議事録

文化審議会著作権分科会
国際小委員会(第2回)議事録

日時:
平成25年11月15日(金)
10:00~12:00
場所:
文部科学省東館3階 3F1特別会議室
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)WIPO等における最近の動向について
    2. (2)著作権分野における我が国による海外協力について
      1. [1]文化庁による海外協力について
      2. [2]アジア地域における音楽著作権の集中管理
    3. (3)フランスにおける書籍電子利用法の運用状況
    4. (4)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

○10:00開会

【道垣内主査】 ただいまから第2回国際小委員会を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 まずは,本日の会議の公開についてでございますが,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とする必要はないと思われますので,既に傍聴の方には御入場いただいているところでございます。この点,何か御異議等ございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴の方にはそのまま傍聴いただくということといたします。
 議事に先立ちまして,事務局の人事異動につきまして御報告いただけますでしょうか。

【佐藤国際課長】 7月1日付で森著作権課長が着任しているところでございます。

【森著作権課長】 森でございます。よろしくお願いします。

【佐藤国際課長】 同日付で長官官房国際課専門官の保坂でございます。

【保坂国際課専門官】 よろしくお願いします。

【佐藤国際課長】 それから8月19日付で国際課国際著作権専門官に着任しております中島でございます。

【中島国際著作権専門官】 中島でございます。よろしくお願いします。

【佐藤国際課長】 以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,引き続きまして議事次第,配付資料の確認,それから本日御発表いただく方について御紹介いただきます。

【中島国際著作権専門官】 まず,資料の確認をさせていただきます。
 お手元にございます資料,上から見ていただきたいのですが,まず資料1-1といたしまして,世界知的所有権機関等における最近の動向について。資料1-2といたしまして,視聴覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約の概要,それから資料1-3といたしまして,その条約の原文,そして1-4といたしまして,参考和訳を付けてございます。それから,1-5ということで,伝統的文化表現に係るテキストの英語版をお付けしております。それから,資料2-1といたしまして,文化庁による海外協力について。資料2-2といたしまして,アジア地域における音楽著作権の集中管理について。それから,最後にフランスにおける書籍電子利用法の運用状況等という構成となっております。また,参考資料といたしまして,第13期文化審議会著作権分科会国際小委の委員の名簿,小委員会の設置について,そして最後に,机上配付といたしまして前回の議事録を付けてございます。資料全部そろっておりますでしょうか。
 では,引き続きまして,第2回国際小委の議題ですが,1つはWIPO等における最近の動向について,それから2つ目は著作権分野における我が国による海外協力について。そのうちの1つとして文化庁による海外協力について。2つ目として,アジア地域における音楽著作権の集中管理の話をさせていただきます。そして3つ目といたしまして,フランスにおける書籍電子利用法の運用状況ということについて取り上げたいと思います。以上が議題です。
 本日発表していただきます方は2名おられます。まずお一方目ですけれども,議題2の方で,日本音楽著作権協会(JASRAC)総務本部の渡辺聡(さとし)副本部長に後ほどお越しいただきまして,集中管理団体の世界的動向,特にアジアにおける動きについて御紹介いただく予定です。皆様御承知のとおり,著作権・著作隣接権の世界におきましては,集中管理は極めて重要なポイントでありますので,海外の集中管理団体の状況を把握すること,これは今後の我が国における集中管理の在り方や諸外国との協力を進める上でも重要なことだと考えております。
 それからもう一方は,議題の3ですが,聖法律事務所の井奈波朋(とも)子先生から,書籍電子利用法について御発表をいただくことを予定しております。今期の国際小委員会では,引き続き主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点の整理を行うことになっております。この一環といたしまして,諸外国で最近取り入れられた法制度を御紹介させていただきたく存じますが,今回は特にフランスにおいて昨年制定されました書籍電子利用法に焦点を当てることにいたしました。発表者の井奈波先生はフランスに御留学された経験もございまして,また日仏法学会員でもございますので,大変フランスの法律に造けいが深いと伺っております。先生にはこの新たに導入された制度の実施状況及び問題点について御発表をいただく予定です。以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,議事次第につきまして御異論なければこの順番に沿って本日の議事を進めたいと思います。
 まず始めにWIPO等における最近の動向について,事務局から御説明いただけますでしょうか。その後,委員の方々の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

