第17期文化審議会第1回総会(第71回)議事録

平成29年4月6日

【髙田企画調整官】開会に先立ちまして,配布資料の確認をさせていただきます。資料は,タブレットに入っている資料と机上に配布しているパンフレット類となっております。タブレットの使い方等で分からないところがありましたら,身近にいる係員の者にお知らせいただければと思います。また,会議途中でも,何か資料に不備がございましたら係の者にお知らせいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。

あと,本日は冒頭,会長を選出するという人事案件がございますので,もし今この中にマスコミの方などがいらっしゃいましたら,恐縮ですが,一旦御退室いただきまして,人事案件終了後に入室していただくということになりますので,よろしくお願いいたします。

(傍聴者退出)

※ 会長に馬渕委員,会長代理に佐藤委員が選ばれた。

(傍聴者入室)

【馬渕会長】それでは,冒頭に,今期の文化審議会の開会に当たりまして,会長として一言,御挨拶をさせていただきます。昨年もいろいろ課題が多くございまして,今年も引き続き文化庁の京都移転とか,オリンピックに向けての文化プログラムの推進とか,様々な課題を抱えております。そうした中で,特に文化庁の京都移転に関して,力が削(そ)がれないように,この機会に文化を発展させる機会になりますように,是非皆様のいろいろな御意見を集約して,長官及び政府の方にも上げさせていただきたいと思っております。

また,文化芸術立国の実現を加速する文化政策の答申などについて,昨年まとめさせていただいたんですが,それを更に推進をお願いするということで,これも皆様委員の方々の強いバックアップをお願いしたいと思います。

オリンピック・パラリンピックの文化プログラムに関しては,もう昨年のリオオリンピックの後に開始されておりますけれども,2020年に向けて,より密度の高い,より日本ならではのすばらしいプログラムが展開されるようにいろいろ,これも各方面のお知恵を集結して,文化審議会としても,そうした流れを絶つことなく,強く推し進めていければと思っておりますので,あらゆる面で,この委員の皆様,本当に各方面からお集まりいただいておりますので,是非ここで率直に忌憚(きたん)のない意見を交わしながら,進めてまいりたいと思っております。どうぞ委員の皆様,それから事務局の皆様,御協力よろしくお願いいたします。

それでは,次に,続きまして宮田亮平長官から御挨拶を頂きたいと思います。いつも面白いと言うと失礼ですけれども,意表を突くいろいろな御意見,御挨拶いただいておりますが,大変楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。

【宮田長官】いきなり先手を打たれてしまいまして,何をしゃべっていいか,硬めに行こうかと思っていたんですけれども,私も何と2年目,やっとこ1年もちまして,2年目に入りました。とはいえ,先ほど会長からもお話がございましたように,この間,京都の方に,いわゆる先行移転約36名,その後,あと2名増えるかと思いますが,先行移転をいたしました。その中で私が感じたことは,やはり京都だからできること,東京でしかできないこと,僕は,この二つがしっかりとあると思うんです。その辺をよく考えた上で,この機会に,より日本の文化がしっかりと息づいて,生きている,それから,保存というのは,蔵の中に入れることじゃなくて,しっかり後世のすばらしいものを来世に引き継ぐということが活用の一つであるというふうに,私は考えております。何も外へ出せとか,早く見せろとかと,そういう話ではなくて,活用というのは,もっと大きな範囲での生かし方というのは,これからの文化,それから科学技術を踏まえた上でアピールすることによって,日本列島が文化で活性化ができるというような感じが私はしておりますので,そのために先生方のお知恵を是非とも欲しいと思います。

昔,「日本列島改造論」という言葉がございましたけれども,私は,日本列島,文化で改造論というのを作りたいというふうに思っておりますが,そのぐらいの気持ちで,先生方から忌憚(きたん)のないというか,飛び抜けた御発想を頂戴できれば,私はそれを担いでどこにでも行って,宣伝,これ相努めたいというふうに思っておりますので,こちらに私より相当優秀な連中がおりますので,その人たちが私の言った怪しい言葉を全部うまくまとめてくれますので,その辺のところで活気のある文化審議会に是非馬渕会長の下でやっていってもらいたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

(拍手)

【馬渕会長】心強いメッセージを宮田長官,どうもありがとうございました。

それでは,本日は今期最初の審議会でございますので,本審議会の概要と運営上の規則について確認しておきたいと思います。また,併せて各分科会への委員の分属についてを確認したいと思います。

なお,本審議会委員は4月1日付で発令されております。発令書を机上に置かせていただいておりますので,各分科会に属する方については,その発令書に分属を記してございます。また,このiPadの方に出ています資料1にも,その分属が記されてございますので,どうぞ御確認いただければと思います。以上の点について,事務局より説明をお願いいたします。

【宮田長官】髙田さん,その前に。すみません。私もちょっと遅れたんですけれども,非常に今日,いろいろなことが立て込んでおりまして,時々,事務局が抜けますが,決して文化審議会が嫌いで抜けるわけではないです。私も途中で抜けますが,すみません,その辺はひとつ,会長よろしくお願いします。そのことをおわびするのを忘れておりましたので,失礼しました。どうぞ,では,髙田さん,お願いします。

【髙田企画調整官】それでは,文化審議会の概要等につきまして,御説明いたします。資料1の2ページ目を御覧ください。タブレットの資料1の2ページ目のところに,文化審議会の概要というペーパーがございます。文化審議会は,文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項を調査審議し,文科大臣,文化庁長官に意見を述べるという職務でございます。そして,文化審議会は,政令に基づきまして四つの分科会が設置されておりまして,そのほか,審議会において部会というものが設置できることになっておりまして,それぞれの委員は,分科会又は部会にそれぞれ分属するということになっております。

3ページ目が分科会への委員の分属ということで,国語分科会,著作権分科会,文化財分科会へ分属される委員を示しております。

この後,まとめて部会の説明に入らせていただきますが,その分科会の次に,部会の設置ということで,文化政策部会の設置についてというものがございます。4ページでございます。文化政策部会では,いわゆる文化の基本方針だとか,基本計画的なことを審議するところでございまして,5ページでございますけれども,そこに正委員というのは,今いらっしゃる委員で分属される方,臨時委員というのは,臨時にこの文化政策部会のためだけに任命される方でございます。

次に,美術品補償制度部会でございます。こちらも美術品の補償制度について審議する委員会でございまして,これも審議会の決定に基づきまして設置するものでございます。7ページに,分属される委員の方,それと臨時委員,専門委員について名簿がございますので御参照ください。

次に,8ページでございますが,世界文化遺産部会の設置についてでございます。これは世界遺産に関して審議するところでございますが,昨年までは,世界文化遺産部会と無形文化遺産部会が合同で設置されておりましたが,今回,分けることによって効率的な運営を行うということで,今回,分けております。ですので,9ページに世界文化遺産部会の委員名簿で,10ページに無形文化遺産部会と,11ページに無形文化遺産部会委員の名簿がございますので御参照いただければと思います。

事務局からは以上でございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。

ただいまの内容について,委員の皆様方から御質問等がありましたら,どうぞお願いいたします。また後で,御質問がありましたら,また後ほどでも結構でございますので。

それでは,併せて各分科会へ委員の分属についても確認したいと思います。ただいま御説明のありましたように,各分科会のほかに,本審議会の下に部会を設置することを予定しておりまして,昨期までは三つの部会が設置されておりまして,今の御説明のように,新しく世界文化遺産部会と無形文化遺産部会の二つに分かれて,部会数が増えるという形になります。

