,経済の専門ではありませんけれども,簡単ではないんですね。

文化行政にとって,あるいは文化の振興にとってこういう数値化がいいことなのかどうなのかといいますか。文化は極めて広く波及効果を有しているので,例えば日本の車が売れるのも日本の文化というのがイメージとしてあってだとすれば,その何%かは文化のおかげだとなるわけで,そこはカウントできないですよね。申し上げたいのは,このような発想がいいのかという疑問です。稼ぐなんていう話を文化の文脈の中ですることが本当に文化を振興することになるのかどうか少し疑問な感じがします。お金を生まなくても十分にその文化を享受できますし,自分でパフォーマンスをすることもできます。とりあえずはこういう打ち出し方をされたので,この方向も一つだと思いますけれども,ここにカウントされない文化というものがどこか違う形で評価されるような打ち出し方というのもあるのではないかなと思いました。

以上です。

【馬渕会長】ありがとうございました。

今のは御質問も含まれていると思いますので,どうぞ,御回答をお願いします。

【三木調整官】今回も結論,1.2%だけとしか書いていなかったのも,文化庁の中でこのような数字を初めて出したものですから,非常に粗々したものでして,現在も精査しておりますので,もう少しはっきり分かったら,また具体的に御説明したいと思うのですけれども,今回やりましたのは,産業連関表の中から総付加価値で文化関係のもので,その文化関係そのものの定義が難しいのですけれども,今回,文化庁として拾えたものを拾ったという部分ですので,網羅的に文化GDPというものを計算したものではなくて,あくまでも試算でございます。ですので,その意味でこの連関表が毎年出るものではなかったものですから,23年のものを使ったというデータでございます。たしか5年か6年に一度出るというものでございます。

それから,文化産業だけではない部分があって,それをこの1枚目の図でも苦し紛れに表現したいなと思っているのですけれども,文化産業だけではなくて周りにも点線の矢印があるのですけれども,そういうところに波及していくという意識は持っております。ですので,文化GDPというのを今回,初めて言い出しましたけれども,単に文化GDPだけではなくて,そういう波及もしっかり視野に入れて,できれば一番理想は観光業にこれぐらい波及しているとか,製造業にこれぐらい波及しているみたいな数字が更にあれば,更に文化が経済にどれぐらい貢献しているかというのがまだもう少し広く見えると思うのですけれども,まだ少しそこまでは至ってはいないのですけれども,思いとしては文化産業だけではなくて波及する様々な分野にもしっかり貢献するように文化を狭く捉えるのではなくて,そういったところとの連携とか,そういったところの波及を視野に入れて施策をやっていきたいなと思っております。

【馬渕会長】よろしゅうございますか。片山委員,どうぞ。

【片山委員】片山です。昨年度までは臨時委員として文化政策部会の方で,第4次基本方針の取りまとめに関わらせていただいたのですけれども,その観点からこの文化GDPのことについて少し意見を申し上げたいと思います。第4次基本方針の5ページをお開きいただくと,文化芸術立国の姿というのが書かれています。その4番目のところに文化芸術に従事する者が安心して希望を持ちながら働いている。文化芸術関係の新たな雇用や産業が現在よりも大幅に創出されているということが文化芸術立国の姿の中に明記されたのですね。雇用とか産業のことが,文化庁が出すこのような文書に書かれたというのは恐らく初めてなのではないかと思います。

文化の世界で一番問題になっているのが,そこで働いている人たちの雇用が非常に不安定で,そういったところで働いていくということに希望が見いだせなくて,ほかのところにどんどん転職していってしまうというような状況があります。ここを何とか解消しないと文化の発展というのはないので,だから,波及効果も重要なのですけれども,やっぱり文化セクターそのものの付加価値を大きくしていくということが重要かと思います。ですから,GDPをしっかり把握した方が良いと思うんですね。生産面と支出面と分配面とありますが,まず,分配面で,文化で働く人たちの雇用者所得が大きくならない限りは,その分野で安心して働いていけませんので,そこを考える必要があります。

