平成26年通常国会 著作権法改正等について

1. はじめに

 「著作権法の一部を改正する法律」が,第186回通常国会において,平成26年4月25日に成立し,同年5月14日に平成26年法律第35号として公布されました。本法律は,一部の規定を除いて,平成27年1月1日に施行されることとなっています。
 また、今回の法律改正に伴い,関係する政省令の整備を行い,法律と同じく平成27年1月1日に施行されることとなっています。

 改正法等の概要及び条文は,以下のとおりです(青字の部分にカーソルを合わせてクリックすると,内容を見ることができます)。

(法律)

(政令)

(省令)

 改正法の解説については,こちらを御覧ください。

 また,改正後の著作権法は,e-govに掲載されています。
 (http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi)

 以下,改正法の趣旨及び内容の概要について御紹介します。

2.改正の趣旨

 今回の法律改正の項目は,(1)電子書籍に対応した出版権の整備及び(2)視聴覚的実演に関する北京条約(以下「視聴覚的実演条約」という。)の実施に伴う規定の整備の2点です。
 このうち(1)については,平成25年12月に文化審議会著作権分科会出版関連小委員会において取りまとめられた「文化審議会著作権分科会出版関連小委員会報告書」等を踏まえ,インターネットその他の新たな情報伝達手段の発展に伴い,電子書籍が増加する一方,インターネット上での違法流通が広がっていることに対応し,紙媒体による出版文化の継承・発展と,健全な電子書籍市場の形成を図り,我が国の多様で豊かな出版文化の更なる進展に寄与することを目的として行ったものです。
 (2)については,俳優や舞踊家等が行う視聴覚的実演に関する国際的な保護制度の改善を図るため,世界知的所有権機関(WIPO)において,平成24年6月に採択された視聴覚的実演条約の締結に必要な措置を講じるために行ったものです。
 なお,視聴覚的実演条約の締結については,平成26年5月に国会において承認されました。条約の詳細については外務省のホームページを御参照ください。
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/trt/page22_000989.html)

3.改正の概要

(1)電子書籍に対応した出版権の整備

 出版者がいわゆる電子出版について著作権者から出版権の設定を受け,インターネットを用いた無断送信等を差し止めることができるよう,紙媒体による出版のみを対象とした出版権制度を見直し,電子書籍をインターネット送信すること等を引き受ける者に対して,出版権を設定できることとしております。あわせて,このような出版権を設定した場合の出版権の内容,出版の義務,出版権の消滅の請求等について規定を整備しております。

  1. [1]出版権の設定(第79条第1項関係)
     複製権等保有者(複製権又は公衆送信権を有する者)は,その著作物について,以下の行為を引き受ける者に対し,出版権を設定することができることとされました。

    (1)文書又は図画として出版すること(電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録し,当該記録媒体に記録された複製物により頒布することを含む。)【紙媒体による出版やCD-ROM等による出版】

    (2)電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された複製物を用いて公衆送信(放送又は有線放送を除き,自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む。以下同じ。)を行うこと【インターネット送信による電子出版】

     これにより,新たにCD-ROM等による出版やインターネット送信による電子出版を引き受ける出版者が,著作権者(複製権等保有者)との出版権設定契約により,出版権の設定を受けることができるようになります。
  2. [2]出版権の内容(第80条第1項及び第3項関係)
     出版権者は,設定行為で定めるところにより,その出版権の目的である著作物について,次に掲げる権利の全部又は一部を専有することとされました。

    (1)頒布の目的をもって,原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む。)

    (2)原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された複製物を用いて公衆送信を行う権利

     これにより,出版権の設定を受けた出版権者は,公衆送信を行う権利を専有し,インターネットを用いた無断送信(インターネット上の海賊版)を自ら差し止めることができるようになります。
     また,出版権者は,複製権等保有者の承諾を得た場合に限り,他人に対し,当該著作物の複製又は公衆送信を許諾することができることとされました。
  3. [3]出版の義務(第81条関係)
     出版権者は,出版権の内容に応じて,以下の義務を負うこととされました。ただし,設定行為に別段の定めがある場合は,この限りではありません。

