日本語教育施策説明

司会(中野):引き続きまして,日本語教育に関する施策等について,文化庁,文部科学省,国際交流基金の担当官から御説明いたします。
 なお,事情により国際交流基金,文化庁,文部科学省の順で行います。お手持ちのパンフレットの参考資料が前後いたしますが,御了承ください。
 まず最初に,独立行政法人国際交流基金日本語事業部企画調整課課長の嘉数勝美様から国際交流基金の日本語教育施策について御説明いただきます。

嘉数:国際交流基金の日本語事業部の嘉数でございます。今日はお暑い中,どうもありがとうございます。国際交流基金の事業説明をさせていただきます。と,申しましてもいつも世界に学習者が何人いるという話ばかりしておりますので,今日はそういう話ではなくて,今国際交流基金が何を考えているか,あるいは何に重点を置いているかというお話をしたいと思います。まず,この機会をお借りできまして感謝申し上げます。
 資料はお手元にありますが,これに関する話をしてまいりますので,適宜御覧ください。あるいは,お時間ございませんから,後ほどゆっくりお読みいただいて,また御質問等あれば直接伺います。
 実は今,寺脇部長がちゃんとネクタイをしていらっしゃいました。私,政府公認の「クールビズ」という感じでネクタイを外しました。本来でしたらこれは欠礼といって,礼を欠く,欠礼ですけれども,今年から大っぴらに小泉首相以下全員がやっていらっしゃいますから,私も大っぴらにやらせていただきます。
 ところでこの「クールビズ」というのは,また何か新しい横文字というか,英語でもあるような英語でないような感じがしますけれども,本当は英語ではありませんね。正しい英語ではないと思います。ただ,一昔前の同じ発想があった「省エネルック」がありましたけれども,背広の半そでを切ったようなやつがありましたね。あれ,一瞬で消えてしまいましたけれども,あの「省エネルック」というネーミングよりは,余程センスがいいと思います。とは言っても,別に僕はこれを褒めているわけではなくて,日本語を扱う側とすれば,せっかく文化庁や,国語課が一所懸命カタカナ語を日本語に直そうとしている状況で,また政府が主導をして「クールビズ」というわけのわからない言葉を使うのは,本当はいいんだろうかという疑問を個人的には持っております。もちろん,小泉首相とけんかをする気はございませんし,けんかをしたらあのけんまくでは負けてしまいますから,やめておきます。
 実は,同じ「クール」という言葉がありますが,皆さん,「ジャパンクール」という言葉をお聞きになったことがありますか。これ,別に日本が涼しいという意味ではありません。「クール」というのは,特にアメリカが中心ですが,かっこいい,非常にいいものだという意味で「クール」と言いますね。これは昔は単純に“It's very good.”あるいは“It's good.”と言ったものが,最近は“It's cool.”と言いますね。「クール」は非常に涼しいという意味ではなくて,非常にいいということです。では何が「クール」かと言いますと,今特に若い人たちを中心にして,日本の「クール」さが注目をされています。それは例えば,日本のアニメーションであるとか,あるいは映画であるとか,ポップスであるとか,あるいはファッションであるとか,従来,日本があまり自信を持っていなかった部分で,ジャパンが「クール」であるという評価がございます。これに呼応して,日本語を勉強したい,日本に行ってみたいという人が増えています。特に若い人,小・中・高校生を中心にそういった動機から勉強をする人が増えています。これは,恐らく世界中で共通している現象だと思います。
 そういったことを考えますと,私たちは日本語が特殊であって世界に広めるのは難しいと思っていた一時期の自虐的な日本語観,あるいは逆に言うと,日本語は特殊だから君たち外国人にはわからないよという特殊な優越感,こういった二面性のある問題がありましたが,それとは関係なしにやはり世界が日本語を必要としている,あるいは日本語を勉強したいと思っている状況が現にございます。それはまさに,国際交流基金が2003年に調査をしました結果によりますと,世界で今瞬間最大風速といいますか,235万人が勉強しています。そのうちの6割以上が小・中・高校生でございます。こういった子供たちの動機はやはり,ジャパンが「クール」であると,日本の文化が「クール」であるというふうな動機から勉強をしている人が多いと聞いています。
