第8期文化審議会第2回総会(第47回)議事録

1  日時
平成21年1月29日(木) 10時1分〜12時12分
2  場所
文部科学省 東館 3F1会議室
3  議題
  1. (1) 各分科会等の報告等について
    • 文化政策部会の審議状況について
    • 国語分科会の審議状況について
    • 著作権分科会の審議状況について
    • 文化財分科会の審議状況について
  2. (2) その他
4  出席者
青山委員,石澤委員,市川委員,岡田委員,里中委員,田端委員,田村委員,東倉委員,富澤委員,中山委員,西原委員,野村委員,林田委員, 林委員,松岡委員,宮田委員,森委員,山内委員
(欠席者)
尾高委員,西委員
(配付資料)
  1. 文化政策部会関係資料
  2. 国語分科会関係資料
  3. 著作権分科会関係資料
  4. 文化財分科会関係資料

午前10時01分 開会

○石澤会長
皆様おはようございます。きょうは朝早くからありがとうございます。
ただいまから文化審議会,第47回総会を開かせていただきます。本日,ご多忙中のところご出席くださいまして,誠にありがとうございました。
本日は,浮島文部科学大臣政務官がご出席ですので,一言ごあいさつをいただきたいと思います。政務官,よろしくお願いいたします。
○浮島文部科学大臣政務官
皆様おはようございます。政務官の浮島とも子でございます。
本日は第47回の総会,本当にご苦労さまでございます。また,第8期の分科会におかれましては,この1年間本当に皆様方に大変なご審議をいただき,心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
今,リーマンショックと言われて,100年に1度の金融危機,経済危機と言われておりますけれども,こういうときこそ私は,文化,芸術の力が必要であると,文化芸術というのは人の心を豊かにするだけではなくて,社会を明るくし,また産業や雇用,また新しい雇用も生み出すという観点から,全力で力を注いでいかなければならないと考えているところでございます。
また,先日,アメリカのオバマ大統領が就任の前のマニフェストに,芸術教育に再投資をしますと発表されておりました。日本の政府の中でもさまざまな審議会がございますけれども,私はこの文化審議会こそが本当に重要な役割を果たしていると今感じているところでございます。
本日はこの1年間のさまざまなご議論をいただけるということでございますけれども,また,最後まで忌憚のないご意見を承ればと思いますので,どうぞ本日はよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○石澤会長
政務官,どうもありがとうございました。大変心温まる,また勇気いただけるお言葉をいただきましてありがとうございました。
それでは,時間の関係もございまして,本日,分科会から審議状況についてご報告いただきます。そして,委員の皆様には,またその報告に基づきましてご意見をいただければ幸いでございます。
それでは,早速ですが,議事に入らせていただきます。
○事務局
<配付資料の確認>
○石澤会長
それでは,これから分科会の報告を,各部会の報告をいただきまして,審議状況についてお願いを申し上げたいと思います。
最初に,文化政策部会の審議状況について,宮田文化政策部会長からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

<文化政策部会からの報告>

○宮田会長代理
それでは,文化政策部会のご報告をさせていただきたいと思います。資料1−1の束をごらんください。
この報告書でございますが,検討の経緯,それから審議経過報告の内容,そして2ページ目から第1章で人材育成及び活用に関する基本的な考え方や,第2章,これは8ページからでございますが,これらの人材育成及び活用に向けた具体的な方策を3つにまとめるというふうにしてあります。そして,17ページには概念図を添付させていただいております。文化政策はこのような流れではということでございます。それで,審議経過報告まとめと,そして最後,今後の対応についてということを15分の中で発表させていただきたいと思っております。
検討の経緯でございます。大変広範囲にわたっておる文化でございますが,今回は絞らせていただきました。先般はアートマネジメントに集中いたしました。今回は「実演芸術家等に関する人材の育成及び活用について」をテーマに審議を進めてきました。
平成19年2月に閣議決定された第2次基本方針において,国が「日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成」ということを掲げております。残念ながら,音楽や舞踊,演劇の分野においての実演家,作曲家,振付家,演出家などの実演芸術家等については,十分な検討が,政策的なものも含めまして行われてはおらないと,これを早急に議論すべきではないかと考えたものでございます。昨年の6月から,11名の有識者の先生方をお呼びし,大変活発なご意見等々,ご提言等いただきました。この件について報告をさせてもらいます。
くれぐれも申し上げますが,検討に当たりましては,他の分野であります能楽,文楽だとか歌舞伎等の伝統芸能に関しては,他の文化財との連携等も考えなければいけませんので,今回は検討の場所からは一応外させていただきました。現代舞踊芸術に絞ってのみでございますが,進めさせてまいりました。
それでは,内容についてご報告させていただきます。
表紙のページの次に,理念,前書きというふうなことを書かせていただきました。「今こそ,日本の文化力を高めていくとき。」というふうに,いわゆる旗印のようなものを掲げさせていただいて,その一言のもとにすべて動いていこうというような感じでございます。音楽や舞踊や演劇等の舞台芸術が多くの人々に精神的な潤いのある上質な生活をもたらしております。しかしながら,同時に創造性にあふれた人材をはぐくみ,世界経済の中で競争力を生み出すことにより,豊かで高品質な国家を実現する原動力となることを指摘していると,こういうことでございます。
他方,残念ながら,日本には豊富な人材がいるにもかかわらず,才能を持つ人が埋もれたり,優秀な人材が海外に流出していくという現状があります。今後,日本に必要なこととしては,国内外からすぐれた才能を引きつけることや,あるいはアジアにおいて舞台芸術のメッカになること,それからもっと大事なことは,日本人が日本人らしさを発見するというふうなことができるような,ひいては国際的な競争力のある才能を育てていく,見出していくと。そして,各地の地域の芸術拠点を強化し,人材を活用していくというふうなことを示していることでございます。
2ページ目にいっていただきますが,第1章,このような理念のもとで人材の育成及び活用に関する基本的な考え方を提示させていただいております。大体,舞台芸術におきましては,演奏家や俳優といった実演家,作曲家,振付家,演出家,いわゆる実演芸術家等の創造活動において成り立っておるわけでございますが,やはりすぐれた実演芸術家の存在ということが大事なことになってきます。
ところが,日本においてはおけいこごとが大変盛んでございます。その大変広いすそ野があるにもかかわらず,そのいわゆる頂点となるべきプロフェッショナルとしての第一線で活躍している人材が非常に限られているというギャップがございます。実演家の受け皿が国内に乏しいということや,あるいやすぐれた実演芸術家等の活躍の場を海外に求めざるを得なかったりというふうなものも見られるということでございますので,ハード面だけができ上がっていることではなくて,今後はソフトの充実ということが大変大事なことではないかということでございます。
残念ながら,日本の才能を適切に伸ばしていく環境が十分ではないということでございますので,なかなかすばらしい卓越したプロフェッショナルが育ちにくいし,国際競争力を持った人間もいまいち出にくいという状況を今後打破しなければいけないというふうなことをここに書かせてもらっております。やはり環境整備,インフラも含めた,そういうことが大事なのではないかというふうに思っております。
8ページのほうにいかしてもらいます。時間の関係もございますので,途中の部分に関しては先生方ごらんになっていただけたらと思っております。第2章,これらの人材の育成及び活用に向けた具体的な方策を3つの観点からまとめてございます。
1つ目の視点としましては,卓越した実演芸術家等の育成を図るための方策でございます。例えば,フェローシップの充実として,国際的なコンクールを目指す才能を有する者を対象としまして,競争に基づいて選抜を行うフェローシップ制度の創設を検討しようということを考えております。これまで文化庁が実施してまいりましたいわゆる在研でございますが,もう少しキャリアアップを図ることも必要なのではないかというふうなことでございます。
あとは,我が国のオペラやバレエ,演劇等の舞台芸術振興の拠点として新国立劇場がございますが,人材育成の中心的な役割を担っております。将来的にはもっともっと開花させていただいて,そういう部分での殿堂となってもらいたいと,かように思っております。
学校教育については,芸術系の大学において,音楽に比べて学ぶ機会が少ない分野でございますので,すなわち舞踊や演劇の分野の人材育成を進めるなど,すぐれた才能を持つ専門人材の育成を進める,推進するという必要がございます。高等教育に関しては,いろいろな議論がございました。私もたまたま教育の現場にいる人間として,非常に深く受けとめており,今後大きく発展させていきたいなというふうに思っております。
2つ目の視点でございますが,実演芸術家等を積極的に活用するための方策でございますが,意欲的な取り組みとして公演の創作から実施まで一体的に支援を行うシステムづくり,これを検討する必要があると思っております。
2つ目として,地域における芸術拠点の形成を促進するための支援を図る。
3つ目として,国内においてすぐれた舞踊家の受け皿となる舞踊団の円滑な運営のための支援と充実を検討する必要があります。
そして,4つ目でございますが,学校教育においては小中学校からキャリアと一定の見識を有した人が指導者になる。それから,日本語教育の一環として演劇教育を重視したり,舞踊の基礎を取り入れるなどの体づくりを行うこと,これも大事なことかなというふうに思っております。
3つ目の視点でございますが,育成及び活用に向けた環境整備の方策でございまして,海外留学をした生徒が継続して教育を受けることができるように。その後帰国してから復学,これはなかなか難しい問題がいっぱいありますが,情報提供などをいろいろと努めていくことにより,文化芸術団体における処遇の改善を図ることが重要であるのではないかということでございます。
それから,なるべく小さいころから文化芸術に興味を持って,能動的に鑑賞し,プロの芸術家に接するなど,文化芸術体験を行う機会を,そういう触れ合いの場をつくるということが,大きな意味での鑑賞者を含めた人々の開拓を図る必要があるのではないかということでございます。すぐれた舞台芸術の全国展開のために,各地における鑑賞の機会ということに対しての支援,これが必要なんではないかということでございます。
先ほどお話ししましたが,17ページには参考として概念図をつけさせていただいております。最初の見開きのところにありました「今こそ,日本の文化力を高めていくとき。」という理念と,そしてこの概念図と,この2枚をもっていろいろなところへ行って説法することにより,訴えが非常に強くなるのではないかと。余り多くしゃべることは,決して人の心には残らないのではないかということがあるので,この概念図もつけさせていただいております。少し概念図,ちょっとまだ盛りだくさんでございますが,ちょっとこれをご説明させてください。
先ほどお話ししましたが,おけいこごとは非常に盛んでございます。こんな国は余り他国には類例を見ません。それをうまく生かすことと同時に,あるいは右横のほうにある,ほかの分野から入ってきてプロフェッショナルになっていくというふうな分野だとか,プロに転向していくためのいろいろな方策だとか,いろいろなことがございますが,この辺のところもごらんになっていただいて,忌憚のないご意見をいただけたらといいと思っております。基本的には,国の文化発展あるいは国際競争力ということですね,そういうものの強化となり,ひいては国力の向上につながって,国が発展していくということを考えております。
審議経過の報告とそのまとめでございますが,実演芸術家等を育成し,積極的に活用することは,芸術家や観客,両方に効果があるだけではなくて,舞台芸術の振興と文化芸術に関する環境の充実を図ることにより,国民の一人一人がゆとりと潤いを実感できる豊かな国民生活を実現するとともに,ひいては産業や経済につながっていくと,付加価値を生み出すということ,そして日本の国力を一層高めることにつながると考えているということでございます。
今後の対応でございます。この報告に関してはパブリックコメントに意見の募集をしております。一般の方々からもご意見をお伺いしようということを考えております。そして,必要に応じて修正をいたしまして,前期に議論いたしましたアートマネジメントの人材育成と活用とあわせて,最後に最終的な報告としてまとめたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。

