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第10回総会
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〔開催日〕
昭和26年4月23日
〔出席者〕
土岐会長,宮沢副会長
阿利,安藤,石黒,今井,緒方,折口,金田一,颯田,沢登,園田,滝口,田口,千種,時枝,中島,服部(静),原,藤森,舟橋,松坂,山口,佐藤各委員
原国語課長,ほか関係官
庶務報告(原国語課長)
3月22日付で剣木次官が解任になり,委員をやめ日高新次官が委員になった。それから政府の方針により審議会の整理統合が行われたが,むろん国語審議会はそのまま存続する。ただ委員の任期が今まで3年であったのが,2年になった。
<<議 事>>
人名漢字に関する建議案
土岐会長
では,固有名詞部会の部会報告を部会長の宮沢副会長からしてもらい,みなさんの了解を得たい。
宮沢副会長
前もってお断りしなければならないのは,最後の部会の1,2回ほど欠席したので,そのところは出席しておられた土岐会長から補ってもらうことにする。
はじめ,とりあえず会長とわたくしが衆議院の法務委員会に行って関係者に会い,話し合った。そのとき,法務委員会から,法律で名づけ文字を制限することはやめたい。その方法としては,当用漢字表を基準にして常用平易な文字を用いなければならないという注意はするが,強制はしないという方法と,野放しにするという二つの論があり,けっきょく前者が強いという話であった。そこでわたくしと会長がいろいろ説明して,休会前の国会で一挙に決めてしまうようなことはしないでくれとはっきり申し入れておいた。法務委員会側ではだいたい了承してくれた。その結果を部会に報告したら,部会ではそれならば法務委員会の参考になるようなものを出そうということになった。そこでいろいろ意見がかわされ,当用漢字表のなかに名に用いる漢字を取り入れるという意見と,当用漢字表のわくははっきりさせておいて名に用いる漢字を加えるという意見,さらに当用漢字表とは別に当用漢字表のなかからとそとから字を集めた人名用の漢字表を作るという三つの意見になり,けっきょく第2の意見に落ち着き,その方針で具体的に字を集めてみた。そしてさらにそれを,人名漢字に入れるものをA,入れないものをBと分けていたが,法務委員会ではこちらの要望にもかかわらず,一挙に本会議までもっていって可決してしまったのである。聞くところによると,文部委員会から合同審議を提案したが,法務委員会でそれをけってしまったということだ。
御承知のように形の上では全然野放しではないが,法律が撤廃されたと同じことになったのである。続いて,これが休会明けになると参議院にまわされるが,参議院も通るだろうという見通しになっている。このように情勢の変化があったので,部会の態度もそれに応じて変え,この際国語審議会の態度をはっきりさせた文部大臣への建議案を部会で作ろうということとなった。そのあとはわたくしは欠席したので土岐会長にお願いする。
土岐会長
以上のお話でだいたい尽しているが,わたくしから一言つけ加える。
字を選ぶにあたって,国語協会で10,000名を調査して作った「標準名づけ読本」,国語課で電話帳から25,630名を調査したもの,朝日新聞の調査,全国戸籍事務連合協議会から出たものと,四つの資料を材料として検討した結果,92字を集めた。それをさらに検討して名づけに必要な字をAとして21字,必要でないと認めるもの71字を決めた。しかし,21字では少ないではないかという意見もあり,また原委員から45字案が出,さらに同委員から特別に人名だけの漢字表を作ると,当用漢字表でしばっている上にまた人名漢字表でしばるという感じを与えるから,人名漢字表は作らないほうがよいというような意見も出て,けっきょく声明書にしようということになった。また,国語審議会は建議機関であり,今回の問題も見方によれば文部大臣の国会での答弁から出たものであるので,大臣への建議にしてはどうかということになったのである。
以上,部会のやったことについてのなにか質問があれば,
(発言なし)
では,部会でやったことについては承認を得たことにしてよいか。
(一同異議なし)
人名漢字に関する建議案の続き