第7期文化審議会第1回総会(第43回)議事録

1  日時
平成19年2月16日(金) 10時30分〜12時
2  場所
東京會館 11階 シルバールーム
3  出席者
(委員)
青山委員,石澤委員,市川委員,岡田委員,里中委員,田端委員,田村委員,東倉委員,富澤委員,中山委員,野村委員,林田委員,前田委員,宮田委員,山内委員
(事務局)
池坊文部科学副大臣,近藤文化庁長官,高塩文化庁次長,吉田文化庁審議官,尾山文化部長,土屋文化財部長,亀井文化財鑑査官,竹下政策課長 他
(欠席委員)
尾高委員,西委員,西原委員,松岡委員,森委員
4  議題
  1. (1) 会長の選任
  2. (2) 文化審議会運営規則等について
  3. (3) その他
○竹下政策課長
ただいまより,文化審議会第43回総会を開催させていただきます。
本日は,第7期の文化審議会の第1回目の総会でございますので,後ほど会長を選出いただくことになりますが,それまでの間,進行を務めさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
本日の議事でございますけれども,まず文化審議会の会長,そして会長代理を選任いただきたいと思います。次に事務局から審議会関係の法令,また,2月9日に閣議決定をいたしました「文化芸術の振興に関する基本的な方針」,さらに各分科会の検討状況,今後の課題等について,ご説明を申し上げます。その後,委員の皆様方から自由にご意見をいただく時間とさせていただきたいと存じますので,よろしくお願いいたします。
それでは,開会に当たりまして,池坊文部科学副大臣よりごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○池坊文部科学副大臣
皆様,おはようございます。文部科学副大臣の池坊保子でございます。委員の皆様方には大変お忙しい中,第7期の文化審議会の委員にご就任いただきましたことに心より御礼申し上げます。前期に引き続いて,委員をお引き受けいただいている方,また新たにご就任いただきました皆様方,それぞれが各分野でご活躍の皆様方ばかりでございますので,これから,文化芸術,文化財,著作権,国語,幅広い文化芸術にかかわるご審議をいただけますものと大変期待いたしております。
前期の文化審議会で,ご答申いただきました文化芸術の振興に関する基本的な方針は,先週2月9日に閣議決定されました。私どもは,それを受けまして,この第2次基本方針を踏まえて,文化力の向上を図り,文化芸術立国を目指して,文化芸術の振興に努めていきたいと思っております。
安倍総理は,「美しい国,日本」を標榜されております。国は3つの体系からなると思います。1つは力の体系,これは防衛力,軍事力です。1つは利益の体系,これは経済の力,その中には年金,あるいは医療が入るかもしれません。もう一つの体系は価値の体系だと思います。この価値の体系こそが,教育,文化,芸術であり,いかにすばらしい価値の体系を持っているかによって,その国は尊敬されます。そしてまた,価値の体系がしっかりしているならば,それは,力にも勝る大きな力を持ち,また,経済においても新たな発展を遂げることができるのではないかと思います。
21世紀は力と利益の体系のみならず,いかにこの価値の体系を幅広く,そして,すばらしいもの,そして,深く,強いものにしていくかが,この国の未来,そして,そこに生きている私たち一人一人の幸せに問われているのではないかと思います。そう考えたときに,この文化審議会に課せられたこと,そして,私たちが果たすべきことは大きいのではないでしょうか。皆様方のご英知をいただきながら,さまざまな角度から,この価値体系をどんなふうに広げ,そして,深めていったらいいのか,ご審議をいただけるものと大変楽しみにいたしております。
時間が許す限り,皆様方のご審議を伺わせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○竹下政策課長
続きまして,第7期の文化審議会の委員の方々をご紹介させていただきたいと存じます。

<文化審議会委員の紹介>

○竹下政策課長
続きまして,文化庁関係者を紹介させていただきたいと存じます。

<文化庁関係者の紹介>

○竹下政策課長
それでは,議事に入らせていただきたいと存じますけれども,これから人事に関する事項の審議となりますので,恐れ入りますが非公開とさせていただきたいと存じます。恐縮ではございますけれども,報道関係者など外部の方はご退席をお願いいたします。

(報道関係者,一般傍聴者退出)

<会長及び会長代理の選任>
※会長について,石澤委員が委員の互選により選出された。
※会長代理については,石澤会長から宮田委員の指名があった。
○石澤会長
それでは,議事に入りますが,事務局から改めて配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局
<配布資料の確認>
○石澤会長
それでは,事務局から文化審議会についてご説明いただきたいと思います。
○竹下政策課長
<資料2,3,4,5,6について説明>
○石澤会長
それでは,各委員の皆様からご質問等ございましたら,お願いいたしたいと思います。
○市川委員
今回の文化芸術の振興に関する基本的な方針の中でも,文化芸術,芸能のこともうたっています。今現在は,国語分科会,著作権分科会,文化財分科会がありますけれども,私は,芸能の立場から,何かそのような分科会を新しく設置できないのでしょうか。
○石澤会長
芸能の分科会を設置する可能性はどうかというご質問につきまして,いかがでしょうか。
○竹下政策課長
文化政策部会という部会を置くことができるという規定がございまして,前期までは特に,文化芸術振興基本法に基づき,基本方針を見直していただくということで,文化政策部会の中で議論をお願いしてきたところでございます。文化芸術のいわば現代的なもの,あるいは伝統芸能等につきまして,文化政策部会で議論を行っていただいていたということでございます。
第2次基本方針の見直しについて答申をいただきましたので,これに基づいて,今後いかなる政策を展開していくかが課題になっていると認識しております。今期の審議会におきましては,最初から文化政策部会を設置するのではなくて,総会で大所高所からご議論をいただければと考えております。文化審議会の機能の中で,文化の振興,国際文化交流の振興を調査・審議いただくことになるわけでございますけれども,それについて,この総会の場でお願いできればと現時点では考えているところでございます。