 一方,では現代の日本が「クール」かといいますと,必ずしもそうではなくて日本語は少なくとも2000年以上の歴史を持っている。連綿と続く歴史を持っている。そして文学を持っている,あるいは俳諧という特殊な文学を持っている,あるいは短歌を持っている。そういったさまざまな文学をつくってきました。それから,日本は日本の国をつくるため,あるいは近代化をするために外国の図書,文献,思想等を日本語に翻訳をしました。したがって,非常にたくさん日本語で読める資料がございます。例えばここではちょっと,あえて語弊を覚悟で申し上げますと,かの中国は例の文化大革命時代に相当に共産主義とは相入れないということで,古い思想,あるいは古い歴史に関する資料等を燃やしてしまいました。あるいは処分をしてしまいました。ところが,そういった古い時代の資料,あるいは貴重な文献等が,実は日本に非常にたくさんございます。そういった意味では,日本語は日本語としてではなくて,媒介語として例えば他の国の文化を勉強する,研究するというときにも使います。こういった価値がございます。そういった意味で,我々が日本語が特殊であるという間違った自虐観,あるいは間違った優越感を持たずに,もっと客観的に日本語が歴史を持っていて,必要とされている,あるいは使えるということを踏まえて日本語を勉強してほしいと思っています。その意味では,私どもはこれから従来とは違う発想で日本語教育を推進していきたいと考えています。
 もう一つですが,日本語は例えば在外の企業等がございますが,日系企業が海外に進出をしますけれども,この際,従来は現地語,あるいは英語を介して交流をする,あるいは技術を移転するということが行われていましたが,最近では,「モノ」をつくる精神や技術は日本語で伝えた方が現地の人々には着実に伝わるという報告もございます。これは,中国からもあります。ポーランドからもあります。そして,アメリカからもあります。そういった状況がございますから,日本語教育は,あるいは日本語は決して特殊ではなくて,世界の普遍的な文化財としての一つの価値を持っている。と申しましても,日本語が文化財として最良であるとか,最高であると言いますと,これは妙な国粋主義に走ってしまいますから,それはよした方がいいと思います。
 そういった状況を踏まえて,私どもは日本語教育を推進してきたいと思っています。一方で,国際交流基金としては30年以上も海外の日本語教育をやっておりますが,ではほかの先進国の海外普及を考えてみますと,どうでしょうか。よくゲーテ・インスティチュート*1やブリティッシュ・カウンシル*2と比較をされます。しかし彼らは世界に100から200以上の支部やあるいは学校を自ら持っています。しかし,国際交流基金は恥ずかしながらというと政府に怒られてしまいますが,せいぜい19カ所の海外事務所しかございません。そしてそこで日本語を教えている講座はせいぜい8カ所しかございません。こういった状況は,果たして本当に望ましい,あるいは需要に応じた対応であろうかといいますと,決してそうではないと思います。彼らが,ゲーテやあるいはブリカンが海外で自国語を普及するということは,彼らが持っているメソッド,あるいはスタンダード,あるいは共通教材,あるいは共通のコンセプトを持ってやっているわけです。そしてあるときはそれを民間学校として経営することもできる,ということをやっています。
 しかし,国際交流基金あるいは日本政府としては,いまだそういう取組はしておりません。したがって,私どもはこれから日本語を海外に普及していこう,あるいは海外で学びたいという御希望におこたえするためには,ますます包括的な戦略的な日本語のスタンダードをつくりたいというふうに考えております。今,そういった仕事をまさに始めております。これは必ずしも海外で日本語を教える場合だけではなくて,国内で皆さんのように日本語を教える方々がやはり必要とするメソッド,あるいは方針,あるいは教材,あるいは知見であります。そういった包括的なスタンダードを,私たちは考えております。