それでは,資料1のとおりに,文化政策部会,美術品補償制度部会,世界遺産部会,無形文化遺産部会の四つの部会の設置について,決定したいと思います。何か御意見ございましたら,伺いたいと思いますが,特に御異議がないようでしたら,この四つの部会を文化審議会の下に置くということで御承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【馬渕会長】特に御異議がないようでしたら,この四つの部会を文化審議会の下に置くということで御承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【馬渕会長】ありがとうございました。それでは,御異議がないようですので,案のとおりに決定しまして,それぞれの部会について,構成員を同じ資料の1のとおりに示させていただきます。御覧ください。全員,皆さん部会にちゃんと属していらっしゃるかどうか御確認いただければと思います。

それでは,以上で今期審議会の発足に当たっての手続は終了いたしました。どうもありがとうございます。

それでは,次は,最近の文化政策の動向についての御説明でございますが,文化審議会の議論を始めるに当たって,事務局から,今申し上げた最近の文化政策の動向についての御説明を頂きたく思います。それで,説明いただいた後に,委員の皆様の自己紹介を兼ねて意見交換を行いたいと思いますので,事務局の方から,御説明よろしくお願いいたします。髙田企画調整官にお願いいたします。

【髙田企画調整官】分かりました。それでは,資料2-1に,文化プログラムにつきまして,まず御説明いたします。文化プログラムにつきましては,もう既に御存じの委員もいらっしゃるかと思いますが,オリンピック憲章に基づきまして,オリンピックでは,スポーツを文化と教育と融合させることが重要であるという根本原則,オリンピック憲章に基づきまして,複数の文化イベントのプログラムを計画することが位置付けられております。

そういったことに基づきまして,3ページでございますが,政府といたしましても,この機会に文化プログラム等を積極的に行っていこうということを政府の方針として決定しておりまして,その際に,日本文化の魅力を世界に発信していったり,地方創生や地域活性化にもつなげていこうということで進めております。

資料の4ページに文化プログラムの枠組みということで,三つの枠組みがございます。大きくは二つですけれども,一つは,オリンピックの組織委員会の方で文化オリンピアードという形で,マークを作ってこの文化プログラムを推進しております。一つは,エンブレム付きの公認文化オリンピアードというマークでございまして,これは組織委員会や国だとか開催都市,公式スポンサーなどが使うマークでございます。もう一つが応援文化オリンピアードということで,会場所在地以外の地方公共団体や非営利団体が使うマークということで,これが応援文化オリンピアードというマークを作っております。

もう一つ,右側に,これは政府の方で作ったマークですけれども,オリンピック・パラリンピック事務局というところで作っておりますけれども,これがbeyond2020プログラムというマークでございまして,これは営利,非営利を問わず,多様な団体が使えるというマークでございます。

また,先ほど申し上げました東京2020文化オリンピアードというのは,オリンピックの公式文化プログラムということで,公式スポンサー以外の民間企業が入っている場合には,公式スポンサーの権利を侵害するということで,例えばポスターだとか,チラシだとか,そういったものに入っていると使えないというマークでございますので,beyond2020プログラムは全てのものが使えるマークということで,今回,新たに設定したものでございます。

そういったマークを付けて,イベントをやっていくということですが,ここに,各プログラムの認証要件ということで,それぞれ大会ビジョンだとかコンセプトがあることだとか,あるいは日本文化の魅力を発信する取組や,障害者,外国人対応していることというようなことが要件として示されております。

次,6ページ,先ほどちょっと口頭で申し上げましたが,どういったところがこのそれぞれのマークが使えるかということを示したもので,beyond2020はどんな実施主体でも使えるマークということを示しているものでございます。

7ページに,各プログラムの実施例ということで,例えば公認文化オリンピアードということでは,昨年,国の方でスポーツ・文化・ワールド・フォーラムというものを京都で実施したりしておりますし,また,一番右側のbeyond2020プログラムでは,大相撲beyond場所というもので,例えばパンフレットの多言語対応だとか,聴覚障害者向けの手話による説明だとか,視覚障害者向けの盲導犬対応などによって観戦するといったような取組を進めているところでございます。

8ページ,9ページは,文化庁が主催した,主催というか,先ほどのマークは組織委員会と内閣官房オリ・パラ事務局で出しておりますので,そこに文化庁が申請して,もらったイベントについて,8ページ,9ページがいわゆる組織委員会のもの,10ページがbeyondのものということで示しております。文化庁主催のものであっても,例えば企業の協賛が入っておりまして,その企業が公式スポンサーではないということでありましたら,このbeyondの方を使ってやるということでございます。

11ページ,文化プログラムの2020年に向けた工程表というものでございまして,昨年の10月にキックオフが始まりました。キックオフということで,スポーツ・文化・ワールド・フォーラムなどを実施しておりますが,2017年からいろいろ,beyondだとか,組織委員会の受け付けを本格化いたしまして,来年は明治150年,2019年はラグビーワールドカップなど等も関連付けながら文化プログラムを進めたいと思っております。2020年は,大会数か月前から東京2020フェスティバルというものが行われる予定ですので,そういったものとも連携しながら進めていきたいと考えております。

12ページ,文化庁の予算だとか,取組をまとめたものでございます。

それでは,時間の都合上,詳細の説明は省きますが,こういった文化庁で,文化について主催したり,助成したりするいろいろな事業がございますので,そういった事業,そういった予算を活用して文化プログラムを実施していこうというものでございます。

13ページ,全国で行われる文化プログラムのイメージということで,例えば全国でいろいろなアートフェアだとか,アートフェスティバルが行われておりますが,そういったものに対しても文化プログラムと位置付けて,積極的に展開していこうというものでございます。

最後,ロンドン大会における文化プログラムということで,ロンドンではこういうことが行われたということを参考で示しております。ロンドンでは北京オリンピック終了後から熱心に取組が行われまして,そういった文化プログラムをやることによって,自国文化への誇りだとか,あるいは観光産業への貢献だとか,そういった効果があったということが言われております。

文化プログラムについては以上でございます。この後,地域文化創生本部について,山田戦略官の方から説明いたします。

【山田文部科学戦略官】それでは,資料2-2と,それから,机上にお配りしてございます文化庁地域文化創生本部のリーフレットによりまして,御説明申し上げたいと思います。

まず,こちらのリーフレットを机上にお配りしてございます赤い瓢箪(ひょうたん)みたいなものですけれども,表紙に「平成二十九年四月,『新・文化庁』への取組」が始まりますということにしてございます。開いていただきまして,上の方に,地域文化創生本部の主な業務を書いてございます。こちらです。よろしいでしょうか。三つのグループがございまして,総括・政策研究グループ,暮らしの文化・アートグループ,広域文化観光・まちづくりグループという三つのグループなんですけれども,それぞれそこに記載のように,文化に関する政策調査研究,国際交流,文化交流,あるいは芸術祭の関西公演,伝統工芸,生活文化の関係,伝統文化親子教室,それから,広域文化観光拠点の形成支援,こういった事業を行うこととしてございます。また,左下の方に,長官の御挨拶がございまして,右下の方に,地域文化創生本部の体制,本部長が文化庁長官となってございますけれども,事務局,これは京都に常駐いたしますが,当面,36名の体制となっています。下の方に,地方移転に関するこれまでの経緯が書いてございます。これまでもこの会議で逐次御報告させていただいたところでございます。裏が地図でございまして,本部の庁舎は祇園の近くにございます。京都駅からバスで20分弱のところになります。

次に,資料2-2でございます。先日,月曜日の日なんですけれども,開所式を行いました。まず除幕式がございまして,義家副大臣,それから,本部長である宮田長官,事務局長の松坂さんということでございまして,ほかに京都の地元の立石会頭,山田府知事,門川市長の立会いもいただきました。それから,引き続きまして,開所式ということで,本部長からの御挨拶,祝辞,それから,最後に,義家副大臣から職員に対する激励の力強いメッセージを頂きました。写真もこちらに付けてございます。

