第7期文化審議会第3回総会(第45回)議事録

1  日時
平成20年2月1日(金) 14時1分〜15時57分
2  場所
文部科学省 東館 3F1会議室
3  議題
  1. (1) 各分科会等の報告等について
  2. (2) その他
4  出席者
青山委員,石澤委員,市川委員,岡田委員,里中委員,田端委員,田村委員,東倉委員,富澤委員,西原委員,野村委員,林田委員,前田委員,松岡委員,宮田委員,山内委員
(欠席委員)
尾高委員,中山委員,西委員,森委員
(配付資料)
  1. 文化政策部会審議状況について
  2. 国語分科会審議状況について
  3. 著作権分科会審議状況について
  4. 文化財分科会審議状況について
(参考資料)
  1. 平成20年度文化庁予算(案)の概要
  2. 独立行政法人整理合理化計画(文部科学省関係抜粋)

午後2時1分 開会

○石澤会長
それでは,時間でございますので,ただいまから文化審議会(第45回)総会を開催させていただきます。ご多忙中のところご出席いただきまして,大変ありがとうございました。
本日は,池坊文部科学副大臣にご出席いただいておりますので,一言ごあいさつを賜りたいと思います。それでは,よろしくお願いいたします。
○池坊文部科学副大臣
文部科学副大臣の池坊保子でございます。文化審議会45回総会に当たり,一言ごあいさつさせていただきます。
文化審議会は,平成13年の発足以来,委員の皆様方の大変重要なご提言をいただきながら,文化行政を今日まで進めてまいりました。この第7期の文化審議会においても,昨年2月からこれまでの1年間にわたり,各分科会,部会において,石澤会長を初め,委員の皆様方に大変熱心なご審議をいただきました。心よりお礼申し上げたいと思います。
特に,第7期の間に石見銀山が世界歴史遺産に登録されました。文化庁次長とともに,私どもは,昨年,ユネスコ大使を訪ねまして,石見銀山がどれだけ日本が誇り得る歴史を有し,そして貴重な遺産であるかということのご説明をいたしました。大使も心から私どもの話にご理解いただきまして,世界各国の方々に石見銀山のPRに努めてくださったと聞いております。世界歴史遺産への登録はそのおかげではないかと私は思っております。
一人一人に与えられました役割の中で,日本が有しております,すばらしい文化芸術を日本のみならず,世界に発信していくこと,それによって世界の人々が日本のすばらしさを再確認してくれるのではないかという思いを深くいたしました。
言うまでもなく,文化芸術は,人々に,感動,生きる喜びを与え,また,心のきずな,連帯感によって世界平和を導くこともできますし,また,経済的な波及もはかり知れないのではないか思っております。
そういう意味では,皆様方のご審議していただきます文化審議会が果たしている役割は,21世紀,ITの時代と言われる中にあって,本当にさらに重要なものになっていくことだろうと思っております。
本日は,一年間のご議論の成果を,各分科会,部会からご報告いただけることを大変楽しみにいたしております。これまでの皆様方のお力添えに対して心より感謝申し上げますとともに,これからもまたさまざまな文化行政にわたる重要なご提言をいただきますよう,心よりお願い申し上げ,私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
○石澤会長
副大臣,どうもありがとうございました。感謝申し上げます。
本日は,4つの分科会の審議状況についてご報告をいただきます。そして,最後になりますが,事務局から平成20年度予算(案)についてご説明をいただくことになっております。
それでは,早速でございますが,議事に入らせていただきます。
○事務局
〈配付資料について確認〉
○石澤会長
それでは,まず,文化政策部会の審議状況について,宮田文化政策部会長からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○宮田会長代理
宮田でございます。文化審議会の政策部会でございますが,審議の経過報告についてご説明させていただきたいと思います。
第4期文化政策部会においては,「アートマネジメント及び舞台技術に関する人材育成及び活用について」をテーマに議論を進めてまいりました。昨年2月に閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(第二次基本方針)でございますが,「文化芸術活動を支えるためには,文化施設や文化芸術団体の企画・運営及び文化芸術と国民とを結びつける業務を行うアートマネジメント担当者や舞台技術者等の人材育成を図る必要がある」とされています。
これらの人材育成及び活用が欧米先進諸国と比較して大変低い水準に我が国はございます。すぐれた文化芸術があっても,継続的な実施や国内外への発信などは極めて困難な状態となっていることを踏まえまして,平成19年8月の第1回会合以来,2名の有識者からのヒアリングを含め,6回にわたり深い会議をさせていただきました。
今回は,これまでの審議の内容を審議経過報告として取りまとめましたので報告いたします。なお,審議経過報告となっておりますのは,第5期の文化政策部会において取り上げる予定であります芸能実演家等及びメディア芸術に関する人材育成についての審議結果とあわせて最終的な報告となっているためでございます。
この報告書では,最初に,アートマネジメント及び舞台技術に関する人材の育成及び活用方法の基本的な考え方を整理いたしまして,次に,現状と課題について述べた後,具体的な方策を提案いたしております。そして最後には,それらの具体的な方策を実施主体別に分類してあります。
また,文化庁は,昨年10〜11月にアートマネジメント人材の育成と活用の状況について及びアートマネジメント研修の実施状況についての調査をいたしました。本文の後には,この調査の結果を含め,議論の参考として利用したアートマネジメント人材等をめぐる状況に関する各種資料も添付してございますので,ご覧いただきたいと思います。
まず,第1章におきましては,基本的な考え方といたしまして,芸術家が創造活動に専念できるようにするともに,地域全体で文化的なまちづくりを行っていくために,文化のつくり手を受け手とつなぎ役を担うのがアートマネジメントの意義であるとしまして,文化芸術活動を支え,発展させていく上で,アートマネジメント人材の育成及び活用を図るための方策を講じることが急務であると思っております。
それらの人材に求められる資質あるいは能力というものは,公演,展示等の企画制作能力,あるいは公演を実施するための資金の獲得の能力,あるいは会計,法務,それらの関係の知識,また,安全に配慮し,円滑な舞台公演を運営する能力などが挙げられております。
今後は,そういった資質や能力を含めて,実践的能力を持ったアートマネジメント人材及び舞台技術者の計画的・体系的な育成,文化芸術機関におけるそれらの人材の活用,活躍できる環境の整備を推進することが大変重要なことではないかと思っております。
第2章におきましては,アートマネジメント人材等をめぐる現状と課題を整理いたしております。大学や専門学校など,人材育成の場においては,体系的あるいは総合的なカリキュラムの構築や専任教員の配置,実習,インターンシップの効果の向上とともに,人材受け入れ側である文化芸術機関との相互理解交流の推進が課題であると言えます。
現在,アートマネジメント関連の職にある人々の研修につきましては,研修内容の強化,職員にとって研修を受けやすい環境づくりを進めていくことが重要であると考えます。アートマネジメント人材を活用すべき立場にある文化芸術機関におきましては,長期的な視野に立った人材育成,アートマネジメント人材等の処遇の改善,劇場,音楽堂等のマネジメントの向上の促進,大学,現場等との接点の強化が課題となっております。
舞台技術においての顕著な課題といたしましては,ノウハウが劇場やホールで蓄積されておらず,熟練した舞台技術者の技術や経験を受け継ぐ若手人材の不足,新たな機材や技術への的確な対応や技術者のモチベーションの維持・向上などが挙げられます。
