第7期文化審議会第2回総会(第44回)議事録

1  日時
平成19年6月29日(金) 14時〜16時
2  場所
アーバンネット大手町ビル 21階 LEVEL XXI「スタールーム」
3  出席者
(委員)
青山委員,石澤委員,市川委員,岡田委員,尾高委員,里中委員,田端委員,田村委員,富澤委員,中山委員,西委員,野村委員,林田委員,前田委員,松岡委員,宮田委員,山内委員
(事務局)
青木文化庁長官,髙塩文化庁次長,吉田文化庁審議官,尾山文化部長,亀井文化財鑑査官,小松政策課長 他
(欠席委員)
東倉委員,西原委員,森委員
4  議題
  1. (1) 文化政策部会の設置について
  2. (2) その他
○石澤会長
それでは,ただいまより,文化審議会第44回総会を開催させていただきます。
本日は大変お忙しい中,ご出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は,青木文化庁長官にご出席いただいておりますので,一言ごあいさつを賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青木文化庁長官
4月1日付で文化庁長官を拝命しました青木でございます。2月の初めまでは文化審議会委員,また,文化審議会文化政策部会の部会長をさせていただいておりましたが,今度は文化庁の側に身を置くことになりまして,文化審議会の重要性をますます強く感じております。文化庁も,皆様にご答申いただきました文化芸術の振興に関する基本的な方針,第2次基本方針が閣議決定されましたので,これを中心に,これから具体的な施策に邁進してまいりたいと思います。
何といいましても,この文化審議会は,日本の文化行政,文化政策における最高決定機関でございますので,大変重要な会議でございます。日本にとって文化というものは,ますます重要な意味を帯びてくると思っております。その今日,委員の皆様方のご協力とご指導を賜って,日本の文化政策,文化行政を豊かな充実したものとしてまいりたいと思いますので,今後ともよろしくお願い申し上げます。
○石澤会長
ありがとうございました。大変力強いお言葉をいただきまして,私たちといたしましても,ぜひバックアップしていきたいと思っております。
ではまず初めに,文化庁の人事異動について,事務局からご紹介をお願いいたします。
○小松政策課長
<文化庁人事異動の報告>
○石澤会長
それでは,議事に入らせていただきます。まず,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局
<配布資料の確認>
○石澤会長
それでは,本日の議事進行についてご説明を申し上げます。はじめに,文化政策部会の設置についてお諮りいたします。次に,事務局より6月19日に閣議決定されました「経済財政改革の基本方針2007」など,各種の報告書について説明をいただきます。その後,文化芸術の振興全般に関するいろいろなご意見・ご感想などを,お1人ずつご自由にご発言いただきたいと思っております。
それでは,まず文化政策部会の設置について,事務局よりご説明をお願いいたします。
○小松政策課長
資料2をごらんいただきたいと存じます。
前の第6期では,文化政策部会を設置し第2次基本方針の取りまとめをしていただきました。この第7期におきましても,引き続き文化政策部会で審議を行っていただくために,あらためて設置について決定を行っていただきたいというものでございます。
今期は,第2次の文化芸術の振興に関する基本的な方針におきまして,重点的に取り組むべき事項を6つ掲げておりますが,その第1番目にございます「日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成」につきまして,さらに掘り下げてご審議いただきたいということで,我が国の文化芸術分野における人材育成をテーマに調査審議を行っていただきたいと考えております。
検討内容としては,まず,アートマネジメントや舞台技術など,第一線で活躍する人を支える分野の人材養成について,我が国における現状を把握し,参考になる諸外国における例を調査し,その上でアートマネジメント人材の役割や定義といったものについてご議論いただき,それを踏まえて,今後の養成のあり方,特に国と地方の役割といったものについてご議論をちょうだいできればと思っております。
続きまして,芸能の実演家,音楽,舞踊,演劇等の分野における実演家の人材養成について,同様のご議論をいただければと思っております。
さらに,最近の新しい分野,日本の強みといわれている分野であるメディア芸術,映画等の分野につきましても,まだまだ人材養成については手薄でございますので,ご議論を進めていただければと考えております。
恐らく,これだけの分量でございますので,なかなかすぐに結論,まとめというところまではいかないかと存じますけれども,大体2年ぐらいの期間でご議論をちょうだいできればと思っております。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○石澤会長
今事務局よりご説明いただいたとおり,検討内容といたしましては,アートマネジメント及び舞台技術に関する人材養成,それから,芸能実演家の人材養成,そして,メディア芸術分野における人材養成という,今一番必要な,そして,これからどうしても必要になってくる分野が3つと,その他も含めて4つの分野です。これらについて,大体2年間で検討を行い,その結果をご報告いただくため,文化政策部会を設置するということでございますが,いかがでございましょうか。
○市川委員
日本の伝統芸能という分野をこの中にはっきりと,何らかの形でうたっていただけないものかと思います。この資料では,そういう文言は入っていないですね。日本の文化行政に携わるところで,日本の伝統というものが一言も入っていないのは,ちょっと片手落ちのように思われますけれども,いかがなものでしょうか。
○小松政策課長
確かに,芸能実演家のところでは,割と現代的なものの例示をいたしておりますので,ここに例としてつけ加えるという形でご議論をちょうだいできればと思います。
○石澤会長
そういう意味では,今,市川委員からお申し出のありました日本の伝統芸能というところをぜひご配慮いただきたいということでございます。
○尾高委員
この3分野は,それぞれもちろん大事だと思うのですが,ここにいく以前のいわゆる子どもの,例えば,学校での音楽教育やいろいろなことに関して小学校で何を教えるかなどというのはすごく重要であって,それもやはりこの文化政策部会で議論するべきことではないのかなと思います。
○石澤会長
子どものころから一貫した,そうした教育についても,ぜひ議論していただきたいということでございます。
○富澤委員
文化政策部会で人材育成を取り上げるというのは,時宜を得た,大事なことだろうと思います。日本全体で教育を見直そうという中で,この世界でも新しい,そして力強い人材を養成していくことに取り組もうということは大変結構だと思うのですが,気になるのは,このアートマネジメントという言葉が何を指しているのか,どこまでどういう範囲でどのように定義しているのかということがわからない。誰もがイメージ出来るような日本語で表現すべきではないか。これから議論していく中で,そういう適当な言葉を見つけて,概念をはっきりさせた方が,これから国民にアピールしていくという意味でもいいのではないかと思います。
○松岡委員
