文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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研究報告
澤 伸恭 (さわ のぶやす)
株式会社UFJ総合研究所
客員研究員

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コンテンツの評価項目・要素につきまして、大きく1から8、報告書ですと6ページからになりますけれども、大きく1.企画内容・制作計画・流通計画・プロモーション計画・回収計画・実績データ・外部要因・契約という大きく8つの項目に分けて、そこからどんな要素を検討していけばいいのかということを抽出していきました。企画内容につきましては、こちらにありますような(1)から(17)、報告書でも同じですね。6ページ、7ページ辺りですね。制作計画につきましても、制作スタッフから完成保証という(1)から(7)。流通計画につきまして、こちらにあります座組からフリーマーケティングの状況というような要素。プロモーション計画、(1)から(5)。それから回収計画、こちら(1)から(13)のような要素。それから過去の実績データ、こちらは(1)から(8)のような要素。それから外部要因、契約と、このような要素、まず委員会の中で検討しつつ抽出いたしました。

それらをどのように見ていくかというようなことを検討していきました。それが報告書の92ページをご覧いただけますでしょうか。こちら資料編になっている部分なのですけれども、これらの要素を対象とするコンテンツの種類、邦画の実写、邦画の劇場アニメ、それからテレビアニメ、洋画の実写、洋画の劇場アニメ、洋画のテレビアニメという6種類のコンテンツの分野、それぞれにおきましてどのように重要なのか、あるいは重要でないのか、あるいはどういう見方をすればいいのかということを委員会の中で検討していきました。

その詳細な結果がこちらに出ているわけですけれども、大きくその結果を申し上げますと、この委員会には、先ほど申し上げましたように、制作の関係者、流通の関係者あるいは金融の関係者等々、いろいろな立場の方がいらっしゃったのですね。本来立場が違いますとコンテンツを評価する目的も違いますので、ずいぶん見方が分かれるのかなというのが当初の私どもの予想だったのですが、重要な要素あるいは見方というのは、大きな差はありませんでした。ある程度、こちらに出ております結果に収斂していったということでございます。

この詳細な結果は、コンテンツ分野ごとにありまして、それらを比較するような形で110ページに「各分野比較」ということで書いております。これらは結果といたしまして、それぞれの分野で重要というように検討され、検討結果が出た要素のみをここに掲載しております。

細かく見ますと、いろいろと「ああ、なるほどな」というような結果もあるのですが、例えば邦画実写で原作と脚本を比べますと、脚本の重要度が高くなっています。だが、アニメのほうを見ますと、原作の重要度の方が高い。これは、アニメは原作のキャラクターをそのまま使って制作することが多いというため、このような結果が出ると推測できます。この内容につきましては、詳細な説明につきましては、報告書の本編の14ページから、この結果の解説につきまして出ております。なので、こちらを後ほどご参照いただければと思います。

ここで申し上げたいのは、先ほど申し上げましたように、コンテンツの関係者、それぞれの立場の違いを超えてある程度、ある考え方、見方は収斂していったということでございます。

続きまして、これらコンテンツの評価の項目・要素、それぞれに対する見方というものを検討いたしまして、ある程度これを今後コンテンツの関係の業界、内外の各企業あるいは関係者の皆さんに何らかの形でまずお使いいただければ、委員会として大変うれしいなということなのですが、それをお使いいただく中でも、それぞれビジネスモデルを検討される中で、実現のためにやはりまだいくつか課題が残されているだろうということで、それを検討いたしましたのが「ビジネスモデルのあり方とその課題」の部分です。報告書では73ページ以降に出ております。

一般投資家からの資金を集めるということを前提にいたしました資金調達スキームというものの構築が必要であろうということです。これは信託業法改正等々で、徐々にその環境ができ上がりつつあるということです。

それから、情報開示に関する課題。こちらは業界外からの資金を集めるということになりますと、情報開示をきちっとしていく必要があるということで、そのような課題についてもこちらのほうで提言させていただいております。

それから、会計処理に関する課題。コンテンツの制作・流通期間がありますので、いつ処理をするのかということで、なかなか一致していない部分があるということですので、その課題を書いております。

それから、リスク管理のための課題。例えば今後、映画の完成保証という点で、これまで大手の映画会社が中心にコンテンツを制作委員会方式で作ってきたということがありますが、そうではない小さな映画制作会社が資金を調達するような場合を考えますと、映画が完成するかどうか、それに対する保証というものも今後必要となるのではないかというようなことを書いております。

それから、コンテンツ制作・流通を促進するための課題。コンテンツの制作・流通を促進するために、コンテンツを利用する権利というのがどこかに集まっておく必要があるだろうというようなことを書いております。

それから、人材育成に関する課題。こちらは、コンテンツの評価人材あるいはプロデューサーの人材というようなことを書いております。

以上、大変駆け足でご説明させていただきましたけれども、この調査研究の背景並びにこの報告書の全体の構成をご説明させていただくにちょっと留まってしまって大変恐縮ですが、これを踏まえて次、パネルディスカッションのほうで、この調査研究の委員会の座長並びに委員の何名かの皆さんによるディスカッションがございますので、そちらのほうで皆様、この後お聞きいただければと思います。

それでは、どうもありがとうございました。
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