たくさん給料を払えるようにするためには,付加価値を上げなければいけないわけですけれども,付加価値を上げるためには誰かがお金を払わないと付加価値が上がらないわけです。GDPを支出面から見ると消費か,投資か,輸出ですね。その三つを増やさないと付加価値は増えないわけですね。消費支出については日本のGDPの中でも約6割を占めるわけですので,民間最終消費支出の中に占める文化に対する支出,いわゆる家計の消費支出の中で文化にどれだけお金を払うのか。そこをやはり増やしていかない限りは,最終的に文化で働く人の収入は増えないわけですね。ただ,ほかのビジネスと違って家計消費だけで支えられているわけではないですから,そこで重要になるのが政府の消費と政府の投資だと思います。

ただ,そこをきちんと増やしていくのですけれども,政府の消費だけで支え切るというのは難しいと思いますから,政府の消費,投資に加えて一般の市民がもっと文化にお金を出すような仕組みを作っていく。それからあと輸出ですね。輸出を増やしていけば,国内消費は増えなくても文化のセクターの収入は増えるわけですので,輸出を増やす。だから,これはインバウンドによって輸出は増えるわけですので,そういうところをきちんとロジカルに考えて,最終的には文化で働く人たちの収入が増え,そこで安心して働いていけるという状況を作るということです。その意味でGDPのことをしっかり把握するというのは非常に重要なことなのではないかと思います。

【馬渕会長】ありがとうございました。

ほかに何か御意見ございますでしょうか。どうぞ,湯浅委員。

【湯浅委員】今の片山委員の御発言と重なるところも多いかもしれないのですけれど

も,英国でも2010年のリーマンショックを契機にかなり全体的な歳出削減策の関係で文化予算というのは非常にカットが進んでいます。現在もそうなのですけれども,その中で国が成長戦略を推し進めていく中で,文化芸術セクターとしてもどのように経済に貢献しているのかということを見える化していくというのは非常に大事でして,それによってその文化に,これは文化助成という考え方,文化に投資をするという言葉をかなり使われていますけれども,投資をする意義というものを訴えています。つい最近,昨年も,特にイングランドのアーツカウンシルイングランドの方で,2010年に一度,文化芸術分野の産業の経済の貢献度というレポートを出して,3年後の2013年までのデータを集約したものを昨年出しています。ということは,この間にオリンピックがあるのですけれども,英国の場合はGDPではなくてGVA,私は経済の専門ではないのですが,粗付加価値の方で出しています。

先ほど1.2%,今回,文化庁さんが出された文化GDPのことについては,三木さんの方から,まだこれは精査しているとおっしゃっていましたけれども,この数字を基に政策をこれから立てていくに当たっては,この数字が何を言っているのか,今,文化というのはどこを切っているのかというのは非常に大事な議論になると思うので,この数字を今伸ばしていくということが,3%にするとあります。今の時点で目標を掲げるのは乱暴かなと思います。英国では2010年,56億ポンドのGVAが2013年には77億ポンド,そこで36%成長していますというふうに係数を立てています。ですので,成長率が高い産業だからこそ,投資をする価値があるというようなロジックを作っています。あわせて,1ポンドの投資,税金の公的な投資が5ポンドの価値を生み出しているというような議論を付けていまして,何年か前は1ポンドが3ポンドを生み出しているというものから,今更に大きな価値を生み出しているとも出しています。

それから,恐らく今ここの中で混在しているのが直接的な,今,片山委員もおっしゃったような,直接的な文化芸術が生み出す経済価値と間接的に,例えば観光とか,そのほかのところで生み出すのが若干混雑しているような視点もあるような気がするのですけれども,レポートの中でも,イギリスの方でも直接的に生み出していく。例えばチケット収入も含めてどれぐらいの収入を生み出していて,更に間接的には例えば観光とか,又は保健とか健康においてもどういうふうな効果をしているかという見方をしているのと,雇用を生み出しているというところでの雇用の伸び率,停滞率も含めて,それに応じてどういう政策をしていくのかというような政策を付けています。

ただ,あわせて,先ほどその前にも御意見がありましたけれども,文化芸術というのは経済的な効果だけではなくて,大事なそのほかの効果もたくさんあって,それが文化芸術だからこそできることだと思うのですけれども,かなりのデータとエヴィデンスを集めて,併せて社会的価値,健康とヘルス・アンド・ウェルビーイングという言葉を使っていますが,心身の健康,幸福に寄与する価値,併せて教育的価値というものを経済価値と効果と合わせてデータを収集しています。今,ここの2ページ目のところ以降書いてあることを