最初にアートマネジメントがくると,検討課題としての優先順位がこれかなという感じがどうしてもしてしまいます。舞台芸術全体を考えると,アートマネジメント,舞台技術,実演の3つがありますけれども,実際に舞台ということを考えると,上演があり,その裏がありというのが,舞台の実演と技術だと思うのです。そして,アートマネジメントというのは,そういう状況をつくり出す体制や場所の運営ということです。ですから,とりあえず3つ並べましたという感じがどうしてもしてしまうのですが,その辺をはっきり,何が今求められているかということを考えなければいけないと思います。
アートマネジメントに関して,現場に携わっている方から聞いた話では,最近,芸術関係の学部や学科のある大学では,アートマネジメントを講座として設けているところが随分あるのですが,大きな問題は,そこでどういう教育をしてどういう人材を育てるかということよりも,育った人の受け皿が極端なことをいえばない。ですから,人材育成といっても,その先までを考えていかないと,教育を受けたことを実地で試す,能力を生かすという道筋がまだついていないと思うのです。そのあたりからも考えていかないと,一生懸命育てても,それっきりになってしまうという懸念があるのではないかと思います。
○岡田委員
前期の文化政策部会でも,このアートマネジメントというのは何をする仕事なのかということで,随分議論があって,その割にいま一つイメージが結ばれなかったという経緯があります。そういう一番抽象的なことを一番に議論していく素材として挙げるというのはいかがなものかと思います。もう少し具体的なものから入っていった方が,話が具体的になって,現実的になるのではないかと思います。アートマネジメントという言葉が日本語に置きかえられるようでなくては,国民に対して説得力がないんじゃないかしらと思います。
○石澤会長
ありがとうございました。本当に貴重なご意見でございます。
文化政策部会の始まりに当たりまして,このようにやってほしいということをお願いしておきたいと思いますが,他にご意見はございますか。今お話いただいたものは,この文化政策部会で議論していただく素材になるわけでございます。ですから,他にございましたら,ご意見を賜りたいと思います。
○市川委員
今,教育制度がいろいろ議論されています。教育という面で,この文化審議会として物申すというシステムはないのでしょうか。文化の我々の目から見たものを教育を議論なさっているところに提言するということをしっかりやってもよろしいのではないかなと常々思っております。提言というものがあって初めて,教育のあり方を検討していただくということになると思いますので,ぜひとも,教育の審議会に,この会として提言というものを出す必要がある,またその部署を設ける必要があるのではないのかなと思っております。
それからもう一つ,メセナ活動について,メセナ活動も少しずつ上がっているようですけれども,税制面の問題など,はっきりしていない部分があると思います。この辺も文化政策部会で一つの項目として取り上げていただきたい。今回拝見すると,やけに簡単になっていますけれども,もっといろいろ検討すべきことがあるのではないのかなと思います。
○宮田委員
東京藝術大学は今年120周年でございまして,まさしく今先生方がおっしゃっていたことがすべて,この120年の中に構築されていながら,崩れるところ,より大きく発展しているところがあって,たいへん興味深く聞かせていただきました。この度,文部科学時報へ論文をということで,そこでも,古さと新しさをしっかりと意識した上で未来構築をしていくことで,将来,大きな文化芸術立国ができ上がるのではないかといった関係のことを書かせていただきました。
これは先般の総会でも言わせていただきました,力が要ると。その力は何かというと,動かす何かだと思います。その力のベースになるものというのは,例えば教育再生会議や財政諮問会議など,いろいろな会議に,少なくともこの中のどなたかが委員として参加しているということはすごく大事なことかなと思います。というのは,アジア・ゲートウェイ戦略会議の中では,文化人としては私一人でございましたから,どうしても話が数字の方へ行ってしまい,心の話に行きにくい。その中で一人頑張ってきましたが,直接安倍総理に,少なくとも文化芸術立国日本という意識を持ってもらいたいということは強く申しておりまして,大変心強く聞いていただいておりました。では具体的にどうするかといったときに,皆さんの力が出てくるという組織構成をしていかないと,せっかくここでの先生方のすばらしいお話がつながっていかないような気がします。
おっしゃるように,アートマネジメントはものすごく難しいです。経済力がありません。受け皿がないんです。でも,みんな必要なんです。結局私も一作家ですから,自分でつくり,自分で売って,全部一人でやっていますが,それではだめなんですね。それをこういう時期に変えていかなければならないのかなという感じがいたします。
○石澤会長
ありがとうございました。本当に,非常に力強いお話をいただきました。文化芸術立国を目指して,その中身を文化政策部会で提言していく。そして,教育については教育再生会議等にも提言していく。同時に,税制面についても,優遇措置等が実際に行われるまで,そうした理論的なものも含めて推進していくということでございます。いずれにいたしましても,文化芸術立国なる日本がいかに地球レベルで頑張っていくかという問題に究極のところはいくのかなと思っております。
○田村委員
この3つが全部,人材養成についてというところで終わっていることが問題だと思うのです。例えば2番は,今までもずっと文化庁としてはやっていらっしゃいます。それが結果として雇用の場も創出しているかというと,残念ながらそうではない。例えば,国立の劇団もないし,国立のバレエ団もないし,国立のオペラ団体もないということが,そういうものを生み出していない。新国立劇場がどう機能しているかという問題もあると思います。
NHKには昔,N響とは別に,放送劇団も放送管弦楽団もございました。皆様ご存じの黒柳徹子さんも,若山弦蔵さんも,加藤治子さんも,皆様そこの出身でいらっしゃいます。でも,今NHKはそれを持っておりません。NHKにあるのは,いわゆるアートマネジメントをする人,制作者と演出者,そして舞台技術者です。いわゆる本当の技術,美術といわれる方たちがNHKに今存在して,だからこそあらゆる分野の芸術家にお願いして,例えば,古典芸能鑑賞会であらゆる流派の方が一緒に日本のすばらしいものをお見せできる。ニューイヤーオペラコンサートもそうです。そういうことができるのは,制作者と演出者と技術者と美術者がNHKに存在するからということだと思います。それが劇場や芸術団体にも存在すれば,すばらしい人材を活用して舞台作品というものは創造していける。今,美術館・博物館で学芸員のあり方というのが問題になっておりますけれども,それも同じことだと思います。
そういう意味で,たくさんある公共の文化施設に,きちんと機能していける人材を配備していくということが必要です。そういう方たちは,学部4年生ぐらいの勉強では多分なかなか難しいと思います。今,慶応大学では,社会経験3年生を対象にアートマネジメントの大学院をつくっております。それから,世田谷パブリックシアターでは,今6人の将来アートマネジメントを仕事としていきたい方を養成していらっしゃいます。それだけこの職業の方が必要であるというのが現実だと思います。前期の文化政策部会で,松竹の方が,プロデューサーが一番必要だとおっしゃっていました。それはどこの分野も多分そうではないかと思いますので,単なる人材養成について,というにとどまらない文言になっていればよろしいのかなと思います。そこまで見据えて話をしていかないと,いつまでたっても同じかなというのが,正直なところでございます。
