議事録

文化審議会著作権分科会
国際小委員会(第1回)議事録

日時:
平成25年5月31日(金)
10:00~12:00
場所:
文部科学省東館3階 3F2特別会議室
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)国際小委員会審議予定について
    3. (3)WIPO等における最近の動向について
    4. (4)権利者不明著作物について
    5. (5)アジア著作権セミナーの報告
    6. (6)海外における著作権侵害等に関する実態調査報告書(中国)の報告
    7. (7)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

○10:02開会

○本小委員会の主査の選任が行われ,道垣内委員が主査に決定した。
○主査代理について,道垣内主査より鈴木委員を主査代理に指名された。
以上については「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)における1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【道垣内主査】 傍聴者の方には,お手数をおかけいたしました。道垣内が主査に互選されましたので,今後,私が主査として議事を進めていきます。それから,鈴木委員を主査代理に指名させていただきました。
 では,最初に河村文化庁次長より御あいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【河村文化庁次長】 おはようございます。文化庁次長の河村でございます。第13期文化審議会著作権分科会国際小委員会1回目でございますので,一言御あいさつ申し上げたいと存じます。この国際小委員会は国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関しましての審議をお願いする場でございます。国際機関などでの交渉が行われているものについての御報告や方向性についての御審議をいただいたり,また,国境を越えた海賊行為についての対処の状況についての御審議,それらの背景となっている諸外国の制度についての共通理解を深めるような作業,こうしたことをお願いしてきたところでございます。
 最近の状況を若干だけ申し上げますと,例えばIPO(世界知的所有権機関)でございますけれども,今年の6月にはモロッコにおいて視覚障害者等の方々のための権利制限や例外に関する条約が策定されるのではないかという見込みとなっております。また,放送条約についても早期の条約採択を目指して議論が活発化しております。
 また,国内に目を転じますと,知的財産戦略本部で検討されております知的財産政策ビジョンというものがございますけれども,我が国の文化の力を国際的にも発揮できるような仕掛け作り,アジア新興国等の海外におけるエンフォースメントの強化といったような競争力強化のためのグローバルな知財システムの構築を目指しているという状況でございます。これらの動向を踏まえながら,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方を検討していただきたいと存じます。我が国の著作権制度の将来に向けての広い視野での御議論になろうかと存じます。
 先生方には大変お忙しいことと存じますけれども,この委員会の委員をお引き受けいただきましたことに改めてお礼申し上げます。どうぞ今期についての御審議をよろしくお願い申し上げまして,冒頭の御あいさつとさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

【道垣内主査】 御丁寧にありがとうございます。
 それでは,議事の1番目は済んでおりますので,議事の2番の国際小委員会の審議の予定につきまして事務局より御説明いただきます。

【堀国際著作権専門官】 事務局から国際小委員会の審議予定につきまして御説明いたします。資料2を御参照ください。こちらが平成25年5月8日の文化審議会著作権分科会の決定でして,小委員会の設置についてという資料でございます。2の(3)というところで,国際小委員会の審議事項というところで国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することと決定されております。
 参考資料5なのですが,平成24年度国際小委員会の審議の経過等についてという紙がございます。こちらが昨年度の審議の経過をまとめた紙です。昨年度は1.の「はじめに」というところで四つ検討課題がございまして,(1)としてインターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,(2)及び(3)として著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,知財,開発,フォークロア問題への対応,(4)といたしまして主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点の整理ということを前期の小委員会では審議してございます。事務局といたしましては,前年度に引き続きましてこのような考えを検討してはいかがと考えてございます。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 一番上に文化審議会があり,その下に著作権分科会があり,その著作権分科会がこの小委員会を設置したわけですが,そこで与えられた任務が資料2の2の(3)記載のところでございます。これを具体化していくに当たって,資料2の裏側の検討課題例,こんなことを審議してはどうかというのがこの紙でございます。具体化につきましては,この小委員会がイニシアティブをとるといいますか,自ら決めて議論をすべきことでございますので,委員の皆様方の御意見を伺って加筆修正,その他させていただきたいと思います。何か御意見ございますでしょうか。
 基本的には昨年度まで行われていた第12期とさほど違わないということになります。資料5のところは4項目になっていますところ,こちらは3項目になっていますが,この主要諸外国の著作権法及びその制度に対する課題や論点の整理という点も排除する趣旨ではないと思います。審議事項として大枠は上の枠で書いてあることなので,そういう了解の下にこの案でよろしゅうございますでしょうか。では,特に御異論ないということでございますので,そのようにさせていただきたいと思います。
 では,議事の(3)です。IPO等における最近の動向について,これも事務局より御説明をいただき,また,委員の皆様の御意見をいただきたいと思います。では,よろしくお願いします。