<文化政策部会報告に基づく議論>

○石澤会長
ありがとうございました。
今ご報告いただきました件につきまして,いろいろご議論をいただきたいというふうに思います。あるいは質問でも結構でございますし,また確認,ここのところはどうかというようなお話でも結構でございます。大変,格調の高いお話から,日本の文化力を高めていくときというところから始まりまして,本当に具体的な音楽,舞踊,演劇等の舞台芸術,そしてもっと創造性にあふれる人材のはぐくみとか,そういうことが高品質な国家を実現する原動力になると,こういうお話でございまして,そういう意味で舞台芸術を担う人材をどういうふうに伸ばしていくか,あるいは環境の問題といい,あるいは海外へ流出といい,そこら辺のところをどういうふうにするかという非常に基本的な問題でございます。何かご意見を,あるいは審議経過についてご質問ございましたらお願いいたします。どうぞ。
はい,お願いいたします。
○市川委員
全部読んでいないので,大変僣越なところがあるかもしれませんけれども,今の人材を育てるということは,やっぱりもう何といっても大事なことだと思います。ただ,現実はどうかというのをちょっと,私,1月に国立劇場に出ておりまして,その内情を見聞きしてびっくりしたことがございます。やはり興行の世界ですから,興行というのは水ものといいまして,もうかるときもあれば損するときもあるものです。しかし,新国立劇場も国立劇場も独立行政法人という形になっておりますが,やはり国家予算の理屈が付いて回るんです。あるとき,国家予算からすれば耳かきみたいな余剰金が出て,それを人材育成に充てようという方針があったところ,予算が余ったのだから返せと持っていっちゃったんですよね。そういうのが現実です。これは我々にしてみれば,時代劇の「お代官様,そんな殺生な」というような雰囲気です。やはり人材をつくるといっても現実は,そうやって人材をつくろうとするお金をぱっとお代官様が持っていっちゃうというのが現実です。やはり人を育てるということは第一義だということはよくわかっておりますけれども,現実の行政ではそういうことは行われていないということが一つございます。
それからもう一つ,人材育成ということにかかわると思いますけれども,こういう文化的な仕事の場合に,かなり専門的なことが必要です。例えば専門用語とか,そういうのがお互いに通じ合わないと仕事が円滑にいきません。ところが,やはりお役所の感覚なんですか,きのうまで表の食堂の財務をやっていた方が裏の制作にかかわるとか,そうすると我々が話をしてもちんぷんかんぷんです。人事異動というのは必要でしょうけれども,やはりこういう世界ではそこに熟達したプロフェッショナルをつくることをぜひ考えていただきたい。そうしなければ,せっかく育ったものがまた次の,歌舞伎が好きな者が次に能楽に行ったと。すると能楽のことを最初から勉強しなくちゃならない。それから能楽から文楽に行ったとか,やはり同じようで違うんです。その辺をよくご検討いただかないと,結局人材が育ちにくいんです。その辺をこれからの人材育成の一つの形として,モデルとして,ある程度長期間置くという,そこに腐敗が起こるとかそんなことがあるんでしょうけれども,文化の予算なんて本当にかわいらしいものだと思いますから,そんなことをできるような環境でもありませんし,ぜひ長期間にわたって同じ部署で勉強させるという,そういう方針をぜひ入れていただきたいなというふうに思います。
○石澤会長
ありがとうございます。おっしゃること,もっともだと思います。人材養成というのは長期にわたるし,やっぱり一定の,余りぶれちゃいけませんよね。そういう意味でのお話,ごもっともだと思いますが,先生のほうから,そういうお話出ましたか。
○宮田会長代理
もちろんその話も出ました。同時に,先ほどもちょっとお話しさせていただきましたが,高等教育の中できちっと連携をとることが大事だということと同時に,今,市川委員の中からお話出ましたけれども,国立劇場,新国立劇場と高等教育,大学との連携のお話とかというものは,相当量の議論の対象になりました。そういうことによって,今の市川委員のお話とはまた並行する部分じゃないかと思いますが,基本的には人材育成ということはきちっとやらなきゃいけないという話だと思いますね。大事なことだと思います。
○石澤会長
ありがとうございました。そうしたことで分科会でもお話が出ていたようでございます。大学とあるいは新国立等々と連携を強めていくということでございますが,それでよろしゅうございますか。何かつけ加えることございましたら。
○市川委員
やはり育成という中で,そういうところもぜひ目を配っていただきたいということでございます。
○宮田会長代理
それから,指定管理者の話も随分話題になりました。それによって,本当にそれが育つのかどうかというふうな議論もその中にございました。それはアートマネジメントのときにも随分出ましたね。そんな感じでございます。
○石澤会長
ありがとうございました。そのほかで何かございましたら,はい,どうぞ,お願いいたします,岡田委員。
○岡田委員
今,市川委員がおっしゃった育成のためのお金,スズメの涙が財務省に持っていかれるというお話でしたが,12ページのところに処遇の改善というところがありまして,さらりと実演芸術家などが安定して創作活動に打ち込めるように金銭的なケアをする必要があると,処遇の改善を図ることが重要であるというふうに書いてありますけれども,これはいつもいつもこういうことは言われるだけで,実際にどこからお金を持ってこようとしているのか,そのための金策をだれがしようとしているのかということがいつも具体的に書かれていないんですけれども,そこら辺のお話はどういうふうに議論なさったのでしょうか,聞かせてください。
○宮田会長代理
これは私が答えても,私が財布を持っているわけではないので,何とも言いようがないところですが,非常に現実的な話ですよね。どうでしょうか,清水さん。
○清水芸術文化課長
文化部の芸術文化課長の清水でございます。
具体的に書いているわけではございませんが,広義には,舞台芸術などに対するさまざまな助成金が舞台の成果の向上につながるとともに,実演芸術家の処遇の改善にもつながっている面もあろうかと思いますので,その予算の確保をしていくことが一つございます。次に,芸術団体と実演芸術家など芸術家の間の契約のあり方等で芸術家の身分が不安定な面もあるという点があります。これは政府,文化庁が直接関わるわけではありませんけれども,芸術家と芸術団体,プロダクションなどとの契約のあり方を,例えば放送・映画などそれぞれの業界で検討していただく際に文化庁も参画するなどの取り組みをしております。これからも公的な面,民間の間での取り組みを促す面,両方で取り組んでいかなければいけないと思っているところでございます。
○石澤会長
ありがとうございました。よろしゅうございますか。どうぞ,続けて。
○岡田委員
単発で,ワンショット,ワンショットでお金がもらえたとしても,それは生活の保障にはならないわけで,継続して芸術をやっていこう,それとか役者をやっていこうというふうな生活の基盤ができてこないわけです。ですので,やはりこれは育てると同時に保護していくと,保護というのはちょっとおかしいですけれども,金銭的にもやはり何年間か面倒を見て,そして伸びる者は伸びてもらう,だめな者はそれで仕方なく切ってしまうというふうな,やはり何かそういう手だてが必要なのではないかと思うんですけれども。
○宮田会長代理
そうですね。その件に関しても本当に議論の対象にはなっておりました。具体的な方策で,いろいろな支援の仕方ってあると思うんです。一つの方法として,先ほど話しましたが,在研の問題だとかということもあるでしょう。あれによって大きく人間の,帰ってきてから非常にいい指導者になっているとかというようなこともありますし,丸抱えでどうなんでしょうか,私もよくわかりませんけれども,人それぞれですので,完璧に支援されているときに本当に人材が育つかどうかということもありますね。難しい問題があって,いろいろな議論が出てきまして,そこでじゃぜひこういうことがあるのでお金を出してくださいといって,そこまででおしまいというところが,この議論の中にあるところが非常に難しいところですね。それは豊富にあるにこしたことはないのでしょうが,そこまでどまりでございましたね,その話に関しては。どなたか,そちらのほうでそういうことでお話で答えられる……。
○石澤会長
どうぞ。
○岡田委員
もちろん無能な人に出す必要はないので,有能な人に対してということが前提です。
○宮田会長代理
当然ですよね。
○石澤会長
政務官,お願いいたします。
○浮島文部科学大臣政務官
今,市川委員と岡田委員から,大変的確なご意見をいただきました。実は私もバレエをやっていたのですが,日本では食べられないので海外に出てしまった一人でございます。やはり,なかなか日本の文化予算は諸外国に比べて少ないのですが,今回もそうでしたけれども,金融危機等になりますと,やはり一番初めに削られてくるのが文化予算でございます。今回も文化庁長官ともいろいろとお話をさせていただいて,今,こういう時期だからこそというので,文化予算も過去最高に計上させていただいております。また,国会で予算審議が行われておりますが,私どもも全力で文化予算をとっていくことにこれからも力を注いでいきたいと思います。それと同時に,日本ではやはり寄附文化というのもしっかりしていかなければいけないなと考えているところでございます。今,優遇措置等々の手続はありますけれども,なかなか大変だ,面倒くさいというところでなかなか進まないところがあります。これも今後,財務省としっかりと話し合っていきながら,優遇措置を拡充し,アメリカ的に寄附文化を広げていくことに力を入れていきたいと思っております。
○宮田会長代理
それはぜひお願いします。文化にかかわらず人材育成すべてにおいて,寄附行為に関してはよろしくお願いしたいと思います。話がそれて恐縮ですが,たまたま私,国大協の理事をしておりますが,やはりネックはそこにございまして,母校に寄附を,と言ったときに,それが非常にネックになっておりまして,もしそれがあったら,今私どももすべての大学が国立から法人化しました。その中で寄附行為ができ上がったときには,もう夢がいっぱいあるものが随分具現化されるという感じがしております。そんなこともあるので,お2人の先生方のお話をも含め,政務官のお話も含め,大変力強いお話をいただいたなと思いますが,ぜひぜひ,まさしくここに書かせてもらいましたが,今こそ日本の文化力を高めていくと,そういうスローガンでもっていきたいというふうに思っております。ありがとうございます。
○石澤会長
ありがとうございました。岡田委員はよろしゅうございますか。
○岡田委員
はい。
○石澤会長
ほかの方でどなたか。はい,どうぞお願いいたします。
○松岡委員
人材育成のまず手がかりというのは,新しい才能を発掘するということだと思うのですけれども,去年まで私は文化庁が主催している創作戯曲のコンクールが審査を通って活字になるときの編集委員をやっておりましたが,その創作戯曲が廃止になってしまいました。それは戯曲だけではなくて音楽の作曲のほうもそうで,その理由を聞きますと,これも又聞きなので正確なところは確かめていただきたいのですけれども,応募がどんどん減ってくると。戯曲のほうはかなり応募の減少ということはないんですけれども。ですから,文化庁が主催でやることはストップするとしても,また別の形で幾つも作曲のコンクールもあるでしょうし,それから戯曲のほうは劇作家協会とかあるいは別の特定の劇場がやるとかという形で,いわば官から民へという流れがこのジャンルの中でも出てきているので,それはとめがたいことかもしれませんが,何か別の方策でやるとか,また再度文化庁主導でそういう新しい才能を発掘するとか,創作戯曲のコンクールでも何でも,どういう形になるかわかりませんけれども,やはりもう少し魅力を持った形で再度また検討していただけたらいいなというふうに個人的には思っているんです。
それから,先ほど市川委員のおっしゃった行政と現場の関係ですけれども,これは何も国とそれから新国立劇場とか国立劇場の関係だけではなくて,県レベル,それから市レベルでも言えることではないかと思います。私は,個人的に埼玉県の芸術劇場にかかわっていますし,それから新潟市の市立の劇場にもちょっとかかわっていますけれども,非常に現場に理解のあるお役所の側の方がやはり何年か経つと人事異動で,例えば水族館に行っておしまいになるとか,あるいは,ほとんど文化には関係のない部署に異動になってしまうとかいうことがございます。ご本人も演劇がとてもお好きで理解もあって,鑑賞力もある方が動いてしまうというのが,この国全体の行政と文化の現場の現在の形ではないかと思います。少なくとも本人の意向を聞いて次の人事を考えるとか,3年たったらまたここに戻ってくるとか,何かそういう流動的なお役所の側の,行政の側の人材の育成もやはり大きな意味での人材育成だと思います。一番今,具体的なアートマネジメントをしている方というのは,専門の勉強をした方以上に,現場とかかわる行政の方というのが多いのではないかと思うので,そのあたりのことも考えていただけると,もっと現場が生き生きと動くのではないかというふうに思っています。
○石澤会長
ありがとうございました。いろいろご意見をいただきました。また,全体を,一応終わりましてから,もう少しジェネラルな意見もいただきたいと思いますので,それでは一応,今お話ございました文化政策部会の報告はこれでよろしゅうございましょうか。
はい,ありがとうございました。