○石澤会長
大変貴重な意見で,本当におっしゃるとおりでございますし,また,それには少し年限もかかるけれども,しかし今求められているということでございます。そうした意味におきまして,この人材養成が文字どおりの人材養成ということにならないように,むしろ人材養成プラスその後の受け皿等,そこがうまく機能し,また,そういう人材を供給できるということになると,本当に文化芸術立国日本になれるのではないかということでございます。
こういうことも含めまして,ぜひご討論いただきたいと思いますし,文化の政策,行く末をある意味では戦略的な部分も含めてご議論いただく部会をつくって,もう少し目に見える形で,この文化審議会が実際に外に向かって発言するなり,あるいは文化政策部会のつくった戦略・戦術なるものの中身を詰めていく,そのようにしていただきたいということでございます。これは昨年もずっと続いてやっていただいておりますので,部会としてしっかりまとめて,何らかの形で発言し,かつそれが実り多いものになっていく,そういうものにしていただきたいと願っております。
○宮田委員
アジア・ゲートウェイ戦略会議で,私が座長で,文化芸術についてというものを首相官邸で開かせていただいたのですが,その時,髙塩文化庁次長の大変いいお言葉を承って感動した記憶がございます。できればここでも,次長のお話になられたことを,要約で結構なんですけれども,お話いただければと思いますが。
○髙塩文化庁次長
基本的には,第2次基本方針の6項目についてでございますけれども,アジア・ゲートウェイの場合には,特にアジアとの架け橋ということでしたので,日本の得意な分野,古いものから新しいものまでを発進するということと,人材育成についてお話したかと思います。芸術家についてはある程度,我が国でも養成をやっておりますし,大学でもやっておりますけれども,芸術団体と国民,それから劇場と国民をつなぐ,そういったアートマネジャーといわれる分野の人材については,必ずしも十分ではない。ただ,人材育成については,本当に難しい面がございまして,提言を行いましても,それを実際に施策にどう結びつけるかという大きな問題があります。芸術家については,国立劇場や新国立劇場のような研修所がございまして,そういうところで文化庁が積極的に支援し,伝統芸能であれば支える人材,新しい分野では日本の牽引となるような人材を支える,そういう場をつくるという施策にならざるを得ないというところもあります。
文化政策部会で人材育成を検討内容としたのは,そういうことも考えつつ,第2次基本方針の6つの重点事項の1番目の重要課題だということを踏まえ,検討例として全面的に出したところでございます。重点事項の2番目には,文化発信のことがございまして,舞台技術の話なども含めて,国としてこういう方向を考えているということも,たしかアジア・ゲートウェイの場ではお話ししたような気がいたします。
○宮田委員
非常に具体的な意味で行政と現場がつながっているなという感覚を髙塩次長の中から力強く受けとめることができたんです。ほかのいろいろな省庁の方々もお出でになってお話しされたのですが,それが伝わりにくかった感じがしたということでございます。経済産業省などで感性のお話などをしても,どうしてもその後ろには経済の数字がまとわりつくわけです。その辺が全くそうではなくて,本当に心の話をしてくれたなという感じがして,印象が強かったということでございます。
○石澤会長
ありがとうございました。今お話のとおりでございまして,文化発信まで含めて文化政策部会でご議論をいただきたいと思っております。
それでは,異議がないようでございますので,文化政策部会の設置について決定とさせていただきます。
続きまして,文化政策部会に所属する委員につきましては,文化審議会令第6条第2項に基づきまして,会長である私が指名することになっておりますので,僣越ではございますが,この場で指名させていただきます。尾高委員,田村委員,富澤委員,宮田委員,山内委員の5名を指名いたします。よろしくお願いいたします。
それでは,事務局から,「経済財政改革の基本方針2007」など,各種報告書等についてご説明をいただきたいと思います。
○小松政策課長
それでは,文化庁の施策そのものというわけではございませんけれども,最近の政府全体の動きの中で文化関係のことがどのように盛り込まれているかということについてご紹介させていただきたいと存じます。
まず,資料3-1「経済財政改革の基本方針2007〜「美しい国」へのシナリオ〜」ですが,いわゆる骨太の方針といわれているものでございます。これは,今後内閣が取り組む課題の設定と改革の方向性を提示したものでございまして,我が国の成長力を強化させるためにはどのようなことが必要か,そのために行財政改革というものをこれまで同様進めていきましょうというものでございます。
文化関係につきましては,第4章の6の「多様なライフスタイルを支える環境整備」の中に,大雑把な表現ではございますけれども,文化庁のやろうとしていることすべてが読めるように書かれているところでございます。
それから,続きまして資料3-2「アジア・ゲートウェイ構想」というものでございまして,これは,総理が議長を務めているアジア・ゲートウェイ戦略会議で取りまとめられたものでございます。我が国が,これからも安定した経済成長を続けて,世界の中で魅力のある国でい続けるために,日本も含むアジアは非常に成長を続けていますけれども,そのアジアの成長力や活力を日本に取り込むと同時に,日本がアジアと世界の架け橋になれるよう,日本が魅力ある国となるために必要な政策をどのように実現していくか,さらにそういった日本の魅力を広く海外に発信するということを目指してまとめられたものでございます。
最重要項目の中に「「日本文化産業戦略」に基づく具体的な政策の推進」でありますとか,重点分野の中に「日本の魅力の向上・発信」というものが取り上げられておりまして,その中に文化庁の関連施策がかなり盛り込まれているところでございます。
その具体的な内容につきましては,例えば「2)クリエーションの拠点とするとともに,魅力の発信」に,「メディア芸術」の発信の強化といったことを載せております。それから,「3)伝統文化,伝統芸能等の活用推進など文化資産の活用促進」で,世界を魅了する「文化力」の向上のため,伝統的なものから現代的な文化芸術まで多様な文化芸術を振興するということを書いております。また,芸術家等の相互交流など文化芸術を軸とした国際交流の推進でありますとか,日本語教育の問題,それから文化の多様性に配慮しつつ,アジア各国の有形・無形の文化遺産の保護に協力する,こういった具体的な政策課題が記述されているところでございます。
続きまして,資料3-3「知的財産推進計画2007」でございます。これは,内閣官房の知的財産戦略推進事務局において取りまとめまして,総理を本部長とする知的財産戦略本部で決定しているものでございます。これは,全体の「策定に当たって」というまえがきと,重点編,本編の3つの部分から構成されております。
例えば,「2.知的財産の保護」では,模倣品・海賊版対策についての記述がございますし,「4.コンテンツをいかした文化創造国家づくり」という,世界最先端のコンテンツ大国を実現するための各種の法整備についての記述がございます。また,「ライフスタイルをいかした日本ブランド戦略を進める」ということで,マンガやアニメあるいは伝統文化といったことで,日本の魅力の発信についての記述がございます。
