2026年4月28日
小さな市の大きなミュージアムの挑戦(前編)
能美ふるさとミュージアム 学芸員 菅原 雄一
「能美ふるさとミュージアム」(愛称:のみふる)は石川県能美市にあります。
能美市は人口5万人ほどの小さな市です。平成17年(2005)に、根上町・寺井町・辰口町が合併して誕生しました。のみふるができる前までは、旧辰口町の「旧能美市立博物館」と旧寺井町の「旧能美市立歴史民俗資料館」の2館がそのまま引き継がれていましたが、建物の老朽化などの問題もあり、平成28年(2016)度に市民からなる「能美市立博物館整備基本計画策定委員会」を設置して検討を行い、新たな博物館を整備する方針を決めました。
前編では、のみふるの建物ができるまでの話や工夫について、ご紹介します。
建設費用は、おおよそ建築工事14億円、展示工事4億円の計18億。小さな能美市にとっては大きな費用です。財源について悩んだ結果、総務省の「公共施設最適化事業起債」を活用することになりました。これは「公共施設等総合管理計画」に基づいて行われる公共施設の集約化・複合化事業で用いることができる起債で、能美市では博物館・資料館の2館を集約化し、新たな博物館をつくる計画であったことから対象となり得ました。
また、起債の借入先はJFM(地方公共団体金融機構)としました。銀行に比べ低金利で長期的な借入が可能であり、年度をまたぐ「繰越事業」においても柔軟に利用できます。博物館のように30年~50年という長寿命を前提とする建築物にとって、メリットの大きい資金調達スキームと言えます(本事業についてのJFMの紹介記事)。
旧能美市立博物館
旧能美市立歴史民俗資料館
一方で、この起債は、施設の集約化の観点から同規模以上の建物をつくることはできません。そこで、平屋造りとすることで、廊下や階段などを減らして建物面積を最大限に有効活用しました。結果的に資料の収蔵や調査整理を行うバックヤードの広さには課題が残りましたが、エントランスや展示室など、来館者がゆったり過ごせるオープンスペースは十分な広さを確保できました。
従来の博物館のイメージと異なり、能美市の豊かな歴史と自然の紹介展示を親しみやすく洗練された空間デザインの中で調和させることで、地域住民の方にも、遠方から来た来訪者にも、「ふるさと」としての能美の良さや豊かさが伝わるものになったと思っています。
能美ふるさとミュージアム
外観にもこだわりがあります。建物は、隣接する和田山古墳群の景観に配慮した高さや色合いとしました。また、古墳に親しんでもらうデザインとして、木造の「体験棟」は和田山1号墳出土の「六鈴鏡」をイメージした六角形となっているほか、鉄筋コンクリート造の「博物館棟」の周囲には埴輪列をイメージした木製パネルを配置しています。
博物館としての保存環境を備えつつ、木の温もりが感じられるように工夫しました。また、雨水枡には前方後円(方)形を取り入れるなど、遊び心のあるデザインも取り入れ、建物の内外で能美の歴史と自然に楽しく親しんでもらえる工夫が散りばめられています。
後編では、ミュージアムの取組について詳しくお伝えしていきます。
能美ふるさとミュージアムと能美古墳群
前方後円形の雨水枡
能美ふるさとミュージアム
〒923-1121 石川県能美市寺井町を1-1
https://www.city.nomi.ishikawa.jp/museum/![]()
- 開館時間
- 9時~17時(最終入館時間16時30分)
- 休館日
- 毎週月曜日、第3火曜日(月曜日、第3火曜日が休日の場合翌日休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
- 入館料
- 無料
- ※テーマ展示室観覧の際に観覧料をいただきます。
-
- 展示観覧料:
- 大学生以上 一般…300円
- 65歳以上の方、団体(20名以上)…200円
- 高校生以下、障害者手帳をお持ちの方と介助者1名…無料
- アクセス
- ●能美根上駅からのみバスで15分「能美ふるさとミュージアム」下車。
- ●能美根上スマートICから車で20分。