<国語分科会からの報告>

それでは,その次に移らせていただきます。次は国語分科会でございます。林分科会長及び西原副分科会長から御報告いただきたいと思います。
それでは,よろしくお願いいたします。資料2でございます。

○林委員
資料の2−1,2−2を一緒にとじてある厚い冊子を御覧くださいませ。国語分科会からの御報告,2件ございますが,まず,新常用漢字表,これは仮称でございますけれども,これに関する件から御報告を申し上げます。
今期の国語分科会では,平成17年の文部科学大臣の諮問「情報化時代に対応する漢字政策の在り方について」に関して,昨年に引き続く議論をいたしました。最終的にこれから御説明申し上げます新常用漢字表の試案ができましたので,御検討いただきたいというふうに思っております。
なお,今,仮称と申しましたけれども,この漢字表の正式名称については,これからさらに検討していく予定でございます。
お手元の資料1枚目に,基本的な考え方を中心として概要をまとめてございますが,それを1枚繰っていただきますとこれが本表でございます。1枚目が表紙で,2枚目に目次がございます。3枚目から前書きに相当する基本的な考え方を述べた部分が続きまして,下の方にページ数が打ってございますが,(1)から(20)までございます。
次が本体の漢字表でございます。漢字表は表の見方と本表とから成ってございます。表の見方は1枚でございます。表の見方の紙の裏面から本表が始まってございます。本表は全体で175ページまでございますが,最初の部分をちょっと御覧くださいませ。現在の常用漢字表に倣いまして,その形式で新しく加えた文字や音訓を埋め込んでございます。線を引いたところがございます。例えば3つ目の漢字の「挨」には,左側の大きな漢字に線が引かれ,「アイ」という音にも線が引かれ,それから例にも線が引かれております。こういう線を引いたものは新しく加えたものという意味でございます。時間がございませんので,ざっと流して御覧いただければと思います。先ほどちょっと失礼しました,本表は161で終わっておりまして,それに付表がついております。
それから付表の後,Ⅲ参考とございまして,追加字種の候補191字,これについて音訓と例を全部集めたものが載っております。これが175ページまで続いておりまして,最後の3枚,これが割合御覧になりやすいと思いますので,これを御覧いただきたいと思います。176ページに相当いたします。追加及び削除字種の候補漢字一覧ということで,新しく追加したいと考えております191字をそこにずらっと並べております。下から3段目の左から5つ目,「蔑」という字がございます。今までこの字は常用漢字に入っておりませんでしたので,「軽蔑」などという言葉はルビを振るか,常用漢字に従う限りは交ぜ書きをせざるを得ませんでしたけれども,今回これを認めていただければ「軽蔑」は漢字だけで書けるようになる。その上の「氾」という字も同じでございます。
それから,例えばよく使われる代名詞といたしまして,上から2段目の真ん中からちょっと右側,「俺」という字がございます。それから,その列をずっと下に見てきていただきまして,「鶴」という字が出てまいりますが,その「鶴」の斜め上に「誰」という字がございます。非常によく使われるこういう代名詞の類も,今回の調査で追加する字種の中に加えさせていただくということになっております。
それから,日常的な言葉でふだんよく使われる言葉の一つは,下の段から4段目,左から4つ目に「箸」などというのがございますが,それからその上の段の2つほど右を見ていただきますと「丼」という字が出てまいります。その上の段の一番左側には「酎」というふうな字が出てまいります。こういった字も新しく補いたいと考えている漢字の仲間に加えてございます。
一番下を御覧くださいませ。これは現在常用漢字表に入っておりますけれども,調べてみますと余り使われる例がないと申しますか,ずっと常用漢字ができたころに比べて使われる回数が低くなっているというものでございまして,例えば尺貫法の「勺」とか「匁」とか,あるいは「錘」とか「銑」とかいうふうな文字がございます。これらは今回削除したいというふうに考えております。
その裏側を御覧くださいませ。現在の常用漢字表にございます音訓も全体を見直しまして,追加すべきもの,それから削除すべきものを案としてそこに示しました。
例えば,音訓の追加というところの1番は「愛」でございますが,これに「え」という訓を加えてございます。「え」は「愛媛県」という県名を書くためにこういう読み方が必要だというのが理由でございます。
その下,「ゆだねる」「はぐくむ」「こたえる」,1つ飛ばして「かかわる」,基本的な和語につきましては,こういう漢字が使えるようにしたいという考え方でございます。全体で32の追加をさせていただきたいということでございます。
削除の方はより慎重にいたしました。「疲」という字に「つからす」という訓がございますが,これは漱石の小説の中に出てくる言葉でございます。しかし,これは一般的ではございませんので,これは削除候補というふうに考えております。
こういうふうにして字種を追加し,それから音訓も見直しますと,その次の178ページのような書き分けが可能になるということでございます。
例えば一番下を御覧くださいませ。「こたえる」というのは,質問に「こたえる」は「答」という字,これまではこの漢字しか使うことができませんでしたが,今回字種音訓の追加によりまして,期待に「こたえる」というときには「応」という字を使えるようになるという,そういうことでございます。
これで一応全体を御覧いただいたことにいたしまして,最初の表の1枚目の紙にお戻りいただきたいと思います。ここに考え方をまとめてございます。大きくⅠ,Ⅱ,Ⅲとございます。
Ⅰは情報化社会の進展と漢字政策の在り方,これを4項にまとめてございます。常用漢字ができました1981年,昭和56年は,ようやくワープロとかパソコン,そのころはまだマイコンというふうな言い方の方が普通だったかもしれませんが,そういうものが市場に出てきた時期でございます。それから30年足らずで随分世の中が変わりました。使われる漢字にも変化がございましたが,何より大きいのは皆さんがこういう機器をよくお使いになるようになったことでございます。それによって,漢字の多様化傾向が生まれました。書けない漢字は使えなかった時代から,機械を使えば書けない漢字どころか知らなかった漢字も選んで使えるという時期になりました。そういう時期に対応した漢字政策の在り方はどうあるべきかというのが,この4項目に分けて書いてございます。
特に3番目は,機械を使うようになりますと手書きがおろそかになるのではないかという心配がございます。機械は使うようになっても,文字を覚えるにはどうしても手で書くことが必要でございますし,それから文字を覚えた後も,手で書いた文字には個性が現れます。また,味わいもございます。機械が発達すれば発達するほど,やはり手書きの重要性ということを我々は大切にしていかなければいけないということで,そういうことも前書きの部分にしっかりと書き込ませていただきました。
Ⅱでございますが,「新常用漢字表」の性格と書いてございます。これは[5]までございますが,基本的には常用漢字の性格をそのまま引き継いでおります。常用漢字は既に定着をしている,支持を得ているというところから,性格そのものは大きく変えないという姿勢でございます。
ただ,何点か新しく付け加えたところがございます。[2]を御覧くださいませ。基本的な性格として常用漢字が主たる対象としておりますのは,法令とか公用文書,新聞,雑誌,放送等一般の社会生活において用いられる文書及びそれに使われる漢字ということでございまして,科学とか技術,芸術,その他の各種分野とか個々人の表記にまで及ぼうとするものではないというのが,これはもう一貫した考え方でございますけれども,しかし,今申し上げましたように,世の中がいろいろ変化いたしまして,専門用語でも普通に使われる言葉がだんだん増えてまいりますと,それへの対応が必要だということで,専門分野の語であっても一般の社会生活と密接に関係のある語の表記については,この表を参考にしてほしいと,そういうことを付け加えました。
それから,[3]固有名詞というのは大変難しゅうございます。そういうことで,当用漢字もそうでありますが,常用漢字でも固有名詞は別のことといたしておりまして,検討の対象から除外をいたしておりましたが,しかし,固有名詞の中でも県名のように非常に公共性の高いものがございまして,現にどなたも知っているという漢字がございます。そういうものについてはその例外から外して,今回の検討対象に加えることといたしました。その結果として14の県につきまして,県名を表す漢字をつけ加えさせていただいております。
Ⅲは,字種や音訓,それから字体の選定の方法等を書いてございます。これまでに比べまして,非常に大規模な,しかも精密な調査を行うことができるようになりまして,かなり正確な大規模調査に基づく選考ができたというふうに考えております。
基本資料としましたものは,漢字の延べ数で大体5,000万字,参考とした資料を含めますと15万字の漢字を調査いたしまして,基本的には頻度とその使われ方,それをあわせ考えて,こういう字種の選定を行ったということでございます。
それから,実は字体の問題というのは大変難しい問題でございます。というよりは難しくなったというふうに申し上げていいと思います。昔は手で書く字体だけ考えておけば,活字はそれに合わせるということで済んだわけでございますが,情報機器の発達とともに字体の規格化というのが進みまして,JIS漢字みたいなものが生まれ,それが今の情報機器に搭載されております。そういうことで,対象としております法令,公文書,新聞,雑誌,放送等一般の日常生活に用いられる,多くの国民がそれを目にする文字ということで申しますと,圧倒的に活字でございます。しかも,字を目にするのは,多くの場合,読み手としてでございます。法律を作ったり,新聞の記事を書いたりする方はごく一部分でございますので,一般の国民の方のほとんどは読み手として,しかも活字の形で読むということになりますので,ここに示す字体も,現在,最もよく使われている活字の字体を表の中に入れることといたしました。
しかし,実際に機械を使うと出てきてしまう字体を否定するものではございません。それから,手書きの場合と活字の場合を一致させるということはもともと無理でございます。手書きには手書きの習慣がありますので,手書きの習慣によって生まれる字体はそれも尊重し,認めるという姿勢でございまして,これが先ほど最初に申し上げました1ページから20ページまで,基本的な考え方を述べました最後のところ,たっぷりとページをとって字体の問題については少し詳しく触れております。
それから,非常にこういう変化の激しい時代でございますので,常用漢字表ができてから30年足らず,しかしその常用漢字表ができたころ,じゃ今後いつごろこれを見直すのかといったようなことは一切定められておりませんでしたが,こういう時代にあってはやはりこういう見直しや変更も計画性が必要だということで,今後は定期的に調査をし,必要だと感じる時期になりましたらしかるべき見直し,改定を行えるようにということで計画性をという考え方をつけ加えております。