見ますと,特に今回は経済効果を狙ったデータということで,こういうふうな切り口で書いているのだとは思うのですが,例えば方向性2のところにある多様な方が社会の人々,市民が参加する芸術活動というのは必ずしも経済効果を目標にしたものとは言い切れないのだと思います。

こういったことによって人々の健康や幸福又は社会の強いつながりとか,あと教育的目的なので,ここにあるコミュニケーションを「ワークショップなどの」と書いてありますけれども,教育にアートを取り入れることは必ずしも経済的なクリエイティブ産業に従事する人だけを生み出すわけではなくて,力強い人々,人間を作っていくということだと思いますので,この元々のデータの根拠をはっきりしながら,目標を掲げていくとともに,その全体のロジックをもう少しきちんと組み立てていく必要があるかなと思いました。あわせて,多分,今の問題というのは現状のデータがないのだと思うんですね。これから2020から先に向けた政策を立てていくに当たって,現状の認識,じゃあ,今,何人働いていて,どういうふうな,今,23年ってかなり古いと思いますので,データを集めていくのがすごく必要かなと思います。

今日,ここに来る前にロンドンのナショナルギャラリーの方とお話をしていたのですけれども,この文化GDPの話もちょこっとしている中で,今,美術館としても公的な助成金を,投資を基にどれぐらいの経済効果を生み出しているのかというのは,美術館自体がデータとしてまとめてかなり広報,発表もしていると言っています。この考え方というのは,今すぐにデータが集まってこない中で,日本の文化芸術の働く機関の人たちとも共同してこういったエヴィデンスを収集するという作業になると思いますので,まずはその全体の枠組みというのを文化庁さんを中心に決めていきながら,文化芸術で働く機関,劇場や美術館やフェスティバルやその他芸術団体やアーティストの方とも一緒に証拠といいますか,データを収集していって係数を立てていくということかなと思いました。

【馬渕会長】ありがとうございました。GDPでない価値,社会的価値,幸福とか,健康とか,教育的とか,そういう価値に関して積極的に評価していきたいというお話と,あとGDPの数字を出すときのもう少し精緻なプロセスが必要であるというような御意見でした。どうもありがとうございました。

ほかの方,どうぞ。

【伊東委員】国語分科会日本語小委員会で主査をやっておりました伊東祐郎と申します。文化をどう捉えるかといったときに,私も留学生に対する日本語教育やボランティア活動で多くの今,地域住民が外国人と接しているということを考えますと,やはり地域住民が外国人と接するということが最も国際交流の最前線を担っていらっしゃるなと感じます。その中で日本語ができないから,最初は日本語のお手伝いをしようという形で多くのボランティア活動が始められるわけですけれども,長年,そのボランティア活動をしていて,その人たちが感じることは,日本語を教えようと思ったけれども,実は外国人から多くのことを学んだと。その多くのことというのが自分が,要するに日本の文化の良さであったりとか,日本の習慣,慣習というものが,生まれ育った我々が気づかないところをいろいろな形で疑問や,いわゆる問題として指摘してくれる外国人住民の人たちの,そういったことが大きな気づきになっていると言っておりました。

その中で改めて我々は日本の文化のよさや,そしてもっと発信しなければいけないということに気づくということを考えますと,私たちはやはり地域住民の日本のいろいろな地域で活躍している人たちの,いわゆるそのサポート,そしてそのことを意識した段階でどう発信力をサポートしていくか。そんなところにつなげられたらいいかなと思います。そういう中で,オリンピック,多くの外国人観光客も来ますけれども,既に多くの地域住民の中に外国人もいるということを考えますと,一体で今後の日本の社会の在り方,多文化共生と言っていいかもしれませんけれども,国づくり,人づくりに文化というものをどう介在させていくかということの視点から,この方向性2のところを考えていけたらなと考えているところです。

以上です。

【馬渕会長】ありがとうございました。

最初に都倉委員がおっしゃった御意見とつながってくるかと思うのですけれども,地域住民が外国人との接点を持つことによって日本文化のよさを学べるという,そういう地域の中でどうやって外国人を取り込み,そこに新しい文化の認識を持てるか,非常に重要な御指摘だと思いますが,この辺は今の日本人は割合ナイーブに外国人を善良に受け入れている段階だと思うのですけれども,国際的に見たときにやはりこれは非常に難しい問題が発生することにもなるかなと。

