文化芸術の振興に関する基本的な方針(平成十九年二月九日閣議決定)

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まえがき

 平成13年12月,文化芸術振興基本法(平成13年法律第148号)(以下「基本法」という。)が施行された。その後,基本法第7条第1項の規定に基づき,文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るために定められる,文化芸術の振興に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)が平成14年12月に閣議決定され,これまで,同第1次基本方針に基づき我が国の文化芸術の振興が図られてきた。
 今般の第2次基本方針は,文化芸術振興の今日的意義や第1次基本方針策定後の諸情勢の変化等を踏まえ,第1次基本方針を見直し,今後おおむね5年間を見通して策定するものである。
 本基本方針においては,第1で,文化芸術の振興の基本的方向として,文化芸術の振興の意義,文化芸術の振興に当たっての基本的視点及び重点的に取り組むべき事項について定め,続く第2で,第1の基本的方向を踏まえて講ずべき基本的施策について定めている。
 なお,本基本方針については,諸情勢の変化や施策の効果に関する評価を踏まえ,柔軟かつ適切に見直しを行うこととする。

第1 文化芸術の振興の基本的方向

1.文化芸術の振興の意義

 文化は,最も広くとらえると,人間の自然とのかかわりや風土の中で生まれ,育ち,身に付けていく立ち居振る舞いや,衣食住をはじめとする暮らし,生活様式,価値観など,およそ人間と人間の生活にかかわる総体を意味する。一方,文化を「人間が理想を実現していくための精神活動及びその成果」という視点でとらえると,文化の中核を成す芸術,メディア芸術,伝統芸能,芸能,生活文化,国民娯楽,出版物,文化財などを示す文化芸術の意義については,次のように整理できる。
 文化芸術は,(1)人間が人間らしく生きるための糧となるものであり,(2)人間相互の連帯感を生み出し,共に生きる社会の基盤を形成するものである。また,(3)より質の高い経済活動を実現するとともに,(4)科学技術や情報化の進展が人類の真の発展に貢献するよう支えるものである。さらに,(5)文化の多様性を維持し,世界平和の礎となるものである。
 このような文化芸術は,すべての国民が真にゆとりと潤いの実感できる心豊かな生活を実現していく上で不可欠なものであり,国民全体の社会的財産である。
 今日では,文化芸術の持つ,人々を引き付ける魅力や社会に与える影響力,すなわち,「文化力」が国の力であるということが世界的にも認識され,また,文化芸術が経済活動において新たな需要や高い付加価値を生み出す源泉ともなっており,文化芸術と経済は密接に関連しあうと考えられるようになった。
 我が国は,今後一層文化芸術を振興することにより,心豊かな国民生活を実現するとともに,活力ある社会を構築して国の魅力を高め,経済力のみならず文化力により世界から評価される国へと発展していくこと,換言すれば,文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」を目指すことが必要である。

2.文化芸術の振興に当たっての基本的視点

第1次基本方針と同様,第2次基本方針においても,基本法第2条に掲げられた八つの基本理念((1)文化芸術活動を行う者の自主性の尊重,(2)文化芸術活動を行う者の創造性の尊重及び地位の向上,(3)文化芸術を鑑賞,参加,創造することができる環境の整備,(4)我が国及び世界の文化芸術の発展,(5)多様な文化芸術の保護及び発展,(6)各地域の特色ある文化芸術の発展,(7)我が国の文化芸術の世界への発信及び(8)国民の意見の反映)にのっとり,施策を総合的に策定し,実施する。