本部会議の第1回目を東京の文化庁の特別会議室が旧庁舎の2階にございますけれども,そこと結んで,第1回の本部会議を開催いたしました。テレビ会議でやったんですけれども,まだちょっと職員が操作に習熟していないということもございまして,ちょっと画面が小さいとか,声がぼそぼそというか,紙の音が聞こえるといったようなことがございました。ここら辺はちょっと課題かなと思ってございます。それが下の方の課題と今後に向けてのところにちょっと書いてございます。

さらに,長官の記者会見を行いました。非常に多くのマスコミの方に,京都だけじゃなくて,東京からも来ていただきまして,活発な質疑応答があったところでございます。

以上でございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。次に,資料2-3に基づいての御説明ですね。

【髙田企画調整官】それでは,資料2-3を御覧ください。タブレットの方でございます。3月1日に,文化庁の方に文化経済戦略特別チームというものができました。既に昨期から引き続きの委員については御説明申し上げたところでございますが,昨年の答申などでも,観光だとか,まちづくりだとか,そういったものとの連携が重要であるということを受けまして,また,文化庁の機能強化だとか,あるいは各省庁との連携を強化すべきと,そういったような答申の御指摘を踏まえまして,こういったチームを作ったというものでございます。

これまでの文化庁における文化振興に留(とど)まらず,オリ・パラをはじめまち・ひと・しごとや観光など,内閣官房や各府省庁等が行う文化関連施策を横断的に取り扱い,統合強化した上で,経済拡大戦略のためのプランを策定していくというようなことを考えて,こういうチームを作っております。また,内閣官房とも連携しながら,こういったことをやっているということでございます。

チームの主な業務というのが「稼ぐ」文化への展開,文化プログラムの推進,上野「文化の杜」新構想などについて,特に観光だとか,まちづくりの観点からこういったことを進めていくというものでございます。

あと,資料の方,机上配付資料で,ArtsinBunkachoについて,これもまた繰り返し,新しい委員もございますため再度御説明いたしますが,今,文化庁の方でこういったアート・イン・オフィス的な取組を行いまして,また,これは全国芸術系大学コンソーシアムとも一緒になって,文化プログラムの一環として行っているイベントで,文化庁から正に文化を発信していくという観点で進めているものでございます。

それと,まだちょっとペーパーみたいなものは出せないんですけれども,今,立法府の方で,議員立法という形で文化芸術振興基本法について改正するという動きがございます。これは,昨年の答申でも書かれたように,例えば観光だとか,まちづくりだとか,そういったような観点も含めて文化を振興していこうということでございまして,また,新たに例示といたしまして,例えば組踊りだとか,あるいは芸術祭の開催だとか,あるいは生活文化の例示として食文化などを追加してはどうか,そういった無形文化遺産の動向なども踏まえて改正しようという動きがございます。

そして,今まで文化芸術振興基本法に基づきまして,こちらの方で基本方針というものを取りまとめていただいておりましたが,今回の法改正では,基本方針ではなくて,基本計画というもう少しかちっとしたものをやっていこうというような動きもございまして,もし法律が国会に出されまして通ったということになりますと,新たに基本計画を策定すると,そういった動きもございますので,今後そういったことも踏まえてこの審議会で議論することになるかと思いますので,その際はどうぞよろしくお願いいたします。

私の方からは以上でございます。

【馬渕会長】ありがとうございました。ただいま事務局から御説明いただきましたけれども,ここからは皆様の御意見を賜りたいと思います。今期の文化審議会のキックオフとして,自由に意見交換ができればと思います。また,本日は今期第1回目の会議ですので,委員の皆様の自己紹介も兼ねて,お一人ずつ御意見を賜れればと思います。時々,関連の御意見等があるかと思いますが,一応全員の方の御意見をまず頂きたいということで,ちょっと機械的で申し訳ないんですが,お一人ずつ御発言いただければと思いますので,恐れ入ります,場所からいって,湯浅委員から今期に向けての意気込み等で結構でございます。お願いいたします。

【湯浅委員】五十音順で来るのかと思っていました。

【馬渕会長】ちょっと目に付いた方からで申し訳ありません。すみません。

【湯浅委員】ブリティッシュ・カウンシルの湯浅と申します。本年度もよろしくお願いいたします。初めての方もいらっしゃるので,自己紹介ということなんですが,英国の国際的な文化交流機関でして,文化や英語教育を通して英国とその他の国の人たちの関係を作っていくというのが私たちの仕事です。そこの中で文化芸術やクリエイティブ産業,クリエイティブエコノミーの分野で関係を構築する仕事を携わっております。

先ほど文化プログラムの御説明の中でも,ロンドンの2012年の文化プログラムが参照されていまして,とてもきれいに1枚でまとめていただいていまして,今,日本の中で非常にいろいろな議論があって,こういったようにロンドンが参照されているということも,英国側にも,今日の会議のことも御報告しようかと思っておりますけれども,ちょうどここのところ,特にリオが終わってから,先ほども御説明があったように,文化プログラムの枠組みが策定されて,beyondですとか応援参画プログラムでいろいろなプログラムが今されてきていると思うんですけれども,昨年,答申をこの審議会の中でも議論をして,政策部会で議論して出しましたけれども,今年度はそこを具体化していって,そして,2020から先につなげていくロードマップをきちんと作っていく,非常に大事な時期なんだろうと思います。

英国の文化プログラムに関わった方のお話を伺いましても,ちょうど今の時期というのは,2009年ぐらいになってきて,そろそろやっぱりとても大事な時期であったということは皆さんおっしゃっておりますので,特にこれから2020に向かっていく中で,先ほどもいろいろなプログラムで,枠組みの中でいろいろな事業の御紹介がありましたけれども,あちらで行われる事業とこの答申ですとか,今,基本法の中で議論していく文化振興の関係性というのがより明確になっていくような,文化プログラムがイベントの集積で終わらないような形で,これからの文化振興のロードマップと具体化に向けて皆様と議論できればいいのかなと思っております。

【馬渕会長】ありがとうございました。では,続いて,やすみ委員にお願いいたします。

【やすみ委員】改めまして,やすみりえと申します。よろしくお願いいたします。

私は日頃,川柳という文芸の一つのジャンルに身を置いて活動をしています。かれこれ気がつけば20年ぐらい,この短詩型の世界の中でいろいろな活動をさせていただいてきました。その中でワークショップ,全国津々浦々,いろいろなところにお邪魔して,初めて川柳を作るというような方とも出会って一緒に句を作る。言葉が豊かになる毎日,そういうものを目標にして,いろいろな人と句作りをしてきました。その中で,例えば学校にお邪魔したり,それから,地元の公民館とか会館とか,そういうところも行きますが,結構様々な切り口でワークショップを開いてきました。例えば地元に長くある,大事にされている古民家ですとか,あとは,まち歩きをしながら,生き生きとした雰囲気の中で句を詠むとか,そういう環境の中で皆さんに言葉を紡ぐ作業をしてもらったりとかもしました。

そんな中で気づいたこと,発見したことが結構,文化審議会で議題になること,テーマになることと重なっているなというように感じたりしています。具体的に言えばといいますか,予算のこともありますし,それから,地元の行く先々での方々の御協力とか,人集めとか,そういったことで苦労することや,有り難かったことなどもたくさんあります。そのあたりのことをまたこの審議会の中で,微力ですけれども,何かお話しさせていただいたり,お手伝いができればいいなと思っております。今年度もよろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。私ものっけからちょっとミスをいたしまして,実は渡辺委員が一番端っこにいらっしゃったのに,最近,文化庁の方も随分アーティストっぽい方がいらっしゃるなと,つい間違えてしまいました。大変失礼いたしました。どうぞ渡辺委員,御意見をお願いいたします。