【中島国際著作権専門官】 では,資料1-1をごらんください。世界知的所有権機関等における最近の動向について御報告させていただきます。
 話といたしましては,大きく分けて2つあります。1つは,「視聴覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約」,こちらが採択されましたので,その点について御報告します。もう一つはIGC,遺伝資源,伝統的知識,伝統的文化表現に関する政府間委員会の状況について御報告いたします。まずは1つ目のマラケシュ条約について御説明を申し上げます。
 まずは,本条約の目的ですが,世界の視覚障害者・読字障害者に対しまして,著作物へのアクセスを改善することを目的といたしております。これまでの経緯といたしましては,世界に3億1,400万人いるとされる視覚障害者に対して,60か国未満の国しか国内の著作権法において視覚障害者等に対する権利制限規定を設けていなかったということがございます。更に,点字図書等の輸出入を行うための統一的なルールも存在しておらず,国境を越えて視覚障害者等のために活用するのが困難な状況でした。これらを背景にしまして,SCCRで2005年あたりから視覚障害者等のための著作権の権利制限に関する条約の策定の作業が始まりまして,諸所の議論が行われた結果,昨年の12月にWIPOの臨時総会で外交会議の開催が決定され,本年の6月末にモロッコのマラケシュにおいて当該会議が開催され,最終的に「視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約」が採択されました。
 こちらについては,概要としては大きく4つのポイントがございます。まず1つは,著作物はテキスト形式のものになっております。2つ目としましては,受益者として視覚障害者等に加えて肢体不自由者が対象となっております。3つ目としまして,権利制限規定を設ける権利が,複製権と譲渡権と利用可能化権がこの条約上の対象となっております。4つ目といたしましては,視覚障害者等に利用しやすい形式の複製物を締約国間で輸出入が許容されるようにすることを締約国に求めるという内容になっております。
 次のページに移っていただきまして,個別条項としましては,そこに一覧を書かせていただきました。全部で22条あります。このうち重要なところといたしましては2条の定義,3条の受益者,4条の利用しやすい形式の複製物に関する国内法の制限及び例外,5条の国境を越えた交換,6条の輸入,7条の技術的手段に関する義務,9条の交換を促進するための協力といった項目になるかと思います。こちらについては,資料1-2としまして概要をまとめたもの,更に条約の原文と参考和訳を付けておりますので御参照いただければと思います。
 前回の国際小委で外交会議の前の状況を御説明させていただきましたが,その後,外交会議で行われた議論の主な概要についてこれから御説明いたします。5ポツをごらんください。マラケシュ外交会議における議論の主要な概要といたしまして,全部で6つのポイントを挙げさせていただいております。
 まず1つ目ですが,翻訳権に関することでございます。こちらについては4条が関係します。4条は,国内法における制限及び例外について定めているわけですが,これについて複製権,譲渡権,及び利用可能化権に加えまして,翻訳権の制限について明示したい途上国と,これについての言及に反対するEUが対立したわけですが,最終的には条文上の明記はしないものの,4条パラ3,これは制限と例外をどのように定めるかを規定している項目ですけれども,こちらに対する合意声明の形で,翻訳権についてはベルヌ条約の下で認められている制限及び例外の適用可能性の範囲を拡大も縮小もしないこととされました。
 2つ目ですが,こちらについてはAuthorized Entityから受益者への直接提供ということで,5条が関係いたします。条約の本文を見ていただきながら話をした方がいいかと思いますので,資料1-4の4ページになります。こちらにつきましては,5条が利用しやすい形式の複製物の国境を越えた交換について定めているわけですが,それを定めたパラグラフ1を履行するに当たり,5条パラ2の規定の内容を採用する場合,条約上はパラ2かパラ3のいずれかを採用すればいい形にはなっているのですが,こちらの内容を採用する場合に,Authorized Entityはほかの締約国のAuthorized Entity以外に外の締約国の受益者に直接複製物を提供することができるというパラ2(b)が導入されました。これによってAuthorized Entity間の複製物の交換に加えて,直接受益者に複製物を提供することが可能になったという形になっております。
 次は(3)ですが,国際的な市場利用可能性条項,こちらは5条の話で,最終的にこの条項は削除されておりますので,今和訳上には存在しておりません。こちらにつきましては,利用しやすい形式の複製物の国境を越えた交換に関して,別の締約国に提供する,輸出する利用しやすい形式の複製物を,相手国において合理的な条件で入手可能でないものに限定する規定を明示したい先進国と,これは複製物の流通を害するということで反対する途上国が対立しましたが,最終的には5条パラグラフ4として,輸入国が著作権関連条約の非加盟国だった場合に利用しやすい形式の複製物の濫用防止の措置をとることを課す規定,いわゆるベルヌギャップ/スリーステップテスト条項が導入されたこととの引き替えで削除されました。
 今お話ししたのは輸出に関するものですが,一方で複製物の輸入に関しては6条において市場利用可能性条項を導入することは各国に柔軟性を認めるという合意声明が維持されております。なお,国内に既にあるものについては,市場利用可能性条項の適用については,WIPO事務局への通知を条件として認めることで既に妥協が成立済みです。
 次に,(4)でベルヌギャップ/スリーステップテスト条項ということで,こちらは5条パラ4になります。こちらも複製物の国境を越えた交換に関して,著作権関連条約の非加盟国に対し,スリーステップテストの遵守の規定を求めるベルヌギャップ/スリーステップテスト条項については,まず5条のパラ4(a)で,輸入国がベルヌ条約締約国でない場合,その締約国のAuthorized Entityは複製物を受益者に対してのみ複製,譲渡及び利用可能化できるとされました。また5条パラ4(b)におきまして,輸入国がWCT締約国ではなく,かつスリーステップテストを遵守している国ではない場合に,Authorized Entityによる5条パラ1に基づくアクセス可能な形式の複製物の譲渡及び利用化をその法域に限るという形の規定が導入されまして,これによって著作権関連条約の非加盟国における複製物の利用に対して一定の制限が掛かることとなりました。
 次に(5)ですが,技術的保護手段です。こちらは7条になります。技術的保護手段に関しましては,関心国がまず協議を行いまして,それを踏まえて全体会合にて議論された結果,「ある作品に技術的保護手段が適用されている場合,加盟国は,本条約で定められている権利制限,例外を享受することが妨げられないことを確保するために,必要に応じて適切な手段を講ずるもの」とされました。こちらの,適切な手段につきましては,補足ですが,視覚障害者等の複製等の目的のために,技術的保護手段の回避装置を頒布などすることまでは含まれないというふうに,欧米諸国を含めた見解として解されております。
 最後に,条約の発効につきましては18条に定められておりまして,こちらについては20か国が締結してから3か月後に発効するということになっております。
 それから2つ目の話題ですが,伝統的文化表現に関するものです。こちらは第25回のIGCが7月に開催されたわけですが,第22回会合にて作成されたテキスト,これはまだ法的位置付けは決まっていないのですが,それについて議論がなされました。先進国と途上国との間の意見の差が大きいということを勘案して,目的,保護対象,受益者,保護範囲,及び権利制限と例外の項目についてテキストの洗練化が試みられました。しかしながら,かえってオプションやブラケットが増える結果となり,より複雑化したテキストが作られる形となっております。その議論の中で,途上国からはテキストを法的拘束力のあるものにすること,2014年に外交会議を開催することなどが主張されております。その一方,我が国を含む先進国からは,伝統的文化表現については,既にパブリックドメインに帰しているものが多いため,利用との関係から権利を与えることには慎重であるべきではないかといった話,文書の法的性質や外交会議の開催についてはまだ予断すべきではないということなどの主張がなされております。テキストに含まれる項目については下に一覧として記載させていただいております。
 それから,SCCRにつきましては,本来今年の7月末に開催される予定で,そこでは放送条約等も含めて議論される予定だったのですが,これが延期されまして,放送の関係については前回の小委員会から進展がないという形になっております。
 最後に今後の予定ということで,WIPO総会について簡単に御説明します。今年の9月にWIPOの総会がジュネーブで開催されました。総会では毎年向こう2年間の各委員会のマンデートを決定するのですが,今回は予算に関する議論が紛糾してまとまらなかった関係で,SCCRも含めて今後どうするかという結論を得られない議題が複数ありました。ただ,SCCRにつきましては,どういう決定をしようというそこの合意はほぼ得られている状態になっております。その内容としては,来年秋までに3度SCCRを開催し,放送条約と権利の制限と例外について引き続き議論をするということになっています。放送条約につきましては,2014年の一般総会にてテキストの内容と議論の進ちょくを評価し,できるだけ早く外交会議の開催を決定するというマンデートが設けられる予定です。IGCにつきましては,2014年の総会でテキストと議論の進ちょくを評価して,外交会議の開催について決定することと,2014年の会合は3回開催するということで合意しております。こちらは決定です。
 今後の具体的な予定ですけれども,SCCRにつきましては,第26回が12月16日から20日の予定で開催されます。IGCにつきましては,次回は来年の2月で,こちらは遺伝資源について議論される予定です。伝統的文化表現につきましては,次々回,来年の4月に議論の予定となっております。以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 資料1-1に基づいて,イロハの項目に沿って御説明いただいたわけですが,まずはイの視覚障害者等に関するマラケシュ条約と言われているものにつきまして何か御質問,御意見等ございますでしょうか。

【野口委員】 ステータスの確認なのですが,マラケシュ条約は現在何か国ぐらい締結をしていて発効の見込み等はいつごろなのでしょうか。

【中島国際著作権専門官】 こちらはまだ締結している国はございません。条約に署名している国はたくさんあるのですが,そこから締結というところまで至っている国は今のところございません。この条約は,20か国の締結で発効するのですが,今の段階ではまだということです。

【道垣内主査】 今おっしゃった署名というのは,最終議定書に署名したということで,条約に署名したわけではないのですね。

【中島国際著作権専門官】 その認識です。

【道垣内主査】 いかがでしょうか。
 この条約,立法の義務が幾つか課されており,その方法についてはオプションもあったりし,様々な受け入れ方があるのだと思いますが,日本がどのような対応を行うのか,もし批准するとなると,相当大変なのかそれとも簡単にできそうなのか,見通しを教えていただけますでしょうか。

【作花文化庁審議官】 重要な条約ですので,政府としてはできるだけ早くこの条約に加入したいと考えております。また,少なくとも20か国が締結して発効した後に加入するということは避けたいと考えております。
 基本的には,近年の著作権法改正によって,視覚障害者あるいは聴覚障害者の方々が著作物により円滑にアクセスできるような法改正は逐次行ってきたところでございます。国際小委員会におきましても,これまで御説明させていただきましたが,特にこのマラケシュ条約に関連する条文としては,著作権法の第37条,視覚障害者等のための複製等という規定がございます。当該規定によって複製又は公衆送信が可能になっておりますが,今回のマラケシュ条約では限定的な意味での視覚障害者だけではなく,視覚によって著作物にアクセスすることが困難な肢体不自由の障害がある方も含めるべきということでございますので,37条についてはそのような障害のある方も対象になる改正が必要になってくると思います。
 また,37条の第3項によって著作物の自由な利用が認められているその行為主体について,現状においては,国内の様々な社会福祉活動を行っている方々が政令で指定されておりますが,本条約においては,Authorized Entityという新しいスキームを取り入れなくてはいけませんので,このあたりの仕組みを考えていく必要がございます。何よりも実際の受皿となる機関の方々を早急に見いだして,Authorized Entity に係る規定の趣旨を実現できるように法改正を行っていく作業が一番時間がかかるだろうと考えております。その他,税関を通しての著作物の輸出入や電子配信に関して何らかの技術的手当も必要とされるのであれば,それらに関しても整備する必要がございます。ただし,これは技術的な修正であると思います。
 また,先ほど紹介ありましたが,技術的保護手段が講じられている場合に,当該著作物へのアクセスがなるべく妨げられないようにしなくてはならないという規定がございます。現行法では形式的に読めば,前回の国際小委員会で御説明させていただきましたが,刑事罰則については,特に例外なくかかるということになっております。いわゆるアクセスコントロールやコピーコントロール等技術的保護手段を回避する装置の製造販売,あるいは業としての回避行為については,我が国の法制で規制対象になっておりますが,視覚障害者の方々のアクセス行為に支障が出ないかどうかを見極めて,必要があれば技術的な修正を行うこともあろうかと考えております。
 ただし,このような技術的な修正はそれほど困難とは思っておらず,まずはAuthorized Entityとしてきちんと活動していただける機関を早急に探していく必要があると考えております。