  1. (1) 第1次基本方針策定後の諸情勢の変化
  2.  第1次基本方針の策定後も,国内外の諸情勢は急速な変化を続け,文化芸術を取り巻く状況にも大きな影響を与えている。
     国内では,構造改革の進展により,民間と行政の役割分担の見直しや地方分権の推進等が図られた一方,地方公共団体の文化関係経費は,厳しさを増す財政状況の中で減少傾向にある。また,規制緩和などにより新たな分野への民間の進出が可能となり,多様なサービスが効率的に提供されることへの期待が高まっている。
     民間部門では,非営利活動やボランティア活動などが広がったことに伴い,民間と行政の協働による新たな取組が進められ,企業のメセナ活動も多様な広がりを見せている。
     公立文化施設に対しては,指定管理者制度の導入により,民間の新たな発想や方法(ノウハウ)による効果的かつ効率的な運営が期待される一方で,これまで地域で培われてきた文化芸術活動の安定的かつ継続的な展開が困難になるとの懸念も現場から指摘されている。
     地方においては,過疎化や少子高齢化の進展等により,文化芸術の担い手が不足してきており,都市部においても単身世帯が急速に増加していることなどから,地域社会(コミュニティー)の衰退が指摘されている。また,大規模な市町村合併により,地域に根ざした文化芸術の継承が危ぶまれている。
     国際的には,政治,経済における地球規模化(グローバリゼーション)の進展に伴い,文化芸術による創造的な相互交流が促進される一方,文化的アイデンティティーの危機をめぐる緊張が高まり,文化の多様性が脅かされることが懸念されている。これを背景に,国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)では,2005年(平成17年)10月に「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」が採択された。
     また,インターネットをはじめとする情報通信技術の発展と普及は,あらゆる分野において,国境を越えた対話や交流を活発化させ,情報の受信・発信を容易にしたが,その一方で,人間関係の希薄化,実体験の不足といった負の側面も指摘されている。
  3. (2) 基本的視点
  4.  [1]文化力の時代を拓(ひら)く
     美しい自然や歴史・伝統に基づく文化芸術は,人々に精神的な豊かさや感動を与えるとともに,人々のコミュニケーションを活発化し,生きる勇気と喜びをもたらす普遍的な力を持っている。
     世界の国々は文化芸術の発信により国の魅力を高め,異国の文化芸術の受容や相互交流を通じて世界の文化芸術の発展に寄与しようとしている。我が国も,伝統文化から現代文化まで多様な文化芸術を振興し,文化力を高め,心豊かで活力にあふれた社会を実現していくことが必要である。あわせて,国際文化交流を推進することによって,我が国についての理解を促進し,イメージの向上を図るとともに,文化芸術を通じて世界に貢献する必要がある。
     また,文化芸術は,古今東西の様々な人々の営為の上に生まれ,その継承と変化の中で新たな価値が見い出されていくものであり,短期的な視点のみでその価値を計ることは困難である。こうした文化芸術の特質を踏まえ,文化芸術活動に短期的な経済的効率性を一律に求めるのではなく,長期的かつ継続的な視点に立った施策を展開する必要がある。
  5.  [2]文化力で地域から日本を元気にする
     我が国は長い歴史の中で,諸外国との交流などを通じて様々な文化芸術を受け入れつつ,全国各地で多様かつ特色ある文化芸術を創造し,継承し,発展させてきた。この地域文化の厚みが日本文化の基盤を成している。すなわち,地域文化が豊かになるほど日本文化全体も豊かになり,日本の魅力が高まる。
     また,地域で住民が文化芸術に触れ,その個性を発揮し創造にかかわることは,個人が元気になるだけでなく,他者への発信や協働を通じて多くの人々を元気にする力ともなる。このため,大都市に偏りがちな文化芸術を鑑賞する機会の格差を改善し,人々が,全国のどこでも,様々な形の文化芸術に触れ,更に豊かな文化芸術を創造できるようにすることが必要である。
     地域の歴史や特色を表し,古来様々な形態で存在・継承されてきた文化財については,地域の視点から総合的に把握し,地域住民の心のよりどころとしてその保存及び活用を図ることが望まれる。
     さらに,今後,いわゆる「団塊の世代」の人々が定年を迎えることから,これらの人々が文化芸術を享受し,地域の文化芸術活動に参加していくための環境を整備していく必要がある。
  6.  [3]国,地方,民間が相互に連携して文化芸術を支える
     文化芸術は,国民の身近な生活に密着しているものであり,国民一人一人が文化芸術を支えていく環境を醸成し,文化芸術の享受,支援,創造,保護・継承のサイクル(循環)が実現する社会を構築することが求められている。
     文化芸術活動は国民の自発的,自主的な営みであることから,活動主体の個性や地域の特性に応じたきめ細かい施策が大切である。
     基本法制定後,地方公共団体では,新たに文化芸術振興のための条例の制定や推進計画等の策定も数多くなされており,文化芸術の振興に当たっては,国民の生活に近い地方公共団体が高い専門性と知識を備え,主たる役割を担うことが期待される。
     一方,近年,企業のメセナ活動や文化芸術系特定非営利活動法人(アートNPO)をはじめ民間団体による文化芸術への支援が活発化している。こうした自発性に基づく民間からの支援は,我が国の文化芸術の振興に不可欠であり,それらの自立的な活動が一層促進されることが望まれる。
     国は,こうした認識の下,地方公共団体や民間による自主的な文化芸術振興に係る活動に対して,支援や情報提供等の所要の措置を講ずる必要がある。同時に,伝統的な文化芸術の継承・発展や文化芸術の頂点の伸長,裾野の拡大など,国として保護・継承し,創造を促進していくべきものに対しては,積極的に支援することが必要である。その際,厳しい財政事情の下で適切な評価を行い,支援の重点化,効率化を図りつつ,必要な法制上,財政上の措置を講ずるとともに,税制上の措置等により,文化芸術活動の発展を支える環境づくりを進める必要がある。
     これらの観点を踏まえ,関係府省間の連携・協力を一層推進するとともに,個人,企業,団体,地方公共団体,国などが相互に連携し,社会全体で文化芸術の振興を図っていくことが重要である。