 文化庁の大会で,自分の組織のいわば宣伝をするのは実に恐縮なんですが,私どもには「をちこち」,これは実は「遠近」と書きますが,遠近と申しましても眼鏡の遠近ではございません。遠い,近い,あるいは,「をち」,「こち」という。これがなまって「あっちこっち」となります。従来「国際交流」という名前でしたが,最近「をちこち」という名前に変えました。今回は,日本語の大特集をやっております。中には今私が申し上げたスタンダードに関する話も入ってございます。それ以外にも,私たちが,日本語にはこういう需要がある,こういう現象がある,あるいはこういう見方がある,視点がある,日本人と外国人にもこういう違いがあるといったあらゆる視点から日本語を見ております。残念ながら齋藤孝さんの一文は入っておりませんが,それ以外の文章はかなりおもしろい文章が入っております。ぜひこれをお求めいただいて,本当に宣伝で申しわけございませんけれども,決して無駄になりませんから,お読みいただければ幸いでございます。詳しくはまた資料を御覧いただければ幸いでございます。
 それではこれで失礼します。ありがとうございました。

*1 ゲーテ・インスティチュート ドイツ連邦共和国の文化機関。海外でのドイツ語の普及を促進し,世界の国々とドイツとの文化交流を実践し,文化,社会,政治についての情報を通じて,ドイツの全体像を紹介している。
*2 ブリティッシュ・カウンシル 英国政府の国際文化交流機関。世界109カ国227都市で活動。教育,英語学習,科学技術,芸術の分野において日英両国の様々な団体と協力のもと文化交流活動を行っている


司会(中野):引き続きまして,文化庁文化部国語課長の平林正吉より,文化庁の日本語教育施策について御説明を申し上げます。

平林:それでは,私の方から文化庁の日本語教育施策について御説明いたします。お手元のパンフレットの7ページから15ページまで,文化庁関係の資料を掲載しております。時間が限られておりますので,ポイントだけをかいつまんで御説明いたします。資料につきましては,後ほどゆっくりと御覧いただければと思います。
 まず,7ページを御覧ください。文部科学省・文化庁における日本語教育施策一覧でございます。これは文部科学省,文化庁及び独立行政法人国立国語研究所で実施している主な日本語教育施策を記述したものでございます。事項の1から次のページの7までが文化庁の施策でございます。後半の8から13までが文部科学省の施策でございます。文部科学省の施策のうち,初等,中等教育局が所管しておりますものにつきましては,後ほど文部科学省の担当者から御説明をいただくことになっております。
 現在,我が国の外国人登録者数は約197万人でございます。その数は年々増加の一途をたどっているところでございます。また,我が国で暮らしております外国人は留学生,就学生,あるいは技術研修生,ビジネスマン,外交官などのほか,いわゆるニューカマーと呼ばれる日系南米人等の定住者,あるいは日本人と国際結婚された外国人配偶者,インドシナ難民,条約難民の方々など,国籍,年齢,在留目的などが非常に今,多様化しているところでございます。
 このような様々な外国人に対する日本語支援には,まず地域の地方公共団体が中心になって積極的な取組を進める必要があると考えておりますが,国としての取組も重要です。文化庁としましては,地域における日本語教育を支援するための事業を実施しているところです。その大きな柱となっておりますのが,資料の7ページ事項の1,日本語ボランティア活動の支援・推進であり,2番目の地域日本語教育活動の充実でございます。この二つの事業につきましては,10ページと11ページにその概要を示す図を載せておりますので,そちらの方も御覧いただければと思います。
 まず,10ページの方ですが,中に日本語ボランティア研修とございます。これは地域で外国人に対する身近な日本語支援として御尽力されている日本語ボランティアの方々に対しまして,更なる自己研鑽の機会を提供するものでございます。また,地域日本語支援コーディネータ研修というものが左側にあるかと思いますが,これはこのような日本語ボランティアの方々を初め,地域で日本語支援に携わっているさまざまな機関や,関係者を結びつけて地域全体の支援の輪を広げていくために重要な役割を果たす地域日本語支援コーディネータの育成を行うものでございます。
 この二つの研修,どちらも規定のプログラムというものを各地で実施するというものではございませんで,要請のありました地方公共団体,国際交流団体と文化庁が委嘱した日本語教育団体である社団法人国際日本語普及協会とが協議をして内容を詰めていただくことになっており,それぞれの地域の特性であるとか,ニーズに応じた研修内容を組み立てることができるようになっております。