【渡辺委員】今回初めて参加させていただきました,作曲家の渡辺俊幸と申します。

作曲家と言っても,いろいろな音楽を書かれる方がいますが,私は主にテレビ,あるいは映画,そういった分野での音楽を書くことが中心で,皆さんが御存じかと思う作品では,NHKの大河ドラマの「利家とまつ」とか,「毛利元就」とか,朝の連続テレビ小説は,最近では「おひさま」とか,そのようなものを書いております。また,さだまさしさんとは,もう彼がデビューしてから40年にわたってずっとプロデュースと編曲という形で,盟友でもあり,仕事仲間でもあるという形でずっと関わっております。今,洗足学園音楽大学というところで教鞭(きょうべん)もとっておりますので,クラシック関係の作品も書いたり,音楽に関してはポップスからクラシックまで幅広く関わっている,珍しいタイプの作曲家であります。

こちらの文化庁に関連したお仕事で言いますと,ちょうど昨年,愛知県の国民文化祭の開会式の総合プロデュースと,音楽監督を務めました。そのときに感じたことは,私は名古屋市で生まれましたが,愛知県というように広い地域になりますと,私は中学までしか過ごしていませんでしたので,本当に知らないことばかりで,そこで紹介された,からくり人形というものを知ったときに,こんなすばらしい文化財があるんだということを初めて私も知りましたし,もしかすると愛知県の多くの人があのような行事をすることによって,こんなすばらしいものが我らの郷土にあったのだということを知るきっかけになったのではないかと思った次第です。

ですから,今,オリンピックということがここに書かれていますが,私が非常に関心があるのは,オリンピックの開会式ですね。開会式に文化庁がどのくらい関われるかどうかというのは分からないで申しておりますが,開会式というのは世界中に報道されますので,日本文化を広く広めるという意味では非常に重要な場所ではないかと思います。その開会式がどのように行われるのかというのはある意味,現代の日本がどのように認識されるかということにつながる非常に大事な場所だと認識していますので,何かの形で,クールジャパンという形で繰り広げられるのか,全く私はそこにタッチしておりませんので分かりませんが,何とかそこに日本の伝統文化というものが,例えば音楽で言えば,雅楽とか,あるいは能とか能は音楽だけじゃなく,様々なことが加わってきますけど,音楽で言うと能で表されるような音楽とか,あるいは歌舞伎の音楽とか,また,同時に,装束とか,平安時代のいろいろな装束とか,いかにも世界の方々が見て,日本の文化というのはすばらしいなと感じるようなものが盛り込まれた開会式が映像に映し出されて,それが世界の多くの方々に見てもらえるといいなという思いを持っておりますということだけお伝えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。いろいろ御挨拶の傍ら,御提案ももうたくさんあって,大変役に立つというか,示唆的な御意見でした。ありがとうございます。

それでは,松田委員にお願いいたします。

【松田委員】東京大学の文化資源学研究室というところで働いております,松田陽と申します。このたび,初めて文化審議会に参加させていただきます。私は,文化遺産や文化財と言われているものを専門としております。様々な地域や国,社会がどのように文化遺産を使っているのかというところが研究の焦点です。

なぜ自分がこのような興味をもったかを振り返ってみますと,宮田長官の前の文化庁長官でいらっしゃいました青柳正規先生がイタリアで行っていた古代ローマ遺跡の発掘調査に参加したのが端緒でした。立派な遺跡を日本のチームが発掘していたのですが,次第に,我々が帰った後にこの遺跡はどうなるのだろうということに興味が移っていきました。そのような問題意識に導かれた私は,その後イギリスに参りまして,文化遺産研究を学びました。これは遺跡やら史跡をどのようにマネジメントしていくのか,どう使っていくのかということに焦点を当てたものです。そしてそのままイギリスに13年間ほど残り,向こうの大学に就職しました。その間,コンサルタントというかたちでパリのユネスコの文化遺産部で働いたりして,少し視野を広げておりました。その後,2015年に日本に戻ってまいりました。戻ってきますと,有形のもののみならず,地域のお祭りのような無形にものも含めた,日本の文化財,文化遺産全般に興味が出てきまして,それらの使い方のようなことをそれ以来調べております。広い意味で文化遺産,文化財,文化資源と言われているものを,型にはまらずに考えていきたいと思っております。

文科省との関わりで言いますと,「世界の記憶」事業に関連したお仕事を現在させていただいております。個人的な抱負としましては,ほかの委員の皆様方が立派な御経歴や御業績をもっていらっしゃるため,私はしばしば圧倒されてしまうのですが,それでも,最近の流行(はや)りの言葉で言いますと,忖度(そんたく)をせずに,思ったことをそのままこの委員会では発言していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。大変力強い御経歴をお持ちで,これからいろいろ教えていただきたく思います。

それでは,藤井委員,お願いいたします。

【藤井委員】藤井恵介でございます。私は今,東京大学の大学院の工学系研究科,その中で建築学科というところにおります。

建築は,隈先生や槇先生や,設計を仕事とする人が多く出るところです。私は,その中で建築の歴史を専門にしております。最初の研究のスタートというのは平安・鎌倉時代の頃の失われてしまった密教の建築です。おどろおどろしくて,すごい空間を持っている,というような研究をしておりました。それだけやっているわけにいかないものですから,だんだん研究領域が増えて,今は,自己紹介するときには法隆寺からまちおこしまでというように申し上げております。これは何をしているか意味不明に近いかもしれませんけれども,よろず,いろいろなことを引き受けているわけです。

文化財関係の仕事でも,文化庁とは大分長いこと仕事をさせていただいていまして,復元建築の内容を判断をする委員会が記念物課の中にあって,それを十数年ほど,3月まで座長をしておりました。文化審議会の第二専門調査会,建造物関連ですけれども,3月まで建造物の委員長をしておりました。第一専門調査会では歴史資料を扱うところの委員をしておりました。第三専門調査会では,史跡を担当するところの委員をしておりました。今回,みんなもう出なくていいと言われたので,それを引いて,こちらに出させていただくということになります。

現在,いろいろなことが私の周りで問題山積の状態です。例えば日本国内ですと,いろいろなところで復元建築,大きなものを建てたいと例が少なくない。重要な意味もあるし,過ぎに見えるものもある。佐藤信先生ともそういう議論をしています。

世界遺産も結構大変でして,私は,軍艦島の保存計画を策定する委員でいるんですが,費用が大量に必要となっています。世界遺産になったのですが,地方行政にとっては負担が巨大です。いろいろな課題があります。

次に,東大の中でも,ここにいらっしゃる何人かの先生と委員会でいろいろな問題を解決しようとしているのですけれども,必ずしも文化,あるいは文化財にいい方向に動いていない,とかいろいろな問題を抱えております。

世界遺産ですと,この間,宮田先生のところに直訴に行った件がございます。代々木のオリンピックのプールの件で,隈先生と二人で御挨拶に行きました。非常に具体的なことを含めて日常的に,主として建築の分野ですけれども,外側の文化的な状況,あるいは都市計画も含めて進めているというのが現在です。

オリンピックに関しては,2020年が一つの目標ですけれども,オリンピックを目標にして,学内の先生たちとも,文京区,それから千代田区と台東区,この地域に文化的な施設が多数ある。しかし,ばらばらに切れていて,行政圏どうしようもないので,上手にネットワークが作れないかとか,そういう構想にも参加せよと言われています。文化庁の支援的なプログラムはなるべく上手に公表していただいて,いろいろな外側の動きとうまく連携できるような仕組みを作っていただけると有り難いと思っています。

