文化財の防火と防災施設の日常管理について
(平成5年2月23日 5保伝第8号)

 去る2月4日,奈良県橿原神宮において重要文化財が全焼したことは,文化財の防火の観点から誠に憂慮するべきことであります。
 標記の件については,別紙のとおり昭和61年1月24日付け庁保建第42号で,また,同日付け61委保建第4の4号で通知したところですが,今回の奈良県橿原神宮の火災にかんがみ,下記の諸事情を励行するよう文化財所有者等に周知し,事故の根絶に期するよう重ねてお願いいたします。

  1. 文化財の防火管理の体制を徹底させること。
    今回の火災は,警察署及び消防署の現場検証によれば,文化財の所有者である宗教法人職員によるたき火の飛び火が原因とみられている。特に,文化財所有者が法人等の場合は,必要に応じて防火管理者等をおき火元責任者を定めて防火意識の向上を図り,担当責任を明らかにした実効のあがる防火管理を行うこと。
  2. 防災施設の整備点検を励行すること。
      文化財建造物には,消防法施行令第21条により自動火災報知設備の設置が義務づけられており,文化庁では自動火災報知設備のほか消火栓設備や避雷針設備等の防災施設の設置・点検の事業についても,必要な場合には補助を行っているところである。 しかし,これらの設備も所有者自身による日常の設備点検と活用のための訓練が不可欠であり,関係の消防署等の協力を得て定期的に整備点検を励行すること。
  3. 燃えやすい文化財の周辺では,たき火や花火を原則として禁止するとともに火気の使 用には充分注意し,特に桧皮葺(ひわだぶき)や茅葺の建造物の場合は特別な消火活動 訓練を行うこと。桧皮葺や茅葺の建造物の場合で,花火やたき火の飛び火が屋根の表面に着火しておきる火災は,火種が屋根の内部にもぐりこんで小屋組の内部で燃え広がるため,火災の外からの発見に数時間もかかることがあり,消火活動も極めて困難で,建造物を全焼させる重大な結果となる場合が多い。
     したがって,消防署の協力を得てたき火等禁止区域を定めるとともに有効な消火活動の方法を検討し,所有者自身による初期消火の機会を失わないよう,日頃から消火活動訓練を行うこと。
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