特にヨーロッパにおける移民だとか,シリア難民だとかの問題が明らかになって,結構長い間,外国人を受け入れる包容力のある文化だと思っていたところが実はそうでなくなってきているというような非常に厳しい現実があると思います。もしかして日本でできなかったことが何かできるようになれば,それはすばらしいことだと思うのですが,そういう具体的な例証とか取組の在り方とかというのを考えていくことによって,新しいことができたら,それは本当にすばらしいことだと思います。伊東委員の前向きな御発言ですけれども,なかなか難しい点も多いかなと思います。

ほかに。今回初めて御参加,新任になっていただきました例えば沖森委員は何か,今の議論の中で御発言がありましたら,自己紹介かたがたお願いいたします。

【沖森委員】沖森と申します。これまで漢字小委員会の臨時委員として常用漢字の改訂並びに,今回,字形・字体に関する指針というのを会の主査としてまとめてまいりました。今回,こうした場で正委員ということで発言をするということではあるのですけれども,ただ,私,文化GDPというのはなかなか理解がしにくいところではありまして,議論にも,御意見にもありましたように根拠がよく分からないというところがあって,申し上げることは余りございませんけれども,私,一観光客としてこうした文化資源に会ったときに,その情報が確かにあることはあるのですけれども,一度出した情報を修正していな

いということが実はかなりあるということに気づかされます。

一度書かれたパンフレットなり,一度書かれた情報なりというのはなかなか修正がきかないということをよく感じておりまして,それについて説明してある文章というのが,そこそこにそれぞれありますけれども,それが今から見ると何か間違いが多いなということに気づかされるというのがありまして,これはこの文化GDPで言うと方向性の3で言うところの土台ということになるのでしょうけれども,私,日本語の研究をしております関係上,そうした文化の発信の方の土台の知識づくりというところに重点といいますか,関心がありまして,なかなかGDPまで追いつかないわけなのですけれども,ただ,先ほど申しましたように,情報を出すだけではなくて,それを修正する力というのと,もう一つ,そういう情報を得るのがなかなか実は難しいということで,専門家の方々がどれだけ関わっておられるのか,それさえもよく分からないということでございますので,今後はネットワーク化のようなものも文化庁がこういうような方法があるのではないかという道を付けていただくということも重要ではないかなと思っております。

それともう一つ,最後に申し上げたいのは,文化活動の担い手というのは国民それぞれだと思いますけれども,その人たちがどれだけ意識を高く持って参加できるかという,このあたりも考えていければなと思っております。

以上です。

【馬渕会長】どうもありがとうございました。

もう一人,新任の方がいらっしゃいますので,河野委員,何か御意見を頂きたいのですが。

【河野委員】ありがとうございます。河野でございます。私は世界遺産と無形遺産の部会を仰せつかることになりまして,現在,国際イコモスの副会長職にございまして,内外の情報をかなり詳細に入手し得る立場にございます。世界遺産はこの先ほどのポンチ絵の中で申しますと,まさに幾つかの事柄に同時に関わっている。日本で申しますと,その文化財の保存の問題と観光と,それから,インバウンドとその周辺の観光産業,地方活性とかいろいろなものが,場合によっては必ずしも同じ方向にベクトルが向かないものが一つのところへギュッと集中しているというのが現状であろうと思っておりまして,いろいろな方向のベクトルをうまくまとめながらスムーズに世界遺産の数を日本として増やしていくにはどうすればよいかということがこの部会に与えられた課題だろうと感じているところでございます。

そういう状況は日本だけではございません。よその国でもそういうことはございますし,必ずしも世界遺産にしたいという意志があるところが必ずしも世界遺産になるわけでもございません。そういうところの無駄が世界的に言うと発生しているということもございます。そういうことを反面教師としながらもスムーズな世界遺産の推薦へということへ全力を挙げていきたいと考えております。

以上でございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。

余り時間もないのですけれども,今日はもしかして全員の方の御発言は無理かもしれないのですが,是非この際一言と言うと何か御発言の意思がなくなってしまうかもしれないので,どなたか,薦田委員は何か御意見ございませんでしょうか。

