1. 文化財保護に関する国際交流・協力事業の概要

(1)文化庁

【技術協力・共同研究】 (単位:千円)

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
アンコール文化遺産保護に関する研究協力 文化庁 平成5年度 27,273 アンコール文化遺産保護に携わるカンボジアの研究者と保存修復及び環境整備等を中心とする共同研究を実施し,我が国での文化財保存修復分野の研究を深めるとともに,世界的な文化遺産の保護に貢献する。
無形の文化財の保護に関する研究協力 文化庁 平成8年度 4,592 アジア諸国等の無形の文化財の保存と継承に関する諸問題について,アジア諸国の専門家による国際会議を外務省及びユネスコと共同で開催する。
文化財保護に係る世界遺産センター等との連携協力に関する調査研究 文化庁 平成10年度 2,577 アセアン諸国等における文化財保護の現状と我が国に求められる協力内容について調査研究するとともに,国内関係機関の連携協力の強化や体制整備,文化財保護に携わる専門家の育成方策,人材ネットワークの整備等,世界遺産センターとの連携協力の推進のための各種方策の実施可能性について調査研究を行う。(「文化財保護に係る国際機関等との連携協力に関する調査研究」(8年度~)より名称変更)
敦煌文化財保存修復に関する研究協力 東京国立
文化財研究所
昭和61年度 25,572 人類の貴重な文化遺産である中国敦煌莫高窟の壁画・仏像は,経年による剥落,損傷が著しく,その保存修復が急務となっているため,専門家の相互交流,日中共同研究等の協力事業を実施。
スミソニアン研究機構との国際研究交流 東京国立
文化財研究所
平成6年度
(平成元年度)
4,603 世界最大の文化財保有組織であるスミソニアン研究機構との間で,東アジアの文化財を対象とした保存修復に関する国際的な研究交流,協力等を実施。(「スミソニアン研究機構との国際交流」(元年度~)より名称変更)
在外日本古美術品修復協力 東京国立
文化財研究所
平成6年度 109,377 海外の博物館,美術館が所蔵する日本古美術品で保存状態が悪く,緊急に修復を必要とする絵画,工芸品類の優品を対象として,修復協力を行う。
文化財保存修復に関する国際共同研究 東京国立
文化財研究所
平成6年度 18,122 文化財の保存修復に用いられる新材料について国際共同研究を実施。平成10年度は,合成樹脂についてベルギー(王立文化財研究所),タイ(国立博物館)と共同して研究を行う。
文化財の保存を目的としたレンガの劣化現象と保存対策に関する調査研究 東京国立
文化財研究所
平成6年度 4,986 近年急速に劣化現象が進んでいる国内・外に所存するレンガ造文化財の保存に関する研究及び対策を開発し,この分野における国際貢献にも寄与する。
文化財における環境汚染の影響と修復技術の研究協力 東京国立
文化財研究所
平成7年度 61,731 中国や韓国においても,日本以上に,環境汚染からの文化財保護が深刻な問題になっている。これらの問題を抱えた各国と協力して,環境汚染から文化財を保護するための研究を行う。
文化財保護に関する日独学術交流 東京国立
文化財研究所
平成8年度 4,867 歴史的建造物の文化財材質の劣化機構の解明と適切な保存方法に関する共同研究。科学的な調査研究法に関しての人的交流や研究会の開催を行う。
南アジア仏教遺跡保存整備に関する基礎的調査研究 奈良国立
文化財研究所
平成元年度 18,947 インドのサヘート遺跡,アフガニスタンのバーミヤン石窟群などの仏教遺跡について,科学的な保存処置に関する調査研究を実施するとともに,専門家を招へいし,遺跡の保存整備技術について専門的な共同研究を実施。
アジアにおける古代都城遺跡の研究と保存に関する研究協力 奈良国立
文化財研究所
平成8年度 50,026 漢魏洛陽城,漢長安城,隋唐長安城など4都城を研究対象とし,中国と共同で分布調査・地下探査・発掘調査等の考古学的な調査法を駆使し遺跡の性格を正しく把握するとともに,保存整備に対する基本構想を作成し,日本の都城研究への活用,アジア各国の都城遺跡の研究と保存に資する。