それから,もう一つ大事なのは学校教育でございます。学校教育は文字を習得する過程で非常に重要でございますので,学校教育におきましては別途この考え方に基づいて,適切な措置を講じていただくということをお願いしてございます。
ちょっと長くなりました。以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。西原副分科会長,よろしゅうございますか。どうぞ,お願いいたします。
○西原委員
では,資料の2−3に基づきまして御報告を申し上げます。資料2−3とホッチキス留めされた資料2−4が続けてございますけれども,概要の方が資料2−3でございます。日本語教育小委員会の報告です。
昨年の今,前期の終わりに小委員会としては,今後検討すべき課題について御報告申し上げました。その中に,日本語教育の内容の改善,体制の整備,それから連携協力の推進ということで,それを今期の課題とするというふうに申しました。それに従いましてまとめを作ってございます。
このことは先期の終わりにも申し上げたことでございますけれども,今,日本国内ではじわじわ国際化が進んでおります。これは,外国から日本に来る人の定住化傾向と,それから国際結婚等が進みまして,地域に在住する方々が地域の生活にどっぷりと浸って,お客様としてでなく生活するようになってきていると。そういうことに関連して,日本語をその方々に対してどのように学んでいただくかというのが喫緊の課題になっているわけでございます。
それに関しまして,3つの項目でそこに御報告をしておりますけれども,まず,日本語教育の体制の整備ということで,国,それから都道府県,市町村がそれぞれ担うべき役割をそこに提示しております。
国は,大きく言って指針を作るという仕事と,それからその指針を推進する行政的な人材及び現場にかかわるような人材との仲を取り持つコーディネート機能と下に書いてございますけれども,そういう人材を育てるというようなことに責任を持つ。
それから都道府県は,その国の指針に従いまして,それを域内の実情に応じて実行すべく検討,調整を行う。そして,それを企画,実行できるような人材を育てるということです。
市町村の担うべき役割としましては,その指針及び調整,検討に従って,現場の実情に合わせてそれを実行していくこと,そしてそれにかかわる現場を含める指導者あるいは支援者を育てるということを役割とするとしてございます。
そして,2では,それが円滑に,相互に連携のもとに行われるということが大切だというふうにしております。
そして,続きまして3では,そのことをするためには,コーディネート機能を持つ人材,その間を取り持ち,企画し,そして現場につなげていくというような人材が必要だということが書かれてあります。
そして,Ⅱの方でございますけれども,「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容等についてということで,先ほど申しましたように生活者としての側面を持つというのは,日本人も全く同じでございますけれども,いろいろな滞在形態やいろいろな長さで日本に滞在していらっしゃる日本語を母語としない方々の生活者としての側面ということを切り取って,その方々が生活者としての側面を十全に達成するために必要な日本語を獲得し,社会参加していただくための日本語教育という目標を掲げました。
目的としましては,外国人が日本語で意思疎通を図り生活できるようにすることを目的としております。そして,目標としましては,そこに4つの白い丸に従いまして,このようなことを行うことができるということが日本語教育の目標となっております。これは,先ほど社会生活に十全に参加していただくということを申しましたけれども,そのことの中身を4つに分けて,そこに健康かつ安全に生活を送る,自立した生活を送る,そして社会の一員として生活を送る,文化的な生活を送るということにしてございます。
資料2−4の一番後ろの方を見ていただきますと,11ページに別表がございます。この別表の中には,このような目標を達成するために行う日本語教育が,その場面あるいは状況として含まなければならない生活上の行為というものが分類されて出ております。日本語を言葉として抽象的に学んでいただくということではなく,こういうような生活上の行為を日本語を媒介として達成し,日本人あるいは日本社会に参加できる,そういうコミュニケーション能力を持つということが必要だということで,この目的,目標を具体化しております。
そして,その大枠というものを今年度は注意深くいろいろな資料を参考にして検討し,作成したということになっております。これが今年審議してきたⅡの中身ということになります。そして次に今後の課題,Ⅲでございますが,これは来期への宿題ということになりますけれども,この生活上の行為というのをさらに精査するということが第一でございますが,それを日本語教育のカリキュラムにつなげていくということが必要になります。国は指針を示すということを先ほど国の担うべき役割というふうに考えると申しましたけれども,その役割の中で標準的なカリキュラム,カリキュラムの原型を作っていくということをこの表から起こしていくという仕事が必要だと思われます。
そして,それに従いまして,今度は教材と申しますか,先ほど県はそれぞれの域内の状況に応じてそれを調整する。そして,市町村はそれをさらに具体的に実行するという役割と申しましたけれども,それらの市町村及び都道府県が使えるような大本の教材,これを教材そのものというふうに呼んでいいかどうかは別としまして,そのようなことを来期に試みるということでございます。
それから,教材が作られ,そして教育または支援が行われましたら,それがどのような達成目標によって,どの程度までなし遂げられているかということを評価する必要がございます。そして,ページの一番最後のところに3としまして,日本語能力及び日本語指導力に関する評価ということが掲げてございますけれども,それをどのような形で行ったらよいのか,大きな指針としてそのことも含めて検討するということにしております。
以上が,日本語教育小委員会の今年度の経過でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。今,林先生と西原分科会副会長からお話しいただきましたけれども,何か御質問等ございましたらお願いいたします。
はい,お願いいたします。
○里中委員
全部本当に把握しているわけではないので,失礼があればお許しください。漢字と日本語とそれぞれについて,幾つかずつ質問させていただきたいと思います。
まず,漢字の方ですけれども,確かに余り使われない字を優遇しないことはわかるのですが,例えば「匁」というのが尺貫法ですね。尺貫法にかかわる字が今余り使われないから外すということについてちょっとお伺いしたいと思います。例えば「匁」というと今でも世界基準で真珠の基準になっていますよね。例えばそれがもう平仮名とか,あと音としてしか通用しないということになると,とても寂しい気がいたします。真珠養殖の技術と文化というのは世界に誇るものですし,ただ日本の文化発信力と経済効果を考えますと,正直言いまして,今中国産とかあるいは海外の安価に作れる真珠の方が売れ行きが伸びているということで,このたび宇和島の方でもやっぱり真珠養殖からは,もう商売になりにくいということで,なかなか苦しい状況なんです。そんな中で,例えばダイヤモンドにおけるカラットのように,語源を知っている方は非常に少ないと思うんですけれども,どうしてそれが基準になっているかという,もともとのことは知らなくても,もともとは豆の重さらしいのですが,「匁」というのがせっかく日本人が開発した真珠養殖技術に伴って世界基準になっている言葉なのに,確かに音として通用すればいいのですが,日常生活で使われないからといって単純に省くというよりも,大事にしてきた漢字というのはこんなに画数が少なくて,それほど大して覚えるのに難しくない字なので,わざわざのけなくてもいいのではないかなという,もちろん日常生活では使わないとしましても,なるべくたくさんいろいろな歴史を背負った文字は残しておいた方がいいんじゃないかなと思いましたので,その辺をどういう御議論なさったのかという質問でございます。もう一つ,漢字そのものではないのですが,ルビの問題です。かなり前に「じ」も「ぢ」も同じ「ジ」に聞こえるので,振り仮名としてすべて「じ」で小学校のテストとかそういうのは丸を付けるというのを聞いたことがあって,ちょっと驚いたことがあります。言葉の成り立ちからいいますと,例えば「地面」ですね,それは「地」という字に濁点がついて「地面」の「ぢ」になっているはずなのに,今「じ」でないと変換機器では出てこないんです。いろいろやってみましたが,「ぢ」だと漢字が出てこないんですね。ですから,そういうふうに機械化に伴って発音すれば同じ字を,統一した方が何かと便利なのかもしれませんが,ルビというのは耳から聞くだけではなくて,それが元々どういうものをあらわしているかという,例えば土地の「地」のように,そういう意味もあるので,今後の学校教育における問題はまた次にとおっしゃっていましたが,振り仮名に関する考え方について,今のところ何かそういう議論がなされているのかということをお伺いしたい。すみません,質問が2つになりました。
もう一つ,日本語教育の方で質問させていただきたいのですが,今回,生活者としての外国人に対する日本語教育というのを大変充実して書かれています。かねがね日本人に対する日本語教育,特に義務教育における日本語教育で,日本はどうしても,英語もそうだったんですけれども,読み書きに重点が置かれていて,話し言葉としての日本語ということが軽く見られてきたのではないかなと疑問を持っております。話して相手に伝えるということも大変大切なことなのですが,日本語そのものの発音とか,どんどん鼻濁音も減ってきておりますし,発音の仕方,発生の仕方,これは音楽教育にもつながるのかもしれませんが,どうも最近の子供たち,特に若い子たちは言葉を発するときにのどを使うのではなくて,上あごの奥の方で声を出しているような気がします。それと,非常にあいまいな主語述語の関係で話していると。それはかなりの年齢層に広がってきているという気がいたします。ですから,話し言葉についての日本語教育について,どのような取組がなされているのかという質問をしたいのと,日本語の乱れとよく言われておりますけれども,ら抜き言葉はすっかり定着してしまったようで,聞いていてもいまだに非常になじめなくてつらい思いをしてしまうのですけれども,言葉そのものは生き物ですので,私たち自身も過去1,000年の間に,かなり日本語そのものが変わってきたわけですね,発音も含めまして。それにしても最近の話し言葉の乱れ,発音のあいまいさというのがかなり気になりますので,話し言葉についての日本語教育について質問したいなと思いました。よろしくお願いします。