本日はこの3つをご紹介させていただきましたけれども,文化庁におきましては,こういった報告書などの記述も踏まえつつ,これから施策を進めてまいりたいと考えているところでございます。
それから,別冊で参考資料といたしまして,「文化芸術関連データ集」というものをお手元にお配りしております。第2次基本方針に提示されている各種の施策を進めていく上で,それらをきちんと進行管理し,評価していく必要がございますが,文化芸術関係のいろいろな統計も含めたデータについて,各種調査の中から,文化芸術の施策について評価をしたり,今後のあり方を考える上で参考になりそうな統計資料をまとめたものでございます。まだまだ十分ではございませんで,これから充実させていきたいと思いますので,ご批判をいただければと思っております。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○石澤会長
こうした文化芸術関連のデータ集というのはなかなか貴重でございますし,また,断片的には見るんですが,こうやってまとめてみるのは初めてなものですから,すごいなと思っているんです。これは見ごたえがありますね。
それでは,今ご説明いただいた資料も含め,全般につきまして,ご出席の皆様からご意見やお言葉をいただきたいと思っております。文化芸術振興に関するお考えや,あるいは文化行政に対する要望,課題,いろいろなご意見がおありかと思います。日ごろこのように思っているというご意見をぜひこの場でいただければ幸いでございます。
○青山委員
2月の総会で第2次基本方針が策定されるときに,これがこれからどのように実現されていくのかということを,この総会にフィードバックしてもらいたいと発言させていただきました。せっかく委員がいろいろな意見を述べ,アイデアを出して,基本方針を策定しても,それがどういう形で実現していくのかがわからないと,委員としてもやる気がなくなるのではないかということからそう申したわけです。今日は,文化芸術関連データとうものをいただきまして,一応ある程度は数字の上でわかりましたが,引き続き,これから5年間の中で適宜,第2次基本方針の6つの重点項目について,具体的な形でフィードバックしていただければ大変ありがたい。それによって,またいろいろなアイデアが出てくるのではないだろうかと思っております。
今期も文化政策部会が設置されるということですから,その場でフィードバックさせながら,文化政策部会の委員の方が中心になって,これからの文化政策の中心的な課題について,今回は人材育成に重点を絞られるということでございますけれども,それは一番重要なことでございますので,それに絞った上で,日本の文化力のさらなる向上についてのいろいろのご提言をいただければありがたいと思っております。
○宮田委員
マスメディアには,ここでこういうことをやっているということを,どのぐらい訴えてありますか。マスコミの方は何人かお出でになっていただいているようですが,ただ,映像,ビジュアルがないのはだめ,文字だけでは今は伝わりません。これだけの先生方がお出でになっているときに,カメラがないと。こういう文化力の話というのは,なかなか数値にあらわれない。絵で訴えるということがあれば,多くの,こういう仕事をしている人,ボランティアをしている人,いろいろな方たちが,「ここでこんなふうに議論してくれているんだ」ということがわかっただけでも,力というものがすごく出てくると思うんです。そういう積み上げがすごく大事だと思うんです。これから審議会をやるときにはぜひ,引っ張ってくる。それも力です。真剣に,先生方が悩んでいるし,考えているし,構築している。けれどもできない。どうしたらいいんだろうということを,国に,あるいはまちに訴えるといった力の部分が欠如しているような気がする。非常に素朴ですが,とても大事なことかと思います。
○市川委員
これからの人材育成が大事であるということは,皆さん共通の認識です。でも,人材養成の重要性はそこまででとまっていて,その先の形はどういうものがあるかということまでなかなか言及されていないように思います。研修制度という,先生一人で学校型の教育で育てていくのと,徒弟制度という,先生が弟子を育てるという二通りの育成という形があると思います。欧州の方では,この徒弟という制度が結構はっきりとした形でやられていると思います。育成という形でも,生徒を育成するのか,先生を育成するのかということも,もう少し突っ込んで,はっきりしていただかないといけないと思います。我々の経験では,学校制度,研修で育てるよりも,実際は徒弟で育てた方が優秀な人材が出てくる可能性が高いと思います。また,教え方も,一対一ぐらいで教えなければ,なかなか伸びていかないんです。学校研修制度だと,大勢がその認識は持つけれども,いざ通用する人間をつくるということになると,徒弟制度になるんです。それが大きな力だと思います。歌舞伎などですと,生徒さん,研修生たちに経済的な支援を国がしていますが,徒弟という形で人を育てるには,先生もお金がかかるんです。ですからその辺のことも,伝承という形,育成という形,そういう組織のつくり方ということについても,育成という中でぜひ念頭に置いていただきたいと思います。
○岡田委員
「知的財産推進計画2007」には,いろいろ非常に興味深いことが書かれておりまして,心強く思うのです。それで,この中で「世界最先端のコンテンツ大国を実現する」という項目がありますが,ぜひともこれは力を入れてやっていただきたいことではございますが,流通の促進に力を入れるあまり,権利の保護がないがしろにされないように,ぜひよろしくお願いする次第です。ここに権利の集中管理などの提言もしてありまして,権利の公正な保護を目指して,権利の集中管理にも手を貸していただけたらうれしいと思います。
「国際的な著作権制度の調和を推進する」というところでは,アジアなどに対する働きかけをうたってあります。今我々は,著作権の保護期間の延長ということで,死後50年から70年にということをお願いしているわけですけれども,これも国際的な著作権制度の調和ということを考えたときに,70年に延長しなければ調和が保てない。今,日本はこんなに文化立国だといいながら遅れているのかと思われているところでありまして,この中に死後70年への延長ということも一つ頭に入れておいてほしいと思います。
あと,再販制度の維持などについても,十分議論して結論を出していただくようにお願いいたします。また,著作権の侵害に対する親告罪を非親告罪化するということも書かれておりまして,それも非常に興味深いことだと思いました。ゆっくり読ませていただきますので,また何かありましたら質問させてください。
○尾高委員
人材養成というのは,もちろん賛成ですが,まだちょっとひっかかるのは,文化というものは,いわゆる与える側,舞台の上に立つとか,放送をするとか,こちらから能動する方のことばかりをやっていても本当はだめで,受動側の国民がどういう方向に行くか,それをいい意味で引っ張っていってあげないと,幾ら人がそこに行っても,聞く耳を持たないという人たちがいたのではしようがないので,その辺のこともこの審議会でもっと話をしていくべきではないかなと思います。
日本というのは,すごい古い歴史があって,すばらしい芸能が,芸術がずっと続いていて,ただ鎖国をしていました。鎖国の後,いろいろな文化が急に入ってきて,日本と西洋がごちゃまぜになって,そして,第一次大戦の後には英国のまねをして,第二次大戦の後にはアメリカの言うことを聞いてという,文化としていろいろなところがすごくごちゃまぜのまま来ています。それをどうにかいい方向に持っていかないと,子どもたちは何だかわからないでごちゃまぜの中に暮らしているという気がするんです。