以上です。どうぞよろしくお願いします。

【馬渕会長】ありがとうございました。また新しい文化地域のくくりができていくかもしれませんので,よろしくお願いします。

すみません。先ほどは失礼しました。道垣内委員からお願いいたします。

【道垣内委員】私は,法律をやっておりまして,その中でも本来の専門は,国際的な国境を越えた法律問題です。国際私法という法分野です。英米ではconflictoflawsと言っていまして,法と法がぶつかり合うというところの問題を扱っております。

文化も国によって大きく違いますので,それがぶつかり合って,いいものが生まれるというのがいいことだろうと思います。

そういう観点から長年,著作権分科会に所属しておりまして,ここにも参加させていただいております。

法律家は,学生にも言っていることですが,世の中で嫌われております。法律家なんていうものは必要だとしても,必要悪という位置づけかと思います。どういうイメージをそれぞれの方がお持ちか分かりませんけれども,「ジュラシック・パーク」という映画がございましたが,その中で,恐竜が怖いということを示すためには誰か死ななきゃいけないので,誰が死んだかというと弁護士です。子供を置いて一人だけ逃げた弁護士が頭から食べられました。死んでも観衆が納得する人ということですね。数学者でも,子供たちでも,もちろんきれいな女優さんでもなく,法律家が食べられるということです。

ただ,法律家も,必要悪だけではなくて,少しはお役に立つこともあるんじゃないかと私は思っております。法律はコンクリートを使わないので,お金がかからないインフラです。ですから,うまく制度を作ればうまく世の中が動くようになります。文化行政,あるいは文化政策も資金が限られております。国の予算はどうしたって限られているわけですから,それをうまく起爆剤に使って,民間の活力,あるいは芸術家の伸び伸びとした活動,そういうものが創生されるといいますか,生み出されて,継続的に大きくなるというような枠組み,制度を作っていくことが大切だろうと思います。

資料の中に,文化経済戦略という「稼げる」文化について記載があります。余りと言うと品がよくない感じですけれども,でも,現実問題としては,文化で,あるいは芸術で生きていけるかというようなことが言われるようでは困るわけです。生活については心配ない状態にできるような仕組みを構築する必要があり,国のお金ではとてもできないので,民間の力,民間の資金でうまくサイクルが回るような制度を作っていく必要があると思います。それができれば,世界中から文化人は集まってくるし,日本人の外に出ていく力ももっともっと付いてくるでしょう。そういう形で文化も盛んになるんじゃないかと思っています。

ですので,この2020年というのはいい機会であり,少しは予算が増えるんじゃないかと期待できなくはないと思いますけれども,国の予算に全面的に頼るのではなく,うまく民間の活力が生きる起爆剤として予算が使われる仕組みを作っていければいいなと思っています。

以上です。

【馬渕会長】ありがとうございました。引き続きまして,篠田委員にお願いいたします。

【篠田委員】新潟市長をやっております,篠田です。今回から参加させていただきました。よろしくお願いいたします。

新潟市は,2005年までに15市町村が大合併をしたというまちであります。そして,2007年に,本州日本海側で初の政令指定都市になったと。その新潟市というのはどんなまちなのかというのをなかなか市民にも説明できにくいわけだったんですけれども,いろいろなデータを集めて,例えば一つ,食料自給率,これは先輩の政令指定都市を見ましたら,一番高いのが仙台市さんで8%という数字でございました。新潟市は63%の自給率ということで,この数字一つ見ても,これまでにない,かつてない政令指定都市が誕生したんだということを市民に知っていただき,では,それをどうアピールするか,新潟市の新しいアイデンティティーは何かというのをいろいろ考えてきたわけですけれども,開港5港の一つである港町と日本最大の美田地帯が一緒になったということであります。

この共通点は何か。それは母なる大河信濃川と,また,信濃川に次ぐ水量を持つ阿賀野川という二つの川から育てられたのが港町であり,田園地帯だと。つまり,日本一の水と多様な土から生まれたのが新潟だということに行き当たりまして,それでは,その水と土を検証しようというので,2009年から,水と土の芸術祭というのをこれまでに3回,開催をいたしました。日本一の水と土を相手にしているので,恐らくその疲れを癒やそうということだと思うんですが,新潟市内全域に爆発的な祭り,踊りがあると。また非常にレベルの高い神楽がある。これをアート作品とともに市民プロジェクトとして実施し,これが水と土の芸術祭の最大のポイントとなっています。

新潟市は,文化財は余りないんですけれども,文化を創造する力が結構あるということがだんだん分かってまいりました。例えばローカルアイドルナンバーワンになったNegicco(ねぎっこ),これはやわ肌ネギをアピールするために作られたユニットだったんですが,今やもう新曲を出すと3回連続オリコンチャートトップテンに入るというようなすばらしいレベルであります。

また,新潟県内には蔵元が90ほどあるんですけど,その蔵元の多くが参加する「酒の陣」というのを13年前の2004年に開いていただきました。朱鷺(とき)メッセという会場に集まって,ひたすら酒を飲むと。最初は,1日ワンコイン,500円を払うと,ぐいのみをもらえて,それで八十数蔵元の酒を飲めるわけですから,500円で飲み放題ということです。そうしたら,救急車が9台出動しまして,これはまずいじゃないかと。しかし,新潟市は主催ではありませんでしたので,何とかイベントとしても生き残り,今年は,過去最高の13万人が2日間で日本酒を楽しんだと,そういうばかばかしいことをやっている地域であります。

今日はひとつ,「アート・ミックス・ジャパン」という資料を入れさせていただきました。これは新潟の姉妹都市であるフランスのナント市が始めた「ラ・フォル・ジュルネ」,これに触発されて,その和の伝統文化版をやろうというので,新潟の若者たちが始めて今年5年目になります。去年までは大体45分,ラ・フォル・ジュルネを模してはしごをするということだったんですが,今回は東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れて,ちょっと長期間やろうということで,23日間で27公演,1時間,あるいは1時間半の公演というのも多くなっています。いろいろな和の伝統文化を解説付きで手軽に見られるということで大人気になりまして,昨年はメキシコに派遣させていただきました。日墨協会の協力,日本食ブースもあって,2日間で5万人が日本の伝統文化を楽しんでくれたということです。

そして,もう一つ,今,2階建てバス,レストランバスが新潟市を走っているということです。これは高速バスを運行しているウィラーさんが昨年,日本第1号,1階が調理場,2階が対面式のレストラン,25人乗れるんですけど,それを新潟市で初めて運行していただいて,今年は第2号,テーマは「祭り」で,提灯(ちょうちん)がぶら下がったり,日本酒を飲むには最高のバスが今,4月から営業運転をやっていると。これも3か月,ウィラーさんから新潟がお借りして,食と農と文化のまち新潟ということをアピールしていく,そんな食文化創造都市を目指しているということであります。今後もよろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。大変先鋭的な文化都市の御紹介を頂きました。

それでは,次,紺野委員にお願いいたします。

【紺野委員】こんにちは。女優をしております紺野美沙子と申します。

演劇公演や主宰しております朗読座という朗読公演,そして,UNDP,国連開発計画の親善大使として途上国を訪問した経験を報告する講演会などで全国各地に行っております。特に力を入れているのが7年前から始めました朗読座の活動です。それは,私の朗読と音楽,そして,映像を組み合わせたパフォーマンスなんですが,ただ出来上がったプログラムを地方に持っていくということではなく,その地方の,例えば先日は熊本県の八代市というところで公演したんですけれども,その八代市で非常に将来有望な中学生のバイオリニストの方と共演をしたり,お客様と一緒に詩の群読をしたり,その地方の独自色を生かした部分を設けるようにいろいろと考えております。

文化芸術の力で日本列島を改造するという宮田会長のおっしゃったことに少しでも,微力ながらお役に立てるように,今年1年も頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