○市川委員
それぞれの分科会は指定されているけれども,芸能については総会だけで論議するということになるんですか。
○竹下政策課長
総会でご議論をいただければと考えております。
○市川委員
あまり回数がないのに,総会でしかそのような部門は話し合われないというのは,私どもの立場からすると問題があるのではないかと思います。
○石澤会長
実際に,基本法の第10条で「伝統芸能の継承及び発展」,また,第11条に「芸能の振興」とありますけれども,これを具体化するために,市川委員から,ぜひ芸能分科会を設置していただけないかということですが,それにつきましてはいかがでしょうか。
○高塩文化庁次長
分科会には歴史的経緯がございます。文化審議会は平成13年度に設置されたのですが,分科会というのは,それ以前は全て単独の審議会でした。国語審議会,著作権審議会,文化財審議会,それを文化審議会の分科会として政令上整理をしました。当時は,文化芸術の審議会がなかったわけです。ですから,文化審議会は文化芸術全般,国際文化交流全般を扱うということになっております。さらに,文化政策部会においては,課題が見つかれば集中的に審議をしたり,3つの分科会がカバーできない芸術と国際文化交流を集中的に審議をするということを考えております。
○市川委員
分科会には総会の委員が参加していますけれども,その部会はどういう方が参加なさっているのでしょうか。
○高塩文化庁次長
今,20名のうち15名が分科会に分属されておりまして,分属されていらっしゃらない5名の方が中心になります。前回の政策部会は,本委員から8名の方にお願いをして,さらに,臨時委員13名という形でしたので,少なくとも分属してない5名の方,加えて,そのテーマによっては分科会の方もご参加いただく,人選は,課題によって考えたいと思っております。
○石澤会長
ありがとうございました。
本当に,第10条,第11条というのは重要だろうと思います。市川委員は,これを国際交流という点でも,世界へ発信するという,本当の意味での担い手でいらっしゃいますから,ぜひ文化政策部会にお入りいただいて,それを具体化していただくということで,いかがでございましょう。
○高塩文化庁次長
第1期において基本方針をつくる際には,総会の20名で議論いただきました。第3期において文化政策部会を設置し,いわゆる芸術に対する支援のあり方を審議するとともに,「地域文化で日本を元気にしよう」という報告を行いました。それ以来,ずっと文化政策部会を置いてきておりますから,芸術と国際交流に関する分野については,その中で審議をしていただくという考え方でございます。
○市川委員
3分科会ははっきり表に出ていますけれども,芸能,国際交流は,なかなか表に出てきていないと思います。ぜひその辺もなるべく表に出てくるように,ご配慮を願いたいと思います。
○石澤会長
十分におやりいただけるという次長のご説明でございました。よろしくお願いします。
第1回目でございますから,いろいろなご希望も含めて,ご意見賜れば幸いです。日本を元気にするために,文化で日本のそうした価値体系を世界へ発信していくという意味で,先生方の気持ちが,文化庁,政府を動かしていくのだと思います。どうぞ,ご意見ありましたらお願いいたします。
○山内委員
小泉内閣のもとで,文化庁,文部科学省からの積極的な支援を受けて,文化外交に関する懇談会が設けられました。これは外交の大きなてことされ,その後の作業も続いております。芸能の振興や国際文化交流も大変大事な点でありますので,やはり具体的にほかの国語,著作権,文化財と並んで,実態として重要な任務を持つという見えやすい形で,審議会の運営を考えていただくよう,よろしくお願いいたします。
○石澤会長
ありがとうございました。
それでは,文化芸術の振興に関する基本的な方針について,第6期の文化審議会の答申を受けて,2月9日に閣議で決定されたわけでございます。事務局からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○高塩文化庁次長
審議経過につきましては,昨年の2月に大臣から諮問を得まして,それ以来,14回にわたり,文化政策部会において精力的に審議が行われ,この答申をいただきました。
文化芸術振興基本法は,議員立法として,我が国の文化芸術をさらに振興させていくために,与野党5党の共同提案により国会に提出され,衆参で可決されて,法律になったものでございます。この法律は基本法の理念を書きながら,さまざまな分野の振興について,国の責務を法律で明確に位置づけたということで,画期的な法律であると考えております。
基本法の体系である総則が第1章にございまして,第1条にこの法律の目的,それから第2条で振興に当たっての基本理念,これは文化芸術につきましては,国が主導的な役割を行うわけではなく,自主性,さらに創造性の尊重ということで,あくまでも文化芸術の担い手は芸術家やそれに携わる人たちであって,国はあくまでも条件整備を行うということを明確にしているところでございます。第3条に国の責務,さらに,第4条には地方公共団体の責務がございます。第6条では法制上の措置として,「政府は文化芸術の振興に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない」と法律上,明確にしたということでございます。
この文化芸術につきましては,国が計画的に振興を図るということではなくて,あくまでその担い手は文化芸術に携わる芸術家でございますので,国が行うべきものは方針にとどめ,それぞれの芸術家の活動の条件整備を図るということで,第2章では基本方針を定めるということが決まったわけでございます。
第7条第1項で,「政府は文化芸術に関する施策の総合的な推進を図るため,文化芸術の振興に関する基本的な方針(基本方針)を定めなければならない」と明らかにするとともに,第3項におきまして,「文部科学大臣は文化審議会の意見を聴いて,基本方針の案を作成するものとする」とされております。この第7条第3項を受けまして,文化審議会に大臣から諮問を行い,1年かけて基本方針の案を作成いただいたものが,答申でございます。これは,第2次の案でございまして,第1次の基本方針は平成14年12月に閣議決定されたものでございますけれども,これを踏まえて,今回,見直しをいただいたのが,この案でございます。
参考までに法律の体系だけ申しますと,基本方針の次の条,第3章から基本的な施策ということで,第8条の芸術の振興以下,それぞれの芸術の各分野,また,文化芸術を横断的にとらえた見方という形で,国の責務を法律上明確にしているということでございます。
