平成14年12月11日
文化審議会では,本年6月5日の文部科学大臣からの「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」諮問に基づき,議論を行い,答申案についてパブリックコメントを実施しました。
その結果を下記のとおりまとめましたので,公表いたします。
なお,12月5日に「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」答申が文部科学大臣に行われましたので,あわせて御報告いたします。
このたび御意見をお寄せいただきました皆様の御協力に厚く御礼申し上げます。
1.パブリックコメントの概要
(1)期間 |
平成14年11月7日(木)〜11月21日(木) |
(2)告知方法 |
文化庁ホームページ,記者発表等 |
(3)意見受付方法 |
郵便,FAX,電子メール |
2.受付意見等数
意見等を御提出いただいた方は134名(個人・団体)でした。
意見者の内訳は,
○文化関係団体 |
64名 |
○個人 |
64名 |
○地方公共団体(関係機関等含む) |
6名 |
3.意見の概要及びそれに対する考え方数
意見の掲載に当たっては,適宜集約をしています。なお,今回の答申案と直接関連しない意見,感想,個別要望,文言の微細修正などは省略しています。
●「大地からの手紙」について |
○力を与えてくれた。 |
○もっと分かりやすくしてほしい。 |
○作者名,文責を明らかにすべきではないか。 |
○特定の価値観を押しつけることにならないか。 |
〈考え方〉 文化審議会として「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」答申するに当たり,文化芸術の振興に対する「熱い思い」を伝えたいとの考え方に立ち,添付するものであり,原文のとおりとすることとしました。 |
●全体的に |
○方策について具体的かつ明確にしてほしい。 |
○これまでの検証や評価を行うべきではないか。 |
○学校,現場,日本のすべてで実行してほしい。 |
〈考え方〉 本基本方針は,今後5年間を見通して,文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るために定める国の指針であり,これを踏まえた内容としています。 |
●「まえがき」について |
○5年間に拘わらず,諸情勢の変化をにらみながら速やかに見直しを進められることを求める。 |
〈考え方〉
御意見の趣旨を考慮した記述としています。 |
●「第1 文化芸術の振興の基本的方向」について |
1.文化芸術の振興の必要性 |
○ |
「(3)質の高い経済活動の実現」については,産業発展という構図を推奨することにならないか。 |
○ |
国の経済戦略の根幹に文化芸術を据えるべきである。保護,援助の発想でなく,自立することを前提に考えるべきである。 |
〈考え方〉
第1の1「(3)質の高い経済活動の実現」の中で文化と経済の関わりについて記述しています。 |
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2.文化芸術の振興における国の役割等 |
(1)国の役割 |
○ |
「国の役割」として,世界の文化に寄与していくという面に触れてほしい。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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(2)重視すべき方向 |
ⅰ)文化芸術に関する教育 |
○ |
子どもたちの文化芸術教育の充実に重点をおいた施策を進めてほしい。 |
○ |
教員について,研修の機会を増やし,文化芸術関係者との交流を促進してほしい。 |
〈考え方〉
御意見の趣旨は,記述されているものと考えます。 |
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ⅱ)国語 |
○ |
重視すべき方向としての一項目として打ち出すことは適当ではないのではないか。 |
○ |
「国語力を身に付ける環境の整備」について具体的な施策を提示すべきではないか。 |
〈考え方〉
「国語」は,「重視すべき方向」の一つと考えます。また,具体的な方策は,「第2 文化芸術の振興に関する基本的施策」の中で記述しています。 |
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ⅳ)文化発信 |
○ |
「国際社会における我が国の地位を確かなものとする」という記述がわかりづらいのではないか。また,「人類への貢献」の前に「世界の文化の発展」への貢献を加えるべきである。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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○ |
日本の文化芸術の発展を通して日本人のアイデンティティーを培うことを加えてほしい。 |
〈考え方〉
文化発信のためには我が国の文化について理解を深めることが必要であり,そのことが他の文化に対する寛容や尊重の気持ちをはぐくむことが記述されており,御意見の趣旨は記述されているものと考えます。 |
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○ |
我が国の文化の発信の強調が文化侵略につながらないか。 |
〈考え方〉
文化発信が我が国の文化の発展と,世界の文化の発展や人類への貢献になることが記述されており,御意見の懸念はないものと考えます。 |
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ⅴ)文化芸術に関する財政措置及び税制措置 |
○ |
国による支援も,民間による支援も十分ではないことを明らかにすべきである。 |
○ |
国の年間予算に占める文化芸術予算の占有率をモデル化すべきである。 |
〈考え方〉
「国及び民間双方の立場からの文化芸術の振興が必要である」と記述されており,御意見の趣旨は含まれているものと考えます。また,国の予算における具体的な数値目標を掲げることは難しいと考えます。 |
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○ |
文化芸術振興に向けての各種税制の改革の具体化を強く要望する。 |
○ |
所得税法第174条第10項の芸能法人に対する芸能報酬等の源泉徴収制度の撤廃,NPOなど非営利の文化活動に関する税制支援についても,具体的施策を期待する。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(3)地方公共団体及び民間の役割 |
○ |
地方公共団体に「文化芸術振興に関する条例」を制定するよう促されたい。 |
○ |
地方公共団体の主体性をはっきりさせ,その援助・促進に国の役割があるとすべきである。 |
〈考え方〉
「地方公共団体は,自主的かつ主体的に,文化芸術活動を推進する役割を担っていると記述されているところであり,それぞれの地方公共団体における取組が期待されます。 |