【馬渕会長】引き続き今年もよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

それでは,次に,亀井委員にお願いいたします。

【亀井委員】東京文化財研究所に勤めております,亀井と申します。私は長いこと,文化庁の特に文化財部の建造物保護の仕事をやってきました。今も東京文化財研究所におきまして,文化財保護に資するような基礎的な研究を総括している立場におります。

この文化審議会には今期で3期目となりますが,この間,様々な提言がなされておりまして,私も一部関わりましたが,前期にまとめられた緊急提言の中に,近代以降の文化財も含めて国の内外の文化財保存活動や近現代の美術の振興に取り組むということでありますとか,文化財等地域交流のストーリーも加味しつつ総合的な活用を図るということが含まれました。これまで単体を一生懸命守っていただけではなくて,それを使うために,周辺の環境も含めて総合的に取り扱うという方向に入ってきたということで大変うれしく思っております。ただ,それを支えるのはそこに住んでいる地域の方々,専門家だけではなくて,多くの地域の方々の協力がないとできないということがあります。

したがって,これからは,専門家の育成とともに,それを支える人たちも一緒になって保護に当たるような仕組み,博物館,美術館,あるいは社寺でありますとか,個々の文化財の所有者とともに行えるような仕組みを作っていけたらなと思っております。

それと,私は阪神・淡路大震災と東日本大震災,二つの大きな震災を行政の立場で経験させていただきました。その中で,やはり有事の際には,いろいろな関係者の力をかりながら,人命を含めて幅広い文化遺産をいかに守っていくのかということが大きな課題であると認識しております。現在,私どもが所属しております国立文化財機構では,文化財の保存のための,いわゆる緊急の支援ための防災ネットワーク作りということをやっておりまして,有事の際には様々な人の力をかりながら,文物の保存,人的なものを含めて守っていくという仕掛けを作りつつあります。それがうまく機能するかどうかというのはなかなか難しい課題です。と申しますのは,初期の頃には,現地の被災情報が入りにくいということがございます。現地が一旦落ちついた後,生命,財産を守るための仕組みができた後,今度は文化遺産の番だというような手順があがりましたが,その手順を少しでも早めるような仕掛けを作っていきたいと考えております。

と申しますのは,被災文化財の中で圧倒的に多い古文書等の紙資料とか,絵画等の美術品,そういうものが水にぬれるということになりますと,長く放っておけば放っておくほど非常に状況としては悪くなって,カビが発生したり,あるいは腐食が進んだりということがございます。したがって,同時進行的に現地に入れるような仕組みというものをこれから考えてまいりたいと考えております。

それと,全く別の話なんですけれども,これから多くの外国人の方々が日本に来られます。日本文化のよさを大いに発信するということは皆さん同じですけれども,例えば渋谷のスクランブル交差点での人の動きが外人に非常に興味を持たれる場所として知られていること,あるいは今,上野は花見をやっておりますけれども,そういうところでどんちゃん騒ぎしている風景を物珍しそうにカメラに収めている方々もいる反面,ゴミの分別収集,瓶はここ,燃えるものはここ,その他はここに置きなさいとかいうように分けた仕掛けができているんですね。それをきちんと守っている日本人,それから,震災を受けた場合に,物資の配給のときにおとなしく整然と並んでいる日本人,日本人の持っているよさというのがいろいろなところにあるんではないかなと思います。それを生活文化の中で,道徳も含めてトータルで考えたら,日本というのは何とすばらしい民族が住んでいる伝統がある国だろうということがアピールできるんではないかなとも思っていまして,文物だけに限らず,日本の生活文化全体を発信できるような仕組みというのも併せて考えていけたらなと思っています。

以上です。よろしくお願いいたします。

【馬渕会長】大変ありがとうございました。引き続きまして沖森委員にお願いいたします。

【沖森委員】沖森と申します。日本語,特に日本語の歴史的研究を専門にしております。

今,亀井委員もおっしゃったことと深く関係することなんですが,文化といいますと,目に見える形のハード面に目が行きがちなんですけれども,それだけではなく,文化の担い手である人,その精神的特性とか,あるいは資質といった,目に見えないソフト面も大いに日本文化として発信していくべきもののように思っております。日本文化の担い手である国民自身が自らの精神性を自覚するとともに,世界に向けて強く,その理解を求めるという方向性も文化政策として重要だと考えております。

私の所属する国語分科会課題小委員会では,本年度,コミュニケーションを課題としております。コミュニケーションの基本となる言葉遣いを通して,そのような日本人の考え方,あるいは物の見方などの一端が示されればいいかなと,そういうふうに努力していきたいとは思っておりますけれども,それだけでは到底不十分であります。形のある,あるいは目に見える文化だけでなく,可視できない精神性といったような文化についても,もちろんそれをどのように伝えればいいか,非常に難しい面もありますけれども,注を付けるなどして,言葉として,そうした精神性というものも大いに日本文化として発信できれば幸いであると思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。引き続きまして大渕委員にお願いいたします。

【大渕委員】東京大学の大渕でございます。よろしくお願いいたします。

私は,大学では知的財産法という法律を専攻しておりまして,知的財産法というのは,著作権法や特許法が代表格ですが,知的財産の法的保護を図っていくというものであります。法律は,医学と同じで,健康な間は重要性に気がつかずに,病気になったら気がつく,そういうものなので,皆さんが余り法律が重要ではないと思われているのは,それは非常に幸せな状態,健康な状態なのだと思います。医学と同様,法律も重要なので,そう毛嫌いしないでいただければと存じます。

皆様,多数の著作物を作っておられるクリエイターで,皆様の神聖な権利,人格的な利益もあれば,財産的な利益もありますが,そのような法的な権利をお守りするのが知的財産法の仕事でございます。著作権法の究極の目的は,著作者であるクリエイターの利益,権利を守ることによって文化の発展に寄与することを目的とするという,まさしく文化審の存在意義と一致しております。皆様方のように文化自体をクリエイトされる方もいらしたら,我々のように,縁の下の力持ちとして,それのための土俵作り枠組み作りという地味な仕事をやっている者もいるわけであります。

先ほど長官が文化の保存ということを強調されましたけれども,文化の保存は非常に重要で,それにも著作権法は同一性保持権などで関係しています。出来上がった文化の保存ももちろん重要ですけど,新たな文化を創っていくという創造を奨励していくというか,文化を創造した人の権利を守って差し上げるのが著作権法の仕事ということでございます。

知的財産法は大きく二つに分けると,特許法その他と著作権法に分かれます。特許法は発明という科学技術的なものを保護し,著作権法は文化的なものを保護することになっています。大きな違いとしては,科学技術というのは収束性があると言われていて,一定の合理的な範囲においては,誰がやってもほぼ一定の方向に収束性があると言われているのですが,その全く逆が文化でありまして,クリエイター各人の個性の発揮というのか,人格の発揮ということで,高度に多様性の世界で,一定の方向に収束するというよりは,多様性をもって人格の花というか,個性の花を開かすのが文化ということで,それを陰ながらお支えしているのが知的財産法であります。

文化というのはまさしく非常に多様で,著作権法的に言っても文芸,学術,美術,音楽と,皆さんもほぼカバーされていると思いますが,多種多様であります。経済ももちろん重要ですけど,私はむしろ経済より文化の方が重要なくらいだと考えておりまして,日本国トータルとして文化を振興していくためには,まさしく文化それ自体の各面を盛り上げることも必要であれば,経済面,法律面などにおいても協力して,トータルに文化を盛り上げていくように議論していく場がここであろうということで,私も陰ながら何かしら貢献させていただければと思います。

これまで,毎回お聞きしておりますと,非常にいろいろな面から興味深い議論をされていますので,議論を十分に尽くしていくと同時に,せっかくの貴重な成果をどんどん情報発信して着実に実現させていくことが重要だと思っております。