【道垣内主査】 どうも御答弁ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。

【大楽委員】  IGCの伝統的文化表現の関係で質問がございます。

【道垣内主査】 どうぞ。結構です。

【大楽委員】  IGCの伝統的文化表現についてですが,中身としては,一部非常にリファインされてきていると思うのですが,根本的に,例えば文書の法的性質や外交会議の開催時期などについては,どのような見通しなのでしょう。ここ10年ほどずっと,根本的には固まるのかどうかよく分からないまま,一部洗練されてきているという印象を受けています。その点は変化しておりますでしょうか。

【中島国際著作権専門官】 こちらの伝統的文化表現に関するテキストにつきましては,まとまっている方向とは言い難く,先進国と途上国はまだ引き続き対立しております。議論の内容を見ていますと,双方歩み寄っているという感じはまだないので,しばらくその条約とか法的位置付けをどうするかということも含めて,まとまるにはしばらく時間が掛かるのではないかなと考えております。

【大楽委員】  ありがとうございます。

【道垣内主査】 何かお考えがあれば。審議会ですから,お考えをお述べいただくとよいかと思いますが。

【大楽委員】 やはり本質的に全く違うスタンスが2つあって,この委員会でも随分前から議論されてきているのですが,1つは実務・ビジネスの世界の方を中心として,パブリックドメインにいったん入ったものをどうしてよみがえらせる必要があるのか,ニーズはどこにあるのかを立証してくださいというスタンス。他方,やはりそれを守る必要がある,その必要性はやはり否定できないというスタンス。そういう中でWIPOに行きますと,やはりそれを守ろう,守りたい,守るべきだという熱気は感じるのですが,全然かみ合わないでずっと来ているような気がします。これは一体生産的なところへいくのだろうかといつも思っているものですから,日本としてはどうしたらいいのか,やはり世界の流れを見てお決めになろうということかと思いますが,この国際小委員会でも,やはり根本的なところで2つに分かれているようです。しかし,守るべきだという立場にも,文化財の保護制度でいいんじゃないかというお声も依然としてあるようです。また,非常にマイノリティかもしれませんが,やはり独自の制度で守った方がいいのではないかという意見もあります。いわゆる「文化財」とはまた違った独自性が「伝統的文化表現」にはあると思われるからですが,その独自性をどう日本政府としては評価しておられるの,かねてから伺いたいと思っておりました。

【道垣内主査】 御意見として承って,今後の方針に反映させていただければと思います。何かございますか。よろしいですか。

【作花文化庁審議官】 基本的には伝統的な文化表現をどう保護するかは,我が国では文化財保護法という戦後早急に整備して日本の文化財を保護してきた歴史のある保護法体系がございますので,文化財保護法のスキームにおいて,文化の固有の形式や価値を次代に継承していくということが何よりも大切であると思います。したがって,だれかの経済的な利益を守るということは,観点が違うのではないかというのが文化庁の基本的なスタンスでございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 そのほか,放送条約の状況等いろいろ報告ございましたけれども。よろしゅうございますか。もう少しだけなら。よろしいですか。
 それでは,この議題の(1)を終えまして,2番目の議題,著作権分野における我が国の海外協力についてでございます。本議題につきましては,まず事務局から文化庁による海外協力について御説明をいただいた上で,その中でアジア地域における音楽著作権の集中管理について,JASRACの渡辺副本部長から御発表いただくという予定になっております。更にその後,委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。
 では,まずは事務局からよろしくお願いします。

【都築海賊版対策専門官】 それでは,最初に議事の(2)1,文化庁による海外協力について説明いたします。
 お手元にお配りしました資料の2-1を御参照いただければと思います。昨年の国際小委員会の議論におきましては,国境を越えた侵害の対応につきまして引き続き政府間の協議の対象国を拡大していくということが一つ考え得る対応であろうという御議論をいただいておるところでございます。それを受けまして,本年の3月にアジア著作権会議を開催いたしまして,今後政府間協議の対象国になるであろう,あるいは我が国との関係を強化いたしまして,今後の著作権の保護でありますとか海賊版対策に力を入れていただきたいと考えております,当面の重点と考えられる4か国,インドネシア,タイ,マレーシア,ベトナムの4か国の代表を招へいいたしまして,今後の著作権保護に関しまして議論するとともに,我が国の著作権法・制度に関しましてのインプット,情報提供をさせていただいたところでございます。
 お手元の資料2-1を1枚めくっていただきまして2ページでございますが,この4か国におきます現状と課題につきまして,前回も御紹介させていただきましたが,今回も一覧にまとめて改めて紹介いたします。インドネシア,マレーシア,タイ,ベトナム,この4か国でございますが,アジア諸国におきましては,この4か国,著作権法・制度の取組につきましては,ある一定の進ちょくを見ておるところではございますが,まだまだいろいろな解決をすべき問題を抱えておるというところが現状かとは思います。
 条約の締結状況につきましては,インドネシア,マレーシアは既にWCT,WPPTの加盟を,マレーシアにつきましては2012年に加盟したばかりの状況ではございます。ただ,タイとベトナムにつきましては,まだデジタル環境節の著作権の保護につきましては条約上の対応ができていないということでございます。
 著作権に関する課題につきましては,そうした条約の締結,著作権法制度の整備状況を踏まえますと,やはりデジタル環境やインターネット上の海賊版の対応でありますとか,著作権の権利執行はまだまだ今後整備が必要であるという認識が,インドネシア,マレーシア両国にもございます。タイとベトナムにつきましても当然今後の法整備などオンライン上での,あるいはデジタル環境下での著作権の保護については必要であると考えております。また,まだまだ著作物の利用に関する一般の方々も含めましての意識の向上というのも非常に必要とされているところが分かってきております。
 そして,改めてこの4か国からお話を聞いてみると,やはり著作物の利用・活用,及びいわゆる海賊版の対策におきまして,集中管理というのは非常に重要なテーマであり,それにつきまして政府の対応も含めまして進ちょくは多少見られてはおりますが,やはり今後も本格的にこの分野につきましてはいろいろな形で整備を続けていく必要があると。インドネシア,マレーシア両国におきましては,そうした考えを踏まえまして集中管理団体の法整備を行っており,マレーシアにつきましては新たに集中管理団体を指定したところでございますし,インドネシアにおきましては,現在集中管理団体を再度整備するための法整備の準備が進められているところであるという情報をいただいております。また,タイにつきましては,現在集中管理団体に関する規定もなく非常に団体が乱立している状況で,利用者の方にとっても非常に著作物の利用が難しい状況であると。ベトナムにつきましては,集中管理団体は既に設置されております。ただし,その活動につきましては,まだ活発なものとは言えないという状況が本年の3月の会議におきまして判明してきているところでございます。
 それに対応するために,3ページでございますが,私ども文化庁の方から各国の著作権の法制度整備に資するいろいろな協力を提案させていただきまして,現在平成25年度に実施中のところでございます。既に実施済みの事業もございますが,今後今年度末にかけまして私どもの方から提案させていただいた内容を踏まえまして,各国の必要な部分につきまして現在支援をしておるところでございます。
 例えば,インドネシアにおきましては,今後エンフォースメントの研修,トレーニングセミナーを実施する予定でございますし,マレーシアにおきましても,著作権の権利執行等に関するセミナーを今後予定しておるところでございます。また,タイ,ベトナムに関しましては,著作権の意識に関する普及啓発に必要な資料を提供する,あるいはセミナーを開催するといったような事業を予定しているところでございます。また,集中管理に関しましては,従来よりWIPOと協力をして実施をしております。また,JASRAC,日本レコード協会にも御協力をいただいておりますが,研修事業を実施しておりますので,本年度はインドネシア,マレーシア,タイから参加者を募りまして,この研修に参加していただく予定でございます。
 そして平成26年度におきましても,引き続き各国のニーズを踏まえましてこうした協力事業の継続を予定しているところでございます。これに関しましては,平成24年度に予算として認められましたグローバルな侵害への対応,及び平成25年度から新規に始めております海外における著作権普及啓発事業の予算を充当して対応していく予定でございます。
 最後の4ページでございますが,こうした重点国としてとらえておりますインドネシア,タイ,マレーシア,ベトナムの4か国に加えまして,現在日本政府としてミャンマーの知的財産の制度の整備につきまして今後重点的に協力を行っていく予定でございまして,特許庁,文化庁が協力官庁といたしまして,国際協力機構(JICA)が実施しておりますプロジェクト等に今後協力するという予定になっております。既にこのミャンマーの知的財産制度整備,知財庁を設立するという目標のために協力をするということで,調査団の派遣等を実施しているところでございます。その他,現在様々な国で知的財産制度の整備というのは非常に重要な政策課題となっておりますので,中国及びカンボジア等から我が国の知的財産の制度の調査に来ておりますので,そうしたところへの協力なども予定されているところでございます。
 以上で,事務局からの報告を終わります。

