リバースエンジニアリングに関する権利制限規定について

社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会
専務理事・事務局長 久保田 裕

<総論>

リバースエンジニアリング(以下R/Eとします)に伴う複製又は翻案に関する権利制限規定を設けるべきかどうかについては,平成6年5月「コンピュータ・プログラムに係る著作権問題に関する調査研究協力者会議報告書」において検討がなされた後,R/Eを行うことが不可欠な具体的な問題が生じているかどうかについては,当協会活動においては具体的な問題を適示されたことはありません。
一方,情報セキュリティの確保等の理由から,合理的な目的であれば検討すべきであろうとの意見があることは認識しています。
近年の状況を勘案した場合,目的が正当であり,手段が相当であれば一定程度の権利制限を認めざるを得ないと考えます。
なお,ここでの「リバースエンジニアリング」の定義については,「既存プログラムの調査・解析」とし,その手法のうち著作権法上問題が生じうる逆アセンブル,逆コンパイル行為等を想定しております。

<各論>

上記報告書の内容を踏まえ,R/Eのうち,(1)相互接続性,互換性の確保目的,(2)脆弱性の確認(セキュリティ・チェック)(3)著作権侵害行為の発見目的,(4)主として著作権侵害に供されるソフトウェアの機能性能調査など,公正な目的で行うものについては,必要性があり,権利の制限を受けることが許容されるのではないかと考えております。 しかし,プログラムの模倣やウイルス作成など不公正な目的であったり,技術的保護手段・制限手段の回避等の手段として行うR/Eについては権利の制限を受けることは許容できないと考えております。
とりわけ,(2)に関しては当協会では問題とされたことはないものの,今後検討の余地はあると考えます。
そして,上記(1)~(4)のような公正と認められる具体的な目的上必要不可欠な複製が,その目的に照らして必要な限度でのみ認められるべきでしょう。ただし,これらの目的は主観にもとづくものであり,R/Eに基づく複製が発生した段階では外形的に判別がつきにくいという問題が残ります。
さらに,R/Eの際に複製された複製物の扱いについては,目的外利用(支分権対象行為に含まれない目的外「使用」を含む。)を禁じる条項を設けるほか,複製物の公表,頒布及び公衆送信等についても禁止しなければなりません。
また,外国法制とのバランスを鑑み,法制化される場合であっても,EUにおけるECディレクティブ等に規定する範囲を超えるべきではないと考えます。

以上

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