僕たちは音楽会に人が来てくださることが原点なんです。もちろん放送も,CD録音も大事なんですけれども,本当に今一番困っているのは,CDやレコードの売上がどんどん落ちて,インターネット上での売上が上がっていること,人が生の芸術を楽しむのではなく,ネットで全部してしまう方向にすごい勢いがついています。でも,これが行き過ぎると怖いことです。今札幌のオーケストラでは,小学校6年生をKitaraホールに招待しています。これをあと50年続けたら,札幌市民全員がKitaraホールで,クラシック音楽を,札幌交響楽団を聞いたということになります。そうすると,今にその人たちに子どもが生まれ,その子どもが育ったとき,「今日あそこへ行く」「行っていらっしゃい」というような本当の文化になっていくのではないかと思うんです。
後で子どもたちに話を聞くと,「テレビの音より良かった」と言ってくれます。そこで生の熱さがある。ですから,お芝居でも実際の生の声を聞くのとテレビとでは全然違うということも,こういう審議会の方でうまく話しかけていけないかなと思います。
○里中委員
まず,人材育成のことですが,確かに養成してもその後どうするんだということはありますので,ちょっと無理をしても,どこかではっきりと,生かし方とかそういう文言は入れた方がいいと思うんです。書くことによって意識するということはあると思います。
いろいろお話を伺っていて実感したんですが,結局は日本人の価値観です。経済効果のないものを排除していくということで,戦後経済発展をしてきたような気がいたします。ですから,学校教育の中でも,将来の受験や就職に役に立たない科目はどんどん主要科目から外されていった。私なども,マンガを描いておりますと,どれだけ親や先生にとめられたことか。周りを説得し,その道を歩いてきたという者が大変多いわけです。
音楽にしましても,映画や演劇にしましても,アートマネジメントは確かに必要なんですけれども,例えば人材を養成して,受け皿をつくって,けれどもそれで果たして本当に活性化するかどうか,これは全くわからないんです。ですから,それが効果が出たかどうかということを数字で求めるような書き方をしてしまいますと,まだまだ日本の場合,数字に反映されなくては結果として出ていないという認識のされ方をしますから,こういうものは数字では推しはかれない何かがあるということを前提に考えないといけないと思います。施策を実行した結果として,どれだけ経済効果が上がったかというあらわし方をしますと,効果が出なかったではないか,だからこういう養成をやってもやっぱりむだだったと,なし崩しにまた後に戻らないように,どうか目的を経済発展と結びつけないでいただけたらうれしいと思います。
いかにして,我が国本来の価値観と文化的豊かな環境によって生まれた数々の文化芸術を認めて,わかって,感動していただけるかということが,世界の中でのこれからの我が国のあり方にかかわってくると思うんです。感動を金額では推しはかれません。非常に難しいのは,短いスパンで見ていると,ちょっと結果が出なかったかのように受けとめられる。統計のとり方,計算の仕方でまた数字も変わってきますので,非常に危ういものを感じます。
ただ,これまで,余り恵まれない分野で一生懸命,将来の保障も支えもなくやってきた多くの人たちは,決してお金になるからといってやったわけではないんです。だから,ハングリー精神があった方がいいのだというのは乱暴な意見で,何らかの保障と喜びはあった方がいいと思います。その中で,先ほど徒弟制度というお話がありましたが,私どもの世界でも,確かに一種徒弟制度のようなもので見どころのある子には教えていきたい。アシスタントがそうですけれども,税制上は普通の企業として扱われるわけですから,その子にかかる経費については全く考慮されないので,確かに先生は大変なんです。そういう苦労もあるので,各分野ごとに税制の仕組みのあり方,何かした場合の税制優遇措置も含めて,きめ細かな配慮があればと思います。
若者の養成・育成に関しては,企業との産学協働という形もありますし,また若者たちのチャレンジする気力を生かすために企業がお金を出した場合の税制優遇措置とか,あるいは国で何らかの基金のようなものをつくって,奨学金のような形で制作資金を提供するとか,そういうことも具体的に何かできたら,励みになる人は多いのではないかと思います。
結局,どれだけ人材育成して,いい作品やいい舞台をつくったとしても,お客さんが来なければ盛り上がらないわけです。お客さんに来ていただいて,それを楽しんでいただける環境をつくるには,やはり教育だと思います。安定した勤め先を得るためだけの勉強,それが学校の中で重要な科目とされる時代はもう古いのだというイメージをどんどんアピールしていただきたいと思います。一人ひとりが豊かな感動を味わうことのできる心のゆとりが,必然的に「美しい国」につながるのではないかと思います。ゆとりある気持ちで若い人たちを育てる。これから少子化というのは大いなるチャンスです。少子化だからこそできることはたくさんありますので,プラスイメージでみんなで取り組んでいけたらと思います。
○田端委員
このデータ集をいただいて,漠然と思っていたところが本当にそうだったのだなと今思っております。私が属しておりますのは文化財の方ですので,まず「文化関係予算の諸外国との比較」を見ますと,日本とアメリカの文化に関する予算は日本の方が多いのですけれども,これは歴史の厚さの違いで,もっと日本の方も増やして,フランス並みにしてもらう必要があるのではないかと思いました。その次の「地方公共団体の文化関係経費の推移」を見ますと,文化財関係は本当に下の方で沈んでいます。このあたりが非常に問題だと私は思っております。
そして,「基本方針2007」の第4章は,表題が「持続的で安心できる社会の実現」となっていますけれども,私には,全然安心できないような予想がするわけです。といいますのは,「多様なライフスタイルを支える環境整備」とあり,昨今は多様性が非常にいいものだといわれますが,少し冷静に考えてみますと,基本的に文化においては何を守ってこれから継承すべきなのか。何百年も文化資源を守ってきた形が今現在残っているわけで,これから100年,200年という先を見通したときに,現在,経済効果ばかりを重視していますが,それを壊していかなければならない部分が多々出てくるのではないかと思います。したがって,多様性はもちろんいいことなんですけれども,その多様性の基本に,私たちが共通して守らなければならないものというのは何なのかということをやはり提言していただきたいと思います。
日本の場合は,文化財にかかわらず,歌舞伎や能・狂言,それから地方の伝統芸能など,非常にすばらしいものがたくさんありまして,本物と身近に接することができるというのが日本の文化の一つの特徴だと思うんです。長い歴史を持っている貴重な文化と日常的に接することができる,実際に触れる,見にいけるといった環境にありますので,ぜひそういう環境を将来にわたって残していく必要があると思います。そのためには共通して何をやるべきなのかというあたりを少し提言の中に加えていただきたいなと思います。
経済財政改革の基本方針ですので,現在から将来を見据えてというところに視点が置かれているのはわかるのですけれども,一方,この日本文化の良さをアジア全体に表明していくということになりますと,その前に考えなければならないのは,受け取り手の国々の歴史を一定程度理解した上でないと,軽率にアジアに向かって発信していくということはなかなか言えないのではないかということも心配するわけです。そのあたりにも非常に注意しながらやっていただきたいなと思っております。