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 それでは,引き続きましてJASRACの渡辺副本部長から,アジア地域における音楽著作権の集中管理についての情報提供をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【渡辺副本部長(JASRAC)】 御紹介いただきましたJASRAC総務本部の渡辺と申します。
 総務本部は国際関係も担当しておりまして,アジア地域の著作権団体との会議にも私が出席しております関係で,団体の状況などを御報告させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは,まず集中管理団体間の著作権管理の仕組みですが,大きく権利別に分かれておりまして,演奏権についての相互管理契約。これは演奏会や飲食店での演奏,放送及びインタラクティブ配信につきましては,放送,演奏権の部分を演奏権の相互管理契約でカバーをしております。基本的には,それぞれの団体が所属している国での演奏行為について管理をすることとなっておりまして,契約団体は世界中の著作権,演奏権団体はほぼ各国1つ,ないしは複数となっており,契約を交わしております。多くはJASRACと相手団体で直接契約を交わしておりますけれども,一部はこのIPRS,インドの団体のように親団体のPRSを通じた間接契約となっておりまして,JASRACでこれらの団体の管理楽曲はすべて代表するとなっておりまして,相手方の国ではJASRACのレパートリーを管理してもらうということになります。
 次のページが録音権の管理でございます。CD,テープ,オルゴール等の複製行為,それから通信カラオケについての録音権部分,インタラクティブ配信についても録音権部分はこの録音権契約でカバーをいたします。同じような仕組みで,各団体と相互管理となっております。ヨーロッパの団体などは,大抵がJASRACと同じように演奏権・録音権両方を管理しておりますので,そういうことをやりまして,中にはこのフランスのように,一応組織としてSDRMとSACEMと分かれているようなところもございます。間接契約でカバーする場合もございます。
 それから貸与権の契約というのは,録音権の契約に付随する形で結んでおります。主にCDレンタルショップ等が対象ですが,ほぼ日本での利用に対してJASRACが録音権の契約に基づいて貸与権を付随して結んでおり,それらの外国のレパートリーの貸与権について日本で許諾をして使用料を送るというようなことです。海外では余りそういった事業はありませんので,日本での管理・送金ということが中心になります。
 それからインタラクティブ配信ですが,PC及び携帯ベースのサービスで,これは国境を越える利用ですが,権利としては,演奏権・録音権の複合的な利用ということで,演奏権・録音権の契約の下でその枠で管理をするという体勢でやっております。日本の配信事業者さんのサービスはほとんど日本の消費者向けでございます。日本の楽曲については当然JASRACの国内レパートリーを許諾しておりまして,外国作品をどうしているかということですが,まず国内向けについては,先ほどの契約に基づきましてJASRACがレパートリーを許諾いたします。海外に配信する場合につきましては,事業者の意向,つまりJASRACで契約をするのか,相手先の意向も伺った上で,相手先団体とも協議をしていずれかの団体が許諾をすると決めて,ケース・バイ・ケースで処理をしております。
 今申し上げましたのが,相互管理契約に基づく契約管理の仕組みなのですが,7ページは音楽出版契約を通じた管理ということで記載をいたしました。JASRACの会員であります音楽出版者が,これは例えばアジア地域,CASHというのは香港にある著作権団体です。そこの会員出版者,Sub Publisherといいますが,そことサブパブリッシング契約を結んで,その地域についての権利を預けることになっております。ここがまた現地の団体に預けるとなっておりまして,またJASRACとCASHの間では相互管理契約を結んでいるという構造になっています。演奏権の管理については,ほとんど香港ローカルの団体が管理をしておりまして,録音権の契約,CD等,若しくはインタラクティブ配信の録音部分については,アジア地域では出版者が独自に自己管理をするケースが多いものですから,この出版者の方が直接許諾をするといったケースもあります。そのように相互管理契約を補完するように音楽出版者が管理をするというルートもございます。
 続きまして9ページ。アジア地域での相互管理契約を結んでいく上での条件ということで,これは初歩的なことで恐縮ですけれども,まず現地国での諸作権法の整備が必要です。これが前提になって条約,ここに記載の条約に当該国が加盟をするということになると,保護関係ができてそこで集中管理についての体制,JASRACを含めた著作権団体の間で,いろいろな援助をして集中管理団体の設立に向けて動くという手順で進めております。
 そして,10ページ,11ページに現状ということで簡単に内容をまとめた表を作成いたしました。アジア太平洋地域ということで,オーストラリアから始まっているのですが,後ほど御説明いたします世界の著作権団体のCISACという組織がございますけれども,こちらにアジア地域として加盟をしている国々が並んでいます。加盟条約とそれから参考ということで,人口と1人当たりのGDPというふうにして記載してみました。それから,契約団体。JASRACとの契約がある団体です。括弧の中は演奏権の契約をしています,録音権の契約をJASRACと結んでいるという意味で記載してあります。すべてCISACに加盟している団体の国を並べておりまして,順番はそれぞれの団体の年間の徴収額が大きい方から並べてみました。右側には現状を記載しておりまして,青字で記載をいたしましたのは,オーストラリアですとAPRA/AMCOSという演奏権と録音権の団体がありまして,これを合算したトータルの徴収額を人口で割ってみますと1人当たり年間1,000円ぐらい徴収しているということで見ていただきますと,大体そこの団体の徴収状況がどういったものか見ていただけると思います。
 もちろん,国の人口の大きさによっても1人当たり徴収額は変わってまいりますし,あくまでも集中管理団体を通じた徴収額だけですので,先ほど申し上げました音楽出版者が独自に徴収をしている額も足せばこの比較は多少変わってまいります。
 幾つか御紹介いたしますと,中国ですけれども,放送局の許諾がだんだん進んでおりまして,一遍には行っていないのですが,中国CCTVを初めとしてだんだんローカル局が契約をして,放送曲目の報告も次第に入ってきているということです。現在は著作権法の全面的な改正が進んでおりまして,これが全人代へ上程をされると伺っております。
 それから韓国ですが,アジア太平洋地域で徴収額が大きいのはJASRAC,それからオーストラリアAPRA/AMCOSなのですが,その次は韓国KOMCAで,徴収額としては3番目に大きい団体となってきております。日本と同じような店舗での録音物の演奏の制限などがございまして,そういう管理もだんだん進めておりますので管理対象も広がっておりまして,徴収額もだんだん増えているという状況にあります。ただ,現状ではKOMCAだけが音楽著作権の集中管理団体ですが,韓国文化体育観光部がこれを複数化するという動きがあると伺っております。
 それから下がりまして,先ほど重要な国のひとつということでお話がありましたので,マレーシアに触れますと,現地団体はMACP,ここは非常に管理がきちっと進んでおります。JASRACとは演奏権・録音権を結んでおりまして,1人当たりの金額は記載の通りとなっています。法律の改正により,知財局が許可制を導入し,団体監視を強めるといった動きがありますが,MACPはきちっと管理がされておりますので,いろいろな対応もきちっとしておりまして,安心して任せられる団体と言えるかと思います。
 それから次のページですが,ベトナムにはVCPMCという団体がございまして,設立10年になります。徴収額は右肩上がりで伸びています。人口も大きいので,1人当たりにするとわずかな金額です。ただまだまだ当たり前の支払が行われていないところもありまして,ホテルなどもまだ交渉中といったことがあります。ただ徴収は非常に順調に行っていて,現在はハノイとホーチミンだけが事務所ですけれども,中部にも事務所を作って管理網を発展していこうと計画しています。
 2つ下がってインドネシア。ここは若干問題がございまして,長い間やっておりましたKCIという団体がありましたが,なかなか経費高の問題が解決をせず,外国団体に分配できず,国内会員にも分配できず,CISACが求めた改善も行われず,CISACを除名されました。KCIは団体として存続しておりますけれども,現在は新しい団体,WAMIが管理を開始しておりまして,JASRACを始め外国団体はこちらの団体と契約をし直しております。
 タイ。ここは団体がたくさんありまして,一時期は30,今年減らして15というふうで,大分効率化したとは聞いておりますけれども,まだまだいっぱいございます。JASRACが契約しているのはMCTという団体です。また,著作権団体に必ずしも著作権の委託が集中しておりませんで,レコード会社が著作権も保有して独自に管理をするといった長年の問題があって,政府もその辺について更に整理をしていきたい意向のようです。ASEANの中でも知財の保護に中心的な役割を果たしている国の一つだということで,タイ知財部は積極的に動いています。
 下の方はだんだん徴収額も小さくなっておりまして,ネパール,ブルネイ等についてはまだまだということです。
 ASEAN10か国の中では,まだ著作権団体ができていませんのはカンボジア,ミャンマー,ラオスということになります。ミャンマーについては,知財の方も熱心で,団体作りについては動きが具体的にあると伺っております。
 12ページは集中管理団体が作品のデータをやり取りする上でのネットワークです。これはCIS Netと言いまして,右上の方に黄色くDIVA,MIS@Asiaとなっていますけれども,そこに幾つかの団体がデータを集めてそこを地域データベースということで著作権管理のデータをここで登録し,お互いに見られるようにしているということです。下の方は,JASRACですとかアメリカのASCAP,オーストラリアのAPRAのように大きい団体はそれぞれのノードでそれぞれのデータベースを上げて,お互いに情報をやり取りしております。
 次の13ページ。iTunesの許諾について例として記載しております。アメリカiTunesサービスはアメリカで,それから日本のiTunesについてはJASRACが許諾をしておりまして,アジアのiTunesサービスはこの香港CASHが許諾の窓口になってしております。この許諾の仕組みを通じてアジア全域の配信が行われております。Apple社からこのCASHが窓口になり,そこを中継して各団体の権利関係を確認,それで使用料のやり取りをするとなっております。ワンストップショップ,ハブと言ったりしますけれども,そういう形がiTunes Asiaについて実験的に行われております。右側にAMPS,出版者と書いておりますが,香港を拠点とするアジア地域の権利を持つ音楽出版者の集まりです。先ほどちょっと申し上げましたけれども,録音権の管理は音楽出版者が独自にやっているというケースが多いものですから,この仕組みの中にAMPSも加わることによって,iTunes Asiaの演奏権と録音権の一括許諾が実現するという仕組みを作っております。
 外国入金について御説明します。15ページを御覧ください。2012年度,JASRACに対して外国団体から入金された金額の総額は4億5,700万です。JASRACの総徴収額は1,118億円でしたので,全体の0.4%程度です。その0.4%の内訳ですが,アジア地域からの入金は20%ということで増えてきております。どういう音楽について入金が多いかということですが,昨年度一番多かったのはアニメーションの「NARUTO」BGMということです。それ以下10位すべてアニメーションのBGMに対しての入金が多いという状況です。それらを合わせても全体で0.4%というのが現状になっています。
 16ページ。外国団体の入金上位10か国を記載しました。ヨーロッパ団体が上位になっておりまして,そこに香港,韓国が続くということで,これは2012年度と2011年度なのですが,ほとんど同じような団体が並んでおります。香港,韓国,台湾が顔を見せております。
 17ページがアジア地域からの入金の推移ということで,棒グラフにしております。オレンジ色が香港で,青が韓国,緑が台湾,それからピンクが中国,灰色がマレーシアで濃い緑がシンガポール,その他となっています。左端,2008年度は香港,更にその前も香港が圧倒的に入金が多かったです。それはCASHという団体が比較的早くできて整備が進んだものですから使用料が多く,その後,ほかの団体が成長してきて,使用料を送ってきているということを反映いたしまして,より多くの国の団体から使用料が送られるようになり,全体の徴収額も増えてきていて,現在は世界の20%という状況でございます。
 国際組織について申し上げます。19ページ,スライド19がCISAC,著作権の国際連合で,本部はパリにございます。世界に記載の加盟団体数があり,300万人の権利者,これは音楽だけでなくて美術,写真,彫刻等々様々なジャンルの著作権集中管理団体を組織している世界的組織です。ですけれども,音楽の著作権が一番大きなシェアを占めておりまして,フランスの作曲家のJean Michel Jarreが会長を務めております。そのような組織になっておりまして,理事会は20か国の20団体で構成しています。JASRACもこの理事団体の1つです。ここで方針・運営を決めております。地域ごとに委員会を組織しております。そのうちの1つがアジア太平洋委員会ということで,JASRACはここに所属をしております。
 次のページがアジア太平洋委員会の活動ですが,地域での著作権の保護の促進ということで,年に2回,春と秋に集まりまして情報交換をし,特に団体がない地域についての援助をどのようにしていくかと,若しくは,できてもまだ新しい団体について様々な研修を行ったり,場合によっては政府に対する申入れを行ったりということをしております。実は今週はマカオで秋のアジア太平洋委員会が開催されまして出席してまいりました。マカオにはMACAという団体がございまして,まだまだ小さい,会員も100人程度ですが,大きな音楽市場はカジノでございます。御承知のとおり既にラスベガスを抜いてマカオのカジノの方が収益を上げているということですが,ほとんど中国大陸の方々がお客さんですけれども,残念なことに,カジノは音楽利用について使用料を支払っていただけていないということなので,今回会議で状況を聞き,マカオの知財の方々をお招きしてセミナーのようなことをやりました。世界の団体ではこのように管理をしておりますというようなことと,併せてせっかくの機会でしたので,カジノの弁護士さんともお会いをしまして,御説明をしました。弁護士さんは法律上支払の義務があるということはよく承知しておりますとおっしゃっていましたけれども,今後どのようにしてやっていくのかなどこれからお話をしていきましょうということでございました。
 というように,まず団体ができてもそこから大手の利用者との交渉が始まるので,特に小さい,若い団体については経験もありませんので,それをCISACの経験のある団体が支援していくということをアジア地域で行っております。先ほど表にありました団体についてはすべてCISACが関与をして団体設立に至ったものです。
 スライドの21番がアジア地域における著作権管理の課題として記載をいたしました。未整備の地域について団体の設立,それから録音権を集中管理団体へ預けていただいて,そのことによって利用者側との交渉力を上げて管理をしていった方がいいのではないかと考えております。それから,集中管理団体は徴収が大事ですが,同時に,正確な使用料の分配が不可欠ですので,分配データの収集をどのようにしていくか,フィンガープリント技術等の利用とかそういったことも課題として,あるいは情報共有をしております。海賊版対策についても,団体としてJASRACのようにネット上の違法監視までやっているところはございませんけれども,従来の利用媒体についての違法情報交換と対応も行っております。それと,最後に書いてありますオンライン配信の一括許諾ということで,国境を越える利用ですので,それを配信事業者,特に世界的な配信をやっている事業者はどこかの団体で一括許諾ができないかということで,先ほどiTunes Asiaの香港での許諾モデルを申し上げましたけれども,そういったモデルのニーズが非常に高くなってきております。事業者から言われておりますし,音楽出版者もそれを望むといったことがありますので,それらを従来のテリトリーごとの集中管理の仕組みを場合によっては越えてやるということを現在は討議をしております。
 駆け足でございましたけれども,以上でアジアでの集中管理の概況を御報告させていただきました。ありがとうございました。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 文化庁からの御説明,それからJASRACからの御説明につきまして,御意見をいただけますでしょうか。
 どうぞ,小原委員。