○石澤会長 ありがとうございました。先生,お願いいたします。

○林委員 よろしゅうございますか。私は漢字とそれから仮名の使い方に関してちょっと申しあげます。
まず最初に,先ほどちょっと時間に追われて言い落としましたが,もしここでこの案を御承認いただけますと,この後3月とそれから秋に2度にわたってパブリックコメントを得て,それに基づいて最終的にこの案を完成させていくというスケジュールでございますが,本日こういう席で伺う御意見というのは,私どもにとっては非常にありがたい貴重な御意見でございます。今,里中委員のおっしゃったことにつきましては,その過程でも十分に検討させていただきたい,そういう見方を検討させていただきたいというふうに思っております。これを前提といたしましてお話を申し上げます。
先ほど漢字の字種や使われる頻度や,それから使われ方を検討して191の追加字種を選んだということを申しました。実は,特に使う漢字の頻度に関しましては,個人や小さな社会で使われている頻度と,国民全体,多くの人たちが使うというレベルで計った頻度にはかなりの差がございます。極端なことを申しますと,自分の名前に使われる漢字はその人にとっては非常に頻度の高い漢字でございます。それから,もうちょっと小さな専門家の集団,そういうところで使われる専門用語を表す漢字というのは,これはそこの集団の人たちにとっては非常に頻度の高い漢字になります。使われる度合いの高い漢字になります。ところが,そういうものはじゃ国民全体として多くの人が,だれでもというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが,多くの方が読まれる,あるいは時には書かれる漢字という点から見ますと,そういう個人や小さな社会のレベルではかった頻度とかなり食い違っているというふうなことがございます。
今,ここは施策といたしまして大勢の人たちが日常生活の中で読む文章,あるいはふだんは読まなくても読まなきゃならない文章,これは法律なんかの文章がそうでございますが,必要に応じて読まなきゃいけない文章,これは余り難しくなると困るということで,特に日常生活の中で多くの方々が目にするような文章については,上限の目安としてこの程度の漢字を,しかもこの程度の読み方で使ってはいかがでしょうかというのがこの常用漢字以来の考え方でございます。
ですから,決して個人のレベルでの文字使用とか,あるいは特別な分野,今おっしゃったような,例えば真珠の目方の単位とか,それからそういう業者あるいはそれに関係するもっと文化的な集団の方々の文字の使い方とか,あるいは学会等専門分野の漢字の使い方とか,そういうものに干渉するものではないということで,十分そういう里中委員のおっしゃったような漢字の使い方,あるいはその基になる考え方は尊重した上で,大勢の方がふだん目にする文章なんかについては,上限の目安としてこの程度にいたしたいと,そういう考え方で作っております。
なおかつ,そういう御意見については,繰り返し検討する必要もございますので,この後また議論の中で,その御意見は尊重してまいりたいというふうに思っております。  それから,「ぢ」と「じ」でございます。これは先ほど機器ができてから30年でこんなに情報化が進んじゃったということを申しました。室町時代の終わりから江戸時代の初めのころ,そのころになると間違う人が出てまいりました。室町時代の中期,それから例えば鎌倉時代の人たちは,ほとんど間違わなかったのです。どうしてかというと発音が違っていたからです。ところが,発音が変わって,したがって発音が同じで書き方が2通りになっちゃったものですから,さあどういう場合はどっちを使うんだろうかということで非常に紛らわしくなってしまいました。
特に,漢字の音読みの場合が非常に難しゅうございます,「じ」「ぢ」に関しましては。これも大勢の方々が使うルールとして決めるときには,専門の人にはわかるけれども,余りそういう専門知識を持っていない方にはわからないというふうなルールを決めるのは適切ではございませんので,できるだけ大勢の方が一応統一して使えるような基準ということで,仮名遣いに関しましては,現代仮名遣いというルールがございます。それによりますと,おっしゃるようなことが出てまいります。例えば,「小ぢんまりとしたおうち」などというときの「小ぢんまり」というのは「じ」か「ぢ」か。「三日月」というのは月が濁るから「づ」だということがわかっても,例えば「小ぢんまり」というのは「じ」か「ぢ」かわからない。しかし,現代仮名遣いを見ますと「小ぢんまり」というのは「ちんまり」に「小」がついたのだから「ぢ」でなければいけないと書いてあるわけです。非常にそういう難しい問題がございますが,これはやはり多くの方々ができるだけわかりやすい書き方として定められているというところがございますので,知識のある方や意識の高い人ほど矛盾を感じるというのが実際ではないかなというふうに思います。
ただし,御指摘はそのとおりだというふうに思いますので,今回,私どもの審議の目的は漢字の表でございますけれども,そういうふうなこともこれに付随する問題として,後に,審議の過程でそういう御指摘があったということが記録に残るようなことも考えてみたいというふうに思っております。
とりあえずこの程度でよろしゅうございますでしょうか。