【堀国際著作権専門官】 事務局より資料3に基づきまして,IPOにおける最近の動向につきまして御報告いたします。大きく二つございまして,一つは視覚障害者などの方のための権利制限と例外について,もう一つは放送条約に関する議論でございます。まず,1番目ですが,視覚障害者などの権利制限及び例外について,ここ数年継続して議論されており,昨年12月に開催されたIPO臨時総会におきまして,条約を採択するための外交会議の開催が決定されてございまして,本年6月にモロッコのマラケシュにおいて外交会議が開催されまして,条約が採択される予定でございます。
 現時点での条約の草案の主要事項でございますが,前回の国際小委で継続して御報告されているところから大きくは変わってございませんで,1番目としまして権利制限の対象となる著作物は書籍などのテキスト形式のものを対象としてございます。2番目,受益者といたしましては,視覚障害者,読字障害者の方に加えまして肢体不自由な方も対象としてございます。3.ですが,視覚障害者などの方のために著作権の権利制限及び例外の規定を国内法で設けるということが義務化すべきという規定がございます。
 4.といたしまして,アクセス可能な形式の複製物,これは具体的には点字図書のようなものでございますが,それを国境を越えて融通し合うという仕組みづくり,具体的には次のページの参考図を御参照いただきながらと思いますが,輸出国で作成されました,輸出国の法律で権利制限規定に基づいて作成されたアクセス可能な形式の複製物,Authorized Entityという団体が作成しまして,それをB国に輸出し,それをB国の受益者が享受するといった仕組みづくりを条約の中で規定してございます。
 前回の国際小委員会における報告からの進展でございますが,具体的には会議が2回開催されてございまして,1回目が2月18日から22日,2回目が4月18日から20日にかけてテキストベースの議論が行われてございます。議論の内容ですが,具体的にはC条という国内法の権利制限規定を規定した条文,国境を越えた輸出入を規定したD条,技術的保護手段に関連したF条,既存の締結条約の遵守等を定めたクラスター・パッケージという条文がございますが,そちらを中心に行われてございます。クラスター・パッケージと呼ばれる条文につきましては,暫定合意に至ってございます。こちらは資料3-1に参考和訳として現在のテキストの最新版の訳を付けさせていただいてございます。
 クラスター・パッケージといいます条文は,現在では13ページの方に規定されてございます。13ページの条文の概要を御説明いたしますと,実施規定というところはかなり一般的な内容を定めてございまして,本条約の適用を確保するために必要な措置を講ずるといった一般的な規定でございます。著作権尊重規定と申し上げますのは,基本的にはベルヌ条約ですとか,CWT,TRIPsなどに定められた権利を締約国は行使することができる。また,その既存の条約の義務は遵守するというところが肝でございまして,その具体的な事例としましては,各条約の3ステップテストの義務は守るというところが定められてございます。
 続きましてC条の1項でございますが,こちらは翻訳権の規定となってございます。これは和訳で申し上げますと6ページの1.Bというところ,C条の1Bというところでございます。基本的には国内の著作権法におきまして翻訳権に関する視覚障害者の方のための,受益者の方のための翻訳権の権利制限規定を定めることができるという任意規定になっている一方,そもそも条約の対象外と削除を主張する国もございまして,こちらはまだ外交会議で引き続き議論という形になってございます。なお,条文テキストの中で括弧書きがついているのがまだ意見が分かれているというところでございまして,また,選択肢があるところも議論を継続中というところでございます。
 C条の4項というところですが,これは具体的には参考和訳の7ページでございます。国内の市場利用可能性条項と呼ばれる条項でございますが,国内法の著作権の規定におきまして録音図書ですとか,点字のようなものが市場に出回っている場合につきましては,権利制限の対象から外れるという制度を,各国が採用可能であるという条文でございます。ただし,そのような制度を採用する国はIPOへの通知を行うということで暫定合意がされてございます。
 続きまして,D条3項というところでございます。こちらは参考和訳の8ページでございます。国際的な市場利用可能性条項と呼ばれているものでございまして,先ほど参考図でお示ししましたアクセス可能な形式の複製物の輸出入の対象が限定されるという規定でございます。輸出しようとする録音図書のようなアクセス可能な形式の複製物が仮に輸入国(B国)のマーケットで出回っているという場合には,A国からそのような複製物が輸出されてしまいますと,そのB国のマーケットを壊すという懸念がございまして,そういった輸出入を制限するという条文でございます。この規定につきましては,条項の義務化を求める加盟国と条項自体の削除を求める加盟国の対立が続いてございまして,引き続き外交会議へ向けて妥協点を探すという形になってございます。
 続きましてD条の追加提案というところでございます。これは元々条文にはなかったのですが,追加で提案されている条文でございます。先ほどの参考図で示しました輸出入の仕組みですが,仮にB国がベルヌ条約に入っていなくて,全く著作権制度がないという国におきましては,輸出国から輸出されたアクセス可能な形式の複製物がB国の輸入国内に入ってきますと,受益者が享受できるということは当然なのですが,著作権制度がない国ですと健常者へも流通してしまうという不正流通の問題がございました。それを防ぐために,ベルヌ等の条約の非加盟国については輸入されたアクセス可能な形式の複製物の少なくともその利用については,3ステップテストの義務をかけるというところが議論されております。具体的な書きぶりは現在も議論中でして,和訳の14ページのA,B,Cという形で選択肢が三つございまして,こちらをベースに外交会議で引き続き議論されるということになってございます。
 続きまして,F条,技術的保護手段に関しましては,著作物に技術的保護手段が適用されている場合に受益者がその権利制限を享受するというアイディア自体に特段の異論はないものの,具体的な文言について調整が難航しております。今検討されておりますのは,別添の15ページの一番下のところの条文,F条に関する注釈の代替案をベースに議論されておりまして,義務的な条項としないということで暫定的な合意が形成されつつございますが,最終的な文言をめぐって意見が対立しておりまして,引き続き外交会議で議論されるということになってございます。
 議論が継続中のテキストにつきましては,別添文書として,14ページから16ページの方に組み込まれまして,外交会議の場で引き続き議論されるという予定でございます。また,こちらで和訳としてお示ししましたのは実体条項と呼ばれるものでございますが,外交会議の手続規則ですとか,管理条項,最終条項のような条約の手続的な部分で未解決の部分につきまして,外交会議で議論されるという状況でございます。今回,4月の会合で改訂された最新版テキストを資料3-1という形でお付けしてございますか,こちらをベースに条約草案といたしまして,最終的に外交会議に臨むということになってございます。
 続きまして資料の4ページ,放送機関の保護に関する中間会合が4月10から12日に開催されましたので,こちらを御説明いたします。こちらの会合では昨年採択された条約のシングルテキストの修正版ということで資料3-2をベースにしつつ,受益者,適用の範囲,権利・保護の範囲という三つの論点につきまして議論されてございます。議論が混乱するところがございまして,我が国からは,本会合での議論を容易にするために放送条約に関する主な論点という整理紙を資料3-3のような形で提出してございます。三つの論点ですが,まず,受益者については,本条約の保護の主体としては,基本的には伝統的な放送機関のみを保護するというところで各国の見解は一致してございます。ただ,放送機関の定義というところの書きぶりにつきましては,さらなる検討が必要であるという指摘がなされてございます。
 また,適用の範囲というところでございますが,日本は条約の早期採択を優先するということで,インターネット放送については,本条約の対象からは切り離して条約採択後に議論すべきだというところのスタンスをとっております。インドはインターネット放送については,本条約からの対象からは外すべきであるという主張をしてございます。また,EUは少なくともサイマルキャスティングまでは保護の対象とすべきであるというスタンスをとってございます。また,アメリカについては,インターネット放送の保護は必すとすべきであるとしつつ,具体的などのようなインターネット放送を保護すべきかは検討すべきだという主張をしてございます。また,ほかの国々,イラン,南アフリカ,ケニア等も何かしらのインターネット放送は保護すべきであるとしてございます。
 権利・保護の範囲についても議論がされてございまして,固定後の権利の必要性については,EU,日本,イラン,メキシコ,カナダ,こういった国々は固定後の権利の保護は重要であるというスタンスであるのに対しまして,米国,インド,ナイジェリア,エジプトなどは放送信号,生の放送信号の窃取の防止が必要であって,固定後の権利の保護は著作権による保護と重複することになるとして不要であるという主張をしてございます。また,固定後の利用可能化権の必要性についても同様に意見が分かれてございます。
 また,放送に係る第三者がインターネット上で侵害行為をするというところに対する保護につきましても,基本的には保護を行うべきというところが多数を占めているのですが,インドだけがSCRに与えられたマンデートを超えるということで条約の対象から外すべきという形になってございます。こちらの会合の結果は,次回のSCRで議長から報告されるということでございます。
 御参考まで,参考資料4という形で,これまでの放送条約に関する経緯を参考資料4という形で,経緯と主な論点,各国の大体のスタンスにつきましてお付けしてございますので,こちらも併せて御参照いただければと思います。
 3.の今後の日程ですが,来月の17日から28日まで外交会議がモロッコ,マラケシュで開催される予定でございます。また,次回,SCRにつきましては,7月29日から8月2日まで開催予定でございます。放送条約につきましては,2日間議論される予定でございます。
 事務局からは以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 それでは,この点につきまして先ほどの審議の事項で言いますと著作権保護に向けた国際的な対応の在り方という項目に該当するかと思いますので,交渉担当者,政府,文化庁に対して何か御意見いただける点がございましたら,よろしくお願いいたします。
 上野委員,どうぞ。

【上野委員】 権利制限に関する条約及び放送機関に関する条約につきましては,かねてから議論が続けられておりまして,御担当者の方々も,これまで大変な御苦労をされてきたことと思いますが,ようやくにして議論がまとまってきたということで,これは大変結構なことと感じております。
 前者の権利制限に関する条約の方に関しましてもいろいろと議論があるかと思いますけれども,私の方からは,放送条約に関する論点のうち,伝統的放送機関が行うインターネット放送について少しコメントしたいと思います。
 この点に関しまして,我が国の立場といたしましては,本日の資料3にも記載されておりますように,「条約の早期採択を優先し,インターネット放送については本条約から切り離し,条約採択後に議論すべき」というものであると承知しております。
 確かに,インターネット放送につきましては実態として時期尚早であるという御指摘もありますし,また,早期採択を優先すべきだというのは確かにそうかも知れませんので,私も基本的にその方向性で結構だろうと思います。
 ただ,この問題はかなり以前から議論されておりまして,この間,5年以上も経過するうちに,ネット環境もかなり変わってきたのではないのかというのは,平成24年第2回(2012年9月7日)のこの委員会でも梶(かじ)原委員の方から御指摘があったことと思います。
 それからまた,早期採択を優先すべきだという点につきましては,確かに,もしこの問題を条約に含めない方が早くまとまりやすいというのであれば,その方が早期採択につながるかと思います。けれども,先ほどからお話を伺っておりますと,確かに,インドだけは明確に反対しているようでありますが,アメリカも,ヨーロッパも,少なくとも伝統的放送機関が行うサイマルキャスティングについては条約の対象に含めるべきだと主張しておられるようです。これは,かねてから作花審議官が御論文で御指摘になっているとおり,日本とヨーロッパとで「放送」の概念が異なるという点に由来するところがあるのだろうと思われます。
 そうしますと,もし仮に,伝統的放送機関が行うサイマルキャスティングを条約の対象に含めた形の方が,むしろ早期にまとまる可能性があるということになるとすれば,条約の早期採択を優先するという以上,本条約からインターネット放送を切り離さない方が早期採択につながるということになるのではないかと思う次第であります。
 もちろん,この点に関しましては,NHKさんと民放さんとで,若干お立場が異なるところもあるようです。また,伝統的放送機関が行うサイマルキャスティングを含めた形で条約が実際に通りますと,我が国にとっては国内法の改正が必要になるという点も考える必要があろうかとは思います。
 しかし,伝統的放送機関が行う放送のサイマルキャスティングは,諸外国では既に実態として広く行われておりますし,今後,我が国でも進展が期待されるものなのではないかと思われます。放送の無断コピーからの保護という観点からすれば,通常の放送を行う場合よりも,インターネットにサイマルキャスティングで流した放送データの方が当然デジタルコピーされる可能性が高いと思われますので,これを条約の対象に含めて国際的な権利保護を実現するというのは,我が国にとってもプラスになるのではないかと考えられますし,少なくとも将来は重要になるのではないかと思います。民放連さんも,先の委員会で「第2ステップ」としてはインターネット放送の取扱いに関して検討を進めるべきだとおっしゃっておられるわけです。
 したがいまして,「条約の早期採択を優先」すべきという方針それ自体は結構なことだと思いますけれども,もし条約の早期採択につながるのであれば,伝統的放送機関が行う放送のサイマルキャスティングを一律に対象から除外するばかりではなく,今回の条約に含めるという選択肢も検討されてしかるべきではないかと考える次第であります。
 以上です。