また,アートマネジメント人材の需要や研修などの情報が関係者間で十分に共有されていないと,地域の文化行政担当者が短期間で入れかわるというために,ノウハウの蓄積が非常に困難であると。あるいは地域社会のニーズを酌み上げて,魅力のある公演,展示等を実現できるアートマネジメント機構の充実なども課題となっております。
第3章になりますが,これらの人材の育成及び活用に向けた具体的な方策を3つの観点からまとめております。最初は,アートマネジメントの人材等の計画的・体系的な育成を図るために,大学などでの人材養成への支援と現職の研修の充実が必要であると考えられます。また,アートマネジメント人材や舞台技術者を適切に配置し,処遇することなどによって,文化芸術機関におけるアートマネジメント人材等の活用の推進を図る必要があると思います。
さらに,地域文化行政の体制やアートマネジメントに関する情報の整備,積極的な顕彰の実施,地域における文化芸術活動の機会の充実を通してアートマネジメント人材等の活躍ができる環境を整備することが大変必要ではないかというふうに思っております。
最後の章になりますが,第3章で示された具体的な方策を講じていく中で,国・地方公共団体など,それぞれの主体別に期待される役割を整理してございます。国は,アートマネジメント人材等の育成及び活用方策全体の点検を行うとともに,その円滑な定着を目指した政策的な誘導を行うこと。地方公共団体では,地域住民のニーズや行政課題を的確に把握・設定し,各般の取り組みを進めることや,大学等は,体系的・総合的なカリキュラムの構築,実習,そしてインターンシップの内容や機関の充実,専任教員の配置などに取り組むこと,文化施設や文化芸術団体,中間支援組織等では,アートマネジメント専門職員の配置,学生の積極的な採用や実習での受け入れ,職員への研修機会や適正な処遇の提供などを行うこと,あるいは企業などの民間団体では,地域の文化活動への積極的な支援やみずからのノウハウなどを生かした研修や情報提供の実施を進めることがそれぞれ求められております。
アートマネジメントはすぐれた文化芸術を継続的に展開していくことを可能にし,地域全体で文化的なまちづくりを進める,あるいは地域を豊かにするという上では不可欠なものであります。また,我が国が文化芸術立国を目指して,文化芸術活動の安定的かつ継続的な展開を図るためには,文化芸術にかかわるすべての人材が文化と社会をつなぐアートマネジメントの視点を持ってその機能を広く普及することによりまして,国全体の文化力の底上げが可能になると思っております。
本報告書は,今後,パブリックコメントにかけまして,一般の方々からのご意見も伺うことにしております。その後,必要に応じて修正を加えまして,来期の文化政策部会における審議結果とあわせて,最終的な報告にしたいと考えております。
ここまで来るに当たりまして,各委員あるいは専門の方々,そして文化庁の皆様には大変なお力をいただいております。
以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。
それでは,今,宮田先生からご報告ございましたことにつきまして,ご出席の委員の皆様から,ご質問をいただきたいと思います。ご質問のある方,どうぞお願いいたします。いかがでございましょうか。
○市川委員
市川でございます。
アートマネジメントという意味はよくわかりますけども,当初,この審議会では横文字を使わないというような一つの流れがあったんですけども,こういう「アートマネジメント」という横文字を使っていくというのは,やっぱり何か理由があるんでしょうか。
○宮田会長代理
当初,私も片仮名は余り好きではございませんでした。それで,先生方にもお諮りをいたしました。それから,いろいろな過去の例等も参考にしました。江戸のころに,「悉皆屋」という言葉がございました。いろいろ回っていくことによって最後に物が成立するというつなぎの人ですね。ただ,その言葉は,とても的を射ているような人と,織物とか繊維関係のことのみにしか使われておりませんでしたので,今回は使いませんでした。なかなか新しい言葉,造語をつくるところまでいかない途中に,やらなければならないことがいっぱいあったものですから,この件に関してはそのまま片仮名で進めさせていただきました。何か先生のほうで,適切な言葉が歌舞伎の言葉の中にあったら,そういうことも今後の参考にさせていただきたいと思います。
○市川委員
今のところはそういうアイデアはありませんけれども,そう思いました。
あともう一つ,やはりアートマネジメントという言葉の中で,私ども古典,歌舞伎に限らず,文楽等の世界では,先端的な考え方で,やはり伝統というんですか,維持していくものへの感覚が全体的に乏しいようなニュアンスがちょっと感じ取れます。やはり古典という永続したものの人材確保と新しい創造の人材確保というのは,おのずと随分違います。その辺が全部一緒くたになっているのがちょっと残念かなと。
私どもの感覚では,かなり創造性の新しいところでやっていこうという人たちと,それから古いものを持続していこうという人たちでは,同じ芸能でも随分違うわけなので,もう少しその辺を伝統ということを強調したらよろしいのではないのかなと思います。
海外に行くと,いろいろな日本への見方があります。今,日本というのは,古い文化をちゃんと持ちながら,新しい最先端のものやっている不思議な国だと,その辺のバランスはどうなっているんだというところで興味を持たれているという部分があると私は感じております。
当事者にしてみると,随分,日本文化は追いやられているなという思いはあるんですけども,日本というものを文化的にもう少し示そうとするならば,日本の古いものは日本人がしっかり守っているよ,そのかわり新しいものもすごいよと。この両方を日本はうまくやっているよということが日本文化の大事なところだと思っております。やはり古い伝統と新しい創造,または外国文化というような切り口をある程度はっきりさせてから,それでマネジメントをどうしていくのかという論点があってもよいのではないかと感じました。
以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。
○岡田委員
ここにアートマネジャーに対して難易度の高い資格試験を導入したらどうかという意見が出ているという記述があります。非常に結構なことだと思いますが,大学で4年間勉強し,大学院まで行って勉強し,そして就職するといったら給料がお安くて,高い知識を身につけてもそこに就職したくないという人がたくさん出てくることが懸念されます。
そして,ここには適切な処遇などもきちんと考えたほうがいいとは書いてありますが,ちょっとここでお聞きしたいのは,現実に今もアートマネジメント,アートマネジャーとして働いていらっしゃる方たちの平均的なお給料などの処遇はどのようなものでしょうか。またどの程度ボランティア的な人たちがいるのかということ,その辺の現実についてちょっとお伺いしたいです。
○宮田会長代理
申しわけございません。メンバーの中にアートマネジャーでご活躍のメンバーはもちろんいらっしゃいましたけれども,お給料のことまでは踏み込みませんでした。
ただ,やはり大変多くのボランティアの人たちに支えられている部分も事実でございます。昨日,あるシンポジウムがございました。シンポジウムに参加なさっている方や,お客様の数よりも,裏方でやっている芸術舞台の技術者の人数の方が多いということがございました。
そのような現実もございますので,大変強く痛感したことは,やはりそういう人たちの人権というか,市民権というか,認められた空間の中にいる関係にまだアートマネジャーそのものが日本の中で成り得ていないということです。ある意味での地位,市民権の確保,そういうことがすごく大事ではないかなということをとても感じました。
ですから,今,岡田先生がご心配なさっているような裏づけの問題というのは当然あると思います。それと同時に,もう一つ心配なのは,教育機関で出すことは出しても,受け入れる場所との関係というのはなかなかまだ成熟されていないというのが現実でございます。こういう提案をすることによって,若者が「よし,こちらの道へ進む,より前へ進んでいこう」という大きな第一歩になる,布石になるのではないかという感じがしております。
○石澤会長
ありがとうございました。
○松岡委員