3.文化芸術の振興に当たって重点的に取り組むべき事項

 上記「2.文化芸術の振興に当たっての基本的視点」を踏まえ,第2次基本方針においては,以下に掲げる事項について重点的に取り組む。

  1. (1) 重点的に取り組むべき事項
  2.  [1]日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成
     多様で優れた文化芸術の継承,発展,創造を担う専門的人材の育成は,分野やレベルに応じて,様々な文化芸術団体,教育機関等が担っている。これらの関係機関が連携・協力を図り,それぞれの分野の動向を踏まえた計画的・系統的な人材育成を促進するとともに,優れた人材が自らの才能を伸ばし,能力を最大限発揮できる環境を整備する必要がある。
     特に,文化芸術活動を支えるためには,文化施設や文化芸術団体の企画,運営及び文化芸術と国民とを結び付ける業務等を行うアートマネジメント担当者や舞台技術者等の人材の育成を図る必要がある。
     さらに,無形文化財や文化財の保存技術のうち重要なものについては,国が継承者養成のために一定の取組を行っているが,生業として成り立ちにくいことなどから,後継者が得難くなっている分野が少なくない。こうした中,これらに携わる人々が自らの職業に安心して専念し,経済的に自立できる環境の整備が課題となっており,国として長期的視点に立って支援を充実していく必要がある。
     こうした専門的人材の育成を図るとともに,地域や学校等における質の高い文化ボランティア活動を活発にするための環境整備を図ることが必要である。
  3.  [2]日本文化の発信及び国際文化交流の推進
     日本文化の発信及び国際文化交流を進める際には,それらの活動が国のイメージに大きな影響を与え,他方で世界の平和や繁栄にも貢献するという意味で外交的側面も有するという観点や,国内の文化芸術振興という観点に留意しつつ,関係府省等が連携していくことが重要である。
     また,日本の伝統文化だけではなく,現代の文化芸術創造活動を積極的に海外に発信し,アジアをはじめとする海外の文化芸術振興に資するよう,国際文化交流の施策を検討していくことが必要である。その際には,アニメ,マンガ,音楽等の「ジャパン・クール」と呼ばれる分野も文化発信の上で重要な役割を担っており,メディア芸術などの新しい文化芸術の国際的な拠点を形成することも検討する必要がある。
     さらに,諸外国の文化財が適切に保護・継承されるよう,積極的に文化財保護の国際協力を推進する必要がある。
  4.  [3]文化芸術活動の戦略的支援
     文化芸術活動は,人々に活力を与えるとともに,諸方面に及ぶ国民の活動の活性化が促され,経済活動とあいまって社会全般に大きな影響を及ぼすものである。このような活動の中には構造的に収支のバランスが取りにくい分野も見られることから,国,地方公共団体,民間は文化芸術活動を行う者の自主的な活動を十分に尊重しつつ,それぞれの立場から様々な支援を行っていくことが重要である。
     国が行う文化芸術活動への支援については,中長期的な観点に立って,水準の高い活動への重点的支援とその普及や地域性等にも配慮した幅広く多様な支援とのバランスを図り,より効果的で戦略的な支援が行えるよう,支援方策について必要な見直しを行う。
     これらの支援については,文化庁,芸術文化振興基金,その他の助成機関等の適切な役割分担を図るとともに,審査・評価を充実させ,きめ細かくかつ効率的な業務を行うため,専門的機関を経由して助成する再助成制度の有効性も検討する必要がある。
  5.  [4]地域文化の振興
     国民がその居住する地域にかかわらず等しく文化芸術を鑑賞したり,これに参加したり,これを創造したりする機会を確保するためには,各地域における様々な公演・展示の拠点づくりなどの活動に対する支援が必要である。加えて,文化芸術における地域間交流を促進するため,地域の文化芸術活動の関係者が交流する機会の充実も重要である。
     また,地域文化の振興に当たっては,住民,文化芸術団体,社会教育関係者,学校,地方公共団体,地域の報道機関やメセナ活動に熱心な企業など地域文化の担い手が相互に連携・協力する取組を促すことが必要である。特に,地域の高等教育機関は,教育研究を通じてハード・ソフト両面にわたって優れた文化力を発揮し,地域と協働し,文化芸術を生かした地域活性化や文化芸術の担い手育成など地域文化の振興に貢献することが望まれる。
     さらに,地域の文化力を,地域経済や観光,教育,福祉等の分野はもとより,広くまちづくりに生かすことが求められており,関係府省や地方公共団体,関係団体による協議や連携を強化する必要がある。
  6.  [5]子どもの文化芸術活動の充実
     子どもの豊かな心や感性,創造性やコミュニケーション能力をはぐくみ,日本人としての自覚を持ちつつ国際社会で活躍する人材や地域文化の担い手を育成するためには,学校や地域において,子どもたちが身近に伝統文化や現代の文化芸術に触れる機会の充実が必要である。
     このため,子どもたちが文化芸術を鑑賞したり,創造的活動を行ったりする機会など,文化芸術に関する教育の充実を図ることが重要であり,学校や地域での文化芸術活動を,文化芸術関係者や社会教育,行政関係者が緊密に連携しながら地域ぐるみで支援する仕組みを構築する必要がある。
     さらに,世界の文化の多様性を理解するためにも,子どもの国際的な文化交流に一層力を注ぐことが必要である。
  7.  [6]文化財の保存及び活用の充実
     文化財は,長い歴史の中で生まれ,はぐくまれ,今日まで守り伝えられてきた国民の貴重な財産であり,我が国の歴史,伝統,文化等の理解のために欠くことができないものであると同時に,社会の発展の基礎を成すものである。近年の急激な社会構造の変化の中で,実効性のある保存及び活用の充実を図っていくことが重要である。
     このため,国や地方公共団体による文化財の保存及び活用の充実とともに地域社会が文化財を国民共通の財産として親しみ,守っていく機運の醸成が必要である。
     また,ある程度の文化財が集積している場合,それらを効果的に生かして,文化の薫り高い空間を形成していくため,文化財の総合的な把握を行う手法について検討を行うことが必要である。
     さらに,我が国の文化遺産のユネスコ世界遺産への登録は,我が国の貴重な文化遺産の国際的な価値が評価されるとともに,登録を目指す過程で地域における総合的な文化財保護の取組が格段に充実するという点で,大きな意義があり,今後,日本からの推薦,登録を推進していくことは重要である。
  8. (2) 配慮事項
  9.  [1]芸術家等の地位向上のための条件整備
     芸術家等(基本法第16条に規定する「芸術家等」をいう。以下同じ。)が活発な文化芸術活動を行い,優れた文化芸術を国民が享受するとともに,新たな芸術家等が育成されていくためには,芸術家等がその能力を向上させ,十分に発揮でき,自らの職業や活動に安心して安全に取り組める環境を整備することが重要である。
     このため,実演家の活動環境や著作権等の契約に関するルールづくりに向けた自主的な取組を支援するなど芸術家等の文化芸術活動のための諸条件の整備や,芸術家等の社会的な役割に関する理解の促進,芸術家等に対する積極的な顕彰等を行い,芸術家等の社会的,経済的及び文化的地位の向上に努める。
  10.  [2]国民の意見の反映等
     文化芸術の振興に関する政策の形成に当たっては,より多くの国民の意見を集約し,反映させていくことが重要である。このため,基本的な政策の形成や,各施策の企画立案,実施,評価等に際して,広く国民の意見等を十分に把握し,それらを十分考慮した上で行政を展開する。
     さらに,各施策の企画立案や評価等に活用するための必要な基礎的データの収集や各種調査研究の充実を図る。あわせて,文化芸術施策の評価の方法について,文化芸術の各分野の特性を十分に踏まえ,定量的な評価のみならず,定性的な評価を含む適切な評価方法の開発に関する検討を行う。