【薦田委員】それでは,御指名いただきましたので,発言させていただきます。私が関わっている分野は非常に小さい分野で,大きな政策についてどれだけのことを申し上げられるか,あるいはピントが外れているかもしれないのですが,今お話を伺っておりまして,文化芸術資源を活用した経済活性化,あるいはその他産業への波及とか,稼ぐ力,稼ぎ手というような言葉が出てまいりました。それを伺っていて,経済に文化行政が目を向けたということはある意味,現在は非常に大きな転換点に来ているのかなという思いを受けました。

でも,それだけではなく,先ほど湯浅委員がおっしゃったように文化には経済で測れない,いろいろな役割や価値があると思います。そういうことに対する長期的なビジョンとか理念とかも大切であって,そういうものがしっかりあれば,文化庁の予算は潤沢ではありませんけれども,文化は全ての省庁と関わっておりますので,その省庁でこれからいろいろな方針を策定する際には,文化庁の意見を必ず反映させてから考えてほしいと,そのぐらいの気概を持って文化行政が進んだらいいなというようなことを思いました。

【馬渕会長】ありがとうございます。

【宮田長官】拍手をしたいですね。

【馬渕会長】はい。みんなで長官を支えましょう。後ほど少し文化庁移転のことの御報告をいただきますけれども,やっぱり文化庁の持つ国政の中における力をつけていかないと,なかなかうまくいかないことが多いかなと思いますので,これは宮田長官に是非頑張っていただきたいと思います。

ほかに,あと三,四名の方に御発言頂きたいのですが,まだ御発言頂いていない方,佐藤委員,どうぞお願いいたします。

【佐藤委員】それでは,御指名なので少し申し上げたいと思います。私,今,薦田委員がおっしゃったことと同じようなことを考えておりましたが,最初にまず文化GDPが1.2%という数字は,これは,私は逆に驚くべき数字で,農林水産が1.2%と同じだというのは,これはすごいことだなと最初はちょっと思いました。決して小さい数字ではないのではないか。農林水産にかけた予算と文化にかけた予算の割合でいけば,むしろ文化庁はものすごくいい仕事をしているようにも受け止められる数字ではないのかなと。そういう経済効果を言うのであれば,かけた予算との割合でこれだけいいことをしているのだということにも数字を使っていただいた方がいいかなと思ったのですが,ただ,やはり圧倒的に文化に予算を使うよりは,何か道路を作ったりした方がいいというようなことの認識が圧倒的に広いように思いまして,そういうこと自身が知られていないということで,そういう意味では,この数字は使えるのかなとは思いました。

ただ,日本文化のすばらしさというのは,私は,海外の方にこれから2020年を目指して伝えるべきことなのですが,日本の国内でも余り知られていないのではないか。特に予算の審議の場ではなかなか理解されていないのかなと。ただし,予算が少ないときには知恵を絞るということで,先ほどお話があったように,私は他省庁の政策の中にも文化的な政策がかなりあると思いますので,それに文化庁が知恵を提供して,全体としての文化芸術立国を実現していくということはできるのかなと思います。そのためにはやはり発信ということが大事で,この後ろの方に成功例が幾つか写真とともに掲げられていまして,これは,私は大変すばらしいなと思うのですが,ただし,これはやっぱり余り知られていないのではないのかなという気がいたします。

もう少しこういう成果というものを文化庁がもっと発信していって,文化庁が前面に立ってもいいと思うのですけれども,発信していただけると有り難いなと。その際には,それぞれこの事業を担当された文化担当の職員の方がすごい努力をされていると思うんですね。もちろん職員の方だけではなくて,地元の民間のNPOの方だとか,あるいは研究者の方だとか,地域の大学とリンクしたりして実現していると思うのですけれども,そういう人たちの育成みたいなものにも少し目を向けていただけると有り難いなと。そういった方たちのスキルアップも文化庁としてはリードしていただけると有り難いと思いました。

以上。

【馬渕会長】ありがとうございました。

私の進行の不手際で,もう時間がなくなりまして全員の委員の方に御意見を伺いたかったのですが,大変申し訳ないのですけれども,次回またその方には是非御発言いただきたいということで,ここで次の議題に移らせていただきます。議事次第では3その他というふうにさせていただいておりますが,先ほども少し触れましたように文化庁京都移転について事務局から御説明をお願いいたします。