【道垣内主査】 何か今の点についてコメントいただける点があればどうぞ。あるいはもう少し御意見を伺ってからでも結構ですが。

【佐藤国際課長】 放送条約の関係については,今回の4月会合は非公式会合でございました。次の7月のSCRに向けて各国,ポジションを正式に決めてきたわけではないのですが,一応,現段階のスタンスを表明した国と,あと一部サイレントの国が結構ありまして,今回の議論を受けて今後各国がどのようなポジションをとってくるかが一つポイントと思っております。また,インドは従来どおり強硬にインターネット放送に反対していますので,WIPOはコンセンサス形式で条約を策定していきますので,インドがノーと言った場合には条約はならないと,そのような事情とか,いろいろ複雑に絡んでいるということも1点言えるかなと思っております。
 更に,インターネット放送以外の点では,固定後の権利を認めるか,認めないかというのも結構大きな争点になると考えています。今,上野先生がおっしゃった御指摘については,関係団体ともよく御意見を聞いて,また今後どうするかを考えていきたいと思っております。

【道垣内主査】 参考資料4の2枚目の表,これが最新の各国のスタンス,わかっている限りにおけるスタンスということですね。

【佐藤国際課長】 その通りです。

【道垣内主査】 インドはバツが多く,立場がはっきりしているようですね。

【佐藤国際課長】 はい。補足を言いますと,ローマ条約型で保護している国と放送という通信保護法制をとる国によって,アプローチの違いがここに大きく反映していると事務局では思っております。

【道垣内主査】 わかりました。
 すみません,お待たせしました。野口委員。

【野口委員】 視聴覚の条約について御質問があるのですけれども,この条約は本年6月,つまり来月に採択の予定ということで,ほぼ最終段階に来ているというお話なのですけれども,国内法との観点で少し頭の整理も兼ねて御質問をさせていただきたいと思います。現在,日本でも著作権法37条に例外規定がございますけれども,今のこの方向性で条約が採択されることになった場合は,国内法もかなり見直しが必要になる可能性があるのかなと思っています。例えば,この四肢不自由者が,現在の私が拝見したところでは視覚障害者等の定義に入っていないのではないかと思いますので,その定義の拡大ですとか,あと譲渡権に対する対応とかが考えられそうなのですが,もし事務局の方で既に国内法との関係を整理されているようでありましたら教えていただきたいというのが1点。
 あとは,この対立されている論点につきましては,日本がどのような立場をとっているのかについて,必ずしも御説明の中で御紹介をいただかなかったようにも思うのですけれども,そのあたりについて,もし可能であれば,補足で御説明いただければと思います。

【道垣内主査】 お願いします。

【堀国際著作権専門官】 まず,国内法改正等の論点というところでございますが,事務局でも条約の議論の進展に併せて引き続き検討をすべきところではございますが,肢体不自由者のところに関しては手当が必要な部分かと思います。
 あと,譲渡権につきましては,第47条の10という条文がございまして,それとの関連で検討していく形になろうかと思います。
 あとは,具体的な関係団体,日本の対処というところでございますが,基本的には個別の論点につきましては関係団体の方と調整しているところで,関係団体の方々の御意見を伺いつつ調整しているところでございます。外交会議に向けての対処というところで申し上げますと,基本的には著作物の保護と利用のバランスに配慮しつつ,我が国の視覚障害者の方々の著作物へのアクセス向上に資する条約となるように関係団体の方々などと協力しつつ,交渉に臨むというところが基本的なスタンスでございます。

【野口委員】 ありがとうございます。もちろん関係団体の方の御意見,利害関係者の方の御意見が一番重要ではあると思うのですけれども,例えば翻訳権等については,日本は例えばどういう立場をとっていらっしゃるのかとか,あと技術的保護手段のところは,現在,日本では私的複製をメインに議論をされておりますので,日本法に影響があるという観点からは,その二つが私は影響がありそうと思うのですけれども,現在,日本はどのような立場なのかお教えいただけますでしょうか。

【作花長官官房審議官】 私の方からお答えします。日本の場合は37条3項で視覚障害者のための利用を許容する場合,43条の第4号の規定により,翻訳変形又は翻案も同時に適用される,こういう仕組みになっておりますので,このスタンスを別に縮小するつもりは毛頭ございません。条約でどうであろうが,国内法のスタンスは維持するということでございます。
 それから,技術的保護手段の問題は,御指摘のとおり,どういうふうに条約になるかどうかというよりも,国内法的にどう整理を付けるかということを考えなければいけないだろうと思うんです。今たまたま30条の私的利用複製,私的使用目的の複製について,そういった条項が入っているということなのですけれども,一般的な制限規定の関係と,それから,特別刑罰規定との関係を整理する必要があるということでございます。少しフェーズが違う形で今条文が設計されているのですが,それをどのような形で整理できるか,折り合いを付けるかということが問題になるかと思います。具体的には120条の2に3年間以下の懲役,300万円以下の罰金の一つの犯罪類型として第2号で業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行ったものというのがございます。
 この規定の「業として」というのは別に営利目的とか関係ありませんから,例えばNPO団体が反復継続の意思を持って視覚障害者の利用に資するという観点から技術的保護手段の回避を行った。そういった場合に,法の適用がどうなるのか,それは大丈夫だと割り切るのか,それともやっぱり法制的にはそういうNPO団体が提訴されることがないような条文上の整理が求められるのか。そういったところは,これから実際,条約の策定作業などを見ながら国内法は国内法として安定性のある法整備ができるようなことは考えていかなければいけない。このように考えております。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 私から一言だけ。法体系との整合性は非常に大切で,そこをゆるがせにすると将来しっぺ返しを食うかもしれませんので,慎重に行っていただきたいと思います。しかし他方,恐らくこういう障害者等のための複製物の作成にはコストがかかるという現状があって,国境を越えて流通が可能なようにというのが条約の一つの目的もあると思われます。利害関係者としては,日本国内の障害者の団体であると思いますけれども,他方,外国にいる日本語しかできない人とか,あるいは日本にいる外国語しか理解できない視覚障害者といった方々のためになるという条約だと思います。確かにそれらの方々の御意見を聞くことは非常に難しいとは思いますが,それこそ法の谷間に落ちてしまっている人だと思いますので,そういう人たちのこともお考えの上,しかるべく前向きに対応していただければと私個人的には思っております。
 そのほか。笹(ささ)尾委員,どうぞ。