 次に,11ページ,学校の余裕教室等を活用した親子参加型の日本語教室の開設事業についてでございます。地域に在住する外国人の中には,例えば農漁村など,地方に暮らしているため近くに適当な日本語教室がないとか,あるいは若い外国人の母親が育児から手が離せないといった理由などから,日本語を学びたくても学習機会に恵まれない人たちが多くいらっしゃいます。このような人たちに焦点を当てた日本語教室の開設がこの親子の日本語教室事業でございます。
 例えば,教室に乳幼児の世話をする保育士を配置して,親が安心して日本語学習に集中できる学習環境を設けたり,あるいは小学生の子供が親と一緒に日本語や生活習慣を学べる場所を設けるなど,地域の実情に応じて工夫された親子の日本語教室が開設されているところでございます。各地で開設されている親子の日本語教室は,単なる日本語教育だけの場ではなく,情報交換,異文化間の交流,さまざまな悩みの相談もできるような,とかく引きこもりがちな外国人の心の居場所としてもとても良い効果を上げているようでございます。この場をお借りしまして,この親子の日本語教室の運営に御尽力をされている方々に御礼を申し上げたいと思います。
 また,昨今,外国人年少者をめぐる問題が大変注目をされております。この大会のテーマにつきましても,昨年の日本語教育大会では,年少者に対する日本語教育のあり方について取り上げたところでございます。今年は外国人年少者への支援を考え,「子をもつ親への日本語学習支援」と題して,子をもつ親に対する支援について取り上げることにしております。これは,親の考え方が年少者の日本語教育についても大きな影響力があると考えられるからでございます。親の意識が年少者の日本語学習への熱意にも影響を与える。そこで,子供の成長について考えながら,その親への支援の在り方について認識を深めたいと思っております。
 それから,7ページ目の事項の4でございますが,インドシナ難民や条約難民の方に対する日本語教育を,財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部へ委託して行っております。難民に対します日本語教育は従来,品川区の国際救援センターで集中的に実施しておりましたが,インドシナ難民の新たな受け入れが今年度をもって終了することから,このセンターは平成17年度限りで閉所されることになっております。平成18年度以降につきましては,条約難民の方を対象とした通所型の施設が新たに設けられ,難民事業本部への委託という形で引き続き日本語教育を実施することにしております。
 なお,従来からこの難民事業本部を通じて行っておりました日本語教育相談などの国際救援センター終了後のフォローアップ事業につきましては,インドシナ難民の方を対象としたものにつきましても,従来どおり継続して実施する予定でございます。引き続き,御協力よろしくお願い申し上げます。
 最後ですが,説明は割愛させていただきますが,パンフレットの12ページから15ページには,文化庁が調査を行いました平成15年11月の時点での国内の日本語教育の概要のデータを載せております。この毎年の調査に御協力をいただきまして,誠にありがとうございます。なお,御協力をいただいております平成16年11月時点での調査結果につきましては,現在,調査票を回収,集計中でございます。また改めて皆様方に御報告ができるかと思います。
 以上,簡単でございますが,これで文化庁国語課の施策の説明を終わります。
 どうも,御清聴ありがとうございました。

司会(中野):施策説明の最後になります。文部科学省初等中等教育局国際教育課の適応日本語指導係主任の高橋信雄から,初等中等教育にかかわる日本語教育施策について御説明申し上げます。

高橋:文部科学省国際教育課の高橋と申します。よろしくお願いします。
 こういった場でお話をいたしますのは,初めてなものでございますから,聞きづらいところがあるかと思いますけれども,お許しいただきますようお願いいたします。
 本日,お集まりの皆様方におかれましては,日本語教育に多大な御尽力をいただいているところでございますので,この場をお借りしてお礼申し上げます。
 私の方からは,外国人児童生徒,帰国児童生徒の現状及びその施策などについて,簡単ではありますが御説明申し上げます。こちらのピンクの冊子の16ページを御覧ください。まず,帰国児童生徒の現状について御説明申し上げます。
 我が国の公立小・中学校,高等学校及び中等教育学校に在籍する帰国児童生徒は,平成15年度におきまして約1万人でございます。ここ数年はわずかでございますが,減少傾向にあります。また,資料には付いておりませんが,地域別の在籍状況としましては,大都市圏に集中しております。さらに,近年では,海外で働く日本人労働者の若年化ですとか,滞在期間の長期化がございまして,帰国児童生徒であっても日本の学校に就学した際に日本語指導が必要な子供がいるのが現状です。