【佐藤課長】政策課長の佐藤でございます。資料の3をお開きいただきたいと思います。政府関係機関の移転の基本方針が決定をいたしましたので,御報告をいたします。3月22日のまち・ひと・しごと創生本部で決定をされたものでございますが,これは同本部で置かれました有識者会議における議論や石破地方創生担当大臣と馳文部科学大臣の協議などを経まして,全閣僚が構成員となっておりますまち・ひと・しごと創生本部で決定をしたものでございます。

この資料の3ページ,Ⅱ.中央省庁の地方移転についてというところで,全体の基本的な方針が書かれてございます。(1)に地方移転が我が国の地方創生に資するかどうかという視点,(2)では地方移転によって,その省庁の機能の維持・向上が期待できるかといった視点,(3)では移転費用等の過度な増大などがないかといった視点,そして4ページに参りますと,(注)以下のところでございますが,これは行政の内部の事柄でございますけれども,マル1のところでは危機管理業務や外交関係,国会対応業務に支障がないかといった視点。

それから,一つ飛んでマル3に行きますと,施策の事業執行業務,これは多くの省庁で地方支分部局が担っているように,できる限り実施現場に近いところで実施される方が効果的・効率的であるというのが全体の基本方針で,一つ上のマル2に戻りますと,政策の企画・立案業務,これは大きく二つあるのですけれども,法案作成などの政府全体の調整が必要なものは官邸や関係省庁に近いところにあった方がいい。また一方,施策や事業の執行業務と密接に関連するものは執行部門に近いところにあった方がいい。

こういった全体の方針の下に文化庁についてどのようにまとめられたかといいますと,資料の9ページ,別紙2でございます。文化庁の移転について,これは京都府から提案のあったものでございますけれども,この資料は,まち・ひと・しごと本部が取りまとめたものでございます。(4)に具体的な対応方向ということで,ここはかなり文章,大事なことが凝縮されて詰まっているところでございますけれども,文化庁については以下のような方向で進める。

外交,国会,政策の企画立案,関係省庁との調整,こういったことについても現在と同等以上の機能が発揮できることを前提とした上で,地方創生や文化財の活用など文化庁に期待される新たな政策ニーズ等への対応を含め,文化庁の機能強化を図りつつ,全面的に移転すると書かれております。すなわち,最低でも現在と同等以上の機能を発揮することを前提として,そして文化庁に期待される新たな政策ニーズをも対応して,そういったことを含め,文化庁の機能強化を図る。その上で全面的に移転するということで,単に文化庁を右から左へ移す,東から西へ移すということでもありませんし,文化庁を二つに割る,単に割るということでもないということでございます。

そして,どのような体制を東京に置いていく,残していくのか,また,いつ移転するのか,移転の費用を誰が負担するのかといったことが,その次の「このため」という以下にございまして,抜本的な組織の見直し,東京での事務体制の構築や移転時期,移転費用・移転後の経常的経費への対応などを検討するため,「文化庁移転協議会」を文部科学省と内閣官房,関係省庁の協力の下,政府内に設置をするということで,今後,文化庁移転協議会を設置して検討するということになってございます。そして,いつまでかということですが,ICTの活用による実証実験を行いつつ,これはテレビ会議なども活用ということでございますが,実証もしながら8月末をめどに移転に係る組織体制等の概要を取りまとめて,年内には具体的な内容を決定し,数年のうちに京都へ移転をするというふうにまとめております。なお,文化庁関係の3独法については,並行して検討を進める。このようにされております。

繰り返しになりますけれども,文化庁の地方移転というのは国の機関としての機能を確保,あるいは向上できるということは前提としたものでございますので,国会への説明責任とか,法案の準備,予算,各国大使館との連携,そして文化芸術団体との日頃の連携などの機能,こういったものは東京に残すべきものと大臣も発言をしてございます。また,一方,京都への移転が国全体の文化行政によい効果を生み出すものでなければなりません

ので,文化庁に期待される新たな政策ニーズ,例えば関西地域でありますと自治体,産業界,大学,地域コミュニティ,そういった協力も得ながら,文化庁の機能強化につながるような抜本的な組織の見直しなども必要と考えております。