    (1)原稿の引渡し等を受けてから6月以内にその出版権の目的である著作物について出版行為又は公衆送信行為を行う義務

    (2)その出版権の目的である著作物について慣行に従い継続して出版行為又は公衆送信行為を行う義務

  4. [4]著作物の修正増減(第82条関係)
     著作者は,その著作物を紙媒体等での出版についての出版権者が改めて複製する場合や,公衆送信による電子出版についての出版権者が公衆送信を行う場合には,正当な範囲内において,当該著作物に修正又は増減を加えることができることとされました。
  5. [5]出版権の消滅の請求(第84条第1項及び第2項関係)
     出版権者が[3]に規定する義務に違反したときは,複製権等保有者は,その義務に対応した出版権を消滅させることができることとされました。
  6. [6]出版権の制限(第86条関係)
     [2]の出版権の内容に合わせて,著作権の制限規定を出版権の目的となっている著作物の複製又は公衆送信について準用することとされました。
  7. [7]経過措置(附則第3条関係)
     改正法の施行前に設定された出版権で,改正法の施行の際現に存するものについては,なお従前の例によることとされました。

(2)視聴覚的実演条約の実施に伴う規定の整備(第7条関係)

 平成24年6月にWIPOにおいて採択された視聴覚的実演条約を我が国が締結するため,著作権法による保護を受ける実演に,視聴覚的実演条約の締約国の国民又は当該締約国に常居所を有する者である実演家に係る実演を加えることとされました。


(3)施行期日

 この法律は,平成27年1月1日から施行することとされました。ただし,視聴覚的実演条約の実施に伴う規定の整備に関する規定は,視聴覚的実演条約が日本国について効力を生ずる日から施行することとされました。

4.改正法Q&A

(1)電子書籍に対応した出版権の整備

問1 単に配信のみを行っている事業者に電子出版についての出版権が設定されてしまうと,紙媒体による出版を行った出版者の労力が認められないことになってしまわないでしょうか。

(答)

 これまでの出版権制度は,出版を引き受け,企画・編集等を通じて出版物を作成し,世に伝達するという出版者の役割の重要性に鑑み,特別に設けられたものと考えられ,その趣旨は電子書籍に対応した出版権についても同様のことと考えられます。
 出版,電子出版に至る過程は多様であり,法律の文言上は,従来の紙媒体による出版の場合と同様に,企画・編集等を行うことが出版権設定の要件とはなっていませんので,企画・編集等を行わない事業者が出版権の設定を受けることが全くないとは言えませんが,出版権設定のための契約交渉は,原稿依頼時や入手時などに行われることが想定され,企画・編集等の役割を担った出版者は誰よりも先に著作権者と交渉する立場に立ち,出版権を設定することが可能です。
 そのため,紙媒体による出版を行う出版者が電子出版を行うことを希望する場合には,著作権者と出版者との間の信頼関係の下に,出版権設定のための契約交渉の際に,紙媒体による出版と電子出版について,契約上明確にしておくことが重要であると考えられます。

問2 雑誌を構成する著作物について,出版権の設定は可能ですか。

(答)

 雑誌を構成する著作物について,紙媒体,電子媒体のいずれであっても出版権を設定することは可能であると考えられます。
 また,雑誌は複数の著作物によって構成されるという特性があり,雑誌に掲載される全ての著作物の著作権者と契約することは困難ではないかとの懸念も考えられますが,出版権の設定は著作物単位ですので,雑誌を構成する一部の著作物についてのみ出版者と著作権者が出版権設定契約を締結することも可能です。
 なお,実際の契約に当たっては,雑誌の発行期間等に合わせた短期間の存続期間を設定したり,当事者間の契約(債権的合意)により出版態様を雑誌に限定したりすることなどの工夫も考えられます。