例えば,第8条にはどう書いてあるかといいますと,芸術の振興ですけれども,「国は,文学,音楽,美術,写真,演劇,舞踊,その他の芸術の振興を図るため,これらの芸術の公演,展示等への支援,芸術祭等の開催その他の必要な施策を講じるものとする」ということで,例示ではございますけれども,法律上,公演,展示等への支援ということが明確に書かれているという,先ほど申し上げたように画期的な法律でございます。
以下,ざっとご覧いただきますと,第9条にメディア芸術,第10条に伝統芸能,第11条に芸能,第12条に生活文化,国民娯楽,出版物,第13条に文化財,そして第14条からは形を変えて,地域における文化芸術の振興,ですから,前条まで分野を言いつつ,ここでは横串に地域という関係,そして,第15条に国際交流の推進,第16条に芸術家等,いわゆる幅広い人材の養成・確保,さらに,第17条に教育研究機関等の整備,そして,第18条に国語,第19条に日本語,第20条に著作権,第21条からはまた観点を変えて,国民という視点,人,個人という観点からとらえる国民の鑑賞機会,さらに,第22条ではその中でも特に高齢者,障害者等に対する充実,第23条は青少年,第24条では学校教育による文化活動の充実という形で,地域,国際交流というとらえ方とはまた別の観点,国民という観点でのとらえ方の4条が並んでおります。
さらに,第25条からは場の整備で,劇場,音楽堂,博物館,美術館,図書館,地域における文化活動の場となっております。さらには,第28条に公共の建物の建築に当たっての配慮というような規定まで設けており,第29条以降は情報通信技術の活用,第30条が情報提供,第31条がいわゆる税制,第32条が関係機関,第33条が顕彰,第34条が民意の反映,第35条に地方公共団体の施策ということで,相当,微に入り詳しく国の責務を書き込んであるということでございまして,この法律は,文化庁が政策をすすめるうえで,大変なバックボーンとして心強い法律ができたということでございます。
したがいまして,この法律に基づく基本方針ということで,この文化審議会へ諮問し,案の作成をお願いしたというものでございますので,全体の構成は基本法を踏まえた形になっているところでございます。
まえがきでは,前回も同じでございますけれども,今回は,文化芸術振興の今日的な意義,第1次基本方針,平成14年12月以降の諸情勢の変化を踏まえて,今後おおむね5年間を見通して策定をするということを書いてございます。
そして,第1がいわゆる基本的な方向として,総論的な部分が掲げてございます。第2では,先ほどご説明した各分野の芸術の振興につきましての施策を並べ,こういう第1次基本方針と同じ形の案を作成いただいたということでございます。
1番目には,文化芸術の振興の意義がございまして,これは第1次基本方針をつくるときには,相当な時間をかけてご議論いただいたところでございますけれども,文化芸術の5つの意義,いわゆる,人間らしく生きる,共生社会の基盤,経済の活性化,人類の真の発展,平和の礎,この意義については第1次基本方針と何ら変更するものはないというのは当然のことでございますけれども,今回は,今日的な2つの意義として,文化力,いわゆる文化が社会に与える影響,人々を魅了する力というものが,国力の源,源泉になるという観点と,第1次基本方針でも3点目で上げておりますけれども,より明確に,文化芸術と経済活動が密接に関連をしているということを強調して,それを踏まえて,我が国として,文化芸術立国を目指すということを,初めて明確に書いていただいたということでございます。
2番目にございます文化芸術の基本的な視点につきましては,第1次基本方針以降のさまざまな規制改革や指定管理者制度等,また,少子化,高齢化による地域社会の衰退等の諸要素を踏まえたということを明記しているわけでございまして,それを踏まえて,基本的な視点として,3点を掲げております。
第1次基本方針では,後でご覧いただければと思いますけれども,国の基本方針ということで,国の役割を中心に記述したわけでございますけれども,今回は先ほど申し上げた文化的な意義を踏まえまして,文化力の時代を拓くという視点,それと平成17年の文化政策部会の報告を踏まえて,地域における文化力に観点を当てまして,文化力で地域から日本を元気にするという視点,3点目として,国の方針でございますので,国の役割を中心に書いてあるわけでございますけれども,国のみならず,地方公共団体,それから民間のさまざまなメセナの活動等の期待というものも踏まえて,それぞれが連携して文化芸術を支えるということで,基本的な視点として新たな項目を掲げているということでございます。
そして,第1次基本方針でも掲げておりますけれども,いわゆる重点事項ということでご審議をいただきました。最初は5点にまとめる予定でしたが,審議の中で6点という形になりまして,相当幅広い重点支援になるということでございます。
1点目が日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成ということで,やはり国の役割として,一番重要なのは人材の育成ということでございまして,相当の時間をかけまして議論をいただきました。特に,芸術の専門的人材というのは,芸術を直接担う方ですけれども,2番目にございますいわゆるアートマネジメント担当者や舞台技術者,文化芸術を支える人材を,国として,育成し,研修しなければいけないという点と,それから,さらに無形文化の継承者ということは,文化財にとりまして大変大きな問題でございますので,その人たちが経済的に自立可能な環境の整備をしなければ,やはり後継者はできません。さらには,これも大変な議論がございましたけれども,国民全体の中で質の高い文化ボランティア活動を活性化するための環境整備ということでございます。国として,第1に重視にされるべきは人材でございます。
さらに,国の立場からすると,第2点目には日本の文化力の発信,国際文化交流でございます。各地域でも文化交流が行われておりますけれども,やはり国が日本国の総体として行うべき役割を書いているということでございます。特に,アジアを重視すること,さらには,伝統文化のみならず,現代のジャパン・クールと言われる新しい文化芸術を発信し,国際的な拠点を形成しようということ,さらに,昨年,議員立法として国際協力の文化財保護法ができましたが,その点について日本が役割を果たすということを明確にしております。
