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講演


 
   
第一部 特別講演
   
   
「携帯向け映像配信ビジネスの現状」
   
   
岸原 孝昌 (モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)常務理事)
   
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 あとは、多数の権利者団体が出てきますと、この間の分配比率をどうやって行ってくるかといったことも大きな問題になってきます。そういった点で、この間に集中処理機構を挟むことによって、コンテンツプロバイダは登録しましたデータを、集中処理機構との間でやり取りするだけで済んでしまう。そうしますと、1対1の関係ですべてが終わるということになります。著作権団体さんもこういった集中処理機構から報告を受けることで、一度で処理することができるため、双方にCDCのシステムを活用するメリットが出てくるということでございます。
 また、今回は利用楽曲の権利情報、管理者コードの付与といったアナログの作業を自動化するために、フィンガープリントを利用して、自動マッチングをするという仕組みを作ろうとしております。これによって、CP側ではコンテンツをCDCのシステムに投げることによって、自動的にIDを付与していく。これによって、何度もデータベース、例えば、5団体あれば5つのデータベースを調べることなく、一度にその楽曲の特定を行うということができるようになります。そうしますと、そういったIDの付与作業といったものが1つ軽減をされるということでございます。それと、先ほどもいいましたように、各権利者団体に報告するフォーマット、こういったものもCDCの方で一本化をして、そこから報告を行っていくということによって、報告実務といったものも非常に軽減をされてくるということです。
 あとは未許諾配信の回避ということについてもメリットがでてきます、共通データベースを持つことによって、こういったリスクヘッジも可能になってくるということでございます。これによって、権利処理といったものが非常に効率よく進んでくる。
 このようなシステムがないと、モバイルにおいては音楽著作権だけでも、権利処理作業があと数年で破綻するのではないかと思います。要するに、モバイルコンテンツの音楽配信については、1,700億を超える規模になっておりますが、配信の数が多くなればなるほど、この処理コストが膨らんできている。しかも、これまではダウンロードとストリームだけだったのが、サブスクリプションであったり、あとは、利用期間制限であったりということで、様々な配信形態が出てくる。そうしますと、それにあわせて著作権の処理、あとはそのシステムを作っていかなきゃいけないということが現在、問題になってきているということです。
 今後、映像配信になってきますと、権利者の方々の数といったものが数倍に増えてくるということが想定されます。そうしますと、こういった処理システムをある程度想定をしていくことによって、将来ビジネスモデルが大きくなってきたときに、きちんと権利者の方々にその権利料と、配信した対価が支払われるという仕組みを作っていく必要があると思っています。
 携帯電話の中で動画を視聴するといった点に関しては、非常に画面が小さいということもあって、とても恵まれている状況にあるということはいえないと思います。そうしますと、携帯電話から、テレビに転送して実際に見ていくといったような、視聴環境の改善といったものも携帯電話でも進めていかなければいけないのではないかと考えております。まずは、音楽を聴くモバイルにおけるオーディオ環境の改善を進めるためモバイルオーディオ推進協議会といったものも作っております。これは現在、iPodですと、iPodで配信されましたものを、iPodドッグのあるオーディオセットにつないで、そこからスピーカーだけ聞くといった環境がありますが、携帯電話ですと小さな端末から音楽を聴く、またはイヤホンで聞くといったものしか現在ありません。携帯電話ではPCの配信よりも高い値段でユーザーさんがコンテンツを買っていますが、モバイルオーディオ環境をもっと改善することによって、アルバムを楽しむようにコンテンツを買ってもらったりというような新しい動きがでてくるのではないかなということでございます。実は、車の中においてブルートゥースを利用してコンテンツを利用するといった仕様が、ほぼ来年ぐらいには確定する予定でございます。それに合わせて、携帯電話からストリーム配信をして、オーディオ機器で視聴するという利用環境の改善を進めているという状況でございます。
 最後になりますが、これから動画を配信しているプラットフォームとして新たに見込まれている部分としまして、携帯向けのマルチメディア放送といったものが、2011年、アナログ停波された後に予定をされております。この中では、アナログの1チャンから12チャンの周波数のところをLow帯と、Hi帯という形で、全国放送と、地域ブロックという形で放送する予定でございます。この中ではこれまで放送で行われてきたストリーム的な番組配信と、あとは蓄積型のプッシュキャストが想定されており、放送波を使って大容量のコンテンツを配信していく予定です。配信方式としては今、受託事業と委託放送事業ということで、ハードとソフトを分離してやっていこうということになっておりますが、これから、携帯電話と同じように、新たなビジネスモデルを生んでいく上では、次のような施策が必要だと思っております。
 こちらの方の図は、MCFの方からパブリックコメントとして総務省さんに提出をさせていただいたところですが、これまで、放送といいますと、放送局さんという大きなプレーヤーがすべてを担って配信をしてきているという状態になりますが、マルチメディア放送になりますと、受託事業者と委託事業者、そこに番組を提供する事業者と、サイト運営事業者と、それぞれのプレーヤーにおいて、自由に連携をできるというインターフェースの自由と、オープン化といったものを進めてほしいと考えております。
 こういった番組をやっていく上で様々、権利関係、あとはコンテンツ製作、ビジネスモデルということで、様々整備を進めていかなければいかないですが、実はこれまで携帯の中で動画等の番組配信をしてきて、非常に困っているところとしましては広告モデルです。こういったネット配信に合わせた広告モデルのフォーマットといったものが、まだ整備されていないというのが大きな悩みになっております。テレビですと、テレビの番組のCMの素材といったものは多数あるんですが、ネット、あとは携帯電話の小さな画面ようのCM素材といったものはほとんどありません。実は動画配信において課金のモデルが非常に大きくなっているといったのは、こういったモバイル動画に合わせた広告モデルのフォーマットがまだ整備されていないということも1つの理由かなというふうに思っております。今後、この辺りの広告モデルのコンセプトから素材、あとはフォーマット、等の開発といったものを、是非とも関係業界の方々に、ご尽力いただいて進めていただきたいと思っております。先ほどの広告モデルの1つの例でございますが、放送に関する権利者情報等が整理されてきますと、権利者情報に合わせて当該CDの販売へリンクしていくといったような、新しいアドの仕組みといったものも考えられると思っております。次世代3.9世代や携帯向けマルチメディア放送含めた放送と通信の融合といったことも見据えて、新たなモデル開発といったものを、皆さま方と一緒に進められていけばいいかなというふうに思っております。

 それでは、以上でわたしの方の講演の方、終了したいと思います。どうもありがとうございました。
   
         
岸原孝昌「携帯向け映像配信ビジネスの現状」 │  関本好則「契約面から見たNHKオンデマンドの現状と課題」

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