環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号)及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第70号)について

1.はじめに

環太平洋パートナーシップ協定(以下「TPP12協定」という。)は平成27年10月に大筋合意に至り,平成28年2月に署名されました。これを受け,第192回国会において「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」(以下「TPP12整備法」という。)が平成28年12月9日に成立し,同月16日に平成28年法律第108号として公布されました。

TPP12整備法は,著作権法を含む11法の改正を内容とするものですが,一部を除きTPP12協定が日本国について効力を生ずる日から施行することとされていました。

その後,平成29年1月,米国がTPP12協定の離脱を表明したため,米国以外の11か国による交渉が行われ,平成30年3月8日に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(以下「TPP11協定」という。)が署名されました。これを受け,第196回国会において「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律」(以下「TPP11整備法」という。)が平成30年6月29日に成立し,同年7月6日に平成30年法律第70号として公布されました。

TPP11整備法は,TPP12整備法の題名を「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」に改めると共に,TPP12整備法の施行日を原則としてTPP11協定が日本国について効力を生じる日に改めることとしています。

TPP11整備法は公布と共に施行され,これにより,TPP12整備法において予定されていた著作権法の改正については,TPP11協定が日本国について効力を生ずる日(※)から施行されることとなりました。

我が国は,平成30年7月6日にTPP11協定の国内手続の完了について,協定の寄託国であるニュージーランドに対し通報を行い,同年10月31日に6か国目となるオーストラリアが,国内手続を完了した旨の通報をニュージーランドに対し行いました。これにより,TPP11協定は同年12月30日に発効することとなり,TPP12整備法において予定されていた著作権法の改正については,同日より施行されることとなりました。

(※)TPP11協定は,同協定の署名国のうち少なくとも6又は半数のいずれか少ない方の国が国内法上の手続を完了したことを寄託者に通報してから60日後に効力を生ずることとされています(TPP11協定第3条)。

(法律)※TPP11整備法による改正後のTPP12整備法(著作権法関係部分)

※TPP11整備法(概要,条文,新旧対照表等),TPP12協定及びTPP11協定については,以下の内閣官房TPP等政府対策本部のホームページからご覧ください。

https://www.cas.go.jp/jp/tpp/index.html

2.改正の趣旨

TPP12協定は,アジア太平洋地域の12か国(※)の参画のもとで構築された包括的な経済連携協定であり,モノの関税だけでなく,サービス,投資の自由化を進め,さらには電子商取引,国有企業の規律,環境,そして著作権を含む知的財産など,幅広い分野で21世紀型の新たなルールを構築することを目指すものとなっています。知的財産章もまた,このTPP12協定全体の大きな考え方の下に策定されており,著作権や商標,特許,地理的表示等の知的財産権について,権利の適切な保護と,民事上及び刑事上の権利行使手続並びに国境措置等について規定し,もって,知的財産権の保護と利用の推進を図る内容となっています。

TPP12協定で合意された著作権に関する規定を踏まえ,参加国において著作権等の適切な保護が図られ,権利行使の実効性や安定性が確保されることが期待されています。これらの著作権に関する規定の多くは,我が国の国内法において既に対応済みのものとなっています。一方,その一部については,我が国の国内制度の見直しを必要とするものもあります。

TPP12整備法による著作権法の改正は,こうしたTPP12協定の締結に向けて,平成28年2月に文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会において取りまとめられた「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書」等を踏まえ,以下の5点について規定の整備を行うこととしています。

(1)著作物等の保護期間の延長

(2)著作権等侵害罪の一部非親告罪化

(3)著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(アクセスコントロールの回避等に関する措置)

(4)配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与

(5)損害賠償に関する規定の見直し

その後,前述のとおり米国がTPP12協定の離脱を表明し,TPP12整備法の題名及び施行日の改正を主な内容とするTPP11整備法が公布・施行されることとなりました。これにより,上記(1)~(5)に係る著作権法の改正事項については,TPP11協定の発効日である平成30年12月30日に施行されることとなりました。