その上で,3点目は,いわゆる芸術分野でございますけれども,この芸術分野に対する支援につきましては,基本法成立以降,相当の予算的な確保もできておりますけれども,支援につきましては,いわゆる日本のレベルを上げる,頂点を目指す支援と,各地域にあるさまざまな活動に対する支援バランスの問題,それから支援のあり方につきましても,今,国が中心に直接やっておりますけれども,助成制度のあり方について検討すべきであるということで,戦略的な支援という重点項目をあげていただいたわけでございます。
それから,4点目には地域文化というものに視点を当てるということで,4点目の重点事項がございます。
5点目につきましては,教育関係でございますけれども,やはり子どもたちの育成,豊かな心や感性,創造性をはぐくむための文化芸術の役割の大きさから考えまして,この分野へも重点が必要であるということでございます。
さらには,包括的に国の宝である文化財の保存,活用ということで,あわせて6点の重点的な事項を考えているところでございます。
さらに,配慮事項として,基本法の基本理念でございますけれども,芸術家の地位向上のための条件整備ということ,これについては,芸術団体がそれぞれ行うべきこともございますけれども,国としての環境整備について掲げてございます。
さらには,法律上もございました国民の意見の反映ということで,文化政策について,さまざまな仕組みが必要だし,また基本的なデータの収集,調査研究の充実ということも配慮事項として掲げたもので,以上が総論部分でございます。
その上で,先ほど申しました基本法の第3章にある各分野,いわゆる芸術の振興以下,それぞれについて,今日的な施策,さらには5年を見通して充実すべき施策等を勘案して整理させていただいたのが,第2の基本的施策でございまして,芸術,メディア芸術と,基本法の条文に沿いまして,107の項目が掲げてございます。その際には,先ほどの重点事項を踏まえた考え方,また5年間を見通しているということで,最初の芸術のところでは,再助成制度の問題,さらには,2番の文化財のところでは,文化財の指定のあり方につきまして,類型の枠を超えた総合的な把握,保護の方策についての検討という,中期的課題も踏まえたものも入れ込みまして,基本方針を定めるということでございます。
これを基に,国,政府が文化芸術振興に取り組むということでございますけれども,ここに掲げている事項のほとんどが,文化庁の政策に一番関与しているところでございまして,私どもとしては,この基本方針を踏まえて,来年度以降の予算,税制,それから地方財政措置を含む政策手段,また法律改正等を行うという礎をいただいたというふうに考えているわけでございます。
概略的な説明になって恐縮でございますけれども,以上でございます。
○石澤会長
なかなか難しい説明を短い時間でありがとうございました。
こうしたものを踏まえながら,各分科会では,どういうふうに具体的に検討し,また問題,課題があるのかということを,引き続きご説明いただきたいと思います。国語分科会の方からお願いします。
○尾山文化部長
国語分科会では,平成16年2月に,これからの時代に求められる国語力について答申案をまとめられたわけでございますが,その後,今後,国語分科会で取り組むべき課題について検討が行われまして,平成17年2月に,今後,検討する必要性の高い課題といたしまして,「敬語に関する具体的な指針作成」,それから「情報化時代に対応する漢字政策の在り方」をあげた報告をまとめておられるところでございます。
この報告を受けまして,平成17年3月に文化審議会総会において,文部科学大臣から,「敬語に関する具体的な指針の作成について」と「情報化時代に対応する漢字政策の在り方について」の諮問がございました。
諮問事項の1,敬語に関する具体的な指針の作成につきましては,敬語小委員会が設置されまして,そこで審議が重ねられ,平成19年2月に敬語の指針として答申を得たところでございます。この答申におきましては,敬語の指針とございますけれども,その指針の性格として,さまざまな社会集団や分野で作成された敬語のよりどころの基盤,すなわち,よりどころのよりどころとして,敬語の基本的な考え方や具体的な使い方を示すものであるということが言われております。また,敬語の種類につきまして,尊敬語,謙譲語1,謙譲語2,丁寧語,美化語の5種類に分けて対象としているところでございます。
情報化時代に対応する漢字政策の在り方につきましては,漢字小委員会が設置されまして,そこで審議が重ねられているわけでございますけれども,常用漢字表の見直しを含め,情報機器の普及を前提とした漢字政策を構築していくために,必要な考え方や観点が整理されております。前期の分科会の整理では,パソコンなどが一般化した現在,常用漢字表に入っていない表外漢字を明示する機会は確実に増えているわけでありますけれども,国語施策としての漢字表は国民の言語生活を円滑化し,漢字習得の目標が明確になることから,今後とも必要不可欠なものであるとしております。
今後,さらに検討するべき課題といたしましては,音訓入れかえの問題,採用字体の問題,手書き字形との関係,学校教育における漢字指導との関係,手書き文字との関係,各種の漢字調査の実施をあげているところでございます。
今後についてでございますけれども,情報化時代に対応する漢字政策の在り方につきましては,引き続き漢字小委員会において検討を行っていただくことになっております。答申に至るまでには,各種調査の実施でございますとか,広く各方面の意見を聞きながら進めていく必要がございますことから,今後2,3年程度の期間を要するものと考えているところでございます。
国語分科会については以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございます。
敬語,情報化時代における漢字政策と,なかなか大変な問題でございます。いずれにいたしましても,国語は私たちの日常生活で一番重要なものかと思います。それを,もう少し具体化いたしました,これは権利関係でございますが,著作権の分科会の方からご説明いただきたいと思います。
○吉田文化庁審議官
野村会長がいらっしゃいますけれども,私の方から著作権分科会の検討状況と今後の課題について,簡潔にご説明差し上げたいと思います。