○石澤会長
ありがとうございました。それでは,日本語教育の話し言葉の方を。
○西原委員
今のを引き継いでコメントさせていただきますが,これは外国の方が日本の仮名遣いを学ぶときの一つ大きな壁でございまして,例えば「お父さん」というときの「おとうさん」と書くわけですけれども,「その通りです」というときは「そのとおり」と書くわけです。同じように伸ばしている音なのに,一つは「う」になって一つは「お」になるのはなぜかとか,今,四つ仮名の問題が出ましたけれども,なぜですかと言われて的確に答えるためには,昔はねと言わないといけないわけですけれども,昔はねのところが現実味を帯びないままに語られて,だからこっちはこうしなければならないのです,もう規則だからそうしなさいと言わざるを得ないというのが現状でございまして,なかなか難しい問題をたくさん含んでいると思います。それはお答えの一部ではございませんけれども。
3つのことを申し上げたいと思います。1つは,今度最新の学習指導要領が発表されておりますけれども,それを段階別に追っていただくと,段階を置いて新しく発表されるごとに国語,日本人の日本語は国語でございますけれども,国語の中に表現というようなものの重要性が増しているということが分かっていただけるかと思います。この審議会は日本人に対する日本語ということは当面の直接の目標にはしてございませんけれども,そういう検討がなされ,指導要領が発表されているということだけ一つお答えしておきたいと思います。
それから,外国人に対しての日本語ということを考えますと,日本人のコミュニケーションがどのような形で行われているのかということは,直接に関係することでございます。先ほど,生活をするためにこのような行為を行うということで,かなり卑近な例が事例には出てまいりますけれども,そのことを次なるステップとしては,どういう言葉を使って,あるいはどういう動作,仕草をもってそのことを行うのかということを書き表していき,そしてそれをモデル会話のようにして使っていかなければならないということになります。
そのときに,やはり先ほど,どうしてということが非常に問題になると申しましたけれども,日本人全体に言い切らないコミュニケーションと申しますか,お互いに情報がお互いの頭の中で共有されているようなところは,言わなくてもよいと考えるというコミュニケーションが主流を占めております。そのことによって,外国から日本語の知識なしにやってきて生活をしているという外国人にとりましては,非常に分かりにくい内容のやりとりということが行われているという認識があると思います。そのことが明示的,非明示的という言葉で言うとしましたら,非常に第三者的に見て非明示的なコミュニケーションを,私たちは,美しいコミュニケーションまたはそうならねばならぬコミュニケーションというふうに考えているところがございます。これは日本人が共通な文化的背景に立つグループのみで構成され,そしてそのこと自体が変わらなければそれでよろしいのですけれども,国際化が内なる国際化として進んできて,文化的背景,言語的背景が異なる人々がこの地,日本の生活で共に生存するということになりますと,非明示的な日本語のコミュニケーション方式というものが,やはり多少明示化されていかないと受容することを十全に行うためには不十分だという認識があるかと思います。
今,御質問の中は世代差とかそういうことに関連して,若者の言葉がだんだん分からなくなってくるという御指摘でございましたけれども,日本人全体として外から日本語のやりとりを見ると,今大人が若者に関して感じているようなことが,外国人には日本人全体について感じられているということではあるかと思います。そうしますと,やはり次なる世代,あるいは次なる30年後ぐらいでしょうか,の日本語ということを考え,そのときの人口構成の予想をしてみますと,今よりはずっと明示的に物事を言う,または受けるというようなコミュニケーションが調整され,発展していかざるを得ないのではないかということがあると思います。コミュニケーション,または文化,言語は変わっていくものでございますけれども,それを若者たちを含めてそういうことを認識し,そしてお互いに世代差,性差,地域差,いろいろなものを超えてコミュニケーションを十全に行っていくためには,どのようなことを言ったり,聞いたり,書いたり,読んだりしなければならないのかということを総合的に考えていく,つまり日本語政策としてそのことを考えていくというのは,もちろん漢字も含めてですけれども,とても大切なことであろうかと思いますけれども。
○石澤会長
ありがとうございました。かなり重要な問題でございますので,詳しく御説明をいただきました。

<著作権分科会からの報告>

それでは,時間の関係もございまして,次の著作権のほうに移らせていただきます。引き続きご報告いただきますが,野村分科会長からお願いいたします。

○野村委員
それではご報告いたしますが,著作権分科会では,急速に進む技術革新や新たなビジネスの登場,グローバリゼーションの進行等に対応するため,4つの小委員会を設置してさまざまな課題について検討を行ってまいりました。この委員会からの報告を分科会という形での場でまとめておりますので,資料3−1に沿ってその内容をご報告したいと思います。
まず,法制問題小委員会におきましては,一昨年の3月以来,[1]デジタルコンテンツ流通促進法制,[2]海賊版の拡大防止のための措置,[3]権利制限の見直しなどについて,議論を行ってまいりました。
まず,[1]「デジタルコンテンツ流通促進法制」については,1ページのとおり,「経済財政改革の基本方針(いわゆる骨太の方針)2007」及び「知的財産推進計画2007」において,関連の法制度等を整備することとされているものであります。この課題につきましては,以下の3つの内容を盛り込むべきものといたしました。
一つ目に,「コンテンツの二次利用に関する課題」として,権利者不明の場合の制度措置,二つ目に,「インターネット等を活用した創作,利用に関する課題」として,検索エンジンなど関連の権利制限規定の見直し,三つ目に,「権利者が安心してインターネットにコンテンツを提供するための環境整備」として,海賊版の頒布防止策などの措置を実施すべきとしております。
[2]「海賊版の拡大防止のための措置」につきましては,2ページのとおり,インターネットオークション等を利用した海賊版の取引の増加に対応するため,海賊版と知りながら行う販売等の申出を権利侵害とみなす旨の規定を設けることが適当としております。
[3]権利制限の見直しについては,障害者関係,検索エンジンの法制上の課題等,多数の課題について検討してまいりました。
まず,「障害者関係」については,3ページのとおり,視覚障害者のための録音図書の作成を公共図書館が行うことや,聴覚障害者のための映像作品への字幕や手話の挿入,発達障害者等のためデジタル録音図書(デイジー)を作成すること等を可能とすることなどについて,障害者の情報アクセス保障の観点から,速やかに措置を講じることが適当とされました。
「検索エンジンの法制上の課題」については,4ページのとおり,検索エンジンサービスで行われているウェブサイトの収集が著作権侵害に該当するおそれがあるなどの指摘があります。これに対して,国内でも安定的に検索エンジンサービスを実施できるよう,著作者の利益に配慮しながら権利制限を講ずることが適当とされました。
それから,2つ目の私的録音録画小委員会につきましては,これは前期に引き続きまして私的録音録画補償金制度の見直し,著作権法第30条の範囲の見直しについて議論を行ってまいりました。
これはページで言いますと10ページ以下でございますが,まず,私的録音録画補償金制度の見直しにつきましては,昨年2月の総会においてご報告したとおり,著作権保護技術と補償金制度の関係の整理などについて事務局案が提出されまして審議を行ってまいりました。今期も引き続き事務局提案を補足,明確化した資料及びこれを踏まえた具体的な制度設計案が文化庁から提出され,関係者間の合意の形成を目指しました。
しかし,関係者間の意見の隔たりが依然として大きいことが明らかになり,補償金制度の見直しについて,一定の方向性を得るということはできませんでした。
なお,この課題の緊急性にかんがみ,著作権分科会の枠組みを離れ,関係者が忌憚のない意見交換ができる場を設け,今後も関係者間の合意形成を目指すということが必要であるという認識で一致しております。
それから,著作権法第30条の範囲の見直しにつきましては,13ページにありますように,違法な録音録画物,違法な配信からの私的録音録画,違法配信業者から入手した著作物からの私的録音録画について検討を行いまして,違法な録音録画物や違法配信からの私的録音録画につきましては,利用者保護に配慮した上で,第30条の適用を除外し,原則どおり権利者の許諾を要するものとする法改正に賛成するという意見が大勢でありました。
一方,適法な配信業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画につきましては,私的録音録画の将来像や補償金制度の見直しに関する合意がないまま先行するということには問題があるということで,今後の動向を踏まえた上で,さらに検討すべき課題というふうに整理されております。
それから,3番目の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会というのは,14ページ以下でございますが,ここでは権利者不明の場合の利用の円滑化,次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化,保護期間のあり方等の課題について議論を行ってまいりました。
過去の著作物等を利用する場合,権利者が所在不明であるなどの理由で許諾が得られない問題につきましては,14ページにまとめてありますように,民間における対応の強化,充実のほか,裁定制度の手続運用改善や,著作隣接権に関する裁定制度の創設など,可能なものから早急に制度的対応を実施することが適当とされました。
それから,2番目のアーカイブの円滑化につきましては,15ページにございますが,国立国会図書館において所蔵資料の損傷等を避けるため,納本後直ちに電子化できるよう法的措置を実施することが適当とされました。
保護期間のあり方については,16ページ,17ページにございますが,延長に肯定的な立場と否定的な立場の双方からの意見があり,結論が得られておりませんが,今後の文化支援施策のあり方等も踏まえて,著作権法制全体としての保護と利用のバランスの調和のとれた結論が得られるように検討を続けるのが適当であるというふうにされております。
最後に,国際小委員会ですが,これは厚いほうの資料には載せてはおりませんけれども,著作権に関する新たな国際ルール形成が極めて困難な状況になっているということを踏まえて,国際的な著作権等の保護と利用促進の観点から,今後,我が国がとるべき国際対応のあり方について議論を行いました。
具体的には,資料3−3にあるとおり,近年の著作権をめぐる国際動向を分析するとともに,今後優先的に検討に着手すべき課題を整理しまして,来期の小委員会では,今期に整理した課題のうち,とりわけ優先的に検討すべきと考えられる課題について検討を進めてまいりたいと考えております。
以上が検討状況でございますが,結論が得られた課題については,文化庁で早期に法改正に向けた作業を進めていただきたいと考えております。
それから,昨年末の知的財産推進戦略本部において提出された,デジタルネット時代における知財制度専門調査会報告書において,権利制限の一般規定,現在は権利制限というのは個別的に規定を置いているわけですけれども,そこに一般規定を置くということを検討するということについて提言がございまして,これは日本版フェアユースというような呼び方がされておりますけれども,来期の分科会ではそれらについても順次検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
簡単でございますが,以上でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。大変分厚い資料が用意されて,それのレジュメが今ご報告いただきました報告書の概要でございます。3つの小委員会がございます。法制度問題小委員会,私的録音録画小委員会,それから過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会ということでございます。今ご報告いただいた中で,何かご質問等ございましたら。非常に今流の問題であり,また難しい問題でもある。また検討中でもあるという,そういうことを前提にしながら,ご審議なりご議論をいただきたいと思いますが,いかがでございましょう。
市川委員。
○市川委員
知的所有権というのは,本当に我々非常に難しい問題でもありますけれども,現実にこういう実演家あるいは演奏家には本当に切実なことなので,ぜひご検討願いたいと思っております。大変,皆さんいろいろご討議してくださっていますけれども,例えば私的録音録画の補償金制度といっても,一時よりもどんどん下がっているのですね。収入というものでは。結局それはいろいろな機種とかそういうものに,余り細かく限定するがゆえに,空洞化している部分があると思います。
それから,やはりどんな安全装置というか,2度コピーできないとか,あるいは複写ができない装置を使っても,もうあっという間にそれを解くソフトが市場に出回るというのが現実だと思うのですけれども,その辺の対処等,とにかくまだ著作権,要するに作曲家とか著書をつくった方の権利のほうはまだ保護がある程度行き届いていますけれども,我々実演家あるいは演奏家,殊に演奏家の方々というのはクラシックにしても,それから邦楽の人たちにしても,結局どんどん下がっているというのが,いろいろご討議くださっても現実には下がっているというのが現実ではないのかなと思うので,ぜひその辺のところをさらにご検討願いたい。
また,映像の映画のほうでも,要するに実演家は隣接権のほうになりますか,そういうところの保護というものがすごく弱いというふうに感じております。私自体は補助金というのも大事だと思うのですけれども,これは本当に難しい,芸術とか芸能をやる場合には補助金というのは難しいものだと思います。やはりハングリー精神があってこそ何か生まれるというところもあるわけです。でも,この著作権というのは,その仕事に対する代償をしっかり渡すという大変大きな役目を持っているというふうに思います。やはり自分のやった仕事のきちんと代償,このシステムを明確にしてもらいたいし,また,今,私も深くは存じ上げないのですけれども,やはりアメリカ的,それから北欧的な著作権の問題の中で,今,日本は日和見主義過ぎると思います。もっと日本の国情に合った自主的な,誇りを持った,勇気を持った態度で取り組んでいただきたいと,一生懸命なさっている方に大変失礼な暴言かもしれないのですけれども,個人的にはそんなことを感じておりますので,その辺はいかがなものでしょうか。
○野村委員
ご意見どうもありがとうございました。著作権者,あるいは実演家の権利の保護ということと,それから他方で利用の促進という相反した要請をどう調整するかというのが常に問題になるところで,非常に難しいわけでございます。かつては権利者と利用者との間のコンセンサスをもとにしてルールをつくっていくということで,かなりスムーズにいっていた面があるのですけれども,それがなかなか難しい状況になっているというところがありまして,それから必ずしも利用者と権利者という2つに分かれるものではなくて,そのほかの人たちの意見というのも取り入れていかなければいけないということで,解決の策を考えるというのが非常に難しい状況になっているということだと思うのです。
他方で,条約に対応するというところもありまして,日本の特有なところをどこまで反映させることができるのかというのも難しい点の一つではないかというふうに思います。
それから,ここから先はちょっと個人的な考えになりますけれども,私的録音録画のように,ある程度現実にどれだけ著作物を利用したかどうかと関係なく負担が決まってくるというようなところでルールができているところに,そういう実際の利用に応じて費用を負担すべきであるというような観点から議論を進めていくと,なかなか議論がまとまらないというところもありまして,かなり重要な課題を次期以降に持ち越しているというのが現状ですけれども,本日伺いましたご意見は分科会でも反映させていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
○石澤会長
ありがとうございます。引き続きどうぞ。
○市川委員
こういう経済になってきますと,例えば新しい機種のブルーレイなども,一応やりますよと言いながらまだ実行されていません。なし崩しになっているのかなという部分も感じるのですけれども,先ほど政務官さんがおっしゃったように,やっぱり初めに文化ありという強い姿勢で,企業も大変でしょうけれども,そういうところに初めに文化があるのだという,そこで人間をつくるのだということを強くおっしゃっていただいて,そういう企業の方々の立場もあるでしょうけれども,やはりある程度強く,勇気を持ってチャレンジしていただきたいなと思いますけれども,いかがでしょうか。
○野村委員
今,ブルーレイのお話が出ましたけれども,これは事務局のほうが状況をご存じだと思うのですけれども。
○?塩文化庁次長
ブルーレイにつきましては,時間がかかっておりまして大変申しわけございません。昨年の6月の大臣合意を踏まえまして,年度内の政令改正を目指して,現在,準備中でございますので,よろしくお願いいたします。
○石澤会長
ありがとうございました。そのほかで何か。はい,どうぞ。
○岡田委員
今,市川委員がおっしゃった著作権の私的録音録画補償金問題に関してですけれども,権利者とメーカーが綱引きをしていて,なかなか議論が前に進まないように感じます。前に進みかけたと思うとまた出発地点に戻ってしまうような状況で,非常に我々権利者は困っております。
それで,やはりメーカーはメーカーとしての経済行為をなさっているのでしょうけれども,メーカーもハードをつくりながら文化の一翼を担っているのだという意識をやっぱりきちっと持っていただきたいし,著作権者が著作権を主張するように,メーカーは自分たちがとった特許については声高に,これは自分たちの特許だ,ちょっとでも侵害されるとすぐ訴訟を起こしたりするわけで,自分たちの利益に対しては敏感だけれども,人のことは知らないというようなことでは,やはり品格がいかがなものかと考えざるを得ないと思います。
著作権者も文化的な行為をしながら,一方では生活者でもあるわけでして,生活者であるということは生きていくためにお金が要るわけでして,前の第2次基本方針の中に,文化と経済は車の両輪だというふうにきちんと書かれております。文化高揚するということは,経済行為もそこでしなければ,また文化の再生産はやっていけないわけです。バッハとかハイドンなど,昔パトロンがいた時代とは違うわけでして,今こういうふうに膠着状態が続いていく間にも,我々の利益は失われていって,そして生活はどんどん苦しくなっていくわけです。日本は文化立国を標榜しようとしているわけですから,国として文化という視点に立った采配をしてほしいし,英断をお願いしたいと思います。公正に国として,一日も早い決着を導き出してほしいというふうに,ぜひ浮島政務官にもお願いしたいと思います。
○石澤会長
ありがとうございました。政務官のほうから何かございますか。
○浮島文部科学大臣政務官
今の岡田委員のお言葉を重く受けさせていただきまして,全力で取り組んでまいりたいと思います。