【笹(ささ)尾委員】 放送条約の話が出ましたので,放送事業者としてコメントをさせていただきます。民放連という立場でのコメントになりますが,民放連といたしましては,これまでもこの場でも発言をさせていただきましたように,放送条約の成立,しかも,早期の成立ということを第一最優先に考えて目標としてきております。そこに関しては当然変わっておりません。先ほど上野先生からも御発言いただきましたけれども,まずは,伝統的な放送事業者のいわゆる放送と言われるもの,それで,次のステップとして伝統的な放送事業者が行うサイマルキャスティング,というふうに段階を分けて進めていくことが条約の早い締結につながるのではないかなと考えてやってまいりました。その早期締結という目標のための判断,姿勢でございまして,これに関しましては日本国の方針ともシンクロをしてきたものと思っております。
 ただ,状況として放送条約の合意,あるいは締結の可能性が見えてきたということでありましたらば,私どもの目標というのは早期締結,条約の成立でございますので,何らかの柔軟な対応策を検討するということに関して,それを妨げる理由は存在しないと考えております。ただ,これまた上野委員からの御指摘にもありましたが,国内法というものがございますので,ここに影響を与えない方がいいのだろうなというのは一般論として考えるところでございます。例えばこれも一般論でございますが,いわゆる任意規定であるとか,国によってそれを選択するということが可能であるといった手だてとか,そういう可能性も探っていく中で,この条約が成立するということにつながればいいなと考えているというのが今の民放連のスタンスでございます。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 そのほか,いかがでございましょうか。条約でも結構ですけれども,よろしゅうございますでしょうか。それでは,この議題はこの程度にさせていただきまして,議事の4番に移らせていただきます。権利不明著作物についてございます。これはあらかじめ,潮海先生に御報告をお願いしております。まずはお話を伺った後,審議ということにさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【潮海委員】  潮海でございます。権利者不明著作物,一般に孤児著作物といわれております問題について報告させていただきます。資料4のレジュメをごらんください。そもそも,権利者不明著作物がなぜ問題になっているかです。元々はアメリカ等では著作権の保護期間延長とか,あるいは更新制度の廃止の際に問題となったにすぎなかったのですけれども,2006年,7年あたりからヨーロッパで電子図書館を作ろうという動きがありまして,2012年10月にEUの孤児著作物指令が成立しました。それからもう一つの原因は,アメリカでGoogleのBook Searchのプロジェクトがありまして,EUが権利者不明著作物の指令の採択を急いだということがあろうかと思います。
 この経緯につきましては,注1の,情報通信総合研究所による文化庁委託研究に,詳しく制度を紹介しておりますので,御覧いただけたらと思います。このように権利者不明著作物の問題が大きくなった原因は,単なる文化遺産としての書籍の保護だけではなくて,その文化遺産を電子図書館等の形で公衆が利用できるようにしようという動きがありまして,そこからEU指令に結びついて,各国で著作権法制を変えていこうという方向になっています。レジュメでは,以上のヨーロッパの動きに対しまして,アメリカではどういうふうな動きになっているかを,簡単ではございますが,書いております。
 2004年に,Googleが,Google Book Search Projectを立ち上げまして,訴訟提起,和解案がいったん提出され,新和解案でGoogle側が,もう少しその対象となる著作物を狭くする和解案を出したのですけれども,この新和解案に対しましても裁判所は拒絶しております。それは著作権法と独占禁止法上の懸念がありまして,Google側が主張しておりますopt-out制度がその対象となっております。本来は,電子図書館利用者側が著作権者から利用許諾を得るのが著作権法の大原則でして,それがopt-inと言われていますけれども,これに対して,Google側が主張しておりますのは,著作権者が利用許諾しないことをopt-outないし告知すべきで,そうでない限りは原則利用許諾されたものとみなすという,opt-out制度を主張しておりました。
 これに対して,アメリカの裁判所は,一審ですけれども,拒絶しました。ただ,その後の2012年4月に主要なアメリカの出版社とGoogleが和解したとされています。なぜ権利者不明著作物が問題になるかといいますと,16%ぐらいはパブリックドメインでこれは問題ないんですけれども,75%ぐらいが絶版ないし著作者が不明でして,これについてopt-outの制度をとりますと,権利者不明著作物の著作者は普通opt-outしないので,権利者不明著作物は実質上自由になってしまって,事実上,Googleの管理下に置かれてしまう。もう一つは,こういうクラスアクションによる私的な秩序形成が立法にとって代わってしまうというのは問題であるとされております。アメリカ著作権局も,成立はしませんでしたが,2006年5月にOrphan Works Act of 2006の法案を提出しております。それには「救済の制限」や,後に述べます,「入念な調査」の基準を詳しく書いております。
 次に,ヨーロッパでは,2001年の情報化社会指令で公衆送信権を創設し,著作権の制限規定を規定し,これらを各国が導入しました。この電子図書館に関しましては,2006年に文化遺産及びデジタル保存のデジタル化及びオンラインアクセスに関する勧告(レコメンデーション)を出したのですけれども,法的拘束力がないため立法する国が少なかったものですから,更に議論が進められました。2005年から2008年に欧州電子図書館(Europeana)の計画の一環として,この権利者不明著作物の問題がクローズアップされてきたわけです。
 2010年のヨーロッパの成長戦略の一つがDigital Agenda for Europeで,権利者不明著作物はそのまた一環となっております。2011年にEUの指令案を公表しまして,その大きな枠組みを発表しました。それは,権利者不明著作物の場合に,すなわち,著作者を発見できない場合や著作者と連絡できない場合に,そのたびごとに利用許諾を得ようとするのは煩雑であるために,第一発行国において公共アクセスが可能な図書館が事前に「入念な調査」を行いまして,その調査記録等を登録して初めて「権利者不明著作物の地位」を得て,公益目的で利用することが許されるという,仕組みになっております。その次の段階として,加盟国間で,この地位を相互承認することによって,ヨーロッパ連合全体で権利者不明著作物とみなすという基本枠組みを作りました。
 2012年10月にEU指令が成立しましたが,この指令は,EU指令案の枠組みを維持しつつ,2点付け加えております。第1点は,スキームをどうするかということですけれども,権利の例外又は制限規定を設けるのを明らかにしました。第2点は,後で権利者が判明した場合には権利者は公正な報酬を受け取ることができることになっております。資料4の後ろの方に,この著作物指令の英語版の抜粋を添付しておりますので,適宜御参照いただけたらと思います。Google Book Searchにおける問題点でございますけれども,背景としましては,著作権法上,opt-out制度が著作権という財産権に反するという問題のほか,文化財の保護,電子図書館への公衆のアクセスの保障の目的が重視されております。
 ただ,この新和解案の拒絶をした裁判所によりますと,この新和解案を認めてしまうと,電子書籍の流通市場や情報のサーチ市場を独占するという独禁法の問題がむしろクローズアップされてきまして,アメリカでも,孤児著作物かどうかを入念に調査して登録制度を設けるべき,という考え方が議論されています。EU指令は,この「入念な調査」プラス「登録制度」によって権利者不明著作物の地位を認定して,その承認を制度の基本としております。
 このGoogle Book Searchが広まるかどうかはまだわかりませんし,ヨーロッパでも,このEU指令についていろいろな問題点が指摘されています。制度上の問題点として,まず登録して初めて孤児著作物の地位を得るという登録主義が,ベルヌ条約の無方式主義に反するかどうかという問題点があります。それと同時にどのような著作権法及びスキームによるかということが問題になります。このEUの指令案の段階で答えがはっきりしなかったのは,ここに書きましたとおり,加盟国ごとに幾つかの制度がありまして,それをどのように調和するかということが問題となったわけです。結果的に,EU指令は1番目の著作権の例外や制限規定という形で導入する立場を明らかにしたわけです。
 この2番目にありますのは,北欧やイギリスのハーグリーブズレポートで奨励され,近時イギリス著作権法で採択される予定の,拡大集中制度ですが,注8にありますとおり,管理団体と利用者間の利用許諾契約を非構成員の著作権者にも及ぼすという仕組みです。一応,放送機関や図書館のデジタルアーカイブの大量の著作物の利用に適しているというメリットがあり,法的安定性という面ではすぐれているわけですけれども,「入念な調査」がありませんので,相互承認を妨げるのではないかという批判があります。また,集中管理団体が構成員のみならず非構成員の利害を本当に代表しているのかという要件や,あるいは非構成員がopt-outする機会を設けるべきだとか,あるいは使用料が高くなるとか,あるいは北ヨーロッパでしたらノルウェー国内法という狭い範囲内でのみ有効で,ノルウェーを越えたEU全域の大量複製については,管理団体は管理コストが大きく,なかなか成立しにくいのではないかなどの批判があります。
 3番目にありますのは,集中管理団体による強制許諾ですけれども,これも拡大集中と同じようなメリットとデメリットがあります。我が国が採択しております法的機関による権利者不明著作物特有の強制許諾は裁定です。日本法の67条,カナダが採用しておりますが,幾つか批判がありまして,管理コストや時間がかかって大きなスケールのデジタル図書館には利用しにくいのではないかという,そういう長尾真前国会図書館長の御意見があります。カナダでも300件弱ぐらいしかなくて,やはり大量のこういう複製を,デジタル化を伴う場合には問題があるのではないかと言われております。最後にEUが採択しました,「入念な調査」と「登録」による権利者不明著作物の地位プラスそれを相互承認するということですけれども,法的な安定性をもたらして,かつヨーロッパにまたがる市民に利用可能,電子図書館が利用可能になるのではないかとか,あと,細かいことですけれども,6条2項にあるのですが,そういう電子図書館も,そういうデジタル化とか保存の維持のために収益を上げて良いという規定があり,一定の評価がされています。
 ただ,幾つか懸念されている点がありまして,それが権利制限の範囲が狭いのではないかということです。これに対しましては,EU指令の10条で少しずつ広げていくことを検討する予定のようです。広げていくといいますのは,現在,単体の写真とかを除いているのですけれども,そういうのを少しずつ入れていこうとか,あるいは,出版社との関係を考えないといけないという,そういうことを規定しています。現在のEU指令は,図書館等のみ,それから,公共目的の利用のみですけれども,とりあえず対象の範囲を狭くして早く成立させようという意図があったのではないかと思います。それから,「入念な調査」が必要というのですけれども,数多い文化遺産に対して,それが必要となると,なかなかデジタル化推進につながらないのではないかという,懸念もあります。
 それから,著作権制限規定を設けても,図書館には既に厳格な個別制限規定がありますので,デジタル化とアクセス可能化は困難ではないかというのが,ドイツ法で言われていたのですけれども,ドイツはもう内閣が草案を出しまして,議会の承認まで進んでおりますので,この点については,多分,個別制限規定同士の調整等々をやるのではないかと思います。それからもう一つは公正な補償です。権利者不明,亡くなった人に対して公正な補償をするのですけれども,救済の制限や,デジタル化のコストの軽減が十分でないと,図書館等はデジタル化するリスクを負わないのではないかが懸念されております。国の予算でやるだけの価値があるのかという問題だろうと思います。
 それから,大きな問題とされているのは,孤児著作物の地位を相互承認する際に,既に存在する拡大集中許諾等の制度といかに調整するかです。EU指令の1条の5項では加盟国に既にある拡大集中許諾には影響を与えないとしているのですが,拡大集中許諾の場合は「入念な調査」をしないのに,別の国では,「入念な調査」をするので,いかにこれを調整するのかが将来問題になるだろうと思います。
 ざっばくですが,私の報告は以上です。日本の制度で問題になりそうなのは,裁定制度が少し使いにくく著作権制限規定を設けるか否かという問題と,登録をどうするかが問題だろうと思います。これは著作権法だけの問題ではなくて,文化財保護や,電子図書館へのアクセスのほか,独禁法の問題にもかかわっています。文化庁の方々は大変だと思いますけれども,将来の問題として,御検討していただけたらと思います。報告は以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。諸外国の動向という形であるというか,そういう角度からこの国際小委員会で取り上げているわけです。具体化ということになるとまた違うかもしれませんけれども,今,御報告いただいたことにつきまして御質問,その他ございましたら是非お願いいたします。どうぞ。