まず1が,これまでの検討状況でございますが,デジタル化,ネットワーク化の進展など,著作物の利用環境が大きく変わろうとしておりますけれども,その中で著作権制度の問題をどのように進めていくかということにつきまして,まず,平成17年1月に今後優先して検討すべき著作権法制に関する課題につきまして,著作権分科会の方で「著作権法に関する今後の検討課題」というものを取りまとめいただきました。これに基づきまして,第5期から法制問題小委員会,契約・流通小委員会,国際小委員会という3つの小委員会を設置いたしまして,検討を続けているわけでございます。平成18年1月には「権利制限の見直し」などを内容といたしますものにつきまして,分科会の報告書の取りまとめがあったわけでございます。
また,第6期では法制問題小委員会,私的録音録画小委員会,国際小委員会と3つの小委員会を設置して議論をしております。その中で,法制問題小委員会におきましては,緊急な課題ということで,近年,紹介もありましたIP マルチキャスト放送につきましての権利関係をどのようにするかという問題,さらには,知的財産権の他の分野とのバランスなどから,罰則や取り締まり関係につきましての強化の問題を取り上げまして,8月に報告書を取りまとめいただいたということでございます。
その後,昨年の臨時国会におきまして,平成18年1月に取りまとめていただきました権利制限の見直し関係と,それから8月のIPマルチキャスト放送などの関係を取りまとめまして,著作権法の改正を行ったということでございます。
また,平成19年1月,法制問題小委員会での「私的使用目的の複製の見直し」ですとか,あるいは「共有著作権に係る制度の整備」などについての検討結果,また国際小委員会では,ずっとご議論されていました「アジア地域等における海賊版対策施策の在り方」の問題ですとか,あるいはWIPO(世界知的所有権機関)で行われております「国際的ルール作りへの参画の在り方」などについての検討状況をまとめた報告書を取りまとめているところでございます。
今後の課題でございますけれども,第7期の著作権分科会におきましては,最初に触れました「著作権法に関する今後の検討課題」のうち,残された課題,さらに政府の知的財産推進計画において取り上げられております事項,そういったものを含めまして,さまざまな課題について検討を進めるという予定でございます。
なお,具体的な検討事項の設定ですとか,あるいは検討体制につきましては,この後,第1回の著作権分科会の中でご議論をいただき,ご決定をいただくこととしたいというふうに考えております。
以上でございます。
○石澤会長
なかなか,ここも難しい,また重要な問題が山積しております。今後の課題が2つございますが,第1回の分科会で大きな方針を決めていくと,こういうことでございます。よろしくお願いいたします。
それでは,文化財分科会の方からお願いいたします。
○土屋文化財部長
文化財分科会は石澤会長に分科会長をお願いしているところでございますが,本分科会は文化財の保存,活用に関する重要事項についての調査審議をお願いしております。
これまでの検討状況に活動状況が3つ分けてございますが,まず,文化財保護法に基づく指定等に係る答申でございます。第6期,すなわち昨年の2月から1年間におきまして,文化財分科会を13回開催いただきました。また,専門的,技術的事項に当たりますので,分科会に第1から第5の専門調査会を設けておりますが,これを16回開催していただきまして,国宝・重要文化財等の指定など862件,現状変更の許可など2,243件ということで,これらについてのご審議をお願いしているところでございます。
それから,2点目でございますが,世界遺産に関してでございます。ご存じのとおり,我が国におきましては,世界文化遺産が10件,自然遺産3件がございますが,文化遺産の方のことでございます。特別委員会を昨年の9月に設置していただいております。こちらは,世界文化遺産へのさらなる追加を目指した暫定一覧表追加という,第1段階のことにつきまして,文化庁が全国からご提案を受け付けました。その数が24件ございますが,これらについての調査・審議をしていただきまして,先月時点で暫定一覧表に記載することが適当なものということで,富士山はじめ4件のご提案を登録させていただいております。そのほか20件につきましては,今後,さらなる審議をするという予定になってございます。
3点目でございますが,企画調査会を昨年の7月に設置してございますが,文化財につきましては,従来,分野別というか,類型ごとの保護手法を行っているところでございますが,こういう分野の枠を超えた文化財の総合的な保存,活用の必要性,あるいは周辺環境を含めた保護の必要性が指摘されているということから,これらに対応するために,この調査会を設置していただきまして,文化財の総合的な把握を行うための施策,あるいは国民の文化財保護への理解と参加を促進するための施策についての調査・審議を開始していただいたところでございます。
今後の課題につきましては,以上申し上げました3項目につきまして,引き続きご検討,ご審議をお願いしたいというふうに考えております。
以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。
私も,この文化財分科会で実際に一緒にやりまして,本当にたくさんのものがある,また,今の日本がこんなにも動いているのかという実感があります。いろいろ細かいところ,それから大きな問題,それぞれ文化庁の調査官が現地に出向いて調査をして,そして委員会に諮って,こういうふうに決めて,とこういうことでございます。今後の課題が3つございました。これも大きな問題がございます。どうもありがとうございました。
それでは,引き続きまして,予算についてご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○竹下政策課長
まず,「平成19年度文化庁予算(案)の概要」をご覧いただきたいと思います。平成19年度の政府予算案に盛り込まれております文化庁予算の額でございますけれども,1,016億5,500万円で,前年度に比べて10億700万円の増,1%の伸びとなっておりまして,文化芸術振興基本法の制定をきっかけとして,文化庁予算は年々伸びてきておりましたが,19年度はこれまでの最高の額となっております。
主要事項として3つございます。1つは文化芸術立国プロジェクトの推進,それから文化財の次世代への継承と国際協力の推進,3つ目に文化芸術振興のための文化拠点の充実となっております。
最初の文化芸術立国プロジェクトの推進は2つございまして,1つが文化芸術創造プランの推進,この中には,最高水準の舞台芸術公演等への重点支援,「日本映画・映像」振興プランの推進,新進芸術家等の人材育成,そして,こどもの文化芸術体験活動の推進というものが柱となっております。