【招へい研修】

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
文化財保護分野・博物館等における地方自治体職員の国際協力・交流の支援 文化庁 平成8年度 4,149 諸外国の文化財保護行政担当者,遺跡発掘の技術者,博物館・美術館の専門職員等の地方自治体への受入れ事業を支援する。(自治省及び財団法人 自治体国際化協会(CLAIR)と共催)
在外日本古美術品に係る博物館・美術館研究協力事業 文化庁 平成6年度 21,960 日本古美術品を多数所蔵する海外の博物館・美術館及び文化財に関する研究機関等の学芸員,修復技術者,保存管理者等と,日本の学芸員,研究者等との間で,日本古美術品の展示取扱,修復技術及び保存・管理に関する研究協力を行うことによって,海外に所在する日本美術品の保存と活用の基礎的研究の向上に資する。
アジア諸国文化財の保存修復等協力事業 文化庁 平成10年度 12,645 [1]アジア諸国博物館・美術館研究協力事業
アジア諸国の博物館・美術館及び文化財に関する研究機関等の学芸員,修理技術者,保存管理者等と我が国の学芸員等との間で研究交流を行い両国の博物館等における文化財の展示取扱,修復技術及び保存・管理技術の向上に関する基礎的研究の進展に資する。
[2]文化財建造物の保存修復協力
文化財建造物の保存修復事業について,我が国の技術者を派遣し,保存管理計画策定への協力や修理の技術指導等を実施するとともに,相手国の技術者を日本に招へいし,修理技術等の研修・交流を行い,アジア・太平洋地域における文化財保護の推進に資する。
国際修復研修事業
「紙の保存修復」研修
東京国立
文化財研究所
平成4年度 10,021 各国の紙製文化財保存修復関係者を日本へ招き,和紙を用いた修復技術(表具の技法)について研修を実施し,世界の紙製文化財等の保護保存に資する。平成10年度は,過去の研修参加者を対象としたフォローアップ・セミナーを開催する。

【世界遺産関係】

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
世界遺産保護推進費 文化庁 平成5年度 23,138 世界遺産条約に基づき,我が国の遺産の推薦を推進するとともに,国際的な専門家会議への参画,世界遺産保護への国民の関心・意欲を高めるための世界遺産フォーラム等を実施する。(我が国は世界遺産委員会のメンバー国,さらに代表7ヶ国で構成されるビューロー会議のメンバー国を務めるなど,世界遺産の保護に向け積極的な取組み,協力を行っている。)
世界遺産委員会開催経費 文化庁 平成10年度 49,467 平成10年12月に第22回世界遺産委員会を京都において開催する。
(開催期間;11月30日~12月5日)

【国際研究集会】

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
アジア文化財保存セミナー 文化庁
(東京国立
文化財研究所)
平成2年度 7,922 アジア地域における文化財の保存修復に関する種々の問題について報告及び討議を行うため,アジア諸国の関係研究者等を招へいし,アジア文化財保存セミナーを開催する。
国際シンポジウムの開催等 東京国立
文化財研究所
昭和52年度 6,058 各国の文化財保存に関する現状及びその対策について報告及び討論を行うため,毎年1回特定のテーマを選んで国内外の研究者を招へいし,国際シンポジウムを開催する。

【文化財海外交流展等】

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
海外展 文化庁 昭和26年度 82,056 日本の優れた文化財を諸外国に紹介することにより,我が国の歴史と文化に対する理解の増進と国際親善の推進に寄与することを目的として,日本古美術品の海外展を開催する。平成8年度からは,欧米での開催に加え,アジア各国においても毎年開催。
博物館等海外交流古美術展 文化庁 平成5年度 29,845 日本古美術品を所蔵している諸外国の博物館等と我が国の国立博物館との間で日本古美術品等を中心とした交流展を相互に開催,実施。
国際民俗芸能フェスティバル 文化庁 平成8年度 53,986 日本の民俗芸能とそれらに関連する海外の民俗芸能を一堂に集め,民俗芸能公演やシンポジウムを開催し,民俗文化財の普及・振興,文化の国際交流を図る。
日仏国宝級美術品の交換展示 文化庁 平成10年度 120,070 日仏両国が相互に国宝級の美術品等の交流を図るため,平成9年度は「国宝 木造観音菩薩立像(百済観音)」をフランスで展示,平成10年度は「民衆を率いる自由の女神」(ドラクロア作)を日本で展示する。

【体制整備】

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
国際文化財保存修復協力センター運営 東京国立
文化財研究所
平成7年度 11,310 国際共同研究・情報の収集と提供・人材の養成を柱とした国際的な協力センタ-を運営し,文化財保存分野での国際協力を実施する。

平成10年度予算額合計 765,300千円

(参考)
【国際分担金】

名称 実施主体 開始年度 10年度
予算額
事業内容
文化財保存修復国際センター(イクロム)分担金 文部省 昭和42年度 59,130 イクロム加盟国の義務的経費(文化財保存修復研究国際センター規則第6条及び第12条による)。
なお,拠出金中25%はODA分。