【小原委員】 文化庁さんの資料でお聞かせいただきたいのですが。2ページ目の著作権に係る全般的な課題という部分に,この4か国に共通して言えることかと思いますがやはり著作権についての意識の欠如,あるいは著作権の普及啓発という言葉が入っています。このことについては,アジア地域における集中管理業務を行っている私どもとしても痛切に感じるところなのです。この点に関しましては,今年度新たに予算を確保されて,手始めにインドネシアで同国の知財当局とともに著作権普及啓発イベントを実施されるということだと思いますが,そもそもこの事業は日本政府が金を出して実施するものではなく自分たちの国がやはりそういったものを認識しながら予算を取りこういった啓発プログラムを実施すべきところ,なかなかそういうソースがない,あるいはきっかけがないという背景がある中で,今回のこの施策については,文化庁さんとしてのいい試みではないかと考えております。
 そこで,来年度以降も予算化されるのかどうか分かりませんが,インドネシア以外の国においてもどういう形で実施されていかれる御予定なのかお聞きしたいと思います。もちろん,この施策については,1回やってそれで解決する問題ではなく,やはり長期的な視野,展望の中で,こういったものを繰り返しながらやっていく必要があると思いますので,先ほども申し上げましたように,最初はきっかけ作りで日本政府も協力しながら実施しつつ,相手国にそれを認識させながらそれぞれの国でそういった普及啓発活動を継続させていくというきっかけを作りという点で,今後の見通しをお聞かせいただければと思います。