今の岡田委員のおっしゃったこととかかわるんですけれども,アートマネジャーというのが基本的につなぎの役目を果たすということには大賛成というか,全く私もそう考えております。大学なり,しかるべき教育機関で決まったカリキュラムを終えて,実際に現場に出ていくというときの前段階として,就職への道筋にもなると思うのですが,やはり大事なのはインターンシップだと思うんですね。
ですから,大学,教育の場と現場をつなぐ,それは卒業して即就職できればそれにこしたことはないのだけれども,やはり実際に実働できるということも考えると,やはりインターンシップに着目するのが一番大事ではないかと思います。文化庁がこれからできることとというのは,それは私の場合は演劇に携わっていますから劇場ということになりますけれども,それ以外の学芸員を求める美術館とかそういうところに,インターンシップが円滑に実施されるよう,積極的に働きかけることだと思います。一人でも二人でも,学生さんがそこに行って,現場で実際どういうことをやっているかということを知る,見るだけでも随分違うと思うんですね。
具体的に実際にできる一歩というのは,ここで何人かを,ここからインターンをやって,この公演に何人かつけたらどうですかというようなことを最初のステップとして,文化庁から公共の劇場に対して示唆をするということも一つの方法ではないかなと。それがこの人よくやっている,臨時でもあるいは契約の形でも実際に使ってみようというところに,小さな窓が開くのではないかなという気がいたします。
○宮田会長代理
ありがとうございます。
審議の中にでも,今,先生がおっしゃったようなことが議論として出ておりました。特に,現場力ということがすごく大切なのではないかということで,そこから得られるものというのははかり知れない。いわゆる黒板を前にして教育を受けるということとはまた違った意味で大変大切なことであり,また,それによって若者たちが新しい力,芽をつくることができるというような感じがいたしますので,大変重要なことだと思っております。ありがとうございました。
○石澤会長
貴重な意見をありがとうございました。
それでは,次に進めさせていただきます。
それでは,国語分科会の報告をお願いいたします。
各分科会長から報告いただいていますが,これは前田分科会長及び西原副分科会長からご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○前田委員
前田でございますが,私のほうは,国語分科会の漢字小委員会のほうの審議のご報告をさせていただきます。
平成17年3月の文部科学大臣の諮問の中で,「情報化時代に対応する漢字政策の在り方について」という諮問がございまして,前期に引き続いてこの問題を検討しております。
まず, I総合的な漢字政策の在り方ですが,1情報化社会の進展と漢字政策の関連としまして,まず,(1)漢字表が必要であると。情報機器が発達しまして,漢字使用が非常に一般化し,多くの漢字が目に入る機会がふえてまいりました。ここでは,どうしても円滑なコミュニケーションを保っていくために漢字表が必要であるということでございます。
(2)としまして,その情報機器の普及と漢字使用とのかかわりで,現在の情報機器は,読む行為よりも書く行為を支援する役割が大きいと考えられます。この点を踏まえまして,読み手に配慮した書き手になるというふうなことに注意を払っていく必要が求められております。
(3)に,漢字政策が定期的に見直される必要があるのではないかと。現在のように,非常に変化の激しい時代に当たりまして,漢字の使用の仕方,漢字を用いる環境が非常に変わってきていると感じておりますので,前の常用漢字表の改訂から随分日がたってしまって,やや検討のほうがおくれ気味でございましたので,今後は定期的に調べていく必要があるのではないかというふうに考えられます。
2情報化社会における漢字使用の在り方ですが,その(1)は,JIS漢字についての考え方です。この漢字表がどういう形であるべきかというふうなことは,情報機器に登載されている多くの漢字,これを選択しながら使いこなしていくというふうな考え方が重要です。
(2)は,人名用漢字についてどう考えるかと。人名用漢字については,名前の持つ社会的な側面に十分配慮をして,適切に漢字を使用していくという考え方を広く普及していくことが望まれます。
(3)に,固有名詞(人名・地名)についての考え方。固有名詞における漢字使用の基本的な考え方をまとめるためには今後さらに検討が必要です。この問題についてはいろいろ議論がありまして,なかなか一つにまとめていくことに難しさが感じられます。
(4)に,そのような情報機器によって打ち出される漢字表記が,手書きの重要性をかえって目立たせていると。私どもは,基本的な考え方をまとめて,手書きの重要性というものを必要とすることをさらに考えていきたいというふうに思っております。
Ⅱとして最初に申しました漢字表の必要性に応じての新常用漢字表(仮称),これを検討しております。1常用漢字表の性格というものはどういうふうなものであるのかと。(1)に,基本的な性格というものを考えておりますが,これにつきましては,前の常用漢字表で考えられてきたような考え方と共通する部分が多いわけです。
例えば,[1]に,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書きあらわす場合の漢字使用の目安を示すというふうな点は,これは新常用漢字表においても変わらないかというふうに思っております。
[2]としまして,科学,技術,芸術,その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではありません。ただし,専門分野の語であっても,一般の社会生活と密接な関連を持つ語の表記については,この表を参考とすることが望ましいというふうに考えております。これは,例えば病気の名前など,新聞で非常に多く出て,そして一般化するというふうな場合に,その用語がどういう漢字であらわされるかというふうなことは将来に問題を残していくことになるというふうに考えております。
[3]に,固有名詞を対象とするものではない。これは新常用漢字表においても変わらないところでございますが,ただ,固有名詞の中でも,特に公共性の高い都道府県名について用いる漢字は,そのすべてを表に入れるという方向で考えていきたいというふうに思っております。
[4]に,過去の著作や文書における漢字使用を否定するものではないということです。
[5]には,運用に際しては,個々の事情に応じて適切な考慮を加えていくという余地を当然残しておかなければならないというふうに考えております。
(2)としまして,新漢字表における固有名詞の扱い,これはどういうふうな考え方をしていくかというと,これは非常に難しい問題がいろいろあるわけですが,それらを考えた上で,この新常用漢字表に,固有名詞についての考え方を表自体に反映するということはなかなか今の段階では難しいので,これは前文等に記述して,さらに今後の様子を待ちたいというふうに考えております。
また2として新漢字表における字種の選定を行っております。基本的な考え方としましては,漢字使用の頻度数というものを(1)に考えて,これを出現頻度の高い3,000から5,000字程度の漢字集合を最初に特定しまして,それから絞り込んでいろいろな要素を考えながら総合的に考えていきたいというふうに考えております。このあたりのところは,具体的には資料のほうに詳しく書いてありますので,それをご参照いただければと思います。
(2)に,字種の選定に伴ういろいろな問題としまして,その総字数が多くなる場合には,「準常用漢字(仮称)」というものを考えるかというふうなことも前期から課題として問題に提起されておりました。また,新しいものとして「特別漢字(仮称)」,そういったものを設定するかというふうなことも考えております。