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3.文化芸術の振興に当たっての基本理念
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○ |
多様な価値観の擁護と,表現・創造活動の自由の保障を明記すべきである。 |
〈考え方〉
基本理念については,「文化芸術振興基本法」(以下「基本法」という。)第2条の基本理念を踏まえています。 |
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4.文化芸術の振興に当たって留意すべき事項 |
(1)芸術家等の地位向上のための条件整備 |
○ |
労災保険の適用など社会保障の充実,労働条件の改善を明記すべきである。 |
○ |
演出・制作スタッフ等を含めた演劇人の創造活動のための諸条件の整備と地位向上のために公的な支援を切望する。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(2)国民の意見等の把握,反映のための体制整備 |
○ |
政策形成のための新たな枠組については,どのような体制の整備を目指すのか示すべきではないか。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(3)支援及び評価の充実 |
○ |
現行の助成制度や,補助金のあり方,評価方法について改善,確立すべきである。 |
〈考え方〉
御意見の趣旨は,記述されていると考えます。 |
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○ |
文化芸術活動に対して,国は「評価」を行うべきではない。 |
〈考え方〉
文化芸術活動に対する支援についての評価は,必要であると考えます。 |
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●「第2 文化芸術の振興に関する基本的施策」について |
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1.各分野の文化芸術の振興 |
(1)芸術の振興 |
○ |
「文化芸術創造プラン(新世紀アーツプラン)」や「芸術文化振興基金」の推進に当たっては,現場の状況を十分考慮,尊重することを望む。 |
○ |
特殊法人日本芸術文化振興会を存続させ,「芸術文化振興基金」を抜本的に拡充するべきである。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(2)メディア芸術の振興 |
○ |
映画文化への支援については,「メディア芸術」から独立させて,新たに位置づけるべきである。 |
〈考え方〉
基本法第9条では,映画を「メディア芸術」として位置づけております。 |
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○ |
フィルムセンターの充実や日本映画の復権に向けた積極的な政策の展開を望む。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(3)伝統芸能の継承及び発展 |
○ |
「邦楽」を例示にあげてほしい。 |
〈考え方〉
基本法における例示の有無にかかわらず,施策を講じていきます。 |
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○ |
「原材料の確保」について言及してほしい。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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(5)生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及 |
○ |
書道文化を,「生活文化」の中に押し留めないでほしい。 |
〈考え方〉
個々の文化芸術は,一つの分野に固定されるものではないと考えます。 |
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2.文化財等の保存及び活用 |
○ |
多種多様な文化財についての調査を行い,指定,登録等の保護措置を進めるべきである。 |
〈考え方〉
御意見の趣旨は,記述されているものと考えます。 |
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○ |
ユネスコの世界文化遺産について,準備の整ったものから登録の申請を行うことを盛り込むべきである。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,一項目追加しました。 |
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○ |
大学や研究所の任務として,「研究水準の向上」だけでなく,「人材養成」も加えるべきである。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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3.地域における文化芸術の振興 |
○ |
その地域で特色を出して一生懸命頑張っている人たちに光を当て,支援できる体制づくりをお願いする。 |
○ |
その地方の文化芸術団体をフルに活用し,その育成を図ってほしい。 |
〈考え方〉
御意見の趣旨を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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5.芸術家等の養成及び確保等 |
○ |
演劇などの芸術に関わる高等教育養成機関の充実を図ってほしい。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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○ |
「文化芸術に関する教育研究の充実」については,別項目とすべきではないか。 |
〈考え方〉
基本法第16条の「芸術家等の養成及び確保」と,同法第17条の「文化芸術に係る教育研究機関等の整備等」とは関連が深いものであることから,同じ項目の中で記述しました。 |
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6.国語の正しい理解 |
○ |
これからの時代における「国語力」の例示について,「表現力」を加えるべきである。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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8.著作権等の保護及び利用 |
○ |
実演家の映像著作物に関わる経済的権利,映像創作に携わる著作者の権利を明確にすべきである。 |
〈考え方〉
これらの権利については,現在,関係者間での協議の進展を待っているところです。 |