【都築海賊版対策専門官】 ありがとうございます。
 事務局から回答いたしますと,まず,御指摘いただきました海外侵害発生国におきます普及啓発の改善におきましては,当然我が方の働きかけも重要でしょうが,先方の国の政府及び関係団体のこの方面に関する能力の開発に支援をしていく,あるいは我が国との権利者団体との間での関係を強化していくということは非常に重要であるという認識は同様にございます。これにつきましては,平成25年度に新規に海外における著作権普及啓発事業を開始させていただいておりまして,こちらに関しましてはコンテンツ海外流通促進機構,CODAを委託団体といたしまして,CODAを中心に日本の権利者の団体の方にも御協力をいただきまして,各国におきまして普及啓発に関しますイベントの開催,あるいはセミナー等を開催いたしまして,先方に必要な知識をインプットいたします。そして,彼らが考えております様々な普及啓発の課題を支援するために一緒になってキャンペーンを実施するでありますとか,あるいは普及啓発のイベントを開始すると,そのような形で実施を考えております。
 本年度につきましては,先ほど御指摘いただきましたインドネシア,それ以外にもタイにおきましても同様のイベントを開催する予定でございますし,ベトナムに関しましてはベトナム政府の要請に基づきまして我が国の著作権に関する法律及び普及啓発に関する資料を提供すると,そのような形でやっております。そして,当然1年限りの協力ではなかなか先方の能力の開発も進まないということもございますので,当庁といたしましては数か年に関しまして協力を継続するという形で今後展開していこうと考えております。ただ,予算はやはり単年度ずつ確保していく必要がございますので,その都度確保に努力しつつなるべく長いスパンの協力を展開していこうと考えております。以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 そのほか何かございますでしょうか。
 渡辺さんがお作りくださった資料の17ページで,アジア地域からの使用料の入金ですが,年によって随分多くなったり少なくなったりしている国が幾つかございます。システムがしっかりしてないのか,それともある年非常に頑張ったのだけれども人が代わってそうでもなくなったのか。こういうことは経験上おかしいような気がします。特に中国,台湾,香港はそうですし,優等生だとおっしゃったマレーシアもゼロに近い年もあるようです。このあたりのことを御説明いただければと思います。

【渡辺副本部長(JASRAC)】 使用料の分配の仕組みの関係で,多くは年に4回ないしは2回というところもありますけれども,ある程度使用料がたまりまして分析をして分配をするところもあります。場合によっては何年過去分がたまっていて分配するということがございましたり,お金はきているのですが,明細書の中身が不十分だったりしまして,それが少し保留金になって分配をしているということがあります関係で,でこぼこに見えております

【道垣内主査】 それはシステムの問題だということでしょうか。

【渡辺副本部長(JASRAC)】 どうしても毎月毎月分配ということにはなりませんし,日本のように当たり前に支払われるということでもございませんので,少し長い交渉をして何年分かまとめて支払われているというケースがありますので,おっしゃるとおり,少しでこぼこはしております。全体として増えていっているということです。

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 そのほか。どうぞ。

【野口委員】 余り法律的な御質問ではないのですが,15ページのところで外国入金が最も多い作品ということで,すべてアニメの主題歌だというお話がありました。これは実態としてはやはり放送からの収入が多いためにこういうふうになっていて,その放送局の放映という意味で日本の楽曲が使われるのはアニメが多いという文化背景を反映してこのようになっているのか,又は,例えば海外での配信ではまだ日本楽曲は余り配信されてないということなのか,もし御存じであればと御説明いただければと思います。

【渡辺副本部長(JASRAC)】 アニメーション音楽の多くは放送使用料として入金されています。それが圧倒的です。16ページでトップにヨーロッパの団体が来ておりますのは,第一には日本のアニメーションがヨーロッパで放送されているということと,ヨーロッパの放送使用料の料率の水準が高いものですから,その関係もありましてフランス,イタリア,スペインも非常に大きな金額,上位の方の金額で支払われております。

【道垣内主査】 よろしゅうございますでしょうか。
 どうも,きょうはありがとうございました。
 それでは,議題の3番目,フランスにおける書籍電子利用の運用状況につきまして井奈波委員から御説明いただきます。
 よろしくお願いします。