【梶(かじ)原委員】 日本の裁定制度でも事前の調査が結構大変で使いづらいというところはあるのですけれども,このEUの入念な調査というのは具体的にどういったことをやるのか御存じだったら教えていただければと思います。

【潮海委員】 EU指令は,「入念な調査」を定義していないのですが,このアメリカの著作権局の資料4のレジュメの1ページ目の,Orphan Works Act of 2006,という著作権局提出した法案の中で,どういう要素で調査するかというところを書いているようです。入念に調査をするというのは著作物によっても違いますし,利用方法によっても違います。ドイツ法の法案では,どういう著作物でどのように公表されているものについては,これとこれを見るというように規定していたように思います。具体的なところは,詳しく調べておりませんのでわかりませんが,書籍や雑誌類や,ある程度Annexといいますか,定型的な形でその法案の末尾には書かれております。つまり,「入念な調査」というのは,各国によっても違います。著作物によっても違うし,それから,利用方法によっても違うと思うので,その辺をどうするかが議論されています。

【道垣内主査】 そのほか,いかがでしょうか。

【野口委員】 不勉強なので教えていただきたいのですが,この拡大集中許諾という制度は,入念な調査がなくこの管理団体の構成員でないものにも許諾を及ぼすというふうに御説明をいただいているのですけれども,これは要するに,著作権者が登録していない著作物についても,その集中管理団体が利用者に対してお金を徴収して許諾を与えてしまうことができて,権利者がもしも後日名乗り出た場合にはお金が支払われるというような制度と理解すればよろしいのでしょうか。

【潮海委員】  ありがとうございます。,拡大集中許諾はおっしゃるような制度です。ただ,実際に,権利者不明著作物の著作者が名乗り出ることは少ないので,そのお金が管理団体にたまってしまうという問題点が指摘されております。
 ただ,なぜこの拡大集中制度がクローズアップされているかといいますと,非構成員はopt-outして名乗りでない限り利用許諾したとされてしまうので,Google Book Searchとかなりその点では似ています。権利者の管理団体を介在させているかがGoogle Book Searchと違うのですけれども,opt-outのところではかなり似ているのではないかということで,注目されております。また,注9にあります,ハーグリーブズ・レポートでも自動的なライセンスの仕組みとして推奨され,イギリス著作権法にも導入されるようです。

【野口委員】 ありがとうございます。よろしければ,もう1点よろしいでしょうか。

【潮海委員】 はい。

【野口委員】 この3ページの問題点のところで,ベルヌ条約の無方式主義とこの登録の問題について先生から御指摘をいただいているのですけれども,ベルヌ条約の無方式主義というのは,むしろ著作権を付与するときに外国の著作物について登録を要求してはいけないという要件と理解をしております。一方,例えばヨーロッパのOrphan Works Statusの登録というのは,むしろ一定の保護の切下げをするときにどういうものが切り下げられているのかについてリストを作るというようなイメージだと理解しているのですが,そのような切下げに関する登録とベルヌ条約の無方式主義はどのような関係なのか,そこの整理が私の頭の中では余りきれいにできていません。先生のこの御指摘の御趣旨をもう少し教えていただければ。

【潮海委員】 ありがとうございました。正に一番言いたいところといいますか,確かにおっしゃるとおり,無方式主義は権利の発生の段階の話でして,権利者がだれかを登録させることは,無方式主義と別に反しないのではないかと議論されております。
 むしろ,登録をどういうふうにやっていくかが問題になっていまして,このヨーロッパのEU指令では,OHIMという欧州共同体商標意匠庁が管理する仕組みをとっております。ドイツでもドイツ特許庁にいったんその記録を預けて,それをOHIMに転送するという,そういうような仕組みをとっております。どういうふうにインセンティブを与えてそのような仕組みを作るかが今後問題になるようです。御指摘,ありがとうございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 今日の残りの議事にはまだ大きなものもございますので,残念でございますが,この議題はこれぐらいで打ち切ってよろしゅうございますでしょうか。では,どうもありがとうございました。