 次に,外国人児童生徒の現状について御説明申し上げます。我が国の公立小・中・高等学校及び盲・聾・養護学校や,中等教育学校に在籍する外国人児童生徒数は,平成16年5月現在で約7万人でございます。そのうち,日本語指導が必要な児童生徒数は,平成16年9月現在,約2万人在籍しております。この数は調査を始めて以来,最も多い数となりました。ここ数年,横ばい傾向ではございますが,少子化の影響などで学校へ在籍する全体の児童生徒数が減少している中で,日本語指導が必要な児童生徒数は相対的には増加していると言えます。
 また,この資料には載っておりませんが在籍期間別で見ると,平成9年と平成16年との比較で,2年以上学校に在籍している児童生徒数が増加しており,逆に6カ月未満の在籍児童生徒数は減少しておりまして,滞在期間は長期化の傾向があると言えます。
 次に17ページの上のグラフを御覧ください。母語別で見ますと,全体で58言語にわたり言語の多様化が進んでおります。一方,ポルトガル語,中国語,スペイン語,この3言語では全体の約4分の3を占めており,この傾向というのはここ数年変わっておりません。また,在籍人数別の学校数として見てみますと,学校に一人しか在籍していない学校が最も多く,次に5人以上の学校の順となっております。また,外国人児童生徒の中には,関東,東海,近畿,こういった地方の中に集住するケースが見られ,このように地域の集住と分散という状況の中,地域の実態に応じた取組が求められているところでございます。
 以上のような現状を踏まえまして,文部科学省としては日本語指導が必要な児童生徒に対して,日本語指導を始めとして学校への早期の適応ですとか,円滑な受け入れを目的として,主に四つの観点から施策に取り組んでいるところでございます。
 一つ目が体制の充実,二つ目が日本語指導,三つ目が教員の研修ですとか,情報の共有化,四つ目が調査研究といった四つの視点から施策に取り組んでいるところでございます。まず,そもそもの公立学校での外国人児童生徒の受け入れについてでございますが,外国人の子供は日本の子供のように義務教育への就学義務というのは課せられておりません。しかしながら,国際規約ですとか,児童の権利条約といったことを踏まえまして,外国人の子供が公立義務教育小学校へ就学を希望する場合には,無償で就学を認めているところでございます。さらに,教科書の無償配布ですとか,就学援助などについても日本の子供たちと同様に教育を受ける機会を提供しております。
 次に,具体的な施策の内容でございますが,一つ目の体制の充実という観点から見ますと,帰国・外国人児童生徒のための日本語指導に対応する教員,この教員を特例加算しております。平成17年度につきましては,985名分の給与費,これの2分の1を国庫負担しています。また,少し飛びまして,資料としましては18ページ,最後の方になりますけれども,帰国児童生徒に対しての配慮でございますが,附属学校に帰国子女学級などを置く国立大学に対して,所要額を計上してきているところでございます。さらに,高校とか大学への入学者選抜に関しまして,特別の定員枠ですとか,特別な選抜の実施といった弾力化を図るようにお願いしてきているところでございます。
 資料17ページに戻りまして,4の2の教員研修についてでございますが,毎年度各教育委員会の指導主事の方々に集まっていただいて,研究協議会を開催しているところでございます。この研究協議会におきまして,各地域の取組,情報交換とか,相互交流を行っていただきまして,より一層の施策の充実を図っているところでございます。また,日本語指導の教員のための研修も行っておりまして,こちらで専門的な研修を行って,指導力の向上を図っているところでございます。