新たな政策ニーズの例,今日は前半で文化GDPの御議論もいただきましたけれども,これまで文化庁が本来やるべきだったがなかなかやってこられなかったようなことも,これから積極的にこれを転機として生かしてやっていきたい。例えば文化芸術における民間との連携,それから,科学をはじめ,他分野との融合によって新たな産業を創出していくとか,伝統の技を技術によって継承していくとか,それから,地域の魅力ある文化資源を観光資源に結びつける方策を開発していく。あるいは土地の風土に根差した食文化をはじめとする暮らしの文化を今以上に振興していくこと,あるいは障害者の優れた芸術活動の普及であるとか,演劇,ダンスなどを通じた社会参画,文化芸術における社会包摂など。

そして今日も委員から御発言がありましたように,きちっとデータも備えていくべきでありますので,戦略的な企画立案の基礎となるようなデータの収集をしたり,海外の事例をきちんと分析していく,こういった新しい政策ニーズにきちんと機能強化を図りながら,この文化庁の移転について今後実際の検討を進めてまいりたいと思います。「文化庁移転協議会」で今後検討いたしますので,留意すべき点など御示唆がございましたら,またそれをもって私ども今後の協議会の検討に臨みたいと思っております。よろしくお願いします。

【馬渕会長】ありがとうございました。

この件につきましては,やはりいろいろ文化について御意見のある皆様から移転問題への疑問,希望というものをここで出していただくのが一番いいのかなと思うのですが,どなたか御意見ございますでしょうか。あるいは御質問でも結構ですが。特にございませんでしょうか。前回,前年度の最後に熊倉委員が結構否定的な御意見を述べられましたけれども,ほかの皆様は特にここで移転するに当たって,こういう問題が生じるのではないか,あるいはこういうことをこういうふうに新たにやってほしいとかいろいろな,余り今具体的なことを話す段階ではないのかもしれませんが,御意見がありましたらお願いします。

それでは,特にございませんようでしたら,またこの問題については進行を時々御報告いただくということで,そのときにまた御意見をちょうだいしたいと思います。そろそろ予定の時刻になりますが,今後,各分科会,部会においてそれぞれの審議を進めていただくことになりますが,どうぞ実りの多い審議となりますように各委員の御協力をよろしくお願いいたします。最後に事務局から連絡事項,お知らせ等ございますでしょうか。よろしくお願いします。

【三木調整官】会長をはじめ,委員の皆様方,御審議をありがとうございました。今後の各分科会,それから,部会の活動日程につきましては,また事務局から御連絡をさせていただきたいと思います。各課の庶務担当の者から御連絡をさせていただきたいと思います。それから,机上の文化審議会委員の発令書も本日忘れないようにお持ちいただければと思います。

事務局からの連絡は以上でございます。ありがとうございました。

【馬渕会長】ありがとうございました。

会長の慣れない進行で全員の方の御意見を伺うことができなくて大変申し訳なかったのですが,宮田長官,何か最後にございますでしょうか。

【宮田長官】今回の中で初めて,私も10年少し文化政策部会並びに文化審議会,出席させていただいていて,経済と文化というものが一体となったところでの御議論は,結構前向きな御議論をちょうだいしたのには,やや驚きと同時にうれしさが混在しております。そして,同時にサイエンスも入れていくべきではないかという言葉もございました。アーツ・アンド・サイエンス・アンド・マネジメントですね。この辺がきちっとできてきたら本当に計り知れない,なかなかお測りすること自身が難しいこの文化行政に対して,きちっとした数値を出すことができる。数値が出ることによって人には希望というものが出てくるということだと思うんですね。

文化,特に日本は資源の少ない国ですから,余計,それを倍増させるような捉え方というのができたら大変面白いのではないかなという気がします。何というかな,鼻歌まじりの命懸けみたいな感じでやっていきたいと,そんなふうに私は思っておりますので,是非とも皆様のお力をちょうだいして前へ進んで,やっぱり日本だよねというような,きら星のような文化行政ができるようになったら最高ではないかなと,そんなふうに思っております。会長さんも,ありがとうございました。できれば事務局,会長さんの名前と副会長さんの名前の名札も一緒にこちらへ持ってきてやるぐらいの細かな神経もあるといいのかなと,そんなことをやや感じました。

以上でございます。

【馬渕会長】どうもありがとうございました。

それでは,本日はこれで閉会でよろしいですね。長時間,どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。

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