また,2番目の「日本文化の魅力」発見・発信プランの推進では,地域の文化力活性化プランの推進,国際文化交流の推進とございます。国際文化交流の全てがこの中に網羅されているわけでございませんで,1の最高水準の重点支援の中にも大きく入ってございます。
それから,文化財のところでございますけれども,比較増減額を見ていただきますと,前年度に比べまして10億5,700万円の増ということで,特に19年度予算案では,この文化財関係の予算がかなりの伸びを示したということでございます。内容としては,文化財の保存整備・活用と文化財の国際協力の推進が柱となっております。
それから,文化芸術振興のための文化拠点の充実,これは平城宮跡の保存整備と大極殿の保存整備が大きなものでございますのと,独立行政法人で国立博物館と国立文化財研究所が統合することが決まっておりまして,この通常国会に法案を出すことになっておりますが,新たに国立文化財機構として発足することになっております。それに必要な運営交付金ですとか,あるいは,京都の国立博物館の平常展示館の建て替えといったような経費が,この中に盛り込まれているところでございます。
続きまして,第2次基本方針の重点6分野に対応するものとして,そのうちの主なものとして,新規・拡充分を中心に抜き出したものが資料としてございます。
まず1番目の人材育成でございますけれども,新進芸術家等の人材育成ということで,芸術団体が人材育成をされているのを支援するというものでございますが,これも2億円増となっております。
また,文化財保存技術の継承・発展ということで,それも増が図られておりますし,またその保存技術等をなかなか生業として実施することが難しいわけでございますけれども,それに着目をしてビジネスモデルに関する調査研究をしようということが新規に認められております。
日本文化の発信,国際文化交流の推進の関係で申しますと,国際交流関係の予算で増がございますし,また「日本映画・映像」振興プランの中で,特にメディア芸術ということで,総合プログラムとして全体支援費となっておりますが,これまでやってきておりましたものに加えて,創造的人材の育成,あるいは推進拠点とネットワークの形成というものが新たに認められているものでございます。
また,「文化交流使」の派遣についても増が図られておりますし,新たに,高校生の国際文化交流というものも新規に確保できております。
また,文化遺産の保護国際貢献ということで,前年に比べまして約2倍増の予算の確保がされております。
それから,3番目,戦略的支援のところでございますけれども,芸術創造活動重点支援事業,全体としては予算額が若干減っておりますけれども,その中で19年度からはトップレベルの芸術団体と国内各地の中核的劇場との共同制作といったものも支援できるようにしているところでございます。
それから,地域文化の振興というところで,舞台芸術の魅力発見事業が4億円新規となっておりますが,これは地方の劇場等に大都市等の舞台芸術を持っていって,そこで通常なかなか見ることができない本物の舞台芸術を鑑賞するような機会をつくろうという性格の予算でございます。
また,5番目の子どもの文化芸術体験の活動でありますけれども,芸術拠点形成事業の中で,地域の美術館,博物館で子どもが本物の美術・文化財に触れるような「ミュージアムタウン構想の推進」といったようなものも19年度から新規として盛り込んでおりますし,また,本物の舞台芸術に触れる機会の確保,伝統文化こども教室,学校の文化活動の推進もそれぞれ増が図られております。また,地域の人たちに手伝っていただいて,子どもたちの文化活動を支援するといったものも新規に盛り込まれております。
最後に,文化財の関係でございますけれども,史跡等の公有化助成について2億円増,史跡整備活用について1.5億円増,文化財の保存修理で,例えば建造物保存修理については5.5億円増といったものもございますし,それから,国宝・重要文化財等が流出しないように,国が買上げするというものも3.7億円増が図られております。
また,無形文化財についても公開活用等の事業が新規に認められておりますし,地域の文化財を地域で,地方公共団体,あるいは民間,地域の方々が一緒になって支えていくような仕組みといいますか,そういう環境がつくれないかという調査研究でございますけれども,それについても新規で認められているものでございます。
以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。
文化芸術の振興に関する基本方針,3分科会の報告,予算の説明と続けてまいりました。
それでは,ここから自由討論とさせていただきますが,委員の先生方から,今までご説明いただいた中で,文化芸術の振興についての期待,あるいは政策全般についてなど,いろいろ忌憚のないご意見をいただきたいと思います。時間の関係もありますが,こういうことはぜひやっていただきたいとか,こんなことをお願いしたい,あるいは提言についてこう思う,というご意見をいただければ幸いでございます。どうぞ,ご自由でございますので,お願いいたします。
○青山委員
具体的な提言,中身の問題ではなく,若干,総会の運営にも関係することで発言させていただきます。
第2次基本方針が策定され,それに基づき平成19年度の予算案がこう決まったというご報告は,今承りました。私のいろいろな審議会での経験からしますと,委員の方が,一生懸命いろいろな答申をつくったり,基本方針を策定したりしても,その後,それがどうなったのかが必ずしもフィードバックされないという経験がございます。
今度の基本方針は,5年を目途に改定を考えるということでございますので,多分,5年後にはまた,文化政策部会のようなものができて,そこで大議論がなされて,その際に,その5年間の見直しが審議されるのだと思います。文化庁としては予算を獲得すれば大きな成果で仕事の大半は終わる,それから後,実際に文化を振興するのは基本法にあるような各活動をしている方々の自主性,創造性に任せるところが多いということは,そのとおりですけれども,この文化審議会は1年ごとに委員が交代するとのことでございますので,私としては,文化庁がこの基本方針を継続的にフォローして,5年のサイクルではなくて,1年ごとに,基本方針の重点6項目のそれぞれについて,具体的にどうなったのかということを,数字だけではなく,具体例を示すという形でご報告をいただくような運営をしていただくと,参加する我々も,なるほど,そういうふうに日本の文化力は向上しているんだとか,ここをこういうふうにした方がいいということを言いやすいのではないかということでございますが,いかがでございましょうか。