○田村委員
よく関係者の方が,メディアがとか,放送ではというお話をされます。私は放送番組のディレクターでしたので,自分の経験から申し上げますと,新しい番組をつくった場合,放送後,視聴者の方からの反響がございます。お電話もたくさんあったりいたしますが,電話だと正確に伝わらない。私はそのときに必ず,「次ははがきで1枚お願いいたします」と。はがきが山のように来たら,やっぱりそれは力となります。それがすごく大切だと思っております。昨年,第2次基本方針のパブリックコメントに対して102しか意見がなかったんです。関係の方はそれをご存じでしたでしょうか,それに対して積極的にかかわられたでしょうか。それは,例えばメディアに関係する私どもの責任ももちろん感じますけれども,関係者は,それは他人ごとではない,自分のこととしてやらなくてはいけないと思っております。
外国の芸術監督にお話を伺ったときに,やる気があるのかどうかということをおっしゃっていました。産業界と同じように,本当に真剣に取り組んできたかどうかということをお話ししたいというアドバイスを受けましたけれども,私はいろいろな方とお会いしてお話しするときにいつも感じますのは,努力の大きさの違いと思っております。それは,今私たちがきちんと声を出して何か一つでもすることが,結果的に文化庁の後押しになり,文部科学省の後押しになり,そして,例えば税制改革を求めるならば,財務省に対する力になっていくと思っております。我がことの責任だということを文化に携わる者一人ひとりが真剣に考えなくてはいけない。
例えば,教育再生会議で「文化芸術」という言葉が出たのかどうか,以前に中央教育審議会の生涯学習のための懇談会の報告書を見たときに,そこには「文化芸術」という言葉は一切ございませんでした。そういう現実があるということを関係者がきちんととらえて,文化関係であるお隣の方に説いていかない限りは,力になっていかない。第1次基本方針も非常によくできていたと私は思います。それがどれだけ実現されたかといいますと,関係者として非常にじくじたるものがございますけれども,その努力は私たちがすべき。それは,一人ひとりが真剣に取り組まなければ力にはなっていかない,誰かの責任ではないと私は感じております。
○富澤委員
40年近くマスメディアの世界に従事して参った立場で言うと,この審議会の場にカメラの行列ができないということは,この審議会の現在の実力を表わしていると思う。マスメディアというのは,毎日たくさん起こることに優先順位をつけ,ニュース価値の高いものから取り上げていくわけでありまして,それを無理やり引っ張ってくることは出来ない。そういう意味では,文化というものが国民に絶対必要だと,あるいは国家の政策の中で大きな柱になるべきであろうといった意見がもっと高まらないとメディアの関心は集まらないのではないでしょうか。
そういう意味で言うと,最近,政府の各種審議会などの場で,文化ということが頻繁に語られるようになりました。例えば,観光立国の戦略会議などでも,文化というものが観光を振興する上で非常に重要であるという指摘がされていますし,国土交通省の国土開発の基本方針などを語る中では,もっと文化的側面を入れろということを主張する委員もたくさんおります。ましてや地方レベルでいいますと,京都などはもともと日本の都であった期間が1000年以上ですから当然なんですけれども,その周辺の大阪でも,あるいは和歌山県でも文化ということを盛んに言うようになってきている。私は,日本のあちこちで文化力,文化の力というものを認め出したのではないかと実感しています。これは,文化芸術が持つ本来の人間に対する魅力,力というものをみんなが認め始めたからだと思います。もう一つは,文化の魅力に対する期待です。文化が持つ力に多くが大変期待しているということ。その二つが,今日文化の力というものをみんなが語り,認め出した,そういうことになってきたのではないかという意味で,私はもう一息かなと。今一里塚にいて,もうちょっと頑張れば,文化は,近い将来日本の重要な政策の柱の一つになるのではないかと,心ひそかに期待しているわけで,もうちょっと努力が必要だな,いずれ日の目を見るであろう,このように楽観的に見ております。そうしたら当然,文化審議会が会合を開けば,NHKをはじめ,ここにカメラの行列ができてフラッシュがたかれるという時代がいずれ来るであろうと,私は思っております。
○中山委員
第一点は,前回も申し上げましたけれども,文化庁の予算が余りにも少ない。前回は,丸が一つ違うと申し上げたんですけれども,予算は国によって立て方が違うので,正確な比較はできないのですが,経済規模が全然違う韓国の6割というのは,これは余りにも情けないだろうということを改めて申し上げたいと思います。ただ,ドイツとアメリカは,恐らくこれは連邦制をとっている関係ではないかと思うんです。連邦制をとっていると,内政については州の方がむしろ大事で,予算としてはそちらの方が多いのではないかと推測いたします。
第二点は,私は著作権が専門ですので,その話をしたいと思いますけれども,知的財産戦略計画で著作権についていろいろ注文をつけられております。中には,粛々とやっていきますというものもありますけれども,その根本は,19世紀的な枠組みである著作権法をこの21世紀のIT社会にどう適合させるかという話になってくるわけです。これは,実際問題やろうと思うと,条約という網もあれば,あるいはデジタル時代といっても,実際はアナログの昔ながらの作詞家,作曲家,小説家もいっぱいいるわけでして,混在している。制度を動かすと必ず既得権益とのコンフリクトが起きるということで,非常に難しいんですけれども,著作権分科会の方でやっておりますので,ぜひご支援をお願いしたいと思います。
また,著作権の期限延長を今議論しているわけですけれども,これは,単に国際的な調和をすればいいとか,あるいはアメリカより短ければ文化的に劣っている,恥ずかしいという問題ではなく,極めて複雑な要素を含んでおります。現在,それを総ざらいして著作権分科会の方でやっておりますので,ぜひそちらを注目してもらいたいと思っております。
○西委員
ここにはトップレベルの方がお集まりですので,大所高所から非常にレベルの高い文化に関するお話が出て,それもとても大事なんだけれども,全国各地で,文化とか文化財などということは一言も口にしないけれども,毎日こつこつと文化を守っている方たちが頑張っていらっしゃる。ところが,なかなかそういう方には光が当たらないんです。結果としてそれが日本の文化力を支えているとても大事な動きだと思うんだけれども,文化庁はそういう方にもぜひ光が当たるようにお願いしたい。今日はその具体的な例を二つだけお話しさせていただきたいと思います。
一つは,今私は,岐阜県の各務原で農村舞台の修理のお手伝いをしております。これは子ども歌舞伎の舞台で,舞台の方は修理ができ何とかなりそうですが,肝心の子ども歌舞伎が風前の灯火なんです。どうしてかと申しますと,子ども歌舞伎ですから子どもがやるわけで,子どもがいなくなってきて,演ずる人がいなくなって消滅しそうだということが一つあります。これは,子どもの概念をちょっと広げ,高学年まで対象に入れて何とか乗り切ろうとしているんですが,地元の方の熱意はあるけれども,お金がないんです。衣装を借りるにしても,お囃子の方をお願いして連れてくるにもお金がない。私はいろいろ助成金がありますよとお話しするのですが,彼らは農民で,毎日農作業をやりながら,ものすごく難しい書類をいっぱい書けといわれてもとてもできないとおっしゃいます。本当にそうだろうなと思うんです。ところが,そういう方たちが実は文化を支えているわけで,何とかそういうところに光を当て,うまくいく筋道が立てられるといいなと私は痛切に思っているわけです。