問3 第80条第1項において,「出版権者は・・・権利の全部又は一部を専有する。」とありますが,どのような意味ですか。もし同項各号の権利の一部のみを出版者が専有することとされた場合に,効果的な海賊版対策を行うことはできるのですか。

(答)

 第80条第1項の「全部又は一部」とは,紙媒体等による出版のための権利(第1号)と電子出版のための権利(第2号)について,「第1号と第2号の全部」を専有する場合や,「第1号か第2号のいずれか一方のみ」を専有する場合を基本的には想定しておりますが,更に各号の権利の一部のみを出版者が専有する余地も認めるものです。
 どのような場合に各号の権利の一部のみを出版者が専有することができるかという点については,例えば,第80条第1項第1号の権利について,紙媒体による出版権のみを専有する場合や,CD-ROM等による出版権のみを専有する場合のように,利用態様としての区別が明確であり,権利の一部のみを専有することによって実務等に混乱が生じるおそれがない場合には権利の一部のみを専有することが可能であると考えられます。(ただし,個別具体的な事例に対して,どこまで権利の一部のみを専有することが可能であるのかという点については,最終的には,裁判所において判断されるものとなります。)
 なお,出版権の一部のみを専有することとされた場合,当該出版権が及ばない形態の海賊版が流通した場合には,出版権者が自ら効果的な海賊版対策を行うことができないため,効果的な海賊版対策を講ずる観点等からは,広範な利用を可能とするような出版権を設定することが有効であると考えられます。

問4 第80条第1項第2号において,公衆送信を目的とする複製権が含まれず,公衆送信権のみとなっているため,同号の電子出版に係る出版権しか有しない出版者は,違法配信目的で複製がなされた場合に対応できないのではないですか。

(答)

 仮に公衆送信目的の複製権を出版権に含めたとしても,公衆送信を行う前段階の複製行為は,通常,公然とは行われず,発見することは極めて困難であると考えます。
 しかしながら,仮にそのような海賊版を発見した場合には,出版権者は,公衆送信目的の複製に対して,公衆送信権の侵害予防のための差止請求が認められうる(第112条第1項)ため,海賊版対策に支障はないと考えられます。

問5 出版権者がその出版権に基づいて第三者に対して複製又は公衆送信について許諾することはできるのでしょうか。

(答)

 これまで,出版権者が第三者に複製について許諾することができるかどうかについては,条文上,出版権者は第三者に対し,複製を許諾することができないこととされている一方,複製権者の承諾があれば,出版権者は第三者に対し複製の許諾を行うことができるとする見解など,解釈上,様々な見解がありましたが,今般の改正法により,複製権者の承諾を得た場合に限り,第三者に対して複製を許諾することができることが明確になりました。また,今般の改正法により,電子出版についての出版権者についても,公衆送信権者の承諾を得た場合に限り,第三者に対して公衆送信について許諾することができることとされました。(第80条第3項)

問6 出版の義務が出版権者に課されるため,著作権者が契約締結時において電子書籍を配信する計画がない場合には電子出版に係る出版権の設定は難しく,効果的な海賊版対策を講ずることは難しいのではないですか。

(答)

 第81条では,出版の義務について,原稿等の引渡し等を受けてから一定期間内に出版行為又は公衆送信行為を行うこと等が義務として規定されているものの,あわせて,「設定行為に別段の定めがある場合は,この限りでない」と規定されており,当事者間の契約により,義務を柔軟に設定することも可能であるとされています。
 このため,著作権者が紙媒体の出版を希望し,当面電子出版を見合わせたい場合においても,当事者間において義務を柔軟に設定し,電子出版についての出版権を設定することはできます。
 また,このように,同一の出版者に,第80条第1項第1号と第2号の両方の権利が設定されることは,効果的に海賊版対策を行う観点からは,有効な契約パターンであると考えられます。