そういったような形で,この非常に多くの漢字を必要とするという意見が強い場合には,それらのことにも配慮すると。しかし,なるべく単純明快な漢字表をつくるというふうな意味で言えば,これらは両方を統合した単純明快な漢字表というところにおいては,なるべく字数が少なくて,一つの原則で考えられるような漢字表になることが望ましいわけで,その辺のところが,今,検討しているところでございます。それに伴いまして,あるいは準常用漢字表というものを考えないにしても,例えば「付表」として特別漢字というふうなものを考えていくということもあり得るのではないかと考えております。
(3)としまして,漢字の数がふえるということについてのいろいろ危惧がありますが,当然,学校教育における漢字指導というふうなことを考慮というか配慮しなければなりません。基本的には,常用漢字表での考え方を受けまして,それらのことについては,別に教育上の適切な措置を考えていただくということも考えております。
なお,3今後さらに検討すべき課題として,音訓に関すること,字体に関すること,手書き字形との関係,常用漢字の定義及び新漢字表の名称など,さらに検討すべき課題が多く残されております。
以上,現状について報告させていただきました。
○石澤会長
ありがとうございました。
引き続き,お願いいたします。
○西原委員
続きまして,国語分科会日本語教育小委員会における審議についてご報告いたします。
今の漢字小委員会の別紙がかなり分厚くついておりますが,その後ろに,資料2-3及び資料2-4が後ろのほうにございます。2-4は書かれたものですが,今は2-3に基づいて概要の説明をさせていただきます。
国語分科会の中に,昨年7月25日から日本語教育小委員会というものが設置されました。外国人の定住化傾向,それから社会参加の必要性の高まりを踏まえてこの小委員会を設置し,現在の日本語教育をめぐる諸問題を明らかにすることを目指しております。その間に数回会議を行いまして,関係者へのヒアリングと審議を重ねました。それがⅠ,Ⅱ,Ⅲとしてまとめられております。
まず第1は,これは現状の認識でございまして,1,2,3のところにありますように,外国人の数がふえ,そして,その多様化,いろいろなところから人が来て,そして定住化が,長期滞在が進んでいるということが一つ,それから社会参加と申しますか,企業へ労働力として参入するとか,そういうような社会参加の形態もいろいろになってまいりましたので,多様な背景を持つ住民の間の相互尊重,また,協働参画意識,つまり日本人も外国から来た人も,ともに日本の社会に参加するということ,そのための共通語としての日本語を普及しなければならない,そして日本語の学習が促進されなければならないという認識でございます。
3番目といたしまして,日本語を母語としないそれらの人々が健康かつ安全に生活するために必要な日本語教育,その日本語の教育の内容を検討する。そして,学習の機会をどのように提供するかということが整備されなければならないという認識でございます。
Ⅱは,これまでの文化庁における日本語教育施策の概要でございます。以前の国語審議会のときからも国際化の発展に伴っていろいろな施策がされなければならないという提言がありましたし,それに基づきまして,文化庁は日本語ボランティアですとか,それから隔週の日本語教育の教室ですとか,さまざまな形で日本語学習支援を行ってきました。その結果,これらの事業の実施を通じて,地域における行政とボランティアの連携協力の問題,それから日本語教育の先ほどアートマネジャーの話がありましたけれども,同じように,コーディネーターとここでは呼んでおりますが,そういう職種が生まれなければならない,そこが養成されなければならないといった認識,それから日本語学習の動機づけ,または,日本語学習をやろうという気にさせるということでございますが,そのためのカリキュラム等も新たな課題として持ち上がってきております。
そして,Ⅲが今後検討すべき課題でございます。アラビア数字では,内容の改善が1,それから体制の整備が2,そして関連協力の推進が3になっております。
内容の改善ですけれども,(1)と(2)がございまして,1つは,日本語教育の専門性と内容の明確化。基礎的な調査研究に基づいて,生活者としての外国人を対象とした日本語教育の具体的な内容について。これはカリキュラムですとかその他のことでございますが,そういうものについて検討する必要がありますと同時に,コーディネーターと先ほども申しましたけれども,新しい専門職が養成されなければならないであろうというのが(2)でございます。  体制の整備としましては,政策的位置づけが(1)に掲げられております。日本語教育の政策的な位置づけを明確にし,国と地域それぞれの責任において取り組むべき日本語教育の課題と実施主体を明確にするということでございます。その上で,各地域の日本語教育の基本的な枠組みを示すことが求められるということでございます。
(2)では,(1)の枠組みが実効性を有したものになるように,日本語教育の拠点を形成し,関係者・関係機関が果たすべき役割を明確にすることが必要であります。
そして,3は,そういうことを行うためには,関係者・関係機関の連携協力を推進する必要があります。その際,外国人の社会生活に必要なさまざまな分野に関する知識をあわせて習得できるよう,従来考えられてきた日本語教育という狭い範囲ではなく,それ以外の分野の専門家との連携協力も不可欠という認識でおります。
報告書は以上のようになっております。
○石澤会長
前田先生,西原先生,ありがとうございました。
なかなか大変な問題を抱えているわけでございますが,何かご出席の委員の先生方からご質問等ございましたらお願いいたします。
○富澤委員
情報化社会が急速に進んでいるわけでありまして,そういう中で,情報機器を通じて我々も大変便利な生活を享受していますが,そういう中で,漢字というアジア特有の文化というものを,今,改めて見直すということは大変タイムリーだし,時宜を得た重要なことだという認識を私も共有しております。
したがって,定期的にこの情報化社会というのは,どんどん我々の想像を超えて広がっていくし,また,定着していきますから,定期的な見直しをするということは非常に重要なことだと思います。この中で,最後に手書きをすることの重要性というご指摘をされております。手書きをしないとなかなか正確な文字を覚えないというようなことは私も感じますが,今,現実に,日常生活の中で手書きをすることがどのぐらいあるだろうかと考えてみると,筆を使って文字を書く,これはある意味では,芸術としての文字というんですか,そういうこともありますし,それから,自分の名前をサインするときは必ず手書きでするわけですし,あるいはメモをとったりすることも手書きをいたしますが,非常にそういう機会が少なくなっていることも事実で,情報機器を使っていますと,自分で書くということはほとんどないんですね。
私も長いこと新聞社におりましたけれども,私の時代は,大体,原稿に鉛筆でその文章を書いては消し,あるいは捨ててということでやっておりましたが,今,新聞社で自分の手書きで原稿を書いている人は皆無だと思います。たまにいても,奇異の目で見られるのが落ちで,ほとんどないわけでありまして,ここで言われておる手書きすることの重要性,あるいは今後の展開というのはどういうことを考えておられるのかご質問したいと思います。
○石澤会長
それでは,前田先生,お願いいたします。
○前田委員
この手書きの問題は,ほかの漢字とのかかわりとか違いとか,そういうことを認識する上で非常に大事なことで,私どもが特に考えておりますのは,学校教育などの場において,やはりどうしても手で書くことをきちんとやっておかないと,漢字の形とかほかとのかかわりとか違いとかということを認識する,勉強する機会がなくなってしまう。
ただ,携帯などで指で押せば字が出てくるというだけですと,そういうふうな一点一画というふうなものをきちんと覚えるという機会がなくなってしまって,それであいまいなまま過ごしてしまうと,やはりぐあいが悪いので,基本的な部分については,そういう手書きする場合とそれから実際に活字などで使われている場合との違いとか,あるいは同一性とかそういったことを意識する機会をつくっていく必要があるということがこの手書きを重視することの一つです。