同じようなことをもう一つお話しさせていただきますと,瀬戸内海の小豆島へ学生と一緒に通って,やっぱり舞台なんですが,かつてあった池田劇場という劇場を再現しようと,地元の方と取り組んでいるんです。これは昭和46年に壊されたものですが,たまたま高松の大工さんの家の資料を調べていたら,その舞台劇場の設計図が一式出てまいりました。これがとてもすぐれた劇場だったので,今ないことはわかっていたのですが,地元に話を伺いに行きました。地元には,劇場を壊したことが今でも残念でしょうがないという方たちが大勢いらっしゃって,何とかそれを,まずは記憶を集めて再現したいとおっしゃるんです。図面がありますから再現はできるのですが,どうしてそれが簡単にいかないかというと,これも当然ですが,まずお金がない。壊したときも,壊さないように駆けずり回ったのだけれども,やっぱり素人集団ですから,どうにもなりませんでしたとおっしゃるんです。確かに素人集団には光が当たらない。そういう人たちが,誰も評価もしてくれないけれども文化を支えている。それを何とかお手伝いしたいと思って今一生懸命やっているんですが,文化庁はそういうところにもぜひ光を当てていただきたいと思います。
○野村委員
学習院には女子大学と大学の二つがありまして,女子大学の方は国際文化交流,大学院の教育目的がアートマネジメントの人材養成ということになっていまして,さらに大学の方の大学院でこれから身体表象文化学専攻をつくることになっております。そこで教育された人間に働く場がうまくあるのだろうかと前から思っているんですけれども,ぜひともそういうところをやっていただきたいと感じております。
私も著作権の分科会に属しておりますけれども,ちょっと違った視点から一言だけ申し上げたいと思います。最近の議論はどうしても,権利者も利用者もほとんど専門家といいますか,プロの人たちの集団になっていまして,最終的な利用者は国民,消費者が多いわけですけれども,こういった人たちとの間の知識のギャップというのが非常に大きくて,もちろん消費者代表なども審議会にはおりますけれども,なかなかそういうところの調整がうまくいかないということです。最近はだんだん社会が変わってきて,一方では消費者自身が著作者になっているという面もあるんですけれども,法律そのものがなるべくわかりやすくなればということで我々もいろいろ考えておりますけれども,こういった総会の場でいろいろご意見をいただければ大変ありがたいと思っております。著作権というのは,ある意味では文化の活動を支えているインフラの重要な部分ですので,ぜひともいろいろご意見をいただければと思いまして,よろしくお願いします。
○林田委員
国立新美術館は,おかげさまで大分人でにぎわっておりまして,世界的な施設ができ,美術を楽しんでいただける拠点ができたということで喜んでいるところでございます。ただ,日本の国公私立の美術館関係者にとりましては,今,冬の時代を通り越すようなひどい時代だということが定説になっております。国,地方のお金がないということのために,国立の場合は独立行政法人制度で,効率的な運用を求められ,地方は指定管理者制度で,これも運営に苦労なさっていらっしゃる。また,私立の美術館なども,今,公益法人制度の改革が進められておりまして,なかなか厳しい状態にあるわけです。その中で,当館は日本の美術館活動のショーウインドウになるように頑張っているところではございます。一方,世界の美術館・博物館は今,黄金時代だといわれておりまして,ヨーロッパでもアジアでも,美術館の増設や新設が相次いでおります。それは要するに,国民の間からそういうものを求める声が非常に高まっているということと同時に,ある面では経済的な発展のためにも大変重要な役割を果たすという要素があるということだと思うのでございます。そういう意味で,美術館は文化活動の大事な拠点だと思うのでございますけれども,日本の状況が象徴的にあらわれている分野であるのかもしれないという気がいたします。
そういう中で今,博物館法の改正という話が進められております。また,学芸員制度についても見直しの議論が行われ始めております。これは,文化庁と文部科学省の生涯学習政策局とでご協力いただかなければならない分野だと思いますし,ぜひここは連携をもっていただいて,いい制度になるようにお願いしたいと思っております。
それから,文化政策については,先ほどもご説明のありましたアジア・ゲートウェイ構想にしても,知的財産推進計画にしても,また,文化芸術の振興についても,内閣の方針として決められるような段階になっておりますので,大変ありがたい状態になってきているなという感じがいたします。そういうところへうまく文化庁が方向性を示しながら,進めていけるような状況が大分広がってきたように思いますので,なるべくこういう中に基本的な政策がつながっていくようなことを文化庁にはやっていただきたいし,関係の先生方にもぜひその機会にいろいろやっていただけるとありがたいと思います。そういうことがうまくつながっていくといいなと思っております。
ただ,その際に,お金,経済につながる文化ということがどうしても強調されがちでございますので,文化庁がいわなければならないのは,文化本来の重要性であり,これは文化庁が強調していかなければならない大事なところではないかと思っております。
それからもう一つ,文化関係者の力,確かにこれは大きな要素であり,大変大事なことだと思います。文化関係では,市町村の文化財保護の関係の方々,あとは文化財の所有者の方々の団体というのは,政治的にもいろいろ大きな影響力を発揮していただいているようですが,芸術関係の方々の政治的な力ということについては,やはりちょっと経済の分野とは違う関係かなという感じはいたします。そういう中で,ふさわしい形でどうやってそこを反映していただく工夫があるのだろうかということが,大きなポイントのように思っております。
○前田委員
今までのお話を伺いまして,二つのことを申し上げたいと思います。
一つは,経済的な問題ということになってきますと,これは先ほどの人材育成もそうですが,評価がどのようにされるかということです。私は長い間,独立行政法人化が始まって,その審査委員をしておりましたが,文科系の審査も理科系の審査もみんな同じような基準でやるんです。これは既に,理科系の基準の仕方で決まっていて,経済的な効率がどのぐらい上がっているか,それも短期的に,少し長期といっても5年,5年の中を3年で中間,あるいは1年,2年,3年と積み上げて,それぞれで評価される形でないといけない。これはとても文科系のいろいろな分野の実態に合わないと思うんです。だから,文科系のいろいろな実績を上げるための評価というものを別に考えていただくようなことが必要ではないかと思っております。
それからもう一つは,「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の国語のところを見ますと,「片仮名言葉の氾濫等に対応した関係機関の自覚の喚起」と書いてあります。しかし,こういうものが出ていても,ほとんどその力は及んでいないんじゃないか。文章で書かれたものがあっても,それだけではだめだということなんです。国立国語研究所では,難しい外来語を言い換えるといったこともやっておりますが,それは,ごく限られた割にわかりやすい言葉についてです。例えばここで紹介された「アジア・ゲートウェイ構想」や「知的財産推進計画2007」,この中の文章を読んでいただければ思います。私には,外国語,つまり片仮名で書かれた言葉が非常に気になるんです。これは,先ほどの「関係機関の自覚」ということに反映しているのかどうかということが非常に疑問です。
