[3]社会を挙げての文化芸術振興

文化芸術は,人間の精神活動及びその現れであることから,まずもって活動主体の自発性と自主性が尊重されなければならず,その上で,活動主体や地域の特性に応じたきめ細かい施策が大切である。

地方公共団体においては,それぞれの地域の実情を踏まえた,特色ある文化芸術振興の主たる役割を担うことが期待される。特に基本法の制定後,地方公共団体においても文化芸術振興のための条例の制定や指針等の策定が進んでいるが,そうした条例・指針等に基づく施策の展開や,広域連携による取組の推進も望まれる。

企業のメセナ活動や,活発化しつつあるアートNPOによる活動をはじめ,個人,企業,NPO・NGOを含む民間団体等による自発的な支援は,我が国の文化芸術振興にとって不可欠であり,「新しい公共」の担い手としても,それらの自立的な活動が一層促進されることが望まれる。

国においては,大局的な観点から文化芸術振興の展望を示し,国際的動向も踏まえつつ,成熟社会における成長の源泉たる文化芸術の振興を通じて国力の増進を図るとともに,多様かつ広範な文化芸術活動の基盤及び諸条件を整備することが主要な役割となる。同時に,国は,地方公共団体や「新しい公共」の担い手を含む民間による自主的な取組に対して,必要な支援や情報提供等所要の措置を講ずるとともに,地域において文化芸術を享受する機会等の偏在を是正するよう努める必要がある。その際,選択と集中を図る観点も踏まえ,厳しい財政事情にも照らして支援の重点化,効率化を図りつつ,必要な法制上,財政上の措置を講ずるとともに,税制上の措置等により文化芸術活動を支える環境づくりを進める必要がある。

文化芸術は,国民の身近な生活に密着しており,国民一人一人が文化芸術を支えていく環境を醸成し,文化芸術の享受,支援,創造,保護・継承のサイクルが実現する社会の構築が求められる。そのためにも,文化芸術振興の意義に対する国民の理解の上に,個人,企業,NPO・NGOを含む民間団体,地方公共団体,国など各主体が各々の役割を明確化しつつ,相互の連携強化を図り,社会を挙げて文化芸術振興を図る必要がある。

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