【井奈波委員】 では,井奈波からフランスにおける書籍電子利用法の運用状況ということで御報告させていただきます。
 まず,1枚めくっていただきまして,この法律,書籍電子利用法ですが,正式名称が最初の矢印のところに書かれておりますとおり,「入手不可能な20世紀の書籍の電子的利用に関する2012年3月1日法」ということで,去年可決・成立した法律です。施行ですが,これは今年の2月27日の政令によって3月2日に施行されております。
 次のページに行きまして,スキームを簡単に説明いたしますと,これはまずフランス国立図書館で入手不可能な20世紀の書籍のデータベースというものを整備して,そこに登録された書籍について集中管理団体が利用者に対して電子的なデジタルによる複製と配信に関する利用許諾とを行って,利用者から利用料を徴収して著作者と出版者にその徴収した利用料を分配するという制度を新たに導入したということになります。
 まず,このデータベースですが,フランスの国立図書館が運用主体となっております。入手不可能な書籍というものですが,これは条文に定義がありまして,2001年の1月1日前にフランスにおいて発行された書籍で,もはや出版者による商業的頒布の対象となっていないもので,かつ現に印刷又はデジタル形式における発行の対象となっていないものをいうと定義されております。この定義を分解いたしますと,5つの要件に分けられまして,公表された書籍であるということと,発行が2001年1月1日よりも前であることと,フランスにおいて発行された書籍であることという要件と,入手不可能なという部分に関する要件として,出版者による販売の対象となっていないという要件と,現に印刷又はデジタル形式による発行の対象とされていないことという要件を満たしている必要があります。なので,例えば図書館でその書籍が閲覧できるとか古本屋で手に入るといった書籍は発行の対象となっていないものなので,それは入手可能だとは言えないということになります。
 このデータベースに登録された書籍ですが,著作者又は印刷形式での複製権を有する出版者がその登録に対して異議を述べることができます。この異議の期間はデータベースの登録から6か月以内となっております。このスキームの下の方に伸びる矢印ですが,異議を述べられた書籍については集中管理の外に出されるということで,出版者が独自に利用するということになります。異議のないものについて,集中管理団体による許諾の対象となっていきます。
 実際,どのように運用されているかといいますと,次のページ,4枚目ですが,まず国立図書館のホームページに行きますと,ReLIREというサイトが既に立ち上がっておりまして,ここで既にデータベースが公開されております。現在,登録されている書籍ですけれども,これは6万点の書籍が登録されていると言われております。当初,50万点の書籍をこのデータベースに登録する予定であると立法のレポートには書かれておりまして,そのうちの6万点が既にこのデータベースに登録されているという状況のようです。登録された書籍ですが,今はまだ分野について限定的になっておりまして,主に文学,歴史,人文科学,社会科学に関する書籍が登録されておりまして,新聞とか雑誌ですとか外国の書籍の翻訳書などが対象外とされているようです。次の集中管理団体ですが,これはSofiaという集中管理団体が,認可を受けることですけれども,認可を受けた集中管理団体ということになります。このSofiaというのは従来存在している団体でして,従前から公貸権ですとか複写・複製権を管理している団体です。
 次のページに行きまして,データベースの登録に対する異議の制度ですが,この異議は著作者と出版者が異議を述べることができるとなっております。まずそのうちの著作権者の異議ですが,異議のない著作者については,そのままストレートにデータベースに登録されるというシステムになっておりまして,異議のある著作者は,まず書面を提出して,著作権者の資格があるかどうかなどの審査を受けて,資格がないとかそういうことで審査を通らなければデータベースに登録されると。異議が通ればそのデータベースから削除されるという状況になります。
 出版者の異議についても,基本的に同じような形で進められていくのですが,出版者の場合は異議を述べた場合に2年以内に書籍を利用する義務が生じます。その利用義務ですが,これは印刷形式でも電子的な形式で利用してもいいということです。その場合,集中管理から外れて本来の著作者との出版契約の内容に従って,出版者として継続的な利用義務を負うということになります。
 次のページ,7ページ目に行きます。現状,運用スケジュールとしてどうなっているかということですが,2013年3月2日に法律が施行されて,データベースの公開がされたのが2013年3月21日ということで,このときから異議申立期間も開始ということになります。異議のある著作者と出版者は6か月以内に異議申立てをしなくてはいけないということになります。このほかに,異議があったものについては,集中管理から外れるということになります。もうこの異議申立期間は終了しておりまして,集中管理が始まっている状態にあります。2013年9月21日からその集中管理が開始されているということですので,既に集中管理の対象となる書籍は確定している段階ではありますが,調べてみたのですが,どれだけの異議が出されたかということは分かりませんでした。
 このデータベースへの登録ですが,ここに新たな書籍が追加されるというのは毎年3月21日というふうに決まっておりまして,毎年そのサイクルでこのスケジュールが進んでいくということになります。なので,毎年同じサイクルで異議申立ての満了時期が来るということになりますので,運用にそんなに混乱を来すことはないのではないかと,非常にシンプルな制度に出来上がっているのではないかと思います。
 次に8ページ目。集中管理の開始ということですが,まず集中管理の対象になった書籍については集中管理団体が出版者に対して10年間の独占的な電子的利用許諾の提案をします。この出版者というのは,オリジナルの出版者と言われておりまして,当初印刷形式でその書籍を出版したオリジナルの出版者に対してまず利用をするかどうかという提案を集中管理団体が最初に行うということになります。そういう意味で,書籍の形式で出版したオリジナルの出版者については,一種の優先権というのが与えられているということになります。
 その出版者が電子的利用を受諾した場合ですが,これは集中管理のシステムの中で,10年間独占の利用ができるという状態になります。この10年ですが,これは更新可能ということで,この先も10年超えても更新すればずっと利用ができるということになります。直ちに利用を開始するということではなくて,受諾してから3年以内に利用する義務があるということで,逆に言えば3年間猶予期間があるということになります。
 いったん集中管理のシステムに入ったとしても,著作者の方は集中管理に対して異議を出すことができるのですが,その集中管理に入った場合の異議については制約を,異議事由が限られておりまして,まず書籍の複製又は公衆への提供というのが,その著作者の名誉・声望を害するときという一つの異議事由と,著作者が当該出版者が印刷形式での書籍の複製権を有しないことを証明して行う異議という2番目の異議事由と,著作者が電子化して配信することに対する唯一の権利者であることを証明して行う異議という3点の異議事由に限定されております。あと,著作者と出版者が共同して集中管理のシステムの外で利用したいということで,両者が共同して異議を述べることもできます。出版者が3か月以内にこの利用の提案を拒絶したり無回答,回答しなかったりした場合には,これは一般のオリジナルの出版者ではない一般のユーザーに対して5年間の非独占の利用許諾が行われる予定になっております。
 次の10ページですが,現在どういう状態になっているかと言いますと,この集中管理団体からオリジナルの出版者に対する利用許諾の提案がまだなされていない状態,つまり,集中管理団体の方でこの出版者に対する利用許諾を準備している段階のようでして,この利用許諾の提案は今年の年末ごろか来年の頭ぐらいになされる予定であるとされております。この受諾の回答期限ですが,3か月とされておりますので,2014年の3月末ごろから4月ごろには一般のユーザーに対する利用許諾の開始が始まるということになります。
 次のページに行きまして,利用料の徴収と分配の方法ですが,一応今の段階で3つのパターンが決まっております。まず,オリジナルの出版者が10年間の独占的なライセンスを行った場合ですが,これは上代の15%を集中管理団体であるSofiaに対して支払うということになっているのですが,販売価格を問わず,1ユーロの最低保証を払わなければならないということが決まっております。Sofiaの方は管理費を控除して著作者に分配するということで,本来であったら出版者にも分配されるということになるのですが,ここは相殺のような処理を行われているのかなと思われます。
 2番目ですが,一般のユーザーに関する5年間の非独占的なライセンスが行われた場合ですが,やはり上代の15%をSofiaに対して支払うということになっております。この場合も販売価格を問わず1ユーロの最低保証を払わなければいけないということになります。Sofiaの方は,管理費用を控除して,著作者と出版者に半々で分配するということになるのですが,その場合に著作権者へは最低保証として0.75ユーロを分配するということが予定されております。
 次のページに行きまして,3番目のパターンですが,これは2の5年間の非独占的なライセンスを受けたユーザーということになるのですが,そのユーザー,配信業者がそのフォーマットのみで行う場合ですとか,又は1つの配信チャンネルで電子書籍を提供するときに適用される徴収・分配の方法なのですが,この場合は上代の30%をSofiaに対して支払うということになります。ただ,1.5ユーロがその販売価格を問わずに最低保証と定められております。Sofiaは著作者と出版者に半々で分配するということになるのですが,著作者に対しては最低保証として1.5ユーロを支払うというシステムになっております。恐らくキンドルとかアマゾンですとかグーグルですとか,そういったユーザーを想定されて定められたものではないかと思います。
 この集中管理制度,新たに作った制度に対する評価ですが,これはフランスでも賛否両論ありまして,非常に積極的に評価している論調の学説と,大変批判的な論調の学説があります。ただ,もう始まってしまっているものなので,批判は抑えられていくのかなと思いますけれども,このシステムを見てみますと,実は結構スキームに疑問がありまして,最も大きい疑問ですが,ここで出てくるオリジナルの出版者というのは紙媒体に対する権利しか持っていない出版者ということになります。なので,その紙媒体での権利しか持っていない出版者というものが,どうして電子的利用が行われた場合に利用料の分配を受けることができるのかという法的根拠が,このシステム全体を見てみましてもよく分からないという状態です。言ってしまいますと,事実上その版面権を認めているかのようなシステムになっているのではないかと思います。ちょっと理論面を放棄して実際利用を優先したというかそういうような形になっているようにも思えます。
 私から以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,今御報告いただきました内容につきまして,御質問・御意見等ございますでしょうか。どうぞ。

