映画振興に関する懇談会(第12回)議事要旨

1. 日時 平成15年3月19日(水)13:00~15:00

2. 場所 如水会館 「オリオンルーム」(2階)

3. 出席者
(協力者) 高野座長,横川座長代理,飯田,岡田,小田島,児玉,阪本,新藤,鈴木,砂川,関口,髙村,司,奈良,長谷川,福田,北條各委員
 
(文化庁) 河合文化庁長官,銭谷文化庁次長,寺脇文化部長,河村芸術文化課長,山田主任芸術文化調査官,佐伯東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究官 外
 
(関係省) 境経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐


4.概要
(1) 配布資料の確認があり,前回の議事要旨について意見がある場合は,明日中に事務局に連絡することとした。
(2) 資料4「『映画振興に関する懇談会 中間まとめ』に対する意見の整理」,資料5「『映画振興に関する懇談会 提言』構成案」について説明が行われた後,以下のような議論が行なわれた。
[以下,○:委員,△:事務局]
項目はよく整理されているが,項目の中に具体的になっていないものがある。それらをどう具体化していくかを議論する必要がある。
映画製作スタッフの労働環境の整備について,何をするのか。また,経済的・社会的に自立するというのは望まれることだが,どうすればこれが実現されるのかを考えないといけない。
以前,記録映画の監督が映画を撮影中に脳梗塞で倒れ,労災を申請したが適用されなかった。労働基準法で定める労働者ではないからという理由であった。
労働基準法で定める労働者は,「給与台帳・出勤簿がある,会社命令で働いている」という条件であり,映画監督がこれらを満たすことは不可能である。結局,陳述書を書き,高等裁判所に提出し,この事例においては労災が適用された。しかし,毎回問題が起こるたびに個人が裁判所で争いをすべきではなく,映画界全体で考える必要がある。
経済的に自立することは実際には難しい。映画監督が年間に1本映画を撮ると,ギャラはだいたい300万円であり,一般のサラリーマンよりも少ない。このような人たちに様々な勉強をして,自分を磨けといっても無理である。
また,この提言案に盛り込まれたことは懇談会において具体的に議論を行うのは無理であり,提言を具体化していくためのワーキンググループのようなものが必要である。そのために,提言の具体化のためにメンバーを集めて,話し合っていくということを提言案に盛り込んで欲しい。
人材養成に関しても,働いて喜びが得られる環境を整えないといけない。このように今回の提言案には様々な問題がある。著作権も労災も解決されていない。そういうところをしっかり解決してから,施策に取り組んで欲しい。
撮影所について,韓国の例があったが,そもそも韓国には撮影所がなく,国が支援をして,撮影所ができた。このような環境だったからこそ韓国で撮影所ができた。
日本で新たに撮影所を作るといっても,既存の撮影所をどうするのか,そこで働く人をどうするのかというように様々な問題がでてくる。そういう新たに発生する問題も含め,どうすれば提言を実効性のあるものにしていけるかを考えていかなければならない。
フィルムセンターで毎年,収蔵品リストを作っているが,中には上映できない作品もある。それはフィルムが傷ついており,新しいものを購入できないためと聞くが,フィルムセンターにはそれほど予算がないのである。フィルムセンターが製作会社に連絡をすれば,納入しなければいけないような制度を作るなど,具体的なものを話し合って欲しい。
俳優の活動の場としては,映画,テレビ,舞台等があるが,映画においての収入は生活を支える上でどの程度のものなのか。
提言案が実現されるかというのは確かに問題である。中身がなくても項目が提言案に載ることは画期的だが,やはり国が映画振興に役立てる一番の手段は法律である。この提言案に著作権に関する記述を入れて欲しい。これは何も権利処理の話ではなく,これから作っていく映画をどのようにすればいい映画にすることができるかという意味で著作権を考えて欲しい。映画は著作権法の中で文芸の著作物を映像翻案化した二次的著作物という扱いになっている。映画は文芸とは大きく異なり,製作スタッフ,監督,シナリオ作家などの人々が全力で映画製作に取り組むものであり,文芸の著作物を映像翻案化した著作物と言われてはたまらない。他の懇談会において著作権について議論しているが,ここでは権利処理についての話なので,議論がまとまるわけがない。今回の提言に著作権について考えることを盛り込んで欲しい。その懇談会が逼迫しているなら,一度解散し,新たに著作権のための懇談会を設けて欲しい。
今後まとまった提言についてどう実現化していくかについて,優先順位が高いものをわかりやすくし,アクションプログラムを策定していく必要がある。