手書きのことを考えることにはいろいろなことがありますが,速さの問題もありますね。やはりああいう機器を使うほうが早くできるかもしれないと。先ほど申し上げたのは正確さの問題ですが,ある程度以上速く文字が出てきてしまうと,十分な形でその文字についての使い方とか意味とかいろいろなことをやはり覚えるのにも差し支えが出てくるというふうに思っております。やはり手で書いてみるということが頭の働きをもよくしますし,いろいろな意味で大事なことではないかというふうに思っております。
○石澤会長
ありがとうございました。
ほかにございましたら,いかがでしょうか。
○林田委員
日本語教育小委員会のことなんですけれども,昨年の7月からこういう形で取り組みが始まったということは大変いいことだと思って,私もぜひ進めていただきたいと思っております。
ただ,私のこれまでの経験から申しますと,なかなかこの分野,国内における日本語教育について,文化庁としてどうかかわっていくかというのは,なかなか簡単でなかったような感じがいたします。
というのは,実際に一番取り組んでいらっしゃるのは,地方公共団体なりが地域の必要性を痛切に感じて,取り組んでいらっしゃるんだろうと思うんですけれども,なかなか中央省庁レベルになりますと,必ずしもそのようなご苦労が十分把握されていない面があるんじゃないかと思います。多分,文化庁もそういう方々との接点というのは非常に少ないのではないかと思うんですけれども,したがって,ここで一番最後のところに連携協力の推進ということが書いてあります。まさにそのとおりだと思います。したがって,地方,地域で取り組んでいらっしゃる方々の実際のニーズをよく把握していただくと同時に,また,中央省庁においても関係行政機関との間の連携協力というのが,文化庁がイニシアチブを取りながら,連携協力をプッシュしていただくことが大変大事なことだという気がいたしますので,そのような取り組みが今後進むことを期待しております。
○石澤会長
ありがとうございました。
それでは,著作権のほうへ移らせていただきます。
引き続きまして,著作権の野村先生のほうからご報告いただきたいと思います。
○野村委員
それでは,著作権分科会における審議状況についてご報告いたします。
著作権分科会では,昨年3月に,法制問題小委員会,私的録音録画小委員会,過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会,国際小委員会の4つの小委員会を設置しました。
10月には,法制問題小委員会の中間まとめ,それから私的録音録画小委員会の中間整理というものを公表しまして,その後1カ月の間,一般からの意見募集を行いました。それぞれお手元に概要版とともにお配りしておりますので,適宜ごらんいただければと思います。
今期は,一定の方向性を得た検討事項がある一方で,さらに整理が必要な部分が残る検討事項もありましたので,最終的な報告書という形ではなく,審議経過の整理にとどめることとしております。
それでは,各小委員会ごとに審議状況について簡単にご報告したいと思います。
まず,法制問題小委員会ですけれども,今期の法制問題小委員会では,主に海賊版の拡大防止のための措置,権利制限の見直し,検索エンジンの法制上の課題などについて議論を行ってまいりました。
まず,海賊版の拡大防止のための措置につきましては,インターネットオークション等を利用した海賊版の取引の増加などが指摘されておりまして,これに対応するために,「情を知って」行う場合などの要件のもとで海賊版取引のための譲渡告知を権利侵害とみなすことが適当であるというふうにしております。ただし,海賊版取引のための告知かどうかの判別方法などの制度運用上の工夫について,なお検討が必要になるということでございます。
それから,権利制限の見直しにつきましては,薬事,薬ですけれども,薬事,障害者福祉,ネットオークション等の関係について検討してまいりました。ここで言う権利制限というのは,他の権利との調整が必要な場合などに,例外的に著作権者等の許諾なく,複製などの著作物の利用を認めるという仕組みでございます。
薬事法の規定に基づく医療機関等への文献提供に関する権利制限については,国際条約との関係や文献提供の実態についてさらに検討する予定になっております。
それから,障害福祉関係では,視覚障害者のための録音図書の作成を公共図書館が行うことや聴覚障害者のための放送番組等への手話,字幕の挿入を可能とすることなどについて,健常者への流出防止策等に留意しつつ,権利制限を講じる方向でございます。
また,ネットオークション等の関係では,インターネットを利用して美術品等の譲渡を行う際の商品画像の掲載を可能とすることについて,権利者の利益を不当に害さないための条件に留意しつつ検討する予定でございます。
それから,検索エンジンの法制上の課題については,検索エンジンサービスで行われているウエブサイトの収集が複製に該当するなどのおそれがあり,国内に検索エンジンのサーバーを置くことができないとの指摘があります。
これに対して,国内でも安定的に検索エンジンサービスを実施できるよう,著作者の権利との調和等に配慮しながら,権利制限を講ずる方向で検討しております。今後,具体的な立法措置のあり方について議論を進める予定でございます。来期も引き続きその他の課題も含めまして,法制問題小委員会では検討を進めてまいりたいと考えております。
2番目の私的録音録画小委員会でございますが,この私的録音録画小委員会では,著作権法第30条の適用範囲の見直し,補償の必要性,仮に補償の必要性があるとした場合の私的録音録画補償金制度のあり方などについて議論を行ってまいりました。
まず,著作権法第30条の私的使用のための複製の権利制限の適用範囲については,違法録音録画物や違法配信からの私的録音録画,それから適法配信業者から入手した著作物からの私的録音録画などの権利制限の適用範囲から除外する,つまり原則どおり著作権者の許諾を要するものとする方向の意見が大勢でございます。
ただし,違法複製物や違法配信からの録音録画のほうは,一部反対意見があったことや意見募集で,多くの慎重な意見を寄せられたことを踏まえ,意見募集後に改正の必要性や利用者保護のための措置などについて改めて集中的に検討しました。
また,私的録音録画と補償の必要性については,利用者の行う私的録音録画の全体に着目すれば,権利者に経済的不利益があることについては,おおむね共通理解が得られましたが,著作権保護技術と権利者がこうむる経済的不利益との関係については意見の相違がありました。しかし,将来の著作権保護技術の発達や普及を前提とした第30条の段階的縮小と当面補助金制度による対応を検討せざるを得ない分野を示した文化庁の提案について,関係各団体で現在検討が行われておりますので,来期も継続して検討を行いたいというふうに考えております。
さらに,仮に補償の必要があるとした場合の私的録音録画補助金制度のあり方については,例えば補償金制度の対象機器及び記録媒体の範囲等を検討いたしましたが,一定の結論は出ておりませんので,補償の必要性の議論と並行して,再度本格的に検討を行いたいというふうに考えております。
それから,3番目の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会につきましては,主に権利者が不明の場合等の利用円滑化方策,アーカイブ事業の円滑化方策,保護期間の延長の是非などについて議論を行ってまいりました。
第1番目の利用の円滑化方策については,現行の著作者所在不明の場合の裁定制度の改善点や実演家が所在不明の場合の裁定制度の導入の可否について検討を行いました。今後,国際条約との関係を精査しつつ,さらに検討を行う予定でございます。
また,複数の権利者が存在し,一部の者の許諾が得られない場合の利用円滑化方策については,共有著作権に係る規定やいわゆる共同実演の適用範囲について検討を行っております。アーカイブ事業の円滑化方策については,図書館でのアーカイブを題材に保存の方法やデータの提供のあり方について検討を行っております。
最後に,保護期間のあり方ですが,現在,死後50年という期間が定められておりますが,これを欧米並みの死後70年に延長することについてさまざまな観点からの意見が出されております。文化創造サイクルに与える影響,諸外国の保護期間延長の背景等の分析,文化行政,文化財行政で対応すべき部分との区別など,さまざまな要素についてさらに精査を続けたいと考えております。