【潮海委員】 ありがとうございました。

【道垣内主査】 引き続きよろしくお願いいたします。
 それでは,議題の5番目,アジア著作権セミナーにつきまして事務局から御説明いただき,委員の皆様の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【都築海賊版対策専門官】 それでは,事務局から説明させていただきます。お手元にお配りいたしました資料5,アジア著作権セミナーに基づきまして説明させていただきます。本年3月に文化庁主催で本セミナーを開催させていただいております。参加国に関しましては資料にございます各国アジア地域主要国の著作権担当部局の代表ということでインドネシア,タイ,ベトナム,マレーシアから参加いただいております。また,招待講演者に関しましては,海外からはオーストラリア司法省,フランス,HADOPI,IPOシンガポール事務所から参加いただいておりますし,また,後ろのプログラムにお示しいたしましたが,国内からは日本音楽著作権協会,日本レコード協会,コンテンツ海外流通促進機構の方から参加いただきまして講師を務めていただいております。
 今回のテーマにつきましては,インターネット上における著作権侵害の対応及びアジア地域における著作権集中管理。趣旨としましては,ここにお書きいたしましたように各国のニーズを踏まえまして今後の著作権の集中管理でありますとか,インターネット上における著作権侵害の対応につながるような情報を提供させていただくということでございます。
 このセミナーを開催させていただきました背景がございますので,多少,それについて補足させていただきます。昨年からの国際小委員会の議論におきまして,インターネット上における海賊版の対策についての一つの有効な対応といたしまして,現在,私ども中国,国と実施しております政府間協議といった政府間での窓口を通して,権利者の方が行っている権利執行をより実効性のあるものにしておりますが,これを今後東南アジア各国にも我が国のコンテンツ産業の動向も踏まえて拡大していくべきであるという議論を中間の取りまとめでもしていただいております。また,平成24年度におきまして,こういった私どもアジア等の侵害発生国における侵害によりきめ細かく対応させていただくために「グローバルな著作権侵害の対応の強化」ということで新しく概算要求させていただきまして予算をお認めいただいております。
 こうした予算等を使いまして,侵害発生国地域の法制面等の調査,あるいは侵害状況を調査させていただきまして,そこから得られた知見を基に各国の著作権制度,あるいは海賊版の取締りの向上等につながる助言を,フォーラムを開催する,あるいはセミナーを開催するといった形で提供させていただき,侵害発生国での著作権保護の向上につなげていこうというような考えがございました。この24年度に認めていただきました予算を使いまして,このアジア著作権セミナーを開催させていただきました。また,参加国に関しましても,コンテンツ産業の動向,我が国のコンテンツの流通,また,それに対する侵害の状況等を踏まえまして,インドネシア,タイ,ベトナム,マレーシアの4か国という形にさせていただいております。
 そして,今回の会議におきましては,こうした各国の方々に対する情報提供に加えまして,各国の代表者の方々と私どもとの間で2国間という形でよりきめの細かい情報交換もさせていただいております。また,会議でのカントリーレポート等の情報も踏まえまして,この資料の後ろにアジア著作権セミナー参加国における著作権保護の現状と課題という形で各国の状況を取りまとめさせていただきました。
 こちらの資料の内容につきまして簡単に言及させていただきます。参加いたしました東南アジア主要4か国の現在の著作権保護,あるいは条約加盟,著作権法改正等の状況につきまして,この資料でまとめさせていただいております。資料をめくっていただきまして1枚目,インドネシアでございますが,現在,IPO関連,著作権関連の条約で申しますとベルヌ条約,CWT,WPPTへの加盟を済ませているところでございます。TRIPsに関しましても1995年に加盟し現在に至っているところでございます。
 著作権関係におきましては,現行の著作権法は旧著作権法を改正いたしました2002年から,そして現在,新たに集中管理に関します著作権改正を予定しているということでございます。課題につきましては,ここに書かせていただいておりますCWT,WPPT加盟後のインターネット等での著作物の保護,あるいはケーブルテレビの無断盗用によります放送コンテンツの著作権侵害などが問題としてありますし,また,現在,先ほども御議論いただきました視覚障害者等に関します権利制限と例外というのも今後検討が必要だということでございます。
 必要としている支援と申しますのは,これは私どもの二国間の協議におきまして,日本を含めました諸外国,あるいは国際機関からどのような支援が必要かという観点でお伺いした部分でございますが,やはり著作権のための能力開発でございますとか,孤児著作物の取扱い,あるいは我が国の映像,ゲーム,コミック等の著作権保護のために必要な情報の提供,放送における著作権保護支援といったような支援を必要とするというところでございます。また,集中管理につきましても,先ほど申しました著作権法を改正し,集中管理団体の規定を設けるという予定でおりますので,その部分がやはり課題として浮上しております。
 マレーシアでございます。次のページでございますが,現在,IPO関連条約につきましてはベルヌ,CWT,WPPTに加盟しております。TRIPs協定につきましては1995年に加盟国となってございます。著作権法に関しましては,現行の著作権法は1987年に成立しております。直近で2012年,CWT,WPPTに対応するため,改正を行っております。そのため課題としましては,やはりデジタル化に対応した著作権法上の違法ダウンロード等への対応ということでございます。また,著作権の普及啓発に関しましてもクリエイター産業の振興のために必要ということでございます。
 そのために私どもの方からの支援といたしましては,集中管理団体に対する,今後,集中管理団体のモニタリング制度,あるいは著作物のデータの管理,デジタル化に対応する著作物の保護といったところでございます。また,集中管理団体につきましては,2012年の法改正で集中管理団体の要件等を新しく規定し直しまして,新しく集中管理団体を指定したところでございますので,こうした集中管理団体のマネジメントというのが一つの課題でございます。
 引き続きまして3番目でございます。タイでございます。タイにつきましてはIPO関連では1980年のベルヌ条約加盟でございます。TRIPsは他国と同じ1995年の加盟でございます。現行の著作権法が1994年に制定したものでございます。現在は著作権法改正を予定しておりまして,そこには技術的保護手段,権利管理情報といったCWT,WPPTへの対応等を想定した著作権法を現在準備中ということでございますが,なかなか法改正が進んでいないというのが現状ということでございます。課題といたしましては,著作権に関する意識の向上,あるいはオンライン上の著作権の保護といったことでございます。
 それに対します我が国の支援を必要としている分野としましては,やはり普及啓発活動,それとこれは今後の海賊版取締りの強化に向けて日本の著作物に対するデータ提供等などが要請を受けているところでございます。また,当然,インターネット上の著作物の保護に関します様々な知見が必要とされているということでございます。集中管理団体につきましては,現在,集中管理に関する法律案がない中で多くの団体が乱立しているというところで,いかにこうした団体を整理,統合していくかということが一つの課題でございます。
 最後でございます。4番目,ベトナムでございます。ベトナムは1980年,ベルヌ条約に加盟しております。TRIPsはほかの国と少し遅れた時点でございますが2007年加盟ということでございます。現行の著作権法は2005年に成立したものでございまして,直近,2009年に著作権法の改正をしているところでございます。課題につきましては,やはり著作権の一般の方々への普及啓発であります。あるいはデジタル上の著作物の保護等に関します関心が高いということでございます。そして,それに対する我が国の支援といたしましては,著作権に関します普及啓発ということでございます。集中管理団体に関しましても,集中管理団体はございますが,まだやはり集中管理団体自体の経験が浅く,こうした部分での集中管理に関する様々なノウハウ,あるいは担当しております職員に対する研修機会の提供等などは必要とされているという状況を私どもとの意見交換の中で教えていただいております。
 やはり各国共通するところは,インターネット上の著作権の保護でありますとか,一般の方々も含めました普及啓発,そして各国それぞれ集中管理団体を持っておりますが,その集中管理をどうやって向上させていくかというような管理のノウハウといったものが必要とされているというのが共通されるところでございました。報告につきましては,以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 今の御報告につきまして,何か御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。では,次の報告も少し資料の大きなものもくっついているようですから,そちらに移らせていただきます。議題の6番,海外における著作権侵害等に関する実態調査報告,中国ということですが,御報告をまず伺いまして,それから,委員の皆様の御意見を伺いたいと思います。では,よろしくお願いいたします。

【都築海賊版対策専門官】 それでは,まず事務局の方から今回の調査の趣旨を簡単に御説明させていただきます。お手元にお配りいたしました資料の6でございますが,こちらが今回の調査結果の概要をまとめた資料でございます。この調査に関しましては,先週,5月24日に公表させていただきまして,5月25日の新聞紙上にもこの調査の結果が報道されているところでございます。「文化庁 グローバルな著作権侵害への対応の強化事業 海外における著作権侵害等に関する実態調査《中国》」ということでございますが,これは先ほどのアジア著作権セミナーの説明のところでも平成24年度の予算として「グローバルな著作権侵害の対応の強化事業」の予算を確保しているという御説明をさせていただきましたが,この予算を使いまして今回中国の侵害状況を調査させていただきました。
 毎年度,政府海賊版模倣品対策窓口におきましても,海外での侵害状況等の公表などをさせていただいております。こういった調査でも全体の約60%以上が中国での侵害であるというような統計が出ております。ただ,こういった調査が我が国の権利者の方々,あるいは企業等からのアンケートに基づくものでございます。中国の消費者の方,あるいは実際にコンテンツを利用されていらっしゃる方がどのような意識,あるいはどのような方法,あるいはどのようなコンテンツに関心を持って利用されているかということをより詳細に調べ,実際の侵害状況ということについてのより詳細な把握を図る必要がある。それは今後の著作権保護の強化につながります様々な対応,あるいは現在,私どもがやっております政府間の協議の中でもより有効性のある提言をしていく上で必要な情報と考えました。
 そこで,我が国の権利者の方々にとっても一番関心の高い中国を対象にいたしまして,この侵害状況の調査を実施させていただきました。これは平成24年度の予算で実施させていただき,その結果をまとめたものを今回公表させていただいているところでございます。この調査につきましては,三菱(びし)UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に委託をして実施をさせていただきました。本日はこの調査の詳細につきまして委託先でございます三菱(びし)UFJリサーチ&コンサルティング株式会社から御説明をさせていただこうと思います。