何から始めるのかを決めないと予算がついても分散して実効性がなくなってしまうのではないかという懸念がある。フィルムセンターのための予算,人員確保が第一である。作品を作るとなると,結局は金の問題になる。製作支援の拡充が必要である。助成金を大幅に増やして欲しい。それが若手の育成にもつながる。現場の声をもう少し集中的に聞く必要もある。
提言案は,中間まとめに比べて整理され,オーソドックスなものになっており,この構成に反対しない。ただ,提言の?に映画振興の基本的方向の1.で「国の役割と支援の在り方」で抽象的なものが入り,2.の「映画界における自立的な創造サイクルの確立」の中で,映画界の自立を国が支援するということを書くことになると思うが,そうすると1.において国がやるべきことが3つしか書かれていない。1.の2つ目の「映画及びその製作・上映に関わる者への社会的認知の向上」で表彰,その地位の認知,著作権保護の中で社会的認知を示すようにする。3つ目の「文化遺産としての映画フィルムの保存・継承」が,法的なものによってフィルムの保護を行うということはわかる。しかし,1つ目の「人材養成の重要性を踏まえた総合システムの構築」が何を意味するかはわからない。内容があるのならいいが,内容が定まっていないと,国がすることは社会的認知の向上とフィルムの保存のみになる。また,?についてはどういう扱いになるのか。
かつては映画の製作から上映までを行っていた会社があり,保証がある中で自分を磨くことができたと聞いた。様々な職種の人が一企業の中で人材が養成されてきたが,今はそういう施設があるのか。撮影所がまさにそのような機能をつべきである。それが失われつつあるということが問題であるということを盛り込んで欲しい。一番弱い書き方でも,例えば横浜で民間が新たに作ろうとしているものに支援をするなどの方法もある。書き方はともあれ,撮影所の問題にふれて欲しい。
構成案の順番を変えたのは,先に申し上げたとおり今後長く残っていく提言であり,オーソドックスな形にまとめている。中間まとめでは12の構想をまとめたが,何故それだけ行わなければならないかという疑問に答える必要もあり,税金を使う以上,無尽蔵に行えるものではない。では何ができるのかということで,?「明日の日本映画のための施策」において行いたいということを,?「映画振興の基本的方向」でこれらのうち国が今後行うべき方向性を記載している。
本日はこの構成案について皆さんに意見を求めているものであるので,御議論をおねがいしたい。また,社会的認知についても表彰制度だけでなく,先ほどの著作権のように,社会的認知につながるものを排除していくつもりはない。
人材養成と子どもの映画鑑賞機会の普及だが,子どもの映画鑑賞を普及するだけでいいのか。子どものメディアリテラシーを民間放送連盟と東京大学では進めてきた。その中で子どもたちが自分で映像を作り,放送される喜び,映像製作の過程でその規制を感じていたようだ。また,協力したテレビ局の人間も子どもと週末に映像を一緒に撮ることもあった。中等教育の中で,映像を作るということを専門職大学院の前段階ということで設けてほしい。
子どもの映画鑑賞機会普及事業は大切だが,なぜ義務教育の中で映画のカリキュラムがないのか。あれば映画の社会的認知につながる。実際に映像という観点から見れば,ビデオを使って撮影を行うなど,現代の子どもは映像に親しんでおり,映像を体系的に教育することが必要である。子どもへの映画鑑賞機会の普及は今後の映画振興のための重要な要因である。
?についてであるが,具体的にどのような施策を考えていくかが重要である。撮影所については,国立撮影所を作るという話もあったが,日本映画製作者連盟では4月以降は現在の撮影所が抱えている問題や劇場の規制などを解決していくための検討に入る。
提言は立派なものになっているが,何から手をつけていくかの方向性を最後にでも打ち出して欲しい。難しい問題ばかりであるので,何ができるのか。何から行うのかなどを次回にでも示して欲しい。
人材養成については業界の問題である。業界が一つになって取り組むべきである。以前,映画の入場料から特に根拠があるわけではないが3円のみを人材養成のために出してくれという提案をしたことがあるが,断られた。人材は業界で育てていく必要がある。昔のように撮影所がその力を失っているが,だからといって,業界での育成をやめてはいけない。人材養成は,過去の技術の伝承,新技術の開発等につながる。将来的に業界の利益につながるのだから,業界全体でしっかり考えて欲しい。
高等教育で人材養成を行うことは重要だが難しい面もある。大学において撮影,録音,監督などを専攻しても受け皿が少ない。また,実際に業界に入っても使い物にならないということがある。そういうところがスムーズに行くように資金援助などをしていただければと思う。
また,インターンシップ自体が大学の単位になるような制度を作ることも重要である。
