文化庁主催 第2回コンテンツ流通促進シンポジウム
放送番組は、ブロードバンド配信の主役となり得るか?

2004年12月1日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟小ホール)
トップ 特別講演 検討会の報告 パネルディスカッション
検討会の報告
尾崎 史郎 (おざき しろう)
東京大学 教授
報告資料のダウンロード (PDF:62KB)

「過去の放送番組の二次利用の促進に関する検討会」の報告
ご紹介いただきました尾崎です。検討会で進行役を努めさせていただいたということもあり、その概要を報告させていただきます。先ほどの基調講演と第3部のパネルディスカッションとのつなぎとしてお聞きください。

この検討会は、著作権課長のご挨拶にもありましたように、放送番組の二次利用について出される疑問。つまり、「テレビ放送は1953年に開始されて50年あまり経過し、その間に膨大な放送番組が作成されているが、現在二次利用されているのはそのごく一部にすぎず、これまで数多く作られた貴重な放送番組は、有効に活用されていないのではないか」。例えば、昔放送されていた「てなもんや三度笠」がビデオ化やネット配信されれば見てみたいという人もたくさんいる。もつと活用すべきではないかということです。そして、「放送番組は著作権や著作隣接権のかたまりのようなものであり、そのあたりの問題から二次利用が進まないのではないのか」、というような意見をよく耳にします。そのようなこともあり、昨年10月に、「過去の放送番組の二次利用の促進に関する検討会」が設置され、放送事業者、番組製作者、原権利者の方々にお集まりいただき、放送番組の二次利用の促進について検討を行い、本年6月に報告書を取りまとめております。報告書につきましては、本日の配布資料の中にも入っていますし、文化庁のホームページにも掲載されいますので、詳しくはそちらをご覧いただきたいと思いますが、その概要について報告させていただきます。


放送番組の保存の現状
当然のことですが、放送番組が保存されていないと、二次利用を行うことはできません。そのため、検討にあたっては、放送番組の保存状況を整理することから始めております。

ビデオの普及した現在の環境から考えますと、貴重な放送番組はどこかに残されているだろうと思いがちですが、テレビ放送開始当初は生放送が中心でした。当時はビデオもありませんので、生放送されたものは残っておりません。フィルムの形で作られた番組も一部あり、その中には残されているものもありますが、大部分は生放送であり、放送局にも保存されていないというのが現状です。

また、1950年代末からは、ビデオも徐々に普及しはじめてきましたが、当時のビデオテープは大変高価で、再利用を前提にビデオが導入されたこともあり、何回も上書きして利用されていましたので、特別な記念番組のようなものを除き、放送局にはほとんど残されておりません。

では、二次利用を考えて番組を保存するようになったのはいつからかといいますと、これはそんなに古くなく、80年代後半からです。しかも、当初は二次利用の可能性の高いものの保存が中心で、当面の二次利用の有無にかかわらず、保存できるものは保存しようというようになったのは、放送局によっても違いますが、90年代後半になってから、つまり、ごく最近のことと言えます。

つまり、テレビ放送は開始後50年をすぎていますが、放送番組が保存されているのは、ここ十数年のものが中心で、それ以前のものは、特別な番組、あるいはフィルムで作られた番組以外はほとんど残っていないのが現状だということがわかりました。二次利用について議論する際には、この保存の現状を踏まえておかないと、議論が空回りしてしまうことになります。
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