2019年6月25日
歌舞伎ってどんな芸能?
国立劇場制作部歌舞伎課 松﨑彩加
歌舞伎のルーツは,慶長8年(1603)に≪出雲の阿国≫という人物が始めた「かぶき踊り」だと言われています。それから400年以上に渡り,歌舞伎は”生きた演劇”として進化し続けています(バックナンバーの001「面白くなければ《歌舞伎》じゃない!!――5分でわかる歌舞伎入門――」を御参照ください! )。
こんなにも長く日本人に親しまれている歌舞伎とは,一体どのような芸能なのでしょうか。実は,この「歌舞伎」という三文字からそのまま読み取ることができるんです。もともと「かぶき」という言葉は,〔奇抜な身なりや行動をする〕という意味の「傾く」が名詞になったもので,現在の「歌舞伎」という名称は当て字が定着したものです。「歌」は音楽,「舞」は舞踊を指します。「伎」はあまり見かけない漢字ですが,役者や役者のわざ(=演技)のことを指します。この三要素が織りなす総合舞台芸術,それが「歌舞伎」なのです。
国立劇場7月歌舞伎鑑賞教室では,「伎」の要素を中心に楽しめる作品『菅原伝授手習鑑―車引―』と,「舞」の要素を中心に楽しめる作品『棒しばり』を取り上げます。短い上演時間の中に歌舞伎の魅力が詰まった2作品で,初心者の方でも気軽に楽しめます。見どころや楽しみ方を歌舞伎俳優がわかりやすく御紹介する解説「歌舞伎のみかた」と併せて御覧いただきます!
《菅原伝授手習鑑―車引―》
「車引」は,延享3年(1746)に人形浄瑠璃(現在の文楽)で初演された全五段構成の作品『菅原伝授手習鑑』の三段目の一場面です。歌舞伎といえば,真っ白な顔に赤い筋を描く派手な化粧!というイメージの方も多いかと思いますが,あの独特の化粧は「隈取」といいます。本作では,登場人物のキャラクターを巧みに表現した様々な隈取や,「荒事」と呼ばれる力強い演技,色彩豊かな衣裳や舞台装置など,歌舞伎の華やかな魅力を味わうことができます。
【あらすじ】
菅丞相(菅原道真)に仕える梅王丸と,帝の弟・斎世親王に仕える桜丸。二人は,菅丞相を陥れた藤原時平が京の吉田神社に参詣にくると聞き,時平の乗る牛車に打ちかかります。そこへ現れたのは,時平に仕える松王丸でした。敵味方に分かれた三兄弟の争いが始まります……。

松王丸
(尾上松緑)
《棒しばり》
室町時代に成立した芸能「能」「狂言」から題材を得た”松羽目物”と呼ばれるジャンルの作品で,狂言の同名作品「棒縛」を基に創られ,大正5年(1916)に初演されました。両手を縛られた状態で踊るというユニークな趣向が盛り込まれています。明るい雰囲気と分かりやすいストーリーで理屈抜きに楽しめる,ユーモアたっぷりの舞踊劇です。
【あらすじ】
主人の曽根松兵衛の留守の隙に,いつも無断で酒を飲む家来の次郎冠者と太郎冠者。二人を懲らしめようと松兵衛は一計を案じ,次郎冠者の両手を棒に括り付け,太郎冠者の両手を後手に縛って外出します。両手を縛られた二人は,何とかして酒を飲もうと工夫を凝らし,成功します。二人は浮かれ気分で踊り出しますが,そこへ松兵衛が帰って来て……。

次郎冠者
(尾上松緑)
ちなみに,もう一つの重要な要素「音楽」について,簡単に御紹介しましょう。歌舞伎では,まず,舞台に向かって左側(下手)に設置されたスペースの中で演奏される“黒御簾音楽”が欠かせません。いわば歌舞伎のBGMを演奏します。唄と三味線で構成される“長唄”と,鼓や太鼓,笛など数十種類の楽器で編成される“囃子”が演奏されます。
さらに,『車引』では“竹本”と呼ばれる人たちが舞台に向かって右側(上手)で,“義太夫節”という三味線音楽を演奏します。太夫と呼ばれる語り手と三味線の演奏が情景や人物の心境を表現し,物語の筋を運んだり,せりふや心情を情感たっぷりに熱く語ったりします。
一方,『棒しばり』では,舞台の正面に“長唄”と“囃子”の演奏者が並びます。明るくリズミカルな曲調が多い長唄と大鼓・小鼓・太鼓・笛を演奏する囃子との合奏が,演者のコミカルな踊りを大いに盛り上げます。
解説「歌舞伎のみかた」では,それぞれの音楽の特徴や違いも御説明いたしますので,是非聞き比べてみてくださいね。
7月歌舞伎鑑賞教室では,出演者によるアフタートークや特大パネルのフォトスポット,小道具の体験コーナーなど,楽しい企画も御用意しております。他にも様々な企画を予定しておりますので,詳細はホームページを御覧ください。劇場でお待ちしております!
国立劇場 7月歌舞伎鑑賞教室
『解説 歌舞伎のみかた』 『菅原伝授手習鑑―車引―』『棒しばり』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分,半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分 - 公演日時
- 【歌舞伎鑑賞教室】
令和元年7月3日(水)~24日(水) 午前11時開演・午後2時30分開演
※12日(金)・19日(金)は午後2時30分開演のみ
【社会人のための歌舞伎鑑賞教室】
令和元年7月12日(金)・19日(金) 午後6時30分開演
【親子で楽しむ歌舞伎教室】
令和元年7月19日(金)~24日(水) 午前11時開演・午後2時30分開演
※19日(金)は午後2時30分開演のみ
※親子割引あり。詳細はホームページを御覧ください。
- 観覧料
- 学生:全席1,500円
一般:1等席4,000円,2等席1,800円 - ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2019/20971.html?lan=j
【インターネット予約】
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)