しかし,人材養成のためには専門職大学院を作ることだけでなく,子どものときから映画に対する関心を高めていくことが必要である。
?の1と2についてだが,2が基本であり,それで賄えない部分を国が支援するということが国のスタンスであるべき。また,理想論ばかりで,何も実現できないのではと考えることもある。しかし,実現されないからといって,理想を小さくすることはなく,3年後にはこれを,5年後にはあれをと,優先順位を決めてそれぞれの分野での具体的なイメージが必要。
著作権の話はこの際,この懇談会で違った形で考慮することが必要ではないか。今実際に映画を作る現場環境が悪いというのも,著作権の権利の問題があるためで,思い切って取り上げて議論したい。
最終的な提言がまとまったとして,その後はどうなるかが不安である。このような懇談会の後で,目に見えるものが出たことはあまりないと聞いたことがある。そのようなことがないよう,提言が出た後も問題別に継続的にグループを作るか,文化庁が施策を実現しているかどうかを我々が知っていけるような仕組みを作って欲しい。
また,中間まとめでの海外への展開についてだが,どうも新作の映画についてのみを考えているようで,過去の作品についても海外展開の作品に含めて考える必要がある。黒澤明監督のフィルム上映はアメリカで2年間予約待ちの状況である。旧作においても,海外展開や人材養成において役に立つので,旧作に対して支援するような内容を盛り込んで欲しい。
著作権について,現在は著作権法を分かりやすくするために,映画著作権の特例をなくしていこうという動きがある。映画の著作物は他のものと違うものがある。やはり映画は映画の著作物として保護するような法関係の整備が必要。次回の提言の中では,著作権法の整備を加えて欲しい。
資料4の中で,昨年の日本映画のシェアが落ちていることを示すものがあったが,今回の提言にしろ中間まとめにしろ,映画の専門家が集まってまとめたものである。しかし,映画の振興のために必要なのはお客の動向を把握することである。このシェアが落ちた原因というのを,提言の中でもまとめるべきだと感じる。
前文の?の2について,これが前提としてあり,健全なサイクルができあがるまで,国は支援を行うべきというのが前提であるのなら,前の1に含めてもいいのではないか。
また,?の施策については,各項目ごとに分科会のようなものをもうけて検討を進めるべきだと考える。
以前の一般者のヒアリングにおいて,スチールやポスターの保存も行うべきという話もあったが,確かに重要なことである。しかし,こういった保存ということについては著作権の話が関わるので,著作権についての記述も必要である。
フィルムの著作権だが,それはスチールやポスターも含めて考えてもらいたい。私もそれらを活用したくても著作権が不安でなかなか使えないことがある。実際に映画に関する出版物を作っている人には1枚何万円が大きなネックになっている。
現場の映画の専門家の意見であり,国はこれらをどの程度受け止められるのかということも重要であり,国の意見を聞く必要がある。フィルムがあと5年で使えなくなるものもあるなど,急ぐべき問題もあるし,著作権も重要である。また,中長期的な視野に立って,施策を考えていくべきである。映像教育を学校で取り上げることについては,自然発生的なものでよいのではないか。
イギリスのBFI(British Film Institute:英国映画協会)では小学校から映像の作成の授業を取り入れている。映画のできるまでを分かりやすく教えていけば,映画というものが美術や音楽よりも,積極的に意味のあるものであることが理解できると感じる。
また,提言の中では国が行うという表現が多く,曖昧になっている。どこが行うのか,具体的にして欲しい。
今日の懇談会で現状の認識の甘さが出た。しかし,営業の認識の甘さもある。流通の(5)にある非映画館での上映こそ,日本映画を滅ぼす。こういう上映では,映画とは呼べないものを上映することが多い。
また,非映画館は国からの支援を受けているが,映画館は一つも受けていない。
著作権を抜きにして映画は考えられない。全てが著作権の問題につながる。映画は誰のものかを明確にする必要がある。
これまで施策が実現できていない理由は2つしか考えられる。1つは文化庁がさぼっている。2つ目は国民の理解が得られないということである。前者であってはならないのであって,我々も全力を尽くすが,後者は一人相撲では済まない問題である。理想を大きく掲げてきたが,実際にできるものを国民感情も考え,絞っていくことが必要である。著作権についても一方を立てれば,一方が立たないというようになる。映画関係者の間だけでの利害ではなくそれを受ける側の利害も関係する中で,著作権が難しい問題であることを理解していただき,考えていく必要がある。次回は,提言案を見ていただいて論議を収れんさせていただければと考えている。
以上
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