第2 文化芸術の振興に関する基本的施策

基本法の第3章に掲げる「文化芸術の振興に関する基本的施策」について,第1の「文化芸術の振興の基本的方向」を踏まえ,国は,以下のような施策を講ずる。

1.各分野の文化芸術の振興

 文化芸術の振興に関する施策を講ずるに当たっては,基本法に例示されている文化芸術の分野のみならず,例示されていない分野についてもその対象とし,基本法における例示の有無により,その取扱いに差異を設けることなく取り組んでいく。

  1. (1) 芸術の振興
  2.  多様で豊かな芸術を生みだす源泉である芸術家や文化芸術団体等の自由な発想に基づく創造活動が活発に行われるようにするため,より効果的で戦略的な視点を加えながら次の施策を講ずる。
    •  芸術の水準向上に直接的な牽(けん)引力となる創造活動に対して,重点的な支援を行うなど,我が国の顔として世界に誇れる文化芸術活動を伸長する。
    •  トップレベルの文化芸術団体と劇場,音楽堂等の芸術拠点とが連携した特色ある取組など,優れた芸術活動を促進する。
    •  独立行政法人日本芸術文化振興会は,幅広く多様な文化芸術を振興し,その普及を図る活動等に対し,芸術文化振興基金による助成事業等を行う。
    •  文化芸術活動に関する調査研究を充実し,その成果等に基づき審査・評価の一層の充実を図り,その結果等を今後の支援に適切に反映することにより,文化芸術活動の活性化を図る。その際,専門的機関を経由して助成する再助成制度の有効性について検討する。
    •  内外の優れた芸術作品の鑑賞機会を提供し,芸術の創造の推進に資する芸術祭等の充実を図る。
    •  より多くの国民に優れた芸術の鑑賞機会を提供するため,新国立劇場における公演の充実を図る。
  1. (2) メディア芸術の振興
  2.  近年の情報通信技術等の進展に伴い,メディア芸術は,広く国民に親しまれ,新たな芸術の創造や我が国の芸術全体の活性化を促すとともに,諸外国から「ジャパン・クール」として注目を集め,我が国への理解や関心を高める媒体ともなっていることを踏まえ,次の施策を講ずる。
    •  文化庁メディア芸術祭の一層の充実を図るとともに,メディア芸術分野に関連する大学,美術館等との連携強化を図り,その創造活動を促進する。また,我が国の優れたメディア芸術を積極的に諸外国へ発信する。
    •  大学等と連携しながら若手クリエーターに専門的研修や国際共同制作等の機会を提供することにより,次代を担う優れた人材を育成する。
    •  日本映画・映像作品の水準向上を図るため,国際的な評価の高まりや国際共同制作などの進展を踏まえながら,その製作環境の整備,国内外への発信や人材育成に対する支援,東京国立近代美術館フィルムセンターにおける映画・映像作品の収集・保管を推進する。
  1. (3) 伝統芸能の継承及び発展
  2.  我が国古来の伝統芸能は,長い歴史と伝統の中から生まれ,守り伝えられてきた国民の財産であり,将来にわたって確実に継承され,発展を図っていく必要があることから,次の施策を講ずる。
    •  伝統芸能が有する歴史的・文化的価値の理解・普及を図るとともに,公演等への支援を行う。その際,我が国の文化芸術の向上の牽引力となる実演家団体が実施する国内外の公演活動に対する支援を重視するとともに,伝統的な音階や技法を用いた新作公演活動の展開も図られるように配慮する。
    •  国立劇場,国立能楽堂,国立文楽劇場及び国立劇場おきなわにおける公演や各地域における普及のための公演の充実を図り,より多くの国民に伝統芸能の鑑賞機会を提供し,古典の伝承とその活性化を推進する。
    •  伝統芸能の所作や楽器に触れる体験をする機会の提供を通じて,伝統芸能に親しむ人々の拡大を図る。特に,子どもたちが伝統芸能を身近に親しむことができる機会の充実を図る。
    •  伝統芸能の表現に欠くことのできない用具等の製作・修理等に必要な伝統的な技術の継承を図るため,後継者育成及び原材料の確保に努める。
  1. (4) 芸能の振興
  2.  芸能の創造活動等が活発に行われるよう,次の施策を講ずる。
    •  芸能の創造活動,人材育成及び普及活動に対して,重点的な支援等を行う。
    •  国立演芸場等における公演の充実を図り,より多くの国民に芸能の鑑賞機会を提供する。
  1. (5) 生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及
  2.  生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及を図るため,次の施策を講ずる。
    •  地方公共団体や関係団体の取組にも留意しつつ,生活に密着した衣・食・住に係る生活文化や,国民の間で定着し,長い間楽しまれてきた国民娯楽に関する活動を推進する。
    •  国民生活や社会を支える文化創造の基盤である出版物,レコード等について,居住する地域等にかかわらず広く普及し,国民がそれらに身近に親しめるよう必要な環境整備を図る。

2.文化財等の保存及び活用

 文化財は,我が国の歴史の営みの中で,自然や風土,社会や生活を反映して伝承され発展してきたものであり,人々の情感と精神活動の豊かな軌跡を成すとともに,現代の我が国の文化を形成する基層となっている。今日の社会構造や国民の意識の変化等を踏まえ,新たな課題にも積極的に対応することが求められていることから,次の施策を講ずる。