【道垣内主査】 それでは,お願いいたします。

【澤客員研究員(三菱(びし)UFJリサーチ)】 御紹介にあずかりました三菱(びし)UFJリサーチ&コンサルティングの澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今,お話にありましたように,中国における著作権侵害等に関する実態調査を昨年度,私どもの方で担当させていただきました。今日はその調査結果のポイントにつきまして簡単にお話しさせていただきたいと思います。
 ページをめくっていただきまして,1ページはこの資料の目次になっております。
 2ページは調査の目的・方法が書いております。先ほどのお話にありましたように,海外における効果的な海賊版対策の企画立案のためというのが大きな目的でございます。
 調査対象についてです。地域は中国の本土でございます。コンテンツ類型といたしましては,映像です。こちらはアニメ,映画,テレビ放送番組に分けて調査をいたしました。それから,音楽,ゲームソフト,出版物です。出版物もコミック,雑誌,書籍に分けて調査しております。コンテンツの流通経路は,オンライン流通とパッケージ流通の両方を対象といたしました。オンライン流通の方は,特定事業者がコンテンツを配信しているもの,動画投稿サイト,リンクサイト・リーチサイトによる流通,P2Pサイト・ソフト,ストレージサービス,ネット上の知人間でやりとり,電子メール・メッセンジャー等でやりとりしているものを対象としています。パッケージ流通の方は,実際の店舗で販売されている方法,パッケージを通信販売している方法,等々ございます。これらについて調査対象といたしました。
 調査方法についてです。まず文献資料調査です。ヒアリング調査は,主に日本のコンテンツの権利者さんに特に中国市場への正規展開の状況をお伺いするために実施しました。それから,不正流通の動向についてもお聞きしました。
 グループインタビューは,中国から日本に来ていらっしゃる方に集まっていただいて,中国における日本コンテンツの流通・侵害の実態について語っていただきました。また,中国において消費者に集まっていただきまして,御意見をお聞きしました。
 Webアンケート調査は,メインの調査で,日本のコンテンツの権利者が関心のある北京,上海,広州という三つの都市を対象にアンケートをしようということになりました。中国全体を対象に広く薄くアンケートを取るという方法もあったのですが,その方法ですと,どうしてもその結果が権利者にとって使いにくいものになるという意見がありました。北京,上海,広州は日本のコンテンツが中国の中では人気があり,権利者として関心があるというようなお話をいただきましたので,こちらをまず対象として,それらとの比較対照として内陸にある大都市の重慶も対象として4都市,それぞれ1,000サンプルずつのアンケートを行いました。更に,このアンケートは各都市の一般市民の年齢層別,性別の人口構成に合わせたサンプルで各国のコンテンツの入手・視聴経験率を調査するものというアンケートと,日本のコンテンツを入手・視聴した経験のある方に対してどのような入手・視聴の実態があるのか入手・視聴実態を調べるアンケート,の2種類を行っております。
 更に,パッケージ流通の実態を調べるために店舗調査,流通サイトを日本から調査して,ネット上の流通の状況を具体的に調査するサイト調査を実施しました。
 これらの調査の結果を3ページ以降に記しております。この結果について,特にアンケート調査の結果を基に幾つかポイントを御紹介させていただきたいと思います。
 まず,日本のコンテンツの入手・視聴経験率です。これは中国の一般市民の年齢層別性別人口構成に合わせた形でアンケートをとった結果で,日本のコンテンツは,他国のコンテンツと比べてどれだけ人気があるのか,入手・視聴経験がどれだけあるのかということです。当然,中国のコンテンツの入手・視聴経験率が一番高いのですが,日本のコンテンツのうちアニメとコミックは,30%を超えて外国ではトップという結果となっております。それ以外に30%を超えている国のコンテンツというのはそれほどなくて,例えば映画の香港,米国,ドラマの香港,音楽の香港といったようなところになっています。
 続きまして5ページに参ります。ここで全体・コンテンツ類型ごとの傾向・特徴をまとめています。まず,今回,日本のコンテンツの入手・視聴実態といたしまして,コンテンツ類型ごと,入手経路ごとにアンケートで調査しております。そこで,恐縮なのですが,先に9ページを御覧いただけますでしょうか。9ページの表は,上海の結果の一部を抜粋しているものでございます。表中の行に流通経路を,オンライン流通とパッケージ流通に大きく分けて,特定事業者,あるいは動画投稿サイト等々と書いております。表中の列にコンテンツの類型が書いております。アンケートでは,まず日本のコンテンツそのものの入手・視聴経験があるかどうか聞いています。次に,コンテンツ類型別に,更にコンテンツの流通経路別にそれぞれ入手・視聴経験率を聞いています。更に入手・視聴した経験のある人が入手・視聴した経験のある流通経路でどれだけコンテンツを入手・視聴しているのかという件数を聞いています。これらの割合と件数を掛けることによって,例えば,上海の一般市民一人当たりの日本コンテンツの類型別流通経路別の平均入手・視聴件数を推計した結果でございます。これを見ますと,上海の例なのですけれども,日本のコンテンツの類型別ではアニメ,あるいはコミックが非常に多いことがわかります。それから,音楽もほかのコンテンツに比べては多くなっています。経路別で見ますと,特定事業者・運営者,動画投稿サイト等が多くなっています。オンラインとパッケージを比べますと,やはりオンラインが主流であるというようなことが言えるかと思います。
 10ページの表は,アニメ,音楽,コミックについて,流通経路をまとめてオンラインとパッケージで入手・視聴件数を大きく比較したものです。都市の比較も行っています。これによりますと上海,広州が北京,重慶に比べると日本のコンテンツの入手・視聴件数が多くなっています。流通経路を比べますとオンライン流通が多くてパッケージ流通が少なくなっています。ただ,パッケージ流通は少ないといいましても,まだ2割程度は残っているという結果です。インターネットユーザーに対するアンケートでこれだけの結果が出ているということでございます。
 戻りまして5ページでございます。入手・視聴の頻度が最も高い手段,その手段を利用する理由についてです。アニメ,映画,テレビ番組等では動画投稿サイトによる流通の頻度が最も高くなっています。音楽では特定事業者による配信の頻度が高いという結果となっております。一方,コミック,雑誌,書籍につきましてはパッケージ流通の割合も高いということでございます。補足ですけれども,これらは海賊版も正規版も含めたすべての流通を対象とした結果です。次に,なぜその経路を利用するのかですけれども,アニメ,映画,テレビ番組,音楽等々はやはり「無償だから」という理由が最も高いということでございます。雑誌,書籍等につきましては,「容易に入手できるから」,「ファイルの品質が高いから」が高いということでございます。
 6ページに参りまして,全体・コンテンツ類型ごとの傾向・特徴(2)です。中国の消費者に日本のコンテンツを入手する場合に正規版か海賊版か意識して入手するかどうかについて尋ねた結果です。「意識しない」という割合が約半数ございました。逆に「意識する」と答えた人に対しまして,入手・視聴に影響を与えるかということを聞きました。「意識する」と答えた半数のうち,更に半数から7割弱が「正規版があれば正規版を入手・視聴するようにするが,海賊版しかない場合には海賊版を入手・視聴する」と回答しているという結果になっております。意識はするのですけれども,「入手・視聴には影響がない」とする回答も1割程度はあったということでございます。
 続きまして7ページに参りまして,都市間比較による傾向・特徴です。上海,広州は日本のアニメ,ゲーム,コミックの入手・視聴件数が,ほかの都市に比べて多くなっています。
 8ページでございます。これは日本の権利者が正規に日本のコンテンツを展開するとしたら,どんな条件を望むかという設問に対する回答です。当たり前と言えば当たり前の結果で,まず,音楽以外は「中国語字幕付きがあること」という条件が最も高いです。それから,高い品質を求めているという傾向が見られました。価格につきましては,グラフはアニメの例なのですけれども,無償という回答が非常に多いということでございます。しかし,お金を払ってもいいという回答をしている方も,金額の安いものも含めまして全部足し合わせますと,4割から5割程度入るということでございます。
 続きまして,9ページ,10ページは先ほど御説明したとおりでございます。
 11ページが侵害規模です。日本のコンテンツの入手・視聴件数のうち,どのぐらいが侵害なのかということを推計してみようということで,これは仮に出している数字でございます。推計方法については,9ページにもう1度戻っていただきまして,9ページの表は,流通経路ごとに出しているのですが,実際にはこれを更にダウンロードとストリーミングを分けて,更に有償か無償かも分けて聞いています。日本のコンテンツの権利者さんに事前のヒアリングをさせていただきまして,流通経路ごとに,ダウンロードかストリーミングか別に,更に有償か無償か別に,ヒアリングした範囲内で1社さんでも正規に展開している場合には,11ページの侵害規模には含めておりません。事前の調査の結果,日本のコンテンツ権利者が正規の展開をしていることが確認できなかった経路,恐らくほとんどが侵害であるというように想定される経路のみを足し合わせて推計した数字が11ページの規模の表でございます。これらは,先ほど御説明した一人当たりの平均入手・視聴件数に対象人口を掛けて推計しています。この推計によりますと,4都市合計で年間76億件程度というような数字が出ております。更に,これを金額に換算して,ネット広告費換算,あるいは有償ダウンロード換算それぞれで推計をしてみた結果を掲載しております。
 12ページは侵害規模の推計方法で,これまでにお話しさせていただいた内容を書いております。
 続きまして13ページは,アップロードの件数です。一般市民一人当たりどのぐらいアップロードしているのかを推計しました。アップロードの経験率は高くて,4割程度ございます。コンテンツ類型別に見ますと,アップロード経験のある方の中で,アニメのアップロード経験がかなり高い割合になっていることがわかります。一般市民一人当たりの平均のアップロード件数を推計しております。平均アップロード件数に対象人口を掛け算いたしますと,例えば全国のネットユーザー全体で年間100億件というような数字が推計できるという結果でございます。
 最後,14ページがまとめでございます。日本のコンテンツの侵害規模は,一定の仮定の下で推計した結果なのですが,非常に大きな数字となっています。アンケート調査の結果から,いろいろな示唆を得ているのですが,まず,中国のユーザーは日本の正規コンテンツに対して一定の対価は支払って良いと思っている層もいるということでございます。他方,正規版と海賊版を全く意識せずに入手しているという層も半分ぐらいいます。グループインタビューなどの結果ですと,パッケージ流通では意識するけれども,ネット流通では余り意識しないというような傾向があります。著作権についてはよく知っているというような回答もあるのですが,著作権保護の行動につながっていないという結果に全体としてはなっているかと思います。
 したがって,正規にコンテンツを入手・視聴できない中で海賊版が容易に利用できる環境にあるということは,海賊版の多い大きな要因なのだろうなと思います。ですので,不正流通対策と正規版展開を両輪として実施していくことが非常に重要ではないかということです。中国で正規展開をするためには,中国のサイトと連携していくことが近道です。どうやってお金を回収するかということになりますと,広告モデルですとか,あるいはグッズの販売等々で回収するというようにいろいろな方法が考えられるのではないかということでございます。類型別に幾つか頭出しをさせていただいておりますが,ここは割愛させていただきます。非常に駆け足で恐縮ではございますが,実態調査の報告とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【道垣内主査】 どうもありがとうございました。
 膨大な調査の結果を手短にまとめていただきました。今の御説明,御報告に何か御質問ありますでしょうか。
 それでは,私から。11ページに損害額の推計をされていますけれども,正規品が流通しているものについては,すべてが正規品だという前提で計算されたというふうにおっしゃったように聞こえたのですが。そうでしょうか。