<文化財分科会からの報告>

○石澤会長
ありがとうございました。それでは,時間の関係がございますので,次へ移らせていただいてよろしゅうございますか。
最後になりましたが,私の担当でございまして,手短に報告させていただきます。
実は,文化財分科会がございまして,資料4でございます。ごらんいただきます。資料4をごらんいただきながら説明を聞いてください。
まず,文化財分科会というのは,きょう私どもの先生方,森先生,それから林田先生,田端先生お越しいただいておりますが,私がまとめてご報告申し上げます。
開催状況,これは1年間で11回やっております。これは資料4−1にございまして,それをごらんいただきますとおわかりいただけるかと思います。
それから,あと審議内容でございますけれども,資料4−2でございますが,答申件数の一覧でございます。これは,文化財保護法によりまして審議会の権限に属していることでございまして,それぞれ国宝,重要文化財に指定することや,重要文化的景観に選定すること等について156件,それから登録有形文化財あるいは記録作成の措置を講ずべき無形文化民俗遺産ですね,これについては672件と,これは大変数が多うございますが,これから消えていってしまうようなものはなるべく早く記録をとってしっかり後世に残そうと,こういうことでございます。それからまた,重要文化財や史跡等の現状変更ですね,これが実は指定をいたしました地域内でいろいろ建てかえがあったり,何かドコモの通信網をつくるとか,そういう小さなことから大きなことまで一応申請をいただいておりまして,それの許可等が2,090件と,こういうことでございます。そういう指定がございます。
それから,資料4−1Ⅱ(2)をごらんいただきますと,あるいは詳しくは資料4−3[1]ですか,実はこれは簡単に申し上げますと,文化遺産条約実施に関する施策のあり方でございます。これは何かといいますと,文化遺産,世界文化遺産,平泉の件もございますけれども,地方から提案のあったものが32件,一応世界遺産暫定一覧表に候補として記載されております。そして,世界遺産特別委員会及びその下に設置されました4つのワーキング委員会において調査,審議を行いました。その結果として,昨年の9月に5件の文化資産を,ちょっと面倒な名前ですけれども,世界遺産暫定一覧表記載文化資産とするということで取りまとめました。
それはごらんいただきますと5件ございます。実は,具体的には,北海道,北東北を中心とする縄文遺跡群が1つでございます。それから九州・山口の近代化産業遺産群,これが1つでございます。それから3つ目が,宗像・沖ノ島と関連遺産群ということでございます。それから,もう2つございます。これは佐渡ですが,金と銀の島,佐渡,これは石見銀山との関係もございますけれども,金と銀の島,佐渡と。それからもう一つ最後ですが,百舌鳥・古市古墳群です。この5件でございますけれども,下の2件につきましては,今後課題を整理して,文化庁において関係機関と調整を行っていくと,こういうことでございます。ですから,暫定表に追加することになると,文化庁から今のところ報告を受けております。
それからまた,残り27件,これは大変難しいんですけれども,世界遺産暫定一覧表候補の文化資産として整理されました。
このほか,日本から登録推薦を行うもので,昨年7月に世界遺産委員会において記載延期とされました平泉,浄土思想を基調とする文化的景観に関する,これは世界遺産委員会及びイコモスの審査状況並びに世界遺産暫定一覧表に記載されている資産の推薦に向けて,実は準備をしながら,それで昨年2月準備をしているということでございます。
それからもう一つは,昨年2月にフランス等と共同で推薦いたしましたル・コルビュジエの建築と都市計画に関する事項など,これも随時審議を行っているということでございます。
そのように,非常に国内問題とこうしたユネスコとのつながりの平泉の問題,それからまたフランスとのつながりでル・コルビュジエの建築と都市計画というようなことが随時審議をされました。ご報告申し上げます。
それから,次にもう一つ重要な問題がございます。これは日本にとりましては非常に喜ばしい条約でございますけれども,ユネスコの無形文化遺産保護に関する条約への対応についてでございます。これは,資料4−1Ⅱの(3)を見ていただくとわかるんでございますけれども,実は平成20年6月に締約国会議,条約をつくった会議がございまして,無形文化遺産保護にかかわる運用指示書が決定されました。どういうふうに登録していくかという指示書でございます。それで,無形遺産保護条約代表一覧表へ提案することになりました。期限が昨年の9月末でございましたので,これを受けて無形文化遺産保護条約に関する特別委員会において,無形文化遺産保護条約代表一覧表へ,日本から提案について調査審議をいたしました。代表一覧にかかわる提案候補は,重要無形文化財,重要無形民俗文化財及び選定保存技術を対象としておりますが,その中から順次選定を行いまして,将来的にはいろいろなものを提案可能なものにして入れていく予定でございますけれども,一応これからは最初に挙げましたものにつきまして,一覧表に記載していこうということでございます。
大分これにつきましてはいろいろな背景がございまして,ユネスコの平成15年の32回総会において採択されて,18年に発効したものでございますが,目録の作成につきまして,今申し上げましたように重要無形文化財,重要無形民俗文化財及び選定保存技術,一覧表をユネスコに提出するということで,基本的な考え方といたしましては,私たちは,日本の誇るべき無形文化遺産を登録していくということでございます。具体的な提案につきましては,実はこれは地域のバランスとか指定の時期が早いものから入れていこうとか,いろいろそういう点では公明正大というか,非常にしっかり順位をつけておりますが,平成20年6月にアイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議等がございまして,この点を考慮いたしまして,日本文化の多様性を示すという観点から,アイヌ古式舞踊を第1回の候補として提案するということになりました。そして,こうした考え方によって14件を第1回の提案候補とするということでございます。
もう一つ,危機遺産ということでございますが,危機遺産一覧表というのは,実は文化財保護法で保護の措置がとられておりますので,そちらの提案は行わないと,こういうことでございます。
このように,最後の表,第1回「代表一覧表」,別表をごらんいただきますと,こういうような流れの中で第1回目がそれぞれ提案されて登録されるということになっております。一つ,選定保存技術だとか無形民俗文化財ですね,それから無形文化財外にアイヌ古式舞踊というものが入っております。そういうことでございまして,第1回提案は14件と,こういうことでございます。
大体そんなのが私ども第8期の文化財分科会において審議されたことでございます。何かご質問等ございましたらお願いいたします。大分早口で申しわけございません。なかなかわかりづらいところがあったかと思いますが,何かご質問ございましたらお願いいたします。
はい,どうぞ,お願いいたします。