    •  「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(平成4年9月30日発効)に基づき,地方公共団体等と連携して,暫定一覧表への追加を行うなど,我が国の文化遺産の世界遺産への登録推薦を積極的に進めるとともに,登録後の文化遺産の適切な保護を図る。
    •  国民が文化財を理解し,親しむ機会の充実を図るため,文化財の特性や保存に配慮しつつ,情報通信技術や様々な映像技術など多様な手法も用いて,公開及び活用を推進する。特に,史跡等については,必要に応じて史実に基づいた復元等の整備を行うことにより,国民に分かりやすい形での公開を促進する。
    •  建造物・史跡等の文化財とその周辺環境の保存及び活用を図るため,都市行政等他分野との施策の連携を深める。
    •  古墳壁画の保存対策として,高松塚古墳については恒久保存方針に沿って古墳から取り出された石室の壁画及び石材の修復を図り,キトラ古墳については剥(は)ぎ取りを行った壁画の修復を図り,適切な保存及び活用に努める。
    •  有形の文化財について,その種別や特性に応じて計画的に保存・修復を進める。また,地域の多様な文化財を包括的に保存するための施設等の整備,建造物の安全性の向上,防火・防犯・震災対策,伝統的建造物群保存地区をはじめ文化財集中地域等における総合的な防災対策の検討など,防災対策の充実を図る。その際,科学的な調査研究の成果を生かした取組を推進する。
    •  無形の文化財について,伝承者の確保・養成や,用具の製作・修理など,保存伝承のための基盤の充実を図るとともに,記録映像等の活用を図る。
    •  独立行政法人国立博物館及び独立行政法人文化財研究所は((注)両法人は平成19年度に統合予定),科学的・技術的な調査研究に基づく保存修復において,引き続き中心的な役割を果たすとともに,文化財の保存修復等に関する研究水準の向上及び人材の養成に努める。
    •  文化財の保存技術について,選定保存技術制度の活用等により,その保存及び継承を図る。
    •  文化財を建造物,美術工芸品等の類型ごとにとらえるのではなく,類型の枠を超えて文化財が一定の関連性を持ちながら集まったものについては総体としてとらえるなど,総合的に把握し,保護する方策について検討する。

3.地域における文化芸術の振興

 地域における多様な文化芸術の興隆は,我が国の文化芸術が発展する源泉となるものである。全国各地において,国民が生涯を通じて身近に文化芸術に接し,個性豊かな文化芸術活動を活発に行うことができる環境の整備を図る必要があることから,次の施策を講ずる。

    •  国民が,その居住する地域にかかわらず文化芸術に触れることができるよう,舞台芸術など様々な文化芸術の鑑賞機会を充実するとともに,各地域における創造活動等を支援し,地域住民の文化芸術活動への参加を促進する。
    •  都市と農山漁村の共生・対流の推進の視点も踏まえつつ,各地域の歴史等に根ざした個性豊かな祭礼行事,民俗芸能,伝統工芸等の伝統文化に関する活動の継承・発展や,生活・生業に関連して形成された文化的景観の保護を図る。
    •  地域の特色ある文化芸術活動を推進するため,文化施設などの拠点における意欲的な活動を支援するとともに,特色ある取組の積極的な発信や発表の機会の拡充を図る。
    •  地域の文化芸術活動の指導者や文化芸術団体の育成を図るとともに,地域間の文化芸術の交流を促進する。
    •  各地域における伝統的な文化を継承する活動への地域住民の参加を促進するため,民間の非営利活動や文化ボランティアによる活動と一層の連携を図るとともに,それらの自立的な活動を支援する。
    •  大学等や報道機関,民間企業などを含む関係機関の連携により,地域文化を振興するとともに,文化力を観光,教育,福祉などの分野はもとより広くまちづくりに生かす取組を促進する。
    •  「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(平成9年法律第52号)に基づき,アイヌ文化の振興を図るとともに,アイヌ文化の伝統等に関する知識の普及及び啓発を図る。

4.国際交流等の推進

 世界の人々の関心と興味を「魅きつける」多様な文化を積極的かつ効果的に発信するとともに,文化芸術に係る国際的な交流を進め,日本への理解の深化及び文化芸術による国際貢献を推進し,我が国及び世界の文化芸術活動の発展に資するため,次の施策を講ずる。

    •  アジアをはじめとする海外の文化芸術創造活動に資するよう,我が国のメディア芸術の創造と発信に関する拠点の形成を図るとともに,広く新しい文化芸術の創造を推進する。
    •  我が国及び海外の文化人・芸術家等の相互交流・連携や文化交流の拠点である国立の文化芸術機関等による国際的なネットワークの形成を継続して推進する。
    •  文化芸術に関する国際的な相互交流を強化するため,文化芸術団体等の国際交流活動を支援するとともに,海外からの参加を得た舞台芸術の交流,作品制作ワークショップ等,多様で国際的な事業の展開を進める。
    •  魅力ある日本文化を海外に幅広く紹介するため,優れた日本文学作品の翻訳・普及や,インターネット等を活用した日本文化の総合的な情報発信を図る。
    •  将来の国際交流を担う青少年の国際文化交流等を推進することにより,世界に日本文化を発信することができる人材の育成を図る。
    •  文化芸術に係る国際交流の推進に当たっては,関係府省及び国際交流基金及びその他の関係機関等が緊密な連携・協力に努める。
    •  「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」(平成18年法律第97号)に基づき,国内体制の整備を図りつつ,海外の研究機関等との連携等により,文化遺産国際協力を推進する。
    •  「無形文化遺産の保護に関する条約」(平成18年4月20日発効)に基づき,専門家の派遣・招へい等を通じたアジア・太平洋地域等における無形文化遺産保護活動への協力を推進する。