以上です。

【馬渕会長】ありがとうございました。引き続きまして大塚委員にお願いいたします。

【大塚委員】先ほどおっしゃられました亀井委員とほぼ同時期じゃないですかね。僕は当時,美術工芸課,現在は美術学芸課ですが,一緒にいろいろと仕事をしたことは覚えております。時の当時の長官がたしか佐野文一郎長官であったというように記憶しております。そういう経緯がありまして,文化財の保存だけではなくて,その活用等を含めた調査研究,こういったものを中心に今日まで対応しているということで,そういう意味で,文化財分科会,あるいは美術品補償制度部会に所属しているのではないかと思っております。

個人的に,もう時間も相当たっていますので,簡潔に申し上げたいと思いますけれども,文化庁の仕事自体は,外から見ると,僕も今,民間人ですので外から見ますと,こういう会議とか,いろいろな政策の要綱を見ると,いろいろとやっているということは分かるんですが,見えない,外に。それは何かと。やっぱり原因があるんではないかと思います。個人的には,いわゆるこういった,今日の説明も,いろんな重要な政策が下手すると文化庁のひとりよがり,自己満足に陥ってしまってはもったいないんじゃないか。したがって,地方の地方公共団体とどのように共存して,政策等を具体的な参加をするような形で具現化していくかという方策をまず第一義的に考える必要があるのではないか。どうも宣伝が下手というか,私だけ思っているのかもしれないけど,例えば震災,あるいは今度,油がまかれた,全部後手後手ですものね。ほかのところから回ってきて,何か知らないけど,取りあえずいるような印象がありますので,危機管理等を含めて前向きに対応していくべきではないか。

それと,先ほど長官が保存・活用ということで,保存というのは活用に続くんだと,これは僕も強く感じております。文化ということを考えるといろいろな視点があろうと思うんですけれども,伝統文化と,ある意味で言うと革新的な文化,この調和だと思うんです。伝統的文化というのは,今回の政策でも生かされておりますけれども,年中行事であるとか,お祭りであるとか,風習,こういったものを一つの土台として日本の民族が形成したわけですね。とともに,近年では異文化交流,先ほどの新潟の件もそうですね。異文化の交流を含めた,そういう一つの革新的な新しいことに向かっていくような政策,こういったものを融和した形を現在,作っているわけですので,是非とも具体的に,文化庁はすごいな,やっているなという学生からの意見が出るようにしていただくように御尽力を頂ければ有り難い。

以上です。

【馬渕会長】ちょっと厳しいお言葉も頂戴しながら,ありがとうございました。続きまして,岩崎委員に御自分の御紹介とともに,御意見をお願いいたします。

【岩崎委員】岩崎まさみと申します。所属は北海学園大学です。

私の専門分野は文化人類学です。大学院の学生の頃に出会った課題というのが捕鯨問題でした。フィールドで調査をして,それをまとめたものを,日本政府の代表団の一員として,国際捕鯨委員会に行って議論するという,そこが私の研究者としてのスタートラインでした。世界から嫌われる,外国から拒否され続ける地域文化というものを扱いました。それ以来,日本文化が海外の人にどう捉えられるのか,あるいは国際的な舞台でどんなふうに受け入れられるのか,あるいは拒否されるのかということにすごく興味を持って研究してきましたけれども,文化庁との関わりで言いますと,もう五,六年前に,ユネスコの無形文化遺産保護条約に関わる仕事を手伝わせていただきました。

特にこの2年間は,各国から出てくる提案書を読んで,これを記載するべきかどうかということを勧告する評価機関のメンバーとして仕事をしてまいりました。特に去年は,12人の評価機関メンバーをまとめる議長をやらせていただき,とても貴重な経験をさせていただいています。そういう経験を一貫して,やはり日本文化,私たちが意識している日本文化というものが,国際的な舞台でどんなふうに理解されていくのか,あるいは拒否されていくのか,受け入れられていくのかというようなことに興味を維持しております。

この文化審議会は,今年初めてですので,昨日,夜,資料を頂いて,新鮮なことばかりで,まだ役に立つような発言はできませんが,徐々に御指導いただいて何か貢献できたらなと思っております。よろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。引き続き伊東委員にお願いいたします。

【伊東委員】皆さん,こんにちは。東京外国語大学の伊東祐郎と申します。

国語分科会日本語教育小委員会の委員を継続ということで,また本年度もお世話になります。この4月に地域文化創生本部が設立されたことに関して,日本語教育小委員会をやっている者として一言,ちょっと御意見を述べさせていただきたいと思います。

私たち,文化事業で,いろいろな文化庁の事業で,地域の日本語教育のことでいろいろと訪問しておりますけれども,やはり日本の隅々に外国人の住民がいるということを踏まえて,この地域文化創生の在り方も,日本人だけではなくて,そこで生活している外国人や,やはり背景の異なる人たちも巻き込んだ形での暮らしの文化や,いわゆる地域の文化を継承し,なおかつ,新たな創造に向けて是非政策に反映していただけたらなと思います。

やはりまだまだ言葉,日本語というのは文化資源の中でも目立たない存在ですので,私たちもなかなか声を大にしてお話しすることはないんですけれども,やはり最初の接触の場面では言葉が重要ですし,言葉の持つ文化性や多様性も含めて,文化の異なる人たちと共有できたらいいかなと思っております。本年度もどうぞよろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。それでは,石井委員にお願いいたします。

【石井委員】石井と申します。東京女子大学におります。伊東委員と同じように,国語分科会,それから,日本語小委員会に属しております。

日本語教育を専門としてやっておりますけれども,一番最初は留学生教育のようなところから入りましたが,80年代の後半から国立国語研究所というところに所属しておりましたために,例えば中国からの帰国者の方たちがたくさん帰ってくるとなると,その教材をどうするかとか,技術研修生がたくさん来るとか,今度は日本人の配偶者として農村部にたくさんの女性がいて,子育てをしている,さあ,どうしようという,社会の動きに一生懸命追い付きながら,多様な日本語教育に取り組んできたというような格好でございます。

そういった中で,今,やはり子供たちの問題,それから,地域に生活者として暮らし,働きということをやっていらっしゃる方の問題に取り組んでいることが主なんですけれども,その中で日本語教育という立場でどう日本語をうまく習得していっていただけるかというようなことを,初めはずっとそのことを考えてきたんですけれども,あるところから,言葉というものは当然,日本語ができるようになって日本の人々とつながる,社会とつながるという,人と人をつなげていくという力があると同時に,人を分ける道具ともなるという危ない面に大変問題があるということに気がつき始めました。

例えば日本語を上手に,早く努力してうまくなった人たちと,なかなか学習の時間もとれなかったり,いろいろな学習方法みたいなことも今まで学んでこなかった方たちが苦労するわけですけれど,日本語がうまくできる,できないで得られる事柄が随分違ってくるということがあります。あるいは日本語だけでなくても,日本の中で同じように日本語ができなくても,英語ができる方と英語ができない方というのは得られるチャンスが全く違うんですね。英語ができるというだけで,日本人の側が英語に合わせるということをします。それ以外の言語だと,それは日本語でというふうにプレッシャーが掛かるわけですね。そういう中で,特に子供が育っていく上でも,教育機会をどれだけ得られるかということがやはり言葉の力によって分けられていくということもありますし,あるいは仕事に関しても同様だと思います。