○石澤会長
ありがとうございます。
そういう意味で,フィードバックをぜひお願いしたいということでございます。
○吉田文化庁審議官
基本方針につきましては,おおむね5年間を想定しておりますけれども,各年度ごとにどのような形で進捗しているのかということについて,これは,私どもの方でもきちんとチェックしていかなくてはなりませんし,この文化審議会の場にも,その状況については逐次ご報告をさせていただきながら,またその際,いろいろな新しい視点からご指摘などもいただければ幸いでございます。
○石澤会長
ありがとうございました。
ほかに,ご意見はございませんか。
○田村委員
今のことと同じでございますけれども,文化政策部会で1年間,基本方針について話し合われて,文化審議会では最後の2月2日に提示されたわけでございます。少なくとも,パブリックコメントを求める前に,一度文化審議会に諮るというか,ご説明いただくという過程があってもよかったのではないかと,希望的でございますが,そんなふうに思いました。ホームページからダウンロードすれば見ることはできるものでございますけれども,やはり,いろいろな文化政策の振興がどうなっているかということをきちんと示すためにも,その過程があったらいかがかと思いました。
○石澤会長
ありがとうございました。
順序として,発表する前に一応こちらでお諮りいただきたいと,こういうことでございます。
○田村委員
最後にそれはあったのでございますけれども,1年間の過程の中の最後だけというのはいかがかと。1回目のときは文化審議会で検討されていて,それを私は取材させていただいていたこともございますが,2回目は文化政策部会だけで全部検討されておりました。中間のパブリックコメントを求める段階では,一度審議会でお諮りいただいた方がよろしかったのではないかなという,これは希望でございます。
○石澤会長
ありがとうございます。
○東倉委員
私ども,情報の科学と技術という,非常に広い範囲を担当しておりまして,そういう立場からコメントをさせていただきます。情報化社会と言われて久しいわけですけれども,情報が産業に関わるようになり,国民生活に深く入ってきて,さらには文化との関わりが非常に強くなっております。この基本方針の中の基本的施策にも,情報通信技術の活用と推進が掲げられているのですけれども,今はまだ,文化財のデジタル化,ネットワーク化というある意味ではインフラに近いところにとどまっております。私どもから見ると,情報通信技術というものは,文化の新しい価値を発見する,それから,また新しい文化をつくっていく,非常に有力な手段になり得ると考えています。そういう意味で,もっとこの情報通信技術の持っている機能と能力というものを文化に活用していくという方向で,ぜひ考えていただきたい。今,文化遺産オンラインというネットワークの中に,文化遺産を集積する事業が形にされてきて,1,000館の美術館,博物館を分別しようということで,私どもの技術としてはもうすべて用意できるのに,まだまだ思ったように進んでいないという現状であります。やはり,こういうところを加速することが非常に重要ではないかと思います。それから,国際発信というものも非常に重要であると考えています。
○石澤会長
ありがとうございました。
大変,建設的なご意見ありがとうございました。そのほかございませんか。
○中山委員
予算について感想を申し上げたいと思います。この厳しい中,1%増というのは,文化庁の大変なご努力の結果だとは思いますけれども,しかしながら,日本の経済力,国力を考えれば,丸が1つ違うのではないかと思います。記憶は正確ではないのですけれども,1,000億円というと,たしか九州大学の予算規模ぐらいではないかと思います。東京大学の半分ぐらいでしょうか,一国の文化予算としては,余りにもお粗末だという感じがいたします。こう言っても無理だということは百も承知で申し上げるのですけれども,審議会でもそういう意見があったということを記録にとどめておくことは意味があると思いまして,あえて申し上げました。
○石澤会長
来年も引き続き頑張っていただきたいという期待を込めて,でございます。ありがとうございました。どうぞ,そのほかの先生方もご意見いただければと思いますが。
○宮田委員
第2次基本方針を読んで,すばらしい文章でございます。しかし,文章のための文章のような気がしてしょうがない。この重点6分野にあることは大変すばらしいと思いますが,多過ぎます。昔,念仏を唱えれば極楽浄土に行けるという話があったように記憶しております。それに向かっていく時に,何か合言葉が,文化力というだけではなく,すべてが含まれているようなキャッチが欲しい。例えばですが,我々の大学では,今年,アクションプランのキャッチコピーを「世に『ときめき』を 元年」といたしました。みんな元年だという気持ちで,教育も,芸術も,若者たちもキャッチしてという意味でございます。重点6分野を含め,それから先ほどの予算も含めて,力が欲しい。文化力というのは何か,非常に単純な一言でありながら,その裏にはこれだけの文章が,これだけの構築があるんだという,何かもっと求心力のようなもの,それから内側が感じられるようなものがあったらよいと感じました。
○石澤会長
貴重なご意見,ありがとうございました。
そのほか,よろしゅうございますか。
○山内委員
今のご発言に関連して,1つはお尋ねで,1つは感想になりますが,安倍新政権の「美しい国,日本」という標語と文化庁のいろいろな政策とのかかわりというのは,どういうふうになっているのかということをお尋ねしたい。
それから,もう一つは,予算の規模の問題を中山委員がご指摘になられましたけれども,私も全く同感で,私自身はこの審議会に,とりわけ国際文化交流,国際学術交流にかかわってきた人間として参加させていただいているという認識なのです。その場合,日本文化の発信による国際文化交流の推進が少し増えたといっても5億円なのですね。これは,文化庁全体から見た場合に弱いのではないかという印象を持ちました。
世の中では,いわゆる文化外交や文化交流というのは,外務省や国際交流基金がやっているような印象を受けています。その部分はもちろんありますが,同時に,文部科学省や文化庁も積極的に文化交流を,例えば,私などの関与した国際文化フォーラム事業が今年第5回目を迎えておりますが,こうしたことにも積極的にかかわっているということを,もう少しアピールしていただくようなことも重要ではないかと思います。文化庁もやはり,日本の対外的イメージアップと文化の発信について非常に大きな貢献をしているということは,5億円という規模ではやりづらいのではないかと思いまして,もう少し一段とご努力をいただければというふうに思います。