<文化財分科会報告に基づく議論>

○市川委員
質問ばかりですみません。私どももいろいろ無形文化財に登録していただいたり,大変ありがたく思っております。
直接この席と関係ないのですが,例えば今度歌舞伎座が新しく建て直されます。国レベルではありませんけれども,都レベルで,都市緑地化というのがあるわけです。そうすると,設計図に木を植えなくてはいけないという,それは自然保護みたいな名目なんです。それが何で自然保護なのかと。ただ並木を植えればそれで体裁が整うという考え方,私どもとすると大変納得がいかないと思っております。
それから,例えば北の丸公園でも桜を見せるためにほかの木を切りました。それで桜をよく見せようと,これが自然ですと言おうとしているけれども,とんでもない。自分たちの都合のいいものが自然ではないですよね。やはり自然に我々がどううまく融合していくかということなので,歌舞伎座の同じ建て直しでも,体裁の並木が緑地化だという,その考え方を直してもらいたい。これもそういう遺産とかそういうものに関係あると思いますが,文化庁としてそういう考え方への指導というのは都にできるのかどうか,文化庁の方にお伺いしたいと思います。
○?塩文化庁次長
恐らく歌舞伎座の上に屋上庭園をつくるという,きょう報道がありましたけれども,これは恐らくヒートアイランド化の観点だと思います。そういった都市計画部局は部局として一つの条例等がございまして,そういう観点からやっておるということで,特段私どもからそういうことに対する働きかけということは,権限的にもないということでございます。
ただ,平成13年につくりました文化芸術振興基本法という法律がございまして,文化庁ではこの法律を所管しております。その中に,さまざまな建物をつくる際には,地域の歴史とか文化に非常に調和するようにつくるべきという,精神的な規定でございますけれども,そういう規定が入っております。これは各地の条例等でもそういうことがございまして,私どもは各地域で文化関係条例をつくる際に,そういうことについても求めたいということの働きかけはいたしておりますが,あくまで自治体のほうでそういった取り組みを期待していると,こういう立場でございます。
○石澤会長
ありがとうございました。
ほかに何かご質問ございましたら。はい,山内先生。
○山内委員
今の中でアイヌ古式舞踊についてなのですが,現在,ご案内かと思いますが,先般の第1次懇談会に続きまして,昨年から第2回目のアイヌの施策にかかわる有識者懇談会が官房長官のもとでつくられて,現在審議中であります。今年の6,7月を目途に報告書が提出される予定です。
そういう観点から見まして,こちらでアイヌ民族を先住民族とする国会決議に基づいて,古式舞踊に関して第1回の提案候補としていただいたということは大変ありがたいことでもありまして,私のほうからも委員をやっておりますので,こちらとの連携なども深めて報告したい,向こうのほうでも議論したいと思っております。この点,まず両方にかかわる者として感謝したいということが一つ。
そこでお尋ねなのですが,ここで書かれている上記枠組みと別に古式舞踊を第1回提案候補とするということと,上記の考え方により14件を第1回提案候補とするという,この関係がよくわからなかったので,ご説明願います。
○石澤会長
この14件,じゃ,お願いいたします。
○高杉文化財部長
事務局のほうからお答えをさせていただきたいと思います。
ユネスコの無形文化遺産条約,これについては実は世界遺産のほう,文化遺産のほうは価値観の評価とかそういうのが行われるということがユネスコでございます。
一方,ユネスコの無形文化遺産,これはやはりそういう無形のものについて価値観の評価をするということではなくて,基本的に出てきたもの,それを登載しましょうという基本的なベースがございます。したがって,私ども既に無形文化財について制度を持ち,それでそれぞれ指定をし,保存をしております。したがって,その制度の類型から,その数によって推薦を順番にしていこうという極めて,先ほど分科会長からもお話がありましたように,機械的な作業をいたしました。その類型がこの資料4−4の後ろのほうについております芸能であります総合認定でございますとか風俗慣習の祭礼,年中行事,神楽,田楽,そういうものでございます。その中から一つをとっていこうと。それで,第1回目だけは,やはり国会の決議とかそういうのも勘案をして,それにプラスする形で一つつけようと。したがって,この別表というのを見ていただきますと,その上にくっついていないところでアイヌが右側に1個だけぼんと出ているという,そういう関係にあるということでございます。
○山内委員
わかりました。
○高杉文化財部長
1回目にこれにプラスして,アイヌだけ特別に国会決議とかそういうものを勘案してプラスをしたという。
○山内委員
これまで積み重ねてきた議論は重要であるけれども,また同時にそれではない基準で一つ重視したと,そういうことですね。
○高杉文化財部長
ない基準というのがいいのかどうかわかりませんけれども,第1回の推薦をするに当たってはそういうことも考慮して。
○山内委員
ふさわしいと。
○高杉文化財部長
ええ,ふさわしいということでプラス一つということでございます。
○山内委員
さようですか。わかりました。
○石澤会長
ありがとうございました。

<まとめ>

○石澤会長
時間も押しておりますので,最後に文化審議会全般についてお話をいただきたいと思いましたが,お忙しい方もいらっしゃいますし,また引き続きということになりますと,また別に機会を設けなければいけませんので,この場にお残りいただける皆様はお残りいただき,引き続きいろいろ全般的なお話をいただきたいたいと思います。
第8期の文化審議会委員の任期が2月4日をもって終了いたします。本日が最後となります総会でございますので,つきましては,青木長官より一言ごあいさつをいただきたいというふうに思います。お願いいたします。
○青木文化庁長官
先ほど浮島大臣政務官が冒頭のごあいさつで触れられましたアメリカのオバマ大統領とバイデン副大統領の文化政策に関する選挙中のマニフェストは大変完璧なものでございました。アメリカがグローバルな経済競争の中で生き残るためには,クリエイティブな力,創造力が大切であると,その創造力を養うためには芸術教育が一番重要であると。だから,アメリカの公教育において芸術教育というのをもっと充実させなきゃいかんということを説き,芸術家支援をもっと厚くする,芸術支援をもっと厚くする,またひいては国際関係における文化外交の重要性ということを指摘しているのですけれども,これは非常に大事なものだと思います。そういうことをきちんと大統領が言うということはそれなりに評価すべきだと,そう思いました。
今朝,出勤前にテレビをつけて,衛星のABCニュースを見ていましたら,オバマ大統領が今議会に財政支援の予算案を提出しようとして,いろいろと共和党を説得しようとしているというのが出ていました。その中に共和党系のシンクタンクあるいは共和党関係者の結構若手の論客がキャスターの質問に答えて,いろいろなオバマ政権が出している個々の財政支援の項目について論評を加えていました。そこに5,000万ドルの芸術支援というのがあったのですが,その共和党の人は,言下にこんなものは全く要らん,こういうのは何の役にも立たん,と言っておりました。目下の財政緊迫状況にこんなことをするべきじゃない,というので,これはやっぱり夢と現実は大分違うなということを感じました。私はアメリカ研究に関心がありますし,アメリカ文化研究にも関心があるので,今後アメリカのオバマ政権の芸術支援あるいは文化政策というものを,フォローアップしていきたいなと改めて思いました。
さて,石澤会長,宮田会長代理を初め,委員の皆様には今期も大変熱心に文化審議会にご協力いただき,また部会とか分科会において精力的なご審議をいただきました。心から感謝申し上げます。
本日の様々なご意見も含め,皆様からいただいたご意見・ご提案は真摯に受け止め,文化庁の文化政策にいかしてまいりたいと思っております。
また,今期においては,長年委員を務めてくださった委員の方々で,ご退任される方々がいらっしゃいます。長年にわたりまして,いろいろ貴重なご意見またはご審議をいただきました。本当に心から御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
それでは,皆様,今期はこれで終わりますが,今後とも,ご退任される方も含めまして,文化庁の文化政策あるいは文化行政,文化施策,あるいは日本全体の文化の今後のあり方について,貴重なご意見やご助言をいただきたいと心から願いまして,簡単でございますが,あいさつにかえさせていただきます。どうもありがとうございました。
○石澤会長
長官,どうもありがとうございました。大変,夢と現実は違うというお話もお聞きしましたが,今回は浮島政務官にご出席いただきまして,大変心強いお言葉もいただきました。
それで,一応これで終わらせていただきますが,この場にもしお残りいただける皆様,引き続きいろいろお話をいただきたいと,こういうふうに思っております。
ご協力ありがとうございました。これで終わらせていただきます。

午後0時12分 閉会

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