5 芸術家等の養成及び確保等

 多様で優れた文化芸術を継承し,発展させ,創造していくためには,その担い手として優秀な人材を得ることが不可欠であることから,次の施策を講ずる。

    •  文化芸術団体,教育機関などの関係機関が連携し,計画的・系統的な人材育成を促進する。
    •  高い技術と豊かな芸術性を備えた芸術家等を養成するため,新進芸術家等の海外留学や新国立劇場における研修事業の充実,各分野の文化芸術団体等が行う研修への支援を図るとともに,次代を担う新進芸術家が活動成果を発表する機会や世界的な芸術家による指導の機会の充実などを図る。
    •  伝統芸能の伝承者や文化財の保存技術者・技能者,文化施設や文化芸術団体のアートマネジメント担当者,舞台技術者,技能者,学芸員など,幅広い人材の養成及び確保,資質向上のための研修を充実させ,文化芸術活動を担う人材の育成を図る。
    •  大学等や国立の文化施設等における文化芸術に係る教育及び研究の充実を図る。

6.国語の正しい理解

 言葉は,論理的思考力,表現力,想像力などの基盤であり,意思疎通の手段であると同時に,その言葉を母語とする人々の文化とも深く結び付いている。このような文化の基盤としての国語の重要性を踏まえ,個々人はもとより,社会全体としてその重要性を認識し,国語に対する理解を深め,生涯を通じて国語力を身に付けていく必要があることから,次の施策を講ずる。

    •  敬語に関して,具体的な指針の普及を図る。
    •  情報化時代に対応する漢字政策の在り方についての基本的な考え方を提示するとともに,その普及を図る。
    •  学校教育において,すべての教科の基本となる国語力を養うため,教育活動全体を通じてその一層の充実を図る。
    •  学校教育に携わるすべての教員が国語についての意識を高め,実際に生かしていくことができるよう,学校の教員の養成及び研修の各段階において,国語力に重点を置いた取組を進める。
    •  家庭や地域において,国語に対する意識を高めるため,言葉に関する講演会の開催や体験活動を推進し,国語力の育成及び向上を図る。
    •  「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号)に基づく「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を踏まえ,子どもの自主的な読書活動を推進するため,読書に親しむ機会の提供や諸条件の整備・充実等を図る。
    •  近年の外来語・外国語(いわゆる片仮名言葉)の氾(はん)濫などの状況や,放送・出版等様々な媒体が人々の言語生活に及ぼす影響等を考慮し,公用文書等では,国民に分かりやすい表現を用いるよう努める。それと同時に,国民の言語への影響に関する関係機関の自覚を求める。
    •  「文字・活字文化振興法」(平成17年法律第91号)に基づき,図書館や学校等において,国民が豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できるよう,環境の整備を図る。
    •  独立行政法人国立国語研究所や大学等の関係機関における調査研究の充実を図る。

(ア) 日本語教育の普及及び充実

 近年,日本語を学習する外国人は国内外ともに増加しており,また,学習の目的も多様化している。このような学習需要や社会の変化に対応し,外国人の我が国及び我が国の文化芸術に対する理解の増進に資するよう,次の施策を講ずる。

    •  国内における日本語教育を受ける対象者の拡大に対応するため,日本語教育の指導内容・方法等の調査研究,日本語教育教材等の開発及び提供,日本語教育に携わる者の養成及び研修など,日本語教育の充実を図る。
    •  地方公共団体などの関係機関や日本語ボランティア等との連携協力により,地域の実情に応じた日本語教室の開設や,幅広い知識や能力を持つ日本語ボランティアの養成及び研修など,地域における日本語教育の充実を図る。その際,特に国内に居住する外国人の生活への総合的支援の一環として,日常生活に必要とされる日本語能力の向上を図る。
    •  海外における日本語学習の広がりにこたえるため,日本語教員等の海外派遣・招へい研修を推進するとともに,インターネット等の情報通信技術を活用した日本語教材・日本語教育関係情報の提供を推進する。

7.著作権等の保護及び利用

 文化芸術の振興の基盤を成す著作権等について,国際的な動向を踏まえるとともに,「知的財産基本法」(平成14年法律第122号)及び「知的財産推進計画」(知的財産戦略本部決定)に沿って,その適切な保護及び公正な利用を図るため,次の施策を講ずる。

    •  技術の進展などの時代の変化に対応するため,私的録音録画補償金制度や保護期間の在り方等について検討を進め,必要に応じて法制度の整備を行う。また,その的確な運用,著作権制度や著作物の流通に関する調査研究の実施,著作物の流通促進のためのシステムの構築等を行う。
    •  国内外における我が国の著作物等の海賊版の流通を防止・撲滅し,文化的創作活動や国際文化交流を推進するため,侵害国等への働きかけ,海外における著作権制度整備支援,権利者による権利行使支援,官民連携の強化,諸外国との連携の強化等を行う。
    •  情報通信技術の発達により,著作権に関する知識や意識がすべての人々に必要不可欠なものとなっていることから,対象者別セミナーの開催,学校教育,文化庁ホームページを利用した著作権教材の提供など,様々な方法により,著作権に関する知識と意識の普及を図る。

8.国民の文化芸術活動の充実

 国民がその居住する地域にかかわらず等しく文化芸術を鑑賞し,参加し,創造することができる環境を整備し,心豊かな社会を実現していくため,特に,高齢者,障害者,青少年などへのきめ細かい配慮等を図りつつ,次の施策を講ずる。

  1. (1) 国民の鑑賞等の機会の充実
  2.  国民が文化芸術を享受する機会の充実を図るため,次の施策を講ずる。

    •  国民が身近に文化芸術を享受できるよう,各地域における様々な文化芸術の公演,展示等に対する支援を行う。
    •  国民文化祭の開催をはじめ,国民の文化芸術に関する参加や関心を喚起する機会の充実を図る。
    •  国民の文化芸術活動への参画に資する質の高い文化ボランティア活動を活発にするため,情報の提供,相互交流の推進などの環境の整備を図る。
    •  地域や学校等において,文化芸術と国民を結び付ける活動や,文化芸術を支援する役割を国民自らも幅広く担っていくサポーター(支援者)の活動を活発にするための環境整備の方策について検討を進める。
  3. (2) 高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実
  4.  高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実を図るため,次の施策を講ずる。