問7 著作権者が契約締結時において電子書籍を配信する計画がなかったものの,効果的な海賊版対策の観点から紙媒体での出版と電子出版の両方についての出版権を設定し,出版の義務を柔軟に設定した場合には,その後,著作権者が電子書籍の配信を希望するに至ったときに,著作権者の意図に反して放置されるという,いわゆる塩漬け問題が生ずる恐れがあるのではないですか。

(答)

 同一の出版者に,第80条第1項第1号と第2号の両方の権利が設定されることは,効果的に海賊版対策を行う観点からは,有効な契約パターンであると考えられます。
 いわゆる塩漬け問題を懸念する場合には,あらかじめ契約の中で,著作権者が電子出版を希望する場合には,出版権者と協議し期日を定めることができる旨を定めておくことも一つの方策であると考えられます。

問8 著作権者が契約締結時において電子書籍を配信する計画がなかったものの,効果的な海賊版対策の観点から紙媒体での出版と電子出版の両方についての出版権を設定した場合,著作権者が出版権を設定した者以外の者に電子出版についての出版権を設定したいと考える場合に対応することはできないのではないでしょうか。

(答)

 同一の出版者に,第80条第1項第1号と第2号の両方の権利が設定されることは,効果的に海賊版対策を行う観点からは,有効な契約パターンであると考えられます。
 出版権設定契約の際に,後日著作権者が出版権を設定した者以外の者に電子出版についての出版権を設定することを想定する場合には,あらかじめ契約の中で,著作権者が第三者から電子出版を行う場合は,電子出版についての出版権の設定契約を解除することができる旨を定めておくことも一つの方策であると考えられます。

問9 紙媒体についての出版権と電子出版についての出版権の両方が同一の出版者に設定されている場合で,どちらか一方の義務違反が生じた場合の消滅請求の扱いはどうなりますか。

(答)

 紙媒体による出版と電子出版の両方の権利を有し,両方の義務を負う出版権者が,一方のみ義務に違反した場合,著作権者は義務違反に対応する権利のみ消滅を請求することができることとなっております。

問10 改正法の施行前に設定された出版権について,今般の改正法の施行により,当然に電子出版についての出版権も含むことになるのでしょうか。また,改正前に著作権者から許諾を得て電子出版を行っている場合,今般の改正法の施行により,当然に電子出版についての出版権が設定されたことになるのでしょうか。

(答)

 そのようなことはありません。
 改正前の出版権に基づく実務に影響を与えないよう,改正法の施行前に設定された出版権については,なお従前の例によることとされておりますので,今般の改正法の施行により,当然に電子出版についての出版権を含むことにはなりません。
 また,改正法の改正前に,著作権者から許諾を得て電子出版を行っている出版者であっても,電子出版についての出版権を設定しようとする場合は,改めて当事者間で出版権設定契約を締結する必要があります。

(2)視聴覚的実演条約の実施に伴う規定の整備

問11 視聴覚的実演条約実施のための規定を整備することで,実演家の権利に関して何が変わることになるのでしょうか。

(答)

 今般の改正法により,今まで我が国が保護の対象としていなかった実演のうち,視聴覚的実演条約の締約国の国民が行う実演が新たに保護の対象となります。ただし,既に我が国は,実演家,レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(以下「実演家等保護条約」という。),実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)の締約国等において行われる視聴覚的実演を保護の対象としており,欧米諸国を始め,多数の国で行われる実演は保護されていますので,新たに保護の対象となる実演は限られています。
 また,我が国の国民が行う実演については,これまで,我が国のほか,実演家等保護条約,実演・レコード条約の締約国等において行われる実演が保護されていました(行為地主義)が,今般の改正法により,実演が行われた国等を問わず,我が国の著作権法の保護の対象となります(国籍主義)。
 なお,視聴覚的実演条約で保護を求められている内容については,著作権法上既に保護するための規定が設けられていますので,我が国の著作権法により保護を受ける実演に関する実演家の権利の内容については,今回の改正において特段変更されておりません。

(以上)

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