2022年7月25日
二刀流。その後。
真田幹也
「二刀流」というタイトルで、この「ぶんかる」に自分とエンゼルスの大谷選手を重ねた文章を綴ってから、時が経ちました。大谷選手は昨年大リーグでM V Pを受賞。とんでもない人と自分を重ねたものだと、過去の記事を読み返して少し恥ずかしく思いました。
過去記事はこちら
そんな男の「二刀流」の「その後」について今回は書かせていただきたいと思っています。
©「ミドリムシの夢」製作委員会
当時、僕は初長編映画を撮りました。街でよく見る緑色の服を着た「駐車監視員」をモチーフにした『ミドリムシの夢』という映画です。念願の劇場公開後、世の中が激変していくとも知らずに・・・。コロナの影響で仕事は延期、そして、気軽に人に会えない日々が続きました。そんな時でも、駐車監視員の方々はいつも街に居てくれた気がします。その時思ったのです。「これは続編を撮るしかない!」と。そして『ミドリムシの夢』の続編『ミドリムシの姫』が完成しました。
©ミドリムシフィルム
「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」では『Life Cycles』というミドリムシの元になる「自転車撤去作業員」の物語を撮らせていただきました。思えば、その時から職業もの、特に年配者を描くのが好きだったのかもしれません。
コロナ禍のSNSに、年配者が感染拡大を若者のせいにし、若者はそんな年配者を非難する投稿があり困惑したことを覚えています。では、その中間の世代の僕らに何ができるのか?それは、若者と年配者が交流するきっかけを作ること。どっちが正しいかではなくて、こんな時代なのだからお互いを理解しようとする歩み寄りを。そんなことを考えて『ミドリムシの姫』の物語を紡いでいきました。本作で「駐車監視員」を演じたのは、34歳から75歳の俳優さんです。彼らがお互いを理解し歩み寄り、何を残したのか。前作を未見の方にも楽しめる作品になっていますので、『ミドリムシの姫』公開の際には、是非劇場に足をお運び頂ければ幸いです。
©ミドリムシフィルム
©ミドリムシフィルム
今やスーパースターまで上り詰めた大谷選手も人の子、不調のニュースも届くようになりました。そりゃそうです、何せ「二刀流」なのですから。人の2倍は努力しなければいけません。発声練習と筋トレを終えた後でも、今日は僕も企画を探しに街に出ようと思います。海の向こうの大谷選手のホームランを楽しみに。
【プロフィール】
真田幹也
1974年東京都出身。演出家・蜷川幸雄氏の元で修行を積み2006年文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に選出され、『Life Cycles』を監督。企業VP、テレビ番組をはじめ現在までに20本以上の短編映画を監督。2014年には『オオカミによろしく』にてちちぶ映画祭グランプリを受賞し、2019年に初長編映画『ミドリムシの夢』が劇場公開、現在Amazon Prime他にて配信中。短編最新作『オファーを待ちながら』(オムニバス映画「おっさんずぶるーす」内の1本)が今夏劇場公開、長編2作目『ミドリムシの姫』が年内劇場公開予定。
真田幹也公式HP http://sanamiki.com/