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○ |
著作物等の契約システムに関して,「著作物の公正で,かつ円滑な流通を促進する」と修正されたい。 |
〈考え方〉
自由な市場と契約における「公正」とは,法律に定められたルールに従っていることであり,一方の当事者のみに配慮する趣旨からの修正は適切ではないと考えます。 |
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9.国民の文化芸術活動の充実 |
(1)国民の鑑賞等の機会の充実 |
○ |
文化ボランティアを文化NPOに育てるための施策を進めるべきである。 |
〈考え方〉
各文化ボランティアがそれぞれの判断で考えていくことがらと考えます。 |
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(2)高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実 |
○ |
文化施設等のバリアフリー化,劇場での託児サービスの援助などを進めてほしい。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(3)青少年の文化芸術活動の充実 |
○ |
劇団の巡回公演に対する支援の充実をお願いしたい。 |
○ |
青少年に対する指導や助言を行う指導者としての養成・研修を進めてほしい。 |
○ |
演劇の子役が出演する時間の制限について検討してほしい。 |
○ |
子どもの文化芸術の専門的なアニメーター,コーディネーター,アートティーチャーを各地域で養成し,若い人材の雇用の場とすべきである。 |
○ |
子どもたちと実演家が触れ合う機会,子どもの発達段階に応じて生の舞台を鑑賞したり活動する機会の充実を図ってほしい。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。
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(4)学校教育における文化芸術活動の充実 |
○ |
日常的な教育の中に文化芸術を取り入れるよう検討すべきである。 |
○ |
「総合的な学習の時間」の1/3は,文化芸術活動に使うようにするべきである。 |
〈考え方〉
それぞれの学校における取組の中で,対応されていくことと考えます。 |
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○ |
学校教育における文化芸術教育を充実するためには,文化芸術担当の教員の資質の向上が不可欠である。
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〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を追加しました。 |
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○ |
音楽,美術など,芸術教科の重要性について言及してほしい。
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○ |
学校教育の中で「舞踏」,「映像」を取り入れ又は位置づけを明確にしてほしい。 |
〈考え方〉
学校教育の中に,個別具体の教科等を取り入れることを記述することは困難と考えます。
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10.文化施設の充実等 |
(1)劇場,音楽堂等の充実 |
○ |
安全に文化を楽しめる安全対策面についての法制化と財源対策を明記すべきである。 |
○ |
劇場・音楽堂等について,法的基盤の整備や指針の策定に早急に取り組むべきである。 |
○ |
税制優遇措置などを図るべきである。 |
○ |
専門職員の充実を図るとともに,職員について研修の充実,資格制度について検討すべきである。 |
○ |
円滑に利用しやすい運営をするとともに,特に,子どもたちへの利用や学校教育における活用の場合の料金等の軽減を考えてほしい。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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○ |
国立の劇場は,公演の充実のみならず,けん引役として,総合的な役割を担うことを期待されていることを明記すべきである |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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(2)美術館,博物館,図書館等の充実 |
○ |
普及活動のための専門職員の配置をはじめ法的整備も含め充実すべきである。 |
○ |
全国の公立図書館の各機能の充実の促進などの施策を推進すべきである。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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(3)地域における文化芸術活動の場の充実 |
○ |
その地域の劇場,音楽堂等が積極的に活用されていない場合は,国として地方公共団体に改善勧告をしてほしい。 |
〈考え方〉
各地方公共団体が適切に対応することであると考えます。 |
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11.その他の基盤の整備等 |
(1)情報通信技術の活用の推進 |
○ |
映画フィルムの保存の方法としてデジタル技術以外の方法があることを配慮してほしい。 |
〈考え方〉
デジタル技術は方法の一つとして挙げています。 |
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(3)民間の支援活動の活性化等 |
○ |
寄附等に対する課税の在り方について検討し,既存制度の見直しや新たな支援税制を導入することを要望する。 |
○ |
文化芸術団体等との連携に当たっては当該団体と十分に意思の疎通を図り,必要に応じて適切な措置を講じるよう望む。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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○ |
文化芸術団体等と連携して,最新の情報の「収集」を行うことも明記すべきである。 |
〈考え方〉
御意見を踏まえ,記述を修正しました。 |
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(6)政策形成への民意の反映等 |
○ |
「国民の意見を反映させる体制」について,具体的な体制の整備に早急に着手すべきである。 |
〈考え方〉
本基本方針を踏まえ,具体的な取組が進められることと考えます。 |
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