【澤客員研究員(三菱(びし)UFJリサーチ)】 はい。そうです。日本の権利者さんが正規の展開をしている流通経路については侵害規模の算定には含めませんでした。

【道垣内主査】 それは相当硬い算定方法だと思います。実際,日本のソフトの業界が中国の市場でどれくらい流通させているのでしょうか。売上げのベースの金額はそんなに大きくないように思いますが,いかがでしょうか。

【澤客員研究員(三菱(びし)UFJリサーチ)】 おっしゃるとおりです。

【道垣内主査】 そうであれば全部違法品だと仮定して計算し,そこから売上高を引くのが筋ではないかと思うのですが,仮にそうするとお幾らぐらいになるのかというのを伺いたいのですが,いかがでしょうか。

【澤客員研究員(三菱(びし)UFJリサーチ)】 その推計は行っていないのですが,例えばアニメを例に御説明しますと,今回の推計ではダウンロードのみを対象として侵害規模を推計しています。ストリーミングによる配信は正規展開をしていらっしゃる事業者さんがいらっしゃるので,今回の侵害規模の推計には含めていません。アンケートの結果では,それぞれ半々ぐらいずつありましたので,単純に推計しますと倍ぐらいになることになります。そこから正規の展開では,ほとんどが広告モデルで収益を得ていらっしゃいますので,その分を差し引いた部分が侵害だというような推計になるかと思います。

【道垣内主査】 わかりました。
 関係の業界の方もいらっしゃいますが,お考えのイメージと合っているのか,それともずれがあるのか,もしコメントいただければと思いますので,いかがでしょうか。どうぞ。

【後藤委員】 私,CODA(コンテンツ海外流通促進機構)の立場からお話ししますと,若干この調査とそれますが,昨年1年間の数字がまとまりましたので,簡単に御説明をさせていただきます。昨年,中国本土におきましては,約900件のエンフォースメントをしまして,10万枚の海賊版を押収しています。これにつきましては経済産業省の受託事業ということで,2005年から本年の3月までの間は,一応,全体で言いますと1万900件の取締りをしまして,約300名を検挙しまして400万枚の海賊版を押収しているというところです。
 この報告書の厚い方の,中の44ページ,45ページということで上海のお店が出ているのですけれども,今,日本コンテンツ専門の販売店というのが出ております。この44,45ページにつきましても,長寧区という日本人街がございます。そこで日本コンテンツ,音楽から,映画から,アニメから,放送まであらゆる海賊版が出ています。これに関しまして2011年の11月からエンフォースメントを実施しています。共同エンフォースメントを,その結果,11回,これまでエンフォースメントをしています。にもかかわらず,いまだに現存してやっているということであります。いわゆる行政手続と刑事手続の,その辺の問題点が非常にあるというところであります。この辺は文化庁さんと協力しつつ,頑張ってまいりたいと思います。
 それともう1点,この御指摘があるところのオンライン侵害でございますけれども,オンライン侵害につきましても経産省さんの受託事業でやらせていただきまして,これも2012年4月から2013年3月までの統計ですけれども,中国の大手のサイト等を対象にしまして,約7万URL,これを削除要請しまして約100%削除ができているという状況です。といいましても,じゃあ,スピードはどうなのかというところですけれども,これは昨年,総務省さんと実験をさせていただきまして,いわゆる放送事業者の放送波,放送した段階からフィンガープリントを作りまして,すぐクロールする,調査をする。見付けたらすぐ削除要請するということで,これは非常に速く,短時間で削除することができたということであります。
 こういうことで,この報告書にもございますけれども,微力ながら文化庁,経産省さん,総務省さんの御指導をいただきながら解決してまいりたいなと思います。以上です。

【道垣内主査】 そのほか,よろしゅうございますでしょうか。どうぞ。

【笹(ささ)尾委員】 びっくりしたのは13ページのアップロードの件数というやつです。このページの下の方の一般市民一人当たりの平均アップロード件数というのは,余り驚くべきものではないのかもしれないのですが,累計すると年間で100億件くらいのアップロードという,この数字はやはりびっくりしますね。人口が多いからという,この特性がちょっとかいま見える気がいたします。
 それから,放送コンテンツに関しましては,今も後藤委員からお話がありましたけれども,CODAさんの活動で本当に飛躍的にここのところ,オンラインに関しては特に,いわゆる削除というのが進んでいるという状況にあるということを併せてお伝えいたします。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,野口委員,どうぞ。

【野口委員】 今のところで1点御質問があるのですけれども,この平均アップロード件数に対象人口を掛けているというのは,これは単純に中国の人口を全部掛けているという御趣旨でしょうか。

【澤客員研究員(三菱(びし)UFJリサーチ)】 アップロードについてでしょうか。

【野口委員】 はい。

【澤客員研究員(三菱(びし)UFJリサーチ)】 ネットユーザーの人口を掛けております。

【野口委員】 わかりました。ありがとうございます。

【道垣内主査】 畑委員,どうぞ。

【畑委員】 日本レコード協会の畑でございます。貴重な大変興味深い調査結果,ありがとうございます。当協会は,日本のレコード会社を代表する団体としまして,CODAさんとともに中国においても動画サイトにおける音楽ビデオ,あるいはストレージサイトにおける音源の違法アップロード削除ということに尽力しておりまして,昨年も中国だけで数万件以上の削除要請を実施し,事実,削除されているという実績を残しております。
 その中で,最後のページ,14ページにおきます今後の対応として考えられる方策でございますけれども,確かに不正流通対策と正規版の展開を両輪として実施していくことが問題解決の一つの有効なツールになるであろうということは,我々も十分理解をしておりまして,そういった方向性もこれから考えていきたいと思っておりますが,ここにおける一つの問題は,これもかねてから文化庁様には御相談しているところでございますが,正規流通をやろうと思ってもなかなか迅速に出ていけない。まず,法制度の問題がございます。
 不正なものが出る前に,迅速に正規版を出していこうとしても,外国コンテンツの場合,現実には検閲問題とか,いろいろな壁があって,そこのタイムラグが長期間となる間に不正流通がはびこってしまうという課題がございます。そのような制度上の障壁もあわせて継続的に是非両国間で御議論いただきたい点でございます。
 以上でございます。

【道垣内主査】 それでは,時間でございますので,最後の7のその他について,事務局から何かございますでしょうか,あるいは委員の方からでも,よろしいですか。では,事務局からお願いします。

【堀国際著作権専門官】 本日は,お忙しい中,どうもありがとうございました。次回の国際小委員会につきましては,また日程調整の上,御連絡させていただきたいと思います。

【道垣内主査】5分ほど延びてしまいましたけれども,本日の国際小委員会はこれで終了いたします。ありがとうございました。

○12:05閉会

―― 了 ――

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