(※)オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国及びベトナム。

3.改正の概要

(1)著作物等の保護期間の延長(第51条第2項,第52条第1項,第53条第1項,第101条第2項第1号及び第2号関係)

著作物等の保護期間について,改正前の著作権法においては,著作物の保護期間の終期は原則として著作者の死後50年とされており(映画の著作物については公表後70年まで),実演やレコードについても,それぞれの起算点から50年とされていましたが,今回の改正により,著作物,実演及びレコードの保護期間の終期を,それぞれの起算点から70年とすることとしています。

(2)著作権等侵害罪の一部非親告罪化(第123条第2項及び第3項関係)

改正前の著作権法においては,著作権等を侵害する行為は刑事罰の対象となるものの,これらの罪は親告罪とされており,著作権者等の告訴がなければ公訴を提起することができませんでしたが,今回の改正により,著作権等侵害罪のうち,以下の全ての要件に該当する場合に限り,非親告罪とし,著作権等の告訴がなくとも公訴を提起することができることとしています。

  • [1]侵害者が,侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等(権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物等)の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること
  • [2]有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること
  • [3]有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる「利益が不当に害されることとなる場合」であること

これにより,例えばいわゆるコミックマーケットにおける同人誌等の二次創作活動については,一般的には,原作のまま著作物等を用いるものではなく,市場において原作と競合せず,権利者の利益を不当に害するものではないことから,上記[1]~[3]のような要件に照らせば,非親告罪とはならないものと考えられる一方で,販売中の漫画や小説の海賊版を販売する行為や,映画の海賊版をネット配信する行為等については,非親告罪となるものと考えられます。

(3)著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(アクセスコントロールの回避等に関する措置)(第2条第1項第21号,第113条第3項,第119条第1項,第120条の2第1項第1号及び第2号関係)

改正前の著作権法においては,アクセスコントロール機能のみを有する保護技術については,技術的保護手段の対象とはされていませんでしたが,今回の改正により,従前の技術的保護手段に加え,アクセスコントロール機能のみを有する保護技術について,新たに「技術的利用制限手段」を定義した上で,技術的利用制限手段を権原なく回避する行為について,著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き,著作権等を侵害する行為とみなして民事上の責任を問いうることとするとともに,技術的利用制限手段の回避を行う装置やプログラムの公衆への譲渡等の行為を刑事罰の対象とすることとしています。

(4)配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与(第95条第1項関係)

改正前の著作権法においては,商業用レコード(市販の目的をもって製作されるレコードの複製物)を用いて放送や有線放送が行われた場合,実演家及びレコード製作者は放送事業者等に対し二次使用料請求権を有することとしており,CD等の商業用レコードを介さずインターネット等から直接配信される音源(いわゆる「配信音源」)を用いて放送や有線放送が行われた場合においては,二次使用料請求権は発生しませんでしたが,今回の改正により,実演家及びレコード製作者に対し,配信音源の二次使用について,商業用レコードと同様に二次使用料請求権を付与することとしています。

(5)損害賠償に関する規定の見直し(第114条第4項関係)

著作権等侵害に対する損害賠償請求について立証負担の軽減を行うため,現行規定に加えて,侵害された著作権等が著作権等管理事業者により管理されている場合には,著作権者等は,当該著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を損害額として賠償を請求することができることとしています。

(6)施行期日

これらの改正事項については,前述のとおり,TPP11協定が日本国について効力を生ずる日である平成30年12月30日(※)から施行されることとなっています。

(※)TPP11協定は,同協定の署名国のうち少なくとも6又は半数のいずれか少ない方の国が国内法上の手続を完了したことを寄託者に通報してから60日後に効力を生ずることとされています(TPP11協定第3条)。平成30年10月31日,我が国を含む6か国(メキシコ,日本,シンガポール,ニュージーランド,カナダ,オーストラリア)が国内手続を完了し,協定の寄託国であるニュージーランドに対し通報を行ったことから,同年12月30日にTPP11協定が発効することとなりました。

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