(2)外務省

平成10年 6月
外務省文化交流部

文化財保護に係る国際協力事業のうち,外務省関係の主たるものは以下の通り。

  1. 世界遺産条約
     世界遺産条約は,世界の文化遺産及び自然遺産を人類の遺産として国際協力体制の下に保存することを目的としたものであり,我が国は1992年に締結。
     現在我が国は,同条約に基づき設置された政府間委員会「世界遺産委員会」で副議長を務め,同条約に基づき設立されている「世界遺産基金」に対して米国に次ぐ出資(平成9年度約61百万円)を行い貢献に努めているが,更なる貢献のため,本年12月の第22回世界遺産委員会会議を京都で開催し,その後1年間議長を務める予定である。
  2. ユネスコ(国連教育科学文化機関)文化遺産保存日本信託基金
     (平成9年度までに計2,615万ドルを拠出。)
     1989年,従来より文化遺産保存活動を積極的に行っているユネスコ内に設立された。世界の文化遺産としてその価値が客観的に認められ,かつ崩壊の危機に瀕しているため,緊急の保存・修復が必要とされる遺跡を対象とし,保存・修復作業(工事,専門家及びスタッフの派遣等)及び右に密接に関連する事業(事前調査,現地スタッフの研修等)につき協力している。現在,アンコール遺跡修復事業をはじめとし,アジア地域に重点を置いているが,アジア以外でもルーマニアのプロボタ修道院修復事業を実施している。
  3. ユネスコ無形文化財保存振興信託基金
     (平成9年度までに計160.6万ドルを拠出。)
     我が国は,主にアジアの無形文化財(舞踊,音楽等の伝統芸能及び陶芸,漆芸,染織等の伝統工芸)の保存と振興を図るため,1993年からユネスコの「無形文化財保存振興信託基金」に拠出を行い,緊急性が高いと判断される文化財から順次,関係各国政府の意向を尊重して,保存を図ってきている。拠出額は,平成5,6年度が各25万ドル,7年度が35万ドル,8年度が40万ドル,9年度が35.6万ドルであり,10年度は25.8万ドルを予定している。なお,平成7年度からは一部を「平和友好交流計画」に組み入れて実施している。
  4. 文化無償協力等
     我が国の文化交流における国際文化協力の一環として,1件5,000万円を限度として,文化財及び文化遺産の保存や活用,文化関係の公演や展示の開催,教育及び研究の振興のために必要とされる資機材を購入するための資金を贈与するものである。
  5. 国際交流基金
  6. 東南アジア文部大臣機構(SEAMEO)
     教育・科学及び文化を通じ東南アジア諸国間の協力を促進することを目的とし,1968年に発足した。我が国はオブザーバーであるが,同地域の「人造り」及び「国造り」に寄与すべく,1972年以来,資金面における協力及び専門家の派遣・受入れを実施してきた。文化遺産保存に関する人材養成に協力すべく平成8年度及び9年度は,日本特別協力計画として毎年10万ドルを同機構の下部組織でバンコクにある「考古学・美術センター」(SPAFA)に拠出している。
  7. 在外日本古美術品保存修復に対する協力
     1993年の日米首脳会談において,米国にある日本古美術品の保存修復協力が日米間の協力事業の一つとして発表されたことを受け,1994年より事業を開始した。また,1996年より対象を欧州にも拡大し,1997年より修復対象作品を絵画のみならず工芸品(主として漆,兜,刀剣類)にも拡大した。
  8. 具体的施策例
    • (1)敦煌莫高窟
       1988年に竹下総理(当時)が協力を表明した敦煌莫高窟については,「敦煌石窟文化財保存研究・展示センター建設計画」の実施のため,総額9億7千5百万円を限度とする無償資金協力を行い,1994年3月に引渡式が行われた。
    • (2)アンコール遺跡
      •  (イ) 1993年の「アンコール遺跡救済国際会議」以降,フランスとともに「国際調整委員会」の共同議長国を務め,各国による協力の調整に努めている。現地ではフランスをはじめ,インドネシア等の専門家と協力しながら事業を進めている。
      •  (ロ) 我が国(外務省)は日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)を結成し,その第一フェーズとして1994年11月から1999年4月末までの予定で遺跡保存事業を展開。建築,考古等の専門家の他に,建設関連企業,接着剤関連企業等の構成する協力グループからの支援を受けている。96年12月,総理府外政審議室内にアンコール遺跡保存に係わる約50の組織,団体等による連絡協議会を結成した。
      •  (ハ) 将来はカンボディア人の手で保存が行われることを目指し,プノンペン芸術大学への教育訓練協力等,人材養成にも重点を置いている。

(了)

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