○石澤会長
ありがとうございます。1につきましては,いかがでしょうか。
○吉田文化庁審議官
基本方針の検討の経過からいたしますと,これは安倍政権が誕生する前から議論させていただいていたものでございます。ただ,結局,基本方針が目指しますものも,日本の文化芸術の力,例えば文化力を高めていくということは,日本の文化芸術の魅力を高めていくということになってくるわけでございますから,そういった意味では安倍総理がおっしゃっていらっしゃる「美しい国」というコンセプトにも沿うものではなかろうかと思っております。
○石澤会長
ありがとうございました。
○田端委員
文化審議会の文化財の方でお世話になっておりますので,文化財の観点からの意見なのですが,私が住んでおります京都などでは,今また,景観問題が新しく話題になっております。景観といいますと今までは,鳥瞰的な上から見た景観,高い部分に上って,例えばお城の天守閣から見る景観という部分が多かったのですけれども,人が平地に立って川の,例えば合流点に立って周りの山ないし街を見た場合にどうなるかという,生活文化的な観点からの景観というものも,今後,京都では残していかなければならないのではないかという議論をしております。非常に難しい問題なのですけれども,やはり京都という土地の特性に合わせた議論ではないかと思います。
そのことをちょっと置きまして,文化審議会から出されました答申は,やはり前のものに比べて内容が濃くなって,非常によくできていると思います。特に,文化財の方では,文化財を守っていくような機運を醸成しなければならないというあたりまで重点事項の中に入っておりますし,また,文化財の保存・活用でも,先ほど,文化財を類型の枠を超えて総合的に把握すると説明がありましたけれども,そのような観点など,新しい視点がどんどん取り込めるような内容になっていることは,大変評価したいと思っております。
したがって,こういうすばらしい答申が出て,それが閣議決定されたということになりますと,地方ごとに,それぞれの地域の特性を生かしながらなさっていることを今後どのようにくみ上げていくか,そのルートを具体的に考えていただきたいと思うわけです。東京のような都市と京都とは全く違うと思います。京都は高い建物を規制しようという方針なのですけれども,京都でもそれができない地域とできる地域と,また歴史的な遺産が凝縮しているところとそんなにたくさんないところと,これから経済発展をしていかなければならないところなど,京都の中でも地域差があると思います。この基本方針に沿った取り組みをしているところの動きを,今度はどのように吸収できるのか,そのあたりの方策をぜひ考えていただきたいと思っております。その時に,今までは,規制緩和という方向で何事も動いてきたように思うのですけれども,それだけでいいのだろうかと思うわけです。建物の高さ制限などにつきましても,文化庁だけではなくて,関連する国土交通省だとか経済産業省などとの関係が大変重要になってくるので,そこをどのような道筋で,うまく具体化しそれをすすめていくルートがつくれるのか,地方との関係と周辺の省庁との関係というところで,少し具体的な何かいいルートが,これからできればよいのだがと思っています。
○石澤会長
貴重なご意見ありがとうございました。ほかには,いかがでしょうか。
○市川委員
第2次基本方針が出まして,考え方とすれば,やはりすばらしいと思っております。また,我々も本当に文化庁のご努力でいろいろ恩恵を受けてありがたいなと思ってはおりますけれども,総体的にはやはりいろいろな課題が前進していないと思える部分があります。例えば,さきほど,国家予算が少ないとお話があったけれども,この最初の基本方針の中にはメセナの活動を活発化するとあります。メセナ活動によって支援をするのに,それに対する税制の緩和とか,そういうものがなされていないわけです。今年,そういう税制の緩和が多少あるようにも承っておりますけれども,国家予算が少ないという考え方だったら,メセナの税制を優遇するということを,やはりもっと具体的に進めていただくということが大事ではないかと私は思います。
今回の基本方針で,重点事項が6つというのは多いという話もございましたけれども,やはり,具体的にこの方針をどうするのかということ,具体化に手を染めるにはどうしたらいいのかということを,ぜひ考えるべきではないかと思います,前回,言葉だけでなかなか具体的なことが目に見えなかった。動いておられることはよくわかります。ただ,点が流れになかなかならない。確かに,文化というのはそう簡単に流れになるものではないと思いますけれども,審議会を通じて,点の雨が少しの流れに見えるように持っていくのは,今回の重要な課題ではないかと思います。
○石澤会長 
ありがとうございました。
大変貴重な意見を数々いただきました。文化審議会も活性化しなければいけないという意味も含めまして,最後に市川委員の方からありました点を流れにしていく,そういう政策をお願いしたいと,こういうことでございます。そういう意味では,こうして私たちは文化庁に対して,ある意味では自由な,ある意味ではお願い事を含めて,意見を具申する,提案するという,この審議会の大きな役割といいましょうか,日本の文化を先導する,あるいは日本の文化をもっと発展させる,文化力をつける,その知恵袋といいましょうか,そういう審議会だろうと私は思っております。そういう意味におきまして,本日,ご意見をたくさんいただきましたし,また文化庁の方から,予算に基づく説明も,あるいは全体的な流れもご説明をいただきました。いろいろなご意見をぜひ反映させていただいて,1つだけ重要なのは,それがどうなったかとか,それがどういうふうに動いているかということも,あわせてぜひ報告いただきたい,こういうふうに願っております。
大変貴重な時間をいただきまして,また貴重なご意見をいただきまして,建設的なご意見,貴重なご意見,本当にありがたく存じております。しかしながら,時間でございますので,他にご意見がなければ,本日の審議会はこれで終わらせていただきたいと思っております。ご協力ありがとうございました。
この後,日程につきまして,事務局の方からご案内がございます。
○事務局
<次回日程について説明>
○石澤会長
それでは,これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
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