    •  文化芸術活動の公演・展示等において,高齢者,障害者,子育て中の保護者等が文化芸術を享受しやすいよう,施設のバリアフリー化,字幕や音声案内サービス,託児サービス,利用料や入館料の軽減など対象者のニーズに応じた様々な工夫や配慮等を促進する。
    •  高齢者,障害者,子育て中の保護者等の文化芸術活動を支援する活動を行う団体等の取組を促進する。
  5. (3) 青少年の文化芸術活動の充実
  6.  青少年の文化芸術活動の充実を図るため,次の施策を講ずる。

    •  青少年が多種多様な文化芸術に直に触れ,体験できる機会の充実を図るとともに,学校や文化施設等を拠点として,子どもたちが伝統文化や生活文化を継続的に体験・修得できる機会の充実を図る。
    •  青少年を対象とした文化芸術の公演等への支援を行うとともに,文化芸術活動の場や機会の充実を図る。
    •  地域の文化芸術活動に携わる人材を養成し,青少年に対する指導や助言を行う指導者の養成及び確保を促進する。
    •  学校等と連携しつつ,地域の美術館・博物館における教育普及活動を充実させることにより,子どもたちの芸術に対する感性や郷土の歴史・文化に対する理解をはぐくむ取組を促進する。
  7. (4) 学校教育における文化芸術活動の充実
  8.  学校教育における文化芸術活動の充実を図るため,次の施策を講ずる。

    •  初等中等教育から高等教育までを通じて,歴史,伝統,文化に対する理解を深め,尊重する態度や,文化芸術を愛好する心情などを涵養し,豊かな心と感性を持った人間を育てる。
    •  様々な学習機会を活用し,積極的に,文化芸術に関する体験学習など文化芸術に関する教育の充実を図るとともに,優れた文化芸術の鑑賞機会の充実を図る。
    •  子どもたちに対する文化芸術の指導を行う教員の資質の向上を図るとともに,各教科等の授業や部活動等において,優れた地域の芸術家や,文化芸術活動の指導者,文化財保護に携わる人々等が教員と協力して,指導を行う取組を促進する。
    •  授業において,和楽器を用いたり,長い間親しまれてきた唱歌,わらべうた,民謡など日本のうたを取り上げるなど,我が国の伝統的な音楽に関する教育が適切に実施されるよう配慮する。

9.文化芸術拠点の充実等

  1. (1) 劇場,音楽堂等の充実
  2.  劇場,音楽堂等が,優れた文化芸術の創造,交流,発信の拠点や,地域住民の身近な文化芸術活動の場として積極的に活用され,その機能・役割が十分に発揮できるよう,次の施策を講ずる。

    •  法的基盤の整備や税制上の措置などの方策により,劇場,音楽堂等の活動の円滑化,活発化を図る。
    •  各地域の劇場,音楽堂等の創造活動等への支援,芸術家やアートマネジメント担当者,舞台技術者等の配置等の支援,情報の提供などを充実するとともに,他の劇場,音楽堂,学校等と連携した活動を促進する。
    •  各地域の劇場,音楽堂等における活動が適切かつ安全に行われるよう,環境の整備を図るとともに,施設の管理運営等に関し,それぞれの目的等に応じ,長期的かつ継続的な視点に立って,多様な手法を活用したサービスの向上,運営の効率化等の配慮が行われるよう促進する。
    •  国立劇場や新国立劇場等における公演の充実を図り,より多くの国民に質の高い文化芸術の鑑賞機会を提供するなど,国立施設としてふさわしい活動を推進するとともに,そのために必要な安全かつ良好な施設環境を整備する。
    •  劇場,音楽堂等における活動に不可欠なアートマネジメント担当者,舞台技術者・技能者,文化施設の職員等の資質向上のための研修の充実を図る。
  3. (2) 美術館,博物館,図書館等の充実
  4.  国民の要望の多様化,高度化を踏まえ,美術館,博物館,図書館等が優れた文化芸術の創造,交流,発信の拠点や,地域住民の文化芸術活動の場として積極的に活用され,その機能・役割が十分に発揮できるよう,次の施策を講ずる。

  5. 1. 美術館,博物館等の充実

    •  美術館,博物館等が,地域の文化芸術の中核となり,長期的かつ継続的な視点に立った運営を行い,他の文化施設や学校等と連携を促進するなど,質の高い活動を活発に展開するよう,支援を行う。
    •  登録美術品制度の活用を引き続き推進し,所蔵品の充実や安定した公開を図る。
    •  優れた文化財,美術品等を積極的に保存・公開するため,所蔵品に関する情報のデジタル化を推進する。
    •  美術館,博物館等に対する適切な評価の在り方について,検討を進める。
    •  魅力ある施設づくりの核となる学芸員等の資質向上のための研修の充実を図る。
    •  独立行政法人国立美術館が,我が国の美術振興の中心的拠点として,国民の感性をはぐくみ,新しい芸術創造活動を推進するための機能の充実を図る。
    •  独立行政法人国立博物館及び独立行政法人文化財研究所が,我が国の文化財施策の一翼を担う機関として,国民の宝である文化財を収集・保存し,次世代へ適切に継承するための機能の充実を図る。
  6. 2. 図書館の充実