利用円滑化の具体策や保護期間の延長の是非について,全体を通じて保護と利用のバランスのとれた結論が得られるよう,検討を進めていきたいと考えております。
最後の国際小委員会ですが,放送条約交渉の現状などを踏まえ,今後の国際対応のあり方について議論を行いました。今後の国際対応のあり方については,各国のスタンスが多様化する中で,各国との連携関係の構築や国際的な著作権ルール形成について多様な意見が示されているところでございます。
以上,著作権分科会の各小委員会の検討状況についてご説明申し上げましたけれども,最初に申し上げましたように,議論は一応進んでおりますけれども,一定の結論に達するまでには,まとまるまでには至っていないということでございまして,重要な課題,それからなるべく早く結論を出したいという課題も少なくありませんで,来期も引き続いて検討を進めて,結論の得られたものから適宜報告をまとめていきたいというふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○石澤会長
ありがとうございました。
ただいまご報告いただきました内容につきまして,皆様からご質問なりをいただきたいと思います。
○岡田委員
私も著作権分科会の委員ですけれども,この場をおかりいたしまして,お願いというか,もう一度確認したいことがございます。
私的録音録画補償金制度の問題について,これはもう4年間も議論がされていまして,いまだに一件落着ということになっておりません。その間に新しい機器は,オーディオ機器ですが,どんどん発売されていくわけで権利者が利益をその間ずっと失い続けているというわけです。ですので,今,野村先生もおっしゃってくださいましたが,一日も早い決着というものを期待しております。
そして,ここにも書いてありますが,著作権保護技術との兼ね合いということでございますが,保護技術はどんなに新しい技術が開発されようと,それを破る人が出てきて,イタチごっこというかモグラたたきというか,保護技術は万能ではないということは,どなたもご存じです。ですので,やはりその辺との兼ね合いの中でしっかり検討してもらいたいと思います。保護技術があるから録音録画補償金は要らないのではないかというご意見も多々あるようですが,そこら辺はきちんとそれを念頭に置いて検討していただきたいと思います。一日も早い結論を期待しております。
以上です。
○石澤会長
ありがとうございました。
それでは,ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
それでは,私のほうから,引き続き,文化財分科会の審議状況について,ご説明を申し上げます。
今日,私どもの文化財分科会の委員として,田端先生とそれから林田先生,お2人ご出席いただいておりますので,また補足がありましたらお願いいたします。
実は,資料1をごらんいただきますと,4-1でございます。大体何をやっているかというのはわかりますが,大体毎月1回平均で分科会を開いているということが一つでございます。
それから,資料2につきましては,文化財保護法第153条に基づきまして,調査・審議をいたしました。資料2に載っておりますものをごらんいただきますと,指定・選定156件,登録・記録等618件,現状変更等2,218件となっております。
そうした国宝・重要文化財,また,重要文化的景観の選定などが含まれておりまして,これが156件,登録・記録等が618件,そしてその他,許可等が2,218件でございます。
資料3をご説明をいたしたいと思います。
1つは,文化財なるものを総合的に把握するための方策,関連する文化財とその周辺の環境を一体的にとらえて,ばらばらにするのではなくて,三者を一体的にとらえて,そして具体的には,市町村において文化財を周辺環境も含めた総合的な保存・活用というものの方策を決めていただく歴史文化基本構想でございます。これを策定して,有形も無形も関連文化財群として位置づけていく,こういうことでございます。そして,そうした文化的な空間をつくり出して,そうしたものを私どもは歴史文化保存活用区域というものを設定してみてはどうかという提言をいたしております。
それから,そうした実際上の総合的な把握と同時に,社会全体として文化財をどういうふうに受け継いでいくか,持続していくかと,いうことでございますけれども,これは情報発信とかその他民間団体が行っております環境を整備するためのいろいろなNPO法人,パートナーシップを中心にしながらやっているということでございます。
本報告書,この4-3による報告書は,こうした提言を踏まえて,文化庁において,歴史文化基本構想を推進するモデル事業の実施,それから国土交通省,農林水産省との共同で文化財を核としたまちづくりを推進する,こういう新たな取り組みもいたしております。
それから,その次でございますが,世界文化遺産特別委員会において,地方から提案のありました世界遺産暫定一覧表記候補というものを前期,第6期において継続審議で出しましたもの19件に加えて,新たに13件が出てきております。
4-4をごらんいただきたいと思います。4-4をごらんいただきまして,さまざまな時代の文化遺産,あるいは時代を越えてきた文化遺産,また,コンセプト等も非常に多岐にわたるいろいろなものが含まれてくる,そういう意味で4つのワーキンググループを設けまして,来期,第8期でございますけれども,引き続き調査・検討を行うと,こういうことでございます。
それから,最後になりましたけれども,4-5をごらんいただきますと,これはフランス政府から提案のありました「ル・コルビュジエの建築と都市計画」を世界各国でこれを共有していこうと,こういうことでございます。特別委員会において,構成資産の一つでありますものの中に日本の国立西洋美術館本館がございます。これは重要文化財への指定を初めとして,課題に関して,いろいろ調査・審議を行いました。文化財分科会といたしましても,フランスと共同推薦を行うという方向で了承いたしました。
これを踏まえて,文化庁において,昨年9月14日でございますが,世界遺産暫定一覧表に掲載しており,そして今年の1月7日,フランス政府に対して,私どもの推薦書をお送りしたという報告を私は受けております。なお,フランス政府が各国のいろいろなものを取りまとめるわけでございます。それを取りまとめて,これが提出期限である現地時間の2月1日中に提出する予定と聞いております。
ところが,最初は7カ国,23資産でございましたけど,これが推薦される予定でございましたが,現時点ではインドが参加を見合わせるという意向でございますので,本日中に調整がなければ6カ国,22遺産と,こういう見込みでございます。こうしたことで,新しい「ル・コルビュジエの建築と都市計画」,これが世界遺産に推薦されると,こういうことでございます。
それから,特に,今期の特徴的なことといたしましては,実は,無形文化遺産保護条約が発行したことを踏まえまして,文化財分科会といたしましては,新たに無形文化遺産保護条約に関する特別委員会を設置いたしました。これは4-6でごらんいただきますが,この審査,この特別委員会,特に条約第16条1項に定める人類の無形文化遺産の代表的な一覧表,これに記載されることが適当であると思われる我が国の日本無形文化遺産提案候補について今後対応を考えていき,また,調査審議を行っていくと,こういうことでございます。
この条約においては,各国に要請されている無形の文化遺産の目録作成ですか,どういうものがあるかという目録の作成については,重要無形文化財,重要無形民俗文化財,それから選定保存技術,この3つを一覧表の目録の中心的なものといたしまして,代表一覧表提案候補はその中から選んでいくと,こういうことになるかと思います。こういう方向で分科会において了承しております。これは引き続き調査・審査が行われると,こういうことでございます。
大体,今申し上げたように,文化財におきまして審議状況でございますが,ある意味では,審議会の権限に属した事項ではありませんけれども,事務局から報告の一つとして,多くの人たちが,多くの地方から注目する中で,特に,高松塚の壁画の恒久対策保存につきましては,石室を取り出しまして,無事完了いたしました。今後は,古墳近くに建設された修理施設において,壁画の修復あるいは修理作業を進めるということで報告がありました。これもご紹介させていただきます。
