2026年10月5日
文化庁文化資源政策・記念物課 埋蔵文化財部門 文化財調査官 ナワビ矢麻
文化庁では、公式YouTubeチャンネル「bunkachannel」を通じて、各地の文化財の魅力を紹介する様々な動画を公開しています。
その一つに、文化庁の文化財調査官が全国各地を訪れ、「いせき」を切り口として地域の魅力を発信している「いせきへ行こう!」シリーズがあります。
文化庁YouTubeチャンネル「bunkachannel」いせきへ行こう!シリーズ
文化庁YouTubeチャンネル「bunkachannel」
この動画シリーズでは、文化庁主催で毎年開催している「発掘された日本列島」展に関連し、会場に行けない人でも楽しめるよう、また会場に行く前、行った後の予習・復習の助けとなるよう、展覧会で展示する遺跡の見どころについて、埋蔵文化財部門の文化財調査官が解説する動画も公開しています。
さらに「いせきへ行こう!」では、わかりやすく、面白く「いせき」の魅力を伝える工夫をしています。
今回は、その工夫の中から、遺跡解説の導入にもなっている“川柳”についてご紹介します。
「来月の頭に歌詠み会があるから準備しておいて」
これは私が文化庁に着任して間もないときに、先輩調査官よりかけられた言葉です。
初めは何のことかわからなかったのですが、「発掘された日本列島」展で、展示遺跡の紹介パネルに5・7・5の川柳が添えられていることを思い出しました。毎年春になると、その年の展示遺跡の川柳を考える「歌詠み会」が開かれるのです。
発掘された日本列島2026
「発掘された日本列島」展では、毎年、全国各地のさまざまな時代の遺跡を紹介しています。当然のことながら、遺跡はどれ一つとして同じものはありません。
しかし一方で、遺跡や考古学と聞くと「歴史の勉強」「難しそう」というイメージを持たれることも少なくありません。
そこで列島展では、遺跡のもつ魅力を、専門用語ではなく川柳という形に凝縮して紹介しています。解説動画と同じく、川柳も文化財調査官自らが考案しています。
川柳を添えた遺跡説明パネル
歌詠み会では、遺跡の立地や特徴、目を引く出土品や歴史性などを織り交ぜ、5・7・5に落とし込んでいきます。限られた17音の中で、「この遺跡のここが面白い」「この出土品に注目してほしい」を表現しなければなりません。これがなかなか難しい作業です。
例えば、この句。
「榛名山 馬飼いの子ら たわむれて」
これは2022年の列島展で展示した、群馬県の金井下新田遺跡という遺跡を題材に詠んだ川柳です。この遺跡は榛名山の噴火で被災した様子のわかる古墳時代後期のムラの遺跡です。
川柳を添えた遺跡説明パネル
遺跡からは馬の骨と子どもの骨が並んで出土しており、子どもが馬を連れて避難しようとしていたと考えられる状況が確認されました。
馬の骨と子どもの骨の出土状況
川柳では考古学的な事実をそのまま説明するのではなく、噴火に襲われる直前まで続いていたであろう日常の情景を切り取っています。
榛名山の麓で馬を飼い、子どもたちが無邪気に過ごしていた時間。過去の日常の一瞬を想像してもらうことで、遠い昔の人々の暮らしを身近に感じてもらいたい、という思いが込められています。
同じ遺跡を対象にしていても調査官によって着眼点が異なり、情緒のある句やインパクト重視の句など様々です。ときには調査官同士で意見を出し合い、推敲を重ねながら生み出されていきます。
令和8年度の句では、奈良県奈良市の登大路瓦窯跡を題材として、下記の2句が詠まれています。
「大伽藍 瓦で支えた 500年」
「一大事! 瓦を焼いて 復興だ」
登大路瓦窯跡は興福寺の北に位置する奈良~平安時代に築かれた瓦を焼いた窯跡で、被災と復興を繰り返した興福寺を支えた遺跡といえます。
どちらの句がお好みでしょうか?どちらが採用されているかはぜひ動画で確かめてください。
歌詠み会の様子
展示会場や動画では、出土品やパネルとあわせて、調査官たちが頭を悩ませながら詠んだ川柳にもぜひ注目してみてください。
そして皆さんも、遺跡や博物館を訪れた折には、そこで感じたことを川柳にして詠んでみてはいかがでしょうか。
※過去の川柳が気になる方は、「発掘された日本列島2024」の展示図録内でまとめて紹介しております。ぜひご覧ください。
特別展名:発掘された日本列島2026
会場及び開催期間 :
東京都江戸東京博物館 令和8年6月13日(土)~7月26日(日)
市立伊丹ミュージアム 令和8年8月7日(金)~9月13日(日)
八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館 令和8年9月26日(土)~11月3日(火)
松本市立博物館 令和8年11月14日(土)~12月28日(月)
新潟県立歴史博物館 令和9年1月16日(土)~2月28日(日)
URL:https://www.bunka.go.jp/gyoji/94366201.html
■文化庁YouTubeチャンネル「bunkachannel」いせきへ行こう!シリーズ
URL:https://www.youtube.com/playlist?list=PL_ndIdJX38cBWYNROTJLjE80nU9Of_0zT![]()
