映画振興に関する懇談会(第1回)議事要旨

1. 日時 平成14年5月28日(火)14:05〜16:00

2. 場所 三田共用会議所 第3特別会議室

3. 出席者
(協力者) 高野座長,横川座長代理,飯田,岡田,迫本,新藤,鈴木,砂川,関口,髙村,奈良,長谷川,福田,北條,矢内各委員
 
(文化庁) 河合文化庁長官,銭谷文化庁次長,遠藤文化部長,河村芸術文化課長,山田主任芸術文化調査官,清水芸術文化活動支援専門官,坪田芸術文化課課長補佐,堀野著作権課課長補佐,尾野美術学芸課施設係長,東京国立近代美術館フィルムセンター佐伯主任研究官,岡島主任研究官 外
 
(関係省) 大橋総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室長
境経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐
井上国土交通省観光部観光地域振興課専門官


4.概要
(1) 河合文化庁長官より,挨拶が行われた。
(2) 事務局より,出席者の紹介が行われた。
(3) 事務局より,「映画振興に関する懇談会の議事の公開について(案)」についての説明があり,了承された。
(4) 高野座長より,座長就任に当たり,「懇談会としては,邦画振興の気運が高まってきているこの機会に,将来の邦画はこうあるべき,というような骨太の方針を出したいのでよろしくお願いしたい」との挨拶が行われた。
(5) 事務局より,資料の説明が行われた後,大要以下のような自由討議が行われた。
ぴあの「ぴあフィルムフェスティバル」という映画際が23年間続いており映画監督を目指す学生などの若者が応募してくるが,1年間に700本もの作品が集まる。こういった作品が引き続き作られるように,グランプリなどの賞や支援が行われている。そして作品は海外の映画祭でも高い評価を受けている。今後とも日本映画を支えるような若者を育てていくような基盤が重要である。
若い頃に岩波ホールなどで上映された映画が今でも心に残っており,現在の職業に就いた。このような心に残る作品と観客が出会える場所を作ることが大切である。映画には過去の作品と現在の作品,そして未来の作品があり,過去や現在の名作を上映することも大切だが,未来に向けて,若者のデビュー作のためにスクリーンを提供することも大切である。
製作者側から現状の問題点を言えば,もの作りの場をもっと大切にするべきということと,製作を通じて人材を育成しようにも発表の場がないことである。
昭和63年の映画振興の会議の時のとりまとめが現在どうなっているのか,また,なぜ上手くいかなかったのか,どういった障害があったのかについて,文化庁に分析していただきたい。全て実行されていれば,今より良かったはずである。
最近スクリーン数が大幅に回復してきているが,アメリカ資本のシネコンに押され何百という弱小の映画館が消えている。そういう所に支援が必要である。また,日本で一番すばらしいと思っていた松竹の撮影所が閉鎖されるときになぜ国は援助をしなかったのか,未だに残念に思う。
松竹の撮影所がなくなったのは本当に遺憾。昭和63年の懇談会に参加したが,この懇談会でもいざ議論をまとめるとなると過去と同じような報告書になると思う。何をすればいいのかということを多くの人がわかっているのにもかかわらず,実現していない理由をまず考える必要がある。お金がない,人がいないより,映画に地位の低さ,行政の関心の薄さがあるのではないか。映画振興の上で大事なことは人(観客・製作者)を育てることである。外国が進んでいるのではなく,日本が遅れているだけではないか。
これまでの映画振興に関係する会議で話合われたことは現場まで届いていない。映画製作の現場と会議室とが乖離してしまっている。もっと話し合われたことを現場に伝える努力をすべき。映画振興のためにはまず明確な目標を作る必要がある。国として映画をどうしたいのか。芸術であり,産業でもある映画をどのように捉えていくのかを決めるべき。日本はソフトを作る技術は優れているが,それを外に送りだす仕組みが十分ではない。育ってきた才能をどのように外に出していくかを考える必要がある。
映画の製作にテレビ局が関与しているケースが増えているが,ほとんどは在京の放送局である。最近は地方のテレビ局も地方映画祭に関与しているが,映画振興のためには東京集中ではなく,地方からこういった動きが出てくることが重要。テレビの著作権処理についてはいろいろな所で検討がなされているが,映画についても著作権の保護と利用の円滑化の観点からその振興を考えていくことが重要である。
シナリオの観点から見て,個々の作品のイメージが萎縮してしまっている。昔はもっと大胆に発想できたのに,いろいろなしがらみからか,完成度の高い映画でもどこかイメージに貧しいように感じる。
映画の持つ産業の側面と文化の側面は切っても切り離せないものである。現在映画については,総務省,経済産業省,国土交通省そして文化庁がそれぞれの観点から支援策を講じているが,文化庁が総合計画を作り,関係省庁が連携して映画振興に取り組むための基盤を作ってほしい。また人材育成が不可欠だが,国立の人材養成機関がないのは日本だけであり,映画の文化的ポジションが低いことを表している。文化芸術振興基本法ができたことから,今後に期待している。