以上,文化財分科会における審議状況の報告でございます。お2人の委員の先生,何かつけ加えることがありましたら,どうぞお願いいたします。
何か質問がありましたら,どうぞ何なりとお聞きいただきたいと思いますが。
○山内委員
ル・コルビュジエについてですけれども,インドが推薦からおりたというあたりの事情と背景について,もしおわかりであれば教えていただきたいのです。
○石澤会長
それでは,専門の部長からお願いいたします。いろいろあるようでございますが。
○大西文化財部長
失礼いたします。
詳細なところはまだはっきりしていないのですけれども,直前に推薦いたしました各国が,その後,管理計画をつくったりして,まとまった形で管理システムを協力した提案国同士で関係国でつくっていくというシステムをつくっていく必要があるわけですが,そういったシステムをつくっていくことについて,フランスを中心に事前に調整をしていたわけですけれども,インドが必ずしもそういったシステムをつくることについて合意を直前までしなかったということです。しかもそれがある程度進むので,ある程度の合意は得られる感触であったというふうにフランスのほうから聞いていましたが,急に1月になって,その辺について向こうからは返事がないまま,当日,調印式の予定のときに代表があらわれなかったとのことです。このことからインドの合意が得られなかったとみなし,フランス政府としては,現地時間で2月1日現在,同意が得られている6カ国で,22資産で推薦したいというふうに聞いております。
ちなみに,インドでの国の資産として予定しておりましたチャンディガールという都市計画につきましては,フランス国内にそれに該当する構成資産と同様の性格のものがありますので,当初よりは少し資産構成が減ることになりますけれども,ル・コルビュジエの建築思想全体をあらわすのに,完全性とかその資産について,それについては一定の理解が得られるのではないかという判断であるというふうに思われます。
○石澤会長
ありがとうございました。
結局のところ,ル・コルビュジエのほうは6カ国,22資産ということで,23が22に今のところ,そういう説明がございましたとおりでございます。
ほかに何かございましたらお願いいたします。よろしゅうございますか。
それでは,内容につきましていろいろご意見をいただいておりましたが,引き続き,平成20年度の文化庁予算について,事務局から簡潔にご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小松政策課長
〈平成20年度文化庁予算について説明〉
○石澤会長
ありがとうございました。
今,詳しく20年度の文化庁予算の概要について説明がございました。何かご質問等ございましたら,あるいは,今日の文化審議会の全般についてでも結構でございます。何かご質問ございましたらお願いします。
はい,お願いいたします。
○市川委員
ただいまの法人の5年後に文化振興会などの公益法人の見直し,それから民間の,要するに文化系統の作曲家とかいろいろ実演者とか,それぞれの協会も全部見直しを迫られているわけです。5年後に公益法人にするか,中間の法人にするか,一般法人にするかということ。見直しは,文化庁が直接はタッチなさらない機関で決定されるというふうに伺っております。公益法人になるか一般法人,一般法人になると,収入の30%を税金で取られるというような方向になるというように承っております。そうなると,先ほどの予算でとうとうと述べられていたそれぞれの事業でもって支えている民間の協会,団体のうち,立ち行かないものが出てくる可能性があるのではないかと思います。税法上は公益法人が大変有利ということですけれども,なかなか認めるということが難しいことになるのでしょうか。
民間の法人格が変わるということは,団体によっては生死問題だと思うんですけども,その辺は文化庁としてどういう対処をお考えなのか,ちょっとお伺いしたいのですが。
○石澤会長
お願いいたします。
○小松政策課長
公益法人の見直しに関しましては,今,市川先生がおっしゃいましたように見直すということで,これまでの所管省庁制をすべて廃止して,統一的に内閣府のもとで所管するということで,今年の12月から新しい制度のもとで施行されるようになります。
それで,公益認定を受ける法人とそれから一般法人というふうに分かれるわけですけれども,今どういった法人が公益認定を受けることになるかという基準について,公益認定等委員会のほうで検討している最中で,近々内容が公表されて,パブリックコメントもされるやに聞いております。その基準の中で,なるべく今まで公益法人として活動していたところの公益性が認められるように私どもも働きかけております。それから基準を決めても,その基準をどういうふうに適用するかという運用の面がまだ非常に問題になってまいりますので,各法人の実態に合った運用をしていただきたいということを法人の方々とも連絡を密にしながら働きかけていきたいというふうに考えております。
公益認定をされた場合には,今までの特別公益増進法人と同じように,同じような待遇になりまして,非常に寄附金が集めやすくなるということもございますけれども,そういったいろいろ事情,実態を見ながら,次の予算要求にどのように反映していくかも考えていきたいというふうに思っております。
○石澤会長
ありがとうございました。
○市川委員
今も申し上げたように,やっぱり民間の今の協会とか保存会とかが成している役割というのは結構大きいと私は思っています。そこが立ち行かないようなことになってくると,それこそ,アートマネジャーの役割,協会の橋渡しなど,そういうことにもすべて影響する大変重要なことだと思いますので,ぜひ必要な法人は守っていただく努力をしていただきたいと思います。
○?塩文化庁次長
少し補足しますと,まさにそのとおりでございまして,私ども文化行政だけでなくて,文部科学省は,大体,スポーツにしろ生涯学習にしろすべて法人がさまざまな事業をやることについて行政を支えると,こういう形になっております。特に私ども文化庁につきましては,各課で,今,所管の法人を持っておりますので,その法人が,一般財団になりたいという法人も例外的にないわけではございませんけれども,ほぼ恐らく公益認定法人を目指すと思います。私どもが聞いている限りでは,いわゆる本来の事業の比率が公益事業の比率が5割以上と,こういうのが一つの基準で出されております。そういった目安があれば,各法人一つ一つ個別に,ご相談や指導をして,そのような形になるように,内閣府のほうへ申請をしていただくという形で個別に指導したいと思っております。確かに今後は,所管という考え方はなくなるわけですけれども,私どもの行政を行う際には,法人とは密接に関係しておりますから,所管という形ではないにしても,行政上の関係は非常に深うございます。そうした法人のそれぞれのご希望も踏まえて,私どもも精いっぱい,最大限の努力を行いたいというふうに思っております。
○市川委員
我々もわからないのですが,所管でなくなるわけですよね。そうすると,どのような存在になるのですか。
○?塩文化庁次長
国の公益認定法人,国が認定した一般財団,一般社団と,こういう形になるんです。
○市川委員
そうですか。そうすると,それに文化庁さんはどういうかかわりを持つことになるんでしょうか。
○?塩文化庁次長
これまでのような,設立の許可とか取り消しの権限とか,それから寄附行為の変更とか,事業報告書の提出とか,これからはそういうものは一切なくなります。各法人が自主的にそういうものは管理していただくという形になりまして,さまざまな毎年毎年のやりとりというのはなくなるというふうに考えております。
○市川委員
それはよくわかりますが,やはり個々の性格でそれぞれの特殊なお金の使い方をしなくてはならないとか,そういうことは文化庁の方だったらそれを理解していただいている部分があります。でも,それがなくなるわけですね。
○池坊文部科学副大臣