○松岡委員
つい最近,市川團十郎さんがパリのオペラ座で歌舞伎を上演なさって,大好評を博されました。そういうのをテレビのニュースで見ているだけでも,何か誇らしさが湧いてきます。それは見ていた人みんなが同じように感じたのではないかと思います。私自身も,蜷川幸雄さんにシェイクスピアの訳を提供して,その舞台がロンドンに行くとか,また別のカンパニーがルーマニアのシビウで上演されるという経験をしていて,そこで日本の生の舞台に対してお客さんが本当に総立ちになって拍手をしてくださるというと,本当に誇らしさを感じます。日本人だという,ナショナリズムとはまたちょっと別種の喜びが湧いてくる。それを裏返すと,恐らく別の民族の舞台芸術や芸能に接したときに敬意というものが湧いてくる。そういうものが両方連動しているというのが,文化の力じゃないかなということを実感として持っているんですけれども,そういうことを本当に小さいころから培い,大きくなったときに自分自身のよって立つ力にまでもっていくということが,長期的な目で見たときに一番大事なことじゃないかなと思います。
それから,西委員の方から,農村の舞台を復元しようとしたときに,それを発信する力も,お金もないというお話がありましたが,実はそこにこそアートマネジメントの出番があるはずなんです。どのように外へ伝えたらいいか,どうやってお金を持ってきたらいいかわからないというときに,お金を持ってくる方法を,伝える手段を知っている人がそこに入ってつなぐことが,アートマネジメントの出番だし,本来必要とされる分野じゃないかしらと思います。文化庁,そして文化審議会も,そういう状況やさまざまな情報を把握して,そこをつなぐということを一番の基本的なポジションにすることが大事じゃないかなと思います。
今このデータ集を拝見して,日本の全予算の中で0.13%が文化関係の予算というのは,これが多いのか少ないのかというのは,相対的な問題だから一概にはいえないと思うんですけれども,これを他の国の場合と比較するのと同時に,その他の99.87%というのは,重点的にどこの部分が一番多いのかということも実は知りたいところで,そういうデータもちょっと見せていただけたらと思います。
そして,第2次基本方針の策定にかかわった身としては,その実施状況の報告を待つのではなく,少なくとも私自身がかかわる演劇の分野で実際にはどういう状況になっているのかということを自覚的に自分自身で見ていかなければいけないなというのは,これは一つの自戒として思っています。
○山内委員
一つは,骨太の方針で,「日本文化の戦略的発信の推進等を図る」と明記されたわけですが,文化政策部会の設置ということは,この調査審議事項の目的が文化の振興に関する基本的な政策の形成とありますから,恐らく骨太の方針における戦略的な発信の推進というものをどう受けて,どのように展開するのかということについての調査審議が,この文化政策部会で行われると解釈してよろしいのかどうかということを後ほどお答えいただきたい。
そういうことを踏まえて,さらにこの検討内容例は,著しく個別の人材養成に関する問題に中心が置かれておりますが,文化審議会全体が,個別のさまざまな分野やみずからの専門とする領域にとどまらず,それを横断した文化政策,その戦略性をどう高め,どのように発信していくかという点について議論されるのが望ましいのではないかと私は感じたわけです。そういうものがきちんとなされていけば,テレビやマスコミなどの関心もそこに収れんしていくといったことにもなるのかという気もするわけです。
今の文化審議会全体でそういう戦略的な問題を議論するというのは非常に難しいのかもしれませんが,少なくとも文化政策部会では,そうした点に関する問題意識というものを持って,個別のさまざまな分野において重点的に扱わなければならない問題関心を総合するような新しい青写真を少し描いてみる。これはこの審議会内部の検討材料にとどまるか,あるいはそれがもっと熟したものになれば,外に向かって発信するのか,そうしたことは今後の私どもの努力次第かと思います。
いつも私は,国際交流基金と文化庁の,所管や問題関心の重なり,あるいは隔たりが気になる部分があるのですが,文化庁はこの戦略的な発信にかかわる以上,今のグローバリゼーションの時代において,国内あるいは国際といったことに関して,必ずしも厳密にこだわる必要はないのであって,まさに文化庁というものは,もっと大きく対外的な関心を高めるような範囲になってほしいと思ったところです。
例えば,今年の5月,安倍総理は歴代の首相としては珍しく,ドバイ,UAE,クエートという湾岸諸国に出かけられ,そこで,これまでエネルギー・安全保障に偏っていた問題関心を教育,人材育成,さらに文化交流といった点まで高めていこうとされました。これは一つは,オイルマネーを積極的に日本の文化芸術などに環流させるということを戦略として考えていくという問題関心です。これを政府としては重層的関係と表現したわけですが,こうした国々,日本とのかかわりが非常に少なかった国々との交流に,文化庁あるいは文化審議会がどのような戦略的発信をしていくかということなどへも少し関心を払っていただきたい。
人材育成といった問題も,これは誰のため,何のためなのかという問題をもう少し考えてみますと,これは歴史に対する我々現代人の責任であるということは言うまでもありません。しかしながら,現代に生きる日本人として,それは国と,あるいは国を担っている国民に対する責任でもある。それは,一昨年に日本政府が出した文化外交という観念,文化と外交という二つのくくりを一つにまとめた,そうしたものの一翼を担うという自覚につながっていくのではないかと思います。
そういった意味におきまして,この文化交流においても,しばしば避けがたいことなのですが,先進国志向,ヨーロッパやアメリカとの交流に対する発信はあるのだけれども,日本との関係において,エネルギー・安全保障等を通してそれに並び重要である国々との交流という点で,やや欠けている点が多いのではないか。我々も文化の発信として,もう少し広がりを見せていく必要がある。これは,骨太の方針を受けて,文化庁あるいはこの文化審議会の戦略的な発信というものを新たにしていくことへつながる,非常に重要な,しかも安倍総理の中東・湾岸諸国訪問をフォローアップしていくような形で議論していくことで,この文化審議会の活動領域も少し広がりが出てくるのではないかと思うわけであります。
○石澤会長
いろいろご意見をいただきまして,ありがとうございました。
忌憚なく率直に,そして思いのままをご議論いただきました。これをまたぜひ踏まえて,次の審議会あるいは文化政策部会に反映させていただきたいと思います。今,山内委員がおっしゃったように,戦略的な発信をいかにしていくかということに尽きるかと思っております。
それでは,本日の審議会はここまでとさせていただきたいと思います。
今後の日程については,別途事務局よりご案内がありますので,よろしくお願いいたします。
これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
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