【野口委員】 ありがとうございました。非常に興味深くてお聞きしたいことはいろいろあるのですけれども,大きなところで言いますと,この立法の目的としては,電子書籍の市場を活発化してライセンスを促進するために,紙が絶版になっている書籍については半強制許諾的なスキームを作って,その本がどんどん市場に出ていくように立法でプッシュしているというふうに全体的には拝見をしたのですが,そのような理解で正しいでしょうか。もう一点は,この絶版書籍の中には権利者と連絡がつくものと,孤児著作物になっているものが出てくるのではないかと思うのですが,そこは基本的には全部対象に含めた上で分配のところで何らか連絡がつかない著作者については配慮をしているというような理解でよいのかどうか,もし御存じであれば教えていただきたいというのが2点目です。
 あと,3点目のところは,著作権者の異議という点を御説明をいただきましたが,この著作権者は勝手に利用されては嫌だというような意思表示をすれば,特に理由なく落としていただけるのか。先ほど後半でこの9ページのところで,いったん登録をされてしまってからオファーをした場合の著作権者の異議というのは非常に制限されていますというお話があったのですが,最初の6か月は何の根拠もなく異議が言えて,1回登録がされてしまうと,あとは何か合理的な理由がある場合しか,特定の出版者に対するオファーができなくなるという理解でいいのかどうかというのを確認させていただきたいということと,あと,もし御存じであれば,この将来の展望なのですが,先ほど50点とおっしゃっていて,今6万点というお話がありましたけれども,これ,順次データベースに登録されるのでしょうか。もし御存じであれば,初回はすごく話題を呼ぶので著者がみんな見に行くと思うのですが,その後順次若しくは登録されていくときに,著者や出版者に対して新しいタイトルが登録されましたということについては何らか通知のようなものがされるのか,逆に公示制度的なものであってわざわざ通知まではせず著者・出版者が常にこのデータベースをウオッチする義務があるのか,もしそのあたりを御存じであれば教えていただきたいと思いました。

【井奈波委員】 済みません,1番目の質問がよく分からなかったのですが,申し訳ないです。

【野口委員】 最初の質問は,私はこういう制度だと理解をしたのですが,この立法に至った政策的背景の議論について,もし何か特筆すべきことがあれば教えていただきたいという程度の抽象的な質問でございます。

【井奈波委員】 政策的な背景ということなのですが,まず建前的には電子書籍の電子出版というか,電子的な利用を促進するということなのですが,立法者のレポートを見ておりますと,実はグーグルへの対抗策というのが結構明確に書かれておりまして,グーグルに任せておいたとすると,民間の1事業者が公共財を奪ってしまうことになるということで,そういった危機感から国が介入するんだということが明確に立法者のレポートには書かれております。
 次の,出版者と著作者の立ち位置ですが,これは恐らくこの制度自体妥協の産物で決まった制度のようでして,この制度が成立する前に関係者の団体が話合いを行っておりまして,その話合いの結果をそのままこの立法に反映させたということになりますが,恐らくその妥協の産物でこのような半々で分けるという形になったのではないかと思われます。絶版になった書籍の中には著作者が分かるものと孤児著作物となっているものとがあるのではないかというお話ですが,その孤児著作物で著作者が判明しないものについては,分配が実質上できないわけですが,これは立法の中で文化的な利用の促進とかそういった文化の発展のために用いることができるということが定められております。
 次の御質問ですが,登録に対する著作者の異議について,その異議事由を問わないかどうかという御質問ですが,これは特に異議事由というのは定められておりませんで,恐らくこういった利用がされるのが嫌だということであれば著作者の方は異議を述べて集中管理のシステムからその書籍を排除することができるのではないかと思います。この異議の制度ですが,集中管理に入った後もそうですけれども,フランスの著作者人格権の撤回権とか修正権などにベースを置いているようなので,その点では著作者の権利が強くなっているといいますか,登録に対して当然異議を述べることができるというのは,フランスの中では割と自然なシステムなのではないかと思います。
 将来の展望といいますか,今回6万点の書籍がデータベースに登録されておりまして,将来的に50万点までそれを追加・補充していくということになるのですが,著作者に対する特別な通知というのは特に予定されていないのではないかと思います。ただ,国立図書館のホームページに行きますと,検索するシステムが立ち上がっておりまして,だれでも検索できるようになっているということと,出版者の団体ですとかその著作者の団体が非常に啓もう活動を行っておりまして,その各ホームページで今こういう状態にありますというアナウンスがされておりますので,そういった形で公示がされて恐らく個々の通知はなされないのではないかと思われます。推測なのですけれども,そういったインターネットでの公示というのがメーンのようです。以上です。

【野口委員】 ありがとうございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 よろしゅうございますか。

【野口委員】 はい。

【道垣内主査】 そのほか何か御質問,御意見等ございますでしょうか。

【作花文化庁審議官】 よろしいでしょうか。

【道垣内主査】 どうぞ。

【作花文化庁審議官】 先生,今日は大変貴重な御報告ありがとうございました。
 1点お伺いしたいのですが,先ほどの御説明の中で,この新しいスキームの対象となる著作物の要件として,フランスで発行されたものということでかなり限定はかかっておりますけれども,ただフランス国民という限定はない。ですから,条約加盟国のほかの国民のものであっても,フランスで発行されたものはこの新しいスキームの対象になるという理解で正しいとすれば,その上でお聞きしたいのは,結局これは要するに強制許諾的なスキームであり,異議があればオプトアウトしなさいということでございますので,条約の関係でみると,オーファンワークスの問題であれば,日本でも戦前から裁定制度を取り入れており,条約上抵触問題も何ら指摘されてこなかったわけですけれども,オーファンではなくていわゆる絶版書籍の場合は,事柄として異なるものと考えられます。このスキームを検討される際に,条約との関係で,こういうオプトアウト的なスキームを取り入れること,フランスで発行されているという限定はあるにしても,やはり少し問題ではないかという観点からフランス国内において議論がなされていたのかどうか,もし御存じであれば教えていただきたいと思います。

【井奈波委員】 そのオプトアウトというシステムをとることに対する議論がなされていたかどうかという点については,申し訳ないのですけれども,正直なところよく分からない状態です。ただ,フランスで発行されたものとはいえ,役所などは最初からこれはほかの海外の状況も伺って慎重に対処するということで,非常にこのシステムに入る書籍というのは,今の段階ではかなり限定されていて,将来的に外国の制度との兼ね合いを見ながら拡張するという立場をとっているようです。

【作花文化庁審議官】 ありがとうございました。

【道垣内主査】 そのほかいかがですか。

【野口委員】 今の点では,条約違反かどうかという議論については私も非常に興味がありますが,それ以外に拡張するというところで,先ほど絶版書籍の定義として2001年1月1日という日が決まっているというお話があったのですが,これは例えば10年,20年たっていけば,その基準日は徐々にずらされていくような見直し等は予定されているのでしょうか。

【井奈波委員】 恐らくそういったこの基準時をずらすという議論はされていないのですが,この2001年1月1日を基準点にしたというのは,出版者として新たに著作者との間で電子的な出版に対する取決めができる状況にあるかどうかということを基準にされていますので,その基準点をずらすということは特に予定されてないんじゃないかと思います。

【道垣内主査】 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,どうもありがとうございました。
 そのほか,4番目の議題その他という点がございますが,何かこの機会に委員の方々,あるいは事務局からございますか。
 特段ございませんようでしたら,本日の会議はここまでにしたいと思います。事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【中島国際著作権専門官】 本日はどうもありがとうございました。次回の委員会につきましては,日程調整の上,追って御連絡いたします。

【道垣内主査】 では,本日の国際小委員会はこれで終了いたします。ありがとうございました。

○11:50閉会

―― 了 ――

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