改正法Q&A 問10

(3)著作権等保護の実効性の確保

問10   著作権侵害等に係る罰則強化の趣旨を教えてください(第119条,第124条)。

 デジタル化・ネットワーク化といった急速な技術革新の進展の中で,大量かつ高品質の著作物のコピーが容易に作成され,流通することにより,権利侵害の機会と規模が増大しています。
 また,知的財産の保護を強化し,政府全体で取組んでいる知的財産立国の実現を目指すため,平成18年通常国会における法改正により,特許法等の産業財産権法における罰則が強化されました。
 著作権も,知的財産権の重要な構成要素であり,我が国の国民の文化的・経済的活動を支える重要な権利であるため,改正により,著作権侵害に係る罰則について,特許法等と同程度に引き上げることが規定されたところです。

 ただし,罰則の引き上げ幅が非常に大きいことを考慮して,財産的利益の保護強化を図る産業財産権侵害罪とのバランスという観点から,罰則の引き上げは,著作権や著作隣接権等の侵害罪本体に限定され,著作者人格権などその他の著作権法違反罪については,引き上げは見送られています。



【参考】刑罰規定全体の改正内容

(今回の改正により罰則が引上げられた箇所は下線を付記しています)

改正前 罪となる行為 改正後
§119 1号 著作権・出版権・著作隣接権の侵害
(私的複製の例外違反,輸入・頒布(輸出)・プログラム・権利管理情報・還流防止対象
レコードに係るみなし侵害を除く。)
10年以下
1,000万円以下
著作者人格権・実演家人格権の侵害
新第119条2項1号
(権利管理情報に係るみなし侵害を除く。)
5年以下
500万円以下
著作権・出版権・著作権隣接権の侵害物品の頒布目的の輸入行為,
情を知って頒布又は頒布目的の所持行為,業としての輸出又は業としての輸出目的の所持
→新第119条2項3号
5年以下
500万円以下
プログラムの違法複製物を電子計算機において使用する行為
→新第119条2項4号
5年以下
500万円以下
2号 営利目的による自動複製機器の供与
→新第119条2項2号
5年以下
500万円以下
§120 死後の著作者・実演家人格権侵害 500万円以下
§120の2 技術的保護手段回避装置・プログラムの供与 3年以下
300万円以下
営利目的による権利管理情報の改変等
営利目的による還流防止対象レコードの頒布目的の輸入等
§121 著作者名詐称複製物の頒布 1年以下
100万円以下
§121の2 外国原盤商業用レコードの違法複製等 1年以下
100万円以下
§122 出所明示義務違反 50万円以下
§122の2 秘密保持命令違反 5年以下
500万円以下
§124 第119条第1項若しくは第119条第2項第3号,4号【新設】又は第122条の2第1項の罪 3億円以下
上記以外(人格権侵害罪も含む) 各本条の刑

※懲役刑と罰金刑については併科可

(文化庁長官官房著作権課)

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