 続きまして,日本語指導についてでございますが,日本語指導が必要な子供に対する日本語の指導に当たっては,来日前の生活歴ですとか,学習歴,家庭環境などを踏まえて,体系的に日本語指導を行っていくことが重要でございます。来日間もない日本語指導が必要な子供は,教師はもちろん,子供同士のコミュニケーションを図るためにも,生活に必要な日本語を学ばせることが重要です。その子供の性格によって接し方というのは大きく違いがあるとは思いますけれども,重要なことは学校へ来るのが楽しいと感じさせてあげることであり,学校に興味,関心を抱かせることが速やかに学校に適応できる助けになるのだろうと思っております。このため,文部科学省では学校での廊下でのあいさつですとか,生活のための言語を盛り込んだ日本語指導の教材,「日本語を学ぼう」という冊子を作成しているところでございます。  こういった日常会話程度の日本語が話せるようになった後には,日本語で学ぶ力の育成,学習に必要な日本語を習得させることが重要になってきます。このため,文部科学省では学識経験者ですとか,日本語指導の担当の教員の方々で構成される協力者会議を設置しまして,学校教育におけるJSLカリキュラムの開発を行っているところでございます。こちら小学校編を昨年7月に取りまとめたところでございます。このJSLカリキュラムは多様な児童生徒の実態に応じて,教師自身が柔軟にカリキュラムを組み立てることを支援していくためのツールと位置付けております。これらを活用しながら,学習活動に参加するための学ぶ力というものを学んでいただくことにしております。
 こちらJSLカリキュラムの中学校編につきましては,昨年度大まかな方向性がつきまして,現在,教科ごとのコンセプトを固めていただいているところでございます。ちなみに本日のパネルディスカッションに参加していただきます高木先生,伊東先生といった先生方にも御議論いただいているところでございます。
 次に18ページになりますが,調査研究という観点からの施策でございます。調査研究としましては,帰国・外国人児童生徒の個に応じた指導のあり方ですとか,日本の児童生徒との相互啓発を通じた国際理解といった観点の推進を図ります,帰国・外国人児童生徒とともに進める教育の国際化推進地域といった事業を,全国33地域で現在実施しているところでございます。また,母語,その外国人の方々の母語が理解できる指導協力者を学校に派遣しまして,チームティーチングですとか,そういった指導によって学習支援活動を行っていただき,指導の充実方策を調査研究していただきます,母語を用いた帰国・外国人児童生徒支援に関する調査研究といった事業を,全国43地域で実施しております。
 さらに,今年度から新規の事業で不就学外国人児童生徒支援事業というものがございます。こちらは最近非常に大きな課題となっております外国人児童生徒の不就学の問題について,就学の実態把握ですとか,不就学の要因分析,また就学を支援するための取組について研究していただく事業でございます。こちら全国で12地域に実施していただくことになりました。外国人児童生徒の不就学の問題につきましては,既に市町村で独自に実態調査が行われたところがございまして,その調査結果を見ますと,言葉の問題ですとか経済的な問題といったことも要因ではございますが,そもそも保護者に対する情報提供というのが足りないということも伺えます。そのため,市町村教育委員会に対して,就学予定者,就学をする相当の年齢になっているその外国人児童生徒の保護者に対して,入学に関する事項を記載した就学案内を発給するようにお願いしているところでございます。
 また,文部科学省では,就学案内,例文を7言語で記載した就学ガイドブックを作成して,各市町村教育委員会に配布したところでございます。この不就学の問題につきましては,教育委員会や学校だけの取組では限界がございまして,地域や関係機関の協力が不可欠であるため,我々としても今後とも関係省庁との連携を推進していきたいと考えているところでございます。
 最後になりましたが,こうした日本語指導が必要な外国人児童生徒,帰国も含めてですが,こういった方々への対応につきましては,地域の実情に応じた取組が求められております。これは学校の設置者を中心としながら,関係自治体,地域,外国人を雇用する企業を含めて地域社会全体で取り組んでいくことが必要でございます。
 文部科学省としましても,帰国・外国人児童生徒の教育に関する対応をすべく,支援策を実施してきているところでございますが,日本語指導に携わっている皆様方におかれましても,帰国・外国人児童生徒の教育の充実のために,各地域ですとか,各学校現場の方から協力の依頼がございましたら,何とぞお力を貸していただけますよう,よろしくお願いいたします。
 簡単ではございましたが,文部科学省の施策について御説明申し上げました。以上でございます。

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