邦画の市場は本当に厳しく,大手の製作会社にあってもブロックブッキングを崩して,いい邦画がない時は系列に配給しないところや,映画以外で儲けた分で映画を作っているところがある。芸術性と商業性のレベルの組み合わせにより,映画は4つ分類できるが,芸術性が高いだけでなく,商業性も高いことが映画の発展のためには必要である。知的財産戦略会議にも社団法人日本映画製作者連盟と社団法人日本映像ソフト協会が連名で,?中古販売事業など作品を公衆に提供するビジネスに関し,映画の著作権者(映画製作者)の消尽しない頒布権を確保する施策を実施すること,?映画の著作物の保護期間を,現行著作権法の定める「公表後50年間」から,「公表後70年間」に延長することを内容とする要望書が出されており,このことも踏まえてこの懇談会を進めてほしい。
映画の好きな人が増えてほしいが,増えないのは人々が映画に興味を失い,それにより映画が衰退する,といった悪循環に陥っているせいである。また,著作権の問題が重要であり,海外に古い映画を紹介しようとしても,フィルムはあるが,権利者の居所や権利者そのものがわからないということがあり,活用が図りにくい。何か権利処理を行う仕組みを作る必要がある。また,映画の著作物の保護期間は50年であるが,公表されたのが不明なことから,その作品が保護期間内にあるのかないのか,著作権の許諾が要るのか要らないのかがわからない。何か著作権に関するルールを作る必要があるのではないか。
広義の著作権,いわゆる許諾権のインフラの整備に貢献できればと思っている。デジタル時代に対応した著作権ルールに関して,国際的な標準ルールが議論され始めていると聞くが,ネットワーク上での著作物の流通に著作権者等の情報を載せることについて検討する必要がある。
映画は人間性を呈示してくれるものであり,子供の頃は映画から受ける感動は大きく,子供ながら映画について語りあったものである。小学校全体で映画を鑑賞することもあったが,小学校の頃からアニメだけでなく,実写映画も見て自己を見つめる時間を与えるべきである。また映画館では上映の前に宣伝用フィルムが流されるが,ああいったものを流す代わりに,教育映画とかの短編を流せば観客にとって有意義である。
今回の議論を整理するとともに,昭和63年と平成6年の報告書を分析して,どれだけ前進したか,あるいは,なぜ実行できていないかについて文化庁で調べてもらう必要がある。外国が進んでいるのではなく日本が遅れている現状をきちんと把握すべきである。
映画は娯楽が大きな要素であるとともに,映画製作は表現の自由の最たる分野であって,公権力から最も遠い距離があってよい文化芸術分野であるのに,その振興を国が公的支援を行う必要性を映画を愛するもの以外の多くの納税者にも納得してもらうことが必要である。
文化映画というものは現在でも100本程作られているが,上映する場がない。また,以前の報告書にも,フィルムの保存だけでなく,ビデオを利用して多くの人が観れるようにする話があったが,未だに完成していない。現在のフィルムセンターでは予算も人員も乏しく,本当に大変な現状で運営しており,諸外国と比べても少なすぎる。また,ネガを保存する必要性を説いても映画会社の作品に国がお金を出すことが理解されない。映画は文化的資質をもっており,文化財的保護が必要。フィルムセンターの意義が議論されれば,その規模の大幅な拡大にもつながる。
フィルムセンターは海外に出て行くなど大変な努力をしている。しかし,日本の国を考えてみると,経済不況になるとまず芸術文化から予算が減らされていく。他国では,芸術文化分野の予算を簡単に削減したりはしない。
映画は身近な娯楽という意味もあるが,映画は特別な日に特別な人とお金をかけて観るものであり,むしろテレビやゲームの方が身近である。
この懇談会の議論の中で,映画が何を指すのかを明確にして,ネットワーク上で流通するコンテンツと捉え,振興策を検討すべきである。昭和30年代の娯楽の独占的地位から,競争時代に入って映画の置かれている地位を再検討する必要がある。また,いかにして映画の利益率を上げるかが重要であり,構造改革の問題となる。単純に言えば,市場で選ばれない作品はいい作品ではないし,産業の振興が文化の振興と考える。
地域における観光客の増加を図るため,ロケを誘致するのに必要なFC(フィルムコミッション)の設立を支援している。
英語の教育と映画の振興の双方を検討する必要がある。映画は受け入れられる言葉があると普及しやすい。韓国が優れているのは英語力。コンテンツが流通していく中で英語教育は重要である。
(6) 事務局より,次回は6月20日の開催を予定しており,来年3月までに月1回ペースで開催する。また,次回以降は,イギリスやフランスなどの海外の現状施策について情報提供することや,様々な立場の方から広く意見を求める仕組みも考えていきたいとの説明があり,閉会した。
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