    •  図書館が,資料や情報等の継続的な収集,調査研究への支援や資料の利用相談,時事情報の提供等の機能を充実させることにより,地域を支える情報拠点となるよう,先進事例の収集・情報提供や図書館の充実方策を提示するなどの支援を行う。
    •  地域や住民にとって役に立つ,魅力ある図書館づくりの核となる司書等の資質向上を図るため,研修等の充実を図る。
  7. (3) 地域における文化芸術活動の場の充実
  8.  国民が身近に,かつ,気軽に文化芸術活動を行うことができる場の充実を図るため,次の施策を講ずる。

    •  各地域の文化施設や公民館等の社会教育施設について,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等が円滑に利用しやすい運営を促進する。
    •  学校施設については,学校教育に支障のない限り学校教育以外の利用が認められていることや,学校教育に利用される見込みのない教室や廃校施設については,様々な用途への転用が可能となっていることを踏まえ,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等の公演・展示や練習の場として,また,文化芸術作品等の保存場所としての利用を促進する。
    •  学校や文化施設以外の様々な施設においても,地域の芸術家,文化芸術団体,住民等の文化芸術活動への幅広い利用を促進する。
  9. (4) 公共の建物等の建築に当たっての配慮
    •  公共の建物等の施設の整備に際して,建物の外観等が,周囲の自然的環境や景観,地域の歴史,文化等との調和がとれたものとなるよう,形状,色彩,デザイン等について配慮するよう努める。
    •  

10.その他の基盤の整備等

  1. (1) 情報通信技術の活用の推進
  2.  情報通信技術の活用は,文化芸術の創造活動のみならず,その成果の普及や享受を通じて,人と人との結び付きを強め,協働・共生社会の実現に資するなど,多様で広範な文化芸術活動の展開に貢献するものであることから,次の施策を講ずる。

    •  我が国の多様な文化芸術,映画・映像,文化財等の情報について,デジタル技術,インターネット,CD-ROM等を活用して,ネットワーク化するなど,保存,展示,国内外への公開等を推進する。その際,学校教育における活用の促進の観点から,子どもたちが理解しやすいものとすることにも留意する。
    •  メディア芸術祭等において,科学技術の活用等を通じた文化芸術の振興に関する取組を推進する。
    •  文化芸術関係者の情報通信技術の活用の推進を図るための取組を促進する。
  3. (2) 地方公共団体及び民間の団体等への情報提供等
  4.  地方公共団体,芸術家等,文化芸術団体,NPO,NGO,文化ボランティア等が行う文化芸術の振興のための取組を促進するため,次の施策を講ずる。

    •  国内外の文化芸術に関する各種の情報や資料の保存・活用方法について検討し,国と民間,国と地方公共団体の役割分担を図りつつ,国民に提供する。
    •  国内外の文化芸術に関する各種の情報や資料の保存・活用方法について検討し,国と民間,国と地方公共団体の役割分担を図りつつ,国民に提供する。
    •  国内外の文化芸術関係者等が,国の文化芸術の振興に関する施策の内容や,国内外の文化芸術に関する各種の情報,専門的知識等を把握することができるよう,情報通信技術など様々な方法を活用して,積極的に提供していくとともに,相談,助言等の窓口機能の整備を図る。
    •  地方公共団体,芸術情報プラザなどの文化芸術団体等による情報提供のための取組を促進する。
  5. (3) 民間の支援活動の活性化等
  6.  個人や企業・団体等が文化芸術活動に対して行う支援活動を促進するため,次の施策を講ずる。

    •  文化芸術を支える民間(企業,団体,個人等)の支援を促進するとともに,寄附文化を醸成するための税制上の措置の活用等を講ずるよう努める。
    •  文化芸術関係者をはじめ,広く国民に対して,文化芸術活動に対する寄附等に関する税制措置の現状,企業等による支援活動の状況,多様な方法による文化芸術活動への支援の事例などについて,文化芸術団体等と連携しつつ,情報の収集及び提供を行う。
  7. (4) 関係機関等の連携等
  8.  個人や企業・団体等が文化芸術活動に対して行う支援活動を促進するため,次の施策を講ずる。

    •  施策の実施に際しては,関係府省間の連携・協力を一層推進するとともに,国,地方公共団体,企業,芸術家等,文化芸術団体,NPO,NGO,文化ボランティア,文化施設,社会教育施設,教育研究機関,報道機関などの間の連携を強化する。
    •  文化芸術と教育,福祉,医療その他の分野の連携により,地域で人々が様々な場で文化芸術を鑑賞し,参加し,創造することができるよう,芸術家等及び文化芸術団体と,学校,文化施設,社会教育施設,福祉施設,医療機関等との間の協力の促進に努める。
    •  
  9. (5) 顕彰
    •  これまで顕彰の機会が少なかった文化芸術の分野や幅広い年齢層も視野に入れ,文化芸術活動で顕著な成果を収めた者や,文化芸術の振興に寄与した者に対して積極的に顕彰を行う。
    •  
  10. (6) 政策形成への民意の反映等
  11.  文化芸術の振興に関する政策の形成に当たっては,より多くの国民の意見等を集約し,反映させていくことが重要であることから,次の施策を講ずる。

    •  文化芸術の振興のための基本的な政策の形成や,各施策の企画立案及び評価等に資する基礎的なデータの収集や各種調査研究の充実を図る。
    •  文化芸術施策の評価の方法について,文化芸術の各分野の特性を十分に踏まえ,定量的な評価のみならず,定性的な評価を含む適切な評価方法の開発に関する検討を行う。
    •  各施策の企画立案,実施,評価等に際しては,芸術家等,学識経験者その他広く国民の意見を求め,これを十分考慮した上で政策形成を行う。
    •  各地域において,国及び地方公共団体の文化行政担当者,芸術家等,文化芸術団体等が,各地域の文化芸術を取り巻く状況や活動の実態,文化芸術の振興のための課題等について,情報や意見の交換を行う場を積極的に設ける。
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