今,文部科学省の役所のほうの視点から次長がお話しいたしましたから,これは,私,政治家としての立場から申し上げますと,これは政治家も大変に注目している関心事であるわけです。ですから,私どもも何回も打ち合わせ等々をいたしております。
その中で,これまでの,今,次長が申したように,年次報告等々は文部科学省に出さずに多分内閣府に出す,内閣府が所管するわけですから。ですけれども,文部科学省の今までの教育,文化,芸術,科学技術,これらのことに関して,文部科学省が全然関与しないかというと,そういうことはできないわけですね,現実に。民間の人たちがやるといいますが,民間の人たちがすべて網羅してできるわけがありませんので,こういうふうに文部科学省が統括していた問題は,私たちがこれからも,文部科学省が何らかの形で関与できるようにというようなことも私たちの相談の中では申しておりますから,今,市川委員がおっしゃったようなことはいろいろなところで出ているご意見ですので,政治家としてもこれはしっかりとやっていきたいと思っております。
○石澤会長
それでは,どうぞ。
○岡田委員
今の公益法人改革に関連して,これからも引き続き公益の資格を取ったところは,世のため人のために頑張ってほしいという話しぶりですけれども,聞くところによると,まだこれから省令,府令というのが200,300と出てくるということは,非常に縛りがきつくなってくるということで,一方で,公益法人には,世のため人のために頑張ってほしいと言いながら,実は公益法人をやめてほしいのではないかという俗な考え方もできるわけです。なぜそんな俗な考え方をする人がいるかというと,税金が欲しいのではないかという非常に俗っぽい話ですけれども,そういう話があります。我々の日本音楽著作権協会も,今どういう方向でいこうかというところを熱心に議論しているところですが,縛りが多いということはどういうことなんでしょうか。公益法人として自由にどんどんやってください,そして世のため人のためになってくださいというのだったら話はわかるります。しかし,縛りを多くしてどんどんやってくださいというのは,手かせ,足かせ縛られて,自由じゃなくなって,非常に活動もしにくくなると思うんですけれども,文部科学省の管轄じゃなくなっても,今度は内閣府のほうの上をちらちら見ながら,気にしながらやっていかなければいけないということになると思うのですが,その辺はいかがでしょうか。
○池坊文部科学副大臣
今まで公益法人は,基本的に原則として非課税であったわけです。でも,財務省は税収をふやそうという魂胆があるのか,基本的に公益法人を今度は課税にして,ある部分の公益事業に関してのみ,非課税にしたいということです。
ですけれども,縛りというのは今も現実にはあるわけですから,それによって根本的に変わるということはないように私たちは注視していきたいと思います。私どもも,政治家として,長い間いろいろ意見交換をしながら今日まで来ましたので,しっかりと皆様方のお声を聞いていきたいというふうに思っています。
○岡田委員
よろしくお願いいたします。
○石澤会長
どうぞ。
○山内委員
別件ですけれども,国立国語研究所の大学共同利用機関法人への移管について,少しお尋ねします。
去年の閣議決定の直前に,一部の報道で,国立国語研の廃止の話が出ました。その廃止という表現に非常に驚きました。国立国語研は,ある意味で,一国の象徴的な存在でありまして,国語政策というのは非常に重要な国の形を定めるところなんですね。今日も常用漢字の問題で非常に貴重なご報告がございましたけれども。移管ということですから,残るわけですが,お尋ねしたいのは,大学共同利用機関法人という大きな傘,アンブレラの下にぶら下がる形だということですか。
それから,2つ目は,この名称はどうなるのかと。国立という名称,あるいは国語研究所という名称。
それから,3つ目は,大学共同利用機関というようなことになりますと,ほかのこれまでの大学共同利用諸機関との関係で管理システムなどどのようになるのか。これらについて教えてください。
○石澤会長
それでは,お答えください。
○?塩文化庁次長
大学共同利用機関に移管ということが決まりまして,大学利用機関は,今4つの分類に分かれておりますけれども,その中の人間文化研究機構というものがございます。国文学研究資料館,民博,歴博,日文研,国立環境研究所でございますが,その5つの研究所の枠内に入るという方向で,今,学術審議会のほうで検討を始めたということでございます。名称については,国立というものを引き続き継承する方向でお願いもしておりますし,現に民博は国立民俗学博物館という国立という名称を貸した大学共同利用機関がございますので,そういう形になろうと思います。
3点目は,やはり大学共同利用機関に入りますと,大学共同利用機関のルールというのがございまして,長の選考のシステムですとか,評議員会とか運営協議会と今までの独法とは違った形のシステムを置かなければいけませんので,それについては整備を図るということでございます。他の共同利用機関との関係では相互に連携しますけれども,また,大学院教育ということも,大学共同利用機関では行うということになりますので,そういう体制も整えるという,諸般の整備は必要でございますけれども,基本的には,国語研究所のこれまでの業務を引き継いでやっていくということを私どもとしても考えている次第でございます。
○石澤会長
どうぞ,お願いいたします。
○前田委員
ただいまのことに関して,国語分科会のほうでも質問がございました。実は,国語分科会では,敬語の問題にしろ,漢字の問題にしろ国立国語研究所の調査に相当部分を寄っていて,そして実際にこういうふうなことで調査をしてくれないかという依頼をしていたわけです。それで,これは国立国語研究所の文化庁の中でのあり方では,そういうお願いがしやすかったわけで,実際に国立国語研究所の所員のほうも聴講に来ておられて,その中でどういうふうな要望がされるかということを聞いているわけです。
それが今度の場合の大学共同利用機関法人ということになりますと,これは先ほど,全体での制約があるというふうなことが話で出ましたけれども,具体的には,大学等利用機関というのは,これは研究のためということが主になると思うんですね。それで,私どもの国語政策の場合の調査というようなことは,研究のほうのこととともに,それから実際的な問題が多く入ってきますので,必ずしも大学の共同利用機関のやり方に沿うものではないというふうに思います。
実際,これからの国語政策のことを考えます場合に,今までの国立国語研究所にお願いしていたような形がどの程度とれるのか,その辺のところに非常に危惧を持っている委員がおりますので,その辺のところをお考えいただければと思います。
○石澤会長
ありがとうございました。
○?塩文化庁次長
その方向で十分努力いたします。
○石澤会長
ありがとうございます。
そのほか,全般的なことで結構でございますが,今,予算の説明の中の独立行政法人の話が中心でございましたけれども,何かほかにございましょうか。よろしゅうございますか。
それでは,文化審議会,今期は第7期でございますが,私たちちょうど7期,この2月4日をもって終了いたします。ご協力いただきましてありがとうございました。
最後に,青木長官からお言葉をいただきたいと思います。
○青木文化庁長官
石澤会長を初め,委員の皆様,お忙しい中をそれぞれの部会や分科会において,大変熱心にご審議をいただきまして,まことにありがとうございました。
本日のご報告,また,質疑を拝聴しておりましても,文化行政,文化政策にとって,さまざまな新しい問題や課題が出ていることがよくわかります。私どもも,今,大変重要な時期にあるということを深く認識して,鋭意対処してまいりたいと思います。
今後とも,委員の皆様の貴重なご意見,また,ご指導を賜りたいと,心からお願いいたしまして,あいさつにかえさせていただきます。どうもありがとうございました。
○石澤会長
それでは,委員の皆様には,各部会,各分科会でご審議にご尽力いただきまして,本当にまことにありがとうございました。
以上をもちまして,第7期の文化審議会の会議を終わらせていただきます。
ありがとうございました。

午後3時57分 閉会

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