そこは当然,日本語教育をやる立場として,何がしかの努力というのを続けなければいけなということは当然なんですけれども,それと同時に,この会議に出ながら,やはり強く思いましたのは,文化活動というのが,言語活動がそうやって人の垣根を作ってしまうという方向性が一つ,危険性があるということを乗り越える非常に大きな役割を果たすということです。文化活動に関しては言語の理解を超えたところでの,味わうとか,あるいは自分の中でパフォーマンスをするとか,そういう機会を生むという活動がたくさんあり,そういったものが言語活動と,それから,文化活動が両輪のようになってうまく機能していくということで,この世の中で生活していらっしゃる方の活躍の場,あるいは発信の場,必ずしも言語では発信がうまくできない方がそういった文化活動の中で自己を表現し,発信をする,あるいは人のメッセージを受け取るということができ,そういうことができる自分ということから自己肯定感,あるいはほかの人に認められるというようなことが生まれてくるという場面を最近度々見ることがあります。

そういうことを考えていきますと,今,いろいろな形で文化を推進するということがあり,そのことに大変期待をしているわけですけれども,文化がともすると何かお行儀のいい,とても高尚なものというところに閉じ込められしまわないよう,全ての人に開かれた,例えば経済的な問題を抱えていても文化活動に参加できる機会が得られる,あるいはそういった情報がちゃんと手に入る。今,情報そのものが届きにくく,そこには日本語の問題も関わってくるんですけれども,そういった意味で文化活動というものを広く,多様な人々に参加可能なものとしていくということを是非考えていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【馬渕会長】ありがとうございました。余り時間がないのですが,最後に,佐藤委員の方から御意見賜りたいと思います。

【佐藤会長代理】東京大学の大学院人文社会系研究科というところで,文学部とイコールでありますが,日本史学を専攻しております佐藤信と申します。

私も,かつて文化庁で文化財調査官をしたというようなこともあって,文化財とか文化遺産を生かす形で日本史の歴史図をどういうふうに組み立てていけるかというようなことを研究してきております。そういう目からすると,文化芸術はもちろんなんですが,文化財とか,文化遺産も,あるべき活用をこれから更にもっと展開していってほしいなと思っております。

今日は,宮田長官が文化を未来に引き継ぐんだというようなお言葉もありましたし,今日,私,説明をいただいた中では,beyond2020に,ああ,いいなと思って話を伺っていたんですけれども,当面は,やっぱり大変なのは,2020を目指して様々な施策を実現していくということが大変なんだと思うんですけれども,私は,やっぱりそれを短期ではそうだろうけれども,中期,長期で考えて,100年後,200年後まで,今まで文化庁が考えてきていたんじゃないかと私は思っております。少なくとも,私が文化庁にいたときはそういう目で仕事をしていたつもりなんですけれども,そういう意味からいくと,目の前の仕事でいっぱいいっぱいのときこそ,逆にそういう1回ちょっと引いて,先のことまで考えてみる必要があるんじゃないかと思っております。

そういう意味で,beyond2020というのはすごくいいなと思ったんですが,逆に言うと,私,申し訳ないんですが,余りよく知らないで,余り今まで発信,周知をしていただいていないんじゃないのかなというのがちょっと気になりました。2020に様々な,これからプログラムも実現していくと思うんですけれども,私は,それを実現するのはもちろんなんですが,私は海外の人だけではなくて,日本人の人も日本の歴史文化とか,文化芸術,知らない場合が結構,地元にお宝があるのに知らないという方が時々,仄聞(そくぶん)というか,聞くことがありますので,日本人自身が日本の歴史文化とか文化芸術を再発見するいい機会になるとすごくいいなと思っております。そういうことも含めて,これから京都への移転ということも迫ってきているかと思うんですが,新・文化庁が更に充実した体制をとって,様々な力が発揮できるようなシステムを実現していただきたいなと思っております。今日は会長代理に御指名いただきましたので,今回は馬渕会長をお支えしていきたいと思っております。

以上です。

【馬渕会長】皆様,大変いろいろな,多様な意見,ありがとうございました。ちょっと一つだけ,会長としてでは全くなく,一委員として,私も皆様と同じような,それぞれの立場からということで申し上げたいことがございます。

私は国立西洋美術館というところで館長をしておりますけれども,美術館というのは,昨年,例えばル・コルビュジエ建築を世界遺産に登録していただいて大変脚光を浴びたり,あるいは割合華やかな展覧会をやって注目されたりという,ちょっとそういう目立つ部分もあるんですが,一方で,やはり美術館というのはアーカイブをしっかりしなければいけないというのをつくづく思うんですね。これは国立美術館全体で,とにかく自分たちの持っている資産をきっちり把握し,そして,それの関連の資料をいろいろな形で残していくということが非常に重要で,そして,しかもそれを海外の人はアクセスできるようにというふうなシステムを作るということがやはり日本文化はすばらしいとか,こんな資産があるんだと言っても,なかなか目に見えてこない中で,そういう一番ベーシックな仕事をまずやらなければ,どんどんいろいろなものがなくなっていく。これはもうそれぞれの分野の皆様方,よく御存じだと思いますけれども,そういう意味で,美術品,私どもが扱っているのは美術品なんですが,それのアーカイブ作りを4年ぐらい前から始めております。

それで,それをもうちょっと広げて,本当になくなりそうなものを片っ端から拾い集めて,アーカイブにしていくシステムをどうやって作っていくのかというのは大変頭の痛いところではありますが,そういうことがあって初めて次の飛躍にもつながりますし,それから,海外からも注目され,問われたときに,すぐそれを出せるようにしておくということが非常に重要なのではないかと思います。

そういう本当に地道な仕事というのは長いスパンでないとなかなか成果が出てこなくて,文化GDPという言葉を去年,ちょっと頂いたんですけれども,GDP,もちろん結果的にそれが上がれば大変すばらしいんですけれども,そんな簡単ではないのではないか。諸外国を見ても,長い年月,例えば観光政策でも,文化政策でも,長い年月で莫大な金額と労力を投資して,今日,例えば非常にすばらしく見えるようなところはそういうことをやり続けているわけですね。ですから,私は,文化庁として,余り文化GDPが上がる,上がらないというのは一々反応しなくてもいいのではないかと非常に,ちょっとひねくれたことを考えているんですが,やはりちゃんとやっていれば,いつかそれがきっちり花開いてくるし,そういう数値も上がってくるんではないかと思いますので,そういう本当に今,佐藤委員もおっしゃったように,長いスパンで物を見ていくということを,やっぱり文化審議会としても時々は忘れないように思い出しながら,でも,皆様のようにいろいろな分野で活動されている方が本当にいいアイデアをたくさんお持ちなので,そういうものも,新しいアイデアも注入しながら,一方では足元を固めていくということを続けていけたらと,大変僣越(せんえつ)ながらちょっと意見を申し上げさせていただきました。

大変長い間,いろいろ御議論いただきまして,私も,前期も会長を務めさせていただいたにも関わらず,委員のお名前を間違えたり,御指名の順番を間違えたり,相変わらず粗忽(そこつ)なまま,今日,進行させていただきましたけれども,今後とも本当に,今日の熱心な御意見,また,いろいろな形でシステムにつなげたり,予算につなげたり,いろいろな企画につなげたりというのができるように,是非とも文化庁の側の事務方の方々と力を合わせてやっていきたいと思います。

最後に,どなたか御意見おありでしょうか。

【髙田企画調整官】どうもありがとうございました。それでは,最後に事務局から連絡事項です。今後,この総会については,節目節目という形で行いますが,また,分科会,部会の議論については,早速4月,5月からスタートさせていきたいと思っております。そして,それの分科会,部会の連絡につきましては,それぞれ事務局がございますので,そちらの方から御連絡させていただきます。恐らくこの総会につきましては,四半期に1回とか,そういうペースでやっていくことになるかと思いますので,よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

また,最後に,今日発令書をそちらに配っておりますので,発令書は皆様の方でお持ち帰りいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。

本日はどうもありがとうございました。

【馬渕会長】どうもありがとうございました。

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